JP6617182B1 - フェライト系ステンレス鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】深絞りと曲げを組み合わせた成形加工性に優れ、更に、成形加工後の表面特性にも優れたフェライト系ステンレス鋼板を提供する。【解決手段】Cr、C、Si、Mn、P、S、N、Al、Ti、Nbを含み、(1)式が2.0以上であり、残部がFeおよび不純物からなり、結晶粒度番号が9.0超のフェライト組織を有し、板表面から深さ20μmまでの領域の板厚断面に、断面積が0.1μm2以上20μm2以下の析出物が存在し、析出物は、断面形状が多角形の形状からなるTiNを有し、かつ、多角形の頂点に接触するようにNbCが分布し、板厚断面における析出物の密度が3個/mm2以上であるフェライト系ステンレス鋼板を採用する。(〔Ti〕/48+〔Nb〕/93)/(〔C〕/12+〔N〕/14)・・・(1)ただし、〔元素記号〕の表記は、当該元素の含有量(質量%)を示す。【選択図】なし

Description

本発明は、フェライト系ステンレス鋼板に関し、特に、成形加工した際の成形性並びに成形後の表面特性に優れるフェライト系ステンレス鋼板に関する。
代表鋼種であるSUS304(18Cr−8Ni)をはじめとしたオーステナイト系ステンレス鋼は、耐食性、加工性、美麗性等に優れることから家電、厨房品、建材等広く用いられている。但し、オーステナイト系ステンレス鋼は高価かつ価格変動の激しいNiを多量に含有しているため鋼板の価格が高いとされており、経済性の観点からはより安価なものが望まれている。
一方、フェライト系ステンレス鋼はNiを含有しない、もしくは含有量が極めて少ないため、コストパフォーマンスに優れる材料として、ここ近年で需要が増加している。しかしながら、フェライト系ステンレス鋼を成形用途として使用する場合、問題となるのが成形性と、成形後に表面凹凸が形成されることによる表面特性の劣化である。
特に課題となる成形性は、深絞り性と曲げ加工性である。深絞り性については固溶炭素及び固溶窒素を低減することが有効である。このために製錬段階で炭素及び窒素を極力低減し、さらにTiやNbを含有させて炭窒化物の生成を促進する手法が広く用いられている。合金コストはNbに比べてTiが安価であるため、Tiを含有した高純度鋼が深絞り用に用いられる。曲げ加工性は、表層の結晶粒径や析出物(介在物)が影響する。このため、表層の結晶粒を細かくするような製造条件を選択し、また、介在物を抑制する成分設計を行う、といった対策が取られる。
近年では、部品形状の複雑化にともない、従来に比べて複雑な形状に変形させたときに成形割れがないことが求められる。複雑形状への成形には、深絞り後の曲げ加工あるいは、曲げ加工後の絞り成形、というように変形モードの異なる成形が組み合わせて行われる。したがって、最近では深絞り性と曲げ加工性を両立するような金属組織制御が求められている。
次に、成形加工後の表面特性(表面凹凸)について述べる。ここで「表面凹凸」とは、加工や成形を行った後に鋼板表面に生じる微細な凹凸(肌荒れ)を指し、この微細な凹凸は複数個分の結晶粒のサイズに対応しており、結晶粒径が大きいほど表面凹凸も顕著になる。フェライト系ステンレス鋼では、SUS430LXのように、C,Nを低減させて加工性、成形性の向上を図った高純度フェライト系ステンレス鋼では粒成長しやすいため、結晶粒度が大きくなる傾向にある。
家電製品の筺体あるいは器物のように比較的厳しい成形性が要求される場合、フェライト系ステンレス鋼ではSUS430LXのような高純度フェライト系ステンレス鋼が用いられることが多い。また、成形後の強度を担保するために用いられるステンレス鋼板の板厚は大半の場合は0.6mm以上であることが一般的であるが、前述のように結晶粒径が大きいために成形後の肌荒れが大きく、成形後に研磨によって表面凹凸の除去が通常行われている。
上述した背景から、深絞りや曲げといった成形加工性に優れ、かつ成形後の肌荒れが小さいフェライト系ステンレス鋼が求められている。以下に関連技術を示す。
特許文献1には、高純度のフェライト系ステンレス鋼を用いて析出粒子のサイズ及び結晶粒径を制御して、加工肌荒れを低減させかつ成形性を向上させたフェライト系ステンレス鋼及びその製造方法が開示されている。しかし特許文献1記載の方法では、結晶粒径が小さい鋼板が得られているものの深絞りと曲げを組み合わせた成形性は十分ではない。
特許文献2には、TiとNbを含有したフェライト系ステンレス鋼において低温で熱間圧延を実施し、かつ高い冷間圧延率を取ることで細粒とし、成形時の耐肌荒れ性に優れたステンレス鋼を製造する技術を開示している。こうした技術によって特許文献2に記載のステンレス鋼板の結晶粒度番号は9.5と細粒組織が得られているものの、深絞りと曲げを組み合わせた成形性及び成形後の耐肌荒れ性も必ずしも十分ではない。
特許文献3には、Nb及び/またはTiを含有する成分を有する鋼の最終冷延前の結晶粒径を制御することで深絞り性、リジング性および耐肌荒れ性を向上させたフェライト系ステンレス鋼が開示されている。しかし、最終製品の結晶粒径は15μm(結晶粒度番号で8.8)であり、耐肌荒れ性が不十分である。
また従来では、高純度フェライト系ステンレス鋼の表面凹凸を軽減するために、フェライト系ステンレス鋼板を製造する際に冷延回数を増やして結晶粒径を細かくすることで、表面凹凸の低減を図る方法も検討されてきたが、実際、製品板上に表面凹凸が生成する場合があり、その原因は必ずしも明確ではなく、鋼板表面の高品質化を安定して維持できる技術が望まれている。
特許第4749888号公報 特開平7−292417号公報 特許第3788311号公報
以上のように、フェライト系ステンレス鋼において、深絞りや曲げといった複雑形状への成形加工性を向上させ、かつ成形後の表面特性を満足しうることは非常に困難である。このため、従来は、所定の形状への成形加工ができない問題があった。また、成形加工ができたとしても、成形後に生じた表面凹凸が大きくなるため、それを除去するために研磨工程を行う必要が生じ、研磨時間がかかり製造コストがかさむ上、研磨にて生じた粉じんが多く発生するなどの環境面の問題が生じていた。
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、深絞りと曲げを組み合わせた成形加工性に優れ、更に、成形加工後の表面特性にも優れたフェライト系ステンレス鋼板を提供することを課題とする。
本発明者らは、深絞り及び曲げを伴う成形加工性と、成形後の表面凹凸の改善に寄与する鋼成分及び組織について鋭意検討を行った。その結果、TiやNbを含有させた場合に、深絞り性が良好になる傾向があるが、曲げ性については同一成分でも組織が異なるときに大きくばらつくことが判明した。また、曲げ加工性を向上させるための組織の作り込みは、特に溶鋼を鋳造する段階での、凝固後から室温への冷却途中での加熱保持が大きく影響することを初めて明らかにし、本発明に至った。
本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1] 質量%にて、
Cr:11.0%以上25.0%以下、
C:0.001%以上0.010%以下、
Si:0.01%以上1.0%以下、
Mn:0.01%以上1.0%以下、
P:0.10%以下、
S:0.01%以下、
N:0.002%以上0.020%以下、
Al:0.003%以上1.0%以下、
Ti:0.05%以上1.0%以下、
Nb:0.03%以上1.0%以下、
B:0%以上0.0025%以下、
Sn:0%以上0.50%以下、
Ni:0%以上1.0%以下、
Cu:0%以上1.0%以下、
Mo:0%以上2.0%以下、
W:0%以上1.0%以下、
Co:0%以上0.50%以下、
V:0%以上0.50%以下、
Zr:0%以上0.50%以下、
Ca:0%以上0.0050%以下、
Mg:0%以上0.0050%以下、
Y:0%以上0.10%以下、
Hf:0%以上0.20%以下、
REM:0%以上0.10%以下、
Sb:0%以上0.50%以下を含み、
下記(1)式が2.0以上であり、かつ残部がFeおよび不純物からなり、
結晶粒度番号が9.0超のフェライト組織を有し、
板表面から深さ20μmまでの領域の板厚断面に、断面積が0.1μm以上20μm以下の析出物が存在し、前記析出物は、断面形状が多角形の形状からなるTiNを有し、かつ、前記多角形の頂点に接触するようにNbCが分布するものであり、前記板厚断面における前記析出物の密度が3個/mm以上であることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板。
(〔Ti〕/48+〔Nb〕/93)/(〔C〕/12+〔N〕/14)・・・(1)
ただし、〔元素記号〕の表記は、当該元素の含有量(質量%)を示す。
[2] 質量%にて、更に、
B:0.0001%以上0.0025%以下、
Sn:0.005%以上0.50%以下、
Ni:0.01%以上1.0%以下、
Cu:0.01%以上1.0%以下、
Mo:0.10%以上2.0%以下、
W:0.10%以上1.0%以下、
Co:0.01%以上0.50%以下、
V:0.01%以上0.50%以下、
Zr:0.01%以上0.50%以下、
Ca:0.0001%以上0.0050%以下、
Mg:0.0001%以上0.0050%以下、
Y:0.010%以上0.10%以下、
Hf:0.01%以上0.20%以下、
REM:0.01%以上0.10%以下、
Sb:0.01%以上0.50%以下の1種または2種以上含有していることを特徴とする[1]に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
本発明によれば、成形加工性及び成形加工後の表面特性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を提供することができる。
図1は、析出物の分析結果の一例を示す図であり、(a)はSEM写真であり、(b)は析出形態のイメージ図であり、(c)はEPMA(電子線プローブマイクロアナライザ)によるTiのマッピング画像であり、(d)はEPAによるNbのマッピング画像であり、(e)はEPMAによるCのマッピング画像である。
本発明の実施形態であるフェライト系ステンレス鋼板は、質量%にて、Cr:11.0%以上25.0%以下、C:0.001%以上0.010%以下、Si:0.01%以上1.0%以下、Mn:0.01%以上1.0%以下、P:0.10%以下、S:0.01%以下、N:0.002%以上0.020%以下、Al:0.003%以上1.0%以下、Ti:0.05%以上1.0%以下、Nb:0.03%以上1.0%以下、B:0%以上0.0025%以下、Sn:0%以上0.50%以下、Ni:0%以上1.0%以下、Cu:0%以上1.0%以下、Mo:0%以上2.0%以下、W:0%以上1.0%以下、Co:0%以上0.50%以下、V:0%以上0.50%以下、Zr:0%以上0.50%以下、Ca:0%以上0.0050%以下、Mg:0%以上0.0050%以下、Y:0%以上0.10%以下、Hf:0%以上0.20%以下、REM:0%以上0.10%以下、Sb:0%以上0.50%以下を含み、下記(1)式が2.0以上であり、かつ残部がFeおよび不純物からなり、結晶粒度番号が9.0超のフェライト組織を有し、板表面から深さ20μmまでの領域の板厚断面に、断面積が0.1μm以上20μm以下の析出物が存在し、この析出物は、断面形状が多角形の形状からなるTiNを有し、かつ、前記多角形の頂点に接触するようにNbCが分布するものであり、板厚断面における析出物の密度が3個/mm以上である。
以下、各要件について詳しく説明する。
まず、成分の限定理由を以下に説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
Crは、ステンレス鋼の基本特性である耐食性を向上する元素である。11.0%未満では十分な耐食性は得られないため下限は11.0%以上とする。一方、過度な含有はσ相(Fe−Crの金属間化合物)相当の金属間化合物の生成を促進して製造時の割れを助長するため上限は25.0%以下とする。安定製造性(歩留まり、圧延疵等)の点から14.0%以上、22.0%以下が望ましい。更に望ましくは16.0%以上、21.0%以下がよい。
Cは、本実施形態において重要なTiNの周囲に析出する元素である。析出物を形成するためには0.001%以上が必要であるため、これを下限とする。しかし成形性を低下させる元素であるため、過剰の含有は避ける必要がある。上限を0.010%以下とする。精錬コスト及び成形性の両者を考慮した場合、C含有量は、0.002%以上、0.008%以下が好ましい。
Siは、耐酸化性向上元素であるが過剰な含有は成形性の低下を招くため1.0%以下を上限とする。成形性の点からSi含有量は低い方が好ましいが、Si含有量を過度に低減すると原料コストの増加を招くため、0.01%以上を下限とする。製造性の観点から望ましい範囲は0.05%以上、0.60%以下であり、さらに望ましくは0.05%以上、0.30%以下である。
MnもSi同様に、多量の含有は成形性の低下を招くため上限を1.0%以下とする。成形性の点からMn含有量が低い方が好ましいが、Mn含有量を過度に低減すると原料コストの増加を招くため、0.01%以上を下限とする。製造性の観点から望ましい範囲は0.05%以上、0.40%以下であり、さらに望ましくは0.05%以上、0.30%以下である。
Pは、成形性(r値及び伸び)を低下させる元素であるため低い方が好ましく、上限を0.10%以下に制限する。但し、P含有量の過度な低減は原料コストの上昇をもたらすため下限は0.005%以上とすることが好ましい。成形性と製造コストの両者を考慮した場合、好ましい範囲は0.007%以上、0.030%以下、更に望ましくは0.010%以上、0.025%以下である。
Sは不可避的不純物元素であり、製造時の割れを助長するため低い方が好ましく、上限を0.01%以下に制限する。S量は低いほど好ましく0.0030%以下が望ましい。一方、S含有量の過度の低減は精錬コストの上昇を招くため、下限は0.0003%以上とすることが望ましい。製造性とコストの点から、好ましい範囲は0.0004%以上、0.002%以下である。
Nは、本発明において重要なTiNの構成元素である。これを析出させるためには0.002%以上の含有が必要であるため、これを下限とする。一方、多量の含有は成形性の劣化を招くため、上限を0.020%以下とする。成形性と製造性の点から好ましい範囲は0.005%以上、0.015%以下である。
Alは脱酸元素として使用されることが多い。本発明においては、Alを含有する酸化物がTiNの晶出核(析出核)として作用し、後述するTiNの析出密度を増加させる。この効果を発揮するには0.003%以上の含有が必要であるためこれを下限とする。一方、多量の含有により材料が硬化して成形性が低下するため、上限を1.0%とする。成形性に好適な範囲は0.01%〜0.07%の範囲である。
Tiは本発明の重要な析出物であるTiNを構成する元素であるとともに、Cと結合して成形性を向上させる。成形性向上効果を発揮するには下限は0.05%以上とする。一方、過度な含有は合金コストの上昇や再結晶温度上昇に伴う製造性の低下を招くため、上限は1.0%以下とする。成形性及び製造性の点から、好ましい範囲は0.05%以上、0.50%以下である。更に、好適な範囲は0.10%以上、0.30%以下である。
Nbは、主にCと結合してTiNの周囲に析出する析出物を構成する本発明の重要な元素である。析出するためには0.03%以上含有させる。一方、過度な含有は合金コストの上昇や再結晶温度上昇に伴う製造性の低下を招くため、上限は1.0%以下とする。成形性及び製造性の点から、好ましい範囲は0.05%以上、0.30%以下である。
Ti,Nb,C,Nの含有量に関しては下記(1)式の値が2.0以上を満足することとする。
(〔Ti〕/48+〔Nb〕/93)/(〔C〕/12+〔N〕/14) … (1)
上記の(1)式が2.0以上を満足しない場合、固溶CあるいはNが残存し、製品の深絞り性が低下し、成形時の割れが生じやすくなるためである。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板は、上記の基本組成に加えて、下記の元素群のうち1種または2種以上を選択的に含有させてもよいし、含有させなくてもよい。これらの元素を含有させない場合の下限は0%である。
Bは、二次加工性を向上させる元素であり、二次加工性を更に向上するには0.0001%以上含有させるとよい。ただし、Bの過剰な含有は製造性、特に鋳造性の劣化を招くため0.0025%以下を上限とする。好ましい範囲は0.0020%以下であり、さらに好ましくは、0.0012%以下である。
Snは、耐食性を向上させる効果を有する元素であるため、腐食環境に応じて含有させてもよく、例えば0.005%以上を含有させてもよい。Snの多量の含有は製造性の劣化を招くため、0.50%以下を上限とする。製造性を考慮して好ましい範囲は0.20%以下、さらに好ましくは0.10%以下である。
Ni、Cu、Mo、W、Co、V、Zrは、耐食性あるいは耐酸化性を高めるのに有効な元素であり、必要に応じて含有させるとよい。但し、これらの元素の過剰な含有は成形性の低下を招くばかりでなく合金コストの上昇や製造性を阻害することに繋がるおそれがある。そのため、Ni、Cu、Wの上限は1.0%以下とする。Moは製造性の低下をもたらすため上限は2.0%以下とする。Co、V、Zrの上限は0.50%以下とする。各元素の好ましい含有量の下限は、Ni、Cu、Co、V、Zrについては0.01%以上、Mo、Wは0.10%以上である。
Ca、Mgは、熱間加工性や2次加工性を向上させる元素であり、必要に応じて含有させる。但し、これら元素の過剰な含有は製造性を阻害することに繋がるため、Ca、Mgの上限は0.0050%以下とする。好ましい下限はそれぞれ0.0001%以上とする。製造性と熱間加工性を考慮した場合、好ましい範囲はCa、Mgともに、0.0002〜0.0020%であり、さらに好ましい範囲は0.0002〜0.0010%である。
Y、Hf、REMは、熱間加工性や鋼の清浄度を向上ならびに耐酸化性改善に対して有効な元素であり、必要に応じて含有させてもよい。Y、REMを含有させる場合の上限はそれぞれ0.10%以下とし、Hfを含有させる場合の上限は0.20%以下とする。また、Yを含有させる場合の下限は0.010%以上にするとよく、Hf、REMを含有させる場合の下限はそれぞれ0.01%以上にするとよい。ここで、本実施形態における「REM」は原子番号57〜71に帰属する元素(ランタノイド)を指し、例えば、Ce、Pr、Nd等である。
Sbは、Snと同様に耐食性向上効果を持つ元素であり、必要に応じて含有させてもよい。ただしSbの多量の含有は製造性の劣化を招くため、0.50%以下を上限とする。Sbの下限は、0.01%以上がよい。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼鈑は、上述してきた元素以外は、Fe及び不純物(不純物には不可避的不純物も含む)からなるが、以上説明した各元素の他にも、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることが出来る。本実施形態では、例えばBi、Pb、Se、H、Ta等を含有させてもよいが、その場合は可能な限り低減することが好ましい。一方、これらの元素は、本発明の課題を解決する限度において、その含有割合が制御され、必要に応じて、Biは0.01%以下、Pbは0.01%以下、Seは0.01%以下、Hは0.01%以下、Taは0.05%以下の1種以上を含有してもよい。
次に金属組織について説明する。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板は、結晶粒度番号が9.0超のフェライト組織からなることが好ましい。
フェライトの結晶粒度番号は9.0超とする。成形後の表面凹凸はフェライトの結晶粒度番号が大きいほど、すなわちフェライト結晶粒の粒径が小さいほど生じにくいためこれを下限とする。表面凹凸をさらに抑制するためには9.5超が好ましく、更に望ましくは10.0超である。
結晶粒度番号の測定方法は、JIS G 0551(2013)の線分法(付属書JBのフェライト結晶粒の切断法による評価方法)で求めることができる。なお粒度番号:9は結晶粒内を横切る1結晶粒あたりの平均線分長14.1μmに相当し、粒度番号:10は結晶粒内を横切る1結晶粒あたりの平均線分長10.0μmに相当する。結晶粒度測定は、試験片断面の光学顕微鏡組織写真より、1試料につき線分を横切る結晶粒数を500以上とする。エッチング液は王水または逆王水がよいが、結晶粒界が判断できるのであれば他の溶液でも構わない。また隣接する結晶粒の方位関係によっては粒界が鮮明に見えない場合があるため、濃くエッチングするのが好ましい。また結晶粒界の測定に当たって双晶粒界は測定しないこととする。結晶粒番号の測定位置は特に限定しない。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板の金属組織は、上記のフェライト組織を母相とする。オーステナイト組織やマルテンサイト組織が含まれても問題はない。好ましくは、フェライト組織の単相であり、フェライト組織の体積率は98%以上であることが好ましい。オーステナイト組織やマルテンサイト組織を含む場合は、結晶粒径を細かくすることが比較的容易であることに加えて、オーステナイト組織はTRIP効果により高成形性を示す。ただし、原料コストが高くなることに加えて、製造時に耳割れ等の歩留まり低下が起こりやすくなるため、金属組織はフェライト組織を母相とする。なお、鋼中に炭窒化物等の析出物が存在するが、これらは考慮せず、上記は母相の組織について述べている。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板において、板表面から深さ20μmまでの領域に存在するTiNを主体とする析出物は、多角形状の形状を有しており、多角形の頂点に接するようにNbCを主体とする析出物が分布することにより、極めて優れた特性が顕在化し、欠点を撲滅できる。析出物のサイズについては、板表面から深さ20μmまでの板厚断面に、断面積が0.1μm以上20μm以下の析出物が存在する必要がある。また、この析出物の密度は、板表面から深さ20μmまでの板厚断面において3個/mm以上存在することが必要である。
このような析出物の代表的な例を図1に示す。図1(a)はSEM写真であり、(b)は析出形態のイメージ図であり、(c)はEPMA(電子線プローブマイクロアナライザ)によるTiのマッピング画像であり、(d)はEPAによるNbのマッピング画像であり、(e)はEPMAによるCのマッピング画像である。図1に示すマッピング画像は、FE−EPMA(日本電子株式会社製 フィールドエミッション電子プローブマイクロアナライザ(製品番号JXA−8530F))を用いて調査したものである。この例では、図1(a)及び(c)に示すように、Tiが存在する領域はTiNからなり、断面視形状が四角形の形状を示している。そして、図1(d)及び(e)からわかるようにTiNの四角形の頂点部4か所にNbCが分布している。なお、TiNの中心に観察される黒い円はAl、O等が検出されていることから、Al含有酸化物を核にTiNが析出あるいは晶出したと推察される。
立方晶に属するTiNは、極めて硬質であり、また、鋼の金属組織中に析出した際に角ばった立方体の形状を有するものとなる。このようなTiNがステンレス鋼板の表面付近に存在すると、TiNが曲げ加工時の割れの起点となり、表面粗さも著しく悪化する。そこで、TiNについて検討したところ、TiNが棒状あるいは球状の形態を示すと加工時に与える悪い影響が比較的小さくなることを知見した。TiNは、EPMA(電子線マイクロアナライザ)のマッピングにより同定する。なお、TiNの同定は、SEMに付随するEDS装置(エネルギー分散型X線分析装置(Energy dispersive X−ray spectrometry)等の解析機器を用いて簡易的に確認することもできるが、EPMAとの間で結果の不一致が生じた場合はEPMAの測定結果を優先する。TiNは、TiとNとを主体となる化合物である。本実施形態のTiNの一部にはCやNbも含有されているが、いずれも原子%で10%未満であるため、本明細書では10%未満の他の元素を含む場合にもTiNと判別する。角ばったTiNの断面形状は、三角形、四角形、五角形、六角形等があるが、曲げ成形性に影響を及ぼすTiNの大きさは、断面積にて0.1μm以上である。TiNの断面積が20μm超となる場合はほとんどないが、その場合、成形性、表面粗さともに著しく悪化する。このため、断面積が0.1μm以上20μm以下とする。析出物の大きさは、EPMAによるマッピングの結果より算出する。なお、他の元素分析機器、EBSP等の構造分析機器でのマッピング測定結果からも、析出物の大きさは算出が可能であるが、本実施形態ではEPMAを用いることが好ましい。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板では、多角形の形状のTiNの頂点部付近にNbCが分布した析出物が鋼板の表面付近の断面に存在する。NbCの組成はEPMAで測定し、NbとCが主組成であることを確認する。NbCにはTiやNを一部含有する場合もあるため、それらを含めて原子%で10%未満の他の元素を含むものをNbCとする。前述のSEMに付属するEDS装置で簡易的にNbCを測定してもよい。EPMAとの間で結果が相違する場合はEPMAの結果を優先する。本実施形態の析出物は、角ばったTiNの頂点に接触するように上述のNbCが覆うものである。NbCは1つの頂点に分布するだけでも効果はあるが、3か所以上の頂点を覆うことで、TiNの角ばった部分からの曲げ成形時の割れを防ぐことができる。
上述の「多角形の形状のTiNの頂点部付近にNbCが分布」する形態を有する析出物の存在密度は、鋼板表面から深さ20μmまでの領域の鋼板断面において3個/mm以上とする。析出物の存在密度が3個/mm未満の場合、Nの固定が不十分であり、成形性、表面粗さが不良となる。析出物の存在密度の上限は特に定める必要はないが、多すぎると材料が硬質となり、成形性、表面粗さとも劣化するため、300個/mm以下を上限とする。個数密度は、表面粗さへの影響が大きい表面近傍で測定する。測定範囲である表面近傍とは、板表面から深さ20μmまでの範囲とする。測定領域は、板表面から深さ20μmまでの範囲内に、0.3mm以上の広さの測定領域を1箇所設定し、その領域内におけるTiN(頂部にNbCが分布するTiN)の個数を測定する。TiNの確認は上述のようにEPMAを用いる。得られた個数を測定範囲の面積で除することで存在密度を得る。
上述の析出物を有することによって、深絞りと曲げを組み合わせた成形性と、成形後の表面凹凸(肌荒れ)の両方が向上する理由については鋭意調査中ではあるが、現時点では次のように推測される。
深絞り性の向上には、固溶C,Nを低減することが有効である。Tiの含有は主にNを析出物として固定し、Nbの含有は主にCを析出物として固定することで深絞り性向上に寄与する。一方、TiNは比較的大きいため、曲げ加工時にはTiNと母相のフェライト相の間で変形能の差が出るため、成形割れが生じやすい。特にTiNは極めて硬質かつ角ばった形状であるため、断面観察にて多角形の形状の頂点部付近を起点に割れが発生しやすい。このようなTiNの頂点部をNbCが覆うことにより、曲げ成形時の割れが抑制され、表面粗さの向上に寄与したと推察される。冷間圧延時にはこの化合物の周囲に不均一なひずみが導入されて、その後の熱処理工程において多くの再結晶核が生成し、結果として結晶粒度番号は9.0超の細粒組織が得られるものと考えられる。
なお本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板の板厚は特に限定しないが、0.5mm以上、3.0mm以下、好ましくは0.6mm以上、2.0mm以下、更に好ましくは、0.8mm以下であることが望ましい。板厚が薄い場合は成形後の部品において強度が不十分となる場合があるためである。製造対象となる部品のサイズや形状、耐荷重等を考慮して板厚を設計する必要がある。
次に、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法について説明する。本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板は、所定の化学成分を有する鋼を鋳造してから熱間圧延を行い、その後、冷間圧延及び各熱処理(焼鈍)を組み合わせることにより製造する。また、必要に応じて、適宜、酸洗を行うこととする。すなわち、製造方法の一例として、製鋼−熱間圧延−熱延板焼鈍−冷間圧延−冷延板焼鈍の各工程からなる一般的な製法を採用できる。本実施形態において重要な結晶粒径と析出物の両者を上記のとおりに満足するために制御すべきポイントは、鋼の鋳造条件である。
製錬後は、連続鋳造あるいはインゴット鋳造において鋳込む。その際、前述のような析出物を析出させるためには、鋳造段階での、凝固後の室温への冷却途中での加熱保持が大きく影響する。このため、凝固後の冷却途中に1100℃から800℃の温度範囲を通過する際に、15min以上の温度保持をすることが必要である。温度保持の時間が15min未満であると、前述の析出形態を満足することができない。温度保持を行わなくても、板厚断面観察にて断面積が0.1μm以上20μm以下の多角形の形状からなるTiNを分散させることはできるが、その頂点部に接触するようにNbCが分布する析出物を得るためには、前述の冷却の途中での加熱保持が必要である。NbCの析出温度が1100℃以下であるため、上述の温度域に所定の時間保持することで本発明のようなNbCが析出する。その際、TiNを核として析出すると考える。15min以上の温度保持は、1100℃から800℃の範囲内において一定の温度に保持してもよく、1100℃から800℃の範囲内において変動させてもよい。
次いで、熱間圧延は加熱後、所定の板厚まで圧延する。温度やパススケジュールは特に規定するものではない。前述のNbCは、平衡計算によると1100℃以上で溶解するが、実際は溶解するまでの時間が長いため、通常の熱延における加熱時間(最大でも10時間程度)では析出形態は変化しない。
熱間圧延後の熱処理(熱延板焼鈍)においては、板厚や成分、熱間圧延の圧下率によって熱延板の再結晶温度T(℃)が異なるが、最高到達温度をT〜(T+35)(℃)の範囲に制御する必要がある。熱延板焼鈍の最高到達温度がT℃未満であると未再結晶粒が残存し、製品のリジング特性、成形性が不良となるためである。一方、最高到達温度がT+35℃超であると粒成長により結晶粒が粗大化し、冷延および冷延板焼鈍後の結晶粒径が粗大化するためである。
冷間圧延率は70%以上とし、その後の熱処理と合わせて深絞り性に有効な集合組織を発達させる必要がある。圧延率の上限については特に限定しないが、圧延機の能力の観点から、97%以下とするのがよい。
また、本実施形態の冷間圧延の他の圧延条件は適宜選択・設定してよい。
冷間圧延後の熱処理(冷延板焼鈍、最終焼鈍)における最高到達温度は、冷延板の再結晶温度をT(℃)とすると(T−10)〜(T+30)℃の範囲に制御する必要がある。冷延板焼鈍の最高到達温度が(T−10)℃未満であると材料が硬質化して成形割れが生じやすくなり成形性が劣化するおそれがある。一方、最高到達温度が(T+30)℃超であると結晶粒径が大きくなり、規定の結晶粒度番号が得られず、成形後に肌荒れが生じるためである。
本実施形態においては、冷間圧延の途中に中間焼鈍を入れ、複数回の工程としてもよい。なお、中間および最終焼鈍はバッチ式焼鈍でも連続式焼鈍でも構わない。また、各焼鈍は、必要であれば水素ガス、窒素ガスあるいはアンモニアガスなしいそれらを混合したガスなどの無酸化雰囲気で焼鈍する光輝焼鈍でよいし、大気中で焼鈍しても構わない。
再結晶温度T、Tは、熱延板あるいは冷延板を用いて温度を変えて熱処理した後の金属組織観察から決定することができる。再結晶温度T、Tの決定には、小試験片を用いて数水準条件を変えた熱処理を用いることが好ましい。その際、実機熱処理に相当のヒートパターンを行う。ヒートパターンは板厚や炉によって異なるが、例えば10℃/s昇温後、到達温度で20s保持後に強制冷却する。到達温度は20℃ピッチで実施し、熱処理後の光学顕微鏡組織観察から再結晶率が100%となる最低温度を再結晶温度と定義する。
以上説明した製造方法により、本実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼板を得ることができる。
実施例は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、以下の実施例で用いた条件に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
なお、下記にて示す表中の下線は、本発明の範囲から外れているものを示す。
表1に示す成分組成のステンレス鋼を溶製してスラブに鋳造した。鋳造時の冷却途中にて、900℃に加熱した熱処理炉で表2に示す保持時間で加熱保持をした。次いで、得られたスラブを熱間圧延した後、熱延板焼鈍、冷間圧延、冷延板焼鈍を施して0.6mm厚のステンレス鋼板(製品板)No.1〜No.28を製造した。各工程条件は表2のように変化させた。なお、熱延板焼鈍、および冷延板焼鈍における焼鈍(保持)時間はそれぞれ1〜60秒の範囲内とし、かつ本実施例では冷間圧延中の中間焼鈍は省略した。また、製造したステンレス鋼板について、表1の化学成分を得られていることも確認した。
熱延板焼鈍は、熱延板の再結晶温度がT(℃)としたときに、最高到達温度をT〜(T+35)(℃)の範囲とした。
冷延板焼鈍における最高到達温度は、冷延板の再結晶温度をT(℃)としたときに、(T−10)〜(T+30)℃の範囲に制御した。
なお、再結晶温度T、Tは、熱延板あるいは冷延板を用いて温度を変えて熱処理した後の金属組織観察から決定した。再結晶温度T、Tの決定には、小試験片を用いて数水準条件を変えた熱処理を用いた。その際、実機熱処理に相当のヒートパターンを行った。ヒートパターンは、10℃/s昇温後、到達温度で20s保持後に強制冷却した。到達温度は20℃ピッチで実施し、熱処理後の光学顕微鏡組織観察から再結晶率が100%となる最低温度を再結晶温度と定義した。
次に、得られたステンレス鋼板No.1〜No.28の結晶粒度番号(GSN)を、JIS G 0551(2013)に準拠して測定した。結晶粒番号は、JIS G 0551(2013)の線分法(付属書JBのフェライト結晶粒の切断法による評価方法)で求めた。結晶粒度の測定は、試験片断面の光学顕微鏡組織写真より、1試料につき線分を横切る結晶粒数を500以上となるように線分を設定した。エッチング液は王水とした。また、結晶粒界の測定に当たって双晶粒界は測定しなかった。
またステンレス鋼板No.1〜No.28の板表面から深さ20μmまでの領域での板厚断面の金属組織をEPMAを用いて調査した。各鋼種においてNbCが頂点に接触するように分布したTiNの析出物を確認し、広範囲でその分布を求めた。TiNの大きさは、EPMAの結果より測定した。
より具体的には、TiNは、EPMA(電子線マイクロアナライザ)のマッピングにより同定した。TiとNとを主体となる化合物をTiNとした。10原子%未満の他の元素を含む場合にもTiNと判別した。TiNの断面積は、EPMAによるマッピングの結果より算出した。
TiNの頂点部付近に分布するNbCについては、NbCの組成をEPMAで測定し、NbとCが主組成であることを確認した。NbCにはTiやNを一部含有する場合もあるため、それらを含めて原子%で10%未満の他の元素を含むものをNbCとした。
「多角形の形状のTiNの頂点部付近にNbCが分布」する析出物の存在密度は、板表面から深さ20μmまでの範囲内に、0.3mm以上の広さの測定領域を1箇所設定し、その領域内におけるTiN(頂部にNbCが分布するTiN)の個数を測定した。TiNの確認は上述のようにEPMAを用いた。得られた個数を測定範囲の面積で除することで存在密度を得た。
さらに、曲げと深絞りを組み合わせた成形加工を模擬する加工を行った。具体的には、ステンレス鋼板No.1〜No.28よりφ100mmの試料を切り出した。次に、切り出した試料を中心部で90°曲げてから曲げ戻しを行い、その後に油圧成形試験機により限界絞り比2.0の条件でカップ成形試験を行った。カップ成形後の表面肌荒れには限界絞り比が大きく影響するが、その他の成形条件は影響を及ぼさないことが分かっている。なお今回実施したカップ成形試験条件は、ポンチ径が50mm、ポンチ肩Rが5mm、ダイス径が53mm、ダイス肩Rが8mm、しわ押さえ圧が10トンとした。試料とポンチ間の潤滑は、出光興産株式会社製の防錆油「ダフニーオイルコートZ3(登録商標)」を塗布後に潤滑シート「ニチアス株式会社製ナフロンテープTOMBO9001」を貼り付けた。
限界絞り比2.0の条件で割れなく成形できたものを〇、成形途中に割れが生じたものを×として表2中に記載した。成形が出来た試料についてはカップ成形後の肌荒れを評価した。具体的には、カップ成形後の試料の縦壁部の高さ中央部において高さ方向に平行に5mm長さについて二次元接触式の表面粗さ測定機を用いて表面粗さ測定を行った。JIS B 0031(2003)に記述される算術平均粗さRaが2.0μmを基準とし、それ以下の場合、表面肌荒れ評価が○、Raが2.0μm超の場合を表面肌荒れ評価を×とした。なお、カップ成形ができなかった試料については、表2の表面肌荒れの欄に「−」を記入した。
表2に、ステンレス鋼板No.1〜No.28の上記特性評価の結果を示す。なお、本発明例でステンレス鋼板は全て、フェライトを母相とする組織であり、フェライト組織の体積率は98%以上であった。
表2に示すように、本発明例によると、結晶粒度番号および析出形態が制御され、耐肌荒れ性及び成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を得ることが出来た。
なお、Raが2.0μm超の比較例の場合は、表面凹凸が顕著であり、最終的には研磨によって当該凹凸を除去することとなるため、製造コストも面でも評価を劣ることとなる。
No.2、4、6、8、10、12、14、16、18、20は、化学成分が本発明の範囲内であるが、鋳造時の900℃での温度保持時間が15分未満であったため、NbCを有するTiNの析出物の存在密度が3個/mm未満になり、結晶粒度が9.0未満になり、成形性が低下した。
No.21は、析出物の存在密度及び結晶粒度番号は発明の範囲内であるが、C含有量が過剰であったため、成形性が悪化した。
No.22、24、26、28は、化学成分が本発明の範囲外であり、また、鋳造時の900℃での温度保持時間が15分未満であったため、析出物の個数密度及び結晶粒度番号が発明範囲外となり、成形性が低下した。
No.23、25、27は、鋳造時の900℃での温度保持時間が15分以上であったが、化学成分が本発明の範囲外であったため、NbCを有するTiNの析出物の存在密度が3個/mm未満になり、結晶粒度が9.0未満になり、成形性が低下した。
本発明によれば、成形加工性及び成形加工後の表面特性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を提供することが可能である。さらに、本発明に係るフェライト系ステンレス鋼板は成形加工後の表面特性に優れているので、従来行われていた表面凹凸除去を目的とした成形加工後の研磨工程を省略することができるため、製造コストの面でも効果を十分に享受できる。

Claims (2)

  1. 質量%にて、
    Cr:11.0%以上25.0%以下、
    C:0.001%以上0.010%以下、
    Si:0.01%以上1.0%以下、
    Mn:0.01%以上1.0%以下、
    P:0.10%以下、
    S:0.01%以下、
    N:0.002%以上0.020%以下、
    Al:0.003%以上1.0%以下、
    Ti:0.05%以上1.0%以下、
    Nb:0.03%以上1.0%以下、
    B:0%以上0.0025%以下、
    Sn:0%以上0.50%以下、
    Ni:0%以上1.0%以下、
    Cu:0%以上1.0%以下、
    Mo:0%以上2.0%以下、
    W:0%以上1.0%以下、
    Co:0%以上0.50%以下、
    V:0%以上0.50%以下、
    Zr:0%以上0.50%以下、
    Ca:0%以上0.0050%以下、
    Mg:0%以上0.0050%以下、
    Y:0%以上0.10%以下、
    Hf:0%以上0.20%以下、
    REM:0%以上0.10%以下、
    Sb:0%以上0.50%以下を含み、
    下記(1)式が2.0以上であり、かつ残部がFeおよび不純物からなり、
    結晶粒度番号が9.0超のフェライト組織を有し、
    板表面から深さ20μmまでの領域の板厚断面に、断面積が0.1μm以上20μm以下の析出物が存在し、前記析出物は、断面形状が多角形の形状からなるTiNを有し、かつ、前記多角形の頂点に接触するようにNbCが分布するものであり、前記板厚断面における前記析出物の密度が3個/mm以上であることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板。
    (〔Ti〕/48+〔Nb〕/93)/(〔C〕/12+〔N〕/14)・・・(1)
    ただし、〔元素記号〕の表記は、当該元素の含有量(質量%)を示す。
  2. 質量%にて、更に、
    B:0.0001%以上0.0025%以下、
    Sn:0.005%以上0.50%以下、
    Ni:0.01%以上1.0%以下、
    Cu:0.01%以上1.0%以下、
    Mo:0.10%以上2.0%以下、
    W:0.10%以上1.0%以下、
    Co:0.01%以上0.50%以下、
    V:0.01%以上0.50%以下、
    Zr:0.01%以上0.50%以下、
    Ca:0.0001%以上0.0050%以下、
    Mg:0.0001%以上0.0050%以下、
    Y:0.010%以上0.10%以下、
    Hf:0.01%以上0.20%以下、
    REM:0.01%以上0.10%以下、
    Sb:0.01%以上0.50%以下の1種または2種以上含有していることを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
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