以下に、図示した実施の形態に基づいて、この発明を説明する。なお、各実施の形態の減衰弁の説明にあたり、いくつかの実施の形態で共通する部材については同じ符号を付し、説明が重複するので、一の実施の形態において説明した部材については他の実施の形態での説明は省略する。
<第一の実施の形態>
一実施の形態における減衰弁V1は、図1に示すように、途中に絞りOを備える圧力制御通路PPと、圧力制御通路PPの絞りOよりも下流に設けられて圧力制御通路PPの上流側の圧力を制御する圧力制御弁PVと圧力制御弁PVに一体化されるとともに圧力制御通路PPの圧力制御弁PVよりも上流側に設けられて圧力制御通路PVを開閉する開閉弁SVとを有して単一のソレノイドSolによって制御される電磁弁EVと、圧力制御通路PPの絞りOと開閉弁SVとの間から分岐して圧力制御通路PPの開閉弁SVと圧力制御弁PVとの間へ通じて開閉弁SVを迂回する第一フェール通路FP1と、第一フェール通路FP1の途中に設けられて通過する流体の流れに抵抗を与える第一フェール弁FV1とを備えて構成されている。
また、本実施の形態の減衰弁V1は、緩衝器D1の伸縮時に流体が通過する主通路MPと、主通路MPを開閉する主弁MVを備えている。そして、減衰弁V1は、圧力制御弁PVで調整した圧力を前記主弁MVに作用させる背圧として導き、主弁MVの開弁圧を調整するようになっている。このように減衰弁V1は、緩衝器D1に適用されており、緩衝器D1は、伸縮時に主通路MPを通過する流体に主弁MVで抵抗を与えて減衰力を発生するようになっている。
なお、本実施の形態では、圧力制御弁PVで圧力制御通路PP中の上流側の圧力を調整して主弁MVの開弁圧を制御しているが、前記したように、圧力制御弁PVは、圧力制御が可能である。よって、前記に挙げた構成から、絞りO、主通路MPおよび主弁MVを廃して減衰弁V1を構成し、緩衝器D1の伸縮時に圧力調整通路PPを通過する流体に圧力制御弁PVで抵抗を与えて緩衝器D1内の圧力を制御し、減衰力の発揮も可能である。
この減衰弁V1が適用される緩衝器D1は、たとえば、図2に示すように、シリンダ10と、シリンダ10内に摺動自在に挿入されるピストン11と、シリンダ10内に移動挿入されてピストン11に連結されるロッド12と、シリンダ10内に挿入したピストン11で区画した伸側室13と圧側室14と、シリンダ10の外周を覆ってシリンダ10との間に排出通路15を形成する中間筒16と、中間筒16の外周を覆って中間筒16との間にリザーバ17を形成する外筒18とを備えて構成されており、伸側室13、圧側室14およびリザーバ17内には流体として作動油が充填されるとともにリザーバ17には作動油の他に気体が充填されている。なお、流体は、作動油以外にも、減衰力を発揮可能な流体であれば使用可能である。
そして、この緩衝器D1の場合、リザーバ17から圧側室14へ向かう作動油の流れのみを許容する吸込通路19と、ピストン11に設けられて圧側室14から伸側室13へ向かう作動油の流れのみを許容するピストン通路11aとを備えている。また、伸側室13に連通される排出通路15を主通路MPでリザーバ17へと連通するようになっており、伸側室13が主通路MPの上流とされるとともにリザーバ17が主通路MPの下流とされている。
したがって、この緩衝器D1は、収縮作動する際には、ピストン11が図2中下方へ移動して圧側室14が圧縮され、圧側室14内の作動油がピストン通路11aを介して伸側室13へ移動する。この収縮作動時には、ロッド12がシリンダ10内に侵入するためシリンダ10内でロッド侵入体積分の作動油が過剰となり、過剰分の作動油がシリンダ10から押し出されて排出通路15および主通路MPを介してリザーバ17へ排出される。緩衝器D1は、シリンダ10内からリザーバ17へ移動する作動油の流れに減衰弁V1で抵抗を与え、シリンダ10内の圧力を上昇させて圧側減衰力を発揮する。
反対に、緩衝器D1が伸長作動する際には、ピストン11が図2中上方へ移動して伸側室13が圧縮され、伸側室13内の作動油が排出通路15および主通路MPを介してリザーバ17へ移動する。この伸長作動時には、ピストン11が上方へ移動して圧側室14の容積が拡大して、この拡大分に見合った作動油が吸込通路19を介してリザーバ17から供給される。そして、緩衝器D1は、シリンダ10内からリザーバ17へ移動する作動油の流れに減衰弁V1で抵抗を与え、伸側室13内の圧力を上昇させて伸側減衰力を発揮する。
前述したところから理解できるように、緩衝器D1は、伸縮作動を呈すると、シリンダ10内から排出通路15を介して作動油をリザーバ17へ排出し、作動油が圧側室14、伸側室13、リザーバ17を順に一方通行で循環するユニフロー型の緩衝器に設定されていて、必ず減衰弁V1を作動油が通過するようになっているので、伸圧両側の減衰力を単一の減衰弁V1によって発生可能としている。
つづいて、減衰弁V1の各部について詳しく説明する。まず、主通路MPは、緩衝器D1における排出通路15を介してシリンダ10内の伸側室13をリザーバ17へ連通している。主弁MVは、主通路MPの途中に設けられており、この主弁MVには、上流側の圧力が開弁方向に作用し、絞りOによって減圧される圧力制御通路PPの圧力制御弁PVより上流側の圧力が背圧として閉弁方向に作用し、さらには、ばねMVsによる附勢力が閉弁方向に作用している。よって、主弁MVは、主通路MPの上流側の圧力による主弁MVを開弁させる力が、背圧およびばねMVsの作用によって主弁MVを閉弁させる力を上回ると開弁して、通過する作動油の流れに抵抗を与えるようになっている。
圧力制御通路PPは、主通路MPの主弁MVよりも上流から分岐してリザーバ17に接続されている。また、この圧力制御通路PPの途中には、オリフィスやチョーク等といった絞りOが設けられており、主弁MVに対して絞りOより下流側の圧力を背圧として作用させるようになっている。
さらに、圧力制御通路PPの絞りOよりも下流側には、圧力制御弁PVと開閉弁SVとを一体化した電磁弁EVが設けられている。圧力制御弁PVは、圧力制御通路PPの途中に設けられており、この圧力制御弁PVには、圧力制御通路PPの絞りOの下流であって圧力制御弁PVの上流側の圧力とばねEVsによる附勢力が開弁方向に作用するとともに、ソレノイドSolによる推力が閉弁方向に作用している。したがって、この圧力制御弁PVにあっては、ソレノイドSolの推力を調整して、主弁MVの開弁圧を変更できるようになっている。つまり、圧力制御弁PVの開弁圧を調節して、主弁MVに作用する背圧である圧力制御通路PPの絞りOの下流であって圧力制御弁PVの上流側の圧力を調整し、主弁MVの開弁圧を制御できる。なお、ソレノイドSolへ通電しない場合、圧力制御弁PVは、ばねEVsによって流路を最大とする。
他方、開閉弁SVは、圧力制御弁PVと一体化されており、圧力制御通路PPの絞りOの下流であって圧力制御弁PVより上流に配置されている。開閉弁SVは、圧力制御通路PPを遮断する遮断ポジションSVsと、圧力制御通路PPを開放する連通ポジションSVoとを備え、圧力制御弁PVと共有するばねEVsによって遮断ポジションSVsを採るように附勢されるとともに、圧力制御弁PVと共有するソレノイドSolの推力で押圧されると連通ポジションSVoを採るようになっている。そして、ソレノイドSolへ正常に通電できる状態では、開閉弁SVは、ソレノイドSolの推力によって押圧されて圧力制御通路PPを開放する連通ポジションSVoを採るようになっている。なお、ソレノイドSolへ通電しない場合や、通電不能或いは正常に通電ができなくなるフェール状態では、ソレノイドSolへの電力供給が行われず、ばねEVsによって押されて、開閉弁SVは圧力制御通路PPを閉じるようになっている。
したがって、この電磁弁EVは、ソレノイドSolへ正常に通電可能な状態では、ソレノイドSolの推力をコントロールして開閉弁SVを連通ポジションSVoに維持しつつ圧力制御弁PVによる圧力制御を実施でき、フェール状態ではソレノイドSolには通電されないため、圧力制御弁PVは流路を最大開放するが開閉弁SVが遮断ポジションSVsに切換わるので、圧力制御通路PPは遮断される。このように、電磁弁EVは、圧力制御弁PVと開閉弁SVを一体化しているので、圧力制御弁PVと開閉弁SVの個々でソレノイドとばねを有する必要はなく、ソレノイドSolとばねEVsを共通化でき、コストを軽減しつつ重量を軽量化できるとともに、減衰弁V1を非常に小型化できるメリットがある。
そして、圧力制御通路PPの絞りOの下流であって開閉弁SVよりも上流の圧力が背圧として主弁MVに導かれるようになっており、開閉弁SVが圧力制御通路PPを開放している状態では、圧力制御通路PPの絞りOよりも下流であって圧力制御弁PVの上流の圧力は、主弁MVへ導かれる背圧に他ならないから、正常時には、ソレノイドSolの推力を調節すると主弁MVへ作用させる背圧を制御できる。
つづいて、第一フェール通路FP1は、圧力制御通路PPの絞りOの下流であって開閉弁SVよりも上流から分岐して開閉弁SVと圧力制御弁PVとの間へ通じており、この第一フェール通路FPの途中には、第一フェール弁FV1が設けられている。この第一フェール弁FV1には、圧力制御通路PPの絞りOの下流側の圧力が開弁方向に作用する一方、ばねFV1sによる附勢力が閉弁方向に作用している。つまり、第一フェール弁FV1は、第一フェール弁FV1の上流の圧力がばねFV1sによって設定される所定の開弁圧に達すると開弁するリリーフ弁とされている。よって、圧力制御通路PPがフェール状態において開閉弁SVによって遮断されても、第一フェール弁FV1がリリーフ機能を発揮して、圧力制御通路PPの絞りOの下流であって開閉弁SVよりも上流の圧力が第一フェール弁FV1の流量圧力特性と通過流量に依存した圧力に制御される。すると、フェール時にあっては、主弁MVに導かれる背圧が第一フェール弁FV1によって制御されて、主弁MVの開弁圧もこれによって所定圧に制御される。よって、フェール時にあっても、減衰弁V1は、主弁MVを通過する作動油の流れに抵抗を与えられ、減衰力を発揮できる。
以上、減衰弁V1にあっては、電磁弁EVの制御によって、主弁MVへ作用させる背圧を制御して、減衰力を調節できるのである。また、圧力制御通路PPにおいて開閉弁SVを圧力制御弁PVよりも上流に配置しても、開閉弁SVより上流から第一フェール通路FP1を分岐させるようにしたので、第一フェール通路FP1は有効に機能しており、フェール機能を失わない。よって、本発明の減衰弁V1によれば、正常時にフェール状態へ移行して減衰力制御をし難くなってしまう問題を生じない。
この減衰弁V1の場合、開閉弁SVと第一フェール弁FV1とが並列配置される関係にあるので、正常時にあって開閉弁SVが圧力制御通路PPを開放している状態では、作動油が開閉弁SVを少ない抵抗で通過できる。
よって、開閉弁SVが圧力制御通路PPを開放している状態では、第一フェール弁FV1の開閉に関わらず、主弁MVの背圧は圧力制御弁PVによって調整されるので、第一フェール弁FV1の流量圧力特性に無関係に、主弁MVの開弁圧を調節でき、緩衝器D1の減衰力を調整できる。つまり、第一フェール弁FV1は、圧力制御弁PVの圧力制御に影響を与えない。
他方、フェール時にあっては、開閉弁SVが圧力制御通路PPを遮断するが、上流側の圧力が第一フェール弁FV1の開弁圧に達すると、第一フェール弁FV1が開弁して、作動油は第一フェール弁FV1を通過するようになる。このように、第一フェール弁FV1が開閉弁SVを迂回させて作動油を流すので、主弁MVの背圧は第一フェール弁FV1を流れる流量によって決まる圧力になる。
このように、本実施の形態の減衰弁V1では、正常時には第一フェール弁FV1の開弁圧に無関係に圧力制御弁PVで主弁MVへ作用させる背圧を調整でき、フェール時には、主弁MVへ作用する背圧は第一フェール弁FV1の流量圧力特性と通過流量に依存した圧力に調整される。
よって、本発明の減衰弁V1によれば、正常時における流量に対する圧力特性の可変幅を自由に設定でき、第一フェール弁FV1は正常時において圧力制御弁PVによる圧力制御に影響を与えないので、第一フェール弁FV1の開弁圧も圧力制御弁PVの圧力特性の可変幅と無関係に自由に設定できる。つまり、第一フェール弁FV1の通過流量に対する圧力特性を自由に設定できるので、第一フェール弁FV1の開弁圧を圧力制御弁PVによる制御で調整される上限圧力よりも高くしておく必要もない。したがって、本発明の減衰弁V1によれば、フェール状態における主弁MVに作用させる背圧の圧力は正常時における圧力よりも高くなる問題も解消され、フェール状態における減衰力特性を自由に設定できる。
この減衰弁V1では、フェール状態における減衰力特性を自由に設定できるので、図3に示すように、たとえば、第一フェール弁FV1の流量圧力特性(図3中線A)を圧力制御弁PVによる制御可能域(図3中の圧力制御弁PVの流量圧力特性の下限Lowと上限Highの間の領域)に収め得る。よって、図4に示すように、フェール時においても緩衝器D1は最適な減衰力特性で減衰力を発揮できる。なお、図4中、緩衝器D1が正常時においてピストン速度に対して出力可能な減衰力範囲を破線とハッチングで示し、フェール時においてピストン速度に対して出力可能な減衰力を実線で示している。フェール時におけるピストン速度に対する減衰力の特性である減衰力特性は、第一フェール弁FV1の流量圧力特性の設定によって、任意に変更可能である。前記したところから、本発明の減衰弁V1は、正常時にフェール状態へ移行せず、フェール状態における減衰力特性を自由に設定可能である。なお、第一フェール弁FV1は、前記したところでは、リリーフ弁とされているが、チョークやオリフィスなどの絞りとしてもよい。
また、図5に示す第一の実施の形態の一変形例における減衰弁V11のように、第一フェール弁FV1をオリフィス20とリリーフ弁21とを並列して構成し、これを第一フェール通路FP1に設けるようにしてもよい。このようにすると、フェール時において、圧力制御通路PPの開閉弁SVの上流側の圧力がリリーフ弁21の開弁圧に達するまでは、作動油はオリフィス20を通過し、流量が増加して圧力制御通路PPの開閉弁SVの上流側の圧力がリリーフ弁21の開弁圧に達するとリリーフ弁21が開弁して第一フェール通路FP1を開放するようになる。したがって、この一変形例における減衰弁V11にあっては、フェール時において、ピストン速度が低い際にはオリフィス20によって主弁MVの開弁圧と弁開度が制御され、圧力制御通路PPを流れる流量が増加するピストン速度が高い際には、リリーフ弁21が開弁するのでリリーフ弁21によって主弁MVの開弁圧と弁開度が制御される。よって、この一変形例における減衰弁V11における減衰力特性は、図6に示すように、ピストン速度が低い状態では減衰力がピストン速度の増加に応じて大きくなり、ピストン速度が高くなってリリーフ弁21が開弁する状態となると、ピストン速度の増加に対して減衰力の増加割合はピストン速度が低い状態よりも小さくなる特性となる。このように、第一フェール弁FV1を複数の弁を並列して構成すると、フェール時における減衰力特性を任意に設定できる。また、フェール時における緩衝器D1のピストン速度が低速域にある際の減衰力特性と、ピストン速度が高速域にある際の減衰力特性を独立に設定でき、減衰力特性の設定自由度が向上する。なお、図6においても図4と同様に、緩衝器D1が正常時においてピストン速度に対して出力可能な減衰力範囲を破線とハッチングで示し、フェール時においてピストン速度に対して出力可能な減衰力を実線で示している。
さらに、第一フェール弁FV1の流量に対する圧力特性を圧力制御弁PVによる圧力制御範囲内で設定する場合には、緩衝器D1が正常動作している状態に近い減衰力特性で減衰力の発生が可能となり、フェールモードへの移行時に急激に減衰力特性が変化してしまわない。さらに、リリーフ弁21の流量に対する圧力特性の調整により、緩衝器D1のピストン速度が低速域にある場合には、図6中一点鎖線で示すように、圧力制御弁PVによる圧力制御範囲内とし、高速域にある場合にこの圧力制御範囲を超えて大きな減衰力を発揮するような設定も可能である。
また、減衰弁V1,V11が主通路MPと主弁MVとを備えて圧力制御弁PVで主弁MVに作用させる背圧を調節するようにしているので、背圧が作用する主弁MVの受圧面積を大きくすると、背圧に対する主弁MVの開弁圧の増幅度合を大きくできる。したがって、電磁弁EVを制御するソレノイドSolの最大出力を小さくでき、小さなソレノイドSolを利用しても減衰力調整幅を大きく確保でき、減衰弁V1,V11を小型にできる。よって、減衰弁V1,V11を搭載スペースに制約のある緩衝器D1に適用しても、緩衝器の車両への搭載性も良好となる。
なお、この場合、第一フェール弁FV1をオリフィス20とリリーフ弁21とで構成しているが、チョークとリリーフ弁とで構成してもよいし、オリフィス20とリリーフ弁21とで構成する場合、リリーフ弁21をリーフバルブで、オリフィス20をリーフバルブに設けた切欠或いはリーフバルブが離着座する弁座に打刻して設けると構造が簡単となる。
<第二の実施の形態>
つづいて、第二の実施の形態の減衰弁V2について説明する。第二の実施の形態の減衰弁V2は、図7に示すように、第一の実施の形態の減衰弁V1の構成に、第二フェール通路FP2と、この第二フェール通路FP2の途中に第二フェール弁VF2を加え、さらに、主通路を緩衝器D2内に設けた伸側室13と圧側室14とを連通する伸側主通路MPeと圧側主通路MPcとで構成し、主弁を伸側主通路MPeに設けた伸側主弁MVeと圧側主通路MPcに設けた圧側主弁MVcとで構成している。そして、減衰弁V2は、緩衝器D2のピストン部に設けられており、緩衝器D2の伸長時には伸側主弁MVeで作動油の流れに抵抗を与え、緩衝器D2の収縮時には圧側主弁MVcで作動油の流れに抵抗を与えて、緩衝器D2の伸縮の際に減衰力を発揮するようになっている。
他方、緩衝器D2は、図8に示すように、シリンダ10と、シリンダ10内に摺動自在に挿入されるピストン11と、シリンダ10内に移動挿入されてピストン11に連結されるロッド12と、シリンダ10内に挿入したピストン11で区画した伸側室13と圧側室14と、シリンダ10外周を覆ってシリンダ10との間にリザーバ17を形成する外筒18とを備えて構成されており、伸側室13、圧側室14およびリザーバ17内には作動油が充填されるとともにリザーバ17には作動油の他に気体が充填されている。なお、緩衝器D2には、作動油以外にも、減衰力を発揮可能な流体の使用が可能である。
そして、この緩衝器D2の場合、リザーバ17から圧側室14へ向かう作動油の流れのみを許容する吸込通路19と、圧側室14からリザーバ17へ向かう作動油の流れのみを許容する圧側減衰通路22を備えている。
したがって、この緩衝器D2は、収縮作動する際には、ピストン11が図8中下方へ移動して圧側室14が圧縮され、圧側室14内の作動油が圧側主弁MVcを介して伸側室13へ移動する。この収縮作動時には、ロッド12がシリンダ10内に侵入するためシリンダ10内でロッド侵入体積分の作動油が過剰となり、過剰分の作動油がシリンダ10から圧側減衰通路22を介してリザーバ17へ押し出される。緩衝器D2は、圧側主弁MVcで圧側室14と伸側室13に差圧を生じさせ、さらに、圧側減衰通路22で圧力室14内の圧力を上昇せしめて圧側減衰力を発揮する。
反対に、緩衝器D2が伸長作動する際には、ピストン11が図8中上方へ移動して伸側室13が圧縮され、伸側室13内の作動油が伸側主弁MVeを介して圧側室14へ移動する。この伸長作動時には、ロッド12がシリンダ10内から退出するので、このロッド12のシリンダ10から退出する体積分の作動油がリザーバ17から吸込通路19を介して圧側室14へ供給される。そして、緩衝器D2は、伸側主弁MVeで伸側室13と圧側室14に差圧を生じさせ、伸側減衰力を発揮する。
なお、本実施の形態の緩衝器D2では、リザーバ17を設けており吸込通路19と圧側減衰通路22とを設けているが、緩衝器D2からリザーバ17、吸込通路19および圧側減衰通路22を廃止する代わりに、シリンダ10内に摺動自在にフリーピストンを挿入してシリンダ10内に気室を設けるようにしてもよい。このように、緩衝器D2をシリンダ10内にロッド12が出入りする際に気室を拡大縮小させてシリンダ10内の容積変化を補償するいわゆる単筒型の緩衝器として構成できる。
つづいて、減衰弁V2の減衰弁V1と異なる部分について詳しく説明する。減衰弁V2は、ピストン11に設けられている。まず、圧力制御通路PPは、この場合、伸側室13に接続される伸側圧力導入通路Ieおよび圧側圧力排出通路Ecと、圧側室14に接続される圧側圧力導入通路Icおよび伸側圧力排出通路Eeと、一端が伸側圧力導入通路Ieおよび圧側圧力導入通路Icに接続されるとともに他端が伸側圧力排出通路Eeおよび圧側圧力排出通路Ecに接続される調整通路Pcとを備えて構成される。
伸側圧力導入通路Ieの途中には、伸側室13から調整通路Pcへ向かう作動油の流れのみを許容する逆止弁Cieが設けられ、圧側圧力導入通路Icの途中には、圧側室14から調整通路Pcへ向かう作動油の流れのみを許容する逆止弁Cicが設けられている。また、伸側圧力排出通路Eeの途中には、調整通路Pcから圧側室14へ向かう作動油の流れのみを許容する逆止弁Ceeが設けられ、圧側圧力排出通路Ecの途中には、調整通路Pcから伸側室13へ向かう作動油の流れのみを許容する逆止弁Cecが設けられている。
よって、緩衝器D2が伸長作動する場合、伸側室13が圧縮されるので、作動油は、逆止弁Cieを開いて、伸側圧力導入通路Ieを通じて調整通路Pcへ流れる。さらに、作動油は、逆止弁Ceeが開いて伸側圧力排出通路Eeを通じて圧側室14へ移動する。反対に、緩衝器D2が収縮作動する場合、圧側室14が圧縮されるので、作動油は、逆止弁Cicを開いて、圧側圧力導入通路Icを通じて調整通路Pcへ流れる。さらに、作動油は、逆止弁Cecが開いて圧側圧力排出通路Ecを通じて伸側室13へ移動する。つまり、緩衝器D2は、伸長しても収縮しても、調整通路Pcには常に導入通路Ie,Ic側を上流として排出通路Ee,Ec側を下流として一方通行に作動油が流れるようになっている。
調整通路Pcには、上流側から順に絞りO、開閉弁SVおよび圧力制御弁PVを備えた電磁弁EVが設けられている。また、第一フェール通路FP1は、調整通路Pcの絞りOと開閉弁SVとの間から分岐して開閉弁SVと圧力制御弁PVとの間に通じて開閉弁SVを迂回しており、第一フェール通路FP1の途中にはオリフィスで構成された第一フェール弁FV1が設けられている。
さらに、第二フェール通路FP2は、調整通路Pcの絞りOと開閉弁SVとの間から分岐して電磁弁EVの下流へと通じて電磁弁EVを迂回しており、第二フェール通路FP2の途中にはリリーフ弁で構成された第二フェール弁FV2が設けられている。第二フェール弁FV2は、圧力制御通路PPの絞りOの下流側の圧力が開弁方向に作用する一方、ばねFV2sによる附勢力が閉弁方向に作用している。つまり、第二フェール弁FV2は、第二フェール弁FV2の上流の圧力がばねFV2sによって設定される所定の開弁圧に達すると開弁するリリーフ弁とされている。
この減衰弁V2の場合、圧力制御弁PVと第二フェール弁FV2とが圧力制御通路PPに対して並列配置される関係にある。第二フェール弁FV2の開弁圧が圧力制御弁PVで制御できる上限圧力よりも小さい場合、圧力制御弁PVで伸側主弁MVeと圧側主弁MVcの背圧を上限圧に制御しようとしても第二フェール弁FV2が開弁してしまうため、このような設定では、ソレノイドSolへ与える電流を正常にコントロールできる状態においても背圧の上限が第二フェール弁FV2の開弁圧に制限されてしまう。よって、第二フェール弁FV2の開弁圧は、圧力制御弁PVで制御できる上限圧力よりも大きくしてある。
主通路は、前記したように、ピストン11に設けられて伸側室13と圧側室14とを連通する伸側主通路MPeと、同じくピストン11に設けられて伸側室13と圧側室14とを連通する圧側主通路MPcとで構成されている。
主弁は、伸側主通路MPeに設けた伸側主弁MVeと圧側主通路MPcに設けた圧側主弁MVcとで構成されている。伸側主弁MVeは、伸側室13の圧力が開弁方向に作用し、絞りOによって伸側室13の圧力が減圧されて背圧として閉弁方向に作用し、さらには、ばねMVesによる附勢力が閉弁方向に作用している。よって、伸側主弁MVeは、伸側室13の圧力の作用によって伸側主弁MVeを開弁させる力が、背圧およびばねMVesの作用によって伸側主弁MVeを閉弁させる力を上回ると開弁して、通過する作動油の流れに抵抗を与えるようになっている。圧側主弁MVcは、圧側室14の圧力が開弁方向に作用し、絞りOによって圧側室14の圧力が減圧されて背圧として閉弁方向に作用し、さらには、ばねMVcsによる附勢力が閉弁方向に作用している。よって、圧側主弁MVcは、圧側室14の圧力の作用によって圧側主弁MVcを開弁させる力が、背圧およびばねMVcsの作用によって圧側主弁MVcを閉弁させる力を上回ると開弁して、通過する作動油の流れに抵抗を与えるようになっている。
よって、この減衰弁V2では、緩衝器D2が伸長作動する場合、電磁弁EVが正常である際には、圧力制御弁PVで伸側主弁MVeに作用する背圧を制御して伸側主弁MVeの開弁圧と開弁時の弁開度を調整できるので、緩衝器D2の伸長作動時の減衰力を制御できる。さらに、減衰弁V2では、緩衝器D2が収縮作動する場合、電磁弁EVが正常である際には、圧力制御弁PVで圧側主弁MVcに作用する背圧を制御して圧側主弁MVcの開弁圧と開弁時の弁開度を調整できるので、緩衝器D2の収縮作動時の減衰力を制御できる。この正常時には、第二フェール弁FV2は閉弁状態であり、第一フェール弁FV1は作動油の通過を許容するが、第一フェール弁FV1に並列される開閉弁SVも正常動作時には開弁状態であるから、正常時には第一フェール弁FV1および第二フェール弁FV2も圧力制御弁PVの圧力制御に影響を与えない。このように、減衰弁V2にあっては、一つの圧力制御弁PVで伸側主弁MVeと圧側主弁MVcの開弁圧と弁開度を調整できる。
これに対して、電磁弁EVが正常機能できないフェール時には、調整通路Pcが開閉弁SVによって遮断される。この場合、第一フェール通路FP1が開閉弁SVを迂回し、第二フェール通路FP2が電磁弁EVを迂回して、圧力制御通路PPの上流と下流とが連通状態に置かれるので、作動油は圧力制御通路PPを通過できる。緩衝器D2のピストン速度が低く、流量が少ない場合、第二フェール弁FV2は開弁しないが、第一フェール弁FV1を作動油が通過するため、伸側主弁MVeと圧側主弁MVcの背圧が第一フェール弁FV1の流量圧力特性に応じた圧力に調整されて伸側主弁MVeおよび圧側主弁MVcの開弁圧と弁開度が調整される。他方、緩衝器D2のピストン速度が高く、流量が多くなって、第一フェール弁FV1によって調整通路Pcの上流の圧力が上昇して、第二フェール弁FV2の開弁圧に達すると、第二フェール弁FV2が開弁してリリーフ機能を発揮して、調整通路Pcの絞りOの下流であって開閉弁SVよりも上流の圧力が第二フェール弁FV2の流量圧力特性と通過流量に依存した圧力に調整される。以上から、フェール時にあっても、減衰弁V2は、伸側主弁MVeおよび圧側主弁MVcを通過する作動油の流れに抵抗を与えられ、減衰力を発揮できる。
このように構成された減衰弁V2では、第一の実施の形態の減衰弁V1と同様に、電磁弁EVの制御によって、伸側主弁MVeおよび圧側主弁MVcへ作用させる背圧を制御して、減衰力を調節できる。
また、圧力制御通路PPにおいて開閉弁SVを圧力制御弁PVよりも上流に配置しても、開閉弁SVを迂回する第一フェール通路FP1と電磁弁EVを迂回する第二フェール通路FP2を設けたので、第一フェール通路FP1および第二フェール通路FP2は有効に機能しており、フェール機能を失わない。よって、本発明の減衰弁V2によれば、正常時にフェール状態へ移行して減衰力制御がし難くなってしまう問題を生じない。
この減衰弁V2の場合、開閉弁SVと第一フェール弁FV1とが並列配置される関係にあるので、正常時にあって開閉弁SVが圧力制御通路PPを開放している状態では、作動油が開閉弁SVを少ない抵抗で通過できる。また、第二フェール弁FV2の開弁圧は圧力制御弁PVの制御可能上限圧力よりも高い圧力に設定されている。よって、開閉弁SVが圧力制御通路PPを開放している状態では、第二フェール弁FV2は開弁せず、伸側主弁MVeおよび圧側主弁MVcの背圧は圧力制御弁PVによって調整されるので、第一フェール弁FV1および第二フェール弁FV2の流量圧力特性に無関係に、伸側主弁MVeおよび圧側主弁MVcの開弁圧を調節でき、緩衝器D2の減衰力を調整できる。
他方、フェール時にあっては、開閉弁SVが圧力制御通路PPを遮断するが、第一フェール弁FV1が開閉弁SVを迂回させて作動油を流し、伸側主弁MVeおよび圧側主弁MVcの背圧は第一フェール弁FV1を流れる流量によって決まる圧力になる。また、第二フェール弁FV2が開弁する場合には、伸側主弁MVeおよび圧側主弁MVcの背圧は、第一フェール弁FV1と第二フェール弁FV2の流量圧力特性によって決まる圧力になる。
このように、本実施の形態の減衰弁V2では、正常時には第一フェール弁FV1および第二フェール弁FV2に無関係に圧力制御弁PVで伸側主弁MVeおよび圧側主弁MVcへ作用させる背圧を調整でき、フェール時には、伸側主弁MVeおよび圧側主弁MVcへ作用する背圧は第一フェール弁FV1、或いは、第一フェール弁FV1および第二フェール弁FV2の流量圧力特性と通過流量に依存した圧力に調整される。
よって、本発明の減衰弁V2によれば、第一フェール弁FV1および第二フェール弁FV2は正常時において圧力制御弁PVによる圧力制御に影響を与えないので、正常時における流量に対する圧力特性の可変幅を自由に設定できる。そして、第一フェール弁FV1の通過流量に対する圧力特性を自由に設定できる。本発明の減衰弁V2によれば、フェール状態における伸側主弁MVeおよび圧側主弁MVcに作用させる背圧の圧力は正常時における圧力よりも常に高くなる問題も解消され、フェール状態における減衰力特性の設定自由度が向上する。この減衰弁V2では、フェール状態において、緩衝器D2のピストン速度が低速時には、第一フェール弁FV1によって伸側主弁MVeおよび圧側主弁MVcの開弁圧が制御され、圧力制御通路PPを流れる流量が増加するピストン速度が高い際には、第二フェール弁FV2が開弁するのでこの第二フェール弁FV2によって主弁MVの伸側主弁MVeおよび圧側主弁MVcと弁開度が制御される。よって、この減衰弁V2が適用された緩衝器D2における減衰力特性は、図9に示すように、ピストン速度が低い状態では減衰力がピストン速度の増加に応じて大きくなり、ピストン速度が高くなって第二フェール弁FV2が開弁する状態となると、ピストン速度の増加に対して減衰力の増加割合はピストン速度が低い状態よりも小さくなる特性となる。このように、第一フェール弁FV1に加えて第二フェール弁FV2を設けると、フェール時における緩衝器D2のピストン速度が低速域にある際の減衰力特性と、ピストン速度が高速域にある際の減衰力特性を独立に設定でき、減衰力特性の設定自由度が向上する。なお、図9においても図4と同様に、緩衝器D2が正常時においてピストン速度に対して出力可能な減衰力範囲を破線とハッチングで示し、フェール時においてピストン速度に対して出力可能な減衰力を実線で示している。
また、減衰弁V2が伸側主通路MPeと圧側主通路MPcと、伸側主弁MVeと圧側主弁MVcとを備えて、圧力制御弁PVで伸側主弁MVeと圧側主弁MVcに作用させる背圧を調節するようにしているので、一つの圧力制御弁PVで伸側主弁MVeと圧側主弁MVcの開弁圧を制御できる。また、背圧が作用する伸側主弁MVeと圧側主弁MVcの受圧面積を大きくすると、背圧に対する伸側主弁MVeと圧側主弁MVcの開弁圧の増幅度合を大きくできる。したがって、電磁弁EVを制御するソレノイドSolの最大出力を小さくでき、小さなソレノイドSolを利用しても減衰力調整幅を大きく確保でき、減衰弁V2を小型にできる。よって、減衰弁V2を搭載スペースに制約のある緩衝器D2に適用しても、緩衝器の車両への搭載性も良好となる。さらに、伸側主弁MVeの背圧の受圧面積を圧側主弁MVcの背圧の受圧面積より大きくしておくと、伸側の減衰力を圧側の減衰力より大きくするような車両用の緩衝器に望まれる減衰力を容易に発揮できる。
<実施例>
前記では、回路図を用いて本発明の減衰弁を説明したが、以下に、緩衝器D2に具体的な構造を備えた減衰弁V2を適用した実施例について説明する。本実施例における減衰弁V2は、図10に示すように、緩衝器D2に適用されている。
緩衝器D2は、作動油などの液体を満たしたシリンダ10と、シリンダ10内に移動自在に挿入されるピストン11と、シリンダ10内にピストン11で区画した伸側室13と圧側室14と、シリンダ10内に移動自在に挿入されてピストン11に連結されるロッド12と、減衰弁V2とを備えて構成されている。また、図示はしないが、シリンダ10の図10中下方には、フリーピストンが摺動自在に挿入されており、このフリーピストンによってシリンダ10内であって図10中圧側室14の下方に気体が充てんされる気室が設けられている。よって、この緩衝器D2が伸縮してシリンダ10内にロッド12が出入りして、伸側室13と圧側室14の合計容積が変化すると、フリーピストンがシリンダ10内で上下動して気室を拡大あるいは縮小させて、ロッド12がシリンダ10内に出入りする体積を補償する。つまり、この緩衝器D2は、単筒型の緩衝器として構成されている。
減衰弁V2は、ピストン11に設けた主通路としての伸側主通路MPeおよび圧側主通路MPcと、ピストン11に積層されて伸側主通路MPeの出口端を開閉するリーフバルブVeを備えた伸側主弁MVeと、同じくピストン11に積層されて圧側主通路MPcの出口端を開閉するリーフバルブVcを備えた圧側主弁MVcと、伸側主弁MVeおよび圧側主弁MVcの背圧を制御するための圧力制御通路PPと、絞りと、開閉弁SVおよび圧力制御弁PVを備えた電磁弁EVと、第一フェール通路FP1と、第一フェール通路FP1に設けたオリフィスで構成される第一フェール弁FV1と、第二フェール通路FP2と、第二フェール通路FP2に設けたリリーフ弁で構成される第二フェール弁FV2とを備えて構成されている。
そして、シリンダ10に対してピストン11が図10中上下方向となる軸方向に移動する際に、ピストン11に設けた伸側主通路MPeを通過する作動油の流れに対して伸側主弁MVeで、ピストン11に設けた圧側主通路MPcを通過する作動油の流れに対して圧側主弁MVcで抵抗を与えて減衰力を発揮するようになっている。なお、緩衝器D2の伸側主通路MPeのみを主通路とし伸側主弁MVeのみを主弁として、或いは、圧側主通路MPcのみを主通路とし圧側主弁MVcのみを主弁とする場合には、減衰弁V1を緩衝器D2に適用すればよい。
以下、減衰弁V2および緩衝器D2について詳細に説明する。ロッド12は、この場合、ピストン11を保持するピストン保持部材28と、一端がピストン保持部材28に連結されてピストン保持部材28とともに電磁弁EVを収容する中空な収容部Lを形成する電磁弁収容筒29と、一端が電磁弁収容筒29に連結されるとともに他端がシリンダ10の上端から外方へ突出するロッド部材30とで形成されている。
ピストン保持部材28は、外周に環状のピストン11が装着される保持軸28aと、保持軸28aの図10中上端外周に設けたフランジ28bと、フランジ28bの図10中上端外周に設けた筒状のソケット28cとを備えている。また、ピストン保持部材28は、保持軸28aの先端から開口して軸方向に伸び前記ソケット28c内に通じる縦孔28dと、フランジ28bの図10中下端に前記保持軸28aを囲むようにして設けた環状溝28eと、環状溝28eをソケット28c内に連通するポート28fと、環状溝28eを縦孔28d内に連通させる横孔28gと、保持軸28aの外周から開口して縦孔28dに通じる伸側パイロットオリフィスOeと圧側パイロットオリフィスOcと、保持軸28aの図1中下端外周に設けた螺子部28iと、フランジ28bの上端に形成されて縦孔28dに通じる溝28jとを備えて構成されている。この実施例では、絞りは、前記した伸側パイロットオリフィスOeと圧側パイロットオリフィスOcとを備えて構成されている。
保持軸28aに設けた縦孔28d内には、筒状であって外周に設けた環状溝43aで縦孔28d内に伸側パイロットオリフィスOeと圧側パイロットオリフィスOcとを連通させる連通路44を形成するセパレータ43が挿入されている。このセパレータ43の図10中下端には、当該下端の開口を囲む環状弁座43bが設けられている。縦孔28dは、セパレータ43内を介して圧側室14をソケット28c内へ連通させるが、伸側パイロットオリフィスOeと圧側パイロットオリフィスOcがセパレータ43によって縦孔28d内を介しては圧側室14およびソケット28c内に通じないようになっている。さらに、横孔28gも連通路44に通じており、この横孔28gもセパレータ43によって縦孔28d内を介しては圧側室14およびソケット28c内に通じないようになっている。
なお、前記した伸側パイロットオリフィスOeと圧側パイロットオリフィスOcは、通過する作動油の流れに対して抵抗を与えればよいので、オリフィスの代わりにチョーク通路といった他の絞りとされてもよい。
ソケット28cの図10中上端外周には、環状の凹部28kが設けられており、また、ソケット28cには、凹部28kからソケット28c内に通じる貫通孔28mが設けられている。凹部28kには、環状板42aが装着されており、この環状板42aが図10中上方からばね部材42bによって附勢されて、貫通孔28mを開閉する逆止弁Cecを構成している。
電磁弁収容筒29は、有頂筒状の収容筒部29aと、収容筒部29aよりも外径が小径であって当該収容筒部29aの頂部から図10中上方へ伸びる筒状の連結部29bと、収容筒部29aの側方から開口して内部へ通じる透孔29cとを備えて構成されている。そして、電磁弁収容筒29の収容筒部29aの内周にピストン保持部材28のソケット28cを螺着すると、電磁弁収容筒29にピストン保持部材28が一体化されるとともに、これら電磁弁収容筒29とピストン保持部材28とで収容筒部29a内に電磁弁EVが収容される収容部Lが形成され、収容部L内に詳しくは後述する調整通路Pcの一部が設けられる。また、収容部Lは、前記したポート28f、環状溝28eおよび横孔28gによって連通路44に連通されており、これらポート28f、環状溝28e、横孔28g、連通路44、伸側パイロットオリフィスOeと圧側パイロットオリフィスOcで調整通路Pcを形成している。なお、収容部Lが連通路44に連通されていればよいので、ポート28f、環状溝28eおよび横孔28gを採用するのではなく、収容部Lと直接的に連通路44に連通する通路を設けるようにしてもよいが、ポート28f、環状溝28eおよび横孔28gを採用する収容部Lと連通路44を連通する通路の加工が容易となる利点がある。
前記したように電磁弁収容筒29にピストン保持部材28が一体化されると、透孔29cが凹部28kに対向して、貫通孔28mと協働して、収容部Lを伸側室13に連通させる圧側圧力排出通路Ecを構成するようになっており、環状板42aとばね部材42bとで、収容部L内から伸側室13へ向かう作動油の流れのみを許容する逆止弁Cecが形成される。よって、圧側圧力排出通路Ecは、透孔29c、凹部28k、貫通孔28mによって形成され、この圧側圧力排出通路Ecに逆止弁Cecが設けられている。
また、ピストン保持部材28における縦孔28d内には、セパレータ43の図10中下端に設けた環状弁座43bに離着座する逆止弁Ceeが設けられており、逆止弁Ceeは、圧側室14側から収容部Lへ向かう作動油の流れを阻止するとともに、収容部Lから圧側室14へ向かう作動油の流れのみを許容するようになっている。よって、伸側圧力排出通路Eeは、セパレータ43によって、縦孔28d内に形成されている。
ロッド部材30は、筒状であって、図10中下端の内周が拡径されていて電磁弁収容筒29の連結部29bの挿入を許容し、この連結部29bの螺着を可能とする螺子部(符示せず)を備えている。このように、ロッド部材30、電磁弁収容筒29およびピストン保持部材28を一体化すると、ロッド12が形成される。
なお、ロッド部材30内および電磁弁収容筒29における連結部29b内には、後述するソレノイドSolへ電力供給するハーネスHが挿通されており、ハーネスHの上端について図示はしないがロッド部材30の上端から外方へ伸びており、電源に接続される。
ピストン保持部材28に設けた保持軸28aの外周には、図12に示すように、環状のピストン11とともに、伸側主弁MVeと圧側主弁MVcが組み付けられており、これらがナットNによって保持軸28aに装着されている。伸側主弁MVeは、伸側リーフバルブVeと、伸側リーフバルブVeを附勢する伸側スプールSeと、内部圧力で伸側スプールSeを押圧する伸側背圧室Ceとを備えて構成され、圧側主弁MVcは、圧側リーフバルブVcと、圧側リーフバルブVcを附勢する圧側スプールScと、内部圧力で圧側スプールScを押圧する圧側背圧室Ccとを備えて構成されている。
ピストン11の図12中上方に圧側環状スペーサ80、外形が円形な複数の環状板を積層して構成されたカラー81と、カラー81の外周に摺動自在に装着される環状の圧側リーフバルブVc、同じくカラー81の外周に摺動自在に装着される圧側環状プレート82、圧側ストッパ83と、圧側スプールSc、圧側背圧室Ccを形成する圧側チャンバ31とが組付けられ、ピストン11の図12中下方には、伸側環状スペーサ84、外形が円形な複数の環状板を積層して構成されたカラー85と、カラー85の外周に摺動自在に装着される環状の伸側リーフバルブVe、同じくカラー85の外周に摺動自在に装着される伸側環状プレート86、伸側ストッパ87、伸側スプールSe、伸側背圧室Ceを形成する伸側チャンバ32が組付けられる。
ピストン11は、この場合、上下二分割されたディスク11a,11bを重ね合わせて形成されており、伸側室13と圧側室14とを連通する伸側主通路MPeと圧側主通路MPcとが形成されている。このように、ピストン11を上下に分割されたディスク11a,11bで形成すると、複雑な形状の伸側主通路MPeおよび圧側主通路MPcを孔開け加工によらずして形成でき、安価かつ容易にピストン11を製造できる。また、図12において上方側のディスク11aの上端には、圧側主通路MPcに連通される環状窓11eと、環状窓11eの外周側に設けられて圧側主通路MPcを囲む環状の圧側弁座11cと、環状窓11eの内周に設けた内周シート部11fとが設けられている。他方、下方側のディスク11bの下端には、伸側主通路MPeに連通される環状窓11gと、環状窓11gの外周側に設けられて伸側主通路MPeを囲む環状の伸側弁座11dと、環状窓11gの内周に設けた内周シート部11hとが設けられている。
また、減衰弁V2は、この例では、前記した伸側主弁MVeと圧側主弁MVcと、通過する作動油の流れに抵抗を与える伸側パイロットオリフィスOeを介して圧側背圧室Ccに連通されるとともに通過する作動油の流れに抵抗を与える圧側パイロットオリフィスOcを介して伸側背圧室Ceに連通される連通路44と、伸側室13から圧側背圧室Ccへ向かう作動油の流れのみを許容する伸側圧力導入通路Ieと、圧側室14から伸側背圧室Ceへ向かう作動油の流れのみを許容する圧側圧力導入通路Icと、連通路44を含んで構成される調整通路Pcと、調整通路Pcの下流を伸側室13へ連通するとともに調整通路Pcから伸側室13へ向かう作動油の流れのみを許容する圧側圧力排出通路Ecと、調整通路Pcの下流を圧側室14へ連通するとともに調整通路Pcから圧側室14へ向かう作動油の流れのみを許容する伸側圧力排出通路Eeと、調整通路Pcに設けられて調整通路Pcの上流圧力を制御する電磁弁EVとを備えて構成されている。
伸側リーフバルブVeは、図12に示すように、ピストン保持部材28の保持軸28aの挿通を許容するため環状とされており、この例では、一枚の環状板で構成されているが、複数枚の環状板を積層して構成してもよい。そして、このように構成された伸側リーフバルブVeは、ピストン11の内周シート部11hに積層される伸側環状スペーサ84を介してピストン11の図12中下方に積層される。また、伸側リーフバルブVeは、その外周に伸側弁座11dへ着座した際にオリフィスとして機能する切欠OVeを備えており、カラー85の外周に摺動自在に装着されている。カラー85の外周には、伸側リーフバルブVeに積層される伸側環状プレート86が摺動自在に装着されている。なお、本実施例では、伸側環状プレート86の反リーフバルブ側に伸側環状プレート86よりも外径が小径な環状の補助バルブ91が積層されており、この補助バルブ91もまたカラー85の外周に摺動自在に装着されている。伸側リーフバルブVe、伸側環状プレート86および補助バルブ91を積層した際の軸方向長さは、カラー85の軸方向長さよりも短くなるようにしてある。さらに、カラー85の図12中下方には、環状であって外径が補助バルブ91および伸側環状プレート86の内径よりも大径に設定される伸側ストッパ87が設けられており、この伸側ストッパ87の下方に伸側チャンバ32が積層される。よって、伸側リーフバルブVe、伸側環状プレート86および補助バルブ91は、カラー85によってガイドされて伸側環状スペーサ84と伸側ストッパ87との間で軸方向となる図12中上下方向へ移動できるようになっている。
そして、伸側リーフバルブVeは、伸側主通路MPe側から圧力によって押圧されると、外周が伸側環状プレート86とともに撓むとともに、伸側環状プレート86および補助バルブ91とともに全体がピストン11からの後退が可能とされている。リーフバルブVe、伸側環状プレート86および補助バルブ91のピストン11からの後退量は、カラー85の軸方向長さによって設定される。この場合、カラー85が複数枚の環状板で構成されるので、環状板の積層枚数で調節可能であるが、カラー85を単一の環状板で構成してもよい。
前述したように、伸側リーフバルブVeは、ピストン11の内周シート部11hに積層される伸側環状スペーサ84を介してピストン11の図12中下方に積層されており、伸側リーフバルブVeに負荷が作用しない状態では、リーフバルブVeと伸側弁座11dとの間に隙間が形成される。この隙間の図12中上下方向長さは、厚みの異なる伸側環状スペーサ84に交換するか、伸側環状スペーサ84の積層枚数の変更によって調節できる。なお、伸側リーフバルブVeと伸側弁座11dとの間の隙間は、内周シート部11hの高さを伸側弁座11dの高さよりも高くしておくと、伸側環状スペーサ84を廃して伸側リーフバルブVeを直接に内周シート部11hへ積層しても形成できる。ただし、伸側環状スペーサ84を設けると、前記隙間の長さの調節が容易となる。
また、リーフバルブVeは、背面側となる反ピストン側から伸側背圧室Ceの圧力に起因する附勢力が負荷されると撓むが、この附勢力が大きくなると伸側弁座11dに着座するようになって伸側主通路MPeを閉塞するようになる。この状態では切欠OVeのみで伸側主通路MPeを圧側室14に連通させる。
伸側環状プレート86は、伸側リーフバルブVeよりも撓み剛性が高くなっている。そのため、伸側環状プレート86の軸方向長さ(厚み)を伸側リーフバルブVeの軸方向長さ(厚み)より長くしてあるが、軸方向長さによって剛性を強くするだけでなく、伸側リーフバルブVeよりも高剛性の材料で伸側環状プレート86を形成するようにしてもよい。
ここで、伸側環状プレート86の内径は、ピストン11に設けた内周シート部11hの外径よりも小径に設定されている。伸側環状プレート86の外径は、伸側弁座11dの内径よりも大径に設定されている。そして、伸側環状プレート86が背面側から伸側背圧室Ce内の圧力と伸側スプールSeによって押圧されると、伸側環状プレート86が伸側リーフバルブVeを押し上げて撓ませるようになる。伸側リーフバルブVeが伸側弁座11dに着座するまで撓むと、伸側環状プレート86の内外径が前述のように設定されており、伸側環状プレート86が内周シート部11hと伸側弁座11dとで支持される格好になるため、伸側背圧室Ce内の圧力と伸側スプールSeによる附勢力を伸側環状プレート86で受け止めるようになる。よって、伸側リーフバルブVeのそれ以上の変形が抑制され、伸側リーフバルブVeに過負荷がかからないようになっている。また、補助バルブ91は、伸側リーフバルブVeおよび伸側環状プレート86よりも外径が小径に設定されている。そのため、伸側リーフバルブVeおよび伸側環状プレート86が伸側主通路MPeの圧力で撓む場合に、補助バルブ91よりも外周側の方が撓みやすくなっていて、補助バルブ91を用いると、伸側減衰力の減衰力特性をチューニングできる。緩衝器D2に発生させる減衰力特性により補助バルブ91が不要であれば省略できる。反対に、補助バルブ91を複数枚積層してもよい。
続いて、伸側チャンバ32は、ピストン保持部材28における保持軸28aの外周に嵌合される筒状の装着部32aと、装着部32aの図12中下端外周に設けたフランジ部32bと、フランジ部32bの外周からピストン11側へ向けて伸びる摺接筒32cと、装着部32aの内周に設けた環状溝32dと、装着部32aの外周から環状溝32dに通じる切欠32eとを備えて構成されている。そして、伸側チャンバ32を保持軸28aに組み付けると、環状溝32dは保持軸28aに設けた圧側パイロットオリフィスOcに対向するようになっている。なお、伸側チャンバ32における装着部32aとカラー85との間には、伸側ストッパ87を介装してあるが、伸側ストッパ87を廃止して装着部32aをストッパとして機能させて伸側環状プレート86の移動下限を規制するようにしてもよい。ただし、伸側チャンバ32をピストン保持部材28の保持軸28aへ組みつけた際に、圧側パイロットオリフィスOcと環状溝32dとを対向させる位置へ調整する必要がある場合には、伸側ストッパ87を設けると伸側チャンバ32のピストン保持部材28に対する位置を調節できる。
摺接筒32c内には、伸側スプールSeが収容されている。伸側スプールSeは、外周を摺接筒32cの内周に摺接させており、当該摺接筒32c内で軸方向へ移動できるようになっている。伸側スプールSeは、環状のスプール本体33と、スプール本体33の図12中上端内周から立ち上がる環状突起34とを備えている。この環状突起34の内径は、伸側環状プレート86の外径よりも小径に設定されており、環状突起34が伸側環状プレート86の背面となる図12中下面に当接できるようになっている。
そして、このように、伸側チャンバ32に伸側スプールSeを組み付け、当該伸側チャンバ32を保持軸28aに組み付けると、伸側リーフバルブVeの背面側である図12中下方側に伸側背圧室Ceが形成される。なお、スプール本体33の内径は、装着部32aの外径より大きくしているが、これを装着部32aの外周に摺接する径に設定して、伸側背圧室Ceを伸側スプールSeで封じるようにするのも可能である。
また、伸側チャンバ32の装着部32aの内周には、環状溝32dが設けられるとともに、装着部32aの外周から当該環状溝32dに通じる切欠32eとを備えているので、伸側チャンバ32を保持軸28aに組み付けると、環状溝32dは保持軸28aに設けた圧側パイロットオリフィスOcに対向して、伸側背圧室Ceが圧側パイロットオリフィスOcに通じるようになっている。
さらに、伸側チャンバ32には、フランジ部32bの外周から開口する圧側圧力導入通路Icが設けられていて、圧側室14を伸側背圧室Ce内へ通じさせている。伸側チャンバ32のフランジ部32bの図12中上端には、環状板35が積層され、この環状板35と伸側スプールSeにおけるスプール本体33との間に介装されたばねMVesによって当該環状板35がフランジ部32bへ押しつけられて圧側圧力導入通路Icを閉塞するようになっている。なお、圧側圧力導入通路Icは、通過作動油の流れに対して抵抗を生じさせないように配慮されている。
この環状板35は、緩衝器D2の収縮作動時において、圧側室14が圧縮されて圧力が高まると当該圧力によって押圧されてフランジ部32bから離座して圧側圧力導入通路Icを開放し、伸側背圧室Ce内の圧力が圧側室14より高くなる緩衝器D2の伸長作動時にはフランジ部32bに押しつけられて圧側圧力導入通路Icを閉塞し、圧側室14からの作動油の流れのみを許容する逆止弁Cicの逆止弁弁体として機能している。この逆止弁Cicによって圧側圧力導入通路Icが圧側室14から伸側背圧室Ceへ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定される。
ばねMVesは、環状板35をフランジ部32bに押し付ける役割を担って、逆止弁弁体である環状板35とともに逆止弁Cicを構成するとともに、伸側スプールSeを伸側リーフバルブVeへ向けて附勢する役割をも担っている。伸側スプールSeをばねMVesで附勢しているので、伸側リーフバルブVeが撓んで伸側スプールSeがピストン11から離間する図12中下方へ押し下げられた状態となってから、伸側リーフバルブVeの撓みが解消しても、伸側スプールSeは伸側リーフバルブVeに追従して速やかに元の位置(図12に示す位置)に戻る。伸側スプールSeの附勢を別途のばね部材で附勢も可能であるが、逆止弁CicとばねMVesを共用すると部品点数を削減できるとともに構造が簡単となる利点がある。なお、伸側スプールSeの外径は、環状突起34の内径よりも大径に設定されていて、環状突起34が伸側環状プレート86に当接するようになっているので、伸側スプールSeは伸側背圧室Ceの圧力によって常に伸側リーフバルブVeへ向けて附勢される。
ピストン11の上方に積層される圧側リーフバルブVcは、図12に示すように、伸側リーフバルブVe同様に、ピストン保持部材28の保持軸28aの挿通を許容するため環状とされており、この例では、一枚の環状板で構成されているが、複数枚の環状板を積層して構成してもよい。そして、このように構成された圧側リーフバルブVcは、ピストン11の内周シート部11fに積層される圧側環状スペーサ80を介してピストン11の図12中上方に積層される。また、圧側リーフバルブVcは、その外周に圧側弁座11cへ着座した際にオリフィスとして機能する切欠OVcを備えており、カラー81の外周に摺動自在に装着されている。カラー81の外周には、圧側リーフバルブVcに積層される圧側環状プレート82が摺動自在に装着されている。なお、本実施の形態では、圧側環状プレート82の反圧側リーフバルブ側に圧側環状プレート82よりも外径が小径な環状の補助バルブ101が積層されており、この補助バルブ101もまたカラー81の外周に摺動自在に装着されている。圧側リーフバルブVc、圧側環状プレート82および補助バルブ101を積層した際の軸方向長さは、カラー81の軸方向長さよりも短くなるようにしてある。さらに、カラー81の図12中上方には、環状であって外径が補助バルブ101および圧側環状プレート82の内径よりも大径に設定される圧側ストッパ83が設けられており、この圧側ストッパ83の上方に圧側チャンバ31が積層される。よって、圧側リーフバルブVc、圧側環状プレート82および補助バルブ101は、カラー81によってガイドされて圧側環状スペーサ80と圧側ストッパ83との間で軸方向となる図12中上下方向へ移動できるようになっている。
そして、圧側リーフバルブVcは、圧側主通路MPc側から圧力によって押圧されると、外周が圧側環状プレート82とともに撓むとともに、圧側環状プレート82および補助バルブ101とともに全体がピストン11から後退できるようになっている。圧側リーフバルブVc、圧側環状プレート82および補助バルブ101のピストン11からの後退量は、カラー81の軸方向長さによって設定される。この場合、カラー81が複数枚の環状板で構成されるので、環状板の積層枚数で調節可能であるが、カラー81を単一の環状板で構成してもよい。
前述したように、圧側リーフバルブVcは、ピストン11の内周シート部11fに積層される圧側環状スペーサ80を介してピストン11の図12中上方に積層されており、圧側リーフバルブVcに負荷が作用しない状態では、圧側リーフバルブVcと圧側弁座11cとの間に隙間が形成される。この隙間の図12中上下方向長さは、厚みの異なる圧側環状スペーサ80に交換するか、圧側環状スペーサ80の積層枚数の変更によって調節できる。なお、圧側リーフバルブVcと圧側弁座11cとの間の隙間は、内周シート部11fの高さを圧側弁座11cの高さよりも高くしておくと、圧側環状スペーサ80を廃して圧側リーフバルブVcを直接に内周シート部11fへ積層しても形成できる。ただし、圧側環状スペーサ80を設けると、前記隙間の長さの調節を容易に行える。
また、圧側リーフバルブVcは、背面側となる反ピストン側から圧側背圧室Ccの圧力に起因する附勢力が負荷されると撓むが、この附勢力が大きくなると圧側弁座11cに着座するようになって圧側主通路MPcを閉塞するようになる。この状態では切欠OVcのみで圧側主通路MPcを伸側室13に連通させる。
圧側環状プレート82は、圧側リーフバルブVcよりも撓み剛性が高くなっている。そのため、圧側環状プレート82の軸方向長さ(厚み)を圧側リーフバルブVcの軸方向長さ(厚み)より長くしてあるが、軸方向長さによって剛性を強くするだけでなく、圧側リーフバルブVcよりも高剛性の材料で圧側環状プレート82を形成するようにしてもよい。
ここで、圧側環状プレート82の内径は、ピストン11に設けた内周シート部11fの外径よりも小径に設定されている。圧側環状プレート82の外径は、圧側弁座11cの内径よりも大径に設定されている。そして、圧側環状プレート82が背面側から圧側背圧室Cc内の圧力と圧側スプールScによって押圧されると、圧側環状プレート82が圧側リーフバルブVcを押し下げて撓ませるようになる。圧側リーフバルブVcが圧側弁座11cに着座するまで撓むと、圧側環状プレート82の内外径が前述のように設定されており、圧側環状プレート82が内周シート部11fと圧側弁座11cとで支持される格好になるため、圧側背圧室Cc内の圧力と圧側スプールScによる附勢力を圧側環状プレート82で受け止めるようになる。よって、圧側リーフバルブVcのそれ以上の変形が抑制され、圧側リーフバルブVcに過負荷がかからないようになっている。また、補助バルブ101は、圧側リーフバルブVcおよび圧側環状プレート82よりも外径が小径に設定されている。そのため、圧側リーフバルブVcおよび圧側環状プレート82が圧側主通路MPcの圧力で撓む場合に、補助バルブ101よりも外周側の方が撓みやすくなっていて、補助バルブ101を用いると圧側減衰力の減衰力特性をチューニングできる。緩衝器D2に発生させる減衰力特性により補助バルブ101が不要であれば省略できる。反対に、補助バルブ101を複数枚積層してもよい。
続いて、圧側チャンバ31は、ピストン保持部材28における保持軸28aの外周に嵌合される筒状の装着部31aと、装着部31aの図12中上端外周に設けたフランジ部31bと、フランジ部31bの外周からピストン11側へ向けて伸びる摺接筒31cと、装着部31aの内周に設けた環状溝31dと、装着部31aの外周から環状溝31dに通じる切欠31eとを備えて構成されている。そして、圧側チャンバ31を保持軸28aに組み付けると、環状溝31dは保持軸28aに設けた伸側パイロットオリフィスOeに対向するようになっている。なお、圧側チャンバ31における装着部31aとカラー81との間には、圧側ストッパ83を介装してあるが、圧側ストッパ83を廃止して装着部31aをストッパとして機能させて圧側環状プレート82の移動上限を規制するようにしてもよい。ただし、圧側チャンバ31をピストン保持部材28の保持軸28aへ組みつけた際に、伸側パイロットオリフィスOeと環状溝31dとを対向させる位置へ調整する必要がある場合には、圧側ストッパ83を設けると圧側チャンバ31のピストン保持部材28に対する位置を調節できる。
摺接筒31c内には、圧側スプールScが収容されている。圧側スプールScは、外周を摺接筒31cの内周に摺接させており、当該摺接筒31c内で軸方向へ移動できるようになっている。圧側スプールScは、環状のスプール本体37と、スプール本体37の図3中下端内周から立ち上がる環状突起38とを備えている。この環状突起38の内径は、圧側環状プレート82の外径よりも小径に設定されており、環状突起38が圧側環状プレート82の背面となる図12中上面に当接できるようになっている。
そして、このように、圧側チャンバ31に圧側スプールScを組み付け、当該圧側チャンバ31を保持軸28aに組み付けると、圧側リーフバルブVcの背面側である図12中上方側に圧側背圧室Ccが形成される。なお、スプール本体37の内径は、装着部31aの外径より大きくしているが、これを装着部31aの外周に摺接する径に設定して、圧側背圧室Ccを圧側スプールScで封じるようにしてもよい。
また、圧側チャンバ31の装着部31aの内周には、環状溝31dが設けられるとともに、装着部31aの外周から当該環状溝31dに通じる切欠31eとを備えており、圧側チャンバ31を保持軸28aに組み付けると、環状溝31dは保持軸28aに設けた伸側パイロットオリフィスOeに対向して、圧側背圧室Ccが伸側パイロットオリフィスOeに通じるようになっている。圧側背圧室Ccは、伸側パイロットオリフィスOeに通じているので、保持軸28aの縦孔28d内に形成した連通路44および圧側パイロットオリフィスOcを通じて伸側背圧室Ceにも連通される。
さらに、圧側チャンバ31には、フランジ部31bの外周から開口する伸側圧力導入通路Ieが設けられており、伸側室13を圧側背圧室Cc内へ通じさせている。圧側チャンバ31のフランジ部31bの図12中下端には、環状板39が積層され、この環状板39と圧側スプールScにおけるスプール本体37との間に介装されたばねMVcsによって当該環状板39がフランジ部31bへ押しつけられて伸側圧力導入通路Ieを閉塞するようになっている。なお、伸側圧力導入通路Ieは、通過作動油の流れに対して抵抗を生じさせないように配慮されている。
この環状板39は、緩衝器D2の伸長作動時において、伸側室13が圧縮されて圧力が高まると当該圧力によって押圧されてフランジ部31bから離座して伸側圧力導入通路Ieを開放し、圧側背圧室Cc内の圧力が伸側室13より高くなる緩衝器D2の収縮作動時にはフランジ部31bに押しつけられて伸側圧力導入通路Ieを閉塞し、伸側室13からの作動油の流れのみを許容する逆止弁Cieの逆止弁弁体として機能している。この逆止弁Cieによって伸側圧力導入通路Ieが伸側室13から圧側背圧室Ccへ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定される。
ここで、前述したように、連通路44は、ピストン保持部材28に設けた環状溝28e、ポート28fおよび横孔28gを通じて収容部L内に連通されている。よって、伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Ccは、伸側パイロットオリフィスOe、圧側パイロットオリフィスOcおよび連通路44を介して互いが連通されるだけでなく、伸側圧力導入通路Ieを介して伸側室13に連通され、圧側圧力導入通路Icを介して圧側室14に連通され、さらには、ポート28fおよび横孔28gによって収容部Lへも連通されている。
戻って、ばねMVcsは、環状板39をフランジ部31bに押し付ける役割を担って、逆止弁弁体である環状板39とともに逆止弁Cieを構成するとともに、圧側スプールScを圧側リーフバルブVcへ向けて附勢する役割をも担っている。圧側スプールScをばねMVcsで附勢しているので、圧側リーフバルブVcが撓んで圧側スプールScがピストン11から離間する図12中上方へ押し上げられた状態となってから、圧側リーフバルブVcの撓みが解消しても、圧側スプールScは圧側リーフバルブVcに追従して速やかに元の位置(図12に示す位置)へ戻る。圧側スプールScの附勢を別途のばね部材での附勢も可能であるが、逆止弁CieとばねMVcsを共用でき部品点数を削減できるとともに構造が簡単となる利点がある。なお、圧側スプールScの外径は、環状突起38の内径よりも大径に設定されていて、環状突起38が圧側環状プレート82に当接するようになっているので、圧側スプールScは圧側背圧室Ccの圧力によって常に圧側リーフバルブVcへ向けて附勢されるので、圧側スプールScのみの附勢を目的としたばね部材であれば設置しなくともよい。
そして、伸側スプールSeは、伸側背圧室Ceの圧力を受けて伸側環状プレート86を介して、伸側リーフバルブVeをピストン11へ向けて附勢するが、伸側スプールSeの伸側背圧室Ceの圧力を受ける受圧面積は、伸側スプールSeの外径を直径とする円の面積から環状突起34の内径を直径とする円の面積の差分となる。同様に、圧側スプールScは、圧側背圧室Ccの圧力を受けて圧側環状プレート82を介して、圧側リーフバルブVcをピストン11へ向けて附勢するが、圧側スプールScの圧側背圧室Ccの圧力を受ける受圧面積は、圧側スプールScの外径を直径とする円の面積から環状突起38の内径を直径とする円の面積の差分となる。そして、この実施の形態の緩衝器D2の場合、伸側スプールSeの受圧面積は、圧側スプールScの受圧面積よりも大きくしてある。
伸側環状プレート86の背面には伸側スプールSeの環状突起34が当接するとともに、伸側環状プレート86がカラー85の外周に装着されているので、伸側環状プレート86に伸側背圧室Ceの圧力が直接的に作用する受圧面積は、環状突起34の内径を直径とする円の面積からカラー85の外径を直径とする円の面積を除いた面積となる。よって、伸側スプールSeの外径を直径とする円の面積からカラー85の外径を直径とする円の面積を除いた面積に伸側背圧室Ceの圧力を乗じた力を伸側荷重として、この伸側荷重によって伸側リーフバルブVeがピストン11へ向けて附勢される。なお、伸側環状プレート86を廃止して伸側リーフバルブVeの背面に環状突起34を直接当接させてもよく、この場合も、伸側リーフバルブVeがカラー85の外周に装着されているので、伸側環状プレート86を設ける場合と同じ伸側荷重が伸側リーフバルブVeに作用する。
他方、圧側環状プレート82の背面には圧側スプールScの環状突起38が当接するとともに、圧側環状プレート82がカラー81の外周に装着されているので、圧側環状プレート82に圧側背圧室Ccの圧力が直接的に作用する受圧面積は、環状突起38の内径を直径とする円の面積からカラー81の外径を直径とする円の面積を除いた面積となる。よって、圧側スプールScの外径を直径とする円の面積からカラー81の外径を直径とする円の面積を除いた面積に圧側背圧室Ccの圧力を乗じた力を圧側荷重として、この圧側荷重によって圧側リーフバルブVcがピストン11へ向けて附勢される。なお、圧側環状プレート82を廃止して圧側リーフバルブVcの背面に環状突起38を直接当接させてもよく、この場合も、圧側リーフバルブVcがカラー81の外周に装着されているので、圧側環状プレート82を設ける場合と同じ圧側荷重が圧側リーフバルブVcに作用する。
したがって、伸側背圧室Ceの圧力と圧側背圧室Ccの圧力が等圧である場合、伸側リーフバルブVeが伸側背圧室Ceから受ける荷重である伸側荷重は、圧側リーフバルブVcが圧側背圧室Ccから受ける荷重である圧側荷重よりも大きくなるように設定されている。なお、伸側背圧室Ceを伸側スプールSeで閉鎖して伸側背圧室Ceの圧力を伸側環状プレート86に直接に作用させない場合には、伸側荷重は伸側スプールSeの伸側背圧室Ceの圧力を受ける受圧面積のみによって決まり、圧側も同様に、圧側背圧室Ccを圧側スプールScで閉鎖して圧側背圧室Ccの圧力を圧側環状プレート82に直接に作用させない場合には、圧側荷重は圧側スプールScの圧側背圧室Ccの圧力を受ける受圧面積のみによって決まる。伸側背圧室Ceの圧力と圧側背圧室Ccの圧力が等圧である場合に、伸側リーフバルブVeが伸側背圧室Ceから受ける伸側荷重が、圧側リーフバルブVcが圧側背圧室Ccから受ける圧側荷重よりも大きくなるように設定されればよいので、伸側リーフバルブVeにも圧側リーフバルブVcにも直接伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Ccから圧力を作用させない場合には、伸側スプールSeの受圧面積を圧側スプールScの受圧面積より大きくすれば足りる。前記したように伸側環状プレート86および圧側環状プレート82を廃止する場合、伸側背圧室Ceの圧力を伸側リーフバルブVeに直接に作用させてもよいし、圧側背圧室Ccの圧力を圧側リーフバルブVcに直接に作用させてもよい。伸側背圧室Ceを伸側スプールSeで閉鎖する構造では伸側スプールSeを伸側リーフバルブVeへ当接でき、圧側背圧室Ccを圧側スプールScで閉鎖する構造では圧側スプールScを圧側リーフバルブVcへ当接できる。伸側背圧室Ceと圧側背圧室Ccをスプールで閉鎖するか否かは、任意に選択できる。本発明では、伸側スプールSeと圧側スプールScを用いているので、伸側リーフバルブVeに実質的に伸側背圧室Ceの圧力を作用させる受圧面積を伸側リーフバルブVeのみの受圧面積よりも大きく設定できる。このように、圧側スプールScと伸側スプールSeの受圧面積差を大きく設定できるので、伸側荷重と圧側荷重に大きな差を持たせ、伸側荷重と圧側荷重の設定幅に非常に高い自由度を与えられる。
そして、緩衝器D2の伸長作動時には、伸側リーフバルブVeは、伸側主通路MPeを通じて伸側室13からの圧力を受けるとともに、前記伸側荷重を背面側から受ける。伸側リーフバルブVeは、伸側室13の圧力によって押し下げられる力より伸側荷重の方が上回って伸側弁座11dへ当接するまで撓むと、伸側主通路MPeを閉塞する。伸側リーフバルブVeが緩衝器D2の伸長作動時に或るピストン速度で伸側主通路MPeを閉塞する際の伸側荷重は、前記受圧面積、伸側リーフバルブVeおよび伸側環状プレート86の撓み剛性等によって設定できる。圧側リーフバルブVcについても伸側リーフバルブVeと同様に、圧側リーフバルブVcが緩衝器D2の収縮作動時に或るピストン速度で圧側主通路MPcを閉塞する際の圧側荷重は、前記受圧面積、圧側リーフバルブVcおよび圧側環状プレート82の撓み剛性等によって設定できる。
続いて、伸側背圧室Ceと圧側背圧室Ccを上流として、伸側圧力排出通路Eeおよび圧側圧力排出通路Ecを下流として、調整通路Pcでこれらを連通しており、開閉弁SVと圧力制御弁PVとを備えた電磁弁EVは、この調整通路Pcの途中に設けられていて、上流の伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Ccの圧力を制御できるようになっている。よって、圧力制御弁PVによって伸側背圧室Ceと圧側背圧室Cc内の圧力を制御するに際して、伸側背圧室Ceと圧側背圧室Cc内の圧力が同じであっても伸側荷重を圧側荷重よりも大きくできる。したがって、大きな伸側荷重が要求される場合に伸側背圧室Ce内の圧力を然程大きくする必要がなくなるため、伸側の減衰力を大きくしたい場合にあっても、圧力制御弁PVで制御すべき最大圧力を低くできるのである。
なお、本実施の形態では、伸側スプールSeは、内周が伸側チャンバ32の装着部32aの外周に摺接しておらず、伸側背圧室Ceの圧力が伸側リーフバルブVeの背面側であって環状突起34の当接部位の内側にも作用して当該伸側リーフバルブVeを附勢するので、伸側荷重の設定に当たり、伸側背圧室Ceの圧力で伸側リーフバルブVeを直接に附勢する荷重を加味して設定するとよい。圧側スプールScも内周が圧側チャンバ31の装着部31aの外周に摺接しておらず、圧側背圧室Ccの圧力が圧側リーフバルブVcの背面側であって環状突起38の当接部位の内側にも作用して当該圧側リーフバルブVcを附勢するので、圧側荷重の設定に当たり、圧側背圧室Ccの圧力で圧側リーフバルブVcを直接に附勢する荷重を加味して設定するとよい。
転じて、開閉弁SVは、この実施の形態では、非通電時に調節通路Pcを閉じるとともに通電時に調整通路Pcを開放して、圧力制御弁PVによる圧力制御を可能とする。また、調整通路Pcの途中には、開閉弁SVを迂回する第一フェール通路FP1と、電磁弁EVを迂回する第二フェール通路FP2が設けられている。
電磁弁EVは、図10および図11に示すように、弁収容筒50aと制御弁弁座50dとを備えた弁座部材50と、制御弁弁座50dに離着座する電磁弁弁体51と、電磁弁弁体51に推力を与えこれを軸方向に駆動するソレノイドSolとを備えて構成されている。
そして、弁座部材50は、ピストン保持部材28のソケット28c内に嵌合されて、フランジ28bの図2中上端に積層される環状のバルブハウジング52の内周に弁収容筒50aを挿入すると径方向へ位置決められつつ、収容部L内に収容される。また、弁座部材50は、電磁弁弁体51が摺動自在に挿入される有底筒状の弁収容筒50aと、弁収容筒50aの図11中上端外周に連なるフランジ50bと、弁収容筒50aの側方から開口して内部へ通じる透孔50cと、フランジ50bの図11中上端に軸方向へ向けて突出する環状の制御弁弁座50dと、フランジ50bの外周から立ち上がり下端にテーパ部が設けられる大径筒部50eと、フランジ50bを貫いて制御弁弁座50dの内周側へ通じる第一フェール通路FP1と、大径筒部50eのテーパ部から開口して大径筒部50eの内外を連通するポート50fとを備えて構成されている。また、第一フェール通路FP1自体がオリフィスで形成されており、第一フェール通路FP1が第一フェール弁FV1を兼ねる構成となっている。
バルブハウジング52は、図11に示すように、環状であって、図11中上端に設けた環状窓52aと、環状窓52aから開口して図11中下端に通じるポート52bと、図11中上端内周から開口してポート52bに通じる切欠溝52cと、外周に設けられて軸方向に沿って設けた溝52dと、前記環状窓52aの外周を囲む環状の第二フェール弁弁座52eと、図11中上端側内周に設けられて切欠溝52cに通じる凹部52fとを備えて構成されている。
このバルブハウジング52をソケット28c内に挿入してフランジ28bの図11中上端に積層すると、ポート52bがポート28fのフランジ28bの上端に面する開口に対向してポート52bおよび切欠溝52cがポート28fに連通され、さらに、溝52dがフランジ28bに設けた溝28jに対向してこれらが連通されるようになっている。
よって、ポート52bおよび切欠溝52cは、環状溝28e、ポート28fおよび横孔28gを通じて連通路44に連通され、さらには、この連通路44、伸側パイロットオリフィスOeおよび圧側パイロットオリフィスOcを介して伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Ccに連通されている。また、溝52dは、溝28jを通じてセパレータ43内、逆止弁Ceeで形成される伸側圧力排出通路Eeを通じて圧側室14に連通されるとともに、透孔29c、凹部28k、貫通孔28mおよび逆止弁Cecによって形成される圧側圧力排出通路Ecを通じて伸側室13に連通されている。
バルブハウジング52内には、筒状の弁座部材50における弁収容筒50aが収容されている。また、弁座部材50の弁収容筒50aの外周には、環状のリーフバルブ53が装着されている。弁収容筒50aをバルブハウジング52に挿入して弁座部材50をバルブハウジング52に組み付けると、第二フェール弁FV2は、内周が弁座部材50におけるフランジ50bとバルブハウジング52の図11中上端内周とで挟持されて固定される。リーフバルブ53は、外周側がバルブハウジング52に設けた第二フェール弁弁座52eに初期撓みが与えられた状態で着座し、環状窓52aを閉塞する。また、弁座部材50をバルブハウジング52に組付けると、大径筒部50eにバルブハウジング52から遠ざかるようにテーパ部が設けられているので、大径筒部50eとバルブハウジング52との間に空隙が形成される。このリーフバルブ53は、ポート52bを通じて環状窓52a内に作用する圧力が開弁圧に達すると撓んで、環状窓52aを開放してポート52bを伸側圧力排出通路Eeおよび圧側圧力排出通路Ecへ前記空隙を介して連通させるようになっている。このリーフバルブ53と第二フェール弁弁座52eとで第二フェール弁FV2を形成しており、第二フェール弁FV2が開弁すると電磁弁EVを空隙で迂回して、ポート52bを直接に伸側圧力排出通路Eeおよび圧側圧力排出通路Ecへ連通させる。よって、第二フェール通路FP2は、この場合、環状窓52aと空隙とで構成されている。
また、弁収容筒50aをバルブハウジング52に挿入して弁座部材50をバルブハウジング52に組み付けると、バルブハウジング52に設けた凹部52fが弁収容筒50aに設けた透孔50cに対向して、伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Ccがポート52bを通じて弁収容筒50a内に連通される。また、弁座部材50をバルブハウジング52に組み付けると、第一フェール通路FP1が凹部52fに対向して開閉弁SVを迂回できるようになっている。
さらに、弁座部材50の大径筒部50eの図11中上方には電磁弁収容筒29内に収容されるソレノイドSolが配置されていて、電磁弁収容筒29にピストン保持部材28を螺着して一体化する際に、バルブハウジング52、リーフバルブ53、弁座部材50およびソレノイドSolが電磁弁収容筒29とピストン保持部材28に挟持されて固定される。
ソレノイドSolは、巻線57と巻線57に通電するハーネスHとをモールド樹脂で一体化した有頂筒状のモールドステータ56と、有頂筒状であってモールドステータ56の内周に嵌合される第一固定鉄心58と、モールドステータ56の図11中下端に積層される環状の第二固定鉄心59と、第一固定鉄心58と第二固定鉄心59との間に介装されて磁気的な空隙を形成するフィラーリング60と、第一固定鉄心58と第二固定鉄心59の内周側に軸方向移動可能に配置された筒状の可動鉄心61と、可動鉄心61の内周に固定されるシャフト62とを備えて構成されている。そして、巻線57に通電すると、ソレノイドSolは、可動鉄心61を吸引してシャフト62に図11中下方向きの推力を与える。
さらに、弁座部材50内には、電磁弁弁体51が摺動自在に挿入されている。電磁弁弁体51は、詳しくは、弁座部材50における弁収容筒50a内に摺動自在に挿入される小径部51aと、小径部51aの図11中上方側である反弁座部材側に設けられて弁収容筒50aには挿入されない大径部51bと、小径部51aと大径部51bとの間に設けた環状の凹部51cと、大径部51bの反弁座部材側端の外周に設けたフランジ状のばね受部51dと、電磁弁弁体51の先端から後端へ貫通する連絡路51e、連絡路51eの途中に設けたオリフィス51fとを備えて構成されている。
また、電磁弁弁体51にあっては、前述のように、凹部51cを境にして反弁座部材側の外径を小径部51aより大径として大径部51bが形成されており、この大径部51bの図11中下端に制御弁弁座50dに対向する着座部51gを備え、電磁弁弁体51が弁座部材50に対して軸方向へ移動すると着座部51gが制御弁弁座50dに離着座するようになっている。
さらに、弁座部材50のフランジ50bとばね受部51dとの間には、電磁弁弁体51を弁座部材50から離間する方向へ附勢するばねEVsが介装されており、このばねEVsの附勢力に対して対抗する推力を発揮するソレノイドSolが設けられている。したがって、電磁弁弁体51は、ばねEVsによって常に弁座部材50から離間する方向へ附勢されており、ソレノイドSolからのばねEVsに対抗する推力が作用しないと、弁座部材50から最も離間する位置に位置決められる。なお、この場合、ばねEVsを利用して、電磁弁弁体51を弁座部材50から離間させる方向へ附勢するようにしているが、ばねEVs以外にも附勢力を発揮できる弾性体を使用できる。そして、ソレノイドSolの推力を調節すると、電磁弁弁体51が弁座部材50へ押し付けられる附勢力が調節されて着座部51gが制御弁弁座50dから離座する開弁圧が制御される。よって、電磁弁弁体51の着座部51gと弁座部材50の制御弁弁座50dとソレノイドSolで圧力制御弁PVが構成されている。
また、電磁弁弁体51は、弁座部材50に対して最も離間すると、透孔50cに小径部51aを対向させて透孔50cを閉塞し、ソレノイドSolに通電して弁座部材50に対して最も離間する位置から弁座部材側へ所定量移動させると、常に、凹部51cを透孔50cに対向させて透孔50cを開放するようになっている。つまり、電磁弁弁体51が弁座部材50における透孔50cを開閉できるようになっており、これにより開閉弁SVが構成されている。よって、この弁座部材50と電磁弁弁体51とソレノイドSolによって、開閉弁SVと圧力制御弁PVが一体化された電磁弁EVが構成される。
電磁弁弁体51が透孔50cを開放し、着座部51gが制御弁弁座50dから離座すると透孔50cが電磁弁弁体51の凹部51c、ポート50fおよび前記した弁座部材50とバルブハウジング52との間に形成される空隙を通じて伸側圧力排出通路Eeおよび圧側圧力排出通路Ecに連通されるようになっている。
ソレノイドSolに正常に電流を供給でき開閉弁SVが開弁状態にある際には、前記したように、ソレノイドSolの推力を調節すると、電磁弁弁体51を弁座部材50側へ附勢する力を調節できる。より詳細には、圧力制御弁PVの上流の圧力の作用とばねEVsによる電磁弁弁体51を図11中において押し上げる力がソレノイドSolによる電磁弁弁体51を押し下げる力を上回ると圧力制御弁PVが開弁して、圧力制御弁PVの上流側の圧力をソレノイドSolの推力に応じて制御できる。そして、圧力制御弁PVの上流は、調整通路Pcを介して伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Ccに通じているので、この圧力制御弁PVによって伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Ccの圧力を同時に制御できる。また、電磁弁EVの下流は、伸側圧力排出通路Eeおよび圧側圧力排出通路Ecに通じており、電磁弁EVを通過した作動油は、緩衝器D2の伸長作動時には低圧側の圧側室14へ、緩衝器D2の収縮作動時には低圧側の伸側室13へ排出される。よって、調整通路Pcは、前記した環状溝28e、ポート28f、横孔28g、ポート52b、切欠溝52c、凹部52f、収容部Lの一部、前記空隙、溝52dによって形成される。
また、開閉弁SVは、ソレノイドSolへ通電できないフェール時には、弁座部材50における透孔50cを電磁弁弁体51における小径部51aで閉塞する遮断ポジションを備えている。第一フェール通路FP1は、開閉弁SVの上流である透孔50cよりも上流の凹部52fを開閉弁SVの下流であって制御弁弁座50dよりも内周側、つまり、圧力制御弁PVよりも上流に通じている。つまり、第一フェール通路FP1と開閉弁SVとは、圧力制御弁PVの上流にて並列配置されており、開閉弁SVが開弁状態である正常時には、第一フェール通路FP1における第一フェール弁FV1は圧力制御弁PVによる圧力制御に対して何ら影響を与えないようになっている。他方、開閉弁SVが遮断ポジションをとる場合、これに一体化されている圧力制御弁PVは、弁座部材50から最大限に離間して圧力制御弁PVを最大開放するので、第一フェール通路FP1を通じて作動油は調整通路Pcを通過できる。
さらに、第二フェール通路FP2は、電磁弁EVを迂回するようになっていて、その途中に設けられる第二フェール弁FV2は、ポート52bに通じる環状窓52aを開閉する。さらに、第二フェール弁FV2の開弁圧は、圧力制御弁PVの制御可能な上限圧を超える圧力に設定されている。よって、圧力制御弁PVの上流側の圧力が制御上限圧を超えるような場合、第二フェール弁FV2が開弁して伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Ccの圧力を第二フェール弁FV2の開弁圧に制御できるようになっている。
したがって、フェール時において開閉弁SVが遮断ポジションをとっている場合には、伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Ccの圧力は第一フェール弁FV1および第二フェール弁FV2により制御される。
さらに、電磁弁弁体51は、弁座部材50の弁収容筒50a内に挿入されると、弁収容筒50a内であって透孔50cより先端側に空間Kを形成する。この空間Kは、電磁弁弁体51に設けた連絡路51eおよびオリフィス51fを介して電磁弁弁体外に連通されている。これにより、電磁弁弁体51が弁座部材50に対して図11中上下方向である軸方向に移動する際、前記空間Kがダッシュポットとして機能して、電磁弁弁体51の急峻な変位を抑制するとともに、電磁弁弁体51の振動的な動きを抑制できる。
つづいて、緩衝器D2の作動について説明する。まず、緩衝器D2の減衰力の減衰力特性をソフトにする、つまり、伸側背圧室Ceの圧力に起因する伸側リーフバルブVeおよび圧側背圧室Ccの圧力に起因する圧側リーフバルブVcを附勢する附勢力を小さくし、減衰係数を低くする場合について説明する。減衰力特性をソフトとするには、ソレノイドSolへ通電し電磁弁EVが通過作動油に与える抵抗を小さくし、伸側リーフバルブVeおよび圧側リーフバルブVcがそれぞれ対応する伸側弁座11dおよび圧側弁座11cへ着座しないように前記附勢力を制御する。
この状態では、伸側リーフバルブVeが前記附勢力で撓んでも伸側リーフバルブVeが伸側弁座11dに着座せずに両者間には隙間が形成される状態であり、圧側リーフバルブVcについてもしかりで、圧側リーフバルブVcが前記附勢力で撓んでも圧側リーフバルブVcが圧側弁座11cに着座せずに両者間には隙間が形成される状態となる。
この状態で、緩衝器D2が伸長してピストン11が図10中上方へ移動すると、圧縮される伸側室13から拡大される圧側室14へ作動油が伸側リーフバルブVeを押して撓ませて伸側主通路MPeを通過して移動する。伸側リーフバルブVeと伸側弁座11dとの間には隙間が形成されており、伸側リーフバルブVeが伸側弁座11dに着座して切欠Oveのみで伸側主通路MPeと圧側室14とを連通する状態に比較して、流路面積が大きく確保される。
また、緩衝器D2の伸長に対して上昇する伸側室13内の圧力によって伸側リーフバルブVeは、カラー85の外周を摺動できるため、伸側環状プレート86および補助バルブ91とともにピストン11から後退して伸側弁座11dとの間の隙間を大きくする。この伸側リーフバルブVeと伸側弁座11dとの間の隙間量は、伸側主通路MPe側から受ける伸側室13の圧力によって伸側リーフバルブVeをピストン11から後退させようとする力と、前記伸側荷重とのバランスによって決まる。
ここで、減衰力特性をソフトにした際の減衰力を低減させるためには、伸側リーフバルブVeの剛性をなるべく低くする必要があるが、伸側リーフバルブVeには、大きな伸側荷重にも耐えなくてはならず剛性を低くするにも限界がある。これに対して、実施例の具体的な緩衝器D2では、伸側リーフバルブVeと伸側弁座11dとの間に隙間が形成されており、かつ、伸側リーフバルブVeの全体がピストン11から後退できるため、伸側リーフバルブVeに要求される剛性を確保しつつも、伸側リーフバルブVeと伸側弁座11dとの間に大きな流路面積を確保できる。このように、伸側リーフバルブVeの耐久性の問題を解決できるため、緩衝器D2は、図13中の線Xで示すように、減衰力特性をソフトにした際に極小さな減衰係数の傾きを実現でき、減衰力を大きく低減できる。
つづいて、さらに緩衝器D2の伸長速度が上昇して伸側室13内の圧力が高くなると、伸側リーフバルブVeのピストン11からの後退量が増加し、補助バルブ91が伸側ストッパ87に当接するようなるとそれ以上の後退が規制されるため、伸側ストッパ87で内周の移動が規制されて、ここを支点に伸側リーフバルブVe、伸側環状プレート86および補助バルブ91の外周が撓むようになる。その撓み量は、伸側主通路MPe側から受ける伸側室13の圧力によって伸側リーフバルブVe、伸側環状プレート86および補助バルブ91を撓ませようとする力と、当該撓み量に応じて伸側リーフバルブVe、伸側環状プレート86および補助バルブ91が自ら発するばね反力で伸側弁座11d側へ戻ろうとする力および前記伸側荷重とがバランスするように撓んで伸側主通路MPeを開放する。
また、伸側室13内の作動油は、逆止弁Cieを押し開いて伸側圧力導入通路Ieを通過し、調整通路Pcへ流れる。調整通路Pcを通過した作動油は、逆止弁Ceeを押し開いて伸側圧力排出通路Eeを介して低圧側の圧側室14へ排出される。なお、伸側パイロットオリフィスOeは、作動油の通過の際に抵抗を与えて圧力損失をもたらし、作動油が流れている状態において調整通路Pcの下流では伸側室13よりも低圧となるため、圧側圧力排出通路Ecに設けた逆止弁Cecは開かず閉塞されたままとなる。
伸側圧力導入通路Ieは、圧側背圧室Ccに通じるだけでなく、連通路44を介して伸側背圧室Ceに通じているが、圧側圧力導入通路Icが逆止弁Cicによって閉塞されるため、緩衝器D2の伸長作動時において伸側背圧室Ce内の圧力を圧側室14よりも高くできる。なお、圧側背圧室Ccの圧力は、低圧側の圧側室14よりも高くなるが、作動油の流れが生じない圧側主通路MPcを閉塞する圧側リーフバルブVcを附勢するだけであるから不都合はない。
調整通路Pcには、前記したように圧力制御弁PVを備えた電磁弁EVが設けてあり、ソレノイドSolに通電して、調整通路Pcの上流側の圧力を圧力制御弁PVで制御してやれば、伸側背圧室Ce内の圧力を調整して伸側荷重を所望の荷重に制御できる。以上により、圧力制御弁PVによって伸側リーフバルブVeの開度を制御でき、緩衝器D2の伸長作動を行う際の伸側減衰力を制御できる。
逆に、緩衝器D2が収縮してピストン11が図10中下方へ移動すると、圧縮される圧側室14から拡大される伸側室13へ作動油が圧側リーフバルブVcを押して撓ませて圧側主通路MPcを通過して移動する。圧側リーフバルブVcと圧側弁座11cとの間には隙間が形成されており、圧側リーフバルブVcが圧側弁座11cに着座して切欠Ovcのみで圧側主通路MPcと伸側室13とを連通する状態に比較して、流路面積が大きく確保される。
また、緩衝器D2の収縮に対して上昇する圧側室14内の圧力によって圧側リーフバルブVcは、カラー81の外周を摺動できるため、圧側環状プレート82および補助バルブ101とともにピストン11から後退して圧側弁座11cとの間の隙間を大きくする。この圧側リーフバルブVcと圧側弁座11cとの間の隙間量は、圧側主通路MPc側から受ける圧側室14の圧力によって圧側リーフバルブVcをピストン11から後退させようとする力と、前記圧側荷重とのバランスによって決まる。
ここで、減衰力特性をソフトにした際の減衰力を低減させるためには、圧側リーフバルブVcの剛性をなるべく低くする必要があるが、伸側リーフバルブVe同様に圧側リーフバルブVcには、大きな圧側荷重にも耐えなくてはならず剛性を低くするにも限界がある。これに対して、本実施例の具体的な緩衝器D2では、圧側リーフバルブVcと圧側弁座11cとの間に隙間が形成されており、かつ、圧側リーフバルブVcの全体がピストン11から後退できるため、圧側リーフバルブVcに要求される剛性を確保しつつも、圧側リーフバルブVcと圧側弁座11cとの間に大きな流路面積を確保できる。このように、圧側リーフバルブVcの耐久性の問題を解決できるため、緩衝器D2は、図13中の線Yで示すように、減衰力特性をソフトにした際に極小さな減衰係数の傾きを実現でき、減衰力を大きく低減できる。
つづいて、さらに緩衝器D2の収縮速度が上昇して圧側室14内の圧力が高くなると、圧側リーフバルブVcのピストン11からの後退量が増加し、補助バルブ101が圧側ストッパ83に当接するようなるとそれ以上の後退が規制されるため、圧側ストッパ83で内周の移動が規制されて、ここを支点に圧側リーフバルブVc、圧側環状プレート82および補助バルブ101の外周が撓むようになる。その撓み量は、圧側主通路MPc側から受ける圧側室14の圧力によって圧側リーフバルブVc、圧側環状プレート82および補助バルブ101を撓ませようとする力と、当該撓み量に応じて圧側リーフバルブVc、圧側環状プレート82および補助バルブ101が自ら発するばね反力で圧側弁座11c側へ戻ろうとする力および前記圧側荷重とがバランスするように撓んで圧側主通路MPcを開放する。
また、圧側室14内の作動油は、逆止弁Cicを押し開いて圧側圧力導入通路Icを通過し、調整通路Pcへ流れる。調整通路Pcを通過した作動油は、逆止弁Cecを押し開いて圧側圧力排出通路Ecを介して低圧側の伸側室13へ排出される。なお、圧側パイロットオリフィスOcは、作動油の通過の際に抵抗を与えて圧力損失をもたらすので、作動油が流れている状態において調整通路Pcの下流では、圧側室14よりも低圧となるため、伸側圧力排出通路Eeに設けた逆止弁Ceeは開かず閉塞されたままとなる。
圧側圧力導入通路Icは、伸側背圧室Ceに通じるだけでなく、連通路44を介して圧側背圧室Ccに通じているが、伸側圧力導入通路Ieが逆止弁Cieによって閉塞されるため、緩衝器D2の収縮作動時において圧側背圧室Cc内の圧力を伸側室13よりも高くできる。なお、伸側背圧室Ceの圧力は、低圧側の伸側室13よりも高くなるが、作動油の流れが生じない伸側主通路MPeを閉塞する伸側リーフバルブVeを附勢するだけであるから不都合はない。
調整通路Pcには、前記したように電磁弁EVが設けてあり、電磁弁EVのソレノイドSolに通電して、調整通路Pcの上流側の圧力を制御してやれば、圧側背圧室Cc内の圧力を調整して圧側荷重を所望の荷重に制御できる。以上により、電磁弁EVによって圧側リーフバルブVcの開度を制御でき、これによって、緩衝器D2の収縮作動を行う際の圧側減衰力を制御できる。
続いて、緩衝器D2の減衰力の減衰力特性をハードにする、つまり、伸側リーフバルブVeおよび圧側リーフバルブVcを附勢する附勢力を大きくし、減衰係数を高くする場合について説明する。減衰力特性をハードとするには、ソレノイドSolへ通電し電磁弁EVが通過作動油に与える抵抗を大きくし、伸側リーフバルブVeおよび圧側リーフバルブVcがそれぞれ対応する伸側弁座11dおよび圧側弁座11cに着座するように附勢力を制御する。
この状態では、伸側リーフバルブVeが附勢力によって撓んで伸側弁座11dに着座して、両者間には隙間が形成されない状態であり、圧側リーフバルブVcについてもしかりで、圧側リーフバルブVcが附勢力によって撓んで圧側リーフバルブVcが圧側弁座11cに着座して、両者間には隙間が形成されない状態となる。
そして、緩衝器D2が伸長してピストン11が図10中上方へ移動し、かつ、ピストン速度が低い場合では、伸側リーフバルブVeが伸側主通路MPeから伸側室13の圧力を受けても伸側弁座11dから離座せず、調整通路Pcを除くほか切欠OVeのみで伸側室13を圧側室14に連通する状態となる。すると、緩衝器D2は、伸側主通路MPeを通過する作動油の流れに対して主としてオリフィスとして機能する切欠OVeで抵抗を与え、伸側リーフバルブVeと伸側弁座11dとの間に隙間を形成する状態で発生する減衰力に比較して大きな減衰力を発揮できる。
他方、ピストン速度が高くなり、伸側リーフバルブVeに伸側主通路MPeを介して作用する伸側室13の圧力が上昇し、この伸側室13の圧力による伸側リーフバルブVeを伸側弁座11dから離座させる方向の力が附勢力を上回ると、伸側リーフバルブVeは、ピストン11から全体が後退して伸側環状プレート86、補助バルブ91および伸側スプールSeを図12中下方へ押し下げて伸側弁座11dから離座する。しかしながら、附勢力が減衰力特性をソフトにしている状況に比して大きいため、伸側リーフバルブVeのピストン11から後退量が小さくなる。さらに、ピストン速度が高くなって補助バルブ91が伸側ストッパ87に当接するようになると、伸側リーフバルブVeは、伸側環状プレート86および補助バルブ91とともに撓んで伸側スプールSeを図12中下方へ押し下げて、伸側リーフバルブVeと伸側弁座11dの間の流路面積を拡大させる。しかしながら、附勢力が減衰力特性をソフトにしている状況に比して大きいため、伸側リーフバルブVeと伸側弁座11dの間の流路面積は、減衰力特性をソフトにした場合に比較して小さくなる。よって、緩衝器D2は、図13中線Z1に示すように、ピストン速度が同じであっても、ハード時にはソフト時に比較して高い減衰力を発揮することになる。
伸側室13内の作動油は、減衰力特性をソフトにする場合と同様に、逆止弁Cieを押し開いて伸側圧力導入通路Ieを通過し、調整通路Pcにも流れることになる。調整通路Pcに設けた圧力制御弁PVで調整通路Pcの上流側の圧力を制御すると、ソフト時と同様に、伸側背圧室Ce内の圧力を調整して伸側荷重を所望の荷重に制御でき、伸側リーフバルブVeの開度が制御され、ハード時においても緩衝器D2の伸長作動を行う際の伸側減衰力が制御される。
次に、緩衝器D2が収縮してピストン11が図10中下方へ移動し、かつ、ピストン速度が低い場合では、圧側リーフバルブVcが圧側主通路MPcから圧側室14の圧力を受けても圧側弁座11cから離座せず、調整通路Pcを除くほか切欠OVcのみで圧側室14を伸側室13に連通する状態となる。すると、緩衝器D2は、圧側主通路MPcを通過する作動油の流れに対して主としてオリフィスとして機能する切欠OVcで抵抗を与えて、圧側リーフバルブVcと圧側弁座11cとの間に隙間を形成する状態で発生する減衰力に比較して大きな減衰力を発揮できる。
他方、ピストン速度が高くなり、圧側リーフバルブVcに圧側主通路MPcを介して作用する圧側室14の圧力が上昇し、この圧側室14の圧力による圧側リーフバルブVcを圧側弁座11cから離座させる方向の力が前記附勢力を上回ると、圧側リーフバルブVcは、ピストン11から全体が後退して圧側環状プレート82、補助バルブ101および圧側スプールScを図12中上方へ押し上げて圧側弁座11cから離座する。しかしながら、附勢力が減衰力特性をソフトにしている状況に比して大きいため、圧側リーフバルブVcのピストン11から後退量が小さくなる。さらに、ピストン速度が高くなって補助バルブ101が圧側ストッパ83に当接するようになると、圧側リーフバルブVcは、圧側環状プレート82および補助バルブ101とともに撓んで圧側スプールScを図12中上方へ押し上げて、圧側リーフバルブVcと圧側弁座11cの間の流路面積を拡大させる。しかしながら、前記附勢力が減衰力特性をソフトにしている状況に比して大きいため、圧側リーフバルブVcと圧側弁座11cの間の流路面積は、減衰力特性をソフトにした場合に比較して小さくなる。よって、緩衝器D2は、図13中線Z2に示すように、ピストン速度が同じであっても、ハード時にはソフト時に比較して高い減衰力を発揮する。
圧側室14内の作動油は、減衰力特性とソフトにする場合と同様に、逆止弁Cicを押し開いて圧側圧力導入通路Icを通過し、調整通路Pcにも流れることになる。調整通路Pcに設けた圧力制御弁PVで調整通路Pcの上流側の圧力を制御すると、ソフト時と同様に、圧側背圧室Cc内の圧力を調整して圧側荷重を所望の荷重に制御でき、圧側リーフバルブVcの開度が制御され、ハード時においても緩衝器D2の収縮作動を行う際の圧側減衰力が制御される。
このように、本実施例の減衰弁V2および緩衝器D2にあっては、各リーフバルブVe,Vcと各弁座11c,11dとの間に隙間を設け、かつ、各リーフバルブVe,Vcの全体がピストン11から軸方向に後退できるので、各リーフバルブVe,Vcの剛性を確保しつつも、固定オリフィスを用いた従来の減衰バルブおよび緩衝器に比較して流路面積を大きくできる。したがって、本実施例の減衰弁V2および緩衝器D2によれば、減衰力特性をソフトにした際の減衰力を低減できる。また、ハード時にはリーフバルブVe,Vcを各弁座1c,11dに着座させられるので、減衰弁V2および緩衝器D2では、減衰力可変幅も確保できる。
よって、本発明の減衰弁および緩衝器によれば、減衰力特性をソフトにした際の減衰力を低減することができるとともに、減衰力調整幅を拡大することが可能となる。また、本実施の形態の緩衝器D2の減衰力特性をソフトからハードへ切り替える場合、伸長作動時には伸側背圧室Ce内の圧力上昇によって伸側リーフバルブVeと伸側弁座11dとの間の隙間が徐々に小さくなって伸側リーフバルブVeが伸側弁座11dに着座するようになり、収縮作動時には圧側背圧室Cc内の圧力上昇によって圧側リーフバルブVcと圧側弁座11cとの間の隙間が徐々に小さくなって圧側リーフバルブVcが圧側弁座11cに着座するようになる。反対に、本実施の形態の緩衝器D2の減衰力特性をハードからソフトへ切り替える場合、伸長作動時には伸側背圧室Ce内の圧力減少によって伸側リーフバルブVeと伸側弁座11dとの間の隙間が徐々に大きくなるようになり、収縮作動時には圧側背圧室Cc内の圧力減少によって圧側リーフバルブVcと圧側弁座11cとの間の隙間が徐々に大きくなる。そのため、緩衝器D2の減衰力特性をソフトからハードへ、或いは、ハードからソフトへ切り替える際に、緩衝器D2の減衰力特性の急変が緩和される。この緩衝器D2を車両へ適用すると、減衰力特性の急変が緩和されるので、搭乗者へ減衰力特性の切換り時にショックを知覚させず、車両における乗り心地を向上できる。
伸側リーフバルブVeの背面にカラー85の外周に摺動自在に装着される伸側環状プレート86を積層し、圧側リーフバルブVcの背面にカラー81の外周に摺動自在に装着される圧側環状プレート82を積層しているので、伸側リーフバルブVeよりも伸側環状プレート86の剛性を高くし、圧側リーフバルブVcよりも圧側環状プレート82の剛性を高くしておくと、附勢力を伸側環状プレート86および圧側環状プレート82で受けて伸側リーフバルブVeおよび圧側リーフバルブVcの変形を抑制でき、伸側リーフバルブVeおよび圧側リーフバルブVcの劣化を抑制できる。
また、伸側リーフバルブVeの背面に積層されるカラー81の外周に摺動自在に装着される伸側環状プレート86および圧側リーフバルブVcの背面に積層されるカラー85の外周に摺動自在に装着される圧側環状プレート82を設けており、伸側環状プレート86の内径をピストン11の内周シート部11hの外径よりも小さくし外径を伸側弁座11dの内径よりも大きくし、圧側環状プレート82の内径をピストン11の内周シート部11fの外径よりも小さくし外径を圧側弁座11cの内径よりも大きくたので、伸側リーフバルブVeおよび圧側リーフバルブVcの背面側の圧力を伸側環状プレート86および圧側環状プレート82で受け止められる。よって、伸側環状プレート86および圧側環状プレート82を設けると、伸側リーフバルブVeおよび圧側リーフバルブVcにピストン11側への過大な曲力の作用を防止できる。
さらに、カラー81,85に積層されて伸側リーフバルブVeおよび圧側リーフバルブVcと伸側環状プレート86および圧側環状プレート82のピストン11からの後退量を規制する伸側ストッパ87および圧側ストッパ83とを備える場合には、伸側チャンバ32および圧側チャンバ31の位置を調節できる。
ピストン11に設けた内周シート部11f,11hと伸側リーフバルブVeおよび圧側リーフバルブVcとの間に伸側環状スペーサ84および圧側環状スペーサ80を備える場合には、伸側リーフバルブVeおよび圧側リーフバルブVcとピストン11との間に形成される隙間の高さを調節することができ、緩衝器D2のソフト時の減衰力特性をチューニングすることができる。
また、減衰弁V2は、緩衝器D2内の伸側室13と圧側室14の一方または両方の圧力を利用してリーフバルブVe,Vcを附勢するので、附勢力の発生源を用いなくともリーフバルブVe,Vcを附勢でき、圧力の制御で附勢力を変化させられる。
また、車両用の緩衝器にあっては、伸長作動時の伸側減衰力を収縮作動時の圧側減衰力に比して大きくする必要があり、片ロッド型に設定される緩衝器D2では伸側室13の圧力を受ける受圧面積がピストン11の断面積からロッド12の断面積を除いた面積となるので、伸長作動時における伸側室13の圧力は、収縮作動時における圧側室14の圧力に比して非常に大きくする必要がある。
これに対して本実施例の具体的な緩衝器D2にあっては、伸側背圧室Ceと圧側背圧室Ccとが等圧である場合に、伸側リーフバルブVeを附勢する伸側荷重が圧側リーフバルブVcを附勢する圧側荷重よりも大きくしてある。また、本発明では、伸側スプールSeを用いると、伸側スプールSeを用いずに伸側リーフバルブVeの背面側に伸側背圧室Ceの圧力を作用させるだけの構造に比較して、伸側スプールSeの伸側背圧室Ceの圧力を受ける受圧面積を伸側リーフバルブVeの背面面積よりも大きくでき、伸側リーフバルブVeに対して大きな伸側荷重を作用させ得る。さらに、伸側スプールSeと圧側スプールScを用いることで、伸側荷重と圧側荷重の設計自由度も向上する。
よって、本発明の緩衝器D2にあっては、伸長作動時において伸側減衰力を調整するために伸側荷重を非常に大きくする必要がある場合に、伸側背圧室Ceの圧力が小さくとも大きな伸側荷重を出力させるように設定でき、大型なソレノイドSolを使用せずとも伸側減衰力の制御幅を確保できる。
また、伸側背圧室Ceと圧側背圧室Ccの圧力制御をそれぞれ独立した弁体を駆動して行うのではなく、圧側荷重に比して伸側荷重を大きくすると伸側背圧室Ceと圧側背圧室Ccの圧力を連通して制御しても伸側減衰力の制御幅を確保でき、一つの電磁弁EVを設ければ足り、その構造は非常に簡単となり、コストも低減される。
以上より、電磁弁EVにおけるソレノイドSolを小型化することができることに加え、電磁弁EVの構造も簡単となり、緩衝器D2のピストン部へ適用しても緩衝器D2が大型化されない。よって、本実施例の具体的な緩衝器D2によれば、緩衝器D2の構造が簡単となって小型化でき、車両への搭載性の悪化を招かない。また、ソレノイドSolが伸側減衰力を大きくするうえで大きな推力を発揮しなくて済むために、減衰力を大きくする場合の消費電力を小さくして省電力化できる。
伸側スプールSeの伸側背圧室Ceの圧力を受ける受圧面積を圧側スプールScの圧側背圧室Ccの圧力を受ける受圧面積よりも大きくしたので、容易に伸側荷重を圧側荷重に比して大きくできる。
また、伸側背圧室Ceと圧側背圧室Ccをそれぞれ伸側パイロットオリフィスOeおよび圧側パイロットオリフィスOcを介して連通路44で連通するようにしてあり、圧側圧力導入通路Icはほとんど抵抗なく伸側背圧室Ceに圧側室14から作動油を導入できる。よって、緩衝器D2が伸長作動から収縮作動へ切り換わる際に、伸側背圧室Ce内へ圧力室14内の圧力が速やかに導入され、伸側スプールSeが伸側背圧室Ce内の圧力とばねMVesの附勢によって伸側リーフバルブVeを押圧して当該伸側リーフバルブVeを伸側弁座11dへ速やかに着座させて伸側主通路MPeを閉鎖できる。伸側圧力導入通路Ieもほとんど抵抗なく圧側背圧室Ccに伸側室13から作動油を導入するので、反対に、緩衝器D2が収縮作動から伸長作動へ切り換わる際に、圧側背圧室Cc内へ伸側室13内の圧力が速やかに導入される。よって、圧側スプールScが圧側背圧室Cc内の圧力とばねMVcsの附勢によって圧側リーフバルブVcを押圧して当該圧側リーフバルブVcを圧側弁座11cへ速やかに着座させて圧側主通路MPcを閉鎖できる。したがって、この緩衝器D2にあっては、伸縮速度が速く、伸縮作動の切換が瞬時に行われるような場面であっても、伸側リーフバルブVeおよび圧側リーフバルブVcの閉じ遅れが生じることが無く、伸縮方向の切り換わり初期から狙い通りの減衰力を発揮できる。
ロッド12の外周側に、伸側主通路MPeと圧側主通路MPcとを備えたピストン11と、ピストン11に積層された伸側リーフバルブVeおよび圧側リーフバルブVcと、筒状であって内周に伸側スプールSeが摺動自在に挿入されるとともに伸側背圧室Ceを形成する伸側チャンバ32と、筒状であって内周に圧側スプールScが摺動自在に挿入されるとともに圧側背圧室Ccを形成する圧側チャンバ31とを装着するとともに、前記伸側チャンバ32に圧側圧力導入通路Icを設け、圧側チャンバ31に伸側圧力導入通路Ieを設けるようにしたので、緩衝器D2のピストン部に減衰力調整に要する各部材を集中配置できる。
さらに、伸側スプールSeの伸側リーフバルブVeへの附勢と圧側圧力導入通路Icを開閉する逆止弁Cicにおける逆止弁弁体としての環状板35の附勢とを一つのばねMVesで行い、圧側スプールScの圧側リーフバルブVcへの附勢と伸側圧力導入通路Ieを開閉する逆止弁Cieにおける逆止弁弁体としての環状板39の附勢とを一つのばねMVcsで行うようにしたので、一つのばねMVes,MVcsにて逆止弁Cie,Cicと伸側スプールSe,Scの戻り側への復元を行え、部品点数を削減できる。
また、緩衝器D2は、ロッド12に、先端に設けられてピストン11、伸側リーフバルブVe、圧側リーフバルブVc、伸側チャンバ32および圧側チャンバ31が外周に装着される保持軸28aと、保持軸28aの先端から開口する縦孔28dと、保持軸28aに設けられて縦孔28d内に設けた連通路44に通じる伸側抵抗要素としての伸側パイロットオリフィスOeおよび圧側抵抗要素の圧側パイロットオリフィスOcと、内部に設けられて縦孔28dに通じて電磁弁EVを収容する収容部Lと、連通路44を収容部Lに連通する調整通路Pcと、収容部Lを伸側室13に連通する圧側圧力排出通路Ecとを設け、縦孔28d内に挿入されて外周に設けた環状溝43aで縦孔28d内に伸側背圧室Ceと圧側背圧室Ccとを連通する連通路44を形成するとともに内周に伸側圧力排出通路Eeを形成するセパレータ43を備えるので、無理なく、ロッド12に電磁弁EVを収容するとともに、電磁弁EVとは軸方向にずらしてロッド12の外周に伸側背圧室Ceと圧側背圧室Ccとを設けられる。
さらに、電磁弁EVが非通電時に調節通路Pcを閉じるとともに通電時に圧力制御を行うよう設定され、調整通路Pcの途中に設けられて電磁弁EVを迂回するフェール弁FVを備え、フェール弁FVの開弁圧を電磁弁EVによる最大制御圧力より大きくしたので、フェール時には、伸側荷重と圧側荷重が最大となり、緩衝器D2は、もっとも大きな減衰力を発揮して、フェール時にあっても車体姿勢を安定させられる。
また、圧力制御通路PPにおいて開閉弁SVを圧力制御弁PVよりも上流に配置しても、開閉弁SVを迂回する第一フェール通路FP1と電磁弁EVを迂回する第二フェール通路FP2を設けたので、第一フェール通路FP1および第二フェール通路FP2は有効に機能しており、フェール機能を失わない。よって、本実施例の減衰弁V2にあっても正常時にフェール状態へ移行して減衰力制御がし難くなってしまう問題を生じない。
この減衰弁V2の場合、開閉弁SVと第一フェール弁FV1とが並列配置される関係にあるので、正常時にあって開閉弁SVが調整通路Pcを開放している状態では、作動油が開閉弁SVを少ない抵抗で通過できる。また、第二フェール弁FV2の開弁圧は圧力制御弁PVの制御可能上限圧力よりも高い圧力に設定されている。よって、開閉弁SVが圧力制御通路PPを開放している状態では、第二フェール弁FV2は開弁せず、伸側主弁MVeおよび圧側主弁MVcの背圧は圧力制御弁PVによって調整されるので、第一フェール弁FV1および第二フェール弁FV2の流量圧力特性に無関係に、伸側主弁MVeおよび圧側主弁MVcの開弁圧を調節でき、緩衝器D2の減衰力を調整できる。
他方、フェール時にあっては、開閉弁SVが調整通路Pcを遮断するが、第一フェール弁FV1が開閉弁SVを迂回させて作動油を流し、伸側主弁MVeおよび圧側主弁MVcの背圧は第一フェール弁FV1を流れる流量によって決まる圧力になる。また、第二フェール弁FV2が開弁する場合には、伸側主弁MVeおよび圧側主弁MVcの背圧は、第一フェール弁FV1と第二フェール弁FV2の流量圧力特性によって決まる圧力になる。
このように、本実施例の減衰弁V2では、正常時には第一フェール弁FV1および第二フェール弁FV2に無関係に圧力制御弁PVで伸側主弁MVeおよび圧側主弁MVcへ作用させる背圧を調整でき、フェール時には、伸側主弁MVeおよび圧側主弁MVcへ作用する背圧は第一フェール弁FV1、或いは、第一フェール弁FV1および第二フェール弁FV2の流量圧力特性と通過流量に依存した圧力に調整される。
よって、本発明の減衰弁V2によれば、第一フェール弁FV1および第二フェール弁FV2は正常時において圧力制御弁PVによる圧力制御に影響を与えないので、正常時における流量に対する圧力特性の可変幅を自由に設定できる。そして、第一フェール弁FV1の通過流量に対する圧力特性を自由に設定できる。本発明の減衰弁V2によれば、フェール状態における伸側主弁MVeおよび圧側主弁MVcに作用させる背圧の圧力は正常時における圧力よりも高くなる問題も解消され、フェール状態における減衰力特性を自由に設定できる。
また、この減衰弁V2では、フェール状態において、緩衝器D2のピストン速度が低速時には、オリフィスである第一フェール弁FV1によって伸側主弁MVeおよび圧側主弁MVcの開弁圧が制御され、圧力制御通路PPを流れる流量が増加するピストン速度が高い際には、第二フェール弁FV2が開弁するのでこの第二フェール弁FV2によって主弁MVの伸側主弁MVeおよび圧側主弁MVcと弁開度が制御される。よって、この減衰弁V2が適用された緩衝器D2における減衰力特性は、ピストン速度が低い状態では減衰力がピストン速度の増加に応じて大きくなり、ピストン速度が高くなって第二フェール弁FV2が開弁する状態となると、ピストン速度の増加に対して減衰力の増加割合はピストン速度が低い状態よりも小さくなる特性となる。このように、第一フェール弁FV1に加えて第二フェール弁FV2を設けと、フェール時における緩衝器D2のピストン速度が低速域にある際の減衰力特性と、ピストン速度が高速域にある際の減衰力特性を独立に設定でき、減衰力特性の設定自由度が向上する。このようにすることで、フェール時にあっても車両における乗り心地を向上させることができる。
さらに、電磁弁EVは、筒状であって内外を連通する透孔50cを有して調整通路Pcの一部を形成する弁収容筒50aと弁収容筒50aの端部に設けられた環状の制御弁弁座50dとを備えた弁座部材50と、弁収容筒50a内に摺動自在に挿入される小径部51aと、大径部51bと、当該小径部51aと当該大径部51bとの間に設けられて透孔50cに対向可能な凹部51cと、大径部51bの端部を制御弁弁座50dに離着座させる電磁弁弁体51とを備え、透孔50cに小径部51aを対向させることで調整通路Pcを遮断する。よって、電磁弁弁体51を弁座部材50から抜け出る方向へ圧力が作用する受圧面積は、制御弁弁座50dの内径を直径とする円の面積から小径部51aの外径を直径とする円の面積を引いた面積となって、非常に受圧面積を小さくすることができ、開弁時の流路面積を大きくできるので、電磁弁弁体51の動きが安定する。また、小径部51aの外周を透孔50cに対向させて透孔50cを閉塞するから遮断ポジションにあっては、上流側から圧力を受けても閉弁したままとなり、第一フェール弁FV1および第二フェール弁FV2のみを有効にできる。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。