以下、本発明の実施の形態に係る油圧作業機械として油圧ショベルを例に挙げ、図面を参照して説明する。なお、各図中、同等の部材には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
図1は、本発明の第1の実施例に係る油圧ショベルの側面図である。
図1において、油圧ショベル200は、走行体1と、この走行体1上に旋回装置8を介して旋回可能に搭載された旋回体2と、この旋回体2の前側に上下方向に回動可能に連結されたフロント作業装置11とを備えている。
旋回体2は、基礎下部構造をなす旋回フレーム2aを有する。旋回フレーム2aの前側には、フロント作業装置11が上下方向に回動可能に連結されている。旋回フレーム2aの後部には、フロント作業装置11との重量バランスを取るためのカウンタウェイト3が取り付けられている。旋回フレーム2aの左側前部には、運転室4が設けられている。運転室4内には、ブーム5を操作するための操作レバー装置15(図2に示す)、アーム6を操作するための操作レバー装置16(図2に示す)、バケット7を操作するための操作レバー装置17(図2に示す)等が配置されている。旋回フレーム2a上には、原動機としてのエンジン(図示せず)、エンジンにより駆動されるポンプ装置9、走行体1に対して旋回体2(旋回フレーム2a)を旋回駆動する旋回モータ8a、ポンプ装置9から旋回モータ8aおよび後述するブームシリンダ5a、アームシリンダ6a、バケットシリンダ7aを含む複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御するコントロールバルブユニット10等が搭載されている。
フロント作業装置11は、基端部が旋回フレーム2aの前側に上下方向に回動可能に連結されたブーム5と、このブーム5の先端部に上下、前後方向に回動可能に連結されたアーム6と、このアーム6の先端部に上下、前後方向に回動可能に連結されたバケット7と、ブーム5を駆動するブームシリンダ5aと、アーム6を駆動するアームシリンダ6aと、バケット7を駆動するバケットシリンダ7aとを備えている。
図2は、図1に示す油圧ショベル200に搭載された油圧駆動装置の概略構成図である。なお、図2では、説明の簡略化のため、ブームシリンダ5a、アームシリンダ6aおよびバケットシリンダ7aの駆動に関わる部分のみを示し、旋回モータ8aを含むその他の油圧アクチュエータの駆動に関わる部分は省略している。
図2において、油圧駆動装置300は、ブームシリンダ5aと、アームシリンダ6aと、バケットシリンダ7aと、ポンプ装置9と、操作レバー装置15〜17と、コントロールバルブユニット10と、制御装置としてのコントローラ20とを備えている。
操作レバー装置15〜17は、それぞれ、操作信号として電気信号を出力する電気式の操作レバー装置であり、オペレータにより把持される操作レバー15a,16a,17aと、これら操作レバーの操作方向と操作量に応じた電気信号を生成する複数のポテンショメータを内蔵した電気信号生成部15b,16b,17bとを有している。操作レバー装置15〜17の電気信号生成部15b,16b,17bによって生成された電気信号は、コントローラ20に入力される。なお、操作レバー装置15〜17は、操作レバー15a,16a,17aの操作方向と操作量に応じたパイロット圧を生成する複数のパイロット弁を有する油圧式の操作レバー装置であっても良い。その場合、操作レバー15a,16a,17aから出力される操作信号としてのパイロット圧は、圧力センサで電気信号に変換され、コントローラ20に入力される。
ポンプ装置9は、第1および第2ポンプ30,31を有する。第1および第2ポンプ30,31は、可変容量型の油圧ポンプであり、吐出流量(ポンプ流量)を調整するためのレギュレータ30a,31aをそれぞれ備えている。
コントロールバルブユニット10は、第1ポンプ30とタンク32とを接続する第1センタバイパスライン33と、第2ポンプ31とタンク32とを接続する第2センタバイパスライン34とを有する。第1センタバイパスライン33には、第1ポンプ30からブームシリンダ5aに供給される圧油の流れを制御する第1ブーム方向制御弁21と、第1ポンプ30からバケットシリンダ7aに供給される圧油の流れを制御するバケット方向制御弁24とが配置されている。第2センタバイパスライン34には、第2ポンプ31からブームシリンダ5aに供給される圧油の流れを制御する第2ブーム方向制御弁22と、第2ポンプ31からアームシリンダ6aに供給される圧油の流れを制御するアーム方向制御弁23とが配置されている。また、コントロールバルブユニット10は、コントローラ20から出力される指令電流により駆動され、方向制御弁21〜24を駆動するためのパイロット圧を生成する電磁比例弁26a,26b,27a,27b,28a,28b,29a,29bを有している。
第1ブーム方向制御弁21は、第1ブーム上げ電磁比例弁26aから出力されるパイロット圧を図示左側の操作部(受圧部)に作用させることにより図示右方向に駆動され、第1ブーム下げ電磁比例弁26bから出力されるパイロット圧を図示右側の操作部に作用させることより図示左方向に駆動される。第1ブーム方向制御弁21が図示右方向に駆動されると、第1ポンプ30からの圧油がブームシリンダ5aのヘッド側に供給され、ブームシリンダ5aのロッド側の圧油がタンク32に排出される。これにより、ブームシリンダ5aが伸長し、ブーム5(図1に示す)が上げ動作する。一方、第1ブーム方向制御弁21が図示左方向に駆動されると、第1ポンプ30からの圧油がブームシリンダ5aのロッド側に供給され、ブームシリンダ5aのヘッド側の圧油がタンク32に排出される。これにより、ブームシリンダ5aが縮小し、ブーム5が下げ動作する。
第2ブーム方向制御弁22は、第2ブーム上げ電磁比例弁27aから出力されるパイロット圧を図示左側の操作部(受圧部)に作用させることにより図示右方向に駆動され、第2ブーム下げ電磁比例弁27bから出力されるパイロット圧を図示右側の操作部(受圧部)に作用させることにより図示左方向に駆動される。第2ブーム方向制御弁22が図示右方向に駆動されると、第2ポンプ31からの圧油がブームシリンダ5aのヘッド側に供給され、ブームシリンダ5aのロッド側の圧油がタンク32に排出される。これにより、ブームシリンダ5aが伸長し、ブーム5が上げ動作する。一方、第2ブーム方向制御弁22が図示左方向に駆動されると、第2ポンプ31からの圧油がブームシリンダ5aのロッド側に供給され、ブームシリンダ5aのヘッド側の圧油がタンク32に排出される。これにより、ブームシリンダ5aが縮小し、ブーム5が下げ動作する。
アーム方向制御弁23は、アーム巻込み電磁比例弁28aから出力されるパイロット圧を図示左側の操作部(受圧部)に作用させることにより図示右方向に駆動され、アーム押出電磁比例弁28bから出力されるパイロット圧を図示右側の操作部(受圧部)に作用させることにより図示左方向に駆動される。アーム方向制御弁23が図示右方向に駆動されると、第2ポンプ31からの圧油がアームシリンダ6aのヘッド側に供給され、アームシリンダ6aのロッド側の圧油がタンク32に排出される。これにより、アームシリンダ6aが伸長し、アーム6(図1に示す)が巻込み動作する。一方、アーム方向制御弁23が図示左方向に駆動されると、第2ポンプ31からの圧油がアームシリンダ6aのロッド側に供給され、アームシリンダ6aのヘッド側の圧油がタンク32に排出される。これにより、アームシリンダ6aが縮小し、アーム6が押出動作する。
バケット方向制御弁24は、バケット巻込み電磁比例弁29aから出力されるパイロット圧を図示左側の操作部(受圧部)に作用させることにより図示右方向に駆動され、バケット押出電磁比例弁29bから出力されるパイロット圧を図示右側の操作部(受圧部)に作用させることにより図示左方向に駆動される。バケット方向制御弁24が図示右方向に駆動されると、第1ポンプ30からの圧油がバケットシリンダ7aのヘッド側に供給され、バケットシリンダ7aのロッド側の圧油がタンク32に排出される。これにより、バケットシリンダ7aが伸長し、バケット7(図1に示す)が巻込み動作する。一方、バケット方向制御弁24が図示左方向に駆動されると、第1ポンプ30からの圧油がバケットシリンダ7aのロッド側に供給され、バケットシリンダ7aのヘッド側の圧油がタンク32に排出される。これにより、バケットシリンダ7aが縮小し、バケット7が押出動作する。
コントローラ20は、操作レバー15a,16a,17aから入力された操作信号に応じて指令電流を生成し、電磁比例弁26a,26b,27a,27b,28a,28b,29a,29bに出力する。これにより、電磁比例弁26a,26b,27a,27b,28a,28b,29a,29bは、操作レバー15a,16a,17aの操作量に応じたパイロット圧を方向制御弁21〜24の操作部(受圧部)に出力する。また、コントローラ20は、操作レバー15a,16a,17aから入力された操作信号に応じて指令信号を生成し、レギュレータ30a,31aに出力する。これにより、第1および第2ポンプ30,31は、操作レバー15a,16a,17aの操作量に応じたポンプ流量を吐出する。
図3は、図2に示すコントローラ20の制御ブロック図である。
図3において、コントローラ20は、ポンプ流量目標算出部40〜45と、電磁弁目標算出部46〜51と、第1ポンプ制御部52と、第2ポンプ制御部53とを備えている。
ポンプ流量目標算出部40および電磁弁目標算出部46には、ブーム5を操作するための操作レバー(以下「ブーム操作レバー」という。)15aがブーム上げ方向に操作されたときのレバー倒しこみ量(操作量)に応じた操作信号が入力される。ポンプ流量目標算出部40は、ブーム上げ方向のレバー操作量に応じて、第1ポンプ30に対する要求流量(第1ポンプ目標流量)および第2ポンプ31に対する要求流量(第2ポンプ目標流量)を算出し、第1ポンプ制御部52および第2ポンプ制御部53にそれぞれ出力する。電磁弁目標算出部46は、ブーム上げ方向のレバー操作量に応じて第1ブーム方向制御弁21および第2ブーム方向制御弁22がそれぞれ図2中右方向に駆動されるように、第1および第2ブーム上げ電磁比例弁26a,27aに指令電流を出力する。
ポンプ流量目標算出部41および電磁弁目標算出部47には、ブーム操作レバー15aがブーム下げ方向に操作されたときのレバー倒しこみ量(操作量)に応じた操作信号が入力される。ポンプ流量目標算出部41は、ブーム下げ方向のレバー操作量に応じて、第1ポンプ30に対する要求流量(第1ポンプ目標流量)および第2ポンプ31に対する要求流量(第2ポンプ目標流量)を算出し、第1ポンプ制御部52および第2ポンプ制御部53にそれぞれ出力する。電磁弁目標算出部47は、ブーム下げ方向のレバー操作量に応じて第1ブーム方向制御弁21および第2ブーム方向制御弁22がそれぞれ図2中左方向に駆動されるように、第1および第2ブーム下げ電磁比例弁26b,27bに指令電流を出力する。
ポンプ流量目標算出部42および電磁弁目標算出部48には、アーム6を操作するための操作レバー(以下「アーム操作レバー」という。)16aがアーム巻込み方向に操作されたときのレバー倒しこみ量(操作量)に応じた操作信号が入力される。ポンプ流量目標算出部42は、アーム巻込み方向のレバー操作量に応じて、第2ポンプ31に対する要求流量(第2ポンプ目標流量)を算出し、第2ポンプ制御部53に出力する。電磁弁目標算出部48は、アーム巻込み方向のレバー操作量に応じてアーム方向制御弁23が図2中右方向に駆動されるように、アーム巻込み電磁比例弁28aに指令電流を出力する。
ポンプ流量目標算出部43および電磁弁目標算出部49には、アーム操作レバー16aがアーム押出方向に操作されたときのレバー倒しこみ量(操作量)に応じた操作信号が入力される。ポンプ流量目標算出部43は、アーム押出方向のレバー操作量に応じて、第2ポンプ31に対する要求流量(第2ポンプ目標流量)を算出し、第2ポンプ制御部53に出力する。電磁弁目標算出部49は、アーム押出方向のレバー操作量に応じてアーム方向制御弁23が図2中左方向に駆動されるように、アーム押出電磁比例弁28bに指令電流を出力する。
ポンプ流量目標算出部44および電磁弁目標算出部50には、バケット7を操作するための操作レバー(以下「バケット操作レバー」という。)17aがバケット巻込み方向に操作されたときのレバー倒しこみ量(操作量)に応じた操作信号が入力される。ポンプ流量目標算出部44は、バケット巻込み方向のレバー操作量に応じて、第1ポンプ30に対する要求流量(第1ポンプ目標流量)を算出し、第1ポンプ制御部52に出力する。電磁弁目標算出部50は、バケット巻込み方向のレバー操作量に応じてバケット方向制御弁24が図2中右方向に駆動されるように、バケット巻込み電磁比例弁29aに指令電流を出力する。
ポンプ流量目標算出部45および電磁弁目標算出部51には、バケット操作レバー17aがバケット押出方向に操作されたときのレバー倒しこみ量(操作量)に応じた操作信号が入力される。ポンプ流量目標算出部45は、バケット押出方向のレバー操作量に応じて、第1ポンプ30に対する要求流量(第1ポンプ目標流量)を算出し、第1ポンプ制御部52に出力する。電磁弁目標算出部51は、バケット押出方向のレバー操作量に応じてバケット方向制御弁24が図2中左方向に駆動されるように、バケット押出電磁比例弁29bに指令電流を出力する。
第1ポンプ制御部52は、第1ポンプ30のポンプ流量がポンプ流量目標算出部40,41,44,45からの第1ポンプ目標流量(後述)の合計流量と一致するように、レギュレータ30aを制御する。ただし、第1ポンプ目標流量の合計流量がポンプ最小流量を下回る場合は、第1ポンプ30のポンプ流量はポンプ最小流量に制御される。第2ポンプ制御部53は、第2ポンプ31のポンプ流量がポンプ流量目標算出部40〜43からの第2ポンプ目標流量(後述)の合計流量と一致するように、レギュレータ31aを制御する。ただし、第2ポンプ目標流量の合計流量がポンプ最小流量を下回る場合は、第2ポンプ31のポンプ流量はポンプ最小流量に制御される。
図4は、図3に示すブーム上げ操作に対応したポンプ流量目標算出部40の演算ブロック図である。なお、図3に示すブーム下げ操作に対応したポンプ流量目標算出部41については、図4に示すポンプ流量目標算出部40と同様であるため、説明は省略する。
図4において、ポンプ流量目標算出部40は、ブーム上げ目標流量算出部60と、第1ポンプ目標流量算出部61と、補正部62と、ゲイン63と、第2ポンプ目標流量算出部64と、補正部65と、ゲイン66と、加算部79と、加算部80とを有する。
ブーム上げ目標流量算出部60には、ブーム操作レバー15aのブーム上げ方向のレバー倒しこみ量(操作量)に応じた操作信号が入力される。ブーム上げ目標流量算出部60は、レバー倒しこみ量(操作量)に応じて、ブームシリンダ5aのヘッド側に供給される流量の目標値であるブーム上げ目標流量を算出し、第1ポンプ目標流量算出部61、第2ポンプ目標流量算出部64、補正部62および補正部65に出力する。
第1ポンプ目標流量算出部61は、ブーム上げ目標流量算出部60からのブーム上げ目標流量(アクチュエータ目標流量)に応じて、第1ポンプ30の吐出流量の目標値である第1ポンプ目標流量を算出し、加算部79に出力する。補正部62は、ブーム上げ目標流量算出部60からのブーム上げ目標流量が0から立ち上がってからTBmU秒間(補正時間)が経過するまでの間はゲイン63に1を出力し、それ以外のときはゲイン63に0を出力する。ゲイン63は、補正部62の出力値が1のときは、加算部79にKBmU/2(補正流量の1/2)を出力し、補正部62の出力値が0のときは、加算部79に0を出力する。
加算部79は、第1ポンプ目標流量算出部61からの第1ポンプ目標流量にゲイン63の出力値を加算し、第1ポンプ制御部52に出力する。これにより、ブーム上げ目標流量が0から立ち上がってからTBmU秒間(補正時間)が経過するまでの間、第1ポンプ制御部52に入力される第1ポンプ目標流量にKBmU/2(補正流量の1/2)が加算される。これにより、第1ポンプ30は、ブーム上げ目標流量が0から立ち上がってからTBmU秒間(補正時間)が経過するまでの間、通常時のポンプ目標流量よりもKBmU/2(補正流量の1/2)だけ大きいポンプ目標流量に従うように制御される。
第2ポンプ目標流量算出部64は、ブーム上げ目標流量算出部60からのブーム上げ目標流量(アクチュエータ目標流量)に応じて、第2ポンプ31の吐出流量の目標値である第2ポンプ目標流量を算出し、加算部80に出力する。補正部65は、ブーム上げ目標流量算出部60からのブーム上げ目標流量が0から立ち上がってからTBmU秒間(補正時間)が経過するまでの間はゲイン66に1を出力し、それ以外のときはゲイン66に0を出力する。ゲイン66は、補正部65の出力値が1のときは、加算部80にKBmU/2(補正流量の1/2)を出力し、補正部65の出力値が0のときは、加算部80に0を出力する。
加算部80は、第2ポンプ目標流量算出部64からの第2ポンプ目標流量にゲイン66の出力値を加算し、第2ポンプ制御部53に出力する。これにより、ブーム上げ目標流量が0から立ち上がってからTBmU秒間(補正時間)が経過するまでの間、第2ポンプ制御部53に入力される第2ポンプ目標流量にKBmU/2(補正流量の1/2)が加算される。これにより、第2ポンプ31は、ブーム上げ目標流量が0から立ち上がってからTBmU秒間(補正時間)が経過するまでの間、通常時のポンプ目標流量よりもKBmU/2(補正流量の1/2)だけ大きいポンプ目標流量に従うように制御される。
図5は、図3に示すバケット巻込み操作に対応したポンプ流量目標算出部44の演算ブロック図である。なお、図3に示すアーム巻込み操作に対応したポンプ流量目標算出部42、アーム押出操作に対応したポンプ流量目標算出部43およびバケット押出操作に対応したポンプ流量目標算出部45については、図5に示すポンプ流量目標算出部44と同様であるため、説明は省略する。
図5において、ポンプ流量目標算出部44は、バケット巻込み目標流量算出部74と、第1ポンプ目標流量算出部75と、補正部76と、ゲイン78と、加算部83とを有する。
バケット巻込み目標流量算出部74には、バケット操作レバー17aのバケット巻込み方向のレバー倒しこみ量(操作量)に応じた操作信号が入力される。バケット巻込み目標流量算出部74は、レバー倒しこみ量(操作量)に応じて、バケットシリンダ7aのヘッド側に供給される流量の目標値であるバケット巻込み目標流量を算出し、第1ポンプ目標流量算出部75および補正部76に出力する。
第1ポンプ目標流量算出部75は、バケット巻込み目標流量算出部74からのバケット巻込み目標流量(アクチュエータ目標流量)に応じて、第1ポンプ30の吐出流量の目標値である第1ポンプ目標流量を算出し、加算部83に出力する。補正部76は、バケット巻込み目標流量算出部74からのバケット巻込み目標流量が0から立ち上がってからTBkC秒間(補正時間)が経過するまでの間はゲイン78に1を出力し、それ以外のときはゲイン78に0を出力する。ゲイン78は、補正部76の出力値が1のときは、加算部83にKBkCを出力し、補正部76の出力値が0のときは、加算部83に0を出力する。
加算部83は、第1ポンプ目標流量算出部75からの第1ポンプ目標流量にゲイン78の出力値を加算し、第1ポンプ制御部52に出力する。これにより、バケット巻込み目標流量が0から立ち上がってからTBkC秒間(補正時間)が経過するまでの間、第1ポンプ制御部52に入力される第1ポンプ目標流量にKBkC(補正流量)が加算される。これにより、バケット巻込み目標流量が0から立ち上がってからTBkC秒間(補正時間)が経過するまでの間、通常時の目標流量よりもKBkC(補正流量)だけ大きい目標流量に従うように第1ポンプ30が制御される。
図6は、図3に示すブーム上げ操作に対応した電磁弁目標算出部46の演算ブロック図である。なお、図3に示すその他の電磁弁目標算出部47〜51については、図6に示す電磁弁目標算出部46と同様であるため、説明は省略する。
図6において、電磁弁目標算出部46は、ブーム操作レバー15aのブーム上げ方向の倒しこみ量(操作量)に応じた電磁比例弁26a,27aのパイロット目標圧を算出し、このパイロット目標圧に応じた制御信号を電磁比例弁26a,27aに出力する。これにより、ブーム操作レバー15aのブーム上げ方向の倒しこみ量(操作量)に応じて、第1ブーム方向制御弁21および第2ブーム方向制御弁22が図2中右方向に駆動され、第1および第2ポンプ30,31から吐出された圧油がブームシリンダ5aのヘッド側に供給できるようになる。
図7は、図3に示すポンプ流量目標算出部40〜45における補正流量および補正時間の設定例を示す図である。
図7において、KBmUおよびTBmUは、ブーム上げ操作に対応したポンプ流量目標算出部40における補正流量および補正時間である。KBmDおよびTBmDは、ブーム下げ操作に対応したポンプ流量目標算出部41における補正流量および補正時間である。KAmCおよびTAmCは、アーム巻込み操作に対応したポンプ流量目標算出部42における補正流量および補正時間である。KAmDおよびTAmDは、アーム押出操作に対応したポンプ流量目標算出部43における補正時間および補正流量である。KBkCおよびTBkCは、バケット巻込み操作に対応したポンプ流量目標算出部44における補正流量および補正時間である。KBkDおよびTBkDは、バケット押出操作に対応したポンプ流量目標算出部45における補正流量および補正時間である。
図7において、補正流量(KBmU,KBmD,KAmC,KAmD,KBkC,KBkD)は、第1および第2ポンプ30,31のポンプ最小流量よりも大きい値に設定されている。
また、ブーム上げ操作に対応する補正流量(KBmU)および補正時間(TBmU)は、補正流量の積算値(KBmU×TBmU)が大の値となるように設定されている。これは、ブームシリンダ5aによって駆動されるブーム5の慣性(質量)が大きく、ブームシリンダ5aの伸長方向の動き出しに必要な油量(所要油量)が大きいためである。一方、ブーム下げ操作に対応する補正流量(KBmD)および補正時間(TBmD)は、補正流量の積算値(KBmD×TBmD)が小の値となるように設定されている。これは、ブーム下げ操作の場合は、ブーム5の自重作用によりブームシリンダ5aの縮小方向の動き出しに必要な油量(所要油量)が小さくなるためである。
また、アーム巻込み操作に対応する補正時間(TAmC)および補正流量(KAmC)は、補正流量の積算値(KAmC×TAmC)が中の値となるように設定されている。同様に、アーム押出操作に対応する補正時間(TAmD)および補正流量(KAmD)は、補正流量の積算値(KAmD×TAmD)が中の値となるように設定されている。これは、アームシリンダ6aによって駆動されるアーム6の慣性(質量)は、ブーム5の慣性とバケット7の慣性との中間にあり、アームシリンダ6aの動き出しに必要な油量(所要油量)は、ブームシリンダ5aの伸長方向の所要油量とバケットシリンダ7aの所要油量との中間にあるためである。
また、バケット巻込み操作に対応する補正時間(TBkC)および補正流量(KBkC)は、補正流量の積算値(KBkC×TBkC)が小の値となるように設定されている。同様に、バケット押出操作に対応する補正時間(TBkD)および補正流量(KBkD)は、補正流量の積算値(KBkD×TBkD)が小の値となるように設定されている。これは、バケットシリンダ7aによって駆動されるバケット7の慣性(質量)が小さく、バケットシリンダ7aの動き出しに必要な油量(所要油量)が小さいためである。
図8は、本実施例に係る油圧駆動装置のアクチュエータ初動時の動作と、従来技術に係る油圧駆動装置のアクチュエータ初動時の動作とを比較して示す図である。
まず、従来技術における動作(図8左側に示す)について説明する。
操作レバーが中立位置から操作されると、レバー入力(操作量)は、図中左側1段目に示すように、ある時刻T0で立ち上がる。
電磁比例弁のパイロット目標圧は、図中左側2段目の破線で示すように、時刻T0から通信・演算遅れ時間後の時刻T1で立ち上がる。また、電磁比例弁の実パイロット圧は、図中左側2段目の実線で示すように、時刻T1から電磁比例弁の応答遅れ時間後の時刻T2で立ち上がる。この実パイロット圧が立ち上がる時刻T2で方向制御弁21〜24が動き始め、ポンプ流量が油圧アクチュエータに流入し始める。
アクチュエータ目標流量は、図中左側3段目の破線で示すように、レバー入力がレバー倒しこみ量対目標流量の不感帯D(図4に示す)を超える時刻T3で立ち上がる。
ポンプ目標流量は、図中左側4段目の破線で示すように、ポンプ目標流量がポンプ最小流量を超える時刻T4で立ち上がる。また、実ポンプ流量は、図中左側4段目の実線で示すように、時刻T4からポンプ応答遅れ時間後の時刻T5で立ち上がる。ここで、第1および第2ポンプ30,31は応答性が低いため、実ポンプ流量の立ち上がり方はアクチュエータ目標流量の立ち上がり方よりも緩やかとなる。
アクチュエータ速度は、図中左側5段目に示すように、油圧アクチュエータに流入するポンプ流量の積算値が所要油量を超える時刻T6で立ち上がる。
次に、本実施例における動作(図8右側に示す)について、従来技術と相違する部分を説明する。
ポンプ目標流量は、図中右側4段目の破線で示すように、アクチュエータ目標流量が立ち上がる時刻T3からポンプ最小流量よりも大きい補正流量が加算されることにより、時刻T3で立ち上がる。すなわち、本実施例におけるポンプ目標流量は、従来技術においてポンプ目標流量が立ち上がる時刻T4よりも早く立ち上がる。
また、実ポンプ流量は、図中右側4段目の実線で示すように、時刻T3からポンプ応答遅れ時間後の時刻T7で立ち上がる。すなわち、本実施例における実ポンプ流量は、従来技術において実ポンプ流量が立ち上がる時刻T5よりも早く立ち上がる。
アクチュエータ速度は、図中右側5段目に示すように、油圧アクチュエータに流入するポンプ流量の積算値が所要油量を超える時刻T8で立ち上がる。ここで、本実施例における実ポンプ流量は、上述の通り従来技術における実ポンプ流量よりも早くポンプ最小流量から立ち上がるため、ポンプ流量の積算値が所要油量に達するまでの時間は従来技術よりも短縮される。すなわち、本実施例におけるアクチュエータ速度は、従来技術においてアクチュエータ速度が立ち上がる時刻T6よりも早く立ち上がる。
以上のように構成した本実施例によれば、操作レバー15a,16a,17aの操作量に基づいて各アクチュエータ目標流量を設定し、各アクチュエータ目標流量に基づいて第1および第2ポンプ目標流量を設定することにより、油圧アクチュエータ5a,6a,7aに供給されない余剰なポンプ流量の発生が抑えられる。これにより、第1および第2ポンプ30,31の消費エネルギが削減されるため、油圧ショベル200の省エネ性を確保することができる。
また、操作レバー15a,16a,17aの中立位置からの操作後から補正時間が経過するまでの間、各アクチュエータ目標流量に基づいて設定された第1および第2ポンプ目標流量にポンプ最小流量よりも大きい補正流量を加算することにより、ポンプ流量がポンプ最小流量から立ち上がるタイミングを早めることができる。これにより、操作レバー15a,16a,17aの中立位置からの操作後から油圧アクチュエータ5a,6a,7aが動き出すまでの時間が短縮されるため、油圧アクチュエータ5a,6a,7aの初動応答性を改善することができる。
また、補正流量の積算値が油圧アクチュエータ5a,6a,7aによって駆動される部材5,6,7の慣性(質量)に応じた値となるように補正流量および補正時間を設定することにより、油圧アクチュエータ5a,6a,7aの初動時に、第1および第2ポンプ30,31から過剰なポンプ流量が吐出されることを防止することができる。
本発明の第4の実施例に係る油圧ショベルについて、第3の実施例との相違点を中心に説明する。
本実施例に係る油圧ショベルの構成は、第1の実施例(図1に示す)と同様であるため、説明は省略する。
図13は、本実施例に係る油圧ショベルに搭載された油圧駆動装置の概略構成図である。以下、第3の実施例に係る油圧駆動装置(図2に示す)との相違点を説明する。
図13において、本実施例に係る油圧駆動装置300Bは、油圧ショベル200(図1に示す)の動作モードを選択するためのモード選択装置としてのモード選択スイッチ90を更に備えている。モード選択スイッチ90は、運転室4(図1に示す)に配置されている。
図14は、本実施例に係るブーム上げ操作に対応したポンプ流量目標算出部の演算ブロック図である。なお、その他のポンプ流量目標算出部41〜45については、図14に示すポンプ流量目標算出部40Cと同様であるため、説明は省略する。以下、第3の実施例に係るポンプ流量目標算出部40B(図12に示す)との相違点を説明する。
図14において、ポンプ流量目標算出部40Cは、モード補正部91と積算部92とを更に備えている。
モード補正部91には、モード選択スイッチ90からの信号が入力される。モード補正部91は、モード選択スイッチ90からの信号が1の場合は、作業精度が要求されない動作モード(通常モード)が選択されたと判断し、1を積算部92へ出力する。一方、モード選択スイッチ90からの信号が0の場合は、作業精度が要求される動作モード(精度重視モード)が選択された判断し、予め設定された値であるKModeを積算部92へ出力する。ここで、KModeには、0以上1未満の値が設定されている。
積算部92は、ゲイン85の出力値(0またはKBmU)にモード補正部91の出力値(1またはKmode)を積算し、加算部79に出力する。
加算部79は、第1ポンプ目標流量算出部61からの第1ポンプ目標流量に積算部92からの積算値を加算し、第1ポンプ制御部52に出力する。これにより、通常モードが選択されている場合は、ブーム上げ目標流量が0から立ち上がってからTBmU秒間(補正時間)が経過するまでの間、第1ポンプ制御部52に入力される第1ポンプ目標流量にKBmUが加算される。一方、精度重視モードが選択されている場合は、ブーム上げ目標流量が0から立ち上がってからTBmU秒間(補正時間)が経過するまでの間、第1ポンプ制御部52に入力される第1ポンプ目標流量にKBmU×Kmodeが加算される。
次に、本実施例における油圧駆動装置300Bのアクチュエータ初動時の動作について、第3の実施例と比較して説明する。
第3の実施例(図12に示す)では、ブームシリンダ5aの初動時に第1ポンプ目標流量に補正流量(KBmU)が加算されることにより、ブームシリンダ5aの初動応答性が改善される。しかし、ブームシリンダ5aの初動応答時間が短縮されることにより、ブームシリンダ5aの初動時にブーム5に振動が発生し、例えば作業精度が要求される作業においてフロント作業装置11の位置合わせをやり直す必要が生じるおそれがある。その場合、ブームシリンダ5aの駆動回数が増加し、第1ポンプ30の消費エネルギが大きくなることにより、省エネ性が損なわれることとなる。
これに対して、本実施例(図14に示す)では、モード選択スイッチ90の操作を介して精度重視モードを選択することにより、第1ポンプ目標流量に加算される補正流量がKmode(0以上1未満)倍に低下するため、ブームシリンダ5aの初動応答時間が長くなる。これにより、ブームシリンダ5aのブーム下げ方向の初動時にブーム5の振動が抑制されるため、例えば作業精度が要求される作業においてフロント作業装置11の位置合わせが容易となる。その結果、ブームシリンダ5aの駆動回数が抑えられ、第1ポンプ30による消費エネルギの増加を防ぐことができる。なお、ブームシリンダ5aのブーム下げ方向の初動時、アームシリンダ6aの初動時およびバケットシリンダ7aの初動時についても同様である。
以上のように構成した本実施例においても、第3の実施例と同様の効果が得られる。
また、油圧アクチュエータ5a,6a,7aの初動時にフロント作業装置11の振動が抑制されるため、フロント作業装置11の位置合わせが容易となり、油圧アクチュエータ5a,6a,7aの駆動回数が抑えられるため、第1および第2ポンプ30,31による消費エネルギの増加を防ぐことができる。