JP6709539B2 - インク、液体を吐出する装置、及び液体を吐出する方法 - Google Patents

インク、液体を吐出する装置、及び液体を吐出する方法 Download PDF

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Description

本発明は、インク、液体を吐出する装置、及び液体を吐出する方法に関する。
液体を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)におけるノズル板には、液体を吐出する液体吐出面側表面に撥液膜が設けられている。
前記撥液膜としては、例えば、テトラフルオロエチレンとパーフルオロジメチルジオキソールの共重合体樹脂(テフロン(登録商標)AF、デュポン社製)を使用すること(例えば、特許文献1参照)、前記撥液膜の成膜方法として、例えば、浸漬法、転写法、スプレー塗布法、スピンコート法、ワイヤーバー塗布法、熱蒸着法、メニスカス・コーティング法などによること、前記撥液膜を成膜後にガラス転移点(Tg)以上の温度で加熱(ベーク)することが知られている。
一方、前記液体吐出ヘッドから吐出される液体の一つとしてインクがあり、その吐出方法としてインクジェット吐出方式が適用される。
前記インクジェット吐出方式は、他の吐出方式に比べてプロセスが簡単であり、かつフルカラー化が容易であり、簡略な構成の装置であっても高解像度の画像が得られるという利点がある。このため、前記インクジェット記録方式は、パーソナルからオフィス用途、商業印刷や工業印刷の分野へと広がりつつある。
産業用途において、耐光性、耐水性、耐摩耗性などの耐久性を向上させるために、例えば、プラスチックフィルムなどの非浸透性基材が使用されており、前記非浸透性基材に用いられるインクが開発されている。
前記インクとして、例えば、有機溶剤をビヒクルとして使用した溶剤系インクジェットインクや、重合性モノマーを主成分とする紫外線硬化型インクジェットインクが広く用いられている。しかし、前記溶剤系インクジェットインクは、溶剤蒸発による環境への影響が懸念されるという問題がある。紫外線硬化型インクジェットインクは、安全性の面から使用するモノマーの選択肢が限られる場合がある。
そのため、環境負荷が少なく、非浸透性基材に直接記録できる水性インクが提案されている(例えば、特許文献1、2)。
本発明は、吐出信頼性に優れ、非浸透性基材を含む各種基材に対して、印刷後の密着性、耐擦過性、非転写性が良好であるインクを提供することを目的とする。
上記の課題は以下に記載するインクによって解決することができる。
液体を吐出するノズルを有し、少なくとも液体吐出面側表面に撥液膜を有するノズル板を備えた液体を吐出する装置用の吐出液体として用いるインクにおいて、
前記撥液膜が、含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位を含むフッ素樹脂を含有する膜であり、
更に、前記ノズルの外周部分において、前記ノズルのエッジ側に向かって膜厚が薄くなる方向に傾斜している斜面領域を有する撥液膜であり、
前記インクが、少なくとも2種の樹脂粒子、有機溶剤、水、色材、及びシロキサン化合物を含有し、前記有機溶剤として下記一般式(1)で表される化合物及び/又は下記一般式(2)で表される化合物を含有するインク。
(ただし、前記一般式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ、炭素数1以上5以下のアルキル基を示し、R、R、及びRは同一であっても、異なっていてもよい)
(ただし、前記一般式(2)中、Rは、メチル基及びエチル基のいずれかを示し、Rは、水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを示す)
本発明によれば、吐出信頼性に優れ、非浸透性基材を含む各種基材に対して、印刷後の密着性、耐擦過性、非転写性が良好であるインクが提供される。
図1は、本発明の液体を吐出する装置におけるノズル板の一例を示す平面説明図である。 図2は、本発明の液体を吐出する装置におけるノズル板の1つのノズル部分の拡大断面説明図である。 図3は、ノズル板の製造方法の一例の説明に供する説明図である。 図4は、真空蒸着の説明に供する説明図である。 図5Aは、ベーク前の状態を示す撥液膜のSEM写真である。 図5Bは、ベーク前の状態を示す撥液膜のSEM写真である。 図6Aは、ベーク後の状態を示す撥液膜のSEM写真である。 図6Bは、ベーク後の状態を示す撥液膜のSEM写真である。 図7は、本発明の液体を吐出する装置における液体吐出ヘッドの一例を示す外観斜視説明図である。 図7のA−A線に沿うノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向)の断面説明図である。 図7のB−B線に沿うノズル配列方向(液室短手方向)の断面説明図である。 図10は、本発明の液体を吐出する装置の一例を示す要部平面説明図である。 図11は、本発明の液体を吐出する装置の他の一例を示す要部側面説明図である。 図12は、本発明の液体を吐出する装置における液体吐出ユニットの一例を示す要部平面説明図である。 図13は、本発明の液体を吐出する装置における液体吐出ユニットの他の一例を示す正面説明図である。
(液体を吐出する装置及び液体を吐出する方法)
本発明の液体を吐出する装置は、液体を吐出するノズルを有し、少なくとも液体吐出面側表面に、ノズル基材と撥液膜とを有するノズル板を備えた液体を吐出する装置であって、
前記撥液膜が、含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位を含むフッ素樹脂を含有する
膜であり、該撥液膜の膜厚は、ノズルの外周部分より、ノズルのエッジ側の方が薄い。
本発明の液体を吐出する方法は、
液体を吐出するノズルを有し、少なくとも液体吐出面側表面に撥液膜を有するノズル板を備えた液体を吐出する装置を用いて液体を吐出する方法であって、
前記撥液膜が、含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位を含むフッ素樹脂を含有する
膜であり、
該撥液膜の膜厚は、ノズルの外周部分より、ノズルのエッジ側の方が薄く、インクとして、下記インクを用いる。
(インク)
本発明に用いるインクは、少なくとも2種の樹脂粒子、有機溶剤、水、色材、及びシロキサン化合物を含有し、前記有機溶剤として下記一般式(1)で表される化合物及び/又は下記一般式(2)で表される化合物を含有するインク、である。
(ただし、前記一般式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ、炭素数1以上5以下のアルキル基を示し、R、R、及びRは同一であっても、異なっていてもよい)
(ただし、前記一般式(2)中、Rは、メチル基及びエチル基のいずれかを示し、Rは、水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを示す)
前記インクに含まれる成分において、樹脂粒子は印刷により形成された画像の性能に大きな影響を与える材料の一つである。
本発明に用いるインクは、性質が異なる二種の樹脂粒子を含有することで、耐擦過性と、非転写性を両立させるインクとすることができる。
一般的に、樹脂粒子の最低造膜温度(MFT)が高いほど塗膜の硬度が高まる傾向にあるが、基材との密着性はMFTが低く、柔軟である膜を形成した方が基材に対する追従性も高く、密着性が高くなる傾向にある。従って、ひとつのインク中にMFTが高い樹脂粒子とMFTが低い樹脂粒子など2種類以上の樹脂粒子を含有することで上記の両特性を得ることができると考えられる。
しかし、樹脂粒子同士の混和性、及び相溶解性が乏しい場合、それぞれの特性をつぶし合い所望の効果が得られないという課題がある。
さらに、低いMFTの樹脂粒子は吐出装置のノズル付近で乾燥により皮膜を形成しやすく、吐出不良の原因となりうる。
前記課題を解決するため、本発明者が鋭意検討を重ねた結果、インクに、少なくとも二種の樹脂粒子を使用する際に、前記樹脂粒子を溶解できる有機溶剤を含有させることで、インクが付着した記録媒体を乾燥させる過程において、前記樹脂粒子の混和性を高めることができることを見出した。また、インクを吐出する装置において特定の材料からなる撥液膜を有するノズル板を用いることにより低いMFTの樹脂粒子を用いてもインク吐出装置のノズル近傍での固着物の堆積を緩和できることを見出した。さらに、前記樹脂粒子を溶解できる有機溶剤の存在により、吐出装置のノズル付近での皮膜形成を緩和でき、結果吐出信頼性をより向上できたと考えられる。
<一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物>
下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物の少なくともいずれかは、少なくとも2種の樹脂粒子含有するインクを用いて画像を印刷した際に、インクの乾燥工程において少なくとも2種の樹脂が好適に混和した状態が得られ、その結果少なくとも2種の樹脂粒子の特性の相乗効果を引き出すことができる。
(ただし、前記一般式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ、炭素数1以上5以下のアルキル基を示し、R、R、及びRは同一であっても、異なっていてもよい)
(ただし、前記一般式(2)中、Rは、メチル基及びエチル基のいずれかを示し、Rは、水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを示す)
これらの中でも、非転写性の点から、前記一般式(1)で表される化合物を用いることが好ましい。
前記、炭素数1以上5以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブロピル基、ブチル基、ペンチル基などが挙げられる。
前記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、下記構造式(1−1)で表される3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド;下記構造式(1−2)で表される3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド;3−メトキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミドなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、密着性、耐擦過性、非転写性、及び高光沢性の点から、下記構造式(1−1)で表される3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミドが好ましい。
前記一般式(1)で表される化合物を含有することで、有機溶剤と前記樹脂粒子との相溶性を高め、分散性を向上させることができる。また、前記一般式(1)で表される化合物は、各種非浸透性基材への浸透性も高いため、インク基材への十分な濡れ性を確保できる。その結果、さらに高い堅牢性と基材への優れた密着性を持つ画像を得ることができる。さらに、これらの化合物をインク中に添加することで、本発明におけるノズル板の撥液膜と組み合わせて用いた際に優れた撥液性を付与することが可能となり、結果として吐出信頼性がさらに向上していると考えられる。
また、前記一般式(1)で表される化合物としては、樹脂粒子と、ある程度の親和性を持ちつつ比較的沸点の低い、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール等の有機溶剤を併用することで、インク中における樹脂粒子の分散安定性を確保でき吐出安定性をより向上をすることができると考えられる。
前記一般式(1)で表される化合物の市販品としては、例えば、商品名「エクアミドM−100」(出光興産株式会社製、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、前記一般式中、R:メチル基、R:メチル基、R:メチル基)、商品名「エクアミドB100」(出光興産株式会社製、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、前記一般式中、R:メチル基、R:メチル基、R:ブチル基)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
<<一般式(2)で表される化合物>>
一般式(2)で表される化合物は、下記の通りである。
(ただし、前記一般式(2)中、Rは、メチル基及びエチル基のいずれかを示し、Rは、水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを示す)
前記一般式(2)中のRは、水素原子であることが好ましい。
前記炭素数1以上8以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。
前記一般式(2)で表される化合物としては、例えば、下記構造式(2−1)で表される3−メチル−3−オキセタンメタノール、下記構造式(2−2)で表される3−エチル−3−オキセタンメタノールなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記一般式(1)で表される化合物及び前記一般式(2)で表される化合物の合計の含有量としては、インク全量に対して、5質量%以上55質量%以下が好ましく、10質量%以上45質量%以下がより好ましい。前記含有量が、5質量%以上55質量%以下であると、均一に混合される効果が高まり、インクジェット印刷方法に用いた場合に良好な吐出性を得ることができる。また、非浸透性基材への濡れ性が優れたインクを製造しやすくなる。
前記一般式(1)で表される化合物及び前記一般式(2)で表される化合物の少なくともいずれかのインク中の含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析(GCMS)法により確認することができる。具体的に、インク全体をGCMSにかけ、含まれている溶剤の定性分析を行う。溶剤の種類が特定できたら、各溶剤の濃度の検量線を作成し、インク中に含まれる各溶剤の定量をすることができる。
<樹脂粒子>
本発明において、樹脂粒子は水を分散媒として安定に分散した状態である、樹脂エマルションの状態で添加してインクを製造することができる。
インクは少なくとも2種の樹脂粒子を含有するが、2種以上の樹脂粒子が、樹脂粒子Aと、樹脂粒子Bとを含み、樹脂粒子Aの最低造膜温度は、非転写性の点から20℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましい。また、樹脂粒子Bの最低造膜温度は、耐擦過性の点から40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。
本発明においてMFTとはエマルションをアルミニウム等の金属板の上に薄く流延し、温度を上げていったときに透明な連続フィルムが形成される最低温度のことを指し、最低造膜温度未満の温度領域では、エマルションは白色粉末状となる点を指しており、具体的には、「造膜温度試験装置」(井元製作所製)、「TP−801 MFTテスター」(テスター産業製)などの市販のMFT測定装置で測定される値のことを指す。本発明のおいては、樹脂固形分30質量%のエマルションを用いて測定した値のことである。
製品としてのインクを分析して、インクに含有される樹脂粒子のMFTを測定するには、以下の手順で測定する。
インクに含まれる樹脂や顔料などの固形成分は、比重が異なることを利用し、遠心分離により各成分を分離し、単離する。単離した樹脂粒子を洗浄、多量の水で希釈した後、疎水性溶剤を加えて分液する。樹脂粒子と水の成分からなる樹脂エマルションを採取することで、MFT測定用の樹脂エマルションとして測定する。
樹脂粒子Aおよび樹脂粒子Bは、実使用上はインク化する際に添加される水溶性有機溶剤によって造膜が容易となっており、また樹脂粒子Bにより樹脂粒子Aの造膜が促されることから、本発明のインクを使用する際に必ずしも加熱工程は必要ではない。
前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。本発明において使用する樹脂の種類は、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
ただし、本発明において使用する樹脂の種類としては、樹脂同士の相溶性の観点から樹脂Aおよび樹脂Bともに同じ種類の樹脂を使用することが好ましい。含まれる樹脂の種類を同じにすることで、相溶性が高まるため塗膜の均一が得られ、堅牢性や光沢性が良好となる。さらに、記録物の堅牢性をより高いものにするため、ウレタン樹脂を使用することが好ましい。
前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
該市販の樹脂粒子としては、例えば、ユーコートUX−485(ポリカーボネート系ウレタン樹脂粒子)、ユーコートUWS−145(ポリエステル系ウレタン樹脂粒子)、パーマリンUA−368T(ポリカーボネート系ウレタン樹脂粒子)、パーマリンUA−200(ポリエーテル系ウレタン樹脂粒子)(いずれも三洋化成工業株式会社製)、ボンコート5454(スチレン−アクリル系樹脂粒子、大日本インキ化学工業株式会社製)、SAE−1014(スチレン−アクリル系樹脂粒子、日本ゼオン株式会社製)、サイビノールSK−200(アクリル系樹脂粒子、サイデン化学株式会社製)、プライマルAC−22、AC−61(アクリル系樹脂粒子、ローム・アンド・ハース製)、ボンコート4001(アクリル系樹脂粒子、DIC株式会社製)、NANOCRYL(アクリル系樹脂粒子、トーヨーケム株式会社製)などが挙げられる。
樹脂粒子を水性媒体中に分散させるにあたり、分散剤を利用した強制乳化型のものを用いることもできるが、塗膜に分散剤が残り強度を下げることがあることから、分子構造中にアニオン性基を有する、いわゆる自己乳化型のものが好適である。
その場合の酸価は5〜100mgKOH/gとなる範囲でアニオン性基を含有すると水分散性の観点から好ましく、5〜50mgKOH/mgであることが、優れた耐擦性や耐薬品性を付与する上で特に好ましい。
アニオン性基としては、カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基などが挙げられる。中でも一部又は全部が塩基性化合物等によって中和されたカルボキシレート基やスルホネート基を使用することが、良好な水分散安定性を維持する上で好ましく、これらアニオン性基を樹脂中に導入するには、これらアニオン性基を持ったモノマーを使用すればよい。
前記アニオン性基の中和に使用できる塩基性化合物としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリンなどの有機アミン、モノエタノールアミンなどのアルカノールアミン、Na、K、Li、Caなどを含む金属塩基化合物などが挙げられる。
強制乳化法を用いる場合、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤のいずれも使用できるが、ノニオン界面活性剤の方が、耐水性が良好となるため望ましい。
前記ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレンポリオール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも好ましいのは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンである。
アニオン界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、メチルタウリル酸塩、スルホコハク酸塩、エーテルスルホン酸塩、エーテルカルボン酸塩、脂肪酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられ、好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩等が挙げられる。
界面活性剤の添加量は、樹脂に対して0.1〜30質量%であり、好ましくは5〜20質量%である。0.1〜30質量%の範囲内であれば、好適に樹脂エマルションの造膜し、付着性や耐水性に優れたインクが得られ、記録物がブロッキングすることなく好適に用いられる。
また、前記樹脂粒子の粒径は、特にインクジェット記録装置に使用することを考慮すると、体積平均粒径10〜1,000nmが好ましく10〜200nmがより好ましく、10〜100nmがさらに好ましい。
前記体積平均粒径が10〜100nmの樹脂粒子を用いることで、水溶性有機溶剤と樹脂粒子表面との接触部位が増加し、樹脂粒子の造膜性が高まり、強靭な樹脂の連続被膜が形成されるため、高い強度の記録物を得ることが可能となる。
ここで、前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(マイクロトラック MODEL
UPA9340、日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
本発明のインクは、2種類以上の樹脂を含有するが、全樹脂を合計した含有量はインク全重量のうち、1〜10質量%の範囲が定着性やインク安定性において好ましく、さらに5〜10質量%の範囲ではインク層の平滑性がより向上し、高い光沢度を得ることができるとともに、基材への定着性も向上することからより好ましい。
なお、本発明のインクを得るために樹脂エマルションのMFTを調整する場合、例えば、樹脂のガラス転移点(以下、Tgと記載することもある)をコントロールすることで調整することができ、樹脂が共重合体である場合には、共重合体を形成するモノマーの比率を変えることにより調整することができる。
また、樹脂の粒子径の制御によっても変化するため、これらの制御因子により樹脂のMFTを狙いの値とすることが可能である。
本発明において、インク中に少なくとも二種の樹脂を含有するが、本発明における少なくとも二種の樹脂とは、樹脂の成分が異なることを意味し、同じ成分の樹脂で重量平均分子量が異なるだけの樹脂粒子は、同一の樹脂粒子とする。ただし、主骨格を形成する成分が同じでも、側鎖が異なっていたり、共重合により他の成分を含んだりしている場合は異なる種類の樹脂とする。
前記樹脂粒子の定性及び定量としては、例えば、下記参考文献1に詳述されているような手順で確認することができる。具体的には、以下に示すような測定装置を用いた分析により確認することができる。
[参考文献1]
「プラスチック材料の各動特性の試験法と評価結果(22);安田武夫著、プラスチックス:日本プラスチック工業連盟誌/「プラスチックス」編集委員会編」
<<赤外線分光分析(IR)>>
樹脂粒子の持っている各種の官能基の吸収波長を測定し、既知の樹脂粒子のIRスペクトルと比較することによる樹脂粒子の定性分析を行うことができる。また、各樹脂粒子の官能基の吸収の吸光度を比較することにより、数種類のモノマーや樹脂粒子の相対量の比較を行うことができる。
<<熱分析(DS/A、TG/DTA)>>
示差走査型熱量分析(DS/A)や示差熱分析(DTA)を用いて樹脂粒子の融点、ガラス転移点等を測定することによりポリマーを同定することができる。
<<熱分解ガスクロマトグラフィ(PyGC)>>
熱分解生成物をガスクロマトグラフィにより分離し、組成分析や構造解析を行うことができる。
なお、PyGCに質量分析計を直結し、熱分解により生成した分解生成物を同定しておくとより正確な分析を行うことができる。
<<核磁気共鳴法(NMR)>>
既知の樹脂粒子のスペクトルと比較して、樹脂粒子の同定、及び確認を行うことができる。未知樹脂粒子の場合は分子構造の推定を行うことができる。さらに共重合体や複数のポリマーのブレンド物の組成比やブレンド比の定量分析を行うことができる。
前記測定装置を用いて樹脂粒子の分析を行う前に、前処理として遠心分離によりインク中の着色剤成分を沈降させ、樹脂粒子を含んだ上澄みを回収したり、適当な有機溶剤を用いて樹脂粒子を抽出したりしておくことも分析精度を高める手段として有効である。
<ウレタン樹脂>
本発明において使用するウレタン樹脂としては、例えばポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタン樹脂について特に制限なく使用することができる。
前記ポリオールに使用可能なポリオールとしては、例えばポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリエステルポリオール等を使用することができる。
(ポリエーテルポリオール)
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば活性水素原子を2個以上有する化合物の1種または2種以上を出発原料として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。
前記出発原料としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等を使用することができる。
また、前記アルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等を使用することができる。
前記ポリエーテルポリオールとしては、非常に優れた耐擦性を付与可能なインクジェット印刷インク用バインダーを得る観点から、ポリオキシテトラメチレングリコールやポリオキシプロピレングリコールを使用することが好ましい。
また、前記ウレタン樹脂(B)の製造に使用可能なポリカーボネートポリオールとしては、例えば炭酸エステルとポリオールとを反応させて得られるものや、ホスゲンとビスフェノールA等とを反応させて得られるものを使用することができる。
(ポリカーボネートポリオール)
前記炭酸エステルとしては、メチルカーボネートや、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネート等を使用することできる。
前記炭酸エステルと反応しうるポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノール−A、ビスフェノール−F、4,4’−ビフェノール等の比較的低分子量のジヒドロキシ化合物や、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールや、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオール等を使用することができる。
(ポリエステルポリオール)
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるものや、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルや、これらの共重合ポリエステル等を使用することができる。
前記低分子量のポリオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコ−ル等を使用することができる。
前記ポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、及びこれらの無水物またはエステル形成性誘導体などを使用することができる。
(ポリイソシアネート)
前記ウレタン樹脂を製造する際に使用するポリイソシアネートとしては、例えばフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族または脂肪族環式構造含有ジイソシアネート等を、単独で使用または2種以上を併用して使用することができる。
また、少なくとも1種の脂環式ジイソシアネートを入れることにより目的とする塗膜強度を得やすくなる。これは、脂環構造を含むことで加熱時の硬化収縮を低減でき、ひび割れ等の劣化を防ぐことができるためである。さらに、本発明のインクは、ポスターや看板などの屋外向けの用途をも視野に入れているので、非常に高い長期耐候性を持つ塗膜を必要としており、この観点からも脂肪族又は脂環式ジイソシアネートを使用することが好ましい。
これらの目的のためには、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが好適である。脂環式ジイソシアネートの割合は全イソシアネート化合物中の60質量%以上であることが好ましい。
更に、少なくとも1種の脂環式ジイソシアネートを入れることにより目的とする塗膜強度を得やすくなる。特に、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが好適である。脂環式ジイソシアネートの割合は全イソシアネート化合物中の60質量%以上であることが好ましい。
(製造方法)
本発明のインクに用いるウレタン樹脂粒子は、従来一般的に用いられている製造方法により得ることができるが、例えば次の方法が挙げられる。
まず、無溶剤下又は有機溶剤の存在下で、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートを、イソシアネート基が過剰になる当量比で反応させて、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを製造する。
次いで、前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマー中のアニオン性基を必要に応じて前記中和剤により中和し、その後、鎖延長剤と反応させて、最後に必要に応じて系内の有機溶剤を除去することによって得ることができる。
使用可能な有機溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類、アセトニトリルなどの二トリル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンなどのアミド類などが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても構わない。
また、前記鎖延長剤としては、ポリアミンやその他の活性水素基含有化合物が挙げられる。
前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン類、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン類、ヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン等のヒドラジン類、コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類などが挙げられる。
前記その他の活性水素基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール類、ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール類、及び水等が挙げられる。これらは、インクの保存安定性が低下しない範囲内であれば、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ウレタン樹脂のインク中への添加形態、粒子の平均粒径、分散方法、酸価などについての好ましい範囲は上記樹脂についてのものと同じである。
本発明のインクは、印字後に加熱を行うと、残留溶剤が低減して接着性が向上するので好ましい。特に、樹脂BのMFTが80℃を超える場合、樹脂の造膜不良をなくすため、加熱をすることが好ましく、そうした場合さらに高い画像堅牢性が得られる。
本発明で用いる樹脂Bは、塗膜形成時の表面硬度が、100N/mm以上であることが好ましく、これを満たすとインクが強靭な塗膜を形成し、より強い耐擦性を得ることができる。
表面硬度の上限は、記録物の柔軟性を損なわないようにする観点から、250N/mmである。
本発明における表面硬度は、例えば以下の方法によって測定することができる。
樹脂Bのエマルションを膜厚10μmになるようにスライドガラス上に塗布した後、100℃で30分間乾燥させて形成した樹脂膜について、微小表面硬度計(FISCHERSCOPE HM2000、フィッシャー社製)を用いて、バーコビッチ圧子を9.8mNの荷重をかけて押し込んだ際の押し込み深さを求め、ISO14577−2002記載のマルテンス硬度として計測する。
本発明のインクは前述した樹脂粒子A、樹脂粒子B以外の樹脂を含んでも構わないが、発明の効果を十分に得るためには、樹脂粒子Aと樹脂粒子Bがインク中に含まれる樹脂全体の70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
次に本発明のインクのその他の構成成分について説明する。
本発明のインク構成成分としては、少なくとも水、顔料、水溶性有機溶媒を含んでなり、必要に応じてその他界面活性剤、防腐防カビ剤、防錆剤、pH調整剤、ヒンダードフエノールやヒンダードフエノールアミンのようなゴム及びプラスチックス用無色老化防止剤などを含んでも構わない。
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上1000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。固形分は樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、エチル−1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、3−メトキシ−N,N-ジメチルプロピオンアミド、3−ブトキシ−N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%〜60質量%がより好ましい。
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
顔料を分散してインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT−100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
<顔料分散体>
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
<シロキサン化合物>
シロキサン化合物としては、ポリシロキサン界面活性剤を用いることができる。ポリシロキサン界面活性剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン構造を有する化合物(シリコーン系化合物)の側鎖に親水性の基や親水性ポリマー鎖を有する化合物、ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン構造を有する化合物(シリコーン系化合物)の末端に親水性の基や親水性ポリマー鎖を有する化合物などが挙げられる。なお、前記ポリシロキサン界面活性剤とは、その構造中にポリシロキサン構造を有していればよい。
前記親水性の基や前記親水性ポリマー鎖としては、例えば、ポリエーテル基(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキンドやこれらの共重合体等)、ポリグリセリン(CΗO(CHCH(OH)CHO)−H等)、ピロリドン、ベタイン(CΗ(C−CHCOO等)、硫酸塩(CO(CO)−SONa等)、リン酸塩(CΗO(CO)−P(=O)OHONa等)、4級塩(C(CClなど)などが挙げられる。ただし、前記化学式中、nは1以上の整数を表す。これらの中でも、ポリエーテル基を有することが好ましい。
また、末端に重合性ビニル基を有するポリジメチルシロキサン等と、共重合可能なその他のモノマー(前記モノマーの少なくとも一部には(メタ)アクリル酸、又はその塩などの親水性モノマーを用いることが好ましい)と、の共重合で得られる側鎖にポリジメチルシロキサンなどのシリコーン系化合物鎖を有するビニル系共重合体なども好適に挙げられる。
これらの中でも、ポリシロキサン構造を有する化合物であり、かつ親水性ポリマー鎖を有する化合物が好ましく、前記親水性ポリマー鎖としてポリエーテル基を含有することがより好ましく、ポリシロキサン界面活性剤が疎水基としてメチルポリシロキサンを有し、親水基としてポリオキシエチレンの構造を有する非イオン界面活性剤であることが特に好ましい。
前記ポリシロキサン界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン、ポリオキシアルキレン基含有シリコーン化合物などが挙げられる。前記ポリシロキサン界面活性剤としては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、シルフェイスSAG005(HLB値:7.0)、シルフェイスSAG008(HLB値:7.0)、(以上、日信化学工業株式会社製)、FZ2110(HLB:1.0)、FZ2166(HLB値:5.8)、SH−3772M(HLB値:6.0)、L7001(HLB値:7.4)、SH−3773M(HLB値:8.0)、(以上、東レ・ダウ株式会社製)、KF−945(HLB値:4.0)、KF−6017(HLB値:4.5)、(以上、信越化学工業株式会社製)、FormBan MS−575(Ultra Additives Inc.社製、HLB値:5.0)などが挙げられる。
前記ポリシロキサン界面活性剤の含有量としては、インク全量に対して、0.1質量%以上4.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
前記含有量が、0.1質量%以上4.0質量%以下であると、各種非浸透性記録媒体へのインクの定着性を向上でき、さらに光沢等の画像品質も向上できる。
<シロキサン化合物以外の界面活性剤>
本発明のインクは、記録媒体への濡れ性を確保する点から、ポリシロキサン界面活性剤以外の界面活性剤を併用してもよい。
前記ポリシロキサン界面活性剤以外の界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種単独で併用使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、分散安定性、及び画像品質の点から、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
前記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。これらは、1種単独で併用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE−80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7〜12が好ましく、8〜11がより好ましい。
<記録媒体>
記録媒体としては特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、非浸透性基材を用いても良好な画像形成が可能である。
前記非浸透性基材とは、水透過性、吸収性が低い表面を有する基材であり、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である基材をいう。
前記非浸透性基材としては、例えば、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートフィルムなどのプラスチックフィルムを、好適に使用することができる。
W28.1
記録媒体としては、一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、壁紙、床材、タイル等の建材、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。また、記録媒体を搬送する経路の構成を調整することにより、セラミックスやガラス、金属などを使用することもできる。
<ノズル板>
ノズル板は、ノズル基材と、前記ノズル基材上に形成された撥液膜とを有する。シランカップリング剤層など、必要に応じてその他の層を有しても良い。
−ノズル基材−
前記ノズル基材には、ノズル孔が設けられており、その数、形状、大きさ、材質、構造などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ノズル基材は、前記ノズル孔から液体が吐出される液体吐出側の面と、前記液体吐出側の面とは反対側に位置する液室接合面とを有する。
前記撥液膜は、前記ノズル基材の前記液体吐出側の面に形成されている。
前記ノズル基材の平面形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、長方形、正方形、菱形、円形、楕円形などが挙げられる。また、前記ノズル基材の断面形状としては、例えば、平板状、プレート状などが挙げられる。
前記ノズル基材の大きさとしては、特に制限はなく、前記ノズル板の大きさに応じて適宜選択することができる。
前記ノズル基材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレス鋼、Al、Bi、Cr、InSn、ITO、Nb、Nb、NiCr、Si、SiO、Sn、Ta、Ti、W、ZAO(ZnO+Al)、Znなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、防錆性の点から、ステンレス鋼が好ましい。
前記ステンレス鋼としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記ノズル基材の少なくとも液体吐出側の面は、前記撥液膜と前記ノズル基材との密着性を向上させる点から、酸素プラズマ処理を行って水酸基を導入してもよい。
−ノズル孔−
前記ノズル孔としては、その数、配列、間隔、開口形状、開口の大きさ、開口の断面形状などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ノズル孔の配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、複数の前記ノズル孔が、前記ノズル基材の長さ方向に沿って等間隔に並んで配列されている態様などが挙げられる。
前記ノズル孔の配列は、吐出する液体の種類に応じて適宜選定することができるが、1列〜複数列が好ましく、1列〜4列がより好ましい。
前記1列当たりの前記ノズル孔の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択されるが、10個以上10,000個以下が好ましく、50個以上500個以下がより好ましい。
隣接する前記ノズル孔の中心間の最短距離である間隔(ピッチ)Pとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、21μm以上169μm以下が好ましい。
前記ノズル孔の開口形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円形、楕円形、四角形などが挙げられる。これらの中でも、液体の液滴を吐出する点から、円形が好ましい。
−撥液膜−
前記撥液膜は、含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位を含むフッ素樹脂を含有する膜である。前記撥液膜が、前記含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位を含むことにより、インクに、少なくとも二種の樹脂粒子を含有するインクを用い、低いMFTを有する樹脂粒子を含有するインクを用いても、インク吐出装置のノズル近傍での固着物の堆積を抑制することが可能となった。2種の樹脂粒子を含有するインクや、低いMFTを有するインクを連続的に吐出したり、吐出を休止した後に吐出を開始する場合、吐出性が低下しやすいが、含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位を含む撥液膜を導入することにより、インク吐出装置のノズル近傍での固着物の堆積を緩和できることを見出した。
前記含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位を含むフッ素樹脂は、非晶質なフッ素樹脂を用いることが好ましい。前記非晶質なフッ素樹脂は、膜強度、基材への密着性、膜の均一性等が優れているため本発明の効果をより一層発揮することができる。
前記撥液膜が、前記ノズルの外周部分において、前記ノズルのエッジ側に向かって膜厚が薄くなる方向に傾斜している斜面領域を有し、撥液膜のノズル側のエッジが、周囲の撥液膜よりも低い位置にくるので、少なくとも二種の樹脂粒子を含有するインクを用いても、インク吐出装置のノズル近傍での固着物の堆積を緩和できる。更に、ワイパー部材が撥液膜のエッジに干渉しにくくなることで、ワイパー部材が撥液膜のエッジに引っ掛かることを低減・防止し,撥液膜のエッジの劣化を低減させる点から好ましい。
前記斜面領域を有していることは、例えば、イオンポリッシュによりノズル断面を出し、SEM観察することにより確認することができる。
−−含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位−−
前記含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位としては、例えば、米国特許第3,418,302号明細書、米国特許第3,978,030号明細書、特開昭63−238111号公報、特開昭63−238115号公報、特開平1−131214号公報、特開平1−131215号公報等に記載されている構造単位などが好適に用いられる。
前記含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位は、静的表面張力が25mN/m以下の液体に対する滑落性のよい膜が得られ,ノズル表面のクリーニング性が向上する点から、含フッ素ヘテロ環状構造内にエーテル結合を有することが好ましい。
前記含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位としては、以下に示すようなヘテロ環状構造を有する構造単位が代表的である。ただし、これらに限定されるものではない。
(ただし、前記一般式(i)及び(ii)中、Rf、Rf、及びRfは、それぞれフッ素含有アルキル基を示す。)
更に、基材との密着性の向上、ガラス転移点(Tg)、及び溶剤への溶解性をコントロールするためには主鎖中に、下記一般式(iii)で表される構造単位を導入してもよく、これらの構造単位は、以下の構造式(vii)から構造式(ix)で表される構造単位からなるモノマーと共重合することにより導入することができる。
(ただし、前記一般式(iii)中、R、R、及びRは、それぞれ水素原子、フッ素原子、塩素原子、又はRfを示す。ただし、前記Rfはフッ素含有アルキル基である。
Xは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、Rf、又はRfを示す。ただし、前記Rfは酸、エステル、アルコール、アミン、アミド等の官能機を末端に有する含フッ素有機置換基であり、前記Rfは含フッ素アルキル基、又は含フッ素エーテル基である。)
以上示したような特定な化学構造を持ち、撥液膜に適しているものとしては、例えば、商品名:サイトップCTX−105(旭硝子株式会社製)、商品名:サイトップCTX−805(旭硝子株式会社製)、商品名:テフロン(登録商標)AF1600、商品名:AF2400(デュポン社製)などが挙げられる。
前記含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位を含むフッ素樹脂による撥液膜形成方法としては、例えば、フッ素系溶媒を用いたスピンコート、ロールコート、ディッピング等の塗布、印刷、又は真空蒸着等の方法などが挙げられるが、真空蒸着法を採用すると、ノズルの外周部分において、ノズルのエッジ側に向かって膜厚が薄くなる方向に傾斜している斜面領域を有する撥液膜を好適に製造することができ好ましい。また、真空蒸着法で製膜した後、熱処理(ベーク)することで、更に耐久性に優れた撥液膜を得ることができる。
前記含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位を含むフッ素樹脂の熱処理条件(温度)は、前記フッ素樹脂のガラス転移点及び基材の耐熱温度によって決定される。即ち、前記フッ素樹脂のガラス転移点より高く、基材の耐熱温度より低い温度を選べばよい。
前記含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位を含むフッ素樹脂のガラス転移点(Tg)は、その構造によって異なる。例えば、前記構造式(iv)から前記構造式(vi)の構造のものは、50℃以上110℃以下のものが多いため、熱処理条件は、温度は120℃以上170℃以下、時間は30分間〜2時間が好ましい。
前記フッ素樹脂は、下記構造式(x)で表される構造単位を含むことが好ましい。
[構造式(x)]
主鎖中に前記一般式(ii)の構造単位と、前記構造式(x)で表される構造単位を有するフッ素樹脂は“テフロン(登録商標)AF”という商標名でデュポン社より販売されている。
前記テフロン(登録商標)AFは、その共重合比を変えることによりさまざまなガラス転移点(Tg)を有することができる。即ち、PDD[パーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)]成分の比率が高くなるにつれて、ガラス転移点(Tg)は上昇する。その成分比により80℃以上330℃以下ぐらいまで存在し、市販されているのは160℃(商品名:テフロン(登録商標)AF1600、デュポン社製)と240℃(商品名:テフロン(登録商標)AF2400、デュポン社製)である。例えば、160℃のものの熱処理温度は、基材の耐熱温度も考え、165℃以上180℃以下が好ましい。
前記撥液膜の液体吐出面側の表面の平均膜厚は、1μm以上3μm以下が好ましい。
前記ノズル基材に設けた凹凸が撥液膜を構成するフッ素樹脂層表面に影響することなく平滑な表面を得るためには、1μm以上の平均膜厚を有することが好ましく、また、ノズルの形状やノズル径を維持する観点からは薄い方が好ましい。前記撥液膜の平均膜厚を1μm以上3μm以下の範囲とすると、ワイピング耐久性の観点からも、ノズルの形状の観点からも好ましい。前記平均膜厚は、例えば、断面SEM観察により測定することができる。
前記撥液膜には、ノズルの外周部分において、ノズルのエッジ側に向かって膜厚が薄くなる方向に傾斜している斜面が形成された斜面領域がある。なお、斜面領域の斜面は、断面形状で直線状に斜めになっていてもよく、あるいは、曲線状に斜めになっていてもよい。
なお、前記撥液膜の斜面領域を除く斜面領域以外の領域は、撥液膜の耐久性の面から、ノズル板の表面上に、平坦に設けることが好ましい。
このように、前記撥液膜に、ノズルの外周部分において、ノズルのエッジ側に向かって膜厚が薄くなる方向に傾斜している斜面領域があることで、撥液膜のノズル側のエッジが、周囲の撥液膜よりも低い位置にくるので、ワイパー部材が撥液膜のエッジに干渉しにくくなることで、ワイパー部材が撥液膜のエッジに引っ掛かることを低減乃至防止できる。これにより、撥液膜の耐久性を向上することができる。
前記撥液膜内の下地との界面における前記含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位を含むフッ素樹脂の数平均分子量cと、膜最表面における前記フッ素樹脂の数平均分子量dとの間に、c<d、の関係があることが好ましい。
即ち、分子量が相対的に低いと、高温環境において、分子運動性が活発になるため下地との結合状態が良好となる。一方、分子量が高いと、払拭部材と直接接触する膜最表面において物理的磨耗に対する耐久性が向上する。
前記撥液膜の深さ方向における数平均分子量の大小は、温度を徐々に上げることで、低分子量のものから優先的に蒸発するため、樹脂蒸着時の温度をコントロールすることで達成可能である。
なお、前記撥液膜におけるフッ素樹脂の平均分子量は、GPCにより測定することができる。測定結果は、c=240,000、d=290,000であった。
−シランカップリング剤層−
前記ノズル基材と前記撥液層との間には、シランカップリング剤を含有するシランカップリング剤層を有しても良い。
前記シランカップリング剤としては、アミノ基を有するカップリング剤が好ましく、特に、3−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。具体的には、KBE−903(信越化学工業株式会社製)、A1100(モメンティブパフォーマンスマテリアル社製)などが挙げられる。
前記シランカップリング剤層の形成は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディッピング法、スピンコート法、スプレー法などが挙げられる。
前記アミノ基を有するカップリング剤は、フッ素樹脂の分子中におけるヘテロ環のエーテル部とアミノ基の親和性がよいことから、アミノ基をもつシランカップリング剤をシリカ層の上に一層設けることでフッ素樹脂の定着性が大きく向上する。
ここで、本発明で用いられるノズル板について、図1及び図2を参照して説明する。図1はノズル板の平面説明図、図2は1つのノズル部分の拡大断面説明図である。
ノズル板1は、液体を吐出するノズル11となる孔(以下、「ノズル孔」と称することもある)21が形成されたノズル基材20と、ノズル基材20の表面に形成された中間層30と、液体吐出面側表面に形成された撥液膜40とを有している。
ノズル基材20は、例えば、金属製平板状部材である。ノズル基材20としてのステンレス鋼の金属製平板状部材を使用しているが、これに限るものではない。
中間層30は、下地層となる例えば、SiO層、シランカップリング剤の層などの1又は複数の層で構成している。
撥液膜40は、含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位を含むフッ素樹脂(以下、「フッ素樹脂層」ともいう。)を含有する膜である。
撥液膜40には、ノズル11の外周部分において、ノズル11のエッジ11a側に向かって膜厚が薄くなる方向に傾斜している斜面41aが形成された斜面領域41がある。なお、斜面領域41の斜面41aは、断面形状で直線状に斜めになっていてもよく、あるいは、曲線状に斜めなっていてもよい。
なお、撥液膜40の斜面領域41を除く斜面領域以外の領域42は膜厚がほぼ一定で平坦である。
ここで、領域42の表面が平滑な状態を形成できる範囲であれば、ノズル基材20として、段差が微小な表面凹凸を有するノズル基材20を使用することも可能である。
このように、撥液膜40に、ノズル11の外周部分において、ノズル11のエッジ側に向かって膜厚が薄くなる方向に傾斜している斜面領域41があることで、撥液膜40のノズル11側のエッジが、周囲の撥液膜40よりも低い位置にくるので、ワイパー部材が撥液膜40のエッジに干渉しにくくなることで、ワイパー部材が撥液膜40のエッジに引っ掛かることを低減・防止できる。
撥液膜40の液体吐出面側の表面の平均膜厚は、1μm以上3μm以下が好ましい。
また、中間層30は、撥液膜40の下地となる層がアミノ基を有するシランカップリング剤層であることが好ましい。
これにより、アミノ基と撥液膜材料が相互作用することで高い密着性が得られる。
次に、前記ノズル板の製造方法の一例について図3を参照して説明する。図3は同説明に供する説明図である。
図3(a)の基材準備工程では、ノズル基材20となる金属製平板状部材に対して鏡面研磨工程、洗浄工程の前工程を行う。
なお、ノズル基材20は、例えば、長さ30mm、幅15mm、厚み0.05mmの金属製平板状部材にプレス加工でノズル孔21を開口したものである。
金属製平板状部材としては、鉄基合金の代表例としてのステンレス鋼を使用できる。「ステンレス鋼」とはJIS G0203:2000の番号4201に記載されるように、Cr含有量が10.5質量%以上の鋼であり、種々の鋼種を使用できる。
鋼種として、オーステナイト系であれば、Cr:10.5質量%〜35質量%、好ましくは、11質量%〜30質量%、Ni:5質量%〜30質量%、フェライト系であれば、Cr:10.5質量%〜35質量%、好ましくは15質量%〜30質量%の鋼種を採用することができる。例えば、JIS G4305:2005や、JIS G4312−1991に規定される鋼種を例示することができる。あるいは、これらの規格鋼種などをベースとして他の合金元素を添加し、各種特性の改善を図ったステンレス鋼も使用できる。
ニッケル基合金としては、Cr:12質量%〜27質量%、Fe:5質量%〜18質量%を含有する高耐食性Ni−Cr−Fe合金を使用できる。この種の合金は「インコネル合金」として知られている。
そして、金属製平板状部材に、吐出面と反対側からパンチによる孔開け加工を行い、孔開け加工により生じるバリは、研磨又は化学的なエッチングにより除去する。
次いで、図3(b)の中間層形成工程では、中間層として、ノズル基材20の表面にスパッタ法などでSiO膜31を成膜し、液体吐出面側と反対側の面にテープ60を貼り付けた後、SiO膜31の表面にシランカップリング剤層32を成膜して形成する。
ここで、シランカップリング剤としては、アミノ基を有するカップリング剤が好ましく、特に、3−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。具体的には、KBE−903(信越化学工業株式会社製)、A1100(モメンティブパフォーマンスマテリアル)などが挙げられる。シランカップリング剤層32の形成は、ディッピング法、スピンコート法、又はスプレー法などいずれの方法を用いてもよい。
アミノ基を有するカップリング剤は、フッ素樹脂の分子中におけるヘテロ環のエーテル部とアミノ基の親和性がよいことから、アミノ基をもつシランカップリング剤をシリカ層の上に一層設けることでフッ素樹脂の定着性が大きく向上する。
その後、図3(c)に示す撥液膜の成膜工程を行い、蒸着工法によって、ノズル基材20上に、撥液材料を蒸着して撥液膜となる蒸着膜44を成膜する。このとき、撥液膜はノズル基材20上であるシランカップリング剤層32の表面(中間層の表面)に成膜される
含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位を含むフッ素樹脂は、1.5×10−3Pa以上8.0×10−3Pa以下の高真空下で、350℃以上420℃以下に加熱し、蒸着膜の厚みが蒸着源に対向したノズル基材20上の厚みが1μm以上3μm以下になるまで真空蒸着する。真空蒸着は、例えば、図4に示すように、真空槽500内に、蒸着源501とノズル基材20とを対向配置して行う。
その後、図3(d)に示すように、アニーリング(加熱処理)による平坦化工程を行う。
ノズル基材20を特に加熱せず、成り行きの温度で蒸着することで得られた膜を、フッ素樹脂のガラス転移点(Tg)以上の温度でベークする(アニーリング)加熱処理を行う。
ベークは、対流式乾燥炉、循環送風式乾燥炉、フラッシュアニール装置、ハロゲンランプヒータ、真空乾燥機など、いずれの方法でもよいが、窒素雰囲気下で実施するのが好ましい。ベーク温度は、ガラス転移点(Tg)より20℃〜30℃高い温度が好ましく、例えばガラス転移点(Tg)が160℃(テフロン(登録商標)AF1600)の場合は、およそ180℃での加熱が好ましい。
フッ素樹脂のガラス転移点(Tg)以上の温度でベーク(アニール)することにより、緻密で、表面が平滑で、ノズル11へ近づくに従って膜厚が薄くなる斜面領域を有する撥液膜40としてのフッ素樹脂膜となる。
例えば、ベーク前は、図5A及び図5Bに示すように、膜内部には細孔600が存在し、膜表面は純水に対する接触角が114°、Ra=8nmであるのに対して、ベーク後は、図6A及び図6Bに示すように、膜内部には空洞がなくなり、膜表面は純水に対する接触角が129°、Raは1nm以下となる。
また、フッ素樹脂膜の表面は、ノズル11のエッジ11aから40nmの範囲内でテーパ形状(斜面形状)となり、40nmの周囲より外側では平坦な面となった。
なお、蒸着工程(図3(c))の後に加熱処理を行うのではなく、蒸着工程中に加熱処理(アニール)を行ってもよい。ノズル基材20を加熱しながらフッ素樹脂を蒸着することで、フッ素樹脂のガラス転移点(Tg)に達しない温度での加熱処理でも、フッ素樹脂の表面を平滑にすることができる。
次に、撥液膜の成膜方法について説明する。
含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位を含むフッ素樹脂を使用し、蒸着によりノズル基材に成膜した撥液膜は、液相法(例えば、ディッピング)で得られる撥液膜と異なり、最表面が微小な凹凸状態になることが判明した。また、上述したように、膜内部には細孔が存在する。
そこで、上記実施形態では、蒸着後、若しくは、蒸着中に撥液膜を加熱することにより、撥液膜を流動させることで、膜の表面を平滑化し、膜内部の細孔が無くなるようにしている。それによって、インクに、少なくとも二種の樹脂粒子を含有するインクや、特に低いMFTを有する樹脂粒子を含有するインクを用いても、インク吐出装置のノズル近傍での固着物の堆積を回避でき好ましい。
そのため、蒸着後に撥液膜を加熱する場合には、上記フッ素樹脂のガラス転移点(Tg)以上の温度で加熱処理している。他方、ガラス転移点(Tg)より大幅に高い温度での加熱は、気相法で得られた高い寸法精度の膜形状を溶融し壊してしまうことから、ガラス転移点(Tg)より20℃〜30℃高い温度で、成膜後の撥液膜を加熱処理することが好ましい。
また、蒸着工程中に加熱処理を行う場合は、ノズル基材20を加熱しながらフッ素樹脂を蒸着する。これにより、ノズル基材20に成膜された直後の撥液膜を加熱することになるので、ガラス転移点(Tg)に達しない温度での加熱処理とすることができる。この場合、ノズル基材や中間層に用いる材料を、耐熱性が比較的低い材料も選択することができる。
前記液体としては、前記液体を吐出する装置で吐出可能な液体であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インク、光重合性インク、処理液、定着処理液、レジスト、パターン形成材料、DNA試料、細胞分散液、造形液などが挙げられる。これらの中でも、インクが特に好ましい。
<液体吐出ヘッド>
本発明の液体を吐出する装置は、前記ノズル板を有し、更に必要に応じてその他の部材を有する液体吐出ヘッドを備えている。
<<その他の部材>>
前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加圧室、刺激発生手段などが挙げられる。
−加圧室−
前記加圧室は、前記ノズル板に設けられた複数の前記ノズル孔に個別に対応して配置され、前記ノズル孔と連通する複数の個別流路であり、液体流路、加圧液室、圧力室、吐出室、液室などと称することもある。
−刺激発生手段−
前記刺激発生手段は、液体に印加する刺激を発生する手段である。
前記刺激発生手段における刺激としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱(温度)、圧力、振動、光などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱、圧力が好適に挙げられる。
前記刺激発生手段としては、例えば、加熱装置、加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライトなどが挙げられる。前記刺激発生手段としては、具体的には、圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどが挙げられる。
前記刺激が「熱」の場合、前記液体吐出ヘッド内の液体に対し、記録信号に対応した熱エネルギーを、例えば、サーマルヘッド等を用いて付与する。前記熱エネルギーにより前記液体に気泡を発生させ、前記気泡の圧力により、前記ノズル板の前記ノズル孔から前記液体を液滴として吐出させる方法などが挙げられる。
前記刺激が「圧力」の場合、例えば、前記液体吐出ヘッド内の液体流路内にある前記圧力室と呼ばれる位置に接着された前記圧電素子に電圧を印加することにより、前記圧電素子が撓む。それにより、前記圧力室の容積が収縮して、前記液体吐出ヘッドの前記ノズル孔から前記液体を液滴として吐出させる方法などが挙げられる。
これらの中でも、ピエゾ素子に電圧を印加して液体を飛翔させるピエゾ方式が好ましい。
ここで、本発明で用いられる液体吐出ヘッドの一例について、図7から図9を参照して説明する。図7は同ヘッドの外観斜視説明図、図8は図7のA−A線に沿うノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向)の断面説明図、図9は図7のB−B線に沿うノズル配列方向(液室短手方向)の断面説明図である。
前記液体吐出ヘッドは、本発明に係るノズル板101と、流路板102と、壁面部材としての振動板部材103とを積層接合している。そして、振動板部材103を変位させる圧電アクチュエータ111と、共通流路部材としてのフレーム部材120とを備えている。
ノズル板101、流路板102及び振動板部材103によって、液滴を吐出する複数のノズル104が通じる個別流路105を形成している。個別流路105は、ノズル104側を下流側とするとき、下流側からノズル104が通じる個別液室106と、個別液室106に液体を供給する流体抵抗部107と、流体抵抗部107に通じる液導入部108とで構成される。
そして、フレーム部材120の共通流路としての共通液室110から振動板部材103に形成した導入口部(供給口)109を通じて、個別流路105に液体が導入され、液導入部108、流体抵抗部107を経て個別液室106に液体が供給される。なお、導入口部109にはフィルターが設けられてもよい。
ここで、ノズル板101は、上述した本発明で用いられるノズル板であって、液滴吐出側面には撥液膜が設けられているものである。
流路板102は、SUS基板をエッチングして、個別液室106、流体抵抗部107、液導入部108などの個別流路105を形成する貫通部を形成している。
振動板部材103は、流路板102の個別液室106の壁面を形成する壁面部材である。この振動板部材103は3層構造とし、流路板102側を1層目とするとき、1層目で個別液室106に対応する部分に変形可能な振動領域(振動板)130を形成している。
この振動板部材103は、ニッケル(Ni)の金属プレートから形成したもので、エレクトロフォーミング法(電鋳)で製造したものを用いている。これに限らず、その他の金属部材、樹脂部材、樹脂層と金属層の積層部材などを用いることができる。
そして、この振動板部材103の個別液室106とは反対側に、振動板部材103の振動領域130を変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ111を配置している。
この圧電アクチュエータ111は、ベース部材113上に接着剤接合した複数の積層型圧電部材112を有し、圧電部材112にはハーフカットダイシングによって溝加工して1つの圧電部材112に対して所要数の圧電柱112A、112Bを所定の間隔で櫛歯状に形成している。
圧電部材112の圧電柱112A、112Bは、同じものであるが、駆動波形を与えて駆動させる圧電柱を駆動圧電柱(駆動柱)112A、駆動波形を与えないで単なる支柱として使用する圧電柱を非駆動圧電柱(非駆動柱)112Bとして区別している。
そして、駆動柱112Aを振動板部材103の振動領域130に形成した島状の厚肉部
である凸部130aに接合している。また、非駆動柱112Bを振動板部材103の厚肉部である凸部130bに接合している。
この圧電部材112は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極が設けられ、駆動柱112Aの外部電極に駆動信号を与えるための可撓性を有するフレキシブル配線基板としてのFPC15が接続されている。
フレーム部材120は、例えば、エポキシ系樹脂或いは熱可塑性樹脂であるポリフェニレンサルファイト等で射出成形により形成し、図示しないヘッドタンクや液体カートリッジから液体が供給される共通液室110が形成されている。
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば駆動柱112Aに印加する電圧を基準電位から下げることによって駆動柱112Aが収縮し、振動板部材103の振動領域130が下降して個別液室106の容積が膨張することで、個別液室106内に液体が流入する。
その後、駆動柱112Aに印加する電圧を上げて駆動柱112Aを積層方向に伸長させ、振動板部材103の振動領域130をノズル104方向に変形させて個別液室106の容積を収縮させることにより、個別液室106内の液体が加圧され、ノズル104から液滴が吐出(噴射)される。
そして、駆動柱112Aに印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板部材103の振動領域130が初期位置に復元し、個別液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室110から個別液室6内に液体が充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
このように、この液体吐出ヘッドは本発明で用いられるノズル板を備えているので、滴吐出特性のバラツキの少ない安定した滴吐出を行うことができる。
次に、本発明の液体を吐出する装置の一例について図10及び図11を参照して説明する。図10は同装置の要部平面説明図、図11は同装置の要部側面説明図である。
この装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
このキャリッジ403には、本発明で用いられるノズル板を含む液体吐出ヘッド404及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。
液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド404は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド404は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
液体吐出ヘッド404の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド404に供給するための供給機構494により、ヘッドタンク441には、液体カートリッジ450に貯留されている液体が供給される。
供給機構494は、液体カートリッジ450を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、チューブ456、送液ポンプを含む送液ユニット452等で構成される。液体カートリッジ450はカートリッジホルダ451に着脱可能に装着される。ヘッドタンク441には、チューブ456を介して送液ユニット452によって、液体カートリッジ450から液体が送液される。
この装置は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド404に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド404の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド404のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパー部材422などで構成されている。
主走査移動機構493、供給機構494、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
このように構成したこの装置においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド404を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
このように、この装置では、本発明で用いられる液体吐出ヘッドを備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
次に、本発明の液体を吐出する装置における液体吐出ユニットの一例について図12を参照して説明する。図12は同ユニットの要部平面説明図である。
前記液体吐出ユニットは、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。
なお、前記液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給機構494の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
次に、本発明の液体を吐出する装置における液体吐出ユニットの他の一例について図13を参照して説明する。図13は同ユニットの正面説明図である。
前記液体吐出ユニットは、流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド404と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド404と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
本発明において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
前記「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
例えば、前記「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
また、前記「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
前記「液体が付着可能もの」とは液体が一時的にでも付着可能なものを意味する。前記「液体が付着するもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
また、前記「液体を吐出する装置」には、特に限定しない限り、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
また、前記「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
前記「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、前記「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
例えば、前記液体吐出ユニットとして、図11で示した液体吐出ユニット440のように、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルターを含むユニットを追加することもできる。
また、前記液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
また、前記液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、図12で示したように、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
また、前記液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
また、前記液体吐出ユニットとして、図13で示したように、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
また、前記「液体吐出ヘッド」は、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。例えば、上記実施形態で説明したような圧電アクチュエータ(積層型圧電素子を使用するものでもよい。)以外にも、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものでもよい。
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、例中の「部」は「質量部」であり、「%」は、評価基準中のものを除き、「質量%」である。
[ノズル板の作製]
<ノズル板1の作製>
−ノズル基材の作製−
長さ30mm、幅15mm、厚み0.05mmのSUS316Lからなる金属製平板状部材に対し、液体吐出面と反対側からパンチによって孔開け加工を行った。孔開け加工に用いたパンチは、円筒状の先端部分を長さ10μm、直径20μmとした。なお、液体吐出面側に生じたバリは研磨により除去した。
これにより、図2に示す液体吐出面側の円筒状部分21aの直径が20μm、液体吐出面と反対側の面の円錐台形状部分21bの開口の直径が40μm、円筒状部分21aの高さが10μmのノズル孔21を384個形成したノズル基材20を得た。
次いで、中間層30として、ノズル基材20の表面にスパッタ法でSiO膜31を成膜し、液体吐出面側と反対側の面にテープ60を貼り付けた後、SiO膜31の表面にシランカップリング剤(3−アミノプロピルトリエトキシシラン、KBE−903(信越化学工業株式会社製))の層32をスピンコート法で成膜して形成した。
−撥液膜の形成−
ノズル基材20の液体吐出面側に、テトラフルオロエチレンパーフルオロジオキソールコポリマー(テフロン(登録商標)AF2400、デュポン社製)を、1.5×10−3Pa〜8.0×10−3Paの高真空下で、320℃に加熱し、蒸着膜の平均厚みが蒸着源に対向した部分で1μm〜3μm程度になるまで真空蒸着した。
得られた蒸着膜は、フッ素樹脂のガラス転移点(Tg)以上の温度(320℃)で5分間〜60分間ベークすることにより、緻密で表面が平滑な撥液膜40となるフッ素樹脂膜を形成してノズル板1を得た。
前記撥液膜の前記液体吐出面側表面の平均膜厚は、2.0μmであった。なお、前記平均膜厚は、断面SEM観察(日本電子株式会社製、JSM−7001F)により測定した。
得られたノズル板1は、図2に示すように、ノズルの外周部分において、前記ノズルのエッジ側に向かって膜厚が薄くなる方向に傾斜している斜面領域を有しており、ノズル基材20のノズル孔21の内壁面にも撥液膜40を形成していた。
<ノズル板2の作製>
ノズル板1の作製において、撥液膜材料をAF1600とし、ベーク温度を270℃に変えたことを除いてはノズル板1の作製と同様にしてノズル板2を作製した。
<ノズル板3の作製>
テトラフルオロエチレンパーフルオロジオキソールコポリマー(テフロン(登録商標)AF2400、デュポン社製)2部、及びフッ素系溶剤(FC−75、住友3M株式会社製)98部を混合溶解し、樹脂溶液を作製した。
予め、超音波で洗浄した長さ30mm、幅15mm、厚み0.05mmのポリイミドフィルム(ユーピレックス(登録商標)S、宇部興産株式会社製)の表面に対し、上記樹脂溶液をスピンコート法により、1st・5,000rpm/5秒間、2nd・1,500rpm/20秒間の条件で塗布し、30分間自然乾燥後、320℃でベークすることにより、撥液膜を形成した。
前記ポリイミドフィルムの裏面から、KrFエキシマレーザーにより、液体吐出面側の円筒状部分21aの直径が20μmノズル孔を384個形成したノズル板3を作製した。
<ノズル板4の作製>
含フッ素アクリレートエステル重合体溶液(オプツールDSX原液、ダイキン工業株式会社製)をロータリーポンプにより10−1Paまで減圧し、その状態で室温(25℃)から徐々に約450℃まで昇温させることで、蒸着膜の厚みが蒸着源に対向した部分で20nm程度になるまでSiO膜が成膜されたノズル基材20に対して蒸着し、蒸着膜を形成した。
得られた蒸着膜を、70℃で10分間ベークすることにより、緻密で表面が平滑な撥液膜となるフッ素樹脂膜を形成し、ノズル板4を作製した。
ノズル板1〜4の撥液膜の材料、成膜方法、ベーク温度、平均膜厚、及び斜面領域の有無について表1にまとめた。
ノズル板1、2は本発明で用いるノズル板の要件を満たすものである。
ノズル板3は撥液膜が含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位を含むフッ素樹脂を含有していないため、また、ノズル板4は撥液膜の形成を塗布によって行っているため、撥液膜がノズルのエッジ側に向かって膜厚が薄くなる方向に傾斜している斜面領域を有するという要件を備えていないため、それぞれ本発明で用いるノズル板の要件を満たさないものである。
[樹脂粒子の調製]
<ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルション1の調製>
攪拌機、還流冷却管及び温度計を挿入した反応容器に、ポリカーボネートジオール(3−メチル−1,5−ペンタンジオールとジフェニルカーボネートの反応生成物)1500g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)220g及びN−メチルピロリドン(NMP)1347gを窒素気流下で仕込み、60℃に加熱してDMPAを溶解させた。次いで、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1445g(5,5モル)、ジブチルスズジラウリレート(触媒)2.6gを加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得た。この反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン149gを添加・混合したものの中から4340gを抜き出して、強攪拌下、水5400g及びトリエチルアミン15gの混合溶液の中に加えた。次いで、氷1500gを投入し、35%の1,6−ヘキサメチレンジアミン水溶液626gを加えて鎖延長反応を行い、固形分濃度が30%となるように溶媒を留去し、ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルション1を得た。
ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルション1の樹脂(固形分)を単離し、樹脂固形分濃度30質量%の水分散体を得、これを最低造膜温度測定用試料とした。この水分散体を用いて、「造膜温度試験装置」(井元製作所製)で測定した最低造膜温度(MFT)は20℃であった。
<ポリエステル系ウレタン樹脂エマルション1の調製>
攪拌機、温度計、窒素シール管及び冷却器の付いた容量2Lの反応器に、メチルエチルケトンを100部、ポリエステルポリオール(1)(iPA/AA=6/4(モル比)とEG/NPG=1/9(モル比)から得られたポリエステルポリオール数平均分子量=2,000、平均官能基数=2 なお、iPA:イソフタル酸 AA :アジピン酸 EG :エチレングリコール NPG:ネオペンチルグリコール)を345部、2,2−ジメチロールプロピオン酸DMPAを9.92部仕込み、60℃にて均一に混合した。
その後、トリエチレングリコールジイソシアネートTEGDIを45.1部、ジオクチルチンジラウレートDOTDLを0.08部仕込み、72℃で3時間反応させて、ポリウレタン溶液を得た。
このポリウレタン溶液に、IPAを80部、MEKを220部、TEAを3.74部、水を596部仕込んで転相させた後、ロータリーエバポレーターにてMEKとIPAを除去して、ポリエステル系ウレタン樹脂エマルション1を得た。
得られた水性エマルションを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水溶液を添加して固形分30質量%、pH8に調整した。
ポリエステル系ポリウレタン樹脂エマルション1について、ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルション1の場合と同様の手順で最低造膜温度(MFT)を測定したところ、―5℃未満(MFT試験機の下限値以下)であった。
[アクリル樹脂エマルションの調製]
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水900g及びラウリル硫酸ナトリウム1gを仕込み、撹拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。
内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3gにアクリルアミド20gにスチレン365g、ブチルアクリレート545g、及びメタクリル酸10gを撹拌化に加えて作製した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。
滴下終了後、3時間の熟成を行ってアクリル樹脂エマルションを得た。
得られた水性エマルションを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水溶液を添加して固形分30質量%、pH8に調整した。
アクリル樹脂エマルションについて、ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルション1の場合と同様の手順で最低造膜温度(MFT)を測定したところ、2℃であった。
[ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルション2の調製]
前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルション1の製造におけるポリカーボネートジオール(3−メチル−1,5−ペンタンジオールとジフェニルカーボネートの反応生成物)を、同じ部のポリカーボネートジオール(1,6−ヘキサンジオールとジメチルカーボネートの反応生成物)に変更し、鎖延長剤として、1,6−ヘキサメチレンジアミンの代わりに、同じモル量の2−メチル−1,5−ペンタンジアミンを使用した他は同様にして、ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルション2を得た。
ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルション2について、ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルション1の場合と同様の手順で最低造膜温度を測定したところ、55℃であった。
[ポリエーテル系ウレタン樹脂エマルションの調製]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリエーテルポリオール(「PTMG1000」三菱化学株式会社製、分子量1000)100.2部、2,2―ジメチロールプロピオン酸15.7部、イソホロンジイソシアネート48.0部、有機溶剤としてメチルエチルケトン77.1部を、DMTDL(ジブチルスズジレウレート)0.06部を触媒として使用し反応させた。
前記反応を4時間継続した後、希釈溶剤としてメチルエチルケトン30.7部を供給し、更に反応を継続した。
前記反応物の分子量が20000から60000の範囲に達した時点で、メタノール1.4部を投入し前記反応を終了することによって、ウレタン樹脂の有機溶剤溶液を得た。
前記ウレタン樹脂の有機溶剤溶液に48質量%水酸化カリウム水溶液を13.4部加えることで前記ウレタン樹脂が有するカルボキシル基を中和し、次いで水715.3部を加え十分に攪拌した後、エージング及び脱溶剤することによって、固形分30質量%のポリエーテル系ウレタン樹脂エマルションを得た。
ポリエーテル系ウレタン樹脂エマルションについて、ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルション1の場合と同様の手順で最低造膜温度(MFT)を測定したところ、43℃であった。
[ポリエステル系ウレタン樹脂エマルション2の調製]
前記ポリエーテル系ウレタン樹脂エマルション5において、ポリエーテルポリオール(PTMG1000)の代わりに、2倍の部のポリエステルポリオール(「ポリライトOD−X−2251」DIC株式会社製、分子量2000)を使用した他は同様にして、ポリエステル系ウレタン樹脂エマルション2を得た。
ポリエステル系ウレタン樹脂エマルション2について、ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルション1の場合と同様の手順で最低造膜温度(MFT)を測定したところ、74℃であった。
[顔料分散液の調製]
<ブラック顔料分散液の調製例>
以下の処方混合物をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社KDL型、メディア:直径0.3mmジルコニアボール使用)で7時間循環分散してブラック顔料分散液を得た。
カーボンブラック顔料(商品名:Monarch800、キャボット社製)・15部
アニオン性界面活性剤(パイオニンA−51−B、竹本油脂株式会社製)・・・2部
イオン交換水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・83部
<シアン顔料分散液の調製>
カーボンブラック顔料を、ピグメントブルー15:3(商品名:LIONOL BLUE FG−7351、東洋インキ株式会社製)に変更した以外は、ブラック顔料分散液の調製と同様にして、シアン顔料分散液を得た。
<マゼンタ顔料分散液の調製>
カーボンブラック顔料を、ピグメントレッド122(商品名:トナーマゼンタEO02、クラリアントジャパン株式会社製)に変更した以外は、ブラック顔料分散液の調製と同様にして、マゼンタ顔料分散液を得た。
<イエロー顔料分散液の調製>
カーボンブラック顔料を、ピグメントイエロー74(商品名:ファーストイエロー531、大日精化工業株式会社製)に変更した以外は、ブラック顔料分散液の調製と同様にして、イエロー顔料分散液を得た。
[インクの調製]
<インク1の調製>
ブラック顔料分散液20%、ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルション1(固形分濃度30%)を固形分換算で2%、ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルション4(固形分濃度30%)を固形分換算で10%、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド(商品名:エクアミドM−100、出光興産株式会社製)12%、1,3−プロパンジオール12%、1,3−ブタンジオール5%、防腐剤として商品名:プロキセルLV(アビシア株式会社製)0.1%、ポリシロキサン系界面活性剤(商品名:KF−945、信越化学工業株式会社製、HLB=4.0)1%、及び高純水6.2%を混合攪拌し、0.2μmポリプロピレンフィルターにて濾過することによりインク1を作製した。
<インク2〜11の調製>
表1に記載のインクの組成、及びに含有量に変更した以外は、インク1と同様にして、インク2〜11を作製した。表1にインク1〜7の組成及び含有量を示す。
なお、インク1〜7は本件発明で用いるインクの要件を満たすものであり、インク8〜11は本件発明で用いるインクの要件を満たさないものである。
−撥液膜材料−
・AF2400:テトラフルオロエチレンパーフルオロジオキソールコポリマー(テフ
ロン(登録商標)AF2400、デュポン社製)
・AF1600:テトラフルオロエチレンパーフルオロジオキソールコポリマー(商品
名、テフロン(登録商標)AF2400、AF1600、デュポン社製)
・オプツールDSX:含フッ素アクリレートエステル重合体溶液、ダイキン工業株式会
社製
次に、表1〜表4に示す実施例及び比較例のように調合したインクとノズル板を備え
る液体吐出ヘッドとを、液体を吐出する装置としてのインクジェットプリンタ(株式会社リコー製、IPSiO G515)に搭載して、PVCフィルムにベタ画像を印字した。続いて、作製した画像を80℃で3分乾燥させた。得られた画像の基材密着性、耐擦性及び非転写性、および印字試験中の吐出信頼性について以下の基準で評価を行った。
結果を表5に示した。
<基材密着性>
得られた画像のベタ部に対し、布粘着テープ(ニチバン製123LW−50)を使用した碁盤目剥離試験により、試験マス目100個の残存マス数をカウントすることにより評価した。
評価基準は以下のとおりである。Bまでのレベルを有することが実使用上望ましい。
評価結果を表5に示す。
AA:残存マス数が98以上であった。
A:残存マス数が90以上98未満であった。
B:残存マス数が70以上90未満であった。
<耐擦過性>
前記PVCフィルム及び前記PETフィルム上に形成した各ベタ画像を乾いた木綿(カナキン3号)で400gの荷重をかけて擦過し、画像の状態を目視で観察し、下記評価基準に基づき、「耐擦過性」を評価した。前記評価がB以上であることが実使用上望ましい。
[評価基準]
AA:50回以上擦っても画像が変化しなかった
A:50回擦った段階で多少の傷が残るが画像濃度には影響しなかった
B:31回以上50回以下擦過する間に画像濃度が低下した
C:30回以下の擦過で画像濃度が低下した
<非転写性>
前記PVCフィルム及び前記PETフィルム上に形成した各ベタ画像2枚を3cm×3cmのサイズに切り取り、2枚のベタ画像同士が接するように重ね、その上からプレス機で1.0MPaの圧力を10秒間かけた。その後、前記2枚の評価サンプルを剥がし、このときの剥がれやすさ及び剥がした後の画像の損傷の有無を目視で観察し、下記評価基準に基づいて、「非転写性」を評価した。前記評価がB以上であることが実使用上望ましい。
[評価基準]
A:2枚のベタ画像を剥がすときに、貼り付き感が無く自然に剥がれ、互いの基材への色移りも見られなかった
B:2枚のベタ画像を剥がすときに、わずかな貼り付き感があるものの、画像の損傷は見られなかった
C:2枚のベタ画像を剥がすときに、貼り付き感があり、画像の損傷がわずかに見られた
<吐出信頼性>
インクジェットプリンター(IPSiO GXe5500改造機、株式会社リコー製)を用いて吐出信頼性を評価した。前記IPSiO GXe5500改造機は、IPSiO GXe5500機を、150cmの印字幅で30m/hrの印字速度相当の印字をA4サイズで再現できるように改造したものである。
まず、インクを前記インクジェットプリンターにそれぞれ充填し、「ノズル抜け」が発生していないことを確認した後に12時間インクジェットプリンターを放置した。12時間放置後、クリーニングメンテナンスを行わないでノズルチェックパターンを、PVCフィルムに印刷し、発生した「ノズル抜け」をカウントし、下記評価基準に基づき、「吐出信頼性」を評価した。前記評価がB以上であることが実使用上望ましい。なお、前記「ノズル抜け」とは、インクが吐出されず正常にインク画像が描画されないことを意味する。
[評価基準]
AA:ノズル抜けが0箇所
A:ノズル抜けが1箇所以内
B:ノズル抜けが2箇所以内
C:ノズル抜けが4箇所以内
実施例1〜3は本発明の特に好ましい例であり、色の違いなどに関わらず、基材に対する密着性、耐擦過性および非転写に非常に優れており、かつ吐出信頼性も確保できている。 実施例4はインク3を使用し、樹脂粒子Aの樹脂粒子Bに対する添加量が若干少なかった例であり、基材への密着性が実施例1に対し若干劣位である。
実施例5はインク4を使用し、樹脂粒子Aの樹脂粒子Bに対する添加量が若干多かった例であり、耐擦過性が実施例1に対し若干劣位である。
実施例6はインク5を使用し、樹脂粒子BのMFTが若干低かった例であり、耐擦過性が実施例1に対し若干劣位である。
実施例7はインク6を使用し、樹脂粒子Aがウレタン樹脂粒子ではない例であり、密着性、耐擦過性が実施例1に対し若干劣位である。
実施例8は樹脂粒子AのMFTが若干低かった例であり、密着性が実施例1に対し若干劣位である。
比較例1〜3は、ノズル板の撥液膜が好適でないため吐出信頼性が実施例に比べ劣位である。
比較例4は、樹脂粒子として最低造膜温度の低い樹脂粒子1種類のみを用いている例であり基材に対する耐擦性が不十分である。
比較例5は、樹脂粒子として最低造膜温度の高い樹脂粒子1種類のみを用いている例であり基材に対する密着性や非転写性が不十分である。
比較例6は、一般式(1)および一般式(2)で示される化合物を使用していない例でありいずれの評価も実施例1に比べ劣っている。
比較例7は、ポリシロキサン系界面活性剤を使用していない例でありいずれの評価も実施例1に比べ劣っている。
本発明実施の態様を挙げると、例えば、以下のとおりである。
(1)液体を吐出するノズルを有し、少なくとも液体吐出面側表面に撥液膜を有するノズル板を備えた液体を吐出する装置用の吐出液体として用いるインクにおいて、
前記撥液膜が、含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位を含むフッ素樹脂を含有する膜であり、
更に、前記ノズルの外周部分において、前記ノズルのエッジ側に向かって膜厚が薄くなる方向に傾斜している斜面領域を有する撥液膜であり、
前記インクが、少なくとも2種の樹脂粒子、有機溶剤、水、色材、及びシロキサン化合物を含有し、前記有機溶剤として下記一般式(1)で表される化合物及び/又は下記一般式(2)で表される化合物を含有するインク。
(ただし、前記一般式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ、炭素数1以上5以下のアルキル基を示し、R、R、及びRは同一であっても、異なっていてもよい)
(ただし、前記一般式(2)中、Rは、メチル基及びエチル基のいずれかを示し、Rは、水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを示す)
(2)前記フッ素樹脂が、更に、下記構造式(x)で表される構造単位を含む上記(1)に記載のインク。
[構造式(x)]
(3)前記含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位が、含フッ素ヘテロ環状構造内にエーテル結合を有する上記(1)または(2)に記載のインク。
(4)前記2種以上の樹脂粒子が、樹脂粒子Aと、樹脂粒子Bを含み、樹脂粒子Aの最低造膜温度が20℃以下である上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のインク。
(5)前記樹脂粒子Bの最低造膜温度が50℃以上である上記(4)に記載のインク。
(6)前記樹脂粒子Aの含有量は樹脂粒子Bの含有量に対して重量にて20質量%以上40質量%以下である上記(4)または(5)に記載のインク。
(7)樹脂粒子Aおよび樹脂粒子Bが、ウレタン樹脂粒子である上記(4)〜(6)のいずれか1項に記載のインク。
(8)前記樹脂粒子Aがポリカーボネート系ウレタン樹脂であることを特徴とする上記(4)〜(6)のいずれか1項に記載のインク。
(9)液体を吐出するノズルを有し、少なくとも液体吐出面側表面に撥液膜を有するノズル板を備えた液体を吐出する装置において、
前記撥液膜が、含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位を含むフッ素樹脂を含有する膜であり、
更に、前記ノズルの外周部分において、前記ノズルのエッジ側に向かって膜厚が薄くなる方向に傾斜している斜面領域を有する撥液膜であり、
前記液体がインクであり
前記インクとして、少なくとも2種の樹脂粒子、有機溶剤、水、色材、及びシロキサン化合物を有し、前記有機溶剤として下記一般式(1)で表される化合物及び/又は一般式(2)で表される化合物を含有するインクを用いる、液体を吐出する装置。
(ただし、前記一般式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ、炭素数1以上5以下のアルキル基を示し、R、R、及びRは同一であっても、異なっていてもよい)
(ただし、前記一般式(2)中、Rは、メチル基及びエチル基のいずれかを示し、Rは、水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを示す)
(10)液体を吐出するノズルを有し、少なくとも液体吐出面側表面に、撥液膜を有するノズル板を備えた液体を吐出する装置を用いて液体を吐出する方法であって、
前記撥液膜が、含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位を含むフッ素樹脂を含有する膜であり、
更に、前記ノズルの外周部分において、前記ノズルのエッジ側に向かって膜厚が薄くなる方向に傾斜している斜面領域を有する撥液膜であり、
前記液体がインクであり
前記インクとして、少なくとも2種の樹脂粒子、有機溶剤、水、色材、及びシロキサン化合物を有し、有機溶剤として一般式(1)で表される化合物及び/又は一般式(2)で表される化合物を含有するインクを用いる、液体を吐出する方法。
(ただし、前記一般式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ、炭素数1以上5以下のアルキル基を示し、R、R、及びRは同一であっても、異なっていてもよい)
(ただし、前記一般式(2)中、Rは、メチル基及びエチル基のいずれかを示し、Rは、水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを示す)
1 ノズル板
2 基体
3 先端稜線部
4 複合材料層領域
5 含浸処方液
6 ディッピング槽
10 ノズル板
11 ノズル
11a エッジ
11o ノズル中心
20 ノズル基材
21 ノズル孔
21a ノズル孔の液体吐出面側の円筒状部分
21b ノズル孔の液体吐出面側と反対側の円錐台形状部分
30 中間層
31 SIO
32 シランカップリング剤層
40 撥液膜
40a 液体吐出面側における撥液膜
40b ノズルの内壁面の撥液膜
41 撥液膜の斜面領域
41a 撥液膜の斜面
42 撥液膜の斜面領域以外の領域
44 蒸着膜
50 ワイピングユニット
51 ワイパーブレード
52 ワイパーブレード支持部材
60 テープ
101 ノズル板
102 流路板
103 振動板部材
104 ノズル
105、106 個別液室
107 流体抵抗部
108 液導入部
109 供給口
110 共通液室
111 圧電アクチュエータ
112 圧電部材
112A、112B 圧電素子
113 ベース部材
115 FPC
120 フレーム部材
130 振動領域
130a、130b 凸部
401 ガイド部材
403 キャリッジ
404 液体吐出ヘッド
405 主走査モータ
406 駆動プーリ
407 従動プーリ
408 タイミングベルト
410 用紙
412 搬送ベルト
413 搬送ローラ
414 テンションローラ
416 副走査モータ
417 タイミングベルト
418 タイミングプーリ
420維持回復ユニット
421 キャップ部材
422 ワイパーブレード
440 液体吐出ユニット
441 ヘッドタンク
442 カバー
443 コネクタ
444 流路部品
450 液体カートリッジ
451 カートリッジホルダ
452 送液ユニット
456 チューブ
491A、491B 側板
491C 背板
493 主走査移動機構
494 供給機構
495 搬送機構
500 真空槽
501 蒸着源
600 細孔
特開2008−188911号公報 特開2011−094082号公報

Claims (10)

  1. 液体を吐出するノズルを有し、少なくとも液体吐出面側表面に撥液膜を有するノズル板を備えた液体を吐出する装置用の吐出液体として用いるインクにおいて、
    前記撥液膜が、含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位を含むフッ素樹脂を含有する膜であり、
    更に、前記ノズルの外周部分において、前記ノズルのエッジ側に向かって膜厚が薄くなる方向に傾斜している斜面領域を有する撥液膜であり、
    前記インクが、少なくとも2種の樹脂粒子、有機溶剤、水、色材、及びシロキサン化合物を含有し、前記有機溶剤として下記一般式(1)で表される化合物及び/又は下記一般式(2)で表される化合物を含有するインク。
    (ただし、前記一般式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ、炭素数1以上5以下のアルキル基を示し、R、R、及びRは同一であっても、異なっていてもよい)
    (ただし、前記一般式(2)中、Rは、メチル基及びエチル基のいずれかを示し、Rは、水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを示す)
  2. 前記フッ素樹脂が、更に、下記構造式(x)で表される構造単位を含む請求項1に記載のインク。
    [構造式(x)]
  3. 前記含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位が、含フッ素ヘテロ環状構造内にエーテル結合を有する請求項1または2に記載のインク。
  4. 前記2種以上の樹脂粒子が、樹脂粒子Aと、樹脂粒子Bを含み、樹脂粒子Aの最低造膜温度が20℃以下である請求項1から3のいずれか1項に記載のインク。
  5. 前記樹脂粒子Bの最低造膜温度が50℃以上である請求項4に記載のインク。
  6. 前記樹脂粒子Aの含有量は樹脂粒子Bの含有量に対して重量にて20質量%以上40質量%以下である請求項4または5に記載のインク。
  7. 樹脂粒子Aおよび樹脂粒子Bが、ウレタン樹脂粒子である請求項4から6のいずれか1項に記載のインク。
  8. 前記樹脂粒子Aがポリカーボネート系ウレタン樹脂であることを特徴とする請求項4か6のいずれか1項に記載のインク。
  9. 液体を吐出するノズルを有し、少なくとも液体吐出面側表面に撥液膜を有するノズル板を備えた液体を吐出する装置において、
    前記撥液膜が、含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位を含むフッ素樹脂を含有する膜であり、
    更に、前記ノズルの外周部分において、前記ノズルのエッジ側に向かって膜厚が薄くなる方向に傾斜している斜面領域を有する撥液膜であり、
    前記液体がインクであり
    前記インクとして、少なくとも2種の樹脂粒子、有機溶剤、水、色材、及びシロキサン化合物を有し、前記有機溶剤として下記一般式(1)で表される化合物及び/又は一般式(2)で表される化合物を含有するインクを用いる、液体を吐出する装置。
    (ただし、前記一般式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ、炭素数1以上5以下のアルキル基を示し、R、R、及びRは同一であっても、異なっていてもよい)
    (ただし、前記一般式(2)中、Rは、メチル基及びエチル基のいずれかを示し、Rは、水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを示す)
  10. 液体を吐出するノズルを有し、少なくとも液体吐出面側表面に、撥液膜を有するノズル板を備えた液体を吐出する装置を用いて液体を吐出する方法であって、
    前記撥液膜が、含フッ素ヘテロ環状構造を有する構造単位を含むフッ素樹脂を含有する膜であり、
    更に、前記ノズルの外周部分において、前記ノズルのエッジ側に向かって膜厚が薄くなる方向に傾斜している斜面領域を有する撥液膜であり、
    前記液体がインクであり
    前記インクとして、少なくとも2種の樹脂粒子、有機溶剤、水、色材、及びシロキサン化合物を有し、有機溶剤として一般式(1)で表される化合物及び/又は一般式(2)で表される化合物を含有するインクを用いる、液体を吐出する方法。
    (ただし、前記一般式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ、炭素数1以上5以下のアルキル基を示し、R、R、及びRは同一であっても、異なっていてもよい)
    (ただし、前記一般式(2)中、Rは、メチル基及びエチル基のいずれかを示し、Rは、水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基のいずれかを示す)
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