JP6713699B1 - 加飾フィルム成形体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】種々の基材に適用可能であり、見る角度によって図柄を視認可能な状態または視認困難な状態に切り替えることのできる加飾フィルム成形体を製造するための加飾フィルム成形体の製造方法を提供する。【解決手段】被剥離基材の一方の面上に、離型層を形成する離型層形成工程と、離型層上に、紫外線硬化型樹脂組成物を含む保護層を形成する保護層形成工程と、保護層上に、蒸着層を形成する蒸着層形成工程と、蒸着層上に、フィラーを含む接着層を形成する接着層形成工程と、接着層上に、転写基材を押し当てることにより、フィラーを接着層に埋設させて、蒸着層の表面に凹凸を形成する転写基材形成工程と、被剥離基材および離型層を剥離する剥離工程と、を含み、転写基材形成工程よりも前に、被剥離基材の他方の面上に、紫外線を遮蔽する遮蔽部と紫外線を透過する非遮蔽部とを含む遮蔽板を配置する遮蔽工程を含み、遮蔽工程よりも後であって、かつ、転写基材形成工程よりも前に、保護層から接着層の方向へ、非遮蔽部を通過するよう紫外線を照射し、保護層を仮硬化する仮硬化工程を含み、転写基材形成工程よりも後に、保護層から接着層の方向へ、紫外線を照射し、保護層を本硬化する本硬化工程を含む、加飾フィルム成形体の製造方法。【選択図】図6

Description

本発明は、加飾フィルム成形体および加飾フィルム成形体の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、蒸着フィルムを使用して加飾した加飾フィルム成形体および加飾フィルム成形体の製造方法であり、種々の基材に適用可能であり、見る角度によって図柄を視認可能な状態または視認困難な状態に切り替えることのできる加飾フィルム成形体および加飾フィルム成形体を製造するための加飾フィルム成形体の製造方法に関する。
従来、紙幣や有価証券などの媒体に、偽造防止のための機能を付与する技術が検討されている(特許文献1)。特許文献1には、応力発光材料を用いた偽造防止媒体が提案されている。
特開2019−162877号公報
本発明は、上記従来の技術とは完全に機序が異なり、種々の基材に適用可能であり、見る角度によって図柄を視認可能な状態または視認困難な状態に切り替えることのできる加飾フィルム成形体および加飾フィルム成形体を製造するための加飾フィルム成形体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、サテンめっき調の独特の鈍い金属光沢を付与するとともに、図柄の形状に沿って段階的に硬化させた層を設けることにより、種々の基材に適用可能であり、見る角度によって図柄を視認可能な状態または視認困難な状態に切り替えることのできる加飾フィルム成形体が得られることを見出し、本発明を完成させた。また、本発明者らは、保護層において、硬化の程度の異なる複数の領域(重合度の異なる領域)を設けること、それぞれの領域に対して、マルチアングル測色計にて所定の角度から光を入射させ、ハイライト領域におけるL*値を測定する場合に、得られたL*値に差が生じやすいように、保護層における硬化の程度を調整すること、により、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、上記課題を解決する本発明の加飾フィルム成形体の製造方法には、以下の構成が主に含まれる。
(1)基材と、接着層と、蒸着層と、保護層とを有し、前記蒸着層は、表面に凹凸が形成されており、前記接着層は、フィラーを含み、前記保護層は、第1領域と、前記第1領域よりも重合度が大きい第2領域とを有し、前記保護層の法線方向から45°傾斜した角度からマルチアングル測色計の光源からの光を入射させた際、入射させた光の正反射方向を0°と定義し、前記正反射方向から前記光源側をプラスの角度と定義し、前記正反射方向から前記光源と反対側をマイナスの角度と定義する場合において、前記第1領域における−15°方向のL*値(L1*-15)は、前記第2領域における−15°方向のL*値(L2*-15)よりも大きく、前記第1領域における15°方向のL*値(L1*15)は、前記第2領域における15°方向のL*値(L2*15)よりも大きく、前記第1領域における25°方向のL*値(L1*25)は、前記第2領域における25°方向のL*値(L2*25)よりも大きい、加飾フィルム成形体。
このような構成によれば、加飾フィルム成形体は、−15°〜25°といったハイライト領域において、第1領域と第2領域とのL*値の差が大きくなる。そのため、加飾フィルム成形体は、所定の角度だけ傾けた場合に、第1の領域と第2の領域とのL*値の差に基づく反射の程度の違いによって、図柄を視認可能な状態または視認困難な状態に切り替えることができる。また、加飾フィルム成形体は、種々の基材を使用し得る。
(2)被剥離基材の一方の面上に、離型層を形成する離型層形成工程と、前記離型層上に、紫外線硬化型樹脂組成物を含む保護層を形成する保護層形成工程と、前記保護層上に、蒸着層を形成する蒸着層形成工程と、前記蒸着層上に、フィラーを含む接着層を形成する接着層形成工程と、前記接着層上に、転写基材を押し当てることにより、前記フィラーを前記接着層に埋設させて、前記蒸着層の表面に凹凸を形成する転写基材形成工程と、前記被剥離基材および前記離型層を剥離する剥離工程と、を含み、前記転写基材形成工程よりも前に、前記被剥離基材の他方の面上に、紫外線を遮蔽する遮蔽部と紫外線を透過する非遮蔽部とを含む遮蔽板を配置する遮蔽工程を含み、前記遮蔽工程よりも後であって、かつ、前記転写基材形成工程よりも前に、前記保護層から前記接着層の方向へ、前記非遮蔽部を通過するよう紫外線を照射し、前記保護層を仮硬化する仮硬化工程を含み、前記転写基材形成工程よりも後に、前記保護層から前記接着層の方向へ、紫外線を照射し、前記保護層を本硬化する本硬化工程を含む、加飾フィルム成形体の製造方法。
このような構成によれば、保護層は、仮硬化工程において、非遮蔽部を透過した紫外線によって、非遮蔽部の形状に沿って硬化される。その後、転写基材形成工程において、フィラーが接着層に埋設され、蒸着層を変形し、凹凸が形成される。また、本硬化工程において、保護層は、全体が硬化される。その結果、保護層において最初に硬化された部位と、その周囲の部位とは、別々の工程(仮硬化工程および本硬化工程)によって硬化されており、かすかな輪郭が形成された図柄が保護層に形成される。また、保護層から接着層に向かう方向から見ると、蒸着層に形成された凹凸は、上面視において図柄と重なる位置に形成された凹凸と、図柄と重ならない位置に形成された凹凸とがある。これらの凹凸は、いずれも、所定の角度だけ傾斜させると、図柄の輪郭を浮き上がらせるように光を反射する場合(図柄が視認可能な状態)と、図柄の輪郭には影響を与えないよう光を反射する場合(図柄が視認困難な状態)とに変化し得る。これにより、本発明によれば、種々の基材に適用することができ、かつ、見る角度によって図柄を視認可能な状態または視認困難な状態に切り替えることのできる加飾フィルム成形体を製造することができる。
(3)前記本硬化工程は、前記剥離工程の後に実施される、(2)記載の加飾フィルム成形体の製造方法。
このような構成によれば、本硬化工程は、剥離工程により露出された保護層に対して紫外線が照射される。そのため、得られる加飾フィルム成形体は、より均一に硬化されやすい。
本発明によれば、種々の基材に適用可能であり、見る角度によって図柄を視認可能な状態または視認困難な状態に切り替えることのできる加飾フィルム成形体を製造するための加飾フィルム成形体および加飾フィルム成形体の製造方法を提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態(第1の実施形態)の加飾フィルム成形体の製造方法を説明するための模式的な断面図である。 図2は、本発明の一実施形態(第1の実施形態)の加飾フィルム成形体の製造方法を説明するための模式的な断面図である。 図3は、本発明の一実施形態(第1の実施形態)の加飾フィルム成形体の製造方法を説明するための模式的な断面図である。 図4は、遮蔽工程を説明するための模式図である。 図5は、図柄が視認困難な状態となるよう加飾フィルム成形体を傾斜させた状態を示す模式図である。 図6は、図柄が視認可能な状態となるよう加飾フィルム成形体を傾斜させた状態を示す模式図である。 図7は、図柄が視認困難な状態となるよう加飾フィルム成形体を傾斜させた状態を示す写真である。 図8は、図柄が視認可能な状態となるよう加飾フィルム成形体を傾斜させた状態を示す写真である。 図9は、本発明の一実施形態(第2の実施形態)の加飾フィルム成形体の製造方法を説明するための模式的な断面図である。 図10は、図柄が視認困難な状態となるよう加飾フィルム成形体を傾斜させた状態を示す模式図である。 図11は、図柄が視認可能な状態となるよう加飾フィルム成形体を傾斜させた状態を示す模式図である。 図12は、本発明の一実施形態の加飾フィルム成形体に対して、マルチアングル測色計の光源からの光を入射させている様子を説明するための模式図である。
以下、説明の明瞭化のため、加飾フィルム成形体の説明の前に、加飾フィルム成形体の製造方法を説明する。
[加飾フィルム成形体の製造方法]
<第1の実施形態>
図1〜図3は、本発明の一実施形態(第1の実施形態)の加飾フィルム成形体の製造方法を説明するための模式的な断面図である。本実施形態の加飾フィルム成形体1の製造方法は、被剥離基材2の一方の面上に、離型層3を形成する離型層形成工程と、離型層3上に、紫外線硬化型樹脂組成物を含む保護層4を形成する保護層形成工程と、保護層4上に、蒸着層5を形成する蒸着層形成工程と、蒸着層5上に、フィラーFを含む接着層6を形成する接着層形成工程と、接着層6上に、転写基材7を押し当てることにより、フィラーFを接着層6に埋設させて、蒸着層5の表面に凹凸51を形成する転写基材形成工程と、被剥離基材2および離型層3を剥離する剥離工程とを含む。本実施形態の加飾フィルム成形体1の製造方法は、転写基材形成工程よりも前に、被剥離基材2の他方の面上に、紫外線を遮蔽する遮蔽部81と紫外線を透過する非遮蔽部82とを含む遮蔽板8(図4参照)を配置する遮蔽工程を含む。本実施形態の加飾フィルム成形体1の製造方法は、遮蔽工程よりも後であって、かつ、転写基材形成工程よりも前に、保護層4から接着層6の方向へ、非遮蔽部82を通過するよう紫外線を照射し、保護層4を仮硬化する仮硬化工程を含む。本実施形態の加飾フィルム成形体1の製造方法は、転写基材形成工程よりも後に、保護層4から接着層6の方向へ、紫外線を照射し、保護層4を本硬化する本硬化工程を含む。以下、それぞれの工程について説明する。
(離型層形成工程)
離型層形成工程は、被剥離基材2の一方の面上に、離型層3を形成する工程である。
被剥離基材2は特に限定されない。一例を挙げると、被剥離基材2は、樹脂シート、紙、布、ゴムシート、発泡体シート等である。樹脂シートは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂シート;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂シート;塩化ビニル樹脂シート;酢酸ビニル樹脂シート;ポリイミド樹脂シート;ポリアミド樹脂シート;フッ素樹脂シート;セロハン等が例示される。紙は、和紙、クラフト紙、グラシン紙、上質紙、合成紙、トップコート紙等が例示される。布は、各種繊維状物質の単独または混紡等による織布や不織布等が例示される。ゴムシートは、天然ゴムシート、ブチルゴムシート等が例示される。発泡体シートは、発泡PEシート等の発泡ポリオレフィンシート、発泡ポリエステルシート、発泡ポリウレタンシート、発泡ポリクロロプレンゴムシート等が例示される。これらの中でも、基材は、物理的特性(たとえば、寸法安定性、厚さ精度、加工性、引張強度)、経済性(コスト)等の理由により、ポリエチレンテレフタレート(PET)製であることが好ましい。
被剥離基材2の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、被剥離基材2の厚みは、4μm〜200μm程度である。被剥離基材2の厚みが上記範囲内であることにより、基材は、カールやシワが入りにくくなり、転写性も優れ、コストも安価に抑えられる。
離型層3は特に限定されない。一例を挙げると、離型層3は、シリコーン樹脂系、フッ素樹脂系、セルロース誘導体樹脂系、尿素樹脂系、ポリオレフィン樹脂系、メラミン樹脂系等の離型剤からなる。
離型層3を形成する方法は特に限定されない。一例を挙げると、離型層3は、ロールコーター等を用いて離型剤を被剥離基材2上に塗布することにより形成し得る。
離型層3の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、離型層3の厚みは、0.01〜5μm程度である。
(保護層形成工程)
保護層形成工程は、離型層3上に、紫外線硬化型樹脂組成物を含む保護層4を形成する工程である。
保護層4は特に限定されない。一例を挙げると、保護層4は、紫外線硬化型樹脂組成物を含んでいればよい。一例を挙げると、紫外線硬化型樹脂組成物は、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、熱硬化型アクリル樹脂等の紫外線硬化型モノマーまたはこれらのプレポリマーと、光ラジカル重合開始剤とからなる紫外線ラジカル硬化型の樹脂組成物や、樹脂成分として紫外線硬化型エポキシ樹脂と、光重合開始剤としてカチオン性紫外線重合開始剤と、必要によりカチオン重合性ビニル単量体、希釈剤、他のエポキシ樹脂、増感剤、架橋剤等を含むカチオン硬化型の樹脂組成物である。
保護層4の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、保護層4の厚みは、1.0μm以上20μm以下であることが好ましい。保護層4の厚みが上記範囲内であることにより、加飾フィルム成形体1は、耐擦傷性、耐摩耗性が優れる。
保護層4を形成する方法は特に限定されない。一例を挙げると、保護層4は、ロールコーター等を用いて、適宜溶剤に溶解した保護層4を構成する樹脂溶液を、離型層3上に塗布することにより形成し得る。塗布された樹脂溶液は、後述する仮硬化工程および本硬化工程において硬化される。
(蒸着層形成工程)
蒸着層形成工程は、保護層4上に、蒸着層5を形成する工程である。
蒸着層5は特に限定されない。一例を挙げると、蒸着層5は、非金属、金属、金属酸化物および金属窒化物からなる群から選択される少なくとも1種(金属等ともいう)である。非金属、金属等は特に限定されない。一例を挙げると、非金属は、アモルファスカーボン(DLC)およびその複合体、金属等は、珪素、チタン、スズ、亜鉛、アルミニウム、インジウムおよびマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1つの金属、その酸化物、その窒化物である。これらの中でも、金属等は、アルミニウム、酸化アルミニウム、インジウム、スズ、酸化珪素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、亜鉛スズ酸化物(ZTO)等であることが好ましく、アルミニウム、酸化アルミニウム、インジウム、スズであることがより好ましい。蒸着層5がアルミニウム、酸化アルミニウム、インジウム、スズからなることにより、得られる加飾フィルム成形体1は、サテンめっきの金属調の意匠感を示しやすい。
蒸着層5を形成する方法は特に限定されない。一例を挙げると、蒸着方法は、従来公知の真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、または、化学蒸着法等を適宜採用し得る。これらの中でも、本実施形態の加飾フィルム成形体1の製造方法は、生産性が高いという理由により、真空蒸着法により蒸着層5を設けることが好ましい。蒸着条件は、蒸着層5の材料や、所望する蒸着層の厚みに基づいて、従来公知の条件が適宜採用され得る。なお、金属を蒸着する場合において、金属材料は、不純物が少なく、純度が99重量%以上であることが好ましく、99.5重量%以上であることがより好ましい。また、金属材料は、粒状、ロッド状、タブレット状、ワイヤー状あるいは使用するルツボ形状に加工したものであることが好ましい。金属材料を蒸発させるための加熱方法は、ルツボ中に金属材料を入れて抵抗加熱あるいは高周波加熱を行う方式や、電子ビーム加熱を行う方法、窒化硼素などのセラミック製のボードに金属材料を入れ直接抵抗加熱を行う方法など、周知の方法を用いることができる。真空蒸着に用いるルツボは、カーボン製であることが望ましく、アルミナやマグネシア、チタニア、ベリリア性のルツボであってもよい。
蒸着層5の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、蒸着層5の厚みは、7nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましい。また、蒸着層5の厚みは、100nm以下であることが好ましく、80nm以下であることがより好ましい。蒸着層5の厚みが上記範囲内であることにより、蒸着層5は、適度な可撓性を有し、後述するフィラーFによって表面に凹凸51(図2参照)が形成されやすい。
(接着層形成工程)
接着層形成工程は、蒸着層5上に、フィラーFを含む接着層6を形成する工程である。
接着層6を構成する樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、接着層6は、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、ウレタン変性ポリエステル樹脂系、ポリエステル樹脂系、エポキシ樹脂系、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)系、ビニル樹脂系(塩ビ、酢ビ、塩ビ−酢ビ共重合樹脂)、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体樹脂系、ポリビニルアルコール樹脂系、ポリアクリルアミド樹脂系、ポリアクリルアミド樹脂系、イソブチレンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、SBR、NBR、シリコーンゴム等の樹脂からなる。これらの樹脂は、適宜、溶剤に溶解されて使用されてもよく、無溶剤で使用されてもよい。
接着層6の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、接着層6の厚みは、0.5〜5μm程度である。
フィラーFは、後述する転写基材形成工程において、蒸着層5の表面に凹凸51を形成するために配合されている。
フィラーFは特に限定されない。一例を挙げると、フィラーFは、メラミン系樹脂粒子、アクリル系樹脂粒子、アクリル−スチレン系共重合体粒子、ポリカーボネート系粒子、ポリエチレン系粒子、ポリスチレン系粒子である。また、フィラーFは、シリカ粒子や、タルク、窒化ホウ素等であってもよい。
フィラーFの形状は特に限定されない。フィラーFの形状は、各種定形であってもよく、レンズ状や鱗片状等の不定形であってもよい。図1には、レンズ状のフィラーF(レンズ状フィラーF)が例示されている。
不定形フィラーの形状は、真球状以外の形状であることが好ましく、レンズ状(楕円球状)または鱗片状であることがより好ましい。不定形フィラーの形状は真球状以外であることにより、フィラーは、光を全方向に拡散させることが無く、白っぽい外観を呈しにくい。その結果、得られる加飾フィルム成形体1は、サテンめっきの金属調を表現しやすい。
不定形フィラーの寸法は特に限定されない。一例を挙げると、不定形フィラーがレンズ状フィラーである場合、レンズ状フィラーFの長径L1は、2.0μm以上であることが好ましく、6.0μm以上であることがより好ましい。また、レンズ状フィラーFの長径L1は、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。また、レンズ状フィラーFの厚みL2は、1.0μm以上であることが好ましく、2.0μm以上であることがより好ましい。また、レンズ状フィラーFの厚みL2は、5.0μm以下であることが好ましく、3.0μm以下であることがより好ましい。さらに、レンズ状フィラーFのアスペクト比(長径/厚み)は、1.0以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましい。また、レンズ状フィラーFのアスペクト比は、10以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましい。レンズ状フィラーFの寸法が上記範囲内であることにより、後述する転写基材形成工程において、蒸着層5の表面に、所望の寸法の凹凸51が形成されやすい。この結果、得られる加飾フィルム成形体1は、特に金属光沢と低い写像性とが両立されやすい。
一方、不定形フィラーが鱗片状フィラーである場合、鱗片状フィラーの長径は、0.5μm以上10μm以下であることが好ましい。また、鱗片状フィラーの厚みは、0.05μm以上0.5μm以下であることが好ましい。さらに、鱗片状フィラーのアスペクト比(長径/厚み)は、10以上150以下であることが好ましい。鱗片状フィラーの寸法が上記範囲内であることにより、後述する転写基材形成工程において、蒸着層の表面に、所望の寸法の凹凸が形成されやすい。この結果、得られる加飾フィルム成形体は、特に金属光沢と低い写像性とが両立されやすい。
フィラーを含む接着層6が、蒸着層5上に形成されると、接着層6は、一部のフィラーFが接着層6の表面から露出した状態で固化する。図1には、一部のレンズ状フィラーFが接着層6の表面から露出した状態で固化している状態が示されている。
接着層6を形成する方法は特に限定されない。一例を挙げると、接着層6は、ロールコーター等を用いて、適宜溶剤に溶解した接着層6を構成する樹脂溶液を、蒸着層5上に塗布することにより形成し得る。
(遮蔽工程)
図4は、遮蔽工程を説明するための模式図である。遮蔽工程は、被剥離基材2の他方の面上に、紫外線を遮蔽する遮蔽部81と紫外線を透過する非遮蔽部82とを含む遮蔽板8を配置する工程である。遮蔽工程は、転写基材形成工程よりも前に実施されればよい。
遮蔽板8は、紫外線を遮蔽する遮蔽部81と、紫外線を透過する非遮蔽部82とが形成されている。遮蔽板8の材質は特に限定されない。一例を挙げると、遮蔽板8は、各種樹脂素材、ガラス等である。
遮蔽部81の表面は、黒色であり、紫外線に対する透過率が低い。これにより、遮蔽板8に対して照射された紫外線は、遮蔽部81を透過せず、非遮蔽部82を主に透過する。非遮蔽部82を透過した紫外線は、保護層4に到達し、後述する仮硬化工程において、保護層4の一部を非遮蔽部82の形状に沿って硬化(仮硬化)する。
非遮蔽部82の形状は特に限定されない。一例を挙げると、非遮蔽部82の形状は、所望する図柄に応じて適宜決定され得る。図4では、非遮蔽部82の形状が、複数のひし形である場合が例示されている。なお、遮蔽部81は、完全に紫外線を遮蔽しなくともよい。少なくとも、非遮蔽部82と遮蔽部81とは、紫外線に対する所定の透過率差があればよい。
(仮硬化工程)
仮硬化工程は、保護層4から接着層6の方向へ、非遮蔽部82を通過するよう紫外線を照射し、保護層4を仮硬化する工程である。仮硬化工程は、上記した遮蔽工程よりも後であって、かつ、後述する転写基材形成工程よりも前に実施されればよい。
紫外線を照射する方法は特に限定されない。一例を挙げると、紫外線は、紫外線照射装置(ECS−4011GX(高圧水銀ランプを使用)、アイグラフィックス(株)製)を用いて、積算光量500mJ/cm2となるよう保護層4から接着層6の方向へ、照射し得る。照射された紫外線は、遮蔽板8の遮蔽部81を透過せず、非遮蔽部82を主に透過する。非遮蔽部82を透過した紫外線は、保護層4に到達し、保護層4の一部を非遮蔽部82の形状(本実施形態では複数のひし形)に沿って硬化(仮硬化)する。
(転写基材形成工程)
転写基材形成工程は、接着層6上に、転写基材7を形成(装着)する工程である。
転写基材7(基材)は特に限定されない。基材は、樹脂シート、紙、布、ゴムシート、発泡体シート、ガラス等である。樹脂シートは、アクリロニトリル・スチレン(AS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、各種アクリレート、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂シート;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂シート;塩化ビニル樹脂シート;酢酸ビニル樹脂シート;ポリイミド樹脂シート;ポリアミド樹脂シート;フッ素樹脂シート;セロハン等が例示される。紙は、和紙、クラフト紙、グラシン紙、上質紙、合成紙、トップコート紙等が例示される。布は、各種繊維状物質の単独または混紡等による織布や不織布等が例示される。ゴムシートは、天然ゴムシート、ブチルゴムシート等が例示される。発泡体シートは、発泡PEシート等の発泡ポリオレフィンシート、発泡ポリエステルシート、発泡ポリウレタンシート、発泡ポリクロロプレンゴムシート等が例示される。これらの中でも、基材は、表面耐性や加工性が優れる等の理由により、アクリロニトリル・スチレン(AS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)製であることが好ましい。
基材の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、基材の厚みは、4μm〜10mm程度である。基材の厚みが上記範囲内であることにより、基材は、加工性が優れ、外観を損なうことなく転写しやすい。
図1に示されるように、レンズ状フィラーFが露出した接着層6に対して、転写基材7が押し当てられると、露出していたレンズ状フィラーFは、接着層6の厚み方向に押し込まれる。その結果、図2に示されるように、レンズ状フィラーFは、接着層6の厚み方向に埋没されるとともに、蒸着層5を変形させる。その結果、蒸着層5の表面には、凹凸51(保護層4側に向かって突出した略椀状の凸部)が形成される。なお、上記のとおり、レンズ状フィラーFの厚みは、接着層6の厚みよりも大きいことが好ましい。これにより、蒸着層5の表面に凹凸51が形成されやすい。
凸部の最大径は、2.0μm以上20μm以下であることが好ましい。凸部の高さは、0.5μm以上5.0μm以下であることが好ましい。凸部の最大径および高さが上記範囲内であることにより、得られる加飾フィルム成形体1は、艶消しの程度が適切に調整されやすい。その結果、加飾フィルム成形体1は、適度な艶消し性とコントラストに寄与する光沢特性とが、適切に調整されやすく、サテンめっきの金属調の意匠感をより正確に再現できる。
(剥離工程)
剥離工程は、被剥離基材2および離型層3を剥離する工程である。図2および図3に示されるように、剥離工程によれば、被剥離基材2と、離型層3とが剥離される。その結果、保護層4が露出される。
(本硬化工程)
本硬化工程は、保護層4から接着層6の方向へ、紫外線を照射し、保護層4を本硬化する工程である。本硬化工程は、転写基材形成工程よりも後に実施されればよい。なお、上記遮蔽工程において配置された遮蔽板8は、本硬化工程の実施前までの適時に、取り除かれればよい。本硬化工程は、剥離工程の後に実施されることが好ましい。これにより、本硬化工程は、剥離工程により露出された保護層に対して紫外線が照射される。そのため、得られる加飾フィルム成形体は、より均一に硬化されやすい。
紫外線を照射する方法は特に限定されない。一例を挙げると、紫外線は、紫外線照射装置(ECS−4011GX(高圧水銀ランプを使用)、アイグラフィックス(株)製)を用いて、積算光量1000mJ/cm2となるよう保護層4から接着層6の方向へ、照射し得る。照射された紫外線は、保護層4に到達し、上記した仮硬化工程において仮硬化された部位(本実施形態では複数のひし形)を含む保護層4全体を硬化(本硬化)する。
以上、本実施形態によれば、保護層4は、仮硬化工程において、非遮蔽部82を透過した紫外線によって、非遮蔽部82の形状に沿って硬化される。その後、転写基材形成工程において、フィラーFが接着層6に埋設され、蒸着層5を変形し、凹凸51が形成される。また、本硬化工程において、保護層4は、全体が硬化される。その結果、保護層4において最初に硬化された部位と、その周囲の部位とは、別々の工程(仮硬化工程および本硬化工程)によって硬化されており、かすかな輪郭が形成された図柄が保護層4に形成される。また、保護層4から接着層6に向かう方向から見ると、蒸着層5に形成された凹凸51は、上面視において図柄と重なる位置に形成された凹凸51と、図柄と重ならない位置に形成された凹凸51とがある。これらの凹凸51は、いずれも、所定の角度だけ傾斜させると、図柄の輪郭を浮き上がらせるように光を反射する場合(図柄が視認可能な状態)と、図柄の輪郭には影響を与えないよう光を反射する場合(図柄が視認困難な状態)とに変化し得る。
図5は、図柄が視認困難な状態となるよう加飾フィルム成形体1を傾斜させた状態を示す模式図である。図6は、図柄が視認可能な状態となるよう加飾フィルム成形体1を傾斜させた状態を示す模式図である。図7は、図柄が視認困難な状態となるよう加飾フィルム成形体1を傾斜させた状態を示す写真である。図8は、図柄が視認可能な状態となるよう加飾フィルム成形体1を傾斜させた状態を示す写真である。本実施形態の加飾フィルム成形体1は、図5に示されるように、所定の角度だけ傾斜させた場合に、蒸着層5に形成された凹凸(図示せず)によって光が反射し、保護層4に形成された図柄のかすかな輪郭が視認されにくくなる。その結果、図柄はほとんど視認することができない。一方、図6に示されるように、さらに所定の角度だけ傾斜させた場合に、蒸着層5に形成された凹凸(図示せず)によって光が、図5に示される状態とは異なるよう反射し、保護層4に形成された図柄の輪郭を浮き上がらせる。また、図7と図8との比較から分かるように、加飾フィルム成形体1は、図7に示される視認困難な状態から、所定の角度だけ傾斜させて図8に示される状態に傾きを変化させると、保護層4に形成された図柄の輪郭が浮き上がる。
このように、保護層4は、仮硬化工程によって図柄の形状に硬化されたのち、本硬化工程によって、図柄を含む全体が硬化されている。そのため、保護層4は、図柄が周囲と一体化されており、複製することが極めて困難である。また、保護層4の表面は、平坦である。そのため、保護層4の表面を触っても、図柄の形状は確認することができない。その結果、本実施形態で得られた加飾フィルム成形体1は、たとえば、紙幣や有価証券などの媒体に、偽造防止のための機能を付与する技術、商品パッケージへの偽造防止性を兼ねた加飾を付与する技術等として好適である。
また、本実施形態の加飾フィルム成形体1は、サテンめっきの金属調を付した種々の製品(サテンめっき調製品)に用いることができる。これにより、得られるサテンめっき調製品は、いずれも色ブレが小さく、優れたサテンめっきの金属調の意匠感を示す。
特に、本実施形態の加飾フィルム成形体1は、種々の容器に適用されることにより、たとえば化粧品の容器、飲料の容器等の、グロス感や高級感のある外観が所望される容器において、色ブレが小さく、優れたサテンめっきの金属調の意匠感を示す種々の容器が得られる。
また、本実施形態の加飾フィルム成形体1は、種々の筐体に適用されることにより、たとえば携帯電話等の通信機器、家電製品の筐体等の、グロス感や高級感のある外観が所望される筐体において、色ブレが小さく、優れたサテンめっきの金属調の意匠感を示す種々の筐体が得られる。
さらに、本実施形態の加飾フィルム成形体1は、種々の車両用内外装部材に適用されることにより、グロス感や高級感のある外観が所望される種々の車両用内外装部材において、色ブレが小さく、優れたサテンめっきの金属調の意匠感を示す種々の車両用内外装部材が得られる。
他にも、本実施形態の加飾フィルム成形体1は、たとえば顧客や物品等の識別情報等を記憶させた会員証、商品タグ、診察券、学生証、キャッシュカード、クレジットカード、乗車券、マイレージカード、ポイントカード、磁気カード等のセキュリティや非模倣性が要求される物品の一部分または全体に好適に使用される。
<第2の実施形態>
本発明の一実施形態の加飾フィルム成形体の製造方法は、被剥離基材の一方の面上に、離型層を形成する離型層形成工程と、離型層上に、紫外線硬化型樹脂組成物を含む保護層を形成する保護層形成工程と、保護層上に、蒸着層を形成する蒸着層工程と、蒸着層上に、印刷部を形成する印刷工程と、印刷部の形成された蒸着層上に、接着層を形成する接着層形成工程と、接着層上に、転写基材を押し当てることにより、印刷部を蒸着層に押し当てて、蒸着層を変形させるとともに転写基材を形成する転写基材形成工程と、被剥離基材および離型層を剥離する剥離工程とを含む。以下、それぞれの工程について説明する。なお、以下の説明において、上記した第1の実施形態と同様の工程については、適宜説明が省略される。
(離型層形成工程、保護層形成工程および蒸着層形成工程)
離型層形成工程は、被剥離基材の一方の面上に、離型層を形成する工程である。保護層形成工程は、離型層上に、紫外線硬化型樹脂組成物を含む保護層を形成する工程である。蒸着層形成工程は、保護層上に、蒸着層を形成する工程である。離型層形成工程、保護層形成工程および蒸着層形成工程は、いずれも第1の実施形態において上記したとおりである。
(印刷工程)
印刷工程は、蒸着層上に、印刷部を形成する工程である。印刷部の形成方法は特に限定されない。一例を挙げると、印刷部は、蒸着層に対して、グラビア印刷、オフセット印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、シルク印刷、静電印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷方法により形成され得る。
印刷部の形状は特に限定されない。図9は、本実施形態の加飾フィルム成形体1aの製造方法を説明するための模式的な断面図である。一例を挙げると、印刷部9は、所望の文字や図形等の図柄である。図9では、複数のひし形の図柄が印刷部9として形成される場合が例示されている。
印刷部9の領域面積は特に限定されない。領域面積は、所望する図柄に応じて適宜決定され得る。また、印刷部9の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、印刷層の厚みは、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。また、印刷層の厚みは、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。印刷層の厚みは、所望する図柄の形状や、視認性の程度に応じて、適宜調整され得る。印刷層の厚みが上記範囲内であることにより、得られる加飾フィルム成形体1aは、印刷層によって形成された図柄を視認可能な状態または視認困難な状態に切り替えやすい。
(接着層形成工程)
接着層形成工程は、印刷部9の形成された蒸着層5上に、接着層6を形成する工程である。本実施形態の接着層形成工程は、フィラーを含んでいない点を除き、上記した第1の実施形態の接着層形成工程と同様である。
(転写基材形成工程)
転写基材形成工程は、接着層6上に、転写基材7を押し当てることにより、印刷部9を蒸着層5に押し当てて、蒸着層5を変形させるとともに転写基材7を形成(装着)する工程である。転写基材7の種類や寸法等は、第1の実施形態において上記したものと同様である。
接着層6上に転写基材7が押し当てられると、接着層6を介して、蒸着層5に設けられた印刷部9が、蒸着層5の厚み方向に押し込まれる。その結果、印刷部9は、蒸着層5を変形させる。これにより、蒸着層5の表面には、印刷部9の形状(すなわち図柄の形状)に沿った凹凸(保護層4側に向かって突出した凸部、図示せず)が形成される。
(硬化工程)
硬化工程は、保護層4から接着層6の方向へ、紫外線を照射し、保護層4を硬化する工程である。硬化工程は、上記した本硬化工程と同様である。
(剥離工程)
剥離工程は、被剥離基材2および離型層3を剥離する工程である。剥離工程によれば、被剥離基材2と、離型層3とが剥離される。その結果、保護層4が露出される。
以上、本実施形態によれば、加飾フィルム成形体1aの内部において、蒸着層5が図柄(印刷部9)の形状に沿って変形されている。また、加飾フィルム成形体1aの内部には、印刷部9として図柄が設けられている。このような変形した蒸着層5および図柄を含む加飾フィルム成形体1aは、所定の角度だけ傾斜させると、図柄の輪郭を浮き上がらせるように光を反射する場合(図柄が視認可能な状態)と、図柄の輪郭には影響を与えないよう光を反射する場合(図柄が視認困難な状態)とに変化し得る。
図10は、図柄が視認困難な状態となるよう加飾フィルム成形体1aを傾斜させた状態を示す模式図である。図11は、図柄が視認可能な状態となるよう加飾フィルム成形体1aを傾斜させた状態を示す模式図である。本実施形態の加飾フィルム成形体1aは、図10に示されるように、所定の角度だけ傾斜させた場合に、蒸着層5に形成された凹凸(図示せず)によって光が反射し、印刷部9の図柄が視認されにくくなる。一方、図11に示されるように、さらに所定の角度だけ傾斜させた場合に、蒸着層5に形成された凹凸(図示せず)によって光が、図10に示される状態とは異なるよう反射し、印刷部9の図柄の輪郭を浮き上がらせる。
このように、図柄を構成する印刷部9は、加飾フィルム成形体1aの内部に設けられており、かつ、複製することが極めて困難である。また、保護層4の表面は、平坦である。そのため、保護層4の表面を触っても、図柄の形状は確認することができない。その結果、本実施形態で得られた加飾フィルム成形体1aは、たとえば、紙幣や有価証券などの媒体に、偽造防止のための機能を付与する技術、商品パッケージへの偽造防止性を兼ねた加飾を付与する技術等として好適である。また、本実施形態の加飾フィルム成形体1aは、第1の実施形態において上記した種々の用途に好適である。
<第3の実施形態>
本発明の一実施形態の加飾フィルム成形体の製造方法は、被剥離基材の一方の面上に、離型層を形成する離型層形成工程と、離型層上に、紫外線硬化型樹脂組成物を含む保護層を形成する保護層形成工程と、保護層上に、蒸着層を形成する蒸着層工程と、蒸着層上に、印刷部を形成する印刷工程と、印刷部の形成された蒸着層上に、フィラーを含む接着層を形成する接着層形成工程と、接着層上に、転写基材を押し当てることにより、フィラーを接着層に埋設させて、蒸着層の表面に凹凸を形成するとともに、印刷層を蒸着層に押し当てて、蒸着層を変形させ、転写基材を形成する転写基材形成工程と、被剥離基材および離型層を剥離する剥離工程とを含む。以下、それぞれの工程について説明する。なお、以下の説明において、上記した第1の実施形態または第2の実施形態と同様の工程については、適宜説明が省略される。
(離型層形成工程、保護層形成工程、蒸着層形成工程および印刷工程)
離型層形成工程は、被剥離基材の一方の面上に、離型層を形成する工程である。保護層形成工程は、離型層上に、紫外線硬化型樹脂組成物を含む保護層を形成する工程である。蒸着層形成工程は、保護層上に、蒸着層を形成する工程である。印刷工程は、蒸着層上に、印刷部を形成する工程である。離型層形成工程、保護層形成工程、蒸着層形成工程および印刷工程は、いずれも第2の実施形態において上記したとおりである。
(接着層形成工程)
接着層形成工程は、印刷部の形成された蒸着層上に、フィラーを含む接着層を形成する工程である。本実施形態の接着層形成工程は、フィラーを含む点を除き、上記した第2の実施形態の接着層形成工程と同様である。フィラーは、第1の実施形態において上記したものと同様である。
接着層形成工程によれば、印刷部の形成された蒸着層を覆うように、接着層が形成される。フィラーを含む接着層が、蒸着層上に形成されると、接着層は、一部のフィラーが接着層の表面から露出した状態で固化する。
(転写基材形成工程)
転写基材形成工程は、接着層上に、転写基材を押し当てることにより、フィラーを接着層に埋設させて、蒸着層の表面に凹凸を形成するとともに、印刷層を蒸着層に押し当てて、蒸着層を変形させ、転写基材を形成(装着)する工程である。転写基材の種類や寸法等は、第1の実施形態において上記したものと同様である。
接着層上に転写基材が押し当てられると、接着層を介して、蒸着層に設けられた印刷部が、蒸着層の厚み方向に押し込まれる。その結果、印刷部は、蒸着層を変形させる。これにより、蒸着層の表面には、印刷部の形状(すなわち図柄の形状)に沿った凹凸(保護層側に向かって突出した凸部)が形成される。
また、接着層上に転写基材が押し当てられると、露出していたフィラーは、接着層の厚み方向に押し込まれる。その結果、フィラーは、接着層の厚み方向に埋没されるとともに、蒸着層を変形させる。その結果、蒸着層の表面には、上記した印刷部による凹凸とは異なる寸法の凹凸(第2の凹凸)が形成される。なお、上記のとおり、フィラーの厚みは、接着層の厚みよりも大きいことが好ましい。これにより、蒸着層の表面に凹凸が形成されやすい。
(硬化工程)
硬化工程は、保護層から接着層の方向へ、紫外線を照射し、保護層を硬化する工程である。硬化工程は、上記した本硬化工程と同様である。
(剥離工程)
剥離工程は、被剥離基材および離型層を剥離する工程である。剥離工程によれば、被剥離基材と、離型層とが剥離される。その結果、保護層が露出される。
以上、本実施形態によれば、加飾フィルム成形体の内部において、蒸着層が図柄(印刷部)の形状に沿って変形されている。また、加飾フィルム成形体の内部には、印刷部として図柄が設けられている。さらに、蒸着層は、フィラーによって微細な凹凸が形成されている。保護層から接着層に向かう方向から見ると、蒸着層に形成された微細な凹凸は、上面視において印刷部である図柄と重なる位置に形成された微細な凹凸と、図柄と重ならない位置に形成された微細な凹凸とがある。その結果、印刷部と、その周囲とでは、光を反射する程度が変化する。具体的には、本実施形態の加飾フィルム成形体は、所定の角度だけ傾斜させると、図柄の輪郭を浮き上がらせるように光を反射する場合(図柄が視認可能な状態)と、図柄の輪郭には影響を与えないよう光を反射する場合(図柄が視認困難な状態)とに変化し得る。
本実施形態の加飾フィルム成形体は、このように、図柄を構成する印刷部が、加飾フィルム成形体の内部に設けられており、かつ、複製することが極めて困難である。また、保護層の表面は、平坦である。そのため、保護層の表面を触っても、図柄の形状は確認することができない。その結果、本実施形態で得られた加飾フィルム成形体は、たとえば、紙幣や有価証券などの媒体に、偽造防止のための機能を付与する技術、商品パッケージへの偽造防止性を兼ねた加飾を付与する技術等として好適である。また、本実施形態の加飾フィルム成形体は、第1の実施形態において上記した種々の用途に好適である。
上記実施形態では、保護層の表面が平坦である場合について述べた。しかしながら、本発明は、これに限定されない。本発明の加飾フィルム成形体は、保護層の表面に適宜、凹凸を設けてもよい。これにより、加飾フィルム成形体は、サテンめっき調の独特の鈍い金属光沢を有するとともに、マット調の意匠性が付与されて、人の顔や外光、照明光等の写り込みが低減され得る。
<加飾フィルム成形体>
本発明の一実施形態の加飾フィルム成形体は、基材と、接着層と、蒸着層と、保護層とを有する。蒸着層は、表面に凹凸が形成されている。接着層は、フィラーを含む。保護層は、第1領域と、第1領域よりも重合度が大きい第2領域とを有する。保護層の法線方向から45°傾斜した角度からマルチアングル測色計の光源からの光を入射させた際、入射させた光の正反射方向を0°と定義し、正反射方向から前記光源側をプラスの角度と定義し、正反射方向から光源と反対側をマイナスの角度と定義する場合において、第1領域における−15°方向のL*値(L1*-15)は、第2領域における−15°方向のL*値(L2*-15)よりも大きく、第1領域における15°方向のL*値(L1*15)は、第2領域における15°方向のL*値(L2*15)よりも大きく、第1領域における25°方向のL*値(L1*25)は、第2領域における25°方向のL*値(L2*25)よりも大きい。以下、それぞれについて説明する。なお、以下の説明において、加飾フィルム成形体の製造方法に関連して上記した構成と同様の構成(たとえば基材、接着層、蒸着層、保護層、フィラー等)については、説明が適宜省略される。
本実施形態の加飾フィルムは、保護層が、第1領域と第2領域とを有する。第1領域および第2領域は、いずれも保護層を構成する樹脂溶液が硬化された層である。本実施形態の第2領域は、第1領域よりも重合度が大きい。すなわち、第2領域は、第2領域を構成する樹脂溶液が、第1領域を構成する樹脂溶液よりも、より硬化されている。
第1領域よりも第2領域の重合度を大きくする方法は特に限定されない。一例を挙げると、第2領域は、図4に関連して説明したように、遮蔽板8によって被剥離基材2を覆い非遮蔽部82に紫外線を通過させて保護層4を仮硬化し、次いで、遮蔽板8を除去して保護層4全体を本硬化することにより、重合度が大きくなるよう調整され得る。このような方法によれば、保護層のうち、仮硬化および本硬化が行われた領域(第2領域)は、本硬化のみが行われた領域(第1領域)と比較して、硬化がより進み、重合度が大きくなっている。
本実施形態の加飾フィルム成形体は、特に、加飾フィルム成形体の製造方法に関連して上記した製造方法によって作製されることが好ましい。すなわち、仮硬化工程において、保護層の一部が硬化される。次いで、転写基材形成工程において、接着層に含まれるフィラーが転写基材によって接着層に押し当てられて、蒸着層の表面に凹凸を形成する。その後、本硬化工程において、保護層全体が本硬化される。これにより、保護層において最初に硬化された部位と、その周囲の部位とは、別々の工程(仮硬化工程および本硬化工程)によって硬化されており、かすかな輪郭が形成された図柄が保護層に形成される。また、保護層から接着層に向かう方向から見ると、蒸着層に形成された凹凸は、上面視において図柄と重なる位置に形成された凹凸と、図柄と重ならない位置に形成された凹凸とがある。これらの凹凸は、いずれも、所定の角度だけ傾斜させると、図柄の輪郭を浮き上がらせるように光を反射する場合(図柄が視認可能な状態)と、図柄の輪郭には影響を与えないよう光を反射する場合(図柄が視認困難な状態)とに変化し得る。
より具体的には、本実施形態の加飾フィルム成形体は、上記した重合度の異なる第1領域と第2領域とが、マルチアングル測色計を用いて測定し得るハイライト領域におけるL*値が、所定の関係を示すことを特徴とする。図12は、本実施形態の加飾フィルム成形体に対して、マルチアングル測色計の光源からの光を入射させている様子を説明するための模式図である。NDは法線方向を示す。なお、本実施形態において、マルチアングル測色計は、x−rite社製の「MA−T6」を使用し、光源として多色性白色LED(D65光源)を使用し得る。測定領域は、20mm×30mmを採用し得る。
図12に示されるように、保護層4の第1領域および第2領域のそれぞれに対して、45°傾斜した角度θ1からマルチアングル測色計の光源Lからの光を入射させる場合において、正反射方向RDを0°と定義する。また、正反射方向RDから光源L側をプラスの角度と定義し、正反射方向から光源と反対側をマイナスの角度と定義する。そして、−15°方向R-15、15°方向R15、25°方向R25、45°方向R45、75°方向R75、110°方向R110におけるL*を測定する。
本実施形態の加飾フィルム成形体は、第1領域における−15°方向のL*値(L1*-15)が、第2領域における−15°方向のL*値(L2*-15)よりも大きい。同様に、第1領域における15°方向のL*値(L1*15)が、第2領域における15°方向のL*値(L2*15)よりも大きい。さらに、第1領域における25°方向のL*値(L1*25)が、第2領域における25°方向のL*値(L2*25)よりも大きい。このように、本実施形態の加飾フィルム成形体は、正反射方向RDの近傍である−15°、15°および25°といったハイライト領域において、第1領域のL*値が、いずれも第2領域のL*値よりも大きい。そのため、加飾フィルム成形体は、所定の角度だけ傾けた場合に、第1の領域と第2の領域とのL*値の差に基づく反射の程度の違いによって、図柄を視認可能な状態または視認困難な状態に切り替えることができる。また、加飾フィルム成形体は、種々の基材を使用し得る。
また、本実施形態の加飾フィルム成形体は、上記ハイライト領域以外の領域(たとえばシェード領域)では、第1領域と第2領域とのL*値の差が小さい。具体的には、本実施形態の加飾フィルム成形体は、第1領域における75°方向のL*値(L1*75)と、第2領域における75°方向のL*値(L2*75)とが同程度である。同様に、第1領域における110°方向のL*値(L1*110)が、第2領域における110°方向のL*値(L2*110)と同程度である。
このように、本実施形態の加飾フィルム成形体は、ハイライト領域となる角度から視認すると、L*値の差が顕著となり、図柄が視認されやすいが、シェード領域となる角度から視認すると、L*値の差がほとんどなく、図柄が視認しにくくなる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。なお、特に制限のない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み:25μm)を被剥離基材とし、アクリルスチレン樹脂(添加量:91部)、硬化剤(イソシアネート、添加:9部)をバーコーターにて塗工した。この未硬化樹脂層を50℃、48時間にて硬化させ、離型層(厚み:1.0μm)を作製した(離型層形成工程)。離型層上に、多官能アクリレート樹脂溶液(97部)、光重合硬化剤(添加量:3部)をバーコーターにて塗工し、保護層(厚み:5.0μm)を作製した(保護層形成工程)。保護層上に、アクリル樹脂(添加量:100部)をバーコーターにて塗工した。この未硬化樹脂層を110℃、30秒にて硬化させ、蒸着アンカー層(厚み:1.0μm)を作成した。蒸着アンカー層上に抵抗加熱式蒸着機を用い、インジウムの真空蒸着を行った。厚み50nmのインジウム膜(蒸着層)を形成した(蒸着層形成工程)。蒸着層上に、アクリル樹脂(添加量:38部)、ウレタン樹脂溶液(添加量:57部)、レンズ状フィラー(アクリル、積水化成品工業製、寸法:長径7.2μm、厚み2.8μm、添加量:5部)を、バーコーターにて塗工し、接着層(厚み:1.0μm)を作製した(接着層形成工程)。そして、紫外線照射装置(ECS−4011GX(高圧水銀ランプを使用)、アイグラフィックス(株)製)を用いて、積算光量が500mJ/cm2となるよう保護層から接着層の方向へ照射した(仮硬化工程)。
その後、接着層上に、黒ABS板(転写基材)を、アップダウン転写機(ナビタス(株)製、MP−6)を用いて、押し付け荷重1kN、刻印温度180℃、転写時間1.0sという条件で押し当て、フィラーを接着層内に埋没させた(転写基材形成工程)。その結果、蒸着層が変形され、蒸着層の表面に凹凸が形成された(凹凸の詳細:平均長径4.1μm、高さ0.3〜0.5μmの凸形状)。次いで、被剥離基材および離型層を剥離した(剥離工程)。そして、紫外線照射装置(ECS−4011GX(高圧水銀ランプを使用)、アイグラフィックス(株)製)を用いて、積算光量1000mJ/cm2となるよう保護層から接着層の方向へ照射した(本硬化工程)。なお、実施例1では、本発明の効果をより明瞭に理解する目的と、マルチアングル測色計による測定が、比較的大きなサンプルでなければ測定できない理由から、あえて遮蔽工程を行わずに、保護層の全面を仮硬化および本硬化した。これにより、実施例1では、第2領域を再現した。一方、後述する実施例2では、仮硬化工程を実施しなかった。これにより、第1領域を再現した。
(実施例2)
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み:25μm)を被剥離基材とし、アクリルスチレン樹脂(添加量:91部)、硬化剤(イソシアネート、添加:9部)をバーコーターにて塗工した。この未硬化樹脂層を50℃、48時間にて硬化させ、離型層(厚み:1.0μm)を作製した(離型層形成工程)。離型層上に、多官能アクリレート樹脂溶液(97部)、光重合硬化剤(添加量:3部)をバーコーターにて塗工し、保護層(厚み:5.0μm)を作製した(保護層形成工程)。保護層上に、アクリル樹脂(添加量:100部)をバーコーターにて塗工した。この未硬化樹脂層を110℃、30秒にて硬化させ、蒸着アンカー層(厚み:1.0μm)を作成した。蒸着アンカー層上に抵抗加熱式蒸着機を用い、インジウムの真空蒸着を行った。厚み50nmのインジウム膜(蒸着層)を形成した(蒸着層形成工程)。蒸着層上に、アクリル樹脂(添加量:38部)、ウレタン樹脂溶液(添加量:57部)、レンズ状フィラー(アクリル、積水化成品工業(株)製、寸法:長径7.2μm、厚み2.8μm、添加量:5部)を、バーコーターにて塗工し、接着層(厚み:1.0μm)を作製した(接着層形成工程)。その後、接着層上に、黒ABS板(転写基材)を、アップダウン転写機(ナビタス(株)製、MP−6)を用いて、押し付け荷重1kN、刻印温度180℃、転写時間1.0sという条件で押し当て、フィラーを接着層内に埋没させた(転写基材形成工程)。その結果、蒸着層が変形され、蒸着層の表面に凹凸が形成された(凹凸の詳細:平均長径4.1μm、高さ0.3〜0.5μmの凸形状)。次いで、被剥離基材および離型層を剥離した(剥離工程)。そして、紫外線照射装置(ECS−4011GX(高圧水銀ランプを使用)、アイグラフィックス(株)製)を用いて、積算光量1000mJ/cm2となるよう保護層から接着層の方向へ照射した(本硬化工程)。
(実施例3)
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み:25μm)を被剥離基材とし、アクリルスチレン樹脂(添加量:91部)、硬化剤(イソシアネート、添加:9部)をバーコーターにて塗工した。この未硬化樹脂層を50℃、48時間にて硬化させ、離型層(厚み:1.0μm)を作製した(離型層形成工程)。離型層上に、多官能アクリレート樹脂溶液(97部)、光重合硬化剤(添加量:3部)をバーコーターにて塗工し、保護層(厚み:5.0μm)を作製した(保護層形成工程)。保護層上に、アクリル樹脂(添加量:100部)をバーコーターにて塗工した。この未硬化樹脂層を110℃、30秒にて硬化させ、蒸着アンカー層(厚み:1.0μm)を作成した。蒸着アンカー層上に抵抗加熱式蒸着機を用い、アルミニウムの真空蒸着を行った。厚み35nmのアルミニウム膜(蒸着層)を形成した(蒸着層形成工程)。蒸着層上に、アクリル樹脂(添加量:38部)、ウレタン樹脂溶液(添加量:57部)、レンズ状フィラー(アクリル、積水化成品工業製、寸法:長径7.2μm、厚み2.8μm、添加量:5部)を、バーコーターにて塗工し、接着層(厚み:1.0μm)を作製した(接着層形成工程)。そして、紫外線照射装置(ECS−4011GX(高圧水銀ランプを使用)、アイグラフィックス(株)製)を用いて、積算光量が500mJ/cm2となるよう保護層から接着層の方向へ照射した(仮硬化工程)。
その後、接着層上に、黒ABS板(転写基材)を、アップダウン転写機(ナビタス(株)製、MP−6)を用いて、押し付け荷重1kN、刻印温度180℃、転写時間1.0sという条件で押し当て、フィラーを接着層内に埋没させた(転写基材形成工程)。その結果、蒸着層が変形され、蒸着層の表面に凹凸が形成された(凹凸の詳細:平均長径4.1μm、高さ0.3〜0.5μmの凸形状)。次いで、被剥離基材および離型層を剥離した(剥離工程)。そして、紫外線照射装置(ECS−4011GX(高圧水銀ランプを使用)、アイグラフィックス(株)製)を用いて、積算光量1000mJ/cm2となるよう保護層から接着層の方向へ照射した(本硬化工程)。なお、実施例3では、本発明の効果をより明瞭に理解する目的と、マルチアングル測色計による測定が、比較的大きなサンプルでなければ測定できない理由から、あえて遮蔽工程を行わずに、保護層の全面を仮硬化および本硬化した。これにより、実施例3では、第2領域を再現した。一方、後述する実施例4では、仮硬化工程を実施しなかった。これにより、第1領域を再現した。
(実施例4)
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み:25μm)を被剥離基材とし、アクリルスチレン樹脂(添加量:91部)、硬化剤(イソシアネート、添加:9部)をバーコーターにて塗工した。この未硬化樹脂層を50℃、48時間にて硬化させ、離型層(厚み:1.0μm)を作製した(離型層形成工程)。離型層上に、多官能アクリレート樹脂溶液(97部)、光重合硬化剤(添加量:3部)をバーコーターにて塗工し、保護層(厚み:5.0μm)を作製した(保護層形成工程)。保護層上に、アクリル樹脂(添加量:100部)をバーコーターにて塗工した。この未硬化樹脂層を110℃、30秒にて硬化させ、蒸着アンカー層(厚み:1.0μm)を作成した。蒸着アンカー層上に抵抗加熱式蒸着機を用い、アルミニウムの真空蒸着を行った。厚み35nmのアルミニウム膜(蒸着層)を形成した(蒸着層形成工程)。蒸着層上に、アクリル樹脂(添加量:38部)、ウレタン樹脂溶液(添加量:57部)、レンズ状フィラー(アクリル、積水化成品工業製、寸法:長径7.2μm、厚み2.8μm、添加量:5部)を、バーコーターにて塗工し、接着層(厚み:1.0μm)を作製した(接着層形成工程)。その後、接着層上に、黒ABS板(転写基材)を、アップダウン転写機(ナビタス(株)製、MP−6)を用いて、押し付け荷重1kN、刻印温度180℃、転写時間1.0sという条件で押し当て、フィラーを接着層内に埋没させた(転写基材形成工程)。その結果、蒸着層が変形され、蒸着層の表面に凹凸が形成された(凹凸の詳細:平均長径4.1μm、高さ0.3〜0.5μmの凸形状)。次いで、被剥離基材および離型層を剥離した(剥離工程)。そして、紫外線照射装置(ECS−4011GX(高圧水銀ランプを使用)、アイグラフィックス(株)製)を用いて、積算光量1000mJ/cm2となるよう保護層から接着層の方向へ照射した(本硬化工程)。
実施例1〜4において得られた加飾フィルム成形体について、以下の方法により、種々の角度におけるL*値を測定した。結果を表1に示す。
<L*値の測定>
それぞれの加飾フィルム成形体の保護層の法線方向から45°傾斜した角度からマルチアングル測色計の光源からの光を入射させた際、入射させた光の正反射方向を0°と定義し、正反射方向から光源側をプラスの角度と定義し、正反射方向から光源と反対側をマイナスの角度と定義する場合において、第1領域(実施例2および実施例4)と、第2領域(実施例1および実施例3)におけるL*値を測定した。測定時の角度は、−15°方向、15°方向、25°方向、45°方向、75°方向、110°方向とした。なお、マルチアングル測色計は、x−rite社製の「MA−T6」を使用し、光源として多色性白色LED(D65光源)を使用した。測定領域は、20mm×30mmとした。
表1に示されるように、第2領域を想定して全面仮硬化した実施例1と、第1領域を想定して仮硬化しなかった実施例2とを比較すると、ハイライト領域(−15°〜25°)におけるL*値が、いずれも実施例2の方が実施例1よりも大きかった。また、実施例1と実施例2とでは、シェード領域におけるL*値の差はほとんど見られなかった。その結果、実施例1の第2領域と、実施例2の第1領域を備えるような加飾フィルム成形体は、所定の角度だけ傾けた場合に、第1の領域と第2の領域とのL*値の差に基づく反射の程度の違いによって、図柄を視認可能な状態または視認困難な状態に切り替えることができることが示された。実施例3および実施例4に関しても同様であった。
1、1a 加飾フィルム成形体
2 被剥離基材
3 離型層
4 保護層
5 蒸着層
6 接着層
7 転写基材
8 遮蔽板
81 遮蔽部
82 非遮蔽部
9 印刷部
F フィラー
L 光源
L1 フィラーの長径
L2 フィラーの厚み
ND 法線方向
RD 正反射方向
-15、R15、R25、R45、R75、R110 方向
θ1 入射角度

Claims (2)

  1. 被剥離基材の一方の面上に、離型層を形成する離型層形成工程と、
    前記離型層上に、紫外線硬化型樹脂組成物を含む保護層を形成する保護層形成工程と、
    前記保護層上に、蒸着層を形成する蒸着層形成工程と、
    前記蒸着層上に、フィラーを含む接着層を形成する接着層形成工程と、
    前記接着層上に、転写基材を押し当てることにより、前記フィラーを前記接着層に埋設させて、前記蒸着層の表面に凹凸を形成する転写基材形成工程と、
    前記被剥離基材および前記離型層を剥離する剥離工程と、を含み、
    前記転写基材形成工程よりも前に、前記被剥離基材の他方の面上に、紫外線を遮蔽する遮蔽部と紫外線を透過する非遮蔽部とを含む遮蔽板を配置する遮蔽工程を含み、
    前記遮蔽工程よりも後であって、かつ、前記転写基材形成工程よりも前に、前記保護層から前記接着層の方向へ、前記非遮蔽部を通過するよう紫外線を照射し、前記保護層を仮硬化する仮硬化工程を含み、
    前記転写基材形成工程よりも後に、前記保護層から前記接着層の方向へ、紫外線を照射し、前記保護層を本硬化する本硬化工程を含む、加飾フィルム成形体の製造方法。
  2. 前記本硬化工程は、前記剥離工程の後に実施される、請求項1記載の加飾フィルム成形体の製造方法。
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