JP6740974B2 - ガスセンサ - Google Patents

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Description

本発明は、固体電解質体に電極が設けられたセンサ素子を有するガスセンサに関する。
ガスセンサには、内燃機関から排気される排ガスの空燃比、酸素濃度、NOx等の特定ガス成分濃度を検出するものとして、空燃比センサ、酸素センサ、NOxセンサ等がある。
ガスセンサにおいては、ハウジングの保持穴に、単独で又は絶縁碍子を介してセンサ素子が配置され、ハウジングのかしめ部によって、保持穴とセンサ素子又は絶縁碍子との隙間に充填されたタルク等のシール材が圧縮されている。これにより、センサ素子をハウジングに保持するとともに、シール材が配置された隙間の気密性を確保している。
また、大気を基準として用いるガスセンサにおいては、ハウジングから突出するセンサ素子の検知部には、内燃機関の排気管を流れる排ガスが導入される一方、センサ素子の内部には、排気管の外部から取り込まれる大気が導入される。そして、排ガスの圧力は大気圧よりも高い状態にあるため、シール材が配置された隙間の気密性を確保することにより、この隙間を介して排ガスがセンサ素子内の大気に混入しないようにしている。
ハウジングの組成に工夫をした技術としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。特許文献1においては、ハウジングは、Feを主成分とし、少なくともCを0.02質量%以上0.15質量%以下、Crを11.5質量%以上18.0質量%以下、及びNbをCに対して質量で2倍以上含有することが開示されている。
特開2009−198422号公報
排ガスが存在する環境下で用いられる排気センサとしてのガスセンサの搭載環境は、車両燃費効率向上のためのダウンサイジング化、排気浄化触媒を、早期昇温のためにエンジンに近接して搭載すること等の影響を受けて、高温化している。一方で、ハウジングには、一般的に、フェライト系ステンレス鋼から構成される排気管と熱膨張率を合わせるために、SUS430等のフェライト系ステンレス鋼が用いられる。SUS430から形成されたハウジングは、加工性に優れるものの、550℃以上での強度低下が著しくなるといった欠点を有する。
そのため、例えば、ハウジングのかしめ部の温度が650℃に達する環境下においては、かしめ部等におけるハウジングの永久変形により、タルク等のシール材への圧縮力が低下する。そして、場合によっては、排気管内の排ガスが、シール材が配置された隙間を介して、センサ素子の内部に導入される大気に混入するおそれがある。
空燃比センサには、センサ素子の内部へ大気を導入する大気ダクトを有するものがある。この空燃比センサにおいては、空燃比が燃料リッチ側にあるときには、排ガスに晒される電極において未燃ガスが化学反応することに伴い、固体電解質体を介して、大気に晒される電極から排ガスに晒される電極へ酸化物イオン(O2-)が移動することにより、燃料リッチ側の空燃比が検出される。
大気ダクトを有する空燃比センサにおいては、空燃比が燃料リッチ側にあるときに、センサ素子の内部に導かれる大気へ排ガスが混入すると、この大気中の酸素濃度の低下により、固体電解質体を介して、大気に晒される電極から排ガスに晒される電極へ酸化物イオン(O2-)を送り込めなくなるおそれがある。この場合には、燃料リッチ側の空燃比を検出可能とする検出レンジの保証範囲を狭めるおそれがある。
また、ガスセンサの内部には、センサ素子、及びセンサ素子を加熱するヒータを、ガスセンサの外部に電気的に接続するための接点端子が配置されている。そして、センサ素子の内部に導かれる大気へ排ガスが混入すると、この排ガスが接点端子に到達するおそれがある。この場合には、接点端子が排ガス中の水分、窒素化合物等によって腐食するおそれがある。
従って、燃料リッチ側の空燃比を検出可能とする検出レンジの保証範囲を確保するため、又は接点端子の耐食性を確保するためには、550℃以上の高温環境下においても、シール材が配置された隙間の気密性を確保することが重要になる。そして、ハウジングのかしめ部の強度低下を抑制するために、ハウジングを構成する材料の組成に更なる工夫が必要であることが分かった。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、ハウジングの永久変形を抑制し、ガスセンサの高温環境下における気密性を確保することができるガスセンサを提供しようとして得られたものである。
本発明の参考態様は、保持穴(21)を有するハウジング(2)と、
固体電解質体(31)及び前記固体電解質体の両面に設けられた電極(32A,32B)を有し、前記保持穴に単独で又は絶縁碍子(4)を介して挿通されたセンサ素子(3)と、
前記保持穴と、前記センサ素子又は前記絶縁碍子との隙間(S1)に充填されたセラミック粉末からなるシール材(51)と、
前記ハウジングの一部によって前記シール材が圧縮されて、前記隙間が封止されたガスセンサ(1)において、
前記ハウジングは、650℃における0.2%耐力が80MPa以上であるフェライト系ステンレス鋼からなる、ガスセンサにある。
本発明の態様は、保持穴(21)を有するハウジング(2)と、
固体電解質体(31)及び前記固体電解質体の両面に設けられた電極(32A,32B)を有し、前記保持穴に単独で又は絶縁碍子(4)を介して挿通されたセンサ素子(3)と、
前記保持穴と、前記センサ素子又は前記絶縁碍子との隙間(S1)に充填されたセラミック粉末からなるシール材(51)と、
前記ハウジングの一部によって前記シール材が圧縮されて、前記隙間が封止されたガスセンサ(1)において、
前記ハウジングを構成する材料は、Crを15〜25質量%、Nbを0.01〜1.0質量%、Wを単独で、又はW及びMo合計で0.5〜4質量%含有し、残部が、Fe、並びにC、N、Mn及びSiを含む不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼によって構成されている、ガスセンサにある。
本発明の他の態様は、保持穴(21)を有するハウジング(2)と、
固体電解質体(31)及び前記固体電解質体の両面に設けられた電極(32A,32B)を有し、前記保持穴に単独で又は絶縁碍子(4)を介して挿通されたセンサ素子(3)と、
前記保持穴と、前記センサ素子又は前記絶縁碍子との隙間(S1)に充填されたセラミック粉末からなるシール材(51)と、
前記ハウジングの一部によって前記シール材が圧縮されて、前記隙間が封止されたガスセンサ(1)において、
前記ハウジングを構成する材料は、Crを15〜25質量%、Nbを0.01〜1.0質量%、W及びMoの少なくとも一方を単独又は合計で0.5〜4質量%含有し、残部が、Fe、並びにC、N、Mn及びSiを含む不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼によって構成されており、
前記ハウジングの母相中におけるラーベス相の析出量は、0.1質量%未満である、ガスセンサにある。
前記参考態様のガスセンサは、ハウジングが、650℃における0.2%耐力(以下、単に耐力ということがある。)が80MPa以上であるフェライト系ステンレス鋼からなることにより、550℃以上の高温環境下における、ハウジングの強度低下を抑制することができるものである。そして、このハウジングの構成により、550℃以上の高温環境下においても、ハウジングの一部がシール材を圧縮する力を維持することができ、シール材による、ハウジングの保持穴とセンサ素子又は絶縁碍子との隙間の気密性を維持することができる。
それ故、前記参考態様のガスセンサによれば、ハウジングの永久変形を抑制し、ガスセンサの高温環境下における気密性を確保することができる。
また、前記一態様及び他の態様のガスセンサは、ハウジングの組成に工夫をし、550℃以上の高温環境下における、ハウジングの強度低下を抑制することができるものである。また、ハウジングを構成する材料は、Fe(鉄)中にCr(クロム)を15〜25質量%含有するフェライト系ステンレス鋼が有する、加熱されても膨張しにくい性質である低熱膨張性を維持しつつ、550℃以上の高温時における材料の降伏点を上げることができるものである。
具体的には、550℃以上の高温時における材料の降伏点を上げるために、ハウジングを構成する材料のFe中には、Crの他に、Nb(ニオブ)が0.01〜1.0質量%、W(タングステン)及びMo(モリブデン)の少なくとも一方が単独又は合計で0.5〜4質量%含有されている。これにより、550℃以上の高温時におけるハウジングの永久変形を抑制することができる。その結果、550℃以上の高温環境下においても、ハウジングの一部がシール材を圧縮する力を維持することができ、シール材による、ハウジングの保持穴とセンサ素子又は絶縁碍子との隙間の気密性を維持することができる。
それ故、前記一態様及び他の態様のガスセンサによっても、ハウジングの永久変形を抑制し、ガスセンサの高温環境下における気密性を確保することができる。
なお、本発明の一態様において示す各構成要素のカッコ書きの符号は、実施形態における図中の符号との対応関係を示すが、各構成要素を実施形態の内容のみに限定するものではない。
実施形態にかかる、ガスセンサの断面を示す説明図。 実施形態にかかる、ガスセンサの断面の一部を拡大して示す説明図。 実施形態にかかる、ガスセンサのセンサ素子の断面を示す説明図。 実施形態にかかる、他のガスセンサの断面を示す説明図。 確認試験の試験1にかかる、ハウジングを構成する材料と降伏点との関係を示すグラフ。 確認試験の試験3にかかる、ハウジングの温度と降伏点との関係を示すグラフ。 確認試験の試験4にかかる、ハウジングの熱処理温度と常温における降伏点との関係を示すグラフ。 確認試験の試験5にかかる、焼鈍温度とラーベス相の析出量との関係を示すグラフ。 確認試験の試験7にかかる、ハウジングに生じた漏れ量を示すグラフ。
前述したガスセンサにかかる好ましい実施形態について説明する。
高温強度としての高温時の材料の降伏点を上げるための手法として、析出強化法や置換型の固溶強化法が有効であることが一般的に知られている。析出強化法としては、Nb,Mo,W,Si、Cu他の元素の添加により、炭化物又は窒化物を析出させることによって材料を強化することが一般的に知られている。析出強化法によれば、高温強度を大きく上げることができるため、高温環境下における気密性を上げるために有効である。
ただし、析出強化法によると、排気センサとしてのガスセンサが使用される高温環境下において、ハウジングを構成する材料の析出が進み、材料が脆化していく懸念がある。また、析出強化法によると、ハウジングにおいて、通電加熱を用いたかしめ工程が行われる場合には、析出物の固溶により、材料の高温強度向上の効果が得られないことがある。さらに、析出強化法によると、高温時の材料の降伏点が上がる一方、常温時の材料の変形抵抗・伸び・靱性等の加工性が著しく悪化する。そのため、冷鍛加工によるハウジングの製造が困難となり、ハウジングの生産コストが高くなるおそれがある。
置換型の固溶強化法においては、高温環境下での材料の脆化、材料の高温強度向上効果の喪失の懸念が小さく、さらには材料の加工性の悪化を抑えることができる。そして、ハウジングに必要とされる冷鍛加工性の悪化を抑えることができる。
冷鍛加工性の指標には、常温での変形抵抗・伸び・靱性などがある。置換型の固溶強化をする元素としては、Nb、W、Mo、Ta、V等がある。また、低炭素化、低窒素の他、焼きなますことによって常温における加工性を改善することができる。
また、温間鍛造や切削加工等の方法によれば、ハウジングの製造は容易になる。しかし、この方法は、製造コストの観点から、量産を前提とするガスセンサには好適でなく、冷鍛加工によってハウジングを製造する方が製造コストの観点で好適である。また、ガスセンサを排気管等に取り付ける際の締付力に対して、ハウジングのねじ部や六角部の形状を破損しないためにも、ハウジングを冷鍛加工によって製造して、そのかたさ(硬さ)を上げておくことが有効である。冷間鍛造によれば、ハウジングの材料の加工硬化によって、ハウジングの少なくとも一部がHv220以上のかたさを呈するようにすることができる。従って、常温における加工性の確保が重要となる。
前記一態様のガスセンサにおいて、ハウジングを構成する材料は、Crを15〜25質量%、Nbを0.01〜1.0質量%、W及びMoの少なくとも一方を単独又は合計で0.5〜2質量%を含有し、残部が、Fe、並びにC、N、Mn及びSiを含む不可避的不純物から構成することができる。
この場合には、ハウジングの組成に工夫をすることにより、650℃における耐力が80MPa以上である材料を構成することができる。ハウジングを構成する材料は、Fe(鉄)中にCr(クロム)を15〜25質量%含有するフェライト系ステンレス鋼が有する、加熱されても膨張しにくい性質である低熱膨張性を維持しつつ、550℃以上の高温時における材料の降伏点を上げることができるものである。
具体的には、550℃以上の高温時における材料の降伏点を上げるために、ハウジングを構成する材料のFe中には、Crの他に、Nb(ニオブ)が0.01〜1.0質量%、W(タングステン)及びMo(モリブデン)の少なくとも一方が単独又は合計で0.5〜2質量%含有されている。これにより、550℃以上の高温時における耐力が向上し、さらに高温環境下における耐力又は耐リラクセーション性(応力緩和・耐へたり性)が高まることによって、ハウジングの永久変形を抑制することができる。その結果、550℃以上の高温環境下においても、ハウジングのかしめ部がシール材を圧縮する力を維持することができ、シール材による、ハウジングの保持穴とセンサ素子又は絶縁碍子との隙間の気密性を維持することができる。
それ故、前述したハウジングを構成する材料の構成により、ハウジングの永久変形を抑制し、ガスセンサの高温環境下における気密性を確保することができる。そして、この気密性の確保により、燃料リッチ側の空燃比を検出可能とする検出レンジの保証範囲を確保すること、接点端子の耐食性を確保すること等が可能になる。
ところで、固溶強化元素添加鋼を固溶処理しても、元の材料からの加工性の悪化は避けられない。変形抵抗・伸びに対しては、加工を容易にするために、冷鍛加工時の中間焼鈍しが有効であることが知られている。しかし、中間焼鈍しによると、加工に必要なエネルギーが増加して加工費が増加し、また、部品状態でのかたさが出ないために、組付け時の外力によって変形するおそれが生じるという背反がある。
また、靱性を改善する手段として、ハウジングの加工前素材に対する複数回の伸線加工によって、結晶を微細化することが有効であることが一般に知られている。しかし、この場合にも、加工費が増加するといった背反がある。靱性を改善する手段として、鍛造前に加温等をすることが有効であることも知られている。しかし、この場合にも、加工費が増加し、温度の管理にコストが掛かるといった背反がある。
また、ハウジングの材料に0.15〜0.6質量%のNiを添加することによっても靱性を改善できる。しかし、この場合には、変形抵抗が大きくなるため、鍛造加工時の加工率を上げられず、製造コストが増加するといった懸念がある。
従って、前述したいずれの手段を選択するかは、いずれも設計的事象である。
以下に、化学組成について説明する。
(Crの含有量)
ハウジングを構成する材料全体におけるCrの含有量は、15〜25質量%であることにより、フェライト系ステンレス鋼による耐酸化性、耐食性、低熱膨張性等を確保することができる。Crの含有量が15質量%未満である場合には、耐酸化性、耐食性等を十分に発揮できないおそれがある。一方、Crの含有量が25質量%を超える場合には、変形抵抗が増加するとともに靱性が低下し、加工性が悪化するおそれがある。冷鍛加工によってハウジングを成形することを考慮すると、Crの含有量は、21質量%以下、より好ましくは18質量%以下であることが好ましい。なお、Crの含有量は、耐酸化性、加工性等を確保できる範囲で適宜設定される設計的事項である。
(Nbの含有量)
ハウジングを構成する材料がNbを含有することにより、550℃以上の高温時における材料の降伏点を上げることができる。また、ハウジングを構成する材料がNbを含有することにより、鋭敏化を抑制することもできる。耐鋭敏化には、量論的にはC及びNの含有量と等しいNbの含有量が必要となるが、NbとC及びNとの化学結合は確率的な事象となるため、ある程度過剰となるNbの含有量が必要となる。例えば、Nbの含有量は、C及びNの合計含有量の3倍程度が好適であると、SUS430LXの条件として一般に知られている。
また、ハウジングを構成する材料がNbを含有することにより、NbCの微細結晶が形成される。そして、この微細結晶が起点となって、熱処理時の組織の粗大化が抑制され、靱性の悪化が抑制される。
Nbを含有することによる、550℃以上の高温時における材料の耐力の向上は、1.0質量%程度で飽和することが知られている。Nbの含有量が多いほど変形抵抗が増加し、ハウジングの加工性が悪化するため、必要以上のNbは含有しない方が好ましい。冷間加工によってハウジングを成形することを考慮すると、Nbの含有量は1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下とすることが望ましい。
また、Nbの含有量が0.01質量%未満になると、Nbを含有することの効果が得られないおそれがある。
(W及びMoの含有量)
ハウジングを構成する材料がW及びMoの少なくとも一方を含有することにより、550℃以上の高温時における材料の耐力を上げることができる。
W及びMoの少なくとも一方の単独又は合計の含有量が0.3質量%未満である場合には、550℃以上の高温時における材料の降伏点を上げる効果が十分に得られない。一方、W及びMoの少なくとも一方の単独又は合計の含有量が2質量%を超える場合には、材料の変形抵抗が増加し、ハウジングの加工性が悪化するおそれがある。
また、Moの酸化物(Mo3O)の昇華温度は、700℃程度であるのに対し、Wの酸化物(WO3)の昇華温度は、1000℃程度である。従って、ハウジングを構成する材料としては、昇華温度がより高いWを用いることが好ましい。さらに、Wの原子量はMoの原子量よりも大きく、WはMoに比べて拡散しにくい傾向にあり、材料がWを含有することにより、材料の耐クリープ性の向上が期待でき、また、耐リラクセーション性についても改善が期待できる。
ハウジングを構成する材料の高温時の降伏点を上げる元素としては、Ta(タンタル)、V(バナジウム)等も知られている。ただし、入手性、経済的事情より、ハウジングを構成する材料は、Nb、W、Moのいずれかを、単独又は複合で含有することが好ましい。
(Mn及びSiの含有量)
Mn(マンガン)及びSi(ケイ素)は、酸化膜の剥離を抑制し、耐高温酸化性を向上させる作用を有する。特に、耐高温酸化性を重視する場合には、ハウジングを構成する材料におけるMn及びSiの含有量は、それぞれ0.05質量%以上とすることが効果的である。一方、Mn及びSiの含有量を多くすると脆性を悪化させることが知られている。そのため、冷間加工性を維持したい、本ハウジングの材料の場合には、少量であることが望ましい。Mn及びSiの合計含有量は、2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下とすることが望ましい。
(P及びSの含有量)
S(硫黄)は、切削加工時の開削成分として知られている一方、低減が困難な不可避不純物である。P(リン)及びSは、多量に含有すると、耐食性の低下及び溶接時のブローホールの発生要因となるため、少量で有ることが望ましい。ハウジングを構成する材料におけるP及びSの含有量は、0.07質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下に管理されることが望ましい。
(C及びNの含有量)
C(炭素)は代表的な固溶元素である。また、Cは、NbやTiなどの元素と炭化物を形成し、結晶粒成長を抑制する効果がある。この効果を得るためには、ハウジングを構成する材料におけるCの含有量には、0.001質量%以上が必要となる。一方、CやN(窒素)は、低減が困難な不可避不純物であり、冷間加工性や靱性の悪化、耐食性の悪化を引き起こす。よって、C及びNの含有量は、合計で0.12質量%以下、より好ましくはそれぞれ単独で0.03質量%以下とすることが望ましい。
(Niの含有量)
Ni(ニッケル)は、Cuと同様に低温靱性を改善する元素である。言い換えれば、ハウジングを構成する材料の延性脆性遷移温度を低くして、ハウジングの切断加工及び冷間鍛造加工を容易にすることができる。このような効果を得るためには、Niの含有量は0.1質量%以上とすることが望ましい。
一方、Niの含有量が多くなると、変形抵抗が増加し加工性を悪化させる。さらにNiは、オーステナイト安定化元素であるため、含有量が過大な場合には、材料の一部においてオーステナイト組織を発生させるおそれが生じる。そのため、熱膨張率が大きくなる懸念があるとともに、フェライト組織にオーステナイト組織が混合された2相ステンレス化が生じる懸念があり、材料の加工性を著しく悪化させるおそれがあるため。以上から前記ハウジングを構成する材料は、さらにNiを0.1〜0.6質量%含有していてもよい。
(Alの含有量)
前記ハウジングを構成する材料は、さらにAl及びTiの少なくとも一方を単独又は合計で0.15〜0.6質量%含有していてもよい。
ハウジングを構成する材料がAl(アルミニウム)又はTi(チタン)の少なくとも一方を含有することにより、材料の耐酸化性を向上させることができる。また、ハウジングを構成する材料がMoを含有する場合には、ハウジングを構成する材料がAl又はTiの少なくとも一方を含有することにより、材料におけるMoの拡散を抑制し、材料の耐クリープ性を向上させることができる。
<実施形態>
本形態のガスセンサ1は、図1〜図3に示すように、保持穴21を有するハウジング2と、固体電解質体31及び固体電解質体31の両面に設けられた電極32A,32Bを有するセンサ素子3と、センサ素子3を保持して保持穴21に配置された絶縁碍子4と、保持穴21と絶縁碍子4との隙間S1に充填されたセラミック粉末からなるシール材51とを備える。ガスセンサ1においては、ハウジング2のかしめ部24によってシール材51が圧縮されており、このシール材51によって隙間S1が封止されている。
(内燃機関)
ガスセンサ1は、車両の内燃機関(エンジン)の排気管7内に配置されて、排気管7内を流れる排ガスGのガス検出を行うものである。本形態のガスセンサ1は、排ガスGの組成から求まる内燃機関の空燃比を検出するA/F(空燃比)センサとして使用される。また、ガスセンサ1は、排気管7における触媒の配置箇所よりも上流側に設けることができる。
図3に示すように、A/Fセンサにおいては、固体電解質体31の一方の表面に設けられた、排ガスGに晒される検出電極32Aと、固体電解質体31の他方の表面に設けられた、大気Aに晒される基準電極32Bとの間に、限界電流特性を示すための所定の電圧が印加される。そして、排ガスGの酸素濃度が変化したときに、検出電極32Aと基準電極32Bとの間における酸化物イオン(O2-)の移動量及び移動方向が変化し、燃料リッチ側及び燃料リーン側の空燃比が、所定の検出レンジ内において検出される。
A/Fセンサにおいては、検出電極32Aと基準電極32Bとの間に電圧が印加されていることにより、空燃比が燃料リーン側にあるときには、固体電解質体31を介して、検出電極32Aから基準電極32Bへ酸化物イオン(O2-)が移動する。一方、空燃比が燃料リッチ側にあるときには、検出電極32Aにおいて未燃ガスが化学反応することに伴い、固体電解質体31を介して、基準電極32Bから検出電極32Aへ酸化物イオン(O2-)が移動する。
ガスセンサ1に取り込まれる排ガスGの圧力は、ガスセンサ1に取り込まれる大気圧よりも高いことが多い。そのため、ハウジング2の保持穴21と絶縁碍子4との隙間S1は、ガスセンサ1に取り込まれた排ガスGが、ガスセンサ1に取り込まれた大気Aに混入しないように、シール材51によって封止されている。
ガスセンサ1は、排ガスGの組成から求められる空燃比が、理論空燃比に対して燃料リッチ側にあるのか燃料リーン側にあるのかをON−OFFで判別する酸素センサとしてもよい。
(センサ素子3)
本形態のガスセンサ1においては、排気管7内に配置される側を先端側L1といい、先端側L1と反対側を基端側L2という。
図3に示すように、センサ素子3の固体電解質体31は、ジルコニアを主成分とするものであり、希土類金属元素又はアルカリ土類金属元素によってジルコニアの一部を置換させた安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニアからなり、例えば、イットリア安定化ジルコニア又はイットリア部分安定化ジルコニアから構成することができる。固体電解質体31は、所定の活性化温度において、酸化物イオン(O2-)を伝導させるイオン伝導性を有するものである。各電極32A,32Bは、酸素に対する触媒活性を示す白金、及び固体電解質体31を構成する材料を含有している。
本形態のセンサ素子3は、板状の固体電解質体31の両面に電極32A,32Bが設けられ、固体電解質体31にヒータ35が積層された積層型のものである。センサ素子3は、絶縁碍子4に挿通された状態で、ハウジング2に保持されている。ヒータ35は、セラミック基板351に対して、通電によって発熱する発熱体352を配置して構成されている。
図1及び図2に示すように、本形態のハウジング2の保持穴21と絶縁碍子4との隙間S1に充填されたシール材51としてのセラミック粉末は、タルクからなる。また、シール材51の基端側L2にはセラミック等の絶縁部材52が配置され、絶縁部材52の基端側L2には金属リング53が配置されている。そして、シール材51と絶縁部材52と金属リング53とは、ハウジング2の基端部240を内側に屈曲して形成したかしめ部24によって、基端側L2から先端側L1に向かって押圧された状態でかしめ固定されている。
また、図4に示すように、センサ素子3は、有底筒状の固体電解質体31の外側及び内側の両面に電極32A,32Bが設けられ、固体電解質体31の内側にヒータ35が配置されるコップ型のものとすることもできる。この場合には、絶縁碍子4は使用されず、センサ素子3がハウジング2の保持穴21に直接保持される。そして、保持穴21とセンサ素子3との隙間S1が、ハウジング2のかしめ部24による圧縮力を受けたシール材51によって封止される。図4のガスセンサ1のその他の構成は、図1のガスセンサ1と同様である。
(ハウジング2の形状)
図1に示すように、ハウジング2は、ガスセンサ1の筐体を構成し、ガスセンサ1を排気管7に取り付けるための部材である。ハウジング2は、中心部に保持穴21を有する筒形状に形成されており、排気管7の取付ボス部71に設けられたネジ穴711に螺合されるネジ部22と、ネジ部22の基端側L2に隣接して形成され、外周側に最も突出した外周面を構成する六角形状のフランジ部23と、フランジ部23の基端側L2に隣接して形成されたかしめ部24とを有する。
図2に示すように、ハウジング2の保持穴21は、小径穴部211と、小径穴部211の基端側L2に形成されて小径穴部211よりも拡大した大径穴部212と、小径穴部211と大径穴部212との間に形成された段部213とを有する。かしめ部24は、大径穴部212を形成しており、シール材51、絶縁部材52、金属リング53は、大径穴部212に配置される。
(絶縁碍子4)
絶縁碍子4は、センサ素子3を挿通するための挿通穴41と、挿通穴41の基端側L2に隣接して形成された凹部42と、外周側に最も突出した外周面を構成する突出部43とを有する。絶縁碍子4がハウジング2の保持穴21に配置されたときには、突出部43が大径穴部212に配置されるとともに、突出部43が金属材431等を介して段部213に対向する。また、大径穴部212には、シール材51、絶縁部材52及び金属リング53が配置され、かしめ部24が内側に屈曲されることによって、突出部43とかしめ部24との間に、シール材51、絶縁部材52及び金属リング53が圧縮される。また、センサ素子3が挿通穴41に挿通された状態で、凹部42には、セラミック粉末等の絶縁粒子44が配置される。そして、センサ素子3は、絶縁粒子44によって絶縁碍子4に保持される。
図2に示すように、ガスセンサ1においては、センサ素子3と絶縁碍子4の挿通穴41との隙間S2は、絶縁粒子44によって封止されており、絶縁碍子4とハウジング2の保持穴21との隙間S1は、シール材51によって封止されている。そして、絶縁碍子4の先端側L1に流入する排ガスGは、絶縁粒子44及びシール材51の配置によって、絶縁碍子4の先端側L1から基端側L2へ、各隙間S1,S2を通って流入することが防止される。
センサ素子3の先端部36には、一対の電極32A,32Bが配置されて、ガス検出を行うための検知部361が形成されている。検知部361には、検出電極32Aに所定の拡散速度で排ガスGを導入するための拡散抵抗部331が形成されている。検出電極32Aは、拡散抵抗部331が繋がるガス室33内に配置されている。図示は省略するが、検知部361の周囲には、多孔質のセラミックスからなる保護層が形成されている。また、センサ素子3の先端部36は、排ガスGに晒される。
図2及び図3に示すように、一対の電極32A,32Bにそれぞれ繋がるリード部321、及びヒータ35の発熱体352のリード部353は、センサ素子3の基端部37まで引き出されている。また、センサ素子3の先端部36は、絶縁碍子4及びハウジング2から先端側L1に突出し、センサ素子3の基端部37は、絶縁碍子4及びハウジング2から基端側L2に突出している。
(接点端子54)
絶縁碍子4の基端側L2には、別の絶縁碍子4Aが配置されており、別の絶縁碍子4Aには、センサ素子3及びヒータ35の電気接続を行うための複数の接点端子54が配置されている。センサ素子3の先端部36から基端部37には、センサ素子3の電極32A,32Bのリード部321及びヒータ35の発熱体352のリード部353が引き出されている。接点端子54には、電極32A,32Bのリード部321に接触するものと、発熱体352のリード部353に接触するものとがある。
各接点端子54は、導電性を有する金属によって形成されており、弾性変形による押圧力を作用させてセンサ素子3に接触している。センサ素子3の内部には、基準電極32Bへ大気Aを導入するためのダクト34が形成されている。このダクト34は、センサ素子3の基端部37において開口しており、基準電極32Bへは、センサ素子3の基端部37から大気Aが導入される。
(保護カバー61及び基端側カバー62)
図1に示すように、ハウジング2の先端側L1には、センサ素子3の先端部36を覆って、センサ素子3を保護する保護カバー61が装着されている。ハウジング2の基端側L2には、接点端子54、別の絶縁碍子4A、接点端子54に繋がるリード線55等を内部に配置するための基端側カバー62が装着されている。保護カバー61には、排ガスGが流通するための複数の排ガス流通孔611が設けられている。排ガスGは、排ガス流通孔611を通って保護カバー61内に流入して、センサ素子3の検出電極32Aに導かれるとともに、排ガス流通孔611を通って保護カバー61の外部に流出する。
基端側カバー62には、大気導入孔621が形成されており、大気導入孔621には、水の通過を阻止する一方、大気Aを通過させるフィルタ622が配置されている。基端側カバー62内に導入される大気Aは、センサ素子3の基端部37からダクト34に取り込まれ、ダクト34内の基準電極32Bに導かれる。また、基端側カバー62は、ハウジング2における、かしめ部24が形成された基端部240の外周に装着されている。また、基端側カバー62の基端部内には、リード線55を保持するブッシュ56が配置されている。
(ハウジング2の組成)
本形態のハウジング2は、650℃における0.2%耐力が80MPa以上であるフェライト系ステンレス鋼からなる。また、ハウジング2は、Fe中にCrを15〜25質量%含有するフェライト系ステンレス鋼が有する低熱膨張性を維持しつつ、550℃以上の高温時における材料の降伏点を上げることができるものである。
本形態のハウジング2は、Fe(鉄)、Cr(クロム)、Nb(ニオブ)、Ni(ニッケル)及びAl(アルミニウム)を構成元素とし、不可避的不純物としてMn(マンガン)、Si(ケイ素)、C(炭素)、N(窒素)を含有する。
ハウジング2を構成する材料は、Cr:15〜25質量%、Nb:0.01〜1.0質量%、W:0.5〜4質量%、Mn及びSi:1.5質量%以下、Ni:0.1〜0.6質量%、Al:0.15〜0.6質量%、C及びNの合計:0.03質量%以下、残部:Feの組成を有する。C、N、Mn及びSiは、不可避的不純物として扱われる。また、Wの代わりにMoが用いられてもよく、W及びMoが混合して用いられてもよい。
ハウジング2を構成する材料の結晶構造は、フェライト組織を有する体心立方格子構造である。フェライト組織は、オーステナイト組織に比べて熱によって膨張しにくい性質を有する。ガスセンサ1は、ハウジング2のネジ部22が排気管7の取付ボス部71のネジ穴711に螺合されることによって、排気管7に取り付けられる。排気管7内を通過する排ガスGは550℃以上の高温になっており、ネジ部22及びネジ穴711は550℃以上の高温に加熱される。
排気管7の取付ボス部71の多くはフェライト系ステンレス鋼によって形成されている。そのため、ハウジング2の結晶構造をフェライト組織とすることにより、ネジ部22及びネジ穴711を構成する金属の組織がフェライト組織となる。これにより、ネジ部22の熱膨張率とネジ穴711の熱膨張率とを近似させることができ、ネジ部22とネジ穴711とが熱によって付着する、言い換えれば熱によって焼き付くことを防止することができる。
本形態のハウジング2は、鍛造前の素材状態において固溶化熱処理を行って形成する。固溶化熱処理とは、Nb、W、Mn、Si、Ni、Al等の炭化物等析出物を母材であるFe中に溶け込ませることをいう。固溶化熱処理は、ハウジング2の素材を、所定の熱処理温度に加熱し、その後冷却することによって行われる。この熱処理温度が低ければ、素材加工時における徐冷中に発生した析出物を、Fe中に十分に固溶させることができない。また、この熱処理温度が高すぎれば、フェライト結晶が粗大化し、材料の伸びや靱性が悪化するおそれがある。
また、ハウジング2の母相中には、Fe2W、Fe2Mo、Fe2Nbなどの金属間化合物として知られるラーベス相(laves)が形成されている。ラーベス相は、常温及び高温時の耐力を向上させるものの、変形抵抗を増加させるとともに靱性を低下させるため、その含有量は少ない方が望ましい。ハウジング2の母材中にラーベス相を固溶するための熱処理は、850℃以上、より好ましくは850〜1000℃とすることができる。発明者らの研究の結果、ハウジング2の素材をこの熱処理温度に加熱することにより、ラーベス相含有量を低減でき、ハウジング2の材料の常温における加工性が改善することが見出された。この熱処理の温度は、ハウジング2における複数の金属間の平衡状態の計算から予測することができ、ハウジング2における添加物の組成により、ラーベス成分は適宜調整される。
ハウジング2の母相中におけるラーベス相の析出量は、0.1質量%未満であることが好ましい。この析出量が0.1質量%以上になると、材料の靱性が著しく低下するおそれがある。
ハウジング2の素材を加熱する熱処理の温度が低すぎる場合には、ラーベス成分を十分に固溶できないため、靱性が悪化する懸念がある。ただし、熱処理の温度が高すぎる場合には、NbCの析出物やフェライト結晶粒が粗大化して、材料の靱性を悪化させる。また、この場合には、熱処理時にスケール等の異物が発生する懸念もあり、熱処理のために必要な投入エネルギーが大きくなって製造コストを悪化させるおそれもある。
熱処理温度を、さらに高温の1250℃以上とすれば、ハウジング2の材料中にNbCを固溶することができる。しかし、フェライト結晶の粗大化がより懸念されるうえに、伸線加工が行われたハウジング2の素材においては、1250℃以上の熱処理を行うことは困難である。
(製造方法)
次に、ハウジング2及びガスセンサ1の製造方法について簡単に説明する。
本形態のハウジング2を製造する際には、Fe、Nb、W、Mn、Si、Ni、Al等の金属材料を溶解する工程、金属材料を所定の断面形状を有する長尺材に引き伸ばす工程、金属材料に固溶化熱処理を行う工程、長尺状の金属材料をせん断して、個々の金属素材を形成する工程、金属素材に冷間鍛造を行って、金属素材をハウジング2の形状を形成する工程、及びハウジング2の形状の金属素材に切削を行って、組付前のハウジング2を形成する工程が行われる。特に、FeにNiが含有されていることにより、金属材料の靭性が改善されており、金属材料のせん断を行う工程及び冷間鍛造を行う工程の実施を容易にすることができる。
ガスセンサ1を製造する際には、ハウジング2のかしめ部24を変形させることによるかしめ固定が行われる。ガスセンサ1の製造において、ハウジング2の組付を行うときには、図2に示すように、センサ素子3が保持された絶縁碍子4が、ハウジング2の保持穴21内に配置される。そして、絶縁碍子4とハウジング2の保持穴21との隙間S1に、シール材51、絶縁部材52、金属リング53が配置され、ハウジング2の基端部240の全周が内側に折り曲げられて、かしめ固定が行われる。このかしめ固定は、熱かしめによって行うことができ、基端部240を高温に加熱してその変形を容易にすることができる。
基端部240の加熱は、ハウジング2の基端部240に電流を流し、この基端部240における肉厚縮小部241を、550℃以上1000℃以下の温度に発熱させることによって行う。このとき、ハウジング2を構成する材料が適量のNbを含有し、C及びNの添加量が抑えられていることにより、Fe中のCrの濃度が低下することが抑制され、基端部240を構成する材料が鋭敏化することが抑制される。これにより、ハウジング2を構成する材料の耐食性が維持される。
また、ハウジング2のかしめ部24の外周に基端側カバー62を装着した後には、基端側カバー62の装着部623(図2参照)をハウジング2に溶接する場合がある。この場合には、かしめ部24は、溶接時の熱によって550℃以上1000℃以下に加熱される。このときにも、ハウジング2を構成する材料が適量のNbを含有し、C及びNの添加量が抑えられていることにより、Fe中のCrの濃度が低下することが抑制され、基端部240を構成する材料が鋭敏化することが抑制される。これにより、ハウジング2を構成する材料の耐食性が維持される。
(ハウジング2のかたさ)
本形態のハウジング2のかしめ部24のかたさは、少なくともガスセンサ1の製品出荷状態において、ビッカースかたさでHv220〜Hv400の範囲内にある。これにより、ハウジング2を構成する材料の耐力が高く、ハウジング2の永久変形を抑制することができる。このビッカースかたさは、JIS Z 2244の「ビッカースかたさ試験」に準拠して求めた値とする。このJIS Z 2244は、ISO規格のISO6507に相当する。
ハウジング2を冷間鍛造によって製造し、ハウジング2のかたさがHv220未満である場合には、常温でも耐力が低いため、ガスセンサ1の排気管への組付け時などにおいて、ネジ部22やフランジ部(六角部)23の破損が懸念される。また、かしめ部24のかたさがHv220未満である場合には、かしめ時において、かしめ部24以外の意図しない部分の変形が起こるおそれがある。一方、かしめ部24のかたさがHv400を超えるようにすることは、製造上難しく、変形に対して割れが発生する懸念があるため望ましくない。
ハウジング2を形成するための金属材料に対して、780℃程度の温度に加熱する焼鈍を行った場合に得られるビッカースかたさは、Hv160〜Hv180程度である。これに対し、本形態のハウジング2を形成するための金属材料は、850〜1000℃に加熱して固溶化熱処理を行う。これにより、ハウジング2において、Hv220以上のビッカースかたさを得ることができる。
ハウジング2を構成する材料が、前述した配合量のNb、W、Ni等を溶け込ませたものであることにより、その高温強度が改善されている。また、ハウジング2が冷間鍛造を行って形成されていることによって、ハウジング2を構成する材料の金属組織には鍛流線(ファイバーフロー)が現れている。これにより、ハウジング2のかたさを高く維持することができる。
(作用効果)
本形態のガスセンサ1においては、ハウジング2を構成する材料が前述した組成を有することにより、550℃以上の高温環境下における、ハウジング2のかしめ部24の強度低下を抑制することができる。ハウジング2を構成する材料のFe中には、Crの他に、Nbが0.01〜1.0質量%、Wが0.5〜4質量%含有されている。これにより、550℃以上の高温時におけるハウジング2の永久変形を抑制することができる。その結果、550℃以上の高温環境下においても、ハウジング2のかしめ部24がシール材51を圧縮する力を維持することができ、シール材51による、ハウジング2の保持穴21とセンサ素子3又は絶縁碍子4との隙間S1の気密性を維持することができる。
それ故、本形態のガスセンサ1によれば、ハウジング2の永久変形を抑制し、ガスセンサ1の高温環境下における気密性を確保することができる。
また、本形態のガスセンサ1は、A/Fセンサとして用いられるため、ガスセンサ1の気密性が保たれることにより、次の効果が得られる。
A/Fセンサにおいては、ハウジング2のかしめ部24の高温強度が保たれることにより、排ガスGがセンサ素子3の内部に取り込まれた大気Aへ混入することが防止される。これにより、センサ素子3のダクト34内が、大気Aではなく排ガスGによって満たされることが防止される。そのため、特に、排ガスGから求まる内燃機関の空燃比が燃料リッチ側にあるときにおいて、固体電解質体31を介して、基準電極32Bから検出電極32Aへ酸化物イオン(O2-)を送り込めなくなる事態が発生しなくなる。その結果、A/Fセンサが燃料リッチ側の空燃比を検出する際に、この燃料リッチ側の検出レンジの保証範囲を広く維持することが可能になる。検出レンジの保証範囲とは、燃料リッチ側の空燃比を、所定の誤差範囲内において検出できるレンジ(スケール)のことをいう。
また、ガスセンサ1がA/Fセンサとして用いられない場合であっても、ガスセンサ1の気密性が保たれることにより、次の効果が得られる。
ガスセンサ1においては、ハウジング2のかしめ部24の高温強度が保たれることにより、排ガスGがセンサ素子3の内部に取り込まれた大気Aへ混入することが防止される。これにより、排ガスGが、センサ素子3に接触する金属製の接点端子54に直接接触することが防止される。そのため、接点端子54が排ガスG中の水分、窒素化合物等によって腐食することが防止される。なお、この効果は、A/Fセンサ及び酸素センサのいずれにおいても得られる。
<確認試験>
(試験1)
試験1においては、ハウジング2を構成する材料と耐力との関係を測定した。図5は、Fe中に、Cr:17質量%及びNb:0.35質量%を含有する合金鋼において、Wの含有量を、0質量%、1質量%、2質量%、4質量%と変化させた場合の、650℃における耐力(MPa)の変化を示す。同図において、Wの含有量が増加するに従って耐力が上昇していることが分かる。
ここで、耐力とは、弾性限度(降伏点)を意図する。材料の中には、明確な降伏点を示さない材料も含まれるため、材料の強度の尺度として、降伏点の代わりに、0.2%耐力を用いる。0.2%耐力は、JIS Z 2241(対応国際規格:ISO6892−1)又はJIS G 0567(対応国際規格:ISO6892−2)に準拠して計測した。
ただし、Wの含有量が2質量%を超える場合には、降伏点が上昇しなくなり、2質量%において降伏点の上昇が飽和していることが分かる。また、Wの含有量が増加すると、延性等の加工性が悪化する。そのため、ハウジング2を構成する材料におけるWの含有量は、2質量%以下とすることが好ましいことが分かった。一方、Wの含有量が少なくなり過ぎると降伏点も低下するため、Wの含有量は0.3質量%以上であることが好ましい。
なお、Moも、Wと同様の性質を有している。ハウジング2を構成する材料がWの代わりにMoを含有する場合には、Moの含有量も0.3〜2質量%とすることが好ましい。
(試験2)
試験2においては、Fe中に、Cr:17質量%、Nb:0.35質量%、W:2質量%を含有する合金鋼を用いて形成した試験品のハウジング2と、Fe中にCr:17質量%を含有するステンレス鋼(SUS430)を用いて形成した比較品のハウジング2とについて、気密性の確認を行った。試験2においては、それぞれのハウジング2を用いてガスセンサ1を形成し、各ガスセンサ1における、ハウジング2の保持穴21と絶縁碍子4との隙間S1に排ガスGの漏洩が生じたか否かを確認した。
試験2においては、ハウジング2の加熱及び冷却を行うサイクルを3000サイクル実施した。このサイクルは、ハウジング2の六角部(最も外径が大きい部分)を、650℃に加熱した後、エア冷却によって50℃以下に冷却するサイクルとした。また、ハウジング2の六角部が650℃に加熱保持される状態を形成し、センサ素子3側の圧力を0.4MPaにした状態で、ハウジング2の保持穴21と絶縁碍子4との隙間S1における漏れ量を計測した。そして、隙間S1に1cc/min以上の漏洩が生じた場合には、気密性がないとした。一方、この隙間S1に生じる排ガスGの漏洩が1cc/min未満である場合には、気密性があるとした。
そして、比較品のハウジング2の場合は、気密性がないと判定され、試験品のハウジング2の場合は、気密性があると判定された。この結果より、試験品のハウジング2によれば、ハウジング2の保持穴21と絶縁碍子4との隙間S1の気密性を良好に維持できることが分かった。
(試験3)
試験3においては、Fe中に、Cr:17質量%、Nb:0.35質量%、W:2質量%を含有する合金鋼を用いて形成した試験品のハウジング2と、Fe中にCr:17質量%を含有するステンレス鋼(SUS430)を用いて形成した比較品のハウジング2とについて、温度を変化させたときの耐力の変化について確認した。また、試験品のハウジング2については、ハウジング2の素材に、約780℃に加熱した後冷却する焼鈍処理を行った試験品1と、ハウジング2の素材に、約950℃に加熱した後冷却する固溶化熱処理を行った試験品2とを準備した。比較品のハウジング2については、約780℃に加熱した後冷却する焼鈍処理を行った。試験品1,2及び比較品の耐力のグラフは、室温から700℃までの間の温度範囲について求めたものである。
図6に示すように、焼鈍処理を行った試験品1のハウジング2の場合には、広い温度範囲において、比較品のハウジング2の場合に比べて耐力が上昇している。しかし、常温における耐力も上昇していることにより、常温における加工性が悪くなる。これに対し、固溶化熱処理を行った試験品2のハウジング2の場合には、温度が高い範囲においてのみ、比較品のハウジング2の場合に比べて耐力が上昇している。そして、試験品2のハウジング2の場合には、常温における耐力が小さく抑えられていることにより、常温における加工性が良好である。従って、固溶化熱処理を行ったハウジング2を用いることにより、ガスセンサ1の高温環境下における気密性を確保することができるとともに、常温において冷間鍛造等を行う際のハウジング2の加工性を向上させることができることが分かった。
(試験4)
試験4においては、Fe中に、Cr:17.1質量%、Nb:0.35質量%、W:2.00質量%を含有する合金鋼を用いて形成した試験品のハウジング2について、ハウジング2の素材の熱処理を行う温度を変化させたときの、常温における耐力(MPa)の変化について確認した。図7に示すように、常温における耐力は、熱処理を行った温度が750℃付近である場合に高く、熱処理を行った温度が900℃に近づくに連れて低くなる。そして、熱処理を行った温度が900℃を超える場合には、耐力は変化していない。
常温における耐力が低い方が、ハウジング2を常温において冷間鍛造するときの加工性が良いと言える。なお、比較のために、Fe中にCr:16.8質量%を含有するステンレス鋼(SUS430)を用いて形成した比較品のハウジング2について、750℃付近における耐力を確認した場合も示す。比較品においては、Nb及びWが添加されていないため、常温における耐力がもともと低い。
そして、比較品のハウジング2に冷間鍛造を行う際の最大成形荷重を基準としたときに、試験品のハウジング2に冷間鍛造を行う際の最大成形荷重をどれだけ小さく抑えられるかを確認した。熱処理温度を、焼鈍を行う場合の温度である780℃にした場合には、冷間鍛造を行う際の最大成形荷重は、比較品に比べて1.1倍に増加することが分かった。一方、熱処理温度を、固溶化熱処理を行う場合の温度である900℃にした場合には、冷間鍛造を行う際の最大成形荷重は、比較品の場合の最大成形荷重に近い荷重まで抑えられることが分かった。
従って、ハウジング2を形成するための素材は、850℃以上、より好ましくは900℃以上の温度で固溶化熱処理を行うことにより、冷間鍛造を行う際の加工性を向上させることができると言える。この理由は、高温の熱処理により、Fe2WやFe2Moからなる金属間化合物の一種であるラーベス相(laves)を、ハウジング2の母相内に固溶するためである。ラーベス相の生成は高温強度の向上に寄与するものの、靱性を著しく低下させることが知られているため、0.1質量%未満であることが好ましい。
(試験5)
材料評価試験である試験5においては、固溶化熱処理(焼鈍処理)によるラーベス相の固溶状態を確認した。評価対象である材料の組成は、Cr:17質量%、Nb:0.35質量%、W:2質量%、C+N:0.02質量%、P+S:0.02質量%、Si、Mn等のその他の不可避的不純物:0.9質量%、残部:Feの組成である。また、評価対象である材料は、熱間鍛造によって、伸線材相当の粒度である、粒度番号がNo.5〜No.9の粒度に調整し、この粒度の調整を行ったものを再び熱処理(焼鈍処理)し、所定の温度において4時間保持した後、ラーベス相の固溶量を定量分析した。粒度番号は、JIS G 0551において規定される。また、JIS G 0551は、ISO規格のISO643に相当する。
図8には、熱処理温度を700〜900℃に変化させたときに、母相中に、ラーベス相がどれだけ析出されたかを示す。同図に示すように、熱処理温度が高くなるに連れて、ラーベス相の析出量(質量%)が減少し、母相中にラーベス相がより多く固溶されることが分かる。特に、熱処理温度が850℃以上になると、ラーベス相の析出量が0.1質量%未満に小さくなることが分かった。そのため、熱処理温度を850℃以上にすることにより、母相中により多くのラーベス相を固溶させて、常温における加工性を向上させることができると考える。
なお、ラーベス相を母相中に固溶する温度は、2つの金属間の平衡状態の計算からも予測が可能である。また、熱処理温度は、ハウジング2を構成する材料の組成によって変わるため、適宜、850℃よりも高い温度にすることができる。
ラーベス相の定量分析方法については種々知られているが、以下にその方法の一例を示す。
ラーベス相の定量分析方法の一つとして、抽出残渣分析法がある。この抽出残渣分析法においては、受入材及び時効材に対して試料中の析出物を抽出分離し、さらにラーベス相とその他の析出物(炭化物や窒化物など)に分離して、定量分析する。また、抽出残渣分析法においては、電解抽出を行い、具体的には、電解液として10%アセチルアセトン−1%テトラメチルアンモニウムクロライド−メタノール溶液を用い、電流密度20mA/cm2とする定電流電解法を用いる。この電解を行った後は、孔径0.2μmのニュークリポアフィルターを用いたろ過を行い、ろ液と残渣とに分離した。残渣の重量分析及びXRD分析(X線回析分析)により、NbC等の析出物とラーベス相とを分離した。
(試験6)
また、組成を検討する試験である試験6においては、評価対象である試料1〜7の組成を適宜変化させ、この組成と、0.2%耐力及び常温加工性との関係を確認した。評価対象である材料の組成及び材料への熱処理は、試験5の場合と同じである。
試料1〜7の基本的な組成は、Cr:16.8〜17.1質量%、Nb:0又は0.35質量%、W:0〜4質量%、C+N:0.02質量%、P+S:0.02質量%、Si、Mn等のその他の不可避的不純物:0.9質量%、残部:Feの組成である。また、試料1〜7においては、Wの含有量を変化させ、適宜、Mo又はNiを含有させた。
試料1〜7の組成及び試験結果を、表1に示す。
Figure 0006740974
650℃における0.2%耐力は、JIS4号試験片による静的引張を行った値として示す。0.2%耐力は、気密維持に必要な耐力として、80MPa以上である場合を良品(○)として判定し、それ以外を良品でない(×)として判定した。この0.2%耐力の判定基準は、製品形状に依存しており、絶対的なものではない。
常温加工性は、常温(20℃)における変形抵抗、常温における伸び及び延性脆性遷移温度として測定した。
常温における変形抵抗は、冷鍛加工を模擬した円柱圧縮試験(歪み速度6.0/秒)による70%圧縮時の値として示す。変形抵抗は、800MPa未満である場合を良品(○)として判定し、それ以外を良品でない(×)として判定した。この変形抵抗の判断基準は、鍛造工程に依存しており、絶対的なものではない。
常温における伸びは、JIS4号試験片による静的引張を行った値として示す。伸びは、鍛造加工において割れない場合を良品として判定した。この伸びの判定基準は、鍛造工程に依存しており、絶対的なものではない。
靱性遷移温度は、シャルピー衝撃試験(2mmVノッチ、10℃毎評価)を行った値として示す。靱性遷移温度は、伸線材の切断・鍛造加工時に割れないことを基準として、室温である25℃よりも低い場合を良品(○)として判定し、それ以外を良品でない(×)として判定した。なお、延性脆性遷移温度は、材料が一定の温度以下になると粘り強さを失い、衝撃に弱くなる温度のことをいう。シャルピー衝撃試験においては、50J/cm2のエネルギーを与えて試験を行った。
試験6の結果を示す表1において、現行のガスセンサ1のハウジング2の組成であり、Nb及びWを含まない試料1は、0.2%耐力の判定が×となった。また、Nb及びWの含有量が適切であっても、熱処理温度が780℃である試料2は、常温における伸びの判定が×となった。また、Nb及びWを含んでいても、Wの含有量が2質量%よりも多い試料5は、常温における伸びの判定が×となった。
一方、Wの含有量が1質量%又は2質量%として適切であり、熱処理温度が900℃として適切である試料3,4,7については、0.2%耐力及び常温加工性に優れることが分かった。また、Wの代わりにMoを含有する試料6、及びWと共にNiを含有する試料7についても、0.2%耐力及び常温加工性に優れることが分かった。
また、試験6の結果において、現行のガスセンサ1のハウジング2に用いられることが多い組成である試料1に比べ、適切なNb及びWを含有する試料2によれば、650℃における0.2%耐力が向上することが分かった。しかし、試料2においては、熱処理温度が780℃と低く、材料の組織内にラーベス相が残るため、常温加工性、特に靱性の悪化が著しい。
試料2に比べ、熱処理温度を900℃とした試料3,4においては、650℃における0.2%耐力の低下があったものの、常温における変形抵抗の低下、伸びの改善及び靱性遷移温度の低下による常温加工性の改善が見られた。また、試料3〜5においては、Wの含有量を変更しているが、Wの含有量が2質量%になるときに650℃における0.2%耐力が飽和し、Wの含有量が2質量%を超えると常温加工性の悪化が著しくなることが分かった。
また、試料6においては、Wの代わりにMoを2質量%含有していることにより、Wを含有する試料4と同様の0.2%耐力及び常温加工性が得られることが分かった。また、試料7においては、Wを2質量%、Niを1質量%含有することにより、常温における変形抵抗の増加があったものの、靱性遷移温度が改善されることが分かった。
(試験7)
製品評価としての試験7においては、試験6における試料1,3,4の組成を有するハウジング2の気密性を確認する試験を行った。各組成のハウジング2は冷間鍛造を行って製造した。また、各組成のハウジング2を用いたガスセンサ1を配管に装着し、配管中に、650℃であって0.4MPa(ゲージ圧)の気体を通過させたときに、ガスセンサ1のハウジング2のかしめ部24における気体の漏れ量を測定した。
図9には、試料1,3,4の組成を有する各ガスセンサ1について、漏れ量の測定を行った結果を示す。漏れ量は、標準状態における値として示す。同図に示すように、試料3,4については、漏れ量が1.0mL/minよりも少なくなり、ハウジング2における気密性が確保できることが分かった。一方、試料1については、漏れ量が1.0mL/minを超えて多くなり、ハウジング2における気密性が悪いことが分かった。従って、ハウジング2を構成する材料がWを1.02質量%又は2.00質量%含有することにより、650℃における0.2%耐力が高く、ハウジング2の気密性を高く維持できることが分かった。なお、ハウジング2を構成する材料がWを4質量%含有する場合には、常温における加工性が悪いため、ハウジング2を構成する材料におけるWの含有量は2質量%以下であることが好ましい。
本発明は、各実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。また、本発明は、様々な変形例、均等範囲内の変形例等を含む。
1 ガスセンサ
2 ハウジング
21 保持穴
24 かしめ部
3 センサ素子
31 固体電解質体
32A,32B 電極
4 絶縁碍子
51 シール材
54 接点端子

Claims (9)

  1. 保持穴(21)を有するハウジング(2)と、
    固体電解質体(31)及び前記固体電解質体の両面に設けられた電極(32A,32B)を有し、前記保持穴に単独で又は絶縁碍子(4)を介して挿通されたセンサ素子(3)と、
    前記保持穴と、前記センサ素子又は前記絶縁碍子との隙間(S1)に充填されたセラミック粉末からなるシール材(51)と、
    前記ハウジングの一部によって前記シール材が圧縮されて、前記隙間が封止されたガスセンサ(1)において、
    前記ハウジングを構成する材料は、Crを15〜25質量%、Nbを0.01〜1.0質量%、Wを単独で、又はW及びMoを合計で0.5〜4質量%含有し、残部が、Fe、並びにC、N、Mn及びSiを含む不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼によって構成されている、ガスセンサ。
  2. 保持穴(21)を有するハウジング(2)と、
    固体電解質体(31)及び前記固体電解質体の両面に設けられた電極(32A,32B)を有し、前記保持穴に単独で又は絶縁碍子(4)を介して挿通されたセンサ素子(3)と、
    前記保持穴と、前記センサ素子又は前記絶縁碍子との隙間(S1)に充填されたセラミック粉末からなるシール材(51)と、
    前記ハウジングの一部によって前記シール材が圧縮されて、前記隙間が封止されたガスセンサ(1)において、
    前記ハウジングを構成する材料は、Crを15〜25質量%、Nbを0.01〜1.0質量%、W及びMoの少なくとも一方を単独又は合計で0.5〜4質量%含有し、残部が、Fe、並びにC、N、Mn及びSiを含む不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼によって構成されており、
    前記ハウジングの母相中におけるラーベス相の析出量は、0.1質量%未満である、ガスセンサ。
  3. 前記ハウジングの母相中には、金属間化合物としてのFe2W、又はFe2W及びFe2Moのラーベス相が形成されており、前記ラーベス相の析出量は、0.1質量%未満である、請求項1に記載のガスセンサ。
  4. 前記ハウジングの母相中には、金属間化合物としてのFe2W、又はFe2W及びFe2Moのラーベス相が形成されている、請求項2に記載のガスセンサ。
  5. 前記ハウジングの、650℃における0.2%耐力は、80MPa以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスセンサ。
  6. 前記ハウジングを構成する材料は、前記Cを0.05質量%以下含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスセンサ。
  7. 前記ハウジングを構成する材料は、さらにNiを0.1〜0.6質量%含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のガスセンサ。
  8. 前記ハウジングのかしめ部のかたさは、ビッカースかたさでHv220〜Hv400の範囲内にある、請求項1〜7のいずれか1項に記載のガスセンサ。
  9. 前記センサ素子を加熱する発熱体(352)を有するヒータ(35)と、
    前記センサ素子における前記電極のリード部(321)、又は前記発熱体のリード部(353)に接触する接点端子(54)と、をさらに備える、請求項1〜8のいずれか1項に記載のガスセンサ。
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