疼痛の有効な長期作用性の局所緩和、特に、手術後疼痛などの急性疼痛を実現するための手法の1つは、持続放出系または徐放系の利用である。多数の因子が効果的な薬物送達系の設計に影響を及ぼし得るが、局所麻酔剤などのある種のクラスの薬物は、通常、比較的、短期持続性と見なされており、その結果、それらの薬物は、大抵の場合、小規模または中規模の手順でしか使用されていない。長期持続性で、有効で、投与に便利であり、かつオピオイドの使用に伴う欠点の一部を克服することができる、疼痛の処置のための組成物が依然として必要とされている。本発明の組成物および方法は、これらおよび他の必要性を満たすものである。
一態様では、アミド型局所麻酔剤、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)および送達用ビヒクルを含む組成物が提供される。
一実施形態では、組成物は水性をベースとする溶液である。
別の実施形態では、送達用ビヒクルは持続放出性送達用ビヒクルである。
一実施形態では、組成物は注射可能である。
別の実施形態では、組成物は、筋肉内注射、経皮、局所として、皮下注射として、神経周囲注射として、または創傷に投与するのに適している。
一実施形態では、持続放出性送達用ビヒクルは、ポリマー組成物、リポソーム組成物、マイクロスフィア組成物、非ポリマー組成物またはインプラント可能なデバイスである。
一実施形態では、持続放出性送達用ビヒクルは、マイクロスフィア組成物ではない。
一実施形態では、持続放出性送達用ビヒクルは、リポソーム組成物ではない。
一実施形態では、持続放出性送達用ビヒクルは、非ポリマー組成物ではない。
一実施形態では、持続放出性送達用ビヒクルは、インプラント可能なデバイスではない。
一実施形態では、組成物は、粘度計を使用して37℃で粘度を測定した場合、10,000mPa−s未満の粘度を有する。
さらに別の実施形態では、持続放出性送達用ビヒクルは、小さな単一ラメラベシクル(SUV)、大きな単一ラメラベシクル(LUV)、多重ラメラベシクル(MLV)および多重ベシクルリポソーム(MVL)からなる群から選択されるリポソームである。
別の実施形態では、アミド型局所麻酔剤は、リポソームの水性空間またはリポソームの脂質層中に捕捉されている。
別の実施形態では、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は、リポソームの水性空間またはリポソームの脂質層中に捕捉されている。
さらに別の実施形態では、持続放出性送達用ビヒクルは、生体浸食性または生分解性ポリマーを含むマイクロスフィアである。
一実施形態では、アミド型局所麻酔剤および非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は、マイクロスフィア中に捕捉されている。
一実施形態では、インプラント可能なデバイスは、アミド型局所麻酔剤および非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を含むレザーバーを備えた浸透圧ポンプである。
別の実施形態では、持続放出性送達用ビヒクルは、イソ酪酸酢酸スクロースを含む非ポリマー製剤である。
さらに別の実施形態では、持続放出性送達用ビヒクルは、ポリマー、アミド型局所麻酔剤および非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を含む半固体ポリマー製剤の形態にあるポリマー製剤である。
一実施形態では、ポリマーは、生体浸食性または生分解性ポリマーである。
さらに別の実施形態では、ポリマー製剤は、インプラントを形成するか、またはインサイチュでデポ剤を形成する。
さらに別の実施形態では、ポリマーは、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)コポリマー、ポリカプロラクトン、ポリ−3−ヒドロキシブチレートおよびポリオルトエステルからなる群から選択される。
さらなる実施形態では、持続放出性送達用ビヒクルは、ポリオルトエステル、アミド型局所麻酔剤および非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を含む半固体ポリマー製剤の形態にあるポリマー製剤である。
一実施形態では、アミド型局所麻酔剤は、ブピバカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカインおよびテトラカインからなる群から選択される。
さらに別の実施形態では、活性剤はロピバカインである。
さらに代替的な実施形態では、活性剤はブピバカインである。
上述の実施形態のいずれか1つまたは複数に関連するさらなる実施形態では、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)はエノール酸系NSAIDである。例示的なエノール酸系NSAIDには、メロキシカム、ピロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカムおよびイソキシカムが含まれる。
具体的な実施形態では、エノール酸系NSAIDはメロキシカムである。
特定の実施形態では、組成物は、ブピバカインおよびメロキシカムを含む。
一実施形態では、NSAIDはジクロフェナクではない。
別の態様では、送達用ビヒクル、および「カイン」という分類のアミド型局所麻酔剤およびエノール酸系非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を含む組成物が提供される。
一実施形態では、アミド型局所麻酔剤は、ブピバカインおよびロピバカインからなる群から選択される。
さらに別の実施形態では、活性剤はロピバカインである。
さらに代替的な実施形態では、活性剤はブピバカインである。
上述の実施形態のいずれか1つまたは複数に関連するさらなる実施形態では、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は、メロキシカム、ピロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカムおよびイソキシカムからなる群から選択されるエノール酸系NSAIDである。
具体的な実施形態では、エノール酸系NSAIDはメロキシカムである。
特定の実施形態では、組成物は、ブピバカインおよびメロキシカムを含む。
上述の実施形態のいずれか1つまたは複数に関連するさらなる実施形態では、組成物は半固体または固体組成物である。
一実施形態では、送達用ビヒクルは持続放出性送達用ビヒクルである。一実施形態では、持続放出性ビヒクルは、ポリマービヒクルまたは製剤である。
別の実施形態では、持続放出性ポリマービヒクルは、生体浸食性または生分解性ポリマーを含む固体または半固体ビヒクルである。
一実施形態では、生分解性または生体浸食性ポリマー製剤は、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)コポリマー、ポリカプロラクトン、ポリ−3−ヒドロキシブチレートまたはポリオルトエステルからなる群から選択されるポリマーを含む。
一実施形態では、ポリオルトエステルは、本明細書において説明されている、式I、II、IIIおよびIVにより表されるポリオルトエステルから選択される。
上述に関連するさらに特定の実施形態では、ポリオルトエステルは式Iによって表される。
さらに追加的な実施形態では、組成物または送達用ビヒクルは溶媒をさらに含む。溶媒は、プロトン性または非プロトン性の性質のどちらかであってもよい。一実施形態では、組成物は送達用ビヒクルとしてポリオルトエステルおよび溶媒を含む。
別の実施形態では、持続放出性送達用ビヒクルは、マイクロスフィア、マイクロ粒子および均一または不均一マトリックスデポ剤からなる群から選択される。一実施形態では、マイクロスフィア、マイクロ粒子またはデポ剤用ビヒクルは、生分解性または生体浸食性である。
別の実施形態では、持続放出性送達用ビヒクルは、リポソーム製剤または脂質をベースとする製剤である。
別の実施形態では、持続放出製剤は、ポリマーをベースとする固体または半固体インプラントであり、この場合、アミドアミド型(amideamide-type)局所麻酔剤およびエノール酸系NSAIDは、ポリマーをベースとするインプラントに分散されている。一実施形態では、インプラントは、縫合糸またはステイプルの形態の、固体ポリマーをベースとするビヒクルである。
さらに追加的な態様では、アミド型局所麻酔剤、および効力を増強する量のNSAIDを含む送達用ビヒクルの疼痛−緩和プロファイルを延長し、これにより、NSAIDが存在しない上記と同一の組成物のそれよりも延長された期間、有効な疼痛緩和をもたらすことが可能な組成物を実現するための方法が提供される。特に、得られた組成物は、一般に、投与後、約1日間〜少なくとも約5日間の疼痛緩和を実現するのに有効である。すなわち、組成物は、疼痛緩和のため、短期作用性製剤というよりもむしろ長期作用性製剤である。
さらに追加的な態様では、送達用ビヒクル、ならびにビヒクル中に取り込まれたアミド型局所麻酔剤および効力を増強する量のエノール酸系NSAIDを含む組成物の疼痛緩和プロファイルを改変して、これにより、約1〜5日間、約1〜2日間、約1〜3日間または約1〜4日間および任意選択でそれを超える期間にわたり、長期間の疼痛軽減作用を示す組成物であって、投与後、約1〜5時間に示されるその平均疼痛軽減作用が少なくとも約50%となる、組成物を実現する方法を提供する。
特定の実施形態では、組成物は、投与後、最大約3日間もしくは最大約5日間もしくは最大約7日間もしくは最大約10日間、または約1日間〜3日間、約1日間〜約5日間、約1日間〜約7日間、約3日間〜約5日間、約3日間〜約7日間もしくは約5日間〜約10日間、アミドもしくはアニリド型局所麻酔剤および/またはNSAIDの測定可能な血漿中濃度を実現するのに有効である。一実施形態では、アミドもしくはアニリド型局所麻酔剤および/またはNSAIDの血漿中濃度は、LC/MS/MS(液体クロマトグラフィー/タンデム型質量分析法)により測定される。
特定の実施形態では、組成物は、投与後またはin vitroでの薬物放出実験(例えば、実施例5に記載されている)の開始後、最大約3日間もしくは最大約5日間もしくは最大約7日間もしくは最大約10日間、または約1日間〜約3日間、約1日間〜約5日間、約1日間〜約7日間もしくは約5日間〜約10日間、約2日間〜約5日間、約3日間〜約5日間、約4日間〜約5日間、約2日間〜約4日間、約3日間〜約4日間、または約3日間、約4日間もしくは約5日間、約80重量%またはそれ超のアミドもしくはアニリド型局所麻酔剤および/またはNSAIDがin vitroまたはin vivoのどちらかで放出されるよう、組成物からアミド型局所麻酔剤とNSAIDのどちらもかなりの部分を放出するのに有効である。
一実施形態では、組成物は、アミド型局所麻酔剤とNSAIDとを組み合わせた放出が、アミド型局所麻酔剤およびNSAIDを独立して添加する相加作用によりもたらされる疼痛緩和のレベルよりも高い相乗的レベルの疼痛緩和をもたらす、相乗的組成物である。別の実施形態では、組成物は、アミド型局所麻酔剤およびNSAIDを独立して添加する相加作用からもたらされる期間よりも長い、疼痛緩和期間を実現する。
別の態様では、エノール酸系NSAIDなどのNSAIDと組み合わせたアミドまたはアニリド型局所麻酔剤、および送達用ビヒクルを含む組成物をニードルから分注し、これにより、組成物からの局所麻酔剤とNSAIDの両方の制御放出を達成するステップを含む、処置の方法であって、両薬物の約80重量%またはそれ超が、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間または約10日間にわたり放出される、方法が提供される。
別の実施形態では、本明細書において提供される組成物は、それを必要としている患者に局所麻酔を行う方法において使用するためのものである。この処置には、例えば、麻酔剤とNSAIDの両方の放出速度をもたらすため、アミドまたはアニリド型局所麻酔剤、送達用ビヒクルおよびNSAIDを含む、本明細書において説明されている組成物を患者に投与すること、および投与後、長期間にわたり疼痛を軽減または予防するために有効なそれぞれの薬物動態プロファイルを伴うことが含まれる。局所投与は、例えば、神経に、硬膜外腔内、くも膜下内、または手術部位もしくは創傷に直接とすることができる。一実施形態では、両方の薬物の約80重量%またはそれ超が、約5日間にわたり放出される。別の実施形態では、組成物は、施用後、最大約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間または約7日間、かなりの疼痛緩和を実現するのに有効である。さらに別の実施形態では、組成物は、約2時間〜約4時間、約2時間〜約6時間、約2時間〜約8時間、約2時間〜約10時間、約4時間〜約12時間、約6時間〜約18時間、約6時間〜約24時間、約2時間〜約2日間、約2時間〜約4日間、約1時間〜約3日間、約1時間〜約5日間、約1日間〜約5日間、約1日間〜約3日間、約2日間〜約5日間、約3日間〜約5日間、約4日間〜約5日間、約2日間〜約4日間、約3日間〜約4日間、または約2日間、約3日間もしくは約4日間、かなりの疼痛緩和を実現するのに有効である。
さらに別の実施形態では、本明細書において提供される組成物および送達系は、急性または慢性疼痛を軽減または処置するのに有効である。
さらに別の態様では、それを必要としている患者に疼痛緩和をもたらすための方法が提供される。方法は、本明細書に記載されている組成物を用意すること、および長期間、疼痛緩和をもたらすよう組成物を患者に投与することを指示することを含む。
一実施形態では、長期間の疼痛緩和とは、少なくとも約5日間である。別の実施形態では、長期間とは、最大約5日間または約5日間である。さらに別の実施形態では、長期間は、約1日間〜少なくとも約5日間、または約1日間〜最大約5日間である。さらに別の実施形態では、長期間とは約3日間である。
一実施形態では、方法は、疼痛緩和の相乗的な向上をもたらし、この場合、この疼痛緩和のレベルは、アミド型局所麻酔剤およびNSAIDを独立して添加する相加作用によりもたらされる疼痛緩和のレベルよりも大きい。別の実施形態では、方法は、疼痛緩和期間の相乗的な向上をもたらし、この場合、疼痛緩和の期間は、アミド型局所麻酔剤およびNSAIDを独立して添加する相加作用によりもたらされる疼痛緩和期間よりも長い。
一実施形態では、組成物は神経周囲注射として投与される。さらなる実施形態では、神経周囲注射は神経ブロックである。
具体的な実施形態では、組成物は、神経ブロックとして、それを必要とする対象において疼痛状態を処置するために投与される。
さらなる具体的な実施形態では、組成物は、それを必要とする対象において手術後の疼痛を処置するために、手術前に投与するなどの、疼痛状態の予防的処置として、神経ブロックとして投与される。
別の態様では、治療有効量のメロキシカムおよび治療有効量のアミド型局所麻酔剤を含む水性医薬組成物が提供される。
一実施形態では、対象への水性医薬組成物の投与により、対象への投与後、約1時間〜約24時間、約1時間〜約16時間、約1時間〜約12時間、約2時間〜約12時間、約3時間〜約12時間、約4時間〜約12時間、約4時間〜約10時間、約5時間〜約10時間、約6時間〜約10時間、約6時間〜約9時間、約6時間〜約8時間または約4時間〜約8時間の間、対象に疼痛緩和がもたらされる。別の実施形態では、麻酔の期間は、アミド型局所麻酔剤またはメロキシカム単独からなる、治療有効量の水性医薬組成物の投与によってもたらされる疼痛緩和の期間よりも長い。
一実施形態では、アミド型局所麻酔剤は、ブピバカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカインおよびテトラカインからなる群から選択される。別の実施形態では、アミド型局所麻酔剤はブピバカインである。さらに別の実施形態では、アミド型局所麻酔剤はロピバカインである。
別の態様では、メロキシカムまたは薬学的に許容されるその塩の薬学的に許容される水溶液が提供され、この場合、水溶液は、対象への投与に適した医薬品混合物を生成するよう、アミド型局所麻酔剤の薬学的に許容される水溶液と混合するのが適している。
一実施形態では、アミド型局所麻酔剤は、ブピバカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカインおよびテトラカインからなる群から選択される。別の実施形態では、アミド型局所麻酔剤はブピバカインである。さらに別の実施形態では、アミド型局所麻酔剤はロピバカインである。
一実施形態では、対象は急性または慢性疼痛を患っている。別の実施形態では、対象は、疼痛のための予防的処置を必要としている。
一実施形態では、医薬品混合物は、筋肉内、皮下注射または神経周囲注射としての投与に適している。別の実施形態では、医薬品混合物は静脈内投与に適している。別の実施形態では、医薬品混合物は創傷への投与に適している。
別の態様では、疼痛のある対象、または疼痛の予防的処置を必要とする対象を処置するための方法であって、治療有効量のメロキシカムおよび治療有効量のアミド型局所麻酔剤を含む水性医薬組成物を対象に投与するステップを含む方法が提供される。
一実施形態では、水性医薬組成物中のアミド型局所麻酔剤は、ブピバカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカインおよびテトラカインからなる群から選択される。別の実施形態では、アミド型局所麻酔剤はブピバカインである。さらに別の実施形態では、アミド型局所麻酔剤はロピバカインである。
一実施形態では、水性医薬組成物の対象への投与により、投与後、約1時間〜約24時間、約2時間〜約18時間、約3時間〜約16時間、約4時間〜約24時間、約4時間〜約22時間、約4時間〜約20時間、約4時間〜約18時間、約4時間〜約16時間、約4時間〜約14時間、約4時間〜約12時間、約6時間〜約48時間、約6時間〜約36時間、約6時間〜約24時間、約6時間〜約20時間、約6時間〜約18時間、約6時間〜約16時間、約6時間〜約14時間、約6時間〜約12時間または約6時間〜約10時間の間、対象への疼痛緩和がもたらされる。
一実施形態では、疼痛は慢性または急性疼痛である。
別の態様では、疼痛のある対象、または疼痛の予防的処置を必要とする対象を処置するための方法であって、メロキシカムまたは薬学的に許容されるその塩の医薬品溶液とアミド型局所麻酔剤の医薬品溶液とを混合して、混合溶液を調製するステップ、および混合溶液を対象に投与するステップを含む方法が提供される。
一実施形態では、混合溶液は、混合溶液を調製した後、約24時間、約20時間、約16時間、約12時間、約8時間、約6時間、約4時間、約2時間、約1時間、約45分間、約30分間、約15分間または約5分間以内に対象に投与される。
一実施形態では、メロキシカムの医薬品溶液は水溶液である。
一実施形態では、混合溶液は、筋肉内、皮下または神経周囲注射によって投与される。別の実施形態では、混合溶液は創傷に投与される。
一実施形態では、混合溶液の対象への投与により、投与後、約1時間〜約24時間、約2時間〜約18時間、約3時間〜約16時間、約4時間〜約24時間、約4時間〜約22時間、約4時間〜約20時間、約4時間〜約18時間、約4時間〜約16時間、約4時間〜約14時間、約4時間〜約12時間、約6時間〜約48時間、約6時間〜約36時間、約6時間〜約24時間、約6時間〜約20時間、約6時間〜約18時間、約6時間〜約16時間、約6時間〜約14時間、約6時間〜約12時間または約6時間〜約10時間の間、対象への疼痛緩和がもたらされる。
別の態様では、ポリオルトエステル、トリグリセリド粘度低下剤、およびポリオルトエステルが単一相を形成するよう混和性である極性非プロトン性溶媒を含む溶媒、ならびにこの単一相中に分散または溶解している治療活性剤を含む送達系が提供される。一実施形態では、トリグリセリド粘度低下剤は、1〜7個の間の炭素原子をそれぞれ独立して含む3つの脂肪酸基を含み、この低下剤は、本明細書において、「短鎖」トリグリセリドとも称される。
一実施形態では、活性剤は、約1日間〜8週間、約1日間〜7週間、約1日間〜6週間、約1日間〜5週間、約1日間〜4週間、約1日間〜3週間、約1日間〜2週間、約1週間〜8週間、約1週間〜6週間、約1週間〜4週間、約1日間〜7日間、約1日間〜6日間、約1日間〜5日間、約1時間〜24時間、約2時間〜18時間、約3時間〜16時間、約4時間〜24時間、約4時間〜22時間、約4時間〜20時間、約4時間〜18時間、約4時間〜16時間、約4時間〜14時間、約4時間〜12時間、約6時間〜48時間、約6時間〜36時間、約6時間〜24時間、約6時間〜20時間、約6時間〜18時間、約6時間〜16時間、約6時間〜14時間、約6時間〜12時間または約6時間〜10時間の範囲に及ぶ期間にかけて、送達系から放出される。
一実施形態では、送達系は、粘度計を使用して粘度が25℃で測定される場合、約10,000mPa−s未満、粘度計を使用して粘度が25℃で測定される場合、約5,000mPa−s未満、または粘度計を使用して粘度が25℃で測定される場合、約2,500mPa−s未満の粘度を有する。
一実施形態では、トリグリセリド粘度低下剤は、三酢酸グリセリン(トリアセチン、1,2,3−トリアセトキシプロパンまたは三酢酸グリセロールとも呼ばれる)である。
一実施形態では、極性非プロトン性溶媒は、室温で水に溶媒が25重量%を超える水溶解度を有する有機溶媒である。
一実施形態では、極性非プロトン性溶媒は、約2デバイ(D)を超える双極子モーメントを有する。
一実施形態では、極性非プロトン性溶媒は、アミド、エーテル、ケトンおよびスルホキシドからなる群から選択されるクラスにある。
別の実施形態では、極性非プロトン性溶媒は、ジメチルスルホキシドおよびデシルメチルスルホキシドからなる群から選択されるスルホキシドである。
さらに別の実施形態では、極性非プロトン性溶媒は、2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンおよびジメチルアセトアミドからなる群から選択されるアミドである。
一実施形態では、極性非プロトン性溶媒は、ジメチルイソソルバイドおよびテトラヒドロフランから選択されるエーテルである。
一実施形態では、極性非プロトン性溶媒は、アセトンおよびメチルエチルケトンからなる群から選択されるケトンである。
一実施形態では、極性非プロトン性溶媒は、エステル−カプロラクトンおよびブチロラクトンからなる群から選択されるラクトンである。
一実施形態では、極性非プロトン性溶媒は、アルコール、プロピレンカーボネート(4−メチル−1,3−ジオキソラン(diololan)−2−オン)のエステルである。
一実施形態では、極性非プロトン性溶媒は、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オンである。
一実施形態では、極性非プロトン性溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはN−メチルピロリドン(NMP)またはジメチルアセトアミド(DMAC)である。
一実施形態では、極性非プロトン性溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはN−メチルピロリドン(NMP)である。
一実施形態では、治療活性剤は抗嘔吐剤である。
一実施形態では、治療活性剤はグラニセトロンである。
一実施形態では、治療活性剤は麻酔剤である。別の実施形態では、麻酔剤はアミド型局所麻酔剤である。さらに別の実施形態では、麻酔剤は、ブピバカイン、レボブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカイン、テトラカインおよびロピバカインからなる群から選択される。
一実施形態では、治療活性剤はロピバカインまたはブピバカインである。
一実施形態では、麻酔剤を含む組成物は、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)をさらに含む。別の実施形態では、NSAIDはエノール酸系NSAIDである。さらに別の実施形態では、NSAIDは、メロキシカム、ピロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカムおよびイソキシカムからなる群から選択される。
一実施形態では、治療活性剤はオピオイドである。別の実施形態では、治療活性剤はブプレノルフィンである。
一実施形態では、ポリオルトエステルは、本明細書の以下に説明されている、式I、II、IIIおよびIVにより表されるポリオルトエステルから選択される。
一実施形態では、ポリオルトエステルは、式Iとして示される構造:
(式中、R
*は、メチル、エチル、プロピルまたはブチルであり、nは繰り返し単位数であり、5〜400の範囲の整数であり、各部分単位中のAはR
1またはR
3である)
によって表されるポリオルトエステルである。
一実施形態では、R*はエチルである。
一実施形態では、Aは、
[式中、pおよびqはそれぞれ独立して、約1〜20の範囲の整数であり、R
5はそれぞれ独立して、水素またはC
1〜4アルキルであり、R
6は、
(式中、sは0〜10の整数であり、tは2〜30の整数であり、R
7は水素またはC
1〜4アルキルである)
である]
である、R
1に相当する。別の実施形態では、R7は、C1、C2、C3またはC4アルキルである。特定の実施形態では、R
7はHである。さらに別の実施形態では、部分単位R
1は、α−ヒドロキシ酸含有部分単位である。別の実施形態では、pおよびqは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20からそれぞれ独立して選択される。さらに別の実施形態では、R5は独立して水素、またはC1、C2、C3もしくはC4アルキルである。
一実施形態では、Aは、
である、R
3に相当し、
xは1〜100の範囲の整数である。別の実施形態では、xは、0、1、2、3、4および5から選択され、yは2〜30の範囲の整数であり、R
8は水素またはC
1〜4アルキルである。さらに別の実施形態では、R
8は、C1、C2、C3またはC4アルキルである。別の実施形態では、R
8はHである。
一実施形態では、ポリオルトエステルは、AがR
1またはR
3であるものであり、R
1は、
(式中、pおよびqは、任意の繰り返し単位中、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20からそれぞれ独立して選択され、この場合、pの平均数またはpとqの合計(p+q)の平均数は約1〜7の間であり、xおよびsはそれぞれ独立して、0〜10の範囲の整数であり、tおよびyはそれぞれ独立して、2〜30の範囲の整数である)である。別の実施形態では、pとqの合計は、R
1の任意の繰り返し単位中、1、2、3、4、5、6または7である。さらに別の実施形態では、R
5はHである。
一実施形態では、AはR
1またはR
3であり、R
1は、
であり、
pおよびqはそれぞれ独立して、任意のR
1の繰り返し単位中、約1〜20の範囲、約1〜15、または約1〜10の範囲の整数であり、この場合、pの平均数またはpとqの合計(すなわち、p+q)の平均数は約1〜7の間である。別の実施形態では、xおよびsはそれぞれ独立して、0〜約7または1〜約5の範囲である。さらに別の実施形態では、tおよびyは、それぞれ独立して、2〜10の範囲である。
一実施形態では、R5は、水素またはメチルである。
一実施形態では、sおよびxは、1、2、3、4、5、6、7および8からそれぞれ独立して選択される。別の実施形態では、sは2である。さらに別の実施形態では、xは2である。
一実施形態では、ポリオルトエステルは、3,9−ジエチル−3,9−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジイルとAとの交互残基:
(式中、Aは、上記の通りである)
を含む。
送達系中のポリオルトエステルに関連する特定の一実施形態では、ポリオルトエステルは、約2,500ダルトン〜10,000ダルトンの範囲の分子量を有する。
送達系に関連する一実施形態では、ポリオルトエステルは式Iとして示される構造により表され、送達系の約65〜75重量%の範囲の量にある。
送達系に関連する一実施形態では、トリグリセリド粘度低下剤は、送達系の、約10重量%〜50重量%、10重量%〜35重量%、15重量%〜30重量%もしくは20重量%〜25重量%、または約15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%もしくは35重量%の範囲の量で存在している。
送達系に関連する一実施形態では、非プロトン性溶媒は、送達系の、約10重量%〜35重量%、10重量%〜30重量%、10重量%〜20重量%、10重量%〜15重量%、または約2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%もしくは20重量%の範囲の量で存在している。
送達系に関連する一実施形態では、活性剤は、送達系の約1〜8重量%、2〜6重量%、2〜5重量%または1〜5重量%の範囲の量で存在している。
送達系に関連する一実施形態では、ポリオルトエステルは、本明細書において提供されている、任意の1つまたは複数の組合せおよびそれに関連する一式の変数による、式Iとして示されている構造によって表され、活性剤は、送達系の約1〜5重量%の範囲の量のグラニセトロンであり、非プロトン性溶媒は、送達系の約5〜35重量%の範囲の量のDMSOまたはNMPであり、トリグリセリド粘度低下剤は、送達系の約10〜30重量%の範囲の量のトリアセチンである。
特定の実施形態では、トリグリセリド粘度低下剤および極性非プロトン性溶媒を含む溶媒は、送達系の約15〜50重量%の範囲の量にあり、治療剤は、送達系の約3〜30重量%の範囲の量にある。
さらに別の実施形態では、ポリオルトエステルは、本明細書において提供されている、任意の1つまたは複数の組合せおよびそれに関連する一式の変数による、式Iとして示されている構造によって表され、活性剤は、送達系の約3〜30重量%の範囲の量のロピバカインまたはブピバカインであり、トリグリセリド粘度低下剤は送達系の約15〜30重量%の範囲の量のトリアセチンであり、溶媒は、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドおよびN−メチルピロリドンから選択され、送達系の約15〜50重量%の範囲の量にある。
一実施形態では、ポリオルトエステルは、式Iとして示される構造によって表され、活性剤は、組成物の約1〜5重量%の範囲の量のグラニセトロンであり、溶媒は、組成物の約10〜35重量%の範囲の量のDMSOである。
別の態様では、治療活性剤を投与する方法が提供される。方法は、ポリオルトエステル、トリグリセリド粘度低下剤、およびポリオルトエステルが単一相を形成するよう混和性でありかつ治療活性剤が単一相に分散または溶解する非プロトン性溶媒を含む、本明細書に記載されている送達系または組成物をニードルから分注するステップを含み、溶媒は、所定の放出プロファイルに従って組成物から活性剤の制御放出を実現するよう選択され、活性剤は、約1日間〜8週間、1日間〜7週間、1日間〜6週間、1日間〜5週間、1日間〜4週間、1日間〜3週間、1日間〜2週間、1週間〜8週間、1週間〜6週間、1週間〜4週間、1日間〜7日間、1日間〜6日間、1日間〜5日間、1時間〜24時間、2時間〜18時間、3時間〜16時間、4時間〜24時間、4時間〜22時間、4時間〜20時間、4時間〜18時間、4時間〜16時間、4時間〜14時間、4時間〜12時間、6時間〜48時間、6時間〜36時間、6時間〜24時間、6時間〜20時間、6時間〜18時間、6時間〜16時間、6時間〜14時間、6時間〜12時間または6時間〜10時間の範囲に及ぶ期間をかけて、送達系または組成物から放出される。
別の態様では、ポリオルトエステルを含む送達系組成物であって、トリグリセリド粘度低下剤、ポリオルトエステルが単一相を形成するよう混和性でありかつ治療活性剤が単一相に分散または溶解する非プロトン性溶媒を含む、送達系組成物をニードルからそれを必要としている患者に分注するステップを含む処置の方法であって、トリグリセリド粘度低下剤および非プロトン性溶媒が、所定の放出プロファイルに従って組成物からの活性剤の制御放出を実現するよう選択され、活性剤が、約1日間〜8週間、1日間〜7週間、1日間〜6週間、1日間〜5週間、1日間〜4週間、1日間〜3週間、1日間〜2週間、1週間〜8週間、1週間〜6週間、1週間〜4週間、1日間〜7日間、1日間〜6日間、1日間〜5日間、1時間〜24時間、2時間〜18時間、3時間〜16時間、4時間〜24時間、4時間〜22時間、4時間〜20時間、4時間〜18時間、4時間〜16時間、4時間〜14時間、4時間〜12時間、6時間〜48時間、6時間〜36時間、6時間〜24時間、6時間〜20時間、6時間〜18時間、6時間〜16時間、6時間〜14時間、6時間〜12時間または6時間〜10時間の範囲に及ぶ期間をかけて、送達系または組成物から放出される、方法が提供される。一実施形態では、送達系は神経周囲注射として投与される。さらなる実施形態では、神経周囲注射は神経ブロックである。
具体的な実施形態では、送達系は、神経ブロックとして、それを必要とする対象における疼痛状態を処置するために投与される。
さらなる具体的な実施形態では、送達系は、それを必要とする対象において、手術後の疼痛を処置するために手術前に投与するなどの、疼痛状態の予防的処置として、神経ブロックとして投与される。
組成物または関連方法もしくは系の上記の実施形態の各々に関すると、アミドまたはアニリド型局所麻酔剤を対象としている各実施形態は、NSAIDのそれぞれおよびすべての実施形態に該当することが意図されており、送達用ビヒクルの各実施形態は、アミドまたはアニリド型局所麻酔剤とエノール酸系NSAIDなどとの組合せの各実施形態に該当することを意図している。
本発明の系、組成物および方法の追加の実施形態は、以下の説明、図面、実施例および特許請求の範囲から明白になろう。上述および以下の説明から理解され得る通り、本明細書に記載されているあらゆる特徴、および2つまたはそれ超のこうした特徴のあらゆる組合せは、本発明の開示の範囲内に含まれるが、但し、こうした組合せに含まれる特徴は、相互に矛盾していない条件とする。さらに、いかなる特徴または特徴の組合せも、本発明のいかなる実施形態から具体的に排除されることがある。本発明の追加の態様および利点は、特に、添付の実施例および図面と合わせて考慮して、以下の説明および特許請求の範囲において説明される。
例えば、本発明の実施形態において、以下の項目が提供される。
(項目1)
アミド型局所麻酔剤、エノール酸系非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)および送達用ビヒクルを含む組成物。
(項目2)
前記アミド型局所麻酔剤が、ブピバカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカインおよびテトラカインからなる群から選択される、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記エノール酸系NSAIDが、メロキシカム、ピロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカムおよびイソキシカムからなる群から選択される、項目1または項目2に記載の組成物。
(項目4)
前記アミド型局所麻酔剤がブピバカインまたはロピバカインであり、前記エノール酸系NSAIDがメロキシカムである、項目1から3のいずれか一項に記載の組成物。
(項目5)
前記アミド型局所麻酔剤が、約0.01重量%〜約7.5重量%の間で前記組成物中に存在する、項目4に記載の組成物。
(項目6)
前記エノール酸系NSAIDが、前記組成物の約0.01重量%超の量で存在する、項目1から5のいずれか一項に記載の組成物。
(項目7)
前記送達用ビヒクルが持続放出性送達用ビヒクルである、前記項目のいずれかに記載の組成物。
(項目8)
前記持続放出性送達用ビヒクルが、ポリマー製剤、リポソーム、マイクロスフィア、インプラント可能なデバイスまたは非ポリマー製剤である、項目7に記載の組成物。
(項目9)
前記持続放出性送達用ビヒクルが、小さな単一ラメラベシクル(SUV)、大きな単一ラメラベシクル(LUV)、多重ラメラベシクル(MLV)および多重ベシクルリポソーム(MVL)からなる群から選択されるリポソームである、項目7または項目8に記載の組成物。
(項目10)
前記アミド型局所麻酔剤および前記エノール酸系NSAIDが前記リポソームの水性空間または前記リポソームの脂質層中に捕捉されている、項目9に記載の組成物。
(項目11)
前記持続放出性送達用ビヒクルが、生体浸食性または生分解性ポリマーを含むマイクロスフィアである、項目7または項目8に記載の組成物。
(項目12)
前記アミド型局所麻酔剤および前記エノール酸系NSAIDが前記マイクロスフィア中に捕捉されている、項目11に記載の組成物。
(項目13)
前記インプラント可能なデバイスが、前記アミド型局所麻酔剤および前記エノール酸系NSAIDを含むレザーバーを備えた浸透圧ポンプである、項目8に記載の組成物。
(項目14)
前記持続放出性送達用ビヒクルがイソ酪酸酢酸スクロースを含む非ポリマー製剤である、項目7に記載の組成物。
(項目15)
前記持続放出性送達用ビヒクルが、ポリマー、前記アミド型局所麻酔剤および前記エノール酸系NSAIDを含む半固体ポリマー製剤の形態にあるポリマー製剤である、項目7に記載の組成物。
(項目16)
前記ポリマーが生体浸食性または生分解性ポリマーである、項目15に記載の組成物。
(項目17)
前記ポリマー製剤がインプラントを形成するか、またはインサイチュでデポ剤を形成する、項目15または項目16に記載の組成物。
(項目18)
前記ポリマーが、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)コポリマー、ポリカプロラクトン、ポリ−3−ヒドロキシブチレートおよびポリオルトエステルからなる群から選択される、項目15から17のいずれか一項に記載の組成物。
(項目19)
前記ポリマーがポリオルトエステルである、項目15から17のいずれか一項に記載の組成物。
(項目20)
前記送達用ビヒクルが水溶液である、項目1に記載の組成物。
(項目21)
疼痛の管理を必要とする対象において疼痛を管理する方法であって、項目1から20のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与するステップを含む、方法。
(項目22)
対象における疼痛の予防的処置の方法であって、項目1から20のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与するステップを含む、方法。
(項目23)
前記投与するステップが、筋肉内、皮下、神経周囲であるか、または創傷に対するものである、項目21または項目22に記載の方法。
(項目24)
前記疼痛が急性疼痛または慢性疼痛である、項目21から23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
生分解性ポリオルトエステル、アミド型局所麻酔剤、およびエノール酸系非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を含む半固体組成物。
(項目26)
前記アミド型局所麻酔剤が、ブピバカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカインおよびテトラカインからなる群から選択される、項目25に記載の組成物。
(項目27)
アミド型局所麻酔剤がロピバカインまたはブピバカインである、項目25または項目26に記載の組成物。
(項目28)
前記エノール酸系NSAIDが、メロキシカム、ピロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカムおよびイソキシカムからなる群から選択される、項目25から27のいずれか一項に記載の組成物。
(項目29)
前記エノール酸系NSAIDがメロキシカムである、項目25から27のいずれか一項に記載の組成物。
(項目30)
前記アミド型局所麻酔剤が、約0.01重量%〜約7.5重量%の間で前記組成物中に存在する、項目25から29のいずれか一項に記載の組成物。
(項目31)
前記エノール酸系NSAIDが、前記組成物の約0.01重量%超の量で存在する、項目25から30のいずれか一項に記載の組成物。
(項目32)
前記組成物中に含まれている前記ポリオルトエステルが、式I、II、IIIおよびIVによって表されるポリオルトエステルから選択される、項目25から31のいずれか一項に記載の組成物。
(項目33)
前記ポリオルトエステルが式Iによって表される、項目25から31のいずれか一項に記載の組成物。
(項目34)
プロトン性溶媒または非プロトン性溶媒をさらに含む、項目25から33のいずれか一項に記載の組成物。
(項目35)
1〜7個の間の炭素原子をそれぞれ独立して含む3つの脂肪酸基を含む、トリグリセリド粘度低下剤をさらに含む、項目25から34のいずれか一項に記載の組成物。
(項目36)
それを必要とする対象において疼痛を管理する方法であって、項目25から35のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与するステップを含む、方法。
(項目37)
対象における疼痛の予防的処置の方法であって、項目25から35のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与するステップを含む、方法。
(項目38)
前記投与するステップが、筋肉内、皮下、神経周囲であるか、または創傷に対するものである、項目36または項目37に記載の方法。
(項目39)
前記疼痛が急性疼痛または慢性疼痛である、項目36から38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
第1の治療剤、ならびにポリオルトエステル、極性非プロトン性溶媒およびトリグリセリド粘度低下剤を含む送達用ビヒクルを含む組成物であって、前記トリグリセリド粘度低下剤が1〜7個の間の炭素原子をそれぞれ独立して含む3つの脂肪酸基を含む、組成物。
(項目41)
粘度計を使用して25℃で測定した場合、約2500mPa−s〜10000mPa−sの範囲の粘度を有する、項目40に記載の組成物。
(項目42)
前記組成物の粘度が、粘度計を使用して25℃で測定した場合、トリグリセリド粘度低下剤を含まない類似の組成物の粘度よりも10〜40分の1低い、項目40または項目41に記載の組成物。
(項目43)
前記トリグリセリド粘度低下剤が、トリアセチンおよびトリブチリンからなる群から選択される、項目40から42のいずれか一項に記載の組成物。
(項目44)
前記極性非プロトン性溶媒が、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンおよびジメチルアセトアミドから選択される、項目40から43のいずれか一項に記載の組成物。
(項目45)
前記第1の治療剤が前記トリグリセリド粘度低下剤、前記極性非プロトン性溶媒またはそれらの混合物に可溶性である、項目40から44のいずれか一項に記載の組成物。
(項目46)
前記第1の治療剤が麻酔剤である、項目40から45のいずれか一項に記載の組成物。
(項目47)
前記第1の治療剤が、ブピバカイン、レボブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカイン、テトラカインおよびロピバカインからなる群から選択される、項目40から46のいずれか一項に記載の組成物。
(項目48)
前記第1の治療剤が抗嘔吐剤である、項目40から45のいずれか一項に記載の組成物。
(項目49)
第2の治療剤を含む、項目40から48のいずれか一項に記載の組成物。
(項目50)
前記第1の治療剤がアミド型局所麻酔剤であり、前記第2の治療剤が非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)である、項目49に記載の組成物。
(項目51)
前記第1の治療剤が、ブピバカイン、レボブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカイン、テトラカインおよびロピバカインからなる群から選択される、項目50に記載の組成物。
(項目52)
前記NSAIDがエノール酸系NSAIDである、項目50から51のいずれか一項に記載の組成物。
(項目53)
前記エノール酸系NSAIDが、メロキシカム、ピロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカムおよびイソキシカムからなる群から選択される、項目52に記載の組成物。
(項目54)
前記アミド型局所麻酔剤がブピバカインまたはロピバカインであり、前記エノール酸系NSAIDがメロキシカムである、項目50から53のいずれか一項に記載の組成物。
(項目55)
前記アミド型局所麻酔剤が、約0.01重量%〜約7.5重量%の間で前記組成物中に存在する、項目54に記載の組成物。
(項目56)
前記エノール酸系NSAIDが、前記組成物の約0.01重量%超の量で存在する、項目54に記載の組成物。
(項目57)
前記ポリオルトエステルが、式I、II、IIIおよびIVによって表されるポリオルトエステルから選択される、項目40から56のいずれか一項に記載の組成物。
(項目58)
前記ポリオルトエステルが式Iによって表される、項目40から56のいずれか一項に記載の組成物。
(項目59)
前記第1の治療剤が約1日間〜約8週間にわたり、前記組成物から放出される、項目40から58のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目60)
処置を必要としている患者に項目40から59のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、処置の方法。
(項目61)
前記患者が疼痛を体感しているか、または疼痛に対する予防的処置を必要としており、前記第1の治療剤が疼痛緩和をもたらす、項目60に記載の方法。
(項目62)
前記疼痛が急性疼痛または慢性疼痛である、項目61に記載の方法。
(項目63)
前記投与するステップが、筋肉内、皮下、神経周囲であるか、または創傷に対するものである、項目60から62のいずれか一項に記載の方法。
(項目64)
悪心の予防的処置の方法であって、前記第1の治療剤がグラニセトロンである、項目60に記載の組成物を、悪心の予防的処置を必要としている患者に投与するステップを含む、方法。
(項目65)
アミド型局所麻酔剤を含むポリオルトエステル組成物の疼痛緩和期間を延長する方法であって、前記組成物にエノール酸系NSAIDを有効量で取り込ませ、前記有効量の前記エノール酸系NSAIDを含まない類似の組成物と比較して、前記組成物によりもたらされる疼痛緩和の期間を延長させるステップを含む、方法。
(項目66)
前記エノール酸系NSAID含有組成物が、投与後、約3日間〜約5日間、疼痛緩和をもたらす、項目65に記載の方法。
(項目67)
前記アミド型局所麻酔剤が、ブピバカイン、レボブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカイン、テトラカインおよびロピバカインからなる群から選択される、項目65または項目66に記載の方法。
(項目68)
前記エノール酸系NSAIDが、メロキシカム、ピロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカムおよびイソキシカムからなる群から選択される、項目65から67のいずれか一項に記載の方法。
(項目69)
前記アミド型局所麻酔剤がブピバカインまたはロピバカインであり、前記エノール酸系NSAIDがメロキシカムである、項目65から68のいずれか一項に記載の方法。
(項目70)
前記アミド型局所麻酔剤が、約0.01重量%〜約7.5重量%の間で前記組成物中に存在する、項目65から69のいずれか一項に記載の方法。
(項目71)
前記エノール酸系NSAIDが、前記組成物の約0.01重量%超の量で存在する、項目70に記載の方法。
(項目72)
前記ポリオルトエステルが、式I、II、IIIおよびIVによって表されるポリオルトエステルから選択される、項目65から71のいずれか一項に記載の方法。
(項目73)
前記ポリオルトエステルが式Iによって表される、項目65から72のいずれか一項に記載の方法。
(項目74)
前記組成物をそれを必要とするヒトに投与するステップをさらに含み、これにより、術後疼痛に関するin vivoモデルにおいて測定すると、前記投与が、投与後、約1時間〜24時間の間に疼痛緩和の初期低下、および投与後、約1〜3日間に疼痛緩和の向上期間をもたらし、前記疼痛緩和の初期低下が投与直後にもたらされる疼痛緩和に関するものである、項目65から73のいずれか一項に記載の方法。
(項目75)
前記組成物が、投与後、2〜5日間にわたる疼痛緩和をもたらし、前記疼痛緩和は、少なくとも平均で、投与後、1〜5時間に前記組成物によってもたらされる平均の疼痛緩和の約50%である、項目74に記載の方法。
(項目76)
前記投与するステップが、投与後、少なくとも5日間、前記アミド型局所麻酔剤および前記NSAIDの測定可能な血漿中濃度をもたらすのに効果的である、項目65から75のいずれか一項に記載の方法。
(項目77)
37℃でのin vitro試験で測定した場合、前記局所麻酔剤と前記エノール酸系NSAIDの両方の約80重量%またはそれ超が、5日間にわたり、前記組成物から放出される、項目65から76のいずれか一項に記載の方法。
(項目78)
前記投与するステップが、神経に、硬膜外腔内、くも膜下内、または直接手術部位もしくは創傷に対するものである、項目65から77のいずれか一項に記載の方法。
(項目79)
疼痛緩和を必要としている患者に疼痛緩和をもたらす方法であって、
項目1から35および項目40から59のいずれかの一項に記載の組成物を用意するステップ、および
長期間の疼痛緩和をもたらすよう、前記患者に前記組成物を投与することを指示するステップを含む、方法。
(項目80)
前記長期間が少なくとも5日間である、項目79に記載の方法。
(項目81)
前記長期間が最大5日間である、項目79に記載の方法。
(項目82)
前記長期間が約1日間〜少なくとも約5日間である、項目79に記載の方法。
(項目83)
前記長期間が約3日間である、項目79に記載の方法。
(項目84)
前記組成物を投与することを指示する前記ステップが、前記組成物を創傷部位に、または創傷部位の近傍に皮下で投与することを指示するステップを含む、項目79に記載の方法。
I.定義
本明細書において使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が特に明白に示さない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば、「ポリマー」と言う場合、単一のポリマーおよび2つもしくはそれ超の同一または異なるポリマーを含み、「賦形剤」と言う場合、単一賦形剤、および2つもしくはそれ超の同一または異なる賦形剤を含む。
値の範囲が提示されている場合、その範囲の上限と下限との間にある中間値のそれぞれ、およびその明記されている範囲における他の任意の明記されている値または中間値が本開示内に包含されることが意図されている。例えば、10〜20重量%(wt%)の範囲を明記する場合、11、12、13、14、15、16、17、18および19重量%、ならびに10重量%超または10重量%〜約20重量%までの値の範囲、ならびに20重量%未満または20重量%〜約10重量%までの値の範囲もやはり明確に開示されていることが意図されている。
「生体浸食可能な」、「生体浸食性」および「生分解可能な」は、本明細書において互換的に使用され、最も留意すべきは生理的pHおよび温度における、生存生物の作用を含めた生物環境の作用による、ポリマーの分解、解体または消化を指す。一例として、ポリオルトエステルの生体浸食の主要な機構は、ポリオルトエステルの単位間およびポリオルトエステルの単位内の連結の加水分解である。
ポリオルトエステルポリマーなどの「加水分解され易いポリマー」とは、水分子との反応により分解、解体または消化が可能なポリマーを指す。こうしたポリマーは、ポリマー内の加水分解性基を含有する。加水分解し易いポリマーの例には、以下に限定されないが、本明細書中に記載されるポリマー、ならびに米国特許第4,079,038号、同第4,093,709号、同第4,131,648号、同第4,138,344号、同第4,180,646号、同第4,304,767号、同第4,957,998号、同第4,946,931号、同第5,968,543号、同第6,613,335号および同第8,252,304号、ならびに米国特許公開第2007/0265329号に記載されているポリマーを含むことができ、これらの全体は参照により本明細書に組み込まれている。
ポリオルトエステルなどのポリマーの文脈における「分子質量」とは、通常、サイズ排除クロマトグラフィー、光散乱技法または速度により決定される、ポリマーの見かけ上の平均分子質量を指す。分子量は、数平均分子量または重量平均分子量のいずれかとして表すことができる。特に示さない限り、本明細書中において分子量を言う場合はすべて、重量平均分子量を指す。数平均分子量と重量平均分子量の決定のどちらも、ゲル浸透クロマトグラフィー技法または他の液体クロマトグラフィー技法を使用して測定することができる。数平均分子量を決定するための束一的特性(例えば、凝固点降下、沸点上昇または浸透圧)の測定、重量平均分子量を決定するための光散乱技法、超遠心法または粘度測定法の使用などの分子量の値を測定する別の方法も使用することができる。本発明のポリマーは、通常、約3.0未満、約2.75未満、約2,25未満、約1.5未満および約1.03未満などの低い多分散性値を有する、多分散(すなわち、ポリマーの数平均分子量と重量平均分子量とが等しくない)である。
「半固体」は、適度な応力下で流動性である物質の機械−物理的状態を意味する。より詳細には、半固体物質は、一般に、37℃で約1,000〜3,000,000mPa−sの間、とりわけ37℃で約1,000〜50,000mPa−sの間の粘度を有するであろう。
「活性剤」または「活性成分」とは、利益的もしくは有用な結果を生じるいずれかの化合物または化合物の混合物を指す。一般に、「活性剤」または「薬物」は、生物活性を有する、および治療目的に適合されているかまたは使用される、いずれかの有機もしくは無機の化合物または物質を指す。本明細書で使用する場合、薬物を言う場合および本明細書における別の化学化合物を言う場合、ジアステレオマーおよび鏡像異性体、塩、溶媒和物、および多形体、特定の結晶形態、ならびに適用可能な場合、本明細書に記載されている化合物のラセミ混合物および純粋な異性体などの異性体を含めた、その薬学的に許容されるいずれかの形態にある化合物を含むことが意図されている。活性剤は、ビヒクル、担体、希釈剤、滑沢剤、結合剤およびその他の製剤化助剤などの構成成分、ならびに封入用構成成分または別の保護構成成分とは区別できる。活性剤の例は、医薬剤、農業剤または化粧剤である。
活性剤の例は、医薬剤、農業剤または化粧剤である。適当な医薬剤には、局所もしくは全身に作用する医薬的な活性剤が含まれ、この薬剤は、局所もしくは病巣内施用(例えば、擦過皮膚、裂傷、刺創など、および手術による創傷または切開への施用を含む)により、または皮下、皮内、筋肉内、眼球内もしくは関節内注射などの注射により対象に投与され得る。適当な医薬剤には、多糖類、DNAおよび他のポリヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗原、抗体、ワクチン、ビタミン、酵素、タンパク質、天然のもしくは生物工学操作された物質など、抗感染薬(抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌剤、殺疥癬虫薬または殺シラミ薬を含む)、消毒薬(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、酢酸マフェニド、塩化メチルベンゼトニウム、ニトロフラゾン、ニトロメルソールなど)、ステロイド(例えば、エストロゲン、プロゲスチン、アンドロゲン、アドレノコルチコイドなど)、オピオイド(例えば、ブプレノルフィン、ブトルファノール、デゾシン、メプタジノール、ナルブフィン、オキシモルホンおよびペンタゾシン)、治療用ポリペプチド(例えば、インスリン、エリスロポイエチン、骨形態形成タンパク質などの形態形成タンパク質など)、鎮痛剤および抗炎症剤(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトロラク、COX−1阻害剤、COX−2阻害剤など)、抗精神病剤(例えば、クロルプロマジン、トリフルプロマジン、メソリダジン、ピペルアセタジンおよびチオリダジンを含むフェノチアジン、クロルプロチキセンを含むチオキサンテンなど)、抗血管新生剤(例えば、コンブレタスタチン(combresiatin)、コントルトロスタチン、抗VEGFなど)、抗不安剤(例えば、ジアゼパム、アルプラゾラム、クロナゼパム、オキサゼパムを含むベンゾジアゼピン、およびバルビツレート)、抗うつ剤(イミプラミン、アミトリプチリン、ドキセピン、ノルトリプチリン、アモキサピン、トラニルシプロミン、フェネルジンなどを含む三環系抗うつ剤およびモノアミンオキシダーゼ阻害剤を含む)、刺激薬(例えば、メチルフェニデート、ドキサプラム、ニケトアミドなど)、麻薬(例えば、ブプレノルフィン、モルヒネ、メペリジン、コデインなど)、鎮痛剤−解熱剤および抗炎症剤(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセンなど)、局所麻酔剤(例えば、ブピバカイン、レボブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカイン、テトラカイン、ロピバカインなどのアミドまたはアニリド型局所麻酔剤)、避妊剤、化学療法剤および抗新生物剤(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、5−フルオロウラシル、チオグアニン、カルムスチン、ロムスチン、メルファラン、クロランブシル、ストレプトゾシン、メトトレキセート、ビンクリスチン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ビンデシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、タモキシフェンなど)、心血管作動剤および血圧降下剤(例えば、プロカインアミド、亜硝酸アミル、ニトログリセリン、プロプラノロール、メトプロロール、プラゾシン、フェントラミン、トリメタファン、カプトプリル、エナラプリルなど)、肺障害の治療薬、抗てんかん剤(例えば、フェニロイン、エトトインなど)、抗発汗剤、角質軟化剤(keratoplastic agent)、色素沈着剤(pigmentation agent)もしくは皮膚軟化薬、制吐剤(オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン、メトクロプラミド、ドンペリドン、スコポラミン、パロノセトロンなど)が含まれる。本出願の組成物はまた、収斂薬、制汗剤、刺激薬、発赤剤、発疱剤、硬化剤、腐食薬、焼痂薬(escharotics)、角質溶解剤、焼け防止剤、ならびに色素沈着低下剤および鎮痒剤を含む様々な皮膚病薬などの他の局所作用性活性剤に適用することができる。用語「活性剤」には、抗真菌剤、殺有害生物剤および除草剤などの殺生物剤、植物成長促進剤もしくは阻害剤、保存剤、消毒薬、空気清浄剤および栄養剤がさらに含まれる。活性剤のプロドラッグおよび薬学的に許容される塩は、本出願の範囲内に含まれる。
「低分子」は、約900ダルトン未満の分子量を有する、分子、通常、薬物である。
用語「アミド型」とは、本明細書で使用する場合、アミドもしくはアミノアニリド型、またはブピバカイン、レボブピバカイン、ロピバカイン、エチドカイン、リドカイン、メピバカイン、プリロカインなどの局所麻酔性アミド(anestheticamide)の「カイン」クラスを指す。このクラスにおける分子は、アミノ官能基およびアニリド基、例えば、フェニル−置換アニリンのアミノ窒素から形成されるアミド基を含有する。これらの分子は、一般に、約5.8〜約6.4の範囲のpKb値を有する弱塩基である。
「エノール酸系NSAID」とは、本明細書で使用する場合、メロキシカム、ピロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム(ピロキシカムのプロドラッグ)、ロルノキシカムなどのオキシカムクラスの非ステロイド系抗炎症薬を指す。このクラスにおける分子は、酸性のエノール官能基を含有する。
「薬学的に許容される塩」は、有意な有害毒性作用を患者に引き起こさない、塩の形成に好適な少なくとも1つの基を有する薬物の塩形態を意味する。薬学的に許容される塩には、薬物中の官能基の性質に応じて、無機酸、有機酸、塩基性アミノ酸または酸性アミノ酸との反応により調製される塩が含まれる。適切な薬学的に許容される塩には、例えば、塩基性薬物の溶液を、塩基性薬物の薬学的に許容される塩形態を形成することができる酸(塩酸、ヨウ素酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、リン酸、硫酸など)の溶液と混合することにより形成することができる、酸付加塩が含まれる。塩基性薬物の典型的な陰イオンには、プロトン化形態にある場合、塩化物イオン、硫酸イオン、臭化物イオン、メシル酸イオン、マレイン酸イオン、クエン酸イオンおよびリン酸イオンが含まれる。適切な薬学的に許容される塩形態は、例えば、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection and Use, Weinheim/Zurich:Wiley-VCH/VHCA、2002年;P.H.StahlおよびC.G.Wermuth(編)に見いだされる。
本明細書において言及されている通り、「有機酸」は、一般に、約300ダルトン未満である分子量を所有する少なくとも1つのカルボン酸基を有する有機物分子である。有機酸は、2つまたはそれ超のカルボン酸基、例えば2つ、3つまたは4つのカルボン酸基を有することができる。この有機酸は脂肪族または芳香族性であってもよく、任意選択で、ヒドロキシル、エステルなどのさらなる非塩基性置換基を含有していることがある。脂肪族有機酸はまた、不飽和の1つまたは複数の要素、例えば二重結合または三重結合を含有していてもよい。例示的な有機酸には、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、安息香酸、アセチルサリチル酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、サリチル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸などが含まれる。
「ポリオルトエステル相溶性」とは、ポリオルトエステルの特性の特定の一態様において、ポリオルトエステルと混合した場合に単一相を形成し、かつポリオルトエステルにいずれの化学変化を引き起こさない賦形剤の特性を指す。
「治療有効量」は、疾患の処置のためにヒトまたは動物に投与した場合、その疾患または状態の処置に影響を及ぼすのに十分な量を意味する。
疾患または状態を「処置する」または「処置」には、その疾患もしくは状態に罹患し易い可能性があるがその疾患もしくは状態の症状を依然として体感していないかまたは呈していないヒトまたは動物において、その疾患または状態の発症を予防すること(予防的処置)、その疾患または状態を阻害すること(その発病を減速または抑止すること)、その疾患もしくは状態の症状または副作用からの緩和をもたらすこと(対症処置を含む)、およびその疾患または状態を緩和すること(疾患の後退を引き起こす)が含まれる。
本明細書で使用する場合、「相乗性」とは、組合せに関して使用する場合、アミド型局所麻酔剤またはNSAIDが単独で投与された場合に所与のレベルの麻酔または疼痛緩和を達成するために必要になると思われるよりも少ない量の鎮痛剤(アミド型局所麻酔剤)、および一部の実施形態では、やはり少ない量のNSAIDを可能にする組合せを指す。この相乗的組合せにより、アミド型局所麻酔剤またはNSAIDが単独で投与される場合よりも、単回用量で投与されるアミド型局所麻酔剤またはNSAIDの量が少なくても、所与のレベルの麻酔または疼痛緩和をもたらすことが可能になり、これにより、相加的な組合せ鎮痛作用を超えるものが実現する。一部の例では、より少ない量のアミドまたはアニリド型局所麻酔剤およびNSAIDは、鎮痛未満の量であり、この場合、これらの組合せの一方または両方の構成成分が、鎮痛作用または疼痛緩和作用をもたらさないと通常、見なされる投与量で投与される。
あるいは、用語「相乗的」とは、組合せと関連して使用される場合、鎮痛または疼痛緩和作用の期間または程度を、アミド型局所麻酔剤またはNSAIDのどちらか一方が単独で投与された場合に観察される期間を超えて延長する組合せを指す。この場合、アミド型局所麻酔剤および/またはNSAIDの量は、麻酔を達成するために単回用量で通常、供給される量と同じとすることができ、これにより、所与の用量のアミド型局所麻酔剤またはNSAIDを用いて普通なら達成可能となるよりも大きな麻酔または疼痛緩和を可能にする投薬頻度が少なくなるので、多回用量の鎮痛療法または疼痛緩和療法の過程にわたり投与されるアミドまたはアニリド型局所麻酔剤およびNSAIDの量を少なくすることが可能になる。
「任意選択の」または「任意選択で」は、その後に記載される状況が生じてもよく、または生じなくてもよいことを意味し、したがって、この記載には、その状況が生じる場合、およびその状況が生じない場合が含まれる。
ある種の特徴または実体を参照する、用語「実質的に」は、その特徴または実体を参照して、かなりの程度であることまたはほぼ完全である(すなわち、85%またはそれを超える程度)ことを意味する。
特に、所与の量を参照する用語「約」は、プラスまたはマイナス5%、10%、15%もしくは20%の偏差を包含することが意図される。
さらなる定義もやはり、以下に続く項目において見いだすことができる。
II.組成物および使用方法
術後疼痛を管理するために使用される、現在、利用可能な局所麻酔製剤は、特に24時間以降は、うまく働かない。すなわちそれらの製剤は性質上、短期作用性である。術後疼痛を処置するための局所麻酔剤としてポリオルトエステルの形態のモデル送達用ビヒクルと一緒にブピバカインまたはロピバカイン(遊離塩基形態)などのアミド型麻酔剤の半固体組成物の使用を探索する際に、組成物の一部は、手術部位に施用した直後には有効であるが(施用後、最大約5時間の期間、または最初の24時間などにも及ぶ)、手術後の数日後を考慮すると、その効力が低下することが観察された。より詳細には、ブピバカインまたはロピバカインを送達用ビヒクル中に唯一の活性剤として含む組成物は、短期間(例えば、施用後、約1〜5時間など)でのその効力と比べた場合、手術後、約1〜3日間にわたり、一般に、効力がかなり低下する(図3を参照されたい)。しかし、ブピバカインまたはロピバカインだけを含有している対応する組成物の血漿中濃度は、同一期間にわたり血漿中濃度は比較的一定であることを実証しており、薬物放出が比較的一定であることを示している(図1Aを参照されたい)。アミド局所麻酔剤を含む、一層有効な長期作用性組成物を実現する方法を探索している間に、本出願人らは、組成物にNSAID、例えばエノール酸系NSAIDを取り込ませることが、得られた組成物の薬力学を改変するのにかなり有効であることを発見した。得られた組成物について、効力の小さな低下が施用後、約5時間〜24時間に依然として観察されたが(図4、および図4および5A〜5Bを参照されたい)、興味深いことに、組成物の効力は単一の活性剤としてアミド型局所麻酔剤を含む組成物を用いて達成される効力を超えて向上し、したがって、投与後の約1日間または約2日間から最大約5または6日間、および任意選択でそれより長期間の疼痛緩和(すなわち、効力)が、投与後の最初の5時間にもたらされる疼痛緩和に類似した。この意外な有利な作用は、メロキシカムを含む組成物の場合に観察されたが、同じアミド型局所麻酔剤、およびNSAIDの様々な化学クラスである、ヘテロアリール酢酸、ジクロフェナクを7.5重量%含む組成物には、効力の同様の回復は観察されなかった(図4を参照されたい)。さらに、投与後、約2日間〜少なくとも約5日間、送達用ビヒクル中のアミド型局所麻酔剤およびエノール酸系NSAIDからなる組成物によって回復およびもたらされた効力の程度は、製剤にエノール酸系NSAIDを単に添加しただけにより予期される結果よりも大きいものであった。すなわち、アミド型局所麻酔剤およびエノール酸系NSAIDは、相加的よりもむしろ相乗的に作用している。例えば、以下に議論されている図4に提示されている結果を参照されたい。
したがって、一実施形態では、本出願人らは、他の有益な特徴を有するもののなかから、アミド型局所麻酔剤および送達用ビヒクルを含む組成物へのエノール酸系NSAIDの添加は、(i)短期作用性の麻酔製剤を改変して、少なくとも約3〜5日間にわたる長期作用性疼痛緩和を実現するのに有効なものにすること、(ii)薬物の単なる相加作用に基づいて予期されるよりも大きな疼痛緩和の程度、すなわち相乗作用を実現すること、および(iii)投与後、少なくとも約5日間、アミド型局所麻酔剤とNSAIDの両方の測定可能な血漿中濃度をもたらすことに有効となることを発見した。
したがって、本明細書に記載されている系および組成物は、一般に、アミド型局所麻酔剤、エノール酸系NSAIDおよび送達用ビヒクルを含む。長期作用性組成物および系は、例えば、術後疼痛などの疼痛の処置のために、薬物送達系として、または医療的もしくは外科デバイスとして使用される。組成物の構成成分は、以下、例えば実施例1〜8において記載されている。
別の実施形態では、本出願人らは、ポリオルトエステル送達用ビヒクルおよび活性剤を含む組成物においてトリグリセリド溶媒を使用すると、トリグリセリド溶媒が存在しない組成物のそれと比べて、組成物からの活性剤の放出動態を改変することなく、または活性剤の薬力学プロファイルを改変することなく、トリグリセリド溶媒が存在しない類似の組成物と比べて、かなりの粘度低下をもたらすことを発見した。組成物の粘度低下により、室温でニードル送達による投与の容易さという点で、著しい臨床的利点がもたらされる。これらの意外な知見を実証する例示的な組成物は、以下、例えば実施例9〜15において記載されている。
1.麻酔用の組成物
一態様では、アミド型局所麻酔剤、エノール酸系非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)および送達用ビヒクルを含む組成物が提供される。この項目では、組成物の構成成分の各々を記載する。
アミド型局所麻酔剤
組成物は、アミドタイプの局所麻酔剤を含む。このクラスに属する局所麻酔剤には、ブピバカイン、レボブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカイン、テトラカイン、ロピバカインなどが含まれる。これらの化合物は、5.8〜6.4の範囲のpKb値を有するアルカリ性アミドである。すなわち、これらの薬物は、プロトン化可能な三級アミン官能基を含有する。例えば、ロピバカイン、リドカインおよびブピバカインのpKa値はそれぞれ8.1、7.7および8.1である。アミド型薬物は、その中性形態、塩基性形態で、または対応する酸付加塩として、または両方の形態の混合物として、組成物中で供給される。
一実施形態では、アミド型局所麻酔剤は、その遊離塩基形態で組成物に添加される。アミド型麻酔剤は、ラセミ混合物として、すなわち等量のRとSの鏡像異性体を含有して供給され得るか、または単一鏡像異性体として供給され得るか、または一方の鏡像異性体が過剰に存在している、鏡像異性体の非等量混合物として供給され得る。
特定の一実施形態では、組成物は局所麻酔剤としてブピバカインを含む。さらなる実施形態では、組成物は活性剤としてロピバカインを含む。
さらに1つまたは複数のさらなる実施形態では、組成物は、例えば、レボブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカイン、テトラカインなどの上記のアミド型局所麻酔剤のいずれか1つまたは複数を含む。さらに別の実施形態では、アミド型局所麻酔剤は、ブピバカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカインおよびテトラカインからなる群から選択される。
組成物は、アミド型局所麻酔剤およびエノール酸系NSAID(以下で記載されている)に加えて、1つまたは複数の追加の生物活性剤も含んでもよい。
アミド型局所麻酔剤は、本明細書において提供される組成物に溶解または分散される。組成物中のアミド型局所麻酔剤の濃度は、約1重量%〜30重量%、1重量%〜10重量%、10重量%〜20重量%、2重量%〜5重量%、10重量%〜15重量%または15重量%〜20重量%で様々であってもよく、1重量%、1.1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%、1.8重量%、1.9重量%、2重量%、2.1重量%、2.2重量%、2.3重量%、2.4重量%、2.5重量%、2.6重量%、2.7重量%、2.8重量%、2.9重量%、3重量%、3.1重量%、3.2重量%、3.3重量%、3.4重量%、3.5重量%、3.6重量%、3.7重量%、3.8重量%、3.9重量%、4重量%、4.1重量%、4.2重量%、4.3重量%、4.4重量%、4.5重量%、4.6重量%、4.7重量%、4.8重量%、4.9重量%、5重量%、5重量%、5.1重量%、5.2重量%、5.3重量%、5.4重量%、5.5重量%、5.6重量%、5.7重量%、5.8重量%、5.9重量%、6重量%、6.1重量%、6.2重量%、6.3重量%、6.4重量%、6.5重量%、6.6重量%、6.7重量%、6.8重量%、6.9重量%、7重量%、7.1重量%、7.2重量%、7.3重量%、7.4重量%、7.5重量%、7.6重量%、7.7重量%、7.8重量%、7.9重量%、8重量%、8.1重量%、8.2重量%、8.3重量%、8.4重量%、8.5重量%、8.6重量%、8.7重量%、8.8重量%、8.9重量%、9重量%、9.1重量%、9.2重量%、9.3重量%、9.4重量%、9.5重量%、9.6重量%、9.7重量%、9.8重量%、9.9重量%、10重量%、11重量%、11.1重量%、11.2重量%、11.3重量%、11.4重量%、11.5重量%、11.6重量%、11.7重量%、11.8重量%、11.9重量%、12重量%、12.1重量%、12.2重量%、12.3重量%、12.4重量%、12.5重量%、12.6重量%、12.7重量%、12.8重量%、12.9重量%、13重量%、13.1重量%、13.2重量%、13.3重量%、13.4重量%、13.5重量%、13.6重量%、13.7重量%、13.8重量%、13.9重量%、14重量%、14.1重量%、14.2重量%、14.3重量%、14.4重量%、14.5重量%、14.6重量%、14.7重量%、14.8重量%、14.9重量%、15重量%、15重量%、15.1重量%、15.2重量%、15.3重量%、15.4重量%、5.5重量%、15.6重量%、15.7重量%、15.8重量%、15.9重量%、16重量%、16.1重量%、16.2重量%、16.3重量%、16.4重量%、16.5重量%、16.6重量%、16.7重量%、16.8重量%、16.9重量%、17重量%、17.1重量%、17.2重量%、17.3重量%、17.4重量%、17.5重量%、17.6重量%、17.7重量%、17.8重量%、17.9重量%、18重量%、18.1重量%、18.2重量%、18.3重量%、18.4重量%、18.5重量%、18.6重量%、18.7重量%、18.8重量%、18.9重量%、19重量%、19.1重量%、19.2重量%、19.3重量%、19.4重量%、19.5重量%、19.6重量%、19.7重量%、19.8重量%、19.9重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%および30重量%とすることができる。
一実施形態では、アミド型局所麻酔剤は、約0.01重量%〜約7.5重量%の間で組成物中に存在する。別の実施形態では、アミド型局所麻酔剤は、約0.1重量%〜約7.5重量%の間、または約0.1重量%〜約5.5重量%の間、または約0.25重量%〜約5.2重量%の間、または約0.25重量%〜約5.0重量%の間で組成物中に存在している。
エノール酸系非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)
本明細書において提供される組成物は、一部の実施形態では、NSAID(非ステロイド系抗炎症薬)をさらに含む。組成物において使用することが企図されるNSAIDには、酢酸誘導体、プロピオン酸誘導体、エノール性酸誘導体およびフェナミン酸誘導体が含まれる。これらのクラスにおける代表的なNSAIDには、以下に限定されないが、以下の酢酸型NSAID:ジフルニサル、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナクおよびナブメトン、以下のプロピオン酸型NSAID:イブプロフェン、デクスイブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジンおよびロキソプロフェン、フェナミン酸型NSAID:メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸およびトルフェナム酸が含まれる。
一実施形態では、組成物中のNSAIDは、エノール酸型NSAIDである。本明細書に記載されている通り、組成物中へのエノール酸系NSAIDの取込みは、得られた組成物の薬力学プロファイルを改変し、これにより、エノール酸系NSAIDが存在しない組成物の短期作用的性質とは対照的に、施用後、約1日間〜少なくとも約5日間の疼痛緩和をもたらすのに一般に有効な組成物を提供するのに効果的である。組成物のさらなる特徴は、本明細書においてどこかに記載されている。
組成物中に含まれているNSAID、すなわちエノール酸系NSAIDは、ほとんどのNSAIDがそうであるように、カルボン酸官能基を含まないが、ケト−エノール互変異性を受けることができるビニル性カルボン酸の存在により性質が弱酸である。組成物中への含有に適した代表的なエノール酸系NSAIDには、メロキシカム、ピロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカムおよびイソキシカムが含まれる。特定の実施形態では、このエノール酸系NSAIDはメロキシカムである。特に特定した一組成物は、ブピバカインおよびメロキシカムを含む。さらに別の特定した組成物は、ロピバカインおよびメロキシカムを含む。
理論に拘泥されるものではないが、エノール酸系NSAIDの取込みは、典型的な手術手順の結果として生じる炎症を軽減して、それにより、アミド型麻酔剤が有効な局所麻酔を実現するのを可能にするのに効果的と考えられる。より具体的には、例えば、術後患者において、炎症を伴うことが多い組織のわずかなpHの低下が、アミノ−アミド型麻酔剤が約5時間後などに有効な疼痛緩和をもたらすことができなくなる原因になり得ると考えられる。炎症応答における時間差のために、局所麻酔剤は、手術後に、かなり短期間の疼痛緩和をもたらすことができる。しかし、アミド型局所麻酔剤がその所望の薬理学的作用を発揮するのを阻止する(すなわち、標的神経に麻酔剤が送達される能力が妨害されることによる)のに十分な程度にまで、標的組織のpHが低下するほど効果的な程度で炎症が一旦発生すると、組成物は効果的な疼痛緩和を実現するその能力がかなり無効となると考えられる。したがって、観察される、NSAIDの存在しない組成物の短期作用は、厳密には、組成物が局所麻酔剤を放出できないことによるものではなく、むしろ、放出された局所麻酔剤がその所期の薬理学的作用を発揮できないことによるものと考えられる。興味深いことに、すべてのNSAIDが、局所投与されたアミド型麻酔剤の作用を増強するのに有効とは限らないように思われる。実施例7において記載されている通り、送達用ビヒクルとしてポリオルトエステル、ならびにブピバカインおよびジクロフェナク7.5重量%(プロトン供与性カルボン酸基を有する)を含む例示組成物は、施用後、約1日またはそれ超の後にその短期効力を再獲得することはできず、施用後の最大約5時間のその初期短期効力と比較した場合、施用後1〜5日間の時間枠にわたり、かなり乏しい疼痛緩和をもたらした。これは、ブピバカイン−メロキシカム組成物とはかなり対照的である。
エノール酸系NSAIDは、本明細書において提供される組成物に溶解または分散される。メロキシカムなどのエノール酸系NSAIDの濃度は、組成物中に、約0.01重量%〜10重量%、0.01重量%〜5重量%、0.01重量%〜3重量%、0.01重量%〜1重量%、0.10重量%〜10重量%、0.1重量%〜5重量%、0.1重量%〜3重量%、0.1重量%〜1重量%と様々になり得、0.01重量%、0.011重量%、0.012重量%、0.013重量%、0.014重量%、0.015重量%、0.016重量%、0.017重量%、0.018重量%、0.019重量%、0.02重量%、0.021重量%、0.022重量%、0.023重量%、0.024重量%、0.025重量%、0.026重量%、0.027重量%、0.028重量%、0.029重量%、0.030重量%、0.031重量%、0.032重量%、0.033重量%、0.034重量%、0.035重量%、0.036重量%、0.037重量%、0.038重量%、0.039重量%、0.040重量%、0.041重量%、0.042重量%、0.043重量%、0.044重量%、0.045重量%、0.046重量%、0.047重量%、0.048重量%、0.049重量%、0.05重量%、0.051重量%、0.052重量%、0.053重量%、0.054重量%、0.055重量%、0.056重量%、0.057重量%、0.058重量%、0.059重量%、0.06重量%、0.061重量%、0.062重量%、0.063重量%、0.064重量%、0.065重量%、0.066重量%、0.067重量%、0.068重量%、0.069重量%、0.07重量%、0.071重量%、0.072重量%、0.073重量%、0.074重量%、0.075重量%、0.076重量%、0.077重量%、0.078重量%、0.079重量%、0.08重量%、0.081重量%、0.082重量%、0.083重量%、0.084重量%、0.085重量%、0.086重量%、0.087重量%、0.088重量%、0.089重量%、0.09重量%、0.091重量%、0.092重量%、0.093重量%、0.094重量%、0.095重量%、0.096重量%、0.097重量%、0.098重量%、0.099重量%、0.1重量%、0.11重量%、0.12重量%、0.13重量%、0.14重量%、0.15重量%、0.16重量%、0.17重量%、0.18重量%、0.19重量%、0.2重量%、0.21重量%、0.22重量%、0.23重量%、0.24重量%、0.25重量%、0.26重量%、0.27重量%、0.28重量%、0.29重量%、0.30重量%、0.31重量%、0.32重量%、0.33重量%、0.34重量%、0.35重量%、0.36重量%、0.37重量%、0.38重量%、0.39重量%、0.40重量%、0.41重量%、0.42重量%、0.43重量%、0.44重量%、0.45重量%、0.46重量%、0.47重量%、0.48重量%、0.49重量%、0.5重量%、0.51重量%、0.52重量%、0.53重量%、0.54重量%、0.55重量%、0.56重量%、0.57重量%、0.58重量%、0.59重量%、0.6重量%、0.61重量%、0.62重量%、0.63重量%、0.64重量%、0.65重量%、0.66重量%、0.67重量%、0.68重量%、0.69重量%、0.7重量%、0.71重量%、0.72重量%、0.73重量%、0.74重量%、0.75重量%、0.76重量%、0.77重量%、0.78重量%、0.79重量%、0.8重量%、0.81重量%、0.82重量%、0.83重量%、0.84重量%、0.85重量%、0.86重量%、0.87重量%、0.88重量%、0.89重量%、0.9重量%、0.91重量%、0.92重量%、0.93重量%、0.94重量%、0.95重量%、0.96重量%、0.97重量%、0.98重量%、0.99重量%、1.0重量%、1.01重量%、1.02重量%、1.03重量%、1.04重量%、1.05重量%、1.06重量%、1.07重量%、1.08重量%、1.09重量%、1.1重量%、1.11重量%、1.12重量%、1.13重量%、1.14重量%、1.15重量%、1.16重量%、1.17重量%、1.18重量%、1.19重量%、1.2重量%、1.21重量%、1.22重量%、1.23重量%、1.24重量%、1.25重量%、1.26重量%、1.27重量%、1.28重量%、1.29重量%、1.30重量%、1.31重量%、1.32重量%、1.33重量%、1.34重量%、1.35重量%、1.36重量%、1.37重量%、1.38重量%、1.39重量%、1.40重量%、1.41重量%、1.42重量%、1.43重量%、1.44重量%、1.45重量%、1.46重量%、1.47重量%、1.48重量%、1.49重量%、1.5重量%、1.51重量%、1.52重量%、1.53重量%、1.54重量%、1.55重量%、1.56重量%、1.57重量%、1.58重量%、1.59重量%、1.6重量%、1.61重量%、1.62重量%、1.63重量%、1.64重量%、1.65重量%、1.66重量%、1.67重量%、1.68重量%、1.69重量%、1.7重量%、1.71重量%、1.72重量%、1.73重量%、1.74重量%、1.75重量%、1.76重量%、1.77重量%、1.78重量%、1.79重量%、1.8重量%、1.81重量%、1.82重量%、1.83重量%、1.84重量%、1.85重量%、1.86重量%、1.87重量%、1.88重量%、1.89重量%、1.9重量%、1.91重量%、1.92重量%、1.93重量%、1.94重量%、1.95重量%、1.96重量%、1.97重量%、1.98重量%、1.99重量%、2.00重量%、2.01重量%、2.02重量%、2.03重量%、2.04重量%、2.05重量%、2.06重量%、2.07重量%、2.08重量%、2.09重量%、2.1重量%、2.11重量%、2.12重量%、2.13重量%、2.14重量%、2.15重量%、2.16重量%、2.17重量%、2.18重量%、2.19重量%、2.20重量%、2.21重量%、2.22重量%、2.23重量%、2.24重量%、2.25重量%、2.26重量%、2.27重量%、2.28重量%、2.29重量%、2.30重量%、2.31重量%、2.32重量%、2.33重量%、2.34重量%、2.35重量%、2.36重量%、2.37重量%、2.38重量%、2.39重量%、2.40重量%、2.41重量%、2.42重量%、2.43重量%、2.44重量%、2.45重量%、2.46重量%、2.47重量%、2.48重量%、2.49重量%、2.5重量%、2.51重量%、2.52重量%、2.53重量%、2.54重量%、2.55重量%、2.56重量%、2.57重量%、2.58重量%、2.59重量%、2.6重量%、2.61重量%、2.62重量%、2.63重量%、2.64重量%、2.65重量%、2.66重量%、2.67重量%、2.68重量%、2.69重量%、2.7重量%、2.71重量%、2.72重量%、2.73重量%、2.74重量%、2.75重量%、2.76重量%、2.77重量%、2.78重量%、2.79重量%、2.8重量%、2.81重量%、2.82重量%、2.83重量%、2.84重量%、2.85重量%、2.86重量%、2.87重量%、2.88重量%、2.89重量%、2.9重量%、2.91重量%、2.92重量%、2.93重量%、2.94重量%、2.95重量%、2.96重量%、2.97重量%、2.98重量%、2.99重量%、3.0重量%、3.01重量%、3.02重量%、3.03重量%、3.04重量%、3.05重量%、3.06重量%、3.07重量%、3.08重量%、3.09重量%、3.1重量%、3.11重量%、3.12重量%、3.13重量%、3.14重量%、3.15重量%、3.16重量%、3.17重量%、3.18重量%、3.19重量%、3.20重量%、3.21重量%、3.22重量%、3.23重量%、3.24重量%、3.25重量%、3.26重量%、3.27重量%、3.28重量%、3.29重量%、3.30重量%、3.31重量%、3.32重量%、3.33重量%、3.34重量%、3.35重量%、3.36重量%、3.37重量%、3.38重量%、3.39重量%、3.40重量%、3.41重量%、3.42重量%、3.43重量%、3.44重量%、3.45重量%、3.46重量%、3.47重量%、3.48重量%、3.49重量%、3.5重量%、3.51重量%、3.52重量%、3.53重量%、3.54重量%、3.55重量%、3.56重量%、3.57重量%、3.58重量%、3.59重量%、3.6重量%、3.61重量%、3.62重量%、3.63重量%、3.64重量%、3.65重量%、3.66重量%、3.67重量%、3.68重量%、3.69重量%、3.7重量%、3.71重量%、3.72重量%、3.73重量%、3.74重量%、3.75重量%、3.76重量%、3.77重量%、3.78重量%、3.79重量%、3.8重量%、3.81重量%、3.82重量%、3.83重量%、3.84重量%、3.85重量%、3.86重量%、3.87重量%、3.88重量%、3.89重量%、3.9重量%、3.91重量%、3.92重量%、3.93重量%、3.94重量%、3.95重量%、3.96重量%、3.97重量%、3.98重量%、3.99重量%、4.0重量%、4.25重量%、4.5重量%、4.75重量%、5.0重量%、5.25重量%、5.5重量%、5.75重量%、6.0重量%、6.25重量%、6.5重量%、6.75重量%、7.0重量%、7.25重量%、7.5重量%、7.75重量%、8.0重量%、8.25重量%、8.5重量%、8.75重量%、9.0重量%、9.25重量%、9.5重量%、9.75重量%または10.0重量%とすることができる。
一実施形態では、組成物は、エノール酸系NSAIDを、組成物の約0.01重量%超、組成物の約0.025重量%超、約0.05重量%、約0.1重量%超、もしくは約0.25重量%超、または約0.01〜10重量%の間、もしくは約0.01〜7.5重量%の間、もしくは約0.01〜5.0重量%の間、もしくは約0.01〜3.5重量%の間の量で含む。
例示的な送達用ビヒクル
組成物は、送達用ビヒクルをさらに含む。一実施形態では、送達用ビヒクルは、持続放出性ビヒクルであり、例示的なビヒクルには、ポリマー製剤、リポソーム、マイクロスフィア、インプラント可能なデバイスまたは非ポリマー製剤が含まれる。これらのビヒクルの例を以下に記載する。
リポソーム
リポソームは、球状二重層で配列している脂質からなる小さなベシクルである。リポソームは、通常、小さな単一ラメラベシクル(SUV)、大きな単一ラメラベシクル(LUV)、多重ラメラベシクル(MLV)または多重ベシクルリポソーム(MVL)として分類される。定義によりSUVおよびLUVは1つの二重層しか有していない一方、MLVは多数の同心円状の二重層を含有する(例えば、Stryer、Biochemistry、第2版、W.H.Freeman & Co.、213頁(1981年)を参照されたい)。MVLは、Kimら(Biochim, Biophys. Acta、728巻:339〜348頁、1983年)によって最初に報告され、粒子あたり複数の非同心円状の水性チャンバーを含有している(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,132,766号および同第8,182,835号を参照されたい)。
本発明の組成物において使用するのに適したリポソームは、主としてベシクル形成性脂質からなるものを含む。ベシクル形成性脂質は、リン脂質によって例示される通り、水中で自発的に二重層ベシクルを形成することができる。リポソームはまた、脂質二重層、例えばコレステロールに取り込まれた他の脂質を含むことができ、疎水性部分が内部の二層膜の疎水性領域に接触しており、ヘッド基の部分が外側の二重層膜の極性表面の方向を向いている。
ベシクル形成性脂質は、2つの炭化水素鎖、通常、アシル鎖、および極性または非極性のどちらかのヘッド基を有することができる。ホスファチジルコリン(phosphalidylcholine)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトールおよびスフィンゴミエリンなどのリン脂質を含めた、様々な合成のベシクル形成性脂質および天然のベシクル形成性脂質が存在しており、この場合、2つの炭化水素鎖は、通常、長さが約14〜22個の炭素原子であり、様々な不飽和度を有している。そのアシル鎖が様々な飽和度を有する、上記の脂質およびリン脂質は、商業的に入手可能とすることができるか、または公開されている方法に従って調製することができる。他の適切な脂質には、コレステロールなどの、糖脂質およびステロールが含まれる。
一実施形態では、ベシクル形成性脂質は、指定される流動性または剛性の度合いを実現するよう、血清中のリポソームの安定性を制御するよう、およびリポソーム内に捕捉された薬剤の放出速度を制御するよう選択される。リポソームは、様々な技法によって調製することができる(例えば、Szoka, F., Jr.ら、Ann. Rev. Biophys. Bioeng.9巻:467頁(1980年)、米国特許第5,631,018を参照されたい)。ミセルおよびエマルションなどの、リポソーム以外の脂質をベースとする送達用ビヒクルが企図されることが理解されよう。
一実施形態では、アミド型局所麻酔剤およびエノール酸系NSAIDは、リポソームの水性空間またはリポソームの脂質層中に捕捉されている。
マイクロスフィア/マイクロ粒子/マイクロカプセル
別の実施形態では、送達用ビヒクルは、マイクロスフィア、マイクロ粒子またはマイクロカプセルである。活性剤が取り込まれている、相互連結されているポアを有する球状ポリマーマトリックスの形態にあるマイクロスフィアは、例えば米国特許第4,818,542号に記載されている。活性剤が取り込まれているかまたは結合している1つまたは複数のポリマーを含むマイクロ粒子は、ポリ(ビニルピロリドン)およびポリ(アクリルアミド)などのin vivo使用に適した生分解性または非生分解性ポリマーから作製することができる。このマイクロスフィアまたはマイクロ粒子は、インサイチュでデポ剤を形成する製剤の一部として、またはインプラントの一部として投与することができる。活性剤は、所望の治療効力を実現するよう、マイクロスフィアまたはマイクロ粒子から制御されて放出される。一実施形態では、持続放出性送達用ビヒクルは、生体浸食性または生分解性ポリマーを含むマイクロスフィアである。別の実施形態では、アミド型局所麻酔剤およびエノール酸系NSAIDは、マイクロスフィア中に捕捉されている。
インプラント可能なデバイス
活性剤が含有されて、制御放出されるレザーバーを備えたインプラント可能なデバイスは、医療分野において公知である。一実施形態では、インプラント用、および活性剤の持続放出用に、浸透式デバイス、機械式デバイスまたは電気機械式デバイスが提供される。インプラント可能なデバイスの例は、米国特許第7,655,254号、同第8,603,051号および同第8,603,076号および米国公開第2003/0032947号に説明されている。
非ポリマー製剤
送達用ビヒクルは、非ポリマー状の、薬学的に許容される担体の形態をとることもできる。例えば、非ポリマー製剤は、非ポリマー状の、薬学的に許容される担体としてイソ酪酸酢酸スクロース、およびベンジルアルコールなどの任意選択の溶媒を含むことができる。この非ポリマー製剤は、液体とすることができる。この液体である非ポリマー製剤は、投与後、約24〜36時間、36〜48時間、48〜60時間、60〜72時間、3〜4日間または3〜5日間、対象に持続的な局所麻酔をもたらす。一実施形態では、送達用ビヒクルは、約50〜80重量%の間のイソ酪酸酢酸スクロースおよび約5〜25重量%の間のベンジルアルコール、代替として55〜75重量%の間のイソ酪酸酢酸スクロースおよび約15〜25重量%の間のベンジルアルコールを含み、100重量%となる残り分は活性剤である。このタイプの例示的な非ポリマー製剤は、その全体が参照により本明細書に組み込まれているEP1809329に記載されている。
一部の実施形態では、液状非ポリマー担体は、粘度計を使用して測定すると、37℃で約50,000mPa−s未満の粘度を有する液状担体物質である。あるいは、担体は、粘度計を使用して37℃で測定した場合、約10,000mPa−s未満の粘度を有する。別の実施形態では、液状非ポリマー担体は、37℃で約5,000mPa−s未満の粘度を有する液状担体物質である。さらに別の実施形態では、液状非ポリマー担体は、37℃で約2,500mPa−s未満の粘度を有する液状担体物質である。
別の実施形態では、非ポリマー製剤は水溶液である。
ポリマー製剤
持続放出性送達用ビヒクルとしての例示的なポリマー製剤は、生体浸食性または生分解性ポリマーを含むものを含む。ビヒクルは、生体浸食性または生分解性ポリマーを含む場合、固体または半固体ビヒクルとすることができる。生体浸食性および/または生分解性ポリマーは当分野で公知であり、以下に限定されないが、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)コポリマー、ポリカプロラクトン、ポリ−3−ヒドロキシブチレートおよびポリオルトエステルを含む。半固体ポリマーはガラス状または粘性の高い液体状態のどちらかで存在する。半固体ポリマーは、通常、室温未満のガラス転移温度(Tg)を示す。Tg未満では、半固体ポリマーはガラス状態で存在すると考えることができる一方、Tg超では、ポリオルトエステルが液体状態で存在すると考えることができる。半固体ポリオルトエステルポリマーは、熱可塑性ポリマーではない。
一実施形態では、生体浸食性または生分解性ポリマーは、エノール酸型NSAIDおよびアニリド型麻酔剤の所望の放出速度を達成するために、ある速度の分解または生体浸食をもたらすよう選択される。送達用ビヒクルおよび活性剤は、半固体または固体組成物をもたらすよう製剤化することができる。例として、一実施形態では、ポリオルトエステルを含む半固体送達用ビヒクルが提供され、いくつかの例が本明細書において説明されている。別の実施形態では、ポリマー送達用ビヒクルは、インプラントを形成するか、またはインサイチュでデポ剤を形成する。
別の実施形態では、生分解性または生体浸食性ポリマーを含む固体送達用ビヒクルであって、ロッドまたはディスクの形態にある、固体送達用ビヒクルが提供される。ロッドおよびディスクは患者へのインプラントに適しており、活性剤が取り込まれる生分解性または生体浸食性ポリマーは、活性剤の放出要求に応える(tailor)よう製剤化することができる。例えば、ロッドまたはディスクは、様々な速度の生分解性を有する様々なポリマーから製剤化することができるか、または様々な分子量のポリマーを使用することができ、薬剤の放出速度の要求に応えるよう、添加剤または賦形剤を活性剤−ポリマーマトリックスに加えることができる。ロッドまたはディスクは、上記の生分解性ポリマー、ならびにポリグラクチンおよびグリコリドとトリメチレンカーボネート(TMC)(ポリグリコネート)とのコポリマーを含めた、縫合糸に一般に使用される物質および/または縫合糸において使用することが可能な物質も含むことができる。
一実施形態では、送達用ビヒクルはポリオルトエステルを含む。
本明細書において提供される組成物に有用なポリオルトエステルは、一般に、ジケテンアセタールとジオールとの反応から得られる交互残基からなり、一対の隣接するジケテンアセタールから誘導される残基がそれぞれ、反応したジオールの残基により分離されている。ポリオルトエステルはα−ヒドロキシ酸含有部分単位、すなわち、グリコリド、ラクチドまたはそれらの組合せ(すなわち、ラクチドとグリコリドとのすべての比、例えば、75:25、65:35、50:50などを含むポリ(ラクチド−co−グリコリド))を含む部分単位などの、α−ヒドロキシ酸またはその環式ジエステルから誘導される部分単位を含むことができる。こうした部分単位はまた、潜在的な酸の部分単位とも称される。これらの潜在的な酸の部分単位はまた、本明細書で使用する場合、その末端ヒドロキシル基により、より一般的な「ジオール」の分類に収まる。ポリオルトエステルは、例えば米国特許第4,549,010号および同第5,968,543号において記載されている通り調製することができる。本明細書において提供される組成物において使用するのに適した例示的なポリオルトエステルは、米国特許第8,252,304号に記載されている。
α−ヒドロキシ酸含有部分単位であるR1のモル百分率は、一般に、全ジオール構成成分(R1およびR3は、以下で提示されている通りである)の0〜20mol%の範囲である。1つまたは複数の実施形態では、ポリオルトエステル製剤中のα−ヒドロキシ酸含有部分単位のモル百分率は、少なくとも約0.01モル%である。ポリマー中のα−ヒドロキシ酸含有部分単位の例示的な百分率は、約0〜約50モル%、または約0〜約25モル%、または約0.05〜約30モル%、または約0.1〜約25モル%である。例えば、一実施形態では、ポリマー中のα−ヒドロキシ酸含有部分単位の百分率は、約0〜約50モル%である。別の実施形態では、ポリマー中のα−ヒドロキシ酸含有部分単位の百分率は、約0〜約25モル%である。さらに別の特定の実施形態では、ポリマー中のα−ヒドロキシ酸含有部分単位の百分率は、約0.05〜約30モル%である。さらに別の実施形態では、ポリマー中のα−ヒドロキシ酸含有部分単位の百分率は、約0.1〜約25モル%である。例示として、α−ヒドロキシ酸含有部分単位の百分率は、低い方のモル百分率数のいずれか1つと高い方のモル百分率数のいずれかとの組合せにより形成される、その中に収まる任意のおよびすべての範囲を含めて、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、24、26、27、28、29または30モル%とすることができる。
より特には、本明細書において提供される組成物および送達系で使用されるポリ(オルトエステル)は、以下の式:
(式中、R
*は、C
1〜4アルキル(例えば、C1、C2、C3またはC4アルキル)であり、nは5〜400の範囲の整数であり、各部分単位中のAはR
1またはR
3である)により記載される。すなわち、式Iのポリマーの任意のモノマー単位
において、AはR
1またはR
3のどちらか一方とすることができる。
特定の実施形態では、R
*はエチル(すなわち、C2アルキル)である。R
*がエチルである、式Iによる部分単位Aは、本明細書において提供されるジオールと構造:
を有するジケテンアセタールである3,9−ジ(エチリデン)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(DETOSU)との反応から得られる部分単位に相当する。
式Iを参照すると、既に記載されている通り、AはR
1に相当することができる。R
1は、
[式中、pおよびqは、それぞれ独立して、約1〜20の間の範囲の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20からそれぞれ独立して選択される)であり、R
5はそれぞれ独立して、水素またはC
1〜4アルキル(例えば、H、またはC1、C2、C3もしくはC4アルキルである)であり、R
6は、
(式中、sは0〜10の間の範囲の整数(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10から選択される)であり、tは2〜30の整数であり、R
7は、水素またはC
1〜4アルキル(例えば、H、またはC1、C2、C3もしくはC4アルキルである)である)である]である。1つまたは複数の特定の実施形態では、R
7はHである。部分単位R
1はα−ヒドロキシ酸含有部分単位、すなわちα−ヒドロキシ酸またはその環式ジエステルに由来する部分単位である。
式Iを参照すると、Aはまた、R
3にも相当し、R
3は、
であり、
xは、1〜100の範囲の整数であり、ある種の特定の例では、1、2、3、4および5から選択され、yは2〜30の範囲の整数であり、R
8は水素またはC
1〜4アルキル(C1、C2、C3またはC4アルキル)である。
特定の実施形態では、R8はHである。
一部の実施形態では、ポリ(オルトエステル)は、AがR
1またはR
3であるものであり、R
1は、
(式中、pおよびqは、それぞれ独立して約1〜20の範囲の整数であり、この場合、pの平均数またはpとqの合計(p+q)の平均数は約1〜7の間(例えば、1、2、3、4,5、6、7)であり、R1は、ポリ(オルトエステル)ポリマー中に存在しており、xおよびsはそれぞれ独立して、0〜10の範囲の整数であり、tおよびyは、それぞれ独立して、2〜30の範囲の整数である)である。1つまたは複数の特定の実施形態では、R
5はHである。
さらなる特定のポリ(オルトエステル)は、AがR
1またはR
3であるものであり、R
1は、
であり、
pおよびqはそれぞれ独立して、約1〜20の間または約1〜15の間または約1〜10の間の様々な整数であり、この場合、pの平均数またはpとqの合計(すなわち、p+q)の平均数は約1〜7の間であり、R1は、ポリ(オルトエステル)ポリマー中に存在している。さらに、xおよびs(上記の特定の実施形態を参照するか、または本明細書において提供されるいずれかのポリオルトエステルを参照する)の具体的な範囲は、各々が独立して0〜7または1〜5の範囲の整数であるものである。同様に、tおよびyに関する具体的な範囲は、それぞれ独立して2〜10で変わるものである。
具体的なポリオルトエステルは、R5が水素またはメチルであるものである。
ある種の特定の実施形態では、sおよびxは、1、2、3、4、5、6、7および8からそれぞれ独立して選択される。一部の特定の実施形態では、sは2である。一部の他の実施形態では、xは2である。
例示的なポリオルトエステルは、3,9−ジエチル−3,9−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジイルとAとの交互残基:
(式中、Aは、上記の通りである)
を含む。
本明細書に記載されているものなどのポリオルトエステルは、例示のジケテンアセタールである3,9−ジ(エチリデン)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(DETOSU)
を、HO−R
1−OHまたはHO−R
3−OHなどの上記の1つまたは複数のジオールと反応させることにより調製することができる。例示のジオールには、トリエチレングリコール(TEG)などのオリゴエチレングリコール、オリゴエチレングリコールジグリコリドまたはオリゴエチレングリコールジラクチドなどの、一方または両方の末端がα−ヒドロキシ酸で修飾されているオリゴエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、cis/trans1,4−シクロヘキサンジメタノール、パラ−メタン−3,8−ジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどの、2〜30個の炭素原子のヒドロカルビルコアを有する有機ジオール、およびそれらの環式等価体(ヒドロキシル基は、シクロアルキルまたはアルキレン環内部の任意の2つの位置に存在している)が含まれる。有機ジオールは、2〜20個の炭素原子を有することができる。有機ジオールは、線状、分岐状または環式とすることができ、やはり飽和または不飽和であってもよい。一般に、不飽和ジオールは、1〜3つの不飽和要素を有するであろう。具体的なポリ(オルトエステル)は、ヒドロカルビルコアを有する1つまたは複数の有機ジオールに由来する、合計が約10〜50モル%の部分単位を含有するであろう。
HO−R1−OHなどのジオールは、米国特許第5、968,543号、およびHellerら、J.Polymer Sci.、Polymer Letters Ed.18巻:293〜297頁(1980年)に記載されている通り調製される。例えば、ポリエステル部分を含む式HO−R1−OHのジオールは、式HO−R3−OHであるジオールを、0.5〜10モル当量の間のラクチドまたはグリコリドなどのα−ヒドロキシ酸の環式ジエステルと反応させることにより調製することができ、この反応は、100〜200℃で約12時間〜約48時間、進行させる。反応に適切な溶媒には、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ピロリドン、テトラヒドロフランおよびメチルブチルエーテルなどの有機溶媒が含まれる。ジオール生成物は一般に、本明細書において、個別のおよび単純化した実体、例えば、TEGジグリコリド(およびTEGジグリコリドなどのジオール反応生成物)と呼ばれるが、反応剤の反応性質により、例えば、グリコリドの開環では、ジオールは実際には、用語TEGジグリコリド(または、類似生成物を言及する任意の他の用語)が、一般に、その生成物の平均または全体の性質を指すような、反応に起因する複雑な混合物であることが当業者により理解されよう。
具体的なポリオルトエステルは、3,9−ジ(エチリデン)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(DETOSU)と1つまたは複数の反応性ジオールとを反応させることにより調製される。一般には、ポリオルトエステルは、無水条件下、DETOSUを2つまたはそれ超の反応性ジオールと反応させることにより調製される。具体的なポリオルトエステルは、米国特許第8,252,305号に記載されている通り、DETOSUをトリエチレングリコールおよびトリエチレングリコールジグリコリドと反応させることにより調製される。DETOSU−トリエチレングリコール−トリエチレングリコールジグリコリドから調製される具体的なポリオルトエステルは、以下の構成成分のモル比:90:80:20を有するが、構成成分の相対比は、上記の通り、好適に様々とすることができる。
DETOSUとTEGおよびTEGジグリコリドとの反応により形成されるポリオルトエステルは、一般に、R
1がトリエチレングリコールジグリコリド(グリコリドとTEGとの反応により形成される)に由来するジオレート部分に相当し、R
3がトリエチレングリコールに由来するジオレートの部分に相当する、以下の部分単位を有するものとして記載することができ:
AはR
1であり、R
1は、
(式中、R
5はHであり、R
6は、
である)であり、
ポリオルトエステルの得られた構成成分は、
(式中、pとqの合計は平均で2であり、sは2である)であり、AがR
3である場合、R
3は
(式中、xは2である)であり、ポリオルトエステルの得られた部分単位または構成成分は、
である。様々なα−ヒドロキシ酸含有部分単位および本明細書に記載されているさらなるジオールから調製されるポリオルトエステルに対応する構造は、容易に構想することができる。
例示的なポリオルトエステルは、約1000Da〜約200,000Da、例えば約2,500Da〜約100,000Daまたは約3,500Da〜約20,000Daまたは約4,000Da〜約10,000Daまたは約5,000Da〜約8,000Daの重量平均分子量を有する。例示の分子量(Da)は、2500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10,000、20,000、30,000、40,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000、100,000、120,000、150,000、175,000および200,000、ならびにそれらの範囲であり、例示的な範囲には、上記の小さい方の分子量のいずれか1つと、この選択された小さい方の分子量に対して上記の大きい方の分子量のいずれか1つとの組合せにより形成されるものが含まれる。
送達系中のポリオルトエステルに関連する特定の一実施形態では、ポリオルトエステルは、約2,500ダルトン〜10,000ダルトンの範囲の分子量を有する。
一実施形態では、この項目において記載されているポリ(オルトエステル)は、室温と室温より高い温度の両方において、半固体である。一実施形態では、80〜100モル%のR
3を含有するポリオルトエステル(R
3は、
であり、xは2である)は、室温と室温より高い温度の両方において、半固体ポリマーである。半固体ポリマーはガラス状または粘性の高い液体状態のどちらかで存在する。半固体ポリマーは、通常、室温未満のガラス転移温度(Tg)を示す。Tg未満では、半固体ポリマーはガラス状態で存在すると考えることができる一方、Tg超では、ポリオルトエステルが液体状態で存在すると考えることができる。半固体ポリオルトエステルポリマーは、熱可塑性ポリマーではない。
一般に、以下の式である、式I、式II、式IIIまたは式IVのいずれか1つによるポリオルトエステルは、本明細書において提供される組成物および/または送達用ビヒクルにおいて使用するのに適している:
式I〜IVを参照すると、
Rは、結合、−(CH
2)
a−または−(CH
2)
b−O−(CH
2)
c−であり、aは、1〜12の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11および12から選択される)であり、bおよびcは、独立して、1〜5の整数(例えば、1、2、3、4および5から選択される)であり、
R
*はC
1〜4アルキルであり、
R
o、R”およびR’”は、それぞれ独立して、HまたはC
1〜4アルキルであり、
nは少なくとも5の整数であり、
Aはジオールである。
例えば、本明細書に記載されている組成物および送達系は、式I、式II、式IIIまたは式IVのポリオルトエステルを含むことができ、式中、
Rは、結合、−(CH
2)
a−または−(CH
2)
b−O−(CH
2)
c−であり、aは、1〜12の整数であり、bおよびcは、独立して、1〜5の整数であり、
R
*はC
1〜4アルキルであり、
R
o、R”およびR’”は、それぞれ独立して、HまたはC
1〜4アルキルであり、
nは少なくとも5の整数であり、
Aは、R
1、R
2、R
3またはR
4であり、
R
1は、前の段落中で記載されている、α−ヒドロキシ酸含有部分単位であり、
R
5は、水素またはC
1〜4アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル)であり、
R
6は、
からなる群から選択され、
式中、
sは0〜10の範囲の整数であり、
tは2〜30の範囲の整数であり、
R
7は、水素またはC
1〜4アルキルであり、
R
2は、
であり、
R
3は、
であり、
式中、
xは0〜200の範囲の整数であり、
yは2〜30の範囲の整数であり、
R
8は、水素またはC
1〜4アルキルであり、
R
9およびR
10は、独立してC
1〜12アルキレンであり、
R
11は水素またはC
1〜6アルキルであり、R
12はC
1〜6アルキルであるか、またはR
11とR
12は一緒になってC
3〜10アルキレンであり、
R
4は、アミド、イミド、ウレアおよびウレタン(カルバメート)基から独立して選択される少なくとも1つの官能基を含有するジオール残基である。
ある種の場合、ポリオルトエステルは、AがR
1、R
3またはR
4である式I〜IVのいずれか1つによるものであり、
R
3は、
から選択され、
式中、
xは0〜100の整数であり、
yは2〜30の整数であり、
R
8は、水素またはC
1〜4アルキルであり、
R
9およびR
10は独立して、C
1〜12アルキレンであり、
R
11は水素またはC
1〜6アルキルであり、R
12はC
1〜6アルキルであるか、またはR
11とR
12は一緒になってC
3〜10アルキレンであり、
R
4は、アミド、イミド、ウレアおよびウレタン基から独立して選択される少なくとも1つの官能基を含有するジオール残基であり、R
5は水素またはC
1〜4アルキルである。
ポリオルトエステルの特定の一実施形態では、式R1であるA単位の割合は0〜20モル%の間である。
1つの例示的なポリオルトエステルは、式I、II、IIIまたはIVにより記載されており、式中、
単位のいずれもR
2であるAを有しておらず、
R
3は、
であり、
式中、
xは1〜100の整数であり、
yは2〜30の整数であり、
R
6は、
であり、
式中、
sは1〜10の整数であり、
tは2〜30の整数であり、
R
5、R
7およびR
8は独立して、水素またはメチルである。
式I、II、IIIまたはIVのさらなる代表的なポリオルトエステルは、R3とR6がどちらも−(CH2−CH2−O)2−(CH2−CH2)−であり、R5がメチルである、pおよびqは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20からそれぞれ独立して選択されるものである。
式I、II、IIIまたはIVのポリオルトエステルの別の実施形態では、R3とR6がどちらも−(CH2−CH2−O)9−(CH2−CH2)−であり、R5がメチルであり、pまたはpとqの合計が、平均で2である。
別の変形では、ポリオルトエステルは式I、II、IIIまたはIVであり、Rは−(CH2)b−O−(CH2)c−であり、bとcはどちらも2であり、R*はC2アルキルである。
式I、II、IIIまたはIVのさらなる代表的なポリオルトエステルは、R
5が水素またはメチルであり、R
6が、
であるものであり、
式中、sは1〜10の整数であるか、または一部の実施形態では、sは、1、2、3または4から選択され、tは、2〜30の整数であり、特に、2、3、4、5、6、7、8、9および10から選択され、R
7は水素またはメチルであり、R
3は、
であり、
式中、xは1〜10の整数であるか、または一部の実施形態では、1、2、3もしくは4から選択され、yは、2〜30の整数であり、特に、2、3、4、5、6、7、8、9および10から選択され、R
8は水素またはメチルであり、R
4は2〜20個の炭素原子(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20個の炭素原子)を有する脂肪族ジオールの残基から選択され、一部の実施形態では、R
4は、1つもしくは2つのアミド、イミド、ウレアまたはウレタン基により分断されている2〜10個の炭素原子を有する。一部の場合、AがR
1であるポリオルトエステル中の部分単位の割合は、約0.01〜50モル%である。ある種の場合、AがR
1であるポリオルトエステル中の部分単位の割合は、約0〜約30モル%、または約0.1〜25モル%である。例示的なモル百分率は、AがR
1であるポリオルトエステルにおいて、10、15、20および25モル%の部分単位を含む。一実施形態では、モル%は20である。さらに、1つまたは複数の実施形態では、AがR
2である部分単位の割合は、約20%未満、約10%未満、または約5%未満であり、AがR
4である部分単位の割合は、20%未満、約10%未満、または5%未満である。
式I、式II、式IIIおよび式IVで示されているポリオルトエステルは、ある種の実施形態では、ジケテンアセタールとジオールとの交互残基の1つであり、一対の隣接するジケテンアセタール残基がそれぞれ、ジオールなどの1つのポリオールの残基により分離されている。
ポリオルトエステルを製造する方法は当分野で周知であり、例えば、米国特許第6,613,355号および同第8,252,304号に記載されている。
任意選択の溶媒および賦形剤
組成物は、1種または複数の薬学的に許容される賦形剤をさらに含んでもよく、一部の例をここで説明する。
送達用ビヒクルがポリマー製剤であり、特に、ポリマーがポリオルトエステルである実施形態では、送達用ビヒクルは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2014年4月21日出願の、共同所有されている米国特許出願第61/982,300号に記載されているものなどの、有機酸を任意選択で含んでいてもよい。この有機酸は、特に、送達の初期段階の間(例えば、投与後、1〜3日間)に、ビヒクルまたは組成物からアミド型局所麻酔剤などの活性剤の放出を促進する。一般に、有機酸はカルボン酸である。最も好適なものは、約300ダルトン未満の分子量を有する有機酸である。代表的な有機酸には、例えば、フマル酸またはマレイン酸、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、安息香酸、サリチル酸およびアセチルサリチル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸などが含まれる。
送達用ビヒクルは、塩基となる活性剤、例えばブピバカイン塩基の濃度に対して、モノカルボン酸を約0〜80モル%、またはジカルボン酸を約0〜40モル%、またはトリカルボン酸を約0〜25含むことができる。ビヒクル中に含まれる有機酸添加剤の量は、具体的な活性剤そのもの、ビヒクル中に含有される活性剤の量、具体的なポリオルトエステル、その量および所望の送達プロファイルに、少なくとも一部、依存するであろう。
本出願人らによって発見された通り、所与の有機酸の場合、より多くの量の有機酸を含むビヒクルは、投与後、最初の1〜3日間の間に通常、最も顕著となる、より迅速な放出速度を示す。
別の実施形態では、半固体のポリオルトエステルポリマー製剤の形態の送達用ビヒクルはまた、1つまたは複数の液体賦形剤を含有していてもよい。この賦形剤は、薬学的に許容されるポリオルトエステルと相溶性を示す液体賦形剤とすることができる。こうした賦形剤は室温で液体であり、ポリオルトエステルと容易に混和する。ポリオルトエステルと相溶性のある例示的な液体賦形剤は、プロトン性溶媒と非プロトン性溶媒のどちらも含む。プロトン性液体賦形剤には、約200Da〜4,000Daの間の分子量を有するポリエチレングリコール、または約200Da〜4,000Daの間の分子量を有するポリエチレングリコール誘導体もしくはコポリマー、例えば、モノメトキシポリエチレングリコールなどの末端がキャップされているPEG、またはC2〜C19脂肪族カルボン酸もしくはこうした酸の混合物のモノ、ジまたはトリグリセリド、およびアルコキシ化テトラヒドロフルフリルアルコールが含まれる。さらなる適切な液体賦形剤には、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアルコールのC1〜C4アルキルエーテル、およびC2〜C19脂肪族カルボン酸エステルなどが含まれる。半固体ビヒクルの具体的な賦形剤は、400、450、500、550、600および650Daから選択される分子量を有するモノメトキシ−PEGである。
さらなる液体賦形剤には非プロトン性溶媒が含まれる。使用に適した非プロトン性溶媒、および非プロトン性溶媒を含む例示的なポリオルトエステルビヒクルは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第2014/0275046号に記載されている。親水性の生体適合性非プロトン性有機溶媒の例には、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル(cycylohexyl)−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミドなどのアミド、乳酸メチル、乳酸エチルおよび酢酸メチルなどの一塩基酸のエステル、ジメチルスルホキシドおよびデシルメチルスルホキシドなどのスルホキシド;e−カプロラクトンおよびブチロラクトンなどのラクトン、アセトンおよびメチルエチルケトンなどのケトン、ジメチルイソソルバイドおよびテトラヒドロフランなどのエーテルが含まれる。
例示的な半固体組成物は、ポリオルトエステル、NMPまたはDMSOなどの液体賦形剤、ブピバカインまたはロピバカインなどのアミド型局所麻酔剤などの少なくとも1つの活性剤、およびメロキシカムなどのエノール酸系NSAID、および任意選択でマレイン酸などの有機酸添加剤を含む。半固体組成物の構成成分の相対濃度は、アミド型局所麻酔剤、エノール酸系NSAID、ポリオルトエステル、ポリオルトエステル相溶性液体賦形剤、および存在する場合、有機酸添加剤の量に依存して様々になろう。ポリオルトエステル相溶性液体賦形剤の重量%は、約10〜50重量%、または約10〜40重量%、または10〜30重量%、または10〜25重量%の範囲とすることができる。ポリオルトエステル相溶性液体賦形剤の例示的な量は、約10、12、15、20、25、30、35、40、45または50重量%である。
別の実施形態では、本明細書に記載されている組成物、特にポリオルトエステル、NMPまたはDMSOなどの液体賦形剤、ブピバカインまたはロピバカインなどのアミド型局所麻酔剤などの少なくとも1つの活性剤、メロキシカムなどのエノール酸系NSAID、および任意選択で有機酸添加剤を含む半固体組成物は、以下の項目2に説明されているものなどの粘度低下トリグリセリド溶媒を、以下の項目2において説明されている量でさらに含む。
半固体ポリマー製剤の形態の送達用ビヒクルは、活性剤、ポリオルトエステルなどのポリマー、任意選択のポリマー/ポリオルトエステル相溶性液体賦形剤、および任意の他のさらなる所望の添加剤または賦形剤を混合またはブレンドすることにより調製することができる。混合またはブレンドは、一般に約50℃未満の温度、例えば室温で、任意の適切な方法により行うことができるが、ある種の場合、物質の性質に応じて、混合またはブレンドは、より高い温度、例えば約25〜100℃で行ってもよい。混合またはブレンドは、一般に、室温で追加の溶媒の非存在下で行われ、均一の流動性のある非粘性ビヒクルが得られる。
ポリマー相溶性液体賦形剤は、通常、組成物の総重量に対して、約10重量%〜約70重量%の範囲の量で組成物に添加される。この液体賦形剤は、約20重量%〜約50重量%の範囲の量で組成物中に存在することができる。他の実施形態では、液体賦形剤は、約10〜60重量%、15〜60重量%、15〜50重量%、20〜60重量%、25〜50重量%、30〜70重量%、30〜60重量%、30〜50重量%、35〜70重量%、35〜60重量%または35〜50重量%の範囲の量で組成物中に存在している。
活性剤(例えば、薬物)の放出速度は、組成物、およびポリマーの量を調整することにより、かつ/または任意選択の添加剤/賦形剤の選択および量によって制御することができる。ポリマーの化学構造(すなわち、使用されるモノマーのタイプ、またはコポリマーもしくはターポリマーに関するモノマーの比、ポリマー鎖上の末端基、およびポリマーの分子量)により、ポリマー物質の親水性または脂溶性が決まり、ポリマーデポ剤の分解時間に寄与するであろう。さらなる親水性ポリマー(例えば、ジオールモノマーが親水性、例えばトリエチレングリコール、テトラエチレングリコールまたはポリエチレングリコールなどであるポリオルトエステル)はより迅速な放出速度およびより短い放出期間が必要とされる用途において使用される。組成物は、送達用ビヒクルおよび活性剤を、放出期間にわたり所望の治療効果を実現するのに有効な量で含む。
本出願では、ポリオルトエステルおよび組成物の他の構成成分を記載するために単数形が使用されているが、上記の群から選択される、2つ以上のポリオルトエステルおよび/または2つ以上のアミド型局所麻酔剤またはエノール酸系NSAIDが送達系に使用されてもよいことが理解される。本明細書において記載されている方法および組成物の一部の実施形態では、組成物は1つまたは複数のさらなる賦形剤をさらに含む。一実施形態では、具体的な賦形剤は、組成物からの活性剤の放出に影響を及ぼさないものである。
必要としないが、着色剤および保存剤などの、他の薬学的に許容される不活性剤もやはり組成物に取り込まれてもよいことがやはり理解される。
カインおよびエノール酸系NSAIDを含む水性組成物
本明細書に記載されている通り、アミド型局所麻酔剤とエノール酸系非ステロイド系抗炎症薬との組合せを投与すると、対象における驚くほど有効なレベルおよび期間の疼痛緩和がもたらされることを発見した。本明細書において提供される本開示および指針に基づくと、当業者であれば、アミド型局所麻酔剤とエノール酸系非ステロイド系抗炎症薬との組合せは、同じ量のアミド型局所麻酔剤または非ステロイド系抗炎症薬を単独で投与するよりもやはり効果的であることが理解されよう。したがって、アミド型局所麻酔剤およびエノール酸系非ステロイド系抗炎症薬を含む水溶液も開示される。特定の実施形態では、水性組成物中のエノール酸系NSAIDはメロキシカムである。より特定の実施形態では、水性組成物はメロキシカムおよびブピバカインを含む。
水性の組合せに適したアミド型局所麻酔剤は、例えば、注射溶液として市販されており、以下に限定されないが、リドカイン、メピバカイン、ブピバカインおよびエチドカインを含む。メロキシカムの薬学的に許容される溶液は、例えば米国特許第8,920,820号に開示されている。したがって、例えばメロキシカムの薬学的に許容される溶液は、対象への投与前に、アミド型局所麻酔剤の溶液と混合することができる。例えば、この混合は、投与の1時間前未満に行うことができるか、または投与前の2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、22時間または24時間以内に行うことができる。アミド型局所麻酔剤とエノール酸系NSAIDとの混合物は、同じ量のアミド型局所麻酔剤またはエノール酸系NSAIDのどちらかを単独よりも効果的な疼痛緩和を実現する。疼痛緩和を実現する、こうした組合せ製剤の一層大きな効力は、例えば、フォンフレイ(Von Frey)アッセイ(以下の実施例8に記載されているものなど)を使用して測定することができ、この場合、対象の疼痛の耐容性は、メロキシカムとアミド型局所麻酔剤との組合せを投与した場合、どちらか一方の活性剤を単独で投与した場合よりも大きいであろう。
したがって、一実施形態では、治療有効量のメロキシカムおよび治療有効量のアミド型局所麻酔剤を含む水性医薬組成物が企図される。一実施形態では、対象への組成物の投与により、投与後、約4日間〜約6日間、対象への疼痛緩和が実現される。
別の実施形態では、治療有効量のメロキシカムを含む水溶液であって、それを必要とする対象に投与するのに適した混合溶液を生成するよう、治療有効量のアミド型局所麻酔剤を含む医薬品溶液に添加するのに適した、水溶液が提供される。一実施形態では、対象への混合溶液の投与により、投与後、約4時間〜約12時間、代替として約4〜24時間、または2〜4時間、または2〜6時間、または3〜5時間、対象への疼痛緩和が実現される。
一実施形態では、混合溶液は、疼痛のある対象を処置するための方法で使用するためのものであり、方法は、メロキシカムの医薬品溶液とアミド型局所麻酔剤の医薬品溶液とを混合して混合溶液を調製するステップ、および混合溶液を調製して24時間以内に対象に混合溶液を投与するステップを含む。方法はまた、疼痛のために対象を予防的に処置するステップも含むことができる。
組成物を調製し、本発明の組成物および使用方法を裏付けとして試験し、実施例1〜8を参照してこれから記載する。実施例1〜8において記載されている例示的な組成物の各々は80%のトリエチレングリコール(TEG)および20%のTEG−グリコリド(部分単位あたり平均2つのグリコリドを含み、すなわちTEG−ジグリコリドである)からなる式Iのポリオルトエステル(POE)を含む。例えば、米国特許第8,252,305号の実施例1(d)を参照されたい。45%〜80%の間の式Iのポリオルトエステル、20%〜45%の間の非プロトン性溶媒、5%のロピバカインおよび3.6%のメロキシカムを含有している組成物を実施例1において記載されている通り調製した。8026−01−01として実施例1において識別されている組成物は、61.5重量%の式Iのポリオルトエステル、29.7重量%の非プロトン性溶媒であるNMP、5.2重量%のロピバカイン塩基、および3.6%のメロキシカムからなった。ロピバカインおよびメロキシカムの放出速度は、実施例2において記載されているin vitro試験に従い、in vitroで測定し、この場合、組成物の既知量をバイアル中の既知量のリン酸緩衝生理食塩水に入れた。生理食塩水およびポリマー組成物を含有するバイアルを撹拌しないで37℃でインキュベートし、生理食塩水のアリコートを除去して時間間隔で固定した。各薬物の濃度はアリコートで測定した。ポリマーデポ剤組成物からの累積薬物放出は、実施例2の表2−1に示されており、両方の薬物の100%放出が72時間(3日間)までに達成された。
したがって、一実施形態では、ポリオルトエステル、アミド型麻酔剤およびエノール酸系NSAIDからなる組成物が企図され、この場合、麻酔剤およびNSAIDは、約1〜3日間の期間をかけて、または少なくとも約2日間をかけて、または少なくとも約3日間をかけて、組成物からin vitro放出される。
実施例3に記載されている別の研究では、約62〜63%の間の式Iのポリオルトエステル、約15〜20%の間の非プロトン性溶媒、10%〜15%の間のブピバカイン塩基および6%〜7.5%のジクロフェナクを含有する組成物を調製した。
実施例4に記載されている別の研究では、約55〜80%の間の式Iのポリオルトエステル、約15〜35%の間の非プロトン性溶媒、約5〜15重量%の間のブピバカインおよび約0.05〜3.5重量%のメロキシカムを含有する組成物を調製し、ブピバカインおよびメロキシカムのin vitro放出速度を測定した。in vitro放出速度を測定するための試験は実施例5に記載されており、実施例における表5−1および5−2は、組成物からの各薬物の累積放出%をまとめている。55〜65重量%の間のPOE、16〜32重量%の非プロトン性溶媒を含む組成物はブピバカインの長期間放出をもたらし、168時間後にin vitroで放出された薬物は37〜75%の間であった。70〜80重量%のPOE、15重量%の非プロトン性溶媒および0.5〜1.2重量%の有機酸(マレイン酸)を含む組成物は、より迅速な速度の薬物放出をもたらし、実質的にすべての薬物(例えば、搭載したブピバカインの約80%、85%または90%を超える)が約120時間で放出された。この研究により、有機酸などの任意選択の賦形剤を加えることによって、組成物中の薬物放出期間の要求に応えることができることを示している。
実施例4で調製された組成物のいくつかを、ブピバカインおよびメロキシカムの薬物動態を測定するためin vivoで試験した。8026−04−03、8026−04−04および8026−04−05として表4−1(実施例4)で識別されている組成物を4mLの組成物で注射し、薬物の血漿中濃度を投与後、最大7日間、採取した血液試料から決定した(実施例6を参照されたい)。研究からのデータが図1A〜1Bに示されており、3つの組成物、すなわち、15重量%ブピバカイン/3重量%メロキシカム(黒正方形;組成物番号8026−04−03);10重量%ブピバカイン/0.75重量%メロキシカム(白丸;組成物番号8026−04−04);および5重量%ブピバカイン/0.38重量%メロキシカム(白三角形;組成物番号8026−04−05)について、ブピバカイン(図1A)およびメロキシカム(図1B)の血漿中レベルを各時間点でプロットした。データは、組成物は、投与後、少なくとも約4日間(96時間)または少なくとも約3日間にわたり、測定可能なブピバカインおよびメロキシカムの血漿中濃度をもたらすことを示している。
実施例7に記載されている通り、別のin vivo薬物動態研究をイヌで実施した。79%のポリオルトエステル、0.6重量%のマレイン酸、15重量%のNMP、5%のブピバカインおよび0.15重量%のメロキシカム(組成物識別番号8026−04−07、実施例4)からなる組成物をそれぞれ約0.5mLの2つの個別の注射で投与した。血漿試料を各イヌから採集し、ブピバカインおよびメロキシカムについて分析した。研究からのデータが図2Aおよび2Bに示されている。
図2A〜2Bは、ポリオルトエステル送達用ビヒクル、ならびにブピバカイン5重量%およびメロキシカム0.15重量%からなる組成物(番号8026−04−07)をイヌにin vivo投与した後の、時間(時間)の関数としての、ブピバカイン(図2A)およびメロキシカム(図2B)の血漿中濃度(ng/mL)のグラフである。組成物は、投与後、少なくとも4日間(96時間)または少なくとも約3日間にわたり、測定可能なブピバカインおよびメロキシカムの血漿中濃度をもたらす。
実施例8は、ブピバカイン−メロキシカム組成物の薬力学を評価するために実施したいくつかの研究を記載している。全身麻酔下でブタの左脇腹に7cm長の皮膚および筋膜切開を行った、術後(POP)の疼痛ブタモデル系を使用し、試験組成物または対照をその創傷に施用した。次に、滅菌縫合糸を使用して、この切開した皮膚を閉じた。実施例8において記載されている通り、フォンフレイ法を使用して術後疼痛を評価した。最初の研究(実施例8A)では、15%ブピバカインを含有する徐放性ポリマー組成物を、5%ロピバカインを含有している徐放性ポリマー組成物と比較した。手術部位への投与方法により薬力学においてなんらかの差異が生じるかどうかを評価するため、方法を多様に行った。試験方法は、創傷領域の表面に直接、組成物を滴注するか、または創傷の外側縁に組成物を皮下注射するかのどちらかとした。表8−1は、投与の試験群および方法を詳述している。
フォンフレイテストによって測定される薬力学応答を図3に示している。以下の組成物のそれぞれをin vivo投与した後の、引っ込め力(重量グラム)が時間(時間および日数)の関数として示されている:ポリオルトエステル送達用ビヒクル、および(i)注射(縦点線;群2)または滴注(縦線;群3)により投与された15重量%のブピバカイン、または(ii)注射(横線;群4)または滴注(ダイヤモンド型斜行平行線;群5)により投与された5重量%のロピバカインのいずれか一方からなる組成物;点による棒は生理食塩水により処置された対照群(群1)の場合の応答を示している。ロピバカインまたはブピバカインを含む組成物の皮下注射はどちらも、創傷を閉じる前に、単回投与した後、持続効果をもたらした。創傷表面上への組成物の施用は、15%ブピバカイン組成物の場合、注射ほど有効ではなかった。しかし、投与モデル間の対応する差異が5%のロピバカイン組成物の場合には観察されなかった。群2および4を比較すると、ビヒクル対照と比べると、創傷への注射によって組成物のいずれかを投与されたブタにおいて、0日目、および2〜5日目に、引っ込めを引き起こすのに必要な力の有意な増加が存在した。2〜4日目において、すべての薬物処置群において、ブピバカインとロピバカインの組成物との間に応答の差異がわずかに存在し、感度の増加(引っ込めを誘発するのに力がより低い)が観察され、6日目に薬物処置を受けたブタ(群2〜5)において、引っ込めを誘発するのに必要な力がある程度増大した。炎症を媒介とする、これらの局所麻酔剤の不首尾は、2〜4日目において有効性が減少したことに対する理由であり、炎症がおさまるにつれて、6日目に回復すると仮定した。
別の薬力学研究を行い(実施例8B)、局所麻酔剤を含有している徐放性製剤とNSAIDと組み合わせた局所麻酔剤を含有する製剤との効力を比較した。実施例8Bの表8−2にまとめられている、5つの異なる製剤の侵害受容活性をブタPOPモデルにおいて評価した。ロピバカインを含有している徐放性製剤(より遅い放出およびより速い放出、それぞれ群2および群3)を、ブピバカインならびにNSAIDであるジクロフェナクおよびメロキシカムを含有する徐放性製剤(それぞれ、群4および群5)と比較した。ビヒクルまたは試験品についての2mLの投与容量を、切開の外側縁に皮下注射し、切開を縫合糸により閉じた。ベースライン、術後1、3および5時間、ならびに1日目〜6日目までにおけるフォンフレイ方法による侵害受容のアセスメント。
結果を図4に示しており、ここでは、引っ込め力(重量グラム)を投与後の時間(時間および日数)の関数として示している。組成物は、以下の通り図4に表示する:ポリオルトエステル送達用ビヒクル、ならびに(i)マレイン酸0.6%を含む5重量%ロピバカイン(横線;群2)、(ii)0.2%マレイン酸を含む5重量%ロピバカイン(ダイヤモンド型斜行平行線;群3)、(iii)ブピバカイン15重量%およびジクロフェナク7.5重量%(縦点線;群4)、または(iv)15重量%ブピバカインおよび3.5重量%メロキシカム(縦線;群5)からなる組成物;および、点による棒は生理食塩水により処置された対照群の場合の応答を示している(群1)。
これらの結果は、対照を除くと、モデルにおいて評価された組成物はすべて、例えば、切開後の最初の5時間で、疼痛の処置/管理が短期で有効であったことを示している。唯一の活性剤としてロピバカインを含有している徐放性ポリマー組成物(群3)は、投与後の最初の5時間では、メロキシカムと組み合わせたブピバカイン、およびジクロフェナクと組み合わせたブピバカインを含む徐放性ポリマー組成物と同じ程度、有効であった。5時間の時間点では、群1で試験したロピバカインのみを含むが群2において試験した組成物よりもマレイン酸量が多い組成物は、他の3つの組成物と比較すると、記録された引っ込め力の低下で観察され得る通り、疼痛の緩和にはそれほど有効ではなかった。これは、恐らく、この組成物中のマレイン酸の含有量がより高いためであり、これにより、活性剤の放出速度がよりより速くなる(例えば、2014年4月21日出願の米国特許出願第61/982,300号を参照されたい)。この組成物の顕著な差異は、より長い時間点、例えば1〜6日目にわたって観察される。1〜3日目にわたり、ロピバカインを単独で含有する組成物(活性剤を参照)、およびブピバカイン/ジクロフェナク組成物は、引っ込め力が低下する傾向により示される通り、麻酔の低下を示した。対照的に、ブピバカインとメロキシカムとの組合せを含む組成物は、他の3つの組成物よりもかなり有効であった。ブピバカインとメロキシカムとの組合せを含む組成物によって達成される麻酔は、研究全体の過程にわたり本質的に変化しないままであり、この組成物の場合に示された、測定された引っ込め力は、1日目を除き、測定された最大の力であった。研究の後半に、ロピバカインを単独で含有する組成物(群2および3)は、4〜6日目にわたり観察された引っ込め力の増加により実証される通り、それらの鎮痛作用を再度、得たように見えたが、それらの疼痛軽減は、1〜6日目にわたりその鎮痛活性を維持したブピバカイン/メロキシカム組成物ほど有効でもなく、かつ一貫もしていなかった。ブピバカイン/メロキシカム組成物とは対照的に、異なるNSAID、すなわちジクロフェナクを含有するブピバカイン組成物は、約5時間〜約6日間に引っ込め力が低下する傾向によって例示されている通り、経時的な疼痛緩和を実現するその能力が低下し続けた。
こうして、様々なNSAIDを含有している2つの組成物は、使用された術後疼痛モデルにおいて、異なる疼痛緩和プロファイルを示した。データは、組成物へのエノール酸系NSAID(メロキシカムなど)の取込みにより、局所「カイン」型麻酔剤は一層優れて機能して麻酔を実現することが可能であることを予想外にも示している。ブピバカイン/メロキシカムの組合せの場合の疼痛応答プロファイルは、術後、最初の約1〜10時間ほどにわたり、良好な短期効力を例示し、次いで、1日目に効力のわずかな低下があり、引き続き、この組成物は引っ込め力の安定期が観察されることによって証拠が示されている通り、約2日目までに、2日目から少なくとも6日目まで最大の疼痛緩和をもたらすのに再度、有効となるように、急速に回復した。組合せは、試験した他の組成物よりもかなり優れており、本研究において、とりわけブピバカイン/ジクロフェナク組成物と比べると、疼痛緩和の驚くほどの強化がもたらされている。
別の薬力学研究を行い、2つの活性成分、すなわちブピバカインおよびメロキシカムの様々な濃度を含有している5つの異なる製剤を評価した。実施例8Cにおいて記載されている通り、表8−3にまとめられている製剤を1)創縁の周囲に皮下注射、または2)切開により作られた創傷表面への直接施用、または3)創傷の片側の組織への注射のいずれかによって行った。結果は、ブピバカイン/メロキシカム組成物はすべて、先の研究(実施例8B)と一致して、投与後、6日目まで良好な麻酔となることを実証している(データは図示せず)ことを示した。データはまた、組成物中の約5重量%を超えるブピバカイン濃度はさらなる麻酔をもたらさないことも示唆している。メロキシカムの場合の用量応答は、観察されなかった。したがって、一実施形態では、アミド型局所麻酔剤を含む組成物は、約0.01〜7.5重量%の間、代替として、約0.1〜6重量%の間、代替として、約0.5〜5重量%の間である。
実施例8Dは、0.08〜0.3重量%の範囲という様々な濃度のメロキシカムを含む5重量%のブピバカインを含有する組成物によってもたらされたin vivo応答を評価するために実施した別の研究を記載している。表8−4は組成物および試験群をまとめている。組成物をブタに切開の両側への皮下注射として投与し、麻酔はフォンフレイテストを使用して評価した。
結果が図5A〜5Bに示されており、ここでは、引っ込め力(重量グラム)を投与後の時間(時間および日数)の関数として示している。試験組成物は、以下の通り図5A〜図5Bに表示されている:ポリオルトエステル送達用ビヒクル、およびメロキシカム0.08重量%(縦点線:群2)、メロキシカム0.19重量%(縦線:群1)およびメロキシカム0.3重量%(横線:群3)と組み合わせた5重量%のブピバカインからなるもの、ポリオルトエステル送達用ビヒクルおよび0.15重量%のメロキシカム単独からなる組成物(点(dotted fil);群4)(図5A)、ならびにメロキシカム0.38重量%を組み合わせたポリオルトエステル送達用ビヒクルと5重量%のロピバカイン(ダイヤモンド型斜行平行線:群5)またはポリオルトエステル送達用ビヒクルと5重量%のロピバカイン単独からなる組成物(空白、白棒:群6)。群1、2および3の場合、様々な程度の抗侵害受容が6日間の術後観察を通して得られ、メロキシカム0.08%を含有する群2の組成物では、麻酔の低下が観察された。メロキシカム単独の群4の組成物は、本質的に鎮痛作用を示さなかった。メロキシカムを含むおよび含まないでロピバカインを含有する製剤は、ブピバカイン製剤の場合に観察された通り、同じ傾向であることを実証した(図5Bを参照されたい)。メロキシカムは、局所麻酔剤単独の場合に観察される作用を超える作用に対する正の抗侵害受容の寄与を有した。データはまた、少なくとも約0.1重量%または0.15重量%のエノール酸系NSAIDと組み合わせた、約0.01〜5重量%の間のアミド型局所麻酔剤により、麻酔に相乗作用がもたらされることも示唆している。
したがって、図4および図5A〜5Bにおけるデータにより証明される通り、一実施形態では、組成物は、必要としているヒトに、疼痛を管理するため、疼痛を処置するため、または疼痛を予防的に処置するために投与される。投与は、術後疼痛に対するin vivoモデルにおいて測定された通り、投与後に疼痛緩和が低下し、この場合、この疼痛緩和の低下は、投与の約1時間後から、および約3〜8時間後、または約3〜24時間後に測定された期間のものであり、投与後1時間未満の時間で測定される疼痛緩和と比べたものである(例えば、図4に関すると、ベースラインでのもの)。この疼痛緩和の低下期間の後に、疼痛緩和の向上した期間または向上の継続期間が続き、この場合、この期間は、投与後、約1〜3日間、または約1〜4日間、または約1〜5日間である。疼痛緩和の向上、または疼痛緩和が向上した間の疼痛緩和が向上している期間とは、疼痛緩和の低下期間の間に測定される疼痛緩和に対するものである。一実施形態では、低下した疼痛緩和期間中および/または向上した疼痛緩和期間中の疼痛緩和は、関連する期間中の術後疼痛の場合のin vivoモデルにおいて測定された値の平均である。別の実施形態では、術後疼痛に関するin vivoモデルにおいて測定された疼痛緩和が、投与の1日目(24時間)よりも2日目に大きい場合、疼痛緩和が向上した期間中の疼痛緩和を疼痛緩和が向上したと見なす。別の実施形態では、術後疼痛に関するin vivoモデルにおいて測定された疼痛緩和が、投与の1日目(24時間)よりも3日目に大きい場合、疼痛緩和が向上した期間中の疼痛緩和を疼痛緩和が向上したと見なす。別の実施形態では、疼痛緩和が向上した期間中の疼痛緩和は、術後疼痛に関するin vivoモデルを使用して、この期間の任意の時間点において測定される疼痛緩和が、術後疼痛に関するin vivoモデルにおいて、投与後1時間未満(例えば、ベースライン)の時間点で測定される任意の時間点での疼痛緩和の約10%以内であれば、疼痛緩和が向上したと見なされる。
別の実施形態では、組成物は、投与後、約2〜5日間の間の期間にわたり疼痛緩和(術後疼痛に関するin vivoモデルにおいて測定される)をもたらす。すなわち、投与後、1〜5時間に、組成物によってもたらされる平均の疼痛緩和が平均で少なくとも約50%となる。ある期間、例えば投与後、1〜5時間の期間の間の平均疼痛緩和は、一実施形態では、その期間中に採集された疼痛緩和スコアまたは値の平均である。一実施形態では、平均とは相加平均を指し、この場合、平均の疼痛緩和は、ある期間中の疼痛緩和スコアまたは値の合計を計算し、この合計を値またはスコアの総数により除算することにより得られる。
2.粘度低下性トリグリセリド溶媒を含む組成物
送達用ビヒクルとして生分解性ポリオルトエステルポリマーを含む、本明細書に記載されている組成物に関すると、これらの組成物は、例えば、薬物送達系として、または医療用もしくは手術用デバイスとして使用される。こうした使用の場合、組成物は、通常、標準的なシリンジおよび小さなゲージのニードルを用いて身体に注射することによって投与される。したがって、シリンジから容易に分注される粘度を有する組成物を供給することが望ましく、小さなゲージのニードルは依然として、治療に必要な活性剤の放出動態を有する。当分野、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許公開番号US2014/0275145において公知の通り、この系における非プロトン性極性溶媒(単数または複数)の選択は、ポリマー組成物からの活性剤の放出プロファイルを調節するために使用することができる。極性非プロトン性溶媒およびポリオルトエステルを含むこれらの組成物は、37℃において約10,000mPa−s未満の粘度、および選択溶媒および量に依存する薬物放出プロファイルを有する。本明細書において、必要としている対象へのニードルによる投与に適した粘度を有しており、より高い粘度を有する組成物に類似した薬物放出プロファイルを有する、組成物が提供される。例示されている通り、これらの組成物は、神経ブロックとして、または悪心を管理するためにグラニセトロンなどの活性剤を長期送達するためのインサイチュのデポ剤形成において使用される、長くて細いゲージのニードルによる注射を必要とする用途に使用される。
理解され得る通り、組成物の粘度は温度依存性である。例えば、37℃で測定される10,000mPa−sの粘度を有する組成物は、25℃で測定されるよりもより高い粘度を有するであろう。本明細書に記載されているポリオルトエステル組成物の場合、その25℃での粘度は、多くの場合、37℃の粘度よりも約7〜10倍、高い。組成物は、一般に、室温(20〜25℃)で保管され、室温で投与されるので、組成物がニードルにより25℃で容易に投与することができるような粘度である組成物であることが望ましい。本発明のこの実施形態は、こうした組成物を提供する。
ポリオルトエステルおよび極性非プロトン性溶媒を含む組成物にトリグリセリド溶媒を加えて、組成物のin vitro放出プロファイルまたは薬物動態プロファイルに反映される薬物放出動態を著しく変えることなく、粘度計を使用して25℃で測定した場合の組成物の粘度を(粘度計を用いて、25℃で測定した、トリグリセリド溶媒を含まない類似の組成物の粘度に比べて)10、20、30または40分の1に低下させることができることが見いだされた。組成物中の溶媒の量が薬物放出動態に測定可能な影響を及ぼすことは、極性非プロトン性溶媒を用いた場合には該当しない。すなわち、例として、極性非プロトン性溶媒をある濃度で含有している初期組成物は、特定の薬物放出動態を実証するであろう。初期組成物にその極性非プロトン性溶媒をさらに加えることにより、その極性非プロトン性溶媒の濃度を向上させると、初期組成物に比べて薬物放出動態が変化した新規組成物になるであろう。驚くべきことに、このことは、極性非プロトン性溶媒を含有している組成物にトリグリセリド粘度低下剤を加えた場合には該当しない。有益なことに、組成物の粘度は、ポリオルトエステルおよび極性非プロトン性溶媒を含む組成物にトリグリセリド粘度低下剤を追加することにより、薬物放出プロファイルの変化を最小限にしながら、トリグリセリド粘度低下剤を含まない類似の組成物と比べて、10、12、15、20、30または40分の1に低下させることができる。トリグリセリド粘度低下剤は、3つの脂肪酸基であって、各脂肪酸基が独立して1〜7個の間の炭素原子を有しており、ある場合には、「短鎖トリグリセリド」と称される、3つの脂肪酸基を有するものである。一部の実施形態では、送達系は、粘度計を使用して25℃で測定した場合、約10,000mPa−s未満、5,000mPa−s未満または2,500mPa−s未満の粘度を有する。
例示的なトリグリセリド粘度低下剤には、以下に限定されないが、トリアセチン(1,2,3−トリアセトキシプロパン、1,2,3−トリアセチルグリセロール、三酢酸グリセロールまたは三酢酸グリセリル)、トリプロピオニン(三プロピオン酸グリセリルまたは1,2,3−トリプロピルグリセロール)、またはトリブチリン(1,2,3−トリブチリルグリセロールまたはグリセロールトリブチレート)が含まれる。これらのトリグリセリド粘度低下剤は、3つの脂肪酸鎖であって、各脂肪酸鎖が独立して1〜7個の間の炭素原子を有しており、こうして、比較的、「短い鎖」の脂肪酸エステルである、3つの脂肪酸鎖を有する。短鎖エステルの組合せ、例えば、グリセロールジアセテートモノプロピオネートなども許容されることが理解される。
非プロトン性溶媒は、約2デバイ(D)(6.67×10−30クーロンメートル)超、または約2.2D(7.34×10−30クーロンメートル)超、または約2.4D(8.05×10−30クーロンメートル)超の双極子モーメントを有する溶媒である。一実施形態では、非プロトン性溶媒は、約2D超、または約2.2D超、または約2.4D超の双極子モーメントを有する溶媒であり、水混和性である。別の実施形態では、非プロトン性溶媒は、約2D超、または約2.2D超、または約2.4D超の双極子モーメントを有する溶媒であり、水への混和性に乏しい。一実施形態では、溶媒は、室温(20〜25℃)において水とすべての割合で均一溶液を形成する場合、水と混和性である。溶媒は、室温(20〜25℃)において、水とある割合で均一溶液を形成する場合、部分的に混和性である。溶媒は、水と均一溶液を形成しない場合(20〜25℃)、混和性に乏しい。送達系で使用するのに適した非プロトン性溶媒の例は、例えば、米国特許公開第2014/0275046号(その全体が参照により本明細書に組み込まれている)に記載されており、例示的な非プロトン性溶媒は、アミド、エーテル、ケトンまたはスルホキシドを包含することができる。例示的なアミドには、2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンおよびジメチルアセトアミドが含まれる。例示的なエーテルには、ジメチルイソソルバイドおよびテトラヒドロフランが含まれる。例示的なケトンにはアセトンおよびメチルエチルケトンが含まれる。例示的なスルホキシドには、ジメチルスルホキシドおよびデシルメチルスルホキシドが含まれる。これらの低粘度送達系において使用するのに適したさらなる極性非プロトン性溶媒には、エステル−カプロラクトンおよびブチロラクトンなどのラクトン、ならびにアルコール、プロピレンカーボネート(4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン)などのエステルが含まれる。
式I、II、IIIまたはIVとして本明細書に記載されているものなどのポリオルトエステル、極性非プロトン性溶媒およびトリグリセリド粘度低下剤を含むこうした送達系では、ポリオルトエステルは、トリグリセリド粘度低下剤および極性非プロトン性溶媒を含む溶媒に混和性である。したがって、組成物は、効果的な送達を行うために、治療活性剤が分散または溶解している単一相を形成するよう調製され得る。
特定の実施形態では、送達系は、式Iとして本明細書に記載されているポリオルトエステル、短鎖トリグリセリド粘度低下剤であるトリアセチン、およびジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)またはジメチルアセトアミド(DMAC)である極性非プロトン性溶媒を含む。
ポリオルトエステル、トリグリセリド粘度低下剤および極性非プロトン性溶媒を含む医薬品送達系は、任意の治療活性剤を投与するための送達系として使用し、所望の期間にわたり、活性剤の送達を実現することができる。治療剤は、ポリオルトエステル、短鎖トリグリセリド粘度低下剤および極性非プロトン性溶媒の組合せによって形成される単一相に分散または溶解することができるものである。
上記の送達系を作製するための方法は、実施例10および14に記載されている方法により達成することができる。一実施形態では、活性剤は、非プロトン性溶媒に溶解される。この溶解は、約60〜80℃などの高温、または約80℃において行うことができる。これとは別に、ポリオルトエステルポリマーおよび短鎖トリグリセリド粘度低下剤の適量を一緒にして、完全に混合する。ポリオルトエステルポリマーおよび短鎖トリグリセリド粘度低下剤は、約60〜80℃の間または約65〜75℃の間、または約70℃の高温で一緒にする、および/または混合物することができる。次に、活性剤を含有している溶液をポリマーおよび短鎖トリグリセリドからなる適量のブレンドと一緒にして、均一になるまで混合する。トリグリセリド粘度低下剤の存在により、トリグリセリド粘度低下剤が存在しない送達系と比較して、送達系の粘度が約10〜40分の1に低下し得ることが観察された。こうした送達系は、本明細書において「低粘度送達系」と称される。低粘度送達系は、トリグリセリド粘度低下剤を含まないで製剤化された類似の組成物を投与した後に観察されるものと類似の緩和(例えば、悪心からの緩和、または疼痛からの緩和)の期間およびレベルを実現する。
低粘度送達系は、ポリオルトエステル、短鎖トリグリセリド粘度低下剤および極性非プロトン性溶媒を含む溶媒を適量用いて製剤化することができる。例えば、低粘度送達系は、ポリオルトエステルを、40重量%〜75重量%、40重量%〜60重量%、45重量%〜55重量%、65〜75重量%または約40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%もしくは75重量%含有するよう製剤化することができる。送達系における極性非プロトン性溶媒は、約3%〜25%、3%〜10%、5%〜7.5%、10%〜25%、15%〜20%または約3%、5%、7.5%、10%、12%、15%、20%または25%の範囲の重量%で存在することができる。短鎖トリグリセリド粘度低下剤を含む溶媒は、組成物中に、約5%〜45%、30%〜45%、35%〜40%、5%〜25%、10%〜20%、または約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%もしくは40%の重量%で存在する。
低粘度送達系は、2種以上の活性剤を含有することができる。一部の実施形態では、1種または複数の活性剤は、短鎖トリグリセリド粘度低下剤を含む溶媒中、極性非プロトン性溶媒中、または2種の溶媒の混合物中に可溶性でなければならない。活性剤は、ポリオルトエステルを含有する送達系に分散または溶解する。低粘度送達系中の活性剤の総重量%は、例えば、約0.1重量%〜5重量%、0.1重量%〜10重量%、0.1重量%〜5重量%、2.5重量%〜7.5重量%、3重量%〜5重量%、または約0.1重量%、0.25重量%、0.5重量%、1.0重量%、2.5重量%、5重量%、7.5重量%もしくは10重量%と変わり得る。
実施例9〜13において説明されている、本発明のこの態様を裏付けて実施した研究をこれから記載する。これらの実施例の各々において、80%のトリエチレングリコール(TEG)および20%のTEG−グリコリド(部分単位あたり平均2つグリコリドを含む、すなわちTEG−ジグリコリドである)を含む、式Iのポリオルトエステル(POE)からなる送達用ビヒクルを使用した組成物を使用した。例えば、米国特許第8,252,305号の実施例1(d)を参照されたい。
実施例9に記載されている最初の研究では、実施例4に記載されている通り調製した組成物(組成物識別番号8026−04−07)を調製し、モデルトリグリセリド粘度低下剤としてトリアセチン(三酢酸グリセロール)を30%含む類似の組成物を調製した。トリグリセリド粘度低下剤を含む組成物の粘度は、25℃で粘度計を使用して測定し、7,115mPa−sであった。
トリグリセリド粘度低下剤を含む組成物は、実施例10において記載されている通り、イヌ科の薬物動態研究では、トリグリセリド粘度低下剤を含まない組成物と比較した。イヌは、試験組成物を2つの個別の注射で投与され、血液試料を所定の時間点でイヌから採集した。続いて、ブピバカインおよびメロキシカムの血漿中濃度について、血液試料を分析した。データは図6A〜6Bにおいて示されている。データは、組成物は、トリグリセリド粘度低下剤を含まない組成物(三角形)に比べて、トリグリセリド粘度低下剤を含む組成物(白丸)の場合のCmaxのごくわずかの向上を伴い、非常に類似した血漿PKプロファイルをもたらすことを示している。
図6Aおよび6Bは、実施例9に記載されている2つの例示的な組成物の場合の、それぞれブピバカインおよびメロキシカムについて、非常に類似した血漿中濃度曲線であることを実証しているグラフである。例示の組成物:8026−04−07(5.0重量%ブピバカイン、0.15重量%メロキシカム、79.3重量%ポリオルトエステル、0.6重量%マレイン酸および15%N−メチルピロリドン[非プロトン性溶媒])および8026−09−01(3.84重量%ブピバカイン、0.11重量%メロキシカム、60.96重量%ポリオルトエステル、0.46重量%マレイン酸、23.08重量%トリアセチンおよび11.5重量%N−メチルピロリドン[非プロトン性溶媒])。これらの具体的な組成物では、非希釈組成物(8026−04−07)の粘度は25℃で約70,000mPa−sである一方、トリアセチン含有組成物の粘度は25℃で約7,000mPa−sである。ブピバカインおよびメロキシカムの場合の血漿中濃度曲線は、わずかに高いCmaxを例外として、トリアセチン希釈組成物(8026−09−01)の血漿中濃度曲線は、非希釈組成物(8026−04−07)の血漿中濃度曲線とほとんど同一であることを示している。これらの研究は、組成物はトリアセチンと一緒に製剤化して、適度な薬物放出動態の変化しか伴わないで、粘度が低下した組成物を生成することができることを実証しているが、組成物は、極性非プロトン性溶媒、トリアセチンまたは組成物の他の構成成分の濃度を調節するなどによるさらなる調整を組成物に行うことによって、粘度および薬物放出動態に関してさらなる最適化を行うことができることが認識される。
実施例10において記載されている別の研究では、アミド型局所麻酔剤およびエノール酸系NSAIDとトリグリセリド粘度低下剤との組合せを含む送達系を調製した。組成物は、実施例10の表10−1にまとめられている。組成物の粘度を測定し(実施例の方法の項目における手順に従った)、表10−1に示している。組成物にトリグリセリド粘度低下剤を添加すると、粘度が、トリグリセリド粘度低下剤を含まない組成物と比べて、少なくとも10分の1、少なくとも20分の1、または少なくとも40分の1またはそれ超に低下した。
表10−1からの組成物のブピバカインおよびメロキシカムのin vitro放出を実施例11に記載した試験において測定した。実施例11中の表11−1および11−2は、組成物からのブピバカインおよびメロキシカムの累積%放出をそれぞれ示している。組成物は、3日間またはそれ超の期間という長期間にわたり、両方の薬物のin vitro放出をもたらした。
in vivo薬物動態研究を行い、ブピバカインおよびメロキシカムおよびトリグリセリド粘度低下剤を含む送達系からの薬物の放出を評価した。実施例12において記載されている通り、イヌを、2mLの組成物識別番号8026−10−03および8026−10−05(実施例10、表10−1)を2つの個別の注射で処置した。血液試料を採取し、ブピバカインおよびメロキシカムの濃度について血漿を分析した。研究からのデータを図7A〜7Bに示している。組成物は、投与後、少なくとも96時間にわたり、ブピバカイン(図7A)およびメロキシカム(図7B)の測定可能な血漿中濃度をもたらし、この場合、35重量%のトリアセチンを含む組成物(8026−10−03)は三角形により示されており、30重量%のトリアセチンを含む組成物(8026−10−05)は、白丸により表されている。
トリグリセリド粘度低下剤を含まない類似の組成物に比べて、トリグリセリド粘度低下剤を含む組成物の粘度低下および組成物からの薬物の放出動態に有意な変化がないことは、組成物がニードルにより神経ブロックと同様に注射される臨床現場において、組成物を使用する機会を提供する。したがって、神経ブロックとして組成物を使用する評価を行うために研究を実施した。実施例13に記載されている通り、表13−1において説明されている各組成物4グラムを4匹の動物にそれぞれ注射し、ブタの一方の脇腹の座骨神経近くとなるよう投与した。神経ブロックの程度を評価するために、実施例13において記載されている通り、足の背側源表面(dorsal source surface)にフォンフレイのフィラメント(Ugo Basile)を適用した。フォンフレイアッセイの結果を、図8に示している。
図8は、ポリオルトエステル送達用ビヒクル、ブピバカイン2.5重量%単独(群4、8026−13−01、縦点線)またはブピバカイン2.5重量%、メロキシカム0.0175重量%、およびマレイン酸0.15%(群3、8026−10−01、縦線)もしくはマレイン酸0.10重量%(群5、8026−0−02、横線)、またはブピバカイン0.5重量%の緩衝溶液(空白、白色の棒、群2)からなる組成物をブタにin vivo投与した後の、時間(時間および日数)の関数としての、引っ込め力(重量グラム)の棒グラフである。点による棒は生理食塩水により処置された対照群の場合の応答を示している。データは、ブピバカインとメロキシカムの両方を含む組成物を投与された動物は、圧力への応答に対する閾値がより高いことを示している。ブピバカインとメロキシカムの両方を含有している組合せ組成物の効力は、より長く続き、ブピバカインを含有しているがメロキシカムを含有していない類似の組成物よりも深い麻酔をもたらした。
図8のデータは、in vivoのブタモデルを使用して、神経ブロックとしてのいくつかの組成物の有効性を示している。ブピバカインおよびメロキシカムを含む粘度がより低いポリマー送達組成物は、神経ブロックとして投与した場合、ブピバカインとメロキシカムとの組合せの利点を維持して、メロキシカムが存在しないブピバカインと比べて、より長く続き、一層深い麻酔をもたらす。粘度計を使用して25℃で測定すると、粘度2000mPa−s〜4000mPa−sの間の粘度などの低い粘性を有するポリオルトエステル組成物は、神経ブロックとして驚くほど有効であった。粘度が低いと、有効な徐放を行うには薬物放出速度が迅速すぎる結果になると予期されるが、データは別のことを示している。
トリグリセリド粘度低下剤の使用は、ポリオルトエステル送達系において、様々な治療剤のために利用することができることが理解されよう。例示的な例が実施例14に提示されており、ここでは、ポリオルトエステルポリマー、短鎖トリグリセリド粘度低下剤および極性非プロトン性溶媒、ならびに抗嘔吐治療剤を含む送達系を調製した。一実施形態では、抗嘔吐剤は、患者において、化学治療剤によって誘発される嘔吐(emesis)、放射線によって誘発される悪心および嘔吐(vomiting)、および/または術後により誘発される悪心および嘔吐(vomiting)を処置するために使用される。処置には、患者に5−HT3アンタゴニストなど抗嘔吐剤を含む組成物を投与することを含み、組成物は、有効な抗嘔吐治療となるための放出速度が生じるよう設計されている。例示的な実施形態では、抗嘔吐剤はグラニセトロンである。送達系は、例えば、静脈内投与することができる。実施例14の表14−1に示されているデータで分かる通り、トリグリセリド粘度低下剤であるトリアセチンを組成物に添加すると、トリグリセリド粘度低下剤を含まない組成物と比較して、約5分の1〜90分の1の間で粘度低下した。粘度低下は、粘度計を使用して25℃で粘度を測定した場合(以下に説明されている方法を参照されたい)、一実施形態では、少なくとも約5分の1、少なくとも約7分の1、少なくとも約20分の1、少なくとも約30分の1、少なくとも約40分の1、少なくとも約50分の1、少なくとも約60分の1、少なくとも約70分の1、少なくとも約80分の1または少なくとも約90分の1である。組成物にトリグリセリド粘度低下剤を添加すると、粘度計を使用して37℃で粘度を測定した場合、粘度は少なくとも約5分の1または少なくとも約10分の1または少なくとも約20分の1または少なくとも約30分の1低下した。
実施例14の組成物からのグラニセトロンのin vitro放出を実施例15に記載されている通り決定した。実施例15の表15−1に累積薬物放出がまとめられており、薬物の放出がトリアセチン濃度を変えたおよび変えていない組成物全体の薬物放出プロファイルと同等であることを示している。極性非プロトン性溶媒の濃度が向上すると、in vitro放出速度が増加した。極性非プロトン性溶媒の量を増加させることによる粘度低下により、薬物放出が約2倍、向上した。しかし、トリアセチン濃度を同じく増加しても、放出速度の同じ向上は引き起こされなかった。さらに、組成物は、少なくとも約3日間または少なくとも約4日間、グラニセトロンの放出をもたらした。組成物の粘度を低下させるためにトリグリセリド粘度低下剤を添加しても、トリグリセリド粘度低下剤を含まない類似の組成物に比べて、グラニセトロンのin vitro放出は変化しなかった。このことは、表15−1のデータにおいて、トリアセチンを含まない組成物番号8026−14−03と10%のトリアセチンを含む組成物番号8026−14−04とを比較することにより認められる。トリアセチン組成物(25℃ではほとんど20分の1の低い粘度を有する)からのグラニセトロンの放出は、トリアセチンを含まない類似の組成物によってもたらされるグラニセトロンの累積的放出の10%以内であった。同様に、8026−14−01(トリアセチン不含)と8026−14−02(10重量%トリアセチンを含む)との比較により、25℃において粘度が7分の1低いトリアセチン含有組成物は、24時間、72時間および96時間の時間点において、トリアセチンを含まない組成物によってもたらされる放出の約15%以内の速度でグラニセトロンを放出したことが明白である。したがって、一実施形態では、トリグリセリド粘度低下剤を含む組成物は、粘度計を使用して25℃で粘度を測定した場合、少なくとも約5分の1または10分の1(または、上記の通り、それ超)となる粘度、および96時間の期間中の少なくとも1つの時間点、少なくとも2つの時間点、または少なくとも3つの時間点で、トリグリセリド粘度低下剤を含まない類似の組成物からの薬剤放出の約20%、15%または10%以内となる活性剤の放出を有する。
上記載の粘度低下組成物は、それを必要とする対象に投与するのに適している。例えば、1種または複数の治療有効量の活性剤を含有する低粘度組成物は、活性剤を必要としている対象に、皮下、皮内または筋肉投与することができるか、または局所施用することができるか、または組織もしくは例えば創傷(手術またはその他)に滴注することができる。
本明細書において開示されている、トリアセチンなどのトリグリセリド粘度低下剤を含む低粘度組成物および系は、状態の処置または予防を必要としている対象(例えば、患者)に、本明細書に記載されている流動性のある組成物の有効量で投与される。これらの低粘度組成物は、粘性のポリマーまたは固体ポリマー送達系の送達プロファイルを有する活性剤に対して液体送達系の利点を提供する。トリアセチンなどのトリグリセリド粘度低下剤を含む本発明の低粘度組成物はまた、他の液体ポリマー系と比較して、より小さなゲージのニードルの使用を可能にする。トリアセチンなどのトリグリセリド粘度低下剤を含む本発明の組成物における生分解性ポリマーの使用により、流動性のある非ポリマー組成物とは対照的に、活性剤の放出速度および流動性組成物の分解を幅広い範囲で様々にすることも可能になる。
ポリオルトエステルなどのポリマーを含む、本明細書において開示されている各組成物は、その中に溶解または分散している活性剤の放出の点で特徴付けることができる。例えば、組成物からの1種または複数の薬物の放出は、ある量の緩衝液(例えば、適切な容器中の150mLリン酸緩衝生理食塩水)に各ポリマー製剤(例えば、50〜500mg)を少量入れることにより決定することができる。次に、撹拌しながらまたは撹拌しないで、試料を例えば、25℃、37℃または50℃でインキュベートする。例えば、6時間、12時間または24時間毎の時間間隔で、緩衝溶液のアリコートを抜き取り、活性剤の存在について分析する。分析は、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって行うことができる。
B.処置の方法
提供される組成物は、例えば、患者の疼痛管理に使用することができる。したがって、疼痛を改善する方法、疼痛を管理する方法、疼痛を処置する方法および/またはそれを必要としている患者に局所麻酔をもたらす方法が提供される。別の実施形態では、術後疼痛を管理または処置する状況における場合などの疼痛の予防的処置のための方法が提供される。他の実施形態では、その中に取り込まれることによるアミドまたはアニリド型局所麻酔剤、メロキシカムなどの効力を増強する量のエノール酸系NSAIDを含むポリオルトエステル組成物の疼痛緩和プロファイルを延長して、これにより、NSAIDが存在しない上記と同一の組成物のそれよりも延長された期間、有効な疼痛緩和をもたらすことが可能な組成物を実現するための方法が提供される。特に、アミド型麻酔剤とエノール酸系NSAIDとの組合せを含む組成物は、投与後、約1日間から少なくとも約2日間または少なくとも約3日間または少なくとも約4日間または少なくとも約5日間まで、疼痛緩和を実現するのに有効であり、すなわち、疼痛緩和に関すると、短期作用性組成物よりもむしろ長期作用性組成物となる。他の実施形態では、組成物は、最大約4日間または最大約5日間、疼痛緩和をもたらす。
さらに追加的な態様では、その中に取り込まれることによるアミド型局所麻酔剤、効力を増強する量のエノール酸系NSAIDを含むポリオルトエステル組成物の鎮痛作用または疼痛緩和作用を改変し、これにより、例えば、術後疼痛に関するin vivoモデルにおいて実証されている通り、例えば投与後、約5〜24時間(例えば実施例8を参照されたい)、鎮痛作用または疼痛緩和作用の低下を任意選択で示す、少なくとも5時間、鎮痛作用または疼痛緩和作用を有する組成物を実現するための方法であって、その後に、投与後日数が約1日間〜2日間で組成物がその鎮痛作用または疼痛緩和作用を維持または再度得て、こうして組成物が、投与後、約2日間〜約5日間および任意選択でそれ超で、すなわち、投与後約1〜5時間で示されるその平均鎮痛作用または疼痛緩和作用が少なくとも約75%または少なくとも約50%となる長期間の鎮痛作用または疼痛緩和作用を示す、方法が提供される。
組成物は、一実施形態では、投与後、最大5日間、アミドまたはアニリド型局所麻酔剤タイプの局所麻酔剤および/またはエノール酸系NSAIDの測定可能な血漿中濃度をもたらすのに効果的である。
特定の実施形態では、組成物は、組成物からアミドまたはアニリド型局所麻酔剤とNSAIDの両方のかなりの部分を放出するのに効果的であり、そうして、両方の薬物の80重量%またはそれ超が、約5日間、または最大少なくとも約5日間、放出される。一実施形態では、両方の薬物は、少なくとも約1日間〜最大約5日間、および別の実施形態では、約1〜5日間、または約2〜3日間の間、または少なくとも約3日間、放出される。ある場合には、アミドまたはアニリド型局所麻酔剤は、例えば、メロキシカムなどのNSAIDをさらに含む、本質的に同じ組成物とほぼ同じ量およびほぼ同じ時間枠にわたり組成物から放出され得るが、組成物からのNSAIDの取込みおよび放出は、NSAID型薬物の取込みから予期されるものを超える量によって、局所型麻酔剤の効力を増強するのに効果的であり、こうして、組成物に関するNSAIDの作用の性質は、相加的というよりもむしろ相乗的となる。
別の態様では、エノール酸系NSAIDなどのNSAIDと組み合わせたアミドまたはアニリド型局所麻酔剤、およびポリオルトエステルを含む組成物をニードルから分注し、これにより、組成物からの局所麻酔剤とNSAIDの両方の制御放出を達成するステップを含む、処置の方法であって、両方の薬物の80重量%またはそれ超が、約5日間にわたり放出される、方法が提供される。
別の実施形態では、本明細書において提供される組成物は、それを必要としている患者に局所麻酔を行う方法において使用するためのものである。処置は、本明細書において説明されている組成物、例えば、アミドまたはアニリド型局所麻酔剤、NSAID、および送達用ビヒクルを含む組成物を患者に投与するステップを含み、一部の実施形態では、送達用ビヒクルは、ポリオルトエステルであり、NSAIDはエノール酸系NSAIDである。方法は、麻酔剤とNSAIDの両方の放出速度、およびそれに伴って、施用後、長期間にわたる疼痛の軽減または予防に対してそれぞれが有効な薬物動態プロファイルをもたらす。局所投与は、例えば、神経近傍、硬膜外腔内、くも膜下内、または手術部位もしくは手術による創傷もしくは手術によらない創傷に直接(例えば、創傷領域への滴注、皮下注射または皮内注射)とすることができる。一部の実施形態では、局所浸潤麻酔(LIA)によって創傷への皮下注射が達成される。LIAは、2008年にKerrおよびKohanによって最初に広く注目されて以来、高い評価を獲得した鎮痛技法である。技法は、手術時の創傷全体にわたり、多くの場合、アジュバント(例えば、エピネフリン、ケトロラク、オピオイド)と共に、長期作用性の局所麻酔剤の大量希釈溶液の浸潤を含む。
一実施形態では、長期間とは少なくとも約5日間である。別の実施形態では、長期間とは最大約5日間である。さらに別の実施形態では、長期間は、約1日間〜少なくとも約5日間、または約1日間〜最大約5日間である。さらに別の実施形態では、長期間とは約3日間である。
本方法では、一実施形態では、両方の薬物の約80重量%またはそれ超が、約5日間にわたり放出される。組成物は、一実施形態では、施用後、少なくとも約5日間、かなりの疼痛緩和をもたらすのに有効である。
それを必要としている患者に疼痛緩和を実現する方法であって、本明細書に記載されている組成物を用意すること、および長期間、疼痛緩和をもたらすために組成物を患者に投与することを指示することを含む、方法が提供される。一実施形態では、長期間とは少なくとも約5日間である。別の実施形態では、長期間とは最大約5日間である。さらに別の実施形態では、長期間は、約1日間〜少なくとも約5日間、または約1日間〜最大約5日間である。さらに別の実施形態では、長期間とは約3日間である。
本明細書において提供される組成物および送達系は、急性または慢性疼痛を管理、軽減または処置するためにも使用することができる。組成物はまた、急性または慢性疼痛の予防的処置に使用されてもよい。急性疼痛は、例えば、手術、骨折、歯科作業、火傷もしくは切り傷、または陣痛および出産に伴う恐れがある。慢性疼痛は、例えば、頭痛、腰痛、がん疼痛、関節炎疼痛、神経性疼痛および心因性疼痛に伴う恐れがある。
本明細書に記載されている方法のいずれかの場合の投与に関すると、組成物は、標準的なシリンジおよびニードル(例えば、約16ゲージ)を用いて、注射する、滴注するまたは施用することができるか、または例えば、スプレーアプリケータを用いて施用することができる。組成物は、皮下、皮内または筋肉注射することができる。組成物は、創傷に、局所または皮下施用することができる。組成物はまた、以下により詳細に記載されている通り、神経周囲にも施用することができる。組成物は、シリンジ、注射可能なディスペンサーまたはチューブ式ディスペンサーによるものを含む、当分野で公知の様々な方法を使用して施用することができる。
一態様では、アミド型局所麻酔剤およびNSAIDを含む、本明細書に記載されている組成物は、末梢神経ブロックとして投与するために企図される。特に、トリグリセリド粘度低下剤を含む上記の組成物は、神経ブロックとしての使用が企図される。末梢神経ブロックは、疼痛の軽減のため、または無感覚をもたらすため、末梢神経の周辺または末梢神経に薬剤を導入することを含む。末梢神経ブロックのタイプには、以下に限定されないが、運動、感覚、分離ブロックおよび自立ブロックが含まれ、さらには、以下に限定されないが、腕神経叢(腋窩、斜角筋間、鎖骨上、鎖骨下)、個体上肢神経ブロック(正中、橈骨、尺骨、筋皮、腋窩)、座骨、足首、中足骨、口腔、大腿部、膝窩、伏在静脈、遠位腓骨、指腓骨、深腓骨、浅腓骨、脛骨、腓腹および伏在静脈ブロックが含まれる。
この態様では、神経または神経叢に隣接している場所への注射は、室温(約25℃)で測定した場合、比較的低い粘度(例えば、約5000mPa−s、4000mPa−s、3000mPa−s、2000mPa−sもしくは1000cmPa−s未満、または約250mPa−s〜5000mPa−s、250mPa−s〜3000mPa−s、500mPa−s〜5000mPa−s、500mPa−s〜3000mPa−s、1000mPa−s〜3000mPa−s、1000mPa−s〜4000mPa−s、1000mPa−s〜5000mPa−s、2000mPa−s〜4000mPa−s、1500mPa−s〜2500mPa−s、2500mPa−s〜3500mPa−s、3500mPa−s〜4500mPa−s、2750mPa−s〜3000mPa−s、3000mPa−s〜3750mPa−sもしくは3750mPa−s〜4000mPa−sの間)を有する組成物が必要である。製剤の粘度を低下させる手段の1つは、式Iなどのポリオルトエステルを約40重量%〜60重量%、45重量%〜55重量%、50重量%〜60重量%または50重量%〜55重量%、極性非プロトン性溶媒を約2%〜10%、3%〜10%、2%〜5%、3%〜5%、2%〜4%、3%〜4%または3%〜8%、およびトリアセチンを約25重量%〜45重量%、30重量%〜45重量%、35重量%〜45重量%または35重量%〜40重量%使用した組成物を調製することである。使用することができる極性非プロトン性溶媒には、以下に限定されないが、DMSOおよびNMPが含まれる。組成物は、アミド型局所麻酔剤およびアミド型局所麻酔剤および非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を約1重量%〜12重量%、または約2重量%〜7重量%の総重量%でさらに含む。例えば、組成物は、ブピバカインを1.25重量%〜10重量%、およびメロキシカムを0.075重量%〜1.5重量%含むことができる。神経ブロックとして投与するための組成物を調製するため、適量のアミドまたはアミノ−アニリド型局所麻酔剤を極性非プロトン性溶媒に溶かし、溶解するまで混合する。一実施形態では、麻酔剤を約60℃〜85℃の間、または約70℃の温度で非プロトン性溶媒に溶解する。次に、有機酸、例えばマレイン酸を加えて溶解し、次いで、NSAID、例えばメロキシカムを加える。適量のポリマーおよびトリアセチンを別に混合し、加熱して(例えば、約60℃〜80℃の間、または70℃)、完全に混合する。次に、NSAIDおよび麻酔剤を含有している溶液をポリマーとトリアセチンとのブレンドの所望量と一緒にし、均一になるまで高温で混合する。
アミド型局所麻酔剤およびNSAID(例えば、ブピバカインおよびメロキシカム)を含む組成物へのトリアセチンの添加により、組成物の粘度が低下し、これにより組成物が神経ブロックへの注射に一層好適となることが、本明細書(例えば、実施例9および実施例13を参照されたい)において示されている。神経ブロック製剤により放出される活性剤の血液中レベルを測定するための研究は、薬物送達組成物の薬物動態プロファイルに対してトリアセチンが最小の影響しか及ぼさないことを示している。言いかえると、神経ブロックとして注射することが可能な低粘度組成物の製剤化から予期せぬ利益が生じ、組成物が低粘度であるにも関わらず、活性剤の持続放出およびそれに対応して持続的な疼痛緩和を実現する。特定の実施形態では、麻酔剤はブピバカインであり、NSAIDはメロキシカムである。
以下の実施例は、本質的に例示するものであって、決して限定することを意図するものではない。
方法:粘度測定は、CPA−44PSYZカップを用いてBrookfield粘度計DV−IIProを使用して行い、25℃およびまたは37℃で測定した。8,000cP(mPa・s)未満の製剤の粘度測定は、CPA−40Zスピンドルを使用して、25℃で測定し、この系は、1,000mPa−sのシリコーンオイルのBrookfield粘度標準品を使用して確認した。8,000cP(mPa・s)を超える製剤の粘度測定は、CPA−52Zスピンドルを使用して評価し、30,000mPa−sのシリコーンオイルのBrookfield粘度標準品を使用して規格化した。
物質:実施例1〜13において記載されている例示的な組成物の各々は80%のトリエチレングリコール(TEG)および20%のTEG−グリコリド(部分単位あたり平均2つグリコリドを含み、すなわちTEG−ジグリコリドである)を含む式Iのポリオルトエステル(POE)を含む。例えば、米国特許第8,252,305号の実施例1(d)を参照されたい。
(実施例1)
ロピバカインおよび非ステロイド系抗炎症薬を含む組成物
式Iのポリオルトエステル、非プロトン性溶媒、ロピバカインおよびメロキシカムを含有する組成物は、以下の表1−1に説明されている各構成成分の量を用いて調製した。組成物は、約80℃で非プロトン性溶媒にNSAIDを溶解し、次に、溶解するまで加熱しながらロピバカインを加えて薬物溶液を形成させることにより調製した。薬物溶液を高温で、均一になるまでポリオルトエステルと混合した。
(実施例2)
ポリオルトエステル組成物からのロピバカインおよびメロキシカムのin vitro放出
実施例1における組成物からのロピバカインおよびメロキシカムの放出は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)150mLを満たしたバイアルに実施例1からのポリマー組成物50mgを入れることにより決定した。次に、撹拌しないでバイアルを37℃でインキュベートした。24時間の間隔で、溶液を撹拌することなく、PBSの試料1mLを上記のバイアルから採取した。ロピバカインおよびメロキシカムの濃度を決定するため、各試料をHPLCによって分析した。デポ剤50mgからの時間の関数としての累積薬物放出を求めた。結果が以下の表2−1に示されている。
(実施例3)
ブピバカインおよびジクロフェナクを含む送達系
約62〜63%の間の式Iのポリオルトエステル、約15〜20%の間の非プロトン性溶媒、10%〜15%の間のブピバカイン塩基および6%〜7.5%のジクロフェナクを含有する組成物を調製した。組成物は、まず適量のジクロフェナクを約80℃で適量の非プロトン性溶媒に溶解し、次に、溶液にブピバカインを溶解することにより調製した。次に、薬物溶液を高温で均一になるまで適量のポリマーと混合した。例示的な組成物が表3−1に表されている。
(実施例4)
ブピバカインおよびメロキシカムを含む送達系
約55〜67%の間の式Iのポリオルトエステル、約16〜32%の間の非プロトン性溶媒、9.9%〜15%のブピバカインおよび1.5%〜3.4%のメロキシカムを含有する組成物を調製した。組成物は、まず適量のNSAIDを約80℃で非プロトン性溶媒に溶解し、次に、適量のブピバカインを加え、溶解するまで加熱することにより調製した。次に、薬物溶液を高温で均一(homogenous)になるまで適量のポリマーと混合した。例示的な組成物が表4−1に表されている。
(実施例5)
例示的な組成物からのブピバカインおよびメロキシカムのin vitro放出
実施例4において記載されている組成物からのブピバカインおよびメロキシカムの放出は、リン酸緩衝生理食塩水150mLを含有するバイアルにポリマー組成物約50mg〜200mgを入れることにより決定した。バイアルを60rpmで連続回転しながら、37℃でインキュベートした。24時間の間隔で、溶液をなんらさらに撹拌することなく、試料1mLをバイアルから採取した。ブピバカインの濃度およびメロキシカムの濃度を決定するため、各試料をHPLCによって分析した。次に、デポ剤からの累積薬物放出を計算した。データを表5−1および502に示しており、両方の薬物が3日間またはそれ超の長期間にわたり放出されたことを示している。
(実施例6)
ブピバカイン−メロキシカム組成物のin vivo投与
in vivo薬物動態研究は、以下の通り行った。60〜100kgの間の体重のヒツジに、実施例4において記載されている通り調製した組成物4mLを投与した:組成物番号8026−04−03(研究1、n=6)、8026−04−04(研究2、n=3)または8026−04−05(研究2、n=3)。血漿試料を下記の時間点において、各ヒツジから採集した:t=0(薬物投与の直前)、投与後、0.5、1、3、6および8、24および30時間、次に3〜7日目(48〜168時間)、毎日。続いて、ブピバカインおよびメロキシカムについて、LC/MS/MSにより血漿試料を分析した。
研究からのデータが図1A〜1Bにおいて示されており、3つの組成物、すなわち、15重量%ブピバカイン/3重量%メロキシカム(黒正方形);10重量%ブピバカイン/0.75重量%メロキシカム(白丸);および5重量%ブピバカイン/0.38重量%メロキシカム(白三角形)について、ブピバカイン(図1A)およびメロキシカム(図1B)の血漿中レベルを各時間点でプロットしている。データにより、組成物は、投与後、少なくとも96時間にわたり、測定可能なブピバカインおよびメロキシカムの血漿中濃度をもたらすことが示されている。
(実施例7)
ブピバカイン−メロキシカム組成物のin vivo投与
in vivo薬物動態研究は、以下の通り行った。約10kgの重量のビーグル犬(n=5)に、それぞれ約0.5mLの2つの個別の注射で、組成物ID8026−04−07(実施例4)を1mL投与した。血漿試料を下記の時間点において、各イヌから採集した:t=0(薬物投与の直前)、0.5、1、3、6、24時間時、および最大5日目まで(120時間)。続いて、ブピバカインおよびメロキシカムについて、LC/MS/MSにより血漿試料を分析した。
研究からのデータが図2A〜2Bにおいて例示されており、組成物は、投与後、少なくとも96時間にわたり、測定可能なブピバカインおよびメロキシカムの血漿中濃度をもたらすことが示されている。
(実施例8)
ブピバカイン−メロキシカム組成物のin vivo薬力学
ブタモデル系において、手術切開後(術後またはPOP)の疼痛を軽減する組成物の能力について、様々な組成物を評価した。このモデルでは、全身麻酔下で左脇腹に7cm長の皮膚および筋膜切開を行った。試験組成物または対照品を創傷に施用した。次に、滅菌縫合糸を使用して、皮膚切開を閉じた。以下に記載されている研究はすべて、群あたり4匹のブタで評価した。
フォンフレイ法を使用して術後疼痛を評価した。フォンフレイのフィラメント(Ugo Basile)を、脇腹の皮膚の表面までの切開線に対して約0.5cmの近位部に適用した。直径の増加したフィラメント(より厚い繊維はより大きな重量グラムに相当する一方、より薄い繊維はより小さな重量グラムに相当する)を、刺激から動物が引っ込める(刺激から立ち去る行為)まで適用した。各フィラメントは3〜5回、適用した。引っ込みが達成されなかった場合、より厚いフィラメントを適用した。最大の力のフィラメントは60gであった。引っ込みが達成された場合、より薄いフィラメントを適用した。フィラメントの厚さを変更することにより、引っ込み反応を達成するのに必要な重量グラムを求めて記録した。適用された力が大きいほど、麻酔は一層有効である。
(実施例8A)
研究1は、エノール酸系NSAIDが存在しない、ブピバカインまたはロピバカインを含有する組成物を評価した。15%ブピバカインを含有する徐放性ポリマー組成物を、5%ロピバカインを含有している徐放性ポリマー組成物と比較した。組成物は実施例1に記載されている手順に従って調製した。切開(n=4ブタ/群)の作製後、各試験組成物を、創傷領域の表面に直接、滴注することにより、または創傷の外側縁の皮下に注射することにより投与した。用量は、生理食塩水2mL(群1)、15%ブピバカイン組成物2mL(群2および群3)、および5%ロピバカイン組成物1.8mL(群4および群5)とした。表8−1は、試験群および組成物をまとめている。上に記載されている通り、麻酔はフォンフレイテストにおける応答によって評価した。フォンフレイテストの場合のベースライン(手術前)の引っ込めスコアは60gであった。
各試験群における動物に対するフォンフレイ応答を図3に示しており、この場合、引っ込め力(重量グラム)をブタへのin vivo投与後の時間(時間および日数)の関数として示している。試験組成物は、以下の通り表示される:(i)注射(縦点線)または滴注(縦線)により投与された15重量%のブピバカイン、または(ii)注射(横線)または滴注(ダイヤモンド型斜行平行線)により投与された5重量%のロピバカイン;および点による棒は生理食塩水により処置された対照群の場合の応答を示す。
(実施例8B)
第2の研究(研究2)を行い、アミド型局所麻酔剤を含有している徐放性製剤と非ステロイド系抗炎症薬と組み合わせて局所麻酔剤を含有している製剤とを比較した。5つの異なる製剤の侵害受容活性をブタPOPモデルにおいて評価した。組成物は図8−2に示されている。ロピバカインを含有している徐放性製剤(より遅い放出およびより速い放出、それぞれ群2および群3)を、ブピバカインならびにNSAIDであるジクロフェナクおよびメロキシカムを含有する徐放性製剤(それぞれ、群4および群5)と比較した。ビヒクルまたは試験品について2mLの投与量を切開の外側縁に皮下注射し、この切開を縫合糸により閉じた。ベースライン、術後1、3および5時間、ならびに1日目〜6日目までにおけるフォンフレイ方法による侵害受容のアセスメントは上に記載した。
研究2の結果が図4に示されており、この場合、引っ込め力(重量グラム)は、ブタにおいてin vivoで切創に皮下注射することによって投与した後の、時間(時間および日数)の関数として示されており、試験組成物は以下の通り表示される:(i)マレイン酸0.6%を含むロピバカイン5重量%(横線)、(ii)0.2%マレイン酸を含むロピバカイン5重量%(ダイヤモンド型斜行平行線)、(iii)ブピバカイン15重量%およびジクロフェナク7.5重量%(縦点線)、または(iv)ブピバカイン15重量%およびメロキシカム3.5重量%(縦線);および点による棒は生理食塩水により処置された対照群の場合の応答を示している。
(実施例8C)
第3の研究である研究3を行い、2つの活性成分、すなわちブピバカインおよびメロキシカムの様々な濃度を含有している5つの異なる製剤を評価した。先の研究2と同様に、各製剤2mLを、1)創縁の周囲に皮下注射(8回の注射;4回/片側)、または2)切開により作られた創傷表面への直接施用により、または3)創傷の方側の組織への注射のいずれかによって投与した。アセスメントのために評価したパラメータおよび時間は、研究2における場合と同じとした。表8−3は、試験した組成物を示している。
結果は、ブピバカイン/メロキシカム組成物はすべて、先の研究と一致して、6日目まで良好な麻酔となることを実証していることを示した(データは図示せず)。5%を超える濃度のブピバカインに有意な利益はなかった。メロキシカムの場合の用量応答は、観察されなかった。
(実施例8D)
0.08〜0.4%の範囲の様々な濃度のメロキシカムを含む5%ブピバカインを含有している組成物を、メロキシカムを単独(すなわち、局所麻酔剤を含有していない)で含有している組成物と共に試験した。メロキシカムだけの組成物の場合、メロキシカムを水/t−ブチルアルコール混合物に溶解し、pHを11に調整した。次に、溶液を凍結乾燥した。凍結乾燥した適量のメロキシカムを約80℃で非プロトン性溶媒であるDMSOに溶解した。次に、得られた薬物溶液を高温で均一になるまで適量のポリマーと混合した。さらに、メロキシカムおよびブピバカインの相乗作用が他の局所麻酔剤に拡張できるかどうかを決定するため、メロキシカムを含むおよび含まないで5%ロピバカインを含有している組成物も評価した。
試験した組成物および群の割り振りを表8−4に示している。試験組成物はすべて、2ミル(mile)の総用量で切開の両側(8回の注射;4回/片側)への皮下注射としてブタに投与した。アセスメントのために評価したパラメータおよび時間は、研究2における場合と同じとした。
結果が図5A〜5Bに示されており、ここでは、引っ込め力(重量グラム)を、以下の通り示されている試験製剤の投与後の時間(時間および日数)の関数として示している:ポリオルトエステル送達用ビヒクル、およびメロキシカム0.08重量%(縦点線)、0.19重量%メロキシカム(縦線)および0.3重量%メロキシカム(横線)と組み合わせた5重量%ブピバカインからなる組成物、ポリオルトエステル送達用ビヒクルおよび0.15重量%メロキシカム単独からなる組成物(点線)(図5A)、ならびにポリオルトエステル送達用ビヒクルおよび0.38重量%メロキシカムと組み合わせた5重量%のロピバカイン(ダイヤモンド型斜行平行線)からなる組成物または5重量%ロピバカイン単独からなる組成物(空白、白い棒)。
(実施例9)
ブピバカインおよびメロキシカムおよび粘度低下トリグリセリドを含むポリマー組成物
実施例4において8026−04−07として識別される組成物を、30%トリアセチン(三酢酸グリセロール)を含ませて調製し、識別番号8026−09−01に割り当てた。トリアセチン含有組成物の粘度は、上記の方法の項目において説明されている通り測定し、25℃で7,115mPa−sであった。トリアセチンを含まない類似の組成物の粘度は、上記の方法の項目において説明されている通り測定すると、25℃で約75,000mPa−sであった。
トリグリセリド粘度低下剤を含む組成物は、イヌ科の薬物動態研究において、トリグリセリド粘度低下剤を含まない組成物と比較した。in vivo薬物動態研究は、以下の通り行った。約10kgの重量のビーグル犬(n=5)に、約0.5mLの2つの個別の注射で、組成物識別番号8026−04−07を1mL投与した。別の組のやはり約10kgの重量のビーグル犬(n=5)に、それぞれ約0.65mLの2つの個別の注射(合計で1.3mL)で、組成物識別番号8026−09−01を1.3mL投与した。血漿試料を下記の時間点において、各イヌから採集した:t=0(薬物投与の直前)、投与後、1、3、6、8、24および34〜36時間、次に3〜7日目(48〜168時間)、毎日。続いて、ブピバカインおよびメロキシカムについて、LC/MS/MSにより血漿試料を分析した。
研究からのデータを図6A〜6Bに示している。データは、組成物は、トリグリセリド粘度低下剤を含まない組成物(三角形)に比べて、トリグリセリド粘度低下剤を含む組成物(白丸)の場合のCmaxのごくわずかの向上を伴い、非常に類似した血漿PKプロファイルをもたらすことを示している。
(実施例10)
ブピバカインおよびメロキシカムおよび粘度低下剤を含むポリマー組成物
約40〜60%の間の式Iのポリオルトエステル、約3〜10%の間の極性非プロトン性溶媒(NMPまたはDMSO)、2.5%〜5.0%のブピバカインおよび0.075%〜0.15%のメロキシカムを含有する組成物を調製した。組成物は、ブピバカインを約80℃で非プロトン性溶媒に溶解し、溶解するまで混合することにより調製した。次に、マレイン酸を加えて溶解し、次いでメロキシカムを加え、溶解するまで混合を継続し、薬物溶液を形成させた。これとは別に、ポリマーおよびトリアセチン(三酢酸グリセロール)を合わせ、70℃まで加熱し、完全に混合した。次に、薬物溶液を高温でポリマーおよびトリアセチンブレンドと合わせ、均一になるまで混合した。組成物の粘度は、上記の方法の項目において説明されている通り測定した。例示的な組成物が表10−1に表されている。
これらの組成物にトリグリセリド粘度低下剤であるトリアセチンを添加すると、粘度が、トリグリセリド粘度低下剤を含まない組成物と比べて、少なくとも10分の1、少なくとも20分の1、または少なくとも40分の1またはそれ超に低下した。
(実施例11)
トリグリセリド粘度低下剤を含む組成物からのブピバカインおよびメロキシカムのin vitro放出
実施例10の組成物からのブピバカインおよびメロキシカムの放出は、リン酸緩衝生理食塩水200mLを含有するバイアルにポリマー組成物(約50mg〜200mg)100mgを入れることにより決定した。バイアルを60RPMの振盪器で、37℃でインキュベートした。24時間の間隔で、この溶液をなんら撹拌することなく、試料1mLをバイアルから採取した。ブピバカインおよびメロキシカムの濃度を決定するため、各試料をHPLCによって分析した。次に、デポ剤からの累積薬物放出を計算し、表11−1および11−2に示す。
(実施例12)
ブピバカインおよびメロキシカムおよびトリグリセリド粘度低下剤を含む送達系のin vivo分析
in vivo薬物動態研究は、以下の通り行った。約10kgの重量のビーグル犬(n=5)に、それぞれ約1mLの2つの個別の注射で、8026−10−03および8026−10−05と識別した組成物を2mL投与した。血漿試料を下記の時間点において、各イヌから採集した:t=0(薬物投与の直前)、0.5、1、3、6、24時間時、および最大5日目まで(120時間)。続いて、ブピバカインおよびメロキシカムについて、LC/MS/MSにより血漿試料を分析した。
研究からのデータを図7A〜7Bに示している。組成物は、投与後、少なくとも96時間にわたり、ブピバカイン(図7A)およびメロキシカム(図7B)の測定可能な血漿中濃度をもたらし、この場合、35重量%のトリアセチンを含む組成物(8026−10−03)は三角形により示されており、30重量%のトリアセチンを含む組成物(8026−10−05)は、白丸により表されている。
(実施例13)
神経ブロックとしての組成物のin vivo使用
ブピバカインなどのアミド型局所麻酔剤と本明細書に記載されているNSAIDとの組合せが神経ブロック手順による局所麻酔に使用することができるかどうかを判断するために、研究を実施した。神経周囲注射を行うため、実施例10に記載されているものなどのより低い粘度製剤を評価した。
組成物の効力はフォンフレイアッセイを使用して試験したが、これらの研究では、術後疼痛研究と比べ、切開は行わなかった。各組成物4グラムを4匹の動物の各々に注射し、ブタの一方の脇腹の座骨神経付近になるよう投与した。以下の表13−1は、各動物に注射された組成物をまとめたものを提示している。
神経ブロックアセスメント:神経ブロックの程度を評価するために、足の背側源表面にフォンフレイのフィラメント(Ugo Basile)を適用する。フィラメントのグラム数が増加するにつれて、足背の皮膚にかかる力が大きくなる。最大の力は300gである。動物が刺激から引っ込めるまで、フィラメントを適用する。各フィラメントは3〜5回、適用する。引っ込みが達成されなかった場合、より厚いフィラメントを適用する。引っ込みが達成された場合、より薄いフィラメントを適用する(より厚いまたはより薄いとは、より大きな/より厚いまたはより小さな/より薄い重量グラムであることを指す)。フィラメントの厚さを変更することにより、引っ込み反応を達成するのに必要な力を求めて記録する。引っ込み反応は、足を持ち上げて刺激から遠ざかる行為と見なされる。
フォンフレイアッセイの結果が図8に示されており、この場合、引っ込め力(重量グラム)は、ポリオルトエステル送達用ビヒクル、ブピバカイン2.5重量%を単独(群4、8026−13−01、縦点線)またはブピバカイン2.5重量%、メロキシカム0.0175重量%およびマレイン酸0.15%(群3、8026−10−01、縦線)もしくはマレイン酸0.10重量%(群5、8026−0−02、横線)、またはブピバカイン0.5重量%の緩衝溶液(空白、白色の棒、群2)からなる組成物をブタにin vivo投与した後の、時間(時間および日数)の関数として示されている。点による棒は生理食塩水により処置された対照群の場合の応答を示している。
(実施例14)
グラニセトロンおよびトリグリセリド粘度低下剤を含む組成物の調製
約65重量%〜88重量%の間の式Iのポリオルトエステル、約5重量%〜10重量%の間の極性非プロトン性溶媒(NMPまたはDMSO)、約0重量%〜20重量%の間のトリアセチンおよび約2重量%のグラニセトロンを含有する組成物を調製した。組成物は、約80℃で非プロトン性溶媒にグラニセトロンを加え、溶解するまで混合し、薬物溶液を形成させることにより調製した。これとは別に、ポリマーおよびトリアセチン(三酢酸グリセロール)を合わせ、70℃まで加熱し、次いで、完全に混合した。次に、薬物溶液を70℃でポリマーとトリアセチンとのブレンドと合わせ、均一になるまで混合した。比較のために、15%の極性非プロトン性溶媒からなるグラニセトロン製剤を調製した。
組成物の粘度は、上記の方法の項目において説明されている方法を使用して、25℃および37℃で測定した。結果が表14−1に示されている。組成物にトリアセチンを添加すると、25℃で測定した場合、粘度は、少なくとも約5分の1(8026−14−06と8026−14−03との比較)、少なくとも約7分の1(8016−14−01と8026−14−02との比較)、少なくとも約20分の1(8026−14−04と8025−14−03との比較)または少なくとも約90分の1(8026−14−05と8026−14−03との比較)に低下した。組成物にトリアセチンを添加すると、37℃で測定した場合、粘度は、少なくとも約5分の1(8026−14−01と8026−14−02との比較;および8026−14−03と8026−14−03との比較)、少なくとも約30分の1(8026−14−05と8026−14−03との比較)に低下した。
(実施例15)
グラニセトロンおよびトリグリセリド粘度低下剤を含む組成物のin vitro放出
実施例14の組成物からのグラニセトロンの放出は、リン酸緩衝生理食塩水150mLを含有するバイアルに各組成物200mgを入れることにより決定した。次に、試料を最初の24時間、60RPMの振盪器で37℃でインキュベートし、次に、50℃で120時間、インキュベートした。24時間の間隔で、溶液をなんら撹拌することなく、試料1mLをバイアルから採取した。グラニセトロンの濃度を決定するため、各試料をHPLCによって分析した。各デポ剤からの累積薬物放出を計算し、表15−1に示す。
組成物は、少なくとも約3日間または少なくとも約4日間、グラニセトロンの放出をもたらした。トリアセチンを含まない組成物番号8026−14−03とトリアセチンを10%含む8026−14−04とを比較した場合に認められる通り、組成物の粘度を低下させるためにトリアセチンを追加しても、トリアセチンを含まない類似の組成物と比べて、グラニセトロンのin vitro放出に変化はなかった。トリアセチン組成物からのグラニセトロンの放出(25℃では17分の1の低い粘度を有した)は、トリアセチンを含まない類似の組成物によってもたらされるグラニセトロンの累積放出の10%以内であった。同様に、8026−14−01(トリアセチン不含)と8026−14−02(10重量%トリアセチンを含む)との比較により、25℃において粘度が7分の1低いトリアセチン含有組成物は、24時間、72時間および96時間の時間点において、トリアセチンを含まない組成物によってもたらされる放出の約15%以内の速度でグラニセトロンを放出したことが明白である。