JP6750302B2 - 板状の鋼線強化樹脂 - Google Patents

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Description

本発明は、高強度と高衝撃エネルギー吸収能を備え、且つ変形能に優れた軽量部品の部材として好適な、板状の鋼線強化樹脂に関するものである。
自動車の軽量化を目的に、これまで鋼材が使われていた部品において、鋼材を、炭素繊維に樹脂を含浸させて得られる炭素繊維強化樹脂に変更する事例が出てきている。また橋梁の橋げたの補強にも、引張強さに優れ軽量な炭素繊維強化樹脂が使われる場合がある。しかし、炭素繊維は脆性材料であるため、炭素繊維強化樹脂を用いた部品に衝撃的な荷重がかかった場合、一気に破壊にいたりやすい。また炭素繊維は製造工程が多いにもかかわらず、炭素繊維の直径が10μm程度であるため、これを構造部材に用いるには、さらに多くの製造工程が必要になる。
炭素繊維を用いる場合の上記のような不利な点を考慮して、例えば以下に示す特許文献1および特許文献2に記載の技術が提案されている。
特許文献1には、単繊維状の補強繊維、該補強繊維を織布化してなる補強織布、又は該補強繊維を網化してなる補強網のいずれかを、マトリックス樹脂などに埋設した繊維強化部材が開示されており、この補強繊維は、線径160μm以下のピアノ線、ステンレス線あるいは低炭素二相組織鋼線のいずれかである。
特許文献2には、高分子のマトリクスと補強材から成るインパクトビームで、補強材が延性のある非金属部材で結合された金属の補強コードから成り、金属の補強コードの断面において、金属の占める断面積の比率が0.60以上であることを特徴とする発明が開示されている。
特開平3−52754号公報 国際公開第2013/041254号
しかしながら、特許文献1では、単繊維状の補強繊維を用いる場合について、補強繊維の間隔あるいはマトリックス樹脂の厚さが規定されておらず、部材としての強度あるいは補強繊維とマトリクス樹脂との接着力が不十分になりやすいという問題点がある。また、補強織布および補強網についても、織布あるいは網における繊維の間隔、あるいはマトリックス樹脂の厚みが規定されておらず、部材としての強度、あるいは補強織布若しくは補強網とマトリクス樹脂との接着力が不十分になりやすいという問題点がある。さらに、補強繊維の線径が160μm以下と細いため、特許文献1にも記載があるように、伸線加工中の断線が多くなる問題点がある。
また、特許文献2では、補強コードは撚り線を前提としているため、応力が負荷された際に変形しやすい、すなわち剛性が低いため、剛性が必要とされる部品には適していないという問題点がある。
本発明は以上の事情を背景としてなされたもので、高強度で、衝撃エネルギーの吸収能に優れ、しかも鋼線と樹脂との密着性に優れ、且つ変形能を有する軽量部品の部材に好適な、板状の鋼線強化樹脂を提供することを課題としている。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、調査・研究を重ね、その結果を仔細に解析して検討したところ、次のような知見を得ることができた。
a)高強度、衝撃エネルギー吸収能、および変形能の3つを両立させるためには、高強度鋼線と高分子樹脂の組み合わせが優れている。なお、鋼線が炭素繊維よりも変形能に優れることは公知である。
b)鋼線の直径が細いほど、鋼線を高強度化しやすいが、一方、直径が細いほど、伸線中の断線頻度やコストが増加する。鋼材のみで製造される部品に対して、高強度および衝撃エネルギー吸収能のメリットを得るためには、鋼線の引張り強さが3000MPa以上であることが必要であり、このような引張り強さを有する鋼線を安定的に製造するためには、鋼線の直径を1.0mm以下にする必要がある。
c)複数の鋼線を撚り合わせた、いわゆる撚り線は、鋼線同士の隙間が不可避的に生じるため、撚り線にしたものを高分子樹脂に埋め込みと、剛性が低くなる。一方、鋼線を直線状に平行に並べた状態で高分子樹脂に埋め込むと、撚り線にしたものを高分子樹脂に埋め込む場合に較べて、鋼線の長手方向に剛性が大幅に向上する。
d)鋼線を織布状または網状に加工してから、高分子樹脂に埋め込むと、撚り線にしたものを高分子樹脂に埋め込む場合に較べて、強度と剛性の異方性が小さくなる。
e)直線状に平行に並んだ鋼線と高分子樹脂との接着強度を十分に得るためには、鋼線の周囲に高分子樹脂が所定量以上必要なため、鋼線の直径を関数とした隙間と高分子樹脂の厚さが必要となる。この接着強度が不十分であると、衝撃エネルギーの吸収能が大きく低下する。一方、高分子樹脂の割合が大き過ぎると、強度不足となり、且つ衝撃エネルギーの吸収能も不足となる。
f)部品の使用用途によって、高分子樹脂の種類、鋼線へのめっき有無、およびめっきの種類を選択すればよい。
g)鋼線を直線状に平行に並べた状態で高分子樹脂に埋め込んだ鋼線強化樹脂は、特性に異方性があるため、部品として使用されるときの応力状態に則して、複数枚を接着して重ね合わせて使用すればよい。
これらのa)〜g)の知見に基づいてさらに詳細な実験・研究を重ねた結果、前記課題を解決して、本発明をなすに至った。本発明の態様は以下に示す通りである。
(1) 質量%で、C:0.3〜1.2%を含有し、
引張り強さが3000〜5000MPaであり、
直径が0.20〜1.0mmである鋼製の単線からなる鋼線を有し、
複数の前記鋼線が略平行に配置された鋼線群が高分子樹脂内部に埋め込まれており、前記鋼線群において隣接する鋼線間の距離の平均値を平均間隔とした場合に、前記平均間隔が、前記鋼線の直径の0.30〜2.00倍であり、前記高分子樹脂の厚さが、前記鋼線の直径の1.20〜3.00倍であること、を特徴とする板状の鋼線強化樹脂。
(2) (1)に記載の鋼線強化樹脂であって、熱硬化性樹脂または有機繊維で結合している鋼線が高分子樹脂に埋め込まれていること、を特徴とする板状の鋼線強化樹脂。
(3) (1)または(2)に記載の板状の鋼線強化樹脂からなる高分子樹脂層を複数積層してなる板状の鋼線強化樹脂であって、
前記複数積層してなる板状の鋼線強化樹脂を平面視したときに、各高分子樹脂層内部の鋼線群の方向が少なくとも2方向であること、を特徴とする板状の鋼線強化樹脂。
(4) 質量%で、C:0.3〜1.2%を含有し、
引張り強さが3000〜5000MPaであり、
直径が0.20〜1.0mmである鋼製の単線からなる鋼線を有し、
第1の方向に複数の前記鋼線が略平行に配置された第1の鋼線群と、前記第1の方向とは異なる第xの方向に複数の前記鋼線が略平行に配置された第xの鋼線群と、が交差している網状の鋼線部材が高分子樹脂内部に埋め込まれており、
前記第1の鋼線群において隣接する鋼線間の距離と、前記第xの鋼線群において隣接する鋼線間の距離と、から算出される平均値を、前記網状の鋼線部材における隙間の平均間隔とした場合に、前記平均間隔が、前記鋼線の直径の0.30〜2.00倍であり、前記高分子樹脂の厚さが、前記網状の鋼線部材の最大厚さの1.10〜2.00倍であり、
xは2からnまでの整数であること、を特徴とする板状の鋼線強化樹脂。
(5) (3)または(4)に記載の板状の鋼線強化樹脂を平面視した場合、鋼線群の方向がなす角度が45°以上であること、を特徴とする板状の鋼線強化樹脂。
(6) (1)から(5)のいずれかに記載の板状の鋼線強化樹脂において、前記鋼線の表面にめっきが施されていること、を特徴とする板状の鋼線強化樹脂。
(7) (1)から(6)のいずれかに記載の板状の鋼線強化樹脂において、前記高分子樹脂が、エポキシ樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、およびナイロンから選ばれる1種または2種以上を主成分とすること、を特徴とする板状の鋼線強化樹脂。
本発明によれば、高強度と高衝撃エネルギー吸収能を備え、しかも鋼線と樹脂との密着性に優れ、且つ変形能に優れた軽量部品の部材に好適な、板状の鋼線強化樹脂を得ることができる。
図1(a)は、本実施形態に係る鋼線強化樹脂において、複数の鋼線が略平行に配置されている場合の隣接する鋼線間の隙間(距離)の平均間隔を示す模式的な平面図であり、図1(b)は、本実施形態に係る鋼線強化樹脂において、A方向に略平行に配置された複数の鋼線と、B方向に略平行に配置された複数の鋼線と、が90°で交差して形成される網状の鋼線部材における鋼線間の隙間の平均間隔を示す模式的な平面図である。 図2は、本実施形態に係る鋼線強化樹脂において、網状の鋼線部材の最大厚さを示す模式図である。 図3は、実施例において、網状の鋼線部材が高分子樹脂内部に埋め込まれた鋼線強化樹脂の引張り強さを測定する方法を示す模式図である。
本発明による板状の鋼線強化樹脂(以下、板状鋼線強化樹脂または鋼線強化樹脂ともいう)の構成についてより詳細に説明する。まず、本発明の板状の鋼線強化樹脂に埋め込まれる鋼線について説明する。なお、本発明における鋼線とは、単線からなり、鋼線の断面が円形であり,全長にわたって一定形状の断面をもち、断面寸法が長さに比べて非常に小さいものを指す。したがって、本発明における鋼線は、複数の単線を撚り合わせた撚り線は含まない。
(鋼線)
<鋼線の成分組成>
C: Cは鋼線の引張り強さを高めるために有効な成分である。しかし、その含有量が0.3質量%未満の場合には、引張り強さで3000MPaといった高い強度を安定して鋼線に付与させることが困難である。さらに高強度の最終製品を安定して得るためにはC含有量を高めることが有効であり、3500MPa以上の引張り強さを得るためには、たとえば、C含有量を0.6質量%以上にすることが望ましい。一方、C含有量が多すぎれば、鋼材が硬質化して伸線時の断線あるいは延性の低下を招く。特に、C含有量が1.2質量%を超えれば、その影響が顕著になり、安定した量産が工業的に困難になる。そこで、C含有量は0.3〜1.2質量%の範囲内と定めた。C含有量は、好ましくは0.6〜1.2質量%である。
上記の鋼線は、C以外にSi、Mn、Crなど他の合金元素を含んでもよい。さらに、不可避的不純物として、N、P、S、Oなどを含有する。
<鋼線の引張り強さ>
本発明の鋼線強化樹脂における鋼線の引張り強さは3000MPa以上である。一方で、鋼材のみで製造される板状部品で最も高強度なものの引張り強さは約1500MPaである。本発明の鋼線強化樹脂における鋼線の引張り強さが3000MPa以上であることにより、鋼材のみで製造される板状部品に対して、高強度且つ軽量の板状鋼線強化樹脂を得ることができる。一方、引張り強さが5000MPaを超える鋼線を得るためには、伸線加工量が大きくなって、伸線中の断線頻度が大きくなる。そこで、鋼線の引張り強さを3000〜5000MPaに規定する。鋼線の引張り強さは、好ましくは3500〜5000MPa、より好ましくは3900〜5000MPaである。
<鋼線の直径>
鋼線の引張り強さを3000MPa以上としつつ、伸線中の断線を抑制して、安定的に製造するためには、鋼線の直径を1.00mm以下にする必要がある。一方、鋼線の直径を0.20mm未満にすると、鋼線の生産性の低下、あるいは、伸線中の断線頻度の増加が顕著になる。また、鋼線の直径が0.20mm未満になると、鋼線を直線状に平行に並べる際の鋼線強化樹脂の生産性の低下も顕著になる。そのため、鋼線の直径は0.20〜1.00mmと規定した。鋼線の直径は、好ましくは0.30mm以上、0.60mm以下である。
<鋼線表面へのめっき>
鋼線表面にめっきを施さなくてもよいが、伸線時の摩擦抵抗の低減のため、あるいは部品の使用環境に応じて耐食性の向上のため、鋼線表面にめっきを施してもよい。めっきの例としては、ブラス(Cu−Zn合金)、またはCu若しくはNiを主体としたものが挙げられる。
(板状の鋼線強化樹脂)
板状の鋼線強化樹脂の構成について説明する。本発明の板状の鋼線強化樹脂は、鋼線強化樹脂の内部における鋼線の配置により、2種類の鋼線強化樹脂が例示される。以下では、まず、鋼線が略平行に配置された板状の鋼線強化樹脂(板状鋼線強化樹脂1)について説明する。続いて、鋼線が網状に配置された板状の鋼線強化樹脂(板状鋼線強化樹脂2)について説明する。いずれの板状の鋼線強化樹脂においても、鋼線として、撚り線ではなく、単線を用いる必要がある。撚り線は応力が負荷された際に変形しやすい、すなわち剛性が低いためである。
<板状鋼線強化樹脂1>
<鋼線間の隙間(距離)の平均間隔と板状の鋼線強化樹脂の厚さとの関係>
鋼線と高分子樹脂との接着力を高めるためには、鋼線同士が密着しないようにする必要があり、さらに鋼線の直径に対して、高分子樹脂が所定以上の厚さを有する必要がある。
鋼線間の隙間の平均間隔が鋼線の直径の0.30倍以上で、且つ板状の鋼線強化樹脂の厚さが鋼線の直径の1.20倍以上のときに、鋼線と高分子樹脂との接着力が顕著に増加し、さらには衝撃吸収エネルギーも顕著に増加した。なお、鋼線間の隙間の平均間隔は、図1(a)に示すように、複数の鋼線が略平行に配置され鋼線群を形成している場合に、隣接する2本の鋼線間の距離(a、b)の平均値として求めた値である。隣接する2本の鋼線は、鋼線群において任意に選択すればよい。
一方、高分子樹脂の強度は、鋼線に較べて相対的に低いため、強度の観点から、板状鋼線強化樹脂の中で鋼線の割合を高める必要がある。鋼線間の隙間の平均間隔を鋼線の直径の2.00倍以下、且つ板状の鋼線強化樹脂の厚さを鋼線の直径の3.00倍以下にしたときに、板状の鋼線強化樹脂が大きな強度を有することができる。
以上より、鋼線間の隙間の平均間隔を鋼線の直径の0.30〜2.00倍、板状鋼線強化樹脂の厚さを鋼線の直径の1.20〜3.00倍と規定する。鋼線間の隙間の平均間隔は、鋼線の直径の好ましくは0.30〜1.20倍、より好ましくは0.30〜0.74倍である。板状鋼線強化樹脂の厚さは、鋼線の直径の好ましくは1.20〜2.30倍、より好ましくは1.20〜1.70倍である。鋼線間の隙間の平均間隔および板状鋼線強化樹脂の厚さを上記の範囲内とすることにより、特に、板状鋼線強化樹脂の引張り強さと比強度を向上させ、且つ良好な衝撃吸収エネルギー及び鋼線と樹脂との密着性を得ることができる。
<埋め込み前の鋼線同士の結合>
高分子樹脂に鋼線を埋め込む前に、鋼線同士を結合させていなくてもよいが、埋め込む前に結合させることで、鋼線の間隔のばらつきが低減し、また高分子樹脂に埋め込むときの生産性が向上する。鋼線同士の結合には、熱硬化樹脂または有機繊維を用いて鋼線間をまたぐように鋼線同士を接着させるとよい。
(板状鋼線強化樹脂1の積層体)
上述した板状鋼線強化樹脂1では、鋼線が直線状に平行に並んだ状態で高分子樹脂に埋め込まれているため、引張り強さ等の特性は異方性を有している。その特性の異方性を低減するためには、板状の鋼線強化樹脂1を2枚以上重ね、重ねた板状の鋼線強化樹脂1を平面視した場合に、鋼線が配置されている方向(鋼線群の方向)が少なくとも2方向であり、鋼線群の方向がなす角度が45°以上であるとよい。したがって、板状の鋼線強化樹脂1の積層体として、板状の鋼線強化樹脂1からなる高分子樹脂層を複数層積層し、接着等により一体化してなる板状の鋼線強化樹脂が得られる。すなわち、この鋼線強化樹脂中の鋼線群の方向は少なくとも2方向であり、その角度が45°以上である。鋼線強化樹脂1からなる高分子樹脂層の数は、好ましくは3層以上、より好ましくは4層以上である。
<板状鋼線強化樹脂2>
板状鋼線強化樹脂2は、第1の方向に複数の上述した鋼線が略平行に配置された第1の鋼線群と、第1の方向とは異なる第xの方向に複数の上述した鋼線が略平行に配置された第xの鋼線群と、が交差して形成された網状の鋼線部材が高分子樹脂内部に埋め込まれている構成を有している。ここで、xは2からnまでの整数であり、板状鋼線強化樹脂2の生産性等を考慮すると、nは3以下であることが好ましい。以下では、n=2である場合について説明する。
<網状の鋼線部材中の鋼線間の隙間の平均間隔と板状鋼線強化樹脂の厚さとの関係>
板状鋼線強化樹脂1と同様に、網状の鋼線と高分子樹脂との接着力、および衝撃吸収エネルギーを高めるためには、鋼線同士が密着しない部分を大きくする必要があり、さらに鋼線の直径に対して、高分子樹脂が所定以上の厚さを有する必要がある。
網状の鋼線部材中の鋼線間の隙間の平均間隔が、鋼線の直径の0.30倍以上で、且つ板状鋼線強化樹脂の厚さが、網状の鋼線部材の最大厚さの1.10倍以上のときに、鋼線と高分子樹脂の接着力が顕著に増加し、さらに衝撃吸収エネルギーが顕著に増加した。
なお、2つの鋼線群が交差して形成される網状の鋼線部材中の鋼線間の隙間の平均間隔は、図1(b)に示すように、A方向(第1の方向)に略平行な第1の鋼線群11において、隣接する2本の鋼線間の距離(a、b)と、B方向(第2の方向)に略平行な第2の鋼線群12において、隣接する2本の鋼線間の距離(c、d)と、から、平均値として求めた値である。n=3の場合は、第1の鋼線群における隣接する鋼線間の距離および第2の鋼線群における隣接する鋼線間の距離に、第3の鋼線群における隣接する鋼線間の距離を加えて、平均値として求めればよい。隣接する2本の鋼線は、鋼線群において任意に選択すればよい。
さらに、網状の鋼線部材の最大厚さは、図2に示すように、2本の鋼線が交差している鋼線の上限と下限の距離(図2では、鋼線の直径の2倍超である)である。なお、たとえば、n=3の場合は、最大厚さは3本の鋼線が交差している部分の上限と下限との距離となる。
また、板状鋼線強化樹脂1と同様に、高分子樹脂の強度は、鋼線に較べて相対的に低いため、強度の観点から、板状鋼線強化樹脂2の中で鋼線の割合を高める必要がある。鋼線間の隙間の平均間隔を鋼線の直径の2.00倍以下、且つ板状の鋼線強化樹脂の厚さを網状の鋼線部材の最大厚さの2.00倍以下にしたときに、板状鋼線強化樹脂2が大きな強度を有することができる。
以上より、網状の鋼線部材における鋼線間の隙間の平均間隔を鋼線の直径の0.30〜2.00倍、板状鋼線強化樹脂の厚さを網状の鋼線部材の最大厚さの1.10〜2.00倍と規定する。鋼線間の隙間の平均間隔は、鋼線の直径の好ましくは0.30〜1.00倍、より好ましくは0.30〜0.60倍である。板状鋼線強化樹脂の厚さは、鋼線の直径の好ましくは1.10〜1.40倍、より好ましくは1.10〜1.30倍である。鋼線間の隙間の平均間隔および板状鋼線強化樹脂の厚さを上記の範囲内とすることにより、特に板状鋼線強化樹脂の引張り強さと比強度を向上させ、且つ良好な衝撃吸収エネルギー及び鋼線と樹脂との密着性を得ることができる。
なお、鋼線を網状にするときの編み方については、特に規定しないが、平織りと呼ばれる、縦糸と横糸を交互に浮き沈みさせて織る方法、または綾織りと呼ばれる、縦糸が2本もしく3本の横糸の上を通した後に、1本の横糸の下を通すことを繰り返して織る方法が好ましい。
<高分子樹脂の種類>
板状の鋼線強化樹脂(板状鋼線強化樹脂1および板状鋼線強化樹脂2)に用いられる高分子樹脂の種類は、当該鋼線強化樹脂の使用環境に応じて選択すればよいが、エポキシ樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、およびナイロンから選ばれる1種または2種以上を主成分として使用することが好ましい。本明細書において、「主成分」とは、高分子樹脂全体を100質量%とした場合に、50質量%以上を占める成分をいう。
次に本発明の実施例について説明するが、実施例の条件は、本発明の実施可能性および効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
表1に示す化学組成の鋼A〜Cを転炉によって溶製した後、通常の方法での分塊圧延によって、122mm角のビレットを得た。次に、通常の方法でビレットに線材圧延を行い、φ5.5mmの鋼線材を得た。このようにして得た鋼線材について、通常の方法で脱スケールおよび潤滑処理を行った後に、乾式での冷間伸線によって表2および表3中に示す直径の鋼線(中間製品)を得た。表2は、鋼線及び前記鋼線が略平行に配置された板状の鋼線強化樹脂(板状鋼線強化樹脂1)の構成及び特性を示し、表3は、鋼線及び前記鋼線が網状に配置された板状の鋼線強化樹脂(板状鋼線強化樹脂2)の構成及び特性を示す。
このようにして得た鋼線(中間製品)について、950℃に加熱した後、590℃の鉛浴に15秒浸漬する熱処理を行った。次いで、表2および表3に示す直径まで湿式伸線を行った。
なお、表2および表3に示す鋼線の一部については、鉛浴に浸漬する熱処理を行った後、通常の方法によって、銅めっき、亜鉛めっき、またはブラス(銅−亜鉛)めっきを行ってから湿式伸線を行った。
このようにして得た鋼線の引張り強さは、通常の方法の引張試験によって求めた。その結果を表2および表3中に示す。
次に、表2に記載の平均間隔で鋼線を並べた後に、表2中に記載の樹脂を塗布した後、それぞれの樹脂に対する通常の条件で硬化処理を行って、板状の鋼線強化樹脂を得た。この板状の鋼線強化樹脂の厚さを鋼線の直径に対する比で表2中に示した。このようにして得た板状の鋼線強化樹脂について、鋼線を15本含むように且つ鋼線の長手方向に200mm長さで切り出し、鋼線の長さ方向と平行な向きで、平行部長さ100mmで引張試験を行った。この際、破断荷重の90%以上の荷重で鋼線と高分子樹脂が剥離した場合、密着力が十分と判定した。また引張り強さが750MPa以上で、比強度(kN・m/kg)が300以上の場合、高強度で軽量と判定した。好ましくは、引張り強さが1000MPa以上で、比強度(kN・m/kg)が330以上、より好ましくは、引張り強さが1200MPa以上で、比強度(kN・m/kg)が350以上である。
衝撃試験用の試験片は、表2に示した板状の鋼線強化樹脂について、鋼線の長さ方向と平行な向きで長さ80±1mm、幅10±1mmで切り出し、厚さが1.5mm未満のものについては、厚さが1.5mm以上になる最小限の枚数を平行に積層した。この試験片を用いて、JIS K 7077で規定される炭素繊維強化プラスチックのシャルピー衝撃試験方法に準拠して試験を行った。このときのシャルピー衝撃値が300kJ/m以上であれば、衝激エネルギー吸収能が十分と判定した。シャルピー衝撃値は、好ましくは400kJ/m以上、より好ましくは500kJ/m以上である。なお、炭素繊維強化樹脂のシャルピー衝撃値は、多くの場合、150kJ/m未満であり、本発明によれば、従来よりも著しく大きなシャルピー衝撃値を得ることができる。
さらに、表3に記載の鋼線を、表3に記載の織り方によって、表3に記載の間隔で網状にした後、網状の鋼線部材において、図2で定義される最大厚さを測定した。次いで、表3中に記載の樹脂を塗布した後、それぞれの樹脂に対する通常の条件で硬化処理を行って、板状の鋼線強化樹脂を得た。この板状の鋼線強化樹脂の厚さを網状鋼線部材の最大厚さに対する比で表3中に示した。このようにして得た板状の鋼線強化樹脂から図3に記載の形状の試験片を切り出し、図3に記載の向きで、平行部長さ100mmで引張試験を行った。この際、破断荷重の90%以上の荷重で鋼線と高分子樹脂が剥離した場合、密着力が十分と判定した。また引張り強さが580MPa以上で、比強度(kN・m/kg)が240以上の場合、高強度で軽量と判定した。好ましくは、引張り強さが700MPa以上で、比強度(kN・m/kg)が255以上、より好ましくは、引張り強さが800MPa以上で、比強度(kN・m/kg)が270以上である。
衝撃試験用の試験片は、表3に示した板状の鋼線強化樹脂について、図3に記載と同様の方向で、長さ80±1mm、幅10±1mmで切り出し、厚さが1.5mm未満のものについては、厚さが1.5mm以上になる最小限の枚数を平行に積層した。この試験片を用いて、JIS K 7077で規定される炭素繊維強化プラスチックのシャルピー衝撃試験方法に準拠して試験を行った。このときのシャルピー衝撃値が250kJ/m以上であれば、衝激エネルギー吸収能が十分と判定した。シャルピー衝撃値は、好ましくは350kJ/m以上、より好ましくは450kJ/m以上である。なお炭素繊維強化樹脂のシャルピー衝撃値は、多くの場合、150kJ/m未満であり、本発明によれば、従来よりも著しく大きなシャルピー衝撃値を得ることができる。
Figure 0006750302
Figure 0006750302
Figure 0006750302
表2および表3から、本発明で規定する条件から外れた試験番号では、前記した少なくとも1つの特性が目標とする値に達していないことが明らかである。具体的には、鋼線の平均間隔と鋼線直径との比が小さすぎる場合には(表2の試験番号3、7、24、35、および表3の試験番号3、7、24、33)、鋼線と樹脂との剥離が生じ、鋼線と樹脂との密着性が悪いこと、およびシャルピー衝撃値が低いことが確認できた。また、鋼線の平均間隔と鋼線直径との比が大きすぎる場合には(表2の試験番号10、38、および表3の試験番号10、36)、少なくとも引張り強さが低いことが確認できた。また、樹脂厚さと、鋼線直径あるいは鋼線の最大厚さと、の比が小さすぎる場合には(表2の試験番号11、30、39、および表3の試験番号11、37)、鋼線と樹脂との剥離が生じ、鋼線と樹脂との密着性が悪いこと、およびシャルピー衝撃値が低いことが確認できた。さらに、樹脂厚さと、鋼線直径あるいは鋼線の最大厚さと、の比が大きすぎる場合には(表2の試験番号6、14、27、42、および表3の試験番号6、14、27、40)、少なくとも引張り強さが低いことが確認できた。
それに対し、本発明で規定する条件をすべて満たす試験番号は、前記したすべての特性が目標とする値に達していることが明らかである。
1、2 板状鋼線強化樹脂
10 鋼線
11 第1鋼線群
12 第2鋼線群
20 高分子樹脂

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.3〜1.2%を含有し、
    引張り強さが3000〜5000MPaであり、
    直径が0.20〜1.00mmである鋼製の単線からなる鋼線を有し、
    複数の前記鋼線が略平行に配置された鋼線群が高分子樹脂内部に埋め込まれており、前記鋼線群において隣接する鋼線間の距離の平均値を平均間隔とした場合に、前記平均間隔が、前記鋼線の直径の0.30〜2.00倍であり、前記高分子樹脂の厚さが、前記鋼線の直径の1.20〜3.00倍であること、を特徴とする板状の鋼線強化樹脂。
  2. 請求項1に記載の板状の鋼線強化樹脂からなる高分子樹脂層を複数積層してなる板状の鋼線強化樹脂であって、
    前記複数積層してなる板状の鋼線強化樹脂を平面視したときに、各高分子樹脂層内部の鋼線群の方向が少なくとも2方向であること、を特徴とする板状の鋼線強化樹脂。
  3. 質量%で、C:0.3〜1.2%を含有し、
    引張り強さが3000〜5000MPaであり、
    直径が0.20〜1.00mmである鋼製の単線からなる鋼線を有し、
    第1の方向に複数の前記鋼線が略平行に配置された第1の鋼線群と、前記第1の方向とは異なる第xの方向に複数の前記鋼線が略平行に配置された第xの鋼線群と、が交差している網状の鋼線部材が高分子樹脂内部に埋め込まれており、
    前記第1の鋼線群において隣接する鋼線間の距離と、前記第xの鋼線群において隣接する鋼線間の距離と、から算出される平均値を、前記網状の鋼線部材における隙間の平均間隔とした場合に、前記平均間隔が、前記鋼線の直径の0.30〜2.00倍であり、前記高分子樹脂の厚さが、前記網状の鋼線部材の最大厚さの1.10〜2.00倍であり、
    xは2からnまでの整数であること、を特徴とする板状の鋼線強化樹脂。
  4. 請求項またはに記載の板状の鋼線強化樹脂を平面視した場合、鋼線群の方向がなす角度が45°以上であること、を特徴とする板状の鋼線強化樹脂。
  5. 請求項1からのいずれか一項に記載の板状の鋼線強化樹脂において、前記鋼線の表面にめっきが施されていること、を特徴とする板状の鋼線強化樹脂。
  6. 請求項1からのいずれか一項に記載の板状の鋼線強化樹脂において、前記高分子樹脂が、エポキシ樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、およびナイロンから選ばれる1種または2種以上を主成分とすること、を特徴とする板状の鋼線強化樹脂。
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