JP6737210B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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Description

本発明は、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により電気エネルギを出力するセルを複数積層して構成される固体高分子型の燃料電池を備える燃料電池システムに関する。
従来、燃料電池に対して高周波の交流信号および低周波数の交流信号を印加した際のインピーダンスに基づいて、燃料電池の状態を把握する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2014−207049号公報
ところで、、例えば、燃料電池のセルの内部に形成された燃料ガス流路の一部が生成水の滞留によって閉塞すると、セル面内の一部において燃料ガスが欠乏した状態(すなわち、部分欠乏状態)となってしまうことがある。セル面内において燃料ガスの部分欠乏が生ずると、燃料電池の出力が低下してしまうことから好ましくない。
これに対して、本発明者らは、セル面内における燃料ガスの部分欠乏について、燃料電池に対して交流信号を印加した際のインピーダンスを測定し、当該インピーダンスを解析することによって診断することを検討した。
しかしながら、燃料電池のインピーダンスを測定したり、解析したりするためには、インピーダンスの測定機器、インピーダンスの解析機器が必要となり、燃料電池システムのシステム構成が著しく複雑となってしまう。
本発明は上記点に鑑みて、簡素なシステム構成によってセル面内における燃料ガスの部分欠乏を把握可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者らは、セル面内において燃料ガスの部分欠乏が生ずる際の特性について調査研究を重ねた。この結果、セル面内において燃料ガスの部分欠乏が生じた際には、セル面内の局所部位に負電流が生ずることが判った。なお、負電流は、燃料ガスの欠乏が生じていない場合の電流の向きと反対方向に流れ電流を意味している。
上述の知見を鑑み、請求項1に記載の発明は、
燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により電気エネルギを出力するセル(10a)を複数積層して構成される固体高分子型の燃料電池(10)を備える燃料電池システムであって、
燃料電池のセル面内における少なくとも一箇所の局所部位を流れる局所電流を測定可能な局所電流測定装置(60)と、
局所電流測定装置の測定結果に負電流が含まれる場合に、セル面内の一部において燃料ガスが欠乏した部分欠乏状態であると診断する部分欠乏診断部(50a)と、を備える。
これによれば、燃料電池のインピーダンスの測定機器や解析機器が不要となるので、簡素なシステム構成によってセル面内における燃料ガスの部分欠乏を把握することが可能となる。
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を示すものである。
実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。 燃料電池のセルの模式的な断面図である。 燃料電池のセルの内部構造の模式図である。 局所電流測定装置の概略構成図である。 セル面内において水素の部分欠乏が生じていない場合のセル内部における電気化学反応を説明するための説明図である。 セル面内において水素の部分欠乏が生じている場合のセル内部における電気化学反応を説明するための説明図である。 セル面内において水素の部分欠乏が生じている場合のセル内部における局所電流の変化を説明するための説明図である。 燃料電池システムの制御装置が実行する診断処理の流れを示すフローチャートである。 燃料電池システムの制御装置が実行する回復処理の流れを示すフローチャートである。
本発明の一実施形態について図1〜図9を参照して説明する。本実施形態では、本発明の燃料電池システム1を、電気自動車の一種である燃料電池自動車に適用した例について説明する。
燃料電池システム1は、水素を含む燃料ガスと酸素を含む酸化剤ガス(例えば、空気)との電気化学反応を利用して電気エネルギを出力する燃料電池10を備える。本実施形態では、燃料電池10として固体高分子型の燃料電池(PEFC:Proton Exchange membrane Fuel Cell)を採用している。燃料電池10は、発電により発生した直流電流を、図示しないDC−DCコンバータを介して、車両走行用の電動モータや二次電池といった電気負荷に供給する。
燃料電池10は、基本単位となるセル10aを複数積層配置したスタック構造となっている。複数のセル10aのうち、隣り合うセル10aは、互いに電気的に直列に接続されている。
図2に示すように、セル10aは、電解質膜101の両側を一対の触媒層102a、102bで挟んで構成される膜電極接合体100、膜電極接合体100の両側に配置された一対のガス拡散層103a、103b、これらを狭持するセパレータ110を備える。
電解質膜101は、含水性を有する炭化フッ素系や炭化水素系などの高分子材料で形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜で構成されている。また、一対の触媒層102a、102bは、それぞれ電極を構成している。具体的には、一対の触媒層102a、102bは、燃料極を構成する燃料側触媒層102a、および空気極を構成する空気側触媒層102bで構成されている。
図3に示すように、各触媒層102a、102bは、白金粒子等の触媒作用を発揮する物質102c、当該物質102cを担持する担持カーボン102d、担持カーボン102dを被覆するアイオノマー(すなわち、電解質ポリマー)102eで構成されている。
ガス拡散層103a、103bは、反応ガスである燃料ガスおよび酸化剤ガスを各触媒層102a、102bへ拡散させるものである。ガス拡散層103a、103bは、カーボンペーパーやカーボンクロス等のガス透過性および電子伝導性を有する多孔質部材で構成されている。
セパレータ110は、例えば、導電性を有するカーボン製の基材で構成されている。各セパレータ110には、燃料側触媒層102aに対向する部位に、燃料ガスが流れる水素流路111が形成され、空気側触媒層102bに対向する部位に、酸化剤ガスである空気が流れる空気流路112が形成されている。
各セル10aは、燃料ガスおよび酸化剤ガスが供給されると、以下の式1、式2に示す水素と酸素との電気化学反応により、電気エネルギを出力する。
(燃料極側)H→2H+2e ・・・(式1)
(空気極側)2H+1/2O+2e→HO ・・・(式2)
燃料電池10は、図示しないが、双方向に電力供給可能なDC−DCコンバータを介して、各種電気負荷に電気的に接続されている。DC−DCコンバータは、燃料電池10から各種電気負荷、あるいは、各種電気負荷から燃料電池10への電力の流れを制御する電力制御装置を構成している。
図1に戻り、本実施形態の燃料電池システム1には、複数のセル10aのうち、一部のセル10aのセル面内における少なくとも一箇所の局所部位を流れる電流を検出可能な局所電流測定装置60が設けられている。
本実施形態の局所電流測定装置60は、図4に示すように、複数のセル10aのうち、一部のセル10aに隣接配置された測定板61、電位差検出回路62、および電流測定回路63を含んで構成されている。
本実施形態の測定板61には、セル面内における局所電流の分布を測定可能なように、複数の測定部610がマトリクス状に設定されている。複数の測定部610は、図示しない絶縁材によって互いに電気的に絶縁されている。
複数の測定部610それぞれは、図示しないが、測定板61の両側に配置された一対の電極、および一対の電極に挟持された抵抗体で構成されている。抵抗体は、予め定めた電気抵抗値を有する。
電位差検出回路62は、複数の測定部610を流れる電流によって生ずる電位差を検出する回路である。具体的には、電位差検出回路62は、複数の測定部610それぞれの一対の電極間における電位差を検出するように構成されている。
電流測定回路63は、複数の測定部610を流れる局所電流を測定する回路である。具体的には、電流測定回路63は、電位差検出回路62で検出された複数の測定部610における一対の電極間の電位差、および測定板61の抵抗体の電気抵抗値に基づいて、セル面内を流れる局所電流を算出するように構成されている。
図1に戻り、燃料電池10には、各セル10aの空気流路112に酸化剤ガスである空気を供給する空気入口部11a、各セル10aの空気流路112から生成水や不純物を空気と共に排出する空気出口部11bが設けられている。そして、空気入口部11aには、空気供給配管20が接続されている。また、空気出口部11bには、空気排出配管21が接続されている。
空気供給配管20には、その最上流部に大気中から吸入した空気を燃料電池10に圧送するための空気ポンプ22が設けられている。空気ポンプ22は、空気を圧送する圧縮機構と圧縮機構を駆動する電動モータからなる電動ポンプである。
そして、空気供給配管20における空気ポンプ22と燃料電池10との間には、燃料電池10に供給される空気を加湿する加湿器23が設けられている。本実施形態の加湿器23は、空気排出配管21を流れる空気に含まれる水分を利用して、燃料電池10に供給される空気を加湿するように構成されている。
また、空気排出配管21には、燃料電池10内部に存する生成水や不純物等を空気とともに外部へ排出するための電磁弁24が設けられている。電磁弁24は、空気排出配管21のうち空気が排出される空気排出路の開度を調整する弁体と、この弁体を駆動する電動アクチュエータとから構成されている。本実施形態の燃料電池システム1は、電磁弁24の絞り開度を調整することで、燃料電池10の空気極側の背圧を調整可能となっている。本実施形態では、空気ポンプ22および電磁弁24が、燃料電池10における酸化剤ガスのガス量を調整する酸化剤ガス量調整部を構成している。
また、燃料電池10には、各セル10aの水素流路111に燃料ガスを供給する水素入口部12a、各セル10aの水素流路111から未反応水素等を排出させる水素出口部12bが設けられている。そして、水素入口部12aには、水素供給配管30が接続されている。また、水素出口部12bには、水素排出配管31が接続されている。
水素供給配管30の最上流部には、高圧水素が充填された高圧水素タンク32が設けられている。そして、水素供給配管30における高圧水素タンク32と燃料電池10との間には、燃料電池10に対して水素を噴射するインジェクタ33が設けられている。インジェクタ33は、水素供給配管30のうち水素供給流路の開度を調整する弁体と、この弁体を駆動する電動アクチュエータとから構成されている。本実施形態では、インジェクタ33が、燃料電池10への燃料ガスである水素の供給量を調整する燃料ガス量調整部を構成している。
また、水素排出配管31には、微量な未反応水素等を外部へ排出するための排気弁34が設けられている。排気弁34は、燃料ガスである水素の排出経路を開閉する排出開閉部を構成している。
ここで、本実施形態の燃料電池10には、燃料電池10の温度を調整する冷却系として、不凍液等で構成される冷却水が循環する冷却水循環回路40が接続されている。冷却水循環回路40には、冷却水を循環させる水ポンプ41、燃料電池10通過後の冷却水を外気と熱交換させて放熱する放熱器42が設けられている。放熱器42は、電動ファン43によって送風される外気により冷却水を冷却する。
また、冷却水循環回路40には、放熱器42をバイパスして水ポンプ41の入口と燃料電池10の水出口とを接続するバイパス流路44が設けられている。さらに、バイパス流路44および放熱器42の水出口のうちいずれか一方を水ポンプ41の入口に接続する三方弁45が設けられている。
次に、燃料電池システム1の電子制御部を構成する制御装置50について説明する。制御装置50は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータとその周辺回路にて構成されている。制御装置50は、記憶部に記憶された制御プログラムに基づいて、各種演算、処理を行う。
制御装置50は、出力側に接続された空気ポンプ22、電磁弁24、インジェクタ33、排気弁34、水ポンプ41等の各種制御機器の作動を制御する。また、制御装置50は、その入力側に局所電流測定装置60を含む各種センサ群が接続されている。
本実施形態の制御装置50は、局所電流測定装置60の測定結果に基づいて、セル面内の一部において燃料ガスである水素が欠乏した部分欠乏状態となっているか否かを診断する診断処理を実行する構成となっている。
また、本実施形態の制御装置50は、部分欠乏状態となっていると診断された際に、インジェクタ33および排気弁34を制御して、部分欠乏状態を正常な状態に回復させる回復処理を実行する構成となっている。
本実施形態の制御装置50は、その出力側に接続された各種制御機器を制御するハードウェアおよびソフトウェアで構成される複数の制御部を集約した装置である。制御装置50には、例えば、セル面内の一部が部分欠乏状態であるか否かを診断する部分欠乏診断部50a、燃料ガス量調整部であるインジェクタ33を制御するガス量制御部50b、排出開閉部である排気弁34を制御する開閉制御部50c等が集約されている。
ここで、燃料電池10の状態は、燃料電池10に対して所定の交流信号を印加した際のインピーダンスと相関性を有することが多い。このため、セル面内における水素の部分欠乏が生じているか否かを燃料電池10のインピーダンスに基づいて診断することが考えられる。
しかしながら、燃料電池10のインピーダンスを測定したり、解析したりするためには、インピーダンスの測定機器、インピーダンスの解析機器が必要となり、燃料電池システム1のシステム構成が著しく複雑となってしまう。
そこで、本発明者らは、簡素なシステム構成でセル面内に水素の部分欠乏が生じているか否かの診断を実現すべく、水素の部分欠乏が生ずる際の特性について調査研究を重ねた。この結果、セル面内において水素の部分欠乏が生ずる際には、セル面内の局所部位に負電流が生ずることが判った。
以下、セル面内において水素の部分欠乏が生ずる際にセル面内の局所部位に負電流が生ずる要因について、図5、図6を参照して説明する。
セル面内に水素の部分欠乏が生じていない正常な状態となる場合、図5に示すように、セル10aの内部では、前述の式1、式2で示す電気化学反応が生ずる。この際、電子(e)は、外部回路ECを介して、燃料極側から空気極側へと移動する。これにより、電流は、外部回路ECを介して空気極側から燃料極側へ流れることになる。
一方、セル面内において水素が局所的に欠乏した部分欠乏状態となる場合、水素が欠乏した局所部位では、水素が不足することで、図6に示すように、空気極側においてカーボン酸化反応が生ずる。
空気極側におけるカーボン酸化反応は、以下の式3、式4に示すように、空気極側において、空気側触媒層102bの担持カーボン102dが酸化して、二酸化炭素(CO)が生成される化学反応である。特に、カーボン酸化反応は、空気側触媒層102bの劣化を伴う不可逆反応であり、燃料電池10の寿命を縮める要因となる。
(燃料極側)2H+e→H ・・・(式3)
(空気極側)2HO+C→4H+CO+e ・・・(式4)
また、水素が欠乏した局所部位では、カーボン酸化反応によって、電子(e)が、外部回路ECを介して、空気極側から燃料極側へと移動する。これにより、電流は、外部回路ECを介して燃料極側から空気極側へ流れることになる。すなわち、水素が欠乏した局所部位では、水素が欠乏していない正常な部位を流れる電流とは反対に流れる電流が流れる。
ここで、図7は、セル面内において水素の部分欠乏を発生させるために、発電状態のセル10aの負荷電流を徐々に増大させた際のセル10aの内部の局所電流の測定結果を示すグラフである。
図7の上段に示すグラフは、発電状態のセル10aの負荷電流を示している。また、図7の中段に示すグラフは、セル10aの負荷電流を徐々に増大させた際のセル10aの局所電流の変化を示している。さらに、図7の下段に示すグラフは、セル10aの負荷電流を徐々に増大させた際のセル電圧、および空気極側におけるCOの濃度の変化を示している。
図7に示すように、発電状態のセル10aの負荷電流を増加させると、セル面内の一部に負電流が生ずると共に、空気極側にCOが生ずる。本発明者らの調査によれば、負電流は、図7の紙面右側に示すように、蛇行した水素流路111の曲り部分や、水素流路111の最下流側に対応する部位で生じ易い傾向がある。
これらの知見を踏まえて、制御装置50は、局所電流測定装置60の測定結果に負電流が含まれる場合に、セル面内の一部における水素が欠乏した部分欠乏状態であると診断する診断処理を実行する。
次に、本実施形態の燃料電池システム1の制御装置50が実行する診断処理について、図8のフローチャートを参照して説明する。なお、図8に示す制御ルーチンは、燃料電池10の運転時等において、周期的または不定期に実行される。
制御装置50は、図8に示すように、まず、ステップS10において、局所電流測定装置60によってセル面内の局所電流を測定する。具体的には、ステップS10の処理では、局所電流測定装置60においてマトリックス状に配置された複数の測定部610を流れる局所電流を測定する。
続いて、制御装置50は、ステップS12において、局所電流測定装置60によって負電流が検知されたか否かを判定する。すなわち、ステップS12の処理では、局所電流測定装置60の測定結果に負電流が含まれているか否かを判定する。
ステップS12の判定処理の結果、負電流が検知されていないと判定された場合、セル面内において水素の部分欠乏が生じていないと考えられるので、制御装置50は、診断処理を終了する。
一方、ステップS12の判定処理の結果、負電流が検知されたと判定された場合、制御装置50は、ステップS14において、セル面内の一部に水素が欠乏した部分欠乏状態であると診断する。そして、制御装置50は、ステップS16において、水素の部分欠乏状態から正常な状態に回復させる回復処理を実行する。
本実施形態の回復処理の詳細については、図9に示すフローチャートを参照して説明する。なお、図9に示すフローチャートは、図8のステップS16に示す回復処理の流れを示している。
図9に示すように、制御装置50は、まず、ステップS100において、水素の供給量を増加させる。制御装置50は、例えば、水素流路111における水素の圧力が所定の圧力以上となるように、インジェクタ33を制御する。水素の供給量の増加によって水素流路111における水素の圧力が高くなると、燃料電池10の各セル10aの局所部位にも水素が供給されることで、水素の部分欠乏状態を正常な状態に回復し易くなる。
続いて、制御装置50は、ステップS120において、図8のステップS10と同様に、局所電流測定装置60によってセル面内の局所電流を測定する。そして、制御装置50は、ステップS140において、図8のステップS12と同様に、局所電流測定装置60によって負電流が検知されたか否かを判定する。
ステップS140の判定処理の結果、負電流が検知されていないと判定された場合、水素の部分欠乏状態が正常な状態に回復したと考えられるので、制御装置50は、回復処理を終了する。
一方、ステップS140の判定処理の結果、負電流が検知されたと判定された場合、制御装置50は、ステップS160において、予め定めた時間(例えば、100msec)、水素の排気弁34を開放する。水素の排気弁34が開放されると、水素の部分欠乏の発生要因となる水素流路111に滞留した水や、空気極側から透過した窒素等が外部に排出されることで、水素の部分欠乏状態を正常な状態に回復し易くなる。なお、ステップS160の処理では、排気弁34を開放した後、水素流路111における水素の圧力が所定の圧力以上となるように、インジェクタ33が制御される。
続いて、制御装置50は、ステップS180において、図8のステップS10と同様に、局所電流測定装置60によってセル面内の局所電流を測定する。そして、制御装置50は、ステップS200において、図8のステップS12と同様に、局所電流測定装置60によって負電流が検知されたか否かを判定する。
ステップS200の判定処理の結果、負電流が検知されていないと判定された場合、水素の部分欠乏状態が正常な状態に回復したと考えられるので、制御装置50は、回復処理を終了する。
一方、ステップS140の判定処理の結果、負電流が検知されたと判定された場合、制御装置50は、ステップS160に戻り、再び排気弁34を開放する。なお、回復処理を継続しても、水素の部分欠乏状態が正常な状態に回復しない場合は、回復処理を終了すると共に、燃料電池10の運転を停止させることが望ましい。
以上説明した本実施形態の燃料電池システム1は、セル面内の局所部位を流れる局所電流を測定する局所電流測定装置60の測定結果に負電流が含まれている場合、セル面の一部において燃料ガスである水素が欠乏した部分欠乏状態であると診断する構成となっている。
これによれば、燃料電池10のインピーダンスの測定機器(交流信号を印加する回路、高度な電流制御機器)や解析機器(例えば、分解能が高いAD変換回路、フィルタリング回路)が不要となる。また、本実施形態の燃料電池システム1では、インピーダンスの測定時に必要とされていたノイズ対策(増幅回路やフィルタリング回路)が不要となる。
従って、本実施形態の燃料電池システム1では、簡素なシステム構成によってセル面における燃料ガスである水素の部分欠乏を把握することができる。
また、本実施形態の燃料電池システム1は、水素の部分欠乏が生じた際に、水素の部分欠乏状態から正常な状態に回復させる回復処理を実行する構成となっている。
具体的には、本実施形態の制御装置50は、水素の部分欠乏状態であると診断された場合、燃料ガスである水素の供給量が増加するように、インジェクタ33を制御する構成となっている。このように、水素の部分欠乏状態であると診断された場合に、水素の供給量を増加させる構成とすれば、セル面内において水素が不足している部位にも水素が供給され易くなるので、水素の部分欠乏状態を正常な状態に回復させることが可能となる。
また、本実施形態の制御装置50は、水素の供給量を増加させても、水素の部分欠乏状態が維持される場合、燃料電池10における水素の排出経路が所定時間開放されるように、排気弁34を制御する構成となっている。
このように、水素の部分欠乏状態であると診断された場合に、水素の排出経路を開放させる構成とすれば、水素の部分欠乏の発生要因となる窒素、水、異物等が外部に排出され易くなるので、水素の部分欠乏状態を正常な状態に回復させることが可能となる。
ここで、本実施形態の燃料電池システム1では、水素の部分欠乏状態を正常な状態に回復させる処理として、水素の供給量増加および排気弁34の開放を実施している。
水素の供給量増加は、排気弁34の開放と異なり、水素および空気といった反応ガスの供給量が減少しない処理であるため、排気弁34を開放させる場合に比べて、電力供給対象の作動が不安定になり難い。
このことを考慮して、本実施形態の燃料電池システム1は、回復処理において、水素の供給量増加、排気弁34の開放の順に実施する構成となっている。これによれば、回復処理を実行することによって、電力供給対象の作動が不安定となる等の不具合を抑制することができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
上述の実施形態では、本発明の燃料電池システム1を燃料電池自動車に適用した例について説明したが、これに限定されない。本発明の燃料電池システム1は、燃料電池自動車に限らず、例えば、家屋や工場等に供される定置型の発電装置にも適用することができる。
上述の実施形態では、セル面内の複数の局所部位を流れる局所電流を測定可能な局所電流測定装置60を例示したが、これに限定されない。局所電流測定装置60は、セル面内のうち、少なくとも一箇所の局所部位を検出可能な装置で構成されていればよい。なお、負電流は、水素流路111の曲り部分や、水素流路111の最下流側に対応する部位で生じ易い傾向がある。このため、局所電流測定装置60としては、水素流路111の曲り部分や、水素流路111の最下流側に対応する部位の局所電流を測定可能な装置を採用することが望ましい。
また、上述の実施形態では、測定部610の抵抗体の電気抵抗値、および測定部610の一対の電極間の電位差に基づいて局所電流を測定する局所電流測定装置60を例示したが、これに限定されない。局所電流測定装置60は、例えば、ホール素子を利用した磁気型の電流センサで構成されていてもよい。
上述の実施形態では、回復処理において、水素の供給量増加および排気弁34の開放といった異なる処理を実行する例について説明したが、これに限定されない。燃料電池システム1は、水素の供給量増加および排気弁34の開放のうち、一部の処理だけを実行する構成となっていてもよい。
また、上述の実施形態の如く、セル面内の局所部位に水素が欠乏したと診断された際に、水素の部分欠乏状態を回復させる回復処理を実行することが望ましいが、これに限定されない。燃料電池システム1は、セル面内の局所部位に水素が欠乏したと診断された際に、回復処理ではなく、例えば、水素の部分欠乏状態をユーザ等に報知する処理を実行する構成となっていてもよい。
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
(まとめ)
上述の実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、燃料電池システムは、局所電流測定装置の測定結果に負電流が含まれる場合に、セル面内の一部において燃料ガスが欠乏した部分欠乏状態であると診断する構成となっている。
また、第2の観点によれば、燃料電池システムは、燃料電池への燃料ガスの供給量を調整する燃料ガス量調整部と、燃料ガス量調整部を制御するガス量制御部と、を備える。そして、ガス量制御部は、部分欠乏診断部にて部分欠乏状態であると診断された場合に、燃料ガスの供給量が増加するように燃料ガス量調整部を制御するように構成されている。
このように、部分欠乏状態であると診断された場合に、燃料ガスの供給量を増加させる構成とすれば、セル面内において燃料ガスが不足している部位にも燃料ガスが供給され易くなるので、燃料ガスの部分欠乏状態を正常な状態に回復させることが可能となる。
また、第3の観点によれば、燃料電池システムは、燃料ガスの排出経路を開閉する排出開閉部と、排出開閉部を制御する開閉制御部と、を備える。そして、開閉制御部は、部分欠乏診断部にて部分欠乏状態であると診断された場合に、燃料ガスの排出経路が開放されるように排出開閉部を制御するように構成されている。
このように、部分欠乏状態であると診断された場合に、燃料ガスの排出経路を開放させる構成とすれば、燃料ガスの部分欠乏の発生要因となる窒素、水、異物等が外部に排出され易くなるので、燃料ガスの部分欠乏状態を正常な状態に回復させることが可能となる。
10 燃料電池
10a セル
50 制御装置
50a 部分欠乏診断部
60 局所電流測定装置

Claims (3)

  1. 燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により電気エネルギを出力するセル(10a)を複数積層して構成される固体高分子型の燃料電池(10)を備える燃料電池システムであって、
    前記燃料電池のセル面内における少なくとも一箇所の局所部位を流れる局所電流を測定可能な局所電流測定装置(60)と、
    前記局所電流測定装置の測定結果に負電流が含まれる場合に、セル面内の一部において前記燃料ガスが欠乏した部分欠乏状態であると診断する部分欠乏診断部(50a)と、
    を備える燃料電池システム。
  2. 前記燃料電池への前記燃料ガスの供給量を調整する燃料ガス量調整部(33)と、
    前記燃料ガス量調整部を制御するガス量制御部(50b)と、を備え、
    前記ガス量制御部は、前記部分欠乏診断部にて前記部分欠乏状態であると診断された場合に、前記燃料ガスの供給量が増加するように前記燃料ガス量調整部を制御する請求項1に記載の燃料電池システム。
  3. 前記燃料ガスの排出経路を開閉する排出開閉部(34)と、
    前記排出開閉部を制御する開閉制御部(50c)と、を備え、
    前記開閉制御部は、前記部分欠乏診断部にて前記部分欠乏状態であると診断された場合に、前記燃料ガスの排出経路が開放されるように前記排出開閉部を制御する請求項1または2に記載の燃料電池システム。
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