JP6742567B1 - スクロール圧縮機および冷凍サイクル装置 - Google Patents

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Abstract

固定台板および固定台板上に設けられた固定渦巻体を有する固定スクロールと、揺動台板および揺動台板上に設けられた揺動渦巻体を有し、揺動渦巻体における渦巻の歯が、固定渦巻体における渦巻の歯と噛み合わせて圧縮室となるように配置される揺動スクロールとを密閉容器内に備え、揺動渦巻体は、固定台板に設置されて圧縮室と連通するポートの開口部に対応する位置に設置され、渦巻歯の外向面が滑らかに渦巻の径方向の外向きに凸となって他の部分よりも厚い厚肉部を有し、固定渦巻体および揺動渦巻体は、厚肉部に対向する位置に、渦巻の歯の内向面側および外向面側がともに、渦巻の径方向の同じ方向に変位して巻き方向の前後に比べて変形した変形部を有するものである。

Description

この発明は、空気調和装置、冷凍機などに用いられるスクロール圧縮機および冷凍サイクル装置に関するものである。
従来、ビル用マルチエアコンなどの空気調和装置では、建物外に配置した熱源機である室外ユニットとしての室外機と建物内に配置した室内ユニットとしての室内機との間を配管接続して冷媒回路を構成する。そして、冷媒回路の冷媒を循環させ、冷媒の放熱および吸熱を利用して、空気を加熱または冷却することで、空調対象空間の暖房または冷房を行っている。
このような空気調和装置に用いられるスクロール圧縮機は、固定スクロールと揺動スクロールとが有する一対の渦巻の歯によって形成される三日月状の圧縮室が、揺動スクロールの揺動運動の回転によって中央に移動しながら容積を減じることで冷媒を圧縮している。ここで、圧縮室の圧力が吐出圧力以上となる過圧縮を抑制するため、圧縮室の途中で過圧縮された冷媒を吐出空間に逃がす“リリーフポート”を設けることが一般的である。そこで、揺動スクロールの歯厚を部分的に大きくし、その対向する位置となる固定スクロールに、リリーフポートとなるインジェクション孔を設けたスクロール圧縮機の構造が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。
特許第5978823号公報
特許文献1に開示された技術は、固定スクロールのインジェクション孔を極力大きくし、インジェクション孔を介した隣接する圧縮室同士の連通を防止しつつ、インジェクション孔から圧縮室に導入される冷媒の流量を増やす技術である。ここで、特許文献1に開示された技術では、揺動スクロールの歯厚を部分的に大きくした厚肉部に対向する固定スクロールの内向面が凹形状になっており、歯の厚さが薄くなっている。このため、固定スクロールの内向面が凹形状になる薄肉部で変位が大きくなり、圧縮室からのガス冷媒の漏れが増大し、性能が低下するおそれがある。また、圧縮動作が不安定になり、信頼性が低下するおそれがある。
この発明は、上記のような問題を解決するため、高効率かつ高い信頼性を有するスクロール圧縮機および冷凍サイクル装置を得ることを目的とする。
この発明に係るスクロール圧縮機は、固定台板および固定台板上に設けられた固定渦巻体を有する固定スクロールと、揺動台板および揺動台板上に設けられた揺動渦巻体を有し、揺動渦巻体における渦巻の歯が、固定渦巻体における渦巻の歯と噛み合わせて圧縮室となるように配置される揺動スクロールとを密閉容器内に備え、揺動渦巻体は、固定台板に設置されて圧縮室と連通する2か所のポートの開口部に対応する位置に設置され、渦巻歯の外向面が滑らかに渦巻の径方向の外向きに凸となって他の部分よりも厚い厚肉部を有し、固定渦巻体および揺動渦巻体は、厚肉部に対向する位置に、渦巻の内向面側および外向面側がともに、渦巻の径方向の同じ方向に変位して巻き方向の前後に比べて変形した変形部を有し、固定台板の2か所のポートのうち、一方のポートは、固定渦巻体の渦巻歯の内向面を壁面とする圧縮室に連通し、固定台板の2か所のポートのうち、他方のポートは、固定渦巻体の外向面を壁面とする圧縮室に連通し、一方のポートは、厚肉部の凸に対応する固定渦巻体の凹形状の内側にあり、他方のポートは、揺動渦巻体の厚肉部の凸と反対側であって、凹凸にされていない固定渦巻体のそばに形成されているものである。
この発明によれば、揺動渦巻体の厚肉部に対向する固定渦巻体の変形部および、固定渦巻体の変形部に対向する揺動渦巻体の変形部を、内向面が凹形状および外向面が凸形状とする。このため、固定渦巻体および揺動渦巻体の変形部における歯厚の減少を抑制することができる。したがって、圧縮室からのガス冷媒の漏れを抑制し、効率よく、性能を向上させることができる。また、圧縮動作を安定させ、信頼性を向上させることができる。
実施の形態1におけるスクロール圧縮機の全体構成の概略を示す図である。 実施の形態1におけるスクロール圧縮機の渦巻形状などを示す図である。 実施の形態1におけるスクロール圧縮機の厚肉部の幾何形状を説明する図である。 実施の形態1におけるスクロール圧縮機の厚肉部を中心とする部分を拡大した図である。 実施の形態1におけるスクロール圧縮機の厚肉部80とリリーフポート4bの制約条件について説明する図である。 実施の形態1におけるスクロール圧縮機の渦巻に係る圧縮動作を説明する図である。 実施の形態1におけるスクロール圧縮機の固定渦巻体の渦巻が所定の条件を満たす形状である場合の渦巻に係る圧縮動作を説明する図である。 実施の形態1におけるスクロール圧縮機の圧縮機構部の接触点について説明する図である。 実施の形態2におけるスクロール圧縮機の渦巻形状などを示す図である。 実施の形態3におけるスクロール圧縮機の渦巻形状などを示す図である。 実施の形態5に係る冷凍サイクル装置の構成例を表す図である。
以下、発明の実施の形態に係るスクロール圧縮機および冷凍サイクル装置について図面などを参照しながら説明する。以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、以下に記載する実施の形態の全文において共通することとする。そして、明細書全文に表わされている構成要素の形態は、あくまでも例示であって、明細書に記載された形態に限定するものではない。特に構成要素の組み合わせは、各実施の形態における組み合わせのみに限定するものではなく、他の実施の形態に記載した構成要素を別の実施の形態に適用することができる。また、以下の説明において、図における上方を「上側」とし、下方を「下側」として説明する。さらに、圧力および温度の高低については、特に絶対的な値との関係で高低が定まっているものではなく、装置などにおける状態および動作などにおいて相対的に定まるものとする。また、添字で区別などしている複数の同種の機器などについて、特に区別したり、特定したりする必要がない場合には、添字などを省略して記載する場合がある。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるスクロール圧縮機の全体構成の概略を示す図である。図1では、スクロール圧縮機の内部構成を示すため、断面の概略図となる。実施の形態1に係るスクロール圧縮機は、圧縮対象となる冷媒などの流体を圧縮する圧縮機構部8、回転軸6を介して圧縮機構部8を駆動する電動機構部110およびその他の構成部品を有する。そして、外郭を構成する密閉容器100の内部に、圧縮機構部8、電動機構部110などが収納された構成である。実施の形態1におけるスクロール圧縮機では、密閉容器100内において、圧縮機構部8は、上方に配置されており、電動機構部110は、圧縮機構部8よりも下方に配置されている。
密閉容器100内には、さらに、電動機構部110を挟んで対向するようにフレーム7とサブフレーム9とが収納されている。フレーム7は、電動機構部110の上側であって、電動機構部110と圧縮機構部8との間に配置されている。また、サブフレーム9は、電動機構部110の下側に配置されている。フレーム7は、焼嵌めまたは溶接などによって密閉容器100の内周面に固着されている。また、サブフレーム9は、サブフレームホルダ9aを介して、焼嵌めまたは溶接などによって密閉容器100の内周面に固着されている。
サブフレーム9の下方には、容積型ポンプを含むポンプ要素111が取り付けられている。ポンプ要素111は、密閉容器100の底部の油溜め部100aに溜められた冷凍機油を、後述する圧縮機構部8の主軸受7aなどの摺動部に供給する機器である。ポンプ要素111は、上端面で、回転軸6を軸方向に支承している。
そして、密閉容器100には、冷媒を吸入する吸入管101と、冷媒を吐出する吐出管102とが設けられている。
圧縮機構部8は、吸入管101から吸入した冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を密閉容器100内の上方に形成されている高圧部に排出する機能を有する機器である。圧縮機構部8は、固定スクロール1と揺動スクロール2とを備える。固定スクロール1は、前述したフレーム7を介して、密閉容器100に固定されている。一方、揺動スクロール2は、固定スクロール1の下側に配置されて、後述する回転軸6の偏心軸部6aに揺動自在に支持されている。
固定スクロール1は、固定台板1aと、固定台板1aの一方の面上に立設された渦巻状の突起を渦巻歯として有する固定渦巻体1bとを備える。また、揺動スクロール2は、揺動台板2aと、揺動台板2aの一方の面上に立設された渦巻状の突起を渦巻歯として有する揺動渦巻体2bとを備える。固定スクロール1および揺動スクロール2は、固定渦巻体1bと揺動渦巻体2bとを逆位相で噛み合わせた対称渦巻形状の状態で、密閉容器100内に配置されている。そして、固定渦巻体1bと揺動渦巻体2bとの間の空間は、回転軸6の回転に伴い、半径方向外側から内側へ向かうにしたがって、容積が縮小する圧縮室71となる。
固定スクロール1は、吐出空間72に連通する吐出ポート4aおよびリリーフポート4bを有する。吐出ポート4aおよびリリーフポート4bは、固定台板1aを吐出空間72から圧縮室71まで貫通し、連通させる孔である。このため、吐出ポート4aおよびリリーフポート4bは、圧縮室71側に開口部を有する。そして、吐出ポート4aは、吐出バルブ10aを備える。また、リリーフポート4bは過圧縮リリーフバルブ10bを備える。実施の形態1のスクロール圧縮機は、リリーフポート4bを2か所に有しているが、1か所または2か所より多くても構わない。
フレーム7は、固定スクロール1を固定配置し、揺動スクロール2に作用するスラスト力を軸方向に支持するスラスト面を有する。フレーム7は、吸入管101から吸入された冷媒を圧縮機構部8内に導く導入流路7cが貫通形成されている。また、フレーム7上には、揺動スクロール2の旋回運動中の自転を防止するためのオルダムリング12が配置されている。
電動機構部110は、回転軸6に回転駆動力を供給する駆動機器である。電動機構部110は、電動機固定子110aおよび電動機回転子110bを備える。電動機固定子110aは、外部から電力を得るために、フレーム7と電動機固定子110aとの間に存在するガラス端子(図示せず)とリード線(図示せず)とで接続されている。また、電動機回転子110bは、回転軸6に焼嵌めなどによって固定されている。また、スクロール圧縮機の回転系全体のつり合いをとるため、回転軸6には第1バランスウェイト60が固定され、電動機回転子110bには第2バランスウェイト61が固定されている。
回転軸6は、上部の偏心軸部6aと、中間部の主軸部6bと、下部の副軸部6cとで構成されている。偏心軸部6aは、回転軸6の軸心に対して偏心している。偏心軸部6aは、バランスウェイト付スライダ5と揺動軸受2cとを介して揺動スクロール2に嵌合しており、回転軸6の回転により揺動スクロール2が揺動運動するようになっている。主軸部6bは、フレーム7に設けられた円筒状のボス部7bの内周に配置された主軸受7aにスリーブ(図示せず)を介して嵌合しており、冷凍機油による油膜を介して主軸受7aと摺動する。主軸受7aは、銅鉛合金などの滑り軸受に使用される軸受材料を圧入するなどしてボス部7b内に固定されている。
サブフレーム9の上部には玉軸受からなる副軸受3を備える。副軸受3は、電動機構部110の下部で回転軸6を半径方向に軸支する。ここで、副軸受3は、玉軸受以外の別の軸受構成によって軸支してもよい。副軸部6cは。副軸受3と嵌合され、冷凍機油による油膜を介して副軸受3と摺動する。主軸部6bおよび副軸部6cの軸心は、回転軸6の軸心と一致している。
ここで、密閉容器100内の空間を、次のように定義する。密閉容器100の内部空間のうち、フレーム7より電動機回転子110b側の空間を第1空間73とする。また、フレーム7の内壁と固定台板1aとにより囲まれた空間を第2空間74とする。
図2は、実施の形態1におけるスクロール圧縮機の渦巻形状などを示す図である。次に、密閉容器100の内部における圧縮機構部8内の構成などについて、さらに説明する。固定渦巻体1bおよび揺動渦巻体2bにおける渦巻歯の噛み合わせによって、固定渦巻体1bと揺動渦巻体2bの間に複数形成される空間が、前述した圧縮室71である。そして、揺動渦巻体2bは、渦巻の壁面において中心側と反対側を向く外向面の途中において、リリーフポート4bの開口部に対向する位置に、揺動渦巻体2bの外向面と滑らかに接続する壁面が凸形状の曲線に形成された厚肉部80を備える。実施の形態1のスクロール圧縮機では、3円弧を組み合わせて凸状とした厚肉部80とするが、4円弧以上または曲率が連続的に変化する曲線などの形状の厚肉部80であってもよい。また、固定渦巻体1bは、リリーフポート4bおよび厚肉部80に対応した位置に、渦巻形状が部分的に変形した変形部81aを有する。また、揺動渦巻体2bは、変形部81aに対応した位置に、渦巻形状が部分的に変形した変形部81bを有する。変形部81aおよび変形部81bについては、後にさらに説明する。ここで、図2では、対称の位置にある三日月形状の圧縮室71に1か所ずつ合計2か所のリリーフポート4bを設けているが、この限りではない。また、2か所のリリーフポート4bのうち、一方のリリーフポート4bは固定渦巻体1bの内向面を壁とする圧縮室71に連通させ、他方のリリーフポート4bは固定渦巻体1bの外向面を壁とする圧縮室71に連通させて、圧縮室71が対称となるようにしている。ただし、これに限定するものではない。
図3は、実施の形態1におけるスクロール圧縮機の厚肉部の幾何形状を説明する図である。前述した厚肉部80に関して、揺動渦巻体2bの外向面と滑らかに接続する凸形状であるものとした。ここで、「滑らかに接続する」とは、幾何学的には、図3中に示すように、隣接する2つの円弧の接続点および隣接する2つの円弧による曲率の中心座標の各点の3点が、一直線上に並ぶことを意味する。また、ここでは、揺動渦巻体2bの外向面と接続するとしているが、厚肉部80は、揺動渦巻体2bと一体化しており、厚肉部80が有する壁面も揺動渦巻体2bの外向面の一部である。図2および図3に示すように、2つの厚肉部80は、いずれもインボリュート曲線などをベースにした渦巻形状の揺動渦巻体2bに対して、特定の部位のみ外側に凸に膨らんだ形状となっている。そして、図2に示すように、2か所のリリーフポート4bのうち、外側が固定渦巻体1bに、内側が揺動渦巻体2bに挟まれた一方のリリーフポート4bは、揺動渦巻体2bの凸に対応する固定渦巻体1bの凹形状の内側にある。一方、外側が揺動渦巻体2bに、内側が固定渦巻体1bに挟まれた他方のリリーフポート4bは、揺動渦巻体2bの凸と反対側であって、凹凸になっていない固定渦巻体1bのそばにある。
図4は、実施の形態1におけるスクロール圧縮機の厚肉部を中心とする部分を拡大した図である。厚肉部80は、前述したように、揺動渦巻体2bのうち、揺動渦巻体2bの外向面が軸方向から見たときに巻き方向前後をつなぐ仮想線(図3などにおいて点線で表したインボリュート曲線など。以下、同じ)よりも外側の位置に、凸形状の面を有し、渦巻の歯が厚くなった部分である。凸状になった部分で、リリーフポート4bの開口部を開閉することができる。3円弧以上または曲率が連続的に変化する曲線などの凸形状を有する厚肉部80の場合、渦巻の巻き方向に対し、インボリュート曲線などの渦巻の曲線、厚肉部80の外側に曲率中心を有する円弧(たとえば、図4のrout_1)、厚肉部80の内側に曲率中心を有する円弧(たとえば、図4のrout_2)、厚肉部80の外側に曲率中心を有する円弧(たとえば、図4のrout_3)、インボリュート曲線などの渦巻の曲線の順に線が接続され、厚肉部80の凸形状となる。
スクロール圧縮機の駆動により、揺動スクロール2は揺動運動を行う。揺動運動の過程において、固定渦巻体1bが揺動渦巻体2bの厚肉部80と接触する部分は、外向面および内向面ともに、巻き方向の前後に比べて径方向の同じ方向に変位するように変形した変形部81aとなる。したがって、固定渦巻体1bの変形部81aにおける内向面は、変形部81aの前後をつなぐ仮想線(図4などにおいて点線で表したインボリュート曲線など。以下、同じ)よりも凹んだ形状の面となる。また、変形部81aにおける外向面は、前後をつなぐ仮想線よりも凸となった形状の面となる。固定渦巻体1bの変形部81aの形状も、揺動渦巻体2bの厚肉部80と同数の円弧からなる。同様に、揺動渦巻体2bにおいて、揺動運動の過程において、固定渦巻体1bの固定渦巻体1bの変形部81aと接触する部分は、揺動渦巻体2bも内向面および外向面ともに、巻き方向の前後に比べて径方向の同じ方向に変位するように変形した変形部81bとなる。
ここで、固定渦巻体1bおよび揺動渦巻体2bの渦巻の巻き方向を伸開角で表す。伸開角は巻き角といわれることもある。伸開角は、基礎円の中心のまわりで、糸をほどいたときの基礎円と糸との間でできる角度である。実施の形態1の固定渦巻体1bおよび揺動渦巻体2bでは、基礎円に巻かれた糸を張りつつ、ほどいていったときの糸の先端が描く軌跡である円の伸開線が渦巻の形状となる。そして、基礎円の半径をaとすると、(x,y)で表される直交座標系において、伸開線上の点の座標は、x=a(cos(θ)+θ・sin(θ))およびy=a(sin(θ)−θ・cos(θ))で表すことができる。このときのθが、伸開角となる。したがって、固定渦巻体1bおよび揺動渦巻体2bの渦巻における位置は伸開角と対応している。このため、渦巻上の位置は、伸開角を用いて表すことができる。
ここで、渦巻の形状として、単純な円の伸開線をもとにした形状以外に、たとえば、楕円に変形したスクロールなどを用いる場合も考えられる。このような場合も、渦巻の巻き線の中心を決めることが可能であり、その周りの角度を、伸開角θとすることができる。
また、固定渦巻体1bおよび揺動渦巻体2bの渦巻は歯であり、径方向に厚みを有する。歯の厚みを考慮する場合には、中心線を円の伸開線としたとき、中心側を向いた面となる内向面による線上の点の座標(x,y)を、x=a{cos(θ)+(θ−α)・sin(θ)}およびy=a{sin(θ)−(θ−α)・cos(θ)}と表してもよい。そして、中心側と反対側である外側を向いた面となる外向面による線上の点の座標(x,y)を、x=a{cos(θ)+(θ+α)・sin(θ)}およびy=a{sin(θ)−(θ+α)・cos(θ)}と表してもよい。
さらに、実施の形態1における揺動渦巻体2bおよび固定渦巻体1bにおける渦巻の形状は、基礎円のインボリュート曲線で示される形状である。しかし、これに限定するものではない。たとえば、圧縮室71の形成が可能な代数螺旋による形状など、他の形状であってもよい。
たとえば、揺動渦巻体2bの厚肉部80の位置における伸開角が伸開角θ[rad]とすると、固定渦巻体1bが有する変形部81aの位置における伸開角は、θ+(2n−1)π[rad]となる。また、揺動渦巻体2bが有する変形部81bの位置における伸開角は、θ+2nπ[rad]となる。ただし、nは1以上の自然数とする。図4に示すように、厚肉部80および変形部81の円弧について、内向面における凹形状の曲率半径をrinとし、外向面の凸形状の曲率半径をroutとする。また、揺動半径をeとする。このとき、厚肉部80および変形部81で対向する凹凸面において、対応する円弧の曲率半径は、すべての円弧部分において、rin=rout+eの関係が成立する。したがって、内向面側の円弧の曲率半径が、外向面側の円弧の曲率半径よりも揺動半径分大きい。図4では、rinとroutとについて、同じ添字の番号同士の円弧が対応する円弧である。
ここで、厚肉部80は、ある範囲にわたって、インボリュート曲線などの仮想線よりも外側にある。したがって、厚肉部80の位置を伸開角θ[rad]で示したが、伸開角θ[rad]に係る位置だけに厚肉部80があるわけではなく、伸開角θ[rad]の前後のある範囲にわたって厚肉部80があるという意味である。典型的な厚肉部80は、図4のrout_2のように、曲率の中心座標が中心点側にあり、外側に凸となった円弧の箇所に最も外側に凸となる位置がある。この位置における伸開角が、厚肉部80の伸開角θ[rad]である。
また、厚肉部80よりも外側にある変形部81aは、厚肉部80の範囲よりも広い範囲にわたって形成される。径方向に複数の変形部81aがある場合は、外側にある変形部81aほど、変形している形状の範囲は広くなる。
厚肉部80および変形部81bにおいて、前述した仮想線からの径方向のずれ量を変位距離とする。変形部81bのθ+(2n−1)π[rad]における内向面および外向面の変位距離は、厚肉部80の伸開角θ[rad]における変位距離と同じである。このため、厚肉部80の外側の変形部81bが形成された部分の径方向の歯の厚みは、変形部81bの前後の仮想線に基づいて形成された渦巻の歯の径方向の厚みと同じになっている。したがって、実施の形態1のスクロール圧縮機では、渦巻の歯厚が薄くなる部分ができず、変形部81における歯厚の減少を抑制することができるため、歯の変形が生じにくい。また、変形部81bは、厚肉部80と径方向の変位距離は同じである一方、より広い範囲にわたって曲線形状に変形している。このため、変形部81bの外側の凸形状は、厚肉部80に比べて曲率半径の大きい緩やかな曲面で構成される。したがって、変形部81bの変形は、さらに生じにくくなる。
次に、低圧縮比運転など、スクロール圧縮機のいかなる運転条件でも、リリーフポート4bを機能させるための、厚肉部80の位置に関する条件について説明する。固定渦巻体1bの内向面と揺動渦巻体2bの外向面とによる圧縮室71に連通するリリーフポート4bを開閉する厚肉部80のうち、1か所は、「θ>揺動渦巻体終点角−3π−(固定渦巻体終点角−揺動渦巻体終点角)[rad]」を満たす伸開角θの位置にあることが望ましい。また、固定渦巻体1bの外向面と揺動渦巻体2bの内向面とによる圧縮室71に連通するリリーフポート4bを開閉する厚肉部80のうち、1か所は、「θ>揺動渦巻体終点角−2π[rad]」を満たす伸開角θの位置にあることが望ましい。これにより、すべてのリリーフポート4bは、厚肉部80により開閉される。
厚肉部80は、軸方向にみて、凸形状は径方向に伸開角θでインボリュート渦巻の部分から最も径方向に突出し、外に向かって丸い頂部となっており、その頂部から前後に角度がずれるにつれてインボリュート渦巻から径方向への突出量が少なくなり、たとえば、伸開角θから0.05〜0.2[rad]度離れた位置で突出がなくなって、渦巻におけるインボリュート曲線で形成される部分につながる。したがって、「伸開角θにおける揺動渦巻体2bの歯厚=インボリュート渦巻の径方向の厚み+径方向の突出量であり伸開角θにおける揺動渦巻体2bの渦巻の厚み>リリーフポート4bの径方向の長さ>インボリュート渦巻の径方向の厚み」の関係である。ここで、1か所のリリーフポート4bが複数孔で構成される場合は、その最も内側の穴の内側位置と、最も外側の穴の外側位置との距離をポートの径方向の長さとする。
図5は、実施の形態1におけるスクロール圧縮機の厚肉部80とリリーフポート4bの制約条件について説明する図である。ここで、rpは、リリーフポート4bの半径とする。また、rtは、厚肉部80のうち、外向面よりも内側に中心をもつ円弧の半径とする。さらに、Ltは、厚肉部80の最大厚さとする。このとき、リリーフポート4bは、圧縮室71を跨ぐと、圧力が高い圧縮室71から圧力が低い圧縮室71へガス冷媒の漏れが生じる。このため、Lt>2rpおよびすべてのrtに対してrt>rpの関係が成立するようにすることが望ましい。
図6は、実施の形態1におけるスクロール圧縮機の渦巻に係る圧縮動作を説明する図である。次に、スクロール圧縮機の動作について説明する。図6(a)は、回転位相が0°または360°の状態を表す。また、図6(b)は、回転位相が90°の状態を表す。さらに、図6(c)は、回転位相が180°の状態を表す。そして、図6(d)は、回転位相が270°の場合の渦巻配置の位置関係をそれぞれ示している。図6に示す通り、スクロール圧縮機が圧縮を行う際、固定渦巻体1bおよび揺動渦巻体2bのそれぞれの外向面と内向面とが、互いに相対する内向面と外向面とに接しながら動作する。
図7は、実施の形態1におけるスクロール圧縮機の固定渦巻体の渦巻が所定の条件を満たす形状である場合の渦巻に係る圧縮動作を説明する図である。固定渦巻体1bの渦巻が、「固定渦巻体終点角=揺動渦巻体終点角+π[rad]」を満たす形状の場合、図7に示すように、1つの厚肉部80で、固定渦巻体1bの内向面が形成する圧縮室71に連通するリリーフポート4bと、固定渦巻体1bの外向面が形成する圧縮室71に連通するリリーフポート4bの2つを開閉することができる。
電動機構部110の電動機固定子110aに通電されると、電動機回転子110bが回転力を受けて回転する。それに伴い、電動機回転子110bに固定された回転軸6が回転駆動される。回転軸6の回転運動は、偏心軸部6aを介して揺動スクロール2に伝達される。揺動スクロール2の揺動渦巻体2bは、オルダムリング12によって自転が規制されながら、揺動半径で揺動運動する。ここで、揺動半径とは、主軸部6bに対する偏心軸部6aの偏心量を意味している。
次に、スクロール圧縮機内における冷媒の流れについて説明する。図1に示す矢印が、スクロール圧縮機内の冷媒の流れを示している。電動機構部110の駆動に伴い、冷媒回路を循環する冷媒が、吸入管101を介して密閉容器100内の第1空間73に流入する。第1空間73に流入した低圧冷媒は、フレーム7内に設置された導入流路7cを通って第2空間74に流入する。第2空間74に流入した低圧冷媒は、圧縮機構部8の揺動渦巻体2bおよび固定渦巻体1bの相対的な揺動動作に伴って、圧縮室71へと吸い込まれる。圧縮室71に吸い込まれた冷媒は、前述した図4に示すように、揺動渦巻体2bおよび固定渦巻体1bの相対的な動作に伴う圧縮室71の幾何学的な容積変化によって、低圧から高圧へと昇圧される。そして、高圧となった冷媒は、固定スクロール1の吐出ポート4aを通過し、吐出バルブ10aを押し開けて、吐出空間72内に吐出される。ここで、圧縮室71内の圧力が、吐出ポート4aへ到達する前に吐出圧力に達した場合、圧縮室71内のガス冷媒は、圧縮過程に設けたリリーフポート4bを通過し、過圧縮リリーフバルブ10bを押し開けて吐出空間72内に吐出される。吐出ポート4aおよび過圧縮リリーフバルブ10bから吐出空間72に吐出された冷媒は、吐出管102から高圧冷媒として圧縮機外部へと吐出される。
図8は、実施の形態1におけるスクロール圧縮機の圧縮機構部の接触点について説明する図である。図8は、ある回転位相φからφ+50°までの10°ごとの圧縮過程を示している。ここで、図8ではリリーフポート4bを省略している。前述したように、揺動渦巻体2bの厚肉部80並びに揺動渦巻体2bおよび固定渦巻体1bの変形部81は、3円弧以上で滑らかにインボリュート曲線と接続された形状を有する。そして、一部の回転位相では、揺動渦巻体2bおよび固定渦巻体1bが接触点82において接触して、閉じた空間に圧縮室71ができる。このとき、実施の形態1のスクロール圧縮機では、図8に示すように、φ+20°およびφ+30°の圧縮時において、揺動渦巻体2bおよび固定渦巻体1bの各渦巻が、厚肉部80およびインボリュート曲線における2か所の部分で接触し、接触点82が3点となる。このため、揺動渦巻体2bおよび固定渦巻体1bに厚肉部80および変形部81がないインボリュート曲線のみで形成された渦巻の場合よりも、接触点82が増える。接触点82が増えることにより、圧縮室71からのガス冷媒の漏れを抑制することができる。また、接触点82が増えることで、1か所の接触点82あたりに加わる圧力が低減するため、さらに冷媒漏れの抑制効果が高まる。
以上のように、実施の形態1のスクロール圧縮機によれば、揺動渦巻体2bに厚肉部80を設けることで、リリーフポート4bの径を拡大することができる。リリーフポート4bの径を拡大することで圧力損失を抑制することができ、過圧縮損失を低減することができる。ただ、従来の技術では、揺動渦巻体2bの厚肉部80に対向する固定渦巻体1bは、内向面のみが凹形状に変形していた。このため、変形部分における歯厚が、渦巻の歯の他の箇所よりも薄くなっていた。一方で、実施の形態1のスクロール圧縮機では、揺動渦巻体2bの厚肉部80に対向する固定渦巻体1bは、内向面が凹形状で外向面が凸形状となっている変形部81を有し、局所的な歯厚の減少を抑制している。このため、固定渦巻体1bの変形部81aおよび変形部81bでの変位の増大を抑制することができ、圧縮室71からのガス冷媒の漏れが抑制することができるので、性能を向上させることができる。また、圧縮動作を安定化させることができる。
また、実施の形態1のスクロール圧縮機は、圧縮室71を形成する接触点82が増えるので、圧縮室71からのガス冷媒の漏れの低減および接触点82あたりの圧力を低減することができる。また、厚肉部80の応力集中を緩和することができる。揺動渦巻体2bの厚肉部80と対向する固定渦巻体1bが、内外向面ともに径方向に凸とした変形部81bを有することで、渦巻の変位や根元応力を抑制することができる。
また、実施の形態1のスクロール圧縮機は、2か所のリリーフポート4bを有する。そして、一方のリリーフポート4bは、固定渦巻体1bの内向面を壁とする圧縮室71に連通し、他方のリリーフポート4bは、固定渦巻体1bの外向面を壁とする圧縮室71に連通することで、対称となる圧縮室71にリリーフポート4bが対応することで、過圧縮した流体を安定して排出することができる。このとき、各リリーフポート4bの開口部を厚肉部80で開閉できるようにすることで、圧縮効率を高めることができる。
また、実施の形態1のスクロール圧縮機における厚肉部80および変形部81は、複数の円弧の組み合わせによって、インボリュート線などの渦巻の形状に滑らかに連続的に接続された形状である。このため、厚肉部80と変形部81との接触などを安定して行うことができ、圧縮室71の圧縮漏れなどを防ぐことができる。また、リリーフポート4bの半径rp、厚肉部80の外向面よりも内側に中心をもつ円弧の半径rtおよび厚肉部80の最大厚さLtが、Lt>2rpおよびすべてのrtに対してrt>rpの関係を満たし、厚肉部80における歯の厚さよりもリリーフポート4bが小さくなるようにする。このため、リリーフポート4bが複数の圧縮室71に跨がって、流体が漏れない。
実施の形態2.
図9は、実施の形態2におけるスクロール圧縮機の渦巻形状などを示す図である。以下、実施の形態2が実施の形態1と異なる構成を中心に説明するものとする。実施の形態2で説明しない構成は、実施の形態1で説明したことと同様である。実施の形態2のスクロール圧縮機は、リリーフポート4bの形状が、実施の形態1における形状とは異なる。図9に示すように、実施の形態2のリリーフポート4bは、開口部が扁平形状である。リリーフポート4bを扁平形状にすることで、リリーフポート4bの開口部の面積を円形の開口部の面積よりも拡大することができる。このため、実施の形態2のスクロール圧縮機は、実施の形態1のスクロール圧縮機よりも過圧縮損失を低減することができる。
実施の形態3.
図10は、実施の形態3におけるスクロール圧縮機の渦巻形状などを示す図である。以下、実施の形態3が実施の形態1と異なる構成を中心に説明するものとする。実施の形態3で説明しない構成は、実施の形態1で説明したことと同様である。実施の形態3のスクロール圧縮機は、1つの圧縮室71に連通するリリーフポート4bを複数有する。1つの圧縮室71に対して、複数のリリーフポート4bを有することで、リリーフポート4bの開口部の面積を拡大することができる。このため、実施の形態3のスクロール圧縮機は、実施の形態1のスクロール圧縮機よりも過圧縮損失を低減することができる。
実施の形態4.
前述した実施の形態1では、スクロール圧縮機は、密閉容器100の内部が低圧冷媒で満たされる低圧シェル型の圧縮機を例に示したが、これに限定するものではない。密閉容器100の内部が高圧冷媒で満たされる高圧シェル型のスクロール圧縮機でも、同様の効果を得ることができる。
また、実施の形態1〜実施の形態3では、リリーフポート4bを例にして示したが、これに限定するものではない。たとえば、リリーフポート4bの代わりに、圧縮室71に液冷媒または二相冷媒を強制注入するインジェクションポートなど、固定台板1aに設けられた他のポートに対して適用してもよい。
実施の形態5.
図11は、実施の形態5に係る冷凍サイクル装置の構成例を表す図である。ここで、図11では、冷凍サイクル装置として空気調和装置を示している。図6の空気調和装置は、室外機300と室内機200とを冷媒配管400により配管接続し、冷媒を循環させる冷媒回路を構成する。室外機300は、実施の形態1〜実施の形態4において説明したスクロール圧縮機301を有する。また、室外機300は、四方弁302、室外熱交換器303、膨張弁304および室外送風機305を有する。また、室内機200は、室内熱交換器201を有する。
スクロール圧縮機301は、前述したように、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。ここで、特に限定するものではないが、スクロール圧縮機301を、たとえば、インバータ回路などにより、運転周波数を任意に変化できるようにしてもよい。四方弁302は、冷房運転時と暖房運転時とによって冷媒の流れを切り換える弁である。
室外熱交換器303は、冷媒と空気(室外の空気)との熱交換を行う。たとえば、暖房運転時においては蒸発器として機能し、冷媒を蒸発させ、気化させる。また、冷房運転時においては凝縮器として機能し、冷媒を凝縮して液化させる。また、室外送風機305は、室外熱交換器303に室外の空気を送り込み、室外の空気と冷媒との熱交換を促す。
減圧装置となる絞り装置などの膨張弁304は冷媒を減圧して膨張させるものである。たとえば電子式膨張弁などで構成した場合には、制御装置(図示せず)などの指示に基づいて開度調整を行う。室内熱交換器201は、たとえば空調対象となる空気と冷媒との熱交換を行う。暖房運転時においては凝縮器として機能し、冷媒を凝縮して液化させる。また、冷房運転時においては蒸発器として機能し、冷媒を蒸発させ、気化させる。室内送風機202は、空調対象となる空気を室内熱交換器201に送り込み、その空気と冷媒との熱交換を促す。
以上のように、実施の形態5の冷凍サイクル装置によれば、実施の形態1および実施の形態2で説明したスクロール圧縮機301を機器として有することで、室外機300などの小型化をはかることができる。
1 固定スクロール、1a 固定台板、1b 固定渦巻体、2 揺動スクロール、2a 揺動台板、2b 揺動渦巻体、2c 揺動軸受、3 副軸受、4a 吐出ポート、4b リリーフポート、5 バランスウェイト付スライダ、6 回転軸、6a 偏心軸部、6b 主軸部、6c 副軸部、7 フレーム、7a 主軸受、7b ボス部、7c 導入流路、8 圧縮機構部、9 サブフレーム、9a サブフレームホルダ、10a 吐出バルブ、10b 過圧縮リリーフバルブ、12 オルダムリング、60 第1バランスウェイト、61 第2バランスウェイト、71 圧縮室、72 吐出空間、73 第1空間、74 第2空間、80 厚肉部、81,81a,81b 変形部、82 接触点、100 密閉容器、100a 油溜め部、101 吸入管、102 吐出管、110 電動機構部、110a 電動機固定子、110b 電動機回転子、111 ポンプ要素、200 室内機、201 室内熱交換器、202 室内送風機、300 室外機、301 スクロール圧縮機、302 四方弁、303 室外熱交換器、304 膨張弁、305 室外送風機、400 冷媒配管。

Claims (11)

  1. 固定台板および前記固定台板上に設けられた固定渦巻体を有する固定スクロールと、
    揺動台板および前記揺動台板上に設けられた揺動渦巻体を有し、前記揺動渦巻体における渦巻の歯が、前記固定渦巻体における渦巻の歯と噛み合わせて圧縮室となるように配置される揺動スクロールとを密閉容器内に備え、
    前記揺動渦巻体は、前記固定台板に設置されて前記圧縮室と連通する2か所のポートの開口部に対応する位置に設置され、渦巻歯の外向面が滑らかに渦巻の径方向の外向きに凸となって他の部分よりも厚い厚肉部を有し、
    前記固定渦巻体および前記揺動渦巻体は、前記厚肉部に対向する位置に、前記渦巻の内向面側および前記外向面側がともに、前記渦巻の前記径方向の同じ方向に変位して巻き方向の前後に比べて変形した変形部を有し、
    前記固定台板の前記2か所の前記ポートのうち、一方の前記ポートは、前記固定渦巻体の前記渦巻歯の内向面を壁面とする前記圧縮室に連通し、前記固定台板の2か所の前記ポートのうち、他方の前記ポートは、前記固定渦巻体の前記外向面を壁面とする前記圧縮室に連通し、
    前記一方の前記ポートは、前記厚肉部の前記凸に対応する前記固定渦巻体の凹形状の内側にあり、前記他方の前記ポートは、前記揺動渦巻体の前記厚肉部の前記凸と反対側であって、凹凸にされていない前記固定渦巻体のそばに形成されているスクロール圧縮機。
  2. 前記固定渦巻体および前記揺動渦巻体における前記渦巻の巻き方向を、前記渦巻の基礎円に基づく伸開角で表したときの、前記厚肉部の位置が伸開角θ[rad]に対応する位置にあるとき、自然数nにおいて、前記固定渦巻体の前記変形部は、θ+(2n−1)π[rad]に対応する位置および前記揺動渦巻体の前記変形部は、θ+2nπ[rad]に対応する位置にある請求項1に記載のスクロール圧縮機。
  3. 前記厚肉部および前記変形部は、複数の円弧を連ねて構成された曲線形状の壁面を有し、前記厚肉部と前記変形部および前記変形部と前記変形部とが対向する前記壁面において、対応する2つの円弧のうち、内向面側の前記円弧の方が、外向面側の前記円弧よりも揺動半径分大きい曲率半径を有する請求項1または請求項2に記載のスクロール圧縮機。
  4. 前記揺動渦巻体は、前記一方の前記ポートと前記他方の前記ポートとに対応して、2つの前記厚肉部を有し、
    前記固定渦巻体および前記揺動渦巻体は、前記2つの前記厚肉部のそれぞれに対向する位置に前記変形部を有する請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のスクロール圧縮機。
  5. すべての前記ポートが、前記揺動渦巻体が有する前記厚肉部で開閉される請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のスクロール圧縮機。
  6. 前記厚肉部および前記変形部における前記壁面の形状は、前記渦巻の巻き方向に、前記厚肉部の外側となる前記渦巻の中心と反対側に曲率中心を有する1つ以上の円弧、前記厚肉部の内側となる前記渦巻の中心側に曲率中心を有する1つ以上の円弧、前記渦巻の中心と反対側に曲率中心を有する1つ以上の円弧の順に接続される曲線であり、円弧は、隣接する2つの円弧の曲率中心と2つの円弧の接点とが一直線上に並ぶ請求項3〜請求項5のいずれか一項に記載のスクロール圧縮機。
  7. 前記ポートは、前記圧縮室と前記密閉容器内の吐出空間とを連通する請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のスクロール圧縮機。
  8. 前記ポートの半径をrp、前記厚肉部の壁面の形状を構成する円弧のうち、前記外向面よりも内側に中心をもつ半径をrt、前記厚肉部の最大厚さをLtとすると、Lt>2rpおよびrt>rpの関係を有する請求項3〜請求項7のいずれか一項に記載のスクロール圧縮機。
  9. 前記ポートの開口部が扁平形状である請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載のスクロール圧縮機。
  10. 1つの前記圧縮室に複数の前記ポートが連通する請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載のスクロール圧縮機。
  11. 請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載のスクロール圧縮機、凝縮器、減圧装置および蒸発器が配管接続され、冷媒の循環が行われる冷媒回路を有する冷凍サイクル装置。
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