[0006] 本発明の第1の態様によれば、アライメントマークの位置を決定するアライメントシステムが提供され、このアライメントシステムは、互いに対して約180度回転されたアライメントマークの2つの重なり合った画像を産出するように構成された第1のシステムと、これらの2つの重なり合った画像の強度照度の空間分布からアライメントマークの位置を決定するように構成された第2のシステムと、を備えている。
[0007] このアライメントシステムは、特定の設計のアライメントマークとの使用に限定されるのではなく、種々の異なるアライメントマークの位置を決定するために使用され得るので、有利である。
[0008] 第1のシステムは、アライメントマークをアライメント放射ビームで照明するように構成された非コヒーレントなアライメント放射ビーム源を備えていてもよい。これは、アライメントマークの位置を決定するときに、より多様な光源が用いられることを有利に可能にし得る。また、これにより、アライメントシステム内で発生する望ましくない反射によって生じる干渉が有利に回避され得る。
[0009] 第1のシステムは、アライメントマークをアライメント放射ビームで過充填するように構成された光学部品を備えていてもよい。これは、アライメントマークの画像の関心領域が選択されることを有利に可能にし得る。
[0010] 第1のシステムは、アライメントマークの2つの重なり合った画像の強度照度の空間分布を検出するとともにアライメントマークの2つの重なり合った画像の強度照度の空間分布を示す出力信号を提供するように構成された結像ディテクタを備えていてもよい。
[0011] 第2のシステムは、アライメントシステムに対するアライメントマークの複数の異なる位置について2つの重なり合った画像の強度照度の空間分布を分析することによってアライメントマークの位置を決定するように構成されたプロセッサを備えていてもよい。
[0012] プロセッサは、アライメントシステムに対するアライメントマークを備える基板の位置であってアライメントマークの2つの重なり合った画像が最も完全に重なる位置を決定するように構成されていてもよい。
[0013] 第1のシステムは、四極モードとして提供されるアライメント放射ビームでアライメントマークを照明するように構成されていてもよい。四極モードの使用は、ピッチの狭い格子を分解するのに特に良好であるから、有利である。
[0014] 第1のシステムは、アライメントマークを照明しアライメントマークの複数の画像を産出するアライメント放射ビームを提供するように構成された複数のアライメント放射ビーム源を備えていてもよい。複数のアライメント放射ビーム源は、異なる波長のアライメント放射ビームを放出するように構成されていてもよい。これは有利であり得る。なぜなら、入射する放射の異なる波長について結像ディテクタで見られるアライメントマーク画像は、アライメントマークについての情報及びアライメントマークが基板上に堆積した材料の層によってどのように影響されたかについての情報を提供するからである。例えば、異なる波長のアライメント放射ビームを用いて、アライメントマークの傾きに関する情報が得られるであろう。
[0015] 複数のアライメント放射ビーム源は、瞳面内で異なる位置を有する別々のアライメント放射ビームを提供するように構成されていてもよい。
[0016] 複数のアライメント放射ビーム源は変調されてもよい。
[0017] 異なるアライメント放射ビーム源は、異なる周波数で変調されてもよい。変調は、結像ディテクタで形成される異なる画像を判別する方法を有利に提供し得る。
[0018] 第1のシステムは、アライメントマークを複数のアライメント放射ビームで照明するように構成された1つ以上のアライメント放射ビーム源と、アライメント放射ビームを変調するように構成された変調器と、を備えていてもよい。
[0019] アライメント放射ビーム源ではなくアライメント放射ビームを変調することは、異なる波長を有する複数のアライメント放射ビームを産出するために複数の出口を有する単一のアライメント放射ビーム源が用いられることを有利に可能にする。なぜなら、アライメント放射ビームが、産出されている最中にではなく産出された後で変調され得るので、異なる周波数の変調が適用される複数のアライメント放射ビームを提供するための複数のアライメント放射ビーム源が不要であるからである。
[0020] 異なるアライメント放射ビームは、異なる周波数で変調されてもよい。
[0021] 変調器はアライメント放射ビームの振幅を変調してもよい。
[0022] 変調器はアライメント放射ビームの位相を変調してもよい。
[0023] 第2のシステムは、第1のアライメント放射ビームの変調を示す信号を受信し、第2のアライメント放射ビームの変調を示す信号を受信し、第1のアライメント放射ビームによって形成された2つの重なり合った画像の強度照度の空間分布及び第2のアライメント放射ビームによって形成された2つの重なり合った画像の強度照度の空間分布を示す信号を受信し、第1のアライメント放射ビームによって形成された2つの重なり合った画像と第2のアライメント放射ビームによって形成された2つの重なり合った画像とを判別するように構成された位相感応性信号ディテクタを備えていてもよい。これは、結像ディテクタにおいて異なるアライメント放射ビームによって形成される画像が迅速に判別されることを有利に可能にし得る。
[0024] 第1のシステムはバランス型フォトディテクタを備えていてもよい。バランス型フォトディテクタは、信号対雑音比が向上された出力信号を有利に提供し得る。
[0025] 4つのアライメント放射ビーム源が設けられてもよく、これらのアライメント放射ビーム源はそれぞれ、四極照明モードのうちの1極としてアライメント放射ビームを提供するように構成されている。
[0026] 第2のシステムは、アライメントマークが提供される制御環境から遠隔に配置された結像ディテクタを備えていてもよく、アライメント放射は制御環境から光ファイバのアレイを介して結像ディテクタへと輸送される。
[0027] 位相感応性信号ディテクタはロックイン増幅器を備えていてもよい。
[0028] 第1のシステムは、アライメントマークが提供される制御環境から遠隔に配置された複数の放射エミッタを備えていてもよい。アライメントビームは、放射エミッタから1つ以上の光ファイバを介して制御環境へと輸送されてもよい。
[0029] 本発明の第2の態様によれば、基板を保持する少なくとも2つの基板テーブルと、その基板テーブルのうち1つによって保持された基板のターゲット部分にパターニングされた放射ビームを投影する投影システムと、他の基板テーブルによって保持された基板上のアライメントマークの位置を決定する、先行するいずれかの段落に記載のアライメントシステムと、を備えるリソグラフィ装置が提供される。このリソグラフィ装置は、リソグラフィ露光とアライメントマークの位置決定とを同時に行うことを有利に可能にする。
[0030] 本発明の第3の態様によれば、互いに対して約180度回転されたアライメントマークの2つの重なり合った画像を生成することと、これらの2つの重なり合った画像の強度照度の空間分布からアライメントマークの位置を決定することと、を備える、アライメントマークの位置を決定する方法が提供される。
[0031] アライメントマークは、アライメントマークを過充填する放射で照明されてもよい。
[0032] アライメントシステムに対するアライメントマークの複数の異なる位置について2つの重なり合った画像の強度照度の空間分布が分析されてもよい。
[0033] アライメントマークの2つの重なり合った画像が最も完全に重なる位置がアライメントマークの位置であるものとして決定されてもよい。
[0034] アライメントマークの2つの重なり合った画像は、複数が、異なる波長の放射によって産出されてもよく、アライメントマークを復元するために用いられてもよい。
[0035] アライメントマークの2つの重なり合った画像は、複数が、瞳面内に異なる極から産出されてもよく、アライメントマークを復元するために用いられてもよい。
[0036] アライメントマークの2つの重なり合った画像は、複数が、変調されてもよい。
[0037] アライメントマークの2つの重なり合った画像は、異なる波長で変調されてもよい。
[0038] アライメントマークの2つの重なり合った画像は、複数が、変調情報を用いて互いに判別されてもよい。
[0039] 本発明の第4の態様によれば、投影システムを用いて、第1の基板テーブルによって保持された基板のターゲット部分にパターニングされた放射ビームを投影することと、同時に本発明の第3の態様のアライメント方法を実施して、第2の基板テーブルによって保持された基板上のアライメントマークの位置を決定することと、を備えるリソグラフィ方法が提供される。このリソグラフィ方法は、リソグラフィ露光とアライメントマークの位置決定とを同時に行うことを有利に可能にする。
[0040] 本発明の第5の態様によれば、基板上のアライメントマークの位置を決定するアライメントシステムが提供され、このアライメントシステムは、アライメント放射ビームを発生するように構成されたアライメント放射ビーム源と、アライメント放射ビームを基板上のアライメントマークに誘導するように構成された光学部品と、アライメントマークから反射されたアライメント放射を受信するように構成された自己参照光学系であって、そのアライメント放射を自己参照光学系の第1及び第2のアームに沿って誘導し、アライメントマークの2つの画像を生成する自己参照光学系と、重なり合って複合画像を形成するアライメントマークの2つの画像を受信するように位置決めされた結像ディテクタと、その複合画像を分析することによってアライメントシステムに対するアライメントマークの位置を決定するように構成されたプロセッサと、を備える。
[0041] このアライメントシステムは、アライメントが特定の種類のアライメントマークに限定されることなく実施されることを可能にするので、有利である。
[0042] 自己参照光学系のアームは、第1のアームに沿って進んできたアライメント放射が自己参照光学系を出ると第2のアームに沿って進んできたアライメント放射に対して反転されるように、アライメント放射に回転を付与するように構成されていてもよい。本明細書において用いられる「反転される」という用語は、アライメント放射が約180度の回転を経たことを意味しようとするものである。「反転される」という用語は、鏡像反転を示すことを意図してはいない。
[0043] 第1のシステムはLEDアライメント放射ビーム源を備えていてもよい。
[0044] アライメント放射ビーム源は非コヒーレントな放射源であってもよい。これにより、アライメントシステム内で発生する望ましくない反射によって生じる干渉が有利に回避され得る。
[0045] 光学部品は、アライメントマークをアライメント放射ビームで過充填するように構成されていてもよい。これは、結像ディテクタで受信した複合画像から関心領域が選択されることを有利に可能にする。
[0046] 複数のアライメント放射ビーム源は、異なる波長のアライメント放射ビームを放出するように構成されていてもよい。これは、アライメントマークが復元されることを有利に可能にし得る。
[0047] 複数のアライメント放射ビーム源は、瞳面内で異なる位置を有する別々のアライメント放射ビームを提供するように構成されていてもよい。これもまた、アライメントマークが復元されることを有利に可能にし得る。
[0048] 本発明の第6の態様によれば、基板を保持する少なくとも2つの基板テーブル1つの基板テーブルと、その基板テーブルのうち1つによって保持された基板のターゲット部分にパターニングされた放射ビームを投影する投影システムと、他の基板テーブルによって保持された基板上のアライメントマークの位置を決定する、本発明の第1の態様によるアライメントシステムと、を備えるリソグラフィ装置が提供される。
[0049] 本発明の第7の態様によれば、アライメント放射ビームを基板上のアライメントマークに誘導することと、アライメントマークから反射されたアライメント放射を自己参照光学系の第1及び第2のアームに沿って誘導することと、自己参照光学系の第1及び第2のアームから受信したアライメント放射を用いて、重なり合って複合画像を形成するアライメントマークの第1及び第2の画像を結像ディテクタにおいて形成することと、その複合画像を分析してアライメントシステムに対するアライメントマークの位置を決定することと、を備える、基板上のアライメントマークの位置を決定する方法が提供される。
[0050] この方法は、アライメントが特定の種類のアライメントマークに限定されることなく実施されることを可能にするので、有利である。
[0051] 本発明の第8の態様によれば、投影システムを用いて、第1の基板テーブルによって保持された基板のターゲット部分にパターニングされた放射ビームを投影することと、同時に本発明の第3の態様のアライメント方法を実施して、第2の基板テーブルによって保持された基板上のアライメントマークの位置を決定することと、を備えるリソグラフィ方法が提供される。
[0053] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用誘導及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。こうした代替的な用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ、「基板」又は「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが、当業者には認識される。本明細書に述べている基板は、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジーツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板処理ツールに適用することができる。さらに基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板という用語は、既に複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
[0054] 本明細書で使用する「放射」及び「ビーム」という用語は、イオンビーム又は電子ビームなどの粒子ビームのみならず、紫外線(UV)放射(例えば、365nm、248nm、193nm、157nm若しくは126nm、又はこれら辺りの波長を有する)及び極端紫外光(EUV)放射(例えば、5nm〜20nmの範囲の波長を有する)を含むあらゆるタイプの電磁放射を網羅する。
[0055] 本明細書において使用する「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分にパターンを生成するように、放射ビームの断面にパターンを付与するために使用し得る任意のデバイスを指すものとして広義に解釈されるべきである。ここで、放射ビームに付与されるパターンは、例えばパターンが位相シフトフィーチャ又はいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板のターゲット部分における所望のパターンに正確には対応しないことがある点に留意されたい。一般的に、放射ビームに付与されるパターンは、集積回路などのターゲット部分に生成されるデバイスの特定の機能層に相当する。
[0056] パターニングデバイスは透過性又は反射性でよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィにおいて周知のものであり、これには、バイナリマスク、レベンソン型(alternating)位相シフトマスク、ハーフトーン型(attenuated)位相シフトマスクのようなマスクタイプ、さらには様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例は、小型ミラーのマトリクス構成を使用し、ミラーの各々は、入射する放射ビームを異なる方向に反射するように個別に傾けることができる。このようにして、反射ビームがパターニングされる。
[0057] 支持構造はパターニングデバイスを保持する。支持構造は、パターニングデバイスの方向、リソグラフィ装置の設計等の条件、例えばパターニングデバイスが真空環境で保持されているか否かに応じた方法で、パターニングデバイスを保持する。支持構造は、機械式クランプ、真空、又は他のクランプ技術、例えば真空条件下での静電クランプを使用することができる。支持構造は、例えばフレーム又はテーブルでよく、必要に応じて固定式又は可動式でよい。支持構造は、パターニングデバイスが例えば投影システムなどに対して確実に所望の位置にくるようにできる。本明細書において「マスク」という用語を使用した場合、その用語は、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同義と見なすことができる。
[0058] 本明細書において使用する「投影システム」という用語は、適宜、例えば露光放射の使用、あるいは浸漬液の使用又は真空の使用などの他の要因に対する、屈折光学システム、反射光学システム、及び反射屈折システムを含む、様々なタイプの投影システムを網羅するものとして広義に解釈されるべきである。本明細書において「投影レンズ」という用語を使用した場合、これはさらに一般的な「投影システム」という用語と同義と見なすことができる。
[0059] また、照明システムは、放射ビームを誘導し、整形し、又は制御する屈折、反射、及び反射屈折光学コンポーネントを含む様々なタイプの光学コンポーネントを含んでよく、そのようなコンポーネントも以下においては集合的に又は単独で「レンズ」とも呼ばれることがある。
[0060] リソグラフィ装置は、投影システムの最終要素と基板との間の空間を充填するように、基板が比較的高い屈折率を有する液体、例えば水などに液浸されるタイプであってもよい。液浸技術は、投影システムの開口数を増加させるために当技術分野で周知である。
[0061] 図1は、本発明の特定の実施形態に従ったリソグラフィ装置を概略的に示す。この装置は、
−放射(例えばDUV放射又はEUV放射)のビームPBを調節するための照明システムILと、
−パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するための、アイテムPLに関してパターニングデバイスを正確に位置決めするために第1の位置決めデバイスPMに接続された支持構造(マスクテーブルと呼ぶことができる)MTと、
−基板(例えばレジストコートウェーハ)W2を保持するための、アイテムPLに関して基板を正確に位置決めするための第2の位置決めデバイスPW2に接続された、基板テーブル(ウェーハテーブルと呼ぶことができる)WT2と、
−基板W1を保持するための第3の位置決め装置PW3に接続され、アイテムASに対して基板を正確に位置決めするための別の基板テーブルWT1と、
−パターニングデバイスMAによって放射ビームPBに付与されたパターンを基板W2のターゲット部分C(例えば1つ以上のダイを含む)上に結像するように構成された、投影システム(例えば屈折投影レンズ)PLとを備える。
[0062] 本明細書で示すように、本装置は透過タイプである(例えば透過マスクを使用する)。あるいは、装置は反射タイプでもよい(例えば上記で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイを使用する)。
[0063] イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受ける。放射源とリソグラフィ装置とは、例えば放射源がエキシマレーザである場合に、別々の構成要素であってもよい。このような場合、放射源はリソグラフィ装置の一部を形成すると見なされず、放射ビームは、例えば適切な誘導ミラー及び/又はビームエクスパンダなどを備えるビームデリバリシステムBDの助けにより、放射源からイルミネータILへと渡される。放射源SO及びイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDとともに放射システムと呼ぶことができる。
[0064] イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調整する調整手段AMを備えていてもよい。通常、照明システムの瞳面における強度分布の外側及び/又は内側半径範囲(一般にそれぞれ、σ−outer及びσ−innerと呼ばれる)を調整することができる。また、イルミネータILは、一般に、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の様々なコンポーネントを備えていてもよい。イルミネータは、その断面において所望の均一性及び強度分布を有する調整された放射ビームPBを提供する。
[0065] 放射ビームPBは、支持構造MT上に保持されているパターニングデバイス(例えばマスク)MAに入射する。パターニングデバイスMAを横断した後、ビームPBはレンズPLを通過し、レンズPLは基板W2のターゲット部分C上にビームを合焦する。第2の位置決めデバイスPW2及び位置センサIF(例えば干渉計デバイス)の助けにより、基板テーブルWT2は、ビームPBの経路内に異なるターゲット部分Cを位置決めする。同様に、第1位置決め装置PM及び他の位置センサ(図1には明示されていない)を使用して、マスクライブラリから機械的な取り出し後又はスキャン中などに、ビームPBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めすることができる。一般に、オブジェクトテーブルMT及びWTの移動は、位置決め装置PM及びPWの一部を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)及びショートストロークモジュール(微動位置決め)を用いて実現される。しかし、ステッパの場合(スキャナとは対照的に)支持構造MTは、ショートストロークアクチュエータのみに接続するか、又は固定してもよい。
[0066] リソグラフィ装置は、例えば、パターニングデバイスからターゲット部分Cにパターンを投影するときに、パターニングデバイスMA及び基板W2をスキャン動作によって移動させてもよい。図1にはデカルト座標が示されている。従来通り、z方向は放射ビームPBの光軸に一致する。リソグラフィ装置がスキャン型リソグラフィ装置である一実施形態においては、y方向はスキャン動作の方向に一致する。
[0067] 図示するように、リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)以上の基板テーブルWT1,WT2を有するタイプのものであってもよい。デュアルステージのリソグラフィ装置においては、別の基板W2の露光が行われている最中に1つの基板W1の特性が測定されることを可能にするために、2つの基板テーブルWT1,WT2が設けられている(「基板の露光」とは、上述したような基板へのパターニングされた放射の投影を意味する)。
[0068] 図1に図示されるデュアルステージのリソグラフィ装置では、図の左側にアライメントシステムASが設けられ、図の右側に投影システムPLが設けられている。アライメントシステムASは、第1の基板テーブルWT1上に保持された基板W1に設けられたアライメントマーク(ボックスP1,P2によって概略的に図示されている)の位置を測定する。同時に、投影システムPLによって、第2の基板テーブルWT2上に保持された基板W2にパターンが投影される。第1の基板テーブルWT1によって支持された基板W1の測定が完了し、且つ第2の基板テーブルWT2によって支持された基板W2の露光が完了すると、基板テーブルの位置は交換される。すると、第1の基板テーブルWT1によって支持された基板W1が、投影システムPLによって投影されるパターニングされた放射を用いて露光される。第2の基板テーブルWT2によって支持された、既に露光されたウェーハW2は、後続の処理のために基板テーブルから取り外される。次いで、投影システムPLによって投影されるパターニングされた放射を用いた露光の前にアライメントシステムASによって測定するために、別の基板が第2の基板テーブルWTに設置される。
[0069] 基板W1,W2上のアライメントマークの位置を測定するために用いられるアライメントシステムASに加えて、他の測定システムが提供されてもよい。例えば、基板の表面のトポロジーを測定するシステムが提供されてもよい(これはレベルセンサと称され得る)。そのようンシステムは、本発明の一部を形成するものではないから、本明細書においては説明又は記載しない。
[0070] アライメント測定の際の基板テーブルWT1の位置を監視するために、干渉計(図示しない)及び/又は他の位置測定手段が用いられてもよい。プロセッサPRは、アライメントシステムASからデータを受信するとともに、基板テーブルWT1の位置情報も受信する。基板Wは基板テーブルWT1に固定されているので、基板テーブルに関する位置情報は、基板に関する位置情報であると見なされ得る。
[0071] アライメントシステムASは、アライメントマークP1,P2を照明するために用いられる放射ビーム4を提供するように構成された放射源2を備えている。放射源2は、以降ではアライメント放射ビーム源2と称される。アライメント放射ビーム4は、アライメント放射ビーム源2から、アライメント放射ビームを基板W1上へと誘導する光学部品へと進む。光学部品は、ビームスプリッタ6(例えば偏光ビームスプリッタ)を備えていてもよいし、図1に図示されていない他の追加的なコンポーネントを備えていてもよい。アライメント放射ビーム4は、基板W1上のアライメントマークP1,P2を照明し、反射され、ビームスプリッタ6を通過して自己参照光学系8に至る。
[0072] 自己参照光学系8は、偏光ビームスプリッタ10と、第1のコーナーキューブリフレクタ12と、第2のコーナーキューブリフレクタ14とを備える。アライメント放射4は自己参照光学系で受信されるときに偏光されない(又は円偏光される)ので、偏光ビームスプリッタ10は、アライメント放射ビームの半分を透過し、アライメント放射ビームのもう半分を反射する。アライメント放射ビーム4のうち偏光ビームスプリッタ10によって透過される部分は、第1のコーナーキューブリフレクタ12によって反射され、偏光ビームスプリッタに戻る。第1のコーナーキューブリフレクタ12による反射はアライメントビームの偏光を90°回転させる。放射の偏光は、90°回転されているので、偏光ビームスプリッタ10によって結像ディテクタ16の方へと反射される。
[0073] アライメント放射ビーム4のうち偏光ビームスプリッタ10によって反射された部分は、第2のコーナーキューブリフレクタ14へと進み、第2のコーナーキューブリフレクタによって反射される。第2のコーナーキューブリフレクタ14による反射はアライメント放射ビームの偏光を90°回転させる。放射の偏光は、90°回転されているので、偏光ビームスプリッタ10を通過して結像ディテクタ16に入射する。
[0074] したがって、結像ディテクタ16は、アライメント放射ビーム4によって照明されたアライメントマークP1,P2の2つの画像を受信する。自己参照光学系8には、画像のうち一方が時計回り方向に90°回転され、他方の画像が反時計回り方向に90°回転されるという効果がある。よって、結像ディテクタ16で受信された画像は、互いに対して約180度回転されている。「約180度」という言い回しは、2つの画像が互いに対して厳密に180°回転されていなくてもよく、それでもアライメントシステムは依然としてアライメントマークの位置を正確に決定できるということを示そうとするものである。概して、互いに対する画像の回転の角度は、アライメントマークの位置の正確な決定を可能にするのであればどのような角度であっても、約180度の回転であるものと考えられ得る。アライメントマークP1,P2が180°の回転の回転対称性を有する場合には、アライメントマークがアライメントシステムASと整列されるとき、結像ディテクタ16ではアライメントマークの単一の画像が見られるであろう。アライメントマークP1,P2をアライメントシステムASとの整列から遠ざかるように移動させると、結像ディテクタ16におけるアライメントマーク画像は反対方向に移動され、したがって2つの部分的に重なり合った画像が見られる。概して、結像ディテクタ16において見られる画像は、基板上のアライメントマークP1,P2の位置を示しており、これらのアライメントマークの位置を測定するために用いられ得る。
[0075] 互いに対して約180度回転されたアライメントマークの2つの画像を生成するのに寄与するアライメントシステムASのコンポーネントは、第1のシステムと称され得る。例えば、第1のシステムは、図2の破線70内のコンポーネントと、アライメント放射ビーム源2a乃至2dと、光ファイバ3a乃至3dと、ファイバカプラ及び単一の光ファイバ3とを備える。第1のシステムは他のコンポーネントを備えていてもよい。自己参照光学系8は2つのアームを有するものと考えられ得る。第1のアームは、第1のコーナーキューブリフレクタ12と、偏光ビームスプリッタのビーム分割面から第1のコーナーキューブリフレクタへと伝わるとともに第1のコーナーキューブリフレクタから偏光ビームスプリッタのビーム分割面へと伝わる経路とを備えている。第2のアームは、第2のコーナーキューブリフレクタ14と、偏光ビームスプリッタのビーム分割面から第2のコーナーキューブリフレクタへと伝わるとともに第2のコーナーキューブリフレクタから偏光ビームスプリッタのビーム分割面へと伝わる経路とを備えている。2つの画像の強度照度の空間分布からアライメントマークの位置を決定するために用いられるアライメントシステムASのコンポーネントは、第2のシステムと称され得る。つまり、第2のシステムは、結像ディテクタ16と、図2に概略的に図示されるプロセッサPRとを備え得る。第2のシステムは他のコンポーネントを備えていてもよい。
[0076] アライメントシステムASの動作の仕方は、アライメントシステムをより詳細に図示する図2を参照すればさらに理解されるであろう。例示的な実施形態においては、アライメント放射ビーム源2は、複数のLED2a乃至2dを備えている(が、他の形態の放射源が用いられてもよい)。各LED2a乃至2dは、アライメントマークP1を照明し結像ディテクタ16でアライメントマーク画像を生成するのに十分な程度に高い出力で放射を放出することができる。高出力LEDと称され得るそのようなLEDは、広く入手可能である。各LED2a乃至2dは、異なる波長で放射を放出するように構成されていてもよく、以下に説明される理由により変調されてもよい。LED2a乃至2dによって放出される放射は非化学線である。すなわち、基板W上に提供されたレジストを露光させない。放射は、例えば530乃至850nmの範囲内の、例えば可視放射又は赤外放射であってもよい。
[0077] LED2a乃至2dの各々は、LEDによって放出されるアライメント放射を受信する光ファイバ3a乃至3dに結合されている。光ファイバ3a乃至3dはファイバカプラによって結合されて単一の光ファイバ3となり、これが、アライメント放射を基板W上に誘導するために用いられる光学部品7へとアライメント放射を輸送する。LED2a乃至2dは、ビームスプリッタ6から離れた場所にあってもよい。例えば、LED2a乃至2dは、基板W1,W2が測定及び露光される環境(図1を参照)の外部に設けられてもよく、光ファイバ3は壁を通過してその環境内に至る。基板が測定及び露光される環境は汚染を最小化するために制御された環境であるかもしれず、LED2a乃至2dをこの環境の外部に設けることは汚染が生じる危険を低減し得ることから、これは有利である。真空で保持され得るEUVリソグラフィ装置においては、これは特に有利であろう。なぜなら、アウトガス及び他の潜在的な汚染の問題が回避されるからである。さらに、LEDが非真空環境で冷却されることが可能になる(これは真空環境での冷却よりも容易であろう)。
[0078] 光ファイバ3は、この実施形態においては、4つの極4a乃至4dを備えるビームとしてアライメント放射を提供するように構成されている。つまり、光ファイバ3はファイバカプラによって4つのファイバに分かれ、そのうちの2つである3e,3fが図示されている。各ファイバ3e,3fは極にアライメント放射を提供する。ファイバ3e,3fを離れる放射が矢印で概略的に図示されている。4つの極は、四極モードを形成するものと見なされてもよい。他の実施形態においては、アライメント放射ビーム4は、例えば単純なディスク状モード又は環状モードを含む任意の他の形態で提供され得る。四極モードの使用は、ピッチの狭い格子を分解するのに特に良好であるから、有利である。
[0079] アライメント放射ビーム4はレンズ20を通過する。レンズ20は、ファイバ3e,3fから出力された放射を、放射を基板W上に誘導するレンズ21の瞳に結像させるリレーとして作用する。一実施形態においては、レンズ20は省略されてもよく、ファイバから出力される放射はレンズ21の瞳に直接出力されてもよい。
[0080] 偏光ビームスプリッタ6は、アライメント放射ビームを基板Wの方に誘導するために用いられる。この実施形態において、ファイバ3e,3fから出力される放射は、直線的に偏光されるとともに、偏光ビームスプリッタ6によって反射される偏光を有する。偏光ビームスプリッタ6の後ろに配置されたレンズ21が、アライメント放射ビームを合焦させて基板上にビームスポット5を形成する。レンズ21は、単一の光学素子であってもよく、又は光学素子の集合(例えば顕微鏡の対物系)であってもよい。ビームスポット5は、図2の左側に、上から見たところが図示されている。図示するように、ビームスポットは、ビームスポットが入射するアライメントマークP1よりも大きい。これは、アライメントマークの過充填と称される。アライメントマークを過充填することは、関心領域、すなわちビームスポット5によって照明されるエリア内のアライメントマークの選択を可能にするから、有利である。この選択は、結像ディテクタ16において形成された画像を分析するときにプロセッサPRによって実施され得る。
[0081] アライメントマークP1から反射されたアライメント放射は、レンズ21及び偏光ビームスプリッタ6を通過して戻る。偏光ビームスプリッタ6と基板Wとの間には4分の1波長板50が配置され、アライメント放射の偏光を回転させるように作用する。4分の1波長板50の作用の結果、反射されたアライメント放射の偏光は当初偏光ビームスプリッタ6に入射する放射に対して90度回転され、したがって放射は偏光ビームスプリッタによって透過される。
[0082] アライメントマークP1は、X方向に広がる2つの格子22a,22bと、Y方向に広がる2つの格子22c,22dとを備える。格子は、例えば基板Wにエッチングされていてもよい。X方向に広がる格子22a,22bは互いに同一のピッチを有しており、Y方向に広がる格子は互いに同一のピッチを有している。各格子22a乃至22dは中心点24に対して異なるクアドラント(四分円)に提供されており、X方向の格子が中心点の対向する側に設けられるとともに、Y方向の格子が中心点の対向する側に設けられている。アライメントマークP1は、中心点24を中心とした180°の回転について対称である。すなわち、アライメントマークP1は、中心点24を中心として180度回転された場合、全く同じ外観を有するであろう。アライメントマークP1の回転対称性は、アライメントマークP1の位置が図示される自己参照光学系8を用いて決定されることを可能にする。
[0083] 次に、図2を参照してアライメント放射ビーム4の光線の伝播を説明する。第1の光線はアライメント放射ビーム4の第1極4aと対応するものと考えられてもよく、第2の光線はアライメント放射ビーム4bの第2極4bと対応するものと考えられてもよい。図2を過度に複雑にすることを避けるため、自己参照光学系8における光線のサブセットのみの伝播が図示されており、第1のアーム12における光線は破線で示され、第2のアーム14における光線は実線で示されている。
[0084] 第1の光線4aはレンズ21によって基板W上に合焦され、アライメントマークP1を照明するアライメントビームスポットを形成する。アライメントマークP1のX方向の格子22a,22bは回折次数を発生させる。これらはゼロ次回折次数及び1次回折次数であり、図2にはその両方が線によって図示されている。他の回折次数も発生されてアライメントシステムの後続のコンポーネントによって捕捉され得るであろう。しかしながら、簡単にするために、それらはここでは説明又は図示しない。ゼロ次及び1次の回折された放射は、アライメントシステムASの後続のコンポーネントを通って伝播し、結像ディテクタ16で画像を形成するために用いられる。ゼロ次の放射のみが結像ディテクタ16に入射した場合には、格子の画像は形成され得ないであろう。なぜなら、ゼロ次の放射は構造情報を含まないからである。1次の放射のみが結像ディテクタに入射した場合には、画像は形成されないであろう。なぜなら、この1次の放射は格子22a,22bによって発生された振幅及び位相を有してはいるが、それ自体によって画像を創出することはできないからである。ゼロ次及び1次の放射を混ぜ合わせることで、結像ディテクタ16によって検出可能な強度照度プロファイルがもたらされる。換言すれば、ゼロ次及び1次の回折された放射の混合は、結像ディテクタにおいて格子22a,22bの画像が形成されることを可能にする。
[0085] 第2の光線4bも、アライメントマークP1を照明するアライメントビームスポットを形成する。アライメント放射はX方向の格子22a,22bによって回折されて、図2において線によって図示されているゼロ次及びマイナス1次の次数を形成する。他の回折次数は、発生されるが、上記で言及したように、簡単にするため説明又は図示はしない。ゼロ次及び1次の回折次数は、アライメント及びシステムの後続のコンポーネントを通って伝播し、結像ディテクタ16で画像を形成する。
[0086] 図示はしないが、アライメント放射ビーム4の第3極4c及び第4極4dは、Y方向の格子22c,22dによって回折され、結像ディテクタ16でそれらの格子の画像を形成する。
[0087] 図1に関連して上記で説明した自己参照光学系8は、偏光ビームスプリッタキューブ10と、2つのコーナーキューブリフレクタ12,14とを備えている。4分の1波長板51は偏光ビームスプリッタキューブ10の前に配置されており、入射する直線的に偏光されたアライメント放射ビームを円偏光されたビームに変換する。偏光ビームスプリッタキューブ10はその後、入射するアライメント放射ビームの半分を自己参照光学系8の第1のアーム12内へと透過し、入射するアライメント放射ビームのもう半分を自己参照光学系の第2のアーム14内へと反射する。
[0088] レンズ26は、自己参照光学系8を離れるアライメント放射ビーム4を結像ディテクタ16上に合焦させる。このレンズは、自己参照光学系8の第1のアーム12を通過した放射を用いてアライメントマークP1の第1の画像を形成するとともに、自己参照光学系の第2のアーム14を通過した放射を用いてアライメントマークの第2の画像を形成する。これら第1及び第2の画像は併せて結像ディテクタ16において複合画像を形成する。複合画像は第1及び第2の画像の強度照度の空間分布であると考えられてもよい。複合画像の特性は、アライメントシステムASに対するアライメントマークP1の位置を示す。
[0089] 自己参照光学系8は、アライメント放射ビーム4を基板W上に合焦させるレンズ21とアライメント放射ビームを結像ディテクタ16上に合焦させるレンズ26とによって形成される光学系の瞳空間内にあるものと考えられてもよい。換言すれば、レンズ21,26は、対物面が第1のレンズ21の焦点面に存在するとともに像面が第2のレンズ26の焦点面に存在する光学系を形成するものと考えられてもよく、対物面はアライメントマークP1(物体)に相当し、像面は結像ディテクタ16(アライメントマークの画像が形成されるところ)に相当する。瞳面(標示しない)はレンズ21,26の間の第1のレンズ21の焦点面に存在する。このような光学系のレンズ21,26の間の空間は瞳空間と称され得る。瞳空間においてはアライメントマークP1の画像は形成されない。その代わり、瞳空間にはアライメントマークのフーリエ変換が存在する。図2に概略的に図示されるように、瞳空間においては、アライメント放射の光線は互いに略平行に伝播する。これは、自己参照光学系8のアームに沿った光線の伝播を可能にするとともに、光線が自己参照光学系の受光角度の外に外れる(すなわち、光線が光軸に対して自己参照光学系に適切に進入しないほど大きな角度で伝播する)ことを回避するので、有利である。自己参照光学系に進入する光線と伝播する光線とが互いにまったく平行であることは必須ではない。必要なのは、それらの光線が自己参照光学系に出入りすることができる程度に十分に平行に近いということだけであり、するとそれらの光線は結像ディテクタ16上に画像を形成することができる。もっとも、提供される光線が平行に近いほど、アライメントシステムの精度は高くなる。
[0090] 次に、自己参照光学系8の効果を説明する。X方向の格子22a,22bを考えると、アライメントマークP1がX方向に移動された場合、1次回折次数の位相は、その移動の結果として変化するであろう。位相の移動は単方向である。なぜなら、アライメントマークP1はその方向にしか移動しないからである。しかしながら、図1に関連して上記で説明したように、偏光ビームスプリッタ10及びコーナーキューブリフレクタ12,14の効果は、入射する放射を反対の偏光を有する2つの部分に分割し、次いで各部分を反対方向に90°回転させるというものである。その結果、一方の部分は他方の部分に対して180°回転される。これは、当初は1方向であった相変化が、互いに反対の方向である2方向になることを意味している。アライメント放射ビームがレンズ26によって結像ディテクタ16上に合焦されるとき、これは明らかである。なぜなら、X方向の格子22a,22bの2つの別々の画像が形成され、アライメントマークP1の移動によって、一方の画像が結像ディテクタ16を横切って第1の方向に移動され、第2の画像が結像ディテクタを横切って反対の方向に移動されるからである。自己参照光学系8は、アライメントマークP1の2つの画像を形成する放射に有意な干渉は引き起こさない。これは、アライメントマークの2つの画像は、直交する偏光を有するアライメント放射ビームから形成されるからである。その代わり、結像ディテクタ16においてはアライメントマークP1の2つの重なり合った画像が見られる。これらの2つの画像は、複合画像を形成するものと考えられ得る。複合画像は、アライメントマークP1の2つの重なり合った画像のインコヒーレント和(強度照度の和)である。「複合画像」という用語は、(画像間の有意な干渉なしに)結像ディテクタにおける2つの重なりあった画像の和によって形成される画像を意味しようとするものに過ぎず、その画像が何らかの特別な形態を有さなければならないことを示唆しようとするものではない。
[0091] アライメントビームスポット5(及びひいてはアライメントシステム全体)がX方向においてアライメントマークP1と整列されない場合、このミスアライメントは、結像ディテクタ16において見られるアライメントマーク画像のX方向での分離を引き起こすであろう。基板WをX方向でスキャン移動させると、アライメントマークP1はアライメントシステムASと整列するように移動され、これは、結像ディテクタ16上で互いに向かって移動するアライメントマークの画像として現れるであろう。アライメントシステムASがアライメントマークP1と完全に整列されると、結像ディテクタ16におけるアライメントマーク画像は互いに完全に重なり合い、単一のアライメントマーク画像が見られるであろう。基板WをX方向でさらに移動させると、アライメントマークは移動してアライメントシステムとのアライメントから外れる。これは、互いから遠ざかるように移動するアライメントマークの画像によって明らかになるであろう。
[0092] プロセッサPRは、アライメントシステムに対する基板Wの各位置について、結像ディテクタ16から出力画像を受信する。各出力画像は、アライメントマークの第1の画像とアライメントマークP1の第2の画像とから形成された複合画像であると見なされてもよい。複合画像は、アライメントマークP1がアライメントシステムASと整列される基板位置を決定するべく、プロセッサによって分析される。これは例えば、第1及び第2の画像が互いに最も完全に重なり合う位置に対応し得る。実用においては、画像の完全な重なり合いは見られないかもしれない。これは例えば、アライメントマークP1がいくらかの非対称性を含むためである。
[0093] y方向におけるアライメントマークP1の位置の測定は、y方向に広がる2つの格子22c,22dを用いて、同様に行われる。
[0094] アライメントマークP1の位置を決定するのに用いられ得る様々な異なる動作モードがある。第1のモードでは、(プロセッサPRによって行われる画像分析を用いて決定されるように)自己参照光学系8の各アームを伝わってきたアライメントマークの画像が互いに完全に重なり合うまで、基板Wの位置が調整される。するとこれはアライメントマークP1の位置として記録される。基板Wの位置の調整は、アライメントマークP1の位置がx方向及びy方向の両方で決定されるように、x方向及びy方向の両方で行われてもよい。x方向及びy方向の位置測定は、互いに別々に行われてもよい。あるいは、一緒に行われてもよい。x方向及びy方向の位置測定が別々に行われるときには、第1及び第2の画像の完全な重なり合いは、測定されている方向での完全な重なり合いであろう(例えば、x方向が測定されているときにはy方向での完全な重なり合いは要求されない)。このモードでは、プロセッサPRは、結像ディテクタからの画像を直接、すなわち最初にメモリに格納することなく、分析し得る。
[0095] 動作の第2のモードでは、基板Wはスキャン動作によってアライメントシステムASに対して移動され、結果として得られる結像ディテクタ16からの画像データはメモリに記録される。図3は、本発明の一実施形態によるアライメントシステムを用いて得られたいくつかの結果を図示している。図3a乃至3cの各々の上半分は、結像ディテクタ16によって見られるアライメントマーク画像を示す。各画像の下にあるのは、結像ディテクタ16上の3つの画素位置で見られる放射の強度照度を図示するグラフである。これらの3つの画素位置は、x方向(アライメント測定が行われる方向)で整列されている。3つの画素位置は円で示されており、図3cにおいて最も容易に見て取れる。これらの画素位置で見られる強度照度の山及び谷が図示されている。図はx方向のスキャン移動の効果を図示する。アライメントマークは、x方向に広がる2つの格子と、y方向に広がる2つの格子とを備える。簡単にするため、アライメントマークの照明は、x方向に分離した極4a,4b(図2を参照)を含む双極モードによって行われており、その結果、y方向に広がる格子はアライメントマークの画像内では解像されない。
[0096] 図3aでは、スキャン移動がアライメントマークP1を、アライメントビームスポット5によって完全に照明されるがアライメントシステムの中心と整列された状態からは十分に離れた位置へと移動させている。アライメントマークの画像は部分的に重なり合っている。画素は結像ディテクタにおいて当初は背景レベルのアライメント放射を経験し、それから外側線として第1の山と次いで第1の谷とを経験し、その後、それらの画素において重なり合ったアライメント格子画像の空間を経験した。図3bは、x方向で互いに完全に整列された(又は互いに完全に整列されたのに近い)ときのアライメントマーク画像を示す。基板のスキャン移動のこの時点では、画素は4つの山及びそれに関連する谷を経験しており、5つ目の山の中心にある。図3cは、互いから遠ざかるように移動するときのアライメントマーク画像を示す。この時点では、画素はアライメント放射の9つの山を経験しており、これ以上はアライメントマーク画像の格子の重なり合いが発生しないので、今度は強度照度が略一定の放射を経験する。
[0097] 結像ディテクタ16によって行われる各測定の際の基板の位置は記録される。結像ディテクタが経験する5つ目の山の中心は、2つの格子が結像ディテクタ16においてx方向で完全に重なり合っている点と一致する(5つ目の山は9つの線格子の中心と一致する)。5番目の山の中心は、プロセッサPRによって、ディテクタ16から受信した画像データを用いて任意の適当な手法で(例えば基板Wのスキャン移動の際にディテクタから受信したすべての画像の分析を介して)決定され得る。5番目の山の中心と一致する基板Wの位置は、x方向におけるアライメントマークP1の位置であるものと見なされる。同じ動作がy方向においても繰り返され得る。
[0098] 上記で説明したように、結像ディテクタ16で受信した画像に対応する画像データは、それらの画像が検出されるときに(基板テーブルWTの位置として記録された)基板の位置を示す位置情報と一緒に処理される。検出された画像の分析は、x方向及びy方向におけるアライメントマーク画像の完全な重なり合いに対応する基板位置が(例えば上述のように中央の山の中心点を見つけることによって)決定されることを可能にする。複数のアライメントマークP1,P2が基板Wの表面にわたって設けられる。これらのアライメントマークの各々(又はアライメントマークのうち少なくともいくつか)の位置が決定される。アライメントマークP1,P2の位置はリソグラフィ装置によって記録され、後続の基板の露光の際にリソグラフィ装置によって用いられる。基板の露光にあたり、露光の精度にとって重要なのは、アライメントマークP1,P2の相対位置(すなわちそれらの互いに対する位置)である。したがって、普遍座標系におけるアライメントマークP1,P2の絶対位置は決定されなくてもよい。
[0099] 上記で説明してきたように、いくつかの動作モードにおいては、基板テーブルWTのスキャン移動の際に結像ディテクタがアライメントマークの画像を捕捉する。比較的高速なスキャン移動を可能にするために、結像ディテクタ16は、比較的迅速に画像を捕捉することができてもよい。アライメント測定の際に用いられるスキャン速度は、例えば10mm/秒程度であってもよい。結像ディテクタ16のフレームレートは、例えばkHz範囲であってもよい。結像ディテクタ16のフレームレートは、例えば10kHz以上であってもよいし、例えば100kHz以上であってもよい。MHz程度のフレームレートを有する結像ディテクタ16が用いられてもよい。
[00100] 図3を参照すると、概ね正弦波形を有する山の位置を決定するためには、1つの正弦波期間にわたって4つ以上の点をサンプリングするのが望ましいであろう。それに従って、所与の基板スキャン速度について山の4つ以上の点がサンプリングされることを可能にするように結像ディテクタ16のフレームレートが選択されてもよい。結像ディテクタ16の画素数とその結像ディテクタのフレームレートとの間には、ある程度のトレードオフが存在し得る。数百万画素を有する結像ディテクタは必要とされない。そうではなく、図3からわかるように、比較的少数の画素で十分であろう。例えば、少なくとも100×100画素を有する結像ディテクタで十分であろう。2つの画像の強度照度の空間分布からアライメントマークの位置を決定するために用いられるコンポーネントは、第2のシステムと称され得る。つまり、第2のシステムは、結像ディテクタ16と、プロセッサPRとを備え得る。第2のシステムは他のコンポーネントを備えていてもよい。
[00101] 結像ディテクタ16は、例えばCMOSセンサ、CCDアレイ、又は任意の他の適当な形態の結像ディテクタであり得る。一般に、結像ディテクタ16は、画像を検出することのできる任意の装置(例えば検知素子のアレイ)であってもよい。結像ディテクタ16は、アライメントシステムASの像面又はその付近にあってもよい。結像ディテクタ16は、アライメントマークの画像を形成するレンズ26の焦点面又はその付近にあってもよい。
[00102] 上記においては、アライメント放射の四極モードのうち2極4a,4bが、x方向のアライメントマークP1の位置を測定するときに用いられる。1極のみを用いてアライメントマークP1の位置を測定することは可能だが、次に説明する理由により好適でない。1極での照明は、アライメント放射が概ね一方向からアライメントマークP1に入射することを意味する。例えば、図2を参照すると、極4aは、図の右側からアライメントマークに入射するアライメント放射ビームに対応する。基板Wが正しい平面内になく、予定位置から下方に変位している場合には、結像ディテクタ16において見られるアライメントマークP1の−x方向での見かけ上の移動が引き起こされるであろう。図2に図示される例においては、z方向に変位された基板の位置が破線WZによって示されている。図示するようにアライメント放射ビームはさらに進んでから基板WZに入射するので、−x方向で基板の見かけ上のずれが生じている。その結果、アライメントマークP1の測定位置には誤差が生じるであろう。
[00103] 反対方向(すなわち、この例においては反対の極4b)から入射する放射を用いたアライメントマークの照明が、この誤差を打ち消す。なぜなら、反対方向から入射する放射は、反対方向、この例においてはx方向でのアライメントマークの見かけ上のずれをもたらすからである。こうしたアライメントマークの2つの見かけ上のずれは、互いに打ち消し合い、結像ディテクタ16におけるアライメントマーク画像のずれの代わりに、結像ディテクタにおけるコントラストの低下が発生する。コントラストの低下が十分に大きくなく、アライメントマークの画像がもはや解像され得ない場合には、アライメントマークの位置は、基板のz方向の変位による誤差が引き起こされることなく、上述のように測定され得る。
[00104] アライメントマークP1の位置は、上述の手法で、単一の放射ビーム源(例えば単一のLED)を使用して発生されたアライメント放射ビームを用いて測定されてもよい。しかしながら、複数のアライメント放射ビーム源(例えば複数のLED)を使用してアライメント放射ビームを発生させることは、利点をもたらすであろう。例えば、図2に図示されるような4つのLED2a乃至2dがそれぞれ異なる波長で放射を放出してもよい。一実施形態においては、LEDのうち1つが約540nmで放射を放出し、別の1つのLEDが約850nmで放射を放出し、他の2つのLEDがこれら2つの波長の間の波長で放射を放出してもよい。
[00105] 850nmの放射は赤外放射であり、この赤外放射は、基板上に堆積されている金属などの材料の層を通過し、これらの層の下にあるアライメントマークP1,P2に入射するとともにそれらによって回折される。したがって、赤外放射は、アライメントマークが材料の複数の層の下に位置しているにもかかわらず、結像ディテクタ16がそのアライメントマークP1の画像を見ることを可能にする。
[00106] 530nmの放射は金属層を通過せず、その金属層によって反射されるであろう。アライメントマークは、典型的には基板にエッチングされた格子の形態をとる。アライメントマークの上に堆積されている材料層は、エッチングされたアライメントマークを部分的に埋める傾向はあるが、完全に平坦な外表面は提供しない。換言すれば、アライメントマークの形状のうちいくらかは、上に材料層が堆積された後でも残っている。530nmの放射は、結像ディテクタ16において、材料の外側の層の画像を提供し、ひいては、結像ディテクタ16において、材料の層によって変更されたマークの画像を提供する。530nmの放射を用いて結像ディテクタ16において見られるアライメントマーク画像が強い山と谷とを有する場合、これは、材料の層が追加された後であってもアライメントマークが明確なままであることを示し得る。逆に、結像ディテクタにおいて見られる山と谷とのコントラストが低い場合、これは、材料の層の追加によってアライメントマークが略平滑化されていることを示し得る。
[00107] 概して、異なる波長の入射放射について結像ディテクタにおいて見られるアライメントマーク画像は、アライメントマークについての情報及びそれが基板上に堆積した材料の層によってどのように影響されたかについての情報を提供する。例えば、以下で説明するように、アライメントマークの傾きに関する情報が得られるであろう。
[00108] 結像ディテクタ16によって捕捉される各画像が特定の波長の放射によって生成されるように、異なる波長の放射は放射源(例えばLED)によって異なる時刻に放出されてもよい。一実施形態においては、放射源は変調されてもよい。放射源は順番に動作してもよく、プロセッサは結像ディテクタ16によって捕捉された画像を処理するときにその順番を考慮してもよい。これは、放射源によって放出された異なるアライメント放射波長の多重化及びそれに続く結像ディテクタ16によって捕捉された画像の逆多重化と考えられてもよい。一実施形態においては、異なる波長を放出する放射源は、それぞれ異なる周波数で変調されてもよい。これは、検出された画像がそれらの周波数を用いることによって逆多重化されることを可能にする。周波数は、例えば、kHz範囲(例えば1kHz乃至1MHz)であってもよい。放射源(LEDであってもよい)は、例えばドライバ電流を変調すること又はチョッパホイールを用いることなど、既知の方法を用いて変調されてもよい。
[00109] アライメントマークP1,P2の傾きを監視するのが望ましいかもしれない。そのような傾きは、例えば、金属の層が基板W上に堆積され、次いで研磨されるときに発生し得る。研磨がアライメントマークP1,P2の畔部の頂点と完全に平行でない場合には、畔部はある角度で研磨されるであろう。換言すれば、畔部の頂点は傾けられることになる。すなわち、x,y平面内にはないことになる。こうしたアライメントマークP1,P2の非対称の形態は、アライメントマークの測定位置に誤差をもたらし得る。この傾き(非対称の一形態と考えられてもよい)は、結像ディテクタ16における画像のずれを引き起こし、よってアライメントマークP1の測定位置のずれを引き起こすであろう。
[00110] アライメントマークの傾きを補正する1つの方法は、傾きを測定して、その傾きを考慮に入れた補正を測定されたアライメントマーク位置に適用するというものである。傾きを測定することは、アライメントマークP1の格子を復元することと考えられてもよい。
[00111] 図2を参照すると、1つの放射源を用いてアライメント放射ビームの極4a及び4bを同時に発生させる代わりに、1つの放射源を用いて第1極4aが発生されてもよく、別の1つの放射源を用いて第2極4bが異なる時刻に発生されてもよい。これを達成する1つの手法は、放射源から第1極4aにアライメント放射を搬送する専用の光ファイバと、放射源から第2極4bにアライメント放射を搬送する別の専用の光ファイバとを設けるというものである。アライメントマークP1に傾きが生じてしまっている場合には、第1極4aから形成された画像(ゼロ次及びマイナス1次の放射から形成された画像)の強度照度は、第2極4bから形成された画像(ゼロ次及び1次の放射から形成された画像)の強度照度とは異なるであろう。結像ディテクタ16において見られるアライメントマーク画像の強度照度の差は、アライメントマークP1の傾きに関する追加的な情報をもたらすであろう。アライメント放射の第3極4c及び第4極4dについても同じアプローチが用いられ得る。
[00112] 一実施形態においては、4極の各々について別々のLEDが提供されてもよく、これらがアライメントマークP1,P2を照明するために用いられる。LEDはすべて同じ波長で動作してもよい。LEDは、順番に動作するように変調されてもよいし、又は代替的には異なる周波数で変調されてもよい。変調は、入射するアライメントビームの極4a乃至4dの各々から生じる画像が互いに分離されるとともにプロセッサPRによって分析されることを可能にする。
[00113] アライメントマークの格子を構築するために用いられ得る追加的な情報は、異なる波長のアライメント放射を用いて得られてもよい(異なる波長のアライメント放射の使用については上記で述べられている)。一実施形態においては、個々の放射極の使用と異なる波長の使用との組み合わせが用いられてもよい。例えば異なる周波数での変調は、極と極とを区別するため及び波長と波長とを区別するために用いられてもよい。複数の極が同じ波長の放射を共有してもよいし、又はそうではなくて異なる波長の放射を備えていてもよい。
[00114] アライメント放射ビーム源は変調されてもよい。図4は、本発明のそのような一実施形態によるアライメントシステムの概略的な図示である。図4の例においては、4つのアライメント放射ビーム源2a乃至2dが4つの光ファイバ3a乃至3dにそれぞれ結合されている。アライメント放射ビーム源2a乃至2dは、例えば、発光ダイオード、スーパールミネッセントダイオード、レーザ、又はアライメントシステムのためにアライメント放射ビームを提供する任意の他の適当な手段であってもよい。より多数又はより少数のアライメント放射ビーム源及び光ファイバが用いられてもよい。光ファイバ3a乃至3dはファイバカプラ90を介して結合されて単一の光ファイバ3になる。アライメント放射は、光ファイバ3によって、図2で破線70内に図示されたコンポーネントに対応するコンポーネント70に輸送される。つまり、アライメント放射は異なる極に誘導され、光学部品20及びビームスプリッタ6を通過して、基板Wに入射する。次いで、アライメント放射は自己参照光学系8及びレンズ26を通過する。図4を不必要に複雑化することを避けるため、図2のボックス70内のコンポーネントは図4においてはブロック70として表されている。
[00115] 4つの変調器60a乃至60dは、アライメント放射ビーム源2a乃至2dに変調を適用する。変調器60a乃至60dは、例えば、アライメント放射ビームの振幅を変調する。代替的には、変調器60a乃至60dは、図6を参照して以下で説明するように、アライメント放射ビームの位相を変調してもよい。変調器60a乃至60dは、例えば、各アライメント放射ビーム源2a乃至2dに変調ドライバ電流を提供してもよい。代替的には、変調器60a乃至60dは各アライメント放射ビーム源に変調電圧を提供してもよい。変調器60a乃至60dは各アライメント放射ビーム源2a乃至2dに異なる変調を適用する。変調器60a乃至60dによって適用される変調に関する情報は、位相感応性信号ディテクタ80に提供される。位相感応性信号ディテクタ80は、例えば、ロックイン増幅器を備えていてもよい。位相感応性信号ディテクタ80に提供される変調情報は、例えば、各アライメント放射ビーム源に提供される変調の周波数及び位相を含んでいてもよい。
[00116] 互いに対して約180度回転されたアライメントマークの2つの画像が結像ディテクタ16において形成される。結像ディテクタ16は、アライメントマークの2つの画像の強度照度の空間分布を検出する。これは複合画像と称され得る。結像ディテクタ16は、アライメントマークの2つの画像の強度照度の空間分布を示す出力信号を、位相感応性信号ディテクタ80に提供する。結像ディテクタ16は、例えば、フォトダイオード、フォトダイオードのアレイ、CCDデバイス、又は画像を検出することのできる任意の他のディテクタであり得る。1つよりも多くの結像ディテクタ16が提供されてもよい。
[00117] 位相感応性信号ディテクタ80は、結像ディテクタ16によって提供される出力信号を受信するように、且つ変調器60a乃至60dによって提供された変調情報を用いて結像ディテクタ16で形成された複数のアライメントマーク画像を判別するように構成されている。つまり、位相感応性信号ディテクタ80は、結像ディテクタ16及び変調器60a乃至60dから入力信号を受信するとともに、結像ディテクタ16によって検出されたアライメントマークの画像を変調を用いて判別する。アライメントマーク画像の判別はアライメント放射ビーム源60a乃至60dの変調に基づいている。アライメントマークの画像は、アライメントマーク画像を産出したアライメント放射ビームに従って判別される。
[00118] よって、例えば、変調器60aはアライメント放射ビーム源2aに変調を適用する。アライメント放射ビーム源2aは変調されたアライメント放射ビームを光ファイバ3aを通じて放出する。光ファイバ3aはファイバカプラ90によって他の光ファイバ3b乃至3dと結合されて単一の光ファイバ3になる。単一の光ファイバ3は、図2の破線70によって表されたコンポーネントにアライメント放射ビームを提供する。アライメント放射ビームは、図2の破線70によって表されたコンポーネントを出て、基板W上のアライメントマークに入射する。アライメント放射ビームは次いで、図2の破線70によって表されたコンポーネントに再進入する。アライメント放射ビームは、図2の破線70によって表されたコンポーネントを出て、結像ディテクタ16に入射する。結像ディテクタ16は、各アライメント放射ビーム源2a乃至2dが放出したアライメント放射ビームによって形成されたアライメントマークの2つの画像の強度照度の空間分布を示す出力信号を、位相感応性信号ディテクタ80に提供する。変調器60aは変調情報を位相感応性信号ディテクタ80に提供する。位相感応性信号ディテクタ80は、変調器60aによって提供された変調情報を用いて、アライメント放射ビーム源2aが放出したアライメント放射ビームによって形成されたアライメントマークの画像を、他のアライメント放射ビーム源2b乃至2dが放出したアライメント放射ビームによって形成されたアライメントマーク画像と判別する。位相感応性信号ディテクタ80は、判別されたアライメントマーク画像を示す出力信号を、プロセッサPRに提供する。プロセッサPRは、判別されたアライメントマーク画像を分析してアライメントシステムに対するアライメントマークの位置を決定するように構成されている。
[00119] 互いに対して約180度回転されたアライメントマークの2つの画像を産出するのに寄与するアライメントシステムのコンポーネントは、第1のシステムと称され得る。例えば、第1のシステムは、アライメント放射ビーム源2a乃至2dと、光ファイバ3a乃至3dと、ファイバカプラ90と、光ファイバ3と、図2の破線70によって表されたコンポーネントとを備えていてもよい。第1のシステムは他のコンポーネントを備えていてもよい。2つの画像の強度照度の空間分布からアライメントマークの位置を決定するために用いられるアライメントシステムのコンポーネントは、第2のシステムと称され得る。つまり、第2のシステムは、変調器60a乃至60dと、結像ディテクタ16と、位相感応性信号ディテクタ80と、プロセッサPRとを備え得る。第2のシステムは他のコンポーネントを備えていてもよい。
[00120] 一実施形態においては、アライメント放射ビームに対する変調は、アライメント放射ビームがアライメント放射ビーム源によって放出された後で提供されてもよい。つまり、アライメント放射ビーム源を変調することに代えて、外部変調器を用いてアライメント放射ビームを変調してもよい。図5は、本発明のそのような一実施形態によるアライメントシステムの概略的な図示である。アライメント放射ビーム源2が、4つのアライメント放射ビームを4つの外部変調器60a乃至60dに提供する。図5の例においては、1つのアライメント放射ビーム源2が4つの外部変調器60a乃至60dに結合されており、これらの変調器が4つの光ファイバ3a乃至3dにそれぞれ結合されている。アライメント放射ビーム源2は、例えば、発光ダイオード、スーパールミネッセントダイオード、レーザ、又はアライメントシステムのためにアライメント放射ビームを提供する任意の他の適当な手段であってもよい。より多数又はより少数のアライメント放射ビーム源、外部変調器、及び光ファイバが用いられてもよい。
[00121] アライメント放射ビーム源2は、ある範囲の波長にわたる放射、例えば400乃至1000nmの範囲内の放射を提供することができてもよい。他の波長が用いられてもよい。アライメント放射ビーム源2は、各々が異なる波長を有するアライメント放射ビームを外部変調器60a乃至60dに提供するように構成されている。外部変調器60a乃至60dの使用は、複数のアライメント放射ビーム源ではなく単一のアライメント放射ビーム源2が使用されることを可能にする。これは、アライメント放射ビームが発生されている最中にではなく放出された後で変調されるからである。
[00122] 外部変調器60a乃至60dは、アライメント放射ビームに変調を適用するように構成されている。外部変調器60a乃至60dは各アライメント放射ビームを異なる周波数及び位相で変調する。例えば、変調器60aは、第1の周波数及び第1の位相を有する変調を、光ファイバ3aによって搬送されるアライメント放射ビームに提供する。別の変調器60bは、第2の周波数及び第2の位相を有する変調を、光ファイバ3bによって搬送されるアライメント放射ビームに提供する。外部変調器60a乃至60dは、例えばチョッパホイールのような光チョッパを備えていてもよい。外部変調器60a乃至60dは、電気光学変調器又は音響光学変調器を備えていてもよい。外部変調器60a乃至60dからの変調情報は位相感応性信号ディテクタ80に提供される。
[00123] いったん変調されると、アライメント放射ビームは光ファイバ3a乃至3dを通過する。光ファイバ3a乃至3dはファイバカプラ90を介して結合されて単一の光ファイバになる。その単一の光ファイバは次いで2つの光ファイバ3e,3fに分割される。第1の光ファイバ3eはアライメント放射をブロック70によって表されるコンポーネント(すなわち図2で破線70内に図示されたコンポーネント)の方へと輸送する。ブロック70によって表されたコンポーネントを出たアライメント放射ビームは結像ディテクタ16に入射する。第2の光ファイバ3fはアライメント放射を結像ディテクタ16に直接輸送する。
[00124] 図5の例においては、結像ディテクタ16はバランス型フォトディテクタである。バランス型フォトディテクタは、例えば、フォトダイオード、フォトダイオードのアレイ、CCDデバイス、CMOSデバイス、又は画像を検出することのできる任意の他のディテクタであり得る。バランス型フォトディテクタはアライメント放射の2つのビームを2つの異なる入力として受信し得る。例えば、バランス型フォトディテクタは、第1及び第2の入力を互いに独立して受信するように構成された2つの独立した放射感応性ディテクタエリアを備えていてもよい。バランス型フォトディテクタは、光ファイバ3fからのアライメント放射のビームを第1の入力として受信し、ブロック70によって表されるコンポーネントからのアライメントマークの画像を第2の入力として受信するように構成されている。例えば、単一の画素が光ファイバ3fからアライメント放射のビームを受信してもよく、その一方で独立した画素のアレイがアライメントマークの画像を受信してもよい。バランス型フォトディテクタは、2つの入力の差を示す出力信号を位相感応性信号ディテクタ80に提供するように構成されている。例えば、バランス型フォトディテクタに提供される両方の入力に存在する、アライメント放射ビーム源2及び/又は外部変調器60a乃至60dに起因する雑音は、バランス型フォトディテクタによって低減され得る。バランス型フォトディテクタは、信号対雑音比が向上された出力信号を位相感応性信号ディテクタ80に提供し得る。バランス型フォトディテクタは、本発明の他の実施形態との関連においても用いられ得る。
[00125] 位相感応性信号ディテクタ80は、結像ディテクタ16からの出力信号を受信するとともに、変調器60a乃至60dからの出力信号を受信する。位相感応性信号ディテクタ80は、結像ディテクタ16によって検出されたアライメントマーク画像を判別し、判別されたアライメントマーク画像を示す出力信号をプロセッサPRに提供する。プロセッサPRは、判別されたアライメントマーク画像を分析してアライメントシステムに対するアライメントマークの位置を決定するように構成されている。プロセッサPRは、アライメントシステムに対する基板Wの各位置について結像ディテクタ16からの出力画像を受信する。各出力画像は、アライメントマークP1の第1及び第2の画像の強度照度の空間分布であると考えられてもよい。2つの重なり合った画像の強度照度の空間分布は、アライメントマークP1がアライメントシステムASと整列される基板Wの位置を決定するべく、プロセッサPRによって分析される。これは例えば、第1及び第2の画像が互いに最も完全に重なり合う位置に対応し得る。
[00126] 互いに対して約180度回転されたアライメントマークの2つの画像を生成するのに寄与するアライメントシステムのコンポーネントは、第1のシステムと称され得る。例えば、第1のシステムは、アライメント放射ビーム源2と、光ファイバ3a乃至3dと、ファイバカプラ90と、光ファイバ3eと、図2の破線70によって表されたコンポーネントとを備えていてもよい。第1のシステムは他のコンポーネントを備えていてもよい。2つの画像の強度照度の空間分布からアライメントマークの位置を決定するために用いられるアライメントシステムのコンポーネントは、第2のシステムと称され得る。つまり、第2のシステムは、変調器60a乃至60dと、光ファイバ3fと、結像ディテクタ16と、位相感応性信号ディテクタ80と、プロセッサPRとを備え得る。第2のシステムは他のコンポーネントを備えていてもよい。
[00127] 一実施形態においては、アライメント放射ビームの位相が変調されてもよい。図6は、本発明のそのような一実施形態によるアライメントシステムの概略的な図示である。アライメント放射ビーム源2a乃至2dは、アライメント放射ビームをビームスプリッタ6a乃至6dに提供する。個別の放射源2a乃至2dに代えて、ある範囲にわたる波長の放射、例えば400乃至1000nmの範囲内の放射を提供することのできる単一のアライメント放射ビーム源2が提供されてもよい。他の波長が用いられてもよい。アライメント放射ビームは光ファイバ3a乃至3dとリフレクタ100a乃至100dとに分割される。光ファイバ3a乃至3dを通過するアライメント放射ビームは結合されて単一のアライメント放射ビームとなり、図2の破線70によって表されたコンポーネントに提供される。リフレクタ100a乃至100dから反射されたアライメント放射ビームは位相変調器110a乃至110dへと伝わる。これらのアライメント放射ビームは、参照アライメント放射ビーム115a乃至115dと称され得る。位相変調器110a乃至110dは、参照アライメント放射ビーム115a乃至115dの位相を変調するように構成されている。位相変調器110a乃至110dは音響光学変調器を備えていてもよい。位相変調器110a乃至110dは、例えばポッケルスセルのような、電気光学変調器を備えていてもよい。
[00128] 位相変調器110a乃至110dは変調器60a乃至60dによって駆動される。変調器60a乃至60dは位相変調器110a乃至110dに変調電子信号を提供してもよく、この変調電子信号は位相変調器に参照アライメント放射ビーム115a乃至115dの位相を変調させる。変調情報は変調器60a乃至60dによって位相感応性信号ディテクタ80に提供される。位相感応性信号ディテクタ80は、例えば、ロックイン増幅器を備えていてもよい。位相変調器110a乃至110dによって変調された参照アライメント放射ビーム115a乃至115dは、リフレクタ100e乃至100hにそれぞれ入射する。リフレクタ100e乃至100hは参照アライメント放射ビーム115a乃至115dをビームコンバイナ120の方へと誘導する。ビームコンバイナ120は、アライメント放射ビームを参照アライメント放射ビーム115a乃至115dと合成して、合成ビーム130を形成する。合成ビーム130は結像ディテクタ16に入射する。結像ディテクタ16は、例えば、フォトダイオード、フォトダイオードのアレイ、CCDデバイス、又は画像を検出することのできる任意の他のディテクタであり得る。1つよりも多くの結像ディテクタ16が提供されてもよい。
[00129] 結像ディテクタ16では、参照アライメント放射ビーム115a乃至115dと同じ波長を有するアライメント放射ビームとの間で干渉が発生する。結像ディテクタ16においてアライメントマークの2つの重なり合った画像を形成するアライメント放射ビーム間では、有意な干渉は発生しない。参照アライメント放射ビーム115a乃至115dとアライメント放射ビームとは、干渉するためには、互いにコヒーレントであってもよい。ここで用いられる「コヒーレント」という語は、アライメント放射ビームと同じ波長及び偏光を有する参照アライメント放射ビームとが結像ディテクタ16において互いに干渉し得ることを示そうとするものである。「コヒーレント」という語は、アライメント放射ビーム源が長いコヒーレンス長を有することを示そうとするものではない。
[00130] 長いコヒーレンス長を有する放射源は、例えばスペックルなどの干渉効果がアライメントシステムを用いて行われる測定の精度を低下させ得るので、アライメントシステムとの使用には不適当であろう。そのため、非コヒーレントなアライメント放射ビーム源が好適である。もっとも、アライメントシステムは非コヒーレントなアライメント放射ビーム源との使用のみに限定されるものではなく、レーザなどの長いコヒーレンス長を有するアライメント放射ビーム源が用いられ得ることは理解されるべきである。参照アライメント放射ビームの光路長はアライメント放射ビーム源2a乃至2dのコヒーレンス長以内でアライメント放射ビームの光路長と均等であってもよい。つまり、参照アライメント放射ビームとアライメント放射ビームとの光路長の差は、アライメント放射ビーム源2a乃至2dのコヒーレンス長未満であってもよい。参照アライメント放射ビーム及びアライメント放射ビームの光路は、例えば、マッハツェンダ干渉計のアームであると考えられてもよい。
[00131] アライメント放射ビーム源2a乃至2dは、例えば、発光ダイオード、スーパールミネッセントダイオード、レーザ、又はアライメントシステムのためにアライメント放射ビームを提供する任意の他の適当な手段であってもよい。アライメント放射ビーム源2a乃至2dは短いコヒーレンス長を有するものと見なされてもよく、一例としては、例えば10μmなど100μm未満のコヒーレンス長を有するLEDであってもよい。もっとも、実用においては、どんな放射源もいくらかのコヒーレンスを有する。参照アライメント放射ビーム及びアライメント放射ビームの光路長は、アライメント放射ビーム源2a乃至2dが例えば100μm未満の短いと考えられるコヒーレンス長を有していても結像ディテクタ16において参照アライメント放射ビームとアライメント放射ビームとの間で干渉が発生することを保証するように設計されてもよい。
[00132] 参照アライメント放射ビームとアライメント放射ビームとの間の干渉は、位相変調を、重なり合ったアライメントマーク画像の強度照度の空間分布の変調として結像ディテクタ16によって検出される振幅変調に変換する。結像ディテクタ16によって検出される2つの重なり合ったアライメントマーク画像の強度照度の空間分布は、参照アライメント放射ビームと同じ波長を共有するアライメント放射ビームとの間の干渉に依存する。参照アライメント放射ビームと同じ波長を共有するアライメント放射ビームとの間の干渉は、参照アライメント放射ビームの位相の変調に依存する。したがって、結像ディテクタ16によって検出される特定の波長を有する放射の強度照度は、その特定の波長を有する参照アライメント放射ビームの位相の変調に依存する。
[00133] 結像ディテクタ16によって検出されるアライメントマークの複合画像はそれでもなお、2つの重なり合った画像の非干渉和を介して形成される。しかしながら、結像ディテクタ16によって検出される2つの画像の強度照度は、それらの各参照アライメント放射ビームの位相変調に応じて変化する。つまり、干渉が発生するのは、アライメント放射ビームと同じ波長及び偏光を有する参照アライメント放射ビームとの間のみである。参照アライメント放射ビームは、アライメントマークに関する情報を何ら含まない。当業者には、結像ディテクタ16においてアライメント放射ビームと参照アライメント放射ビームとの間で干渉が発生するためには、アライメントシステムを設計するときに放射ビームの波長、偏光、コヒーレンス長、及び光路長が考慮されなければならないことが理解されるであろう。例えば、第1の設計を有するアライメントシステムは、約500μmのコヒーレンス長を有するアライメント放射ビーム源を備えていてもよく、アライメント放射ビームの光路長と参照アライメント放射ビームの光路長とは500μm未満の差を有していてもよい。第2の設計を有する別のアライメントシステムは、約10μmのコヒーレンス長を有するアライメント放射ビーム源を備えていてもよく、アライメント放射ビームの光路長と参照アライメント放射ビームの光路長とは10μm未満の差を有していてもよい。
[00134] 結像ディテクタ16は、結像ディテクタ16で形成されるアライメントマークの2つの画像の強度照度の空間分布を示す出力信号を、位相感応性信号ディテクタ80に提供する。位相感応性信号ディテクタ80は、結像ディテクタ16からの出力信号を受信するとともに、変調器60a乃至60dからの出力信号を受信する。位相感応性信号ディテクタ80は、結像ディテクタ16によって検出されたアライメントマーク画像を判別し、判別されたアライメントマーク画像を示す出力信号をプロセッサPRに提供する。プロセッサPRは、判別されたアライメントマーク画像を分析してアライメントシステムに対するアライメントマークの位置を決定するように構成されている。プロセッサPRは、アライメントシステムに対する基板Wの各位置について結像ディテクタ16からの出力画像を受信する。各出力画像は、アライメントマークP1の第1及び第2の画像の強度照度の空間分布であると考えられてもよい。2つの画像の強度照度の空間分布は、アライメントマークP1がアライメントシステムASと整列される基板Wの位置を決定するべく、プロセッサPRによって分析される。これは例えば、第1及び第2の画像が互いに最も完全に重なり合う位置に対応し得る。
[00135] 互いに対して約180度回転されたアライメントマークの2つの画像を産出するのに寄与するアライメントシステムのコンポーネントは、第1のシステムと称され得る。例えば、第1のシステムは、アライメント放射ビーム源2a乃至2dと、光ファイバ3a乃至3dと、ファイバカプラ90と、光ファイバ3と、図2の破線70によって表されたコンポーネントとを備えていてもよい。第1のシステムは他のコンポーネントを備えていてもよい。2つの画像の強度照度の空間分布からアライメントマークの位置を決定するために用いられるアライメントシステムのコンポーネントは、第2のシステムと称され得る。すなわち、第2のシステムは、リフレクタ6a乃至6dと、リフレクタ100a乃至100hと、位相変調器110a乃至110dと、変調器60a乃至60dと、ビームコンバイナ120と、結像ディテクタ16と、位相感応性信号ディテクタ80と、プロセッサPRとを備え得る。第2のシステムは他のコンポーネントを備えていてもよい。
[00136] アライメントシステムに提供されるアライメント放射ビーム源の数は、4つより多くてもよいし又は少なくてもよい。アライメントシステムに提供されるアライメント放射ビームの数は、4つより多くてもよいし又は少なくてもよい。アライメントシステムに提供される変調器の数は、4つより多くてもよいし又は少なくてもよい。アライメントシステムに提供される光ファイバの数は、本明細書において図示される実施形態例に示される光ファイバの数より多くてもよいし又は少なくてもよい。提供される結像ディテクタの数は、本明細書において図示される実施形態例に示される結像ディテクタの数より多くてもよいし又は少なくてもよい。結像ディテクタはバランス型結像フォトディテクタであってもよい。
[00137] 異なる波長の照明が用いられ各極が異なる放射ビーム源を用いて発生される一実施形態においては、放射ビーム源の数はそれに従ってスケーリングされ得る。例えば、4つの異なる極を4つの異なる波長で発生させるために16の放射ビーム源(例えばLED)が用いられてもよい。そのような一実施形態においては、異なる波長で動作する4つの放射ビーム源が単一の光ファイバと結合され、この光ファイバがアライメント放射を1つのアライメントビーム極として送出してもよい。それらの波長で動作する異なる放射ビーム源が単一の光ファイバと結合され、この光ファイバがアライメント放射を別の1つのアライメントビーム極として送出してもよい。一般に、任意の数の波長が用いられ得る。
[00138] 例えば上記で言及したLEDなど、アライメント放射の任意の適当な放射源が用いられ得る。アライメント放射ビーム源は、アライメントシステム内で発生する望ましくない反射によって引き起こされる干渉効果を回避するために、非コヒーレントであってもよい。そのような干渉は結像ディテクタ16において有意なスペックルを引き起こし得るものであり、これは、アライメントシステムASを用いて得られる測定の精度を低下させ得る。ここで用いられる「有意なスペックル」という用語は、アライメントシステムの精度に悪影響を及ぼすであろう量のスペックルを示そうとするものである。当業者には、アライメントシステム内で有意なスペックルが発生することを回避するアライメント放射ビーム源のコヒーレンス長の範囲が当該アライメントシステムの特徴に依存することが理解されるであろう。自己参照光学系8は、偏光を分離して、略直交する偏光を有する2つのアライメントマーク画像を生成する。この偏光の分離は、アライメント放射がいくらかのコヒーレンスを含む場合であっても、アライメントマーク画像間の干渉を回避するのに十分な程度に完全であり得る。したがって、いくつかの実施形態においては、レーザがアライメント放射ビーム源として用いられてもよい。
[00139] 概して、アライメントシステムは、アライメントマーク画像の非干渉和が結像ディテクタ16において提供されるのであれば、任意の適当な放射源を用い得る。つまり、アライメントマーク画像は結像ディテクタ16において、画像間で有意な干渉が発生することなく、足し合わせられる。「有意な干渉」という用語は、アライメントシステムがアライメントマークの位置を決定する精度に対して悪影響を有する干渉を意味するものと解釈され得る。
[00140] 一実施形態においては、結像ディテクタは、基板Wが存在している環境の外部に位置していてもよい。その場合、光ファイバのアレイが、アライメント放射ビームを受信し次いでそのアライメント放射ビームを結像ディテクタへと輸送するように配置されていてもよい。この配置の利点は、結像ディテクタが制御環境の外部にあり、容易にアクセス可能であるということである。また、結像ディテクタからのアウトガスに起因する汚染が回避される。さらに、結像ディテクタからの熱の除去がより簡単になる。
[00141] 一実施形態においては、アライメントマークP1のx方向位置を決定するために基板をx方向に移動させ、次いでy方向位置を決定するために基板をy方向に移動させる代わりに、基板が対角線的(例えばx=y方向)に移動されてもよい。その場合、プロセッサPRは、結像ディテクタ16から出力された画像を分析して、アライメントマークP1のx方向位置及びy方向位置の両方を決定し得る。
[00142] 本発明の説明した実施形態はx方向及びy方向に広がる格子を備えたアライメントマークP1を用いるが、他の形態のアライメントマークが用いられてもよい。自己参照光学系8は自己参照型であるから、アライメントマークは、アライメントマークの位置を決定するとき、自己に対して参照される。これは、アライメントマークが特定の形態に制約されないことを意味している。結像ディテクタが撮像センサ自体に固定されたマークを備えておりアライメントマーク画像の位置がその固定されたマークと比較される従来技術のアライメントシステムと比べて、これは有利である。例えば、従来技術のシステムにおいては、2つの非透過性のバーが結像ディテクタに設けられており、それらの2つのバーに対するアライメントマーク画像の位置が決定される。これは、アライメントマーク画像の位置とバーの位置との比較を可能にする形態を有するアライメントマークに依存する。これとは対照的に、本発明の実施形態は、アライメントマークをそれ自体によって参照するので、結像ディテクタにバー又は他のフィーチャが設けられることを要さない。180°の回転について対称的なマークであればどんなマークであっても、自己参照光学系の作用によって、そのマークの位置を決定するために用いられ得る一対の画像を形成するであろう。本発明の実施形態は結像ディテクタ16を用いるので、アライメントマークの種類の事前知識は不要である。プロセッサPRは、結像ディテクタ16で受信した画像を分析することによってアライメントマークの種類を決定できるとともに、(上述したように)受信した画像の重なり合いを見ることによってアライメントマークの整列された位置を決定できる。このように、本発明の実施形態は、アライメントマークの種類に関して高い柔軟性を提供する。
[00143] 本発明の実施形態によって用いられるアライメントマークは小さくてもよく、例えば約10ミクロン×10ミクロン又はそれよりも小さい寸法をとる。こうした小さなアライメントマークは(上述したように)アライメント放射ビームスポットによって容易に過充填され得るものであり、それによって関心領域(すなわちアライメントマークの画像)の簡単な選択が可能になる。小さなアライメントマークを用いることは有利である。なぜなら、アライメントマークが基板上でより少ない空間を占め、したがってより多くの空間が集積回路などの製品のために使用されることが可能になるからである。
[00144] 本発明の図示された実施形態は偏光ビームスプリッタ及び一対のコーナーキューブリフレクタを備えた自己参照光学系を用いるが、任意の形態の自己参照光学系が用いられ得る。例えば、マッハツェンダ構成を有するが1つのアームにおける画像回転を含む自己参照光学系が用いられてもよい。「自己参照光学系」という用語は物体の2つの画像を提供する光学系を意味するものと解釈されてもよく、これらの画像の相対位置は物体に対する光学系の位置に依存する。画像のうち一方は他方の画像に対して回転されてもよい。
[00145] 図2に図示されるような偏光ビームスプリッタ6を用いることは、アライメントマークを照明し反射された放射をディテクタの方に誘導することの一例に過ぎない。別の一例においては、約50%を反射し放射偏光に依存しないビームスプリッタが用いられてもよい。この例においては、アライメント放射の75%が、アライメント放射の50%の初期反射とそれに次ぐ反射されたアライメント放射の50%の透過との組み合わせを介して失われるであろう。偏光を判別しないこのような配置が用いられる場合には、上述した波長の変調と類似の手法で偏光の変調が用いられてもよい。これは、アライメント放射の異なる偏光によって生成されたアライメントマーク画像がプロセッサPRによって受信され分析されることを可能にする。
[00146] 上記の説明で参照されたレンズ20,21,26のうち1つ以上は、複数の光学素子を備えていてもよい。光学素子は(図示するように)回折性であってもよく、又は反射性であってもよい。
[00147] 一実施形態においては、例えば異なる波長によって生成された異なる画像の強度照度のバリエーションは、各波長について結像ディテクタ16全体で受信したアライメント放射の強度照度の平均を用いて補正されてもよい。
[00148] 本発明の実施形態は米国特許第6,961,116号に記載された方法及び/又は装置を使用し得るものであり、同文献は参照により本明細書に組み込まれる。本発明の実施形態は国際公開第2014/026819号に記載された方法及び/又は装置を使用し得るものであり、同文献は参照により本明細書に組み込まれる。本発明の実施形態は国際公開第2014/068116号に記載された方法及び/又は装置を使用し得るものであり、同文献は参照により本明細書に組み込まれる。
[00149] 一実施形態においては、本発明によるアライメントシステムはメトロロジ(計測)装置の一部を形成してもよい。メトロロジ装置は、基板上に既に存在するパターンに対する基板上のレジストに形成された投影されたパターンのアライメントを測定するために用いられてもよい。この相対的アライメントの測定は、オーバーレイと称され得る。メトロロジ装置は、例えばリソグラフィ装置にすぐ隣接して位置していてもよく、基板(及びレジスト)が処理される前にオーバーレイを測定するために用いられてもよい。
[00150] 本文中では、リソグラフィ装置の文脈における本発明の実施形態を特に参照しているかもしれないが、本発明の実施形態は他の装置において用いられてもよい。本発明の実施形態は、マスク検査装置、メトロロジ装置、あるいはウェーハ(若しくは他の基板)若しくはマスク(若しくは他のパターニングデバイス)などの物体を測定又は加工する任意の装置の一部を形成してもよい。これらの装置は概してリソグラフィツールと称され得る。そのようなリソグラフィツールは、真空状態又は大気(非真空)状態を利用し得る。
[00151] 本明細書では、ICの製造におけるリソグラフィ装置の使用について特に言及しているが、本明細書に記載のリソグラフィ装置は、他の用途を有してもよいことを理解されたい。可能な他の用途には、集積光学システム、磁気メモリの誘導及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。
[00152] 光リソグラフィの分野での本発明の実施形態の使用に特に言及してきたが、本発明は文脈によってはその他の分野、例えばインプリントリソグラフィでも使用することができ、光リソグラフィに限定されないことを理解されたい。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイス内のトポグラフィが基板上に作成されたパターンを画定する。パターニングデバイスのトポグラフィは基板に供給されたレジスト層内に刻印され、電磁放射、熱、圧力又はそれらの組み合わせを印加することでレジストは硬化する。パターニングデバイスはレジストから取り除かれ、レジストが硬化すると、内部にパターンが残される。本発明の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらのいずれかの組み合わせにおいて実施可能である。また、本発明の実施形態は、1つ以上のプロセッサによって読み取り及び実行され得る機械読み取り可能媒体上に記憶された命令としても実施することができる。機械読み取り可能媒体は、機械(例えばコンピューティングデバイス)によって読み取り可能な形態の情報を記憶又は送信するためのいずれかの機構を含み得る。例えば、機械読み取り可能媒体は、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気、光、音、又は他の形態の伝搬信号(例えば搬送波、赤外線信号、デジタル信号等)、及び他のものを含むことができる。さらに、一定の動作を実行するものとして本明細書ではファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令を記載することができるが、そのような記載は単に便宜上のものであり、そういった動作は実際には、コンピューティングデバイス、プロセッサ、コントローラ、又はファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令等を実行する他のデバイスから得られることは認められよう。
[00153] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、本発明は、説明したものとは別の方法で実施することができることが理解されよう。上記の説明は例示的なものであり、限定するものではない。したがって、以下に示す特許請求の範囲から逸脱することなく、記載された本発明に対して改変を加えることができることは、当業者には明らかであろう。