JP6265164B2 - 記録ヘッドの回復システム及びそれを備えたインクジェット記録装置、並びに記録ヘッドの回復方法 - Google Patents

記録ヘッドの回復システム及びそれを備えたインクジェット記録装置、並びに記録ヘッドの回復方法 Download PDF

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Description

本発明は、用紙のような記録媒体にインクを吐出する吐出ノズルを有する記録ヘッドの回復システム及びそれを備えたインクジェット記録装置、並びに記録ヘッドの回復方法に関するものである。
ファクシミリ、複写機、プリンターのような記録装置として、インクを吐出して画像を形成するインクジェット記録装置が、高精細な画像を形成できることから広く用いられている。
このようなインクジェット記録装置では、インクの直進性の悪化(飛翔曲がり)や不吐出等が発生して記録ヘッドの印字性能が低下することがある。この原因としては、用紙(記録媒体)の搬送時に発生する紙粉や埃、塵のような異物や、画像記録のためのインク滴と共に吐出される微小なインク滴(以下、ミストと称する)や、インク滴が記録媒体に付着した際に発生する跳ね返りミストが、記録ヘッドのインク吐出面に付着することによるメニスカス異常の発生が考えられる。また、キャップ装着箇所へミストが付着して乾燥することによるキャップ装着時の密閉性の低下、及びそれに伴うノズル内のインクの粘度上昇の発生も考えられる。
そこで、記録ヘッドのインク吐出面に開口が設けられた吐出ノズル内のインクの乾燥や、吐出ノズル内のインクの増粘によるノズルの目詰まりを防止するために、ノズルからインクを強制的に押出(パージ)した後、インク吐出面(ノズル面)に付着したパージインクをワイパーで拭き取って記録ヘッドの回復動作を行う構成が用いられている。
なお、吐出ノズルからインクを強制的に押出した後、インク吐出面に付着したパージインクをワイパーで拭き取って記録ヘッドの回復動作を行う構成は、例えば特許文献1に開示されている。上記特許文献1では、インク吐出面にインクをパージし、そのパージインクをワイパーで拭き取った(第1メンテナンス動作)後、再度インク吐出面にインクをパージし、そのパージインクをワイパーで拭き取る(第2メンテナンス動作)。第2メンテナンス動作は、第1メンテナンス動作に比べて、ワイピング速度が速いため、インク吐出面のインクをすばやく拭き取ることができる。
特開2012−111105号公報
しかしながら、上記した記録ヘッドの回復動作を行う場合であっても、インク吐出面を十分に清浄化することは困難であるという問題点があった。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、インク吐出面を十分に清浄化することが可能な記録ヘッドの回復システム及びそれを備えたインクジェット記録装置、並びに記録ヘッドの回復方法を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明の第1の構成の記録ヘッドの回復システムは、記録媒体上にインクを吐出する吐出ノズルが開口するノズル領域が設けられた記録ヘッドの回復システムであって、吐出ノズルから強制的に押出されたパージインクを拭き取るワイパーと、ワイパーを、ノズル領域を含むインク吐出面に沿って往復移動させる駆動機構と、吐出ノズルからのインクの押し出し及び吐出、並びに駆動機構の動作を制御する制御部と、を備える。制御部は、吐出ノズルからインクを強制的に押出してノズル領域にパージインクを付着させるインク押出動作と、インク吐出面におけるノズル領域の外側にワイパーを圧接させた後、インク吐出面とワイパーとの間でスティックスリップ現象が生じる第1の速度以下で、ワイパーをインク吐出面に沿って移動させることにより、パージインクを塗り広げる塗り広げ動作と、塗り広げ動作の実行後、第1の速度よりも高速の第2の速度以上で、ワイパーをインク吐出面に沿って移動させることにより、インク吐出面に付着しているインクを拭き取る拭き取り動作と、を含む記録ヘッドの回復動作を実行可能である。
なお、スティックスリップ現象とは、2つの物体間において接触面がスティック(固着)とスリップ(滑り)とを繰り返す現象であり、所謂びびり振動のことである。
本発明の第1の構成によれば、インク吐出面を十分に清浄化することができる。
本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の構造を示す図 図1に示すインクジェット記録装置の第1搬送ユニット及び記録部を上方から見た図 記録部を斜め上方から見た図 記録部のラインヘッドを構成する記録ヘッドの図 記録ヘッドをインク吐出面側から見た図 メンテナンスユニットに搭載されるワイピング機構を斜め上方から見た図 ワイピング機構を構成するキャリッジを斜め上方から見た図 メンテナンスユニットのユニット筐体からワイピング機構を取り外した状態を示す図 ユニット筐体に配置される昇降機構の斜視図であり、リフト部材が水平状態にある状態を示す図 ユニット筐体に配置される昇降機構の斜視図であり、図9の状態からリフト部材が起立した状態を示す図 昇降機構を構成するリフト部材の図 メンテナンスユニットを記録部の下方に配置した状態を示す図 図12の状態におけるメンテナンスユニット内のキャリッジ、ワイパー、支持フレーム、昇降機構を示す図 図13の状態から昇降機構により支持フレーム及びキャリッジが上昇し、ワイパーがインク吐出面に当接して配置された状態を示す図 ワイパーを第1位置の下方に配置した状態を示す記録ヘッドの図 図15の状態のインク吐出面を下側から見た記録ヘッドの図 ワイパーをインク吐出面に圧接させた状態で矢印A方向に移動させた状態を示す記録ヘッドの図 図17の状態のインク吐出面を下側から見た記録ヘッドの図 図17の状態からワイパーを第2位置まで移動させた状態を示す記録ヘッドの図 第2位置においてワイパーをインク吐出面から離間させた状態を示す記録ヘッドの図 図20の状態からワイパーをさらに矢印A方向に移動させた状態を示す記録ヘッドの図 図21の状態からワイパーを上昇させた状態を示す記録ヘッドの図 図22の状態からワイパーを矢印A′方向の下流側端縁まで移動させた状態を示す記録ヘッドの図 昇降機構により支持フレーム及びキャリッジが下降し、ワイパーがインク吐出面から離間した状態を示す図 本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイパーを第1位置の下方に配置した状態を示す記録ヘッドの図 ワイパーをインク吐出面に圧接させた状態で矢印A方向に移動させた状態を示す記録ヘッドの図 図26の状態からワイパーを第2位置まで移動させた状態を示す記録ヘッドの図 第2位置においてワイパーをインク吐出面から離間させた状態を示す記録ヘッドの図 図28の状態からワイパーをさらに矢印A方向に移動させた状態を示す記録ヘッドの図 ワイパーをインク吐出面に圧接させた状態で矢印A′方向に移動させた状態を示す記録ヘッドの図 第1位置においてワイパーをインク吐出面から離間させた状態を示す記録ヘッドの図 図31の状態からワイパーをさらに矢印A′方向に移動させた状態を示す記録ヘッドの図 ワイパーをインク吐出面に圧接させた状態で矢印A方向の下流側端縁まで移動させた状態を示す記録ヘッドの図
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態のインクジェット記録装置100の左側部には用紙S(記録媒体)を収容する給紙トレイ2が設けられており、この給紙トレイ2の一端部には収容された用紙Sを、最上位の用紙Sから順に一枚ずつ後述する第1搬送ユニット5へと搬送給紙するための給紙ローラー3と、給紙ローラー3に圧接され従動回転する従動ローラー4とが設けられている。
用紙搬送方向(矢印X方向)に対し給紙ローラー3及び従動ローラー4の下流側(図1の右側)には、第1搬送ユニット5及び記録部9が配置されている。第1搬送ユニット5は、第1駆動ローラー6と、第1従動ローラー7と、第1駆動ローラー6及び第1従動ローラー7に掛け渡された第1搬送ベルト8とを含む構成であり、インクジェット記録装置100の制御部110からの制御信号により第1駆動ローラー6が時計回り方向に回転駆動されることにより、第1搬送ベルト8に保持された用紙Sが矢印X方向に搬送される。
記録部9は、ヘッドハウジング10と、ヘッドハウジング10に保持されたラインヘッド11C、11M、11Y、及び11Kを備えている。これらのラインヘッド11C〜11Kは、第1搬送ベルト8の搬送面に対して所定の間隔(例えば1mm)が形成されるような高さに支持され、図2および図3に示すように、用紙搬送方向と直交する用紙幅方向(図2の上下方向)に沿って複数(ここでは3個)の記録ヘッド17a〜17cが千鳥状に配列されている。なお、図3は記録部9を図1の奥側(図2の上側)から見た状態を示しており、ラインヘッド11C〜11Kの並びは図1及び図2とは逆になっている。
図4及び図5に示すように、記録ヘッド17a〜17cのインク吐出面Fには吐出ノズル18(図2参照)が多数配列されたノズル領域Rが設けられている。なお、記録ヘッド17a〜17cは同一の形状及び構成であるため、図4および図5では記録ヘッド17a〜17cを一つの図で示している。
各ラインヘッド11C〜11Kを構成する記録ヘッド17a〜17cには、それぞれインクタンク(図示せず)に貯留されている4色(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)のインクがラインヘッド11C〜11Kの色毎に供給される。
各記録ヘッド17a〜17cは、制御部110(図1参照)からの制御信号により外部コンピューターから受信した画像データに応じて、第1搬送ベルト8の搬送面に吸着保持されて搬送される用紙Sに向かって吐出ノズル18からインクを吐出する。これにより、第1搬送ベルト8上の用紙Sにはシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクが重ね合わされたカラー画像が形成される。
また、記録ヘッド17a〜17cの乾燥や目詰まりによるインクの吐出不良を防止するために、長期間停止後の印字開始時は全ての記録ヘッド17a〜17cの吐出ノズル18から、また印字動作の合間にはインク吐出量が規定値以下の記録ヘッド17a〜17cの吐出ノズル18から、吐出ノズル18内の粘度が高くなったインクを押し出すパージを実行して、次の印字動作に備える。
図1に戻って、用紙搬送方向に対し第1搬送ユニット5の下流側(図1の右側)には第2搬送ユニット12が配置されている。第2搬送ユニット12は、第2駆動ローラー13と、第2従動ローラー14と、第2駆動ローラー13及び第2従動ローラー14に掛け渡された第2搬送ベルト15とを含む構成であり、第2駆動ローラー13が時計回り方向に回転駆動されることにより、第2搬送ベルト15に保持された用紙Sが矢印X方向に搬送される。
記録部9にてインク画像が記録された用紙Sは第2搬送ユニット12へと送られ、第2搬送ユニット12を通過する間に用紙S表面に吐出されたインクが乾燥される。また、第2搬送ユニット12の下方にはメンテナンスユニット19及びキャップユニット90が配置されている。メンテナンスユニット19は、上述したパージを実行する際に記録部9の下方に移動し、記録ヘッド17a〜17cの吐出ノズル18から押し出されインク吐出面Fに付着しているインクを拭き取り、拭き取られたインクを回収する。キャップユニット90は、記録ヘッド17a〜17cのインク吐出面F(図4参照)をキャッピングする際に記録部9の下方に水平移動し、さらに上方に移動して記録ヘッド17a〜17cの下面に装着される。なお、メンテナンスユニット19の詳細な構成については後述する。
また、用紙搬送方向に対し第2搬送ユニット12の下流側には、画像が記録された用紙Sを装置本体外へと排出する排出ローラー対16が設けられており、排出ローラー対16の下流側には、装置本体外へと排出された用紙Sが積載される排出トレイ(図示せず)が設けられている。
メンテナンスユニット19には、図6に示すワイピング機構30が搭載されている。ワイピング機構30は、複数のワイパー35a〜35c(図7参照)が固定された略矩形状のキャリッジ31と、キャリッジ31を支持する支持フレーム40とで構成されている。支持フレーム40の上面の対向する端縁にはレール部41a、41bが形成されており、キャリッジ31の四隅に設けられた摺動コロ36がレール部41a、41bに当接することで、キャリッジ31は支持フレーム40に対し矢印AA′方向に摺動可能に支持される。
図7に示すように、キャリッジ31は、支持フレーム40のレール部41a、41bに摺動コロ36を介して摺動可能に係合する第1ステー32a、32bと、第1ステー32a、32bの間に橋渡し状に固定された第2ステー33a、33b、33cとで枠体状に形成されている。
第1ステー32aには、支持フレーム40に保持された入力ギア43(図6参照)に噛み合うラック歯38が形成されている。入力ギア43が正逆方向に回転すると、キャリッジ31は支持フレーム40に沿って水平方向(図6の矢印AA′方向)に往復移動する。なお、ラック歯38および入力ギア43によって、本発明の駆動機構が構成されている。
ワイパー35a〜35cは、各記録ヘッド17a〜17cの吐出ノズル18から押し出されたインクを拭き取るための部材である。ワイパー35a〜35cは、吐出ノズル18が露出するノズル領域R(図5参照)の外側の位置に略垂直方向から圧接され、キャリッジ31の移動によりノズル領域Rを含むインク吐出面Fを所定方向(図6の矢印AA′方向)に拭き取る。
第2ステー33aには4枚のワイパー35aが略等間隔で固定されており、同様に、第2ステー33bには4枚のワイパー35bが、第2ステー33cには4枚のワイパー35cが略等間隔で固定されている。ワイパー35a、35cは、それぞれ各ラインヘッド11C〜11Kを構成する左右の記録ヘッド17a、17c(図3参照)に対応する位置に配置されている。また、ワイパー35bは、各ラインヘッド11C〜11Kを構成する中央の記録ヘッド17b(図3参照)に対応する位置に配置されており、ワイパー35a、35cに対しキャリッジ31の移動方向(図6の矢印AA′方向)と直交する方向に所定距離だけずらして固定されている。
第2ステー33a、33cの上面の4箇所にはギャップコロ37が設けられている。ギャップコロ37は、ワイパー35a〜35cによる記録ヘッド17a〜17cのインク吐出面Fの拭き取り動作を行うためにワイピング機構30を記録部9側に上昇させたとき、記録部9のヘッドハウジング10に当接することでワイパー35a〜35cとインク吐出面Fとの接触状態を一定に保持する。
次に、本実施形態のワイピング機構30を昇降させるための昇降機構50について説明する。メンテナンスユニット19は、図8に示すユニット筐体45と、ユニット筐体45に取り付けられるワイピング機構30(図6参照)と、ユニット筐体45に配置される昇降機構50と、を含んでいる。ユニット筐体45の底面45aには図8および図9に示すように、2個のリフト部材50aがシャフト50bの両端に固定された昇降機構50が、キャリッジ31の移動方向(図6の矢印AA′方向)に対向する側面45b、45cに沿って一対配置されている。即ち、昇降機構50は、記録部9のヘッドハウジング10の幅方向両端(図2の上下両端部)に対向する位置に配置される。なお、図8では側面45c側の昇降機構50の記載を省略している。また、ユニット筐体45の側面45b、45cに隣接する側面45dには、モーター47と、モーター47の回転駆動力をシャフト50bに伝達する駆動伝達軸48とが付設されている。
図11に示すように、リフト部材50aの下端部はシャフト50bに固定されており、シャフト50bの回転に伴いリフト部材50aは揺動する。リフト部材50aの上端部には押し上げコロ53が回転自在に付設されている。押し上げコロ53は、コイルバネ55によってシャフト50bから離間する方向(図11では上方向)に付勢されている。
図9の状態から、右側の昇降機構50のシャフト50bを時計回り方向に、左側の昇降機構50のシャフト50bを反時計回り方向に回転すると、ユニット筐体45の内側に倒れ込んだリフト部材50aが外側方向(矢印B方向)に立ち上がり、リフト部材50aは水平状態から起立状態(図10の状態)に切り替えられ、支持フレーム40と共にキャリッジ31を上昇させる。
一方、図10の状態から、右側の昇降機構50のシャフト50bを反時計回り方向に、左側の昇降機構50のシャフト50bを時計回り方向に回転すると、リフト部材50aがユニット筐体45の内側方向(矢印B′方向)に倒れ込み、リフト部材50aは起立状態から水平状態(図9の状態)に切り替えられ、支持フレーム40と共にキャリッジ31を下降させる。
次に、本実施形態のインクジェット記録装置100における、ワイピング機構30を用いた記録ヘッド17a〜17cの回復動作について説明する。なお、図13、図14および図24では、記録部9及びメンテナンスユニット19を用紙搬送方向下流側(図12の左側)から見た状態を示している。また、支持フレーム40は簡略化して板状に記載しており、ユニット筐体45は底面45aのみを記載している。また、以下で説明する記録ヘッド17a〜17cの回復動作およびキャップユニット装着動作は、制御部110(図1参照)からの制御信号に基づいて記録ヘッド17a〜17c、ワイピング機構30、昇降機構50、駆動機構等の動作を制御することによって実行される。
記録ヘッド17a〜17cの回復動作を行う場合、先ず、図12に示すように、制御部110は記録部9の下方に位置する第1搬送ユニット5を下降させる。そして、制御部110は第2搬送ユニット12の下方に配置されたメンテナンスユニット19を水平移動させて記録部9と第1搬送ユニット5との間に配置する。この状態では、図13に示すように、昇降機構50のリフト部材50aは水平状態にあり、キャリッジ31に固定されたワイパー35a〜35cは記録ヘッド17a〜17cのインク吐出面Fから離間している。
(インク押出動作)
ワイピング動作(後述の塗り広げ動作)に先立って、制御部110によってインクが記録ヘッド17a〜17cに供給される。図15に示すように、供給されたインクは吐出ノズル18から強制的に押出(パージ)される。このパージ動作により、吐出ノズル18内の増粘インク、異物や気泡が吐出ノズル18から排出され、記録ヘッド17a〜17cを回復することができる。このとき、図16に示すように、パージインク22は吐出ノズル18の存在するノズル領域Rの形状に沿ってインク吐出面Fに押出される。
(塗り広げ動作)
制御部110はワイパー35a〜35cを、記録ヘッド17a〜17cのインク吐出面Fの、ノズル領域Rの外側の第1位置P1に所定の圧力で接触させる。具体的には、図14および図15に示すように、制御部110は昇降機構50のシャフト50bを回転させてリフト部材50aを矢印B方向に起立させることにより、支持フレーム40及びキャリッジ31を持ち上げる。このとき、リフト部材50aのコイルバネ55(図11参照)の付勢力によってキャリッジ31に設けられたギャップコロ37がヘッドハウジング10の下面に押し当てられるため、ワイパー35a〜35cをインク吐出面Fに対し常に一定の圧力で圧接させることができる。
ワイパー35a〜35cの先端がインク吐出面Fに圧接した状態から、制御部110は入力ギア43(図6参照)を正回転させてキャリッジ31を図14の矢印A方向に移動させることにより、キャリッジ31に支持されたワイパー35a〜35cも図17に示すようにインク吐出面Fに沿ってノズル領域Rの方向(左方向、第1方向)に移動する。支持フレーム40には昇降機構50によって上方向の力が作用しているため、キャリッジ31はギャップコロ37がヘッドハウジング10に押し当てられた状態を維持しながら矢印A方向に移動する。
このとき、制御部110は、インク吐出面Fとワイパー35a〜35cとの間でスティックスリップ現象が生じる第1の速度(例えば20mm/secや10mm/sec)以下で、ワイパー35a〜35cを移動させる。これにより、図17および図18に示すように、ワイパー35a〜35cがインク吐出面Fに沿って移動する際に、スティックスリップ現象(所謂びびり振動)が生じることによりワイパー35a〜35cとインク吐出面Fとの間からパージインク22が擦り抜けるとともに、パージインク22がワイパー幅方向(図17の紙面に対して垂直方向)に濡れ広がる。このため、インク吐出面Fに付着して増粘したミストや紙粉等の異物がパージインク22に分散する。
そして、図19に示すように、制御部110が駆動機構を制御することによってワイパー35a〜35cは、インク吐出面Fに接触した状態を維持しながらインク吐出面Fのパージインク22を塗り広げながら左方向(矢印A方向)に移動し、ノズル領域Rに対して第1位置P1とは反対側の位置(第2位置P2)に到達すると、左方向への移動が停止される。なお、ワイパー35a〜35cによって拭き取られた廃インクは、インク回収トレイ(図示せず)に回収される。
(離間動作)
塗り広げ動作の実行後、図20に示すように、制御部110はワイパー35a〜35cをインク吐出面Fから離間させる。具体的には、制御部110は昇降機構50のシャフト50b(図14参照)を逆回転させてリフト部材50aを図10に示す矢印B′方向に揺動させて水平状態にすることにより、支持フレーム40及びキャリッジ31を下降させる。
(移動動作)
離間動作の実行後、図21に示すように、制御部110はワイパー35a〜35cを水平移動させる。具体的には、制御部110は図20の状態から入力ギア43(図6参照)を正回転させてキャリッジ31を矢印A方向に移動させることにより、図21に示すように、キャリッジ31に支持されたワイパー35a〜35cが、第2位置P2に対してノズル領域Rとは反対方向(左方向)に移動する。
(拭き取り動作)
移動動作の実行後、制御部110はインク吐出面Fのパージインク22を拭き取るワイピング動作を行う。具体的には、制御部110は昇降機構50のシャフト50bを回転させてリフト部材50aを矢印B方向に起立させることにより、支持フレーム40及びキャリッジ31を持ち上げる。これにより、図22に示すように、ワイパー35a〜35cをインク吐出面Fに圧接させる。そして、制御部110は図22の状態から入力ギア43(図6参照)を逆回転させてキャリッジ31を矢印A′方向(右方向、第2方向)に移動させることにより、ワイパー35a〜35cがインク吐出面Fに沿ってノズル領域Rの方向(右方向)に移動する。
このとき、制御部110は、第1の速度よりも高速の第2の速度(例えば30mm/sec)以上で、ワイパー35a〜35cを移動させる。これにより、スティックスリップ現象は生じないので、ワイパー35a〜35cによりインク吐出面Fに付着しているパージインク22が拭き取られる。
なお、塗り広げ動作と拭き取り動作との間に所定時間のインターバル(待機時間)を設けてもよい。この場合、ワイパー35a〜35cが通過してからパージインク22がワイパー幅方向に濡れ広がっている間はミストをパージインク22に溶解させることができるので、パージインク22の濡れ広がりが終了した後にワイパー35a〜35cが通過するように、インターバルを設定することが好ましい。
また、拭き取り動作時におけるワイパー35a〜35cのインク吐出面Fに対する圧接力を、塗り広げ動作時におけるワイパー35a〜35cのインク吐出面Fに対する圧接力に比べて大きくしてもよい。
そして、ワイパー35a〜35cが、それぞれ記録ヘッド17a〜17cのインク吐出面Fの端縁(図23の右端縁)まで移動し、ワイパー35a〜35cによって拭き取られた廃インクはインク回収トレイ(図示せず)に回収される。その後、図24に示すように、制御部110は昇降機構50のシャフト50bを回転させてリフト部材50aを矢印B′方向に倒伏させることにより、ワイパー35a〜35cを、記録ヘッド17a〜17cのインク吐出面Fから下方に退避させてメンテナンスユニット19を図13の状態に戻す。最後に、制御部110は記録部9と第1搬送ユニット5との間に配置されたメンテナンスユニット19を水平移動させて第2搬送ユニット12の下方に配置し、第1搬送ユニット5を所定の位置まで上昇させる。このようにして、記録ヘッド17a〜17cの回復動作を終了する。
記録ヘッド17a〜17cにキャップユニット90を装着する場合は、先ず、図12に示すように、制御部110は記録部9の下面に対向配置されている第1ベルト搬送部5を下降させる。そして、制御部110は第2ベルト搬送部12の下方に配置されたキャップユニット90を記録部9と第1ベルト搬送部5との間に水平移動させて記録部9に対向する位置に配置する。
次いで、制御部110は第1ベルト搬送部5を上昇させることにより、キャップユニット90が押し上げる。そして、制御部110はキャップユニット90が記録ヘッド17a〜17cに密着した時点で第1ベルト搬送部5の上昇を停止させる。このようにして、キャップユニット90の装着を完了する。
本実施形態では、上記のように、塗り広げ動作において、インク吐出面Fとワイパー35a〜35cとの間でスティックスリップ現象が生じる第1の速度(例えば20mm/secや10mm/sec)以下で、ワイパー35a〜35cをインク吐出面Fに沿って移動させる。これにより、ワイパー35a〜35cがインク吐出面Fに沿って移動する際に、スティックスリップ現象(所謂びびり振動)が生じることによりワイパー35a〜35cとインク吐出面Fとの間からパージインク22が擦り抜けるとともに、パージインク22がワイパー幅方向に濡れ広がる。このため、インク吐出面Fに付着して増粘したミストや紙粉のような異物をパージインク22に分散させ、その後の拭き取り動作により、異物をパージインク22と共に確実に拭き取ることができる。その結果、インク吐出面Fを十分に清浄化することができ、インク吐出面Fに付着した異物に起因する記録ヘッド17a〜17cの印字性能の低下を抑制することができる。
また、上記のように、塗り広げ動作と拭き取り動作との間に所定時間のインターバルを設けてもよい。このように構成すれば、インク吐出面Fに付着して増粘したミストがパージインク22に溶解するための時間を十分に確保することができるので、拭き取り動作において、インク吐出面Fのミストをワイパー35a〜35cにより、拭き取り易くすることができる。
また、上記のように、拭き取り動作時におけるワイパー35a〜35cのインク吐出面Fに対する圧接力を、塗り広げ動作時におけるワイパー35a〜35cのインク吐出面Fに対する圧接力に比べて大きくしてもよい。このように構成すれば、拭き取り動作時に、異物をパージインク22と共により確実に拭き取ることができる。
また、上記のように、塗り広げ動作において、ワイパー35a〜35cをインク吐出面Fに沿って10mm/sec以下の速度で移動させれば、パージインク22を十分な時間濡れ広がらせることができる。
また、上記のように、拭き取り動作において、ワイパー35a〜35cをインク吐出面Fに沿って30mm/sec以上の速度で移動させることによって、インク吐出面Fに付着しているパージインク22を確実に拭き取ることができる。
次に、本実施形態の効果を確認するために行った確認実験について説明する。
[ワイパーの移動速度に関する実験]
まず、ワイパーの移動速度に関する実験について説明する。この確認実験は、上記実施形態に対応した実施例1−4と、上記実施形態に対応していない比較例1−3と、について行った。
(実施例1−4および比較例1−3共通)
[インクの作製]
顔料分散体(25.0質量%)と、オレフィンE1010(0.5質量%)と、1,3−ブタンジオール(5.0質量%)と、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(5.0質量%)と、2−ピロリドン(5.0質量%)と、グリセリン(15.0質量%)と、イオン交換水(44.5質量%)と、をこの比率で混合撹拌した後、孔径5μmのフィルターにて加圧濾過しインクを作製した。
[記録ヘッドの構成]
この確認実験では、上記実施形態の記録ヘッド17a〜17cとは異なる実験用の記録ヘッドを用いた。実験用の記録ヘッドでは、インク吐出面Fにおける吐出ノズル18の開口を、半径が10μmの円形状にした。また、インク吐出面Fに、1列166個の吐出ノズル18を4列形成し、合計で664個形成した。また、同一列内において吐出ノズル18の密度(ドット密度)を150dpiとし、隣り合う列を1/4ピッチずつずらすことで、全体として600dpiとした。
(実施例1)
実施例1では、インク押出動作において、パージ量を約1mlとした。すなわち、1個の吐出ノズル18当たりに約0.0015mlのインクを押出した。塗り広げ動作において、インク吐出面Fに対するワイパー35a〜35cの圧力を約30Nにし、インク吐出面Fに対するワイパー35a〜35cの移動速度を約1mm/secにした。なお、記録ヘッドのインク吐出面Fの水に対する接触角を約100度にした。実施例1のその他の構成は、上記実施形態と同様にした。
(実施例2−4)
実施例2−4では、塗り広げ動作において、インク吐出面Fに対するワイパー35a〜35cの移動速度をそれぞれ約5mm/sec、約10mm/sec、約20mm/secにした。なお、実施例2−4のその他の構成は、実施例1と同様にした。
(比較例1−3)
比較例1−3では、塗り広げ動作において、インク吐出面Fに対するワイパー35a〜35cの移動速度をそれぞれ約30mm/sec、約50mm/sec、約100mm/secにした。なお、比較例1−3のその他の構成は、実施例1と同様にした。
そして、実施例1−4および比較例1−3について、インク押出動作および塗り広げ動作を実行するとともに、ワイパー35a〜35cが通過してから、パージインク22がワイパー幅方向に濡れ広がっている時間を測定した。パージインク22がワイパー幅方向に濡れ広がっている時間が、3sec以上の場合は○、3sec未満の場合は△、0secの場合(ワイパー35a〜35cとインク吐出面Fとの間からパージインク22が擦り抜けない場合)は×とした。その結果を以下の表1に示す。
なお、インク吐出面Fに付着して増粘したミストがパージインク22に完全に溶解するには、3sec程度必要である。
Figure 0006265164
表1を参照して、ワイパー35a〜35cの移動速度を約20mm/sec以下にすることによって、ワイパー35a〜35cとインク吐出面Fとの間からパージインク22が擦り抜け、パージインク22がワイパー幅方向に濡れ広がることが判明した。また、ワイパー35a〜35cの移動速度を約10mm/sec以下にすることによって、パージインク22の濡れ広がっている時間を10sec以上確保することができ、インク吐出面Fに付着して増粘したミストがパージインク22に溶解するための時間を十分に確保することができることが判明した。
また、ワイパー35a〜35cの移動速度を約30mm/sec以上にすることによって、ワイパー35a〜35cとインク吐出面Fとの間からパージインク22が擦り抜けないことが判明した。このため、拭き取り動作時のワイパー35a〜35cの移動速度を約30mm/sec以上にすることによって、インク吐出面Fに付着しているパージインク22を確実に拭き取ることができることが判明した。
[インク吐出面に対するワイパーの圧力に関する実験]
次に、インク吐出面に対するワイパーの圧力に関する実験について説明する。この確認実験は、上記実施形態に対応した実施例3、5−9について行った。
(実施例5−9)
実施例5−9では、塗り広げ動作において、インク吐出面Fに対するワイパー35a〜35cの圧力をそれぞれ約1N、約5N、約10N、約20N、約60Nにし、インク吐出面Fに対するワイパー35a〜35cの移動速度を約10mm/secにした。実施例5−9のその他の構成は、実施例3と同様にした。
そして、実施例3、5−9について、上記「ワイパーの移動速度に関する実験」と同様にして、パージインク22の濡れ広がり時間を評価した。その結果を以下の表2に示す。
Figure 0006265164
表2を参照して、インク吐出面Fに対するワイパー35a〜35cの圧力を約1Nから約60Nまで変化させても、パージインク22の濡れ広がり時間を十分確保できることが判明した。
[パージ量に関する実験]
次に、パージ量に関する実験について説明する。この確認実験は、上記実施形態に対応した実施例3、10−14について行った。
(実施例10−14)
実施例10−14では、インク押出動作において、パージ量をそれぞれ約0.1ml、約0.5ml、約2ml、約3ml、約5mlにした。実施例10−14のその他の構成は、実施例3と同様にした。
そして、実施例3、10−14について、上記「ワイパーの移動速度に関する実験」と同様にして、パージインク22の濡れ広がり時間を評価した。その結果を以下の表3に示す。
Figure 0006265164
表3を参照して、インク押出動作におけるパージ量を約0.1mlから約5mlまで変化させても、パージインク22の濡れ広がり時間を十分確保できることが判明した。
[インク吐出面の水に対する接触角に関する実験]
次に、インク吐出面Fの水に対する接触角に関する実験について説明する。この確認実験は、上記実施形態に対応した実施例3、15、16について行った。
(実施例15、16)
実施例15、16では、記録ヘッドのインク吐出面Fの水に対する接触角をそれぞれ約80度、130度にした。実施例15、16のその他の構成は、実施例3と同様にした。
そして、実施例3、15、16について、上記「ワイパーの移動速度に関する実験」と同様にして、パージインク22の濡れ広がり時間を評価した。その結果を以下の表4に示す。
Figure 0006265164
表4を参照して、記録ヘッドのインク吐出面Fの水に対する接触角が低くなるほど濡れ広がり時間を長く確保できること、また、インク吐出面Fを接触角130度という高撥水にした場合であっても濡れ広がり時間を十分確保できることが判明した。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態のインクジェット記録装置100における、ワイピング機構30を用いた記録ヘッド17a〜17cの回復動作について説明する。
記録ヘッド17a〜17cの回復動作を行う場合、制御部110は、上記第1実施形態と同様、第1搬送ユニット5を下降させるとともに、メンテナンスユニット19を水平移動させて記録部9と第1搬送ユニット5との間に配置する。
(第1インク押出動作)
ワイピング動作(後述の第1塗り広げ動作)に先立って、制御部110によってインクが記録ヘッド17a〜17cに供給される。図25に示すように、供給されたインクは吐出ノズル18から強制的に押出(パージ)される。
(第1塗り広げ動作)
制御部110はワイパー35a〜35cを、記録ヘッド17a〜17cのインク吐出面Fの第1位置P1に所定の圧力で接触させる。ワイパー35a〜35cの先端がインク吐出面Fに圧接した状態から、制御部110はワイパー35a〜35cを図26に示すようにインク吐出面Fに沿ってノズル領域Rの方向(左方向、第1方向)に移動させる。
このとき、制御部110は、第1の速度以下で、ワイパー35a〜35cを移動させる。これにより、ワイパー35a〜35cがインク吐出面Fに沿って移動する際に、スティックスリップ現象が生じることによりワイパー35a〜35cとインク吐出面Fとの間からパージインク22が擦り抜けるとともに、パージインク22がワイパー幅方向(図26の紙面に対して垂直方向)に濡れ広がる。
また、このとき、図26に示すように、前回の記録ヘッド回復動作時にワイパー35a〜35cの先端(上端)に残留し、長時間空気に触れて増粘した残留インク22aが存在した場合、残留インク22aは、インク吐出面Fの第1位置P1に付着する。
そして、図27に示すように、制御部110が駆動機構を制御することによってワイパー35a〜35cは、インク吐出面Fに接触した状態を維持しながらインク吐出面Fのパージインク22を塗り広げながら左方向(矢印A方向)に移動し、第2位置P2に到達すると左方向への移動が停止される。
(第1離間動作)
第1塗り広げ動作の実行後、図28に示すように、制御部110はワイパー35a〜35cをインク吐出面Fから離間させる。
(第1移動動作)
第1離間動作の実行後、図29に示すように、制御部110はワイパー35a〜35cを第2位置P2に対してノズル領域Rとは反対方向(左方向)に移動させる。
(第2インク押出動作)
ワイピング動作(後述の第2塗り広げ動作)に先立って、制御部110によってインクが記録ヘッド17a〜17cに供給される。供給されたインクは吐出ノズル18から強制的に押出(パージ)される。
(第2塗り広げ動作)
第2インク押出動作の実行後、制御部110はワイパー35a〜35cをインク吐出面Fに所定の圧力で接触させる。ワイパー35a〜35cの先端がインク吐出面Fに圧接した状態で、制御部110はワイパー35a〜35cを図30に示すようにインク吐出面Fに沿って矢印A′方向(右方向、第2方向)に移動させる。
このとき、制御部110は、第1の速度以下で、ワイパー35a〜35cを移動させるので、ワイパー35a〜35cとインク吐出面Fとの間からパージインク22が擦り抜けるとともに、パージインク22がワイパー幅方向に濡れ広がる。
そして、図31に示すように、制御部110はワイパー35a〜35cを第1位置P1まで右方向(矢印A′方向)に移動させ、第1位置P1の残留インク22aにパージインク22が接触した後に、右方向への移動を停止させる。
なお、第1塗り広げ動作と第2塗り広げ動作との間に所定時間のインターバル(待機時間、第1インターバル)を設けてもよい。
(第2離間動作)
第2塗り広げ動作の実行後、図31に示すように、制御部110はワイパー35a〜35cをインク吐出面Fから離間させる。
(第2移動動作)
第2離間動作の実行後、図32に示すように、制御部110はワイパー35a〜35cを第1位置P1に対してノズル領域Rとは反対方向(右方向)に移動させる。
(拭き取り動作)
第2移動動作の実行後、制御部110はインク吐出面Fのパージインク22および残留インク22aを拭き取るワイピング動作を行う。具体的には、制御部110はワイパー35a〜35cをインク吐出面Fに圧接させた後、ワイパー35a〜35cをインク吐出面Fに沿って矢印A方向に移動させる。これにより、インク吐出面Fの残留インク22aおよびパージインク22が拭き取られる。
このとき、制御部110は、第2の速度以上でワイパー35a〜35cを移動させるので、スティックスリップ現象は生じず、ワイパー35a〜35cによりインク吐出面Fに付着しているパージインク22が拭き取られる。
なお、第2塗り広げ動作と拭き取り動作との間に所定時間のインターバル(待機時間、第2インターバル)を設けてもよい。このとき、第1塗り広げ動作と第2塗り広げ動作との間のインターバル(第1インターバル)よりも長くしてもよい。
そして、ワイパー35a〜35cが、それぞれ記録ヘッド17a〜17cのインク吐出面Fの端縁(図33の左端縁)まで移動し、ワイパー35a〜35cによって拭き取られた廃インクはインク回収トレイ(図示せず)に回収される。その後、制御部110は、上記第1実施形態と同様、ワイパー35a〜35cを記録ヘッド17a〜17cのインク吐出面Fから下方に退避させてメンテナンスユニット19を図13の状態に戻すとともに、メンテナンスユニット19を水平移動させて第2搬送ユニット12の下方に配置し、第1搬送ユニット5を所定の位置まで上昇させる。このようにして、記録ヘッド17a〜17cの回復動作を終了する。
なお、第2実施形態の記録ヘッド17a〜17cの回復動作のその他の制御は、上記第1実施形態と同様である。
本実施形態では、上記のように、第2塗り広げ動作において、ワイパー35a〜35cを第1位置P1まで移動させることによって、パージインク22を第1位置P1に付着している残留インク22aに接触させることができ、長時間大気にさらされて増粘した残留インク22aをパージインク22に溶解させることができる。これにより、その後の拭き取り動作により、インク吐出面Fに付着した残留インク22aをパージインク22と共に確実に拭き取ることができる。
また、塗り広げ動作を2回実行することによって、インク吐出面Fに付着して増粘したミストや紙粉のような異物をパージインク22に、より確実に分散させることができるので、その後の拭き取り動作により、異物をパージインク22と共により確実に拭き取ることができる。その結果、インク吐出面Fをより十分に清浄化することができる。
また、第2塗り広げ動作の前に第2インク押出動作を実行することによって、第2塗り広げ動作もインク吐出面Fのパージインク22の量を十分確保した上で実行することができるので、パージインク22をワイパー幅方向に十分に濡れ広がらせることができるとともに、異物をパージインク22に十分に分散させることができる。
また、上記のように、第2塗り広げ動作と拭き取り動作との間に、第1塗り広げ動作と第2塗り広げ動作との間のインターバル(第1インターバル)よりも時間の長いインターバル(第2インターバル)を設けてもよい。このように構成すれば、ミストに比べて量が多い残留インク22aがパージインク22に溶解するための時間を十分に確保することができるので、拭き取り動作において、残留インク22aをワイパー35a〜35cにより、拭き取り易くすることができる。
第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、上記実施形態では、インク押出動作を、塗り広げ動作の前に実行したが、ワイパー35a〜35cがノズル領域Rに進入する前であれば、塗り広げ動作と同時に実行してもよい。
また、例えば上記第1実施形態では、塗り広げ動作を1回だけ実行した後に、拭き取り動作を実行した例について示したが、本発明はこれに限らず、塗り広げ動作を複数回実行した後に、拭き取り動作を実行してもよい。これにより、インク吐出面Fに付着して増粘したミストや紙粉のような異物をパージインク22に、より確実に分散させることができるので、その後の拭き取り動作により、異物をパージインク22と共により確実に拭き取ることができる。その結果、インク吐出面Fをより十分に清浄化することができる。
この場合、インク押出動作と塗り広げ動作とを交互に複数回実行した後に、拭き取り動作を実行してもよい。このように構成すれば、2回目以降の塗り広げ動作もインク吐出面Fのパージインク22の量を十分確保した上で実行することができるので、パージインク22をワイパー幅方向に十分に濡れ広がらせることができるとともに、異物をパージインク22に十分に分散させることができる。
また、例えば上記第1実施形態において塗り広げ動作を複数回実行する場合、複数の塗り広げ動作において、ワイパー35a〜35cを、インク吐出面Fに沿って同一方向(例えば矢印A方向のみ)に移動させてもよい。このように構成すれば、塗り広げ動作時にワイパー35a〜35cの例えば矢印A′方向の側面にパージインク22が付着するのを抑制することができる。このため、ワイパー35a〜35cの矢印A′方向の側面でパージインク22を拭き取る場合、拭き取り動作開始時にパージインク22が引き延ばされてインク吐出面Fに付着するのを抑制することができる。なお、矢印A′方向の側面にパージインク22が少量だけ付着している場合、拭き取り動作を実行すると、パージインク22が引き延ばされてインク吐出面Fに付着し、拭き残しが生じてしまう。
また、例えば上記第2実施形態では、第2塗り広げ動作時にワイパー35a〜35cを第1位置P1まで移動させた例について示したが、ワイパー35a〜35cを第1位置P1の右側まで(第1位置P1を通りすぎるまで)移動させてもよい。
また、上記実施形態では、塗り広げ動作と拭き取り動作との間にインク押出動作を設けない例について示したが、塗り広げ動作と拭き取り動作との間にインク押出動作をさらに設けてもよい。
また、ラック歯38及び入力ギア43で構成されるキャリッジ31の駆動機構についても、従来公知の他の駆動機構を用いることができる。記録ヘッド17a〜17cの吐出ノズル18の個数やノズル間隔等もインクジェット記録装置100の仕様に応じて適宜設定することができる。また、記録ヘッドの数も特に限定されるものではなく、例えば各ラインヘッド11C〜11Kにつき記録ヘッド17を1個、2個、或いは4個以上配置することもできる。
また、本発明は、ラインヘッド11C〜11Kのうちいずれか1つのみを備えた単色印刷用のインクジェット記録装置にも適用できる。その場合、記録ヘッド17a〜17cは1つずつ設けられるため、記録ヘッド17a〜17cに対応するワイパー35a〜35cもキャリッジ31に1枚ずつ固定すれば良い。
また、上述した実施形態、実施例および変形例の構成を適宜組み合わせて得られる構成についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
17a〜17c 記録ヘッド
18 吐出ノズル
22 パージインク
35a〜35c ワイパー
38 ラック歯(駆動機構)
43 入力ギア(駆動機構)
100 インクジェット記録装置
110 制御部
F インク吐出面
P1 第1位置
R ノズル領域
S 用紙(記録媒体)

Claims (12)

  1. 記録媒体上にインクを吐出する吐出ノズルが開口するノズル領域が設けられた記録ヘッドの回復システムであって、
    前記吐出ノズルから強制的に押出されたパージインクを拭き取るワイパーと、
    該ワイパーを、前記ノズル領域を含むインク吐出面に沿って往復移動させる駆動機構と、
    前記吐出ノズルからのインクの押し出し及び吐出、並びに前記駆動機構の動作を制御する制御部と、
    を備え、
    前記制御部は、
    前記吐出ノズルからインクを強制的に押出して前記ノズル領域に前記パージインクを付着させるインク押出動作と、
    前記インク吐出面における前記ノズル領域の外側に前記ワイパーを圧接させた後、前記インク吐出面と前記ワイパーとの間でスティックスリップ現象が生じる第1の速度以下で、前記ワイパーを前記インク吐出面に沿って移動させることにより、前記パージインクを塗り広げる塗り広げ動作と、
    前記塗り広げ動作の実行後、前記第1の速度よりも高速の第2の速度以上で、前記ワイパーを前記インク吐出面に沿って移動させることにより、前記インク吐出面に付着しているインクを拭き取る拭き取り動作と、
    を含む前記記録ヘッドの回復動作を実行可能であることを特徴とする記録ヘッドの回復システム。
  2. 前記制御部は、前記塗り広げ動作と前記拭き取り動作との間に所定時間のインターバルを設けることを特徴とする請求項1に記載の記録ヘッドの回復システム。
  3. 前記制御部は、前記塗り広げ動作を複数回実行した後に、前記拭き取り動作を実行することを特徴とする請求項1または2に記載の記録ヘッドの回復システム。
  4. 前記制御部は、前記インク押出動作と前記塗り広げ動作とを交互に複数回実行した後に、前記拭き取り動作を実行することを特徴とする請求項3に記載の記録ヘッドの回復システム。
  5. 複数の前記塗り広げ動作において、前記ワイパーは、前記インク吐出面に沿って同一方向に移動されることを特徴とする請求項3または4に記載の記録ヘッドの回復システム。
  6. 前記塗り広げ動作は、
    前記インク吐出面における前記ノズル領域の外側の第1位置に前記ワイパーを圧接させた後、前記第1の速度以下で前記ワイパーを前記インク吐出面に沿って前記ノズル領域側に向かう第1方向に移動させることにより、前記パージインクを塗り広げる第1塗り広げ動作と、
    前記第1塗り広げ動作の実行後、前記ワイパーを前記インク吐出面に圧接させた状態で、前記ノズル領域に対して前記第1位置とは反対側の位置から、前記第1の速度以下で前記ワイパーを前記インク吐出面に沿って前記第1方向とは反対の第2方向に移動させることにより、前記パージインクを塗り広げるとともに、前記ワイパーを少なくとも前記第1位置まで移動させる第2塗り広げ動作と、
    を含むことを特徴とする請求項3または4に記載の記録ヘッドの回復システム。
  7. 前記制御部は、前記第1塗り広げ動作と前記第2塗り広げ動作との間に第1インターバルを設けるとともに、前記第2塗り広げ動作と前記拭き取り動作との間に前記第1インターバルよりも時間の長い第2インターバルを設けることを特徴とする請求項6に記載の記録ヘッドの回復システム。
  8. 前記ワイパーの前記インク吐出面に対する圧接力は、前記塗り広げ動作時に比べて前記拭き取り動作時の方が大きいことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の記録ヘッドの回復システム。
  9. 前記第1の速度は、10mm/secであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の記録ヘッドの回復システム。
  10. 前記第2の速度は、30mm/secであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の記録ヘッドの回復システム。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の記録ヘッドの回復システムを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
  12. 記録媒体上にインクを吐出する吐出ノズルが開口するノズル領域を含むインク吐出面が設けられた記録ヘッドの回復方法であって、
    前記吐出ノズルからインクを強制的に押出して前記ノズル領域にパージインクを付着させるインク押出動作と、
    前記インク吐出面における前記ノズル領域の外側にワイパーを圧接させた後、前記インク吐出面と前記ワイパーとの間でスティックスリップ現象が生じる第1の速度以下で、前記ワイパーを前記インク吐出面に沿って移動させることにより、前記パージインクを塗り広げる塗り広げ動作と、
    前記塗り広げ動作の実行後、前記第1の速度よりも高速の第2の速度以上で、前記ワイパーを前記インク吐出面に沿って移動させることにより、前記インク吐出面に付着しているインクを拭き取る拭き取り動作と、
    を備えることを特徴とする記録ヘッドの回復方法。
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