JP6708424B2 - 歯車、輪列機構、ムーブメントおよび時計 - Google Patents
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Description
例えば、りゅうずの回転力を歯車列で伝達し、電気的な接点と文字板上に機能表示する表示手段が設けられた軸を回転させる機構では、歯車にバックラッシュがあるため、駆動源から最終段に回転力が伝達されるまでに作動のズレが生じることがある。この作動のズレが大きい場合、操作者が違和感を感じることとなる。りゅうずは正転と逆転とを行うため作動のズレが大きくなりやすく、表示手段との間に動作の差が生じやすい。
作動のズレの問題は、歯車輪列を構成する秒針、分針、時針についても同様であり、駆動開始直後に秒針等が駆動されないことによって、秒針等に動作の遅れが生じることがある。
歯車列を構成する歯車が少なければ、その分バックラッシュの影響を小さくできるが、歯車の配置スペースによっては、歯車の数を多くして回転力を伝えなければならない場合があり、その場合はバックラッシュの影響は増加し、作動のズレは大きくなる。
本発明は、バックラッシュの悪影響を低減でき、かつ省スペース化が可能となる歯車、輪列機構、ムーブメントおよび時計を提供することを目的とする。
この構成によれば、第1弾性腕部の付勢力によって、バックラッシュとして設定された隙間における不要な回動(がたつき)を抑制しつつ、歯車体を他の歯車と噛み合せることができる。よって、バックラッシュに起因する作動のズレ等の悪影響を低減することができる。
前記歯車体は、押さえばねを利用していた従来品とは異なり、前記歯車体の外に別部材を設置する必要がないため、省スペース化を図ることができる。よって、時計の小型化を図ることができる。また、前記別部材としての専用部品が不要であるため低コスト化が可能である。
前記歯車体は、第1弾性腕部が第1基体と一体に形成されているため部品点数が少ない。そのため、製造を容易にするとともに、製造コストを抑えることができる。
さらに、前記歯車体では、2つの歯車が互いに反対の方向に付勢されるため、例えば製造上の理由により歯部のピッチが不均一となったり他の歯車との距離が変動した場合などにおいても、バックラッシュとして設定された隙間における不要な回動(がたつき)を抑制できる。よって、他の歯車との間で一定の回転力を伝達することができる。
この構成によれば、第1弾性腕部によって2つの歯車を互いに反対の方向に付勢するだけでなく、第2弾性腕部によって2つの歯車を互いに反対の方向に付勢するので、歯車に作用する付勢力を高めることができる。そのため、バックラッシュに起因する作動のズレ等の悪影響を確実に低減することができる。
この構成によれば、容易に2つの歯車を組み立てることができる。また、2つの歯車の軸心合わせを容易かつ正確に行うことができる。
この構成によれば、第1弾性腕部を容易な操作で前記他方の歯車に接続することができる。
この構成によれば、前記一方の歯車を薄く形成することができる。よって、歯車体を薄型化することができる。
この構成によれば、前記第1弾性腕部を、湾曲半径が変化するように弾性的に曲げ変形させることによって、前記2つの歯車に大きな付勢力を作用させることができる。
この構成によれば、バックラッシュに起因する作動のズレ等の悪影響を低減でき、かつ省スペース化を図ることができる輪列機構を提供することができる。
この構成によれば、バックラッシュに起因する作動のズレ等の悪影響を低減でき、かつ省スペース化を図ることができるムーブメントを提供することができる。
この構成によれば、バックラッシュに起因する作動のズレ等の悪影響を低減でき、かつ省スペース化を図ることができる時計を提供することができる。
前記歯車体は、押さえばねを利用していた従来品とは異なり、前記歯車体の外に別部材を設置する必要がないため、省スペース化を図ることができる。よって、時計の小型化を図ることができる。また、前記別部材としての専用部品が不要であるため低コスト化が可能である。
前記歯車体は、第1弾性腕部が第1基体と一体に形成されているため部品点数が少ない。そのため、製造を容易にするとともに、製造コストを抑えることができる。
前記歯車体では、2つの歯車が互いに反対の方向に付勢されるため、例えば製造上の理由により歯部のピッチが不均一となったり他の歯車との距離が変動した場合などにおいても、バックラッシュとして設定された隙間における不要な回動(がたつき)を抑制できる。よって、他の歯車との間で一定の回転力を伝達することができる。
[第1実施形態]
(時計)
一般に、時計の駆動部分を含む機械体を「ムーブメント」と称する。このムーブメントに文字板、指針を取り付けて、時計ケースの中に入れて完成品にした状態を時計の「コンプリート」と称する。
時計の基盤を構成する地板の両側のうち、時計ケースのガラスのある方の側、すなわち、文字板のある方の側をムーブメントの「裏側」と称する。また、地板の両側のうち、時計ケースのケース裏蓋のある方の側、すなわち、文字板と反対の側をムーブメントの「表側」と称する。
図1に示すように、時計1のコンプリートは、ケース裏蓋(不図示)およびガラス2を有する時計ケース3の内部に、ムーブメント10、文字板11および指針12〜14を備える。
文字板11は、少なくとも時に関する情報を示す目盛り等を有する。指針12〜14は、時を示す時針12、分を示す分針13および秒を示す秒針14を含む。
図2は、第1実施形態に係るムーブメント10の一部を示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。図3は、ムーブメント10の一部を拡大して示す平面図である。
図2および図3に示すように、ムーブメント10は、地板20と輪列受29とを備える。
地板20は、ムーブメント10の基盤を構成する。図1に示すように、ムーブメント10には、地板20に形成された巻真案内穴(不図示)を通して巻真24が回転可能に組み込まれる。巻真24は、分針13および時針12を回転させて、時刻表示(時および分の表示)を修正する時刻合わせに用いられる。巻真24の先端には、時計ケース3の側方に位置するりゅうず53が取付けられる。
地板20の表側には、電池(不図示)、水晶ユニット(不図示)、回路基板(不図示)、ステップモータ35(動力源)、輪列機構23等が配設される。
ロータ32は、1秒ごとに1ステップ回転するようになっており、ロータかな32dを介して五番車40に回転力を付与する。
輪列機構23は、本発明の輪列機構の第1実施形態である。
なお、以下の説明では、四番車41の軸心O1の方向を軸方向とし、軸方向に沿う輪列受29側(表側)を上方、地板20側(裏側)を下方という場合がある。また、軸心O1に直交する方向を径方向とする。四番車41の軸心O1は車軸60の軸心に一致する。
二番車43は1時間に1回転するように構成され、下端部には分針13が取り付けられている(図1参照)。
なお、筒車44は12時間に1回転するように構成されていると共に時針12が取付けられている(図1参照)。
巻真24は、前述のように、地板20に形成された巻真案内穴によって回転可能に支持されていると共に、軸方向に引出操作可能とされている。巻真24は、地板20の表側に配置された、おしどり、かんぬき、かんぬきばね等の図示しない切替装置により、軸方向の位置が決められている。
次に、四番車41について、図2〜図10を参照して説明する。四番車41は、本発明の歯車体の第1実施形態である。
図2および図3に示すように、四番車41は、五番車40と前記三番車との間に配置された車であり、軸心O1回りに回転可能とされた車軸60に固定された第1四番歯車61と、第1四番歯車61に対して回転可能に取付けられた第2四番歯車62と、を備えている。
第1四番歯車61は本発明に係る第1歯車の一例である。第2四番歯車62は本発明に係る第2歯車の一例である。図示の例では、第2四番歯車62は、第1四番歯車61に対して上側に位置する。
第1基体63の外周縁には、五番車40の五番上かな40bに噛み合う複数の歯部61aが全周にわたって形成されている。図示の例では、歯部61aの歯数は30とされている。対向面63aは第2四番歯車62側の面である。
中央穴部66は、第1基体63の厚さ方向に貫通して形成されており、平面視形状は例えば円形である。
第1長穴部67の一端部67aは、平面視において、湾曲凹状、例えば半円形状とするのが好ましい。一端部67aの曲率半径は、第2移動規制凸部79の平面視における外周縁の曲率半径より大きいことが好ましい。
第1係止穴部68には、第2弾性腕部74の第2係止凸部74dが挿入され、係止する。これによって、第2弾性腕部74は第1四番歯車61に接続される。
第1弾性腕部64は、他端部67bから第1長穴部67の長さ方向に沿って延出する延出部64aと、延出部64aの先端に形成された先端部64bとを有する。
延出部64aの平面視形状は、例えば軸心O1回り方向(第1基体63の周方向)に沿う円弧状とされている。延出部64aの幅は、例えば長さ方向に一定とされる。
延出部64aの対向面64c(第2四番歯車62側の面)は、第1基体63の対向面63aと面一(仮想同一平面上)とされている。延出部64aの厚さは第1基体63の厚さと同じであることが好ましい。
ラッチ部70は、板状のラッチ本体70aと、係止爪部70bとを有する。
ラッチ本体70aの平面視形状は、例えば軸心O1回り方向(第1基体63の周方向)に沿う円弧状とされている。ラッチ本体70aは、対向面63aに対して上方に突出して形成されている。ラッチ本体70aは、係止爪部70bが軸心O1に対して接近および離間するように弾性的に曲げ変形可能である。ラッチ本体70aは、第2四番歯車62の中央穴部76に挿入可能である。
保持壁部71は、隣り合うラッチ部70の間に形成されている。図示の例では、保持壁部71の数は3であり、これらの保持壁部71は互いに等間隔に設けられている。
保持壁部71は、第2四番歯車62の中央穴部76に挿入可能である。
第1基体63には、ラッチ本体70aの径方向外方側に隣接して、第1基体63を貫通する貫通穴72が形成されている。貫通穴72によって、ラッチ本体70aは径方向外方に変形しやすくなる。
第2四番歯車62は、第1四番歯車61の上側に重なった状態で第1四番歯車61に対して回転可能に取付けられている。そのため、第2四番歯車62は、第1四番歯車61とは独立して軸心O1回りに回転可能とされている。
第2基体73の外周縁には、五番車40の五番上かな40bに噛み合う複数の歯部62aが全周にわたって形成されている。第2四番歯車62の歯部62aの数は、第1四番歯車61の歯部61aの数と同じであることが好ましい。図示の例では、歯部62aの歯数は30とされている。歯部62aのピッチ(隣り合う歯部62aの周方向距離)は、第1四番歯車61の歯部61aのピッチと同じであることが好ましい。
第2基体73の対向面73a(下面)(図9参照)は第1四番歯車61側の面である。対向面73aは第1四番歯車61の対向面63aに当接していてもよい。
中央穴部76は、第2基体73の厚さ方向に貫通して形成されており、平面視形状は例えば円形である。中央穴部76は、第1四番歯車61の支持軸部65(ラッチ本体70aおよび保持壁部71)が挿通可能とされている。
中央穴部76の内径は、第1四番歯車61に対して第2四番歯車62がスムーズに回転するように、ラッチ本体70aおよび保持壁部71の外径とほぼ同じか、またはラッチ本体70aおよび保持壁部71の外径よりやや大きくされることが好ましい。
第2長穴部77の一端部77aは、平面視において、湾曲凹状、例えば半円形状とするのが好ましい。一端部77aの曲率半径は、第1移動規制凸部69の平面視における外周縁の曲率半径より大きいことが好ましい。
第2係止穴部78には、第1弾性腕部64の第1係止凸部64dが挿入され、係止する。これによって、第1弾性腕部64は第2四番歯車62に接続される。
第2弾性腕部74は、他端部77bから第2長穴部77の長さ方向に沿って延出する延出部74aと、延出部74aの先端に形成された先端部74bとを有する。
延出部74aの平面視形状は、例えば軸心O1回り方向(第2基体73の周方向)に沿う円弧状とされている。延出部74aの幅は、例えば長さ方向に一定とされる。
延出部74aの対向面74c(第1四番歯車61側の面)は、第2基体73の対向面73aと面一(仮想同一平面上)とされている。延出部74aの厚さは第2基体73の厚さと同じであることが好ましい。
第2弾性腕部74の先端部74bの第2係止凸部74dは、第1四番歯車61の第1係止穴部68とは周方向位置が一致しない。図示の例では、第2係止凸部74dは、第1係止穴部68に対して左回り方向にずれた位置にある。
第2四番歯車62は、係止爪部70bによって、第1四番歯車61から離れる方向(上方)の移動が規制される。
次に、上述のように構成された時計1の作用について説明する。
図2に示すように、ムーブメント10において、水晶ユニットにおける水晶振動子が所定周波数で発振すると、この水晶振動子の振動に基づいて、集積回路に内蔵されている発振部が基準信号を出力すると共に、分周部が発振部からの出力信号を分周する。
これによって、駆動部が分周部の出力信号に基づいて、ステップモータ35を駆動するモータ駆動信号を出力する。コイルブロックにこのモータ駆動信号が入力されると、ステータ31が磁化してロータ32を回転させる。このとき、ロータ32は、例えば1秒ごとに180度回転しながら、連続的に回転を継続する。
図3に示すように、第1四番歯車61および第2四番歯車62の歯部61a,62aは周方向に位相がずれた状態とすることができる。第1四番歯車61の歯部61aと第2四番歯車62の歯部62aとの周方向の隙間を「H1」という。第1四番歯車61および第2四番歯車62は、第1弾性腕部64および第2弾性腕部74の弾性力によって、隙間H1が小さくなる方向に付勢される。
第1四番歯車61および第2四番歯車62は互いに付勢されているため、第1四番歯車61および第2四番歯車62は共に一体的にCW方向(時計方向)に回転する。これにより、四番車41の全体をCW方向に回転させることができる。
図3に示す例では、五番上かな40bの歯部40b1は、第1四番歯車61の歯部61aと第2四番歯車62の歯部62aとによって挟み込まれた状態となっている。
なお、五番上かな40bの歯部40b1は、歯部61a,62aによって挟み込まれていなくてもよく、例えば歯部61aまたは歯部62aから離れていてもよい。
四番車41では、第1四番歯車61と第2四番歯車62は独立に回転可能であるため、第1弾性腕部64および第2弾性腕部74の付勢力に抗して、隙間H1が広がる方向に回転できる。
図示の例では、CCW方向(反時計方向)に回転する五番上かな40bの歯部40b1によって、第1四番歯車61の歯部61aにCW方向(時計方向)の力が加えられると、第2四番歯車62は全体的にはCW方向に回転しながらも、第1四番歯車61に対して相対的に逆方向(CCW方向)に回転することができる(矢印F1方向)。
そのため、四番車41の歯部61a,62aの間には、五番上かな40bの歯部40b1が入り込むことができる隙間H1を確実に確保することができる。
四番車41は、押さえばねを利用していた従来品とは異なり、四番車41の外に別部材を設置する必要がないため、省スペース化を図ることができる。よって、時計1の小型化を図ることができる。また、前記別部材としての専用部品が不要であるため低コスト化が可能である。
さらに、四番車41では、第1四番歯車61と第2四番歯車62とが互いに反対の方向に付勢されるため、例えば製造上の理由により歯部61a,62aの形状やピッチが不均一となったり、四番車41と五番車40との距離が変動した場合などにおいても、バックラッシュとして設定された隙間における不要な回動(がたつき)を抑制することができる。よって、五番車40との間で一定の回転力を伝達することができる。
さらに、四番車41は、回転トルクの上昇を抑制できるため、五番上かな40bの歯部40b1と、第1四番歯車61の歯部61aおよび第2四番歯車62の歯部62aと、の接触面の摩耗を防止し、耐久性を高めることができる。よって、五番車40および四番車41の長寿命化を図ることができる。
この構成によれば、支持軸部65を第2四番歯車62の中央穴部76に挿通させる操作によって、容易に第1四番歯車61と第2四番歯車62とを組み立てることができる。また、第1四番歯車61と第2四番歯車62との軸心合わせを容易かつ正確に行うことができる。
同様に、第2弾性腕部74の第2係止凸部74dが第1四番歯車61の第1係止穴部68に係止することによって、第2弾性腕部74が第1四番歯車61に接続されるため、第2弾性腕部74を容易な操作で第1四番歯車61に接続することができる。
図11に示すように、歯車体81は、歯車82と噛み合わせて用いることができる。歯車82は、弾性腕部などの構造をもたない汎用の構造の歯車である。歯車82は、歯部82aの数が歯部61a,62aの数と同じである。
図12に示すように、歯車体81は、同じ構造の歯車体81と噛み合わせて用いることができる。
(歯車体)
図13は、本発明の第2実施形態に係る歯車体91を示す平面図である。図14は、歯車体91を示す分解斜視図である。
図13および図14に示すように、歯車体91は、第1四番歯車61Aと、第2四番歯車92と、を備えている。
なお、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
第2四番歯車92は、外周縁に複数の歯部92aが全周にわたって形成された第2基体93を備えている。
第2四番歯車92は、第1四番歯車61Aの上側に重なった状態で第1四番歯車61Aに対して回転可能に取付けられている。そのため、第2四番歯車92は、第1四番歯車61Aとは独立して軸心O1回りに回転可能とされている。
第2四番歯車92の歯部92aの数は、第1四番歯車61Aの歯部61aの数と同じであることが好ましい。図示の例では、歯部92aの歯数は30とされている。歯部92aのピッチは、歯部61aのピッチと同じであることが好ましい。
中央穴部96は、第2基体93の厚さ方向に貫通して形成されており、平面視形状は例えば円形である。中央穴部96には、第1四番歯車61Aの支持軸部65が挿通可能である。
第2係止穴部98には、第1弾性腕部64の第1係止凸部64dが挿入され、係止する。これによって、第1弾性腕部64は第2四番歯車92に接続される。
第1四番歯車61Aと第2四番歯車92とは、第1弾性腕部64の弾性力によって互いに反対の方向に付勢される。
第1四番歯車61Aと第2四番歯車92との相対的な回動幅は、歯部61a,92aのピッチの半分以上であることが好ましい。
第2四番歯車92は、係止爪部70bによって、第1四番歯車61Aから離れる方向(上方)の移動が規制される。
歯車体91は、押さえばねを利用していた従来品に比べて省スペース化を図ることができる。よって、時計1の小型化を図ることができる。また、別部材が不要であるため低コスト化が可能である。
歯車体91は、第1弾性腕部64が第1基体63と一体に形成されているため部品点数が少ない。そのため、製造を容易にするとともに、製造コストを抑えることができる。
歯車体91は、第1四番歯車61Aと第2四番歯車92とが互いに反対の方向に付勢されるため、歯部61a,92aの形状やピッチが不均一となったり他の歯車との距離が変動した場合などにおいても、バックラッシュとして設定された隙間における不要な回動(がたつき)を抑制することができる。よって、他の歯車との間で一定の回転力を伝達することができる。
さらに、歯車体91は、回転トルクの上昇を抑制できるため、歯部の接触面の摩耗を防止できる。そのため、耐久性を高め、長寿命化を図ることができる。
(歯車体)
図15は、本発明の第3実施形態に係る歯車体101を示す平面図である。図16は、歯車体101を示す分解斜視図である。
図15および図16に示すように、歯車体101は、第1四番歯車111と、第1四番歯車111に対して回転可能に取付けられた第2四番歯車112と、を備えている。
なお、第1実施形態または第2実施形態と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
第1基体113の外周縁には、複数の歯部111aが全周にわたって形成されている。第1四番歯車111の歯部111aの数は、第2四番歯車112の歯部62aの数と同じであることが好ましい。図示の例では、歯部111aの歯数は30とされている。対向面113aは第2四番歯車112側の面である。
第1四番歯車111の外径は、第2四番歯車112の外径と同じであることが好ましい。歯部111aのピッチは、歯部62aのピッチと同じであることが好ましい。
第2四番歯車112は、第2係止穴部78および第2移動規制凸部79がないこと以外は図8および図9に示す第2四番歯車62と同じ構成である。
第1四番歯車111と第2四番歯車112とは、第2弾性腕部74の弾性力によって互いに反対の方向に付勢される。
第1四番歯車111と第2四番歯車112との相対的な回動幅は、歯部111a,62aのピッチの半分以上であることが好ましい。
歯車体101は、押さえばねを利用していた従来品に比べて省スペース化を図ることができる。よって、時計1の小型化を図ることができる。また、別部材が不要であるため低コスト化が可能である。
歯車体101は、第2弾性腕部74が第2基体73と一体に形成されているため部品点数が少ない。そのため、製造を容易にするとともに、製造コストを抑えることができる。
歯車体101は、第1四番歯車111と第2四番歯車112とが互いに反対の方向に付勢されるため、歯部111a,62aの形状やピッチが不均一となったり他の歯車との距離が変動した場合などにおいても、バックラッシュとして設定された隙間における不要な回動(がたつき)を抑制することができる。よって、他の歯車との間で一定の回転力を伝達することができる。
(歯車体)
図17は、本発明の第2実施形態の変形例に係る歯車体121を示す平面図である。図18は、歯車体121を示す分解斜視図である。
図17および図18に示すように、歯車体121は、第1四番歯車61Aと、第2四番歯車122と、を備えている。
なお、第1実施形態、第2実施形態、または第3実施形態と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
第2移動規制穴部127は、例えば、平面視において、内周側の側周縁部127aと、外周側の側周縁部127bと、側周縁部127a,127bの一端側の端周縁部127cと、側周縁部127a,127bの他端側の端周縁部127dとからなる長円形である。側周縁部127a,127bは、例えば軸心O1回り方向(第2基体93の周方向)に沿う円弧である。端周縁部127c,127dは例えば湾曲凸状(例えば半円形)である。
歯車体121は、第2四番歯車122の第2移動規制穴部127が軸心O1回り方向(第2基体93の周方向)に沿う長円形であるため、第1四番歯車61Aと第2四番歯車122との周方向の回動幅を大きく確保できる。
図19に示す構造は、りゅうず(不図示)の回転に基づいて回転する巻真24と、巻真24の回転に基づいて回転する第1中間車131と、第1中間車131の回転に基づいて回転する第2中間車132と、第2中間車132の回転に基づいて回転する第3中間車133と、第3中間車133の回転に基づいて回転する表示歯車134と、表示歯車134の回転に基づいて回転する表示車135と、表示車135の側面を押圧する躍制ばね136とを備えている。
この構造では、第2中間車132として、四番車41と同じ構造を有する歯車体が用いられている。
そのため、りゅうずの回転による巻真24の動作と、表示車135による表示手段の動作との間のずれを小さくすることができる。従って、バックラッシュに起因する作動のズレ等の悪影響を低減し、操作性を向上させることができる。
図20に示す構造は、第3中間車133に代えて、四番車41と同じ構造を有する歯車体からなる第3中間車137が用いられていること以外は、図19に示す構造と同じである。
多数の歯車を直列的に並べた構造においては、バックラッシュに起因する作動のズレが大きくなりやすいが、図20に示す構造では、四番車41と同じ構造を有する歯車体(第2中間車132および第3中間車137)を複数使用することによって、歯車間の不要な回動(がたつき)を抑制できるため、バックラッシュの悪影響を低減することができる。
図4等に示す四番車41は、2つの歯車(第1四番歯車61および第2四番歯車62)からなるが、本発明の歯車体は、3以上の歯車から構成されていてもよい。その場合、3以上の歯車のうち少なくとも軸方向に隣り合う2つの歯車は、互いに独立して軸心回りに回転可能とされる。例えば、本発明の歯車体は、図4等に示す第1四番歯車61および第2四番歯車62に加え、第2四番歯車62の上に第3の歯車が重ねられた構成であってもよい。本発明の歯車体を構成する歯車の数は2以上の任意の数としてよい。
また、四番車41では、第2四番歯車62に第2長穴部77(第2穴部)が形成されており、第2弾性腕部74は第2長穴部77の内部空間に延出して形成されているが、第2四番歯車には第2長穴部(第2穴部)がなくてもよい。その場合には、第2弾性腕部は第2四番歯車の外部に延出して形成される。
四番車41では、第1四番歯車61の上側に第2四番歯車62を配置したが、第1四番歯車61と第2四番歯車62との上下関係は、図示例とは逆であってもよい。
10…ムーブメント
23…輪列機構
41…四番車(歯車体)
81,91,101,121…歯車体
61,61A,111…第1四番歯車(第1歯車)
61a,111a…第1四番歯車の歯部
62,92,112,122…第2四番歯車(第2歯車)
62a,92a…第2四番歯車の歯部
64d 第1係止凸部(第1係止部)
67 第1長穴部(第1穴部)
78 第2係止穴部(他方側係止受け部)
O1…軸心
Claims (8)
- 同軸とされた複数の歯車を有し、
前記複数の歯車のうち少なくとも軸方向に隣り合う2つの歯車は、互いに独立して軸心回りの周方向に回転可能とされ、
前記2つの歯車の一方は、第1基体と、前記第1基体と一体に形成された第1弾性腕部とを有し、
前記第1弾性腕部は、前記2つの歯車のうち他方の歯車に接続され、前記2つの歯車の前記周方向の位置に応じて曲げ弾性変形し、前記曲げ弾性変形の量に応じて前記2つの歯車を互いに反対の前記周方向に付勢し、
前記2つの歯車の他方は、第2基体と、前記第2基体と一体に形成された第2弾性腕部とを有し、
前記第2弾性腕部は、前記一方の歯車に接続され、前記2つの歯車の前記周方向の位置に応じて曲げ弾性変形し、前記曲げ弾性変形の量に応じて前記2つの歯車を互いに反対の前記周方向に付勢する、ことを特徴とする歯車体。 - 前記一方の歯車に、前記他方の歯車を前記周方向に回転自在に支持する支持軸部が設けられている、請求項1に記載の歯車体。
- 前記他方の歯車に、他方側係止受け部が形成され、
前記第1弾性腕部は、前記他方側係止受け部に凹凸により係止する第1係止部を有し、前記第1係止部が前記他方側係止受け部に係止することによって前記他方の歯車に接続される、請求項1または2に記載の歯車体。 - 前記第1基体に、第1穴部が形成され、
前記第1弾性腕部は、前記第1穴部の内部空間に延出して形成されている、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の歯車体。 - 前記第1弾性腕部は、前記一方の歯車の前記周方向に沿って形成されている、請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の歯車体。
- 請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の歯車体を備えたことを特徴とする輪列機構。
- 請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の歯車体を備えたことを特徴とするムーブメント。
- 請求項7に記載のムーブメントを備えたことを特徴とする時計。
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