以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
実施形態では、エンジンを駆動源とする車両に搭載されたチェーン式のCVT(無段変速機)の油圧回路に適用する。実施形態に係る油圧回路は、オイルポンプが2つの吐出口と1つの吸入口を有し、オイルポンプの運転状態が2つの吐出口からオイルを吐出させる全吐出状態と1つの吐出口からオイルを吐出させる半吐出状態とを切り替える。
図1〜図3を参照して、第1実施形態に係る油圧回路1について説明する。図1は、第1実施形態に係る油圧回路1の構成を示す図である。図2は、CVT3の一例を示す断面図である。図3は、第1実施形態に係る整流部材40周辺を模式的に示す断面図である。図3には、油路が形成されたハウジング8の一部を示している。
油圧回路1について説明する前に、まず、図2を参照して、CVT3について説明する。CVT3は、例えば、トルクコンバータ(図示省略)と前後進切替機構(図示省略)を介してエンジン(図示省略)のクランク軸に接続され、エンジンからの駆動力を変換して出力する。CVT3は、プライマリ軸(入力軸)30と、プライマリ軸30と平行に配設されたセカンダリ軸(出力軸)31とを有している。
プライマリ軸30には、プライマリプーリ32が設けられている。プライマリプーリ32は、固定プーリ32aと、可動プーリ32bとを有している。固定プーリ32aは、プライマリ軸30に接合されている。可動プーリ32bは、固定プーリ32aに対向し、プライマリ軸30の軸方向に摺動自在かつ相対回転不能に装着されている。プライマリプーリ32は、固定プーリ32aと可動プーリ32bとの間のコーン面間隔(すなわち、プーリ溝幅)を変更できるように構成されている。
セカンダリ軸31には、セカンダリプーリ33が設けられている。セカンダリプーリ33は、固定プーリ33aと、可動プーリ33bとを有している。固定プーリ33aは、セカンダリ軸31に接合されている。可動プーリ33bは、固定プーリ33aに対向し、セカンダリ軸31の軸方向に摺動自在かつ相対回転不能に装着されている。セカンダリプーリ33は、固定プーリ33aと可動プーリ33bとの間のプーリ溝幅を変更できるように構成されている。
プライマリプーリ32とセカンダリプーリ33との間には、駆動力を伝達するチェーン34が掛け渡されている。CVT3は、プライマリプーリ32とセカンダリプーリ33の各プーリ溝幅を変化させて、各プーリ32,33に対するチェーン34の巻き付け径の比率(プーリ比)を変化させることで変速比を無段階で変更する。なお、チェーン34のプライマリプーリ32に対する巻き付け径をRpとし、セカンダリプーリ33に対する巻き付け径をRsとすると、変速比iは、i=Rs/Rpで表される。
プライマリプーリ32の可動プーリ32bには、プライマリ駆動油室(油圧シリンダ室)35が形成されている。セカンダリプーリ33の可動プーリ33bには、セカンダリ駆動油室(油圧シリンダ室)36が形成されている。プライマリ駆動油室35には、例えば、プーリ比を変化させるための変速圧とチェーン34の滑りを防止するためのプーリ圧(クランプ圧)が供給される。セカンダリ駆動油室36には、例えば、プーリ圧が供給される。
次に、油圧回路1について説明する。油圧回路1は、オイルポンプ4から吐出されるオイルの吐出状態を全吐出状態と半吐出状態の何れかに切り替える。油圧回路1は、バルブボディに構成される油圧回路の一部である。また、油圧回路1は、ハウジング8内に形成された油路も含む。バルブボディには、コントロールバルブ機構が組み込まれている。コントロールバルブ機構は、複数のスプールバルブとスプールバルブを動かすソレノイドバルブ(電磁弁)を用いてバルブボディ内に形成された油路を開閉することで油圧を変化させる。なお、バルブボディは、油圧回路1以外にも、例えば、油圧回路1で切り替えた何れかの吐出状態で吐出されたオイルの吐出圧をライン圧に調圧する油圧回路、ライン圧を用いてプライマリ駆動油室35とセカンダリ駆動油室36にプーリ圧を供給する油圧回路、プライマリ駆動油室35に変速圧を供給する油圧回路、前後進切替機構に車両の前進/後進を切替える油圧を供給する油圧回路なども構成される。
オイルポンプ4は、機械式のオイルポンプであり、例えば、ベーンポンプである。オイルポンプ4は、エンジンの動力により駆動される。オイルポンプ4は、オイルパン5に溜まっているオイルをストレーナ6を介して吸い込み、吸い込んだオイルを昇圧して吐出する。ストレーナ6は、オイルパン5内の所定の箇所に配設され、オイルポンプ4に吸い込まれるオイル中の異物(コンタミネーション)を捕捉する。オイルパン5には、トランスミッション用のオイルが貯留されている。オイルポンプ4は、1つの吸入口(吸入ポート)4aと、2つの第1吐出口(第1吐出ポート)4b、第2吐出口(第2吐出ポート)4cとを有している。なお、図3では、オイルポンプ4についてはベーンやロータなどの詳細な構造を省略しており、吸入口4aのみを示している。
吸入口4aは、例えば、オイルポンプ4の側面に設けられている。この吸入口4aの周りには、図3に示すように、吸入口4aに連通する吸入油溜室4d(オイルが溜まる空間)が形成されている。吸入油溜室4dは、油路10の一端10aが接続され、油路10に連通している。油路10の他端には、オイルパン5内に配置されるストレーナ6が接続されている。油路10は、例えば、オイルポンプ4の下方に配置されるオイルパン5内(ストレーナ6)からオイルポンプ4の吸入口4aよりも上方の所定の箇所まで上下方向に延在し、この所定の箇所で曲げられて吸入油溜室4dまで水平方向に延在し、一端10aが吸入油溜室4dの上部に接続されている。この場合、油路10の一端10aから出たオイルは吸入油溜室4d内で落下し(下方の吸入口4a側に流れ)、吸入油溜室4d内のオイルが吸入口4aに負圧で吸入される。なお、第1実施形態では、吸入油溜室4dと油路10により特許請求の範囲に記載の吸入用油路を構成している。
2つの吐出口4b,4cは、例えば、オイルポンプ4の背面に設けられている。第1吐出口4bは、ライン圧用の油路11に連通している。第2吐出口4cは、切替バルブ19に連通された油路12に連通している。
油圧回路1は、油路10〜17を有している。また、油圧回路1は、切替ソレノイドバルブ18と、切替バルブ19とを有している。油圧回路1は、後述するTCU(Transmission Control Unit)7によって切替制御される切替ソレノイドバルブ18と切替バルブ19により、オイルポンプ4の吐出状態を全吐出状態と半吐出状態の何れかに切り替える。
切替ソレノイドバルブ18は、オン・オフソレノイドバルブである。切替ソレノイドバルブ18には、油路11に連通する油路13と、切替バルブ19に連通する油路14とが接続されている。切替ソレノイドバルブ18は、TCU7に接続されている。切替ソレイドバルブ18は、TCU7から所定の電流が供給されるとオンし、電流の供給が停止されるとオフする。切替ソレノイドバルブ18は、オンすると、油路13を介して供給されるオイルを用いて切替制御圧を発生し、切替バルブ19に油路14を介して切替制御圧を供給する。切替ソレノイドバルブ18は、オフすると、切替バルブ19への切替制御圧の供給を停止する。
切替バルブ19は、スプールバルブであり、軸方向に摺動するスプール19aと、スプール19aの一端側に配置されたスプリング19bとを有している。切替バルブ19には、オイルポンプ4の第2吐出口4cに連通する油路12と、切替ソレノイドバルブ18に連通する油路14と、油路11に連通する油路15と、油路17に連通する油路16とが接続されている。切替バルブ19は、切替ソレノイドバルブ18から切替制御圧が供給されるか否かに応じてスプール19aの軸方向への駆動(位置)が制御される。つまり、切替バルブ19は、油路14を介して供給される切替制御圧による押力(切替制御圧×受圧面積)と、スプリング19bのバネ力(付勢力)とのバランスに応じてスプール19aが軸方向に駆動される。
切替バルブ19は、切替ソレノイドバルブ18から切替制御圧が供給されると、油路12と油路16とを連通するようにスプール19aが移動する。この場合、オイルポンプ4の第2吐出口4cから油路12に吐出されたオイルが油路16及び油路17を介してオイルポンプ4の吸入側に戻され、オイルポンプ4の第1吐出口4bのみからオイルが油路11に吐出される半吐出状態となる。これにより、オイルポンプ4の負荷が低減され、車両の燃費が向上する。一方、切替バルブ19は、切替ソレノイドバルブ18からの切替制御圧の供給が停止されると、油路12と油路15とを連通するようにスプール19aが移動する。この場合、オイルポンプ4の第2吐出口4cから油路12に吐出されたオイルが油路15を介して油路11に合流され、オイルポンプ4の第1吐出口4bと第2吐出口4cからオイルが油路11に吐出される全吐出状態となる。全吐出状態の場合、半吐出状態よりも多くの量のオイルが吐出されるので、半吐出状態よりも吐出圧を高圧にできる。
油路17は、半吐出状態の場合に、第2吐出口4cから吐出されたオイルを吸入側に戻すためのオイル戻し用の油路である。この油路17を介してオイルを吸入側に戻すことにより、オイルポンプ4の負荷が低減され、車両の燃費が向上する。油路17の一端17aは、切替バルブ19に連通された油路16に接続される。油路17の他端17bは、油路10の一端10aと吸入油溜室4dとの接続箇所(油路10のオイルの排出側の端部)に接続される。図3に示す例では、油路17の他端17bは、油路10の一端10aの上部に接続されている。なお、第1実施形態では、油路16と油路17により特許請求の範囲に記載の戻し用油路を構成している。
油路17は、例えば、油路16に対して直交すると共に、油路10のうちの吸入油溜室4dに接続される側の部分(例えば、水平方向に延びる部分)に対して直交する。油路16は、ハウジング8内の所定の箇所に形成される。油路17内を流れるオイル(第2吐出口4cから吐出されたオイル)は、他端17bから出ると、油路10の一端10aから出るオイルと合流し、吸入油溜室4d内に供給される。油路17内のオイルの流れる方向は、油路10の一端10aから出るオイルに対して直交する方向である。油圧回路1には、油路17から出たオイルの流れを吸入口4a側(油路10の一端10aから出るオイルの流れる方向)に整流するために整流部材40が設けられている。この整流部材40については後で詳細に説明する。
なお、油路16は、ハウジング8に型を用いた鋳造で形成される。油路17は、鋳造後のハウジング8の所定の面から油路16に対して直交する方向の穴あけ加工で形成される。この穴あけ加工では、直交する方向に穴をあけるので、油路16に対して油路17を形成し易い。この穴あけ加工後にはハウジング8の所定の面に油路17に連通する穴17e(油路17と同軸かつ同径の穴)があく。このハウジング8にあいた穴17eからオイルが漏れないように、この穴17eを塞ぐ必要がある。上述した整流部材40が、この穴17eを塞ぐためのシールプラグとしても機能する。この整流部材40をハウジング8に組み付けるために、ハウジング8には、油路17の穴あけ加工後に、穴17eと重なりつつ、油路17(穴17e)の中心軸CA1から所定量OS1ずらした中心軸CA2を有し、かつ、油路17(穴17e)の径よりも大きい径の穴8aがあけられる。この穴8aは、内周面に雌ねじが螺刻されたねじ穴である。
次に、TCU7について説明する。TCU7は、CVT3を制御する制御ユニットである。TCU7は、演算を行うマイクロプロセッサ、マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラムなどを記憶するROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、バッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM及び入出力I/Fなどを有して構成されている。TCU7には、切替ソレノイドバルブ18を含む各ソレノイドが接続されている。
TCU7は、例えば、変速マップに従い、車両の運転状態に応じて自動で変速比を無段階に変速する制御を行う。特に、TCU7は、油圧回路1の切替バルブソレノイド18に対しては以下の制御を行う。TCU7は、オイルポンプ4の吐出状態を全吐出状態にするかあるいは半吐出状態するかを判断し、半吐出状態の場合には所定の電流を切替ソレノイドバルブ18に供給し、全吐出状態の場合には電流の供給を停止する。
次に、上述した整流部材40について説明する。整流部材40は、油路17から出たオイルの流れを吸入口4a側の方向(油路10の一端10aから出るオイルの流れる方向)に整流すると共に、上述したハウジング8にあけられた穴17eを塞いでオイル漏れを防止する部材である。整流部材40は、整流部40aと、固定部40bとからなる。
整流部40aは、油路17から出たオイルの流れる方向を略90°変え、整流する部分である。整流部40aは、油路17の他端17bに向けて突出し、この突出部分が回転対称の凸形状である。特に、整流部40aは、先端側ほど径が小さくなる形状であり、例えば、円錐台状である。したがって、整流部40aの外周面(壁面)は、周方向に連続した傾斜面40cとなっている。傾斜面40cは、整流部40aの先端に近いほど整流部40aの中心軸CA2側に傾斜した傾斜面である。特に、傾斜面40aは、凹状の曲面である。
整流部40aは、オイルポンプ4の吸入用油路内の油路10の一端10aと吸入油溜室4dとの接続箇所(油路10から出たオイルと油路17から出たオイルの合流箇所)に配置される。整流部40aは、油路17の他端17bに近い位置に配置される。したがって、油路17の他端17bから出たオイルは、傾斜面40cに当たり、傾斜面40cに沿って流れる方向D1が略90°変わる。
なお、整流部40aを円錐台状とした場合には先端が平らになるので、整流部材40を取り扱い易くなる。また、整流部40aを円錐状としてもよく、この場合には整流部40aの先端まで傾斜面40cを形成することができる。
固定部40bは、整流部材40をバルブボディ8に固定すると共に、ハウジング8にあけられた穴17eを塞ぎオイル漏れを防止する部分である。したがって、固定部40bは、シールプラグとして機能する部分である。固定部40bは、略円柱形状である。固定部40bは、油路17の径よりも大きい径である。固定部40bは、ねじ部材であり、雄ねじが螺刻されている。固定部40bの一端面には、固定部40cと同軸上に整流部40aが設けられている。固定部40bの他端部には、フランジ40d(ねじ部材の頭部)が形成されている。固定部40b(整流部材40)は、中心軸CA2が油路17の中心軸CA1に対して吸入口4a側とは逆側(吸入口4aから遠い側)に所定量OS1ずらした位置になるように配置されている。これにより、固定部40bの先端に設けられた整流部40aを油路17に対してオフセットさせて配置させる。なお、穴8aは、油路17よりも吸入口4a側とは逆側に広げられており、油路17の径よりも大きい径である。また、穴8aの内周面には、雌ねじが螺刻されている。
この固定部40bが穴8aに挿入されて螺合されることで、整流部材40がハウジング8に任意の回転位置で固定される。この整流部材40と穴8aとの間の所定の箇所(固定部40bにおけるフランジ40dでの段差部と固定部40bと整流部40aとの段差部)には、Oリング50,51が設けられている。
整流部材40がバルブボディ8に固定されることで、整流部40aが、オイルポンプ4の吸入用油路内の油路10の一端10aと吸入油溜室4dとの接続箇所に、油路17の他端17bに対向して配置される。特に、整流部40aが、整流部40a(整流部材40)の中心軸CA2が油路17の中心軸CA1に対して油路10の一端10aから出たオイルの流れる方向とは逆方向(吸入口4a側とは逆側)に所定量OS1オフセットするように配置される。このように整流部40aが配置されることで、整流部40aの傾斜面40cが、中心軸CA2が中心軸CA1と一致する場合と比べて、吸入口4a側とは逆側(図3に示す例の場合には上側)にずらした位置に配置される。これにより、傾斜面40cによって、油路17から出たオイルの流れる方向D1を略90°変え、吸入口4a側に整流することができる。オフセットさせる所定量OS1は、油路17から出たオイルが傾斜面40cに当たるように(特に、油路17から出たオイルが出来るだけ多く傾斜面40cに当たるように)、適合で決められる。なお、整流部材40は固定部40bにより任意の回転位置で組み付けられるが、何れの回転位置でも油路17の端部17bに対して傾斜面40cの形状は変わらない。
この整流部材40の作用について説明する。全吐出状態の場合、切替ソレノイドバルブ19で油路12と油路15とが連通されるので、オイルポンプ4の第2吐出口4cから油路12に吐出されたオイルがライン圧用の油路11に流入する。
一方、半吐出状態の場合、切替ソレノイドバルブ19で油路12と油路16とが連通されるので、オイルポンプ4の第2吐出口4cから油路12に吐出されたオイルがオイルポンプ4の吸入側に戻すための油路17に流入する。油路17を流れるオイルは、他端17bから吸入側の油路10の一端10aと吸入油溜室4dとの接続箇所辺りに流入する。油路10を流れるオイルは、一端10aから吸入油溜室4dに出ると、吸入用油路4d内で吸入口4a側に流れる(落下する)。
特に、油路17から出たオイルは、整流部材40の整流部40aの傾斜面40cに当たり、傾斜面40cに沿って流れる方向D1を変える。この際、オイルの流れる方向D1が、略90°変わる。これにより、油路17か出たオイルは、吸入油溜室4d内で吸入口4a側に流れる。したがって、油路10から出たオイルと油路17から出たオイルとは、吸入油溜室4d内で同じ方向の吸入口4a側に流れ、合流する。そして、この吸入油溜室4d内のオイルが、負圧により吸入口4aからオイルポンプ4内に吸入される。
第1実施形態に係る油圧回路1によれば、整流部材40の円錐台状の整流部40aが油路17に対してオセットして配置されることで、油路17から出たオイルを整流部40aの傾斜面40cによって吸入口4a側(吸入用油路(油路10、吸入油溜室4d)内のオイルの流れる方向と同じ方向)に整流することができる。これにより、油路17のオイルの流れる方向が吸入用油路内のオイルの流れる方向と直交しているが、油路10から吸入油溜室4dに出たオイルと油路17から出たオイルとの合流箇所でのキャビテーションの発生を抑制することができる。
第1実施形態に係る油圧回路1によれば、整流部材40の整流部40aの形状を円錐台状とし、その円錐台状の整流部40aを油路17に対してオフセットさせているので、整流部材40の組み付け時の回転位置に関係なく、油路17に対して同じ形状の傾斜面40cを対向させることができる。また、第1実施形態に係る油圧回路1によれば、整流部40aの円錐台状の単純な形状で整流できるので、整流部材40をノズル等を有する複雑な形状にする必要がない。そのため、整流部材40を小型化することができ、コストを抑えることができる。また、第1実施形態に係る油圧回路1によれば、整流部40aの傾斜面40cが凹状の曲面であるので、油路17から出たオイルを凹状の曲面の傾斜面40cに沿ってスムーズに整流することができる。
第1実施形態に係る油圧回路1によれば、整流部材40がシールプラグとして機能するので、整流部材40を別体の部品として追加する必要がなく、コストを抑えることができる。また、整流部材40を穴8aに挿入して、ねじ込んで組み付けるだけなので、ハウジング8への整流部材40の組み付けが容易である。
ここで、油圧回路1における整流部材の好適な配置の例として、油路17に対する整流部材41の配置について図4を参照して説明する。図4は、整流部材41の好適な配置の例を示す図である。図4では、整流部材41の外形状と油路17のみを示している。
整流部材41は、整流部41aと、固定部41bとからなる。整流部41aは、上述した整流部材40の整流部40aと同様の形状であり、周方向に連続して傾斜面41cが形成されている。固定部41bは、上述した整流部材40の固定部40bと同様の形成であり、他端部にはフランジ41dが形成されている。
整流部41aは、上述した整流部材40と同様に、整流部41a(整流部材41)の中心軸CA2が油路17の中心軸CA1に対して油路10の一端10aから出たオイルの流れる方向とは逆方向(吸入口4a側とは逆側)に所定量OS1’オフセットするように配置される。特に、整流部41aは、油路17の他端17bに対向する傾斜面41cにおける油路17側の端部41e(整流部41aの先端の端部)が油路17の外側(吸入口4a側とは逆側)に位置するように配置される。このように整流部41aが配置されるように、所定量OS1’が決められる。
このように整流部41aが配置されることで、油路17の他端17bに対向する傾斜面41cが油路17の外側(油路17の内周面17cよりも外側)から配置される。そのため、傾斜面41cには、油路17から出たオイルのうちの多くの量のオイルが当たる。その結果、傾斜面41cによって、多くの量のオイルを整流することができる。
さらに、整流部41は、傾斜面41cの幅(整流部41の径方向の長さ)が油路17の径よりも大きくなるように形成されると好ましい。このように傾斜面41cの幅を広くすることで、油路17の他端17bに対向する傾斜面41cが油路17の他端17b全体に対して配置される。そのため、傾斜面41cには、油路17から出たオイルのうちのより多くの量のオイルが当たる。その結果、傾斜面41cによって、より多くの量のオイルを整流することができる。
次に、図5及び図6を参照して、第2実施形態に係る油圧回路2について説明する。図5は、第2実施形態に係る油圧回路2の構成を示す図である。図6は、第2実施形態に係る整流部材60周辺を模式的に示す断面図である。図6には、油路が形成されたハウジング9の一部を示している。図6では、上側がオイルポンプ4(吸入口4a)側であり、下側がオイルパン5側である。油圧回路2は、バルブボディに構成される油圧回路の一部である。また、油圧回路2は、ハウジング9内に形成された油路を含む。
油圧回路2は、第1実施形態に係る油圧回路1と比較すると、第2吐出口4cから吐出されたオイルを吸入側に戻す箇所が異なり、この戻す箇所に応じて整流部材60の構成が異なる。以下では、この異なる点について詳細に説明する。
油圧回路2では、半吐出状態の場合に第2吐出口4cから吐出されたオイルを吸入側に戻すためのオイルの戻し用の油路20が油路10の途中に接続されている。油路20の一端は、第1実施形態に係る油路17と同様に、切替バルブ19に連通された油路16に接続される。油路20の他端20bは、油路10の途中の所定の箇所に接続される。なお、第2実施形態では、油路16と油路20により特許請求の範囲に記載の戻し用油路が構成される。
油路20は、油路10に対して直交する。油路20を流れるオイル(第2吐出口4cから吐出されたオイル)は、油路10を流れるオイルと合流して、油路10から吸入油溜室4dに供給される。油路20を流れるオイルの方向は、油路10内を流れるオイルに対して直交する方向である。油圧回路2には、油路20から出たオイルの流れをオイルポンプ4(吸入口4a)側(油路10内のオイルの流れる方向)に整流するために、整流部材60が設けられている。整流部材60は、整流部60aと、固定部60bと、軸部60cとからなる。なお、第1実施形態と同様に、ハウジング9には油路20を形成するための穴あけ加工後に整流部材60を組み付けるための穴9a(ねじ穴)が形成される。
整流部60aは、油路20から出たオイルの流れ方向を略90°変え、整流する部分である。整流部60aは、第1実施形態に係る整流部材40の整流部40aと同様の形状であり、周方向に連続して傾斜面60dが形成されている。整流部60aの長さ(中心軸CA4方向の長さ)は、例えば、油路10の半径程度か、油路10の半径よりも少し短い。整流部60aは、軸部60cの先端に設けられている。整流部60aは、油路10内に配置される。また、整流部60aは、油路20の他端20bに近い位置に配置される。したがって、油路20の他端20bから出たオイルは、傾斜面60dに当たり、傾斜面60dに沿って流れる方向D2が略90°変わる。
固定部60bは、整流部材60をハウジング9に固定すると共に、ハウジング9にあけられた穴を塞ぎオイル漏れを防止する部分である。固定部60bは、第1実施形態に係る整流部材40の固定部40bと同様の形状である。固定部60bの一端面には、固定部60bと同軸上に軸部60cが設けられている。固定部60bの他端部には、フランジ60eが形成されている。固定部60b(整流部材60)は、中心軸CA4が油路20の中心軸CA3に対してオイルポンプ4(吸入口4a)側とは逆側(オイルパン5側)に所定量OS2ずらした位置になるように配置されている。これにより、特に、固定部60bの先端側に軸部60cを介して設けられた整流部60aを油路20に対してオフセットさせて配置させる。
軸部60cは、整流部60aと固定部60bとを繋ぎ、油路10内を流れるオイルの流れを阻害しない部分である。軸部60cは、細長い円柱形状である。軸部60cの径は、整流部60aの最大径(固定部60bに最も近い側の径)よりも十分に小さい径である。また、軸部60cの径は、油路10の径よりの十分に小さい径である。軸部60cの長さは、例えば、油路10の半径程度か、油路10の半径よりも少し長い。軸部60cの少なくとも一部(全部を含む)は、油路10内に配置される。
この固定部60bが穴9aに挿入されて螺合されることで、整流部材60がハウジング9に任意の回転位置で固定される。この整流部材60と穴9aとの間の所定の箇所(固定部60bにおけるフランジ60eでの段差部)には、Oリング52が設けられている。
整流部材60がバルブボディ9に固定されることで、整流部60aが、油路10内の油路20側に、油路20の他端20bに対向して配置される。特に、整流部60aが、整流部60aの中心軸CA4が油路20の中心軸CA3に対して油路10内のオイルの流れる方向とは逆方向(オイルパン5側)に所定量OS2オフセットするように配置される。このように整流部60aが配置されることで、整流部60aの傾斜面60dが、中心軸CA4が中心軸CA3と一致する場合と比べて、オイルパン5側(図6に示す例の場合には下側)にずらした位置に配置される。これにより、傾斜面60dによって、油路20から出たオイルの流れる方向D2を略90°変え、オイルポンプ4(吸入口4a)側(油路10内のオイルの流れる方向)に整流することができる。オフセットさせる所定量OS2は、油路20から出たオイルが傾斜面60dに当たるように(特に、油路20から出たオイルが出来るだけ多く傾斜面60dに当たるように)、適合で決められる。なお、整流部材60は固定部60bにより所定の回転位置で組み付けられるが、何れの回転位置でも油路20の他端20bに対して傾斜面60dの形状は変わらない。
また、軸部60cの少なくとも一部が、油路10内に配置される。このように軸部60cが配置されることで、油路10内において細径の軸部60cの周りには大きな空間ができるので、油路10内を流れるオイル(オイルパン5から吸い上げられたオイル)を十分に流すことができる。
この整流部材60の作用について説明する。半吐出状態の場合、切替ソレノイドバルブ19で油路12と油路16とが連通されるので、オイルポンプ4の第2吐出口4cから油路12に吐出されたオイルが吸入側に戻すための油路20に流入する。油路20を流れるオイルは、他端20bから油路10の途中の所定の箇所に流入する。油路10を流れるオイルは、オイルパン5側からオイルポンプ4(吸入口4a)側へ流れる。この油路10を流れるオイルは、整流部材60が配置される箇所において、油路10内に配置される軸部60cの周りを通ることでスムーズに通過することができる。
特に、油路20から出たオイルは、整流部材60の整流部60aの傾斜面60dに当たり、傾斜面60dに沿って流れる方向D2を変える。この際、オイルの流れる方向D2が、略90°変わる。これにより、油路20から出たオイルは、油路10内に入ると、オイルポンプ4(吸入口4a)側に流れる。したがって、油路10内を流れるオイルと油路20から油路10に出たオイルとは、油路10内においてオイルポンプ4(吸入口4a)側に流れ、合流する。そして、油路10から出たオイルが吸入油溜室4dに流入し、吸入油溜室4d内のオイルが負圧により吸入口4aからオイルポンプ4内に吸入される。
第2実施形態に係る油圧回路2によれば、整流部材60の円錐台状の整流部60aが油路20に対してオセットして配置されることで、油路20から油路10に流入したオイルを整流部60aの傾斜面60dによってオイルポンプ4(吸入口4a)側(油路10内のオイルの流れる方向と同じ方向)に整流することができる。これにより、油路20のオイルの流れる方向が油路10内のオイルの流れる方向と直交しているが、油路10内を流れるオイルと油路20から油路10に流入したオイルとの合流箇所でのキャビテーションの発生を抑制することができる。
第2実施形態に係る油圧回路2によれば、第1実施形態と同様に、整流部材60の組み付け時の回転位置に関係なく、油路20に対して同じ形状の傾斜面60dを対向させることができる。また、第2実施形態に係る油圧回路2によれば、第1実施形態と同様に、整流部材60を複雑な形状にする必要がないので、整流部材60を小型化することができ、コストを抑えることができる。また、第2実施形態に係る油圧回路2によれば、第1実施形態と同様に、油路20から油路10に流入したオイルを凹状の曲面の傾斜面60dに沿ってスムーズに整流することができる。また、第2実施形態に係る油圧回路2によれば、整流部60aと固定部60bとを細い軸部60cで繋ぎ、軸部60cを油路10内に配置させることで、油路10内で軸部60cの周りにオイルパン5から吸い上げられたオイルが流れ、油路10内を流れるオイルの流れを阻害しない。
第2実施形態に係る油圧回路2によれば、第1実施形態と同様に、整流部材60がシールプラグとして機能するので、整流部材60を別体の部品として追加する必要がなく、コストを抑えることができる。また、整流部材60を穴9aに挿入して、ねじ込んで組み付けるだけなので、ハウジング9への整流部材60の組み付けが容易である。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では車両に搭載されるチェーン式のCVT3の油圧回路1に適用したが、ベルト式やトロイダル式のCVT、ATなどの他の自動変速機、自動変速機以外の装置の油圧回路にも適用可能であり、また、車両以外に搭載される装置の油圧回路にも適用可能である。また、上記実施形態ではエンジンを駆動源とする車両に適用したが、駆動源として電動モータを備える電気自動車、ハイブリッドカーなどにも適用可能である。
上記実施形態では機械式のベーンタイプのオイルポンプ4を適用したが、トロコイドタイプなどの他の機械式のオイルポンプ、電動オイルポンプも適用可能である。
上記実施形態では2つの吐出口4b,4cを有するオイルポンプ4に適用したが、3つ以上の吐出口を有するオイルポンプにも適用可能である。また、上記実施形態では1つの吸入口を有するオイルポンプに適用したが、2つ以上の吸入口を有するオイルポンプにも適用可能である。
上記実施形態では整流部40aを円錐台状(又は円錐状)としたが、多角錐状、多角推台状等の他の形状としてもよい。多角錐状や多角推台状とする場合、角数が多いほどよい。また、整流部40aの傾斜面40cを凹状の曲面としたが、凹状の曲面でなくてもよい。