JP6743858B2 - 亜鉛の分離方法、亜鉛材料の製造方法および鉄材料の製造方法 - Google Patents

亜鉛の分離方法、亜鉛材料の製造方法および鉄材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、亜鉛の分離方法に関し、特に、精度良くpHを調節することにより、製鉄ダストから効率よく亜鉛を分離することができる亜鉛の分離方法に関する。また、本発明は、前記亜鉛の分離方法を利用した、亜鉛材料の製造方法および鉄材料の製造方法に関する。
代表的なベースメタルである鉄は、多様な産業分野で用いられている。鉄は、レアメタルと呼ばれる希少金属に比べると資源量は潤沢なものの、新興国の台頭に伴い、需給バランスが急激に変化している。その結果、良質な鉄鉱石資源が枯渇し、品位の劣る鉱石を使わざるを得ない状況になりつつある。
このような状況を鑑み、鉄鉱石を精錬するのみならず、鉄を含む多成分の金属で構成される産業廃棄物や製鉄所副生成物等を、鉄源として再資源化する試みがなされている。例えば、高炉ダスト、転炉ダスト、電炉ダスト等の製鉄所で発生するダストには鉄、亜鉛、炭素等が含まれており、これらのダスト(以下、「製鉄ダスト」という)は製鉄原料として再資源化されている。
しかし、製鉄ダスト中の亜鉛は高炉内で付着物を形成し、高炉操業に悪影響を及ぼすため、製鉄ダストの再資源化量は制限されてきた。そのため、製鉄ダストから亜鉛を分離回収する技術が求められている。
製鉄ダストから亜鉛を分離する方法は、乾式法と湿式法に大別される。乾式法とは、製鉄ダストを高温で還元し、亜鉛を揮発させて分離回収する技術である。しかし、乾式法による亜鉛の分離回収では、大規模な高温還元装置が必要であり、亜鉛の含有量が数%程度の高炉ダストや転炉ダストでは、経済的に成立しないという問題があった。
そこで、上記の問題を解決するために、湿式法による製鉄ダストからの亜鉛の分離方法が検討されてきた。湿式法においては、製鉄ダストに酸を加えて亜鉛を溶出させ、その後、アルカリを添加することによって亜鉛を沈殿させて回収する。
例えば、特許文献1、2では、湿式法による亜鉛の回収率において、亜鉛を溶出させた際に亜鉛とともに溶解した鉄を、亜鉛の沈殿処理に先立って沈殿除去することが提案されている。
特開昭53−004705号公報 特開昭61−261446号公報
特許文献1、2で提案されている方法によれば、亜鉛とともに溶出した鉄を事前に沈殿除去するため、亜鉛を高濃度で回収することができると期待される。しかし実際には、特許文献1、2に記載されているような従来の方法では、亜鉛および鉄の回収率が予想よりも低くなる問題があることが分かった。この問題は、特に、実験室レベルでの試験から実機レベルにスケールアップした際に顕著であり、実用化のためにはさらなる改良が求められる。
そこで、本発明の目的は、製鉄ダストから高い回収率で効率よく亜鉛を分離することができる亜鉛の分離方法を提供することを目的とする。また、本発明は、前記亜鉛の分離方法を利用した、亜鉛材料の製造方法および鉄材料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決する方途について鋭意検討し、以下の知見を得た。
(1)従来の方法では、亜鉛の沈殿分離に先立って鉄を沈殿させる際のpH調整の精度に問題があった。すなわち、処理液にアルカリを添加することによって鉄を沈殿させる際に、pHが低くすぎると鉄を十分に沈殿除去することができず、その結果、鉄の回収率が低下する。一方、pHが高すぎると、鉄だけでなく亜鉛も沈殿してしまい、その結果、亜鉛の回収率が低下する。したがって、鉄を沈殿させる際には精密にpHを制御する必要がある。
(2)しかし、実際の処理においては、アルカリを添加してから、処理液が混合されて中和反応が完全に終了するまでにはタイムラグが存在するため、処理液のpHをモニターしながらアルカリを添加したとしても、正確にpHを調整することは困難である。また、処理液は一定の体積を有しているため、撹拌しながらアルカリを添加したとしても、処理液全体のpHを完全に均一にすることは困難であり、場所によってpHが低い場所や高い場所が生じてしまう。
(3)鉄沈殿工程におけるpHと酸化還元電位(ORP)の関係を調査した結果、処理液のpHが低いほどORPが高い傾向にあることが明らかとなった。後述の通り酸化剤の添加量はORPに基づいて制御することが好ましいが、反応槽内に局所的にpHの低い場所が生じた場合、ORPをモニタリングしたとしても酸化剤の添加量を過少に評価してしまい、結果として鉄の回収率が低下する。
(4)そこで、鉄沈殿工程においてアルカリの添加を行う反応槽の上流側にpH調整槽を設置し、前記pH調整槽において予めある程度のpH調整を行っておくという簡便な方法により、鉄沈殿工程におけるpH調整の精度を格段に向上させ、その結果、亜鉛と鉄の回収率を効果的に改善できる。
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨構成は以下の通りである。
1.製鉄ダストに酸を添加してpHを1.0以上に調整し、前記製鉄ダストに含まれる亜鉛を浸出させる亜鉛浸出工程と、
前記亜鉛浸出工程で得られた処理液に第1のアルカリおよび酸化剤を添加してpHを調整するpH調整工程と、
前記pH調整工程後の処理液に、第2のアルカリを添加して鉄を沈殿させる鉄沈殿工程と、
前記鉄沈殿工程後の処理液を固液分離する第1固液分離工程と、
前記第1固液分離工程後の処理液に第3のアルカリを添加して亜鉛を沈殿させる亜鉛沈殿工程と、
前記亜鉛沈殿工程後の処理液を固液分離する第2固液分離工程とを含み、
前記pH調整工程における第1のアルカリの添加を、前記鉄沈殿工程における第2のアルカリの添加を行う反応槽の上流側に設けたpH調整槽にて行う、亜鉛の分離方法。
2.前記亜鉛浸出工程において、pHを2.0以上3.0以下に調整する、上記1に記載の亜鉛の分離方法。
3.前記亜鉛浸出工程における浸出時間を15分以上120分以下とする、上記1または2に記載の亜鉛の分離方法。
4.前記鉄沈殿工程において、処理液のpHを4.0以上6.0以下に調整する、上記1〜3のいずれか一項に記載の亜鉛の分離方法。
5.前記鉄沈殿工程において、酸化還元電位を550mV以上に制御する、上記1〜4のいずれか一項に記載の亜鉛の分離方法。
6.前記亜鉛沈殿工程において、処理液のpHを8.0以上12.0以下に調整する、上記1〜5のいずれか一項に記載の亜鉛の分離方法。
7.前記第1固液分離工程で分離された鉄を回収する第1鉄回収工程および前記第2固液分離工程で分離された亜鉛を回収する亜鉛回収工程の一方または両方をさらに含む、上記1〜6のいずれか一項に記載の亜鉛の分離方法。
8.前記亜鉛浸出工程と前記pH調整工程との間に、処理液を固液分離する第3固液分離工程をさらに備える、上記1〜7のいずれか一項に記載の亜鉛の分離方法。
9.前記第3固液分離工程で分離された鉄を回収する第2鉄回収工程をさらに含む、上記8に記載の亜鉛の分離方法。
10.上記1〜9のいずれか一項に記載の亜鉛の分離方法により、製鉄ダストから亜鉛を分離して回収する、亜鉛材料の製造方法。
11.上記1〜9のいずれか一項に記載の亜鉛の分離方法により、製鉄ダストから鉄を分離して回収する、鉄材料の製造方法。
本発明によれば、製鉄ダストから高い回収率で効率よく亜鉛を分離することができる。
第1の実施形態における亜鉛の分離方法を示すフローチャートである。 走査型電子顕微鏡による高炉ダストの観察画像、並びに亜鉛および鉄の元素マッピングを示す図である。 25℃の水溶液中における鉄の電位−pH図である。 25℃の水溶液中における亜鉛の電位−pH図である。 第2の実施形態による亜鉛の分離方法を示すフローチャートである。 浸出処理時のpHと、鉄および亜鉛の浸出率との関係を示す図である。 硫酸浸出前後の亜鉛化合物の割合を示す図である。 水酸化カルシウムのpHと鉄および亜鉛の浸出率との関係を示す図である。 鉄沈殿工程における鉄および亜鉛の沈殿率を示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について具体的に説明する。なお、以下の説明は、本発明の好適な実施形態を示すものであって、本発明はこれに限定されない。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態における亜鉛の分離方法を示すフローチャートである。前記フローチャートに示したように、本実施形態における亜鉛の分離方法では、製鉄ダストに対して下記(S1)〜(S6)のステップによる処理を順次施す。
(S1)亜鉛浸出工程
(S2)pH調整工程
(S3)鉄沈殿工程
(S4)第1固液分離工程
(S5)亜鉛沈殿工程
(S6)第2固液分離工程
なお、上記(S1)〜(S6)の工程は、任意の方式で実施することができる。例えば、上記(S1)〜(S6)の工程のすべてをバッチ式で行ってもよく、連続式で行ってもよい。また、上記(S1)〜(S6)の工程のうち一部の工程をバッチ式で行い、残りの工程を連続式で行うこともできる。しかしながら、製鉄ダストは製鉄プロセスにおいて連続的に発生するものであり、発生したダストは逐次処理することが望ましい。そのため、処理効率の観点からは上記(S1)〜(S6)の工程を連続的に行うことが好ましい。
上記(S1)〜(S6)の各工程は、特に断らない限り任意の装置を用いて行うことができる。各工程で用いる反応槽などの装置や機器は、それぞれの工程で用いる薬剤(アルカリなど)で侵されない耐薬品性を有する材質で構成するか、耐薬品性を有するライニングなどを備えることが好ましい。反応槽の形状についても特に限定されず、設置場所などに応じて自由に決めることができる。
[製鉄ダスト]
本発明における製鉄ダストとしては、特に限定されることなく、製鉄工程で発生するダストであれば、任意のものを用いることができる。製鉄ダストの代表的なものとしては、例えば、高炉ダスト、転炉ダスト、電炉ダストなどが挙げられる。
前記製鉄ダストとしては、中でも、高炉ダストおよび転炉ダストの一方または両方を用いることが好ましい。高炉ダストと転炉ダストは、亜鉛の含有率が数質量%と低いものの、後述するように、亜鉛全体の約70%が酸化亜鉛(ZnO)として存在している。そのため、硫化亜鉛(ZnS)や亜鉛フェライト(ZnFe24)といった他の形態の亜鉛に比べて、比較的高いpHでも容易に浸出させることができる。その結果、ダスト自体の亜鉛含有率は低いにもかかわらず、最終的に亜鉛沈殿工程において得られる沈殿の亜鉛純度は極めて高く、亜鉛原料として再利用するのに特に適している。
製鉄ダストは、任意の形態で用いることができるが、以降の工程における処理のしやすさの観点からは、水と混合してスラリー状として用いることが好ましい。その際、製鉄ダストと水分の比率(固液比)は任意の比率とすることができるが、均一な混合ができるように決定することが望ましい。
ここで、上述した製鉄ダストに含まれる亜鉛について調査した結果について説明する。図2は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)による高炉ダストの観察画像、並びに亜鉛および鉄の元素マッピングを示している。この図において、上の3つの画像は、径が1μm程度までの高炉ダスト粒子について、下の3つの図は、20μm径程度の高炉ダスト粒子についてそれぞれ示している。
これらの図から、径が1μm程度の粒子と径が20μm程度の粒子の何れにおいても、亜鉛は、高炉ダスト粒子の内部にはほとんど存在せず、表面に濃化していることが分かる。また、特開平10−267910号公報に記載された方法に基づき、ダストを塩化鉄(III)溶液とクエン酸の混合溶液中で撹拌し、溶解した亜鉛を定量することによりZnOの割合を求めた結果、亜鉛の70%程度が酸化亜鉛(ZnO)として存在することが判明した。また、転炉ダストの場合も同様であった。
後の実施例で示すように、亜鉛の浸出率は、亜鉛浸出工程におけるpHの低下とともに上昇し、pH=2で70%に達し、酸化亜鉛として存在する亜鉛のほぼ全てが浸出する。また、pHが1の場合にも浸出率は増加せず、亜鉛の浸出率はpH=2で飽和する。こうした傾向は、転炉ダストの場合も同様であった。
[亜鉛浸出工程]
上記製鉄ダストに酸を添加してpHを1.0以上に調整し、前記製鉄ダストに含まれる亜鉛を浸出させる(亜鉛浸出工程)。
前記酸としては、特に限定されることなく、亜鉛を浸出させることができるものであれば任意のものを用いることができる。例えば、塩酸、硫酸、硝酸など無機酸を用いることができる。しかし、塩酸は設備の腐食の原因となる場合があり、また、硝酸は塩酸や硫酸に比べて高価であるといった問題がある。そのため、亜鉛浸出工程において添加する酸としては硫酸を用いることが好ましい。
亜鉛浸出工程においては、pHを1.0以上に調整する。pHが1.0を下回る場合には、鉄の浸出が増加してしまい、最終的な鉄の回収率が低下するとともに、回収される亜鉛の純度が低下する。また、pHを1.0未満にするためには、多量の酸を添加する必要があるため、薬剤の消費量が増加して処理コストが増加する。
なお、後述するように、pHを下げていった際の亜鉛の浸出率は、pH=2.0で飽和し、2.0を下回ってもそれ以上増加せず、薬剤の消費量のみが増加する。そのため、亜鉛浸出工程においては、pHを2.0以上に調整することが好ましい。一方、pHが5.0を上回ると、亜鉛が浸出しにくくなるため、亜鉛浸出工程においては、pHを5.0以下に調整することが好ましい。また、pHを3.0以下とすれば、浸出率が60%程度となり、原料として再利用するのにより好適な濃度の亜鉛を浸出させることができる。そのため、pHを3.0以下に調整することがより好ましい。亜鉛の浸出率と処理コストの点で、pHを2.0以上3.0以下に調整することがさらに好ましい。なお、ここでpHは、製鉄ダストと酸とを混合した混合物のpHを指すものとする。
上記亜鉛浸出工程における酸の添加方法は特に限定されないが、例えば、ポンプを用いて行うことができる。前記ポンプとしては特に限定されず、一般的なポンプを用いることができる。なお、前記酸の添加と同様、亜鉛浸出工程以外の各工程においても、アルカリなどの薬剤を添加する際にはポンプ等の任意の装置を用いることができる。
酸を添加する際には、pHをpH計でモニターし、その結果に基づいて酸の添加量を制御することが好ましい。例えば、反応槽内で製鉄ダストに酸を添加する場合には、該反応槽内にpH計を設置し、pHをモニターすることが好ましい。なお、前記酸の添加と同様、亜鉛浸出工程以外の各工程においても、アルカリなどの薬剤を添加する際にpH計によるpHのモニタリングを行うことが好ましい。
また、製鉄ダストは比重の大きい鉄等を含み沈降しやすいため、亜鉛浸出工程において酸を添加する際には、撹拌を行うことが好ましい。例えば、反応槽内で酸を添加する場合、反応槽内に撹拌手段を設置し、撹拌しながら酸を添加することが好ましい。撹拌の方法は特に限定されないが、例えば一般的な攪拌機等を用いて行うことができる。撹拌速度は製鉄ダストと水分の比率などを考慮して、槽内の濃度分布が均一になるように決定することが望ましい。なお、前記酸の添加と同様、亜鉛浸出工程以外の各工程においても、アルカリなどの薬剤を添加する際には任意の方法で撹拌を行うことが好ましい。
亜鉛浸出工程における浸出時間(次のpH調整工程に移行するまでの時間)は、特に限定されないが、15分以上120分以下とすることが好ましい。浸出時間が15分以上とすることにより、製鉄ダストに含まれる亜鉛をより十分に浸出させることができる。一方、浸出時間を120分以下とすることにより、鉄の浸出量を抑制しつつ亜鉛の浸出をより効果的に行うことができる。
亜鉛浸出工程における反応温度については、水が凝固あるいは蒸発しない温度域で任意に設定することができる。
[pH調整工程]
次いで、前記亜鉛浸出工程で得られた処理液に第1のアルカリを添加してpHを調整する(pH調整工程)。
従来の方法においては、亜鉛浸出工程において亜鉛と共に溶出してしまった鉄を沈殿除去するために、亜鉛浸出工程の後に、1工程でアルカリを添加して鉄を沈殿させていた。この時、先にも述べたように、pHが低くすぎると鉄を十分に沈殿除去することができず、その結果、鉄の回収率が低下する。一方、pHが高すぎると、鉄だけでなく亜鉛も沈殿してしまい、その結果、亜鉛の回収率が低下する。したがって、鉄を沈殿させる際には精密にpHを制御する必要がある。
しかし、実際の処理においては、アルカリを添加してから、処理液が混合されて中和反応が完全に終了するまでにはタイムラグが存在するため、処理液のpHをモニターしながらアルカリを添加したとしても、正確にpHを調整することは困難である。
また、処理液は一定の体積を有しているため、撹拌しながらアルカリを添加したとしても、処理液全体のpHを完全に均一にすることは困難であり、pHが低い場所や高い場所が生じてしまう。例えば、鉄沈殿工程を行う反応槽において、処理液のpHをpH計でモニターしながらアルカリを添加する場合、pH計や薬剤添加ラインの位置関係により、pHを正確に制御できないという課題があった。すなわち、pH計を薬剤添加ラインの近傍に設置すると、pH計から遠い領域ではpHが十分に上がりきらず、結果として鉄回収率が低下してしまう。逆にpH計と薬剤添加ラインを離して設置すると、薬剤添加ライン近傍ではpHが上がりすぎてしまい、結果として亜鉛の回収量が低下してしまう。すなわち、亜鉛や鉄の回収率を高くするためには処理液全体のpHをできるだけ均一にする必要があった。
そこで、本発明では、後述する鉄沈殿工程における第2のアルカリの添加を行う反応槽の上流側にpH調整槽を設け、前記pH調整槽においてpH調整を行う。これにより、pH調整槽において予備的なpH調整を行った後に、次の鉄沈殿工程において鉄を沈殿させるためのpHおよびORPへと調整することができるため、鉄沈殿工程におけるpHの精度を向上させることができる。そしてその結果、最終的な亜鉛および鉄の回収率を向上させることが可能となる。
pH調整工程で用いる第1のアルカリとしては、特に限定されることなく任意のものを用いることができる。前記第1のアルカリとしては、アルカリ金属水酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物からなる群より選択される1または2以上を用いることが好ましく、中でも、水酸化カルシウムおよび水酸化ナトリウムの少なくとも一方を用いることがより好ましい。これらのアルカリは安価に入手できるため、処理コストを低減することができる。
pH調整工程においては、任意のpHに調整することができる。pH調整工程において調整するpH(pHS2)の値は、次の鉄沈殿工程において調整されるpH(pHS3)、鉄沈殿工程の反応槽の容積、撹拌速度などの諸条件を勘案して実験的に決定すればよい。しかし、pHS2がpHS3以上であると、pH調整槽内において鉄の沈殿が生じてしまう場合があるため、pHS2<pHS3とすることが好ましく、pHS2≦(pHS3−0.2)とすることがより好ましい。
pH調整槽の容積については特に制約はないが、pH調整槽が過度に大きいと、該pH調整槽内においてpHのむら(ばらつき)が生じてしまう場合があることに加え、設置スペースが増加してしまう。そのため、pH調整槽の容積(VS2)は、次の鉄沈殿工程に用いる反応槽の容積(VS3)未満(VS2<VS3)とすることが好ましく、VS2<0.8VS3とすることがより好ましく、VS2<0.6VS3とすることがさらに好ましい。
また、上述したように製鉄ダストは比重の大きい鉄等を含み沈降しやすいため、pH調整を行う際には槽内を撹拌することが好ましい。
pH調整工程における反応温度についても、処理液が凝固あるいは蒸発しない温度域で任意に設定することができる。
[鉄沈殿工程]
次いで、pH調整工程後の処理液に、第2のアルカリおよび酸化剤を添加して鉄を沈殿させる(鉄沈殿工程)。上記亜鉛浸出工程は、酸に亜鉛を浸出させることを目的としているが、鉄が浸出することを完全に防止することは困難である。そのため、処理液には、亜鉛イオン以外に鉄イオンも含まれており、酸に亜鉛を浸出させた残渣に含まれる鉄の含有率が低下し、製鉄原料としての再資源化率も低下する。また、上記処理液にアルカリを添加して亜鉛を沈殿回収すると、亜鉛だけでなく鉄も同時に沈殿するため、鉄の混入により亜鉛原料としての価値が下がり、非経済的である点も課題である。
そこで、本発明においては、亜鉛沈殿工程に先立って、処理液に含まれる鉄を選択的に沈殿させる鉄沈殿工程を行う。この工程により、処理液から鉄を分離し、後の亜鉛沈殿工程において、資源として再利用するのに十分な純度の亜鉛を分離することができる。
鉄沈殿工程で用いる第2のアルカリとしては、特に限定されることなく任意のものを用いることができる。前記第2のアルカリとしては、アルカリ金属水酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物からなる群より選択される1または2以上を用いることが好ましく、中でも、水酸化カルシウムおよび水酸化ナトリウムの少なくとも一方を用いることがより好ましい。これらのアルカリは安価に入手できるため、処理コストを低減することができる。
前記第2のアルカリとしては、pH調整工程で用いる第1のアルカリと同じものを用いてもよく、また、異なるものを用いてもよいが、装置およびプロセスが複雑になることを防ぐ観点からは、同じものを用いることが好ましい。
鉄沈殿工程において調整されるpH(pHS3)は、特に限定されず、鉄を選択的に沈殿させることができるように各種条件を考慮して任意に選択すればよい。pHS3の具体的な好適範囲について以下説明する。
図3は、25℃の水溶液中における鉄の存在状態を、横軸にpH、縦軸に酸化還元電位(ORP)をとって示した電位−pH図である。また、図4は、25℃の水溶液中における亜鉛の存在状態を示した電位−pH図である。図3における網掛け部分は鉄が沈殿する領域を示しており、同様に、図4における網掛け部分は亜鉛が沈殿する領域を示している。
図3および図4から分かるように、鉄が沈殿する領域と亜鉛が沈殿する領域は大部分において重複しており、したがって、鉄が沈殿する条件では亜鉛も同時に沈殿してしまう傾向にある。しかし、図3の太線で囲った領域、すなわち、pHが低く、ORPが酸化的条件下にある領域では、主に鉄のみを選択的に沈殿させることができる。したがって、鉄沈殿工程においては、図3の太線で囲った領域の条件となるようにアルカリを添加することが好ましい。
具体的には、鉄沈殿工程においては、pHが4.0以上6.0以下となるように第2のアルカリを添加することが好ましい(4.0≦pHS3≦6.0)。pHを4.0以上とすることにより、鉄を効率的に沈殿させることができる。また、pHを6.0以下とすることにより、亜鉛を沈殿させることなく鉄のみをより効率的に沈殿させることができる。
また、図3から明らかなように、鉄が沈殿するか否かは、pHだけでなく酸化還元電位にも依存する。そのため、鉄沈殿工程においては、さらに酸化剤を添加することによって処理液の酸化還元電位(ORP)を制御する。処理液中の鉄は、一般に2価の鉄イオンで存在しているため、処理液のORPを上昇させて(酸化的雰囲気とし)鉄イオンを3価とすることにより、確実に鉄イオンを沈殿させることができる。
前記酸化剤としては、特に限定されることなく任意のものを用いることができる。前記酸化剤としては、例えば、過酸化水素、次亜塩素酸塩、O2(酸素)含有ガス、O3(オゾン)含有ガスからなる群より選択される1または2以上を用いることが好ましい。前記次亜塩素酸塩としては、次亜塩素酸のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩からなる群より選択される1または2以上を用いることが好ましく、次亜塩素酸ナトリウムを用いることがより好ましい。また、前記O2含有ガスとしては、O2ガス自体を用いることもできるが、空気を用いることが好ましい。言い換えると、酸化剤としてのO2を含有する気体(例えば、空気)を処理液に添加することができる。同様に、前記O3としては、O3ガス自体を用いることもできるが、O3を含有する気体を用いることもできる。前記酸化剤として、空気等の気体を用いる場合には、該気体を処理液中に吹き込むことによって酸化剤の添加を行うことが好ましい。中でも、入手の容易さやコストなどの観点から、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、および空気からなる群より選択される1または2以上を前記酸化剤として用いることが好ましい。
酸化剤の添加量は、処理液のORPが鉄の沈殿に適した値となるように制御することが好ましい。なお、最適なORPの値は処理液のpHにより変動する。そのため、処理液のpHに応じた最適なORPを実験的に決定しておくことが好ましい。
鉄沈殿工程における反応温度については、処理液が凝固あるいは蒸発しない温度域で任意に設定することができる。反応時間については、処理効率を鑑み、pH調整および鉄沈殿工程で合わせて15分以上120分以下とすることが好ましい。
[第1固液分離工程]
続いて、鉄沈殿工程後の処理液を固液分離する(第1固液分離工程)。本工程では、前記処理液が、主に亜鉛イオンを含むろ液と、亜鉛浸出工程における亜鉛浸出残渣および鉄沈殿工程において沈殿した固形分(鉄沈殿物)とに分離される。
亜鉛浸出工程において生じた亜鉛浸出残渣の主な成分は鉄であり、亜鉛はほとんど含まれていない。そのため、焼結工程を経て製鉄原料として再利用することができる。また、鉄沈殿工程において生じた固形分は高純度の鉄を含んでおり、亜鉛浸出残渣と同様に、焼結工程を経て製鉄原料として再利用することができる。
そこで、前記第1固液分離工程で分離された鉄を回収する第1鉄回収工程をさらに備えることが好ましい。これにより、分離した鉄を回収し、資源として再利用することができる。
第1固液分離工程において用いる固液分離手法については特に限定されず、任意の方法を用いることができる。例えば、重力沈降分離、ろ過、遠心分離、フィルタプレスなどの方法を、単独または複数組み合わせて用いることができる。
[亜鉛沈殿工程]
次に、第1固液分離工程後の処理液に第3のアルカリを添加して亜鉛を沈殿させる(亜鉛沈殿工程)。ここで、「第1固液分離工程後の処理液」とは、第1固液分離工程において固形分を分離した後の液体部分(ろ液)を指すものとする。
上述のように、本発明においては、亜鉛浸出工程の後に鉄沈殿工程を行い、沈殿した鉄を第1固液分離工程で分離しているため、第1固液分離工程後の処理液には、ほぼ亜鉛のみが溶解している。したがって、前記処理液にアルカリを添加することにより、亜鉛のみを選択的に沈殿させることができる。
亜鉛沈殿工程で用いる第3のアルカリとしては、特に限定されることなく任意のものを用いることができる。前記第3のアルカリとしては、アルカリ金属水酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物からなる群より選択される1または2以上を用いることが好ましく、中でも、水酸化カルシウムおよび水酸化ナトリウムの少なくとも一方を用いることがより好ましい。これらのアルカリは安価に入手できるため、処理コストを低減することができる。
なお、亜鉛浸出工程において硫酸を使用した場合、前記第3のアルカリとしてアルカリ土類金属水酸化物を用いると、CaSO4などの水に不溶性の塩を形成し、亜鉛と共に沈殿する。そしてその結果、亜鉛沈殿工程で得られる固形分(沈殿物)の亜鉛濃度(純度)が低下してしまうという問題がある。これに対して、第3のアルカリとして水酸化ナトリウムを使用すれば、Na2SO4は水に可溶であるためこのような問題は生じない。そのため、亜鉛浸出工程において硫酸を使用する場合には、前記亜鉛沈殿工程における第3のアルカリとして水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。
亜鉛沈殿工程におおいて調整されるpHは、特に限定されず、亜鉛を沈殿させることができるpHであれば任意の値とすることができるが、具体的にはpHを8.0以上12.0以下とすることが好ましい。pHを8.0以上とすることにより、亜鉛を効率的に沈殿させることができる。また、pHを12.0以下とすることにより、一度沈殿した亜鉛が処理液に再溶解してしまうことを防ぎ、亜鉛の回収率をさらに向上させることができる。
亜鉛浸出工程における反応温度については、処理液が凝固あるいは蒸発しない温度域で任意に設定することができる。また、反応時間については、亜鉛の沈殿形成時間と処理効率を鑑み、15分以上120分以下とすることが好ましい。
[第2固液分離工程]
最後に、亜鉛沈殿工程後の処理液を固液分離する(第2固液分離工程)。これにより、処理液から固形分(亜鉛沈殿物)を分離する。
第2固液分離工程において用いる固液分離手法については特に限定されず、任意の方法を用いることができる。例えば、重力沈降分離、ろ過、遠心分離、フィルタプレスなどの方法を、単独または複数組み合わせて用いることができる。
以上の手順により、製鉄ダストから効率的に亜鉛を分離することができる。本発明の方法で分離された亜鉛沈殿物は、亜鉛を40%以上の高濃度で含有しており、亜鉛原料として価値が高い。そこで、上記第2固液分離工程で分離された亜鉛を回収する亜鉛回収工程をさらに設けることにより、亜鉛製錬等を経て亜鉛原料として再資源化することができる。
(第2の実施形態)
図5は、本発明の他の実施形態における亜鉛の分離方法を示すフローチャートである。前記フローチャートに示したように、本実施形態における亜鉛の分離方法は、亜鉛浸出工程(S1)とpH調整工程(S2)との間に、処理液を固液分離する第3固液分離工程(S11)をさらに備える。
先に述べた第1の実施形態においては、第1固液分離工程においては、亜鉛浸出工程で生じた亜鉛浸出残渣および鉄沈殿工程で生じた固形物を同時に固液分離するが、本実施形態では、亜鉛浸出工程後の第3固液分離工程において亜鉛浸出残渣を固液分離し、第1固液分離工程においては、鉄沈殿工程において生じた固形分のみを固液分離する。
第3固液分離工程において用いる固液分離手法については特に限定されず、任意の方法を用いることができる。例えば、重力沈降分離、ろ過、遠心分離、フィルタプレスなどの方法を、段独または複数組み合わせて用いることができる。
第3固液分離工程を行う場合、第3固液分離工程で得られた鉄(亜鉛浸出残渣)を回収する第2鉄回収工程をさらに備えることが好ましい。これにより、亜鉛浸出残渣に対して焼結工程を行い、製鉄原料として資源として再利用することができる。
なお、上記以外の点については、第1の実施形態と同様とすることができる。
(亜鉛材料の製造方法)
本発明による亜鉛材料の製造方法は、製鉄ダストから、上記亜鉛の分離方法により亜鉛を分離して回収することを特徴とする。これにより、製鉄ダストに含まれる亜鉛を濃縮して、亜鉛含有率40%以上の亜鉛材料を製造することができる。
(鉄材料の製造方法)
本発明による鉄材料の製造方法は、製鉄ダストから、上記亜鉛の分離方法により鉄を分離して回収することを特徴とする。これにより、製鉄ダストに含まれる鉄の全てを回収して再資源化することができる。
次に、本発明の亜鉛の分離方法における好適条件を検討するために、以下の実験を行った。
<亜鉛および鉄の浸出率>
表1に示す組成を有する高炉ダストに水を加えて、高炉ダスト:水=1:10(重量比)になるように調整した後、3mol/Lの硫酸をpH=1、2、3、4、5になるように添加し、60分間撹拌した後、鉄および亜鉛の浸出率を調査した。なお、実験中の反応pHは、pHコントローラにより一定になるように制御した。
図6に、浸出処理時のpHと鉄および亜鉛の浸出率との関係を示す。図6から、鉄および亜鉛の浸出率は、浸出処理時のpHの低下とともに上昇し、pH=2でそれぞれ7%、70%に達することが分かる。
図7に、硫酸浸出前後の亜鉛化合物の割合(質量%)を示す。一般に、亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、亜鉛-鉄複合酸化物(ZnFe24)のうち、酸に可溶な物質は、亜鉛および酸化亜鉛であるが、酸浸出後に高炉ダスト中の酸化亜鉛の割合が大きく減少し、ほぼ全量溶解した。したがって、特に好適なpHは2.0以上3.0以下であることが分かる。
次に、pH=2で浸出後、固液分離工程(第3固液分離工程)を行って得られた亜鉛浸出残渣の成分分析結果を表2に示す。この表に示すように、亜鉛浸出後の残渣における亜鉛含有率は、一般に製鉄原料として再資源化可能といわれる0.4%を下回っていることから、製鉄原料として全量再資源化可能であることが分かる。
さらに、上記固液分離工程(第3固液分離工程)後の処理液(ろ液)に、酸化剤としての過酸化水素水を添加しながら10質量%水酸化カルシウムをpH=3、4、5、6、7になるように添加し、60分間撹拌した後、鉄および亜鉛の沈殿率を調査した。なお、実験中の反応pHは、pHコントローラにより一定になるように制御した。
図8に、水酸化カルシウム添加後のpHと、鉄沈殿工程における鉄および亜鉛の沈殿率との関係を示す。図8から、鉄の沈殿率はpH=4を下回ると急激に低下する一方、亜鉛の沈殿率はpHとともに上昇した。特にpH=6を超えると顕著に沈殿率が上昇し、pH=7ではほぼ全量沈殿した。すなわち、亜鉛を沈殿させることなく鉄だけを選択的に沈殿するのに好適なpHはpH4.0〜6.0であることが分かった。
なお、上記実験における亜鉛および鉄の「沈殿率」とは、鉄沈殿工程に供された処理液に含まれていたZnまたはFeの量に対する、鉄沈殿工程において沈殿したZnまたはFeの量の割合であり、具体的には以下の手順で決定した。
(亜鉛の沈殿率)
第3固液分離工程後の処理液(ろ液)中のZn濃度:CZn0(mg/L)と、第1固液分離工程後の処理液(ろ液)中のZn濃度:CZn1(mg/L)とを、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)により測定した。得られた値から、下記(1)式によりZnの沈殿率を算出した。
亜鉛の沈殿率(%)=(CZn0−CZn1/CZn0)×100…(1)
(鉄の沈殿率)
亜鉛の場合と同様に、第3固液分離工程後の処理液(ろ液)中のFe濃度:CFe0(mg/L)と、第1固液分離工程後の処理液(ろ液)中のFe濃度:CFe1(mg/L)とを、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)により測定した。得られた値から、下記(2)式によりFeの沈殿率を算出した。
鉄の沈殿率(%)=(CFe0−CFe1/CFe0)×100…(2)
(発明例)
図1に示したフローに従って高炉ダストから亜鉛を分離した。すなわち、まず、表1に示した組成を有する高炉ダストに水を加えて、高炉ダスト:水=1:10(重量比)のスラリー状となるように調整した。その後、前記スラリーに3mol/Lの硫酸を添加してpH=2.0に調整し、高炉ダストに含まれる亜鉛を浸出させた(亜鉛浸出工程)。
次いで、前記亜鉛浸出工程で得られた処理液に対して、pH調整槽にて10wt%水酸化カルシウムスラリーをpH=4.5になるまで加え、撹拌した(pH調整工程)。
前記pH調整工程後の処理液に、10wt%の水酸化カルシウムスラリーをpH=5.0になるように添加し、その後、過酸化水素水を添加して、処理液に含まれる鉄を沈殿させた(鉄沈殿工程)。前記過酸化水素水の添加量は、処理液中の鉄濃度をあらかじめ定量し、全ての鉄イオンと反応するだけの量とした。また、過酸化水素添加後は、処理液を60分間撹拌した。
その後、前記鉄沈殿工程後の処理液を固液分離した(第1固液分離工程)。
得られた処理液(ろ液)に対し、2.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液をpH=9.0になるように添加し、処理液に含まれる亜鉛を沈殿させた(亜鉛沈殿工程)。
最後に、前記亜鉛沈殿工程で得られた処理液を固液分離して、沈殿した亜鉛を分離した(第2固液分離工程)。
<亜鉛および鉄の沈殿率>
上記鉄沈殿工程における亜鉛および鉄の沈殿率を図9に示す。この結果より、本発明の方法によれば、鉄沈殿工程において、亜鉛をほとんど沈殿させることなく、鉄を完全に沈殿させて除去できることが分かる。
なお、先に示した実験と同様、本実施例における亜鉛および鉄の「沈殿率」とは、鉄沈殿工程に供された処理液に含まれていたZnまたはFeの量に対する、鉄沈殿工程において沈殿したZnまたはFeの量の割合である。ただし、本実施例では第3固液分離工程を行っていないため、鉄沈殿工程に供された処理液としては、亜鉛浸出工程後の処理液を用いた。具体的には以下とおりである。
(亜鉛の沈殿率)
亜鉛浸出工程後の処理液(ろ液)中のZn濃度:CZn0(mg/L)と、第1固液分離工程後の処理液(ろ液)中のZn濃度:CZn1(mg/L)とを、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)により測定した。得られた値から、下記(1)式によりZnの沈殿率を算出した。
亜鉛の沈殿率(%)=(CZn0−CZn1/CZn0)×100…(1)
(鉄の沈殿率)
亜鉛の場合と同様に、亜鉛浸出工程後の処理液(ろ液)中のFe濃度:CFe0(mg/L)と、第1固液分離工程後の処理液(ろ液)中のFe濃度:CFe1(mg/L)とを、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)により測定した。得られた値から、下記(2)式によりFeの沈殿率を算出した。
鉄の沈殿率(%)=(CFe0−CFe1/CFe0)×100…(2)
<亜鉛含有率>
上記亜鉛沈殿工程で沈殿した沈殿物の成分分析を行った。成分分析結果を表3に示す。表3から、得られた沈殿物は、亜鉛が42.6%まで濃縮されており、亜鉛原料としての回収価値が高いとされる亜鉛含有率40%を上回っており、製鉄ダストより分離した亜鉛を亜鉛原料として再資源化できることが分かる。
(比較例)
比較のために、pH調整工程を行わなかった点以外は上記発明例と同様の条件で、高炉ダストからの亜鉛の分離を行った。
上記発明例および比較例のそれぞれについて、亜鉛除去率および鉄再資源化率を、それぞれ以下の手順で測定した。測定結果を表4に示す。
<亜鉛除去率>
前記亜鉛除去率とは、処理前の製鉄ダストに含まれる亜鉛の量に対する、第1固液分離工程において固形分(沈殿)として回収されなかった亜鉛の量の割合を指す。第1固液分離工程において回収される固形分は、亜鉛浸出工程において溶解しなかった残渣(亜鉛浸出残渣)と、鉄沈殿工程において沈殿した固形分とからなり、鉄材料として回収されるものである。したがって、この第1固液分離工程で得られた固形分に含まれていない亜鉛の量を、除去することができた亜鉛の量と見なすことができる。
すなわち、前記亜鉛除去率は、処理前の製鉄ダストのZn濃度:CZna(質量%)、第1固液分離工程で分離された固形分中のZn濃度:CZnb(質量%)を測定し、次の(3)式により算出した。
亜鉛除去率(質量%)=100−(CZnb/CZna)×100…(3)
<鉄再資源化率>
前記鉄再資源化率とは、処理前の製鉄ダストに含まれる鉄の量に対する、第1固液分離工程において固形分(沈殿)として回収された鉄の量の割合を指す。上述したように、この第1固液分離工程において回収される固形分は、亜鉛浸出工程において溶解しなかった残渣(亜鉛浸出残渣)と、鉄沈殿工程において沈殿した固形分とからなり、鉄材料として回収されるものである。言い換えると、この第1固液分離工程で固形分として回収されずに処理液側に残ったFeの量の割合が、再資源化されなかった鉄の割合と言えるから、その値を100から引くことによって鉄再資源化率を求めることができる。
すなわち、前記鉄再資源化率は、亜鉛浸出工程後の処理液を分取し、ろ過したろ液中のFe濃度:CFea(質量%)、第1固液分離工程後の処理液のFe濃度:CFeb(質量%)を測定し、次の(4)式により算出した。
鉄再資源化率(質量%)=100−(CFeb/CFea)×100…(4)
表4に示した結果から分かるように、比較例では亜鉛除去率は34%と低かったが、発明例では亜鉛除去率が比較例よりも30%以上向上した。これは、pH調整工程を行わなかった比較例では、鉄沈殿工程においてpH調整を精度良く行うことができず、FeとともにZnも沈殿してしまったためであると考えられる。その原因としては、上述したように、反応槽内の位置によるpHのばらつきや、中和反応が完了するためのタイムラグに起因するpH制御の誤差などが考えられる。また、水酸化カルシウムのようなアルカリの添加は、通常、本実施例のようにアルカリをスラリー状にして行われるため、未反応のまま水酸化カルシウムが鉄沈殿工程の後の第1固液分離工程において反応し、pHが上昇して亜鉛が沈殿してしまうことも考えられる。
また、比較例では鉄再資源化率が91%に留まっていたが、発明例では100%であった。これは、比較例では鉄沈殿工程において反応槽内の一部でpHが十分に上昇しなかった領域が生じたためと考えられる。
このように、本発明によれば、pH調整工程を設けるという簡便な方法で、製鉄ダストから高い回収率で効率よく亜鉛を分離することができるため、製鉄業において有用である。

Claims (10)

  1. 製鉄ダストに酸を添加してpHを1.0以上に調整し、前記製鉄ダストに含まれる亜鉛を浸出させる亜鉛浸出工程と、
    前記亜鉛浸出工程で得られた処理液に第1のアルカリを添加してpHを調整するpH調整工程と、
    前記pH調整工程後の処理液に、第2のアルカリおよび酸化剤を添加して鉄を沈殿させる鉄沈殿工程と、
    前記鉄沈殿工程後の処理液を固液分離する第1固液分離工程と、
    前記第1固液分離工程後の処理液に第3のアルカリを添加して亜鉛を沈殿させる亜鉛沈殿工程と、
    前記亜鉛沈殿工程後の処理液を固液分離する第2固液分離工程とを含み、
    前記pH調整工程における第1のアルカリの添加を、前記鉄沈殿工程における第2のアルカリの添加を行う反応槽の上流側に設けたpH調整槽にて行う、亜鉛の分離方法。
  2. 前記亜鉛浸出工程において、pHを2.0以上3.0以下に調整する、請求項1に記載の亜鉛の分離方法。
  3. 前記亜鉛浸出工程における浸出時間を15分以上120分以下とする、請求項1または2に記載の亜鉛の分離方法。
  4. 前記鉄沈殿工程において、処理液のpHを4.0以上6.0以下に調整する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の亜鉛の分離方法。
  5. 前記亜鉛沈殿工程において、処理液のpHを8.0以上12.0以下に調整する、請求項1〜のいずれか一項に記載の亜鉛の分離方法。
  6. 前記第1固液分離工程で分離された鉄を回収する第1鉄回収工程および前記第2固液分離工程で分離された亜鉛を回収する亜鉛回収工程の一方または両方をさらに含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の亜鉛の分離方法。
  7. 前記亜鉛浸出工程と前記pH調整工程との間に、処理液を固液分離する第3固液分離工程をさらに備える、請求項1〜のいずれか一項に記載の亜鉛の分離方法。
  8. 前記第3固液分離工程で分離された鉄を回収する第2鉄回収工程をさらに含む、請求項に記載の亜鉛の分離方法。
  9. 請求項1〜のいずれか一項に記載の亜鉛の分離方法により、製鉄ダストから亜鉛を分離して回収する、亜鉛材料の製造方法。
  10. 請求項1〜のいずれか一項に記載の亜鉛の分離方法により、製鉄ダストから鉄を分離して回収する、鉄材料の製造方法。
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