JP6720452B2 - アーク倣い溶接方法 - Google Patents
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Description
差、加工中の変形等によって発生する加工具(溶接トーチ)の狙い位置のズレを検出して補正することにより、溶接欠陥を防止し、自動化率を向上させることを目的としている。
特許文献1は、シフト量が異なる複数の区間で区切られた教示線上に沿って溶接トーチを溶接させながら移動させる際、前記区間毎に定められているシフト量に応じて前記溶接トーチをシフトさせて移動させる移動工程と、前記区間毎に移動中の溶接トーチに供給されてサンプリングされた電気量を、該サンプリングする周期よりも長い所定周期毎に平均化する平均化工程と、該平均化した値と基準値との差分値を算出する差分値算出工程と、前記区間毎の前記差分値の平均差分値を算出する平均差分値算出工程と、前記区間毎の前記差分値の平均差分値に基づいて回帰直線および該回帰直線と前記平均差分値との相関係数を求める回帰直線および相関係数取得工程と、前記回帰直線の傾き、および切片に関係する倣いに関するパラメータを前記相関係数に基づいて評価して、該パラメータを倣いパラメータとして設定する評価工程を含むことを特徴とするロボット用アークセンサの倣いパラメータの設定方法を開示する。
すなわち、従来から用いられているアーク倣い溶接の技術によれば、
・継手位置(開先)の左右端による溶接電流値の差異を見るだけではSN比が悪く、更なる高精度化が必要である。
・溶接ワイヤの脚長に対して特にウィービング振幅が小さい場合、また溶接対象の板厚が薄い場合などでは更なる高精度化が必要となる。
・単純な抵抗値検出によるアーク倣いは、制御ループの影響を受けるなど、有意な抵抗値変化を捉えられない。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、現場においても正確なアーク倣い溶接を可能とする技術を提供することを目的とする。
即ち、本発明のアーク倣い溶接方法は、溶接方向に対してトーチを揺動させるウィービング機能を備えた消耗電極型の溶接装置におけるアーク倣い溶接方法であって、前記消耗電極へ供給する溶接電流に高周波成分を重畳するようにしておき、溶接中における前記溶接電流から、電極の高さ変動に伴う抵抗値変化を検出し、検出された抵抗値の変化量とウィービングの左右位置に基づき、ウィービング中心と溶接線のズレを検出することを特徴とする。
好ましくは、前記消耗電極へ供給する溶接電流に高周波成分を重畳する溶接電源として、パルス電源を採用し、前記高周波成分として、パルス電源のパルス波形を使用し、前記パルス波形による高周波成分を使用することで、抵抗値変化の検出精度を向上させるとよい。
以下においては、溶接動作を行う機器を、溶接トーチ1を揺動動作(ウィービング動作)させる多関節の溶接ロボットとして説明するが、これは一例に過ぎず、専用の自動溶接装置であっても構わない。
例えば、垂直多関節型のロボットシステム(ロボットシステム)は、溶接ロボットと、教示ペンダントを備えた制御装置と、パソコンとを含む。溶接ロボットは垂直多関節型の6軸の産業用ロボットであり、その先端に溶接トーチ1などから構成される溶接ツールが設けられている。この溶接ロボットはそれ自体を移動させるスライダに搭載されていてもよい。
本実施の形態に係るアーク倣い溶接方法は、制御装置(図示しない)内に設けられたプログラムとして実現されている。
なお、説明においては、理解を容易にするため、「背景技術」や「発明が解決しようとする課題」で述べた事項を再度、記載している部分もある。
まず、図1にアーク溶接の模式図を示す。
アーク溶接は溶接トーチ1から供給される溶接ワイヤ3(消耗電極)と母材4の間に溶接電源2で電圧を印加し、溶接ワイヤ3と母材4の間でアークを発生させる。そのアーク熱で母材4と溶接ワイヤ3を溶融させながら溶接する。アーク溶接に伴い溶接ワイヤ3は溶け落ちてゆくため、溶接中は送給装置により溶接トーチ1内を経由して溶接ワイヤ3が供給され続ける。
一方、中厚板の溶接分野では、溶接ワークの加工(ガス切断や曲げ)精度が悪い、溶接ワークの(治具矯正できず)設置精度が悪い、溶接ワークが溶接中に(治具拘束できず)熱ひずみで変形する等、溶接すべき位置(溶接線)が常に決められた位置にあるとは限らない。溶接線のズレはおおむね数mmからcmオーダで発生する。
図2の左側の図に示すように、ウィービング動作を行うとウィービング位置によって溶接トーチ1と母材4までの距離(トーチ高さ)が変化する。そのトーチ高さの変化に伴い、ウィービング位置によって溶接電流も変化する(溶接電源2に対して定電圧制御を行った場合は溶接電流が、定電流制御を行った場合は溶接電圧が変化する)。ウィービング中心Bと溶接線が一致している場合、溶接電流はウィービング中心Bを中心に左右対称に変化し、ウィービング端点A、Cでの溶接電流は一致する(正常状態)。
図3には、アーク溶接に用いられる定電圧溶接電源2(定電圧特性を有する溶接電源2、本発明では、この特性を有する溶接電源2を使用する)を用いた場合の電流波形を示す。
た場合の溶接電流の波形である。常に2mmズレているため、理論的には、左右端での溶接電流差は一定の筈であるが、図2に示すように、左右端での電流差に比べ、電流波形全体での電流変動が大きく、少し左右端の位相がずれるだけで、大きく電流値が変化し、SN比(信号とノイズとの比)が非常に悪いことが分かる。
定電圧溶接電源2を用いた図3と同じ電流情報Iに加え、電圧情報Vも用いて、
図4は、従来の低電圧電源における電流・電圧波形における抵抗値の推定結果であるが、抵抗値が大きく変動し、有意な情報が含まれていない。特に左右端での抵抗値の差の変動は大きく、2mmズレで理論的には抵抗値の差は一定であるはずであるが、全く溶接線のズレが検出できないことが分かる。
・継手位置の左右端による溶接電流値の差異を見るだけではSN比が悪く、更なる高精度化が必要である。
・溶接ワイヤ3の脚長に対して特にウィービング振幅が小さい場合、板厚が薄い場合、などでは更なる高精度化が必要となる。
・単純な抵抗値検出によるアーク倣いは、制御ループの影響を受けるなど、有意な抵抗値変化を捉えられない。
そこで、以下の手法を用いたアーク倣い溶接方法を採用し、現場においても正確なアーク倣い溶接を可能としている。
その技術の根幹は、「消耗電極へ供給する溶接電流に高周波成分を重畳するようにしておき、溶接中における前記溶接電流から、電極の高さ変動に伴う抵抗値変化を検出し、検出された抵抗値の変化量とウィービングの左右位置とから溶接線のズレを検出する」ものである。
上記した画期的な技術を採用することにより、溶接電流あるいは溶接電圧に高周波波形を重畳し、図5の定電圧特性におけるネガティブフィードバック制御の影響を受けることなく、高周波領域において抵抗値推定を実施することが可能となる。加えて、溶接線(開先)の左右端点の情報だけでなく、端点間の情報を用いて推定することでSN比向上させることも可能となる。
その1の例では、溶接電源2に数百Hzの高周波波形を電流値に重畳させ、式(1)に
基づき抵抗値を推定した。その際の結果を図6に示す。
図6における波形は、式(1)で算出される抵抗値を示したものであり、○は、電極先端が溶接線の左側(図2における左側(A))に位置している状況であり、□は、電極先端が開先の右側(図2における左側(C))に位置している状況である。○、□の意味は、以下登場する図でも同じである。
更に、溶接時には抵抗値R以外に、オフセット電圧Voや、インダクタンスLが作用することが想定されるため、式(1)に変えて、
図7の方が、図6に比して、抵抗値Rの推定結果に関するノイズが低減されていることが分かる。これは主にインダクタンスLを考慮した結果であると想定される。
なお、R、L、Voを推定するには、例えば、
また、上記は1ショット型の最小自乗推定を毎回行う手法であるが、逐次最小自乗法を使用することができる。1ショット型の場合、t1以前の過去の影響を受けず推定できるが、計算量が大きくなる。一方、最小自乗法は過去の影響を若干引きずるが、計算量が非常に小さくて済むメリットがある。逐次最小二乗法による推定は次式で与えられる。
上記逐次最小自乗法にて(忘却係数をほぼ0.1秒程度となるように与えた)推定した結果が図7である。
図8の従来技術では、高周波成分はノイズとしか作用しないため、図7と同じ電流波形に対して、高周波成分をカットするフィルタ処理を施したのち、端点での電流差を比較した(フィルタによる端点の位相のズレは補正済み)。
ところで、図6(Rのみ推定)と図7(R,L,Voを推定)でノイズレベルの差異が明確ではない印象を持つかもしれないが、その拡大図である図9(R,L,Voを推定)に対応したRのみ推定した際の拡大図を図17(Rのみ推定)に示す。図17(Rのみ推定)と図9(R,L,Voを推定)を比較すると、明らかに図9の方がノイズが少ないことが分かる。
図10は、従来例を示す図8の拡大図である。この図から明らかなように、左右端点の電流差に対して、他の箇所での電流値変動が大きく、有意に端点での電流差が得られない箇所があるのに対して、同じ個所の本実施例の図9では端点での抵抗値の変化が大きく、感度良く溶接線のズレが検出できることが分かる。
[その2]
上記した実施例[その1]では、定電圧電源に高周波成分をわざわざ重畳させたが、本実施例では溶接電源2としてパルス電源を採用し、高周波成分を重畳させる代わりに、パルス電源の電流値のパルス波形の高周波成分を使用することとした。
左右端での電流値を正しく認識することができない。
そのため従来技術では、図13のように高周波成分を大幅にカットするようなフィルタ処理を行った電流波形を使用することで、図8のような端点での電流差を検出することができる。
[その3]
実施例[その1],[その2]では推定された抵抗値Rの左右端での差異のみに着目したが、左右端近傍での平均値をとるなど、抵抗値Rの左右端での値以外の情報を使用することで、更にノイズに強く、高いSN比が実現できる。
図18に溶接ロボット5による倣いシステム構成図を示す。
溶接ロボット5による倣いシステムは、溶接電源2から溶接電流と電圧をサンプリングしている。しかし溶接電源2からのサンプリング周期は、数ms〜数十msと低く、パルス電源のパルス波形の周波数に対して十分はサンプリング周期を要していない。
まず、式(1)による推定(Rのみ)及び式(2)による推定(R,L,Vo)の双方とも、溶接電源2の制御帯域以上の高周波成分が必要であり、定電圧電源では推定が難しく、またパルス電源においてもロボットコントローラに取り込まれる電流・電圧値はローパスフィルタによってノイズ除去(高周波成分が除去)されているため、図5の定電圧特性となるように制御されている状況では、従来手法によるRの推定は難しい。
また、式(2)による推定では、溶接電源2から電流・電圧に加え、電流の微分値も併せてサンプリングするとよい。このデータはロボットコントローラから得ることができる。
上記のことは、式(1)すなわちRのみの推定で行ってもよく、式(2)すなわちLが入る際には特に重要な事項である。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
2 溶接電源
3 溶接ワイヤ
4 母材
5 溶接ロボット
6 ロボットコントローラ
Claims (3)
- 溶接方向に対してトーチを揺動させるウィービング機能を備えた消耗電極型の溶接装置におけるアーク倣い溶接方法であって、
前記消耗電極へ供給する溶接電流に高周波成分を重畳するようにしておき、
溶接中における前記溶接電流から、電極の高さ変動に伴う抵抗値変化を検出し、検出された抵抗値の変化量とウィービングの左右位置に基づき、ウィービング中心と溶接線のズレを検出することを特徴とするアーク倣い溶接方法。 - 前記溶接電流に、数百Hzの高周波波形を電流値に重畳するように溶接電源を制御することを特徴とする請求項1に記載のアーク倣い溶接方法。
- 前記消耗電極へ供給する溶接電流に高周波成分を重畳する溶接電源として、パルス電源を採用し、
前記高周波成分として、パルス電源のパルス波形を使用し、
前記パルス波形による高周波成分を使用することで、抵抗値変化の検出精度を向上させることを特徴とする請求項1に記載のアーク倣い溶接方法。
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