JP6738928B1 - フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】成形性及び成形後表面形状に優れたフェライト系ステンレス鋼板を提供する。【解決手段】Cr:11.0〜25.0%、C:0.001〜0.010%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.01〜1.0%、P:0.010〜0.040%、S:0.01%以下、N:0.002〜0.020%、Al:0.003〜1.0%、Ti:0.05〜0.30%、Nb:0.03〜0.30%を含み、(1)式を満し、残部Fe及び不純物からなり、鋼中の化合物に含まれるTi,Nb,PをそれぞれXTi、XNb、XPとしたときに、XTi:0.035〜0.060%、XNb:0.010〜0.025%、XP:0.001〜0.010%を満足し、結晶粒度番号が9.0以上、平均塑性ひずみ比rAveが1.5以下、面内異方性Δrが−0.4〜0.1であるフェライト系ステンレス鋼板を採用する。Ti/48+Nb/93≧2×(C/12+N/14)…(1)【選択図】なし

Description

本発明は、成形性並びに成形後表面形状に優れるフェライト系ステンレス鋼板に関する。
ステンレス鋼は、耐食性、加工性、美麗性等に優れることから家電、厨房品、建材等広く用いられている。特に、フェライト系ステンレス鋼は、高価かつ価格変動の激しいNiを含有しない、もしくは含有量が極めて少ないため、コストパフォーマンスに優れる材料として近年需要が増加している。しかしながら、成形用途に使用する場合、成形性とともに、成形後の表面形状が課題となる。
フェライト系ステンレス鋼は、深絞り性を活用して製品形状へ成形される。深絞り性の向上には、固溶炭素および固溶窒素を低減することが有効である。このため、製錬段階で炭素及び窒素を極力低減した上で、さらにTiやNbを添加して炭窒化物として微細析出する手法が広く用いられ、いわゆる、高純度フェライト系ステンレス鋼が開発されている。合金コストは、Nbに比べてTiが安価である。深絞り性の向上には、材料の異方性、具体的にはその指標となる塑性ひずみ比(以下、r値と言う場合がある)の活用が有効である。板面内の塑性ひずみ比の異方性が大き過ぎる場合、前述した表面形状の問題を生じるとともに、図1に示すように成形余り部での高さの差、いわゆる、「耳」が生じる場合がある。不要部である耳は、切り落とされることとなる。したがって、耳が大きい場合には、歩留りロスが大きい。このように、成形用フェライトステンレス鋼板は、塑性ひずみ比の異方性の調整により深絞り性に優れることが求められる。
次に、成形加工後の表面形状について述べる。ここで問題とする表面形状とは、成形後の鋼板表面に生じる微細な凹凸(肌荒れ)を指す。肌荒れは、一般的に結晶粒径に比例する。C,Nを低減させて成形性の向上を図った高純度フェライト系ステンレス鋼は、フェライト系ステンレス鋼の中でも結晶粒が大きくなりやすい傾向にある。
家電製品の筺体あるいは器物のように比較的厳しい成形が行われ、肌荒れが顕著となる用途では、SUS430LXに代表される高純度フェライト系ステンレス鋼が用いられることが多い。しかし、結晶粒径が大きく、肌荒れが大きい場合、研磨による肌荒れの除去が一般的に行われる。これらは、歩留りロスであるとともに、環境面からも問題となっていた。なお、固溶強化元素である炭素および窒素の低減により低下した強度を担保するため、鋼板の板厚は、0.5mm以上が一般的に必要とされる。
このように、深絞り性に優れ、かつ肌荒れが小さいフェライト系ステンレス鋼が求められている。次に関連技術を示す。
特許文献1には、高純度フェライト系ステンレス鋼を用いて、結晶粒径とともに、析出粒子のサイズを制御して、肌荒れを低減かつ成形性を向上した鋼及びその製造方法が開示されている。しかし、深絞り性や、塑性ひずみ比の異方性を制御する方法の記載がなく、前述のように更なる改善が必要である。
特許文献2には、TiとNbを含有した高純度フェライト系ステンレス鋼への低温熱間圧延と、高い加工率での冷間圧延とを活用して細粒とし、肌荒れの小さい鋼を製造する技術が開示されている。ステンレス鋼板の結晶粒度番号は9.5の細粒組織が得られているものの、深絞り成形時の「耳」の発生防止や、肌荒れ防止の検討が十分ではない。
特許文献3には、最終冷延前の結晶粒径を制御することで深絞り性、リジング性を向上させ、肌荒れを改善したNb及び/またはTiを含有する高純度フェライト系ステンレス鋼が開示されている。しかし、結晶粒径が15μm(結晶粒度番号で8.8)にとどまり、肌荒れの更なる改善が必要である。
従来、高純度フェライト系ステンレス鋼の肌荒れ軽減のため、鋼板製造の際の強圧下を活用し、結晶粒径を細かくする方法が検討されてきたが、製造負荷が大きく、かえって肌荒れを発生する場合もあり、優れた表面形状を安定して維持できる技術が望まれている。
特許第4749888号公報 特開平7−292417号公報 特許第3788311号公報
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、成形性及び成形後表面形状に優れたフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1] 化学成分が、質量%で、
Cr:11.0%以上、25.0%以下、
C:0.001%以上、0.010%以下、
Si:0.01%以上、1.0%以下、
Mn:0.01%以上、1.0%以下、
P:0.010%以上0.040%以下、
S:0.01%以下、
N:0.002%以上、0.020%以下、
Al:0.003%以上、1.0%以下、
Ti:0.05%以上、0.30%以下、
Nb:0.03%以上、0.30%以下
を含み、下記(1)式を満足し、残部がFeおよび不純物からなり、
Ti、Nb、Pのうち、電解抽出残渣法によって抽出された鋼中の化合物に含まれるTi,Nb,PをそれぞれXTi、XNb、Xとしたときに、質量%で、
Ti:0.035%以上、0.060%以下、
Nb:0.010%以上、0.025%以下、
:0.001%以上、0.010%以下
を満足し、
結晶粒度番号が9.0以上であり、
(r+r90+2×r45)/4で示される平均塑性ひずみ比rAveが下記(2)式を満足し、
(r+r90―2×r45)/2で示される面内異方性Δrが下記(3)式を満足するフェライト系ステンレス鋼板。
Ti/48+Nb/93 ≧ 2×(C/12+N/14) … (1)
1.5≦rAve … (2)
―0.4≦Δr≦0.1 … (3)
ただし、r、r90、r45はそれぞれ、r:圧延方向の塑性ひずみ比、r45:圧延方向に対して45°方向の塑性ひずみ比、r90:圧延方向と垂直方向の塑性ひずみ比であり、上記式(1)におけるTi、Nb、C及びNは鋼板中の各元素の含有量(質量%)である。
[2] 前記化学成分が、更に、質量%で、
B:0.0025%以下、
Sn:0.50%以下、
Ni:1.0%以下、
Cu:1.0%以下、
Mo:2.0%以下、
W:1.0%以下、
Co:0.50%以下、
V:0.50%以下、
Zr:0.50%以下、
Ca:0.0050%以下、
Mg:0.0050%以下、
Y:0.10%以下、
Hf:0.20%以下、
REM:0.10%以下、
Sb:0.50%以下
の1種または2種以上を含有する[1]に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
[3] [1]または[2]に記載の化学成分を有する鋼片を熱間圧延して鋼板とする第1の工程と、
前記第1工程後の前記鋼板を、T℃以上、(T+35)℃以下の均熱温度で熱処理する第2の工程と、
前記第2工程後の前記鋼板を、650℃以上750℃以下の均熱温度、かつ1分以上5分以下の均熱時間で時効熱処理を施す第3の工程と、
前記第3工程後の前記鋼板に対して、冷間圧延と熱処理とをそれぞれ1回行うか、またはそれぞれ2回以上繰り返し行う第4の工程と、を備え、
前記第4の工程は、少なくとも最終の冷間圧延を圧延率75%以上で行ない、少なくとも最終の熱処理を(T−10)℃以上、(T+30)℃以下の均熱温度で行うことを特徴とする、[1]または[2]に記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
ここで、T、Tはそれぞれ、T:熱間圧延後の再結晶温度(℃)、T:冷間圧延後の再結晶温度(℃)である。
本発明によれば、成形性及び成形後の表面形状に優れたフェライト系ステンレス鋼板を工業的に安定して提供することができる。
図1は、実施例における加工後試験片を示す模式図。
本発明者らは、多数の高純度フェライト系ステンレス鋼を試作し、それらの成形性(特に深絞り性)、成形後の表面形状に及ぼす成分及び製造方法について鋭意検討を行った。その結果、Ti、Nbとともに、Pを調整した成分系において、それらを含む析出物を適正に制御することで、深絞り性、異方性、肌荒れのすべてを満足し得る鋼板および製造方法を明らかにし、本発明に至った。
その要点を述べれば、本発明は新たに見出されたPの化合物を活用するものである。P化合物は、後述する熱間圧延後に再結晶させた材料への時効熱処理により微細析出させるが、同析出物が冷間圧延後の熱処理での再結晶開始時に深絞り性に有利な結晶方位を優先的に生成すると考えられ、望ましいr値が得られ、成形性を向上する。併せて、前述したTiやNbの炭窒化物とともに高密度に分散することで粒成長を更に抑制し、細粒組織となることで成形後表面形状も更に改善される。すなわち、更に優れた成形性と成形後表面形状が両立するのである。P化合物は、(Ti,Nb)FePないし、それらに近い組成と構造を有すると考えられる。したがって、それらの化合物が活用できる材料、例えば、JIS G 4305に記載される高純度フェライト系ステンレス鋼にも適用できると考えられる。
以下、各要件について詳しく説明する。
まず、成分の限定理由を以下に説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
Crは、ステンレス鋼の基本特性である耐食性を向上する元素である。11.0%未満では十分な耐食性が得られないため、下限は11.0以上%とする。一方、過度なCrの含有はσ相(Fe−Crの金属間化合物)相当の金属間化合物の生成を促進し、製造時の割れを助長する。このため、上限は25.0%以下とする。安定製造性(歩留まり、圧延疵等)の点から14.0%以上、22.0%以下が好ましい。更に好ましくは16.0%以上、21.0%以下である。
Cは、強力な固溶強化元素であり、伸びの低下にともない成形性を低下させるため、過剰のCの含有は避ける必要がある。上限を0.010%以下とする。一方、結晶粒制御のためにある程度のCの含有が必要であり、過度の低減には精錬コストが増加するため、下限を0.001%以上とする。精錬コスト及び特性(成形性、結晶粒℃)を考慮した場合、0.002%以上、0.008%以下が好ましい。
Siは、耐酸化性向上元素であるが、過剰なSiの含有により成形性を低下する。このため、1.0%以下を上限とする。成形性の点からは低い方が好ましいが、過度の低下は原料コストの増加を招くため0.01%以上を下限とする。好ましい範囲は0.05%以上、0.60%以下であり、さらに好ましくは0.05%以上、0.30%以下である。
MnもSi同様に、多量のMnの含有は成形性の低下を招くため上限を1.0%以下とする。成形性の点から低い方が好ましいが、過度の低下は原料コストの増加を招くため、0.01%以上を下限とする。製造性の観点から好ましい範囲は0.05%以上、0.40%以下であり、さらに好ましくは、0.05%以上、0.30%以下である。
Pは、冷間圧延後熱処理での再結晶にて深絞り性に有利な結晶方位を形成すると考えるP化合物の構成元素であり、下限を0.010%以上とする。ただし、過度にPを含有した場合、成形性が劣化し、材料の加工も難しくなるため、上限を0.040%以下とする。成形性と製造コストの両者を考慮し、好ましくは0.012%以上、0.038%以下、さらに好ましくは、0.015%以上、0.035%以下である。
Sは、製造時の割れを助長するため低い方が好ましく、上限を0.01%以下とする。一方、過度の低下は精錬コストの上昇を招くため、下限を0.0003%以上とする。製造性とコストの点から、好ましくは、0.0004%以上、0.0030%以下である。
Nは、Cと同様に強力な固溶強化元素であり、伸びの低下にともない成形性を低下させる。このため、上限を0.020%以下とする。しかし、結晶粒制御のためにある程度のNの含有が必要であり、過度の低減には長時間の精錬が必要となるため、0.002%以上を下限とする。好ましくは、0.005%以上、0.015%以下である。
Alは、脱酸元素として使用される。また、成形性の向上に寄与する。これら効果を発揮するには、0.003%以上が必要である。一方、多量のAlの含有は材料を硬化し、延性が低下するため、上限を1.0%以下とする。好ましくは0.10%以下であり、より好ましくは0.01%以上、0.07%以下である。
Tiは、結晶粒の成長を抑制する炭窒化物を形成する元素である。このため、下限を0.05%以上とする。一方、過度なTiの含有は合金コストを上昇し、再結晶温度上昇に伴う鋼板の製造性の低下や、伸びの低下を招く。従ってTiの上限は0.30%以下とする。成形性及び製造性の点から、好ましくは、0.08%以上、0.25%以下である。更に好ましくは、0.10%以上、0.20%以下である。
Nbは、Ti同様に粒成長を抑制する炭窒化物を形成する元素である。Nbを含む化合物の大きさも比較的小さいため、鋼板の成形時に割れの起点となる可能性も小さい。このため、下限を0.03%以上とする。一方、過度なNbの含有は鋼板の延性を低下し、合金コストの上昇、再結晶温度の上昇に伴う製造性の低下を招く。上限は0.30%以下とする。好ましくは、0.05%以上、0.15%以下である。
Ti,Nb,C,Nの含有量に関しては下記(1)式を満足することとする。
Ti/48+Nb/93 ≧ 2×(C/12+N/14)・・・(1)
上記式(1)を満足しない場合、炭窒化物の析出が少なく、CあるいはNの固溶量が大きくなり、鋼板の深絞り性が低下し、成形時の割れを生じやすくなる。また、溶接した場合、同部の耐食性を低下する。
また、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板では、鋼板中に含まれるTi,Nb,Pのうち、鋼板中の化合物に含まれるTi,Nb,Pの量をそれぞれXTi、XNb、Xとしたときに、
Ti:0.035%以上0.060%以下、
Nb:0.010%以上0.025%以下、
:0.001%以上0.010%以下
を満足することが必要となる。鋼板中の化合物は、Ti及び(あるいは)Nbを含有するものであり、(Ti,Nb)炭窒化物や(Ti,Nb)FePに代表されるP化合物である。これらは、多数かつ微細な析出物の分散でのピン止め効果により、粒成長を抑制し、細粒組織の形成に寄与する。更に、P化合物は、冷間圧延後熱処理での再結晶に際して、深絞り性に有利な結晶方位を形成すると考えられ、望ましいr値を得ることが可能となる。このような効果を得るには、XTi、XNb、Xとの下限はそれぞれ、XTi:0.035%以上、XNb:0.010%以上、X:0.001%以上であることが好ましい。
一方、析出物の過度の分散は、鋼板の延性の低下により成形性が低下し、r値も低下させる。このため、XTi、XNb、Xとの上限はそれぞれ、XTi:0.060%以下、XNb:0.025%以下、X:0.010%以下であることが好ましい。これらの値は同時に満足することで、熱処理での再結晶において深絞り性に有利な結晶方位が生成し、更に化合物による粒成長抑制により細粒組織化と深絞り性に有利な結晶方位が維持されると考えられ、優れた成形性と成形後表面形状が両立する。
Ti、XNb、Xとの測定は、電解抽出残渣法によって鋼中の化合物を残渣として抽出し、化合物中のTi,Nb,Pの量を定量することにより求められる。電解抽出残渣法に用いる電解液は、10%アセチルアセトン−1%テトラメチルアンモニウム−メタノール液とし、残渣の回収には0.2μmメッシュの有機フィルターを用いる。残渣量は1g以上とすることで分析精度のばらつきを防ぐ。残渣中のTi,Nb,Pの分析はICP発光分光法とする。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、上記の基本組成に加えて、B:0.0025%以下、Sn:0.50%以下、Ni:1.0%以下、Cu:1.0%以下、Mo:2.0%以下、W:1.0%以下、Co:0.50%以下、V:0.50%以下、Zr:0.50%以下、Ca:0.0050%以下、Mg:0.0050%以下、Y:0.10%以下、Hf:0.20%以下、REM:0.10%以下、Sb:0.50%以下の1種または2種以上を含有させてもよい。これらの元素は含有させなくてもよく、その場合の下限はそれぞれ0%以上である。
Bは、二次加工性を向上させる元素である。その効果を発揮するには0.0001%以上で発現すると考える。ただし、過度のBの含有は製造性、特に鋳造性の劣化を招くため、上限は0.0025%以下とする。好ましくは、0.0020%以下であり、さらに好ましくは0.0012%以下である。
Snは、耐食性を向上させるため、腐食環境に応じて含有してもよい。この効果は0.005%以上で発現すると考える。ただし、多量のSnの含有は製造性の劣化を招くため、上限は0.50%以下とする。製造性を考慮して、好ましくは、0.20%以下であり、さらに好ましくは、0.10%以下である。
Ni、Cu、Mo、W、Co、V、Zrは、耐食性あるいは耐酸化性を高めるのに有効な元素であり、これらの元素は必要に応じて含有させる。これらの元素の効果は0.1%以上で発現すると考える。ただし、これらの元素の過度な含有は成形性を低下するばかりなく、合金コストの上昇や製造性を阻害する恐れがある。そのため、Ni、Cu、Wの上限は1.0%以下、Moの上限は2.0%以下、Co、V、Zrの上限は0.50%以下とする。
Ca、Mgは、熱間加工性や二次加工性を向上させる元素であり、必要に応じて含有させる。この効果は0.0001%以上で発現すると考える。ただし、これらの元素の過度な含有は鋼板の製造性を阻害するため、上限は0.0050%以下とする。好ましくは、0020%以下であり、さらに好ましくは、0.0010%以下である。
Y、Hf、REMは、熱間加工性や鋼の清浄度を向上ならびに耐酸化性改善に対して有効な元素であり、必要に応じて含有させる。これらの効果は0.001%以上で発現すると考えられる。ただし、これらの元素の過度な含有は鋼板の製造性を阻害するため、上限は、Y、REMが0.10%以下、Hfが0.20%以下とする。なお、本実施形態における「REM」は原子番号57〜71に帰属する元素(ランタノイド)を指し、例えば、La、Ce、Pr、Nd等である。
Sbは、Snと同様に耐食性向上効果を持つ元素であり、必要に応じて含有させる。この効果は、0.005%以上で発現すると考えられる。ただし、過度のSbの含有は製造性の劣化を招くため、上限は0.50%以下とする。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼鈑は、上述してきた元素以外は、Fe及び不純物(不可避的不純物を含む)からなるが、本発明の効果を損なわない範囲で下記を含有させることが出来る。本実施形態では、例えばBi、Pb、Se、H、Ta等を含有させてもよいが、その場合は可能な限り低減することが好ましい。一方、これらの元素は、本発明の課題を解決する限度において、その含有割合が制御され、必要に応じて、Bi≦100ppm、Pb≦100ppm、Se≦100ppm、H≦100ppm、Ta≦500ppmの1種以上を含有してもよい。
次に、金属組織について説明する。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼鈑は、結晶粒度番号9.0以上よりなる。前述した肌荒れは、結晶粒度番号が大きいほど、すなわち、粒径が小さいほど生じにくい。優れた成形後表面形状を得るため、結晶粒度番号が9.0以上とする。好ましくは9.0超であり、より好ましくは9.5以上であり、更に好ましくは、10.0以上である。
結晶粒度番号の測定方法は、JIS G 0551(2013)の線分法で求めることができる。なお、番号は、例えば、9が結晶粒内を横切る1結晶粒あたりの平均線分長が14.1μmに相当し、10が同線分長10.0μmに相当する。調査は、試験片のエッチング後断面での光学顕微鏡組織写真にて実施し、1試料につき結晶粒数で500以上を測定する。エッチング液は王水または逆王水がよいが、結晶粒界が判断できるのであれば他の溶液でも構わない。隣接する結晶粒の方位関係等により粒界が鮮明に見えない場合があるため、濃くエッチングするのが好ましい。なお、調査に際して、双晶は測定しないこととする。
塑性ひずみ比(r値)は、試験片の幅の減少の伸び(長さの増加)への寄与を示す値であり、フェライト系ステンレス鋼では深絞り性が向上する。平均塑性ひずみ比rAveを以下の(2)式で算出し、面内異方性Δrを以下の(3)式で算出する。平均塑性ひずみ比rAveは大きい方が成形性に優れるため、1.5以上とする。好ましくは、1.7以上である。面内異方性Δrは、絶対値が小さい方が成形性に優れ、−0.4未満および0.1超では面内異方性が大きくなり、深絞り成形時に耳の発生が顕著になり、また、成形中に割れを生じやすくなる。好ましくは、−0.3以上、0.1以下である。
塑性ひずみ比の測定方法は、JIS Z 2254(2008)に準拠し、鋼板の各方向と平行に採取した試験片について引張りひずみ15%以上にて実施する。なお、ここで、r:試験片を板面の圧延方向に対し平行に採取し測定した塑性ひずみ比、r45:試験片を板面の圧延方向に対し45°方向に採取し測定した塑性ひずみ比、r90:試験片を板面の圧延方向に対し90°方向に採取し測定した塑性ひずみ比である。
1.5≦rAve … (2)
―0.4≦Δr≦0.1 … (3)
ただし、式(2)のrAve=はrAve(r+r90+2×r45)/4であり、式(3)のΔrはΔr=(r+r90―2×r45)/2である。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板の金属組織は、フェライト単相組織よりなる。オーステナイト相やマルテンサイト相を含む複相組織の場合は、結晶粒径を細かくすることが比較的容易であり、加えてオーステナイト相はTRIP効果により高成形性を示す。しかし、一般的には合金元素の増加にともない原料コストが高くなることに加えて、製造時に耳割れ等が発生し、歩留まりが低下する。耳割れが著しく発生した場合、製造が困難となる。このため、体積%で98%以上をフェライト相とする。好ましくは、99%以上であり、鋼板の製造、加工性から100%が当然ながら最も好ましい。フェライト相以外の残部組織は0〜2%とする。なお、鋼中には炭窒化合物やP化合物等も存在するが、これらは総計でも極微量であり、ここでは無視する。
これらの金属組織の規定により、実施例にて後述するように、優れた成形性と成形後表面形状が得られる。理由は鋭意調査継続中ではあるが、現時点では前述したように次のように推測する。
深絞り性の向上には、固溶するC,Nを低減することが有効である。Ti,Nbの含有により短窒化物として固定することは、既に知られている。本発明は、更に、Pの化合物を活用するものである。P化合物は後述する熱間圧延後再結晶させた材料への時効熱処理により微細析出させるが、同析出物が冷間圧延後の熱処理での再結晶開始時に深絞り性に有利な結晶方位を優先的に生成すると考えられ、望ましいr値が得られ、成形性を向上するのである。併せて、TiやNbの炭窒化物とともに高密度に分散して粒成長を更に抑制し、細粒組織となることで成形後の表面形状も更に改善される。すなわち、本発明は、Ti,Nb,Pの化合物が所定量の場合、更に優れた成形性と成形後表面形状を両立する。P化合物は、(Ti,Nb)FePないし、それらに近い組成と構造を有すると考えられる。
なお、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板の板厚は特に限定しないが、強度確保の観点から0.5mm以上、好ましくは0.6mm以上であることが望ましい。板厚が薄い場合は成形後の部品において強度が不十分となる場合があるためである。ただし、製造対象物のサイズや形状、耐荷重等を考慮して板厚を設計する必要がある。
次に、フェライト系ステンレス鋼板の製造方法について説明する。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法では、同鋼を常法により溶製、鋳造し、熱間圧延に供する鋼片を得る。この鋼片は、鋼塊を鍛造又は圧延したものでもよいが、生産性の観点から、連続鋳造により鋼片を製造することが好ましい。また、薄スラブキャスター等を用いて製造してもよい。
次いで、鋼片を熱間圧延して鋼板とする第1の工程と、再結晶を目的とする熱処理を行う第2の工程と、化合物析出を目的とする時効熱処理を行う第3の工程と、冷間圧延と再結晶を目的とする熱処理とを一回ないし二回以上繰り返す第4の工程とを行うことにより、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板を製造する。
第1の工程では、熱間圧延により、鋼片を所定の温度に加熱後、所定の板厚まで減厚する。温度やパススケジュールは特に規定するものではなく、再結晶温度以上で内部まで均一な温度に加熱、保持し、効率的に減厚する。
第2の工程では、熱間圧延後の鋼板に対して再結晶を目的とする熱処理を行う。第2の工程の熱処理は、次工程の時効熱処理にてP化合物を微細析出させるために、均熱温度としての到達温度をT℃〜(T+35)℃の範囲に制御する必要がある。Tは熱間圧延後の再結晶温度(℃)である。再結晶温度Tは、鋼成分、板厚、熱間圧延の温度や圧下率の影響により変化する。再結晶温度Tの制御により、P化合物を微細かつ高密度に析出させることができる。また、到達温度がT℃未満である場合、未再結晶粒が残存、軟化不足により、その後の冷間圧延が難しくなる。また、鋼板でのリジング性や成形性も不良となる。一方、到達温度が(T+35)℃超であると、粒成長が進行してその影響が後工程後にも残存し、冷延と熱処理を繰り返した後の鋼板の粒径が粗大化し、バラつきも大きくなり、成形後の表面粗さが不良となる。第2の工程の熱処理の均熱時間は、5分以下がよい。
次いで、第3工程で実施する時効熱処理は、実験結果に基づき、650℃以上、750℃以下の均熱温度にて1分(60秒)以上、5分以下の均熱時間で保持する。均熱温度が650℃未満または750℃超では、P化合物が析出しないと考えられる。保持時間が1分(60秒)未満では、化合物の析出量が不十分となる。逆に、5分を超えた場合、化合物の析出量が増大し、XTi、XNb、Xの値が前述の範囲を超える可能性が高くなり、優れた成形性や成形後表面形状が得られない。また、工業的には短時間での処理が望ましい。好ましくは、660℃以上、740℃以下にて、2分以上、4分以下の条件がよい。
第4工程では、1回の冷間圧延後に熱処理を1回行うか、あるいは、冷間圧延を2回以上行うとともに冷間圧延の間に適宜熱処理を行い、最終の冷間圧延後に最終熱処理を行う。第4の工程において、少なくとも最終の冷間圧延での冷間圧延率は70%以上にする必要である。第4の工程において冷間圧延を1回のみ行う場合は、その1回の冷間圧延が最終の冷間圧延になる。冷間圧延によって、その後の熱処理と合わせて深絞り性に有効な結晶方位を形成する。最終の冷間圧延の圧延率は好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上である。なお、圧延率の上限は特に限定しないが、圧延機の能力やコストの観点から、97%以下とするのが現実的である。また、最終以外の冷間圧延における冷間圧延率は、最終の冷間圧延の圧延率と同様にしてもよく、適宜変更してもよい。第4の工程の最終の熱処理の均熱時間は5分以下がよい。
一回ないし二回以上の冷間圧延と熱処理を繰り返す第4の工程において、少なくとも最終冷間圧延後の熱処理は、均熱温度としての到達温度を(T−10)℃〜(T+30)℃の範囲に制御する必要がある。Tは最終冷間圧延後の再結晶温度(℃)である。再結晶温度のTも、熱延後の再結晶温度Tと同様に、鋼成分、板厚、冷間圧下率の影響により変化する。到達温度が(T−10)℃未満の場合、再結晶、軟化ともに不十分となり、鋼板の成形性は著しく劣化し、成形不良となる。一方、(T+30)℃超の場合、再結晶粒の成長が進み、望ましいr値が得られず、成形後の形状が悪くなる。また、所定の結晶粒度を越えた場合、成形後の表面形状が不良となる。なお、最終の熱処理以外の熱処理条件は、最終の熱処理条件と同様にしてもよく、適宜変更してもよい。
再結晶温度T、Tは、熱延板あるいは冷延板を用いて熱処理した後の金属組織観察から決定できる。すなわち鋼板を切断し、加熱速度10℃/sで昇温し、到達温度T℃にて30s保持した後に急冷する。急冷は、水冷あるいはHeクエンチとする。熱処理における到達温度Tは20℃ピッチで10水準実施する。熱処理後の鋼板の圧延幅方向から見た断面(L断面)を研磨・エッチングし、結晶粒界を現出させる。光学顕微鏡により結晶粒形状及び粒内のひずみ有無から再結晶/未再結晶を判断する。到達温度Tが高い場合に再結晶が進行するが、金属組織が完全再結晶となる最も低い温度を持って再結晶温度とする。
また、第2の工程における熱延後の熱処理と、第の4工程における冷延後の最終の熱処理は、迅速に進行すると考える再結晶を目的とし、粒成長の抑制、工業的側面から短時間で行うことが好ましい。具体的には、5分以下である。更に、好ましくは、1秒以上、3分以下である。熱処理は、バッチ式炉、連続式炉の何れの実施でも構わず、ステンレス鋼の製造にて一般的に用いられるものでよい。熱処理雰囲気は、水素ガス、窒素ガスなどを含む非酸化性雰囲気でもよいし、大気でも構わない。表面スケールが形成される場合、脱スケール処理を施せばよい。ただし、冷延後の最終熱処理は、製品加工後の表面形状に影響するため、非酸化性雰囲気での実施がより好ましい。
以上の製造工程を経ることによって、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板が得られる。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板は、成形性及び成形後の表面形状に優れたものとなる。特に、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板は、成形性の中でも深絞り性が向上する。また、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板は、面内異方性Δrが優れた値を示すため、鋼板の面内異方性が小さくなり、深絞り成形後の成形品における耳をより小さくすることができる。
次に本発明の実施例を示す。実施例の条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例である。このため、本発明は、以下の実施例で用いた条件に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱せず、目的を達成する限りにて、種々の条件を採用し得るものである。
なお、下記にて示す表中の下線は、本発明の範囲から外れているものを示す。
表1に示す成分組成のステンレス鋼を実験室レベルの小型溶解炉で溶製し、第1の工程として厚さ5mm前後に熱間圧延した。次いで、熱延板の再結晶温度(T℃)を調査した後、第2の工程として、(T+10)℃を主体に所定温度にて3分保持での熱処理を実施した。次いで、第3の工程として、化合物析出を目的とする所定の時効熱処理を一部の鋼板を除き実施した。その後、第4の工程として、冷間圧延を実施した。冷間圧延は、実験室レベルの小型単スタンド圧延機を用いて、加工率を変化させて全て厚さ0.6mmに減厚した。更に、冷延板の再結晶温度(T℃)を調査し、T℃を主体に所定温度にて30秒保持での熱処理を実施した。このようにして、鋼板No.1〜No.26を製造した。なお、T、T℃の調査結果は、表2中に併せて記載した。
得られたステンレス鋼板No.1〜No.26の特性を調査した。
時効熱処理後の化合物中に含まれるTi,Nb,P量、L断面での結晶粒度番号(GSNo.)、深絞り性としてrAve、Δrを測定した。各特性の測定方法は前述した通りである。
次に、得られた鋼板よりφ110mmの試料を切り出し、円筒深絞り試験により成形性を調査した。評価は、成形可能であった場合が〇、途中で割れた場合を×とした。深絞りが可能であった加工後試験片の模式図を図1に示す。次いで、深絞り可能であった試験片について、図1中に示す耳の最大高さと最小高さの差を耳高さとして測定した。耳高さは5mm以内であるものを合格の〇、5mmを超えるものを不合格の×とした。
また、深絞りが可能であった加工後試験片について、肌荒れを測定した。肌荒れは、二次元接触式の表面粗さ測定機を用いて、縦壁部の高さ中央部にて高さ方向に平行に5mmの長さについて表面粗さ測定を行った。JIS B 0031(2003)に記述される算術平均粗さRaを比較し、通常の冷延後鋼板と同等の2.0μmを基準とし、それ以下の場合を○、2.0μm超の場合を×とした。なお、Raが2.0μm超の場合、肌荒れが顕著となる。
なお、深絞り試験は、ポンチ径が50mm、ポンチ肩Rが5mm、ダイス径が53mm、ダイス肩Rが8mm、しわ押さえ圧が10トン、試料とポンチ間の潤滑は、出光興産株式会社製の防錆油「ダフニーオイルコートZ3(登録商標)」を塗布後に潤滑シート「ニチアス株式会社製ナフロンテープTOMBO9001」を貼り付けて実施した。
表2にステンレス鋼板No.1〜No.26の調査結果を示す。なお、本発明例の鋼板は全てフェライト単相(オーステナイト相やマルテンサイト組織を含まない)であることを別に確認した。
本発明例のNo.1、5,7、9、11、13、15、19は、化合物中のTi、NbおよびPの含有量、結晶粒度番号が本発明の範囲であり、深絞り成形が可能であって優れた成形性を示し、また、成形後の肌荒れが抑制されており、優れた成形後表面形状を有するものとなった。更に、深絞り成形後の成形品の耳高さも小さくなり、面内異方性が小さく、成形性により優れていた。
他方、比較例は、以下のように化合物の含有量、結晶粒度番号の何れかが未達となり、深絞り性も未達となるため、成形が不可、ないし、成形可能であっても肌荒れが発生した。
No.2は熱間圧延後の熱処理温度が高く、No.3は時効熱処理温度が高く、X、粒度番号が未達となり、肌荒れを発生した。また、Δrも未達であり、耳高さも不良となった。
No.4は、冷間圧延後の熱処理温度が低く、軟化、再結晶ともに不十分であり、成形が困難であった。結晶粒度やr値の測定は困難であった。
No.6は、時効時間が短く、XNb、X、結晶粒度ともに未達となり、肌荒れを発生した。Δrも未達であり、耳高さも不良となった。
No.8は、冷延率が低く、結晶粒度が未達とともに、望まし結晶方位も得られていないと考えられ、rAveが未達となり、成形が困難であった。
No.10は時効を行わず、X、結晶粒度が未達となり、肌荒れが発生した。また、Δrも未達であり、耳高さも不良となった。
No.12は時効温度が低く、X、粒度番号が未達となり、肌荒れが発生した。Δrも未達であり、耳高さも不良となった。
No.14は時効の時間が長く、XNb、X、粒度番号ともに未達となり、肌荒れが発生した。Δrも未達であり、耳高さも不良となった。
No.16は、熱延後の熱処理温度が低く、X、rAveが未達となり、成形が困難であった。
No.17は時効を行わず、冷延率も低いため、XTi、X、粒度番号ともに未達であり、成形が困難であった。
No.18は冷延後の熱処理温度が高く、結晶粒度、rAve、Δrが未達となり、成形が困難であった。
No.20は時効温度が低く、XTi、X、粒度番号ともに未達となり、肌荒れが発生した。また、Δrが未達であり、耳高さも不良となった。
Ti含有量が対象外の鋼Iを用いた比較例No.21、22はXTiが未達になった。また、Nb含有量が対象外の鋼Jを用いた比較例No.23、24はXNbが未達になった。更に、P含有量が対象外の鋼Kを用いた比較例No.25、26はXが未達になった。また、No.21〜26の大部分で粒度番号が未達となり、成形不良ないし肌荒れが発生した。また、No.21〜26の大部分でΔrが未達であり、耳高さも不良となった。
Figure 0006738928
Figure 0006738928
本発明によれば、成形性及び成形後の表面形状に優れたフェライト系ステンレス鋼板を工業的に安定提供することが可能である。さらに、本発明鋼板は成形後の肌荒れを起こさないため、従来行われていた肌荒れの除去を目的とする成形後の研磨工程を省略することができるため、環境面や製造コストの面でも効果を十分に享受できる。

Claims (3)

  1. 化学成分が、質量%で、
    Cr:11.0%以上、25.0%以下、
    C:0.001%以上、0.010%以下、
    Si:0.01%以上、1.0%以下、
    Mn:0.01%以上、1.0%以下、
    P:0.010%以上0.040%以下、
    S:0.01%以下、
    N:0.002%以上、0.020%以下、
    Al:0.003%以上、1.0%以下、
    Ti:0.05%以上、0.30%以下、
    Nb:0.03%以上、0.30%以下
    を含み、下記(1)式を満足し、残部がFeおよび不純物からなり、
    Ti、Nb、Pのうち、電解抽出残渣法によって抽出された鋼中の化合物に含まれるTi,Nb,PをそれぞれXTi、XNb、Xとしたときに、質量%で、
    Ti:0.035%以上、0.060%以下、
    Nb:0.010%以上、0.025%以下、
    :0.001%以上、0.010%以下
    を満足し、
    結晶粒度番号が9.0以上であり、
    (r+r90+2×r45)/4で示される平均塑性ひずみ比rAveが下記(2)式を満足し、
    (r+r90―2×r45)/2で示される面内異方性Δrが下記(3)式を満足するフェライト系ステンレス鋼板。
    Ti/48+Nb/93 ≧ 2×(C/12+N/14) … (1)
    1.5≦rAve … (2)
    ―0.4≦Δr≦0.1 … (3)
    ただし、r、r90、r45はそれぞれ、r:圧延方向の塑性ひずみ比、r45:圧延方向に対して45°方向の塑性ひずみ比、r90:圧延方向と垂直方向の塑性ひずみ比であり、上記式(1)におけるTi、Nb、C及びNは鋼板中の各元素の含有量(質量%)である。
  2. 前記化学成分が、更に、質量%で、
    B:0.0025%以下、
    Sn:0.50%以下、
    Ni:1.0%以下、
    Cu:1.0%以下、
    Mo:2.0%以下、
    W:1.0%以下、
    Co:0.50%以下、
    V:0.50%以下、
    Zr:0.50%以下、
    Ca:0.0050%以下、
    Mg:0.0050%以下、
    Y:0.10%以下、
    Hf:0.20%以下、
    REM:0.10%以下、
    Sb:0.50%以下
    の1種または2種以上を含有する請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
  3. 請求項1または請求項2に記載の化学成分を有する鋼片を熱間圧延して鋼板とする第1の工程と、
    前記第1工程後の前記鋼板を、T℃以上、(T+35)℃以下の均熱温度で熱処理する第2の工程と、
    前記第2工程後の前記鋼板を、650℃以上750℃以下の均熱温度、かつ1分以上5分以下の均熱時間で時効熱処理を施す第3の工程と、
    前記第3工程後の前記鋼板に対して、冷間圧延と熱処理とをそれぞれ1回行うか、またはそれぞれ2回以上繰り返し行う第4の工程と、を備え、
    前記第4の工程は、少なくとも最終の冷間圧延を圧延率75%以上で行ない、少なくとも最終の熱処理を(T−10)℃以上、(T+30)℃以下の均熱温度で行うことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
    ここで、T、Tはそれぞれ、T:熱間圧延後の再結晶温度(℃)、T:最終冷間圧延後の再結晶温度(℃)である。
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