JP2010144786A - 緩衝装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】振動周波数に依存した減衰力を発揮しつつも乗り心地を損なうことが無い緩衝装置を提供することである。
【解決手段】本発明の緩衝装置Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されシリンダ1内を2つの作動室R1,R2を区画する隔壁部材2と、2つの作動室R1,R2を連通する通路2a,2bと、圧力室R3を形成するハウジング4と、上記ハウジング4内に摺動自在に挿入されて圧力室R3を一方側流路5を介して一方の作動室R2に連通される一方室7と他方側流路6を介して他方の作動室R1に連通される他方室8に区画するフリーピストン9と、フリーピストン9を附勢する一方側バネ要素18および他方側バネ要素19とを備え、一方側バネ要素18をフリーピストン9が中立位置から一方室7側へ所定量変位するとバネ定数を大きくするように設定し、フリーピストン9が中立位置から一方室7側へ所定量以上変位するとバイパス路17を開放して他方室8と一方の作動室R2とを連通するようにした。
【選択図】図2

Description

本発明は、緩衝装置の改良に関する。
従来、この種緩衝装置にあっては、シリンダと、シリンダとシリンダ内に摺動自在に挿入されシリンダ内を上室と下室に区画するピストンと、ピストンに設けられた上室と下室を連通する第一通路と、ピストンロッドの先端から側部に開通して上室と下室を連通する第二通路と、第二通路の途中に接続される圧力室を備えてピストンロッドの先端に取付けられたハウジングと、圧力室内に摺動自在に挿入され圧力室を一方室と他方室とに区画するフリーピストンと、フリーピストンを附勢するコイルバネとを備えて構成されたものがある。すなわち、圧力室内の一方室は第一通路を介して下室内に連通されるとともに、圧力室内の他方室は第二通路を介して上室に連通されるようになっている。
ここで、緩衝装置の伸縮時における上室と下室との差圧をPとし、上室から流出する液体の流量をQとし、上記差圧Pと第一通路を通過する液体の流量Q1との関係である係数をC1とし、他方室内の圧力をP1とし、この圧力P1と上室から他方室に流入する液体の流量Q2との関係である係数をC2とし、一方室内の圧力をP2とし、この圧力P2と一方室から下室内に流出する液体の流量Q2との関係である係数をC3とし、フリーピストンの受圧面積である断面積をAとし、フリーピストンの圧力室に対する変位をXとし、コイルバネのバネ定数をKとして、流量Qに対する差圧Pの伝達関数を求めると、式(1)が得られる。なお、式(1)中、sはラプラス演算子を示している。
Figure 2010144786
さらに、上記式(1)で示された伝達関数中のラプラス演算子sにjωを代入して、周波数伝達関数G(jω)の絶対値を求めると、以下の式(2)が得られる。
Figure 2010144786
上記各式から理解できるように、この緩衝装置における流量Qに対する差圧Pの伝達関数の周波数特性は、図3のボード線図に示したように、Fa=K/{2・π・A・(C1+C2+C3)}とFb=K/{2・π・A・(C2+C3)}の2つの折れ点周波数を持ち、また、F<Faの領域においては、伝達ゲインは略C1となり、Fa≦F≦Fbの領域においてはC1からC1・(C2+C3)/(C1+C2+C3)まで漸減するように変化して、F>Fbの領域においては一定となる。すなわち、流量Qに対する差圧Pの伝達関数の周波数特性は、低周波数域では伝達ゲインが大きくなり、高周波数域では伝達ゲインが小さくなる。
したがって、この緩衝装置では、図4に示したように、低周波数の振動の入力に対しては大きな減衰力を発生し、他方、高周波数の振動の入力に対しては小さな減衰力を発生することができるので、車両が旋回中等の入力振動周波数が低い場面においては高い減衰力を確実に発生可能であるとともに車両が路面の凹凸を乗り越えるような入力振動周波数が高い場面においては低い減衰力を確実に発生させて、車両における乗り心地を向上させることができる(たとえば、特許文献1参照)。
特開2006−336816号公報(図2)
上述した緩衝装置は、車両における乗り心地を向上することができる点で有用ではあるが、以下の問題がある。
上記緩衝装置では、上述したように、低周波数の振動の入力に対しては大きな減衰力を発生し、他方、高周波数の振動の入力に対しては小さな減衰力を発生することができるのであるが、低周波数であるもののピストン速度が高速となる振動の入力があった場合には、緩衝装置の発生減衰力が高すぎて却って車両における乗り心地を損なう可能性もある。
そこで、本発明は上記した不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、振動周波数に依存した減衰力を発揮しつつも乗り心地を損なうことが無い緩衝装置を提供することである。
上記した目的を解決するために、本発明における課題解決手段は、シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されシリンダ内を2つの作動室に区画する隔壁部材と、2つの作動室を連通する通路と、圧力室を形成するハウジングと、上記ハウジング内に摺動自在に挿入されて圧力室を一方側流路を介して一方の作動室に連通される一方室と他方側流路を介して他方の作動室に連通される他方室とに区画するフリーピストンとを備え、フリーピストンが一方室内に収容される一方側バネ要素と他方室内に収容される他方側バネ要素とで挟持されて中立位置に位置決められる緩衝装置において、一方の作動室と他方室とを連通するとともにフリーピストンによって開閉されるバイパス路をハウジングに設け、一方側バネ要素をフリーピストンが中立位置から一方室側へ所定量変位するとバネ定数を大きくするように設定し、フリーピストンが中立位置から一方室側へ所定量以上変位するとバイパス路を開放することを特徴とする。
本発明の緩衝装置によれば、伸長速度が高速域に達するような作動を呈すると一方室と他方室の差圧によってフリーピストンが所定量以上変位し、バイパス路を開放して、一方の作動室と他方の作動室とが通路のみならず他方室およびバイパス路を介して連通するので、緩衝装置の伸長速度上昇に対する発生減衰力の上昇を小さく抑え、伸長速度が高速となったときの緩衝装置の発生減衰力が過剰となることを回避することができ、車両における乗り心地を向上することができる。
また、一方側バネ要素のバネ定数は、フリーピストンが中立位置から所定量変位するまで、すなわち、バイパス路を開放するまでは、小さいままとしておくことができるので、バイパス路を開放するまでは、フリーピストンを変位し易い状態に維持でき、緩衝装置の周波数依存の減衰特性を損なうことがない。
したがって、本発明の緩衝装置では、周波数依存の減衰特性を損なうことがなく、伸長あるいは収縮速度が高速域に達する場合における発生減衰力が過剰となってしまうことを防止できるので、周波数に依存した減衰力を発揮と車両における乗り心地の向上とを両立することが可能となる。
以下、本発明の緩衝装置を各図に基づいて説明する。図1は、一実施の形態における緩衝装置の縦断面図である。図2は、一実施の形態における緩衝装置のピストン部の拡大縦断面図である。
一実施の形態における緩衝装置Dは、基本的には、図1および図2に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されシリンダ1内を2つの作動室である上室R1および下室R2に区画する隔壁部材たるピストン2と、一端がピストン2に連結されるピストンロッド15と、ピストン2に形成された上室R1および下室R2を連通する通路2a,2bと、ピストンロッド15の先端に固定されて圧力室R3を形成するハウジング4と、上記ハウジング4内に摺動自在に挿入されて圧力室R3を一方側流路5を介して一方の作動室たる下室R2に連通される一方室7と他方側流路6を介して他方の作動室たる上室R1に連通される他方室8とに区画するフリーピストン9と、一方室7内に収容されてフリーピストン9を図1中上方側へ附勢する一方側バネ要素18と、他方室9内に収容されてフリーピストン9を図1中下方へ附勢する他方側バネ要素19と、ハウジング4に設けられて一方の作動室たる下室R2と他方室8とを連通するとともにフリーピストン4によって開閉されるバイパス路17とを備えて構成されており、フリーピストン9は、一方側バネ要素18と他方側バネ要素19とで挟持されてハウジング4に対して中立位置に位置決められている。
また、この緩衝装置Dにあっては、上室R1および下室R2さらには圧力室R3内には作動油等の液体が充満され、この緩衝装置Dの場合、シリンダ1内の図中下方には、シリンダ1の内周に摺接して下室R2と気体室Gとを区画する摺動隔壁30が設けられている。
なお、シリンダ1の上端は、ピストンロッド15を摺動自在に軸支する図示しないヘッド部材で封止され、シリンダ1の下端もまた図示しないボトム部材によって封止されている。
以下、各部について詳細に説明すると、ピストンロッド15は、その図2中下端側に小径部15aが形成されるとともに、小径部15aの先端側には螺子部15bが形成されている。
そして、ピストンロッド15には、小径部15aの先端から開口しピストンロッド15の側部に抜ける他方側流路6が形成されている。なお、図示したところでは、この他方側流路6の途中には、抵抗となる弁を設けていないが、絞り等の弁を設けるようにしてもよい。
ピストン2は、環状に形成されるとともに、その内周側にピストンロッド15の小径部15aが挿入されている。また、このピストン2には、上室R1と下室R2とを連通する通路2a,2bが設けられ、通路2aの図中上端は減衰力発生要素である積層リーフバルブV1にて閉塞され、他方の通路2bの図中下端も減衰力発生要素である積層リーフバルブV2によって閉塞されている。
この積層リーフバルブV1,V2は、共に環状に形成され、内周側にはピストンロッド15の小径部15aが挿入され、積層リーフバルブV1の撓み量を規制する環状のバルブストッパ16とともにピストン2に積層される。
そして、積層リーフバルブV1は、緩衝装置Dの収縮時に下室R2と上室R1の差圧によって撓んで開弁し通路2aを開放して下室R2から上室R1へ移動する液体の流れに抵抗を与えるとともに、緩衝装置Dの伸長時には通路2aを閉塞するようになっており、他方の積層リーフバルブV2は、積層リーフバルブV1とは反対に緩衝装置Dの伸長時に通路2bを開放し、収縮時には通路2bを閉塞する。すなわち、積層リーフバルブV1は、緩衝装置Dの収縮時における圧側減衰力を発生する減衰力発生要素であり、他方の積層リーフバルブV2は、緩衝装置Dの伸長時における伸側減衰力を発生する減衰力発生要素である。このように、通路を一方通行とする場合には、緩衝装置Dのように、通路2a,2bを設けてそれぞれを緩衝装置Dの伸長時あるいは収縮時のみ液体が通過するように構成してもよく、また、通路が双方向流れを許容する場合には一つのみを設けるようにしてもよい。
そして、ピストンロッド15の螺子部15bには、上記バルブストッパ17の下方から圧力室R3を形成するハウジング4が螺着され、このハウジング4によって、上記したピストン2、積層リーフバルブV1,V2およびバルブストッパ16がピストンロッド15に固定されている。このように、ハウジング4は、内部に圧力室R3を形成するだけでなく、ピストン2をピストンロッド15に固定する役割をも果たしている。
このハウジング4について説明すると、ハウジング4は、ピストンロッド15の螺子部15bに螺合される鍔22付の内筒21と、有底筒状の外筒23とを備えて構成され、外筒23の図2中上端開口部を上記鍔22の外周へ向けて加締めて外筒23と内筒21とを一体化し、この内筒21および外筒23で下室R2内に圧力室R3を画成している。なお、内筒21と外筒23との一体化に際し、上記かしめ加工以外にも溶接等の他の方法を採用することも可能である。
また、内筒21は、上述のように鍔22を備え、その内周には螺子部21aが形成され、この螺子部21aをピストンロッド15の螺子部15bに螺着することによって、ハウジング4をピストンロッド15の小径部15aに固定することが可能なようになっている。ゆえに、外筒23の外周の断面形状を真円以外の形状、たとえば、一部を切欠いた形状や、六角形等の形状としておけば、ハウジング4をピストンロッド15の先端に螺着する作業が容易となる。
さらに、外筒23は、図1中下端が小径とされて筒部23aに段部23bが形成されるとともに、また、その底部23cには、一方側流路5の一部を構成する固定オリフィス13が設けられている。
そして、上記した内筒21および外筒23で形成される圧力室R3内には、フリーピストン9が摺動自在に挿入され、このフリーピストン9によって圧力室R3内は、他方側流路6によって上室R1に連通される他方室8と、固定オリフィス13によって下室R2に連通される一方室7とに区画されている。
このフリーピストン9は、有底筒状に形成されて、筒部9aと、筒部9aの一端を閉塞する底部9bと、底部9bの図1中下端に設けられて外筒23の底部23cへ向けて突出する凸部9cとを備えて構成され、内側を内筒21に向け筒部9aを外筒23の内周に摺接させて圧力室R3内に挿入されて、圧力室R3を一方室7と他方室8とに区画している。
また、一方室7内には一方側バネ要素18が収容され、他方室8内には他方側バネ要素19が収容さえて、これらバネ要素18,19でフリーピストン9が挟持され、弾性支持された状態でフリーピストン9は圧力室R3内で所定の中立位置に位置決められている。中立位置は、必ずしもフリーピストン9の圧力室3内でのストローク中心に設定されずともよく、一方側バネ要素18と他方側バネ要素19との釣り合いによって決せされる。
詳しくは、一方側バネ要素18は、一方室7内であって外筒23の底部23cとフリーピストン9の底部9b外側との間に、他方側バネ要素19は、他方室8内であって内筒21の鍔22とフリーピストン9の底部9b内側との間に介装されている。
そして、一方側バネ要素18は、この実施の形態の場合、バネ定数が小さいコイルバネ18aと、バネ定数がコイルバネ18aより大きいコイルバネ18bを直列配置して構成されており、フリーピストン9が上記した中立位置から所定量一方室7側となる図2中下方へ変位すると、バネ定数が小さいコイルバネ18aが最圧縮状態となって、それ以上のフリーピストン9の一方室7側への変位に対してはバネ定数が大きいコイルバネ18bのみが縮むのみとなる。すなわち、一方側バネ要素18は、フリーピストン9が中立位置から所定量変位したところを境にして、それ以上の圧縮に対しては見掛け上のバネ定数が大きくなるようになっている。なお、コイルバネ18a,18b間には、ワッシャ18cが介装されており、コイルバネ18a,18bの端部同士が直接干渉することを阻止して、これらコイルバネ18a,18bの円滑な伸縮を実現している。
また、他方側バネ要素19は図示したところではコイルバネとされているが、フリーピストン9を弾性支持できればよいので、コイルバネ以外のものを採用してもよく、たとえば、皿バネ等の弾性体を用いてフリーピストン9を弾性支持するようにしてもよい。このことは、一方側バネ要素18におけるコイルバネ18a,18bについても同様で、上記の如く、フリーピストン9が中立位置から一方室7側へ所定量変位した際に、バネ定数が大きくなるように設定できれば、コイルバネ以外のものを採用することも可能である。
他方側バネ要素19としてのコイルバネの図中下端は、フリーピストン9の筒部9aの最深部内周に嵌合されて半径方向に位置決められ、また、一方側バネ要素18におけるコイルバネ18aは、コイルバネ18aの内周にフリーピストン9の凸部9cが挿通されることによってセンタリングされて、フリーピストン9に対し位置ずれが防止されており、これによって安定的にフリーピストン9に附勢力を作用させることが可能となっている。
なお、フリーピストン9の筒部9aの内周は、その最深部に比較して拡径されており、これにより、他方側バネ要素19としてのコイルバネが圧縮されて巻線径が拡大した際にコイルバネの線材が筒部9aの内周に擦れることが無く、コンタミネーションの発生を防止している。
また、上述したように、凸部9cはコイルバネ18aをセンタリングする機能を担っており、その高さ(図2中上下方向長さ)は、コイルバネ18aの乗り上げを充分に防止可能な高さに設定されている。
つづいて、上記したフリーピストン9は、この実施の形態の場合、上記した構成に加えて、筒部9aの外周に設けた環状溝9dと、さらに、フリーピストン9の肉厚内部を通り環状溝9dと一方室7とを連通する孔9eとを備えている。
また、外筒23の筒部23aには、下室R2と外筒23内を連通する二つの可変オリフィス11,12が設けられており、この可変オリフィス11,12は、軸方向に対して偏心して設けられておりフリーピストン9がコイルバネ18,19によって弾性支持されて中立位置にあるときには必ず上記環状溝9dに対向して一方室7と下室R2とを連通している。そして、フリーピストン9が中立位置から一方室7側へストロークエンドまで変位する際には、すなわち、フリーピストン9が外筒23の段部23bに当接するまで変位する際には、可変オリフィス11が最初に閉じられ続いて可変オリフィス12も閉じられるようになっており、反対に、フリーピストン9が中立位置から他方室8側へストロークエンドまで変位する際には、すなわち、フリーピストン9が内筒21の図2中下端に当接するまで変位する際には、可変オリフィス12が最初に閉じられ続いて可変オリフィス11も閉じられるようになっている。
そして、この実施の形態の緩衝装置Dの場合、一方側流路5は、環状溝9d、可変オリフィス11,12、孔9eおよび固定オリフィス13で構成されており、フリーピストン9の中立位置からの変位量が任意の変位量となるときに、可変オリフィス11,12の開口全てが環状溝9dに対向する状況から筒部9aの外周に対向し始める状況に移行して徐々に可変オリフィス11,12の流路面積が減少し始め、一方側流路5における流路抵抗が徐々に増加する。したがって、上記任意の変位量は、環状溝9dの図中上下方向幅の設定および、可変オリフィス11,12の外筒23内周側の開口位置によって設定される。そして、この実施の形態では、フリーピストン9の変位量の増加に伴って徐々に可変オリフィス11,12の流路面積が減少し、フリーピストン9がストロークエンドに達すると、可変オリフィス11,12が完全に筒部9aに対向して閉塞され、一方側流路5における流路抵抗が最大となり一方室7が固定オリフィス13のみによって下室R2に連通されるようになっている。
また、この緩衝装置Dにあっては、外筒23の筒部23aに他方室8と一方の作動室たる下室R2とを連通するバイパス路17が設けられており、このバイパス路17は、フリーピストン9が圧力室R3内で中立位置にあるときにはその筒部9aの外周が対向して遮断されて他方室8と下室R2との連通が断たれるようになっている。そして、フリーピストン9が中立位置から一方室7側へ所定量変位以上するとフリーピストン9の筒部9aの図2中上端がバイパス路17の図2中上端より下方に配置されることになって、バイパス路17が開放され他方室8と下室R2とが通路2a,2bを迂回して連通するようになっている。
なお、摺動隔壁30は、下室R2側に凹部を備えており、緩衝装置Dが最収縮した際には、上記ハウジング4の外筒23の先端となる図1中下端が上記凹部に侵入することを許容しており、単筒型に構成される緩衝装置Dにピストンロッド15の先端にハウジング4を設けることによるストローク長さのロスが、上記外筒23の形状および摺動隔壁30の凹部によって緩和されることになる。
緩衝装置Dは、以上のように構成されるが、続いて緩衝装置Dの作動について説明する。
まず、フリーピストン9における中立位置からの変位量が所定量以下である場合について説明する。この場合、緩衝装置Dが伸長行程にあっては、一方室7内の圧力を上回る他方室8内の圧力でフリーピストン9を一方室7側へ押圧するが、フリーピストン9を所定量以上変位するまでに到らないので、バイパス路17は開放されず、一方側バネ要素18におけるバネ定数は、小さいコイルバネ18aが最圧縮状態ではなくバネ定数は小さいまま維持され変化しない。
そして、車両の車体と車軸との間に組み込まれる緩衝装置Dでは、一方室7と他方室8の差圧が小さくなるのは、一般的には、緩衝装置Dの伸縮速度が低い場合であり、緩衝装置Dの伸縮振動の周波数も低くなる。これに対して、緩衝装置Dの伸縮振動の周波数が高い場合には、緩衝装置Dの伸縮速度が高くなって、一方室7と他方室8の差圧が大きくなることになる。
上記したところから、緩衝装置Dの伸縮振動の周波数が低い場合には、一方室7と他方室8の差圧が小さく、フリーピストン9がハウジング4に対してあまり変位せずに一方室7と他方室8の容積をあまり変化させないため、緩衝装置Dは、液体は主として通路2a,2bを通過して上室R1と下室R2とを行き来し、主として積層リーフバルブV1,V2がこの液体の流れに与える抵抗によって減衰力を発生することになる。
対して、緩衝装置Dの伸縮振動の周波数が高い場合には、緩衝装置Dの伸縮速度も少々高くなって中速域に達し、一方室7と他方室8の差圧が大きくなり、フリーピストン9が上記差圧に応じて変位して、一方室7と他方室8の容積を変化させることで通路2a,2bを通過する液体流量を減少させるので、緩衝装置Dの発生減衰力は小さくなる。
すなわち、一方室7と他方室8との差圧がある程度大きくなってフリーピストン9が動き出すまでは、緩衝装置Dにおける流量に対する差圧の周波数伝達関数の周波数に対するゲイン特性は、従来の緩衝装置と同様、図3に示すように、一定で落ち込むことが無く、したがって、振動周波数に対する減衰力のゲインを示す緩衝装置Dにおける減衰特性も図4に示すように一定して高止まることになる。なお、単位時間当たりの流量は緩衝装置Dの単位時間当たりの振動振幅に依存する量であることから、図3に示したゲイン特性とピストン2の受圧面積から図4の減衰特性の周波数特性を得ることができ、この減衰特性は、図3のゲイン特性と同様の軌跡をたどることになる。
そして、一方室7と他方室8との差圧がある程度大きくなってフリーピストン9が動き出すようになると、緩衝装置Dにおける流量に対する差圧の周波数伝達関数の周波数に対するゲイン特性は、図3に示すように、漸減して行き高周波数域で一定となり、図4に示すように、緩衝装置Dにおける減衰特性も同様に推移することになる。
このように、フリーピストン9における中立位置からの変位量が所定量以下である場合、緩衝装置Dの振動周波数に対して発生する減衰力の関係である減衰特性は、従来の緩衝装置と同様、低周波振動に対しては大きい減衰力を発揮し、高周波振動に対しては小さい減衰力を発揮するよう変化する。
つづいて、低周波振動であっても振幅が大きくなると、伸縮速度が高くなり低速を超えて中速域に達すると、上記した以上に一方室7と他方室8の差圧が大きくなり、フリーピストン9が可変オリフィス11,12を閉塞し始め、一方側流路5の流路抵抗が増加するようになり、フリーピストン9の同方向への変位速度が減少されて、フリーピストン9が中立位置からの変位量が所定量以下でバイパス路17を開放しない限りにおいて、圧力室R3を介しての上室R1と下室R2との液体の移動量も減少し、その分通路2a,2bを通過する液体量が増加することになり、緩衝装置Dの発生減衰力は徐々に大きくなっていく。
このように、緩衝装置Dでは、低周波振動であっても伸縮速度がある程度高く振動振幅が大きい場合には、徐々に発生減衰力を大きくして、振動をしっかり減衰させることができる。
さらに振幅が大きくなり伸長速度が中速域を超えて高くなる場合には、そのまま、減衰力を大きくすると却って車両における乗り心地を損なう。そのため、この緩衝装置Dでは、伸長行程にあって伸長速度が高速域に達するような作動を呈すると一方室7と他方室8の差圧によってフリーピストン9が所定量以上変位し、バイパス路17を開放して、上室R1と下室R2とが通路2bのみならず他方室8およびバイパス路17を介して連通するようになっている。
すると、液体は、通路2b以外にもバイパス路17を通じて上室R1から下室R2へ移動するようになって、緩衝装置Dの伸長速度上昇に対する発生減衰力の上昇を小さく抑え、発生減衰力を頭打ちにする。
これによって、伸長速度が高速となったときの緩衝装置Dの発生減衰力が過剰となることを回避することができ、車両における乗り心地を向上することができる。なお、圧力室R3を上室R1内あるいはシリンダ1外に設置しておき、バイパス路を一方室7と上室R1とを連通するようにしておけば、緩衝装置Dが収縮作動した際の発生減衰力の上昇を抑制することができるようになる。
また、一方側バネ要素18のバネ定数は、フリーピストン9が中立位置から所定量変位するまで、すなわち、バイパス路17を開放するまでは、小さいままとしておくことができるので、バイパス路17を開放するまでは、フリーピストン9を変位し易い状態に維持でき、緩衝装置Dの周波数依存の減衰特性を損なうことがない。
つまり、この緩衝装置Dでは、周波数依存の減衰特性を損なうことがなく、伸長あるいは収縮速度が高速域に達する場合における発生減衰力が過剰となってしまうことを防止できるので、周波数に依存した減衰力を発揮と車両における乗り心地の向上とを両立することが可能となる。
なお、本実施の形態においては、減衰特性の変化を説明するために、ピストン速度に低速、中速および高速でなる区分を設けているが、これらの区分の境の速度はそれぞれ任意に設定することができる。
また、上記した実施の形態にあっては、一方側流路5の流路抵抗を可変にする可変オリフィス11,12を設けるようにしているが、これを省略するようにしても本発明の作用効果を失うことはない。
さらに、一方側バネ要素18は、バネ定数が小さな部位と、このバネ定数が小さな部位に直列されるバネ定数が大きな部位とを備えて構成されればよく、フリーピストン9が中立位置から一方室7側へ所定量変位するとバネ定数が小さい部位が最圧縮状態とされるように設定されれば、上記の如くの作用効果を得ることができることから、バネ定数の異なるバネや弾性体を直列配置すること以外にも、たとえば、一方側バネ要素18をピッチが小さい部分と大きい部分を備えたコイルバネとしておき、ピストン9が中立位置から一方室7側へ所定量変位するときにピッチが小さい部分が最圧縮されるように構成してもよい。
また、この実施の形態では、一方側バネ要素18のコイルバネ18a,18b間にワッシャ18cを介装しているが、これを省略してもよく、また、一方側流路5が一方室7を並列して一方の作動室たる下室R2へ連通する固定オリフィス13と可変オリフィス11,12とで構成されているため、ワッシャ18cを環状ではなく円盤として一方室7を円盤で分断するような構成を採用してもよい。
そしてさらに、本実施の形態における緩衝装置Dは、いわゆる単筒型の緩衝装置として構成されているが、これをシリンダ1の外方にシリンダ1を覆うように形成される環状のリザーバを備えた複筒型の緩衝装置として構成されてもよいし、また、シリンダ1の外方に全く別体のリザーバタンクを備えた緩衝装置として構成とされてもよい。加えて、圧力室R3がシリンダ1内に形成されているが、シリンダ1外に設けることも可能である。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
一実施の形態における緩衝装置の縦断面図である。 一実施の形態における緩衝装置のピストン部の拡大縦断面図である。 従来の緩衝装置の流量に対する圧力の周波数伝達関数のゲイン特性を示したボード線図である。 従来の緩衝装置の振動周波数に対する減衰特性を示した図である。
符号の説明
1 シリンダ
2 ピストン
2a,2b 通路
4 ハウジング
5 一方側流路
6 他方側流路
7 一方室
8 他方室
9 フリーピストン
9a フリーピストンにおける筒部
9b フリーピストンにおける底部
9c フリーピストンにおける凸部
9d フリーピストンにおける環状溝
9e フリーピストンにおける孔
11,12 可変オリフィス
13 固定オリフィス
15 ピストンロッド
15a ピストンロッドにおける小径部
15b ピストンロッドにおける螺子部
16 バルブストッパ
17 バイパス路
18 一方側バネ要素
18a バネ定数の小さいコイルバネ
18b バネ定数の大きいコイルバネ
18c ワッシャ
19 他方側バネ要素
21 ハウジングにおける内筒
21a 内筒における螺子部
22 内筒における鍔
23 ハウジングにおける外筒
23a 外筒における筒部
23c 外筒における段部
23c 外筒における底部
30 摺動隔壁
D 緩衝装置
G 気体室
R1 他方の作動室たる上室
R2 一方の作動室たる下室
R3 圧力室
V1,V2 積層リーフバルブ

Claims (3)

  1. シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されシリンダ内を2つの作動室に区画する隔壁部材と、2つの作動室を連通する通路と、圧力室を形成するハウジングと、上記ハウジング内に摺動自在に挿入されて圧力室を一方側流路を介して一方の作動室に連通される一方室と他方側流路を介して他方の作動室に連通される他方室とに区画するフリーピストンとを備え、フリーピストンが一方室内に収容される一方側バネ要素と他方室内に収容される他方側バネ要素とで挟持されて中立位置に位置決められる緩衝装置において、一方の作動室と他方室とを連通するとともにフリーピストンによって開閉されるバイパス路をハウジングに設け、一方側バネ要素をフリーピストンが中立位置から一方室側へ所定量変位するとバネ定数を大きくするように設定し、フリーピストンが中立位置から一方室側へ所定量以上変位するとバイパス路を開放することを特徴とする緩衝装置。
  2. 一方側バネ要素は、バネ定数が小さな部位と、このバネ定数が小さな部位に直列されるバネ定数が大きな部位とを備えて構成され、フリーピストンが中立位置から一方室側へ所定量変位するとバネ定数が小さい部位が最圧縮状態とされることを特徴とする請求項1に記載の緩衝装置。
  3. ハウジングは、ピストンロッドに螺合されてピストンロッドに嵌合される隔壁部材を該ピストンロッドに固定する鍔付のナットと、上記鍔の外周から延設される有底筒状の外筒とを備えて圧力室を形成し、外筒の内周に摺接するフリーピストンによって圧力室内を一方室と他方室とに区画してなることを特徴とする請求項1または2に記載の緩衝装置。
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