JP4954136B2 - 軸受装置 - Google Patents

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Description

この発明は、工作機械の主軸スピンドルなどに使用される軸受装置に関する。
工作機械のスピンドル装置では、加工精度および効率の向上のため、軸受の予圧管理が求められており、そのため軸受予圧検出の要求がある。軸受の予圧荷重を検出するセンサの従来例として、例えば、軸受の内外輪と転動体の間の潤滑油膜厚さが予圧により変化することを利用して、内外輪間の抵抗値から予圧を検出するものが提案されている(例えば特許文献1)。
特開2003−206925号公報
しかし、特許文献1に開示の技術では、内外輪間の抵抗を測定するために、電極を測定対象物に接触させる必要がある。その際、測定対象物の一方は回転体であるため、回転中に予圧を測定するには、ブラシやスリップリング等の電気接点が必要である。そのため、特許文献1に開示の技術を高速回転のものに適用するには、コストがかかる。また、ブラシやスリップリングが短寿命になる等の問題がある。
そこで、ハウジング内に軸方向に並べて配置され間座を介して予圧を受ける2つの転がり軸受において、それらの固定輪である各外輪にそれぞれ電極を設け、1つの転がり軸受の内外輪間の静電容量と他の1つの転がり軸受の内外輪間の静電容量の総和を、前記一対の電極間の静電容量として測定し、その測定値から転がり軸受の予圧を検出する方式が考えられる。
この方式の場合、転がり軸受の内外輪間の抵抗を測定する特許文献1に開示の技術のようなブラシやスリップリング等の電気接点が不要で、コストや寿命などの点で有利である。
しかし、この方式では、両軸受の外輪間を絶縁する必要がある.また、この場合の絶縁は交流電流に対する絶縁であるため、間座やハウジングと外輪との間の静電容量を小さくする必要があるが、そのためには絶縁用の被膜などを厚くする必要があり、コストや放熱の点で不利である。
他の方式として、転がり軸受の固定輪である外輪に第1の電極を電気的に接続し、同じく固定側部材である例えばハウジングの軸受に近い一部に電気的に絶縁して第2の電極を設け、さらに主軸に設けられて転がり軸受の回転輪である内輪に電気的に接続された予圧付与用のナット等の導体部材と前記第2の電極との間に、転がり軸受とは別の静電容量発生部を構成して、前記両電極間の静電容量を測定し、その測定値から転がり軸受の予圧を検出することも考えられる。
この方式の場合、ハウジングの一部に電気的に絶縁して設けた第2の電極と、主軸に設けた導体部材との間に静電容量発生部を構成して、この静電容量発生部の静電容量と転がり軸受の内外輪間の静電容量の総和を、前記一対の電極間の静電容量として測定するので、両転がり軸受の外輪間の絶縁が不要である。
しかし、この方式では、第2の電極を軸受に近いハウジングの一部に電気的に絶縁して設けるので、その第2の電極や絶縁部材を精度良く製作する必要があり、コストが高くなる。
この発明の目的は、ブラシやスリップリング等の電気接点を用いることなく軸受にかかる予圧を求めることができ、製造コストの低減および装置の長寿命化が可能な軸受装置を提供することである。
この発明の軸受装置は、ハウジング内で軸方向に並べられて主軸を回転自在に支持する複数の転がり軸受が、外輪間および内輪間にそれぞれ間座を介して予圧を受けるように構成され、前記複数の転がり軸受の外輪および外輪間の間座が前記ハウジングの一端部に固定された押さえ蓋と前記ハウシングの内径側に形成された肩部とに挟まれて軸方向に固定された軸受装置において、前記ハウジングまたは前記押さえ蓋の外面側に電気的に接続された第1の電極と、前記ハウジング肩部、または前記押さえ蓋における転がり軸受配置位置に対する外側に電気的に絶縁されて設けられた第2の電極と、この第2の電極と前記主軸との間に構成された静電容量発生部と、前記一対の電極間の静電容量を測定する静電容量測定手段と、この静電容量測定手段の測定値から前記転がり軸受の予圧を検出する予圧検出手段とを設けたことを特徴とする。
この構成によると、並列に接続された転がり軸受の静電容量と、これらの静電容量に対して直列接続となる静電容量発生部での静電容量とを合成した静電容量を、前記両電極を入力端子とする静電容量測定手段で測定し、その測定値から予圧検出手段で転がり軸受の予圧を検出するようにしている。このため、ブラシやスリップリング等の電気接点を用いることなく転がり軸受にかかる予圧を求めることができる。
特に、第2の電極は、ハウジング肩部または押さえ蓋における転がり軸受の配置位置に対する外側に電気的に絶縁されれて設けられているので、高い加工精度が不要でコスト低減が可能である。また、第1の電極も、ハウジングまたは押さえ蓋の外面側に電気的に接続されており、転がり軸受の外輪に直接接続しなくて良いので、ハウジングに配線用の溝を形成する必要がなく、ハウジングの剛性低下を防ぐことができ、加工コストも低減できる。これらのことから、製造コストの低減および装置の長寿命化が可能となる。
この発明において、前記静電容量発生部を、前記主軸または主軸に装着された導電部材とわずかな隙間を介して前記第2の電極を対向させて構成しても良い。
この発明において、前記静電容量発生部を、前記主軸に装着された導電部材とわずかな隙間を介して前記第2の電極を対向させて構成した場合に、前記導電部材が、前記主軸に螺合して前記転がり軸受に予圧を与えるナットであり、前記第2の電極が、前記ナットと同心に配置されてナットの外径面と径方向にわずかな隙間を介して対向するリング状の導体からなるものとしても良い。
前記両電極の間は、直流的に絶縁されているが、静電容量発生部での静電容量による交流カップリングで、交流的には接続された状態にある。このため、静電容量発生部での交流カップリングによる抵抗はできるだけ小さくする必要があり、そのために静電容量発生部での静電容量は大きいほうが望ましい。そこで、第2の電極を、ナットと同心のリング状の導体とし、全周にわたってナットと対向させることで対向面積を大きくすると、前記静電容量を大きくすることができる。
この発明において、前記第2の電極を、絶縁体を介して前記ハウジング肩部の端面または前記押さえ蓋の端面に設けても良い。
この発明において、前記第2の電極を、絶縁体を介して前記ハウジング肩部の内径面または前記押さえ蓋の内径面に設けても良い。
この発明において、前記第2の電極および絶縁体を前記ハウジング肩部の内径面または前記押さえ蓋の内径面に一体成形しても良い。この構成の場合、電極の取付け工数を削減することができ、さらなる製造コストの低減が可能となる。
この発明の軸受装置は、ハウジング内で軸方向に並べられて主軸を回転自在に支持する複数の転がり軸受が、外輪間および内輪間にそれぞれ間座を介して予圧を受けるように構成され、前記複数の転がり軸受の外輪および外輪間の間座が前記ハウジングの一端部に固定された押さえ蓋と前記ハウシングの内径側に形成された肩部とに挟まれて軸方向に固定された軸受装置において、前記ハウジングまたは前記押さえ蓋の外面側に電気的に接続された第1の電極と、前記ハウジング肩部、または前記押さえ蓋における転がり軸受配置位置に対する外側に電気的に絶縁されて設けられた第2の電極と、この第2の電極と前記主軸との間に構成された静電容量発生部と、前記一対の電極間の静電容量を測定する静電容量測定手段と、この静電容量測定手段の測定値から前記転がり軸受の予圧を検出する予圧検出手段とを設けたため、ブラシやスリップリング等の電気接点を用いることなく軸受にかかる予圧を求めることができ、製造コストの低減および装置の長寿命化が可能となる。
この発明の第1の実施形態を図1ないし図3と共に説明する。この実施形態の軸受装置は、ハウジング1内で軸方向に並べられた複数の転がり軸受3A,3Bにより、主軸2を回転自在に支持したものである。この軸受装置は、例えば、工作機械のスピンドル装置に応用される。
主軸2には、軸方向に離間した複数の転がり軸受3A,3Bを締まり嵌め状態で嵌合し、両転がり軸受3A,3Bの内輪3i,3i間には内輪間座4を、外輪3g,3g間には外輪間座5をそれぞれ介在させている。転がり軸受3A,3Bは、内輪3iと外輪3gの間に複数の転動体Tを介在させ、これら転動体Tを保持器Rtで保持したものである。これらの転がり軸受3A,3Bは、軸方向の予圧を付与することが可能な軸受であり、アンギュラ玉軸受、深溝玉軸受、またはテーパころ軸受等が用いられる。図示の例ではアンギュラ玉軸受が用いられ、2個の転がり軸受3A,3Bが背面合わせで設置されている。
一方の転がり軸受3Aの内輪3iの一端面を主軸2の外周に突出する肩部2aに係合させ、他方の転がり軸受3Bの内輪3iの一端面を、円筒部材であるスペーサ6を介してナット7で締め付けることで、両転がり軸受3A,3Bの内輪3iが主軸2に固定されている。前記ナット7は、主軸2の雄ねじ部2bに螺合したものである。両転がり軸受3A,3Bの外輪3gは、ハウジング1の内径面1aに嵌合させ、ハウジング1の一端部(図1における右側)にねじ止めされた押さえ蓋8と、ハウジング1の他端部(図1における左側)において内径側に突出して形成された肩部1bとに挟まれて軸方向に固定されている。外輪3gは、ハウジング1の内径面1aに対して緩み嵌めとし、両外輪3g間に1つの外輪間座5を介在させてある。
これら内輪間座4および外輪間座5は、いずれもリング状の部材である。外輪間座5の幅寸法H1は、内輪間座4の幅寸法H2と僅かに異なっている。この例では、外輪間座5の幅寸法H1が、内輪間座4の幅寸法H2よりも大きい。このため、図1の右側の転がり軸受3Bの内輪3i端面に、スペーサ6を介して当接するナット7を締め付けることにより、これら内輪間座4および外輪間座5の幅寸法差に応じて転がり軸受3A,3Bに予圧が付与される。
両転がり軸受3A,3Bの内輪3i同士は、主軸2および内輪間座4により電気的に導通している。両転がり軸受3A,3Bの外輪3g同士も、金属製つまり導電部材であるハウジング1および外輪間座5により電気的に導通している。
図1における右側に配置される転がり軸受3Bに近い前記押さえ蓋8の外面側には、第1の電極11が電気的に接続されている。具体的には、押さえ蓋8の端面に第1の電極11が固定されている。また、同じ押さえ蓋8における前記転がり軸受3Bの配置位置に対する外側に、第2の電極12が電気的に絶縁されて設けられている。具体的には、押さえ蓋8の端面に、第2の電極12が絶縁体17を介して固定されている。この場合、第2の電極12と押さえ蓋8を交流的に絶縁するために、第2の電極12と押さえ蓋8の間に形成される静電容量が小さくなるように、前記絶縁体17の厚み寸法はできるだけ大きくするのが望ましい。また、第2の電極12をねじで固定する場合は、樹脂ねじや樹脂ワッシャなどを用いて、押さえ蓋8との絶縁を確保する。
第2の電極12と主軸2との間には、転がり軸受3A,3Bとは別に静電容量を発生する静電容量発生部18が構成されている。具体的には、主軸2の雄ねじ部2bに螺合したナット7の外径面と径方向に僅かな隙間δを介して第2の電極12を対向させることで、前記静電容量発生部18が構成されている。
前記両電極11,12の間は、上記構成により直流的に絶縁されているが、第2の電極12とナット7の間に構成される静電容量発生部18での静電容量による交流カップリングで、交流的には接続された状態にある。このため、静電容量発生部18での交流カップリングによる抵抗はできるだけ小さくする必要があり、そのために静電容量発生部18での静電容量は大きいほうが望ましい。そこで、ここでは、第2の電極12を、ナット7と同心のリング状の導体とし、全周にわたってナット7と対向させることで対向面積を大きくして、前記静電容量を大きくしている。
前記一対の電極11,12には、これら電極間の静電容量を測定する静電容量測定手段9が接続され、その次段には静電容量測定手段9の測定値から転がり軸受3A,3Bの予圧を検出する予圧検出手段10が接続されている。
図2(A)は前記各転がり軸受3A,3Bの半部断面図を示し、図2(B)は図2(A)の軸受構造を電気回路として表現したときの模式図を示す。図2(A)において、外輪3gと転動体Tの接触面には1μm以下の厚さの潤滑膜13つまり油膜が形成され、外輪3gと転動体Tは直接接触することなく潤滑膜13を介して荷重を伝えることが知られている。内輪3iと転動体Tの接触面にも同様の潤滑膜14が形成される。この潤滑膜厚さは、転がり軸受3A,3Bにかかる荷重により変化するので、後述する前記電極11,12間の静電容量は転がり軸受3A,3Bにかかる荷重により変化する。
外輪3gと転動体Tの関係において、潤滑膜13を誘電体と考え、外輪3gと転動体Tを電極と考えると、ここに1つのコンデンサ相当部、すなわちコンデンサ15が形成される。同様に内輪3iと転動体Tの関係においても、もう1つ別のコンデンサ16が形成される。
これを模式的に表現すると、図2(B)のように2つのコンデンサ15,16が直列に接続された回路構成となる。ここで、両コンデンサ15,16の静電容量Ca,Cbが等しいとすると、2つのコンデンサ15,16の合計の静電容量はCa/2となる。また、軸受1個あたりの転動体Tの個数をnとして、それぞれの転動体Tでのコンデンサの静電容量が等しいとすると、それらの等しい静電容量のコンデンサが並列に接続された回路構成とみなすことができるので、軸受1個での全体の静電容量はnCa/2となる。
したがって、1つの転がり軸受3A(3B)において、外輪3gから内輪3iまでの経路の静電容量を測定すれば、1箇所の潤滑膜13(14)での静電容量Caを推定することができる。ただし、軸受1個に対して、上記した経路の静電容量を測定するのでは、内外輪3i,3gのいずれかが回転している(図1の場合は内輪3iが回転している)ため、上記特許文献1に開示の方式の場合と同様に、被測定箇所以外の部分でスリップリング等の電気接点が必要となり、測定誤差が生じたり測定結果が不安定になる要因となる。
そこで、この実施形態の軸受装置では、静電容量測定手段9の1つの入力端子である第1の電極11が2つの転がり軸受3A,3Bの固定輪である各外輪3gに導通する押さえ蓋1Aに接続され、他の1つの入力端子である第2の電極12が、第1の電極11と絶縁状態となるように、絶縁体17を介して押さえ蓋1Aの外側面である端面に固定されている。第2の電極12は、主軸2の雄ねじ部2bに螺合する導体部材であるナット7の外径面と径方向に僅かな隙間δを介して対向するように設けられて、第2の電極12とナット7とで静電容量発生部18が構成されている。ナット7は、主軸2、スペーサ6を介して両転がり軸受3A,3Bの内輪3iに導通しているので、これら内輪3iと第2の電極12との間に静電容量発生部18が介在することになる。
前記両電極11,12により、両転がり軸受3A,3Bの外輪3gと転動体Tとの間の静電容量、転動体と内輪3iとの間の静電容量、およびナット7と第2の電極12の間に構成される静電容量発生部18での静電容量を合成した静電容量を測定することができる。したがって、転がり軸受3A,3Bにかかる荷重により、外輪3gと転動体T、転動体Tと内輪3iの間の静電容量が変化するので、転がり軸受3A,3Bにかかる予圧荷重を求めることができる。
この場合の軸受装置の電気的な等価回路は図3のようになる。すなわち、転がり軸受3Aと転がり軸受3Bとは並列接続され、さらに、これら両転がり軸受3A,3Bに対して静電容量発生部18が直列接続されている。これによって、両転がり軸受3A,3Bの平均化された予圧を求めることができる。
前記静電容量測定手段9において、前記両転がり軸受3A,3Bの静電容量および前記静電容量発生部18での静電容量を合成した全体の静電容量の測定には、電気容量計などの計測器を用いることができる。
前記予圧検出手段10は、前記静電容量測定手段9で測定した全体の静電容量から、この静電容量に対応する予圧量を算出する電子回路等からなる。この予圧検出手段10は、全体の静電容量と予圧量の関係を演算式またはテーブル等で設定した図示しない関係設定手段を有し、求めた全体の静電容量を前記関係設定手段に照らし予圧量を算出する。予圧検出手段10は、独立して設けられた電子回路であっても、またスピンドル装置を制御する制御装置の一部であっても良い。
上記構成の作用、効果を説明する。スピンドル装置の図示しない駆動源により主軸2が回転し、転がり軸受3A,3Bの温度が上昇して内輪3iが膨張すると、内輪3iと転動体Tの接触面における潤滑膜厚さが減少する。これと共に、外輪3gと転動体Tの接触面における潤滑膜厚さも減少する。したがって、軸受全体の静電容量が増加する。この状態において、各転がり軸受3A,3Bにかかる予圧は、初期設定値よりも大きくなっている。予圧検出手段10は、静電容量測定手段9で測定した静電容量を前記関係設定手段に照らし、この初期設定値よりも大きくなった予圧量を算出する。
このように、この軸受装置では、並列に接続された転がり軸受3A,3Bの静電容量と、これらの静電容量に対して直列接続となる前記静電容量発生部18での静電容量とを合成した静電容量を、前記両電極11,12を入力端子とする静電容量測定手段9で測定し、その測定値から予圧検出手段10で転がり軸受3A,3Bの予圧を検出するようにしているので、ブラシやスリップリング等の電気接点を用いることなく転がり軸受3A,3Bにかかる予圧を求めることができる。
とくに、第2の電極12は、押さえ蓋8における転がり軸受3Bの配置位置の外側である端面に電気的に絶縁されれて設けられているので、高い加工精度が不要でコスト低減が可能である。また、第1の電極11も、押さえ蓋8の外面側である端面に電気的に接続されており、転がり軸受3A,3Bの外輪3gに直接接続しなくて良いので、ハウジング1に配線用の溝を形成する必要がなく、ハウジング1の剛性低下を防ぐことができ、加工コストも低減できる。これらのことから、製造コストの低減および装置の長寿命化が可能となる。
図4および図5は、この発明の他の実施形態を示す。同図において、図1〜図3に示す第1の実施形態に対応する部分には同一符号を付してある。この実施形態は、ビルトインモータタイプのスピンドル装置に適用した軸受装置の例である。このスピンドル装置では、ハウジング1内に、主軸2を回転自在に支持する軸受装置とは別に、主軸2を駆動するモータ40が設置されている。軸受装置が、2つの転がり軸受3A,3B、内輪間座4、および外輪間座5などで構成されることは図1に示す先の実施形態の場合と同様である。これら2つの転がり軸受3A,3Bの外輪3gおよび外輪3g間の外輪間座5は、ハウジング1の一端にねじ止めされた押さえ蓋8と、ハウジング1の内径側に形成された肩部1bとに挟まれて軸方向に固定されている。押さえ蓋8の固定位置とは反対側に配置される転がり軸受3Bの内輪3iの一端面は、主軸2に螺合したナット7で締め付けられ、これにより転がり軸受3A,3Bに予圧が付与される。
モータ40は、ハウジング1内における前記肩部1bよりも軸方向の内側の位置に配置され、そのモータロータ41が主軸2に固定され、モータステータ42がハウジング1に固定されている。
第1の電極11はハウジング1の外径面に固定されている。第2の電極12は、図5(A),(B)に断面図および正面図で示すように、リング状の絶縁体17Aの内周全面に設けられて、第2の電極12と絶縁体17Aとでリング状の電極部材12Aが構成されている。この電極部材12Aをハウジング1の肩部1bの内径面に嵌合することで、第2の電極12が、主軸2のナット7の外径面と径方向にわずかな隙間δを介して対向するように、ナット7と同心に配置される。これにより、ナット7と第2の電極12との間に、先の実施形態における静電容量発生部18が構成される。第2の電極12は、ハウジング1に貫設された配線孔1cを通して配線19により静電容量測定手段9に接続される。その他の構成は第1の実施形態と同様である。
この実施形態の場合も、第2の電極12は、ハウジング1の肩部1bにおける転がり軸受3Bの配置位置の外側である内径面に電気的に絶縁されれて設けられているので、高い加工精度が不要でコスト低減が可能である。また、第1の電極11も、ハウジング1の外面側である外径面に電気的に接続されており、転がり軸受3A,3Bの外輪3gに直接接続しなくて良いので、加工コストも低減できる。これらのことから、製造コストの低減および装置の長寿命化が可能となる。その他の効果は、先の実施形態の場合と同様である。
図6は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態では、図1に示す第1の実施形態において、第2の電極12、およびこの電極12と押さえ蓋8との間を電気的に絶縁する絶縁体17とを、押さえ蓋8の内径面に射出成型などにより一体成形している。すなわち、押さえ蓋8の内径面の全周にわたって絶縁体17が一体成形され、この絶縁体17の内径面の全周にわたって第2の電極12がさらに一体成形されている。これにより、第2の電極12が、転がり軸受3Bの内輪3i端面とナット7との間に介在するスペーサ6の外径面と径方向にわずかな隙間δを介して対向するように、スペーサ6と同心に配置される。スペーサ6は導電部材からなる円筒体であり、これによりスペーサ6と第2の電極12との間に、先の実施形態における静電容量発生部18が構成される。その他の構成は、図1に示す第1の実施形態と同様である。
このように、第2の電極12を絶縁体17と共に押さえ蓋8の内径面に一体成形することにより、電極の取付け工数を削減することができ、さらなる製造コストの低減が可能となる。その他の効果は、第1の実施形態の場合と同様である。なお、押さえ蓋8の代わりに、ハウジング1の肩部1bの内径面に第2の電極12と絶縁体17を一体成形しても良い。
図7は、例えば図1に示した実施形態において、静電容量測定手段9が、直列接続した発振器19と電流測定手段20とでなり、軸受装置21に交流電流を流すことによって、軸受装置21における両転がり軸受3A,3Bの静電容量と静電容量発生部18の静電容量とを合成した全体の静電容量Cをインピーダンスに換算して測定するようにした例を示す。
この場合、油膜で形成される静電容量が一般に数十pFと小さいことから、発振器19による発振周波数を100kHzから10MHz程度とすると、高い検出精度が得られる。また、油膜に厚みは極めて小さいことから、軸受装置21に印加する印加電圧は概ね1V以下にする必要がある。
図8は、上記静電容量測定手段9が、OPアンプ22で構成された発振器23と、この発振器23の周波数から静電容量を推定する周波数対応容量推定手段24とでなり、測定した発振器23の周波数から軸受装置における全体の静電容量Cを推定するようにした例を示す。この場合の発振器23は、リラクゼーションオシレータ(relaxation oscillator )と呼ばれ、OPアンプ22に抵抗25Ra,25Rb,25Rt,およびコンデンサ25Ctを接続して構成される。抵抗25Ra,25Rb,25Rtの抵抗値をRa,Rb,Rt、コンデンサ25Ctの静電容量をCtとすると、発振周波数fは、およそ、
f=1/(2RtCt)
となることが知られている。
ここでは、前記発振器23のコンデンサ25Ctが軸受装置における全体の静電容量Cに置き換えられることで、その静電容量Cが推定される。
図9は、軸受装置の静電容量測定手段9が、充放電手段26と、その充電および放電の繰り返しにおける過度現象によって生じる充放電時間より静電容量を推定する充放電時間対応静電容量推定手段27とでなる例を示す。充放電手段26は、充電抵抗28と充電スイッチ29の直列回路部を被測定静電容量Ctに直列接続すると共に、放電スイッチ30と放電抵抗31の直列回路部を被測定静電容量Ctに並列接続した回路である。充放電時間対応静電容量推定手段27は、充放電手段26での充放電電圧を監視する電圧測定手段32と、この電圧測定手段32が監視する電圧が規定電圧になるまでの時間を測定することにより、被測定静電容量Ctを推定する判断手段33とでなる。
この場合、例えば、充電スイッチ29をオンにして充電を開始し、被測定静電容量Ctの充電電圧を電圧測定手段32で監視して、その充電電圧が規定電圧になるまでの充電時間を判断手段33で測定することにより、被測定静電容量Ctを推定できる。または、予め所定電圧まで充電させた被測定静電容量Ctに対して、放電スイッチ30をオンにして放電を開始し、被測定静電容量Ctの放電電圧を電圧測定手段32で監視して、その放電電圧が規定電圧になるまでの放電時間を判断手段33で測定することにより、被測定静電容量Ctを推定できる。
ここでは、前記被測定静電容量Ctが軸受装置における全体の静電容量Cに置き換えられることで、その静電容量Cが推定される。
以上説明した軸受装置を、スピンドル装置以外の装置、例えばロボット等に適用することも可能である。上記した各実施形態では、2個の転がり軸受3A,3Bを背面合わせで設置したが、正面組み合わせで設置しても良い。また、転がり軸受の個数は2個に必ずしも限定されるものではなく、2個以上であってもよい。
この発明の一実施形態にかかる軸受装置の断面図である。 (A)は転がり軸受の半部断面図、(B)は(A)の軸受構造を等価回路として表現した場合の模式図である。 軸受装置の電気的な等価回路である。 この発明の他の実施形態にかかる軸受装置の断面図である。 (A)は同軸受装置における電極部材の断面図、(B)は同正面図である。 この発明のさらに他の実施形態にかかる軸受装置の断面図である。 軸受装置における静電容量測定手段の一例を示すブロック図である。 軸受装置における静電容量測定手段の他の例を示す回路図である。 軸受装置における静電容量測定手段のさらに他の例を示す回路図である。
符号の説明
1…ハウジング
1b…ハウジング肩部
2…主軸
3A,3B…転がり軸受
3i…内輪
3g…外輪
4…内輪
5…外輪
6…スペーサ(導電部材)
7…ナット(導電部材)
8…押さえ蓋
9…静電容量測定手段
10…予圧検出手段
11…第1の電極
12…第2の電極
17,17A…絶縁体
18…静電容量発生部

Claims (6)

  1. ハウジング内で軸方向に並べられて主軸を回転自在に支持する複数の転がり軸受が、外輪間および内輪間にそれぞれ間座を介して予圧を受けるように構成され、前記複数の転がり軸受の外輪および外輪間の間座が前記ハウジングの一端部に固定された押さえ蓋と前記ハウシングの内径側に形成された肩部とに挟まれて軸方向に固定された軸受装置において、前記ハウジングまたは前記押さえ蓋の外面側に電気的に接続された第1の電極と、前記ハウジング肩部、または前記押さえ蓋における転がり軸受配置位置に対する外側に電気的に絶縁されて設けられた第2の電極と、この第2の電極と前記主軸との間に構成された静電容量発生部と、前記一対の電極間の静電容量を測定する静電容量測定手段と、この静電容量測定手段の測定値から前記転がり軸受の予圧を検出する予圧検出手段とを設けたことを特徴とする軸受装置。
  2. 請求項1において、前記静電容量発生部を、前記主軸または主軸に装着された導電部材とわずかな隙間を介して前記第2の電極を対向させて構成した軸受装置。
  3. 請求項2において、前記静電容量発生部を、前記主軸に装着された導電部材とわずかな隙間を介して前記第2の電極を対向させて構成し、前記導電部材が、前記主軸に螺合して前記転がり軸受に予圧を与えるナットであり、前記第2の電極が、前記ナットと同心に配置されてナットの外径面と径方向にわずかな隙間を介して対向するリング状の導体からなる軸受装置。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記第2の電極を、絶縁体を介して前記ハウジング肩部の端面または前記押さえ蓋の端面に設けた軸受装置。
  5. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記第2の電極を、絶縁体を介して前記ハウジング肩部の内径面または前記押さえ蓋の内径面に設けた軸受装置。
  6. 請求項5において、前記第2の電極および絶縁体を前記ハウジング肩部の内径面または前記押さえ蓋の内径面に一体成形した軸受装置。
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