(本発明の基礎となる知見)
本発明者は、燃料電池システムおよびその運転方法において、発電効率の低下を抑制することについて検討を重ねた。その結果、本発明者は従来技術には下記のような問題があることを見出した。
燃料ガス流路に空気が混入した状態で燃料ガス流路に燃料ガスを供給すると、燃料ガス流路の上流側から燃料ガスが充填されるため、燃料ガス流路の下流部では空気が残ることがある。このような状態で燃料電池を起動すれば、燃料ガスが満たされている燃料ガスの上流部では、発電反応が生じる。この発電反応では、アノードでH2→2H++2e−の水素酸化反応が起こり、カソードで2H++1/2O2+2e−→H2Oの反応が起こる。
一方、空気が残留した燃料ガス流路の下流部では、カソードのカーボンの腐食反応が生じる。この腐食反応では、アノードで2H++1/2O2+2e−→H2Oの酸素還元反応が起こり、カソードで1/2C+H2O→1/2CO2+2H++2e−の反応が起こる。これにより、カソード触媒層が劣化し、燃料電池の発電性能が低下してしまう。
これに対して、特許文献1の燃料電池システムでは、発電始動時に、燃料ガスを高圧で供給している。このため、所定量以上の酸素が燃料室に残留していない場合であっても、燃料ガスが高圧で供給される。このような場合、発電に寄与しない燃料ガスが無駄に消費され、発電効率の低下を招いてしまう。
また、特許文献2の燃料電池システムでは、燃料ガスを供給する前の燃料電池の電圧の変化率に基づいて燃料電池本体の状態を判断している。この燃料ガスを供給する前の燃料電池の電圧(燃料電池の開回路電圧)は、アノードおよびカソードのそれぞれにおける水素分圧および酸素分圧などの複合的な要因により決定される。よって、開回路電圧の変化率だけではアノードへの空気混入の有無を正確に判定することは困難であるため、発電効率の低下を抑制することについて十分でなかった。
そこで、本発明者は、鋭意検討した結果、水素雰囲気下における電気抵抗と酸素雰囲気下における電気抵抗とが異なるセンサー部を用いることにより、燃料電池の発電効率の低下を抑制できることを見出した。本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。
(実施の形態)
本発明の第1の態様に係る燃料電池システムは、セルを有し、水素を含有する燃料ガスと酸化剤ガスとを電気化学的に反応させて発電する燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックに前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給器と、前記燃料電池スタックに前記酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給器と、を備えており、前記セルは、第1セパレータ、第2セパレータ、および、前記第1セパレータと前記第2セパレータとの間に挟まれている膜−電極接合体とを有し、前記膜−電極接合体は、前記第1セパレータに接しかつ前記燃料ガスが供給されるアノード、前記第2セパレータに接しかつ前記酸化剤ガスが供給されるカソード、および、前記アノードと前記カソードとの間に挟まれている電解質膜を有しており、前記第1セパレータまたは前記アノードに設けられ、かつ、水素雰囲気下における電気抵抗と、酸素雰囲気下における電気抵抗とが異なる抵抗変化特性を有するセンサー部と、前記センサー部または当該センサー部を含む前記セルの電気抵抗を測定する抵抗測定器と、をさらに備えている。
本発明の第2の態様に係る燃料電池システムは、第1の態様において、前記センサー部は、前記アノードに設けられ、かつ、アノード触媒を担持する担体である。
本発明の第3の態様に係る燃料電池システムは、第1または第2の態様において、制御器をさらに備えており、前記制御器は、前記燃料電池システムの起動時に、前記抵抗測定器により測定された前記電気抵抗に基づいて、前記アノードに所定量以上の空気が混入しているか否かを判定し、前記アノードに所定量以上の空気が混入していると判定した場合に、前記カソードの劣化を抑制する処理を実行し、前記アノードに所定量以上の空気が混入していないと判定した場合に、前記カソードの劣化を抑制する処理を実行しないように構成されている。
本発明の第4の態様に係る燃料電池システムは、第3の態様において、前記セルは、アノード触媒を担持する担体が前記センサー部により構成されている第1セルと、アノード触媒を担持する担体がカーボンにより構成されている第2セルと、を有しており、前記制御器は、前記抵抗測定器により測定された前記第1セルの電気抵抗および前記第2セルの電気抵抗に基づいて、前記アノードに所定量以上の空気が混入しているか否かを判定するように構成されている。
本発明の第5の態様に係る燃料電池システムは、第1乃至第4のいずれかの態様において、前記センサー部は、前記抵抗変化特性を有する導電性材料を含み、前記導電性材料は、チタン、スズ、インジウム、および、これらを基体とした酸化物の少なくともいずれか1つを含んでいる。
本発明の第6の態様に係る燃料電池システムの運転方法は、セルを有し、水素を含有する燃料ガスと酸化剤ガスとを電気化学的に反応させて発電する燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックに前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給器と、前記燃料電池スタックに前記酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給器と、を備えており、前記セルは、第1セパレータ、第2セパレータ、および、前記第1セパレータと前記第2セパレータとの間に挟まれている膜−電極接合体とを有し、前記膜−電極接合体は、前記第1セパレータに接しかつ前記燃料ガスが供給されるアノード、前記第2セパレータに接しかつ前記酸化剤ガスが供給されるカソード、および、前記アノードと前記カソードとの間に挟まれている電解質膜を有しており、前記第1セパレータまたは前記アノードに設けられ、かつ、水素雰囲気下における電気抵抗と、酸素雰囲気下における電気抵抗とが異なる抵抗変化特性を有するセンサー部と、前記センサー部または当該センサー部を含む前記セルの電気抵抗を測定する抵抗測定器と、をさらに備えている燃料電池システムの運転方法であって、前記燃料電池システムの起動時に、前記抵抗測定器により測定された前記電気抵抗に基づいて、前記アノードに所定量以上の空気が混入しているか否かを判定し、前記アノードに所定量以上の空気が混入していると判定した場合に、前記カソードの劣化を抑制する処理を実行し、前記アノードに所定量以上の空気が混入していないと判定した場合に、前記カソードの劣化を抑制する処理を実行しない。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一または相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
(実施の形態1)
実施の形態1に係る燃料電池システム100の構成について、図1を参照して説明する。図1は、燃料電池システム100の構成を概略的に示す機能ブロック図である。燃料電池システム100は、燃料電池スタック10、センサー部20、燃料ガス供給器30、圧力調節器40、酸化剤ガス供給器50、抵抗測定器60および制御器70を備えている。
燃料電池スタック10は、水素を含有する燃料ガスと酸化剤ガスとを電気化学的に反応(以下、発電反応という)させて発電する反応器である。燃料電池スタック10は、積層された複数のセルにより構成されている。複数のセルのうち、少なくとも1つは第1セル11であって、残りは第2セル111である。なお、第1セル11および第2セル111については、後で詳述する。
センサー部20は、第1セル11のアノード(第1アノード)16に設けられ、かつ、抵抗変化特性を有している。抵抗変化特性とは、水素雰囲気下における電気抵抗と、酸素雰囲気下における電気抵抗とが異なる性質である。なお、センサー部20については、後で詳述する。
燃料ガス供給器30は、燃料電池スタック10に燃料ガスを供給する機器である。燃料ガス供給器30は第1経路31により燃料電池スタック10に接続され、燃料ガスは第1経路31を介して燃料電池スタック10に供給される。燃料ガス供給器30は、燃料ガスの流量を調整する機能を有し、この調整は制御器70により行われる。燃料ガスは、水素を含有するガスである。燃料ガス供給器30としては、たとえば、改質器、水素ボンベ、水素ガスインフラストラクチャなどが例示される。改質器は、蒸気改質方式、部分酸化方式、または、オートサーマル方式などの方式により原料ガスから燃料ガスを生成する反応器である。
圧力調節器40は、第1経路31に設けられ、燃料ガス供給器30により供給される燃料ガスの圧力を調節する機器である。この圧力の調節は制御器70により行われる。圧力調節機器としては、たとえば、ステッピングモーターを備えた可変オリフィスおよびガバナが例示される。
酸化剤ガス供給器50は、燃料電池スタック10に酸化剤ガスを供給する機器である。酸化剤ガス供給器50は第2経路51により燃料電池スタック10に接続され、酸化剤ガスは第2経路51を介して燃料電池スタック10に供給される。酸化剤ガス供給器50は、酸化剤ガスを送出する流量を調整する機能を有し、この調整は制御器70により行われる。酸化剤ガスとしては、たとえば、空気や酸素などが挙げられる。酸化剤ガス供給器50としては、たとえば、空気を送風するファンやブロアなどの送風機、酸素ボンベなどが例示される。
抵抗測定器60は、各セル11、111の電気抵抗を測定する機器であって、測定した電気抵抗を制御器70へ出力する。たとえば、抵抗測定器60は、一定の距離を隔てて各セル11、111に電気的に接続された一対の端子間の電気抵抗を各セル11、111の電気抵抗として測定する。この実施の形態では、抵抗測定器60は、第1セル11におけるアノード(第1アノード)16とカソード17との間の電気抵抗、および、第2セル111におけるアノード(第2アノード)116とカソード17との間の電気抵抗をそれぞれ測定する。測定手法としては、たとえば、交流インピーダンス法および電流遮断法等が例示される。
制御器70は、燃料電池システム100の各部を制御する装置である。制御器70は、制御機能を有するものであればよく、演算処理部(図示せず)および記憶部(図示せず)を備える。たとえば、演算処理部としてはMPUおよびCPU等のプロセッサが例示され、記憶部としてはメモリ−が例示される。記憶部は、制御プログラムを記憶し、演算処理部は、制御プログラムを記憶部から読み出してこれを実行する。換言すると、制御プログラムは、演算処理部に、そのプログラムされた制御を実行させる。制御器70は、集中制御を行う単独の装置で構成されていてもよく、互いに協同して分散制御を行う装置で構成されていてもよい。
たとえば、制御器70は、抵抗測定器60により測定された電気抵抗と、記憶している所定の電気抵抗の閾値とを比較する。比較の結果、制御器70は、アノードに空気が混入しているか否かを判定し、この判定結果に応じて各部に指令を出力する。
次に、燃料電池スタック10の構成について、図2を参照して説明する。図2は、燃料電池スタック10の一部を模式的に示す断面図である。燃料電池スタック10は、固体高分子形燃料電池のスタックであって、第1セル11および第2セル111を含んでいる。
第1セル11は、ガス種(酸素および水素)に対する抵抗変化特性を有するセルである。この抵抗変化特性とは、第1アノード16が燃料ガスなどにさらされた水素雰囲気下にある場合の第1セル11の電気抵抗と、第1アノード16が酸素を含む空気などにさらされた酸素雰囲気下にある場合の第1セル11の電気抵抗が異なる性質である。第1セル11は、第1セパレータ13、第2セパレータ14、および、これらの間に挟まれている膜−電極接合体(Membrane Electrode Assembly,第1MEA)12を有している。
第2セル111は、ガス種に対する抵抗変化特性を有さない、または、その抵抗変化特性が第1セル11より小さいセルである。第2セル111は、第1セパレータ13、第2セパレータ14、および、これらの間に挟まれている膜−電極接合体(Membrane Electrode Assembly, 第2MEA)112を有している。なお、各MEA12、112を以外の構成は、第1セル11および第2セル111で同じである。
第1MEA12は、アノード(第1アノード)16、カソード17、および、これらの間に挟まれている電解質膜15を有している。第2MEA112は、アノード(第2アノード)116、カソード17、および、これらの間に挟まれている電解質膜15を有している。なお、各アノード16、116以外の構成は、第1MEA12および第2MEA112で同じである。
電解質膜15は、湿潤状態で良好な電気伝導性を示す高分子材料で形成されており、たとえば、フッ素系樹脂により形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜が用いられる。電解質膜15は、第1主面とこれに対向する第2主面とを有している。たとえば、第1主面および第2主面は長方形状であって、これらの面積は第1主面および第2主面以外の電解質膜15の面より大きい。
各アノード16、116は、導電性を有する担体上にアノード触媒を担持させた電極である。第1アノード16は、センサー部20が設けられており、ガス拡散層18および触媒層(第1アノード触媒層)19を備えている。第2アノード116は、センサー部20が設けられておらず、ガス拡散層18および触媒層(第2アノード触媒層)119を備えている。また、カソード17は、導電性を有する担体上にカソード触媒を担持させた電極である。カソード17は、ガス拡散層18および触媒層(カソード触媒層)28を備えている。
ガス拡散層18は、集電作用とガス透過性と撥水性とを併せ持ち、基材21およびコーティング層22を備えている。基材21は、導電性、ならびに、気体および液体の透過性に優れた材料、たとえば、炭素質材料からなる多孔質構造である。この炭素質材料としては、たとえば、カーボンペーパー、炭素繊維クロス、炭素繊維フェルトなどの炭素繊維が例示される。コーティング層22は、基材21と触媒層19、119、28との間に介在し、これらの接触抵抗を下げ、液体の透過性(排水性)を向上するための層である。コーティング層22としては、たとえば、カーボンブラックおよび撥水剤から形成される。
第1アノード触媒層19は、ガス種に対する抵抗変化特性を有する導電性材料で形成されている。第1アノード触媒層19は、酸素雰囲気下における電気抵抗が、水素雰囲気下における電気抵抗より高い。たとえば、第1アノード触媒層19の酸素雰囲気下における電気抵抗は、水素雰囲気下における電気抵抗の2倍を超える。これにより、第1アノード触媒層19が酸素雰囲気下にある第1セル11の電気抵抗は、第1アノード触媒層19が水素雰囲気下にある第1セル11の電気抵抗の2倍を超える。
また、第1アノード触媒層19の電気抵抗の比は、カソード触媒層28の電気抵抗の比より大きい。この第1アノード触媒層19の電気抵抗の比は、水素雰囲気下におけるアノード触媒層19の電気抵抗に対する酸素雰囲気下における第1アノード触媒層19の電気抵抗の割合である。カソード触媒層28の電気抵抗の比は、水素雰囲気下におけるカソード触媒層28の電気抵抗に対する酸素雰囲気下におけるカソード触媒層28の電気抵抗の割合である。
第1アノード触媒層19は電解質膜15の第1の主面上に設けられており、第1アノード触媒層19は、第1触媒材料および第1導電性材料を含んでいる。第1触媒材料は、アノード触媒であって、発電反応における水素酸化反応に対して活性を持つ材料で形成されている。第1触媒材料として、たとえば、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)および金(Au)などの貴金属が例示され、この中でも白金およびその合金が好ましい。第1触媒材料は、粒子状に形成されており、この粒子の平均一次径が、たとえば、1nm以上10nm以下である。第1触媒材料は、第1導電性材料の表面に担持されている。
第1導電性材料は、センサー部20により構成されており、抵抗変化特性を持つ導電性材料で形成されている。この抵抗変化特性を持つ導電性材料は、チタン、スズ、インジウム、および、これらを基体とした酸化物の少なくともいずれか1つを含んでいる。第1導電性材料が粒子状に形成されており、この粒子の平均一次径が、たとえば、10nm以上1000nm以下である。
さらに、第1アノード触媒層19の導電性を高める目的で、導電性セラミックスに異種金属(ドーパント)がドープされていてもよい。このドーパントとしては、たとえば、ニオブ、タンタル、アンチモン、クロム、タングステンおよびモリブデンが例示される。
また、第1アノード触媒層19のガス種(酸素および水素)に対する抵抗変化の応答性を高める目的で、導電性セラミックスの表面に貴金属が担持されていてもよい。この貴金属としては、たとえば、白金、ルテニウム、パラジウム、イリジウム、レニウム、オスミウム、銀および金が例示される。
たとえば、白金および白金合金は、水素酸化反応に対して活性を有すると共に、抵抗変化の応答性を高める性質も有している。よって、第1アノード触媒層19の導電性セラミックスの表面に白金あるいは白金合金を担持すると、第1アノード触媒層19は、燃料電池の第1アノード16の電極として機能するだけでなく、ガス種に対する優れた検知機能を発揮する。
第2アノード触媒層119は、ガス種に対する抵抗変化特性を有さない、または、第1アノード触媒層19より抵抗変化特性が小さい導電性材料で形成されている。第2アノード触媒層119は電解質膜15の第1の主面上に設けられており、第2触媒材料および第2導電性材料を含んでいる。第2触媒材料は、アノード触媒であって、発電反応における水素酸化反応に対して活性を持つ材料で形成されている。第2触媒材料として、たとえば、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)および金(Au)が例示され、この中でも白金およびその合金が好ましい。第2触媒材料は、粒子状に形成されており、この粒子の平均一次径が、たとえば、1nm以上10nm以下である。第2触媒材料は、第2導電性材料の表面に担持されている。
第2導電性材料は、抵抗変化特性がない、または、第1導電性材料より小さい導電性材料で形成されている。この導電性材料としては、たとえば、カーボンが例示される。
カソード触媒層28は、電解質膜15の第2主面上に設けられている。カソード触媒層28は、第3触媒材料および第3導電性材料を含んでいる。第3触媒材料は、酸素還元反応に対して活性を持つ触媒であって、たとえば、白金または白金合金が用いられる。第3導電性材料は、抵抗変化特性を持たない、または、抵抗変化特性が第1導電性材料より低い材料であって、たとえば、カーボンが用いられる。
第1セパレータ13は、各MEA12、112のアノード側ガス拡散層18に接触するように設けられている。また、第2セパレータ14は、各MEA12、112のカソード側ガス拡散層18に接触するように設けられている。各セパレータ13、14は、導電性、ガス不透過性、熱伝導性および耐久性などを有する材料、たとえば、圧縮カーボン、または、ステンレス鋼などの金属材料によって形成されている。
第1セパレータ13には、アノード側ガス拡散層18に対向する一方主面に溝状の第1凹部が設けられている。この第1凹部とアノード側ガス拡散層18とにより囲まれた空間は、燃料ガスなどのガスが流通する流路(アノード側流路)23として機能する。
また、第1セパレータ13の一方主面と反対側の他方主面に、溝状の第2凹部が設けられている。この第1セパレータ13の他方主面に隣接する第2セパレータ14と、第2凹部とにより囲まれた空間が、各MEA12、112を冷却する水(冷却水)が流通する流路(冷却水流路)25として機能する。
第2セパレータ14には、カソード側ガス拡散層18に対向する一方主面に溝状の第3凹部が設けられている。この第3凹部とカソード側ガス拡散層18とにより囲まれた空間は、酸化剤ガスなどのガスが流通する流路(カソード側流路)24として機能する。
抵抗測定器60の端子は、たとえば、各セル11、111における第1セパレータ13および第2セパレータ14のそれぞれに接続されている。これにより、各セル11、111の電気抵抗が測定される。
複数のセル11、111は、積層され、それにより互いに隣接するセル11、111が電気的に直列に接続されている。そして、積層された複数の11、111は、ボルトなどの締結部材26により所定の圧力にて締結されている。この加圧締結により、燃料ガスおよび酸化剤ガスのリークが防止されると共に、接触抵抗が低減されている。また、第1セパレータ13と第2セパレータ14との間には、各アノード16、116およびカソード17の各側面を覆うようにガスケット27が配置されている。これにより、燃料ガスおよび酸化剤ガスの漏洩が防がれる。
次に、第1MEA12における化学反応およびアノード16の電気抵抗の変化について、図3A、図3Bおよび図3Cを参照して説明する。図3Aの上図は、第1MEA12における化学反応を示した図である。図3Aの下図は、白金/タンタルドープ酸化チタン(Pt/Ti0.9Ta0.1O2−δ)を第1アノード触媒層19に用いた第1セル11の電気抵抗を概略的に示すグラフである。また、図3Aの領域Aは、第1アノード16に燃料ガスが存在する水素雰囲気の領域である。図3Aの領域Bは、第1アノード16に空気が残存する酸素雰囲気の領域である。図3Bは水素雰囲気下における白金触媒を担持した白金/タンタルドープ酸化チタンの模式図である。図3Cは酸素雰囲気下における白金触媒を担持した白金/タンタルドープ酸化チタンの模式図である。
まず、抵抗変化特性を有さないアノードを備えたMEAにおける化学反応について説明する。なお、抵抗変化特性を有さないアノード触媒層では、カーボンなど抵抗変化特性を有さない導電性材料により構成されている。
図3Aの上図に示すように、領域Aにおいては、アノードで、H2→2H++2e−の反応が生じ、プロトンH+および電子e−が生成する。このプロトンH+が電解質膜15を介してカソード17へ移動する。カソード17で、アノードからのプロトンH+および領域Bのカソード17からの電子e−により、O2+4H++4e−→2H2Oの反応が生じ、水が生成する。また、電子e−が領域Bに移動する。
一方、領域Bにおいては、カソード17で、Pt→Pt2++2e−の反応、および、C+2H2O→CO2+4H++4e−の反応が生じ、プロトンH+および電子e−が生成する。この電子e−が領域Aに移動する。また、プロトンH+が電解質膜15を介してカソード17へ移動する。アノード16で、カソード17からのプロトンH+および領域Aからの電子e−により、O2+4H++4e−→2H2Oの反応により水が生成する。
このように、抵抗変化特性を有さないMEAでは、電子e−が領域Aと領域Bとの間を移動する。これにより、カソード17の第2触媒材料の白金(Pt)および第2導電性材料のカーボン(C)が腐食する。
これに対し、抵抗変化特性を有する第1アノード16を備えた第1MEA12では、図3Aの下図のように、領域Bにおける第1セル11の電気抵抗が領域Aより高い。これは、図3Cに示すように、白金/タンタルドープ酸化チタンの表面における吸着酸素種による。
つまり、図3Bに示すように、水素雰囲気下では白金/タンタルドープ酸化チタンの表面に白金触媒は担持されているが、それ以外の物は吸着されていない。これに対し、図3Cに示すように、酸素雰囲気下では、酸素が白金/タンタルドープ酸化チタンの表面で還元され、荷電酸素種(O2 −、O−、O2−)などの化学吸着分子が発生する。これが、白金/タンタルドープ酸化チタンの表面に吸着し、表面に、バンドベンディングを有する空乏層が形成される。このバンドベンディングによって結晶粒界および粒子間における電子の移動が妨げられ、第1アノード16の電気抵抗が増加する。これにより、領域Bにおけるアノード16の触媒活性が低下し、O2+4H++4e−→2H2Oの反応が起こりにくくなる。これに伴い、領域BにおけるプロトンH+の移動、および、カソード17におけるPt→Pt2++2e−、C+2H2O→CO2+4H++4e−の反応が抑制され、領域Bにおける第2触媒材料および第2導電性材料の腐食が抑制される。
次に、燃料電池システム100の起動時における運転方法について、図4を参照して説明する。図4は、燃料電池システム100の起動時における運転方法の一例を示すフローチャートである。この燃料電池システム100の起動時における運転は、制御器70により実行される。
まず、制御器70は、燃料電池システム100の起動か否かを判定する(ステップS1)。ここで、燃料電池システム100の起動でなければ(ステップS1:No)、ステップS1の処理を繰り返す。
一方、燃料電池システム100の起動であれば(ステップS1:YES)、制御器70は抵抗測定器60により測定された第1セル11の電気抵抗R1を取得する(ステップS2)。また、制御器70は抵抗測定器60により測定された第2セル111の電気抵抗R2を取得する(ステップS3)。
そして、制御器70は、第1セル11の電気抵抗R1および第2セル111の電気抵抗R2に基づいて、各アノード16、116に所定量以上の空気が混入しているか否かを判定する(ステップS4)。具体的には、制御器70は、第1セル11の電気抵抗R1と第2セル111の電気抵抗R2との電気抵抗の差(R1−R2)が所定の電気抵抗差の閾値X以上であるか否かを判定する。
ここで、各アノード16、116に空気が混入している場合、各アノード16、116が酸素雰囲気下にある。この場合、第2アノード116は、ガス種に対する抵抗変化特性を有していないため、水素雰囲気下における電気抵抗と同じまたはほぼ同じ電気抵抗を示す。これに対して、第1アノード16は、ガス種に対する抵抗変化特性を有しているため、水素雰囲気下における電気抵抗より大きい電気抵抗を示す。この結果、各セル11、111の電気抵抗の差(R1−R2)は所定の電気抵抗差の閾値X以上に大きくなる(ステップS4:YES)。よって、制御器70は、電気抵抗の差(R1−R2)が所定の電気抵抗差の閾値X以上である場合(ステップS4:YES)、各アノード16、116に所定量以上の空気が混入していると判定する。
制御器70は、各アノード16、116に所定量以上の空気が混入していると判定すると、第1シーケンスを実行する(ステップS5)。第1シーケンスは、カソード17の劣化を抑制する処理を含む燃料電池システム100の起動処理である。カソード17の劣化を抑制する処理としては、たとえば、燃料ガスの圧力を第2シーケンスにおける圧力より高く調節して、燃料ガスを燃料電池スタック10に供給する処理である。
この場合、まず、制御器70は、圧力調節器40を制御して、燃料ガス供給器30から燃料電池スタック10に供給される燃料ガスの圧力を第2シーケンスにおける圧力より高く調節する。そして、制御器70は、燃料ガス供給器30を制御して、燃料ガスの供給を開始する。これにより、燃料ガスが燃料電池スタック10に高圧で供給されるため、各アノード16、116に残留する空気が排出されて燃料ガスで置換される。このため、燃料ガスの供給開始から所定時間が経過した後に、制御器70は、圧力調節器40を制御して、燃料ガス供給器30から燃料電池スタック10に供給される燃料ガスの圧力を第2シーケンスにおける圧力と同じに調節する。また、制御器70は酸化剤ガス供給器50を制御して、酸化剤ガスを供給する。これにより、燃料電池システム100の起動が開始される。なお、第1シーケンスにおいて、冷却水の通流および燃料電池スタック10の加熱など、必要に応じて行ってもよい。
一方、各アノード16、116に空気が混入していない場合、各アノード16、116が水素雰囲気下にある。このため、各アノード16、116の電気抵抗は同じまたはほぼ同じになり、各セル11、111の電気抵抗の差(R1−R2)は所定の電気抵抗の閾値Xより小さくなる。また、仮に、電解質膜15が乾燥すると、各セル11、111の電気抵抗が上昇する。ただし、このような場合であっても、各セル11、111の電解質膜15は同じまたはほぼ同じように乾燥し、それに伴い各セル11、111の電気抵抗も上昇する。よって、これらの各セル11、111の電気抵抗の差(R1−R2)は所定の電気抵抗差の閾値Xより小さくなる。よって、制御器70は、電気抵抗の差(R1−R2)が所定の電気抵抗差の閾値Xより小さい場合(ステップS4:NO)、各アノード16、116に所定量以上の空気が混入していないと判定する。
制御器70は、各アノード16、116に所定量以上の空気が混入していないと判定すると、第2シーケンスを実行する(ステップS6)。第2シーケンスは、通常の燃料電池システム100を起動する処理であって、カソード17の劣化を抑制する処理を含まない燃料電池システム100の起動処理である。たとえば、制御器70は、圧力調節器40を制御して、燃料ガス供給器30から燃料電池スタック10に供給される燃料ガスの圧力を通常の起動時における圧力に調節する。そして、制御器70は、燃料ガス供給器30を制御して、燃料ガスの供給を開始する。また、制御器70は酸化剤ガス供給器50を制御して、酸化剤ガスを供給する。これにより、燃料電池システム100の起動が開始される。なお、第2シーケンスにおいて、冷却水の通流および燃料電池スタック10の加熱など、必要に応じて行ってもよい。
上記構成によれば、抵抗変化特性を有するセンサー部20を第1アノード16に設け、抵抗測定器60により第1セル11の電気抵抗を測定している。このセンサー部20はガス種に応じて電気抵抗が変化するため、センサー部20が設けられた第1セル11もその電気抵抗が変化する。よって、第1セル11の電気抵抗を測定し、この電気抵抗の変化に基づいて第1アノード16に空気が混入しているか否かをより正確に判定することができる。これにより、第1アノード16に空気が混入した場合に、燃料ガスを高圧で供給することができるため、燃料ガスの浪費を防ぎつつ、カソード触媒層28の劣化による発電効率の低下を抑制することができる。
また、センサー部20の導電性材料に、チタン、スズ、インジウム、および、これらを基体とした酸化物の少なくともいずれか1つを用いている。これらの金属または金属酸化物は、酸素雰囲気下における電気抵抗と水素雰囲気下における電気抵抗とが大きく異なる。よって、この電気抵抗の差に基づいて、第1アノード16における空気の存在をより正確に検知することができる。
さらに、センサー部20は、第1アノード16に設けられ、かつ、アノード触媒(第1触媒材料)を担持する担体である。つまり、センサー部20は、第1アノード16における空気を検出するセンサーとして機能すると共に、第1アノード触媒層19の第1導電性材料として用いられる。よって、センサー部20を備えることによるコストおよびサイズの増加を抑制することができる。また、第1触媒材料は一般的に貴金属で形成されているため、この貴金属によりこれを担持するセンサー部20の抵抗変化の応答性が高まる。よって、この電気抵抗の差に基づいて、第1アノード16における空気の存在をより正確に検知することができる。
また、燃料電池システム100の起動時に、抵抗測定器60により測定された電気抵抗に基づいて、第1アノード16に所定量以上の空気が混入しているか否かを判定する。そして、第1アノード16に所定量以上の空気が混入していると判定した場合に、カソード17の劣化を抑制する処理を実行する。一方、第1アノード16に所定量以上の空気が混入していないと判定した場合に、カソード17の劣化を抑制する処理を実行しない。このように、センサー部20の電気抵抗に基づいたより正確な検知によって、燃料ガスの浪費を防ぎつつ、カソード触媒層28の劣化による発電効率の低下を抑制することができる。
さらに、セルは、アノード触媒を担持する担体がセンサー部20により構成されている第1セル11と、アノード触媒を担持する担体がカーボンにより構成されている第2セル111と、を有している。そして、制御器70は、抵抗測定器60により測定された第1セル11の電気抵抗および第2セル111の電気抵抗に基づいて、各アノード16、116に所定量以上の空気が混入しているか否かを判定している。この第2セル111のカーボンは、抵抗変化特性がないまたはセンサー部20より小さい。よって、電解質膜15の乾燥など、ガス種以外の要因で第1セル11の電気抵抗が変化するような場合であっても、第2セル111の電気抵抗を参照することにより、ガス種以外の要因による電気抵抗の変化を排除して判定することができる。この結果、第1アノード16における空気の存在をより正確に検知することができる。
(実施の形態2)
実施の形態2に係る燃料電池システム100の構成について、図5を参照して説明する。図5は、燃料電池システム100を概略的に示す断面図である。こ燃料電池システム100の燃料電池スタック10は、第1セル11を含まず、第2セル111により構成されている。
次に、燃料電池スタック10の構成について、図6を参照して説明する。図6は、燃料電池スタック10の一部を模式的に示す断面図である。燃料電池スタック10は、複数の第2セル111が積層されて構成されている。
センサー部20は、第1セパレータ13に設けられている。センサー部20は第2アノード116に供給されるガスを検出するセンサーであるため、センサー部20の位置は第2アノード116に供給されるガスに接することができる位置であればよい。たとえば、アノード側ガス拡散層18に対向する第1セパレータ13の面、または、アノード側流路23に対向する第1セパレータ13の面などにセンサー部20が配置されている。
センサー部20は、抵抗変化特性を有しており、たとえば、抵抗変化特性を持つ導電性材料で形成されている。この抵抗変化特性を持つ導電性材料は、チタン、スズ、インジウム、および、これらを基体とした酸化物の少なくともいずれか1つを含んでいる。第1導電性材料が粒子状に形成されており、この粒子の平均一次径が、たとえば、10nm以上1000nm以下である。
センサー部20の導電性を高める目的で、導電性セラミックスに異種金属(ドーパント)がドープされていてもよい。このドーパントとしては、たとえば、ニオブ、タンタル、アンチモン、クロム、タングステンおよびモリブデンが例示される。また、センサー部20のガス種に対する抵抗変化の応答性を高める目的で、導電性セラミックスの表面に貴金属が担持されていてもよい。この貴金属としては、たとえば、白金、ルテニウム、パラジウム、イリジウム、レニウム、オスミウム、銀および金が例示される。
抵抗測定器60の端子は、たとえば、センサー部20に接続されている。これにより、センサー部20の電気抵抗が測定される。
次に、燃料電池システム100の起動時における運転方法について、図7を参照して説明する。図7は、燃料電池システム100の起動時における運転方法の一例を示すフローチャートである。この燃料電池システム100の起動時における運転は、制御器70により実行される。
まず、制御器70は、燃料電池システム100の起動か否かを判定する(ステップS1)。ここで、燃料電池システム100の起動でなければ(ステップS1:No)、ステップS1の処理を繰り返す。一方、燃料電池システム100の起動であれば(ステップS1:YES)、制御器70は抵抗測定器60により測定されたセンサー部20の電気抵抗Rsを取得する(ステップS12)。
そして、制御器70は、センサー部20の電気抵抗Rsに基づいて、各アノード16、116に所定量以上の空気が混入しているか否かを判定する(ステップS14)。具体的には、制御器70は、センサー部20の電気抵抗Rsが所定の電気抵抗の閾値Y以上であるか否かを判定する。ここで、アノード側流路23または第2アノード116に空気が混入している場合、センサー部20が酸素雰囲気下にある。センサー部20は、ガス種に対する抵抗変化特性を有しているため、その電気抵抗は水素雰囲気下における電気抵抗より大きくなる。この結果、センサー部20の電気抵抗Rsは所定の電気抵抗の閾値Y以上に大きくなる(ステップS14:YES)。よって、制御器70は、第2アノード116に空気が混入していると判定する。そして、制御器70は、第1シーケンスを実行する(ステップS5)。
一方、アノード側流路23または第2アノード116に空気が混入していない場合、センサー部20が水素雰囲気下にある。このため、センサー部20の電気抵抗は所定の電気抵抗の閾値Yより小さくなる。よって、制御器70は、第2アノード116に空気が混入していないと判定して、第2シーケンスを実行する(ステップS6)。
上記構成によれば、抵抗変化特性を有するセンサー部20を第1セパレータ13に設け、抵抗測定器60によりセンサー部20の電気抵抗を測定している。このセンサー部20はガス種に応じて電気抵抗が変化する。よって、センサー部20の電気抵抗を測定し、この電気抵抗の変化に基づいて第2アノード116に空気が混入しているか否かをより正確に判定することができる。これにより、第2アノード116に空気が混入した場合に、燃料ガスを高圧で供給することができるため、燃料ガスの浪費を防ぎつつ、カソード触媒層28の劣化による発電効率の低下を抑制することができる。
また、センサー部20の導電性材料に、チタン、スズ、インジウム、および、これらを基体とした酸化物の少なくともいずれか1つを用いている。この電気抵抗の差に基づいて、第2アノード116における空気の存在をより正確に検知することができる。
また、燃料電池システム100の起動時に、抵抗測定器60により測定された電気抵抗に基づいて、第1アノード16に所定量以上の空気が混入しているか否かを判定する。そして、第1アノード16に所定量以上の空気が混入していると判定した場合に、カソード17の劣化を抑制する処理を実行する。一方、第2アノード116に所定量以上の空気が混入していないと判定した場合に、カソード17の劣化を抑制する処理を実行しない。このように、センサー部20の電気抵抗に基づいたより正確な検知によって、燃料ガスの浪費を防ぎつつ、カソード触媒層28の劣化による発電効率の低下を抑制することができる。
(その他の実施の形態)
上記実施の形態1では、第1セル11の電気抵抗および第2セル111の電気抵抗を抵抗測定器60により測定した。これに対して、第1セル11の第1アノード16に設けられたセンサー部20の電気抵抗および第2セル111の第2アノード116の電気抵抗を抵抗測定器60により測定してもよい。この場合、第1セル11については抵抗測定器60の端子をセンサー部20に接続し、第2セル111については抵抗測定器60の端子を第2アノード116の第2アノード触媒層119に接続する。また、第1セル11の第1アノード16に設けられたセンサー部20とカソード17との間の電気抵抗および第2セル111の第2アノード116とカソード17との間の電気抵抗を抵抗測定器60により測定してもよい。この場合、第1セル11については抵抗測定器60の端子をセンサー部20およびカソード17のそれぞれに接続し、第2セル111については抵抗測定器60の端子を第2アノード116の第2アノード触媒層119、および、カソード17のそれぞれに接続する。
上記実施の形態1では、燃料電池スタック10は第1セル11および第2セル111により構成されていた。これに対して、燃料電池スタック10は、第2セル111を含まず、第1セル11により構成されていてもよい。この場合、図4に示す燃料電池システム100の起動時の運転方法では、ステップS3の処理を実行せず、ステップS4の処理の代わりに、第1セル11の電気抵抗R1が所定の電気抵抗の閾値以上か否かを判定する。そして、電気抵抗R1が所定の電気抵抗の閾値以上であれば、第1アノード16に空気が混入していると判定する。一方、電気抵抗R1が所定の電気抵抗の閾値未満であれば、第1アノード16に空気が混入していないと判定する。
上記実施の形態1では、第1アノード触媒層19の第1導電性材料がセンサー部20により構成されていた。これに対して、センサー部20は、第1アノード触媒層19以外の第1アノード16の位置に設けられていてもよい。この場合も、第1アノード16にセンサー部20が設けられているため、ガス種に応じて第1セル11の電気抵抗は変化する。よって、第1セルの電気抵抗に基づいて第1アノード16における空気の混入を検知することができる。
上記全ての実施の形態では、図4および図7のステップS5における第1シーケンスで、カソード17の劣化を抑制する処理として、燃料ガスの圧力を第2シーケンスにおける圧力より高く調節し、燃料ガスを燃料電池スタック10に供給した。ただし、この処理は、カソード17の劣化を抑制する処理であれば、これに限定されない。たとえば、燃料電池スタック10をダミー抵抗に接続してもよい。
なお、上記全実施の形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。したがって、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更できる。