以下、図に基づいて本発明を説明する。本発明の緩衝装置Dは、図1に示すように、シリンダ1と、当該シリンダ1内に摺動自在に挿入され当該シリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2に区画するピストン2と、伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路としての伸側減衰通路3aおよび圧側減衰通路3bと、上記伸側室R1と圧側室R2に連通される第一圧力室R3と、伸側室R1と圧側室R2に連通される第二圧力室R4と、第一圧力室R3内に移動自在に挿入されて当該第一圧力室R3内を伸側室R1に連通される第一伸側圧力室4と圧側室R2に連通される第一圧側圧力室5とに区画する伸側フリーピストン6と、第一伸側圧力室4を圧縮する方向へ伸側フリーピストン6を附勢する伸側ばね要素としてのコイルばね7と、第二圧力室R4内に移動自在に挿入されて第二圧力室R4内を伸側室R1に連通される第二伸側圧力室8と圧側室R2に連通される第二圧側圧力室9とに区画する圧側フリーピストン10と、第二圧側圧力室9を圧縮する方向へ圧側フリーピストン10を附勢する圧側ばね要素としてのコイルばね11とを備えて構成されており、車両における車体と車軸との間に介装されて減衰力を発生し車体の振動を抑制するものである。なお、伸側室R1とは、車体と車軸が離間して緩衝装置Dが伸長作動する際に圧縮される室のことであり、圧側室R2とは、車体と車軸が接近して緩衝装置Dが収縮作動する際に圧縮される室のことである。
この緩衝装置Dにあっては、シリンダ1が有底筒状とされており、上端には環状のヘッド部材31が装着されている。また、ピストン2は、シリンダ1内に移動自在に挿通されたピストンロッド13の一端に連結され、ピストンロッド13の上端は、ヘッド部材31によって摺動自在に軸支されてシリンダ1外へ突出され、緩衝装置Dは、所謂、片ロッド型の緩衝装置とされている。ピストン2は、シリンダ1内に移動自在に挿通されて、シリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画している。
そして、伸側室R1、圧側室R2、第一圧力室R3および第二圧力室R4内には作動油等の液体が充満され、ピストンロッド13とシリンダ1との間はシール部材32でシールされ、シリンダ1内が液密状態とされている。
また、緩衝装置Dは、伸側室R1にのみピストンロッド13が挿通される片ロッド型であるので、ピストンロッド13がシリンダ1内に出入りする体積を補償するため、シリンダ1内の下方にシリンダ1の内周に摺接して圧側室R2の下方に気体室Gを区画する摺動隔壁12が設けられており、単筒型の緩衝装置に設定されている。よって、この場合、緩衝装置Dの伸縮に伴ってシリンダ1内に出入りするピストンロッド13の体積は、上記した気体室G内の気体の体積が膨張あるいは収縮し摺動隔壁12が図1中上下方向に移動することによって補償されるようになっている。
なお、ピストンロッド13がシリンダ1に進退する体積の補償については、シリンダ1内に気体室Gを設けるほか、シリンダ1内或いはシリンダ1外にリザーバを設けるようにしてもよく、リザーバをシリンダ1外に設ける場合、シリンダ1の外周を覆う外筒を設けてシリンダ1と外筒との間にリザーバを形成する複筒型緩衝器とするほか、シリンダ1とは別個にタンクを設けて当該タンクでリザーバを形成するようにしてもよい。また、リザーバを設ける場合、緩衝装置Dの収縮作動時に圧側室R2の圧力を高めるために圧側室R2とリザーバとの間を仕切る仕切部材と、仕切部材に設けられて圧側室R2からリザーバへ向かう液体の流れに抵抗を与えるベースバルブとを設けるようにしてもよい。また、緩衝装置Dが片ロッド型ではなく、両ロッド型に設定されてもよい。
また、ピストン2には、伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路として伸側減衰通路3aおよび圧側減衰通路3bが設けられている。伸側減衰通路3aおよび圧側減衰通路3bの出口には、減衰力発生要素としてリーフバルブ14a,14bが設けられており、伸側減衰通路3aおよび圧側減衰通路3bを通過する液体の流れにリーフバルブ14a,14bによって抵抗を与えることができるようになっている。このリーフバルブ14aは、詳しくは、ピストン2の図1中下面に積層されていて、伸側減衰通路3aの出口端を開閉するようになっていて、伸側減衰通路3aを伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定し、リーフバルブ14bは、ピストン2の図1中上面に積層されていて、圧側減衰通路3bの出口端を開閉するようになっていて、圧側減衰通路3bを圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定している。なお、減衰力発生要素としてはリーフバルブ14a,14b以外にも、ポペット弁や周知のオリフィスやチョークといった絞り弁を採用してもよいし、リーフバルブ、ポペット弁に絞り弁を並列した構成を採用することも可能である。また、減衰通路は、伸側室R1と圧側室R2とを連通していればよいので、伸側減衰通路3aおよび圧側減衰通路3bをピストン2以外に設けることも可能であり、たとえば、ピストンロッド13に設けたり、シリンダ1外に設けたりすることもでき、その場合の減衰力発生要素には減衰通路に適した構造を採用すればよい。
つづいて、ピストン2の図1中上方であって、リーフバルブ14bの図1中上方となる伸側室側には、環状のバルブストッパ40が積層されて、ピストンロッド13の小径部13aの外周に装着されている。また、ピストン2の図1中下方には、リーフバルブ14aが積層され、リーフバルブ14aは、ピストン2とともにピストンロッド13の小径部13aの外周に装着される。
そして、リーフバルブ14aの下方から、第一圧力室R3および第二圧力室R4を備えたハウジング15がこの実施の形態の場合、ピストンロッド13の螺子部13bに螺着される。ピストンロッド13の外周に装着されるバルブストッパ40、リーフバルブ14b、ピストン2およびリーフバルブ14aは、ピストンロッド13の段部13cとハウジング15によって挟持されてピストンロッド13に固定される。このように、ハウジング15は、内部に第一圧力室R3および第二圧力室R4を形成するだけでなく、ピストン2や上記したバルブ類をピストンロッド13に固定するピストンナットとしての役割を果たしている。
ハウジング15は、ピストンロッド13の螺子部13bに螺合される筒状の螺子筒17と、螺子筒17の外周に設けた鍔18とを備えたナット部16と、ナット部16における鍔18の外周に図1中上端開口部が加締められて一体化される外筒19と、当該外筒19の図1中下端開口部を閉塞する底板20とを備えて構成され、圧側室R2内に配置されている。なお、ナット部16と外筒19との一体化に際し、上記加締め加工以外にも溶接等の他の方法を採用することも可能であり、ナット部16と外筒19とが一部品で構成されてもよい。また、底板20も、この場合、外筒19の下端を加締めることで外筒19に一体化されるが、一体化に際して溶接その他の方法を採用することもできる。
ナット部16は、螺子筒17をピストンロッド13の螺子部13bに螺着することによって、ハウジング15をピストンロッド13の小径部13aに固定することが可能なようになっている。ゆえに、外筒19の少なくとも一部の外周の断面形状を真円以外の形状、たとえば、一部を切欠いた形状や、六角形等の形状としておくことで、この外周に係合する工具を用いてハウジング15をピストンロッド13に螺着する作業を容易とすることができる。
また、外筒19の内周には、外筒19内を図1中下方の第一圧力室R3と図1中上方の第二圧力室R4とに区画する仕切19aと、第一圧力室R3と第二圧力室R4とを連通する連絡通路19bとが設けられており、これにより、ハウジング15内に第一圧力室R3と第二圧力室R4が形成されている。さらに、外筒19は、圧側室R2と第一圧力室R3とを連通する伸側オリフィス通路19cと、圧側室R2と第二圧力室R4とを連通する圧側オリフィス通路19dとを備えている。さらに、底板20は、第一圧力室R3を圧側室R2へ連通するオリフィス通路20aを備えている。オリフィス通路20aは、底板20ではなく、外筒19に設けてもよいが、底板20に設けることで伸側フリーピストン6の可動範囲を狭めることなく、ハウジング15の全長を短小化することができる。
そして、上記のように形成される第一圧力室R3内には、伸側フリーピストン6が摺動自在に挿入されて、第一圧力室R3内は、図1中上方側の第一伸側圧力室4と図1中下方側の第一圧側圧力室5に区画されている。さらに、第二圧力室R4内には、圧側フリーピストン10が摺動自在に挿入されて、第二圧力室R4内は、図1中上方側の第二伸側圧力室8と図1中下方側の第二圧側圧力室9に区画されている。また、第二伸側圧力室8は、ピストンロッド13の先端から開口して伸側室R1に面する側部へ通じるロッド内通路13dを介して、伸側室R1に連通されている。さらに、第一伸側圧力室4と第二圧側圧力室8とは、仕切19aに設けた連絡通路19bによって、互いに連通されている。
具体的には、伸側フリーピストン6は、有底筒状とされており、底部6aを図1中上方へ向けて筒部6bの外周を外筒19の内周に摺接させてハウジング15内に挿入されている。伸側フリーピストン6は、上記のようにハウジング15の第一圧力室R3内に摺動自在に挿入されると当該第一圧力室R3内を第一伸側圧力室4と第一圧側圧力室5とに区画する。圧側フリーピストン10もまた、有底筒状とされており、底部10aを図1中下方へ向けて筒部10bの外周を外筒19の内周に摺接させてハウジング15内に挿入されている。圧側フリーピストン10は、上記のようにハウジング15の第二圧力室R4内に摺動自在に挿入されると当該第二圧力室R4内を第二伸側圧力室8と第二圧側圧力室9とに区画する。
また、伸側フリーピストン6とハウジング15の底板20との間には、伸側ばね要素としてのコイルばね7が介装されていて、このコイルばね7によって伸側フリーピストン6は、仕切19a側、つまり、第一伸側圧力室4を圧縮する方向へ附勢されている。そして、緩衝装置Dが作動状態にない無負荷状態では、コイルばね7の附勢力で伸側フリーピストン6は仕切19aに当接して第一伸側圧力室4を最圧縮状態とする位置に位置決められる。伸側フリーピストン6は、有底筒状とされているので、筒部6b内にコイルばね7を配置することができ、ハウジング15との摺動長さを確保しつつ、伸側フリーピストン6とコイルばね7とを組み合わせた軸方向の全長を短くすることができる。
さらに、伸側フリーピストン6は、この実施の形態の場合、底部6aに設けられて第一伸側圧力室4と第一圧側圧力室5とを連通する第一固定オリフィス通路6cと、筒部6bの外周に設けた環状凹部6eと筒部6bの内周から環状凹部6eへ通じる孔6fとで形成される伸側ピストン通路6dとを備えている。
そして、上記環状凹部6eは、伸側フリーピストン6が仕切19aに当接して第一伸側圧力室4を最圧縮する位置にあるときには必ず伸側オリフィス通路19cに対向して第一圧側圧力室5と圧側室R2を連通し、伸側フリーピストン6が上記位置からストロークエンド側へ所定量変位する、すなわち、筒部6bが底板20に当接する方向へ所定量変位すると伸側オリフィス通路19cがフリーピストン6の外周で完全にラップされて閉塞されるようになっている。そして、伸側オリフィス通路19cは、伸側フリーピストン6が第一伸側圧力室4を最圧縮する位置から底板20側へ変位する変位量に応じて、徐々に閉じられて流路面積が変化するようになっており、伸側オリフィス通路19cと伸側ピストン通路6dとで伸側可変オリフィスを形成している。なお、底板20に設けたオリフィス通路20aは、伸側フリーピストン6の変位量によらず、第一圧側圧力室5と圧側室R2とを常に連通している。
すなわち、第一圧側圧力室5と圧側室R2とは、上記した伸側ピストン通路6dと、伸側オリフィス通路19cと、オリフィス通路20aにて連通され、この緩衝装置Dの場合、伸側フリーピストン6の第一伸側圧力室4を最圧縮する位置からの変位量が増加していくと、伸側オリフィス通路19cと伸側ピストン通路6dとで形成された伸側可変オリフィスの流路面積が減少し、流路抵抗が徐々に増加する。そして、この実施の形態では、伸側フリーピストン6がストロークエンド側へ所定量変位すると、伸側可変オリフィスが完全に閉塞されて、流路抵抗が最大となるようになっている。なお、伸側フリーピストン6が伸側可変オリフィスを閉塞する上記所定量は任意に設定することができる。また、伸側オリフィス通路19c、孔6fの設置数は任意である。
他方、圧側フリーピストン10とハウジング15のナット部16における鍔18との間には、圧側ばね要素としてのコイルばね11が介装されていて、このコイルばね11によって圧側フリーピストン10は、仕切19a側、つまり、第二圧側圧力室9を圧縮する方向へ附勢されている。そして、緩衝装置Dが作動状態にない無負荷状態では、コイルばね11の附勢力で圧側フリーピストン10は仕切19aに当接して第二圧側圧力室9を最圧縮状態とする位置に位置決められる。圧側フリーピストン10は、有底筒状とされているので、筒部10b内にコイルばね11を配置することができ、ハウジング15との摺動長さを確保しつつ、圧側フリーピストン10とコイルばね11とを組み合わせた軸方向の全長を短くすることができる。また、圧側フリーピストン10の底部10aを仕切19a側へ向けているので、ナット部16の螺子筒17との干渉を避けることができ、第二圧力室R4の軸方向の全長の短小化にも寄与することができる。
さらに、圧側フリーピストン10は、この実施の形態の場合、底部10aに設けられて第二伸側圧力室8と第二圧側圧力室9とを連通する第二固定オリフィス通路10cと、筒部10bの外周に設けた環状凹部10eと底部10aから環状凹部10eへ通じる孔10fとで形成される圧側ピストン通路10dとを備えている。
そして、圧側フリーピストン10が仕切19aに当接して第二圧側圧力室8を最圧縮する位置にあるときには孔10fが仕切19aによって閉塞される。他方、上記環状凹部10eは、圧側フリーピストン10が仕切19aに当接して第二圧側圧力室9を最圧縮する位置にあるときには必ず圧側オリフィス通路19dに対向し、圧側フリーピストン10が仕切19aから離れると、孔10fが仕切19aによって閉塞されなくなって、第二圧側圧力室9と圧側室R2を連通する。さらに、上記位置から圧側フリーピストン10がストロークエンド側へ所定量変位する、すなわち、筒部10bがナット部16の鍔18に当接する方向へ所定量変位すると圧側オリフィス通路19dが圧側フリーピストン10の外周で完全にラップされて閉塞されるようになっている。そして、圧側オリフィス通路19dは、圧側フリーピストン10が第二圧側圧力室9を最圧縮する位置から鍔18側へ変位する変位量に応じて、徐々に閉じられて流路面積が変化するようになっており、圧側オリフィス通路19dと圧側ピストン通路10dとで圧側可変オリフィスを形成している。
すなわち、第二圧側圧力室9と圧側室R2とは、上記した圧側ピストン通路10dと、圧側オリフィス通路19dにて連通され、この緩衝装置Dの場合、圧側フリーピストン10の第二圧側圧力室9を最圧縮する位置からの変位量が増加していくと、圧側オリフィス通路19dと圧側ピストン通路10dとで形成された圧側可変オリフィスの流路面積が減少し、流路抵抗が徐々に増加する。そして、この実施の形態では、圧側フリーピストン10がストロークエンド側へ所定量変位すると、圧側可変オリフィスが完全に閉塞されて、流路抵抗が最大となるようになっている。なお、圧側フリーピストン10が圧側可変オリフィスを閉塞する上記所定量は任意に設定することができる。また、圧側オリフィス通路19d、孔10fの設置数は任意である。
以上、第一圧力室R3における第一圧側圧力室5は、伸側可変オリフィスおよびオリフィス通路20aを介して圧側室R2に連通され、第一圧側圧力室5は、伸側フリーピストン6に設けた第一固定オリフィス通路6cを通じて第一伸側圧力室4に連通し、第一伸側圧力室4は、連絡通路19bを介して第二圧力室R4における第二圧側圧力室9に連通し、第二圧側圧力室9は、第二固定オリフィス通路10cを通じて第二伸側圧力室8に通じるとともに、圧側可変オリフィスを通じて圧側室R2に連通し、第二伸側圧力室8はロッド内通路13dを通じて伸側室R1に連通している。したがって、第一伸側圧力室4は、第二圧力室R4を介して伸側室R1に連通され、第二圧側圧力室9は、第一圧力室R3を介して圧側室R2に連通されている。
なお、伸側ばね要素および圧側ばね要素は、この実施の形態の場合、共にコイルばね7,11とされているが、それぞれ、伸側フリーピストン6および圧側フリーピストン10を附勢することができればよいので、コイルばね以外にも皿ばね、円錐ばね、ゴム等といった弾性体とされてもよい。
つづいて、緩衝装置Dの作動について説明する。緩衝装置Dがシリンダ1に対してピストン2が図1中上方へ移動する伸長作動を呈すると、ピストン2によって伸側室R1が圧縮され、圧側室R2が拡大されるので、伸側室R1の圧力が高まると同時に、圧側室R2の圧力が低下して両者に差圧が生じる。すると、伸側室R1の液体は、伸側減衰通路3aを通じて伸側室R1から圧側室R2へ移動する。また、伸側室R1の圧力が上昇するため、この圧力がロッド内通路13d、第二固定オリフィス通路10cおよび連絡通路19bを介して第一伸側圧力室4に伝播して伸側フリーピストン6が第一圧力室R3内で図1中下方へ移動し、伸側室R1の液体はこの第一伸側圧力室4へ流入し、また、第一圧側圧力室5内の液体はこの伸側フリーピストン6の下方への移動によって伸側可変オリフィスおよびオリフィス通路20aを介して圧側室R2へ押し出されることになる。よって、伸側室R1内の液体は、伸側減衰通路3aの他にも、見掛け上、第一圧力室R3を介して圧側室R2へ移動することになる。なお、圧側フリーピストン10は、コイルばね11の附勢力に加えて、第二伸側圧力室8に伝播する伸側室R1の圧力によって仕切19aに押しつけられる。そのため、伸長作動時には、圧側フリーピストン10は、緩衝装置Dの伸縮方向の切換時に圧側フリーピストン10が仕切19aから離間している場合には、圧側フリーピストン10が仕切19aへ当接位置まで戻る動作のみを行うが、予め、仕切19aに当接している場合には動作せず、伸側室R1から圧側室R2へ移動する見掛け上の液体の流量に影響しない。
ここで、緩衝装置Dに入力される振動の周波数、すなわち、緩衝装置Dの伸縮の振動の周波数が低周波であっても高周波であっても、緩衝装置Dの伸長作動におけるピストン速度が同じである場合、低周波振動入力時の緩衝装置Dの振幅は、高周波振動入力時の緩衝装置Dの振幅よりも大きくなる。このように緩衝装置Dに入力される振動の周波数が低い場合、振幅が大きいため伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流量は大きくなる。この流量に略比例して、伸側フリーピストン6が動く変位も大きくなるが、伸側フリーピストン6はコイルばね7で附勢されているため、伸側フリーピストン6の変位が大きくなると、伸側フリーピストン6が受けるコイルばね7からの附勢力も大きくなり、その分、第一伸側圧力室4の圧力と第一圧側圧力室5の圧力に差圧が生じて、伸側室R1と第一伸側圧力室4の差圧および第一圧側圧力室5と圧側室R2の差圧が小さくなり、伸側室R1から第一圧力室R3を介して圧側室R2へ移動する見掛け上の液体の流量は小さくなる。この見掛上の流量が小さい分、伸側減衰通路3aの流量は大きくなるので、緩衝装置Dが発生する減衰力が高いまま維持される。
逆に、緩衝装置Dに高周波振動が入力される場合、振幅が低周波振動入力時よりも小さいため、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流量は小さく、伸側フリーピストン6の動く変位も小さくなる。すると、伸側フリーピストン6が受けるコイルばね7からの附勢力も小さくなる。その分、第一伸側圧力室4の圧力と第一圧側圧力室5の圧力がほぼ同等圧となり、伸側室R1と第一伸側圧力室4の差圧および圧側室R2と第一圧側圧力室5の差圧は低周波振動入力時よりも大きくなって、上記の見掛け上の流量が低周波振動入力時よりも増大する。この見掛け上の流量が増大した分は、伸側減衰通路3aの流量が減少することになるので、緩衝装置Dが発生する減衰力は低周波振動入力時の減衰力よりも低くなる。
また、伸側フリーピストン6が第一伸側圧力室4を最圧縮する位置から図1中下方へ変位すると、徐々に伸側フリーピストン6の変位量に応じて伸側可変オリフィスの流路面積が減少し、最終的には、伸側可変オリフィスが閉塞されるため、伸側フリーピストン6の変位速度がストロークエンドに近づくと減速されて底板20へ勢いよく衝突することを防止できるとともに、伸側フリーピストン6の変位が抑制されるので、徐々に見掛け上の流量が減少することになる。伸側フリーピストン6が急激に停止させられると、伸長作動する際の減衰力が急激に増加することになるが、このように、伸側フリーピストン6がストロークエンドへ近づくと徐々にその変位が抑制されるようになっているので、伸長作動する際の減衰力の急激な増加が抑制されるので、緩衝装置Dの減衰力の急変を緩和できる。
つづいて、緩衝装置Dがシリンダ1に対してピストン2が図1中下方へ移動する収縮作動を呈すると、ピストン2によって圧側室R2が圧縮され、伸側室R1が拡大されるので、圧側室R2の圧力が高まると同時に、伸側室R1の圧力が低下して両者に差圧が生じる。すると、圧側室R2の液体は、圧側減衰通路3bを通じて圧側室R2から伸側室R1へ移動する。また、圧側室R2の圧力が上昇するため、この圧力が伸側可変オリフィス、オリフィス通路20a、第一固定オリフィス通路6c、圧側可変オリフィスおよび連絡通路19bを介して第二圧側圧力室9に伝播して、圧側フリーピストン10が第二圧力室R4内で図1中上方へ移動し、圧側室R2の液体はこの第二圧側圧力室9へ流入し、また、第二伸側圧力室8内の液体はこの圧側フリーピストン10の上方への移動によってロッド内通路13dを介して伸側室R1へ押し出されることになる。よって、圧側室R2内の液体は、圧側減衰通路3bの他にも、見掛け上、第二圧力室R4を介して圧側室R2へ移動することになる。なお、伸側フリーピストン6は、コイルばね7の附勢力に加えて、第一圧側圧力室5に伝播する圧側室R2の圧力によって仕切19aに押しつけられる。そのため、収縮作動時には、伸側フリーピストン6は、緩衝装置Dの伸縮方向の切換時に伸側フリーピストン16が仕切19aから離間している場合には、伸側フリーピストン6が仕切19aへ当接位置まで戻る動作のみを行うが、予め、仕切19aに当接している場合には動作せず、圧側室R2から伸側室R1へ移動する見掛け上の液体の流量に影響しない。
ここで、緩衝装置Dに入力される振動の周波数、すなわち、緩衝装置Dの伸縮の振動の周波数が低周波であっても高周波であっても、緩衝装置Dの収縮作動におけるピストン速度が同じである場合、低周波振動入力時の緩衝装置Dの振幅は、高周波振動入力時の緩衝装置Dの振幅よりも大きくなる。このように緩衝装置Dに入力される振動の周波数が低い場合、振幅が大きいため、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流量は大きくなる。この流量に略比例して、圧側フリーピストン10が動く変位も大きくなるが、圧側フリーピストン10はコイルばね11で附勢されているため、圧側フリーピストン10の変位が大きくなると、圧側フリーピストン10が受けるコイルばね11からの附勢力も大きくなり、その分、第二圧側圧力室9の圧力と第二伸側圧力室8の圧力に差圧が生じて、圧側室R2と第二圧側圧力室9の差圧および第二伸側圧力室8と伸側室R1の差圧が小さくなり、圧側室R2から第二圧力室R4を介して伸側室R1へ移動する見掛け上の液体の流量は小さくなる。この見掛上の流量が小さい分、圧側減衰通路3bの流量は大きくなるので、緩衝装置Dが発生する減衰力が高いまま維持される。
逆に、緩衝装置Dに高周波振動が入力される場合、振幅が低周波振動入力時よりも小さいため、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流量は小さく、圧側フリーピストン10の動く変位も小さくなる。すると、圧側フリーピストン10が受けるコイルばね11からの附勢力も小さくなる。その分、第二圧側圧力室9の圧力と第二伸側圧力室8の圧力がほぼ同等圧となり、圧側室R2と第二圧側圧力室9の差圧および伸側室R1と第二伸側圧力室8の差圧は低周波振動入力時よりも大きくなって、上記の見掛け上の流量が低周波振動入力時よりも増大する。この見掛け上の流量が増大した分は、圧側減衰通路3bの流量が減少することになるので、緩衝装置Dが発生する減衰力は低周波振動入力時の減衰力よりも低くなる。
また、圧側フリーピストン10が第二圧側圧力室9を最圧縮する位置から図1中上方へ変位すると、徐々に圧側フリーピストン10の変位量に応じて圧側可変オリフィスの流路面積が減少し、最終的には、圧側可変オリフィスが閉塞されるため、圧側フリーピストン10の変位速度がストロークエンドに近づくと減速されて鍔18へ勢いよく衝突することを防止できるとともに、圧側フリーピストン10の変位が抑制されるので、徐々に見掛け上の流量が減少することになる。圧側フリーピストン10が急激に停止させられると、収縮作動する際の減衰力が急激に増加することになるが、このように、圧側フリーピストン10がストロークエンドへ近づくと徐々にその変位が抑制されるようになっているので、収縮作動における減衰力の急激な増加が抑制されるので、緩衝装置Dの減衰力の急変を緩和できる。
このように、上記した緩衝装置Dにあっては、伸長作動する際には、伸側フリーピストン6が変位して第一圧力室R3を介して伸側室R1から圧側室R2へ液体を見掛け上移動させることができ、入力される振動の周波数に感応して高周波振動入力時に減衰力を低減させる効果を得ることができ、また、収縮作動する際には、圧側フリーピストン10が変位して第二圧力室R4を介して圧側室R2から伸側室R1へ液体を見掛け上移動させることができ、入力される振動の周波数に感応して高周波振動入力時に減衰力を低減させる効果を得ることができる。
このように、本発明の緩衝装置Dによれば、伸長作動時には、第一圧力室R3内に設けた伸側フリーピストン6の作動により減衰力低減効果を得て、収縮作動時には、第二圧力室R4内に設けた圧側フリーピストン10の作動により減衰力低減効果を得ることができるので、伸長作動時の減衰力低減効果と収縮作動時の減衰力低減効果の設計自由度を向上することができ、より車両に適した伸圧の減衰特性を設定が可能になるので、車両における乗り心地を向上させることができる。なお、この実施の形態の緩衝装置Dにおける伸長作動時および収縮作動時の減衰力低減効果のチューニングは、伸側フリーピストン6および圧側フリーピストン10の受圧面積、伸側ばね要素のばね定数、圧側ばね要素のばね定数、伸側可変オリフィス、圧側可変オリフィス、固定オリフィス20a、第一固定オリフィス通路6cおよび第二固定オリフィス通路10cの設定によって行うことができるが、伸側可変オリフィスおよび圧側可変オリフィスを廃止してもチューニングすることができ、また、伸側可変オリフィスを設ける場合には、固定オリフィス20aを廃止することも可能である。
この緩衝装置Dの場合、伸側ばね要素としてのコイルばね7が第一伸側圧力室4を最圧縮する位置に伸側フリーピストン6を位置決め、圧側ばね要素としてのコイルばね11が第二圧側圧力室9を最圧縮する位置に圧側フリーピストン10を位置決めているので、伸長作動時には伸側フリーピストン6のみを作動させて減衰力低減効果を得て、収縮作動時には圧側フリーピストン10のみを作動させて減衰力低減効果を得ることができ、伸長作動時と収縮作動時の減衰特性のチューニングが容易になる。他方、伸側ばね要素が伸側フリーピストン6を第一伸側圧力室4を最圧縮しない位置に位置決めてこれを最圧縮する位置へ変位する際にこの変位を抑制する場合、伸側フリーピストン6の作動を圧側の減衰特性に影響させることができる。同じく、圧側ばね要素が圧側フリーピストン10を第二圧側圧力室9を最圧縮しない位置に位置決めてこれを最圧縮する位置へ変位する際にこの変位を抑制する場合には、圧側フリーピストン10の作動を伸側の減衰特性に影響させることができる。
また、この実施の形態の場合、第一圧力室R3と第二圧力室R4とを一体不可分に形成しているため、第二圧力室R4を介して第一圧力室R3における第一伸側圧力室4を伸側室R1へ連通させ、第一圧力室R3を介して第二圧力室R4における第二圧側圧力室9を圧側室R2へ連通するようにしている。そのため、第一伸側圧力室4と第二圧側圧力室9とを連通させているが、これらは、互いに連通していればよいので、第一圧力室R3と第二圧力室R4とを一体不可分に形成する場合、図2に示すように、仕切19aの代わりに、伸側フリーピストン6と圧側フリーピストン10の間に、双方の移動限界を規制するとともに圧側フリーピストン10に当接する際に孔10fを閉塞するスナップリング等を設けてストッパ30を外筒19の内周に設けるようにして、第一伸側圧力室4と第二圧側圧力室9とが完全には仕切られていなくともよい。この場合、外筒19を下端が閉塞される有底筒状として底板20に設けていたオリフィス通路20aの代わりに外筒19の底部にオリフィス通路19eを設けるようにすることができる。
このように、第一伸側圧力室4と第二圧側圧力室9の仕切り方はどうあれ、ハウジング15内に第一圧力室R3と第二圧力室R4を設け、第一圧力室R3に伸側フリーピストン6を摺動自在に挿入して第一伸側圧力室4と第一圧側圧力室5を区画し、第一圧力室R4に圧側フリーピストン10を摺動自在に挿入して第二伸側圧力室8と第二圧側圧力室9を区画し、伸側フリーピストン6に第一伸側圧力室4と第一圧側圧力室5とを連通する第一固定オリフィス通路6cを設け、圧側フリーピストン10に第二伸側圧力室8と第二圧側圧力室9とを連通する第二固定オリフィス通路10cを設けて、第一圧力室R3を介して第二圧側圧力室9を圧側室R2へ連通するとともに、第二圧力室R4を介して第一伸側圧力室4を伸側室R1へ連通することで、一つのハウジング15に第一圧力室R3と第二圧力室R4とを一体的に形成することができ、緩衝装置D内への設置が容易となる。
なお、第一圧力室R3と第二圧力室R4とは、たとえば、図3に示すように、別個独立して設けることも可能である。この緩衝装置D1にあっては、第一圧力室R3を伸側室R1内に設けており、第二圧力室R4を圧側室R2内に設けている。第一圧力室R3は、ピストンロッド131内に設けられていて、伸側フリーピストン61で第一伸側圧力室41と第一圧側圧力室51とに区画されている。第一伸側圧力室41は、ピストンロッド131に設けた通路131aを介して伸側室R1に連通され、第一圧側圧力室51もまた、ピストンロッド131に設けた通路131bを介して圧側室R2に連通される。通路131a,131bには絞り弁を設けてもよいし、設けないようにすることも可能である。第二圧力室R4は、ピストンロッド131の先端の外周に設けたハウジング151によって形成されていて、このハウジング151内に摺動自在に挿入される圧側フリーピストン101により、第二伸側圧力室81と第二圧側圧力室91とに区画されている。第二伸側圧力室81は、ピストンロッド131に設けた通路131cを介して伸側室R1に連通され、第二圧側圧力室91は、ハウジング151に設けた通路151aを介して圧側室R2に連通される。通路131c,151aには絞り弁を設けてもよいし、設けないようにすることも可能である。また、伸側可変オリフィスや圧側可変オリフィスを設けるようにしてもよい。このように、第一圧力室R3と第二圧力室R4とを別個独立して設けるようにしても、伸長作動時における減衰力低減効果と収縮作動時における減衰力低減効果を発揮可能であって、伸長作動時における減衰特性と収縮作動時における減衰特性の設定自由度を向上することができる。なお、第一圧力室R3と第二圧力室R4を別個独立に設けた上記構造は、一例であって、これらをシリンダ1外に設けたり、第一圧力室R3を圧側室R2内に配置するとともに第二圧力室R4を伸側室R1内に配置したりすることもでき、適宜設計変更することが可能である。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。