JP6729633B2 - 転動装置の診断方法 - Google Patents

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Description

本発明は、転動装置の診断方法に関する。
軸受の如き転動装置は、自動車、各種産業機械など幅広い産業分野にて利用されている。転動装置の内部の潤滑状態を把握することは、機械の円滑な動作、転動装置の寿命の確保などの観点から極めて重要な事項であり、適切に把握することにより、各種潤滑剤(油、グリースなど)の供給や転動装置の交換等のメンテナンスを、過不足無く最適な時期に行うことができる。しかしながら、潤滑状態を直接目視により観察することは困難であるため、転動装置の診断方法として、振動、音、油膜状態をモニタリングする方法が提案されている。
特許文献1は、交流電圧を転動装置の回転輪に対して非接触な状態で印加し、測定した静電容量を用いて軸受の油膜状態の推定ができる。すなわち、油膜をコンデンサーとみなして電気的な等価回路をモデル化し、転動装置の回転輪に対して非接触な状態で交流電圧を印加し、油膜の静電容量を測定する。静電容量と油膜厚さ(潤滑膜厚さ)は相関関係があるため、この相関関係から油膜の状態を推定するものである。
日本国特許第4942496号公報
特許文献1に開示の技術によれば、油膜厚さを測定することは可能である。しかしながら、この方法では油膜厚さのみの算出が可能であり、その他の潤滑状態に影響を与える要素について把握することは困難である。
本発明は、潤滑膜厚さだけでなく金属接触割合をも考慮して転動装置の潤滑状態を把握することを可能とする転動装置の診断方法を提供する。
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
本発明の診断方法は、外方部材と、内方部材と、転動体とを備える転動装置の診断方法であって、転動装置の停止状態において、前記外方部材と、前記転動体と、前記内方部材とから構成される電気回路に電圧を印加し、当該電気回路の接触状態抵抗を測定し、前記転動装置の駆動状態において、交流電圧の印加時の前記電気回路のインピーダンスおよび位相角を測定し、測定した前記接触状態抵抗と、前記インピーダンスと、前記位相角に基づき、前記外方部材と前記転動体の間または前記内方部材と前記転動体の間の少なくとも一つにおける潤滑膜厚さおよび金属接触割合を算出する。
本発明によれば、転動装置における潤滑膜厚さだけでなく金属接触割合をも把握することが可能であり、より詳細にかつより正確に転動装置の潤滑状態を診断することが可能となる。
図1は、外輪または内輪と転動体の接触領域を示す概念図であり、(a)は接触領域の構造をモデル化したモデル図を示し、(b)は(a)のモデルに対応した電気回路(等価回路)を示す。 図2は、外輪または内輪と転動体の接触領域における表面における凹凸を示す概念図である。 図3は、軸受装置の診断における電気回路(等価回路)の図を示す。 図4(a)は軸受装置の停止状態における接触領域の構造をモデル化したモデル図を示し、図4(b)は図4(a)のモデルに対応した電気回路(等価回路)を示す。 図5は、停止状態における軸受装置の診断における電気回路(等価回路)の図を示す。 図6は、試験装置の概略図である。 図7は、軸受装置の診断の工程を示すフローチャート図である。 図8(a)は油膜の抵抗を考慮しない接触領域の構造をモデル化したモデル図を示し、図8(b)は図8(a)のモデルに対応した電気回路(等価回路)を示す。 図9は、実施例における潤滑膜厚さおよび金属接触割合の経時変化を示すグラフである。
以下、本発明に係る転動装置の診断方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、診断対象となる転動装置としての軸受装置の概念図である。軸受装置10は、固定された外輪(外方部材)1と、図示せぬ回転軸に嵌合する回転側輪である内輪(内方部材)3と、外輪1の内周面に形成された軌道面と内輪3の外周面に形成された軌道面との間に介在する複数個の転動体5を備える。さらに外輪1と転動体5の間、および内輪3と転動体5の間には、潤滑のために供給された油、グリース等の潤滑剤からなる油膜(潤滑膜)9が存在する。軸受装置10は、自動車、二輪車、鉄道車両などの如き移動体や、産業機械、工作機械などに適用されるが、適用される装置は特に限定されない。また、本図では、内輪側に回転軸が存在するいわゆる内輪回転型の軸受装置10を示しているが、本願発明はこれには限定されず、外輪側に回転軸が存在するいわゆる外輪回転型の軸受装置にも適用可能である。
本発明の発明者は、特に、外輪1と転動体5の間または内輪3と転動体5の接触領域において、図1(a)のような接触領域の構造をモデル化した第1のモデル図を検討するに至った。すなわち、このような接触領域においては、外輪1、内輪3、転動体5などの各部材が油膜(潤滑剤)に覆われている部分のみならず、金属、すなわち外輪1、内輪3、転動体5などの各部材を構成する金属が接触し合う金属接触部が存在する。そこで、特定範囲の接触領域の全体面積をSと仮定し、この金属部分の接触領域中の油膜で覆われている面積と金属の接触が生じている面積の割合を1−α:αと仮定した。このとき、金属が接触し合う金属接触部7の面積はαSとなる。hは油膜9の厚さである潤滑膜厚さ(油膜厚さ)を示す。
ここで、図1(a)における外輪1と転動体5の接触領域の拡大図に示すように、油膜9を誘電体と捉え、外輪1と転動体5を電極と考えると、油膜9はコンデンサCを形成する。油膜9はごく微少ながらも抵抗Rをも有していると仮定できる。
一方、金属が接触し合う金属接触部7は抵抗Rを有している。この結果、図1(b)に示すような、図1(a)の第1のモデルに対応した電気回路(等価回路)E1(外輪1または内輪3と転動体5により形成される回路)が導かれる。油膜9は、コンデンサC(静電容量C)と抵抗R(抵抗値R)の並列回路を形成し、当該並列回路と、金属接触部7が形成する抵抗R(抵抗値R)が並列に接続される。後述するように、本発明は、この電気回路を用いて、潤滑膜厚さのみならず、接触領域の全体面積に対して金属接触部7が占める面積の割合である金属接触割合αを算出し、転動装置の潤滑状態を診断することが可能である。
図2は、外輪1または内輪3と転動体5がなす接触領域の拡大図を示す。外輪1、内輪3、転動体5の表面は滑らかに研磨されているが、ミクロ的に見ると、本図のように細かい凹凸が生じている。このような凹凸により生ずる空間に油膜9が形成されており、また、破線で示すように、外輪1または内輪3と転動体5が直接接触する部分により金属接触部7が形成される。また、潤滑膜厚さhは、所定の範囲の接触領域における油膜9の平均的な厚さより得られる。
図3は、軸受装置10の診断における一実施形態の電気回路(等価回路)の図を示す。上述した様に、各転動体5について、外輪1または内輪3との間に図1(b)に示す様な第1のモデルに基づいた電気回路(等価回路)E1が形成されている。各転動体5は、外輪1および内輪3の双方に接触しているため、図3に示すように、各転動体5について、二つの電気回路E1(外輪1−転動体5間および内輪3−転動体5間)が直列接続された電気回路(等価回路)E2が形成される。
さらに、軸受装置10にn個の転動体5が設けられている場合、電気回路E2がn個並列に接続されることになる。よって、図3に示すように、n個全ての転動体5を含む軸受装置10は電気回路(等価回路)E3を形成することになる。本実施形態の軸受装置10の診断に際しては、軸受装置10に、コイルのインダクタンスL、抵抗Rを直列接続した状態で軸受装置10の外輪1と内輪3の間に、電源から交流電圧を印加するため、図3に示す全体の電気回路(等価回路)E4が形成される。ただし、コイルのインダクタンスL、抵抗Rの接続はあくまで一実施形態であり、電気回路(等価回路)E4の採用は必須ではない。
交流電圧の周波数は、1Hz以上であり、かつ、1GHz未満であることが望ましい。周波数が1Hz未満または1GHz以上であると、測定されるインピーダンスおよび位相角(後述)に接触域外の情報(ノイズ)が多く含まれるため、接触域内の情報が正確に得られなくなるおそれがある。また、交流電圧の電圧については、1μV以上であり、かつ、100V未満であることが望ましい。電圧が1μV未満であると、軸受装置10に電流が流れないためモニタリングできず、また、100V以上であると、軸受装置10が電食を起こす危険性がある。
軸受装置10の診断方法は、図3にも示したように、軸受装置10に交流電圧を印加し、潤滑膜厚さhと金属接触割合αを求めることにより、軸受装置10の状態診断を行う。これらの値を求める前提として、これまで説明した第1のモデルに基づく軸受装置10について、図1に示したモデルから、一般的な電気回路の知識を用いて次の式(1)、(2)を導くことができる。さらに発明者は、金属接触部7の抵抗Rは、接触状態抵抗の抵抗R20を金属接触割合αで除することにより得られると考え、式(3)を導き出した。
Figure 0006729633
各記号は以下の意味である。
ε:潤滑剤の誘電率
S:各接触領域を接触楕円に近似した場合の各接触楕円の面積の平均値(平均面積)
γ:潤滑剤の電気抵抗率
20:油膜9が存在しない状態における金属接触部7の抵抗(接触状態抵抗)
潤滑剤の誘電率ε、電気抵抗率γは既知の値である(実測値やカタログ値など)。平均面積Sは当業者が周知の技術に基づいて容易に計算することができる値である。
一方、接触状態抵抗R20は、油膜9が存在しない状態における金属接触部7の抵抗である。図4(a)は、油膜9が存在しない状態を示す第2のモデル図、図4(b)は、図4(a)のモデルに対応した電気回路(等価回路)E1を示す。図5は、図4の状態を前提とした軸受装置10の診断における電気回路(等価回路)の図を示す。(3)式で表されるように、金属接触部7の抵抗Rは、接触状態抵抗の抵抗R20を金属接触割合αで除した値である。尚、「油膜9が存在しない状態」(α=1)は、油膜9がゼロで完全に存在しない状態のみならず、ごく微少量が存在するが、潤滑剤としての役割を果たし得ない程度の量が存在する状態をも含む。
接触状態抵抗R20は、測定が可能な値である。すなわち、潤滑剤(油膜9)が存在しない状態には種々の状態が含まれるが、典型的には軸受装置10の運転停止状態が含まれる。よって、接触状態抵抗R20は軸受装置10の運転停止時において、電気回路E1に存在する抵抗に実質的に等しいことになり、軸受装置10の停止状態において測定することができる値である。そして、容易に入手可能なこの値を利用することにより、軸受装置10の診断を容易に行うことが可能となる。この点については後に詳述する。
図6は、試験装置の一例の概略図である。軸受装置10を貫通する駆動軸の一端が回転コネクタ12を介して、一般的なLCRメーター20(交流電圧も兼ねる)に接続されるとともに、駆動軸の他端が駆動用のモーター14に接続されている。回転コネクタ12は、駆動軸の一端の回転輪に対してカーボンブラシを取り付けて構成したり、駆動軸にスリップリングを取り付けたりして構成することができるが、特に限定はされない。
図6の試験装置において、LCRメーター20に交流電圧の周波数ω、交流電圧の電圧Vを入力し、この入力を受けて、LCRメーター20に接続された軸受装置10のインピーダンス|Z|、位相角θをLCRメーター20が出力する。また、一般的な電気回路の知識からは、軸受装置10の複素インピーダンスZを用いて、次の(4)、(5)式を導出することができる。(4)式は複素インピーダンスZの実部に対応し、(5)式は複素インピーダンスZの虚部に対応する。式(6)、(7)は、式(4)、(5)の複素インピーダンスの実部、虚部を求めるにあたっての前提となる電気回路E1の合成抵抗、容量性リアクタンスを表している。
Figure 0006729633
各記号は以下の意味である。
|Z|:LCRメーターで出力されるインピーダンス
θ:LCRメーターで出力される位相角
n:軸受装置10の転動体5の数(玉数)
ω:交流電圧の角周波数
R’:電気回路E1における接触域内の合成抵抗
Y:電気回路E1における接触域内の容量性リアクタンス
R:軸受装置10に直列接続されている抵抗
L:軸受装置10に直列接続されているインダクタンス
第1のモデルおよび第2のモデルに基づく考察を経ると、接触状態抵抗R20を軸受装置10の運転停止時において測定して取得すれば、最終的に(4)、(5)式中の未知数は、潤滑膜厚さh、金属接触割合αのみとなる。よって、(4)、(5)式の連立方程式を解くことにより、潤滑膜厚さhは次の(8)式、金属接触割合αは次の(9)式によりそれぞれ求められることになる。
Figure 0006729633
そこで、本実施形態では軸受装置10の状態診断は、式(8)、(9)から潤滑膜厚さhと金属接触割合αを算出し、これらの値を用いて行う。図7は、図6の試験装置を用いた、軸受装置10の状態診断方法の工程を示すフローチャート図である。
まずモーター14、軸受装置10が停止した停止状態において、オペレータは、LCRメーター20に交流電圧の角周波数ω、交流電圧の電圧Vを入力する。停止状態においてLCRメーター20が出力したインピーダンス|Z|、位相角θに基づき、接触状態抵抗R20、すなわち油膜9が存在しない状態における金属接触部7の抵抗を測定する(ステップS1)。接触状態抵抗R20は、停止状態において測定されるインピーダンス|Zbefore|、位相角θbeforeから、R20=(n/2)(|Zbefore|×cosθbefore−R)の式を用いて間接的に測定される値である。
ただし、接触状態抵抗R20の測定は必ずしも最初に行う必要はなく、軸受装置10を停止した任意のタイミングで行うことができる。また、接触状態抵抗R20は1回のみの測定により決定しても良いし、複数回の測定結果に基づき決定しても良く(例えば複数回の測定結果の平均値など)、油膜9が存在しない状態における金属接触部7の抵抗を適切に測定できるならば、その測定条件は限定されない。
次に、モーター14を駆動して駆動軸を回転させた状態で、オペレータは、LCRメーター20に交流電圧の角周波数ω、交流電圧の電圧Vを入力する(ステップS2)。入力を受けて、LCRメーター20がインピーダンス|Z|、位相角θを出力する(ステップS3)。この出力を受けて、図示せぬコンピュータ等が、(8)、(9)式より、潤滑膜厚さh、金属接触割合αを算出する(ステップS4)。ステップS3の出力、ステップS4の算出は、時系列的に、例えば所定の時間毎に(1秒間隔など)複数回行われる。更にコンピュータ、またはオペレータが、潤滑膜厚さh、金属接触割合αより、軸受装置10を診断する(ステップS5)。
外輪1、内輪3、転動体5の表面粗さに対して潤滑膜厚さhが十分な大きさを有し、金属接触部7が発生しない場合はh>0、α=0であり、軸受装置10として理想的な状態である。しかし、実際には潤滑剤、運転条件、運転時間など様々な要因によって、潤滑膜厚さh、金属接触割合αは刻々と変化する。潤滑膜厚さhと金属接触割合αの時間的な変化については、以下のようなケースが考えられる。
(1)潤滑膜厚さhが増加し、金属接触割合αが減少する。
(2)潤滑膜厚さhが減少し、金属接触割合αが増加する。
(3)潤滑膜厚さhが増加し、金属接触割合αも増加する。
(4)潤滑膜厚さhが減少し、金属接触割合αも減少する。
(1)の状態は、金属接触が生じることによって、内外輪の表面粗さが小さくなる(いわゆるマイルドななじみ)過程を示していると考えられる。
(2)の状態は、転動体5と外輪1および/または内輪3が接触していく過程を示していると考えられる。
(3)の状態は、摩耗によって生じた導通する摩耗粉が二面間(外輪1−転動体5間または内輪3−転動体5間)に侵入することで、二面の隙間が大きくなり、その結果、潤滑膜厚さ(正確には二面間の隙間)hが増加し、金属接触割合αも増加する現象を示すと考えられる。つまり、(3)の状態は、摩耗によって導通する摩耗粉が接触領域に侵入する過程を示していると考えられる。
(4)の状態は、摩耗によって生じた導通する摩耗粉が二面間から排除されることで潤滑膜厚さ(正確には二面間の隙間)hが減少し、金属接触割合も減少したと考えられる。つまり、(4)の状態は、摩耗によって導通する摩耗粉が接触領域から排除される過程を示していると考えられる。
このように、本実施形態では、外方部材である外輪1と、転動体5と、内方部材である内輪3とから電気回路が構成され、この電気回路に交流電圧を印加することを前提としている。そして、LCRメーター20が、交流電圧の印加時の電気回路のインピーダンス|Z|および位相角θを測定して出力する。この測定は、軸受装置10の停止状態及び駆動状態の双方にて行われ、特に停止状態のインピーダンス|Z|および位相角θの測定により、接触状態抵抗R20が測定される。そして、測定した接触状態抵抗R20と、インピーダンス|Z|と、位相角θに基づき、例えばコンピュータ等の演算装置を用いて、外輪1と転動体5の間または内輪3と転動体5の間の少なくとも一つにおける潤滑膜厚さhおよび金属接触割合αを算出する。このような値の算出により、簡易にかつ正確に転動装置である軸受装置10の状態、特に潤滑状態を診断することが可能となる。
特に本実施形態では、式(3)で表される接触状態抵抗R20、金属接触部7の抵抗R、金属接触割合αの関係を念頭に置いたうえで、軸受装置10の停止状態において接触状態抵抗R20を取得することにより、式(8)、(9)より、潤滑膜厚さh、金属接触割合αを求めることを可能とした。これにより、軸受装置10の診断をより簡易に行うことができるようになる。
また、本実施形態では、インピーダンス|Z|および位相角θを時系列的に複数回測定するとともに、潤滑膜厚さhおよび金属接触割合αを時系列的に複数回算出する。この結果、上記(1)〜(4)に挙げたように、潤滑膜厚さhおよび金属接触割合αの時間的な変化を把握することができ、この時間的な変化から転動装置の潤滑状態に関する診断を行うことが可能となる。尚、潤滑膜厚さhおよび金属接触割合αの時系列的な算出は、インピーダンス|Z|および位相角θの測定と並行して行う必要はない。インピーダンス|Z|および位相角θの時系列的な測定結果を保存し、保存したデータに基づき後から時系列的に変化する潤滑膜厚さhおよび金属接触割合αを算出してもよい。
ところで、上述した第1のモデルでは油膜9の抵抗R(抵抗値R)を考慮したが、この値は、油膜9のコンデンサC(静電容量C)に比べて潤滑膜厚さhと金属接触割合αの算出への影響が小さな値であり、無視することも可能である。図8(a)は、油膜9の抵抗Rの存在を考慮しない仮定に基づく第3のモデル図、図8(b)は、図8(a)のモデルに対応した電気回路(等価回路)E1を示す。図8(b)及び式(3)より、合成抵抗R’=R=R20/αとなる。第1のモデルおよび第2のモデルと同じように式(4)、(5)を連立させた際に式(1)、(3)、(6)、(7)を代入すると、未知数はhとαだけになるため、第1のモデルおよび第2のモデルと同様に、一義的にhとαを求めることができる。
以下、具体的な実施例について説明する。
潤滑剤としてのポリアルファオレフィン、PAO(17mm/s、40℃)を封入した内径8mm、外径22mm、高さ7mmの単列深溝玉軸受(銘番:608)を用いて、潤滑膜厚さhおよび金属接触割合αの測定を行った。試験条件は、アキシアル荷重を19.6N、回転数を500rpm、温度は常温、潤滑剤の封入量は0.04gであり、図6に示す試験装置を用いて測定した。
図9は、停止状態から回転を開始して1時間後までの、潤滑膜厚さhおよび金属接触割合αの経時変化を示すグラフである。本試験条件では、潤滑膜厚さhよりも表面粗さの方が大きいため、回転試験開始直後から金属接触が生じていることがわかる。図9より、試験開始前(停止時)は潤滑膜厚さが0nm、金属接触割合が100%であったのに対して、回転試験を開始すると潤滑膜厚さhが増加し、金属接触割合αが減少していくことがわかる。これは、金属接触が生じることによって内外輪の表面粗さが小さくなる(マイルドななじみ)過程を示していると考えられる。尚、本実施例での各値は以下である。|Zbefore|は、軸受の停止時にLCRメーターで出力されたインピーダンスであり、cosθbeforeは、軸受の停止時にLCRメーターで出力された位相角のcos成分である。これらの値は、軸受の停止時に測定することが可能であり、結果的に接触状態抵抗R20が測定可能となる(図8のステップS1)。
V:1.0V
ω:1MHz
ε:1.98
n:7個
20=(n/2)(|Zbefore|×cosθbefore−R)
|Zbefore|:43.4Ω
cosθbefore≒0.99
L:0
R:0
S:2.92577×10−8
γ:4628206Ω・m
上述の説明では、測定に交流電流(交流電圧)を用いたが、接触状態抵抗R20は、図4のモデル下において、直流電流(直流電圧)を印加して測定してもよい(図7のステップS1)。この場合、接触状態抵抗R20はR20=(n/2)(Rbefore)の式によって求めることができる。Rbeforeは油膜が無いとき(停止時)に直流電流を流した際の電気回路(等価回路)E4全体の抵抗である。
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
1 外輪(外方部材)
3 内輪(内方部材)
5 転動体
7 金属接触部
9 油膜(潤滑膜)
10 軸受装置(転動装置)
12 回転コネクタ
14 モーター
20 LCRメーター

Claims (2)

  1. 外方部材と、内方部材と、転動体とを備える転動装置の診断方法であって、
    転動装置の停止状態において、前記外方部材と、前記転動体と、前記内方部材とから構成される電気回路に電圧を印加し、当該電気回路の接触状態抵抗を測定し、
    前記転動装置の駆動状態において、交流電圧の印加時の前記電気回路のインピーダンスおよび位相角を測定し、
    測定した前記接触状態抵抗と、前記インピーダンスと、前記位相角に基づき、前記外方部材と前記転動体の間または前記内方部材と前記転動体の間の少なくとも一つにおける潤滑膜厚さおよび金属接触割合を算出する、転動装置の診断方法。
  2. 請求項1に記載の転動装置の診断方法であって、
    前記電気回路のインピーダンスおよび位相角を時系列的に測定するとともに、前記潤滑膜厚さおよび前記金属接触割合を時系列的に算出し、
    前記潤滑膜厚さおよび前記金属接触割合の時間的な変化に基づき、転動装置の潤滑状態に関する診断を行う、転動装置の診断方法。
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