JP6729311B2 - 音響信号処理装置およびその制御方法ならびにコンピュータプログラム - Google Patents

音響信号処理装置およびその制御方法ならびにコンピュータプログラム Download PDF

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Description

この発明は、入力された音響信号に効果を付与する音響信号処理装置およびその制御方法ならびに音響信号処理装置をコンピュータにより機能させるためのコンピュータプログラムに関する。
従来、この種の音響信号処理装置として、コムフィルタ機能を用いて原音から基本周波数およびその倍音列に相当する成分を強調させて、それらの周波数を時間経過とともに高周波側へ遷移させ、その遷移に伴って各周波数の音圧ピークを増減させることにより、無限音階効果を発生させるものが知られている(特許文献1)。
特開2011−207392号公報(第63〜73段落、図6)。
しかし、上述した従来の音響信号処理装置は、各周波数が高周波側へ遷移するに従って各周波数の音圧ピークを増減させるだけの構成であるため、入力された音の上昇は感じられるが、音階が音楽的な度数に応じて明瞭に感じられ、時間とともに推移するような効果を、入力された音に付与することができなかった。
そこで、この発明は、上記の問題を解決するために提案されたものであって、音階が音楽的な度数に応じて明瞭に感じられ、時間とともに推移するような効果を、入力された音響信号に対して付与することができる音響信号処理装置およびその制御方法ならびにコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
上述した目的を達成するため、この出願に係る発明の音響信号処理装置は、入力された音響信号に対して並列でバンドパスフィルタ処理を行う複数系統のバンドパスフィルタ処理と、各隣り合う系統のバンドパスフィルタ処理の中心周波数どうしが、半音の整数倍に相当する所定の関係を保持した状態で時間変動し、かつ、各系統のバンドパスフィルタ処理における各中心周波数の最大値が所定の動作周波数帯域内に収まるように前記各中心周波数をラッピングすることにより、前記各中心周波数を制御する中心周波数制御処理と、各系統の各バンドパスフィルタ処理された各信号を加算して出力する加算処理と、を実行することを第1の特徴とする。
つまり、中心周波数制御設定処理は、各隣り合う系統のバンドパスフィルタ処理の中心周波数どうしが、半音の整数倍に相当する所定の関係を保持した状態で時間変動するため、入力された音響信号に対して、各中心周波数が更新される毎に音階が明瞭に上がって行く効果を付与することができる。
ここで、「時間変動し、かつ、各系統のバンドパスフィルタ処理における各中心周波数の最大値が所定の動作周波数帯域内に収まるように前記各中心周波数をラッピングする」とは、各中心周波数が動作周波数帯域の上限を越える場合に動作周波数帯域の下限に、下限を下回る場合に動作周波数帯域の上限にラッピングしながら、時間の進行とともに変動して、動作周波数帯域内を推移してゆくことを意味する。
したがって、中心周波数制御処理において各中心周波数の変更をすることにより、入力された音響信号に対して、音階が明瞭に無限に上がって行くように聞こえる無限音階の効果を付与することができる。
また、この出願に係る発明の音響信号処理装置は、前述した第1の特徴において、入力された音響信号に対して出力される信号の周波数特性が、前記動作周波数帯域の下端周波数から中域にかけて利得が大きくなり、前記動作周波数帯域の中域から上端周波数にかけて利得が小さくなるように、利得を制御する利得制御処理を実行可能であることを第2の特徴とする。
つまり、各中心周波数のラッピング処理による不連続に起因して発生するノイズを抑制することができる。また、バンドパスフィルタを通過する成分は、動作周波数の下端fMINから中域にかけて利得が十分小さいところから徐々に利得が大きくなり成分が徐々に強調されてゆき、中域にから上端fMAXにかけて利得が徐々に下げられ徐々に抑制されてゆくことによって、滑らかな無限音階の効果を付与ことができる。
また、この出願に係る発明の音響信号処理装置は、前述した第1または第2の特徴において、中心周波数制御処理は、更に、各バンドパスフィルタ処理の中心周波数のいずれもが、半音階を構成する音高に合致させて階段状に時間変動するように各中心周波数を制御することを第3の特徴とする。
つまり、各中心周波数が階段状に時間変動することにより、入力された音響信号に対して、半音階に基づいて階段状に時間変動する効果を付与することができる。
また、この出願に係る発明の音響信号処理装置は、前述した第3の特徴において、中心周波数制御処理は、各中心周波数が階段状に時間変動される際に時間的に平滑化されるように各中心周波数の変化特性を調整することを第4の特徴とする。
つまり、各中心周波数の更新に伴うフィルタ係数の急激な変更に起因するノイズの発生を簡便に抑制するとともに、滑らかな効果を付与することができる。
また、この出願に係る発明の音響信号処理装置は、前述した第1の特徴において、基準信号を発生する基準信号発生部と、基準信号が発生した基準信号を、半音階を構成する音高に相当する値を取る、時間的に離散した信号に変換するためのパターンが複数種類記憶されたパターン記憶部と、を備えており、基準信号発生部が発生した基準信号の単位時間当りの変化量に相当する信号を取得し、それに基づいて第1の基準信号を生成する基準信号生成処理と、基準信号生成処理が生成した第1の基準信号を、パターン記憶部に記憶されたいずれかのパターンに基づいて、半音階を構成する音高に相当する値を取る、時間的に離散化した第2の基準信号に加工する加工処理と、加工処理により加工された第2の基準信号を、時間的に平滑化して第3の基準信号を生成する平滑化処理とを実行し、中心周波数設定処理は、平滑化処理が生成した第3の基準信号に基づいて、半音の整数倍に相当するオフセットを加味することにより、各隣り合う系統のバンドパスフィルタ処理の中心周波数どうしが半音の整数倍に相当する所定の関係を保持した状態で時間変動し、かつ、各系統のバンドパスフィルタ処理における各中心周波数の最大値が所定の動作周波数帯域内に収まるように各中心周波数をラッピングし、複数系統のバンドパスフィルタ処理の各バンドパスフィルタ処理によって形成される周波数特性が、動作周波数帯域の下端周波数から中域にかけて利得が大きくなり、動作周波数帯域の中域から上端周波数にかけて利得が小さくなるように、中心周波数制御処理によって制御された各中心周波数に応じて、各バンドパスフィルタ処理の利得を制御する利得制御処理を実行することを第5の特徴とする。
つまり、単位時間当りの変化量に相当する信号に基づき、時間的に半音階に基づいた階段状で、平滑化された、各隣り合う系統のバンドパスフィルタ処理の中心周波数どうしが半音の整数倍に相当する所定の関係なるようにしつつ、滑らかな、無限音階の効果を、入力された音響信号に付与することができる。
また、この出願に係る発明は、前述した第1ないし第5のいずれか1つの特徴における各処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであることを特徴とする。
つまり、前述した第1ないし第5のいずれか1つの特徴を有する音響信号処理装置は、音響信号処理装置に備えられた効果付与部(コンピュータ)が上記コンピュータプログラムを実行することにより機能させることができる。
また、この出願に係る発明は、複数系統のバンドパスフィルタ処理により、入力された音響信号に対して並列でバンドパスフィルタ処理を行い、各バンドパスフィルタ処理された各信号を加算して出力する音響信号処理装置の制御方法であって、各隣り合う系統のバンドパスフィルタ処理の中心周波数どうしが、半音の整数倍に相当する所定の関係を保持した状態で時間変動し、かつ、各系統のバンドパスフィルタ処理における各中心周波数の最大値が所定の動作周波数帯域内に収まるようにラッピングすることにより、各中心周波数を制御する工程を有する音響信号処理装置の制御方法であることを特徴とする。
つまり、入力された音響信号に対して、各中心周波数が更新される毎に音階が明瞭に上がって行く効果を付与することができる。さらに、入力された音響信号に対して、音階が明瞭に無限に上がって行くように聞こえる無限音階の効果を付与することができる。
この出願に係る発明の音響信号処理装置を実施すれば、音階が音楽的な度数に応じて明瞭に感じられ、時間とともに推移するような効果を、入力された音響信号に対して付与することができる音響信号処理装置およびその制御方法ならびにコンピュータプログラムを提供することができる。
電子楽器の主な電気的構成をブロックで示す説明図である。 図1に示す電子楽器に備えられた効果付与部の主な機能をブロックで示す説明図である。 図2に示す効果付与部が実行する主な処理の流れを示すフローチャートである。 各中心周波数が一定の傾きで更新される過程を示すグラフである。 各中心周波数を増減させながら各中心周波数の単位時間当りの変化量を変化させた場合のグラフである。 各中心周波数のゲイン特性を示すグラフである。 各中心周波数が階段状に更新される過程を示すグラフである。 図7に示すグラフにおいて各中心周波数が階段状に更新される過程における角部が平滑化された状態を示すグラフである。 第2実施形態に係る電子楽器に備えられた効果付与部の主な機能をブロックで示す説明図で 第1実施形態に係る電子楽器に備えられたオクターブごとの各Eの音高の離散値に変換するパターンを示す説明図である。 第1実施形態に係る電子楽器に備えられたCメジャースケールの離散値に変換するパターンを示す説明図である。
〈第1実施形態〉
[電子楽器1の主な電気的構成]
この発明の音響信号処理装置としての効果付与部20が備えられた電子楽器1の主な電気的構成について、それをブロックで示す図1に基づいて説明する。
電子楽器1は、電子楽器1全体の動作を制御するCPU8を備える。CPU8には、CPUバス(データバスおよびアドレスバス)2を介してRAM6と、ROM7と、記憶装置9と、通信インターフェース(図では通信I/Fと記載)10と、演奏操作子3と、設定操作子4と、表示器5と、信号処理部11とがそれぞれ電気的に接続されている。また、信号処理部11は、音源部12および効果付与部20から構成されており、効果付与部20は、サウンドシステム13と電気的に接続されている。
ROM7には、CPU8が実行する各種のコンピュータプログラム、CPU8が所定のコンピュータプログラムを実行する際に参照する各種のテーブルデータなどが読出し可能に記憶されている。RAM6は、CPU8が所定のコンピュータプログラムを実行する際に発生する各種データなどを一時的に記憶するワーキングメモリとして、あるいは、現在実行中のコンピュータプログラムやそれに関連するデータを一時的に記憶するメモリなどとして使用される。記憶装置9には、各種のアプリケーションプログラムや各種の楽曲データなどが記憶されている。
演奏操作子3は、この電子楽器1を使用して演奏を行う奏者が使用する複数の鍵を備えた鍵盤およびホイール(ピッチベンドホイールやモジュレーションホイールなど)などである。設定操作子4は、無限音階の特性の設定および選択、音高、音色、効果などの選択、または、それらの制御を行うためのキーボードである。表示器5は、液晶表示装置(LCD)、または、有機ELなどから構成されており、この電子楽器1の制御状態、設定操作子4による設定内容や制御内容などを表示する。通信インターフェース10は、この電子楽器1と図示しない外部機器(たとえば、サーバやMIDI機器など)との間で制御プログラム、伴奏スタイルおよび曲データなどの各種データ、演奏操作に対応したイベント情報などを送受信するためのインターフェースである。この通信インターフェース10は、たとえば、MIDIインターフェース、LAN、インターネット、電話回線などのインターフェースであっても良いし、有線または無線のインターフェースでも良い。
音源部12は、演奏操作子3の演奏操作データに基づく音響信号、あるいは、ROM7や記憶装置9から読出した演奏データ、さらには、通信インターフェース10を介して取得される演奏データに基づく音響信号を生成し、その生成した音響信号を効果付与部20に出力する。
効果付与部20は、音源部12から入力された音響信号に対して所定の効果を付与し、音階が明瞭に無限に上がって行く、あるいは、音階が明瞭に無限に下がって行くように聞こえる、いわゆる無限音階の信号を作り出し、それをサウンドシステム13へ出力する。サウンドシステム13は、効果付与部20から出力されるデジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換部、このD/A変換部から出力される信号を増幅するアンプ、このアンプから出力される信号を放音するスピーカなどから構成されている。
この実施形態では、効果付与部20は、DSP(digital signal processor)により構成されている。
[効果付与部20の主な機能]
次に、効果付与部20の主な機能について、それをブロックで示す図2に基づいて説明する。
効果付与部20は、0〜(N−1)系統のバンドパスフィルタBPF0〜BPF(N−1)と、積算部26と、基準信号供給部30とを備える。各バンドパスフィルタBPF0〜BPF(N−1)は、それぞれ基準信号オフセット加算部22と、利得制御部23と、中心周波数制御部24とを備える。基準信号供給部30は、パターンテーブル記憶部31と、加工部32と、平滑化部33とを備える。また、効果付与部20が実行するコンピュータプログラムは、効果付与部20に備えられたROMなどの記憶部(図示省略)に記憶されている。
積算部26は、各バンドパスフィルタBPF0〜BPF(N−1)がそれぞれ中心周波数を算出する際の基準となる基準信号θbaseを生成する。この基準信号θbaseは、速度信号ωを、CPU8が速度を検出する周期毎に積算して算出される積算値に基づいて生成される。つまり、基準信号θbaseは、速度信号ωを反映した信号として生成される。速度信号ωは、演奏操作子3(図1)として設けられたホイールなどの操作をトリガーとして、CPU8(図1)が操作量を検出し、その検出された操作量に応じて、CPU8(図1)から出力される。また、積算部26は、上記積算値が動作周波数領域対応する範囲内に収まるようにラッピング処理を施して基準信号θbaseを生成する。たとえば、上記積算値がθMAXを上回るような場合は、(θMAX−θMIN)の値を上記積算値から減算することにより、上記積算値を動作周波数領域に対応する範囲内に収める。また、上記積算値がθMINを下回るような場合は、(θMAX−θMIN)の値を上記積算値に加算することにより、上記積算値を動作周波数領域に対応する範囲内に収める。
この実施形態では、基準信号θbaseは、−π〜πの値を取るものとし、上限のθMAXはπであり、下限のθMINは−πである。この基準信号θbaseをLFO(Low Frequency Oscillator)の位相情報とし、それに基づいて可聴周波数以下の周期的な制御信号を生成し、電子楽器1の音源部や効果付与部の各種制御に用いることができる。
パターンテーブル記憶部31には、音響信号の音階を階段状に変化させるときのパターンが複数種類記憶されている。たとえば、パターンテーブル記憶部31には、半音階を構成する音高、完全5度ごとの所定の音高、オクターブごとの所定の音高、Cメジャースケールに合致する音高など、半音階を構成する音高のいずれかに合致する値で構成される複数種類のパターンが記憶されている。パターンは、設定操作子4に備えられた所定のキーを操作することにより選択することができる。加工部32は、積算部26から出力される基準信号θbaseを、上記選択されたパターンを用いて変換して加工し、その加工した信号を平滑化部33へ出力する。
図10はオクターブごとの各Eの音高の離散値に変換するパターンを示す説明図である。横軸は加工部32への入力を表し、縦軸が加工部32からの出力を表す。積算部26から出力され加工部32に入力される基準信号θbaseが時間的に連続していても、このパターンで変換されることにより、オクターブごとの各Eの音高であるE−1、E0、E1、…、E8のいずれかに合致する値のみが加工部32から出力される。例えば、下限のθMINから時間経過とともに連続的に単調増加してゆく基準信号θbaseが加工部32に入力されると、加工部32からは時間経過とともにE−1、E0、E1、…に相当する離散値が階段状に出力される。
図11はCメジャースケールの離散値に変換するパターンを示す説明図である。加工部32に入力される基準信号θbaseが時間的に連続していても、このパターンで変換されることにより、Cメジャースケールの音高に合致するいずれかの値のみが加工部32から出力される。例えば、下限のθMINから時間経過とともに連続的に単調増加してゆく基準信号θbaseが加工部32に入力されると、加工部32からは時間経過とともにE−1、F−1、G−1、…に相当する離散値が階段状に出力される。
ここではパターンを変換テーブルで変換するように説明したが、それに限らず、数値計算で変換する計算手順をパターンとして複数記憶しておき、選択された計算手順に基づいて数値計算によって変換するようにしてもよい。例えば、床関数や天井関数を用い演算することができる。
平滑化部33は、加工部32から入力した基準信号θbaseを平滑化し、それを各バンドパスフィルタBPF0〜BPF(N−1)へ出力する。
各バンドパスフィルタBPF0〜BPF(N−1)の初期設定における各中心周波数は、周波数の低い順に(f,f,f・・・fN−1)とする。
図4は、各中心周波数が対数スケールで一定の傾きで更新される過程を示すグラフである。このグラフは、速度信号ωが2π/10[ラジアン/秒]である場合に基準信号θbaseを基準信号供給部30に通さないで直接各バンドパスフィルタへ出力したときの時間および周波数の関係を示す。同図に示すように、各バンドパスフィルタの中心周波数f〜fは対数スケールで等間隔でありそれぞれ一定の傾きで上昇し、10秒間かけて中心周波数のとりうる下限fMINから上限fMAXまで更新されている。また、各バンドパスフィルタの中心周波数は上限fMAXに達すると、中心周波数は動作周波数領域内に収まるようにラッピング処理され、下限fMINから再び一定の傾きで上昇するようになる。
図7は、各中心周波数が階段状に更新される過程を示すグラフである。このグラフは、速度信号ωが正の一定値であり単調増加する基準信号θbaseを加工部32に通して階段状に加工したが平滑化部33を通さなかった場合の時間および周波数の関係を示す。同図に示すように、各バンドパスフィルタの中心周波数f〜fは、隣り合う中心周波数どうしがオクターブの関係を保ったまま、それぞれ五度ずつ階段状に上昇している。このようにすることで、音階の上昇が明瞭になり、かつ、音階が階段状に無限に上がって行くように聞こえる無限音階の効果を音響信号に付与することができる。
図8は、図7に示すグラフにおいて各中心周波数が階段状に遷移する過程における角部が平滑化された状態を示すグラフである。このグラフは、正の一定値であり単調増加する場合に基準信号θbaseを加工部32に通して階段状に加工し、かつ、平滑化部33を通した場合の時間および周波数の関係を示す。同図に示すように、各バンドパスフィルタの中心周波数f〜fはそれぞれ階段状に上昇し、かつ、階段状部分の角部が平滑化されて左斜め上方に膨らんだ曲線に変化している。図8の特性は、図7と比較して音階の切替わり時が滑らかになるという違いを有するだけであり、音階の上昇が明瞭であることに変わりはない。このようにすることで、単に滑らかな効果が得られるだけでなく、各中心周波数を更新に伴うフィルタ係数の急激な変更に起因するノイズの発生を簡便に抑制することができる。
図5は、各中心周波数を増減させながら各中心周波数の単位時間当りの変化量を変化させた場合のグラフである。このグラフは、速度信号ωを正負に変化させるとともに、速度信号ωの速度を変化させた場合の時間および周波数の関係を示す。同図に示すように、各バンドパスフィルタの中心周波数f〜fは、隣り合う中心周波数どうしが同一の半音の倍数(例えば1オクターブ)という関係を保ったまま、各中心周波数の単位時間当りの変化量が変化し、それぞれ曲線状に上下に波を打って変化している。
上記の変化は、演奏操作子3(図1)の操作と中心周波数の変化とを対応付けることにより実現することができる。たとえば、ホイールを中立位置から一方(例えば+ωの方向)へ大きく回動させると各中心周波数の単位時間当りの変化量が増加し、同じ方向(例えば+ωの方向)であっても回動させる操作量を小さくすると各中心周波数の単位時間当りの変化量が減少する。また、ホイールの回動方向を変化させることにより、中心周波数が増加状態から減少状態へ、あるいは、減少状態から増加状態へ切替えることができる。
図5に示すように、中心周波数を激しく変化させると、音階が急激に上昇および下降を繰り返し、かつ、音階が変化する速度も急変するような効果音、換言すると破壊的な効果音を作り出すことができる。
各バンドパスフィルタBPF0〜BPF(N−1)にそれぞれ備えられた基準信号オフセット加算部22は、平滑化部33から出力される基準信号θbaseをそれぞれ取込み、その取込んだ基準信号θbaseにオフセット値をそれぞれ加算して制御信号を生成する。この実施形態では、基準信号に対してオフセット値を加算し、(θMAX−θMIN)を加算したり減算したりして動作周波数領域に対応する範囲内に収まるようラッピング処理を施して、制御信号を求める。ラッピング処理を関数Wrap()で表すと、基準信号(θbase,θbase,θbase,・・・θbase)に対してオフセット値(φ,φ,φ・・・φN−1)をそれぞれ加算し、ラッピング処理をすることで制御信号(θ,θ1,θ2,・・・,θ・・・,θN−1=(Wrap(θbase+φ),Wrap(θbase+φ),Wrap(θbase+φ),・・・Wrap(θbase+φN−1))が求まる。制御値θ〜θN−1は、それぞれ各バンドパスフィルタBPF0〜BPF(N−1)の中心周波数を指し示す制御値であり、この値に後述する演算を施して中心周波数が一意に求められる。
各バンドパスフィルタBPF0〜BPF(N−1)にそれぞれ備えられた中心周波数制御部24は、基準信号オフセット加算部22が出力した各値θ〜θN−1を取込み、次に示す式1の変換式を用いて各中心周波数f〜fN−1を演算する。式1は、隣り合う中心周波数の関係(対数スケール上では差であり、リニアスケールでは比)がオクターブとなる中心周波数を演算する式である。n番目のバンドパスフィルタBPFnの中心周波数fは、f〜fN−1における任意の中心周波数である。ここで、オフセット値(φ,φ,φ,・・・,φ,・・・,φN−1)=(2π×0/N,2π×1/N,2π×2/N,・・・,2π×n/N,・・・,2π×(N−1)/N)であり、制御信号(θ,θ,θ,・・・,θ・・・,θN−1)=(Wrap(θbase+2π×0/N),Wrap(θbase+2π×1/N),Wrap(θbase+2π×2/N),・・・,Wrap(θbase+2π×n/N),・・・,Wrap(θbase+2π×(N−1)/N))の関係にある。
=fMIN×2(θn+π)N/2π ・・・式1
また、隣り合う中心周波数の関係(対数スケール上では差であり、リニアスケールでは比)が半音のM倍となる中心周波数を算出する場合は、次の式2を用いる。ここで、オフセット値(φ,φ,φ,・・・,φ,・・・,φN−1)=(2πM×0/12N,2πM×1/12N,2πM×2/12N,・・・,2πM×n/12N,・・・,2πM×(N−1)/12N)であり、制御信号(θ,θ,θ,・・・,θ,・・・,θN−1)=(Wrap(θbase+2πM×0/12N),Wrap(θbase+2πM×1/12N),Wrap(θbase+2πM×2/12N),・・・,Wrap(θbase+2πM×n/12N),・・・,Wrap(θbase+2πM×(N−1)/12N))の関係にある。
=fMIN×2(M/12)・((θn+π)N/2π) ・・・式2
利得制御部23は、各バンドパスフィルタの中心周波数を変化させたときに、全バンドパスフィルタによる利得を周波数軸に沿って表したものの包絡線が所定の特性になるように、各バンドパスフィルタ処理の利得g〜gN−1を制御する。すなわち、動作周波数領域の低域から中域からにかけては利得が徐々に大きくなり、動作周波数領域の中域から高域にかけては徐々に利得が小さくなるように制御する。図6は、中心周波数f〜fのゲイン特性の一例を示すグラフである。ここで横軸である周波数軸は対数スケールで表されている。同図に示すように、全バンドパスフィルタによる利得を周波数軸に沿って表した包絡線は破線で表されている。すなわち、動作周波数領域であって中心周波数のとりうる周波数領域について、下限fMINでは利得は十分小さく、下限fMINから中域のfにかけては徐々に利得が大きくなり、fからfにかけての中域では一定の利得(0dB)を示し、中域のfから上限fMAXにかけては徐々に利得が小さくなり、上限fMAXでは利得が十分小さくなる。ある時刻において、各バンドパスフィルタBPF0〜BPF(N−1)の中心周波数f〜fが低域から高域にかけて順に並び、fからfにかけての中域に中心周波数f〜fが含まれるとすると、中心周波数をf〜fとするバンドパスフィルタBPF2〜BPF7の利得g〜gはそれぞれ一定の利得(0dB)に設定される。下限fMINから中域のfにかけての帯域に中心周波数fとfが含まれるとすると、バンドパスフィルタBPF0、BPF1、BPF2の利得g、g、gは、g<g<gに設定される。中域のfから中心周波数のとりうる上限fMAXにかけての帯域に中心周波数fとfが含まれるとすると、バンドパスフィルタBPF7、BPF8、BPF9の利得g、g、gは、g>g>gに設定される。
また、一つのバンドパスフィルタBPFmの中心周波数fが時間進行とともに下限fMINから上限fMAXまで推移する場合、バンドパスフィルタBPFmの利得gは図6の破線に沿って推移するように制御される。すなわち、バンドパスフィルタBPFmの中心周波数fが下限fMINから中域のfに達するまでの期間、利得gは十分小さい値から徐々に増加して0dBに至る。中心周波数fが中域のfからfに達するまでの期間、利得gは0dBの値を取る。中心周波数fが中域のfから上限fMAXに達するまでの期間、利得gは0dBから十分小さい値まで徐々に減衰する。
このように、時間とともに各中心周波数f〜fN−1が変化する各バンドパスフィルタBPF0〜BPF(N−1)の各利得g〜gN−1を、周波数の中域から低域にかけておよび中域から高域にかけて利得が小さくなるように制御することにより、バンドパスフィルタの中心周波数がとりうる下端fMINあるいは上端fMAXでのラッピング処理による不連続に起因して発生するノイズを抑制することができる。また、バンドパスフィルタを通過する成分は、動作周波数の下端fMINから中域にかけて利得が十分小さいところから徐々に利得が大きくなり成分が徐々に強調されてゆき、中域にから上端fMAXにかけて利得が徐々に下げられ徐々に抑制されてゆくことによって、効果付与部20全体として滑らかな無限音階の効果を生む。
フィルタ部は既知のIIRフィルタで構成されるが、それに替えてFIRフィルタ等で実現してもよい。
フィルタ部25は、中心周波数制御部24が出力した中心周波数fと利得制御部23が出力した利得gを取込み、取り込んだ中心周波数fと利得gに応じてフィルタ係数を更新してフィルタの特性を調整し、入力される音響信号に対して中心周波数fであって所与のQ値に基づく帯域幅の帯域を通過させるバンドパスフィルタ処理を行い、そのバンドパスフィルタ処理を行った信号をミキシング部27へ出力する。
このとき、バンドパスフィルタの利得のピークの鋭さを表すQ値は、演奏操作子3や設定操作子4の操作に応じて、CPU8がフィルタ部25の各バンドパスフィルタBPFmに供給するようにしてもよい。こうすることにより、操作に応じて、各ピークを鋭くして効果を強めたり、各ピークを鈍くして効果を弱めたりすることができる。
ミキシング部27は、各バンドパスフィルタから出力される信号をミキシング(加算)し、それをサウンドシステム13へ出力する。サウンドシステム13は、ミキシング部27から出力される信号をD/A変換し、そのアナログ信号をアンプによって増幅し、スピーカから放音する。
[主な処理の流れ]
次に、効果付与部20が実行する主な処理の流れについて図3に基づいて説明する。
図3は、効果付与部20が実行する主な処理の流れを示すフローチャートである。
ここでは、演奏操作子3(図1)として設けられたホイールを操作することにより、音響信号に対して付与する効果を変化させるものとして説明する。また、ホイールは中立位置から正の方向または負の方向へ回動可能になっており、正の方向へ回動させると音階が明瞭に無限に上がって行くように聞こえる無限音階の効果音がサウンドシステム13(図1)から出力され、負の方向へ回動させると音階が明瞭に無限に下がって行くように聞こえる無限音階の効果音がサウンドシステム13から出力される。さらに、ホイールの正あるいは負の方向への操作量を増加させると音階の変化速度が増加し、ホイールの正あるいは負の方向への操作量を減少させると音階の変化速度が減少する。
設定操作子4によって無限音階の効果付与を開始する操作がなされるとCPU8が効果付与部20に指示をし、効果付与部20(図2)は初期設定を実行する(図3のステップ(以下、ステップをSと略す)1)。この初期設定では、各バンドパスフィルタBPF0〜BPF(N−1)の各中心周波数を周波数の低い順に(f,f,f・・・fN−1)に設定する処理などを行う。そして、電子楽器1の奏者が演奏操作子3として設けられた鍵盤の所定の鍵を操作し、その鍵に対応する音響信号(たとえば、ドの音)が音源部12から出力され、その音響信号が効果付与部20に入力される。また、奏者がホイールを所望の方向へ回動させると、その操作量を示す信号がホイールからCPUバス2を介してCPU8に出力され、CPU8は、ホイールの操作量を反映した速度信号ωを効果付与部20の積算部26へ出力する。
続いて、前述したように、積算部26(図2)は速度信号ωを積算し、基準信号θbaseを生成する(S2)。ここで、積算部26は、生成した基準信号θbaseが−π〜πの範囲に収まるように前述したラッピング処理を行う。また、奏者がホイールを正の方向へ回動させると、基準信号θbaseは正の傾きで増加し、ホイールを負の方向へ回動させると、基準信号θbaseは負の傾きで減少する。また、ホイールの操作量が変化すると、基準信号θbaseの傾きが変化し、各中心周波数の単位時間当りの変化量が変化する。
続いて、積算部26が生成した基準信号θbaseは基準信号供給部30に入力され、所定の加工が施される(S3)。たとえば、前述したように、加工部32は、基準信号θbaseをパターンテーブル記憶部31に記憶されているオクターブの変化パターンに加工し、その加工された基準信号は平滑化部33によって平滑化される。
続いて、基準信号供給部30によって加工された基準信号θbaseは各バンドパスフィルタBPF0〜BPF(N−1)に入力され、各基準信号オフセット加算部22が、基準信号θbaseにオフセット値をそれぞれ加算した後に前述したラッピング処理をすることにより制御信号θ〜θN−1をそれぞれ生成する(S4)。続いて、各中心周波数制御部24が、取込んだ制御信号θ〜θN−1を前述した式1に代入して各中心周波数f〜fN−1を演算する(S5)。続いて、各利得制御部23が、各制御信号θ〜θN−1を取り込み、取込んだ制御信号θ〜θN−1に応じて、各利得g〜gN−1を演算する。ここで各利得g〜gN−1は、前述のように、所定の周波数特性をなすように制御される。(S6)。
続いて、各フィルタ部25は、中心周波数制御部24が出力した中心周波数fを取込み、入力される音響信号に対して中心周波数fの帯域を通過させるバンドパスフィルタ処理を行い、そのバンドパスフィルタ処理を行った処理信号をミキシング部27へ出力する。また、フィルタ部25は、フィルタ係数を更新する(S7)。続いて、ミキシング部27は、各バンドパスフィルタから出力される信号をミキシングし、それをサウンドシステム13などの後段へ出力する。
そして、それ以降、S2〜S8の処理を繰り返す。繰り返した次のサイクルにおいて、基準信号供給部30は、初期値の基準信号θbaseに速度信号ωを加算した新たな基準信号θbaseを生成して各基準信号オフセット加算部22へ供給し、中心周波数制御部24はラッピング処理をしながら新たな中心周波数を演算する。このとき、各中心周波数は速度信号ωに応じて時間とともに変化するが、隣り合うバンドパスフィルタの中心周波数どうしは、所定のオフセット値によって定まる関係が維持される。例えば、オクターブ関係や半音の整数倍といった関係が維持される。つまり、各中心周波数は、音楽的に意味のあるオクターブや半音の整数倍という関係を維持したまま、それぞれ更新される。このように、S2〜S8を繰り返すことにより、各中心周波数を更新し、サウンドシステム13が、音階が明瞭に無限に上がって行く、あるいは、明瞭に無限に下がって行くように聞こえる無限音階の効果音を再生する。
たとえば、各中心周波数がオクターブ関係を保ったまま時間とともに上昇するとし、入力された音響信号に様々な音高が含まれていると、あるときは音響信号に含まれる音高ドに合致する成分が強調され他の音高の成分は抑制され、あるときは音響信号に含まれる音高レに合致する成分が強調され他の音高の成分は抑制される。ここで、いずれかのバンドパスフィルタの中心周波数がとりうる上限に近づくと利得が下げられて徐々に人の耳に聞こえなくなり、やがて上限を超えそうになると中心周波数は下限にラッピング処理され、その後、中心周波数が下限から徐々に上昇するとともに利得も大きくなり、人の耳に聞こえるようになる。また、入力された音響信号がノイズのように音高を特定できない音である場合、音高を特定できない音響信号に対して、あるときは音高ドに合致する成分を強調させたり、またあるときは音高レに合致する成分を強調させたりすることができる。このようにして、音響信号に含まれるオクターブ関係にある成分を強調しそれ以外の成分を抑制することにより、無限に上昇するように聞こえる無限音階の効果を付与することができる。なお、無限に上昇するように聞こえるのは聴感上の錯覚であり、各バンドパスフィルタの通過帯域のピークが繰り返し上昇するだけである。
図3のフローチャートは説明のためにS2〜S8は繰り返す度に毎回各処理をするものとしたが、処理すべき時間的頻度は各処理によって異なるので、必ずしも毎回S2〜S8の処理をすべてしなければならないわけではなく、処理によっては低い頻度でよいものもある。S7の処理のうちフィルタ部のフィルタ処理とS8の処理であるミキシング部の処理は、リアルタイムで音響信号を処理する必要があるので、信号処理部11やサウンドシステム13内のD/A変換部が動作するサンプリング周期ごとに処理をしなければならない。それに対し、S2からS6の処理およびS7のフィルタ係数更新の処理は、サンプリング周期ごとの処理ではなくて、もっと低頻度でもよい。低頻度でS2からS6の処理及びS7のフィルタ係数更新の処理をし、それによって設定されたフィルタ係数は更新されるまで維持され、その係数に基づいたS7のフィルタ処理とフィルタ処理結果を用いるS8の処理が高頻度にするようにしてもよい。
[第1実施形態の効果]
(1)上述した第1実施形態の効果付与部20を実施すれば、バンドパスフィルタ処理の各隣り合う中心周波数どうしが、半音の整数倍に相当する所定の関係を保持した状態で時間変動するので、音楽的な度数が明瞭に感じられる効果を、入力された音響信号に付与することができる。しかも、各中心周波数の最大値が所定の動作周波数帯域内に収まるようにラッピングさせて、時間変動するので、無限に上がって行ったり下がって行ったりように聞こえる無限音階の効果であって音楽的な度数が明瞭に感じられる効果を付与することができる。
(2)また、上述した第1実施形態の効果付与部20を実施すれば、動作周波数帯域の下端周波数から中域にかけて利得が大きくなり、前記動作周波数帯域の中域から上端周波数にかけて利得が小さくなるようなフィルタリングを、入力された音響信号に対して施すことにより、各中心周波数のラッピング処理による不連続に起因して発生するノイズを抑制するとともに、滑らかな無限音階の効果を付与することができる。
(3)さらに、上述した第1実施形態の効果付与部20を実施すれば、半音階に基づいて階段状に時間変動する効果を、入力された音響信号に付与することができる。
(4)さらに、上述した第1実施形態の効果付与部20を実施すれば、各中心周波数を更新に伴うフィルタ係数の急激な変更に起因するノイズの発生を簡便に抑制するとともに、滑らかな効果を付与することができる。
〈第2実施形態〉
次に、この発明の第2実施形態について図9に基づいて説明する。
図9は、この実施形態に係る効果付与部20の主な機能をブロックで示す説明図である。なお、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を用い、説明を省略する。
効果付与部20は、0〜(N−1)系統のバンドパスフィルタBPF0〜BPF(N−1)と、積算部26と、基準信号供給部30と、前処理フィルタ28とを備える。各バンドパスフィルタBPF0〜BPF(N−1)には、第1実施形態と異なり、利得制御部を備えていない。その代わりに各フィルタ部には利得値として全バンドパスフィルタに共通の固定値gがそれぞれ供給され、各フィルタ部はこの固定値gに基づいた利得の特性になる。固定値gに基づいた利得は、例えば0.0dBである。前処理フィルタ28は各バンドパスフィルタBPF0〜BPF(N−1)に供給する信号の利得を制御し、ラッピング処理に起因するノイズを抑制するとともに滑らかな無限音階の効果を生む。また、図中において破線で示すように、前処理フィルタ28に代えて後処理フィルタ34を設け、ミキシング部27から出力される信号の利得を制御するように構成することもできる。この構成を採用した場合も前処理フィルタ28を設けた構成と同様の効果を奏することができる。前処理フィルタ28あるいは後処理フィルタ34は例えば既知のIIRで構成することができる。
このように、この実施形態の効果付与部20は、利得の制御を各バンドパスフィルタBPF0〜BPF(N−1)が行うのではなく、前処理フィルタ28あるいは後処理フィルタ34が独立した処理として行う。これにより、各バンドパスフィルタの処理負担を軽減することができる。
この実施形態の効果付与部20を備えた効果付与部20も第1実施形態と同じ効果を奏することができる。
〈他の実施形態〉
(1)前述した各実施形態では、演奏操作子3の操作をトリガーとして音源部12から出力された音響信号に対して効果を付与したが、電子楽器1の外部から音響信号を取込み、それに対して効果を付与することもできる。
(2)この発明に係る効果付与部20を、音源部12を備えないエフェクタなどの効果付与専用装置に適用し、エフェクタに入力される楽器などの音響信号に対して効果を付与することもできる。この構成を実施すれば、無限音階を作り出すエフェクタを実現することができる。
(3)効果付与部20は、DSPに限らず、専用回路により構成することもできる。
(4)効果付与部20が実行する各処理に相当するコンピュータプログラムを作成し、それをCPU8が実行することにより音響信号を効果音に変化させるように構成することもできる。
(5)効果付与部20をシーケンサに設け、曲データなどの再生が開始され、予め設定した時間になったときに、あるいは、所望の時間に効果付与部20を機能させるように構成することもできる。
(6)前述した各実施形態では音源部が刻々と生成する音響信号に対して効果付与部がリアルタイムに効果を付与するものとして説明したが、それに替えてノンリアルタイムに処理するようにしてもよい。つまり、予め用意されたデジタルオーディオファイルから、効果付与装置の処理能力に応じた処理速度で、記録されているサンプルデータ順次読み出して本発明の効果付与処理をして効果付与処理がされたサンプルデータを順次新たなデジタルオーディオファイルに記録するようにしてもよい。このときデジタルオーディオファイルをリアルタイムに再生して放音させることなく処理をするので、デジタルオーディオファイルを再生する速度にかかわらないノンリアルタイムの処理ができる。また、ノンリアルタイムに処理をする対象は予め用意されたデジタルオーディオファイルに限らず、予め用意された演奏データファイル(スタンダードMIDIファイル等)を基に、その演奏データファイルを再生した音声信号に効果を付与した結果に相当するデジタルオーディオファイルを、ノンリアルタイムに生成してもよい。
(7)前述した第1実施形態では、供給された基準信号を基に、各バンドパスフィルタ内にある基準オフセット加算部と中心周波数制御部と利得制御部が各バンドパスフィルタの中心周波数や利得を生成していたが、中心周波数や利得を各バンドパスフィルタの外に設けた処理部で生成し、各バンドパスフィルタのフィルタ部に供給するようにしてもよい。また、各バンドパスフィルタの外に設けた処理部で、各バンドパスフィルタの中心周波数や利得に対応するフィルタ係数まで生成し、各バンドパスフィルタのフィルタ部に供給するようにしてもよい。更には、各バンドパスフィルタの外に設けた処理部は、積算部や基準信号供給部も含めて、効果付与部ではなく、CPUが処理するようにしてもよい。
[特許請求の範囲との対応関係]
請求項1において、バンドパスフィルタ処理は、各フィルタ部25の処理あるいは実行するステップS7の処理に対応する。中心周波数設定処理のうちの中心周波数どうしが半音の整数倍の関係を保持した状態でラッピングされる処理は、基準信号オフセット加算部22あるいはステップS4の処理に対応し、中心周波数を時間変動させる処理は、積算部26あるいはステップS2の処理に対応する。加算処理は、ミキシング部27あるいはステップS8の処理に対応する。
請求項2における利得制御処理は、第1実施形態における利得制御部23あるいはステップS6あるいは第2実施形態における前処理フィルタ28あるいは後処理フィルタ28’の処理に対応する。
請求項3における階段状に時間変動させる処理は、基準信号供給部30のパターンテーブル記憶部31および加工部32、あるいはステップS3内の処理に対応する。
請求項4における平滑化する処理は、平滑化部33あるいはステップS3内の処理に対応する。
請求項5において、基準信号生成処理は、積算部26あるいはステップS2の処理に対応する。加工処理は、基準信号供給部30のパターンテーブル記憶部31および加工部32、あるいはステップS3内の処理に対応する。平滑化処理は、平滑化部33あるいはステップS3内の処理に対応する。中心周波数制御処理のうちのラッピングする処理は、基準信号オフセット加算部22あるいはステップS4の処理に対応し、中心周波数を時間変動させる処理は、積算部26あるいはステップS2の処理に対応する。利得制御処理は、第1実施形態における利得制御部23あるいはステップS6あるいは第2実施形態における前処理フィルタ28あるいは後処理フィルタ34の処理に対応する。
請求項6は、コンピュータに効果付与部20が各処理を実行させるためのコンピュータプログラムに対応する。
請求項7は、効果付与部20の各処理に対応する工程を音響信号処理装置に施す制御方法に対応する。
1 電子楽器
20 効果付与部
22 基準信号オフセット加算部
23 利得制御部
24 中心周波数制御部
25 フィルタ部
26 積算部
27 ミキシング部
30 基準信号供給部
31 パターンテーブル記憶部
32 加工部
33 平滑化部
BPF0〜BPF(N−1) バンドパスフィルタ

Claims (7)

  1. 入力された音響信号に対して並列でバンドパスフィルタ処理を行う複数系統のバンドパスフィルタ処理と、
    各隣り合う系統のバンドパスフィルタ処理の中心周波数どうしが、半音の整数倍に相当する所定の関係を保持した状態で時間変動し、かつ、各系統のバンドパスフィルタ処理における各中心周波数の最大値が所定の動作周波数帯域内に収まるように前記各中心周波数をラッピングすることにより、前記各中心周波数を制御する中心周波数制御処理と、
    各系統の各バンドパスフィルタ処理された各信号を加算して出力する加算処理と、
    を実行することを特徴とする音響信号処理装置。
  2. 前記入力された音響信号に対して出力される信号の周波数特性が、前記動作周波数帯域の下端周波数から中域にかけて利得が大きくなり、前記動作周波数帯域の中域から上端周波数にかけて利得が小さくなるように、利得を制御する利得制御処理を実行可能であることを特徴とする請求項1に記載の音響信号処理装置。
  3. 前記中心周波数制御処理は、更に、各バンドパスフィルタ処理の中心周波数のいずれもが、半音階を構成する音高に合致させて階段状に時間変動するように前記各中心周波数を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の音響信号処理装置。
  4. 前記中心周波数制御処理は、各中心周波数が階段状に時間変動時変される際に時間的に平滑化されるように各中心周波数の変化特性を調整することを特徴とする請求項3に記載の音響信号処理装置。
  5. 基準信号を発生する基準信号発生部と、
    前記基準信号発生部が発生した前記基準信号を、半音階を構成する音高に相当する値を取る、時間的に離散した信号に変換するためのパターンが複数種類記憶されたパターン記憶部と、を備えており、
    前記基準信号発生部が発生した前記基準信号の単位時間当りの変化量に相当する信号を取得し、それに基づいて第1の基準信号を生成する基準信号生成処理と、
    前記基準信号生成処理が生成した前記第1の基準信号を、前記パターン記憶部に記憶されたいずれかのパターンに基づいて、半音階を構成する音高に相当する値をとる、時間的に離散化した第2の基準信号に加工する加工処理と、
    前記加工処理により加工された前記第2の基準信号を、時間的に平滑化して第3の基準信号を生成する平滑化処理とを実行し、
    前記中心周波数制御処理は、前記平滑化処理が生成した前記第3の基準信号に基づいて、半音の整数倍に相当するオフセットを加味することにより、各隣り合う系統のバンドパスフィルタ処理の中心周波数どうしが半音の整数倍に相当する所定の関係を保持した状態で時間変動し、かつ、各系統のバンドパスフィルタ処理における各中心周波数の最大値が所定の動作周波数帯域内に収まるように前記各中心周波数をラッピングし、
    前記複数系統のバンドパスフィルタ処理の各バンドパスフィルタ処理によって形成された周波数特性が、前記動作周波数帯域の下端周波数から中域にかけて利得が大きくなり、前記動作周波数帯域の中域から上端周波数にかけて利得が小さくなるように、前記中心周波数制御処理によって制御された各中心周波数に応じて、各バンドパスフィルタ処理の利得を制御する利得制御処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の音響信号処理装置。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の各処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
  7. 複数系統のバンドパスフィルタ処理により、入力された音響信号に対して並列でバンドパスフィルタ処理を行い、各バンドパスフィルタ処理された各信号を加算して出力する音響信号処理装置の制御方法であって、
    各隣り合う系統のバンドパスフィルタ処理の中心周波数どうしが、半音の整数倍に相当する所定の関係を保持した状態で時間変動し、かつ、各系統のバンドパスフィルタ処理における各中心周波数の最大値が所定の動作周波数帯域内に収まるようにラッピングすることにより、前記各中心周波数を制御する工程を有する
    音響信号処理装置の制御方法。
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