以下に、図示した実施の形態に基づいて、この発明を説明する。なお、実施の形態と実施例での減衰弁の説明にあたり、実施の形態と実施例で共通する部材については同じ符号を付し、説明が重複するので、実施の形態において説明した部材については実施例での説明は省略する。
<実施の形態>
一実施の形態における減衰弁V1は、図1に示すように、緩衝器D1におけるシリンダC内の一方室R1と他方室R2を並列して連通する第一減衰通路PEと第二減衰通路PCと、第一減衰通路PEを開閉可能であって一方室R1から他方室R2へ向かう流体の流れに抵抗を与える第一減衰弁部VEと、第二減衰通路PCを開閉可能であって他方室R2から一方室R1へ向かう液体の流れに抵抗を与える第二減衰弁部VCと、第一減衰通路PEと第二減衰通路PCを迂回して一方室R1と他方室R2とを連通するバイパス路PBと、バイパス路PBを開閉するとともに第二減衰弁部VCの開弁圧を調整可能な電磁弁SVとを備えて構成されている。
また、本実施の形態の減衰弁V1が適用される緩衝器D1は、本例では、図2に示すように、シリンダCと、シリンダCに移動自在に挿入されてシリンダC内を図中上方の一方室R1と図中下方の他方室R2と区画するピストンPと、シリンダC内に移動自在に挿入されるとともにピストンPに連結されるピストンロッドPRと、リザーバRと、他方室R2からリザーバRへ向かう流体の流れのみを許容しこの流れに抵抗を与えるベースバルブBVを有する排出通路DPと、リザーバRから他方室R2へ向かう流体の流れのみを許容する逆止弁C1を有する吸込通路SPとを備えて構成されている。本例では、一方室R1は、緩衝器D1における伸側室とされ、他方室R2は緩衝器D1における圧側室とされているが、一方室を圧側室に、他方室を伸側室としてもよい。また、一方室R1、他方室R2およびリザーバR内には流体として作動油が充填されるとともにリザーバRには作動油の他に気体が充填されている。なお、流体には、作動油以外にも、減衰弁V1にて減衰力を発揮可能な流体を使用可能である。
前述のように構成された緩衝器D1は、収縮作動する際には、ピストンPが図2中下方へ移動して他方室R2が圧縮され、他方室R2内の作動油が第二減衰通路PCを介して一方室R1へ移動する。また、緩衝器D1の収縮動時には、ピストンロッドPRがシリンダC内に侵入するためシリンダC内でピストンロッド侵入体積分の作動油が過剰となり、過剰分の作動油がシリンダCから押し出されて排出通路DPを介してリザーバRへ排出される。緩衝器D1は、シリンダC内からリザーバRへ移動する作動油の流れにベースバルブBVで抵抗を与えて他方室R2内の圧力を上昇させ、第二減衰弁部VCにより他方室R2から一方室R1へ向かう流体の流れに抵抗を与えて他方室R2と一方室R1の圧力に差を生じさせて圧側減衰力を発揮する。
反対に、緩衝器D1が伸長作動する際には、ピストンPが図2中上方へ移動して一方室R1が圧縮され、一方室R1内の作動油が第一減衰通路PEを介して他方室R2へ移動する。この伸長作動時には、ピストンPが上方へ移動してピストンロッドPRがシリンダC内から退出してシリンダC内でピストンロッド退出体積分の作動油が不足するため、この不足分の作動油は吸込通路SPを介してリザーバRから供給される。そして、緩衝器D1は、一方室R1から他方室R2へ移動する作動油の流れに第一減衰弁部VEで抵抗を与え、一方室R1内の圧力を上昇させて一方室R1と他方室R2の圧力に差を生じせしめて伸側減衰力を発揮する。
つづいて、減衰弁V1の各部について詳しく説明する。減衰弁V1は、本例では、緩衝器D1のピストンPに組み込まれている。なお、減衰弁V1は、シリンダC外に設けられていてもよい。
第一減衰通路PEは、緩衝器D1における一方室R1と他方室R2を連通しており、第一減衰通路PEには第一減衰弁部VEが設けられている。第一減衰弁部VEは、本例では、リリーフ弁とされており、一方室R1から他方室R2へ向かう作動油の流れのみを許容し、上流である一方室R1の圧力が開弁圧に達すると開弁して作動油の流れに抵抗を与え、第一減衰通路PEを一方通行の通路に設定している。なお、第一減衰弁部VEは、リリーフ弁以外の弁とされてもよく、双方向流れを許容する絞りとされてもよい。
他方、第二減衰通路PCは、緩衝器D1における他方室R2と一方室R1を連通しており、第二減衰通路PCには第二減衰弁部VCが設けられている。第二減衰弁部VCは、一方室R1から他方室R2へ向かう作動油の流れのみを許容し、上流である一方室R1の圧力が開弁圧に達すると開弁して作動油の流れに抵抗を与え、第二減衰通路PCを一方通行の通路に設定している。第二減衰弁部VCは、具体的には、第二減衰通路PCを開閉する弁体VC1と、弁体VC1を閉弁方向に附勢するばねVC2と、上流である他方室R2の圧力を弁体VC1に開弁方向に作用させるに導く開弁パイロット圧導入路VC3と、電磁弁SVによって制御されるパイロット圧を弁体VC1に開弁方向に作用させるように導く開弁圧制御用パイロット圧導入路VC4とを備えて構成されている。よって、この第二減衰弁部VCは、電磁弁SVによって制御されるパイロット圧で弁体VC1を附勢する力とばねVC2のばね力の合力を、他方室R2の圧力で弁体VC1を附勢する力が打ち勝つと開弁して他方室R2を一方室R1へ連通する。また、第二減衰弁部VCは、電磁弁SVによって開弁圧が調整される。
バイパス路PBは、第一減衰通路PEと第二減衰通路PCを迂回して一方室R1と他方室R2とを連通し、一方室R1から他方室R2へ向かう作動油の流れのみを許容するバイパス路逆止弁C2が設けられて一方通行の通路に設定され、電磁弁SVにより開閉される。
また、バイパス路PBとは別にパイロット通路PPが設けられている。パイロット通路PPは、本例では、バイパス路PBに並列して一方室R1と他方室R2とを連通する圧力制御通路CPと、圧力制御通路CPから分岐して第二減衰弁部VCの弁体VC1パイロット圧を作用させる開弁圧制御用パイロット圧導入路VC4とで構成されている。圧力制御通路CPの途中であって開弁圧制御用パイロット圧導入路VC4の分岐点より他方室R2側には、絞りOが設けられている。また、圧力制御通路CPの途中であって開弁圧制御用パイロット圧導入路VC4の分岐点より一方室R1側には、他方室R2から一方室R1へ向かう作動油の流れのみを許容するパイロット通路逆止弁C3が設けられている。よって、圧力制御通路CPは、パイロット通路逆止弁C3により一方通行の通路に設定されている。
そして、バイパス路PBとパイロット通路PPの一端は、合流して一方側共通路PR1を介して一方室R1に連通されており、バイパス路PBとパイロット通路PPの他端は、合流して他方側共通路PR2を介して他方室R2に連通されている。
電磁弁SVは、バイパス路BPを開閉する開閉弁部OVと、パイロット通路PPにおける圧力制御通路CPに設けられてパイロット圧を調整して第二減衰弁部VCの開弁圧を調整する制御弁部CVと、開閉弁部OVおよび制御弁部CVを制御するソレノイドSとを備えて構成される。
開閉弁部OVは、ソレノイドSに連結された開閉弁とされていて、ソレノイドSの通電時に開弁するようになっている。よって、バイパス路逆止弁C2は、バイパス路BPの開閉弁部OVの下流に配置されている。また、開閉弁部OVは、ソレノイドSに供給される電流量に応じて開度合が調整され、ソレノイドSへ供給される電流量が多くなればなるほど開度合が大きくなり、開閉弁部OVがバイパス路BPを大きく開放するようになっている。
制御弁部CVは、パイロット通路PPにおける圧力制御通路CPの途中であって、開弁圧制御用パイロット圧導入路VC4の分岐点とパイロット通路逆止弁C3との間に設けられている。よって、パイロット通路逆止弁C3は、圧力制御通路CPの制御弁部CVの下流に配置されている。制御弁部CVは、圧力制御弁とされ、圧力制御通路CPを開閉する弁体CV1と、弁体CV1を閉弁方向へ附勢するばねCV2と、制御弁部CVの上流側である絞りOによって減圧された他方室側の圧力を弁体CV1に開弁方向に作用させる開弁パイロット圧導入路CV3とを備えている。よって、制御弁部CVは、ばねCV2のばね力を制御弁部CVの上流の圧力が弁体CV1を附勢する力が打ち勝つと開弁して圧力制御通路CPを開放して、制御弁部CVの上流側の圧力を制御弁部CVの開弁圧に制御する。制御弁部CVの上流であって絞りOの下流の圧力は、パイロット圧として開弁圧制御用パイロット圧導入路VC4により第二減衰弁部VCへ導かれる。ばねCV2は、制御弁部CVの弁体CV1と開閉弁部OVとの間に配置されており、弁体CV1と開閉弁部OVとの間で挟持されている。よって、ソレノイドSに電流供給して開閉弁部OVを開弁方向へ駆動するとばねCV2が圧縮されて制御弁部CVの弁体CV1を附勢するばね力が大きくなる。つまり、ソレノイドSへ供給する電流量が大きくなると、開閉弁部OVの移動量が増加するので、ばねCV2の圧縮量も大きくなり、制御弁部CVの開弁圧も大きくなる。このように、ソレノイドSへ供給する電流量に応じて開閉弁部OVの開度合と制御弁部CVの開弁圧が同時に調整され、ソレノイドSへ供給する電流量が大きくなればなるほど開閉弁部OVの開度合が大きくなるとともに制御弁部CVの開弁圧も大きくなる。そして、制御弁部CVは、第二減衰弁部VCに導かれるパイロット圧を開弁圧に制御するので、ソレノイドSへ供給する電流量に応じて第二減衰弁部VCの開弁圧も制御される。具体的には、ソレノイドSへ供給する電流量が大きくなると、制御弁部CVの開弁圧も大きくなってパイロット圧が大きくなるので、第二減衰弁部VCの開弁圧も大きくなる。
このように、電磁弁SVは、バイパス路BPを開閉するとともに第二減衰弁部VCの開弁圧を調整可能であって、第二減衰弁部VCの開弁圧を大きくするとバイパス路BPの開度合が大きくする。また、圧力制御通路CPの制御弁部CVの下流に配置されたパイロット通路逆止弁C3によって、一方室R1が制御弁部CV側から開閉弁部OVへ回り込まないようになっている。よって、一方室R1の圧力が他方室R2の圧力よりも高い緩衝器D1の伸長時において、一方室R1の圧力で開閉弁部OVのバイパス路BPの開度合が変化してしまわないように配慮されている。
また、バイパス路BPの開閉弁部OVよりも上流側には磁石MGが設けられている。緩衝器D1の製造加工の際の切削屑等の洗浄によっても取りきれなかった場合、切削屑等は、作動油中に鉄系のコンタミネーションとして浮遊する。ここで、開閉弁部OVの近傍にソレノイドSが配置されており、ソレノイドSに電流が供給されると磁力を発揮するため、前記コンタミネーションがソレノイドSに吸引されて開閉弁部OVの周辺にため込まれる場合がある。これに対して本例の減衰弁V1では、バイパス路BPの開閉弁部OVよりも上流側には磁石MGが設けられているので、開閉弁部OVへ至る前に作動油中のコンタミネーションが磁石MGに吸引されて捕獲されるので、コンタミネーションを取り除いて作動油を清浄に保て、開閉弁部OVの作動に悪影響が出るのも防止できる。
減衰弁V1は、以上のように構成されており、以下に作動を説明する。電磁弁SVへ電流供給しない場合、開閉弁部OVは、閉弁してバイパス路BPを遮断し、制御弁部CVのばねCV2のばね力は最小となって制御弁部CVの開弁圧が最小となり、第二減衰弁部VCの開弁圧が最小となる。
この状態では、緩衝器D1が伸長して、圧縮される一方室R1から拡大する他方室R2へ作動油が向かう場合、バイパス路BPが遮断されており、作動油は第一減衰通路PEのみを通じて移動するため、第一減衰弁部VEが作動油の流れに抵抗を与える。よって、ソレノイドSへ電流供給しない場合、バイパス路BPが遮断されるので、緩衝器D1が伸長する際に発生される伸側減衰力は高くなり、伸側減衰力はハードとなる。反対に、緩衝器D1が収縮して、圧縮される他方室R2から拡大する一方室R1へ作動油が向かう場合、作動油は、第二減衰通路PCを通じて移動するが、第二減衰弁部VCの開弁圧は最小となっている。よって、ソレノイドSへ電流供給しない場合、第二減衰弁部VCの開弁圧は最小となるので、緩衝器D1が収縮する際に発生される圧側減衰力は低くなり、圧側減衰力はソフトとなる。
つづいて、ソレノイドSに最大電流量を供給する場合、開閉弁部OVは、最大限に開弁してバイパス路BPを開放し、制御弁部CVのばねCV2が最圧縮されてばね力が最大となって制御弁部CVの開弁圧が最大となり、第二減衰弁部VCの開弁圧が最大となる。
この状態では、緩衝器D1が伸長して、圧縮される一方室R1から拡大する他方室R2へ作動油が向かう場合、バイパス路BPが最大開放されており、作動油は第一減衰通路PEだけでなくバイパス路BPを通じて移動する。よって、ソレノイドSに最大電流量を供給する場合、バイパス路BPが開放されるので、緩衝器D1が伸長する際に発生される伸側減衰力は低くなり、伸側減衰力はソフトとなる。反対に、緩衝器D1が収縮して、圧縮される他方室R2から拡大する一方室R1へ作動油が向かう場合、作動油は、第二減衰通路PCを通じて移動するが、第二減衰弁部VCの開弁圧は最大となっている。よって、ソレノイドSに最大電流量を供給する場合、第二減衰弁部VCの開弁圧は最大となるので、緩衝器D1が収縮する際に発生される圧側減衰力は高くなり、圧側減衰力はハードとなる。
つづいて、ソレノイドSに最大の二分の一の電流量を供給する場合、開閉弁部OVは、半開してバイパス路BPを開放し、制御弁部CVの開弁圧が最大と最小の中間となり、第二減衰弁部VCの開弁圧も最大と最小の中間となる。
この状態では、緩衝器D1が伸長して、圧縮される一方室R1から拡大する他方室R2へ作動油が向かう場合、バイパス路BPが半開されており、作動油は第一減衰通路PEだけでなくバイパス路BPを通じて移動する。よって、ソレノイドSに最大の二分の一の電流量を供給する場合、緩衝器D1が伸長する際に発生される伸側減衰力は最小と最大の中間程度となり、減衰力はミディアムとなる。反対に、緩衝器D1が収縮して、圧縮される他方室R2から拡大する一方室R1へ作動油が向かう場合、作動油は、第二減衰通路PCを通じて移動するが、第二減衰弁部VCの開弁圧は最小と最大の中間となっている。よって、ソレノイドSに最大の二分の一の電流量を供給する場合、第二減衰弁部VCの開弁圧は最小と最大の中間となるので、緩衝器D1が収縮する際に発生される圧側減衰力は最小と最大の中間となり、圧側減衰力はミディアムとなる。
前述したとおり、二輪車では、車体が軽量で振動周波数が四輪自動車に比較すると高く、伸圧とも減衰力調整が同じに設定されると、伸縮の切換わりで減衰力の大きさを変更しようとしてもシステムの応答に時間がかかって減衰力調整が間に合わず却って車両における乗り心地を損なうと経験的に分かっている。これに対して、伸側減衰力をハードにした場合には圧側減衰力をソフトにし、伸側減衰力をソフトにした場合には圧側減衰力をハードにし、伸側減衰力をミディアムにした場合には圧側減衰力もミディアムにした場合、二輪車における車体振動を効果的に抑制できると発明者は知見するに至った。
本発明の減衰弁V1および緩衝器D1によれば、伸側減衰力をハードにする場合には圧側減衰力をソフトに調整でき、伸側減衰力をソフトにする場合には圧側減衰力をハードに調整でき、さらには、伸側減衰力をミディアムにする場合には圧側減衰力もミディアムに調整できる。よって、本発明の減衰弁V1および減衰弁V1を適用した緩衝器D1によれば、二輪車における乗り心地を効果的に向上できるのである。さらに、緩衝器D1にあっては、バイパス路BPの開閉によって伸側減衰力を調整し、第二減衰弁部VCの開弁圧の調整で圧側減衰力を調整するので、伸側減衰力と圧側減衰力を別個独立して設定できるので、伸側減衰力と圧側減衰力の設計自由度も向上して、車両に適する減衰力を実現できる。
また、本例の減衰弁V1では、他方室R2から第二減衰弁部VCを閉方向に押圧するパイロット圧を導くパイロット通路PPを備え、電磁弁SVがバイパス路BPを開閉する開閉弁部OVと、パイロット通路PPに設けられてパイロット圧を調整して第二減衰弁部VCの開弁圧を調整する制御弁部CVと、開閉弁部OVおよび制御弁部CVとを制御するソレノイドSとを有している。このように減衰弁V1が構成されると、単一のソレノイドSによって伸側減衰力と圧側減衰力の大きさを伸側と圧側とで反対となるように調整でき、コストが安価となる。
さらに、本例の減衰弁V1では、電磁弁SVが開閉弁部OVと制御弁部CVとの間に設けられて制御弁部CVを閉弁方向へ附勢するばねCV2を備え、ソレノイドSに供給される電流量に応じて開閉弁部OVを駆動してばねCV2の制御弁部CVを附勢する附勢力を調整するようになっている。このように減衰弁V1が構成されると、簡単な構成で一つのソレノイドSの利用で伸側減衰力と圧側減衰力の大きさが伸側と圧側とで反対となるように自動調整できる。
また、本例の減衰弁V1では、パイロット通路PPとバイパス路BPの一端が合流して一方側共通路PR1を介して一方室R1に連通されており、パイロット通路PPとバイパス路BPの他端が合流して他方側共通路PR2を介して他方室R2に連通されており、バイパス路BPの開閉弁部OVの下流に設けられて一方室R1から他方室R2へ向かう流体の流れのみを許容するバイパス路逆止弁C2と、パイロット通路PPの制御弁部CVの下流に設けられて他方室R2から一方室R1へ向かう流体の流れのみを許容するパイロット通路逆止弁C3とを備えて構成されている。このように、バイパス路BPにバイパス路逆止弁C2が設けられると、開閉弁部OVがバイパス路BPを開放する状況であっても、緩衝器D1が収縮する場合に作動油がバイパス路BPを通過できなくなる。よって、第二減衰弁部VCが発生する圧側減衰力に対してバイパス路BPが影響を与えずに済み、ソレノイドSで設定した通り正確に圧側減衰力を発揮可能となる。さらに、パイロット通路PPの制御弁部CVの下流に配置されたパイロット通路逆止弁C3によって、一方室R1の圧力が制御弁部CV側から開閉弁部OVへ回り込まないようになっている。よって、一方室R1の圧力が他方室R2の圧力よりも高い緩衝器D1の伸長時において、一方室R1の圧力で開閉弁部OVのバイパス路BPの開度合が変化せず、ソレノイドSで設定した通り正確に伸側減衰力を発揮可能となる。以上より、本例の減衰弁V1によれば、ソレノイドSで設定した通り正確に伸側減衰力および圧側減衰力を発揮可能となり、バイパス路BPおよびパイロット通路PPの一部が共通化されて減衰弁V1を小型化できる。
また、本例の減衰弁V1では、バイパス路BPの開閉弁部OVの上流に磁石MGを備えている。このように減衰弁V1が構成されると、開閉弁部OVへ至る前に作動油中のコンタミネーションが磁石MGに吸引されて捕獲されるので、コンタミネーションを取り除いて作動油を清浄に保て、開閉弁部OVの作動に悪影響が出るのも防止できる。
<実施例>
前記では、回路図を用いて本発明の減衰弁を説明したが、以下に、緩衝器D2に具体的な構造を備えた減衰弁V2を適用した実施例について説明する。本実施例における減衰弁V2は、図3および図4に示すように、緩衝器D2に適用されている。
緩衝器D2は、作動油を満たしたシリンダ10と、シリンダ10内に移動自在に挿入されるピストン11と、シリンダ10内にピストン11で区画した一方室としての伸側室13と他方室としての圧側室14と、シリンダ10内に移動自在に挿入されてピストン11に連結されるピストンロッド12と、減衰弁V2とを備えて構成されている。また、シリンダ10の図3中下方には、仕切部材15が設けられて圧側室14の下方にリザーバ16が区画されている。また、仕切部材15には、排出通路DPと吸込通路SPが設けられている。さらに、仕切部材15には、排出通路DPの出口端を開閉して圧側室14からリザーバ16へ向かう作動油の流れのみを許容しこの流れに抵抗を与えるベースバルブBVと、吸込通路SPの出口端を開閉してリザーバ16から圧側室14へ向かう作動油の流れのみを許容する逆止弁C1とが組みつけられている。
よって、この緩衝器D2が伸縮すると、緩衝器D1と同様に、シリンダ10内へのピストンロッド12の出入りにより伸側室13と圧側室14とで過不足となる作動油がリザーバ16から給排されて補償され、減衰弁V2とベースバルブBVによって減衰力が発揮される。また、この緩衝器D2は、図3に示すように、シリンダ10の下端に図外の二輪車の車軸を支持するアクスルブラケット19を介して連結されてシリンダ10の外周に設けられるインナーチューブ17と、ピストンロッド12の上端が連結されてインナーチューブ17が摺動自在に挿入されるアウターチューブ18とを備えた二輪車用のフロントフォークFに内蔵されている。なお、図4では、アウターチューブ18の記載を省略している。
減衰弁V2は、図4に示すように、ピストン11に設けた第一減衰通路としての伸側ポート20と第二減衰通路としての圧側ポート21と、ピストン11の圧側室側に積層されて伸側ポート20の出口端を開閉可能して伸側室13から圧側室14へ向かう作動油の流れに抵抗を与える第一減衰弁部としての伸側リーフバルブ22と、ピストン11の伸側室側に積層されて圧側ポート21を開閉して圧側室14から伸側室13へ向かう作動油の流れに抵抗を与える第二減衰弁部VCと、伸側ポート20と圧側ポート21を迂回して伸側室13と圧側室14を連通するバイパス路PBと、バイパス路PBを開閉するとともに第二減衰弁部VCの開弁圧を調整可能な電磁弁SVとを備えて構成されている。また、電磁弁SVは、開閉弁部OV、制御弁部CV、開閉弁部OVおよび制御弁部CVを制御するソレノイドSとを備えている。
以下、減衰弁V2および緩衝器D2について詳細に説明する。図4に示すように、ピストンロッド12は、本例では、ピストン11を保持するピストン保持部材24と、一端がピストン保持部材24に連結されてピストン保持部材24とともに電磁弁SVを収容する電磁弁収容筒25と、一端が電磁弁収容筒25に連結されるとともに他端がシリンダ10の上端から外方へ突出するロッド部材26とで形成されている。
ピストン保持部材24は、外周に環状のピストン11が装着される保持軸24aと、保持軸24aの図4中上端外周に設けたフランジ24bと、フランジ24bの図4中上端外周に設けられて筒状であって途中で径が大径となる筒状のソケット24cとを備えている。また、ピストン保持部材24は、保持軸24aの先端から開口して軸方向に伸び前記ソケット24c内に通じる縦孔24dと、保持軸24aのフランジ24bの近傍の外周から縦孔24dに通じる絞りOと、フランジ24bを上下方向に貫く縦孔24eと、ソケット24cの大径部位に設けられてソケット24cの内外を連通する横孔24fと、ソケット24cの径が変化する内周および外周に設けた段部24g,24hとを備えている。
電磁弁収容筒25は、有頂筒状の収容筒部25aと、収容筒部25aよりも外径が小径であって収容筒部25aの頂部から図4中上方へ伸びる筒状の連結部25bとを備えて構成されている。そして、電磁弁収容筒25の収容筒部25aの内周にピストン保持部材24のソケット24cを螺着すると、電磁弁収容筒25にピストン保持部材24が一体化されるとともに、これら電磁弁収容筒25とピストン保持部材24とで収容筒部25a内に電磁弁SVが収容される収容部Lが形成される。この収容部Lは、ソケット24cに設けた横孔24fにより伸側室13に連通されるとともに、縦孔24dを介して圧側室14に連通されている。また、縦孔24dは、縦孔24dから分岐する絞りOおよび縦孔24eを通じて収容部Lに通じているので、収容部Lは、縦孔24dと、絞りOと縦孔24eを通るルートでも圧側室14に連通されている。
ロッド部材26は、筒状であって、図4中下端の内周に電磁弁収容筒25の連結部25bの挿入を許容し、この連結部25bの螺着を可能とする螺子部(符示せず)を備えている。このように、ロッド部材26、電磁弁収容筒25およびピストン保持部材24を一体化すると、ピストンロッド12が形成される。また、ロッド部材26および連結部25b内には、後述するソレノイドSへ電力供給するハーネスHが挿通されており、ハーネスHの上端について図示はしないがロッド部材26の上端から外方へ伸びており、電源に接続される。
ピストン保持部材24に設けた保持軸24aの外周には、図4に示すように、環状のピストン11とともに、伸側リーフバルブ22と圧側リーフバルブ28が組み付けられており、これらがナット27によって保持軸24aに装着されている。より詳しくは、ピストン11の図4中上方には、圧側リーフバルブ28と圧側リーフバルブ28の最大撓み量を規制するバルブストッパ33とが積層されている。また、ピストン11の図4中下方には、伸側リーフバルブ22と伸側リーフバルブ22の最大撓み量を規制するバルブストッパ35とが積層されている。
第二減衰弁部VCは、ピストン11の圧側ポート21を圧側リーフバルブ28と、筒状であってピストン保持部材24のソケット24cの小径部位の外周に摺動自在に装着されて圧側リーフバルブ28に当接し外周にフランジ状のばね受29aを備えたスプール29と、ピストン保持部材24のソケット24cの外周に設けた段部24hとスプール29のばね受29aとの間に介装されてスプール29を介して圧側リーフバルブ28をピストン11へ押しつける方向へ附勢するばね30とを備えている。そして、スプール29は、圧側リーフバルブ28の背面である図4中上方に背圧室31が設けられていて、背圧室31の内部圧力で圧側リーフバルブ28を附勢できるようになっている。また、この背圧室31は、ピストン保持部材24の縦孔24d、絞りOを介して圧側室14に連通されており、圧側室14の圧力が導入されるとともに、縦孔24eを介して収容部Lにも連通されている。このように、圧側リーフバルブ28の正面側には、圧側ポート21を介して圧側室14の圧力が開弁方向に作用し、背面側には、背圧室31の圧力とばね30の附勢力が閉弁方向に作用している。
ピストン保持部材24のソケット24c内の収容部Lには、制御弁部CVおよび開閉弁部OVが収容されている。制御弁部CVは、弁座部材36と、環状のリーフバルブ37と、リーフバルブ37の内周を弁座部材36に固定するナット38と、リーフバルブ37に当接するプッシャー39と、リーフバルブ37をプッシャー39を介して附勢するばね40とを備えて構成されており、スペーサ41を介してピストン保持部材24のフランジ24bの上端に積層されている。
スペーサ41は、環状であって、符示はしないが、外周に弁座部材36に嵌合する筒状の嵌合部が設けられている。弁座部材36は、フランジ状であって上下に貫くポート36bを有する弁座部36aと、弁座部36aの図4中上方に伸びる軸部36cと、弁座部36aの図4中下方へ突出してスペーサ41に嵌合される突部36dと、突部36d側から開口する逆止弁孔36eと、軸部36cの上端と逆止弁孔36eとを連通する縦孔36fとを備えて構成されている。弁座部材36は、ピストン保持部材24のソケット24cにおける小径部位の内周に弁座部36aを螺子締結して固定されており、スペーサ41とともにピストン保持部材24に固定されている。
逆止弁孔36e内には、有底筒状の逆止弁弁体42と、逆止弁弁体42とスペーサ41との間に介装されるばね44とが収容されており、逆止弁弁体42は、ばね44によって逆止弁孔36eにおける縦孔36fの開口部を遮断するよう附勢されている。そして、逆止弁弁体42は、縦孔36f側から逆止弁孔36e側へ向かい作動油うの流れに対しては逆止弁孔36e内で図4中下方へ後退して縦孔36fと逆止弁孔36eとを連通するようになっている。これら、逆止弁弁体42とばね44とで、バイパス路逆止弁C2を構成している。
弁座部材36の軸部36cの外周には、リーフバルブ37が嵌合されており、リーフバルブ37は、ナット38の下端と弁座部材36の弁座部36aとで挟持されて内周が固定されており、外周側の撓みが許容されている。リーフバルブ37は、弁座部36aの図4中上方に積層されてポート36bを開閉するようになっている。ナット38は、長尺の筒状とされており、外周には、プッシャー39が摺動自在に装着されている。プッシャー39は、ナット38の外周に摺接する環状のガイド部39aと、ガイド部39aの図4中下端外周に設けた鍔39bと、鍔39bの図4中外周から下方へ垂下されてリーフバルブ37の外周に当接する環状の当接部39cとを備えて構成されている。なお、鍔39bには、リーフバルブ37とプッシャー39との間の空間内を外方へ連通する圧抜き孔39dが設けられている。よって、リーフバルブ37が撓んで前記空間の容積が変化しても、空間内の圧力変動が生じないので、リーフバルブ37のポート36bの開閉作動が円滑に行われる。また、プッシャー39は、ばね40によって附勢されており、ばね40の附勢力をリーフバルブ37の外周に作用させている。ばね40は、後述する開閉弁部OVを介してソレノイドSの推力を受けており、ソレノイドSの推力調整によって圧縮量が変化してリーフバルブ37へ与える附勢力が調整される。ポート36bは、ピストン保持部材24の縦孔24e、背圧室31、絞りOおよび縦孔24dを通じて圧側室14に通じるとともに、横孔24fを介して伸側室13に通じている。
よって、制御弁部CVは、ソレノイドSによってばね40がリーフバルブ37へ与える附勢力を調整して、リーフバルブ37がポート36bを開放する開弁圧を調整でき、背圧室31内の圧力を開弁圧に制御できる。このように、制御弁部CVで背圧室31内の圧力を調整すると、第二減衰弁部VCにおける圧側リーフバルブ28の開弁圧も変化するので、制御弁部CVで第二減衰弁部VCの開弁圧が制御されて緩衝器D2の圧側減衰力をソフトからハードまで任意に調整できる。
以上より、圧側リーフバルブ28が第二減衰弁部VCにおける弁体として、ばね30が弁体を閉弁方向に附勢するばねとして、圧側ポート21が開弁パイロット圧導入路として、縦孔24eが開弁圧制御用パイロット圧導入路として機能している。
開閉弁部OVは、筒状のシャッター52と、筒状であって内周にシャッター52が摺動自在に挿入されるハウジング43とを備えて構成されている。ソレノイドSは、電磁弁収容筒25内に収容されており、コイル45を備えた筒状のステータ46と、ステータ46内に移動自在に挿入された筒状の可動鉄心47と、可動鉄心47の内周に装着されてシャッター52に連結されるプランジャ48とを備えている。
ソレノイドSへ通電すると、可動鉄心47が図4で示された位置から下方へ移動してプランジャ48でシャッター52を下方へ駆動できるようになっている。シャッター52は、側部に内外を連通する孔52aを備えており、下端には、ナット38の外周に摺接するばね受53に嵌合されている。ばね受53は、制御弁部CVのばね40の上端を支持しており、シャッター52は、ばね40により図4中上方へ向けて附勢されている。本例では、プランジャ48とシャッター52とを連結しているが、シャッター52がばね40によって附勢されてプランジャ48へ押しつけられているので、プランジャ48とシャッター52とは一体に連結せずともよい。
また、ハウジング43は、シャッター52の外周に配置される筒部43aと、筒部43aの図4中下端外周に設けたフランジ部43bと、筒部43aに設けられて筒部43aの内外を連通する孔43cと、フランジ部43bを図4中上下に貫くポート43dとを備えている。そして、ハウジング43のフランジ部43bの外周下端をピストン保持部材24のソケット24cの内周の段部24gに当接させ、ハウジング43の筒部43aの上端にスペーサ49を積層し、さらに、ソレノイドSを積層し、ピストン保持部材24を電磁弁収容筒25に螺子締結すると、ハウジング43、スペーサ49およびソレノイドSが収容部L内で固定される。
ハウジング43のフランジ部43bの図4中上端には、ポート43dの上端開口端を開閉する環状の逆止弁弁体50が積層されており、さらに、スペーサ49と逆止弁弁体50との間には、ばね51と環状の磁石MGとが介装されている。逆止弁弁体50は、ばね51によってハウジング43のフランジ部43bに向けて附勢されてポート43dを閉塞しており、制御弁部CVのリーフバルブ37が開弁してポート36bを抜けた作動油の圧力でばね51が押し縮められると開弁するようになっている。反対に、横孔24fを通過して伸側室13から制御弁部CV側へ移動しようとする作動油の流れに対し、逆止弁弁体50は、ポート43dを閉弁状態を保ち、この流れを阻止する。よって、ハウジング43、逆止弁弁体50およびばね51とで、パイロット通路逆止弁C3を構成している。なお、スペーサ49は、筒状であって、図4中上端内周には内周側へ突出してハウジング43の筒部43aとソレノイドSとで挟持される環状のシート部49aが設けられるとともに、側部には透孔49bが設けられている。透孔49bは、ハウジング43の孔43cをピストン保持部材24の横孔24fへ連通している。
ソレノイドSへ通電しない状態では、シャッター52の孔52aとハウジング43の筒部43aに設けた孔43cとは対向せず、ソレノイドSへ通電してシャッター52を図4中下方へ移動させると、孔52aと孔43cとが対向するようになって、シャッター52内とハウジング43の筒部43aの外側とが連通するようになる。孔43cは、スペーサ49の透孔49bおよびピストン保持部材24の横孔24fを介して伸側室13へ連通されており、シャッター52内は、ナット38内、弁座部材36の縦孔36f、逆止弁孔36eおよびピストン保持部材24の縦孔24dを介して圧側室14に連通されている。
このように、バイパス路BPは、ピストン保持部材24の横孔24f、収容部L内であってハウジング43とスペーサ49とで仕切られる空隙、スペーサ49の透孔49b、スペーサ49内、シャッター52内、ナット38内、弁座部材36の縦孔36fと逆止弁孔36e、ピストン保持部材24の縦孔24dによって形成されている。また、バイパス路BPには、その途中に、逆止弁弁体42とばね44とで構成されたバイパス路逆止弁C2が設けられている。
よって、シャッター52の孔52aとハウジング43の孔43cとが対向して開閉弁部OVが開弁する状態では、伸側室13からバイパス路BPを通じて圧側室14へ向かう作動油の流れに対してバイパス路逆止弁C2も開弁してこれを許容する。反対向きの作動油の流れは、バイパス路逆止弁C2が閉弁して阻止されるので、作動油は、バイパス路BPを通じて圧側室14から伸側室13へ移動できない。シャッター52の孔52aとハウジング43の孔43cとが対向せず開閉弁部OVが閉弁する状態では、バイパス路BPは遮断されるので、作動油はバイパス路BPを通過できない。
そして、ソレノイドSへの電流供給量に応じて変化するシャッター52の位置により孔52aとハウジング43の孔43cとの対向度合を調整でき、開閉弁部OVの開弁度合を調整できる。このように開閉弁部OVの開弁度合をソレノイドSへの電流供給量によって調整すると、バイパス路BPを通過する作動油の流れに与える抵抗を調整でき、緩衝器D2の伸側減衰力をソフトからハードまで任意に調整できる。
また、パイロット通路PPは、ピストン保持部材24の縦孔24d、絞りO、背圧室31、ピストン保持部材24の縦孔24e、収容部L内であってピストン保持部材24と弁座部材36とで仕切られる空隙、弁座部材36のポート36b、収容部L内であって弁座部材36とハウジング43とで仕切られる空隙、ハウジング43のポート43d、収容部L内であってハウジング43とスペーサ49とで仕切られる空隙およびピストン保持部材24の横孔24fによって形成されている。また、パイロット通路PPには、その途中に、ハウジング43、逆止弁弁体50およびばね51とで構成されたパイロット通路逆止弁C3が設けられている。
よって、パイロット通路PPは、パイロット通路逆止弁C3によって圧側室14から伸側室13へ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。そして、ソレノイドSへの電流供給量に応じて変化するシャッター52の位置によりばね40の圧縮量を調整でき、ばね40の圧縮量に応じてリーフバルブ37が弁座部材36から離座してポート36bを開放する開弁圧(制御弁部CVの開弁圧)を調整できる。このように制御弁部CVの開弁圧をソレノイドSへの電流供給量によって調整すると、前述のように、背圧室31内の圧力を調整して、第二減衰弁部VCの開弁圧を制御でき、緩衝器D2の圧側減衰力をソフトからハードまで任意に調整できる。
なお、バイパス路BPとパイロット通路PPの一端は、収容部L内であってハウジング43とスペーサ49とで仕切られる空隙で合流してピストン保持部材24の横孔24fを通じて伸側室13へ通じており、前記空隙の一部と横孔24fとで一方側共通路が形成される。また、バイパス路BPとパイロット通路PPの他端は、縦孔24dで合流して圧側室14に連通されており、縦孔24dと縦孔24dとで他方側共通路が形成されている。
さらに、本例では、パイロット通路PPは、背圧室31を通って形成されているので、圧力制御通路と開弁圧制御用パイロット圧導入路を共通化して単一の通路(絞りOおよび縦孔24e)でパイロット通路PPを形成でき、加工コストを低減できる。
減衰弁V2は、以上のように構成されており、以下に作動を説明する。電磁弁SVへ電流供給しない場合、開閉弁部OVは、閉弁してバイパス路BPを遮断し、制御弁部CVのばね40のばね力は最小となって制御弁部CVの開弁圧が最小となり、第二減衰弁部VCの開弁圧が最小となる。
この状態では、緩衝器D2が伸長して、圧縮される伸側室13から拡大する圧側室14へ作動油が向かう場合、バイパス路BPが遮断されており、作動油は伸側ポート20のみを通じて移動するため、伸側リーフバルブ22が作動油の流れに抵抗を与える。よって、ソレノイドSへ電流供給しない場合、バイパス路BPが遮断されるので、緩衝器D2が伸長する際に発生される伸側減衰力は高くなり、伸側減衰力はハードとなる。反対に、緩衝器D2が収縮して、圧縮される圧側室14から拡大する伸側室13へ作動油が向かう場合、作動油は、圧側ポート21を通じて移動するが、第二減衰弁部VCの開弁圧は最小となっている。よって、ソレノイドSへ電流供給しない場合、第二減衰弁部VCの開弁圧は最小となるので、緩衝器D2が収縮する際に発生される圧側減衰力は低くなり、圧側減衰力はソフトとなる。
つづいて、ソレノイドSに最大電流量を供給する場合、開閉弁部OVは、最大限に開弁してバイパス路BPを開放し、制御弁部CVのばね40が最圧縮されてばね力が最大となって制御弁部CVの開弁圧が最大となり、第二減衰弁部VCの開弁圧が最大となる。
この状態では、緩衝器D2が伸長して、圧縮される伸側室13から拡大する圧側室14へ作動油が向かう場合、バイパス路BPが最大開放されており、作動油は伸側ポート20だけでなくバイパス路BPを通じて移動する。よって、ソレノイドSに最大電流量を供給する場合、バイパス路BPが開放されるので、緩衝器D2が伸長する際に発生される伸側減衰力は低くなり、伸側減衰力はソフトとなる。反対に、緩衝器D2が収縮して、圧縮される圧側室14から拡大する伸側室13へ作動油が向かう場合、作動油は、圧側ポート21を通じて移動するが、第二減衰弁部VCの開弁圧は最大となっている。よって、ソレノイドSに最大電流量を供給する場合、第二減衰弁部VCの開弁圧は最大となるので、緩衝器D2が収縮する際に発生される圧側減衰力は高くなり、圧側減衰力はハードとなる。
つづいて、ソレノイドSに最大の二分の一の電流量を供給する場合、開閉弁部OVは、半開してバイパス路BPを開放し、制御弁部CVの開弁圧が最大と最小の中間となり、第二減衰弁部VCの開弁圧も最大と最小の中間となる。
この状態では、緩衝器D2が伸長して、圧縮される伸側室13から拡大する圧側室14へ作動油が向かう場合、バイパス路BPが半開されており、作動油は伸側ポート20だけでなくバイパス路BPを通じて移動する。よって、ソレノイドSに最大の二分の一の電流量を供給する場合、緩衝器D2が伸長する際に発生される伸側減衰力は最小と最大の中間程度となり、減衰力はミディアムとなる。反対に、緩衝器D2が収縮して、圧縮される圧側室14から拡大する伸側室13へ作動油が向かう場合、作動油は、圧側ポート21を通じて移動するが、第二減衰弁部VCの開弁圧は最小と最大の中間となっている。よって、ソレノイドSに最大の二分の一の電流量を供給する場合、第二減衰弁部VCの開弁圧は最小と最大の中間となるので、緩衝器D2が収縮する際に発生される圧側減衰力は最小と最大の中間となり、圧側減衰力はミディアムとなる。
前述したとおり、二輪車では、緩衝器D2の伸側減衰力をハードにした場合には圧側減衰力をソフトにし、伸側減衰力をソフトにした場合には圧側減衰力をハードにし、伸側減衰力をミディアムにした場合には圧側減衰力もミディアムにした場合、車体振動を効果的に抑制できる。
よって、本実施例の減衰弁V2によれば、伸側減衰力をハードにする場合には圧側減衰力をソフトに調整でき、伸側減衰力をソフトにする場合には圧側減衰力をハードに調整でき、さらには、伸側減衰力をミディアムにする場合には圧側減衰力もミディアムに調整できる。よって、減衰弁V2および減衰弁V2を適用した緩衝器D2によれば、二輪車における乗り心地を効果的に向上できるのである。さらに、本実施例の具体的な緩衝器D2にあっては、バイパス路BPの開閉によって伸側減衰力を調整し、第二減衰弁部VCの開弁圧の調整で圧側減衰力を調整するので、伸側減衰力と圧側減衰力を別個独立して設定できるので、伸側減衰力と圧側減衰力の設計自由度も向上して、車両に適する減衰力を実現できる。
また、本実施例の減衰弁V2では、圧側室14から第二減衰弁部VCを閉方向に押圧するパイロット圧を導くパイロット通路PPを備え、電磁弁SVがバイパス路BPを開閉する開閉弁部OVと、パイロット通路PPに設けられてパイロット圧を調整して第二減衰弁部VCの開弁圧を調整する制御弁部CVと、開閉弁部OVおよび制御弁部CVとを制御するソレノイドSとを有している。このように減衰弁V2が構成されるので、単一のソレノイドSによって伸側減衰力と圧側減衰力の大きさを伸側と圧側とで反対となるように調整でき、コストが安価となる。
さらに、本実施例の減衰弁V2では、電磁弁SVが開閉弁部OVと制御弁部CVとの間に設けられて制御弁部CVを閉弁方向へ附勢するばね40を備え、ソレノイドSに供給される電流量に応じて開閉弁部OVを駆動してばね40の制御弁部CVを附勢する附勢力を調整するようになっている。このように減衰弁V2が構成されると、簡単な構成で一つのソレノイドSの利用で伸側減衰力と圧側減衰力の大きさが伸側と圧側とで反対となるように自動調整できる。
また、本実施例の減衰弁V2では、パイロット通路PPとバイパス路BPの一端が合流して一方側共通路を介して伸側室13に連通されており、パイロット通路PPとバイパス路BPの他端が合流して他方側共通路を介して圧側室14に連通されており、バイパス路BPの開閉弁部OVの下流に設けられて伸側室13から圧側室14へ向かう流体の流れのみを許容するバイパス路逆止弁C2と、パイロット通路PPの制御弁部CVの下流に設けられて圧側室14から伸側室13へ向かう流体の流れのみを許容するパイロット通路逆止弁C3とを備えて構成されている。このように、バイパス路BPにバイパス路逆止弁C2が設けられると、開閉弁部OVがバイパス路BPを開放する状況であっても、緩衝器D2が収縮する場合に作動油がバイパス路BPを通過できなくなる。よって、圧側減衰力に対してバイパス路BPで影響を与えずに済み、ソレノイドSで設定した通り正確に圧側減衰力を発揮可能となる。さらに、パイロット通路PPの制御弁部CVの下流に配置されたパイロット通路逆止弁C3によって、伸側室13が制御弁部CV側から開閉弁部OVのシャッター52へ回り込まないようになっている。パイロット通路逆止弁C3を設置しないと、伸側室13の圧力がばね受53に作用してばね受53が上方に押されて、シャッター52を上方に押圧する力が発生してしまう。シャッター52にこのような力が作用すると伸側室13内の圧力に応じてソレノイドSへ供給する電流量を制御しなくてはならず、開閉弁部OVの開度の制御が非常に煩雑となるとともに、伸側室13の圧力をセンシングするセンサが必要となってコスト高となるが、そのような問題が生じない。よって、本実施例の減衰弁V2では、伸側室13の圧力が圧側室14の圧力よりも高い緩衝器D2の伸長時において、開閉弁部OVのバイパス路BPの開度合が変化せず、ソレノイドSで設定した通り正確に伸側減衰力を発揮可能である。以上より、本実施例の減衰弁V2によれば、ソレノイドSで設定した通り正確に伸側減衰力および圧側減衰力を発揮可能となり、バイパス路BPおよびパイロット通路PPの一部が共通化されて減衰弁V2を小型化できる。さらに、本発明の緩衝器D2にあっては、伸長作動時において伸側減衰力を調整するのに開閉弁部OVを利用しているので、伸側減衰力を非常に大きくする必要がある場合にあっても、シャッター52に伸側室13からの圧力が回り込まず、大型なソレノイドSを使用せずとも伸側減衰力の制御幅を確保できる。
また、本実施例の減衰弁V2では、バイパス路BPの開閉弁部OVの上流に磁石MGを備えている。このように減衰弁V2が構成されると、開閉弁部OVへ至る前に作動油中のコンタミネーションが磁石MGに吸引されて捕獲されるので、コンタミネーションを取り除いて作動油を清浄に保て、開閉弁部OVの作動に悪影響が出るのも防止できる。また、磁石MGは、ばね51とスペーサ49に挟持されており、磁石MGにはばね51と伸側室13内の圧力でスペーサ49に押しつけられる力が作用するために、スペーサ49から離間せずスペーサ49に当接した状態に保たれる。よって、磁石MGがスペーサ49から離間してばね51によって再び当接する位置に戻されるといった事態が生じないので、緩衝器D2に振動が入力されても磁石MGがスペーサ49から離間せず、磁石MGの損傷を防止できる。また、ばね51によって挟持されているので、磁石MGに過大な軸力も作用しないので、この点でも磁石MGが保護される。なお、スペーサ49とハウジング43は、非磁性体としておくと磁石MGによって磁化されないため、コンタミネーションを磁石MGのみで捕獲でき、スペーサ49やハウジング43にコンタミネーションが付着するのを防止できる。
さらに、本実施例の減衰弁V2では、制御弁部CVがパイロット通路PPを開閉する環状のリーフバルブ37と、リーフバルブ37の外周にばね40の附勢力を作用させるプッシャー39とを有している。このようにばね40の附勢力をリーフバルブ37の外周に作用させると、リーフバルブ37がポート36bを開閉する際にリーフバルブ37がビビるように振動するのを防止でき、背圧室31の圧力の変動を抑制でき、第二減衰弁部VCの開弁圧を安定させ得る。
また、第二減衰弁部VCでは、圧側リーフバルブ28と、スプール29と、スプール29を介して圧側リーフバルブ28をピストン11へ押しつける方向へ附勢するばね30とを備え、スプール29で圧側リーフバルブ28の背面に背圧室31を設けている。よって、スプール29の内径の設定により、背圧室31の圧力で圧側リーフバルブ28を押圧する力をチューニングでき、減衰力をチューニングできる。
また、本実施例では、ピストン11、伸側リーフバルブ22、圧側リーフバルブ28、スプール29およびばね30がピストン保持部材24に装着されるとともに、ピストン保持部材24と電磁弁収容筒25とで形成される収容部内に電磁弁SVが収容されるので、減衰弁V2を無理なくピストンロッド12に組付けできる。
さらに、図5に示した実施例の一変形例の減衰弁V3のように、ピストン保持部材24の保持軸24aの外周に切欠80を設け、この切欠80で絞りを形成してパイロット通路PPの一部とするようにしてもよい。なお、図5では、収容部L内に収容される電磁弁SVの図示を省略している。この場合、切欠80は、ナット27に設けた溝27aによって圧側室14に連通されるとともに、背圧室31に通じている。そして、減衰弁V3では、図4に示した減衰弁V2に設けていた絞りOを廃止しており、縦孔24dと切欠80とは連通されず、互いに独立して圧側室14に連通されている。よって、この例では、他方側共通路は設けられておらず、バイパス路BPとパイロット通路PPは、独立して圧側室14に連通されている。この減衰弁V3では、切欠80が絞りとしても機能しており、ピストン保持部材24の保持軸24aに横方向に貫く絞りOを設けずに済むので、その分、保持軸24aの全長を短縮できる。よって、減衰弁V3の全長を短縮化でき、緩衝器のストローク長を確保しやすくなるメリットがある。
また、本実施例では、一方室を伸側室13とし、他方室を圧側室14としているが、逆に、一方室を圧側室14とし、他方室を伸側室13として、第一減衰弁部、第二減衰弁部VC、電磁弁SVを適用してもよい。つまり、バイパス路BPの開閉によって圧側減衰力を調整し、第二減衰弁部VCの開弁圧の調整によって伸側減衰力の調整を行ってもよい。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されない。