JP6699990B2 - アルコール飲料の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アルコール飲料の製造方法に関する。
近年、ビール等の発泡性アルコール飲料において、プリン体含有量を低減することが望まれている(例えば、特許文献1)。
特開2003−169658号公報
麦芽を使用して製造される発泡性アルコール飲料のプリン体含有量を低減する方法の一つとしては、当該麦芽の使用量を低減することが考えられる。
しかしながら、従来、麦芽の使用量を低減した場合には、アルコール発酵において、酵母によるアルコールの生成を十分に行うことが難しかった。
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、プリン体量の増加を抑制しつつ、酵母による効果的なアルコールの生成を達成できるアルコール飲料の製造方法を提供することをその目的の一つとする。
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るアルコール飲料の製造方法は、炭素源及び窒素源を含む原料と水とを使用して発酵前液を調製すること、及び前記発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行うことを含むアルコール飲料の製造方法であって、前記原料の総量100重量%に対する麦芽の使用量は10重量%以下であり、前記発酵前液の調製において、ビタミンBを添加することを含むことを特徴とする。本発明によれば、プリン体量の増加を抑制しつつ、酵母による効果的なアルコールの生成を達成できるアルコール飲料の製造方法を提供することができる。
また、前記ビタミンBは、チアミン、ナイアシン及びパントテン酸からなる群より選択される1種以上であることとしてもよい。また、前記発酵前液の調製において、カリウム塩、マグネシウム塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上をさらに添加することとしてもよい。
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るアルコール飲料の製造方法は、炭素源及び窒素源を含む原料と水とを使用して発酵前液を調製すること、及び前記発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行うことを含むアルコール飲料の製造方法であって、前記原料の総量100重量%に対する麦芽の使用量は10重量%以下であり、前記発酵前液の調製において、カリウム塩、マグネシウム塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上を添加することを含むことを特徴とする。本発明によれば、プリン体量の増加を抑制しつつ、酵母による効果的なアルコールの生成を達成できるアルコール飲料の製造方法を提供することができる。
また、前記いずれかのアルコール飲料の製造方法において、アルコール含有量が0.5体積%以上の前記発酵前液を調製することとしてもよい。
本発明によれば、プリン体量の増加を抑制しつつ、酵母による効果的なアルコールの生成を達成できるアルコール飲料の製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る実施例1において、添加剤が酵母によるアルコールの生成に与える影響を評価した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る実施例2において、添加剤が酵母によるアルコールの生成に与える影響を評価した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る実施例3において、添加剤が酵母によるアルコールの生成に与える影響を評価した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る実施例4において、添加剤が酵母によるアルコールの生成に与える影響を評価した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る実施例5において、添加剤が酵母によるアルコールの生成に与える影響を評価した結果の一例を示す説明図である。
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法(以下、「本方法」という。)の一側面は、炭素源及び窒素源を含む原料と水とを使用して発酵前液を調製すること、及び当該発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行うことを含むアルコール飲料の製造方法であって、当該原料の総量100重量%に対する麦芽の使用量は10重量%以下であり、当該発酵前液の調製において、ビタミンBを添加することを含む。
また、本方法の他の側面は、炭素源及び窒素源を含む原料と水とを使用して発酵前液を調製すること、及び当該発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行うことを含むアルコール飲料の製造方法であって、当該原料の総量100重量%に対する麦芽の使用量は10重量%以下であり、当該発酵前液の調製において、カリウム塩、マグネシウム塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上を添加することを含む。
すなわち、本方法は、例えば、炭素源及び窒素源を含む原料と水とを使用して発酵前液を調製すること、及び当該発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行うことを含むアルコール飲料の製造方法であって、当該原料の総量100重量%に対する麦芽の使用量は10重量%以下であり、当該発酵前液の調製において、ビタミンB、カリウム塩、マグネシウム塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上を添加することを含むこととしてもよい。
発酵前液の原料に含まれる炭素源は、炭素原子を含む化合物であって酵母が資化できるものであれば、特に限られない。炭素源としては、例えば、酵母が資化できる糖類が好ましく使用される。具体的に、糖類としては、例えば、グルコース、フルクトース、シュクロース(ショ糖)、マルトース(麦芽糖)及びマルトトリオースからなる群より選択される1種以上が好ましく使用される。
発酵前液の原料に含まれる窒素源は、窒素原子を含む化合物であって酵母が資化できるものであれば、特に限られない。窒素源としては、例えば、アミノ酸及び/又はペプチドが好ましく使用される。より具体的に、例えば、タンパク質酵素分解物が好ましく使用される。
タンパク質酵素分解物は、タンパク質をタンパク質分解酵素により分解することにより調製された、アミノ酸及び/又はペプチドを含む組成物である。タンパク質は、特に限られないが、植物由来のタンパク質が好ましく使用される。植物由来のタンパク質は、当該植物の抽出により得られるタンパク質である。
具体的に、穀物由来タンパク質(例えば、小麦抽出物(例えば、小麦グルテン)、大麦抽出物、麦芽抽出物、米抽出物、コーン抽出物、ソルガム(コーリャン)抽出物))、豆類由来タンパク質(例えば、エンドウタンパク、大豆タンパク)、野菜由来タンパク質及び果実由来タンパク質からなる群より選択される1種以上を使用することとしてもよく、好ましくは穀物由来タンパク質及び/又は豆類由来タンパク質が使用される。
発酵前液の原料は、ホップを含むこととしてもよい。ホップとしては、生ホップ、プレスホップ、ホップパウダー、ホップペレット、ホップエキス、イソ化ホップ、ローホップ、テトラホップ及びヘキサホップからなる群より選択される1種以上が好ましく使用される。
プレスホップは、乾燥させたホップの球果を圧縮して得られる。ホップパウダーは、乾燥させたホップの球果を粉砕して得られる。ホップペレットは、ホップパウダーをペレット状に圧縮成形して得られる。ホップエキスは、ホップをエタノール又は炭酸ガスで抽出して得られる。
発酵前液の原料は、麦芽を含むこととしてもよい。この場合、麦芽に含まれる炭素源及び窒素源は、発酵前液の原料に含まれる炭素源及び窒素源の一部として使用される。麦芽としては、例えば、大麦麦芽及び/又は小麦麦芽が好ましく使用される。大麦麦芽は大麦を発芽させることにより得られる。小麦麦芽は小麦を発芽させることにより得られる。
ただし、本方法において、原料の総量100重量%に対する麦芽の使用量は10重量%以下(0重量%〜10重量%)である。すなわち、麦芽として大麦麦芽を使用する場合、原料の総量100重量%に対する当該大麦麦芽の使用量は10重量%以下である。麦芽として小麦麦芽を使用する場合、原料の総量100重量%に対する当該小麦麦芽の使用量は10重量%以下である。麦芽として大麦麦芽及び小麦麦芽を使用する場合、原料の総量100重量%に対する当該大麦麦芽の使用量と当該小麦麦芽の使用量との合計は10重量%以下である。
原料は、麦芽エキスを含むこととしてもよい。麦芽エキスは、麦芽の抽出により調製される、酵母が資化できる炭素源及び窒素源を含む組成物である。麦芽エキスとしては、市販の麦芽エキスを使用してもよい。本実施形態において、原料が麦芽エキスを含む場合、当該麦芽エキスに含まれるエキスの量が、原料の総量100重量%に対して10重量%以下の麦芽に含まれるエキスの量に相当する場合、当該原料の総量100重量%に対する麦芽の使用量は10重量%以下である。
原料の総量100重量%に対する麦芽の使用量は、5重量%以下であってもよく、1重量%以下であってもよく、0重量%(麦芽を使用しない)であってもよい。麦芽の使用量が少ないほど、プリン体の量を低減することができる。
しかしながら一方で、麦芽の使用量が少ない場合には、上述のとおり、アルコール発酵において、酵母によるアルコールの生成を十分に行うことが難しくなる。すなわち、発酵前液が十分な量の炭素源及び窒素源を含む場合であっても、当該発酵前液の調製に使用された麦芽の量が少ない場合(特に、麦芽の使用量が上述した閾値以下である場合)には、当該発酵前液に添加された酵母によるアルコールの生成が十分に行われない。
この点、本願発明の発明者らは、上記課題を解決する技術的手段について鋭意検討を重ねた結果、発酵前液の調製において、ビタミンB、カリウム塩、マグネシウム塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上を添加することにより、プリン体量の増加を抑制しつつ、酵母による効果的なアルコールの生成を達成できることを見出し、本願発明を完成するに至った。
本実施形態の一側面に係る本方法においては、発酵前液の調製において、ビタミンBを添加する。すなわち、発酵前液の原料に含まれる添加剤として、ビタミンBを使用する。
具体的には、ビタミンBを含む添加剤を添加する。この添加剤は、粉末状又は液状の組成物である。すなわち、ビタミンBの添加は、市販のビタミンBの粉末の添加により行ってもよいし、ビタミンBを水等の溶媒に溶解して調製した溶液の添加により行ってもよい。なお、ビタミンBの由来は特に限られず、植物由来ビタミンB(植物から得られたビタミンB)や動物由来ビタミンB(動物から得られたビタミンB)のような天然材料由来のビタミンBを使用してもよい。
ビタミンBとしては、チアミン、ナイアシン、パントテン酸、葉酸及びビオチンからなる群より選択される1種以上が好ましく使用される。チアミンとしては、チアミンの塩酸塩及び/又は硝酸塩が好ましく使用される。ナイアシンは、ニコチン酸及びニコチン酸アミドの総称である。したがって、ナイアシンとしては、ニコチン酸及び/又はニコチン酸アミドが使用される。パントテン酸としては、パントテン酸カルシウム及び/又はパントテン酸ナトリウムが好ましく使用される。ビタミンBとしては、特にチアミンが好ましく使用される。すなわち、本方法においては、発酵前液の調製において、チアミンを添加することが好ましい。
ビタミンBの添加量(2種以上を添加する場合には、各ビタミンBの添加量の合計)は、本実施形態における効果が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、5ppm以上であってもよく、10ppm以上であってもよく、30ppm以上であってもよく、50ppm以上であってもよく、70ppm以上であってもよく、100ppm以上であってもよい。ビタミンBの添加量の上限値は特に限られないが、例えば、当該添加量は、上記各下限値以上であって、1000ppm以下であってもよく、800ppm以下であってもよく、500ppm以下であってもよい。
チアミンを添加する場合、当該チアミンの添加量は、チアミン塩酸塩に換算して、10ppm以上であってもよく、30ppm以上であってもよく、50ppm以上であってもよく、70ppm以上であってもよく、100ppm以上であってもよい。チアミンの添加量の上限値は特に限られないが、例えば、当該添加量は、チアミン塩酸塩に換算して、上記各下限値以上であって、1000ppm以下であってもよく、800ppm以下であってもよく、500ppm以下であってもよい。
ナイアシンを添加する場合、当該チアミンの添加量は、5ppm以上であってもよく、10ppm以上であってもよく、30ppm以上であってもよく、50ppm以上であってもよい。ナイアシンの添加量の上限値は特に限られないが、例えば、当該添加量は、上記各下限値以上であって、500ppm以下であってもよく、300ppm以下であってもよく、100ppm以下であってもよい。
パントテン酸を添加する場合、当該パントテン酸の添加量は、パントテン酸カルシウムに換算して、1ppm以上であってもよく、5ppm以上であってもよく、10ppm以上であってもよい。パントテン酸の添加量の上限値は特に限られないが、例えば、当該添加量は、パントテン酸カルシウムに換算して、上記各下限値以上であって、100ppm以下であってもよく、70ppm以下であってもよく、50ppm以下であってもよい。
また、本実施形態の他の側面に係る本方法においては、発酵前液の調製において、カリウム塩、マグネシウム塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上を添加する。すなわち、発酵前液の原料に含まれる添加剤として、カリウム塩、マグネシウム塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上を使用する。
具体的には、カリウム塩、マグネシウム塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上を含む添加剤を添加する。この添加剤は、粉末状又は液状の組成物である。すなわち、例えば、カリウム塩の添加は、市販のカリウム塩の粉末の添加により行ってもよいし、カリウム塩を水等の溶媒に溶解して調製した溶液の添加により行ってもよい。
カリウム塩としては、酸性リン酸カリウム(リン酸二水素カリウム:KHPO)、硝酸カリウム(KNO)及びメタ重亜硫酸カリウム(K)からなる群より選択される1種以上が好ましく使用され、酸性リン酸カリウムが特に好ましく使用される。マグネシウム塩としては、硫酸マグネシウム(MgSO)及び/又は塩化マグネシウム(MgCl)が好ましく使用される。リン酸塩としては、酸性リン酸カリウム、酸性リン酸カルシウム(Ca(HPO及び/又はCaHPO)及びリン酸アンモニウムからなる群より選択される1種以上が好ましく使用される。
カリウム塩、マグネシウム塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上の添加量(2種以上を添加する場合には、各塩の添加量の合計)は、本実施形態における効果が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、50ppm以上であってもよく、100ppm以上であってもよく、200ppm以上であってもよい。
カリウム塩、マグネシウム塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上の添加量の上限値は特に限られないが、例えば、当該添加量は、上記各下限値以上であって、10000ppm以下であってもよく、8000ppm以下であってもよく、5000ppm以下であってもよく、3000ppm以下であってもよく、2000ppm以下であってもよい。
カリウム塩を添加する場合、当該カリウム塩の添加量は、リン酸二水素カリウムに換算して、500ppm以上であってもよく、800ppm以上であってもよく、1000ppm以上であってもよく、1200ppm以上であってもよく、1500ppm以上であってもよい。カリウム塩の添加量の上限値は特に限られないが、例えば、当該添加量は、リン酸二水素カリウムに換算して、上記各下限値以上であって、5000ppm以下であってもよく、3000ppm以下であってもよく、2000ppm以下であってもよい。
マグネシウム塩を添加する場合、当該マグネシウム塩の添加量は、硫酸マグネシウムに換算して、50ppm以上であってもよく、100ppm以上であってもよく、150ppm以上であってもよく、200ppm以上であってもよく、250ppm以上であってもよい。マグネシウム塩の添加量の上限値は特に限られないが、例えば、当該添加量は、硫酸マグネシウムに換算して、上記各下限値以上であって、2000ppm以下であってもよく、1500ppm以下であってもよく、1000ppm以下であってもよく、500ppm以下であってもよい。
リン酸塩を添加する場合、当該リン酸塩の添加量は、リン酸二水素カリウムに換算して、500ppm以上であってもよく、800ppm以上であってもよく、1000ppm以上であってもよく、1200ppm以上であってもよく、1500ppm以上であってもよい。リン酸塩の添加量の上限値は特に限られないが、例えば、当該添加量は、リン酸二水素カリウムに換算して、上記各下限値以上であって、5000ppm以下であってもよく、3000ppm以下であってもよく、2000ppm以下であってもよい。
なお、例えば、リン酸二水素カリウムのように、カリウム塩であって、且つリン酸塩である成分を添加する場合、当該リン酸二水素カリウムの添加量は、当該カリウム塩の添加量と当該リン酸塩の添加量との合計となる。
また、発酵前液の調製において、ビタミンBと、カリウム塩、マグネシウム塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上と、を添加することとしてもよい。すなわち、例えば、上述した範囲の添加量のビタミンBと、上述した範囲の添加量のカリウム塩、マグネシウム塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上と、を添加して発酵前液を調製する。
具体的に、発酵前液の調製において、チアミン、ナイアシン及びパントテン酸からなる群より選択される1種以上と、カリウム塩、マグネシウム塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上と、を添加してもよい。
より具体的に、例えば、チアミンと、カリウム塩、マグネシウム塩及びリン酸塩と、を添加してもよい。この場合、例えば、チアミン塩酸塩に換算して10ppm〜1000ppmの範囲(又は上述したいずれかの下限値といずれかの上限値との組み合わせで規定される範囲)内の量のチアミンと、合計がリン酸二水素カリウムに換算して500ppm〜5000ppmの範囲(又は上述したいずれかの下限値といずれかの上限値との組み合わせで規定される範囲)の量のカリウム塩及びリン酸塩と、硫酸マグネシウムに換算して50ppm〜2000ppmの範囲(又は上述したいずれかの下限値といずれかの上限値との組み合わせで規定される範囲)の量のマグネシウム塩と、を添加してもよい。
また、例えば、チアミン及びナイアシンと、カリウム塩、マグネシウム塩及びリン酸塩と、を添加してもよい。この場合、例えば、チアミン塩酸塩に換算して10ppm〜1000ppmの範囲(又は上述したいずれかの下限値といずれかの上限値との組み合わせで規定される範囲)内の量のチアミンと、5ppm〜500ppmの範囲(又は上述したいずれかの下限値といずれかの上限値との組み合わせで規定される範囲)内の量のナイアシンと、合計がリン酸二水素カリウムに換算して500ppm〜5000ppmの範囲(又は上述したいずれかの下限値といずれかの上限値との組み合わせで規定される範囲)の量のカリウム塩及びリン酸塩と、硫酸マグネシウムに換算して50ppm〜2000ppmの範囲(又は上述したいずれかの下限値といずれかの上限値との組み合わせで規定される範囲)の量のマグネシウム塩と、を添加してもよい。
また、例えば、チアミン、ナイアシン及びパントテン酸と、カリウム塩、マグネシウム塩及びリン酸塩と、を添加してもよい。この場合、例えば、チアミン塩酸塩に換算して10ppm〜1000ppmの範囲(又は上述したいずれかの下限値といずれかの上限値との組み合わせで規定される範囲)内の量のチアミンと、5ppm〜500ppmの範囲(又は上述したいずれかの下限値といずれかの上限値との組み合わせで規定される範囲)内の量のナイアシンと、パントテン酸カルシウムに換算して1ppm〜100ppmの範囲(又は上述したいずれかの下限値といずれかの上限値との組み合わせで規定される範囲)内の量のパントテン酸と、合計がリン酸二水素カリウムに換算して500ppm〜5000ppmの範囲(又は上述したいずれかの下限値といずれかの上限値との組み合わせで規定される範囲)の量のカリウム塩及びリン酸塩と、硫酸マグネシウムに換算して50ppm〜2000ppmの範囲(又は上述したいずれかの下限値といずれかの上限値との組み合わせで規定される範囲)の量のマグネシウム塩とを添加してもよい。
発酵前液の調製は原料と水(好ましくは湯)とを混合することにより行う。原料が麦芽を含む場合、糖化を行って発酵前液を調製してもよい。すなわち、この場合、麦芽を含む原料の一部又は全部と、水とを混合し、得られた混合液の糖化を行う。糖化は、例えば、麦芽及び水を含む混合液を、当該麦芽に含まれる消化酵素(例えば、デンプン分解酵素、タンパク質分解酵素)が働く温度(例えば、30〜80℃)に維持することにより行う。
原料がホップを含む場合、当該ホップを含む原料の一部又は全部と、水とを混合して得られた混合液を煮沸して、発酵前液を調製してもよい。原料が麦芽及びホップを含む場合、まず麦芽を含む原料の一部と水とを混合し、得られた混合液にホップを添加し、煮沸することにより発酵前液を調製してもよい。また、麦芽を含む原料の一部と水とを混合し、糖化を行い、その後、ホップを添加して煮沸することにより発酵前液を調製してもよい。
上述したビタミンB、及び/又はカリウム塩、マグネシウム塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上を添加するタイミングは、発酵前液を調製する過程であれば特に限られず、例えば、原料に含まれる炭素源及び窒素源の一部又は全部と水との混合時であってもよいし、原料が麦芽を含み、糖化を行う場合には、当該糖化の工程中であってもよいし、原料がホップを含み、当該ホップを添加して煮沸を行う場合には、当該煮沸の工程中であってもよい。
また、本方法においては、アルコール含有量が0.5体積%以上の発酵前液を調製することとしてもよい。すなわち、この場合、炭素源及び窒素源を含む原料と、アルコールと、水とを使用して、アルコール含有量が0.5体積%以上の発酵前液を調製する。
具体的に、炭素源及び窒素源を含む原料と、発酵前液のアルコール含有量が0.5体積%以上の所定値となる量のアルコールと、水とを使用して、アルコール含有量が当該所定値の発酵前液を調製する。調製される発酵前液のアルコール含有量は、0.5体積%以上であれば特に限られないが、1.0体積%以上であってもよく、1.4体積%以上であってもよい。また、調製される発酵前液のアルコール含有量は、10.0体積%以下であってもよく、9.0体積%以下であってもよく、8.0体積%以下であってもよく、5.0体積%以下であってもよく、4.0体積%以下であってもよい。より具体的に、アルコール含有量が0.5体積%〜10体積%、0.5体積%〜9.0体積%、1.0体積%〜8.0体積%、1.0体積%〜5.0体積%、又は1.4体積%〜5.0体積%の発酵前液を調製することとしてもよい。
また、アルコール含有量が0.5体積%以上であって、アルコール発酵において酵母により生成される量より多い量のアルコールを含む発酵前液を調製することとしてもよい。すなわち、例えば、アルコール発酵において酵母により生成されるアルコールの量が1.5体積%である場合(例えば、発酵前液が、理論的に当該1.5体積%のアルコールに変換される量の糖類を含む場合)には、1.5体積%より多い量のアルコールを含む発酵前液(例えば、アルコール含有量が2体積%又は3体積%の発酵前液)を調製してもよい。
発酵前液の調製に使用するアルコールは、特に限られないが、例えば、蒸留酒が好ましく使用される。蒸留酒は、例えば、蒸留により得られる、アルコール濃度が45体積%以上(例えば、45体積%以上、95体積%未満)、又は80体積%以上(例えば、80体積%以上、95体積%未満)のアルコール溶液である。具体的に、蒸留酒は、例えば、ウォッカ、ブランデー、焼酎、原料用アルコール及びスピリッツからなる群より選択される1種以上である。なお、原料用アルコールは、例えば、蒸留により得られる、アルコール濃度が45体積%以上のアルコール溶液である。
アルコール含有量が0.5体積%以上の発酵前液を調製することにより、本方法で最終的に製造されるアルコール飲料のアルコール濃度を効果的に高めることができる。また、アルコール発酵後にアルコールを添加する場合に比べて、本方法で最終的に製造されるアルコール飲料の香味を効果的に向上させることができる。具体的に、例えば、アルコール発酵前に蒸留酒を使用してアルコール含有量が0.5体積%以上の発酵前液を調製する場合には、当該蒸留酒をアルコール発酵後に添加する場合に比べて、蒸留により得られるアルコールを希釈した場合に感じられるアルコール特有の刺激(ピリピリ感)が和らげられる。
そして、本方法においては、上述のようにして調製した発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う。アルコール発酵は、発酵前液に酵母(例えば、ビール酵母)を添加することにより開始する。具体的に、アルコール発酵は、例えば、発酵前液に酵母を添加して調製された発酵液を所定の温度(例えば、0〜40℃)で所定の時間(例えば、1〜14日)維持することにより行う。発酵開始時の発酵液における酵母の密度は特に限られず、例えば、1×10個/mL〜3×10個/mLであることとしてもよい。
また、アルコール発酵に続いて、熟成を行うこととしてもよい。すなわち、この場合、アルコール発酵を行い、さらに熟成を行って、アルコール飲料を製造する。熟成は、アルコール発酵後の発酵液をさらに所定の温度で所定の時間だけ維持することにより行う。
本方法において、アルコール含有量が0.5体積%以上の発酵前液を調製する場合、当該アルコール含有量が0.5体積%以上の発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う。この場合、アルコール発酵後に得られる発酵液は、発酵前液への酵母の添加前に含まれていたアルコールと、当該アルコール発酵中に酵母により生成されたアルコールとを含むこととなる。
ここで、アルコール発酵において酵母により生成されるアルコールの量は、0.1体積%以上であってもよく、0.5体積%以上であることが好ましく、1.0体積%以上であることがより好ましい。また、アルコール発酵において酵母により生成されるアルコールの量は、10.0体積%以下であってもよく、5.0体積%以下であることが好ましく、4.0体積%以下であることがより好ましい。
具体的に、アルコール発酵において酵母により生成されるアルコールの量は、0.1体積%以上、10.0体積%以下であってもよく、0.5体積%以上、5.0体積%以下であることが好ましく、1.0体積%以上、4.0体積%以下であることがより好ましい。
また、本方法においては、「調製された発酵前液のアルコール含有量(アルコール発酵前の発酵前液のアルコール含有量)(体積%):アルコール発酵において酵母により生成されるアルコールの量(体積%)」の比は、「1:100」〜「100:1」であってもよく、「1:50」〜「50:1」であってもよく、「1:10」〜「10:1」であることが好ましく、「1:5」〜「5:1」であることがより好ましい。なお、本方法においては、アルコール発酵後にはアルコールを添加しないこととしてもよいが、これに限られず、アルコール発酵後、さらにアルコールを添加することとしてもよい。
本方法においては、上述のようにビタミンB、及び/又はカリウム塩、マグネシウム塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上を添加して調製された発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行うことにより、当該発酵前液の原料の総量100重量%に対する麦芽の使用量が10重量%以下であるにもかかわらず、当該ビタミンB、及びカリウム塩、マグネシウム塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上を添加することなく調製された発酵前液を使用する場合に比べて、酵母によるアルコールの生成を効果的に促進することができる。
また、従来、発酵前液の原料に含まれる麦芽の使用量が小さい場合には、酵母による糖類のアルコールへの変換が十分に行われず、その結果、最終的に製造されるアルコール飲料に過剰量の糖類が残ってしまうという問題があった。
この点、本方法によれば、酵母によるアルコールの生成において、当該酵母により糖類が効果的に消費されるため、最終的に製造されるアルコール飲料に残存する糖類の量を効果的に低減することができる。
本方法において製造されるアルコール飲料は、アルコールの含有量が1.0体積%以上(アルコール分が1度以上)の飲料である。アルコール飲料のアルコール含有量は、1.0体積%以上であれば特に限られないが、例えば、2.0体積%以上であってもよく、3.0体積%以上であってもよい。より具体的に、アルコール飲料のアルコール含有量は、例えば、1.0体積%〜20体積%であってもよく、2.0体積%〜20体積%であってもよく、3.0体積%〜20体積%であってもよい。また、これらの場合、アルコール飲料のアルコール含有量は、10.0体積%以下であってもよく、7.0体積%以下であってもよく、6.0体積%以下であってもよい。具体的に、アルコール飲料のアルコール含有量は、例えば、1.0体積%〜10.0体積%であってもよく、2.0体積%〜7.0体積%であってもよく、2.0体積%〜6.0体積%であってもよく、3.0体積%〜6.0体積%であってもよい。
本方法においては、プリン体含有量が小さいアルコール飲料を効果的に製造することができる。すなわち、本方法においては、例えば、プリン体含有量が0.5mg/100mL未満のアルコール飲料を製造することができる。ここで、本実施形態において、プリン体含有量とは、アデニン含有量、グアニン含有量、ヒポキサンチン含有量、及びキサンチン含有量の合計である。このプリン体含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定される。
また、本方法においては、上述のとおり、アルコール発酵において残存する糖類の量が効果的に低減される結果、糖質の含有量が効果的に低減されたアルコール飲料を製造することができる。すなわち、本方法においては、例えば、糖質の含有量が0.5g/100mL未満のアルコール飲料製造することができる。
したがって、本方法においては、プリン体含有量が0.5mg/100mL未満であって、且つ糖質の含有量が0.5g/100mL未満のアルコール飲料を製造することもできる。また、本方法においては、プリン体含有量が0.5mg/100mL未満であって、且つ糖質の含有量が0.5g/100mL未満である、アルコール含有量が1.0体積%〜10.0体積%のアルコール飲料を製造することもできる。より具体的に、本方法においては、プリン体含有量が0.2mg/100mL以上、0.5mg/100mL未満であって、且つ糖質の含有量が0.2g/100mL以上、0.5g/100mL未満である、アルコール含有量が1.0体積%以上、10.0体積%以下のアルコール飲料を製造することとしてもよい。
本方法においては、アルコール飲料として、発泡性アルコール飲料を製造することとしてもよい。発泡性アルコール飲料は、泡立ち特性及び泡持ち特性を含む泡特性を有するアルコール飲料である。すなわち、発泡性アルコール飲料は、例えば、炭酸ガスを含有するアルコール飲料であって、グラス等の容器に注いだ際に液面上部に泡の層が形成される泡立ち特性と、その形成された泡が一定時間以上保たれる泡持ち特性とを有するアルコール飲料である。
本方法によって製造されるアルコール飲料は、容器に充填されていてもよい。ここで使用される容器は、アルコール飲料を収容できるものであれば特に限られないが、例えば、金属缶、瓶、樽、及びポリエチレンテレフタレートを主成分とする材料で成形された容器(例えば、いわゆるPETボトル)からなる群より選択されることとしてもよい。また、本方法においては、アルコール飲料と、当該アルコール飲料が充填された上記容器とを含むアルコール飲料製品を製造することとしてもよい。
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
[アルコール飲料の製造]
麦芽を使用することなく、炭素源としてのショ糖、窒素源としての小麦タンパク分解物、ホップエキストラクト、及び添加剤としてのチアミン塩酸塩を含む原料と、水とを使用し、さらに調製後のアルコール濃度が3.81体積%となる量の原料用アルコール(アルコール含有量65.5体積%)を配合して、150mLの発酵前液を調製した。
ショ糖としては、その全量が酵母によってアルコール(エタノール)に変換された場合には1.5体積%又は3.0体積%のアルコールが生成されると理論的に計算される量(3.9g又は7.8g)のグラニュー糖を使用した。小麦タンパク分解物としては、市販の小麦グルテンをタンパク質分解酵素で分解することにより調製された組成物を、発酵前液中の濃度が400ppmとなる量で使用した。ホップエキストラクトは、市販のものを0.075g使用した。チアミン塩酸塩としては、市販のものを、発酵前液中の濃度が100ppmとなる量で使用した。
次いで、上述のようにして調製された発酵前液にビール酵母を添加して、20℃にて4日間、アルコール発酵を行った。そして、アルコール発酵後の発酵液をろ過し、発泡性アルコール飲料を得た。
[アルコール含有量の測定]
製造されたアルコール飲料の15℃におけるアルコール含有量(体積%)を、文献「改訂 BCOJビール分析法 2013年増補改訂(編集:ビール酒造組合 国際技術委員会(分析委員会)、発行所:公益財団法人日本醸造協会)」の「8.3 アルコール」の「8.3.6 アルコライザー法」に記載の方法に従い、測定した。
[真性エキスの測定]
製造されたアルコール飲料の15℃における真性エキス(%)を、文献「改訂 BCOJビール分析法 2013年増補改訂(編集:ビール酒造組合 国際技術委員会(分析委員会)、発行所:公益財団法人日本醸造協会)」の「8.4 真性エキス」の「8.4.3 アルコライザー法」に記載の方法に従い、測定した。
[プリン体含有量の測定]
製造されたアルコール飲料のプリン体含有量(mg/100mL)を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。すなわち、文献「Biomedical Chromatography,2009;23(8):p.858−864」の記載に従い、次の装置及び条件で測定し、プリン体の含有量を算出した。装置:HP1100(アジレントテクノロジー社)、カラム:ShodexAsahipakGS−320HQ(7mmI.D.×300mm)、移動相:150mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH2.5)、流量:0.6mL/min、カラム温度:35℃、検出:UV 260nm。
[結果]
図1には、目標とするアルコール(Alc)生成量が1.5体積%であった(酵母により1.5体積%のアルコールが生成されると理論的に計算される量のショ糖を炭素源として使用した)例1A−1〜例1A−4、及び目標とするアルコール生成量が3.0体積%であった例1B−1〜例1B−4のそれぞれについて、窒素源として使用された小麦タンパク分解物の量、添加剤として使用されたチアミン塩酸塩の量、アルコール発酵(20℃)の日数、製造されたアルコール飲料のアルコール含有量(「総Alc含有量」)、アルコール発酵中に酵母により生成されたアルコール量(「Alc生成量」)、真性エキス、及びプリン体含有量を示す。
ここで、図1の「Alc生成量(体積%)」は、アルコライザーにより測定されたアルコール飲料のアルコール含有量(「総Alc含有量(体積%)」)から上述の「3.81体積%」を差し引いて算出した。図1における「−」は、窒素源又は添加剤が使用されなかったこと、又はプリン体含有量を測定しなかったことを示す。
図1に示すように、窒素源及び添加剤を使用しなかった例1A−1及び例1B−1では、酵母によるアルコール生成量(「Alc生成量」)は極めて低かった(それぞれ0.52体積%及び0.57体積%)。
これに対し、窒素源及び添加剤(チアミン塩酸塩)を使用した例1A−4及び例1B−4における酵母によるアルコール生成量(「Alc生成量」)は、上述の例1A−1及び例1B−1のそれに比べて顕著に大きく、また、当該窒素源及び添加剤の一方のみを使用した例1A−2、例1A−3、例1B−2及び例1B−3のそれに比べても、十分に大きかった。
一方で、市販の麦芽100%ビールのプリン体含有量は一般に8mg/100mL〜12mg/100mL程度であるが、窒素源及び添加剤を使用した例1A−4及び例1B−4においては、原料に由来するプリン体の量が低減されていることにより、アルコール飲料のプリン体含有量の増加が効果的に抑制された。
[アルコール飲料の製造]
小麦タンパク分解物及びチアミン塩酸塩を異なる量で使用したこと、及びアルコール発酵を15℃で3日間又は7日間行ったこと以外は、上述の実施例1と同様にして、アルコール飲料を製造した。そして、上述の実施例1と同様にして、製造されたアルコール飲料のアルコール含有量、真性エキス、及びプリン体含有量を測定した。
[結果]
図2には、上述の図1と同様、アルコール飲料の製造条件が異なる例2−1〜例2−12のそれぞれについて、当該製造条件と、アルコール飲料のアルコールの総含有量及び酵母による生成量、真性エキス、及びプリン体含有量とを示す。
図2に示すように、窒素源及び添加剤(チアミン塩酸塩)を使用して発酵前液を調製することにより(例2−2〜例2−6、例2−8〜例2−12)、当該窒素源及び添加剤を使用しなかった例2−1及び例2−7に比べて、顕著に大きな量のアルコールが酵母により生成された。
また、窒素源及び添加剤の使用量が増加するにつれて、酵母によるアルコール生成量も増加する傾向があったが、その増加は、上述の実施例1において窒素源及び添加剤を使用しなかった場合と使用した場合との比較で示されたほど顕著なものではなかった。一方で、窒素源及び添加剤を使用した例においても、アルコール飲料のプリン体含有量の増加は効果的に抑制されていたが、発酵日数の増加に伴い、プリン体含有量は、やや増加する傾向にあった。
[アルコール飲料の製造]
チアミン塩酸塩に加えて、他の添加剤を使用したこと、調製後のアルコール濃度が1.48体積%となる量の原料用アルコールを使用したこと、及びアルコール発酵を15℃で3日間又は5日間行ったこと以外は、上述の実施例1と同様にして、アルコール飲料を製造した。そして、上述の実施例1と同様にして、製造されたアルコール飲料のアルコール含有量、真性エキス、及びプリン体含有量を測定した。
[結果]
図3には、上述の図1と同様、アルコール飲料の製造条件が異なる例3−1〜例3−10のそれぞれについて、当該製造条件と、アルコール飲料のアルコールの総含有量及び酵母による生成量、真性エキス、及びプリン体含有量とを示す。
図3に示すように、チアミン塩酸塩及び硫酸マグネシウムを使用して発酵前液を調製した例3−2における酵母によるアルコール生成量は、上述の実施例2において当該チアミン塩酸塩のみを使用した例2−2(図2参照)のそれに比べて大きかった。
また、チアミン塩酸塩、硫酸マグネシウム及びリン酸二水素カリウムを使用して発酵前液を調製した例3−3及び例3−8における酵母によるアルコール生成量は、当該チアミン塩酸塩及び硫酸マグネシウムのみを使用した例3−2及び例3−7のそれに比べて、さらに大きかった。
一方、チアミン塩酸塩、硫酸マグネシウム、パントテン酸カルシウム及びナイアシンを使用して発酵前液を調製した例3−4及び例3−9における酵母によるアルコール生成量は、当該チアミン塩酸塩及び硫酸マグネシウムのみを使用した例3−2及び例3−7のそれと同程度であった。
また、チアミン塩酸塩、硫酸マグネシウム、リン酸二水素カリウム、パントテン酸カルシウム及びナイアシンを使用して発酵前液を調製した例3−5及び例3−10における酵母によるアルコール生成量は、当該チアミン塩酸塩、硫酸マグネシウム及びリン酸二水素カリウムのみを使用した例3−3及び例3−8のそれと同程度であった。
一方、同じ5日間の発酵を行った例3−7、例3−8、例3−10のプリン体含有量を比較すると、チアミン塩酸塩及び硫酸マグネシウムのみを使用した例3−7、さらにリン酸二水素カリウムを使用した例3−8、及びさらにリン酸二水素カリウム、パントテン酸カルシウム及びナイアシンを使用した例3−10、の順にプリン体含有量の増加が抑制されていた。
[アルコール飲料の製造]
例4A−1〜例4A−4では、チアミン塩酸塩に加えて、他の添加剤を使用したこと、調製後のアルコール濃度が1.56体積%となる量の原料用アルコールを使用したこと、及びアルコール発酵を15℃で5日間又は7日間行ったこと以外は、上述の実施例1と同様にして、アルコール飲料を製造した。
例4B−1〜例4B−4では、チアミン塩酸塩に加えて、他の添加剤を使用したこと、原料用アルコールを使用しなかったこと、及びアルコール発酵を15℃で7日間、8日間又は11日間行ったこと以外は、上述の実施例1と同様にして、アルコール飲料を製造した。そして、上述の実施例1と同様にして、製造されたアルコール飲料のアルコール含有量、真性エキス、及びプリン体含有量を測定した。
[結果]
図4には、上述の図1と同様、アルコール飲料の製造条件が異なる例4A−1〜例4A−4、及び例4B−1〜例4B−4のそれぞれについて、当該製造条件と、アルコール飲料のアルコールの総含有量及び酵母による生成量、真性エキス、及びプリン体含有量とを示す。
なお、図4において、「リン酸二水素ナトリウム」についての「相当量」は、1500ppmのリン酸二水素カリウムに含まれるリン酸の量に相当する量のリン酸を含む量の当該リン酸二水素ナトリウムを使用したことを示し、「硝酸カリウム」についての「相当量」は、1500ppmのリン酸二水素カリウムに含まれるカリウムの量に相当する量のカリウムを含む量の当該硝酸カリウムを使用したことを示す。
図4に示すように、チアミン塩酸塩、硫酸マグネシウム及び硝酸カリウムを使用した例4A−3における酵母によるアルコール生成量は、当該硝酸カリウムに代えてリン酸二水素カリウムを使用した例4A−1のそれと同等であった。また、これら例4A−1及び例4A−3においては、酵母によって目標値と同等の量のアルコールを生成することができた。
一方、チアミン塩酸塩、硫酸マグネシウム及びリン酸二水素ナトリウムを使用して発酵前液を調製した例4A−2における酵母によるアルコール生成量は、当該硝酸カリウムに代えてリン酸二水素カリウムを使用した例4A−1のそれより小さかった。
また、添加剤としてチアミン塩酸塩及び硫酸マグネシウムを使用して、アルコール発酵を7日間行った例4A−4における酵母によるアルコール生成量は、当該硫酸マグネシウム及びチアミン塩酸塩に加えてリン酸二水素カリウム又は硝酸カリウムを使用してアルコール発酵を5日間行った例4A−1及び例4A−3のそれよりも小さかった。
また、原料用アルコールを使用することなく発酵前液を調製した例4B−1〜例4B−4については、チアミン塩酸塩及び硫酸マグネシウムに加えてリン酸二水素カリウムを使用した例4B−3及び例4B−4における酵母によるアルコール生成量は、当該チアミン塩酸塩及び硫酸マグネシウムのみを使用した例4B−1及び例4B−2のそれよりも大きかった。また、例4B−2〜例4B−4においては、酵母によって目標値と同等の量のアルコールを生成することができた。
[アルコール飲料の製造]
例5A−1〜例5A−6では、チアミン塩酸塩に加えて、他の添加剤を使用したこと、調製後のアルコール濃度が1.49体積%となる量の原料用アルコールを使用したこと、及びアルコール発酵を15℃で3日間又は6日間行ったこと以外は、上述の実施例1と同様にして、アルコール飲料を製造した。
例5B−1では、チアミン塩酸塩に加えて、他の添加剤を使用したこと、原料用アルコールを使用しなかったこと、及びアルコール発酵を15℃で6日間行ったこと以外は、上述の実施例1と同様にして、アルコール飲料を製造した。そして、上述の実施例1と同様にして、製造されたアルコール飲料のアルコール含有量、真性エキス、及びプリン体含有量を測定した。
[結果]
図5には、上述の図1と同様、アルコール飲料の製造条件が異なる例5A−1〜例5A−6、及び例5B−1のそれぞれについて、当該製造条件と、アルコール飲料のアルコールの総含有量及び酵母による生成量、真性エキス、及びプリン体含有量とを示す。
図5に示すように、チアミン塩酸塩、硫酸マグネシウム、リン酸二水素カリウム及びナイアシンを使用して発酵前液を調製し、アルコール発酵を3日間行った例5A−1における酵母によるアルコール生成量は、硫酸マグネシウムを使用せずチアミン塩酸塩、リン酸二水素カリウム及びナイアシンを使用した例5A−2、及びナイアシンを使用せずチアミン塩酸塩、硫酸マグネシウム及びリン酸二水素カリウムを使用した例5A−3のそれより大きかった。
同様に、チアミン塩酸塩、硫酸マグネシウム、リン酸二水素カリウム及びナイアシンを使用して発酵前液を調製し、アルコール発酵を6日間行った例5A−4における酵母によるアルコール生成量は、硫酸マグネシウムを使用せず当該チアミン塩酸塩、リン酸二水素カリウム及びナイアシンを使用した例5A−5、及びナイアシンを使用せずチアミン塩酸塩、硫酸マグネシウム及びリン酸二水素カリウムを使用した例5A−6のそれより僅かに大きかった。また、これら例5A−5〜例5A−6においては、酵母によって目標値と同等の量のアルコールを生成することができた。
一方、チアミン塩酸塩、硫酸マグネシウム、リン酸二水素カリウム及びナイアシンを使用して発酵前液を調製し、アルコール発酵を6日間行った例5A−4のプリン体含有量は、硫酸マグネシウムを使用せず当該チアミン塩酸塩、リン酸二水素カリウム及びナイアシンを使用した例5A−5、及びナイアシンを使用せずチアミン塩酸塩、硫酸マグネシウム及びリン酸二水素カリウムを使用した例5A−6のそれより低く抑制されていた。
また、原料用アルコールを使用することなく、チアミン塩酸塩、硫酸マグネシウム、リン酸二水素カリウム及びナイアシンを使用して発酵前液を調製し、アルコール発酵を6日間行った例5B−1においては、酵母によって目標値と同等の量のアルコールを生成することができた。
また、原料用アルコールを使用することなく、チアミン塩酸塩、硫酸マグネシウム、リン酸二水素カリウム及びナイアシンを使用して発酵前液を調製し、アルコール発酵を6日間行った例5B−1のプリン体含有量は、上述の実施例4において原料用アルコールを使用することなく、チアミン塩酸塩、硫酸マグネシウム及びリン酸二水素カリウムを使用して発酵前液を調製し、アルコール発酵を8日間行った例4B−4のそれより抑制されていた。

Claims (4)

  1. 炭素源及び窒素源を含む原料と水とを使用して発酵前液を調製すること、及び前記発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行うことを含むアルコール飲料の製造方法であって、
    前記原料の総量100重量%に対する麦芽の使用量は10重量%以下であり、
    前記発酵前液の調製において、リン酸二水素カリウムに換算して1200ppm以上のカリウム塩、及びチアミン塩酸塩に換算して50ppm以上のチアミンを添加することを含む
    ことを特徴とするアルコール飲料の製造方法。
  2. 前記発酵前液の調製において、ナイアシン及びパントテン酸からなる群より選択される1種以上をさらに添加する
    ことを特徴とする請求項に記載のアルコール飲料の製造方法。
  3. 前記発酵前液の調製において、マグネシウム塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上をさらに添加する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアルコール飲料の製造方法。
  4. アルコール含有量が0.5体積%以上の前記発酵前液を調製する
    ことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のアルコール飲料の製造方法。
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