以下、本発明の油圧制御装置の実施例を図面に基づき説明する。
[第1の実施例]
図1は非作動状態における第1の実施例の油圧制御装置の説明図である。なお、図1では、油圧制御装置のソレノイドバルブ5の構造を理解し易くするため、ソレノイドバルブ5の一部を断面で示してある。
図1に示すように、内燃機関1が、容積式のポンプ6を具備した作動油通路7によってオイルパン8に接続されている。この作動油通路7は、ポンプ6の吸入側に設けられ、オイルパン8からの低圧の作動油をポンプ6に吸入する吸入通路部7Aと、ポンプ6の吐出側に設けられ、ポンプ6からの高圧の作動油を内燃機関1のメインギャラリー2に吐出する吐出通路部7Bと、から構成されている。
ポンプ6は、内燃機関1によって駆動され、内燃機関1の回転数(機関回転数)に比例した流量の作動油を吐出する容積式のオイルポンプ、例えばトロコイドポンプ、外接ギアポンプ、ベーンポンプ、プランジャポンプ等である。本実施例で用いられるポンプ6の一例としては、本出願人によって出願された特開2014−177884号公報に記載の可変容量型ベーンポンプが挙げられる。
内燃機関1の回転数は、図示せぬ回転数計測部によって計測され、コントロールユニット9に出力される。
吐出通路部7Bには、ポンプ6から吐出された作動油中のスラッジ等の不純物を除去するオイルフィルタ10と、ポンプ6から吐出された作動油を冷却する図示せぬオイルクーラと、が設けられている。
さらに、吐出通路部7Bは、オイルフィルタ10とメインギャラリー2との間の位置に、メインギャラリー2に供給される作動油の油圧(メインギャラリー油圧)を検出する油圧センサ11が設けられている。この油圧センサ11によって検出された油圧は、コントロールユニット9に出力される。
油圧制御装置は、ソレノイドバルブ5を備えており、このソレノイドバルブ5は、作動油通路7の途中に設けられている。つまり、ソレノイドバルブ5は、導入通路12および吐出通路部7Bを介してポンプ6の吐出部に接続されているとともに、導出通路13および吸入通路部7Aを介してポンプ6の吸入部に接続されている。ソレノイドバルブ5は、ポンプ6の吐出部から吐出された高圧の作動油の一部を吐出通路部7Bおよび導入通路12を通して後述するバルブボディ14内に導入し、導出通路13および吸入通路部7Aを通してポンプ6の吸入部に選択的に戻す構成とされている。これにより、ポンプ6から吐出された作動油の油圧が、適宜減圧される。
ソレノイドバルブ5は、スプール式のバルブであり、スプール弁収容部であるバルブボディ14と、スプール弁15と、リテーナ16と、抜け規制ストッパ17と、付勢部材であるコイルばね18と、電磁アクチュエータ19と、を備えている。
バルブボディ14は、一端14aおよび他端14bを有する円筒状に形成されており、バルブボディ14の内部に、バルブボディ14の軸線方向に延びる摺動通路20を備えている。この摺動通路20内に、スプール弁15が、バルブボディ14の軸線方向に沿って摺動可能となるように配置されている。摺動通路20は、他端14b側に設けられた横断面円形の小径摺動通路部20Aと、一端14a側に設けられ、小径摺動通路部20Aと連通する横断面円形の大径摺動通路部20Bと、を備えている。大径摺動通路部20Bは、小径摺動通路部20Aよりも大きい内径を有している。
さらに、バルブボディ14の周囲壁には、小径摺動通路部20Aと連通した横断面円形の導入口21と、大径摺動通路部20Bと連通した横断面円形の導出口22と、が形成されている。
導入口21は、小径摺動通路部20Aと大径摺動通路部20Bとの境界に位置した段差部23に隣接した位置に、バルブボディ14の半径方向に沿って貫通形成されている。導入口21は、導入通路12を介して、ポンプ6とオイルフィルタ10との間の位置で吐出通路部7Bに接続されている。
一方、導出口22は、段差部23から一端14a側に多少離間した位置に、バルブボディ14の半径方向に沿って貫通形成されている。導出口22は、バルブボディ14の軸線方向から見て導入口21とオーバラップしている。導出口22は、導出通路13を介して吸入通路部7Aに接続されている。
ここで、以下の説明の便宜上、バルブボディ14の他端14bから一端14aへ向かう方向を、「バルブボディ14の軸線方向の一方向」と定義し、一方、バルブボディ14の一端14aから他端14bへ向かう方向を、「バルブボディ14の軸線方向の他方向」と定義する。
スプール弁15は、内部軸心方向に横断面円形の貫通孔24を有する円筒状をなしており、第1のランド部15Aと、第2のランド部15Bと、第1のランド部15Aと第2のランド部15Bとを連結し、両者15A,15Bよりも外径が小さい連結軸15Cと、を備えている。
第1のランド部15Aは、小径摺動通路部20Aの内径に対応した外径を有する円筒状に形成されている。さらに、第1のランド部15Aは、連結軸15C側に、導入口21からの作動油の油圧によってバルブボディ14の軸線方向の他方向への力を受ける環状の第1の受圧面25を有している。
第2のランド部15Bは、大径摺動通路部20Bの内径に対応した外径を有する円筒状に形成されている。さらに、第2のランド部15Bは、連結軸15C側に、導入口21からの作動油の油圧によってバルブボディ14の軸線方向の一方向への力を受ける環状の第2の受圧面26を有している。第2の受圧面26は、第1の受圧面25よりも大きい受圧面積を有している。
また、第2のランド部15Bは、その端面に円形の凹部27を備えており、この凹部27の底面に、コイルばね18が弾性的に当接される。
連結軸15Cは、他端14b側の連結軸15Cの端部が第1のランド部15Aに一体に結合され、かつ一端14a側の連結軸15Cの端部が第2のランド部15Bに一体に結合されることで、第1のランド部15Aと第2のランド部15Bとを互いに連結している。
かかるスプール弁15において、連結軸15Cの外周に、環状溝28が形成されており、この環状溝28に、導入口21が開口している。本実施例では、第2の受圧面26が第1の受圧面25よりも大きい受圧面積を有しているので、導入口21から環状溝28内に作動油が導入されているときに、より大きい油圧が第2の受圧面26に掛かる。これにより、スプール弁15は、バルブボディ14の軸線方向の一方向へ付勢される。
スプール弁15は、導入口21から導入された作動油の油圧が所定の開弁圧よりも低いときに摺動せず、導入口21と導出口22との連通を遮断する非作動状態となる。また、スプール弁15は、後述する電磁アクチュエータ19がスプール弁15をバルブボディ14の軸線方向の一方向へ付勢していない状態で、スプール弁15に掛かる油圧が所定の開弁圧に達すると、後述するコイルばね18の付勢力に打ち勝って摺動し、環状溝28を介して導入口21と導出口22とを連通させる作動状態となる。
リテーナ16は、浅皿状に形成されており、大径摺動通路部20Bにおいてコイルばね18が弾性的に当接する。リテーナ16の底部には、大径摺動通路部20Bの内周面と第2のランド部15Bの外周面との間の隙間を通して流れた作動油を通過させる円形のドレイン孔29が形成されている。
コイルばね18は、大径摺動通路部20B内においてスプール弁15の第2のランド部15Bとリテーナ16との間に圧縮状態で配置されている。つまり、コイルばね18は、コイルばね18の一端部がリテーナ16の底部に当接し、かつコイルばね18の他端部が第2のランド部15Bの凹部27の底面に当接するように、大径摺動通路部20B内に圧縮状態で配置されている。コイルばね18は、スプール弁15をバルブボディ14の軸線方向の他方向へ付勢する。
抜け規制ストッパ17は、環状をなしており、バルブボディ14の一端14a付近において、大径摺動通路部20Bの内周面に固定されている。抜け規制ストッパ17は、コイルばね18のばね力により、スプール弁15、コイルばね18およびリテーナ16がバルブボディ14の軸線方向の一方向へ移動して大径摺動通路部20Bの外部へと抜けることを規制する。また、環状の抜け規制ストッパ17の中央部には、大径摺動通路部20Bの内周面と第2のランド部15Bの外周面との間の隙間を通して流れた作動油をバルブボディ14の外部に排出するドレインポート30が貫通形成されている。
電磁アクチュエータ19は、筒状のアクチュエータ本体部19Aと、アクチュエータ本体部19Aの内周側に設けられた図示せぬコイルと、このコイル内を移動可能に設けられた図示せぬ鉄心と、鉄心と一体で動作するプッシュロッド19Bと、を備えている。電磁アクチュエータ19は、プッシュロッド19Bの先端が、小径摺動通路部20A内で第1のランド部15Aの端面31に当接し、貫通孔24の一端開口を閉じる姿勢で、バルブボディ14の他端14bに設けられている。
かかる電磁アクチュエータ19において、アクチュエータ本体部19A内のコイルに通電したときに、鉄心がコイルに引き込まれ、これに伴いプッシュロッド19Bがスプール弁15を押圧する。これにより、スプール弁15が、バルブボディ14の軸線方向の一方向へ付勢される。
電磁アクチュエータ19のコイルへの通電量は、デューティ比によって制御される。従って、電磁アクチュエータ19のプッシュロッド19Bによるスプール弁15への付勢力は、デューティ比を調整することにより可変に制御される。
なお、プッシュロッド19Bとスプール弁15の第1のランド部15Aとが一体となるように構成しても良い。この場合、ソレノイドバルブ5の部品点数が減少し、ソレノイドバルブ5の製作コストが安くなる。
かかるソレノイドバルブ5によるスプール弁15への付勢力は、機関回転数、メインギャラリー油圧、作動油水温、エンジン負荷等によって算出される内燃機関の要求油圧(図3参照)を達成するようにフィードバック制御される。ここで、「スプール弁15への付勢力」は、第2の受圧面26に掛かる油圧と電磁アクチュエータ19の付勢力との合力によってバルブボディ14の軸線方向の一方向へ作用する力である。
図1に示す油圧制御装置の非作動状態では、機関回転数が低く、ポンプ6からの作動油の吐出量が少なく、ソレノイドバルブ5のスプール弁15に掛かる油圧が、コイルばね18の付勢力よりも小さくなっている。従って、スプール弁15は、バルブボディ14の軸線方向の一方向へ移動できず、スプール弁15の第2のランド部15Bの外周面が導出口22を閉塞している。つまり、ソレノイドバルブ5は、摺動通路20内に位置した環状溝28を介した導入口21と導出口22との連通が遮断された非作動状態となっている。このため、環状溝28に導入された作動油は、導出口22および導出通路13を通してポンプ6の吸入通路部7Aへ導出されない。
図2は作動状態における第1の実施例の油圧制御装置の説明図である。なお、図2でも、油圧制御装置のソレノイドバルブ5の一部を断面で示してある。
図3は、機関回転数ならびにデューティ比とメインギャラリー油圧との相関関係を示すマップである。
図2に示す油圧制御装置の作動状態では、機関回転数が高まり、ポンプ6からの作動油の吐出量が多くなり、ソレノイドバルブ5のスプール弁15に掛かる油圧が、コイルばね18の付勢力よりも大きくなっている。これにより、スプール弁15は、コイルばね18の付勢力に抗してバルブボディ14の軸線方向の一方向へ移動し始める。
内燃機関の要求油圧に応じて、吐出圧に加えて、電磁アクチュエータ19の通電によりプッシュロッド19Bでスプール弁15を付勢することで、スプール弁15は、コイルばね18の付勢力に抗してバルブボディ14の軸線方向の一方向へさらに移動する。そして、スプール弁15の第2のランド部15Bの外周面によって閉塞されていた導出口22が、環状溝28に部分的に開口することで、図2に矢印Oで示すように、バルブボディ14内部の摺動通路20内に位置した環状溝28を介して導入口21と連通する。従って、ソレノイドバルブ5は、環状溝28を介して導入口21と導出口22とが連通した作動状態となり、環状溝28に導入された高圧の作動油が、導出口22および導出通路13を通してポンプ6の吸入通路部7Aへ導出される。これにより、メインギャラリー油圧が、図3のマップに破線で示す内燃機関の要求油圧に追従するように連続的に制御される。
図3に示すように、マップの横軸は、機関回転数を示しており、マップの縦軸は、ポンプ6から吐出され、メインギャラリー2に供給されるメインギャラリー油圧を示している。図3の破線は、内燃機関1に要求される油圧である内燃機関の要求油圧を示しており、この内燃機関の要求油圧は、機関回転数、メインギャラリー油圧、作動油水温、エンジン負荷等によってコントロールユニット9で算出される。
ポンプ6の吐出量は、機関回転数に比例するので、メインギャラリー油圧も、機関回転数に比例する。従って、機関回転数が低いときに、図3の実線Aで示すように、メインギャラリー油圧が概ね直線的に増加している。このとき、ソレノイドバルブ5のスプール弁15に掛かる油圧がコイルばね18の付勢力よりも小さくなっており、図1に示すように、スプール弁15は、バルブボディ14の軸線方向の一方向へ移動できず、スプール弁15の第2のランド部15Bの外周面が導出口22を閉塞している。
メインギャラリー油圧が所定のメインギャラリー油圧Ptに達したときに、スプール弁15に掛かる油圧は、所定の開弁圧(最大開弁圧)に達して、コイルばね18の付勢力に打ち勝ち、そして、ソレノイドバルブ5が開弁される。これにより、余剰の作動油がポンプ6の吸入側に戻されることで、メインギャラリー油圧が減圧され、図3の実線Bで示すように緩やかな勾配で直線的に増加する。なお、最大開弁圧は、内燃機関の最も高い要求油圧に基づいて設定されるものである。
また、電磁アクチュエータ19のコイルが通電されると、油圧による付勢に加えて、スプール弁15は、プッシュロッド19Bの付勢力によりバルブボディ14の軸線方向の一方向へ付勢される。このとき、図2に示すように、導出口22が、環状溝28に部分的に開口することで、摺動通路20内に位置した環状溝28を介して導入口21と連通する。これにより、メインギャラリー油圧が減圧される。
プッシュロッド19Bの付勢力は、電磁アクチュエータ19のコイルへの通電量が増加するほど、即ちデューティ比が大きくなるほど強くなる。図3に示すように、デューティ比が0のときに、ソレノイドバルブ5の開弁圧が、最大開弁圧となり、デューティ比の増加に伴い、図3にそれぞれ二点鎖線で示すような低下した開弁圧となる。
なお、デューティ比が0のときにソレノイドバルブ5の開弁圧を最大開弁圧とすることで、断線等によって電磁アクチュエータ19が機能しなくなったときでも、高い油圧によりソレノイドバルブ5のスプール弁15を開弁することができる。
コントロールユニット9で算出された内燃機関の要求油圧に基づいて、導入口21から導入された作動油の油圧とプッシュロッド19Bの付勢力との合力を調整することにより、メインギャラリー油圧が、内燃機関の要求油圧に追従するように連続的に制御される。
上記のように、第1の実施例では、ソレノイドバルブ5において、導入口21からの油圧に加えて、電磁アクチュエータ19の付勢力により、スプール弁15を付勢している。従って、デューティ比を調整することで、スプール弁15の移動を細かく制御することが可能となり、これにより、導出口22の環状溝28に対する開口割合も細かく制御される。よって、スプール弁15の開弁圧が連続的に制御され、そして、メインギャラリー油圧が、図3のマップに示す内燃機関の要求油圧に追従するように連続的に制御される。
また、第1の実施例では、スプール弁15は、電磁アクチュエータ19がスプール弁15をバルブボディ14の軸線方向の一方向へ付勢していない状態で、スプール弁15に掛かる油圧が所定の開弁圧に達すると、コイルばね18の付勢力に抗して開弁する。これにより、電磁アクチュエータ19が故障した場合であっても、スプール弁15が油圧によってバルブボディ14の軸線方向の一方向へ付勢されるので、メインギャラリー油圧を減圧することができる。
さらに、第1の実施例では、スプール弁15が、受圧面積が互いに異なる第1のランド部15Aおよび第2のランド部15Bを備えているので、受圧面積の差によって、スプール弁15をバルブボディ14の軸線方向に沿って移動させることができる。特に、第1の実施例では、バルブボディ14の一端14a側に位置した第2のランド部15Bの受圧面積の方が第1のランド部よりも大きいので、油圧によって、スプール弁15をバルブボディ14の軸線方向の一方向へと移動させることができる。
また、第1の実施例では、スプール弁15は、該スプール弁15に掛かる油圧が所定の開弁圧に達したか否かによって、導入口21と導出口22との連通を遮断する非作動状態と、環状溝28を介して導入口21と導出口22とを連通させる作動状態との間で切り替えられる。このように非作動状態と作動状態とを切り替えることで、メインギャラリー油圧を自動的に減圧することができる。
さらに、第1の実施例では、電磁アクチュエータ19によるスプール弁15への付勢力は、デューティ比によって可変に制御される。従って、バルブボディ14の軸線方向の一方向へのスプール弁15の移動をより細かく制御し、環状溝28を介した導入口21と導出口22との連通の程度を連続的に変えることができる。これにより、メインギャラリー油圧が、連続的に制御される。
また、第1の実施例では、電磁アクチュエータ19は、油圧によってスプール弁15が付勢される方向と同じ方向に、スプール弁15を付勢する。従って、メインギャラリー油圧を高圧に制御する場合には、電磁アクチュエータ19でスプール弁15を強く付勢する必要がなくなるので、電磁アクチュエータ19の消費電力を低減することができる。
さらに、第1の実施例では、電磁アクチュエータ19は、スプール弁15とは別体で形成されている。従って、電磁アクチュエータ19とスプール弁15とを一体に形成する場合に比べて、ソレノイドバルブ5の組立および分解が容易になる。
[第2の実施例]
図4は非作動状態における第2の実施例の油圧制御装置の説明図である。なお、図4では、油圧制御装置のソレノイドバルブ5およびリリーフバルブ32の構造を理解し易くするため、ソレノイドバルブ5の一部およびリリーフバルブ32を断面で示してある。
第2の実施例の油圧制御装置は、リリーフバルブ32と、第1の実施例と同様に構成されたソレノイドバルブ5と、を備えている。第2の実施例では、ソレノイドバルブ5が、リリーフバルブ32の開閉をアシスト制御する。ソレノイドバルブ5およびリリーフバルブ32は、図3のマップに示した内燃機関の要求油圧に追従するように、メインギャラリー油圧を制御する。
リリーフバルブ32は、スプール式のバルブであり、スプール弁収容部である第1のバルブボディ33と、第1のスプール弁34と、閉塞部材35と、第1のコイルばね36と、を備えている。
第1のバルブボディ33は、一端33aおよび他端33bを有する円筒形をなしており、第1のバルブボディ33の内部に、第1のバルブボディ33の軸線方向に延びる横断面円形の第1の摺動通路37を備えている。この第1の摺動通路37内に、第1のスプール弁34が、第1のバルブボディ33の軸線方向に沿って摺動可能となるように配置されている。この第1のバルブボディ33の周囲壁には、第1の摺動通路37と連通した横断面円形の第1の開口部38と、同じく第1の摺動通路37と連通した横断面円形の第2の開口部39と、が形成されている。
第1の開口部38は、第1のバルブボディ33の他端33bに寄った位置に、第1の摺動通路37と直交する径方向に貫通形成されている。第1の開口部38は、供給通路40に接続されており、この供給通路40は、ポンプ6とオイルフィルタ10との間の位置で吐出通路部7Bに接続されている。
第2の開口部39は、第1の開口部38よりも一端33a寄りに、同じく第1の摺動通路37と直交する径方向に貫通形成されている。第2の開口部39は、第1のバルブボディ33の軸線方向から見て第1の開口部38とオーバラップしている。第2の開口部39は、排出通路41に接続されており、この排出通路41は、ポンプ6の吸入通路部7Aに接続されている。
さらに、第1のバルブボディ33の他端33bには、第1の摺動通路37と連通した第3の開口部42が形成されており、この第3の開口部42は、導出通路13を介してソレノイドバルブ5の導出口22に接続されている。
ここで、以下の説明の便宜上、第1のバルブボディ33の他端33bから一端33aへ向かう方向を、「第1のバルブボディ33の軸線方向の一方向」と定義し、一方、第1のバルブボディ33の一端33aから他端33bへ向かう方向を、「第1のバルブボディ33の軸線方向の他方向」と定義する。
第1のスプール弁34は、第1のランド部34Aと、第2のランド部34Bと、第1のランド部34Aと第2のランド部34Bとを連結し、両者34A,34Bよりも外径が小さい連結軸34Cと、を備えている。
第1のランド部34Aは、第1の摺動通路37の内径に対応した外径を有した円柱状に形成されている。さらに、第1のランド部34Aは、連結軸34C側に、第1の開口部38から供給された作動油の油圧を受ける環状の第1の受圧面43を有している。また、第1のランド部34Aは、第3の開口部42から供給された作動油の油圧を受ける円形の受圧面73を有している。第1のランド部34Aは、第2のランド部34Bと同じ外径を有している。
第2のランド部34Bは、同じく第1の摺動通路37の内径に対応した外径を有した円柱状に形成されている。さらに、第2のランド部34Bは、連結軸34C側に、第1の開口部38から導入された作動油の油圧を受ける環状の第2の受圧面44を有している。第2の受圧面44は、第1の受圧面43と同じ受圧面積を有している。
また、第2のランド部34Bは、その端面に円形の凹部45を備えており、この凹部45の底面に、第1のコイルばね36が弾性的に当接される。
連結軸34Cは、他端33b側の連結軸34Cの端部が第1のランド部34Aに一体に結合され、かつ一端33a側の連結軸34Cの端部が第2のランド部34Bに一体に結合されることで、第1のランド部34Aと第2のランド部34Bとを互いに連結している。
かかる第1のスプール弁34において、連結軸34Cの外周に、第1の環状溝46が形成されており、この第1の環状溝46に、第1の開口部38が開口している。第1のスプール弁34は、該第1のスプール弁34に掛かる油圧が所定の開弁圧に達すると、後述する第1のコイルばね36の付勢力に打ち勝って摺動し、第1の環状溝46を介して導入口21と導出口22とを連通させる作動状態となる。
閉塞部材35は、円形の板状をなす蓋部35Aと、該蓋部35Aの一方の面から筒状に突出する突出部35Bと、を備えている。閉塞部材35は、突出部35Bの外周面に形成された雄ねじ部を、第1のバルブボディ33の一端33a側の内周面に形成された雌ねじ部にねじ込むことで、第1のバルブボディ33の一端33a側の開口面を閉塞する。
第1のコイルばね36は、第1の摺動通路37内において、第2のランド部34Bと閉塞部材35との間の付勢部材収容部47に圧縮状態で配置されている。つまり、第1のコイルばね36は、該第1のコイルばね36の一端部が閉塞部材35の面に当接し、かつ第1のコイルばね36の他端部が第2のランド部34Bの凹部45の底面に当接するように、付勢部材収容部47内に圧縮状態で配置されている。
また、第1のバルブボディ33の周囲壁には、第2のランド部34Bと閉塞部材35との間の位置に、付勢部材収容部47内の空気を第1のバルブボディ33の外部に逃がす第4の開口部48が形成されている。
第2の実施例のソレノイドバルブ5は、第1の実施例のソレノイドバルブ5と同じ構造であるが、第1の実施例とは、構成要素の名称および符号が多少異なっている。
第2の実施例の「第2のバルブボディ49」、「第2のスプール弁50」および「第2のコイルばね51」は、第1の実施例の「バルブボディ14」、「スプール弁15」および「コイルばね18」にそれぞれ相当する。同様に、第2の実施例の「第3のランド部50A」、「第4のランド部50B」、「連結軸50C」、「第3の受圧面53」および「第4の受圧面54」は、第1の実施例の「第1のランド部15A」、「第2のランド部15B」、「連結軸15C」、「第1の受圧面25」および「第2の受圧面26」にそれぞれ相当する。同様に、第2の実施例の「第2の摺動通路52」および「第2の環状溝55」は、第1の実施例の「摺動通路20」および「環状溝28」にそれぞれ相当する。さらに、同様に、第2の実施例の「第2のバルブボディ49の軸線方向の一方向」および「第2のバルブボディ49の軸線方向の他方向」は、第1の実施例の「バルブボディ14の軸線方向の一方向」および「バルブボディ14の軸線方向の他方向」にそれぞれ相当する。
第2の実施例では、連結軸50Cの外周に、第2の環状溝55が形成されている。さらに、第4のランド部50Bの第4の受圧面54の受圧面積が、第3のランド部50Aの第3の受圧面53の受圧面積よりも大きい。従って、第2の環状溝55内に作動油が導入されたときに、第3の受圧面53と第4の受圧面54との受圧面積の差により、第2のスプール弁50は、スプール弁収容部である第2のバルブボディ49の軸線方向の一方向へ付勢される。
第2の実施例では、導入通路12は、オイルフィルタ10の下流側で吐出通路部7Bに接続されるとともに、第2のバルブボディ49の導入口21に接続されている。従って、導入口21に、オイルフィルタ10を通過した作動油が導入される。
また、導出通路13は、第1のバルブボディ33の第3の開口部42に接続されるとともに、第2のバルブボディ49の導出口22に接続されている。
図4に示す油圧制御装置の非作動状態では、機関回転数が低く、ポンプ6からの作動油の吐出量が少なく、ソレノイドバルブ5の第2のスプール弁50の第4の受圧面54に掛かる油圧が、第2のコイルばね51の付勢力よりも小さくなっている。従って、第2のスプール弁50は、第2の摺動通路52内で第2のバルブボディ49の軸線方向の一方向へ移動できず、第2のスプール弁50の第4のランド部50Bの外周面が導出口22を閉塞している。つまり、ソレノイドバルブ5は、導入口21と導出口22との連通が遮断される非作動状態となっている。従って、第2の環状溝55に導入された作動油は、導出口22および導出通路13を通してリリーフバルブ32の第1のバルブボディ33の第3の開口部42に導出されない。
図5は作動状態における第2の実施例の油圧制御装置の説明図である。なお、図4と同様に、図5でも、油圧制御装置のソレノイドバルブ5の一部およびリリーフバルブ32を断面で示してある。
図5に示す油圧制御装置の作動状態では、機関回転数が高まり、ポンプ6からの作動油の吐出量が多くなり、ソレノイドバルブ5の第2のスプール弁50に掛かる油圧が、第2のコイルばね51の付勢力よりも大きくなっている。これにより、第2のスプール弁50は、第2のコイルばね51の付勢力に抗して第2のバルブボディ49の軸線方向の一方向へ移動し始める。そして、導出口22が第2の環状溝55に部分的に開口する。
内燃機関の要求油圧に応じて、吐出圧に加えて、電磁アクチュエータ19のコイルへの通電によりプッシュロッド19Bで第2のスプール弁50を付勢することで、吐出圧との合力で、第2のスプール弁50は、第2のコイルばね51の付勢力に抗して第2のバルブボディ49の軸線方向の一方向へさらに移動する。そして、第2の環状溝55に部分的に開口していた導出口22がさらに開口することで、図5に矢印Oで示すように、第2のバルブボディ49内部の第2の摺動通路52内に位置した第2の環状溝55を介して導入口21と導出口22とが連通する。これにより、より多量の作動油が、導出口22および導出通路13を通してリリーフバルブ32の第1のバルブボディ33の第3の開口部42へ導出される。
第3の開口部42に供給される作動油の油圧が所定圧よりも小さいときは、受圧面73に掛かる油圧が第1のコイルばね36の付勢力に打ち勝つことができず、第1のスプール弁34は、第1のバルブボディ33の軸線方向の一方向へ移動しない。
第3の開口部42の油圧が所定圧よりも高くなると、リリーフバルブ32の第1のスプール弁34が、油圧により、第1のコイルばね36の付勢力に抗して第1のバルブボディ33の軸線方向の一方向へ付勢されることで、該軸線方向の一方向へ移動する。そして、第1のスプール弁34の第2のランド部34Bの外周面によって閉塞されていた第2の開口部39が、図5に矢印Pで示すように、第1のバルブボディ33内部の第1の摺動通路37内に位置した第1の環状溝46を介して第1の開口部38と連通する。従って、リリーフバルブ32は、第1の環状溝46を介して第1の開口部38と第2の開口部39とが連通した作動状態となり、第1の環状溝46に導入された高圧の作動油が、第2の開口部39および排出通路41を通してポンプ6の吸入通路部7Aへ排出される。これにより、メインギャラリー油圧が、図3のマップに示す内燃機関の要求油圧に追従するように連続的に制御される。
上記のように、第2の実施例では、油圧制御装置が、リリーフバルブ32と、該リリーフバルブ32に接続されたソレノイドバルブ5とを備えており、ポンプ6からの作動油を、ソレノイドバルブ5を通してリリーフバルブ32内に導入するようにしてある。ソレノイドバルブ5は、リリーフバルブ32の第3の開口部42への作動油の供給を切り替えるのみに用いられるので、小型のソレノイドバルブ5を用いることができる。従って、小型のソレノイドバルブ5と、大型のリリーフバルブ32と、を用いることで、ポンプ6からのより多量の作動油をリリーフバルブ32の第1の開口部38に供給し、第1の環状溝46および第2の開口部39を通してポンプ6の吸入側に戻すことができる。これにより、メインギャラリー油圧が、図3のマップに示す内燃機関の要求油圧に追従するように連続的に制御される。上記の小型のソレノイドバルブ5および大型のリリーフバルブ32を用いた制御は、特に、ポンプ6が大型である場合に効果的である。
ソレノイドバルブ5は、VTC用制御バルブと共用することが可能となり、これにより、バルブの製造コストを削減することができる。
また、第2の実施例では、第1のスプール弁34は、第3の開口部42から供給された作動油の油圧によって付勢される方向とは逆方向に、第1のコイルばね36によって付勢される。従って、メインギャラリー油圧を最大値に制御するときには、第3の開口部42からの高い油圧を第1のスプール弁34に作用することになり、電磁アクチュエータ19による付勢力を大きくする必要がない。よって、ソレノイドバルブ5の消費電力を低減することができる。
さらに、第2の実施例では、メインギャラリー油圧と同じ油圧によって第2のスプール弁50を制御し、この第2のスプール弁50の制御により第1のスプール弁34を開弁することから、リリーフバルブ32の制御の精度が向上する。
また、第2の実施例では、受圧面73に掛かる油圧と、この油圧とは逆方向に作用する第1の受圧面43に掛かる油圧とによって、第1のスプール弁34の移動が細かく調整される。従って、メインギャラリー油圧を精度良く制御することができる。
[第3の実施例]
図6は非作動状態における第3の実施例の油圧制御装置の説明図である。なお、図6では、油圧制御装置のソレノイドバルブ5およびリリーフバルブ32の構造を理解し易くするため、ソレノイドバルブ5の一部およびリリーフバルブ32を断面で示してある。
第3の実施例では、油圧制御装置は、リリーフバルブ32と、第1の実施例とほぼ同様に構成されたソレノイドバルブ5と、を備えている。第3の実施例では、ソレノイドバルブ5が、リリーフバルブ32の開閉をアシスト制御する。ソレノイドバルブ5およびリリーフバルブ32は、図3のマップに示した内燃機関の要求油圧に追従するように、メインギャラリー油圧を制御する。
リリーフバルブ32は、スプール式のバルブであり、スプール弁収容部である第1のバルブボディ56と、第1のスプール弁57と、閉塞部材35と、第1のコイルばね58と、を備えている。
第1のバルブボディ56は、一端56aおよび他端56bを有した円筒形をなしており、第1のバルブボディ56の内部に、第1のバルブボディ56の軸線方向に延びる横断面円形の第1の摺動通路59を備えている。この第1の摺動通路59内に、第1のスプール弁57が、第1のバルブボディ56の軸線方向に沿って摺動可能となるように配置されている。第1のバルブボディ56の他端56bには、第1の摺動通路59と連通した第1の開口部60が形成されている。第1の開口部60は、供給通路40に接続されており、この供給通路40は、ポンプ6とオイルフィルタ10との間の位置で吐出通路部7Bに接続されている。
また、第1のバルブボディ56の周囲壁には、第1の摺動通路59と連通した横断面円形の第2の開口部61が形成されている。第2の開口部61は、排出通路41を介してポンプ6の吸入側の吸入通路部7Aに接続されている。
第1のスプール弁57は、その端面に円形凹部62を有するカップ状に形成されており、この凹部62の底面に、第1のコイルばね58が弾性的に当接される。
閉塞部材35は、円形の板状をなす蓋部35Aと、該蓋部35Aの一方の面から筒状に突出する突出部35Bと、を備えている。閉塞部材35は、突出部35Bの外周面に形成された雄ねじ部を、第1のバルブボディ56の一端56a側の内周面に形成された雌ねじ部にねじ込むことで、第1のバルブボディ56の一端56a側の開口面を閉塞する。
第1のコイルばね58は、例えばコイルばねであり、第1の摺動通路59内において、第1のスプール弁57と閉塞部材35との間の付勢部材収容部63に圧縮状態で配置されている。つまり、第1のコイルばね58は、第1のコイルばね58の一端部が閉塞部材35の面に当接し、かつ第1のコイルばね58の他端部が第1のスプール弁57の凹部62の底面に当接するように、第1の摺動通路59内に圧縮状態で配置されている。第1のコイルばね58の付勢力は、内燃機関の最も低い要求油圧によって第1のスプール弁57が第1のバルブボディ56の一端56a側に付勢されるときの力以上に設定されている。
また、第1のバルブボディ56の周囲壁には、第1のスプール弁57と閉塞部材35との間の位置に、横断面円形の第3の開口部64が形成されている。第3の開口部64は、導出通路13を介してソレノイドバルブ5の第2のバルブボディ65の導出口22に接続されている。
第3の実施例のソレノイドバルブ5は、導出口22の形成箇所を除いて第1の実施例のソレノイドバルブ5と同じ構造であり、第1の実施例とは、構成要素の名称および符号が多少異なっている。
第3の実施例の「第2のバルブボディ65」、「第2のスプール弁66」および「第2のコイルばね67」は、第1の実施例の「バルブボディ14」、「スプール弁15」および「コイルばね18」にそれぞれ相当する。同様に、第3の実施例の「第3のランド部66A」、「第4のランド部66B」、「連結軸66C」、「第3の受圧面69」および「第4の受圧面70」は、第1の実施例の「第1のランド部15A」、「第2のランド部15B」、「連結軸15C」、「第1の受圧面25」および「第2の受圧面26」にそれぞれ相当する。同様に、第3の実施例の「第2の摺動通路68」、「小径摺動通路部68A」、「大径摺動通路部68B」および「第2の環状溝71」は、第1の実施例の「摺動通路20」、「小径摺動通路部20A」、「大径摺動通路部20B」および「環状溝28」にそれぞれ相当する。さらに、同様に、第3の実施例の「第2のバルブボディ65の軸線方向の一方向」および「第2のバルブボディ65の軸線方向の他方向」は、第1の実施例の「バルブボディ14の軸線方向の一方向」および「バルブボディ14の軸線方向の他方向」にそれぞれ相当する。
第3の実施例では、連結軸66Cの外周に、第2の環状溝71が形成されている。さらに、第4のランド部66Bの第4の受圧面70の受圧面積が、第3のランド部66Aの第3の受圧面69の受圧面積よりも大きい。従って、第2の環状溝71内に作動油が導入されたときに、第3の受圧面69と第4の受圧面70との受圧面積の差により、第2のスプール弁66は、スプール弁収容部である第2のバルブボディ65の軸線方向の一方向へ付勢される。
第3の実施例では、第1の実施例とは異なり、導出口22が、導入口21よりも他端65b側の位置で、大径摺動通路部68Bではなく、小径摺動通路部68Aと連通するように第2のバルブボディ65の周囲壁に形成されている。導出口22は、第2のバルブボディ65の軸線方向から見て導入口21とオーバラップしている。導出口22は、導出通路13を介して第1のバルブボディ56の第3の開口部64に接続されている。
なお、導入口21は、第2の実施例と同様に、導入通路12を介して吐出通路部7Bに接続されている。
図6に示す油圧制御装置の非作動状態では、機関回転数が低く、ポンプ6からの作動油の吐出量が少なく、第2のスプール弁66に掛かる油圧が、第2のコイルばね67の付勢力よりも小さくなっている。従って、第2のコイルばね67は、第2のバルブボディ65の軸線方向の他方向に第2のスプール弁66を付勢しており、図6に矢印Oで示すように、導入口21が、第2のバルブボディ65内部の第2の摺動通路68内に位置した第2の環状溝71を介して導出口22と連通している。これにより、第2の環状溝71に導入された作動油が、導出口22、導出通路13およびリリーフバルブ32の第1のバルブボディ56の第3の開口部64を通して第1のバルブボディ56の付勢部材収容部63に供給される。
そして、リリーフバルブ32において、第1のスプール弁57は、第1のコイルばね58の付勢力と、第3の開口部64から付勢部材収容部63内に供給された作動油の油圧との合力によって第1のバルブボディ56の軸線方向の他方向へ付勢されている。このとき、第1のスプール弁57の外周面は、第2の開口部61を閉塞している。つまり、リリーフバルブ32は、第1の摺動通路59を介した第1の開口部60と第2の開口部61との連通が遮断された非作動状態となっている。このため、ポンプ6の吐出部からの作動油は、第1の開口部60、第1の摺動通路59、第2の開口部61および排出通路41を通してポンプ6の吸入通路部7Aに導出されない。
図7は作動状態における第3の実施例の油圧制御装置の説明図である。なお、図6と同様に、図7でも、油圧制御装置のソレノイドバルブ5の一部およびリリーフバルブ32を断面で示してある。
図7に示す油圧制御装置の作動状態では、機関回転数が高まり、ポンプ6からの作動油の吐出量が多くなり、第2のスプール弁66に掛かる油圧が、第2のコイルばね67の付勢力よりも大きくなっている。これにより、第2のスプール弁66は、第2のコイルばね67の付勢力に抗して第2のバルブボディ65の軸線方向の一方向へ移動し始める。そして、導出口22が第2の摺動通路68の小径摺動通路部68Aに部分的に開口する。
内燃機関の要求油圧に応じて、吐出圧に加えて、電磁アクチュエータ19のコイルへの通電によりプッシュロッド19Bで第2のスプール弁66を付勢する。これによって、第2のスプール弁66は、第2のコイルばね67の付勢力に抗して第2のバルブボディ65の軸線方向の一方向へさらに移動する。そして、第2の摺動通路68に部分的に開口していた導出口22がさらに開口することで、図7に矢印Qで示すように、第2のバルブボディ65内部の第2の摺動通路68の小径摺動通路部68Aを介して導出口22と第2のスプール弁66の貫通孔24とが連通する。これにより、作動油が、リリーフバルブ32の第1のバルブボディ56内の付勢部材収容部63から第3の開口部64、導出通路13、導出口22を通して小径摺動通路部68Aに供給される。小径摺動通路部68A内の作動油は、図7に矢印Qで示すように、第2のスプール弁66の貫通孔24および抜け規制ストッパ17のドレインポート30を通して第2のバルブボディ65の外部に排出される。
この作動油の排出に伴い、リリーフバルブ32では、第1のスプール弁57が、第1の開口部60からの高圧の油圧により、第1のコイルばね58の付勢力と付勢部材収容部63内の作動油の油圧との合力に抗して、第1のバルブボディ56の軸線方向の一方向へ付勢されることで、該軸線方向の一方向へ移動する。そして、第1のスプール弁57の外周面によって閉塞されていた第2の開口部61が、第1の摺動通路59を介して第1の開口部60と連通する。従って、リリーフバルブ32は、図7に矢印Rで示すように、第1のバルブボディ56内部の第1の摺動通路59を介して第1の開口部60と第2の開口部61とが連通した作動状態となり、第1の摺動通路59に導入された高圧の作動油が、第2の開口部61および排出通路41を通してポンプ6の吸入通路部7Aへ排出される。これにより、メインギャラリー油圧が、図3のマップに示す内燃機関の要求油圧に追従するように連続的に制御される。
上記のように、第3の実施例では、リリーフバルブ32の第1のスプール弁57が、第3の開口部64から付勢部材収容部63に供給された油圧によって付勢される方向と同じ方向に、第1のコイルばね58によって付勢される。従って、電磁アクチュエータ5の作動によって付勢部材収容部63の内圧を細かく制御することができるので、リリーフバルブ32の制御の精度が向上する。
さらに、第3の実施例では、第1のスプール弁57がランド部を有していないので、第1のスプール弁57の構造を簡素化することができる。
[第4の実施例]
図8は非作動状態における第4の実施例の油圧制御装置の説明図である。なお、図8では、油圧制御装置のソレノイドバルブ5およびリリーフバルブ32の構造を理解し易くするため、ソレノイドバルブ5の一部およびリリーフバルブ32を断面で示してある。
第4の実施例では、油圧制御装置は、第2の実施例と同様に構成されたリリーフバルブ32と、第3の実施例と同様に構成されたソレノイドバルブ5と、を備えている。第4の実施例では、ソレノイドバルブ5が、リリーフバルブ32の開閉をアシスト制御する。ソレノイドバルブ5およびリリーフバルブ32は、図3のマップに示した内燃機関の要求油圧に追従するように、メインギャラリー油圧を制御する。
第4の実施例では、第1のバルブボディ33の第1の開口部38および第2の開口部39が、第2の実施例と同様に供給通路40および排出通路41にそれぞれ接続されているが、第3の開口部42および第4の開口部48の接続が、第2の実施例とは異なっている。
第1のバルブボディ33の第3の開口部42は、導入通路12の分岐通路72に接続されている。
第1のバルブボディ33の第4の開口部48は、導出通路13を介して第2のバルブボディ65の導出口22に接続されている。
かかるリリーフバルブ32およびソレノイドバルブ5は、図3に示す内燃機関の要求油圧に追従するようにメインギャラリー油圧を制御する。
図8に示す油圧制御装置の非作動状態では、機関回転数が低く、ポンプ6からの作動油の吐出量が少なく、第2のスプール弁66に掛かる油圧が、第2のコイルばね67の付勢力よりも小さくなっている。従って、第2のバルブボディ65の軸線方向の他方向に第2のスプール弁66を付勢しており、図8に矢印Oで示すように、導入口21が、第2のバルブボディ65内部の第2の環状溝71を介して導出口22と連通している。これにより、第2の環状溝71に導入された作動油が、導出口22、導出通路13およびリリーフバルブ32の第1のバルブボディ33の第4の開口部48を通して第1のバルブボディ33の付勢部材収容部47に供給される。
そして、リリーフバルブ32において、第1のスプール弁34は、第1のコイルばね36の付勢力と、第4の開口部48から供給された作動油の油圧との合力によって第1のバルブボディ33の軸線方向の他方向へ付勢されている。このとき、第1のスプール弁34の第1のランド部34Aの外周面は、第2の開口部39を閉塞している。つまり、リリーフバルブ32は、第1の開口部38と第2の開口部39との連通が遮断される非作動状態となっている。このため、ポンプ6の吐出部からの作動油が第1の開口部38、第1の環状溝46、第2の開口部39および排出通路41を通してポンプ6の吸入通路部7Aに導出されない。
図9は作動状態における第4の実施例の油圧制御装置の説明図である。なお、図8と同様に、図9でも、油圧制御装置のソレノイドバルブ5の一部およびリリーフバルブ32を断面で示してある。
図9に示す油圧制御装置の作動状態では、機関回転数が高まり、ポンプ6からの作動油の吐出量が多くなり、第2のスプール弁66に掛かる油圧が、第2のコイルばね67の付勢力よりも大きくなっている。これにより、第2のスプール弁66は、第2のコイルばね67の付勢力に抗して第2のバルブボディ65の軸線方向の一方向へ移動し始める。そして、導出口22が第2の摺動通路68の小径摺動通路部68Aに部分的に開口する。
内燃機関の要求油圧に応じて、吐出圧に加えて、電磁アクチュエータ19のコイルへの通電によりプッシュロッド19Bで第2のスプール弁66を付勢することで、第2のスプール弁66は、第2のコイルばね67の付勢力に抗して第2のバルブボディ65の軸線方向の一方向へさらに移動する。そして、小径摺動通路部68Aに部分的に開口していた導出口22がさらに開口することで、図9に矢印Qで示すように、第2の摺動通路68の小径摺動通路部68Aを介して導出口22と第2のスプール弁66の貫通孔24とが連通する。これにより、より多量の作動油が、リリーフバルブ32の第1のバルブボディ33内の付勢部材収容部47から第4の開口部48、導出通路13、導出口22を通して小径摺動通路部68Aに供給される。小径摺動通路部68A内の作動油は、図9に矢印Qで示すように、第2のスプール弁66の貫通孔24および抜け規制ストッパ17のドレインポート30を通して第2のバルブボディ65の外部に排出される。
この作動油の排出に伴い、リリーフバルブ32では、第1のスプール弁34が、第3の開口部42からの油圧により、第1のコイルばね36の付勢力と付勢部材収容部47内の作動油の油圧との合力に抗して、第1のバルブボディ33の軸線方向の一方向へ付勢されることで、該軸線方向の一方向へ移動する。そして、第1のスプール弁34の第2のランド部34Bの外周面によって閉塞されていた第2の開口部39が、図9に矢印Pで示すように、第1のバルブボディ33内部の第1の摺動通路37を介して第1の開口部38と連通する。従って、リリーフバルブ32は、第1の摺動通路37内に位置した第1の環状溝46を介して第1の開口部38と第2の開口部39とが連通した作動状態となり、第1の環状溝46に導入された高圧の作動油が、第2の開口部39および排出通路41を通してポンプ6の吸入通路部7Aへ排出される。これにより、メインギャラリー油圧が、図3のマップに示す内燃機関の要求油圧に追従するように連続的に制御される。
上記のように、第4の実施例では、第1のバルブボディ33の第3の開口部42が導入通路12の分岐通路72に接続されており、さらに、第2のバルブボディ65の導出口22が、第1のバルブボディ33の第4の開口部48に接続されている。従って、内燃機関1の低回転時に、ポンプ6からの低い油圧が第3の開口部42と付勢部材収容部47との双方に作用するので、第1のスプール弁34が第1のバルブボディ33の軸線方向の一方向と他方向とから同じ力で付勢される。これにより、ポンプ6からメインギャラリー2までの圧損が大きい場合にも、リリーフバルブ32が設定圧以下で誤作動することを抑制することができる。
なお、上記各実施例では、スプール弁収容部がバルブボディである例を開示したが、内燃機関やオイルポンプにスプール弁収容部を直接形成することが可能である。
以上説明した実施例に基づく油圧制御装置としては、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
油圧制御装置は、その一つの態様において、ポンプから吐出された作動油を内部に導入する導入口、および前記内部の作動油を前記ポンプの吸入側に導出する導出口を有するスプール弁収容部と、前記スプール弁収容部の内部に摺動可能に配置され、前記導入口から前記内部に導入された作動油の油圧によって前記スプール弁収容部の軸線方向の一方向へ付勢されるスプール弁と、前記スプール弁を前記スプール弁収容部の軸線方向の他方向へ付勢する付勢部材と、前記付勢部材の付勢力に抗して前記スプール弁を前記スプール弁収容部の軸線方向の一方向へ付勢可能な電磁アクチュエータと、を備えている。
油圧制御装置の好ましい態様において、前記スプール弁は、前記電磁アクチュエータが前記スプール弁を前記スプール弁収容部の軸線方向の一方向へ付勢していない状態で、前記スプール弁に掛かる油圧が所定の開弁圧に達すると、前記付勢部材の付勢力に抗して開弁する。
別の好ましい態様では、前記油圧制御装置の態様のいずれかにおいて、前記スプール弁は、前記導入口からの作動油の油圧によって前記スプール弁収容部の軸線方向の他方向への力を受ける第1のランド部と、前記導入口からの作動油の油圧によって前記スプール弁収容部の軸線方向の一方向への力を受ける、前記第1のランド部とは異なる受圧面積を有した第2のランド部と、を備えている。
別の好ましい態様では、前記油圧制御装置の態様のいずれかにおいて、前記第2のランド部の受圧面積は、前記第1のランド部の受圧面積よりも大きい。
別の好ましい態様では、前記油圧制御装置の態様のいずれかにおいて、前記スプール弁は、前記スプール弁に掛かる油圧が所定の開弁圧に達したか否かによって、前記導入口と前記導出口との連通を遮断する非作動状態と、前記内部を介して前記導入口と前記導出口とを連通させる作動状態との間で切り替えられる。
別の好ましい態様では、前記油圧制御装置の態様のいずれかにおいて、前記電磁アクチュエータによる前記スプール弁への付勢力は、デューティ比によって可変に制御される。
別の好ましい態様では、前記油圧制御装置の態様のいずれかにおいて、前記電磁アクチュエータは、前記導入口からの作動油の油圧によって前記スプール弁が付勢される方向と同じ方向に、前記スプール弁を付勢する。
別の好ましい態様では、前記油圧制御装置の態様のいずれかにおいて、前記電磁アクチュエータは、前記スプール弁とは別体で形成されている。
油圧制御装置は、別の態様において、ポンプから吐出された作動油を内部に導入する第1の開口部、前記内部の作動油を前記ポンプの吸入側に導出する第2の開口部、および前記内部と連通する第3の開口部を有する第1のスプール弁収容部と、前記内部に摺動可能に配置され、前記第3の開口部から供給された作動油の油圧によって前記第1のスプール弁収容部の軸線方向の一方向へ付勢される第1のスプール弁と、前記第1のスプール弁を前記第1のスプール弁収容部の軸線方向の他方向へ付勢する第1の付勢部材と、前記ポンプから吐出された作動油を内部に導入する導入口、および前記内部と連通し、かつ前記第3の開口部に接続された導出口を有する第2のスプール弁収容部と、前記第2のスプール弁収容部の内部に摺動可能に配置され、前記導入口から前記第2のスプール弁収容部の内部に導入された作動油の油圧によって前記第2のスプール弁収容部の軸線方向の一方向へ付勢される第2のスプール弁と、前記第2のスプール弁を前記第2のスプール弁収容部の軸線方向の他方向へ付勢する第2の付勢部材と、前記第2の付勢部材の付勢力に抗して前記第2のスプール弁を前記第2のスプール弁収容部の軸線方向の一方向へ付勢可能な電磁アクチュエータと、を備えている。
油圧制御装置の好ましい態様において、前記第1のスプール弁は、前記第3の開口部から供給された作動油の油圧によって付勢される方向とは逆方向に、前記第1の付勢部材によって付勢され、前記第3の開口部から供給される作動油の油圧が所定圧よりも小さいときに、前記第1のスプール弁収容部の内部を介した前記第1の開口部と前記第2の開口部との連通を遮断し、前記第3の開口部から供給される作動油の油圧が前記所定圧以上のときに、前記第1のスプール弁収容部の内部を介して前記第1の開口部と前記第2の開口部とを連通させる。
油圧制御装置は、さらに別の態様において、ポンプから吐出された作動油を内部に導入する第1の開口部、前記内部の作動油を前記ポンプの吸入側に導出する第2の開口部、および前記内部と連通した第3の開口部を有する第1のスプール弁収容部と、前記内部に摺動可能に配置され、前記第1の開口部から供給された作動油の油圧によって前記第1のスプール弁収容部の軸線方向の一方向へ付勢される第1のスプール弁と、前記第1のスプール弁を前記第1のスプール弁収容部の軸線方向の他方向へ付勢する第1の付勢部材と、前記ポンプから吐出された作動油を内部に導入する導入口、および前記内部と連通し、かつ前記第3の開口部に接続された導出口を有する第2のスプール弁収容部と、前記第2のスプール弁収容部の内部に摺動可能に配置され、前記導入口から前記第2のスプール弁収容部の内部に導入された作動油の油圧によって前記第2のスプール弁収容部の軸線方向の一方向へ付勢される第2のスプール弁と、前記第2のスプール弁を前記第2のスプール弁収容部の軸線方向の他方向へ付勢する第2の付勢部材と、前記第2の付勢部材の付勢力に抗して前記第2のスプール弁を前記第2のスプール弁収容部の軸線方向の一方向へ付勢可能な電磁アクチュエータと、を備えている。
油圧制御装置の好ましい態様において、前記第1の付勢部材の付勢力は、内燃機関の最も低い要求油圧によって前記第1のスプール弁が前記第1のスプール弁収容部の軸線方向の一方向へ付勢されるときの力以上に設定されている。
また、以上説明した実施例に基づくポンプとしては、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
ポンプでは、その一つの態様において、上述した種々の油圧制御装置によって作動油の油圧が制御される。
さらに、以上説明した実施例に基づく内燃機関への作動油供給システムとしては、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
内燃機関への作動油供給システムは、その一つの態様において、内燃機関に作動油を供給するポンプと、前記内燃機関に供給される作動油の油圧を計測する油圧計測部と、前記内燃機関の回転数を計測する回転数計測部と、前記ポンプから吐出された作動油を内部に導入する導入口、および前記内部の作動油を前記ポンプの吸入側に導出する導出口を有するスプール弁収容部と、前記内部に摺動可能に配置され、前記導入口から前記内部に導入された作動油の油圧によって前記スプール弁収容部の軸線方向の一方向へ付勢されるスプール弁と、前記スプール弁を前記スプール弁収容部の軸線方向の他方向へ付勢する付勢部材と、前記付勢部材の付勢力に抗して前記スプール弁を前記スプール弁収容部の軸線方向の一方向へ付勢可能な電磁アクチュエータと、前記油圧計測部および前記回転数計測部によって計測された油圧および回転数に基づいて前記電磁アクチュエータを制御する制御装置と、を備えている。
内燃機関への作動油供給システムの好ましい態様において、前記制御装置は、前記回転数と前記油圧との相関関係を示すマップに基づいて、前記ポンプから吐出された作動油の油圧を内燃機関の要求油圧に追従するように制御する。