実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る油分離器を備えた冷凍サイクル装置の概略構成を示す冷媒回路図である。図1における実線の矢印は冷媒の主流を示しており、破線の矢印は油の主流を示している。以下、実施の形態1に係る油分離器を備えた冷凍サイクル装置について説明する。冷凍サイクル装置100は、例えば、空気調和装置、冷蔵庫、冷凍機、自動販売機、給湯器等である。冷凍サイクル装置100は、圧縮機101と、油分離器1と、凝縮器103と、膨張弁104と、蒸発器105とを備える。圧縮機101と、油分離器1と、凝縮器103と、膨張弁104と、蒸発器105とは、順に冷媒配管で接続されている。冷凍サイクル装置100において、冷媒ガスは、圧縮機101から油と共に吐出され、冷媒ガスの大半が油分離器1で油と分離されたのち、凝縮器103、膨張弁104、蒸発器105などを順に流れ、圧縮機101の吸入側に戻される。油分離器1に流入した一部の冷媒ガスは、分離された油と共に油戻し管102を介して圧縮機101の吸入側に戻される。
油分離器1は、冷凍サイクル装置100の構成要素の1つである。油分離器1は、冷凍サイクル装置100の圧縮機101の吐出側に接続されており、圧縮機101から吐出された冷媒ガスに含まれる油を分離する機能を有している。油分離器1で冷媒ガスから分離された油は、油戻し管102を介して圧縮機101の吸入側に戻される。油分離器1で分離されなかった油は、凝縮器103、膨張弁104、蒸発器105などを順に流れ、圧縮機101の吸入側に戻される。
図2は、本発明の実施の形態1に係る油分離器の概略構成を示す斜視図である。図3は、本発明の実施の形態1に係る油分離器の縦断面図である。図2において、矢印Rは、圧縮機101から吐出されて油分離器1に流入する油を含んだ冷媒ガスの流れを表すものである。また、矢印Gは、油分離器1から流出する冷媒ガスの流れを表すものである。さらに、矢印Lは、油分離器1により分離され、油分離器1から流出する油の流れを表すものである。なお、図2及び図3を含む以下の図面では、各構成部材の寸法及び形状等が実際のものとは異なる場合がある。また、図2および図3において示すZ軸は、Z1側を上、Z2側を下として油分離器1の上下方向を示すものである。また、明細書中における各構成部材同士の位置関係(例えば、上下関係等)は、原則として、油分離器1を使用可能な状態に設置したときのものである。
油分離器1は、図2及び図3に示すように、容器2を有している。容器2は、円筒状の内壁面を形成する周壁となるシェル3を備える。また、容器2は、シェル3の上部(Z1側)に設けられた上部鏡板4と、シェル3の下部(Z2側)に設けられた下部鏡板5と、を備えている。シェル3は、図2に示すように、上下方向(例えば、鉛直方向)に中心軸Oを有する円筒形状に形成されている。上部鏡板4は、上方(Z1方向)に向かって縮径された円錐テーパ状の形状を有しており、下部鏡板5は、下方(Z2方向)に向かって縮径された円錐テーパ状の形状を有している。容器2は、シェル3と、上部鏡板4と、下部鏡板5とが一体化した構成を有している。
容器2のシェル3の上方の周壁には、シェル3の内壁面の接線方向(例えば、水平な接線方向)に沿って流入管6が接続されている。油分離器1では、流入管6を構成する配管の先端部6aが容器2内部に配置されるように、流入管6はシェル3に差し込まれて接続されている。流入管6の中心軸O1と流入管6のシェル3の内壁面の中心軸Oとは、交わらない。流入管6は、冷媒ガス及び油が混合した混合流体を容器2の内部に流入させる。
上部鏡板4の上端部4aには、シェル3よりも径の小さいガス流出管7が、シェル3と同軸となるように接続されている。ガス流出管7は、容器2の上部に接続され、一端が容器2の内部に位置すると共に他端が容器2の外部に位置し、容器2の内部のガスを外部に流出させる管である。ガス流出管7の下端部7a(冷媒ガスの流れの上流側の端部)は、上部鏡板4を貫通して容器2の内部に配置され、シェル3の内壁面の中心軸O上に位置している。ガス流出管7は、少なくとも容器2の内部に位置する部分の外壁が円筒形状に形成されている。下部鏡板5の下端部5aには、シェル3よりも径の小さい油流出管8が、シェル3と同軸になるように接続されている。油流出管8は、容器2の下部に接続され、容器2の内部の油を外部に流出させる管である。
容器2内において、図3に示すように、流入管6の上壁から下方に位置すると共にガス流出管7の下端部7aよりも上方に位置し、シェル3の内壁面とガス流出管7の外壁面との間に形成される空間を旋回部9と称する。旋回部9は、流入管6から流入したガス及び油の混合流体をシェル3の内壁面に沿って旋回させる空間である。また、容器2内において、ガス流出管7の下端部7aよりも下方に位置し、シェル3の内壁面と下部鏡板5の内壁面とで囲まれた空間(旋回部9よりも下方の空間)は、底部10と称する。さらに、容器2内において、流入管6よりも上方に位置し、シェル3の内壁面と、上部鏡板4の内壁面と、ガス流出管7の外壁面との間に形成される空間(旋回部9よりも上方の領域)を、流入管上部11と称する。図2及び図3に示すように、流入管6の上部を覆い、流入管上部11内を充填するように、上昇旋回流抑制機構12が設けられている。
上昇旋回流抑制機構12は、上下方向に連通する間隙を形成する壁部12aを有し、流入管6の上部において、シェル3と上部鏡板4とから構成される容器2の内壁と、ガス流出管7の外壁との間の空間に配置され、冷媒ガス及び油が混合した混合流体の流れを妨げることで流入管6の上部に形成される上昇旋回流を抑制するものである。上昇旋回流抑制機構12を構成する壁部12aは、例えば樹脂あるいはゴム、繊維状の金属などの、伸縮性のある材料で構成されることが望ましい。上昇旋回流抑制機構12は、ガスを流通させられるように、内部に間隙が設けられていることが望ましい。上昇旋回流抑制機構12が有する間隙を形成する壁部12aは、例えば、連続気泡型の樹脂あるいは連続気泡型のゴムから構成されており、あるいは、繊維状の金属から構成されている。上下方向に連通する間隙は、上昇旋回流抑制機構12の上端から下端までが1つの間隙として形成されていてもよく、連続気泡構造のように複数の間隙が互いに結合して形成されていてもよい。また、上下方向に連通するとは、間隙が上昇旋回流抑制機構12の上端から下端に連通していればよく、鉛直方向だけではなく、一部に水平方向あるいは斜め方向に連通する部分があってもよい。上昇旋回流抑制機構12は、容器2の内壁とガス流出管7の外壁とに当接されて配置され、あるいは、容器2の内壁とガス流出管7の外壁とのいずれか一方に当接されて配置されている。
次に、油分離器1の内部における油分離について説明する。ガス及び油が混合した混合流体(例えば、圧縮機から吐出された高圧ガス冷媒)は、油分離器1の外部の配管から流入管6に流入する。流入管6に流入した混合流体は、流入管6の内部を流れて、容器2の内部に位置する流入管6の下流端となる先端部6aから、容器2内の空間である旋回部9に開放される。混合流体のガス及び油は、旋回部9において、ガス流出管7を中心として旋回部9を旋回しつつ下方に流れる。ガス及び油が旋回部9で旋回している間、相対的に比重の大きい油は遠心力により旋回軸の径方向外側(シェル3の内壁面側)へ移動する。径方向外側へ移動した油は、シェル3の内壁面に達すると当該内壁面に沿って流れるようになる。この油は、旋回部9の下方の底部10に達してもシェル3の内壁面に沿って流れる。一方、ガスは、旋回部9の空間を流れた後、底部10内の空間に達する。旋回部9でシェル3の内壁面に達しなかった油は、底部10において、残存する旋回運動による遠心力と重力との作用により、一部がシェル3の内壁面又は下部鏡板5の内壁面に達する。シェル3の内壁面又は下部鏡板5の内壁面に達しなかった残りの油は、ガスと共にガス流出管7の下端部7aに集まり、ガス流出管7内を上方に向かって流れて外部に流出する。底部10においてシェル3の内壁面に沿って流れる油は、重力によりそのまま内壁面を流れて下部鏡板5に達する。下部鏡板5に達した油は、底部10の空間から直接下部鏡板5に達した油と共に、下部鏡板5のテーパ面を流れ落ちて油流出管8が接続された下端部5aに集まる。これらの油は、そのまま油流出管8の内部を下方に向かって流れて外部に流出する。
以上のように、流入管6から油分離器1の容器2の内部に流入したガス及び油の混合流体は、ガス流出管7から外部に流出するガスと、油流出管8から外部に流出する油とに分離される。ガス流出管7からガスと共に流出する油の量が多いほど、油の分離効率は低い状態である。旋回部9又は底部10に油滴として存在する油は、油滴が小さいほど遠心力あるいは重力の影響を受けにくくなるのでガスから分離しにくくなる。
図4は、上昇旋回流抑制機構を備えていない油分離器の上部と、その油と冷媒の流れの概略を示す縦断面図である。図5は、本発明の実施の形態1に係る油分離器の上部の縦断面図である。図6は、実験により得られた上昇旋回流抑制機構と流入管との間の高さhと油分離効率との関係を示すグラフである。ここで、上昇旋回流抑制機構12を備えていない油分離器51と、上昇旋回流抑制機構12を備えている油分離器1との油分離の作用について、さらに詳細に説明する。
まず、図4を用いて上昇旋回流抑制機構12を備えていない油分離器51による油分離について説明する。図4の矢印を含む実線は、流入管上部11におけるシェル3近くを流れる冷媒ガスの旋回上昇流を表す。図4の矢印を含む点線は、流入管上部11における縦断面上の2次元流れを表し、矢印を含む破線は、流入管上部11における、シェル3や上部鏡板4に内壁面上に沿って纏まった油L1の旋回流を表している。
図4に示すように、油分離器51が、上昇旋回流抑制機構12を備えていない場合、流入管6から旋回部9に開放されたガスと油の一部は、下方に向かわず、旋回しながら上方の流入管上部11へ流れる。図4の矢印を含む実線と点線に示すように、流入管上部11において、ガスはシェル3に近い側で旋回しながら上昇する流れになり、ガス流出管7に近い側では旋回しながら下降する流れになる。このガスの旋回流により、一部の油滴が遠心力を受けてシェル3に付着するが、流入管上部11のシェル3に近い側では、ガスは旋回に加え上昇する流れになっているため、シェル3に付着した油は上方に向かう。図4の矢印を含む破線に示すように、シェル3の面上に沿って旋回しながら上方に向かった油は、纏まってシェル3と上部鏡板4の面上に沿って旋回しながら流入管上部11に溜まる。流入管上部11に溜まった油は、一部がガスの流れに引き剥がされて、油滴となり、さらにその一部が重力あるいはガス流出管7に近い側の旋回下降流により、流入管上部11から旋回部9へ流出する。
流入管上部11において旋回しながら溜まっている油の量は、流入管6に流入するガスと油の量が流出する量より多いと増加し、流入管6に流入するガスと油の量が流出する量より少ないと減少する。流入管6に流入するガスと油とが定常状態であれば、流入管上部11に溜まる油は、流入する量と流出する量が釣り合い、一定の量となる。流入管上部11に溜まった油量が増加して、その油面が流入管6に近くなるほど、油面近くのガスの流速が速くなることで、油面から油が引き剥がされて油滴が生じやすくなり、流入管上部11に溜まった油から旋回部9へ流出する油の量が増加する。その結果、定常状態では、流入管6に流入するガスと油との条件が変われば流入管上部11に溜まる油量は変化するが、流入管6に流入するガスと油との条件が変わらなければ流入管上部11に溜まる油量は一定量に保たれる。また、流入管6に流入する油量がガス量より多いほど、流入管上部11に流れる油量が増えるため、流入管上部11に溜まる油量は増加する。この流入管上部11に旋回しながら溜まる油量が多くなるほど、油面がガスの旋回流によりかき乱されやすくなるため、小さい油滴の発生量が多くなる。前述したように、油滴が小さくなるほど、遠心力あるいは重力の影響を受けにくくなり、旋回部9や底部10において油をガスから分離しにくくなるため、流入管上部11に溜まる油量が多いほど、油分離器1の油分離効率は低下する。
次に、図5と図6を用いて、油分離器1が、上昇旋回流抑制機構12を備えている場合の油分離効率の改善効果を説明する。前述したように、流入管上部11に旋回しながら溜まる油量が多いほど、油分離器1の油分離効率は低下する。上昇旋回流抑制機構12があると、上昇旋回流抑制機構12に流れた油は、その間隙を形成する壁部12aに補足され、冷媒ガスも流れにくくなる。そのため、上昇旋回流抑制機構12の内部では冷媒ガスの上昇旋回流が発生しなくなる。上昇旋回流抑制機構12の間隙を形成する壁部12aに補足された油L1は、表面張力によりシェル3の内壁面を伝って、上昇旋回流抑制機構12の下方にある流入管上部11の一部の空間に落ちる。この上昇旋回流抑制機構12と流入管6との間にある高さがh(Z軸方向)の流入管上部11の一部の空間にのみ、上昇旋回流により、油L1が溜まることになる。そのため、流入管上部11に旋回しながら溜まる油量は少なくなり、小さい油滴の発生量が少なくなる。その結果、上昇旋回流抑制機構12を備えている場合は、備えていない場合に比べ、油分離器1の油の分離効率が向上する。
図6では、横軸は、流入管上部11の一部の空間において、上昇旋回流抑制機構12と流入管6との間の高さh[mm](Z軸方向)を示し、縦軸は、油分離効率を表すものである。図6に示すように、流入管上部11の一部の空間の高さhが低くなるほど、流入管上部11に溜まる油量が少なくなって、油分離効率が高くなることが確認できる。そのため、油分離器1は、流入管6の上部を覆い、流入管上部11内を充填するように上昇旋回流抑制機構12備えることで、高い油分離効率を得ることができる。
以上のように、油分離器1は、上下方向に連通する間隙を形成する壁部12aを有し、流入管の上部において、容器の内壁と、ガス流出管の外壁との間の空間に配置され、混合流体の流れを妨げることで流入管の上部に形成される上昇旋回流を抑制する上昇旋回流抑制機構を有する。そのため、油分離器1は、流入管上部11に旋回しながら溜まる油量が少なくなり、小さい油滴の発生量が少なくなる。その結果、油分離器1は、上昇旋回流抑制機構12を備えていない場合に比べ、油分離効率を向上させることができる。
また、上昇旋回流抑制機構12を備えた油分離器1は、流入管6より上部のシェル3と上部鏡板4の構造、上部鏡板4とガス流出管7の接続について、流入管上部11に溜まる油量を少なくするための特別な制限を設ける必要が無い。そのため、油分離器1は、加工設備や使用条件に合わせた構造を選択することが可能である。例えば、油分離器1は強度が必要な高圧ガスにも使用することが可能である。また、油分離器1は、細かに寸法を調整する高度な加工設備を用いる必要が無いため、高い油分離効率を有しているにもかかわらず、安価で生産性が高くなる。
また、上昇旋回流抑制機構12は、伸縮性のある材料で構成されることで、熱膨張または熱収縮により、容器2またはガス流出管7に強い応力が掛かることを抑えることができる。例えば、冷凍サイクル装置100に搭載される油分離器1は、圧縮機101から吐出した高温の冷媒ガスが流入するため、使用温度範囲が広くなる。上昇旋回流抑制機構12が、伸縮性の低い材料で構成される油分離器では、使用温度範囲で容器2とガス流出管7と上昇旋回流抑制機構12とが熱膨張または熱収縮し、容器2またはガス流出管7に強い応力が繰り返し掛かることで、短期間にどちらかが破壊に至る場合がある。また、油分離器は、容器2またはガス流出管7が繰り返し応力により破壊に至らなくても、容器2が変形することで一部に応力が集中する場合が有り、高いガス圧力を受けて、応力集中部から容器2の破壊に至る場合もある。油分離器1は、上昇旋回流抑制機構12が、伸縮性のある材料で構成されることで、熱膨張または熱収縮により、容器2またはガス流出管7に強い応力が掛かることを抑えることができる。
また、上昇旋回流抑制機構12には間隙が設けられており、内部にガスが通るように構成されている。そのため、上昇旋回流抑制機構12の内部、容器2と上昇旋回流抑制機構12の間の隙間、ガス流出管7と上昇旋回流抑制機構12との間の隙間に製造時に入り込んだガスが密閉されることがなくなる。上昇旋回流抑制機構12に間隙が無い構成では、上昇旋回流抑制機構12の内部、容器2と上昇旋回流抑制機構12の間の隙間、ガス流出管7と上昇旋回流抑制機構12との間の隙間に製造時に入り込んだガスが密閉される。そのため、上昇旋回流抑制機構12と、容器2と、ガス流出管7とには、ガスによる圧力が掛かる。この圧力は周囲の温度により変化はあるが、旋回部9の圧力のように流入管6の流入条件によって大きく変化することはないため、上昇旋回流抑制機構12の内部、容器2と上昇旋回流抑制機構12の間の隙間、ガス流出管7と上昇旋回流抑制機構12との間の隙間と、旋回部9との圧力差により、上昇旋回流抑制機構12には強い応力や繰返し応力が掛かる。特に、冷凍サイクル装置100に用いられる油分離器1などには、高圧な冷媒が用いられる場合があるため、上昇旋回流抑制機構12には、より強い応力が掛かりやすくなる。上昇旋回流抑制機構12は、厚みが薄い場合など、強度が不十分な場合では、応力により、破損する場合がある。また、上昇旋回流抑制機構12が充分な強度を有していても、容器2またはガス流出管7との接続が弱ければ、当接部に強い応力が掛かって破損する場合がある。油分離器1は、上昇旋回流抑制機構12に間隙があり、内部にガスが流通できるため、製造時に入り込んだガスが密閉されず、破損しにくくなる。
また、例えば、図1に示す冷凍サイクル装置100において、油分離器1が設けられていない場合に、凝縮器103又は蒸発器105の容積が大きい場合、凝縮器103、膨張弁104、蒸発器105などを接続する配管が長い場合には、圧縮機101を除く冷凍サイクル装置100内に存在する油量が多くなり、圧縮機101内部の油量が少なくなる恐れがある。高い油分離効率を有する油分離器1を備えた冷凍サイクル装置100は、凝縮器103、膨張弁104、蒸発器105、それらを接続する配管に存在する油量が少なくなり、圧縮機101内部の油量の減少が抑えられる。
また、油分離器1は、旋回部9や底部10の高さを短くすると、油滴がシェル3又は下部鏡板5に到達しにくくなるので、油分離効率が低下するが、小型化することができる。そのような場合でも、油分離器1は、上昇旋回流抑制機構12を備えていない油分離器よりは高い油分離効率を得られるため、小型な油分離器1を備えた冷凍サイクル装置100は、油分離器1の設置スペースを小さくして、小型にすることができる。また、小型な油分離器1を備えた冷凍サイクル装置100は、凝縮器103あるいは蒸発器105などの、その他の構成機器のサイズを代わりに大きくすることで、性能を向上させることができる。
また、上昇旋回流抑制機構12を備えていない油分離器の場合、冷凍サイクルの運転条件によって、流入管上部11に溜まる油量が変化するため、圧縮機101内部の油量が変動し、油が枯渇しやすくなる。本発明では油分離器1の流入管上部11に油が溜まらず、圧縮機101内部の油が枯渇しにくいため、故障しにくい冷凍サイクル装置100を提供することができる。
さらに、前述したように油分離器1は、上下方向(例えば、鉛直方向)に中心軸Oを有する円筒形状に形成されたシェル3と、上方(Z1方向)に向かって縮径された円錐テーパ状の形状を有している上部鏡板4と、下方(Z2方向)に向かって縮径された円錐テーパ状の形状を有している下部鏡板5とを有する。そのため、油分離器1は、高強度に構成することが可能であり、高圧ガスを用いる場合であっても、上昇旋回流抑制機構12を備えていることで、上記のような効果を備えつつ、冷媒漏れによる不具合の発生が抑えられた冷凍サイクル装置100を提供することができる。
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2に係る油分離器の上昇旋回流抑制機構を示す縦断面図である。図8は、本発明の実施の形態2に係る油分離器の他の上昇旋回流抑制機構を示す縦断面図である。図1〜図6の油分離器と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。実施の形態1に係る油分離器1では、上昇旋回流抑制機構12は、例えば樹脂あるいはゴムなどの伸縮性のある材料で構成される場合について説明した。しかし、上昇旋回流抑制機構は、伸縮性の低い樹脂あるいは金属などの、伸縮性の低い材料で構成されてもよい。以下、伸縮性の低い材料で構成された上昇旋回流抑制機構112A及び上昇旋回流抑制機構112Bを備えた油分離器1A及び油分離器1Bについて説明する。なお、以下の説明では、上昇旋回流抑制機構112A及び上昇旋回流抑制機構112Bの総称を上昇旋回流抑制機構112と称して説明する。
上昇旋回流抑制機構112は、上下方向に連通する間隙を形成する壁部112A1を有し、流入管6の上部において、シェル3と上部鏡板4とから構成される容器2の内壁と、ガス流出管7の外壁との間の空間に配置され、冷媒ガス及び油が混合した混合流体の流れを妨げることで流入管6の上部に形成される上昇旋回流を抑制するものである。上昇旋回流抑制機構112を構成する壁部112A1は、例えば、伸縮性の低い樹脂あるいはゴム、金属等の伸縮性の低い材料で構成されているが、樹脂あるいはゴム、繊維状の金属などの、伸縮性のある材料で構成されてもよい。上昇旋回流抑制機構112は、ガスを流通させられるように、内部に間隙が設けられていることが望ましい。上昇旋回流抑制機構112が有する間隙を形成する壁部112A1は、例えば、連続気泡型の樹脂あるいは連続気泡型のゴムから構成されており、あるいは、繊維状の金属から構成されている。上下方向に連通する間隙は、上昇旋回流抑制機構112の上端から下端までが1つの間隙として形成されていてもよく、連続気泡構造のように複数の間隙が互いに結合して形成されていてもよい。また、上下方向に連通するとは、間隙が上昇旋回流抑制機構112の上端から下端に連通していればよく、鉛直方向だけではなく、一部に水平方向あるいは斜め方向に連通する部分があってもよい。
上昇旋回流抑制機構112Aが伸縮性の低い材料で構成される場合には、上昇旋回流抑制機構112Aは、図7に示すように、容器2の内壁に当接し、上昇旋回流抑制機構112Aとガス流出管7の外壁との間に隙間S1を形成することが望ましい。または、上昇旋回流抑制機構112Bが伸縮性の低い材料で構成される場合には、上昇旋回流抑制機構112Bは、図8に示すように、ガス流出管7の外壁に当接し、上昇旋回流抑制機構112Bと容器2の内壁との間に隙間S2を形成することが望ましい。ガス流出管7の外壁と上昇旋回流抑制機構112Aとの間の隙間S1、及び、容器2の内壁と上昇旋回流抑制機構112Bとの間の隙間S2は、開きすぎるとその間に冷媒ガスと油との上昇旋回流が発生して油が溜まり、油分離器1A又は油分離器1Bの油分離効率が低下する。特に、ガス流出管7の外壁と上昇旋回流抑制機構112Aとの間に隙間S1が形成されている場合には、溜まった油の一部がガスの流れに引き剥がされて、油滴となる。そして、油滴の一部が重力あるいはガス流出管7に近い側の旋回下降流により、流入管上部11から旋回部9へ流出するため、容器2の内壁と上昇旋回流抑制機構112Bとの間に隙間S2が形成されている場合と比べて、油分離効率が低下する。そのため、ガス流出管7の外壁と上昇旋回流抑制機構112Aとの間の隙間S1は、油分離器1Aの使用温度範囲において、ガス流出管7の外壁と上昇旋回流抑制機構112Aとが熱膨張または熱収縮によって接触しない範囲で、可能な限り小さくするとよい。また、容器2の内壁と上昇旋回流抑制機構112Bとの間の隙間S2は、油分離器1Bの使用温度範囲において、容器2の内壁と上昇旋回流抑制機構112Bとが熱膨張または熱収縮によって接触しない範囲で、可能な限り小さくするとよい。なお、容器2の内壁と上昇旋回流抑制機構112Bとの間に隙間S2が形成されている方が、上昇旋回流抑制機構112Aとガス流出管7の外壁との間に隙間S1が形成された場合よりも油分離効率を高くすることができる。
ガス流出管7の外壁と上昇旋回流抑制機構112Aとの間の隙間S1、及び、容器2の内壁と上昇旋回流抑制機構112Bとの間の隙間S2の様な隙間がなく、上昇旋回流抑制機構が伸縮性の低い材料で構成される油分離器では、使用温度範囲において、熱膨張または熱収縮により、容器と上昇旋回流抑制機構又はガス流出管と上昇旋回流抑制機構とが接触して容器またはガス流出管に強い応力が掛かかる。そのため、容器またはガス流出管は、使用温度範囲において強い応力を繰り返し受けることで、短期間にどちらかが破壊に至る場合がある。また、容器は繰り返し応力により破壊に至らなくても、容器が変形することで一部に応力が集中する場合が有り、高いガス圧力を受けて、応力集中部から破壊に至る場合もある。
実施の形態2に係る油分離器1A又は油分離器1Bは、ガス流出管7の外壁と上昇旋回流抑制機構112Aとの間の隙間S1、又は、容器2の内壁と上昇旋回流抑制機構112Bとの間に隙間S2が形成されている。そのため、ガス流出管7の外壁と上昇旋回流抑制機構112A、又は、容器2の内壁と上昇旋回流抑制機構112Bが、熱膨張または熱収縮によって接触せず、容器2とガス流出管7とに強い応力が掛かることはない。実施の形態2に係る油分離器1A又は油分離器1Bは、上昇旋回流抑制機構112A又は上昇旋回流抑制機構112Bを伸縮性のある材料で構成しなくても、実施の形態1に係る油分離器1示している伸縮性のある上昇旋回流抑制機構12を備えた油分離器1と同様の効果を得ることができる。そのため、本発明の実施の形態2に係る油分離器1A又は油分離器1Bは、上昇旋回流抑制機構112A及び上昇旋回流抑制機構112Bを構成する材料の選択幅が広がり、より生産性を高く、安価に構成することができる。
実施の形態3.
図9は、本発明の実施の形態3に係る油分離器の上昇旋回流抑制機構を示す縦断面図である。図10は、本発明の実施の形態3に係る油分離器の他の上昇旋回流抑制機構を示す縦断面図である。図11は、本発明の実施の形態3に係る油分離器の他の上昇旋回流抑制機構を示す縦断面図である。図12は、本発明の実施の形態3に係る油分離器の他の上昇旋回流抑制機構を示す縦断面図である。図13は、本発明の実施の形態3に係る油分離器の他の上昇旋回流抑制機構を示す斜視図である。図1〜図8の油分離器と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。実施の形態3に係る油分離器1C、油分離器1D、油分離器1E、油分離器1F、油分離器1Gは、上昇旋回流抑制機構212A、上昇旋回流抑制機構212B、上昇旋回流抑制機構212C、上昇旋回流抑制機構212Dのそれぞれが、流入管6の上部を覆い、流入管上部11の一部分を充填するように設けられている。上昇旋回流抑制機構212A、上昇旋回流抑制機構212B、上昇旋回流抑制機構212C、上昇旋回流抑制機構212Dは、容器2とガス流出管7とに当接されて配置され、または、容器2とガス流出管7とのいずれか一方に当接されて配置されている。なお、以下の説明では、上昇旋回流抑制機構212A、上昇旋回流抑制機構212B、上昇旋回流抑制機構212C、上昇旋回流抑制機構212D、上昇旋回流抑制機構212Eの総称を上昇旋回流抑制機構212と称して説明する。
上昇旋回流抑制機構212は、上下方向に連通する間隙を形成する壁部212Hを有し、流入管6の上部において、シェル3と上部鏡板4とから構成される容器2の内壁と、ガス流出管7の外壁との間の空間に配置され、冷媒ガス及び油が混合した混合流体の流れを妨げることで流入管6の上部に形成される上昇旋回流を抑制するものである。上昇旋回流抑制機構212を構成する壁部212Hは、例えば、伸縮性の低い樹脂あるいはゴム、金属等の伸縮性の低い材料で構成されているが、樹脂あるいはゴム、繊維状の金属などの、伸縮性のある材料で構成されてもよい。上昇旋回流抑制機構212は、ガスを流通させられるように、内部に間隙が設けられていることが望ましい。上昇旋回流抑制機構212が有する間隙を形成する壁部212Hは、例えば、連続気泡型の樹脂あるいは連続気泡型のゴムから構成されており、あるいは、繊維状の金属から構成されている。上下方向に連通する間隙は、上昇旋回流抑制機構212の上端から下端までが1つの間隙で形成されていてもよく、連続気泡構造のように複数の間隙が互いに結合して形成されていてもよい。また、上下方向に連通するとは、間隙が上昇旋回流抑制機構212の上端から下端に連通していればよく、鉛直方向だけではなく、一部に水平方向あるいは斜め方向に連通する部分があってもよい。
実施の形態3に係る油分離器1C、油分離器1D、油分離器1E、油分離器1F、油分離器1Gは、流入管上部11に上部空間13を形成している。上部空間13は、流入管上部11における上昇旋回流抑制機構212とその下側を除いた空間であり、換言すれば、上昇旋回流抑制機構212と、容器2の内壁と、ガス流出管7の外壁との間に形成された空間である。上部空間13は、上昇旋回流抑制機構212を構成する壁部212Hによって形成された間隙、上昇旋回流抑制機構212と容器2またはガス流出管7との隙間などを介して、旋回部9と流路が繋がっている。なお、上部空間13は、以下に説明する、上部空間13A、上部空間13B、上部空間13C、上部空間13D、上部空間13Eの総称である。
図9に示す例では、上昇旋回流抑制機構212Aは、流入管6の上部を覆い、シェル3に囲まれた流入管上部11の一部のみを充填するようにシェル3と当接されて配置されている。この例では、流入管上部11において、上昇旋回流抑制機構212Aと上部鏡板4とに囲まれた空間が上部空間13Aを構成している。上昇旋回流抑制機構212Aを構成する壁部212Hが、伸縮性の低い材料で構成される場合には、油分離器1Cは、図9に示すように、上昇旋回流抑制機構212Aが、シェル3と当接されて配置され、上昇旋回流抑制機構212Aとガス流出管7との間に隙間S3が設けられるとよい。上部空間13Aは、ガス流出管7と上昇旋回流抑制機構212Aとの間の隙間S3を介して、旋回部9と連通している。
図10に示す例では、上昇旋回流抑制機構212Bは、流入管6の上部を覆い、シェル3に囲まれた流入管上部11の一部のみを充填するようにガス流出管7と当接されて配置されている。この例では、流入管上部11において、上昇旋回流抑制機構212Bと上部鏡板4に囲まれた空間が上部空間13Bを構成している。上昇旋回流抑制機構212Bを構成する壁部212Hが、伸縮性の低い材料で構成される場合には、油分離器1Dは、図10に示すように、上昇旋回流抑制機構212Bが、ガス流出管7と当接されて配置され、上昇旋回流抑制機構212Bとシェル3との間に隙間S4が設けられるとよい。上部空間13Bは、シェル3と上昇旋回流抑制機構12との間の隙間S4を介して、旋回部9と連通している。
図11に示す例では、流入管上部11に配置された上昇旋回流抑制機構212Cは、流入管上部11と旋回部9とを仕切るように、容器2の水平方向に板状に延設されている。この例では、流入管上部11において、上昇旋回流抑制機構212Cより上部の空間が上部空間13Cを構成している。上昇旋回流抑制機構212Cを構成する壁部212Hが、伸縮性の低い材料で構成される場合には、油分離器1Eは、図11に示すように、上昇旋回流抑制機構212Cが、シェル3と当接されて配置され、上昇旋回流抑制機構212Cとガス流出管7との間に隙間S5が設けられるとよい。上部空間13Cは、ガス流出管7と上昇旋回流抑制機構212Cとの間の隙間S5を介して、旋回部9と連通している。
図12に示す例では、流入管上部11に配置された上昇旋回流抑制機構212Dは、流入管上部11と旋回部9とを仕切るように、容器2の水平方向に板状に延設されている。この例では、流入管上部11において、上昇旋回流抑制機構212Dより上部の空間が上部空間13Dを構成している。上昇旋回流抑制機構212Dを構成する壁部212Hが、伸縮性の低い材料で構成される場合には、油分離器1Fは、図12に示すように、上昇旋回流抑制機構212Dが、ガス流出管7と当接されて配置され、上昇旋回流抑制機構212Dとシェル3との間に隙間S6が設けられるとよい。上部空間13Dは、シェル3と上昇旋回流抑制機構212Dとの間の隙間S6を介して、旋回部9と連通している。
図13に示す例では、流入管上部11に配置された上昇旋回流抑制機構212Eは、流入管上部11と旋回部9とを仕切るように、容器2の水平方向に板状に延設されている。この例では、流入管上部11において、上昇旋回流抑制機構212Eより上部の空間が上部空間13Eを構成している。油分離器1Gは、上昇旋回流抑制機構212Eに形成された通気孔14が、上昇旋回流抑制機構212Eの上下の空間を連通させている。上昇旋回流抑制機構212Eを構成する壁部212Hが伸縮性のある材料で構成される場合には、油分離器1Gは、図13に示すように、上昇旋回流抑制機構212Eに上下方向に貫通し、上部空間13Eと旋回部9とを連通する通気孔14を設けることで、上昇旋回流抑制機構212Eをシェル3およびガス流出管7と、隙間なく当接しても良い。なお、油分離器1Gは、上昇旋回流抑制機構212Eを構成する壁部212Hが、伸縮性があり、連続気泡型の樹脂あるいは連続気泡型のゴム、繊維状の金属など、内部の間隙にガスを流通することができる材料であれば、上昇旋回流抑制機構12に通気孔14を設けずに、上昇旋回流抑制機構212Eがシェル3およびガス流出管7と、隙間なく当接しても良い。
油分離器1C、油分離器1D、油分離器1E、油分離器1F、油分離器1Gにおいて、上部空間13を密閉せず、旋回部9と連通させる理由を説明する。容器2において、上部空間13が密閉されている場合には、上部空間13内は製造時に入り込んだガスで満たされている。そのため、上部空間13に面するシェル3、ガス流出管7、上昇旋回流抑制機構には、このガスによる圧力が掛かる。この圧力は上部空間13の温度により変化するが、旋回部9の圧力のように流入管6から流入する流体の流入条件によって大きく変化することはない。しかし、上部空間13が密閉されている場合、上昇旋回流抑制機構212には、上部空間13と旋回部9との圧力差により、強い応力が掛かり、あるいは、繰返し応力が掛かる場合がある。特に、冷凍サイクル装置100に用いられる油分離器1などには、高圧な冷媒が用いられる場合があるため、上昇旋回流抑制機構212には、より強い応力が掛かりやすくなる。そのため、上部空間13が密閉されている場合、上昇旋回流抑制機構212の厚さが薄い場合など、強度が不十分な場合では、上部空間13と旋回部9との圧力差により生じる応力により、上昇旋回流抑制機構212は破損する場合がある。また、上昇旋回流抑制機構212が充分な強度を有していても、上昇旋回流抑制機構212と容器2、または、上昇旋回流抑制機構212とガス流出管7との接続が弱ければ、当接部に強い応力が掛かって破損する場合がある。さらに、上昇旋回流抑制機構212、並びに、上昇旋回流抑制機構212と容器2又はガス流出管7との当接部が破損すると、上部空間13内のガスが旋回部9に流入する。この際、圧縮機101から油分離器1に流入するガスの成分と上部空間13内のガスの成分とが異なる場合には、油分離器1を搭載する装置、例えば冷凍サイクル装置100が故障する場合がある。
実施の形態3に係る油分離器1C、油分離器1D、油分離器1E、油分離器1F、油分離器1Gでは上部空間13を密閉せず、上部空間13と旋回部9とを連通させることで、製造時に上部空間13に流入したガスを取り除きやすくなる。そのため、上昇旋回流抑制機構212と、上昇旋回流抑制機構212と容器2又はガス流出管7との当接部とは、破損しにくくなる。また、油分離器1C、油分離器1D、油分離器1E、油分離器1F、油分離器1Gは、製造時に上部空間13に流入したガスを取り除きやすくなることで、油分離器1C、油分離器1D、油分離器1E、油分離器1F、油分離器1Gを搭載する装置の故障も防止することができる。
実施の形態3に係る油分離器1C、油分離器1D、油分離器1E、油分離器1F、油分離器1Gでは、上部空間13があることで、上昇旋回流抑制機構212は、流入管上部11を充填するための容積を必要とせず、実施の形態1又は実施の形態2に係る油分離器1、油分離器1A、油分離器1Bで示した構成と比べて、油分離器1C、油分離器1D、油分離器1E、油分離器1F、油分離器1Gの重量を軽くできるとともに、ほぼ同等の油を分離させる性能の向上を得ることができる。
また、図9と図10に示す、油分離器1C又は油分離器1Dでは、上部鏡板4の内壁構造に合わせて上昇旋回流抑制機構212A及び上昇旋回流抑制機構212Bを構成する必要が無い。そのため、実施の形態1に係る油分離器1の上昇旋回流抑制機構12又は実施の形態2に係る油分離器1A及び油分離器1Bの上昇旋回流抑制機構112に示した構成と比べて、上昇旋回流抑制機構212A及び上昇旋回流抑制機構212Bの加工が容易になるとともに、ほぼ同等の油を分離させる性能の向上を得ることができる。
また、図11、図12、図13に示す、油分離器1E、油分離器1F、油分離器1Gでは、上昇旋回流抑制機構212C、上昇旋回流抑制機構212D、上昇旋回流抑制機構212Eが板状に構成されることで、さらに油分離器1C、油分離器1D、油分離器1E、油分離器1F、油分離器1Gの重量を軽くすることができる。
実施の形態4.
図14は、本発明の実施の形態4に係る油分離器の概略構成を示す斜視図である。図15は、本発明の実施の形態4に係る油分離器の他の上昇旋回流抑制機構を示す縦断面図である。図16は、本発明の実施の形態4に係る油分離器の他の上昇旋回流抑制機構を示す縦断面図である。図1〜図13の油分離器と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。なお、以下の説明では、図14、図15、図16に示す、上昇旋回流抑制機構312A、上昇旋回流抑制機構312B、上昇旋回流抑制機構312Cの総称を上昇旋回流抑制機構312と称して説明する。
上昇旋回流抑制機構312は、上下方向に連通する間隙を形成する壁部312Hを有し、流入管6の上部において、シェル3と上部鏡板4とから構成される容器2の内壁と、ガス流出管7の外壁との間の空間に配置され、冷媒ガス及び油が混合した混合流体の流れを妨げることで流入管6の上部に形成される上昇旋回流を抑制するものである。実施の形態4に係る油分離器1H、油分離器1I、油分離器1Jは、上昇旋回流抑制機構312を構成する壁部312Hが、鉛直方向かつ容器2の中心軸Oに対して放射状に延びる少なくとも2つ以上の複数の板により構成されている。また、壁部312Hを構成する複数の板同士の周方向の間には上下方向に連通する間隙が設けられている。図14に示すように、油分離器1Hは、壁部312Hを構成する複数の板がシェル3とガス流出管7の中心軸Oに対し、放射状になるように、シェル3またはガス流出管7と当接されて配置される構成である。あるいは、上昇旋回流抑制機構312Aを構成する壁部312Hは、伸縮性のある材料で構成されており、上昇旋回流抑制機構312を構成する壁部312Hは、シェル3とガス流出管7との両方に当接されている。
上昇旋回流抑制機構312を構成する壁部312Hが、伸縮性の低い材料で構成されていれば、図15に示すように、油分離器1Iは、上昇旋回流抑制機構312Bを構成する壁部312Hがシェル3と当接して配置される。また、上昇旋回流抑制機構312Bを構成する壁部312Hが、伸縮性が低い材料で構成される場合は、油分離器1Iは、図15に示すように、上昇旋回流抑制機構312Bとガス流出管7との間に隙間S7が設けられるとよい。
あるいは、上昇旋回流抑制機構312を構成する壁部312Hが、伸縮性の低い材料で構成されていれば、図16に示すように、油分離器1Jは、上昇旋回流抑制機構312Cがガス流出管7と当接して配置される。また、上昇旋回流抑制機構312Cを構成する壁部312Hが、伸縮性が低い材料で構成される場合は、油分離器1Jは、図16に示すように、上昇旋回流抑制機構312Cとシェル3との間に隙間S8が設けられるとよい。
以上のように、本発明の実施の形態4に係る油分離器1H、油分離器1I、油分離器1Jでは、流入管上部11において、上昇旋回流抑制機構312を構成する壁部312Hは、放射状に配置された複数の板により構成されている。そのため、旋回する冷媒ガスの流れが板によって遮断されるため、冷媒ガスの流速が遅くなり、冷媒ガスが重力に打ち勝って油滴を上部に持ち上げる力が弱くなる。冷媒ガスが油滴を持ち上げる力が弱くなると、流入管上部11に溜まる油量が少なくなるため、実施の形態1に係る油分離器1で示したように細かい油滴が発生しにくくなり、油を分離する効率が向上する。
また、本発明の実施の形態4に係る油分離器1H、油分離器1I、油分離器1Jでも、実施の形態3に係る油分離器1C〜油分離器1Gと同様に、上昇旋回流抑制機構312は、流入管上部11に充填される容積を必要としない。そのため、油分離器1H、油分離器1I、油分離器1Jは、実施の形態1又は実施の形態2に係る油分離器1、油分離器1A、油分離器1Bの構成と比べて、油分離器1H、油分離器1I、油分離器1Jの重量を軽くすることができる。
また、本発明の実施の形態4に係る油分離器1H、油分離器1I、油分離器1Jは、上昇旋回流抑制機構312を構成する壁部312Hが、放射状に配置された複数の板により構成されている。そのため、油分離器1H、油分離器1I、油分離器1Jまたは冷凍サイクル装置100の製造時、冷凍サイクル装置100の施工時、修理時、メンテナンス時などにおいて、油分離器1H、油分離器1I、油分離器1Jまたは冷凍サイクル装置100は、洗浄液を用いて洗浄を終えた後、洗浄液を回収しやすい構造となっている。
また、本発明の実施の形態4に係る油分離器1H、油分離器1I、油分離器1Jは、上昇旋回流抑制機構312を構成する壁部312Hが、放射状に配置された複数の板により構成されている。そのため、油分離器1H、油分離器1I、油分離器1Jは、洗浄液が上昇旋回流抑制機構312の上部、あるいは、隙間等に溜まりにくく、重力落下で旋回部9に落ちやすい構造となっている。その結果、本発明の実施の形態4に係る油分離器1H、油分離器1I、油分離器1Jは、実施の形態1〜3に係る油分離器1〜油分離器1Gと比べ、洗浄液の回収時間を短縮でき、洗浄液が流入管上部11に残存することによる、冷凍サイクル装置100の使用時における不具合を防止することができる。
以上説明したように、実施の形態1〜4に係る油分離器1〜油分離器1Jは、流入管上部11に上昇旋回流抑制機構12、上昇旋回流抑制機構112、上昇旋回流抑制機構212、上昇旋回流抑制機構312を設けることで、流入管上部11における冷媒ガスの上昇旋回流が抑制されるため、流入管上部11に油が旋回しながら溜まりにくくなる。油分離器1〜油分離器1Jは、旋回しながら溜まる油量が減少するため、細かい油滴が発生しにくくなり、高い油分離効率を得ることができる。
図17は、本発明の実施の形態1〜3の変形例に係る油分離器の上昇旋回流抑制機構を示す縦断面図である。図18は、本発明の実施の形態3の変形例に係る油分離器の上昇旋回流抑制機構を示す縦断面図である。図19は、本発明の実施の形態4の変形例に係る油分離器の上昇旋回流抑制機構を示す縦断面図である。実施の形態1〜4に係る油分離器1〜油分離器1Jは、シェル3と上部鏡板4とが一体に構成された例を説明しているが、図17の油分離器1K、図18の油分離器1L、図19の油分離器1Mに示すように、油分離器は、シェル3と上部鏡板4とが一体ではなく、例えば、円筒状のシェル3の上部に上部鏡板4を溶接により接続する構成でも良い。なお、図17の油分離器1K、図18の油分離器1L、図19の油分離器1Mは、上昇旋回流抑制機構212、上昇旋回流抑制機構312がガス流出管7と当接し、容器2との間に隙間を空ける例を示しているが、上昇旋回流抑制機構212、上昇旋回流抑制機構312が容器2と当接し、ガス流出管7との間に隙間を空ける構成でも良い。または、上昇旋回流抑制機構212、上昇旋回流抑制機構312が伸縮性のある材料で構成された場合、上昇旋回流抑制機構212、上昇旋回流抑制機構312がガス流出管7と容器2とに当接してもよく、図13に示すように通気孔14を設けてもよい。
以上のように、油分離器1K、油分離器1L、油分離器1Mは、流入管6より上部のシェル3と上部鏡板4の構造、上部鏡板4とシェル3との接続について、流入管上部11に溜まる油量を少なくするための特別な制限を設ける必要が無く、加工設備や使用条件に合わせた構造を選択することが可能である。そのため、油分離器1K、油分離器1L、油分離器1Mは、強度が必要な高圧ガスにも使用することが可能である。また、油分離器1K、油分離器1L、油分離器1Mは、細かに寸法を調整する高度な加工設備を用いる必要が無いため、高い油分離効率を有しているにもかかわらず、安価で生産性が高くなる。
図20は、本発明の実施の形態1〜2の変形例に係る油分離器の上昇旋回流抑制機構を示す縦断面図である。図21は、本発明の実施の形態3の変形例に係る油分離器の上昇旋回流抑制機構を示す縦断面図である。図22は、本発明の実施の形態4の変形例に係る油分離器の上昇旋回流抑制機構を示す縦断面図である。実施の形態1〜4に係る油分離器1〜油分離器1Jは、流入管6を構成する配管の一部が容器2の内部に配置されるように、流入管6がシェル3に差し込まれて接続される構成の例を説明している。図20の油分離器1N、図21の油分離器1O、図22の油分離器1Pに示すように、流入管6を構成する配管の一部が容器2の内部に配置されず、流入管6の流入口6bがシェル3の周壁に形成されるように、流入管6とシェル3とを接続する構成にしても良い。この構成でも、流入管6を構成する配管の先端部6aが容器2の内部に配置されるように、流入管6がシェル3に差し込まれて接続される構成と変わらず、油分離器1N、油分離器1O、油分離器1Pは、高い油分離効率を得ることができる。
実施の形態1〜3の変形例に係る構成では、図20に示すように、油分離器1Nは、上昇旋回流抑制機構12が、シェル3に当接されて配置されると共に、上昇旋回流抑制機構12を構成する壁部12aの一部が、流入管6の上部の一部より低い位置に配置され旋回部9にまで延設されてもよい。また、図21に示すように、油分離器1Oは、容器2内に上部空間13が構成されている場合は、上部空間13が流入管上部11にある構成であれば、上昇旋回流抑制機構212が、シェル3に当接されて配置されると共に、上昇旋回流抑制機構212を構成する壁部212Hの一部が、流入管6の上部の一部より低い位置に配置され旋回部9にまで延設されてもよい。
例えば、上昇旋回流抑制機構12又は上昇旋回流抑制機構212と、シェル3とが当接されておらず、上昇旋回流抑制機構12又は上昇旋回流抑制機構212とシェル3との間に隙間が存在する場合は、上昇旋回流抑制機構12又は上昇旋回流抑制機構212の一部が旋回部9にまで延設されていると、流入管6内の上部を通って容器2の内部に流入した冷媒ガスと油が、上昇旋回流抑制機構12又は上昇旋回流抑制機構212と、シェル3との間の隙間を通って旋回部9に流れる。そのため、旋回部9における冷媒ガスと油の旋回流れが乱れてしまい、油分離器の油分離効率が低下する。
上昇旋回流抑制機構12又は上昇旋回流抑制機構212が、シェル3に当接されている構成であれば、上昇旋回流抑制機構12又は上昇旋回流抑制機構212の一部が、流入管6の上部の一部より低い位置に配置されて旋回部9にまで延設されている構成でも、流入管6内の上部を通って容器2内部に流入した冷媒ガスと油は、そのまま旋回部9に流れる。そのため、油分離器1N又は油分離器1Oは、流入管6を構成する配管の先端部6aが容器2の内部に配置されるように、流入管6がシェル3に差し込まれて接続される構成と変わらず、高い油分離効率を得ることができる。
例えば、油分離器内に上部空間13が形成されており、上部空間13の一部が流入管上部11より下部にまで形成されて流入管6と上部空間13の流路が直に繋がる場合には、流入管6から上部空間13に油が流入して溜まる。図21に示す油分離器1Oのように、上部空間13が流入管上部11にある構成であれば、流入管6と上部空間13の流路とが直に繋がらず、上部空間13に油が流入して溜まらない。そのため、油分離器1Oは、圧縮機101内部の油が枯渇しにくくなり、故障しにくい冷凍サイクル装置100を提供することができる。
図22に示すように、油分離器1Pは、上昇旋回流抑制機構312が実施の形態4に係る油分離器1H〜1Jと同様に、壁部312Hを構成する複数の板がシェル3とガス流出管7の中心軸Oに対し、放射状に配置されている。また、上昇旋回流抑制機構312がシェル3またはガス流出管7と当接される構成である。油分離器1Pは、流入管6を構成する配管の先端部6aが容器2内部に入らず、流入管6の流入口6bがシェル3の周壁に形成されるように、流入管6とシェル3を接続する構成である。油分離器1Pは、上昇旋回流抑制機構312が、旋回部9に延設されず、流入管上部11にあると良い。例えば、上昇旋回流抑制機構312の一部が、旋回部9に延設されると、流入管6から容器2の内部に流入した直後の冷媒ガスの強い旋回流が上昇旋回流抑制機構312を構成する壁部312Hに衝突して、旋回流が乱れるため油分離効率が低下する場合がある。油分離器1Pは、上昇旋回流抑制機構312が、旋回部9に延設されておらず、流入管上部11にある構成であり、流入管6から容器2の内部に流入した直後の冷媒ガスの強い旋回流が乱れることはなく、流入管6がシェル3に差し込まれて接続される構成と変わらず、高い油分離効率を得ることができる。
実施の形態5.
図23は、本発明の実施の形態5に係る油分離器の概略構成を示す斜視図である。図24は、本発明の実施の形態5に係る油分離器の上昇旋回流抑制機構を示す横断面図である。図25は、本発明の実施の形態5に係る油分離器の他の概略構成を示す斜視図である。図26は、本発明の実施の形態5に係る油分離器の他の上昇旋回流抑制機構を示す横断面図である。図27は、本発明の実施の形態5に係る油分離器の他の上昇旋回流抑制機構を示す縦断面図である。図28は、図27のリブを示す横断面図である。図29は、本発明の実施の形態5に係る油分離器の他の上昇旋回流抑制機構を示す縦断面図である。図30は、図29のリブを示す横断面図である。図31は、上昇旋回流抑制機構を備えていない油分離器の上部および流入管と、その油と冷媒の流れの概略を示す横断面図である。図1〜図22の油分離器と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。なお、以下の説明では、図23、図24、図25、図26、図27、図29に示す、上昇旋回流抑制機構412A、上昇旋回流抑制機構412B、上昇旋回流抑制機構412Cの総称を上昇旋回流抑制機構412と称して説明する。また、壁部412Ha、壁部412Hb、壁部412Hcの総称を壁部412Hと称して説明する。
上昇旋回流抑制機構412は、上下方向に連通する間隙を形成する壁部412Hを有し、流入管6の上部において、シェル3と上部鏡板4とから構成される容器2の内壁と、ガス流出管7の外壁との間の空間に配置され、冷媒ガス及び油が混合した混合流体の流れを妨げることで流入管6の上部に形成される上昇旋回流を抑制するものである。油分離器1Qは、図23及び図24に示すように、上昇旋回流抑制機構412Aを構成する壁部412Haが、少なくとも2つ以上の複数の板により構成されており、各板は、鉛直方向に延設され、かつ、容器2の中心軸Oに対して径方向内側から外側にかけて冷媒の旋回方向に傾いて設けられている。または、油分離器1Qは、図25及び図26に示すように、上昇旋回流抑制機構412Aを構成する壁部412Haが、少なくとも2つ以上の複数の板により構成されており、各板は、鉛直方向に延設され、かつ、容器2の中心軸Oに対して径方向内側から外側にかけて冷媒の旋回方向に曲折して設けられている。図23及び図24に示すように、壁部412Haは、容器2内において、ガス流出管7の外周壁の接線方向と平行な方向に延設された少なくとも2つ以上の複数の板により構成されている。そして、複数の壁部412Ha同士の関係は、ある1つの壁部412Haの延設方向と、容器2の周方向に配置された隣接する壁部412Haの延設方向とが直角の関係となる。また、壁部412Haを構成する複数の板同士の周方向の間には上下方向に連通する間隙が設けられている。図23又は図25に示すように、油分離器1Qは、壁部412Haを構成する複数の板がシェル3とガス流出管7の中心軸Oに対し、径方向内側から外側にかけて旋回方向に傾いて設けられ、または、曲折して設けられ、シェル3またはガス流出管7と当接されて配置される構成である。あるいは、上昇旋回流抑制機構412Aを構成する壁部412Haは、伸縮性のある材料で構成されており、上昇旋回流抑制機構412を構成する壁部412Haはシェル3とガス流出管7との両方に当接されている。
また、図27及び図28に示すように、実施の形態5に係る油分離器1Rの上昇旋回流抑制機構412Bは、上昇旋回流抑制機構412Bを構成する壁部412Hbの下部に、少なくとも2つ以上の複数のリブ412Baが設けられている。リブ412Baは、鉛直方向に延設され、かつ、容器2の中心軸Oに対して径方向内側から外側にかけて冷媒の旋回方向に傾いて設けられている。または、リブ412Baは、鉛直方向に延設され、かつ、容器2の中心軸Oに対して径方向内側から外側にかけて冷媒の旋回方向に曲折して設けられている。リブ412Baは、図23及び図24に示す上昇旋回流抑制機構412Aの壁部412Haと同様に、容器2内において、ガス流出管7の外周壁の接線方向と平行な方向に延設されるように設けられている。そして、複数のリブ412Ba同士の関係は、ある1つのリブ412Baの延設方向と、容器2の周方向に配置された隣接するリブ412Baの延設方向とが直角の関係となる。
なお、図27に示す上昇旋回流抑制機構412Bを構成する壁部412Hbは、伸縮性のある材料で構成されており、上昇旋回流抑制機構412はシェル3とガス流出管7との両方に当接されている。すなわち、上昇旋回流抑制機構412Bは、上下方向に連通する間隙を形成する壁部412Hbを有し、流入管6の上部において、シェル3と上部鏡板4とから構成される容器2の内壁と、ガス流出管7の外壁との間の空間に配置され、冷媒ガス及び油が混合した混合流体の流れを妨げることで流入管6の上部に形成される上昇旋回流を抑制する。上昇旋回流抑制機構412Bを構成する壁部412Hbは、例えば樹脂あるいはゴム、繊維状の金属などの、伸縮性のある材料で構成されることが望ましい。上昇旋回流抑制機構412Bは、ガスを流通させられるように、内部に間隙が設けられていることが望ましい。上昇旋回流抑制機構412Bが有する間隙を形成する壁部412Hbは、例えば、連続気泡型の樹脂あるいは連続気泡型のゴムから構成されており、あるいは、繊維状の金属から構成されている。上下方向に連通する間隙は、上昇旋回流抑制機構412Bの上端から下端までが1つの間隙として形成されていてもよく、連続気泡構造のように複数の間隙が互いに結合して形成されていてもよい。また、上下方向に連通するとは、間隙が上昇旋回流抑制機構412Bの上端から下端に連通していればよく、鉛直方向だけではなく、一部に水平方向あるいは斜め方向に連通する部分があってもよい。
また、図29及び図30に示すように、実施の形態5に係る油分離器1Sの上昇旋回流抑制機構412Cは、上昇旋回流抑制機構412Cを構成する板状の壁部412Hcの下部に、少なくとも2つ以上の複数のリブ412Caが設けられている。リブ412Caは、鉛直方向かつ容器2の中心軸Oに対して径方向内側から外側にかけて冷媒の旋回方向に傾くまたは曲がるように延設されている。リブ412Caは、図23及び図24に示す上昇旋回流抑制機構412Aの壁部412Haと同様に、容器2内において、ガス流出管7の外周壁の接線方向と平行な方向に延設されるように設けられている。そして、複数のリブ412Ca同士の関係は、ある1つのリブ412Caの延設方向と、容器2の周方向に配置された隣接するリブ412Caの延設方向とが直角の関係となる。
なお、図29に示す上昇旋回流抑制機構412Cを構成する壁部412Hcは、伸縮性のある材料で構成されており、上昇旋回流抑制機構412はシェル3とガス流出管7との両方に当接されている。すなわち、上昇旋回流抑制機構412Cは、上下方向に連通する間隙を形成する壁部412Hcを有し、流入管6の上部において、シェル3と上部鏡板4とから構成される容器2の内壁と、ガス流出管7の外壁との間の空間に配置され、冷媒ガス及び油が混合した混合流体の流れを妨げることで流入管6の上部に形成される上昇旋回流を抑制する。上昇旋回流抑制機構412Cを構成する壁部412Hcは、例えば樹脂あるいはゴム、繊維状の金属などの、伸縮性のある材料で構成されることが望ましい。上昇旋回流抑制機構412Cは、ガスを流通させられるように、内部に間隙が設けられていることが望ましい。上昇旋回流抑制機構412Cが有する間隙を形成する壁部412Hcは、例えば、連続気泡型の樹脂あるいは連続気泡型のゴムから構成されており、あるいは、繊維状の金属から構成されている。上下方向に連通する間隙は、上昇旋回流抑制機構412Cの上端から下端までが1つの間隙として形成されていてもよく、連続気泡構造のように複数の間隙が互いに結合して形成されていてもよい。また、上下方向に連通するとは、間隙が上昇旋回流抑制機構412Cの上端から下端に連通していればよく、鉛直方向だけではなく、一部に水平方向あるいは斜め方向に連通する部分があってもよい。
なお、上昇旋回流抑制機構412を構成する壁部412Hが、伸縮性の低い材料で構成されていれば、油分離器1Q、油分離器1R、油分離器1Sは、上昇旋回流抑制機構412を構成する壁部412Hがシェル3と当接して配置される。そして、上昇旋回流抑制機構412を構成する壁部412Hが、伸縮性が低い材料で構成される場合には、油分離器1Q、油分離器1R、油分離器1Sは、上昇旋回流抑制機構412を構成する壁部412Hとガス流出管7との間に図15に示した隙間S7が設けられるとよい。
あるいは、上昇旋回流抑制機構412を構成する壁部412Hが、伸縮性の低い材料で構成されていれば、油分離器1Q、油分離器1R、油分離器1Sは、上昇旋回流抑制機構412を構成する壁部412Hがガス流出管7と当接して配置される。そして、上昇旋回流抑制機構412を構成する壁部412Hが、伸縮性が低い材料で構成される場合には、油分離器1Q、油分離器1R、油分離器1Sは、上昇旋回流抑制機構412を構成する壁部412Hとシェル3との間に図16に示した隙間S8が設けられるとよい。
図4に示したように、油分離器51が、上昇旋回流抑制機構12を備えていない場合、流入管6から旋回部9に開放されたガスと油の一部は、下方に向かわず、旋回しながら上方の流入管上部11へ流れる。図4の矢印を含む実線と点線に示すように、流入管上部11において、ガスはシェル3に近い側で旋回しながら上昇する流れになり、ガス流出管7に近い側では旋回しながら下降する流れになる。このガスの旋回流によって、上部鏡板4の面上に付着している油は、図31に示すように、旋回しながら、径方向内側のガス流出管7に向けて流れる。この径方向内側のガス流出管7に向けて流れる油は、一部がガスの流れによって引き剥がされて、油滴となり、さらにその油滴の一部が重力あるいはガス流出管7に近い側の旋回下降流により、流入管上部11から旋回部9へ流出する。
同様に、実施の形態1〜4に係る油分離器1〜油分離器1Pにおいて上昇旋回流抑制機構に付着した油は旋回しながら、径方向内側のガス流出管7に向けて流れる。そして、ガス流出管7に向けて流れる油の一部がガスの流れに引き剥がされて、油滴となり、さらにその油滴の一部が重力あるいはガス流出管7に近い側の旋回下降流により、流入管上部11から旋回部9へ流出する。
実施の形態5に係る油分離器1Qは、上昇旋回流抑制機構412Aを構成する壁部412Haが、鉛直方向かつ容器2の中心軸に対して径方向内側から外側にかけて旋回方向に傾くまたは曲がるように延びる少なくとも2つ以上の複数の板により構成されている。すなわち、壁部412Haは、容器2内において、ガス流出管7の外周壁の接線方向と平行な方向に延設された少なくとも2つ以上の複数の板により構成されている。そのため、上部鏡板4または上昇旋回流抑制機構412A近傍における冷媒の旋回流の向きが径方向内側から外側に向くようになる。その結果、上部鏡板4または上昇旋回流抑制機構412Aの面上に付着した油は径方向内側から外側のシェル3に向けて流れ、一部がガスの流れに引き剥がされて、油滴となり、さらにその油滴の一部が重力あるいはシェル3に近い側の旋回下降流により、流入管上部11から旋回部9へと流出する。
また、油分離器1Rは、上昇旋回流抑制機構412Bを構成する壁部412Hbの下部に、鉛直方向かつ容器2の中心軸に対して径方向内側から外側にかけて旋回方向に傾くまたは曲がるように延びる少なくとも2つ以上の複数のリブ412Baを備えている。すなわち、リブ412Baは、容器2内において、ガス流出管7の外周壁の接線方向と平行な方向に延設されるように設けられている。そのため、上部鏡板4または上昇旋回流抑制機構412B近傍における冷媒の旋回流の向きが径方向内側から外側に向くようになる。その結果、上部鏡板4または上昇旋回流抑制機構412Bの面上に付着した油は径方向内側から外側のシェル3に向けて流れ、一部がガスの流れに引き剥がされて、油滴となり、さらにその油滴の一部が重力あるいはシェル3に近い側の旋回下降流により、流入管上部11から旋回部9へ流出する。
また、油分離器1Sは、上昇旋回流抑制機構412Cを構成する壁部412Hcの下部に、鉛直方向かつ容器2の中心軸に対して径方向内側から外側にかけて旋回方向に傾くまたは曲がるように延びる少なくとも2つ以上の複数のリブ412Caを備えている。すなわち、リブ412Caは、容器2内において、ガス流出管7の外周壁の接線方向と平行な方向に延設されるように設けられている。そのため、上部鏡板4または上昇旋回流抑制機構412C近傍における冷媒の旋回流の向きが径方向内側から外側に向くようになる。その結果、上部鏡板4または上昇旋回流抑制機構412Cの面上に付着した油は径方向内側から外側のシェル3に向けて流れ、一部がガスの流れに引き剥がされて、油滴となり、さらにその油滴の一部が重力あるいはシェル3に近い側の旋回下降流により、流入管上部11から旋回部9へ流出する。
以上のように、実施の形態5に係る油分離器1Q、油分離器1R、油分離器1Sは、油滴の一部が重力あるいはシェル3に近い側の旋回下降流により、流入管上部11から旋回部9へ流出する。旋回部9においてシェル3に近い側にある油滴は、遠心力により径方向外側に移動すれば、すぐにシェル3に付着するため、冷媒から分離されやすくなっている。そのため、実施の形態5に係る油分離器1Q、油分離器1R、油分離器1Sは、更に油分離効率が向上する。
実施の形態6.
図32は、本発明の実施の形態6に係る油分離器の上昇旋回流抑制機構を示す縦断面図である。図33は、本発明の実施の形態6に係る油分離器の他の上昇旋回流抑制機構を示す縦断面図である。図1〜図31の油分離器と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。なお、以下の説明では、図32、図33に示す、上昇旋回流抑制機構512A、上昇旋回流抑制機構512Bの総称を上昇旋回流抑制機構512と称して説明する。また、壁部512Ha、壁部512Hbの総称を壁部512Hと称して説明する。
上昇旋回流抑制機構512は、上下方向に連通する間隙を形成する壁部512Hを有し、流入管6の上部において、シェル3と上部鏡板4とから構成される容器2の内壁と、ガス流出管7の外壁との間の空間に配置され、冷媒ガス及び油が混合した混合流体の流れを妨げることで流入管6の上部に形成される上昇旋回流を抑制するものである。上昇旋回流抑制機構412Cを構成する壁部512Hは、伸縮性のある材料で構成されており、上昇旋回流抑制機構412はシェル3とガス流出管7との両方に当接されている。上昇旋回流抑制機構512を構成する壁部512Hは、例えば樹脂あるいはゴム、繊維状の金属などの、伸縮性のある材料で構成されることが望ましい。上昇旋回流抑制機構512は、ガスを流通させられるように、内部に間隙が設けられていることが望ましい。上昇旋回流抑制機構512が有する間隙を形成する壁部512Hは、例えば、連続気泡型の樹脂あるいは連続気泡型のゴムから構成されており、あるいは、繊維状の金属から構成されている。上下方向に連通する間隙は、上昇旋回流抑制機構512の上端から下端までが1つの間隙として形成されていてもよく、連続気泡構造のように複数の間隙が互いに結合して形成されていてもよい。また、上下方向に連通するとは、間隙が上昇旋回流抑制機構512の上端から下端に連通していればよく、鉛直方向だけではなく、一部に水平方向あるいは斜め方向に連通する部分があってもよい。
実施の形態6に係る油分離器1Tは、図32に示すように、上昇旋回流抑制機構512Aを構成する壁部512Haが、流入管6の上部を覆い、流入管上部11内を充填するように、設けられている。そして、壁部512Haの下面部513は、旋回部9に対向し、容器2の径方向において、シェル3側の外縁部513aが上方に凹み、ガス流出管7側の内縁部513bが下方に突出するように構成されている。換言すると、下面部513は、環状に形成されており、内縁部513bがガス流出管7と当接し、外縁部513aがシェル3と当接し、内縁部513bが外縁部513aよりも下方に位置し、内縁部513bと外縁部513aとの間に斜面が形成されている。
また、実施の形態6に係る油分離器1Uは、図33に示すように、上昇旋回流抑制機構512Bを構成する板状の壁部512Hbが、流入管6の上部を覆い、流入管上部11内の一部分を充填するように、設けられている。壁部512Hbの下面部513は、旋回部9に対向し、容器2の径方向において、シェル3側の外縁部513aが上方に凹み、ガス流出管7側の内縁部513bが下方に突出するように構成されている。換言すると、下面部513は、環状に形成されており、内縁部513bがガス流出管7と当接し、外縁部513aがシェル3と当接し、内縁部513bが外縁部513aよりも下方に位置し、内縁部513bと外縁部513aとの間に斜面が形成されている。まは、油分離器1Uは、上昇旋回流抑制機構512Aを構成する壁部512Hbが板状に形成されている。そして、壁部512Hbは、内縁部513bがガス流出管7と当接し、外縁部513aがシェル3と当接し、内縁部513bが外縁部513aよりも下方に位置する円盤状に形成されている。壁部512Hbは、流入管上部11と旋回部9とを仕切るように配置されている。
なお、上昇旋回流抑制機構512を構成する壁部512Hが、伸縮性の低い材料で構成されていれば、油分離器1T、油分離器1Uは、上昇旋回流抑制機構512を構成する壁部512Hがシェル3と当接して配置される。そして、上昇旋回流抑制機構512を構成する壁部512Hが、伸縮性が低い材料で構成される場合には、油分離器1T、油分離器1Uは、上昇旋回流抑制機構512を構成する壁部512Hとガス流出管7との間に図15に示した隙間S7が設けられるとよい。
あるいは、上昇旋回流抑制機構512を構成する壁部512Hが、伸縮性の低い材料で構成されていれば、油分離器1T、油分離器1Uは、上昇旋回流抑制機構512を構成する壁部512Hがガス流出管7と当接して配置される。そして、上昇旋回流抑制機構512を構成する壁部512Hが、伸縮性が低い材料で構成される場合には、油分離器1T、油分離器1Uは、上昇旋回流抑制機構512を構成する壁部512Hとシェル3との間に図16に示した隙間S8が設けられるとよい。
実施の形態6に係る油分離器1Tは、上昇旋回流抑制機構512Aを構成する壁部512Haが、流入管6の上部を覆い、流入管上部11内の一部分を充填するように、設けられている。そして、壁部512Haの下面部513は、旋回部9に対向し、容器2の径方向において、シェル3側の外縁部513aが上方に凹み、ガス流出管7側の内縁部513bが下方に突出するように構成されている。そのため、旋回上昇流の上方向成分が上昇旋回流抑制機構512Aを構成する壁部512Haの下面部513に斜めに衝突すると、反作用で径方向外側に向けた力を受ける。そのため、上昇旋回流抑制機構512Aを構成する壁部512Haの下面部513に付着した油は、径方向外側のシェル3に向けて流れる。そして、径方向外側のシェル3に向けて流れる油は、一部がガスの流れに引き剥がされて、油滴となり、さらにその油滴の一部が重力あるいはシェル3に近い側の旋回下降流により、流入管上部11から旋回部9へ流出する。
また、実施の形態6に係る油分離器1Uは、上昇旋回流抑制機構512Bを構成する板状の壁部512Hbが、流入管6の上部を覆い、流入管上部11内の一部分を充填するように、設けられている。そして、板状の壁部512Hbの下面部513は、旋回部9に対向し、容器2の径方向において、シェル3側の外縁部513aが上方に凹み、ガス流出管7側の内縁部513bが下方に突出するように構成されている。そのため、旋回上昇流の上方向成分が上昇旋回流抑制機構512Bを構成する壁部512Hbの下面部513に斜めに衝突すると、反作用で径方向外側に向けた力を受ける。そのため、上昇旋回流抑制機構512Bを構成する壁部512Hbの下面部513に付着した油は、径方向外側のシェル3に向けて流れる。そして、径方向外側のシェル3に向けて流れる油は、一部がガスの流れに引き剥がされて、油滴となり、さらにその油滴の一部が重力あるいはシェル3に近い側の旋回下降流により、流入管上部11から旋回部9へ流出する。
以上のように、実施の形態6に係る油分離器1T、油分離器1Uは、油滴の一部が重力あるいはシェル3に近い側の旋回下降流により、流入管上部11から旋回部9へ流出する。旋回部9においてシェル3に近い側にある油滴は、遠心力により径方向外側に移動すれば、すぐにシェル3に付着するため、冷媒から分離されやすくなっている。そのため、実施の形態6に係る油分離器1Q、油分離器1R、油分離器1Sは、更に油分離効率が向上する。
なお、本発明の実施の形態は、上記実施の形態1〜6に限定されず、種々の変更を加えることができる。たとえば、実施の形態1〜6で上昇旋回流抑制機構の構成について具体例を説明したが、上昇旋回流抑制機構は、各実施の形態で説明した各構成に限らず、2以上の実施の形態の構成を組み合わせたものでもよい。