JP6703771B2 - フッ素樹脂成形体の改質方法およびフッ素樹脂成形体の改質用の共重合体の製造方法 - Google Patents

フッ素樹脂成形体の改質方法およびフッ素樹脂成形体の改質用の共重合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂の表面改質などに利用することができる、側鎖にフッ素化アルキル基を有するモノマーを用いた共重合体に関する。また、当該共重合体を用いたフッ素樹脂改質剤や、フッ素樹脂を改質する方法に関する。また、フッ素樹脂改質用の共重合体の製造方法に関する。
テトラフルオロエチレンの重合体であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂は、化学的安定性、耐熱性、耐薬品性、耐候性、電気絶縁性等に優れていることから様々な分野で利用されており、さらに利用することが検討されている。しかしながら、このフッ素樹脂は濡れ性が低く、他の溶液や樹脂等を用いた処理が難しく、表面を改質して利用することが難しい樹脂であった。
フッ素樹脂の表面改質方法として、プラズマ処理や、強酸処理などが提案されている。例えば、特許文献1および2は、プラズマ処理をおこなうことでフッ素樹脂の表面を改質するものである。これらのプラズマ照射は、プラズマ中のイオンが成形物表面に衝突するときに生じる熱により、成形物表面の結合を切断、再構成させて凹凸を生じさせる物理的改質と、前記した再構成の際に、衝突したプラズマ中のイオンに由来するフッ素原子以外の原子にフッ素原子が置換されることにより親水性を改善させる化学的改質を起こすものである。
一方、本発明者等は、長鎖アルカン基を保有し側鎖結晶性をしめすモノマーと溶媒親和性を示すモノマーを用いたブロック共重合体である、側鎖結晶性ブロック共重合体(SCCBC:Side Chain Crystalline Block Copolymer)を用いた分散体が粘度コントロールしやすいことを見出している(特許文献3、非特許文献1〜5)。
WO2007/022174 特開2009−263529号公報 WO2012/098750
"Thermal Rheological Fluid Properties of Particle Dispersion Systems using Side Chain Crystalline Block Copolymer (III).", Shigeru Yao, Makoto Sakurai, Hiroshi Sekiguchi, Hiroaki Otsubo, Takuya Uto, Yu Yamachika, Wataru Ishino, Satoshi Ichikawa, and Daisuke Tatsumi, Nihon Reoroji Gakkaishi (J. Soc. Rheol, Japan), 41(1), 7-12 (2013). "The Intelligent Material Function of Side Chain Crystalline Block Copolymer (IV). Control the Lithium Ion Mobility in Polyethylene Porous Membrane", Shigeru Yao, Makoto Sakurai, Hiroshi Sekiguchi, Hiroaki Otsubo, Takuya Uto, Yu Yamachika, Wataru Ishino, Satoshi Ichikawa, and Daisuke Tatsumi, Nihon Reoroji Gakkaishi (J. Soc. Rheol, Japan), 40(5), 253-256 (2012). 「側鎖結晶性ブロック共重合体を用いた粒子分散系の熱レオロジー特性 (II)」、市川賢、八尾滋、日本レオロジー学会誌, 40(1), 37-40 (2012). "A Novel Dispersant for High Content Polyethylene Particle Dispersion", Shigeru Yao, Satoshi Ichikawa, Nihon Reoroji Gakkaishi (J. Soc. Rheol, Japan), 39(4), 181-182 (2011). 「側鎖結晶性ブロック共重合体のインテリジェンスマテリアル機能」、未来材料、12(9)、41-46 (2012).
特許文献1、2に開示されているようなプラズマ処理によりフッ素樹脂を改質する方法は、プラズマが照射される部分しか表面改質されず、複雑な形状の成型品の改質には適さない等の問題があった。また、プラズマ照射は、物理的改質と、化学的改質を起こすものであり、任意の機能を付与するためには親水性が付与された表面に他の改質剤をさらに塗工することが求められる等の工程上の課題があり、改質できる範囲にも制限があった。
また、特許文献3や非特許文献1〜5に開示された技術は、SCCBCの基本技術に関するものであり、フッ素樹脂に適用するにはさらなる検討が必要であった。特許文献3等においては、特に分散体の粘度低減を目的とすることから、分散対象となる成分と、溶媒との親和性を考慮した設計とされ、溶媒との親和性からSCCBCのモノマーが選択されるため、有機溶媒との親和性が高い疎水性の側鎖を有するもの等を積極的に採用する技術を開示するものであった。特に、フッ素樹脂は、溶媒等の濡れ性が悪く、結晶性も高いことから化学的修飾が難しいと考えられる樹脂であり、他の溶媒の濡れ性が高い樹脂の化学的改質方法を転用することを考えにくい樹脂である。係る状況下、本発明は、フッ素樹脂を含有する樹脂成型品の改質剤として使用することができる共重合体およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> フッ素樹脂改質用の共重合体の製造方法であって、
前記フッ素樹脂改質用の共重合体が、第1のモノマー(A)と、第2のモノマー(B)との共重合体であって、
前記モノマー(A)が、その側鎖に式(a1)〜(a5)からなる群から選択されるいずれかのフッ素化アルキル基を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン及び置換スチレンからなる群より選ばれるいずれかのモノマーであり、
前記モノマー(B)が、機能性基を有するモノマーであることを特徴とする共重合体の製造方法。
式(a1)〜(a5)において、nは、2以上14以下の整数である。
<2> 前記<1>記載のフッ素樹脂改質用の共重合体の製造方法であって、
前記モノマー(A)が、改質対象となるフッ素樹脂のポリマー構造と共通する構造単位の側鎖を有するものとして選択されたモノマー(A)であり、
前記モノマー(B)が、フッ素樹脂の改質目的から選択された機能性基を有するモノマー(B)である共重合体の製造方法。
<3> 前記共重合体が、前記モノマー(A)が重合された部分であるモノマー(A)由来重合ブロックと、前記モノマー(B)が重合された部分であるモノマー(B)由来重合ブロックとを有するブロック共重合体である前記<1>または<2>記載の共重合体の製造方法。
<4> 前記モノマー(A)が、下記式(A1)〜(A5)のいずれかで表されるモノマーである前記<1>〜<3>のいずれかに記載の共重合体の製造方法。
式(A1)〜(A5)において、nは、2以上14以下の整数であり、mは、1以上4以下の整数である。また、式(A1)〜(A5)において、Xは、HおよびF、CH2F、CHF2、CF3からなる群から選択されるいずれかである。
<5> 前記モノマー(A)が、前記式(A1)で表されるモノマーである前記<4>記載の共重合体の製造方法。
<6> 前記モノマー(B)の機能性基が、極性基を有する機能性基である前記<1>〜<5>のいずれかに記載の共重合体の製造方法。
<7> 前記モノマー(B)が、極性基を有する機能性基として、オキシアルキレン基およびアミノ基、アミド基、スルホ基から選択されるいずれかの基を有するモノマーである前記<6>記載の共重合体の製造方法。
<8> 第1のモノマー(A)由来の構造単位と、第2のモノマー(B)由来の構造単位とを有する共重合体であって、
前記モノマー(A)が、その側鎖に式(a1)〜(a5)からなる群から選択されるいずれかのフッ素化アルキル基を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィンおよび置換スチレンからなる群より選ばれるいずれかのモノマーであり、
前記モノマー(B)が、機能性基を有するモノマーである共重合体。
式(a1)〜(a5)において、nは、2以上14以下の整数である。

<9> 前記<8>に記載の共重合体を用いたフッ素樹脂改質剤。
<10> 前記共重合体が、前記モノマー(A)が重合された部分であるモノマー(A)由来重合ブロックと、前記モノマー(B)が重合された部分であるモノマー(B)由来重合ブロックとを有するブロック共重合体である前記<9>記載のフッ素樹脂改質剤。
<11> 前記<9>または<10>に記載のフッ素樹脂改質剤を用いるフッ素樹脂改質方法。
本発明の共重合体を用いることで、フッ素樹脂の表面を化学的に改質できる。すなわち、本発明によれば、フッ素樹脂との接着性に優れ、かつ、改質したい性質に応じて高い自由度で設計可能なフッ素樹脂の改質剤を得ることができる。例えば、親水性基を有するモノマーを用いて得られた共重合体によりフッ素樹脂の表面を改質することで、フッ素樹脂の表面を親水性とすることができる。また、本発明は、フッ素樹脂の改質剤として使用することができる共重合体の製造方法を提供するものである。この製造方法により、フッ素樹脂の改質剤を所望の物性となるように改質するための共重合体を得ることができる。
本発明の共重合体を用いて改質されたフッ素樹脂多孔質膜の親水性を試験した結果を示す図である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。
本発明は、第1のモノマー(A)由来の構造単位と、第2のモノマー(B)由来の構造単位とを有する共重合体であって、前記モノマー(A)が、その側鎖に式(a1)〜(a5)からなる群から選択されるいずれかのフッ素化アルキル基を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン、置換スチレンからなる群より選ばれるいずれかのモノマー(A)であり、前記モノマー(B)が、機能性基を有するモノマー(B)である共重合体に関するものである。すなわち、本発明の共重合体は、第1のモノマー(A)と、第2のモノマー(B)とを共重合することで得られる共重合体に関するものである。
式(a1)〜(a5)において、nは、2以上14以下の整数である。
この共重合体は、モノマー(A)由来であるフッ素化アルキルによりフッ素樹脂(フッ素系樹脂)との接着性を示し、さらにモノマー(B)由来の機能性基により、溶媒親和性や、親水性等を示すことで、フッ素樹脂の成型品表面に塗工することでそのフッ素樹脂の表面に溶媒親和性や親水性、電子伝導性等を付与することができるものである。本発明の共重合体を用いれば、簡易な方法で任意の強度の改質を行うことができる。例えば、本発明の共重合体のポリマー溶液を、改質しようとするフッ素樹脂の表面に塗工したり、フッ素樹脂をポリマー溶液に浸漬させ、ポリマー溶液の溶媒を揮発させるなどし、フッ素樹脂の表面に本発明の共重合体層を設けることで、フッ素樹脂に、本発明の共重合体による特性を付与することができる。より具体的には、多孔質膜細孔表面の改質を行うことで、この多孔質膜としてはフッ素樹脂を採用し、このフッ素樹脂の改質用の共重合体として本発明を用いた設計を行うことで、燃料電池用途に用いられるフッ素樹脂系の多孔質膜を得るといった利用を行うことができる。
また、本発明は、フッ素樹脂改質用の共重合体の製造方法であって、フッ素樹脂改質用の共重合体として、第1のモノマー(A)と、第2のモノマー(B)との共重合体であって、前記モノマー(A)を、その側鎖に前記式(a1)〜(a5)からなる群から選択されるいずれかのフッ素化アルキル基を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン、置換スチレンからなる群より選ばれるいずれかのモノマーとし、前記モノマー(B)を、機能性基を有するモノマーとする共重合体を製造する方法とすることもできる。
このフッ素樹脂改質用の共重合体の製造方法によれば、フッ素樹脂に接着性を示し、かつ、そのフッ素樹脂に付与しようとする機能に適した機能性基を選択した共重合体を得ることで、様々な機能を付与することができるフッ素樹脂改質用の共重合体を得ることができる。すなわち、本発明のフッ素樹脂改質用の共重合体の製造方法は、前記モノマー(A)が、改質対象となるフッ素樹脂のポリマー構造と共通する構造単位の側鎖を有するものとしてモノマー(A)を選択する工程を有し、前記モノマー(B)が、フッ素樹脂の改質目的に対応する機能性基を有するモノマー(B)を選択する工程を有することを特徴とする共重合体の製造方法とすることができる。
本発明の共重合体は、その共重合体のモノマーとして第1のモノマー(A)と第2のモノマー(B)を用いて重合される。
[第1のモノマー(A)]
本発明の共重合体に用いられるモノマー(A)は、その側鎖に前述した式(a1)〜(a5)からなる群から選択されるいずれかのフッ素化アルキル基を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン、置換スチレンからなる群より選ばれるいずれかのモノマー(A)であることを特徴とする。
モノマー(A)は、その側鎖に前述した式(a1)〜(a5)からなる群から選択されるいずれかのフッ素化アルキル基を有する。ここで、モノマー(A)の側鎖とは、本発明のモノマー(A)を用いて重合体を重合したときに、その側鎖にあたる部分を指す。この側鎖にあたる構造は、前述した式(a1)〜(a5)で表され、これらからなる群から選択されるいずれかのフッ素化アルキル基を有するモノマーを用いる。式(a1)〜(a5)で表される構造のいずれの側鎖を用いるかについては、本発明の共重合体により改質しようとするフッ素樹脂のポリマー構造との接着性等に応じて選択される。例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の改質を行うための共重合体を得る場合、PTFEと共通する繰り返し単位の構造を有し接着性に優れた共重合体を得やすい、式(a1)で表される構造の側鎖を有するモノマーを用いて共重合体を重合することが好ましい。
このモノマー(A)の側鎖について、式(a1)〜(a5)において、nは、2以上14以下の整数である。すなわち、結晶性を示す繰り返し単位を有する側鎖となる構造を有するものである。よって、このnが2未満であれば、十分な結晶性を示す構造とならないため好ましくない。また、このnが14を超えるとき、側鎖の構造が大きすぎる共重合体となることから、共重合体としてのフッ素樹脂との接着性や、改質効果等の機能が十分に発揮されない場合がある。nは、共重合体としての重合性およびモノマーの入手しやすさの観点から、2以上10以下であることがより好ましく、2以上8以下であることが特に好ましい。なお、モノマー(A)の側鎖の末端は、HおよびF、CH2F、CHF2、CF3からなる群から選択されるいずれかであることが好ましい。このような末端を有する構造であれば、フッ素樹脂への接着性を発揮しやすい。
本発明の共重合体に用いられるモノマー(A)は、前述したフッ素化アルキル基の側鎖を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン、置換スチレンからなる群より選ばれるいずれかのモノマーである。これらの(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン、置換スチレンといった構造が、共重合体としてのモノマー(A)由来の構造の主鎖を形成する。なお、ここで、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタアクリレートの両者を意味する。同様に、「(メタ)アクリルアミド」とは、アクリルアミドおよびメタアクリルアミドの両者を意味する。
このモノマー(A)を例示すると、下記式(A1)〜(A5)で表されるモノマーが挙げられる。この式(A1)において、nは、2以上14以下の整数である。また、式(A1)〜(A5)において、Xは、HおよびF、CH2F、CHF2、CF3からなる群から選択されるいずれかである。例えば、この(A1)で表されるモノマーは、フッ素化アルキル基として、式(a1)で表される構造を有するアクリレートである。この式(A1)で表される構造のモノマーをモノマー(A)として得られる共重合体は、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)との接着性に優れている。また、(A1)〜(A5)のモノマーはアクリレートの重合によることができ、これらのモノマー由来のブロック構造を有する共重合体の製造を効率よく行いやすい。
式(A1)〜(A5)において、nは、2以上14以下の整数であり、mは、1以上4以下の整数である。また、式(A1)〜(A5)において、Xは、HおよびF、CH2F、CHF2、CF3からなる群から選択されるいずれかである。
モノマー(A)として使用することができる試薬として市販されているものを、より具体的に例示すると、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,-dodecaflorofepthylacrylate(DFA)や、1H,1H,2H,2H-Heptadecafluorodecyl acrylate(HFD)が挙げられ、これらのモノマーを用いることでフッ素樹脂に接着性を示すと考えられるモノマー(A)を用いた共重合体、特にモノマー(A)が重合された部分を有するブロック共重合体を得やすい。
[第2のモノマー(B)]
本発明の共重合体に用いられる前記モノマー(B)は、機能性基を有するモノマー(B)であることを特徴とする。ここで、機能性基とは、重合後の共重合体内に存在することで、フッ素樹脂を改質する機能を奏する基である。フッ素樹脂が改質されるときに付与される機能としては、主に、親水性や、イオン伝導性、接着性、重金属担持性、有機溶媒親和性が挙げられる。モノマー(B)が有する機能性基とは、これらに対応する構造をいう。
例えば、機能性基としてアルキル基を有するモノマー(特に、側鎖にアルキル基を有するモノマー)をモノマー(B)として共重合体を製造することで、有機溶媒親和性を示す共重合体を得ることができる。この機能性基は、極性基を有する機能性基であることが好ましい。極性基を有する機能性基を有するモノマー(B)を用いることで得られる共重合体をフッ素樹脂改質剤として使用するとき、その改質剤により改質されたフッ素樹脂の特性が通常のフッ素樹脂と著しく異なるものとなる点から優れている。
ここで、極性基とは、極性のある原子団であり、その基を有するモノマーを用いた共重合体に存在することで、共重合体のポリマー内に極性を示す構造を形成するものを指す。代表的な極性基としては、アミノ基(−NH2)、カルボキシ基(COOH)、ヒロドキシ基(−OH)、カルボニル基(=O)、エーテル基(−O−)、スルホ基(−SO3H)、エステル基(−COO−)、アミド基などが挙げられる。
モノマー(B)において、機能性基、特に極性を有する機能性基は、モノマーの主鎖構造として存在しても良いし、側鎖として存在してもよく、付与したい機能や、共重合体の重合しやすさを鑑み適宜選択される。このモノマー(B)はモノマー(A)と共重合されることで、所定の機能を発揮するものである。モノマー(B)由来の構造、特に好ましくはブロック共重合体としてのモノマー(B)が重合されたユニットが、通常、フッ素樹脂が発揮し得ない機能を発揮するものである。
このために、例えば、親水性を付与するために、高い親水性を示すポリビニルアルコールのような主鎖にエーテル基を有する構造を設けることができる。または、主鎖自体に機能性基をほとんど有さないものであっても、共重合体としたときに、その側鎖にあたる部分に、機能性基を有するモノマーを用いても良い。側鎖に機能性基を有する構造とする場合、主鎖となる構造は共重合体を形成することができるものであればその構造は特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン、置換スチレンなどを採用してもよい。
本発明の共重合体に用いられる前記モノマー(B)は、オキシアルキレン基、アミノ基、スルホ基から選択されるいずれかの基を有するモノマーであることが好ましい。これらの構造は、特に、フッ素樹脂に付与したい機能に対応した構造を有するものであり、ポリマーの共重合体の基として存在することでそれぞれの機能を発揮しやすいものである。
ここで、オキシアルキレン基とは、一般式(Cn2nO)で表される基である。この一般式において、nは1〜10までの整数であることが好ましい。例えば、nが1のとき、オキシメチレン(CH2O)、nが2のジオキシエチレン(CH2CH2O)と呼ばれる。これらのオキシアルキレン基が複数つながることで、ポリオキシアルキレン基(一般式、(Cn2nO)m)と呼ばれる。代表的な直鎖状のポリオキシアルキレン基(((CH2nO)m)としては、ポリオキシエチレン((CH2CH2O)m)等があげられる。これらのオキシアルキレン基やポリオキシアルキレン基を主鎖や、側鎖として有するモノマーを第2のモノマー(B)として用いて共重合体を合成しフッ素樹脂改質剤として利用することで、フッ素樹脂に親水性やLiイオン伝導性等を付与することができる。
ポリオキシアルキレン基を側鎖に有するモノマーとしては、例えば、ジ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート(CH2=CH(CO)O(CH2―CH2―O―)225)、ポリエチレングリコール−モノアクリレート(CH2=CH(CO)O(CH2―CH2―O―)nH)(好ましくは、nは2〜10)、メトキシ−ポリエチレングリコール−アクリレート(CH2=CH(CO)O(CH2―CH2―O―)nCH3)(好ましくは、nは2〜9)などが挙げられる。
また、モノマー(B)はアミノ基を有するものであってもよい。このアミノ基は、アミンとして重合後の共重合体の構造内に存在する。ここで、アミンとは、アンモニアの水素原子を炭化水素基で置換した化合物の総称である。置換した数が1つのものを第一級アミン、2つのものを第二級アミン、3つのものを第三級アミン、アルキル基が第三級アミンに結合したものを第四級アンモニウムイオンと呼ぶ。これらの各種アミンが、モノマー(B)由来の構造として本発明の共重合体に存在することで、親水性や接着剤等との接着性、重金属担持性などの機能を発揮することができる。
特に、これらの機能を発揮させるためには、モノマー(B)の側鎖に、第3級あるいは、第4級のアミンを有するモノマーを用いることが好ましい。より具体的には、「−N(R1)(R2)」で表される構造を持つ置換基であって、R1及びR2は、それぞれ独立に、H又は炭化水素である。この炭化水素における炭素数は、例えば、1〜3とすることができる。例えば、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(2-(Dimethylamino) ethyl Methacrylate、DMAEMA)、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート(2-(Dimethylamino) ethyl Acrylate、DMAEA)、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(2-(Diethylamino) ethyl Methacrylate、DEAEMA)、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート(2-(Diethylamino) ethyl Acrylate、DEAEA)、2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート(2-(tert- Butylamino) ethyl Methacrylate、TBAEMA)があげられる。
また、モノマー(B)はアミド基を有するものであってもよい。アミド基を有するものの場合、接着性や重金属担持性、染色性といった機能を発揮させることができる。具体的な、アミド基を側鎖に有するものとして、N、N-ジメチルアクリルアミド(N、N-Dimethylacrylamide、DMAA)、N、N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(N、N-Dimethylaminopropyl Acrylamide、DMAPAA)、及びN、N-ジエチルアクリルアミド(N、N-Diethylacrylamide、DEAA)などが挙げられる。
また、モノマー(B)は、スルホ基を有するものであってもよい。スルホ基を有することで、親水性や、プロトン伝導性を付与することができる。スルホ基を有するモノマーとしては、例えば、ビニルスルホン酸、2―(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸、ATBS(Acrylamido Tertiary Butyl Sulfonic Acid)や、そのナトリウム塩であるATBSNaなどが挙げられる。
本発明の共重合体は、前述したモノマー(A)と、モノマー(B)との共重合体である。本発明の共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、トリブロック共重合体等のいずれであってもよいが、好ましくは、ブロック共重合体である。また、本発明の共重合体を製造する方法においても、前記共重合体が、前記モノマー(A)が重合された部分であるモノマー(A)由来重合ブロックと、前記モノマー(B)が重合された部分であるモノマー(B)由来重合ブロックとが、それぞれのブロックを形成しながら結合しているブロック共重合体となるように製造することが好ましい。ブロック共重合体とすることで、モノマー(A)の構造ユニットと、モノマー(B)の構造ユニットとのそれぞれの機能が十分に発揮されやすくなる。モノマー(A)とモノマー(B)との共重合体は、公知の技術(例えば、特許文献3などを参照)により重合することが可能である。
例えば、改質対象となるフッ素樹脂のポリマー構造と共通する構造単位の側鎖を有するモノマー(A)を選択する工程でモノマー(A)を選択する。また、改質目的に対応させて第2のモノマー(B)を選択する工程でモノマー(B)を選択する。そして、ここで選択されたモノマー(A)を重合溶媒に開始剤と共に混合してモノマー(A)混合溶液を調製するモノマー(A)混合溶液調製工程を行う。次に、この混合溶液調製工程で調製されたモノマー(A)混合溶液を、適当な重合温度(例えば約90〜120℃)で、リアクター内で適宜撹拌しながら、窒素雰囲気等の下でリビングラジカル重合等の開始剤の重合機構に基づくモノマー(A)重合工程を行い、モノマー(A)ブロック重合体を得る。さらに、このモノマー(A)ブロック重合体を混合させている溶液に、別途選択されているモノマー(B)を混合して、溶液中のラジカル等によってさらにモノマー(B)を重合させるモノマー(B)重合工程を行う。これにより、モノマー(A)由来ブロックとモノマー(B)由来ブロックを有するブロック共重合体を得ることができる。モノマー(A)とモノマー(B)との重合を行う順序は、重合させようとするモノマー種や分子量、それぞれの重合条件等に応じて変更してもよい。
本発明の共重合体において、第1のモノマー(A)由来の構造に対応する分子量(g/mol)と、第2のモノマー(B)由来の構造に対応する分子量(g/mol)とは、それぞれ500以上であることが好ましい。第1のモノマー(A)由来の構造に対応する分子量が500以上であることで、フッ素樹脂に対する接着性に優れたものとなる。第1のモノマー(A)由来の構造に対応する分子量は、1,000以上であることが好ましく、5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることが特に好ましい。
また、第2のモノマー(B)由来の構造に対応する分子量が500以上であることで、フッ素樹脂の表面を任意の特性を持つように修飾できる。第2のモノマー(B)由来の構造に対応する分子量は、1,000以上であることが好ましく、2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることが特に好ましい。共重合体は、第1のモノマー(A)及び第2のモノマー(B)から成るものであってもよいし、本発明の目的を損なわない範囲でさらにその他のモノマーを含んでいてもよい。なお、これらの分子量は、GPCにより得られる結果から、ポリスチレン換算で求めることができる値「Mw:重量平均分子量」である。また、モノマー(A)由来の構造は溶媒に溶けないことから分子量を測定しにくい場合があるため、分子量を求める場合、共重合体全体の分子量からモノマー(B)由来の構造による分子量を差し引いた値とすることで推算することができる。
本発明の共重合体の一例として、下記式(I)で表されるポリマーが挙げられる。これは、モノマー(A)として、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,-ドデカフルオロへプチルアクリレート(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-Dodecafluorohepthyl Acrylate、DDFA)を重合させ、その後、モノマー(B)としてジ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレートを用いて共重合させたブロック共重合体である。この共重合体は、モノマー(A)であるDDFA由来の構造によりフッ素樹脂と接着性を示し、一方で、モノマー(B)であるジ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート由来の構造により親水性を示す。なお、式(I)において、nは2〜1,000であることが好ましく、mは2〜1,000程度であることが好ましい。より好ましくは、nは改質対象のフッ素樹脂との接着性から選択され比較的短い共重合体であっても十分な接着力を示すことが多く、長すぎる場合モノマー(B)側の機能が発現しにくくなることがあるため、5〜200であることがより好ましい。一方、mはフッ素樹脂を具体的に改質しようとする程度によって選択され、基本的にその長さが改質の程度に対応し、5〜1000であることがより好ましい。
本発明の共重合体を用いて改質されるフッ素樹脂は、その成型体であるフッ素樹脂系成形体の形状となったものを改質することができる。フッ素樹脂成形体は、フッ素樹脂を主たる成分とする成形体であり、前記フッ素樹脂としては、特に限定されず、フッ素を含有するモノマーの単独重合体や、他のモノマーとの共重合体を用いることができる。具体的には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド系(THV)、ポリビニリデンフルオライド系(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン系(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン系(ECTFE)、テトラフルオロエチレン−エチレン系(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル系(PFA)などが挙げられる。
本発明の共重合体を用いてフッ素樹脂を改質するとき、その改質対象となるフッ素樹脂系成形物の成形形態としては、特に限定されず、例えば、シート、板、多孔質材料などの成形物が挙げられる。成型体の表層にあたる表面のみではなく、さらに孔内など、その内部にも浸透させて多孔質材料の全体を改質することができる。
本発明の共重合体を用いてフッ素樹脂を改質するにあたっては、例えば、本発明の共重合体を溶媒に溶解や分散させて溶液(分散液)とし、その溶液をフッ素樹脂成型物に塗工したり、フッ素樹脂成型物をその溶液に浸漬させるなどの方法で処理することができる。溶媒としては、共重合体の溶解性(分散性)に優れ、適宜揮発性に優れたものを用いることができる。このような溶媒として、例えば、酢酸ブチルやベンゼン、トルエン、テトラヒドロフランなどがあげられる。また、溶液とする時の共重合体の濃度は、塗工処理や浸漬処理等に適した粘度や膜厚を得やすいように適宜設定され、例えば0.5〜20重量%程度とすることができる。
また、本発明の共重合体を用いたフッ素樹脂改質剤によれば、基材が物理的に傷みにくいため、基材の力学的強度が劣化しにくく、基材の耐久性が高い。また、例えば、多孔膜の基材を用いる場合、本発明の表面修飾用組成物を用いると、多孔膜における細孔内部までの改質を容易に行うことができる。
さらに、本発明の共重合体による改質効果は、フッ素樹脂とフッ素樹脂改質剤中の共重合体とが形成している擬結晶の融点以上に加熱して、加熱処理や溶媒塗布して加温処理することによりフッ素樹脂の表面(多孔質の場合、多孔質を形成する繊維表面等を含めた広義の表面)から取り外すことができ改質前への復元も期待できる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[評価項目]
[接触角]
水接触角測定装置(協和界面科学社製“Dropmaster100”)を用いて、表面の接触角を測定した。
[剥離試験]
JIS K 6854―3(1999)に準じてT型剥離試験を行った。なお、JIS試験法の寸法に対して、幅を1/2、長さを1/2とした試験片を用いて、剥離試験を実施した。試験に用いた接着剤は以下の接着剤である。また、降伏荷重および平均荷重、剥離強度は以下の通り求めた。
接着剤:エポキシ系接着剤
降伏荷重[N]:剥離開始点から終了点までの負荷荷重の最大値
平均荷重(平均剥離力)[N]:剥離試験データ(剥離距離−荷重)のうち、剥離開始点(0mm)から25mmおよび測定最終点より25mmを除外し、算出した負荷荷重の平均値
剥離強度 [N/mm]もしくは[N/m]:試験片(フィルム)単位幅あたりの平均荷重
[原料]
[モノマー(A)]
・モノマー(A−1−1):DDFA
2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,-ドデカフルオロへプチルアクリレート(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-Dodecafluorohepthyl Acrylate、DDFA)を用いた。このモノマーは、CF2基を6つ有するアクリレートであり、側鎖に式(a1)の繰り返し構造を3つ有するモノマーである。
[モノマー(B)]
・モノマー(B−1−1):DEEA
ジ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート(diethylen Glycol Ether Acrylate、DEEA)を用いた。このモノマーは、側鎖にオキシエチレン基を有するアクリレートである。
・モノマー(B−2−1):DEAEA
2−(エチルアミノ)エチルアクリレート(2-(Ethylamino)ethyl Acrylate、DEAEA)を用いた。このモノマーは、側鎖にアミノ基を有する有するアクリレートである。
[重合開始剤] Bloc Builder MA No.33
[溶媒] 酢酸ブチル
[PTFEシート] PTFEシート(サンプラテック社、厚さ0.8mm)
[PTFEフィルム] PTFEフィルム(サンプラテック社、厚さ0.1mm)
[PTFE多孔質膜] PTFEメンブレンフィルタ(ADVANTEC社、細孔径:1.00μm、Φ:47mm)
[PTFE改質用共重合体の設計]
PTFE樹脂を用いた成形体に、親水性および接着性を付与することができるフッ素樹脂改質用の共重合体(1)の設計を試みた。まず、PTFEが、テトラフルオロエチレンを主たる構造として有することから、これと対応する(a1)で表されるフッ素化アルキル基を有するアクリレートである前記モノマー(A−1−1)を選択した。次に、親水性および接着性といった改質目的に対応する機能性基として、オキシアルキレン基を有するアクリレートである前記モノマー(B−1−1)を選択した。そして、ここで選択されたモノマーを用いて、フッ素樹脂改質用の共重合体(1)の製造を行った。
[共重合体(1)の調製]
DDFA6.7g、酢酸ブチル6.7g、重合開始剤(Bloc Builder MA No.33)0.385gを混合した溶液を、重合温度約105℃、リアクターの撹拌速度75rpm、窒素雰囲気下でリビングラジカル重合することにより、第1のモノマー(A)であるDDFA(モノマー(A−1−1))のブロック重合体を製造した。さらに、これにより得られたDDFAのブロック重合体の溶液に、第2のモノマー(B)であるモノマー(B−1−1)を3.61g、酢酸ブチルを3.76g投入してモノマー(A−1−1)のブロック重合体に、モノマー(B−1−1)ブロック重合体が結合したブロック共重合体である共重合体(1)を得た。この共重合体(1)の構造式を以下に式(I)として示す。なお、得られた共重合体(1)の分子量(Mw:重量平均分子量)を、GPCにより測定し、ポリスチレン換算にて求めた。モノマー(A−1−1)由来の構造は推算値として約19,000(g/mol)、モノマー(B−1−1)由来の構造が約150,000(g/mol)の共重合体であった。
[PTFE改質用共重合体の設計]
PTFE樹脂を用いた成形体に、親水性および接着性、重金属担持性を付与することができるフッ素樹脂改質用の共重合体(2)の設計を試みた。まず、PTFEが、テトラフルオロエチレンを主たる構造として有することから、これと対応する(a1)で表されるフッ素化アルキル基を有するアクリレートである前記モノマー(A−1−1)を選択した。次に、親水性および接着性、重金属担持性といった改質目的に対応する機能性基として、アミノ基を有するアクリレートである前記モノマー(B−2−1)を選択した。そして、ここで選択されたモノマーを用いて、フッ素樹脂改質用の共重合体(2)の製造を行った。
[共重合体(2)の調製]
モノマー(B−2−1)を3.2g、酢酸ブチルを3.2g、重合開始剤(Bloc Builder MA No.33)0.385gを混合した溶液を、重合温度約105℃、リアクターの撹拌速度75rpm、窒素雰囲気下でリビングラジカル重合することにより、第2のモノマー(B)であるモノマー(B−2−1)のブロック重合体を製造した。さらに、これにより得られたモノマー(B−2−1)のブロック重合体の溶液に、第1のモノマー(A−1−1)であるDDFA6.9g、酢酸ブチル6.9gを投入してモノマー(A−1−1)のブロック重合体とモノマー(B−2−1)のブロック重合体とが結合したブロック共重合体である共重合体(2)を得た。この共重合体(2)の構造式を以下に式(II)として示す。なお得られた共重合体の分子量は、仕込み量・比率から、モノマー(A−1−1)由来の構造は推算値として約7,000(g/mol)、モノマー(B−2−1)由来の構造が約3,000(g/mol)の共重合体であった。
[塗工用液の調製]
・共重合体(1)の塗工用液
前述の方法で入手された共重合体(1)を、酢酸ブチル溶液に溶解させて共重合体(1)溶液を調製した。
・共重合体(2)の塗工用液
前述の方法で入手された共重合体(2)を、酢酸ブチル溶液に溶解させて共重合体(2)溶液を調製した。
[塗工方法]
(1)ディッピング
共重合体溶液に、およそ1秒間、フッ素樹脂成型品の改質対象となる部分を浸漬し、その後、常温で静置し自然乾燥した。
(2)コーティング
共重合体溶液を、塗工厚みが約50μmのアプリケーターを用いて塗工し、その後、常温で静置し自然乾燥した。
[実施例1、2]
PTFEシート(厚さ0.8mm)表面を、共重合体(1)の濃度が0.1重量%、1.0重量%の溶液を用いて、コーティングにより処理することで、改質されたPTFEシート接触角を測定した。結果を、表1に示す。
表1に示すように、本発明の共重合体を用いて改質されたPTFEシートは、その接触角が極めて低くなっており、親水性が付与されていることを確認できた。
[実施例3、4]
PTFE多孔質膜を、共重合体(1)の濃度が5重量%の溶液を用いて、ディッピングおよび片面コーティングにより処理することで、それぞれの工法で改質されたPTFE多孔質膜上に水滴を静置した結果を、図1に示す。
図1からも明らかなように、本発明の共重合体を用いて処理されたPTFE多孔質膜は、親水性を示し、吸水するようになった。
[実施例5、6]
PTFEフィルム(厚さ0.1mm)を、共重合体(1)の濃度が5重量%の溶液を用いて、ディッピングおよび片面コーティングにより処理することで、それぞれの工法で改質されたPTFEフィルムの剥離強度を測定した結果を、表2に示す。
表2に示すように、本発明の共重合体を用いて処理したPTFEフィルムは、剥離強度が高くなった。すなわち、PTFEフィルムについて、接着剤などによる接着性を向上させることができた。
[実施例7〜9]
PTFEシート(厚さ0.8mm)表面を、共重合体(2)の濃度が0.1重量%、1.0重量%、5.0重量%の溶液を用いて、コーティングにより処理することで、改質されたPTFEシート接触角を測定した。結果を、表3に示す。
表3に示すように、本発明の共重合体を用いて改質されたPTFEシートは、その接触角が極めて低くなっており、親水性が付与されていることを確認できた。
[実施例10〜12]
PTFE多孔質膜を、共重合体(2)の濃度が0.1重量%、1.0重量%、5.0重量%の溶液を用いて、コーティングにより処理することで、改質されたPTFE多孔質膜接触角を測定した。結果を、表4に示す。なお、多孔質膜は経時変化により水が浸透して接触角が変化するため、試験開始後の接触角の経時変化も評価した。
表4に示すように、本発明の共重合体を用いて改質されたPTFE多孔質は、その接触角が低くなった。特に、実施例12において顕著な効果が得られた。この結果より、親水性が付与されていることを確認できた。
[実施例13〜15]
PTFEフィルム(厚さ0.1mm)を、共重合体(2)の濃度が5重量%の溶液を用いてディッピング処理したPTFEフィルム、共重合体(2)の濃度が1重量%および5重量%の溶液を用いて片面コーティングにより処理することで改質されたPTFEフィルムの、それぞれについて剥離強度を測定した結果を、表5に示す。
表5に示すように、本発明の共重合体(2)を用いて処理したPTFEフィルムは、剥離強度が高くなった。すなわち、PTFEフィルムについて、接着剤などによる接着性を向上させることができた。
実施例1〜15に示すように、前述したPTFE改質用共重合体の設計の指針に基づいて、目的としたPTFE改質を達成することができるPTFE改質用共重合体を製造することができることを確認した。
本発明の共重合体を用いれば、フッ素樹脂の表面物性を改質し、従来と異なる機能を付与することができる。例えば、フッ素樹脂成型品に親水性や、溶媒親和性を付与することができ、フッ素樹脂成型品が用いられてきた用途や、さらにこれまではフッ素樹脂の物性によりその利用が制限されてきた用途にも応用できるようになり、産業上有用である。

Claims (10)

  1. 第1のモノマー(A)由来の構造単位と、第2のモノマー(B)由来の構造単位とを有する共重合体であり、
    前記モノマー(A)が、その側鎖に式(a1)〜(a5)からなる群から選択されるいずれかのフッ素化アルキル基を有する、(メタ)アクリレート、およびαオレフィンからなる群より選ばれるいずれかのモノマーであり、かつ、前記モノマー(A)が、改質対象となるフッ素樹脂成形体のポリマー構造と共通する構造単位の側鎖を有するものとして選択されたモノマー(A)であり、
    前記モノマー(B)が、その側鎖にフッ素樹脂成形体の改質目的から選択された極性基の機能性基を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、αオレフィン、および置換スチレンからなる群より選ばれるいずれかのモノマー(B)であり、
    前記共重合体が、前記モノマー(A)が重合された部分であるモノマー(A)由来重合ブロックと、前記モノマー(B)が重合された部分であるモノマー(B)由来重合ブロックとを有するブロック共重合体であるフッ素樹脂成形体の改質用の共重合体を含むフッ素樹脂改質剤を用いるフッ素樹脂成形体の改質方法であって、
    前記フッ素樹脂改質剤が、前記共重合体と溶媒とを含む溶液であり、
    前記溶液を前記フッ素樹脂成形体に塗工、および/または、前記溶液に前記フッ素樹脂成形体を浸漬する処理を行い、
    前記処理された前記フッ素樹脂成形体を乾燥することを特徴とするフッ素樹脂成形体の改質方法。
    式(a1)〜(a5)において、nは、2以上14以下の整数である。
  2. 前記溶媒が、酢酸ブチル、ベンゼン、トルエン、およびテトラヒドロフランからなる群から選択されるいずれかを含むことを特徴とする請求項1記載のフッ素樹脂成形体の改質方法(ただし、前記フッ素樹脂成形体が、リチウムイオン二次電池用のセパレータである場合を除く)。
  3. 前記溶液における、前記共重合体の濃度が0.5〜20重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載のフッ素樹脂成形体の改質方法。
  4. 前記モノマー(A)が、式(A1)〜(A5)のいずれかで表されるモノマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフッ素樹脂成形体の改質方法。
    式(A1)〜(A5)において、nは、2以上14以下の整数であり、mは、1以上4以下の整数である。また、式(A1)〜(A5)において、Xは、HおよびF、CH2F、CHF2、CF3からなる群から選択されるいずれかである。
  5. 前記モノマー(A)が、前記式(A1)で表されるモノマーであることを特徴とする請求項4記載のフッ素樹脂成形体の改質方法。
  6. 前記モノマー(B)が、極性基を有する機能性基として、アミノ基、アミド基、およびスルホ基からなる群から選択されるいずれかの基を有するモノマーであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフッ素樹脂成形体の改質方法。
  7. フッ素樹脂成形体の改質用の共重合体の製造方法であって、
    前記フッ素樹脂成形体の改質用の共重合体が、第1のモノマー(A)と、第2のモノマー(B)との共重合体であって、
    前記モノマー(A)が、その側鎖に式(a1)〜(a5)からなる群から選択されるいずれかのフッ素化アルキル基を有する、(メタ)アクリレート、およびαオレフィンからなる群より選ばれるいずれかのモノマーであり、かつ、前記モノマー(A)が、改質対象となるフッ素樹脂成形体のポリマー構造と共通する構造単位の側鎖を有するものとして選択されたモノマー(A)であり、
    前記モノマー(B)が、その側鎖にフッ素樹脂成形体の改質目的から選択された機能性基を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、αオレフィン、および置換スチレンからなる群より選ばれるいずれかのモノマー(B)であり、
    前記共重合体が、前記モノマー(A)が重合された部分であるモノマー(A)由来重合ブロックと、前記モノマー(B)が重合された部分であるモノマー(B)由来重合ブロックとを有するブロック共重合体であり、
    前記モノマー(B)が、極性基を有する機能性基として、アミノ基、アミド基、およびスルホ基からなる群から選択されるいずれかの基を有するモノマーであることを特徴とする共重合体の製造方法。
    式(a1)〜(a5)において、nは、2以上14以下の整数である。
  8. 前記モノマー(A)由来重合ブロックの分子量が、1,000以上であり、
    前記モノマー(B)由来重合ブロックの分子量が、1,000以上であることを特徴とする請求項記載の共重合体の製造方法(ただし、前記フッ素樹脂成形体が、リチウムイオン二次電池用のセパレータである場合を除く)。
  9. 前記モノマー(A)が、式(A1)〜(A5)のいずれかで表されるモノマーであることを特徴とする請求項またはに記載の共重合体の製造方法
    式(A1)〜(A5)において、nは、2以上14以下の整数であり、mは、1以上4以下の整数である。また、式(A1)〜(A5)において、Xは、HおよびF、CH2F、CHF2、CF3からなる群から選択されるいずれかである。
  10. 前記モノマー(A)が、前記式(A1)で表されるモノマーであることを特徴とする請求項記載の共重合体の製造方法。
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