本発明の電池用包装材料は、少なくとも、表面被覆層、基材層、金属層、及び熱溶着性樹脂層が順次積層された積層体からなり、表面被覆層が、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物により形成されており、前記表面被覆層の表面は、インデンテーション法により負荷荷重1mNで測定されたマルテンス硬度が、15N/mm2以上であることを特徴とする。以下、本発明の電池用包装材料について詳述する。
1.電池用包装材料の積層構造
本発明の電池用包装材料は、図1に示すように、少なくとも、表面被覆層1、基材層2、金属層4、及び熱溶着性樹脂層5が順次積層された積層体からなる。本発明の電池用包装材料において、表面被覆層1が最外層になり、熱溶着性樹脂層5は最内層になる。即ち、電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置する熱溶着性樹脂層5同士が熱溶着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される。
また、本発明の電池用包装材料は、図1に示すように、基材層2と金属層4との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて接着層3が設けられていてもよい。また、図2に示すように、金属層4と熱溶着性樹脂層5との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて接着層6が設けられていてもよい。
2.電池用包装材料を形成する各層の組成
[表面被覆層1]
本発明の電池用包装材料において、表面被覆層1は基材層2の上に設けられ、電池用包装材料の最表層を形成する層である。表面被覆層1は、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物により形成されている。
<表面被覆層1を形成する樹脂組成物の組成>
(熱硬化性樹脂)
表面被覆層1を形成する樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂は、加熱すると重合を起こして高分子の網目構造を形成して硬化するものであればよい。熱硬化性樹脂としては、具体的には、エポキシ樹脂、アミノ樹脂(メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等が挙げられる。
これらの熱硬化性樹脂の中でも、硬化時間のより一層の短縮化、成形性や耐薬品性の向上等の観点から、好ましくはウレタン樹脂、エポキシ樹脂、更に好ましく2液硬化性ウレタン樹脂、2液硬化性エポキシ樹脂、特に好ましくは2液硬化性エポキシ樹脂が挙げられる。
2液硬化性ウレタン樹脂として、具体的にはポリオール化合物(主剤)と、イソシアネート系化合物(硬化剤)の組み合わせが挙げられ、2液硬化性エポキシ樹脂として、具体的にはエポキシ樹脂(主剤)と、酸無水物、アミン化合物、又はアミノ樹脂(硬化剤)の組み合わせが挙げられる。また、2液硬化性ウレタン樹脂としては、活性水素を有する多官能(メタ)アクリレート(主剤)とポリイソシアネート(硬化剤)との組み合わせからなる、多官能ウレタン(メタ)アクリレートも好ましい。
2液硬化性ウレタン樹脂において、主剤として使用されるポリオール化合物については、特に制限されないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール等が挙げられる。これらのポリオール化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、2液硬化性ウレタン樹脂において、硬化剤として使用されるイソシアネート系化合物については、特に制限されないが、例えば、ポリイソシアネート、そのアダクト体、そのイソシアヌレート変性体、そのカルボジイミド変性体、そのアロハネート変性体、そのビュレット変性体等が挙げられる。前記ポリイソシアネートとしては、具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリフェニルメタンジイソシアネート(ポリメリックMDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン(H12MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(1,5−NDI)、3,3'−ジメチル−4,4'−ジフェニレンジイソシアネート(TODI)、キシレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族ジイソシアネート;トラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,5−ナフタレンジイソシアネート(1,5−NDI)等の多環芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。前記アダクト体としては、具体的には、前記ポリイソシアネートに、トリメチロールプロパン、グリコール等を付加したものが挙げられる。これらのイソシアネート系化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの熱硬化性樹脂は、架橋性エラストマーであってもよい。架橋性エラストマーとは、硬化物にソフトセグメントを付与できる熱硬化性樹脂である。例えば、架橋性エラストマーの内、2液硬化性ウレタン樹脂又は2液硬化性エポキシ樹脂の場合であれば、前述する主剤がソフトセグメントを付与可能な構造を有していればよい。架橋性エラストマーは、表面被覆層1を構成する層に所望の硬さを備えさせるために、表面被覆層1を構成する層の形成に使用される熱硬化性樹脂の一部として使用することができる。
これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、表面被覆層1は、複数の層により形成されていてもよい。表面被覆層1が複数の層により形成されている場合、各層において使用される熱硬化性樹脂は、同一であっても異なってもよく、熱硬化性樹脂の種類は、各層に備えさせるべき機能や物性等に応じて適宜選択すればよい。例えば、表面被覆層1を構成する層の内、最表層を形成する層(金属層4とは反対側に位置する最表層)には、優れた耐薬品性を備えるという観点から、多環芳香族骨格及び/又は複素環骨格を有している熱硬化性樹脂が好適に使用される。多環芳香族骨格を有する熱硬化性樹脂として、具体的には、多環芳香族骨格を有するエポキシ樹脂、多環芳香族骨格を有するウレタン樹脂が挙げられる。また、複素環骨格を有する熱硬化性樹脂として、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のアミノ樹脂が挙げられる。これらの多環芳香族骨格及び/又は複素環骨格を有する熱硬化性樹脂は、1液硬化型又は2液型硬化型のいずれであってもよい。
多環芳香族骨格を有するエポキシ樹脂としては、より具体的には、ジヒドロキシナフタレンと、エピハロヒドリンとの反応物;ナフトールとアルデヒド類との縮合物(ナフトールノボラック樹脂)と、エピハロヒドリンとの反応物;ジヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合物と、エピハロヒドリンの反応物;モノ又はジヒドロキシナフタレンとキシリレングリコール類との縮合物と、エピハロヒドリンとの反応物;モノ又はジヒドロキシナフタレンとジエン化合物との付加物と、エピハロヒドリンとの反応物;ナフトール同士が直接カップリングしたポリナフトール類とエピハロヒドリンとの反応物等が挙げられる。
多環芳香族骨格を有するウレタン樹脂としては、より具体的には、ポリオール化合物と、多環芳香族骨格を有するイソシアネート系化合物との反応物が挙げられる。
(硬化促進剤)
表面被覆層1を形成する樹脂組成物は、さらに硬化促進剤を含有していてもよい。熱硬化性樹脂と共に、硬化促進剤を共存させることにより、製造時に高温条件でのエージングを要することなく短時間で表面被覆層1を硬化させて、上記特定の硬度を有する層を形成することができる。
ここで、「硬化促進剤」とは、単独では架橋構造を形成しないが、熱硬化性樹脂の架橋反応を促進する物質であり、熱硬化性樹脂の架橋反応を促進する作用を有し、自らも架橋構造を形成する場合もある物質である。
硬化促進剤の種類については、使用する熱硬化性樹脂に応じて、前述する硬度を充足できるように適宜選定されるが、例えば、アミジン化合物、カルボジイミド化合物、ケチミン化合物、ヒドラジン化合物、スルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、第3級アミン化合物等が挙げられる。
前記アミジン化合物としては、特に制限されないが、例えば、イミダゾール化合物、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネ−5−エン(DBN)、グアニジン化合物等が挙げられる。前記イミダゾール化合物としては、具体的には、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,2−ジエチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1)']−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−エチル−4'−メチルイミダゾリル−(1)']−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−ウンデシルイミダゾリル]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1)']−エチル−S−トリアジンイソシアヌール酸化付加物、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−アリール−4,5−ジフェニルイミダゾール等が挙げられる。これらのアミジン化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記カルボジイミド化合物としては、特に制限されないが、例えば、N,N'−ジシク
ロヘキシルカルボジイミド、N,N'−ジイソプロピルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−N'
−エチルカルボジイミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−N'−エチルカルボジ
イミドメチオジド、N−tert−ブチル−N'−エチルカルボジイミド、N−シクロヘキシ
ル−N'−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドメソ−p−トルエンスルホネート、
N,N'−ジ−tert−ブチルカルボジイミド、N,N'−ジ−p−トリルカルボジイミド等が挙げられる。これらのカルボジイミド化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記ケチミン化合物としては、ケチミン結合(N=C)を有することを限度として特に制限されないが、例えばケトンとアミンとを反応させて得られるケチミン化合物が挙げられる。前記ケトンとしては、具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル第3ブチルケトン、メチルシクロヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジブチルケトン、ジイソブチルケトン等が挙げられる。また、前記アミンとしては、具体的には、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジエチルジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン等の脂肪族ポリアミン;N−アミノエチルピペラジン、3−ブトキシイソプロピルアミン等の主鎖にエーテル結合を有するモノアミンやポリエーテル骨格のジアミン;イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアミン等の脂環式ポリアミン:ノルボルナン骨格のジアミン;ポリアミドの分子末端にアミノ基を有するポリアミドアミン;2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メンセンジアミン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン等が、具体例として挙げられる。これらのケチミン化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記ヒドラジン化合物としては、特に制限されないが、例えば、ジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等が挙げられる。これらのヒドラジン化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記スルホニウム塩としては、特に制限されないが、例えば、4−アセトフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ジメチル−4−(ベンジルオキシカルボニルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチル−4−(ベンゾイルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチル−4−(ベンゾイルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート等のアルキルスルホニウム塩;ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−メトキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のベンジルスルホニウム塩;ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェー、ジベンジル−4−メトキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−メトキシベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のジベンジルスルホニウム塩;p−クロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−ニトロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、3,5−ジクロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、o−クロロベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等の置換ベンジルスルホニウム塩等が挙げられる。これらのスルホニウム塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記ベンゾチアゾリウム塩としては、特に制限されないが、例えば、3−ベンジルベンゾチアゾリウムヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジルベンゾチアゾリウム ヘキ
サフルオロホスフェート、3−ベンジルベンゾチアゾリウム テトラフルオロボレート、
3−(p−メトキシベンジル)ベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロアンチモネート、3
−ベンジル−2−メチルチオベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロアンチモネート、3−
ベンジル−5−クロロベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロアンチモネート等のベンジル
ベンゾチアゾリウム塩が挙げられる。これらのベンゾチアゾリウム塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記第3級アミン化合物としては、特に制限されないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、キヌクリジン、3−キヌクリジノール等の脂肪族第3級アミン;ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン;イソキノリン、ピリジン、コリジン、ベータピコリン等の複素環第3級アミン等が挙げられる。これらの第3級アミン化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記硬化促進剤の好適な一例としては、熱酸発生剤として機能するものが挙げられる。熱酸発生剤とは、加熱により酸を発生し、硬化促進剤として機能する物質である。前述する硬化促進剤の内、熱酸発生剤として機能し得るものとしては、具体的には、スルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩等が挙げられる。
また、前記硬化促進剤の他の好適な一例としては、所定の加熱条件下(例えば80〜200℃、好ましくは100〜160℃)で活性化して熱硬化性樹脂の架橋反応を促進する熱潜在性を備えるものが挙げられる。前述する硬化促進剤の内、熱潜在性である物質としては、具体的には、アミジン化合物、ヒドラジン化合物、第3級アミン化合物等にエポキシ化合物が付加したエポキシアダクトが挙げられる。
更に、前記硬化促進剤の他の好適な一例としては、密閉状態、すなわち湿気遮断状態では硬化剤として機能しないが、密閉状態を開封し、湿気の存在する条件下で加水分解して硬化剤として機能する加水分解型潜在性を備えるものが挙げられる。前述する硬化促進剤の内、加水分解型潜在性である物質としては、具体的には、アミジン化合物、ヒドラジン化合物、第3級アミン化合物等にエポキシ化合物が付加したエポキシアダクトが挙げられる。
これらの硬化促進剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの硬化促進剤の中でも、好ましくはアミジン化合物、スルホニウム塩、更に好ましくはアミジン化合物が挙げられる。
これらの硬化促進剤は、表面被覆層1において、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、表面被覆層1が複数の層により形成されている場合、表面被覆層1を構成する各層同士で、使用される硬化促進剤は、同一であっても異なってもよく、硬化促進剤の種類は、各層に備えさせるべき機能や物性等に応じて適宜選択すればよい。
硬化促進剤を用いる場合、表面被覆層1の形成に使用される樹脂組成物における硬化促進剤の含有量については、使用する熱硬化性樹脂の種類、硬化促進剤の種類等に応じて適宜設定されるが、例えば、熱硬化性樹脂100質量部に対して、硬化促進剤が総量で0.01〜6質量部、好ましくは0.05〜5質量部、更に好ましくは0.1〜2質量部が挙げられる。
(顔料・染料)
表面被覆層1は、必要に応じて、顔料及び染料の少なくとも一方が含まれてもよい。表面被覆層1が、顔料及び染料の少なくとも一方を含む場合、成形時の白化をより効果的に抑制することができ、さらに、耐摩耗性を向上させることもできる。また、表面被覆層1が、顔料及び染料の少なくとも一方を含むことにより、電池用包装材料に識別性を付与(顔料及び染料の少なくとも一方によって呈色)でき、電池用包装材料の表面にマットな意匠を付与したり、さらに電池用包装材料の熱伝導率を高めて放熱性を向上させることが可能になる。
顔料の材質については、特に制限されず、無機顔料又は有機顔料のいずれであってもよい。無機顔料としては、具体的には、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、タルク、シリカ、カオリン、モンモリロイド、モンモリロナイト、合成マイカ、ハイドロタルサイト、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛,酸化マグネシウム,酸化アルミニウム,酸化ネオジウム,酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム,硫酸バリウム、炭酸カルシウム,ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、金、アルミニウム、銅、ニッケル等が挙げられる。有機顔料としては、具体的には、アゾ顔料、多環顔料、レーキ顔料、蛍光顔料等が挙げられる。これらの顔料は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
顔料の形状についても、特に制限されず、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状等が挙げられる。また、顔料の平均粒径については、特に制限されないが、例えば0.01〜3μm、好ましくは0.05〜1μmが挙げられる。なお、顔料の平均粒径は、島津レーザ回折式粒度分布測定装置SALD-2100-WJA1を使用し、圧縮空気を利用してノズルから測定対象となる粉体を噴射し、空気中に分散させて測定する噴射型乾式測定方式により測定される値である。
顔料には、必要に応じて、表面に絶縁処理、高分散性処理(樹脂被覆処理)等の各種表面処理を施しておいてもよい。
また、染料の種類については、表面被覆層1の形成に使用される樹脂組成物に溶解・分散できることを限度として特に制限さないが、例えば、ニトロ染料、アゾ系染料、スチルベン染料、カルポニウム染料、キノリン染料、メチン染料、チアゾール染料、キインイミン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、及びフタロシアニン染料などを挙げることができ、好ましくはアゾ染料、カルポニウム染料、アントラキノン染料などが挙げられる。これらの染料は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの顔料と染料の中でも、電池用包装材料の放熱性をより一層向上させるという観点から、好ましくは顔料、より好ましくは無機顔料、更に好ましくはカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト等の炭素材料、特に好ましくはカーボンブラックが挙げられる。
表面被覆層1を2つ以上の層で構成された複層構造にする場合に顔料を含有させるには、顔料及び/又は染料は、これらの2つ以上の層の内、いずれか1つの層に含まれていてもよく、また2つ以上の層に含まれていてもよい。電池用包装材料の成形後に、成形された部分と成型されていない部分の色調の差を小さくするという観点から、表面被覆層1を2つ以上の層で構成された複層構造にして2つ以上の層に顔料及び/又は染料を含有させることが好ましく、表面被覆層1を3つの層で構成された3層構造にして3つの層全てに顔料及び/又は染料を含有させることが更に好ましい。
表面被覆層1を構成する少なくとも1つの層において、顔料及び/又は染料を含有させる場合、その含有量については、使用する顔料及び/又は染料の種類、電池用包装材料に付与すべき識別性や放熱性等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、顔料及び/又は染料を含有させる層に含まれる熱硬化性樹脂100質量部に対して、顔料及び/又は染料が総量で1〜30質量部が挙げられる。より一層優れた識別性を付与するという観点から、顔料及び/又は染料を含有させる層に含まれる熱硬化性樹脂100質量部に対して、顔料及び/又は染料が総量で3〜20質量部が挙げられる。また、より一層優れた識別性と共に、顔料及び/又は染料に起因する成形性の低下を抑制するという観点から、顔料及び/又は染料を含有させる層に含まれる熱硬化性樹脂100質量部に対して、顔料及び/又は染料が総量で5〜15質量部が挙げられる。
(他の添加剤)
表面被覆層1の形成に使用される樹脂組成物には、表面被覆層1に備えさせるべき機能性等に応じて、前述する成分の他に、必要に応じて、有機フィラー、スリップ剤、溶剤、エラストマー樹脂等の他の添加剤が含まれてもよい。
表面被覆層1に、有機フィラーやスリップ剤を含有させると、本発明の電池用包装材料の表面にスリップ効果を付与し、プレス成成形やエンボス加工における成形・加工性を向上させたり、操作性を良好にすることができる。
有機フィラーの種類については、特に制限されないが、例えば、高融点ナイロン、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン等が挙げられる。また、有機フィラーの形状についても、特に制限されないが、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状等が挙げられる。
また、スリップ剤としては、特に制限されず、非反応性スリップ剤であってもよく、また反応性スリップ剤であってもよい。特に、反応性スリップ剤は、表面被覆層1を構成する最表層からスリップ剤がブリード喪失し難く、使用時に粉吹きや裏移りが生じたり、スリップ効果が経時的に低下したりするのを抑制できるという利点があるので、スリップ剤の中でも、好ましくは反応性スリップ剤が挙げられる。
ここで、非反応性スリップ剤とは、熱硬化性樹脂と反応して化学的に結合する官能基を有さず、スリップ性(滑り性)を付与できる化合物である。また、反応性スリップ剤とは、前記熱硬化性樹脂と反応して化学的に結合する官能基を有し、且つスリップ性(滑り性)を付与できる化合物である。
非反応性スリップ剤としては、具体的には、例えば、脂肪酸アマイド、金属石鹸、親水性シリコーン、シリコーンをグラフトしたアクリル、シリコーンをグラフトしたエポキシ、シリコーンをグラフトしたポリエーテル、シリコーンをグラフトしたポリエステル、ブロック型シリコーンアクリル共重合体、ポリグリセロール変性シリコーン、パラフィン等が挙げられる。これらの非反応性スリップ剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、反応性スリップ剤において、官能基の種類については、使用する熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜設定されるが、例えば、水酸基、メルカプト基、加水分解性シリル基、イソシアネート基、エポキシ基、重合性ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。反応性スリップ剤において、1分子当たりの官能基数については、特に制限されないが、例えば、1〜3個、好ましくは1又は2個が挙げられる。
反応性スリップ剤として、具体的には、前記官能基を有する変性シリコーン;前記官能基を有する変性フッ素樹脂;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪酸アミドに対して前記官能基が導入された化合物;前記官能基が導入された金属石鹸;前記官能基が導入されたパラフィン等が挙げられる。これらの反応性スリップ剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの反応性スリップ剤の中でも、好ましくは前記官能基を有する変性シリコーン、前記官能基を有するフッ素樹脂、前記官能基を有するシリコーン変性樹脂が挙げられる。前記変性シリコーンとして、具体的には、アクリル樹脂がブロック重合した変性シリコーン等のように、前記官能基を有する重合体がブロック重合した変性シリコーン;アクリレートがグラフト重合した変性シリコーン等のように、前記官能基を有する単量体がグラフト重合した変性シリコーン等が挙げられる。また、前記変性フッ素樹脂としては、具体的には、アクリレートがグラフト重合したフッ素樹脂等のように、前記官能基を有する単量体がグラフト重合した変性フッ素樹脂;アクリル樹脂がブロック重合した変性フッ素樹脂等のように、前記官能基を有する重合体がブロック重合したフッ素樹脂等が挙げられる。また、前記シリコーン変性樹脂としては、具体的には、前記官能基を有するアクリル樹脂にシリコーンがグラフト重合しているシリコーン変性アクリル樹脂等のように、前記官能基を有し且つシリコーンがグラフト重合したシリコーン変性樹脂等が挙げられる。また、前記変性フッ素樹脂としては、具体的には、アクリレートがグラフト重合したフッ素樹脂等のように、前記官能基を有する単量体がグラフト重合した変性フッ素樹脂;アクリル樹脂がブロック重合した変性フッ素樹脂等のように、前記官能基を有する重合体がブロック重合したフッ素樹脂等が挙げられる。これらの中でも、特に好ましい反応性スリップ剤として、前記官能基を有する単量体又は重合体がシリコーンの一方の末端に重合している変性シリコーン;前記官能基を有する単量体又は重合体がフッ素樹脂の一方の末端に重合している変性フッ素樹脂が挙げられる。このような変性シリコーン及び変性フッ素樹脂としては、例えば「モディパー(登録商標)F・FSシリーズ」(日油株式会社製)、「サイマック(登録商標)シリーズ」(東亞合成株式会社製)等が市販されており、これらの市販品を使用することもできる。
表面被覆層1中の最表層を形成する層の形成に使用される樹脂組成物にスリップ剤を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、熱硬化性樹脂100質量部に対して、スリップ剤が総量で1〜12質量部、好ましくは3〜10質量部、更に好ましくは5〜8質量部が挙げられる。
<表面被覆層1の硬さ>
本発明の電池用包装材料においては、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物により形成された前記表面被覆層の表面は、インデンテーション法により負荷荷重1mNで測定されたマルテンス硬度が、15N/mm2以上であることを特徴とする。本発明の電池用包装材料においては、表面被覆層1がこのような特定の硬度を有していることにより、表面被覆層1が熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物により形成されているにも拘わらず、成形時の白化が効果的に抑制され、優れた成形性を有している。成形時の白化をさらに効果的に抑制する観点から、当該硬度としては、好ましくは18N以上、より好ましくは20N以上が挙げられる。なお、当該硬度としては、好ましくは18N/mm2以上、より好ましくは20N/mm2以上が挙げられる。なお、当該マルテンス硬度の上限値としては、25N/mm2程度である。
本発明において、表面被覆層1の表面のマルテンス硬度の具体的な測定方法としては、図3に示すように、表面被覆層1の表面(基材層2と反対側表面)に対して垂直方向から対面角136°のダイヤモンド正四角錐形状のビッカース圧子10を押し込み、得られた荷重−変位曲線からマルテンス硬度を算出し、これを5か所について求めた平均を表面被覆層1の表面のマルテンス硬度とする。なお、マルテンス硬度は、より具体的には、ビッカース圧子の最大押し込み深さhにおける押し込みによりできたピラミッド形のくぼみの表面積A(mm2)を計算し、試験荷重F(N)を割る(F/A)ことで求められる。表面被覆層1の表面の当該マルテンス硬度の測定方法の詳細は、以下の通りである。インデンテーション法に基づき、表面被覆層1の表面に、下記特定の条件で圧子を押し込んで、表面被覆層1のマルテンス硬度を測定することができる。なお、インデンテーション法によるマルテンス硬度の測定は、フィッシャーインストルメンツ社製のピコデンター HM−500を用いて測定することができる。
<測定条件>
・負荷荷重1mN
・荷重速度 1mN/10秒
・保持時間 10秒
・荷重除荷速度 1mN/10秒
・圧子 ビッカース(四角錐の先端部分の対面角 136°)
・測定温度 25℃
表面被覆層1の硬度を前述する値に設定するには、表面被覆層1の形成に使用される熱硬化性樹脂の種類、量等を適宜調整することによって行うことができる。例えば、表面被覆層1の形成に使用される熱硬化性樹脂中の架橋性エラストマーの量と種類を適宜調整することによって、所望の硬度に設定することができる。
<表面被覆層1の厚み>
表面被覆層1の厚みとしては、例えば、0.5〜10μm程度、好ましくは1〜9μm程度が挙げられる。
[基材層2]
本発明の電池用包装材料において、基材層2は表面被覆層1の内側に設けられる層である。基材層2を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。基材層2を形成する素材としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの混合物や共重合物等の樹脂フィルムが挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられ、より好ましくは2軸延伸ポリエステル樹脂、2軸延伸ポリアミド樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。また、ポリアミド樹脂としては、具体的には、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等が挙げられる。
基材層2は、1層の樹脂フィルムから形成されていてもよいが、耐ピンホール性や絶縁性を向上させるために、2層以上の樹脂フィルムで形成されていてもよい。基材層2を多層の樹脂フィルムで形成する場合、2以上の樹脂フィルムは、接着剤または接着性樹脂などの接着成分を介して積層させればよく、使用される接着成分の種類や量等については、後述する接着層3又は接着層6の場合と同様である。なお、2層以上の樹脂フィルムを積層させる方法としては、特に制限されず、公知方法が採用でき、例えばドライラミネーション法、サンドラミネーション法などが挙げられ、好ましくはドライラミネーション法が挙げられる。ドライラミネーション法により積層させる場合には、接着層としてウレタン系接着剤を用いることが好ましい。このとき、接着層の厚みとしては、例えば2〜5μm程度が挙げられる。
基材層2の厚みについては、基材層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、10〜50μm程度、好ましくは15〜25μm程度が挙げられる。
[接着層3]
本発明の電池用包装材料において、接着層3は、基材層2と金属層4を強固に接着させるために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。
接着層3は、基材層2と金属層4とを接着可能である接着剤によって形成される。接着層3の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着層3の形成に使用される接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。
接着層3の形成に使用できる接着成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン系樹脂等が挙げられる。これらの接着成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの接着成分の中でも、好ましくはポリウレタン系接着剤が挙げられる。
接着層3の厚さについては、接着層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、1〜10μm程度、好ましくは2〜5μm程度が挙げられる。
[金属層4]
電池用包装材料において、金属層4は、電池用包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止するためのバリア層として機能する層である。金属層4を構成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタンなどが挙げられ、好ましくはアルミニウムが挙げられる。金属層4は、金属箔や金属蒸着などにより形成することができ、金属箔により形成することが好ましく、アルミニウム箔により形成することがさらに好ましい。電池用包装材料の製造時に、金属層4にしわやピンホールが発生することを防止する観点からは、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS A8021P−O、JIS A8079P−O)など軟質アルミニウム箔により形成することがより好ましい。
金属層4の厚みは、金属層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、10μm〜50μm程度、好ましくは20μm〜40μm程度とすることができる。
また、金属層4は、接着の安定化、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも一方の面、好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、金属層の表面に耐酸性皮膜を形成する処理をいう。化成処理としては、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロムなどのクロム酸化合物を用いたクロム酸クロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸などのリン酸化合物を用いたリン酸クロメート処理;下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理などが挙げられる。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。
一般式(1)〜(4)中、Xは、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基またはベンジル基を示す。また、R1及びR2は、それぞれ同一または異なって、ヒドロキシル基、アルキル基、またはヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)〜(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1及びR2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基が1個置換された炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)〜(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。一般式(1)〜(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシル基またはヒドロキシアルキル基であることが好ましい。一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、500〜100万であることが好ましく、1000〜2万程度であることがより好ましい。
また、金属層4に耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズなどの金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、150℃以上で焼付け処理を行うことにより、金属層4の表面に耐食処理層を形成する方法が挙げられる。また、耐食処理層の上には、カチオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層をさらに形成してもよい。ここで、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフト重合させた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノフェノールなどが挙げられる。これらのカチオン性ポリマーとしては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤などが挙げられる。これらの架橋剤としては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
化成処理は、1種類の化成処理のみを行ってもよいし、2種類以上の化成処理を組み合わせて行ってもよい。さらに、これらの化成処理は、1種の化合物を単独で使用して行ってもよく、また2種以上の化合物を組み合わせて使用して行ってもよい。化成処理の中でも、クロム酸クロメート処理や、クロム酸化合物、リン酸化合物、及びアミノ化フェノール重合体を組み合わせたクロメート処理などが好ましい。
化成処理において金属層4の表面に形成させる耐酸性皮膜の量については、特に制限されないが、例えば、上記のクロメート処理を行う場合であれば、金属層4の表面1m2当
たり、クロム酸化合物がクロム換算で約0.5mg〜約50mg、好ましくは約1.0mg〜約40mg、リン化合物がリン換算で約0.5mg〜約50mg、好ましくは約1.0mg〜約40mg、及びアミノ化フェノール重合体が約1mg〜約200mg、好ましくは約5.0mg〜150mgの割合で含有されていることが望ましい。
化成処理は、耐酸性皮膜の形成に使用する化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法などによって、金属層4の表面に塗布した後に、金属層4の温度が70℃〜200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、金属層4に化成処理を施す前に、予め金属層4を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法などによる脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、金属層4の表面の化成処理をより効率的に行うことが可能となる。
[熱溶着性樹脂層5]
本発明の電池用包装材料において、熱溶着性樹脂層5は、最内層に該当し、電池の組み立て時に熱溶着性樹脂層同士が熱溶着して電池素子を密封する層である。
熱溶着性樹脂層5に使用される樹脂成分については、熱溶着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー;等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、等が挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、更に好ましくはノルボルネンが挙げられる。
前記カルボン酸変性ポリオレフィンとは、前記ポリオレフィンをカルボン酸でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。変性に使用されるカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
前記カルボン酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β―不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β―不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。カルボン酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、変性に使用されるカルボン酸としては、前記酸変性シクロオレフィンコポリマーの変性に使用されるものと同様である。
これらの樹脂成分の中でも、好ましくはカルボン酸変性ポリオレフィン;更に好ましくはカルボン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
熱溶着性樹脂層5は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。更に、熱溶着性樹脂層5は、1層のみで成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上で形成されていてもよい。
また、熱溶着性樹脂層5の厚みとしては、熱溶着性樹脂層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、10〜100μm程度、好ましくは15〜50μm程度が挙げられる。
[接着層6]
本発明の電池用包装材料において、接着層6は、金属層4と熱溶着性樹脂層5を強固に接着させために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。
接着層6は、金属層4と熱溶着性樹脂層5とを接着可能である接着剤によって形成される。接着層6の形成に使用される接着剤について、その接着機構、接着剤成分の種類等は、前記接着層3の場合と同様である。接着層6に使用される接着剤成分として、好ましくはポリオレフィン系樹脂、更に好ましくはカルボン酸変性ポリオレフィン、特に好ましくはカルボン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
接着層6の厚みについては、接着層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、2〜50μm程度、好ましくは15〜30μm程度が挙げられる。
3.電池用包装材料の製造方法
本発明の電池用包装材料の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されないが、例えば、以下の方法が例示される。
まず、基材層2、接着層3、金属層4が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層2上又は必要に応じて表面が化成処理された金属層4に接着層3の形成に使用される接着剤を、押出し法、グラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該金属層4又は基材層2を積層させて接着層3を硬化させるドライラミネーション法によって行うことができる。
次いで、積層体Aの金属層4上に、熱溶着性樹脂層5を積層させる。金属層4上に熱溶着性樹脂層5を直接積層させる場合には、積層体Aの金属層4上に、熱溶着性樹脂層5を構成する樹脂成分をグラビアコート法、ロールコート法等の方法により塗布すればよい。また、金属層4と熱溶着性樹脂層5の間に接着層6を設ける場合には、例えば、(1)積層体Aの金属層4上に、接着層6及び熱溶着性樹脂層5を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネーション法)、(2)別途、接着層6と熱溶着性樹脂層5が積層した積層体を形成し、これを積層体Aの金属層4上にサーマルラミネーション法により積層する方法、(3)積層体Aの金属層4上に、接着層6を形成させるための接着剤を押出し法や溶液コーティングした高温で乾燥さらには焼き付ける方法等により積層させ、この接着層6上に予めシート状に製膜した熱溶着性樹脂層5をサーマルラミネーション法により積層する方法、(4)積層体Aの金属層4と、予めシート状に製膜した熱溶着性樹脂層5との間に、溶融させた接着層6を流し込みながら、接着層6を介して積層体Aと熱溶着性樹脂層5を貼り合せる方法(サンドラミネーション法)等が挙げられる。
次に、基材層2の金属層4とは反対側の表面に、表面被覆層1を積層する。表面被覆層1は、例えば表面被覆層1を形成する上記の樹脂組成物を基材層2の表面に塗布し、加熱硬化させることに形成することができる。なお、基材層2の表面に金属層4を積層する工程と、基材層2の表面に表面被覆層1を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、基材層2の表面に表面被覆層1を形成した後、基材層2の表面被覆層1とは反対側の表面に金属層4を形成してもよい。
上記のようにして、表面被覆層1/基材層2/必要に応じて設けられる接着層3/必要に応じて表面が化成処理された金属層4/必要に応じて設けられる接着層6/熱溶着性樹脂層5からなる積層体が形成されるが、接着層3及び必要に応じて設けられる接着層6の接着性を強固にするために、更に、熱ロール接触式、熱風式、近又は遠赤外線式等の加熱処理に供してもよい。このような加熱処理の条件としては、例えば150〜250℃で1〜5分間が挙げられる。
本発明の電池用包装材料において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性等を向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理を施していてもよい。
4.電池用包装材料の用途
本発明の電池用包装材料は、正極、負極、電解質等の電池素子を密封して収容するための包装材料として使用される。
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、本発明の電池用包装材料で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(熱溶着性樹脂層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部の熱溶着性樹脂層同士をヒートシールして密封させることによって、電池用包装材料を使用した電池が提供される。なお、本発明の電池用包装材料を用いて電池素子を収容する場合、本発明の電池用包装材料のシーラント部分が内側(電池素子と接する面)になるようにして用いられる。
本発明の電池用包装材料は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本発明の電池用包装材料が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛畜電池、ニッケル・水素畜電池、ニッケル・カドミウム畜電池、ニッケル・鉄畜電池、ニッケル・亜鉛畜電池、酸化銀・亜鉛畜電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材料の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1−3及び比較例1−2
<電池用包装材料の製造>
基材層2/接着層3/金属層4が順に積層された積層体に対して、サーマルラミネート法で熱溶着性樹脂層5を積層させることにより、基材層2/接着層3/金属層4/熱溶着性樹脂層5が順に積層された積層体を得た。次に、基材層2の表面に表面被覆層を形成して、表面被覆層1/基材層2/接着層3/金属層4/熱溶着性樹脂層5が順に積層された積層体からなる電池用包装材料を製造した。電池用包装材料の具体的な製造条件は、以下に示す通りである。
まず、基材層2/接着層3/金属層4が順に積層された積層体を作製した。具体的には、基材層2の一方面に、ポリエステル系の主剤とイソシア系硬化剤の2液型ウレタン接着剤からなる接着層3を3μmとなるように形成し、金属層4の化成処理面と加圧加熱貼合(サーマルラミネーション)し基材層2/接着層3/金属層4が順に積層された積層体を作製した。
基材層2としては、厚み15μmの2軸延伸ナイロンフィルム、金属層4としては、厚み35μmのアルミニウム箔からなる金属層4を用いた、アルミニウム箔は、それぞれ、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物(三価)、及びリン酸からなる処理液をロールコート法により金属層の両面にそれぞれ10mg/m2塗布し、皮膜温度が180℃以上とな
る条件で20秒間焼付けすることにより化成処理した。
また、別途、層共押出しフィルムからなる熱溶着性樹脂層5を準備した。それぞれの熱溶着性樹脂層5は、金属層側を構成する樹脂層(不飽和カルボン酸でグラフト変性した不飽和カルボン酸グラフト変性ランダムポリプロピレン、厚み20μm)と、最内層側を構成する樹脂層(ポリプロピレン(ランダムコポリマー)、厚み15μm)とを共押出することにより2層共押出しフィルムとした。
次いで、前記で作製した基材層2/接着層3/金属層4からなる積層体の金属層に、前記で作製した2層共押出しフィルムの金属層側を構成する樹脂層が接するように重ねあわせ、金属層4が120℃となるように加熱してサーマルラミネーションを行うことにより、基材層2/接着層3/金属層4/熱溶着性樹脂層5が順に積層された積層体を得た。得られた積層体を一旦冷却した後に、180℃になるまで加熱し、1分間その温度を保持して熱処理を施した。
次に、活性水素を有する多官能アクリレートとポリイソシアネートとを反応させることにより得られた多官能ウレタンアクリレートを前記積層体の基材層2の表面に塗布し、45℃で3日間加熱して、厚みが3μmの表面被覆層1を形成し、表面被覆層1/基材層2/接着層3/金属層4/熱溶着性樹脂層5が順に積層された積層体からなる電池用包装材料を得た。
<表面被覆層の硬度の測定評価>
上記で得られた各電池用包装材料の表面被覆層1の表面のマルテンス硬度を、フィッシャーインストルメンツ社製、ピコデンター HM−500を用いたインデンテーション法により測定した。当該マルテンス硬度は、表面被覆層1の表面に対して、5回測定した平均値とした。測定条件の詳細は、以下の通りである。結果を表1に示す。
<測定条件>
・負荷荷重1mN
・荷重速度 1mN/10秒
・保持時間 10秒
・荷重除荷速度 1mN/10秒
・圧子 ビッカース(四角錐の先端部分の対面角 136°)
・測定温度 25℃
・相対湿度 50%
<成形性の評価>
上記で得られた電池用包装材料を裁断して、120×80mmの短冊片を作製し、これを試験サンプルとした。30×50mmの矩形状の雄型とこの雄型とのクリアランスが0.5mmの雌型からなるストレート金型を用い、雄型側に熱接着性樹脂層側が位置するように雌型上に上記試験サンプルを載置し、それぞれ、成形深さ6〜8mmとなるように当該試験サンプルを0.1MPaの押え圧(面圧)で押えて、冷間成形(引き込み1段成形)した。成形された電池用包装材料のコーナー部のピンホールの有無と白化が生じているか否かを目視で確認した。結果を表1に示す。