以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット印刷装置の全体斜視図である。図2は、図1に示すインクジェット印刷装置の概略構成を模式的に示す正面図である。図3は、図1に示すインクジェット印刷装置のキャップ機構部の概略構成図である。図4は、キャップ機構部の要部の斜視図である。図5は、図1に示すインクジェット印刷装置の制御ブロック図である。なお、以下の説明において、図1の矢印で示す上下左右前後を上下左右前後方向とする。
図1、図2、図5に示すように、第1実施形態に係るインクジェット印刷装置1は、シャトルベースユニット2と、フラットベッドユニット3と、シャトルユニット4と、制御部5とを備える。
シャトルベースユニット2は、シャトルユニット4を支持するとともに、前後方向(副走査方向)にシャトルユニット4を移動させる。シャトルベースユニット2は、架台部11と、副走査駆動モータ12とを備える。
架台部11は、シャトルユニット4を支持する。架台部11は、矩形枠状に形成されている。架台部11の左右の枠上には、前後方向に延びる副走査駆動ガイド13A,13Bがそれぞれ形成されている。副走査駆動ガイド13A,13Bは、シャトルユニット4を前後方向に移動するようガイドする。
副走査駆動モータ12は、シャトルユニット4を前後方向に移動させる。
フラットベッドユニット3は、建材や化粧パネル等の基材からなる印刷媒体15を保持する。フラットベッドユニット3は、シャトルベースユニット2の架台部11の内側に配置されている。フラットベッドユニット3は、印刷媒体15が載置される水平面である媒体載置面3aを有する。フラットベッドユニット3は、油圧駆動機構等からなる昇降機構により、媒体載置面3aの高さを調整できるようになっている。
シャトルユニット4は、印刷媒体15に画像を印刷する。図1、図2、図5に示すように、シャトルユニット4は、筐体21と、主走査駆動ガイド22と、主走査駆動モータ23と、ヘッド昇降ガイド24と、ヘッド昇降モータ25と、ヘッドユニット26と、キャップ機構部27と、ワイプ部28とを備える。
筐体21は、ヘッドユニット26等の各部を収納する。筐体21は、フラットベッドユニット3を左右方向に跨ぐ門型に形成されている。筐体21は、シャトルベースユニット2の架台部11に支持され、副走査駆動ガイド13A,13Bに沿って移動可能になっている。
主走査駆動ガイド22は、ヘッドユニット26を左右方向(主走査方向)に移動するようガイドする。主走査駆動ガイド22は、左右方向に延びる長尺状に形成されている。
主走査駆動モータ23は、ヘッドユニット26を左右方向に移動させる。
ヘッド昇降ガイド24は、ヘッドユニット26を上下方向に移動するようガイドする。ヘッド昇降ガイド24は、上下方向に細長い形状に形成されている。ヘッド昇降ガイド24は、ヘッドユニット26とともに主走査駆動ガイド22に沿って左右方向に移動可能に構成されている。
ヘッド昇降モータ25は、ヘッドユニット26を昇降させる。
ヘッドユニット26は、主走査駆動ガイド22に沿って左右方向に移動しつつ、印刷媒体15へインクを吐出して画像を印刷する。ヘッドユニット26は、4つのインクジェットヘッド31を備える。
インクジェットヘッド31は、印刷媒体15へ水性インクを吐出する。4つのインクジェットヘッド31は、左右方向に並列して配置されている。4つのインクジェットヘッド31は、それぞれ異なる色(例えば、シアン、ブラック、マゼンタ、イエロー)のインクを吐出する。インクジェットヘッド31は、その下面である吐出面31aに開口する複数のノズル(図示せず)を有し、ノズルからインクを吐出する。複数のノズルは、前後方向に沿って配置されている。
キャップ機構部27は、インクジェットヘッド31のノズルを覆い、ノズルが開口する空間を閉空間とするキャッピングを行う。キャップ機構部27は、筐体21の右端部の内部に配置されている。図2〜図5に示すように、キャップ機構部27は、4つのキャップユニット41と、4つのポンプ42と、4つの大気開放弁43と、廃液タンク44と、キャップ昇降モータ45と、キャップ回転駆動部46と、洗浄液槽47とを備える。なお、図3では、各インクジェットヘッド31に対応して設けられた同じ構成である部分について、代表して1つのインクジェットヘッド31に対応する構成を示している。
キャップユニット41は、キャップ51と、キャップベース52と、吸引管(請求項の流路に相当)53と、大気開放管54と、ウォーム55とを備える。
キャップ51は、インクジェットヘッド31の吐出面31aに当接してキャッピングする部材である。キャップ51は、底部である長円形状のインク受け面56と、インク受け面56の周縁に立設された周壁57とを備える。インク受け面56には、キャップ51内の空間から空気、インク等を吸引するための吸引穴56aと、キャップ51内の空間を大気開放するための大気開放穴56bとが設けられている。周壁57は、インクジェットヘッド31の吐出面31aに当接したときにすべてのノズルを囲む形状に形成されている。周壁57のインク受け面56側とは逆の開口側の端が、キャップ51の開口端51aを形成している。
キャップベース52は、キャップ51を支持するものである。キャップベース52は、インクジェットヘッド31の吐出面31aに平行な表面52aおよび裏面52bを有し、表面52a側にキャップ51を保持している。キャップベース52は、表面52aが上向きのとき、開口端51aが上になるようにキャップ51を保持している。キャップベース52は、インクジェットヘッド31の下方に配置されている。
吸引管53は、キャップ51内の空間から吸引された空気、インク等の流路を構成するものである。吸引管53の一端はインク受け面56の吸引穴56aに接続され、他端は廃液タンク44に接続されている。
大気開放管54は、キャップ51内の空間をインク受け面56側から大気に連通させるための空気の流路を構成するものである。大気開放管54の一端はインク受け面56の大気開放穴56bに接続されている。大気開放管54の他端(大気開放端)には大気開放弁43が接続されている。
ウォーム55は、キャップ回転駆動部46の駆動力により回転することで、キャップベース52を、前後方向を軸として回転させる。ウォーム55は、キャップベース52の前端に固定されている。
ポンプ42は、キャップ51内の空間から空気、インク等の内容物を吸引するためのものである。ポンプ42は、正逆転可能に構成されている。ポンプ42は、吸引管53の途中に設置されている。すなわち、ポンプ42は、キャップ51の吸引穴56aに吸引管53を介して接続されている。
大気開放弁43は、大気開放管54の大気開放端の開口を開閉するものである。大気開放弁43が開状態のとき、大気開放管54が大気開放端から大気に連通し、大気開放弁43が閉状態のとき、大気開放管54が大気開放端において大気から遮断される。
廃液タンク44は、吸引管53を介してポンプ42により送られてきたインク等を廃液として貯留する。
キャップ昇降モータ45は、4つのキャップユニット41およびキャップ回転駆動部46を昇降させる。
キャップ回転駆動部46は、ウォーム55を回転させることにより、キャップベース52を回転させる。キャップ回転駆動部46は、4つのウォームホイール58と、キャップ回転モータ59とを備える。
ウォームホイール58は、ウォーム55に噛み合い、左右方向に延びる回転軸(図示せず)を中心として回転することで、ウォーム55を回転させる。ウォームホイール58は、4つのキャップユニット41に1つずつ配置されている。共通の回転軸に4つのウォームホイール58が固定されている。
キャップ回転モータ59は、ウォームホイール58の回転軸を回転させる。
洗浄液槽47は、キャップ51を洗浄するための洗浄液を貯留する。洗浄液槽47は、キャップベース52の下方に配置されている。
洗浄液は、インクを溶解させる機能を有するものである。この洗浄液としては、例えば、水および界面活性剤を含む水性溶媒を用いることができる。
界面活性剤としては、例えば、脂肪酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、α−スルホ脂肪酸エステルナトリウム、アルキル燐酸エステルナトリウム等のアニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウム、ジアルキルジメチルアンモニウム、等のカチオン性界面活性剤;ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、等のノニオン性界面活性剤;アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、等の両性界面活性剤を用いることができる。また、高分子系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、およびアセチレングリコール系界面活性剤等も用いることができる。これらのなかでもポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いることが好ましく、そのHLB値は11〜17、アルキル基の炭素数は8〜15、エチレンオキサイドの付加モル数は6〜25であることがより好ましい。
洗浄液には、さらに増粘剤を含むことが好ましい。増粘剤としては、水溶性高分子系増粘剤、粘土鉱物系増粘剤を用いることができる。水溶性高分子系増粘剤としては、天然高分子、半合成高分子、合成高分子を用いることができる。天然高分子としては、例えば、アラビアガム、カラギーナン、グアガム、ローカストビーンガム、ペクチン、トラガントガム、コーンスターチ、コンニャクマンナン、寒天等の植物系天然高分子;プルラン、キサンタンガム、デキストリン等の微生物系天然高分子;ゼラチン、カゼイン、にかわ等の動物系天然高分子、を用いることができる。半合成高分子としては、例えば、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系半合成高分子;ヒドロキシエチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、シクロデキストリン等のデンプン系半合成高分子;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール等のアルギン酸系半合成高分子;ヒアルロン酸ナトリウム、を用いることができる。合成高分子としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリN− ビニルアセトアミド、ポリアクリルアミド等のビニル系合成高分子;ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリウレタンを用いることができる。粘土鉱物系の増粘剤としては、例えば、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト等のスメクタイト系粘土鉱物を用いることができる。これらのなかでも、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いることが好ましい。
さらに、洗浄液には、上記の成分に加え、任意に、水溶性有機溶剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤等を適宜含むことができる。洗浄液の粘度は、23℃において5〜200mPa・sであることが好ましく、10〜100mPa・sであることがより好ましい。
ワイプ部28は、インクジェットヘッド31のメンテナンス時において、インクジェットヘッド31の吐出面31aをワイプする。ワイプ部28は、筐体21の左端部の内部に配置されている。ワイプ部28は、4つのワイパ61と、ワイパ駆動部62とを備える。
ワイパ61は、インクジェットヘッド31の吐出面31aをワイプする部材である。ワイパ61は、弾性変形可能なゴム等の材料からなる。
ワイパ駆動部62は、4つのワイパ61を前後方向に移動させる。ワイパ駆動部62は、図示しないモータ等を有する。
制御部5は、インクジェット印刷装置1全体の動作を制御する。制御部5は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
制御部5は、キャップ51の洗浄時において、キャップ回転駆動部46によりキャップベース52を回転させてキャップ51を洗浄液槽47の洗浄液に浸ける。そして、制御部5は、キャップ51を洗浄液に浸けた状態でポンプ42を駆動させて吸引穴56aから洗浄液を吸引管53に吸引した後、ポンプ42を吸引時とは逆転駆動させて、吸引管53に吸引した洗浄液を吸引穴56aから排出するよう制御する。
次に、インクジェット印刷装置1の印刷動作について説明する。
インクジェット印刷装置1において、印刷動作の開始前の待機状態では、シャトルユニット4は、待機位置に配置されている。シャトルユニット4の待機位置は、図1において実線で示すシャトルユニット4の位置であり、シャトルベースユニット2の架台部11の後端部にある。
また、インクジェット印刷装置1の待機状態では、ヘッドユニット26はキャップ機構部27の上方のホームポジションに配置されている。そして、キャップユニット41がキャッピング位置にあり、インクジェットヘッド31がキャップ51によりキャッピングされている。
印刷ジョブが入力されると、制御部5は、副走査駆動モータ12を制御してシャトルユニット4を待機位置から印刷処理開始位置へ移動させる。シャトルユニット4の印刷処理開始位置は、図1において二点鎖線で示すシャトルユニット4の位置であり、シャトルベースユニット2の架台部11の前端部にある。なお、印刷ジョブの入力に先立って、印刷媒体15がフラットベッドユニット3の媒体載置面3a上に載置されている。
次いで、制御部5は、キャップ昇降モータ45を制御してキャップユニット41をキャッピング位置から下方の退避位置へ移動させる。これにより、キャップ51がインクジェットヘッド31の吐出面31aから離れ、インクジェットヘッド31に対するキャッピングが解除される。
次いで、制御部5は、主走査駆動モータ23を制御してヘッドユニット26を主走査方向に移動させつつ、印刷ジョブに基づきインクジェットヘッド31を制御してノズルからインクを吐出させることで、1パス分の印刷を行う。次いで、制御部5は、副走査駆動モータ12を制御してシャトルユニット4を次のパスの印刷位置まで後方向に移動させる。制御部5は、この1パス分の印刷とシャトルユニット4の移動とを交互に繰り返すことにより、印刷媒体15に画像を形成する。
1枚分の印刷が終了すると、制御部5は、主走査駆動モータ23を制御してヘッドユニット26をホームポジションに配置する。そして、制御部5は、キャップ昇降モータ45を制御してキャップユニット41を退避位置からキャッピング位置へ移動させることで、インクジェットヘッド31をキャップ51によりキャッピングする。また、制御部5は、副走査駆動モータ12を制御してシャトルユニット4を待機位置へ配置する。これにより、印刷動作が終了となる。
次に、インクジェット印刷装置1におけるキャップ洗浄動作について説明する。
キャップ洗浄動作は、インクジェット印刷装置1の電源投入時において、フィルキャップ状態の解除に続いて行われる。ここで、フィルキャップ状態とは、キャップ51の開口端51aがインクジェットヘッド31の吐出面31aに当接しているキャッピング状態において、インク受け面56と周壁57と吐出面31aとで囲まれたキャップ51内の空間をインクで満たした状態である。インクジェット印刷装置1の電源が切断されて長時間にわたって装置が使用されない状態になるときに、ノズルの乾燥を防ぐために、フィルキャップ状態とされる。
インクジェット印刷装置1の電源が投入されると、制御部5は、大気開放弁43を開状態とするとともに、ポンプ42を駆動させて、キャップ51内の空間のインクを吸引穴56aから排出させる。キャップ51内の空間のインクの排出が終了すると、フィルキャップ状態が解除された状態となる。
フィルキャップ状態が解除されると、制御部5は、キャップ洗浄動作を開始する。図6は、キャップ洗浄動作を説明するためのフローチャートである。
図6のステップS1において、制御部5は、キャップ昇降モータ45を制御してキャップユニット41をキャッピング位置から退避位置へ移動させる。ここで、キャップユニット41の退避位置は、図7に示すように、洗浄液槽47の直上近傍の位置であり、キャップベース52を回転させて表裏反転すると、キャップ51を洗浄液槽47の洗浄液に浸けることができる位置になっている。
次いで、ステップS2において、制御部5は、キャップ回転モータ59を制御してキャップベース52を回転させて、キャップ51を洗浄液槽47の洗浄液に浸ける。具体的には、制御部5は、キャップ回転モータ59を制御してキャップベース52を180°回転させる。これにより、図8に示すように、キャップベース52が表面52aを下に向けた状態となり、キャップ51が洗浄液槽47の洗浄液に浸かる。このとき、少なくともキャップ51の開口端51aが洗浄液に浸かっていればよい。
次いで、図6のステップS3において、制御部5は、大気開放弁43を閉状態とした後、ポンプ42を駆動させて吸引穴56aから洗浄液を吸引管53に吸引させる。
次いで、ステップS4において、制御部5は、ポンプ42をステップS3の吸引時とは逆転駆動させて、吸引管53に吸引した洗浄液を吸引穴56aから排出させる。この後、制御部5は、大気開放弁43を開状態とする。
次いで、ステップS5において、制御部5は、キャップ回転モータ59を制御してキャップベース52を回転させて、キャップ51を洗浄液槽47から引き揚げる。具体的には、制御部5は、キャップ回転モータ59を制御してキャップベース52を180°回転させる。これにより、キャップベース52が表面52aを上に向けた状態に戻り、キャップ51が洗浄液槽47から引き揚げられる。
次いで、ステップS6において、制御部5は、キャップ昇降モータ45を制御してキャップユニット41を退避位置からキャッピング位置へ移動させる。これにより、キャップ洗浄動作が終了となる。
このようなキャップ洗浄動作により、キャップ51を洗浄液に浸けることで、フィルキャップ状態においてキャップ51に付着したインクを洗い流すことができる。また、ポンプ42の駆動による吸引穴56aからの洗浄液の吸引および排出を行うことで、吸引穴56aに付着したインクも洗い流すことができる。
これにより、キャップ51の周壁57や吸引穴56aにインクが固着するのを予防できる。また、キャップ51の周壁57や吸引穴56aに固着したインクがある場合でも、洗浄液で溶融して洗い流すことができる。
また、吸引穴56aからの洗浄液の吸引および排出により、洗浄液槽47の洗浄液が攪拌されて洗浄液に動きが生じるので、それによりキャップ51に固着したインクをよりよく落とすことができる。
なお、上述したキャップ洗浄動作は、インクジェット印刷装置1の電源投入時におけるフィルキャップ状態の解除直後のタイミングに限らず、他のタイミングでも行ってもよい。例えば、印刷動作中や、後述するインクジェットヘッド31のメンテナンス動作におけるワイプ動作中に、キャップ洗浄動作を行ってもよい。
次に、インクジェット印刷装置1におけるインクジェットヘッド31のメンテナンス動作について説明する。
まず、キャップ51がインクジェットヘッド31をキャッピングしている状態において、制御部5は、大気開放弁43を閉状態とし、ポンプ42を駆動させてキャップ51内の空間から空気を吸引することで、キャップ51内の空間に負圧を導入する。これにより、インクジェットヘッド31のノズルからインクが吸引され、増粘あるいは固化したインクがノズルから排出される。そして、吐出面31aにインクが付着した状態となる。ここで、ノズルから吸引されて落下したインクは、インク受け面56で受け取られ、吸引穴56aから吸引管53を介して廃液タンク44へ流れる。
次いで、制御部5は、大気開放弁43を閉状態とした後、キャップ昇降モータ45を制御してキャップユニット41をキャッピング位置から退避位置へ移動させる。これにより、キャップ51によるインクジェットヘッド31に対するキャッピングが解除される。
次いで、制御部5は、主走査駆動モータ23を制御してヘッドユニット26をホームポジションからワイプ部28の上方へ移動させる。この後、制御部5は、ヘッド昇降モータ25を制御してヘッドユニット26をワイプ位置まで下降させる。ヘッドユニット26のワイプ位置は、ワイパ61によりインクジェットヘッド31の吐出面31aをワイプするためのヘッドユニット26の位置である。
次いで、制御部5は、ワイパ駆動部62を制御してワイパ61を移動させる。これにより、ワイパ61がインクジェットヘッド31の吐出面31aをワイプする。
インクジェットヘッド31の吐出面31aのワイプが終了すると、制御部5は、ヘッド昇降モータ25を制御してヘッドユニット26をワイプ位置から上昇させた後、主走査駆動モータ23を制御してヘッドユニット26をホームポジションに戻す。
次いで、制御部5は、キャップ昇降モータ45を制御してキャップユニット41を退避位置からキャッピング位置へ移動させる。これにより、キャップ51がインクジェットヘッド31をキャッピングし、インクジェットヘッド31のメンテナンス動作が終了となる。
ここで、キャップ51の縁(開口端51a)にインクが固着していると、キャップ51内の空間に負圧を導入する際に、吐出面31aに当接したキャップ51の開口端51aと吐出面31aとの間に隙間が生じて、キャップ51内の空間の密閉不良を招くことがある。これにより、ノズルからのインクの吸引が不十分になるおそれがある。
また、キャップ51の吸引穴56aにインクが固着していると、キャップ51内の空間に負圧を導入するためにポンプ42が吸引穴56aを介して空気を吸引する際の吸引力が低下することがある。これにより、ノズルからのインクの吸引が不十分になるおそれがある。
ノズルからのインクの吸引が不十分であると、ノズル内に増粘あるいは固化したインクが残り、結果として印刷画質の低下を招くおそれがある。これに対し、インクジェット印刷装置1では、前述したキャップ洗浄動作により、キャップ51の縁や吸引穴56aへのインクの固着が予防される。また、キャップ51の縁や吸引穴56aにインクが固着しても、前述したキャップ洗浄動作により、固着したインクが除去される。これにより、インクジェットヘッド31のメンテナンス動作におけるノズルからのインクの吸引不良が抑えられる。
以上説明したように、インクジェット印刷装置1では、キャップ51の洗浄時において、制御部5は、キャップ回転駆動部46によりキャップベース52を回転させてキャップ51を洗浄液槽47の洗浄液に浸ける。そして、制御部5は、キャップ51を洗浄液に浸けた状態でポンプ42を駆動させて吸引穴56aから洗浄液を吸引管53に吸引した後、ポンプ42を吸引時とは逆転駆動させて、吸引管53に吸引した洗浄液を吸引穴56aから排出するよう制御する。これにより、キャップ51を洗浄液に浸けることにより洗浄できるとともに、吸引穴56aからの洗浄液の吸引および排出を行うことで、吸引穴56aに固着したインクも除去できる。したがって、インクジェット印刷装置1によれば、キャップ51の洗浄不足を軽減できる。
(第2実施形態)
次に、上述した実施形態のキャップ機構部を変更した第2実施形態について説明する。図9は、第2実施形態におけるキャップ機構部の概略構成図である。
図9に示すように、第2実施形態におけるキャップ機構部27Aは、上述した第1実施形態のキャップ機構部27のキャップユニット41を、キャップユニット41Aに置き換えた構成である。
キャップユニット41Aは、第1実施形態のキャップユニット41に対し、キャップ51と同じ構成のキャップ51Aを追加した構成である。さらに、キャップユニット41Aでは、第1実施形態のキャップユニット41の吸引管53、大気開放管54がそれぞれ吸引管53A、大気開放管54Aに置き換えられ、弁71A,71B,72A,72Bが追加されている。
キャップ51Aは、キャップベース52の裏面52b側に配置されている。キャップ51Aは、キャップベース52の裏面52bが下向きのとき、開口端51aが下になるように設置されている。すなわち、キャップベース52が、キャップ51,51Aを、開口端51aを互いに逆方向に向けて保持している。
吸引管53Aは、第1実施形態の吸引管53が、ポンプ42よりキャップ51,51A側で2本に分岐したものである。吸引管53Aの分岐した2本のうちの一方の端はキャップ51の吸引穴56aに接続され、他方の端はキャップ51Aの吸引穴56aに接続されている。
大気開放管54Aは、第1実施形態の大気開放管54が途中で分岐したものである。大気開放管54Aの分岐した2本のうちの一方の端はキャップ51の大気開放穴56bに接続され、他方の端はキャップ51Aの大気開放穴56bに接続されている。
弁71Aは、吸引管53Aの分岐点とキャップ51の吸引穴56aとの間に配置され、その区間における吸引管53A内の流路を開閉する。弁71Bは、吸引管53Aの分岐点とキャップ51Aの吸引穴56aとの間に配置され、その区間における吸引管53A内の流路を開閉する。
弁72Aは、大気開放管54Aの分岐点とキャップ51の大気開放穴56bとの間に配置され、その区間における大気開放管54A内の流路を開閉する。弁72Bは、大気開放管54Aの分岐点とキャップ51Aの大気開放穴56bとの間に配置され、その区間における大気開放管54A内の流路を開閉する。
第2実施形態では、キャップ51,51Aのいずれか一方のキャップが選択的にインクジェットヘッド31のキャッピングを行う。キャップ回転駆動部46によりキャップベース52を回転させて表裏反転させることで、インクジェットヘッド31の吐出面31aに開口端51aが向き合うキャップが切り替えられる。なお、第2実施形態におけるキャップ回転駆動部46は、請求項の駆動部に相当する。
また、第2実施形態では、キャップ51,51Aのいずれか一方のキャップがキャッピング状態のときに、他方のキャップが洗浄液槽47の洗浄液に浸かっている状態となるようインクジェットヘッド31およびキャップユニット41の高さ位置が調整される。例えば、図10に示すように、キャップ51がキャッピング状態のときは、キャップ51Aが洗浄液槽47の洗浄液に浸かっている状態となる。
第2実施形態におけるキャップ洗浄動作は、第1実施形態と同様に行われる。すなわち、制御部5は、キャップ51またはキャップ51Aを洗浄液槽47に浸け、その状態でポンプ42を駆動させて吸引穴56aから洗浄液を吸引管53Aに吸引した後、ポンプ42を吸引時とは逆転駆動させて、吸引管53Aに吸引した洗浄液を吸引穴56aから排出させる。ただし、第2実施形態では、キャップ洗浄動作時において、弁71A,71B,72A,72Bのうち洗浄されるキャップとは逆のキャップに対応するものが閉状態とされる。例えば、裏面52b側のキャップ51Aを洗浄する場合、弁71A,72Aは閉状態とされる。キャップ51A内の空間を密閉状態とするためである。
以上説明したように、第2実施形態では、キャップベース52が2つのキャップ51,51Aを保持している。そして、キャップ回転駆動部46によりキャップベース52を表裏反転させることで、2つのキャップ51,51Aを切り替えてキャッピングに使用できる。このため、一方のキャップの洗浄中に他方のキャップでインクジェットヘッド31をキャッピングすることが可能になる。
また、第2実施形態では、キャップ51,51Aのいずれか一方のキャップがキャッピング状態のときに、他方のキャップが洗浄液槽47の洗浄液に浸かっている状態である。これにより、1つのキャップが洗浄されている状態を維持できる。
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合せてもよい。