本発明は、ダイシング用基体フィルムに関する。
(1)ダイシング用基体フィルム
本発明のダイシング用基体フィルムは、
ウェハ接触側からA層/B層/C層の順に積層されてなり、
A層はビニル芳香族炭化水素系樹脂を含む樹脂組成物からなり、
B層は非晶性ポリオレフィンを含む樹脂組成物からなり、
C層はポリエチレン系樹脂を含む樹脂組成物からなり、
前記A層のビニル芳香族炭化水素系樹脂はビニル芳香族炭化水素-共役ジエン炭化水素共重合体の水素添加物100〜40重量%を含む、ことを特徴とする。
以下、本発明のダイシング用基体フィルムを構成する各層について詳細に説明する。
(1-1)A層
ウェハ接触側のA層はビニル芳香族炭化水素系樹脂を含む樹脂組成物からなり、前記A層のビニル芳香族炭化水素系樹脂はビニル芳香族炭化水素-共役ジエン炭化水素共重合体の水素添加物100〜40重量%を含む。
ビニル芳香族炭化水素系樹脂
ビニル芳香族炭化水素系樹脂として、ビニル芳香族炭化水素の単独重合体、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン炭化水素との共重合体、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン炭化水素との共重合体の水素添加物、ビニル芳香族炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステルとの共重合体等を用いることが好ましい。特に、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン炭化水素との共重合体の水素添加物が好ましい。
ビニル芳香族炭化水素とは、少なくとも1つのビニル基を有する芳香族炭化水素を意味する。例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルエチレン、N,N-ジメチル-p-アミノエチルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン等を用いることが好ましい。これらは1種単独又は2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、スチレンが好ましい。
A層のビニル芳香族炭化水素の含有量は10〜80重量%程度が好ましい。
A層におけるビニル芳香族炭化水素の含有量は、30〜80重量%程度がより好ましく、50〜70重量%程度が更に好ましい。ビニル芳香族炭化水素単位の含有割合を10重量%以上に設定することにより、他の樹脂との相溶性を向上させることができる。
共役ジエン炭化水素とは、一対の共役二重結合を有するジオレフィンである。例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等を用いることが好ましい。これらは1種単独又は2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、1,3-ブタジエン又は2-メチル-1,3-ブタジエンが好ましい。
脂肪族不飽和カルボン酸エステルとは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等を用いることができる。ここで上記(メタ)アクリレートとはアクリレート及び/又はメタクリレートを示している。脂肪族不飽和カルボン酸エステルとして、好ましくはブチル(メタ)アクリレートである。
ビニル芳香族炭化水素-共役ジエン炭化水素共重合体水素添加物
ビニル芳香族炭化水素-共役ジエン炭化水素共重合体は、共役ジエン炭化水素中の二重結合の存在により引き起こされる酸化劣化等に起因してフィルムが脆くなる傾向がある。ビニル芳香族炭化水素系樹脂においてビニル芳香族炭化水素と共役ジエン炭化水素との共重合体の水素添加物を用いることで、その酸化劣化等を防止することができる。
ビニル芳香族炭化水素-共役ジエン炭化水素共重合体は、共役ジエン炭化水素に由来の二重結合を、公知の方法により水素添加(例えば、ニッケル触媒等による水素添加)して飽和にしておくことが好ましい。これにより、前記効果に加えて、更に耐熱性、耐薬品性、耐久性等に優れたより安定な樹脂にすることができるため好ましい。
ビニル芳香族炭化水素-共役ジエン炭化水素共重合体水素添加物の水添率は、共重合体中の共役ジエン炭化水素に由来する二重結合の85%程度以上であることが好ましく、より好ましくは90%程度以上、更に好ましくは95%程度以上である。前記水添率(水素添加)は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定することができる。
ビニル芳香族炭化水素-共役ジエン炭化水素共重合体水素添加物において、ビニル芳香族炭化水素単位の含有割合は、10〜70重量%程度が好ましく、45〜65重量%程度がより好ましい。ビニル芳香族炭化水素単位の含有割合を10重量%以上に設定することにより、他のビニル芳香族炭化水素系樹脂との相溶性を向上させることができる。また、ビニル芳香族炭化水素単位の含有割合を70重量%以下に設定することにより、フィルムのエキスパンド性、即ち、基材の引張り物性を向上させることができる。
ビニル芳香族炭化水素がスチレンである場合、そのスチレン単位の含有割合は、10〜70重量%程度が好ましく、45〜65重量%程度がより好ましい。スチレン単位の含有割合を10重量%以上に設定することにより、ポリスチレン系樹脂との相溶性を向上させることができる。また、スチレン単位の含有割合を70重量%以下に設定することにより、フィルムのエキスパンド性、即ち、基材の引張り物性を向上させることができる。
ビニル芳香族炭化水素-共役ジエン炭化水素共重合体水素添加物において、共役ジエン炭化水素単位の含有割合は、水添前の含有割合で、30〜90重量%程度が好ましく、35〜55重量%程度がより好ましい。共役ジエン炭化水素単位の含有割合を30重量%以上に設定することにより、フィルムのエキスパンド性、即ち、基材の引張り物性を向上させることができる。また、共役ジエン炭化水素単位の含有割合を90重量%以下に設定することにより、耐ブロッキング性を向上させることができる。
ビニル芳香族炭化水素-共役ジエン炭化水素共重合体水素添加物のメルトフローレート(MFR)は、4〜9g/10分が好ましく、5〜8g/10分がより好ましい。上記MFRの範囲により、押出成形時のビニル芳香族炭化水素-共役ジエン炭化水素共重合体水素添加物の流動性は良好である。
前記MFRは、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定される値である。
ビニル芳香族炭化水素-共役ジエン炭化水素共重合体水素添加物の重量平均分子量(Mw)は、例えば、通常10万〜50万程度であり、好ましくは15万〜30万程度である。重量平均分子量は、市販の標準ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
ビニル芳香族炭化水素-共役ジエン炭化水素共重合体水素添加物として、スチレン系単量体とジエン系単量体とのランダム共重合体の水素添加物がある。また、スチレン系単量体とジエン系単量体とのブロック共重合体の水素添加物がある。共重合体の水素添加物はそれらをいずれも含む。これらを水添ランダム共重合体や水添ブロック共重合体とも呼ぶ。柔軟性、透明性等の点から、ランダム共重合体が好適である。
水添ランダム共重合体は、具体例として、式:-CH(C6H5)CH2-で示されるスチレン系単量体単位と、式:-CH2CH2CH2CH2-で示されるエチレン単位と、式:-CH(C2H5)CH2-で示されるブチレン単位とがランダムに結合している。
水添ランダム共重合体は、例えば、特開2004-59741号公報に記載の方法等、公知の方法により、或いはこれに準じて製造することができる。
また、水添ブロック共重合体としては、該共重合体の一端又は両末端にビニル芳香族炭化水素由来のブロックセグメントを有し、更に共役ジエン炭化水素由来のブロックセグメントを有するもの、或いはこれらをブレンドしたものの水素添加物等が挙げられる。
ブロック共重合体、或いは水添ブロック共重合体は、具体例として、該共重合体の一端に、式:-CH(C6H5)CH2-で示されるスチレン系単量体由来のブロックセグメントを有し、その中程に、式:-CH2CH2CH2CH2-で示されるエチレン単位、及び/又は、式:-CH(C2H5)CH2-で示されるブチレン単位を含むブロックセグメントを有する。ブロック共重合体、或いは水添ブロック共重合体は、具体例として、該共重合体の他端に、式:-CH2CH2CH2CH2-で示されるエチレン単位を含むセグメントを有する。
水添ブロック共重合体の具体例として、スチレン・エチレンブチレン・オレフィン結晶のブロックポリマー(SEBC)やスチレン・エチレンブチレン・スチレンのブロックポリマー(SEBS)が例示される。
A層では、ビニル芳香族炭化水素-共役ジエン炭化水素共重合体水素添加物の含有割合は、100〜40重量%程度が好ましく、100〜70重量%程度がより好ましく、90〜70重量%程度が更に好ましい。ビニル芳香族炭化水素-共役ジエン炭化水素共重合体水素添加物が100〜40重量%であると、フィルムのエキスパンド性、即ち、基材の引張り物性が良好であり、耐ブロッキング性も良好である。
ビニル芳香族炭化水素-共役ジエン炭化水素共重合体
ビニル芳香族炭化水素-共役ジエン炭化水素共重合体において、ビニル芳香族炭化水素単位の含有量は10〜85重量%であり、30〜85重量%が好ましく、45〜80重量%が更に好ましい。
ビニル芳香族炭化水素-共役ジエン炭化水素共重合体において、共役ジエン炭化水素単位の含有量は15〜90重量%であり、15〜70重量%が好ましく、20〜55重量%が更に好ましい。
ビニル芳香族炭化水素-共役ジエン炭化水素共重合体において、ビニル芳香族炭化水素単位の含有割合を10重量%以上に設定することにより、ビニル芳香族炭化水素-共役ジエン炭化水素共重合体水素添加物との相溶性が良く、好ましい。また、共役ジエン炭化水素単位の含有量を90量%以下に設定することにより、フィルム製造時の安定性に優れ、好ましい。
ビニル芳香族炭化水素-共役ジエン炭化水素共重合体のメルトフローレート(MFR)は、4〜9g/10分が好ましく、5〜8g/10分より好ましい。上記MFRの範囲により、押出成形時のスチレン-ブタジエン共重合体の流動性は良好であり、表裏層の厚みの均一性も良好である。
前記MFRは、温度200℃、荷重49.03Nの条件で測定される値である。
ビニル芳香族炭化水素-共役ジエン炭化水素共重合体の数平均分子量(Mn)は、8万〜20万程度が好ましく、10万〜18万程度がより好ましい。数平均分子量を上記範囲内とすることで、より熱収縮性等に優れたフィルムとすることができる。数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定される値である。
ビニル芳香族炭化水素-共役ジエン炭化水素共重合体の具体例として、スチレン-ブタジエン共重合体を例示できる。
本発明のダイシング用基体フィルムでは、A層は、ビニル芳香族炭化水素-共役ジエン共重合体の含有割合は、0〜60重量%程度が好ましく、0〜30重量%程度がより好ましく、10〜30重量%程度が更に好ましい。ビニル芳香族炭化水素-共役ジエン共重合体が0〜60重量%であると、フィルムのエキスパンド性、即ち、基材の引張り物性が良好である。
本発明のダイシング用基体フィルムでは、A層は、ビニル芳香族炭化水素-共役ジエン炭化水素共重合体の水素添加物を100〜40重量%程度含み、ビニル芳香族炭化水素-共役ジエン共重合体を0〜60重量%程度含む樹脂組成物からなることが好ましい。
(1-2)B層
本発明のダイシング用基体フィルムのB層は、非晶性ポリオレフィンを含む樹脂組成物からなる。
ダイシング用基体フィルムがB層を有することにより、エキスパンド性を向上させることが可能である。また、B層においてダイシングブレードによる樹脂由来の切削屑(ダイシング屑)の発生を効果的に抑制することも可能である。これにより、本発明のダイシング用基体フィルムは、ダイシング工程時の切断屑の発生が抑えられ、エキスパンド工程時に十分に拡張されると共に、各層間の接着強度が高められることからピックアップ工程時に各層が層間で剥がれない。
非晶性ポリオレフィンは、温度135℃におけるテトラリン溶媒による極限粘度[η]が好ましくは0.3〜10であり、より好ましくは0.5〜7であり、更に好ましくは0.7〜5である。極限粘度[η]の測定は、135℃テトラリン中でウベローデ粘度計を用いて行う。サンプルは300mgを100mlテトラリンに溶解し、3mg/mlの溶液を調製する。次いで、当該溶液を、1/2、1/3、1/5に希釈し、135℃(±0.1℃)の恒温油槽中で、極限粘度を測定する。3回繰り返し測定し、得られた値を平均して用いる。
非晶性ポリオレフィンは、示差走査熱量計(DSC)を用い、JIS K 7122に準拠して測定した場合に、結晶の融解に基く1J/g以上のピーク及び結晶化に基づく1J/g以上のピークのいずれをも有しないことが好ましい。示差走査熱量計は、例えば島津製作所製DSC−60を用い、昇温及び降温過程のいずれも10℃/minの速度で測定を行う。
非晶性ポリオレフィンは、樹脂ペレットにした場合、粘着性を示すことがあり、市販されているもののなかには、ポリプロピレン系樹脂等とブレンドすることにより粘着性を抑えたものがある。ここでのポリプロピレン系樹脂は、前述したポリプロピレン系樹脂(PP)と同様のものである場合がある。
非晶質ポリオレフィンは、プロピレン成分及び/又は1-ブテン成分を50重量%程度以上含有する、好ましくは沸騰n-ヘプタン抽出分が30重量%程度以上、より好ましくは40重量%程度以上の、非晶性のものである。例えば、非晶性のポリプロピレンや1-ポリブテン、あるいはプロピレン及び/又は1-ブテンと他のオレフィンとの共重合体が例示できる。
非晶性ポリオレフィンとしては、例えば、住友化学株式会社製「タフセレン」、三井化学株式会社製「タフマー」、大日精化工業株式会社製「ペリコンCAP」等が例示できる。
B層の非晶性ポリオレフィンは、エチレン及び炭素数3〜20のα-オレフィンからなる群から選ばれた2種以上のオレフィンを必須として構成されるオレフィン共重合体が好ましい。
炭素数3〜20のα-オレフィンとしては、直鎖状及び分岐状のα-オレフィンが含まれ、具体的には、直鎖状のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン等が例示され、分岐状のα−オレフィンとしては、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、2-エチル-1-ヘキセン、2,2,4-トリメチル-1-ペンテン等が例示される。
B層は、オレフィン系熱可塑性エラストマーを含んでも良い。オレフィン系熱可塑性エラストマーは、下記(A)及び(B)成分から構成されるエラストマーが好ましい。
(A)成分:プロピレンの単独重合体、又はプロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜8の他のα-オレフィンとの共重合体成分であるものが好ましい。アイソタクチックインデックスが85%以上であることが好ましい。組成物全体に対して10〜80重量%含まれることが好ましい。
(B)成分:プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜8の他のα-オレフィンとの共重合体成分からなるものが好ましい。プロピレンとエチレンとを必須成分とするものが好ましい。組成物全体に対して90〜20重量%含まれることが好ましい。
オレフィン系熱可塑性エラストマーでは、(A)成分をマトリックス相中に、(B)成分が微分散している海−島構造を有するエラストマーであるものがより好ましい。
(A)成分は、プロピレンの単独重合体がより好ましい。アイソタクチックインデックスは90%程度以上であることがより好ましい。アイソタクチックインデックスが90%程度以上のプロピレン単独重合体が好ましく、95%程度以上であるプロピレン単独重合体であることがより好ましい。アイソタクチックインデックスが90%程度以上であることにより、オレフィン系熱可塑性エラストマーの良好な耐熱性を保持することが可能となる。
プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜8の他のα-オレフィンとの共重合体成分における他のα-オレフィンとしては、例えば、ブテン-1、3-メチルブテン-1、ペンテン-1、3-メチルペンテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1等が挙げられる。また、プロピレンとエチレンとの共重合体成分でも良い。
(B)成分において、プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜8の他のα-オレフィンとの共重合体成分としては、前記(A)成分におけると同様のものを使用することができる。この(B)成分には、更に、1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1、5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ブチリデン-2-ノルボルネン、2-イソプロペニル-5-ノルボルネン等の非共役ジエンが、(B)成分中に0.5〜10重量%の量で共重合されていてもよい。
B層がオレフィン系熱可塑性エラストマーを含む樹脂組成物からなる場合、前記(A)成分を10〜80重量%程度含み、前記(B)成分を90〜20重量%程度含むことが好ましい。前記(A)成分を20〜70重量%程度含み、前記(B)成分を80〜30重量%程度含むことがより好ましい。
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、前記(A)成分の重合後に前記(B)成分が重合される逐次重合により製造された樹脂組成物である。この逐次重合に用いられる触媒は、有機アルミニウム化合物と、チタン原子、マグネシウム原子、ハロゲン原子、及び電子供与性化合物を必須とする固体成分とからなる。
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、o-ジクロロベンゼンを溶媒として用いた、温度0〜140℃の間の温度上昇溶離分別における0℃での溶出量が全溶出量に対して60〜80重量%であることが好ましい。0℃での溶出量がこの範囲であると反りを効果的に抑制できるため好ましい。
温度上昇溶離分別(Temperature Rising Elution Fractionation:TREF)は、公知の分析法である。具体的な測定方法としては、例えば、特開2003-7654号公報に開示されている方法等を挙げることができる。
オレフィン系熱可塑性エラストマーの製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のいかなる方法であってもよいが、下記に製造方法の一例を示す。
第一段階で、反応容器に、プロピレン、又はプロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜8の他のα-オレフィンを供給する。前記触媒の存在下、温度50〜150℃(好ましくは50〜100℃)、プロピレンの分圧0.5〜4.5MPa(好ましくは1.0〜3.5MPa)の条件で、重合を実施する。プロピレンの単独重合体、又はプロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜8の他のα-オレフィンとの共重合体が生成され(A)成分となる。
第二段階で、反応容器に、プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜8の他のα-オレフィンを供給する。前記触媒の存在下、温度50〜150℃(好ましくは50〜100℃)、プロピレン及びエチレンの分圧各0.3〜4.5MPa(好ましくは0.5〜3.5MPa)の条件で、重合を実施する。プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-炭素数4〜8の他のα-オレフィン共重合体、又はプロピレン-エチレン-炭素数4〜8の他のα-オレフィン共重合体が生成され(B)成分となる。
前記方法により製造されるオレフィン系熱可塑性エラストマーは、JIS K7210に準拠して温度230℃、荷重21.18Nで、メルトフローレート(MFR)を測定する。MFRは、0.1〜5g/10分程度であることが好ましい。また、JIS K7112に準拠して水中置換法にて測定した密度は0.87〜0.88g/cm3程度であることが好ましい。
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、例えば、三菱化学株式会社製「ゼラス(登録商標)」、株式会社プライムポリマー製「プライムTPO(登録商標)」、日本ポリプロ株式会社製「ニューコン」等が例示できる。
B層を形成する樹脂組成物に含まれる樹脂成分では、非晶性ポリオレフィン及びオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分の含有割合は、50〜100重量%程度が好ましく、70〜100重量%程度がより好ましい。B層のオレフィン系熱可塑性エラストマーの含有割合が、前記範囲内にあることにより、本発明のダイシング用基体フィルムは、ダイシング工程時の切断屑の発生を良好に抑えることが可能となり、エキスパンド工程時に十分に拡張されることも可能となると共に、層間の接着強度に優れるため、ピックアップ工程時に各層が層間で剥がれない。
(1-3)C層
C層はポリエチレン系樹脂を含む樹脂組成物からなる。
C層に含まれるポリエチレン系樹脂として、分岐鎖状低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)及びエチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を用いることが好ましい。C層は、これら少なくとも1種の成分を含む樹脂組成物からなることで、ダイシング用基体フィルムのエキスパンド性、即ち、基材の引張物性に優れる。
その他、ポリプロピレン系樹脂を配合しても良い。
本発明のダイシング用基体フィルムでは、引落し台を押し当てることによって、フィルムがエキスパンドされる。そのため、引落し台に対するダイシング用基体フィルムの滑り性が高いことが好ましい。引落し台と接するダイシング用基体フィルムの面にC層を設けることにより、前記特性が付与される。
ポリエチレン系樹脂のヤング率は、0.1〜0.25GPaが好ましく、0.13〜0.2GPaがより好ましい。ポリエチレン系樹脂のヤング率が、前記範囲を満たすことにより、ダイシング用基体フィルムは、エキスパンド工程時の破断の発生が良好に抑えられる。よって、従って、安全にして確実に拡張(エキスパンド)できるので、微細にカットされたウェハ等のピックアップがより迅速に、容易に行えるようになる。つまり、これは0.1GPa程度以上であることにより、エキスパンド動作を安全にして確実に行うに必要なシート基体として支持性が良好に備わることになる。また、ダイシング用基体フィルムは裂け難く、所望する間隔での拡張が容易となる。
また、ポリエチレン系樹脂のヤング率は、0.25GPa程度以下であることにより、容易な力での拡張ができ、裂け難くなり、安全にして確実に所望するエキスパンドを行なうことが可能となる。
低密度ポリエチレンとしては、例えば、メタロセン触媒により重合された低密度ポリエチレン、ラジカル開始剤を用いて高圧ラジカル重合により製造される高圧法低密度ポリエチレン(HP-LDPE)、遷移金属触媒を用いて配位イオン重合により製造される直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等を用いることができる。
低密度ポリエチレン(LDPE)の190℃におけるメルトフローレート(MFR)は、5g/10min程度以下が好ましく、3g/10min程度以下がより好ましい。上記MFRを5g/10min以下に設定することにより、B層との粘度差を抑制できるため、安定した製膜が可能となる。また、低密度ポリエチレンのMFRは、樹脂の押出しを容易にするため、0.1g/10min程度以上が好ましく、0.3g/10min程度以上がより好ましい。
上記低密度ポリエチレンの密度は、0.9〜0.94g/cm3程度以上が好ましく、0.91〜0.93g/cm3程度以上がより好ましい。
C層には、必要に応じ、更に帯電防止剤を含んでいてもよい。前記A層で使用できる帯電防止剤を、C層においても使用できる。C層で用いられる帯電防止剤としては、アニオン系,カチオン系、ノニオン系等の公知の界面活性剤を選択できるが、とりわけ持続性、耐久性の点から、PEEA樹脂、親水性PO樹脂等のノニオン系界面活性剤が好適である。
C層が帯電防止剤を含む場合、帯電防止剤の含有量は、C層の樹脂組成物中、帯電防止剤を5〜25重量%程度が好ましく、7〜22重量%程度がより好ましい。帯電防止剤を前記範囲で配合することにより、エキスパンドリングと接して一様にエキスパンドされる場合のC層の滑り性を損なうことがない。また、有効に半導電性が付与されるため、発生する静電気を素早く除電することが可能となる。例えば、上記した範囲で帯電防止剤を含有させた本発明のダイシング用基体フィルムは、その裏面の表面抵抗率が107〜1012Ω/□程度となるため好ましい。
C層には、更にアンチブロッキング剤等を加えてもよい。アンチブロッキング剤を添加することにより、ダイシング用基体フィルムをロール状に巻き取った場合等のブロッキングが抑えられ好ましい。アンチブロッキング剤としては、無機系又は有機系の微粒子を例示することができる。
(1-4)A層/B層/C層
A層がウェハ接触側である。ダイシング用基体フィルムの厚さは、ダイシングブレードの切り込み深さよりも厚くし、且つ容易にロ−ル状に巻くことができる程度であれば良く、特に限定されるものではない。
本発明のダイシング用基体フィルムの全体の厚さとしては、50〜300μm程度が好ましく、70〜200μm程度がより好ましく、80〜100μm程度が更に好ましい。ダイシング用基体フィルムの全体の厚さを60μm以上に設定することにより、半導体ウェハをダイシングする際に、半導体ウェハを衝撃から保護することが可能となる。
また、ダイシング用基体フィルム全厚さに対し、A層の厚さの割合は10〜80%程度が好ましく、30〜60%程度がより好ましい。B層の厚さの割合は10〜85%程度が好ましく、30〜60%程度がより好ましい。C層の厚さの割合は5〜40%程度が好ましく、5〜30%程度がより好ましい。
ダイシング用基体フィルムの具体例としては、ダイシング用基体フィルムの全厚さが60〜80μm程度の場合、A層の厚さは25〜50μm程度が好ましく、30〜45μm程度がより好ましい。B層の厚さは15〜45μm程度が好ましく、20〜40μm程度がより好ましい。である。C層の厚さは5〜20μm程度が好ましく、10〜15μm程度がより好ましい。
本発明のダイシング用基体フィルムは、A層とC層との厚さの比率は、A層の厚さを1としたとき、C層の厚さが0.1〜1程度が好ましく、0.2〜0.5程度がより好ましい。また、A層とB層との厚さの比率は、A層を1としたとき、B層の厚さは0.1〜1程度であることが好ましく、0.2〜0.5程度であることがより好ましい。
本発明のダイシング用基体フィルムの全体の厚さは50〜300μm程度が好ましく、80μm程度がより好ましい。
A層の厚さは、20〜55μm程度が好ましい。A層の層比は、全体の厚さに対して25〜70%程度が好ましい。
(2)ダイシング用基体フィルムの製法
本発明のダイシング用基体フィルムは、ウェハ接触側からA層、B層及びC層用樹脂組成物を多層共押出成形して製造することができる。具体的には、前記A層用樹脂組成物、B層用樹脂組成物及びC層用樹脂組成物を、A層/B層/C層の順に共押出成形することにより製造することができる。
A層及びC層を構成する樹脂組成物には、必要に応じて更に帯電防止剤を加えることができる。
上記した各層用樹脂をそれぞれこの順でスクリュー式押出機に供給し、180〜240℃で多層Tダイからフィルム状に押出し、これを30〜70℃の冷却ロ−ルに通しながら冷却して実質的に無延伸で引き取る。或いは、各層用樹脂を一旦ペレットとして取得した後、上記の様に押出成形してもよい。
なお、引き取りの際に実質的に無延伸とするのは、ダイシング後に行うフィルムの拡張を有効に行うためである。この実質的に無延伸とは、無延伸、或いは、ダイシングフィルムの拡張に悪影響を与えない程度の僅少の延伸を含むものである。通常、フィルム引き取りの際に、たるみの生じない程度の引っ張りであればよい。
以下に、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)ダイシング用基体フィルムの原料
表1にダイシング用基体フィルムの原料を示した。
SEBS:スチレン-ブタジエン共重合体水素添加物(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)
St含量:スチレン含有割合
PP:ポリプロピレン樹脂、RPP:ポリプロピレン系ランダム共重合体
Et含量:エチレン含有割合
PE:ポリエチレン樹脂
SBC:スチレン-ブタジエン共重合体
Bd含量:ブタジエン含有割合
非結晶PO:非晶性ポリオレフィン
PE系樹脂-1:低密度ポリエチレン(LDPE)
PE系樹脂-2:エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)
VA含量:酢酸ビニル含有割合
(2)ダイシング用基体フィルムの製造
表に記載のA層/B層/C層となるように、各成分及び組成で樹脂組成物を配合し、ダイシング用基体フィルムを作製した。
各層を構成する樹脂組成物を、220℃に調整された夫々の押出機に投入しA層/B層/C層の順序になるように、220℃のTダイスにより押出し、積層し、30℃の冷却水が循環するチルロール上に共押出しせしめて、フラット状の三層フィルムを得た。
(3)ダイシング用基体フィルムの評価
(3-1)エキスパンド性(Ex性)
<条件>
東洋アドテック社製ウェハエキスパンダー装置(TAE-800)を用いて、フィルムのエキスパンドを行った。(速度設定目盛:10)
<評価方法>
(株)ディスコ製のテープフレーム(DTF2-6)にフィルムを貼りつけた。
フィルムのMD方向(フィルム成形の押出方向)及びTD方向(フィルム成形により成形されたフィルムの幅方向)に、中央を通る十字標線(長さ20mm又は長さ100mm)を引いた(図1参照)。
上記条件で、30mm引き落とし量でのエキスパンドを行った。
エキスパンド前後でのライン長さの変化を測定し、下記計算式にて、拡張率を算出した。
拡張率 [%] = { (Ex後の標線長さ)/(Ex前の標線長さ)-1}×100
MD及びTD共に下記評価基準を基に、「○」評価のものをエキスパンド性「○」とした。結果には、MD及びTDの内、小さい方の値を示した。
Ex前:エキスパンド前
Ex後:エキスパンド後
<評価基準>
○:エキスパンドにより、変化量が4.0%以上である。
×:エキスパンドにより、変化量が4.0%未満である。
(3-2)ヒートシュリンク性(HS性)
<条件1-引張試験>
(株)島津製作所製「オートグラフAG-500NX TRAPEZIUM X」を用いて、引張速度200mm/minでMD方向及びTD方向に、夫々200%伸ばした。
<条件2-収縮試験>
(株)東洋製作所製「恒湿器TBP105DA」を用いて、設定温度80℃にて5秒間サンプルを加熱させた。
<評価方法>
長さ100mm(標線間隔40mm+つかみシロ(上下に30mmずつ))、幅15mmの大きさのフィルム短冊サンプルを作成し、上記条件1にて伸長させた。
200%伸長させた状態にて30秒間保持し、30秒経過(測定終了)後に、チャックを開放し、サンプルを上記条件1にて収縮させた。
収縮後の標線間隔L[mm]を測定し、下記計算式にて、回復率を算出した。
回復率 [%] ={(120-L)/80}×100
MD及びTD共に下記評価基準を基に、「○」のものをヒートシュリンク性「○」とした。結果には、MD及びTDの内、小さい方の値を示した。
<評価基準>
○:ヒートシュリンクにより、回復率が70%以上である。
×:ヒートシュリンクにより、回復率が70%未満である。
(3-3)総合評価
Ex性:エキスパンド性、4.0%以上を○とし、4.0未満を×とした。
HS性:ヒートシュリンク性、70%以上を○とし、70%未満を×とした。
MD及びTDに関して、小さい方の評価結果を記載した。
総合結果:Ex性とHS性との全てにおいて「○」のもののみを総合的な「○」とした。
本発明のダイシング用基体フィルムを用いると、半導体製造ラインでは、エキスパンド工程後に加工途中の製品が残ったシートを、シートにたるみが残らず、ラックにおいて一時的に良好に保管(収納)することができる。また、本発明のダイシング用基体フィルムを用いた製品同士は衝突せず欠陥が生じない。本発明のダイシング用基体フィルムを用いると、ダイシングフィルム(シート)は、エキスパンド工程を経た後でも、生じたたるみ部に熱風を当てることでその部分を収縮させ、たるみを解消することができる。本発明のダイシング用基体フィルムを用いると、ダイシングフィルム(シート)は、加熱収縮による復元率が高い。
本発明のダイシング用基体フィルムを用いると、半導体製品の小型化が進み、シートにおいてより拡張すること(エキスパンド性)が求められる中で、より拡張性・収縮性が高いシートとなる。本発明のダイシング用基体フィルムを用いると、使用済みのダイシングフィルムのラックへの回収が、より迅速にかつ簡便に行える。つまり、本発明のダイシング用基体フィルムは、熱による復元性が高く、つまりヒートシュリンク性が良好に発揮され、ラック回収性に優れている。