以下、図に基づいて本発明を説明する。本発明の一実施の形態における緩衝装置D1は、図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2に区画するピストン2と、伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路3と、伸側室R1と圧側室R2に連通される圧力室R3と、圧力室R3内に移動自在に挿入されて圧力室R3内を伸側室R1に連通される伸側圧力室7と圧側室R2に連通される圧側圧力室8とに区画するフリーピストン9と、減衰通路3に設けられて通過する液体の流れに与える抵抗を変更可能な減衰力調整部4とを備えて構成されている。
また、緩衝装置D1は、シリンダ1内に移動自在に挿通されたピストンロッド11を備えており、ピストンロッド11の一端11aはピストン2に連結されるとともに、他端である上端は、シリンダ1の上端を封止する環状のロッドガイド12によって摺動自在に軸支されて外方へ突出されている。さらに、緩衝装置D1は、シリンダ1の外周を覆ってシリンダ1との間にリザーバRとを形成する外筒13を備えており、外筒13の上端は、上記したロッドガイド12によって封止されている。そして、伸側室R1、圧側室R2、圧力室R3内には作動油等の液体が充満され、リザーバRには上記液体の他に気体が封入され、ピストンロッド11とシリンダ1との間はシール部材14でシールされ、シリンダ1内が液密状態とされている。
さらに、シリンダ1の下端には、バルブケース15が嵌合されており、このバルブケース15には、圧側室R2からリザーバRへ向かう液体の通過のみを許容して当該液体の流れに抵抗を与えるベースバルブ16と、リザーバRから圧側室R2へ向かう液体の通過のみを許容する吸込通路17とが設けられている。なお、ベースバルブ16は可変絞り弁とされているが、絞り弁やリーフバルブ等の減衰バルブとして機能するバルブを用いることができる。
そして、緩衝装置D1は、たとえば、ピストンロッド11の図1中上端を車両における車体に取り付け、外筒13の図1中下端を車両における車輪を支持する車軸等に取り付けて、車両の車体と車輪との間に介装され、減衰力を発揮して車両における車体と車輪の振動を抑制する。なお、ピストンロッド11を車両における車軸に取り付け、外筒13を車両における車体に取り付けることも当然可能である。緩衝装置D1は、このように車両における車体と車軸との間に介装され、伸縮する際に発生する減衰力で車体の振動を抑制する。なお、伸側室R1とは、車体と車軸が離間して緩衝装置D1が伸長作動する際に圧縮される室のことであり、圧側室R2とは、車体と車軸が接近して緩衝装置Dが収縮作動する際に圧縮される室のことである。
この緩衝装置D1にあっては、伸側室R1にのみピストンロッド11が挿通される片ロッド型であるので、ピストンロッド11がシリンダ1内に出入りする際に、シリンダ1内で過不足となる液体をベースバルブ16或いは吸込通路17を介してリザーバRとやり取りすることで、体積補償を行う復筒型の緩衝装置とされているが、バルブケース15を設ける代わりに、シリンダ1内の下方にシリンダ1の内周に摺接して移動可能であって圧側室R2の下方に気体室を区画する摺動隔壁を設けて単筒型の緩衝装置としてもよい。この場合、緩衝装置Dの伸縮に伴ってシリンダ1内に出入りするピストンロッド11の体積は、上記した気体室内の気体の体積が膨張あるいは収縮し摺動隔壁がシリンダ1内を上下方向に移動することによって補償される。
なお、リザーバRについては、外筒13を設けることでシリンダ1と外筒13との間に形成するほか、別個にタンクを設けて当該タンク内にリザーバを形成するようにしてもよい。また、緩衝装置D1を片ロッド型ではなく、両ロッド型とすることも可能である。
また、ピストン2には、伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路3が設けられている。この減衰通路3は、伸側室R1と圧側室R2とを並列して連通する伸側減衰通路3aおよび圧側減衰通路3bとを備えている。そして、この伸側減衰通路3aには、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに与える抵抗を変更可能なソレノイドバルブでなる伸側減衰力調整バルブEVが設けられ、他方の圧側減衰通路3bには、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れに与える抵抗を変更可能なソレノイドバルブでなる圧側減衰力調整バルブCVとが設けられており、これら伸側減衰力調整バルブEVと圧側減衰力調整バルブCVとで減衰力調整部4を構成している。
伸側減衰力調整バルブEVは、伸側減衰通路3aの途中に設けた弁体20aと、弁体20aより上流側である伸側室R1の圧力を当該弁体20aに開弁方向へ押圧するように作用させるパイロット通路20bと、弁体20aを閉弁方向に押圧する押圧力を発揮するとともに当該押圧力を可変にする押圧装置20cとを備えて構成されている。押圧装置20cは、図示したところでは、ソレノイドで弁体20aを閉弁方向に押圧する背圧を制御するようになっており、外部からソレノイドへ供給する電流供給量に応じて上記圧力を変化させてして伸側減衰力調整バルブEVの開弁圧を制御することができるようになっている。このように、伸側減衰力調整バルブEVは、図示したところでは、液圧パイロット型電磁リリーフ弁とされているが、押圧装置20cは、ソレノイドで弁体20aに閉弁方向に作用させる背圧を制御する構成以外にも、ソレノイド等のアクチュエータのみで弁体20aを押圧するものであってもよいし、これら以外にも供給される電流量や電圧力に応じて押圧力を変化させることができるものであってよい。したがって、伸側減衰力調整バルブEVは、たとえば、ソレノイドの推力で開弁圧を制御する比例電磁リリーフ弁(ソレノイドバルブ)等の他の減衰力変更可能なバルブとされてもよい。
圧側減衰力調整バルブCVも、伸側減衰力調整バルブEVと同様に、圧側減衰通路3bの途中に設けた弁体21aと、弁体21aより上流側である圧側室R2の圧力を当該弁体21aに開弁方向へ押圧するように作用させるパイロット通路21bと、弁体21aを閉弁方向に押圧する押圧力を発揮するとともに当該押圧力を可変にする押圧装置21cとを備えて構成される液圧パイロット型電磁リリーフ弁とされている。圧側減衰力調整バルブCVも、比例電磁リリーフ弁(ソレノイドバルブ)等の他の減衰力変更可能なバルブとされてもよい。
したがって、この緩衝装置D1の場合、伸長作動する際には、ピストン2が図1中上方へ移動して伸側室R1が圧縮され、伸側室R1内の液体が伸側減衰通路3aを介して圧側室R2へ移動する。この伸長作動時には、ピストンロッド11がシリンダ1内から退出するためシリンダ1内でロッド退出体積分の液体が不足するため、不足分の液体がリザーバRから吸込通路17を介してシリンダ1へ供給される。緩衝装置D1は、伸側減衰通路3aを通過する液体の流れに対して伸側減衰力調整バルブEVで抵抗を与えることによって、伸側室R1内の圧力を上昇させて伸長作動を抑制する伸側減衰力を発揮する。
反対に、緩衝装置D1が収縮作動する際には、ピストン2が図1中下方へ移動して圧側室R2が圧縮され、圧側室R2内の液体が圧側減衰通路3bを介して伸側室R1へ移動するとともに、この収縮作動時には、ピストンロッド11がシリンダ1内に侵入するためシリンダ1内でロッド侵入体積分の液体が過剰となり、過剰分の液体がシリンダ1から押し出されてベースバルブ16を介してリザーバRへ排出される。緩衝装置D1は、圧側減衰通路3bを通過する液体の流れに対して圧側減衰力調整バルブCVで抵抗を与えるとともに、ベースバルブ16を通過する液体の流れに対して当該ベースバルブ16で抵抗を与えることで、圧側室R2内の圧力を上昇させるとともに圧側室R2と伸側室R1の圧力に差を生じせしめて、収縮作動を抑制する圧側減衰力を発揮する。
つづいて、圧力室R3は、この実施の形態の場合、ピストン2の下方に連結されて圧側室R2へ臨むハウジング18内に設けた中空部18aによって形成されている。また、圧力室R3内は、中空部18aの側壁に摺接して中空部18a内を図1中上下方向となる軸方向に摺動可能とされるフリーピストン9で図1中上方の伸側圧力室7と図1中下方の圧側圧力室8とに区画される。すなわち、フリーピストン9は、ハウジング18内に摺動自在に挿入されており、ハウジング18に対して図1中では上下方向となる軸方向に変位することができるようになっている。
ハウジング18内は、図示したところでは、フリーピストン9によって上下に伸側圧力室7、圧側圧力室8に区画され、緩衝装置D1が伸縮して抑制する振動方向とフリーピストン9の移動方向が一致しており、緩衝装置D1全体が図1中上下方向に振動することによって、フリーピストン9のハウジング18に対する上下方向の振動が励起されることを避けたい場合には、フリーピストン9の移動方向を緩衝装置D1の伸縮方向と直交する方向、すなわち、図1中左右方向に設定し、伸側圧力室7と圧側圧力室8を図1中横方向に配置するようにすることもできる。
また、当該ハウジング18には、圧側室R2と圧側圧力室8とを連通する圧側流路6が設けられており、さらに、伸側室R1と伸側圧力室7は、ピストンロッド11の伸側室R1に臨む側部から開口してピストン2およびハウジング18を貫通する伸側流路5を介して連通されている。このように、伸側室R1と伸側圧力室7とが伸側流路5によって連通され、圧側室R2と圧側圧力室8とが圧側流路6によって連通され、伸側圧力室7と圧側圧力室8の容積はフリーピストン9がハウジング18内で変位することによって変化するので、この緩衝装置D1にあっては、フリーピストン9が圧力室R3内で移動することで、上記した伸側流路5、伸側圧力室7、圧側圧力室8および圧側流路6を介して伸側室R1と圧側室R2との液体のやり取りが可能となるため、伸側流路5、伸側圧力室7、圧側圧力室8および圧側流路6が見掛け上、伸側室R1と圧側室R2を連通する流路を形成しており、伸側室R1と圧側室R2は、減衰通路3を構成する伸側減衰通路3aと圧側減衰通路3bの他にも上記した見掛け上の流路によっても連通されることになる。
なお、伸側流路5或いは圧側流路6に、絞りやバルブ等を設けて、これを通過する流体の流れに抵抗を与えるようにしてもよく、フリーピストン9の伸側室R1と圧側室R2の差圧に対する移動特性や当該差圧の交番周波数に対する移動特性を調整することができる。また、フリーピストン9が中立位置から変位すればするほど開口面積を小さくする可変絞りを設けて、フリーピストン9が両ストロークエンドへ近づくにつれてフリーピストン9の変位速度を減ずることができ、フリーピストン9がハウジング18に勢い良く衝突して大きな打音が発生してしまうことを防止することができる。
つづいて、緩衝装置D1の作動について説明する。緩衝装置D1がシリンダ1に対してピストン2が図1中上方へ移動する伸長作動を呈すると、ピストン2によって伸側室R1が圧縮され、圧側室R2が拡大されるので、伸側室R1の圧力が高まると同時に、圧側室R2の圧力が低下して両者に差圧が生じる。すると、伸側室R1の液体は、伸側減衰通路3aを通じて圧側室R2へ移動する。また、伸側室R1の圧力が上昇するため、この圧力が伸側流路5を介して伸側圧力室7に伝播してフリーピストン9が圧力室R3内で図1中下方へ移動し、伸側室R1の液体はこの伸側圧力室7へ流入し、また、圧側圧力室8内の液体はこのフリーピストン9の下方への移動によって圧側流路6を介して圧側室R2へ押し出されることになる。よって、伸側室R1内の液体は、伸側減衰通路3aの他にも、見掛け上、圧力室R3を介して圧側室R2へ移動することになる。
逆に、緩衝装置D1がシリンダ1に対してピストン2が図1中下方へ移動する収縮作動を呈すると、ピストン2によって圧側室R2が圧縮され、伸側室R1が拡大されるので、圧側室R2の圧力が高まると同時に、伸側室R1の圧力が低下して両者に差圧が生じる。すると、圧側室R2の液体は、圧側減衰通路3bを通じて伸側室R1へ移動し、ベースバルブ16を通じてリザーバRへ移動する。また、圧側室R2の圧力が上昇するため、この圧力が圧側流路6を介して圧側圧力室8に伝播してフリーピストン9が圧力室R3内で図1中上方へ移動し、圧側室R2の液体はこの圧側圧力室8へ流入し、また、伸側圧力室7内の液体はこのフリーピストン9の上方への移動によって伸側流路5を介して伸側室R1へ押し出されることになる。よって、圧側室R2内の液体は、圧側減衰通路3bの他にも、見掛け上、圧力室R3を介して伸側室R1へ移動することになる。
ここで、緩衝装置D1に入力される振動の周波数、すなわち、緩衝装置D1の伸縮の振動の周波数が低周波であっても高周波であっても、緩衝装置D1の伸長作動におけるピストン速度が同じである場合、低周波振動入力時の緩衝装置D1の振幅は、高周波振動入力時の緩衝装置D1の振幅よりも大きくなる。よって、低周波振動入力時であって緩衝装置D1が伸長作動を呈している場合、フリーピストン9の変位量も大きくなって、フリーピストン9が圧側圧力室8を最圧縮するまで変位すると、それ以上、フリーピストン9は圧側圧力室8を圧縮する方向へ変位できなくなり、圧力室R3が見掛け上の流路として機能できなくなり、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体は全て減衰力調整部4としての伸側減衰力調整バルブEVを通過するようになって、緩衝装置D1は高い減衰力を発揮する。同じく、入力周波数が低い場合、収縮作動時であれば、フリーピストン9の変位量が大きくなるため、フリーピストン9が伸側圧力室7を最圧縮するまで変位すると、それ以上、フリーピストン9は伸側圧力室7を圧縮する方向へ変位できなくなり、圧力室R3が見掛け上の流路として機能できなくなり、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体は全て減衰力調整部4としての圧側減衰力調整バルブCVを通過するようになって、緩衝装置D1は高い減衰力を発揮する。つまり、緩衝装置D1が低い振動周波数で伸縮する場合には、緩衝装置D1は高い減衰力を発揮する。
対して、緩衝装置D1への入力周波数が高い場合、入力される振動の振幅が小さくなり、ピストン2の振幅も小さい。この場合、伸側室R1と圧側室R2とでやり取りされる液体の流量も少なく、フリーピストン9の変位量も小さい。この場合、フリーピストン9は、変位量が少ないため、伸側圧力室7或いは圧側圧力室8を最圧縮するまで変位せず、フリーピストン9の変位が妨げられることがないので、圧力室R3が見掛け上の流路として機能して、伸側室R1と圧側室R2とでやり取りされる液体の流量の一部または全部は減衰力調整部4としての伸側減衰力調整バルブEVと圧側減衰力調整バルブCVを迂回することができ、緩衝装置D1が発生する減衰力は低くなる。
このように、緩衝装置D1にあっては、減衰力の変化を入力振動の振幅に依存させることができ、振動の振幅が大きい車両のばね上部材の共振周波数帯の低周波振動の入力に対しては高い減衰力を発生することで車体(ばね上部材)の姿勢を安定させて、車両旋回時に搭乗者に不安を感じさせることを防止できるとともに、振動の振幅が小さい車両のばね下部材の共振周波数帯の高周波振動が入力されると必ず低い減衰力を発生させて車輪側(ばね下部材側)の振動の車体側(ばね上部材側)への伝達を絶縁して、車両における乗り心地を良好なものとすることができる。
また、上述したように緩衝装置D1は、減衰力調整部4が液体の流れに与える抵抗を調整することによって、減衰力を調整することができる。つまり、この緩衝装置D1にあっては、減衰力調整部4によって減衰力調整を行いつつも、高周波数の振動に対しては、減衰力を低減することができるのである。
したがって、本発明の緩衝装置D1によれば、比較的低い周波数帯の振動に対しては、減衰力調整部4で減衰力調整することで車体振動を制振することができるだけでなく、減衰力調整部4によっては抑制できない高周波振動に対してはメカニカルに低減衰力を発揮することができ、車輪側からの振動を絶縁して車体振動を効果的に抑制することができ、車両における乗り心地を飛躍的に向上することができるのである。
具体的に、伸側減衰力調整バルブEV、圧側減衰力調整バルブCVおよび圧力室R3を緩衝装置D1に設けるには、たとえば、図2に示すように、ピストン22を筒状として、内部に、上記した伸側減衰力調整バルブEV、圧側減衰力調整バルブCVおよび圧力室R3を収容するようにすればよい。
ピストン22は、外周にシリンダ1の内周に摺接するピストンリングPrを装着しており、シリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画する。また、ピストン22の内方には、図2中上から順に、伸側弁座部材23と、伸側弁体ホルダ24と、伸側減衰力調整バルブEVおよび圧側減衰力調整バルブCVの押圧装置を収容するソレノイドホルダ25と、圧側弁体ホルダ26と、圧側弁座部材27と、圧力室R3を形成するハウジング28とが収容されている。
伸側弁座部材23は、プレート状であって、中央に孔23aが設けられており、孔23aの図2中下端の縁で環状弁座23bを形成している。また、この伸側弁座部材23には、上下を貫く貫通孔23cと、外周に設けた切欠溝23dが設けられている。
伸側弁体ホルダ24は、筒状であって、内部に伸側減衰力調整バルブEVの弁体29と弁体29を附勢するばね30とが収容されており、伸側弁座部材23に積層すると、弁体29がばね30によって環状弁座23bに押し付けられるようになっている。また、伸側弁体ホルダ24には、上下を貫いて伸側弁座部材23に設けた貫通孔23cに通じる貫通孔24aと、外周に設けられて伸側弁座部材23に設けた切欠溝23dに通じる切欠溝24bと、図2中下端から開口して内周へ通じる通路24cとを備えている。また、伸側弁体ホルダ24の内周は、上方から下方へ向かうほど二段階に小径となるようになっており、大径部24d、中径部24e、小径部24fを備え、通路24cは大径部24dに連通されている。
弁体29の先端は、ポペット型とされていて最大径が孔23aよりも大径であって、環状弁座23bに着座すると孔23aを閉塞することができるようになっている。さらに、弁体29の後端は筒状とされており、外周が伸側弁体ホルダ24の中径部24eの内周に摺接していて、弁体29は伸側弁体ホルダ24にガイドされて図2中上下方向へ軸振れなく移動することができるようになっている。また、弁体29の後端の内部に、ばね30が挿入されており、ばね30は伸側弁体ホルダ24の小径部24fと中径部24eとの間の段部と弁体29との間に介装されて弁体29を伸側弁座部材23へ向けて附勢している。このように、弁体29を伸側弁体ホルダ24内に組み込むと、弁体29と伸側弁体ホルダ24とで弁体29の背面側となる図2中下方に背圧室31が形成される。
そして、ピストン22には、伸側室R1を孔23a、貫通孔23cおよび切欠溝23dに通じさせる透孔22aが設けられており、弁体29には、ばね30に対抗して当該弁体29を環状弁座23bから離間させる方向である図2中下方へ押圧するように伸側室R1の圧力が作用するようになっている。また、背圧室31は弁体29に設けたオリフィス29aを介して伸側室R1に連通される。つまり、弁体29の背面側の背圧室31の圧力による弁体29を上方へ押圧する力とばね30の附勢力の合力に対して伸側室R1の圧力で弁体29を下方へ押圧する力が打ち勝つと弁体29が環状弁座23bから離間して伸側減衰力調整バルブEVが開弁するようになっている。
他方、圧側弁体ホルダ26の下方に積層される圧側弁座部材27は、プレート状であって、中央に孔27aが設けられており、孔27aの図2中上端の縁で環状弁座27bを形成している。また、この圧側弁座部材27には、上下を貫く貫通孔27cと、外周に設けた切欠溝27dが設けられている。
圧側弁体ホルダ26は、筒状であって、内部に圧側減衰力調整バルブCVの弁体32と弁体32を附勢するばね33とが収容されており、圧側弁座部材27に積層すると、弁体32がばね33によって環状弁座27bに押し付けられるようになっている。また、圧側弁体ホルダ26には、上下を貫いて圧側弁座部材27に設けた貫通孔27cに通じる貫通孔26aと、外周に設けられて圧側弁座部材27に設けた切欠溝27dに通じる切欠溝26bと、図2中上端から開口して内周へ通じる通路26cとを備えている。また、圧側弁体ホルダ26の内周は、下方から上方へ向かうほど二段階に小径となるようになっており、大径部26d、中径部26e、小径部26fを備え、通路26cは大径部26dに連通されている。
弁体32の先端は、ポペット型とされていて最大径が孔27aよりも大径であって、環状弁座27bに着座すると孔27aを閉塞することができるようになっている。さらに、弁体32の後端は筒状とされており、外周が圧側弁体ホルダ26の中径部26eの内周に摺接していて、弁体32は圧側弁体ホルダ26にガイドされて図2中上下方向へ軸振れなく移動することができるようになっている。また、弁体32の後端の内部に、ばね33が挿入されており、ばね33は圧側弁体ホルダ26の小径部26fと中径部26eとの間の段部と弁体32との間に介装されて弁体32を圧側弁座部材27へ向けて附勢している。このように、弁体32を圧側弁体ホルダ26内に組み込むと、弁体32と圧側弁体ホルダ26とで弁体32の背面側となる図2中上方に背圧室34が形成される。
そして、圧側弁座部材27の下方に積層されるハウジング28には、圧側室R2を孔27aおよび貫通孔27cに通じさせる通路50が設けられており、弁体32には、ばね33に対抗して当該弁体32を環状弁座27bから離間させる方向である図2中上方へ押圧するように圧側室R2の圧力が作用するようになっている。また、背圧室34は弁体32に設けたオリフィス32aを介して圧側室R2に連通される。つまり、弁体32の背面側の背圧室34の圧力による弁体32を下方へ押圧する力とばね33の附勢力の合力に対して圧側室R2の圧力で弁体32を上方へ押圧する力が打ち勝つと弁体32が環状弁座27bから離間して圧側減衰力調整バルブCVが開弁するようになっている。
つづいて、ソレノイドホルダ25は、筒状であって、内方に、伸側減衰力調整バルブEVおよび圧側減衰力調整バルブCVの押圧装置を収容している。また、ソレノイドホルダ25は、上下に貫かれた貫通孔25a,25bと、外周に設けた切欠溝25cとを備えている。ソレノイドホルダ25を伸側弁体ホルダ24と圧側弁体ホルダ26との間に介装すると、貫通孔24aおよび通路26cに貫通孔25aが、通路24cおよび貫通孔26aに貫通孔25bが、切欠溝24bおよび切欠溝26bに切欠溝25cがそれぞれ対向して連通されるようになっている。
よって、減衰通路の一部を構成する伸側減衰通路は、透孔22a、孔23a、通路24c、貫通孔25b、貫通孔26a、貫通孔27cおよび通路50によって形成されており、同じく減衰通路の一部を構成する圧側減衰通路は、通路50、孔27a、通路26c、貫通孔25a、貫通孔24a、貫通孔23cおよび透孔22aによって形成されている。
ソレノイドホルダ25内には、伸側減衰力調整バルブEVの開弁圧を調整するソレノイド35と、圧側減衰力調整バルブCVの開弁圧を調整するソレノイド36と、ソレノイド35内に配置されるとともにソレノイドホルダ25内に摺動自在に挿入された可動鉄心38と、可動鉄心38を図2中上方へ附勢するばね39と、伸側弁体ホルダ24の下端の開口の内縁に離着座する背圧制御弁40と、可動鉄心38と背圧制御弁40との間に介装されるばね41と、ソレノイド36内に配置されるとともにソレノイドホルダ25内に摺動自在に挿入された可動鉄心42と、可動鉄心42を図2中下方へ附勢するばね43と、圧側弁体ホルダ26の下端の開口の内縁に離着座する背圧制御弁44と、可動鉄心42と背圧制御弁44との間に介装されるばね45とを備えて構成されている。
そして、ソレノイド35へ電流を与えて可動鉄心38を図2中下方側へ吸引する力を制御することで、背圧制御弁40にばね39,41が与える附勢力を強弱させることができる。背圧制御弁40は、伸側弁体ホルダ24の開口端に着座した状態では、弁体29の背面側の背圧室31を閉鎖し、弁体29を環状弁座23bへ着座した状態に維持する。背圧室31は、オリフィス29aを介して伸側室R1へ連通されて、伸側室R1の圧力が減圧されて伝播し、背圧室31内の圧力によって押圧されて背圧制御弁40が開弁すると背圧室31内の圧力は背圧制御弁40の開弁圧に制御される。よって、ソレノイド35へ与える電流量を調整することで、背圧制御弁40の開弁圧が制御され、背圧室31内の圧力も制御される。このように、伸側減衰力調整バルブEVにおける押圧装置は、ソレノイド35、可動鉄心38、ばね39,41、背圧制御弁40、背圧室31およびオリフィス29aで構成されている。
弁体29は、伸側室R1の圧力の作用による弁体29を環状弁座23bから遠ざけようとする力が、背圧室31内の圧力の作用による弁体29を環状弁座23bへ向けて押圧する力とばね30の附勢力に打ち勝つと開弁することから、ソレノイド35へ与える電流量を調整することで伸側減衰力調整バルブEVにおける弁体29の開弁圧を制御することができる。背圧制御弁40を通過した液体は、排出口46を介して貫通孔25bに通じており、伸側減衰通路の弁体29よりも下流を介して圧側室R2へ排出される。
また、ソレノイド36へ電流を与えて可動鉄心42を図2中上方側へ吸引する力を制御することで、背圧制御弁44にばね43,45が与える附勢力を強弱させることができる。背圧制御弁44は、圧側弁体ホルダ26の開口端に着座した状態では、弁体32の背面側の背圧室34を閉鎖し、弁体32を環状弁座27bへ着座した状態に維持する。背圧室34は、オリフィス32aを介して圧側室R2へ連通されて、圧側室R2の圧力が減圧されて伝播し、背圧室34内の圧力によって押圧されて背圧制御弁44が開弁すると背圧室34内の圧力は背圧制御弁44の開弁圧に制御される。よって、ソレノイド36へ与える電流量を調整することで、背圧制御弁44の開弁圧が制御され、背圧室34内の圧力も制御される。このように、圧側減衰力調整バルブCVにおける押圧装置は、ソレノイド36、可動鉄心42、ばね43,45、背圧制御弁44、背圧室34およびオリフィス32aで構成されている。
弁体32は、圧側室R2の圧力の作用による弁体32を環状弁座27bから遠ざけようとする力が、背圧室34内の圧力の作用による弁体32を環状弁座27bへ向けて押圧する力とばね33の附勢力に打ち勝つと開弁することから、ソレノイド36へ与える電流量を調整することで圧側減衰力調整バルブCVにおける弁体32の開弁圧を制御することができる。背圧制御弁44を通過した液体は、排出口47を介して貫通孔25aに通じており、圧側減衰通路の弁体32よりも下流を介して伸側室R1へ排出される。
さらに、圧側弁座部材27の下方には、圧力室R3を形成するハウジング28が積層されてピストン22内に収容される。ハウジング28は、下端から開口する中空部48aを備えたハウジング本体48と、ハウジング本体48に積層されて中空部48aの下端開口端を閉塞する蓋49とを備えている。ハウジング本体48には、図2中上端側に凹部48bが設けられるとともに、この凹部48bの底部から開口して中空部48aに通じる通路48cが設けられている。また、蓋49の図2中下端から開口して凹部48bに通じる通路50が設けられている。凹部48bは、圧側弁座部材27の孔27aおよび貫通孔27cに対向しており、通路50によって圧側室R2が孔27aおよび貫通孔27cに連通されている。さらに、ハウジング本体48の外周には、上下方向に切欠溝48dが設けられるとともに、蓋49の図2中上端に外周から径方向に沿って設けられて中空部48aに通じる切欠溝49aが設けられており、切欠溝48dと切欠溝49aとが互いに連通されている。切欠溝48dは、圧側弁座部材27に設けた切欠溝27dに対向することで連通され、さらには、切欠溝26b、切欠溝25c、切欠溝24b、切欠溝23dおよび透孔22aを介して伸側室R1に連通される。また、中空部48aは、通路48c、凹部48bおよび通路50を介して圧側室R2に連通される。
上記のように構成されたハウジング28の中空部48aは、圧力室R3を形成している。そして、この圧力室R3内には、フリーピストン9が図2中上下方向へ摺動自在に挿入され、圧力室R3内が伸側室R1に連通されるフリーピストン9より図2中下方側の伸側圧力室7と圧側室R2に連通されるフリーピストン9より図2中上方側の圧側圧力室8とに区画される。
上記したように、ピストン22の内方に、上述した各部材が組み付けられた伸側弁座部材23、伸側弁体ホルダ24、ソレノイドホルダ25、圧側弁体ホルダ26、圧側弁座部材27およびハウジング28を積層して収容し、ピストン22の図2中下端を加締めることで、伸側弁座部材23、伸側弁体ホルダ24、ソレノイドホルダ25、圧側弁体ホルダ26、圧側弁座部材27およびハウジング28がピストン22に固定される。すると、伸側減衰通路と伸側減衰力調整バルブEV、圧側減衰通路と圧側減衰力調整バルブCVが形成され、緩衝装置D1が発生する伸側減衰力と圧側減衰力を調整することができる。また、圧力室R3内に収容したフリーピストン9が上下動することで見掛け上の流路を介して伸側室R1と圧側室R2とで液体のやり取りが行われる。このように各部を構成することで具体的に緩衝装置D1に、減衰力調整部である伸側減衰力調整バルブEV、圧側減衰力調整バルブCVと、圧力室R3およびフリーピストン9を組み込むことができ、具体的な緩衝装置D1にあっても、比較的低い周波数帯の振動に対しては、減衰力調整部で減衰力調整することで車体振動を制振することができるだけでなく、減衰力調整部によっては抑制できない高周波振動に対してはメカニカルに低減衰力を発揮することができ、車輪側からの振動を絶縁して車体振動を効果的に抑制することができ、車両における乗り心地を飛躍的に向上することができる。
また、図3に示した緩衝装置D2のように、緩衝装置D1の構成に加えて、減衰通路3に並列して伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側バイパス路BEと圧側バイパス路BCとを設けるとともに、伸側バイパス路BEに伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する伸側逆止弁51と液体の流れに抵抗を与える伸側絞り52とを設け、圧側バイパス路BCに圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する圧側逆止弁53と液体の流れに抵抗を与える圧側絞り54を設けてもよい。このようにすることで、緩衝装置D2の伸縮速度が低速域にある際における緩衝装置D2の伸側減衰力と圧側減衰力のチューニング自由度を向上させることができる。伸側バイパス路BEと伸側逆止弁51と伸側絞り52を設けることで緩衝装置D2の伸側減衰力のチューニング自由度を向上させることができ、圧側バイパス路BCと圧側逆止弁53と圧側絞り54を設けることで緩衝装置D2の圧側減衰力のチューニング自由度を向上させることができるので、伸側減衰力のチューニング自由度を向上させる上では、伸側バイパス路BEと伸側逆止弁51と伸側絞り52のみを設けるようにすればよく、圧側減衰力のチューニング自由度を向上させるうえでは、圧側バイパス路BCと圧側逆止弁53と圧側絞り54のみを設けるようにすればよい。
また、図4に示した緩衝装置D3のように、緩衝装置D1の減衰力調整部4に代えて、一つのパイロット電磁リリーフ弁で構成された減衰力調整部35に変更することもできる。
この緩衝装置D3では、緩衝装置D1の伸側減衰通路3aと圧側減衰通路3bとでなる減衰通路3に代えて単一の減衰通路55を備えており、この減衰通路55の途中に減衰力調整部56を備えている。減衰力調整部56は、減衰通路55の途中に設けた弁体56aと、弁体56aの両側の圧力を当該弁体56aに開弁方向へ押圧するように作用させるパイロット通路56b,56cと、弁体56aを閉弁方向に押圧する押圧力を発揮するとともに当該押圧力を可変にする押圧装置56dとを備えて構成されている。押圧装置56dは、図示したところでは、ソレノイドで弁体56aを閉弁方向に押圧する背圧を制御するようになっており、外部からソレノイドへ供給する電流供給量に応じて上記圧力を変化させてして減衰力調整部56の開弁圧を制御することができるようになっている。
また、図5に示した緩衝装置D4のように、減衰通路55に減衰力調整部56を直列配置した緩衝装置D3に対して、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容するとともに当該流れに抵抗を与える伸側サブバルブ57と、伸側サブバルブ57に並列されて圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容するとともに当該流れに抵抗を与える圧側サブバルブ58とを設けることもできる。この場合、緩衝装置D4の伸側減衰力の特性は、伸側サブバルブ57による減衰力に減衰力調整部56による可変減衰力を重畳させた特性となり、圧側減衰力の特性についても同様に、圧側サブバルブ58による減衰力に減衰力調整部56による可変減衰力を重畳させた特性となり、減衰力のチューニング自由度を向上させることができる。なお、この実施の形態では、伸側サブバルブ57と圧側サブバルブ58に並列して絞り弁59を設けており、絞り弁59については廃止してもよいが、絞り弁59を設けておくことによってピストン速度が低い領域における緩衝装置D4の減衰特性を車両に適するように設定することができる。
具体的に、緩衝装置D4を実現するには、たとえば、図6に示すように構成すればよい。詳しくは、緩衝装置D4では、ピストンロッド11の下端に、バルブハウジング60を設けて、このバルブハウジング60内に減衰力調整部を収容するとともに、ピストン61を連結するようにしている。
緩衝装置D4は、図6に示すように、外周にソレノイド62を備えた筒状のソレノイドコア63と、ソレノイドコア63の図6中下端に嵌合される環状のバルブディスク64と、伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路65と、ソレノイドコア63内に摺動自在に挿入されて減衰通路65を開閉する筒状の弁体66と、弁体66内を通じて伸側室R1と圧側室R2とを連通するパイロット流路67と、弁体66内に移動自在に挿入されてパイロット流路67を開閉する伸側パイロットバルブ68と圧側パイロットバルブ69と、パイロット流路67の途中であって伸側パイロットバルブ68と圧側パイロットバルブ69よりも伸側室側に設けられて伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに対してはオリフィスとして機能するとともに逆向きの流れに対してはパイロット流路67を開放する片効オリフィス70と、同じくパイロット流路67の途中であって伸側パイロットバルブ68と圧側パイロットバルブ69よりも圧側室側に設けられて圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れに対してはオリフィスとして機能するとともに逆向きの流れに対してはパイロット流路67を開放する片効オリフィス71とを備え、これら部材が減衰力調整部を構成してバルブハウジング60内に収容されている。
また、ピストン61は、筒状であって途中に内部を仕切る蓋61aを備え、バルブハウジング60の下端内周に螺着されていて、バルブハウジング60内に収容されるソレノイド62、ソレノイドコア63、バルブディスク64、弁体66、伸側パイロットバルブ68、圧側パイロットバルブ69、片効オリフィス70および片効オリフィス71をバルブハウジング60に固定している。
さらに、ピストン61内には、ポート72aを備えたディスク72が設けられており、このポート72aに内外両開きのリーフバルブ73が設けられている。ポート72aは、ピストン61の圧側室R2に面する側方から内方であって蓋61aよりも図6中上方へ通じる孔61bを介して圧側室R2に通じるほか、ソレノイドコア63の下方側に設けた孔63aと、バルブハウジング60の側方に設けた孔60aを介して伸側室R1に連通されている。したがって、この場合、減衰通路65は、孔61b、ポート72a、孔63aおよび孔60aによって形成されており、減衰力調整部を構成するバルブディスク64と弁体66とでこの減衰通路65を開閉するようになっている。
リーフバルブ73は、ポート72aを伸側室R1から圧側室R2へ向けて液体が通過する場合には、内周側を図6中下方に撓ませてポート72aを開放するとともに通過する液体の流れに抵抗を与え、逆に、ポート72aを圧側室R2から伸側室R1へ向けて液体が通過する場合には、外周側を図6中上方に撓ませてポート72aを開放するとともに通過する液体の流れに抵抗を与えるようになっている。したがって、このリーフバルブ73は、減衰通路65に設けた減衰力調整部に対して直列されており、一つで伸側サブバルブとしても圧側サブバルブとしても機能するドカルボンバルブとされている。なお、ポートを二つ以上設けて個別に伸側サブバルブと圧側サブバルブを設けるようにしてもよい。
さらに、ピストン61の下端開口端は、プレート74によって閉塞されており、ピストン61の内方であって蓋61aよりも下方側で圧力室R3が形成されている。また、プレート74には、圧力室R3に連通される凹部74aが設けられており、この凹部74aは、ピストン61の伸側室R1に臨む側方から開口する通路61cに連通されている。蓋61aには、孔61dが設けられており、孔61dおよび孔61bを通じて圧力室R3が圧側室R2に連通されている。したがって、圧力室R3は、伸側室R1と圧側室R2とに連通されている。そして、圧力室R3内には、フリーピストン9が上下方向へ摺動自在に挿入されており、圧力室R3は、フリーピストン9より下方側の伸側圧力室7とフリーピストン9より上方側の圧側圧力室8とに区画されている。
伸側パイロットバルブ68および圧側パイロットバルブ69は、共に筒状であって、圧側パイロットバルブ69が弁体66の内周に設けた弁座66aに離着座してパイロット流路67を開閉するとともに、伸側パイロットバルブ68は、圧側パイロットバルブ69の内周に設けた弁座69aに離着座してパイロット流路67を開閉するようになっている。パイロット流路67の途中に設けた伸側パイロットバルブ68は、緩衝装置D4の伸長作動時にのみ開弁し、収縮作動時には開弁しないようになっており、圧側パイロットバルブ69は、緩衝装置D4の収縮作動時にのみ開弁し、伸長作動時には開弁しないようになっている。
そして、伸側パイロットバルブ68および圧側パイロットバルブ69は、ばね75によって附勢されており、常時、パイロット流路67を閉塞する方向へ附勢されており、パイロット流路67を閉塞した状態では、弁体66がバルブディスク64に着座した状態に維持されて減衰力調整部は閉弁状態となり、伸側パイロットバルブ68および圧側パイロットバルブ69が開弁すると、パイロット流路67の圧力が弁体66に背圧として作用して弁体66を閉弁方向へ附勢するようになっていて、この附勢力に、緩衝装置D4の伸長作動時には伸側室R1の圧力による弁体66を押し上げる力が打ち勝つと弁体66が開弁し、緩衝装置D4の収縮作動時には圧側室R2の圧力による弁体66を押し上げる力が打ち勝つと弁体66が開弁し、減衰通路65が開放される。
伸側パイロットバルブ68は、ソレノイド62で吸引される可動鉄心を兼ねており、ソレノイド62に通電して伸側パイロットバルブ68をばね75に附勢力に抗して吸引することで、伸側パイロットバルブ68が弁座69aから離間する開弁圧を調整することができる。圧側パイロットバルブ69は、伸側パイロットバルブ68を介してばね75の附勢力とソレノイド62の吸引力が作用するので、弁座66aから離間する開弁圧がソレノイド62への通電量によって制御できるようになっている。
したがって、この実施の形態の緩衝装置D4にあっては、緩衝装置D4が伸長作動を呈しても収縮作動を呈しても、単一の弁体66の開弁圧を単一のソレノイド62で決することができ、これによって、伸側および圧側の減衰力の調整が可能である。上記したところから、押圧装置は、この例では、ソレノイド62、伸側パイロットバルブ68、ばね75、パイロット流路67とで構成される。また、圧力室R3内に収容したフリーピストン9が上下動することで見掛け上の流路を介して伸側室R1と圧側室R2とで液体のやり取りが行われる。
このように各部を構成することで具体的に緩衝装置D4に、減衰力調整部、圧力室R3およびフリーピストン9を組み込むことができ、具体的な緩衝装置D4にあっても、比較的低い周波数帯の振動に対しては、減衰力調整部で減衰力調整することで車体振動を制振することができるだけでなく、減衰力調整部によっては抑制できない高周波振動に対してはメカニカルに低減衰力を発揮することができ、車輪側からの振動を絶縁して車体振動を効果的に抑制することができ、車両における乗り心地を飛躍的に向上することができる。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。