以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。実施形態としては、1台の室外機に複数台の室内機が冷媒配管で並列に接続され、全ての室内機で同時に冷房運転あるいは暖房運転が行える空気調和装置を例に挙げて説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
図1(A)に示すように、本実施形態における空気調和装置1は、1台の室外機2に6台の室内機5が、室内機5の台数と同じ6本の液管8および6本のガス管9で並列に接続されている。具体的には、6本の液管8の各々の一端と室外機2に設けられる6個の液側閉鎖弁27が接続され、6本の液管8の各々の他端と6台の室内機5の液管接続部52が接続されている。また、6本のガス管9の各々の一端と室外機2に設けられる6個のガス側閉鎖弁28が接続され、6本のガス管9の各々の他端と6台の室内機5のガス管接続部53が接続されている。このように、室外機2と6台の室内機5が6本の液管8および6本のガス管9で接続されて、空気調和装置1の冷媒回路10が構成されている。尚、図1(A)では、6台の室内機5、6本の液管8、6本のガス管9、6個の液側閉鎖弁27、および、6個のガス側閉鎖弁28については、各々3つのみ描画している。
室外機2は、圧縮機21と、四方弁22と、室外熱交換器23と、6個の膨張弁24と、アキュムレータ25と、室外ファン26と、上述した6個の液側閉鎖弁27および6個のガス側閉鎖弁28と、室外機制御手段200を備えている。そして、室外ファン26および室外機制御手段200を除くこれら各装置が、以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室外機冷媒回路20を構成している。尚、図1(A)では、6個の膨張弁24は3個のみ描画している。
圧縮機21は、インバータにより回転数が制御される図示しないモータによって駆動されることで運転容量を可変できる能力可変型圧縮機である。圧縮機21の冷媒吐出口と四方弁22のポートaが吐出管41で接続されている。また、圧縮機21の冷媒吸入側とアキュムレータ25の冷媒流出側が吸入管42で接続されている。
四方弁22は、冷媒の流れる方向を切り換えるための弁であり、a、b、c、dの4つのポートを備えている。上述したように、ポートaと圧縮機21の冷媒吐出口が吐出管41で接続されている。ポートbと室外熱交換器23の一方の冷媒出入口が冷媒配管43で接続されている。ポートcとアキュムレータ25の冷媒流入側が冷媒配管46で接続されている。そして、ポートdには室外機ガス管45の一端が接続されている。室外機ガス管45の他端には、6本の室外機ガス分管45a(図1(A)では、このうち3本を描画)の各々の一端が接続されており、6本の室外機ガス分管45aの各々の他端は、6個のガス側閉鎖弁28に接続されている。
室外熱交換器23は、室外ファン26の回転により図示しない吸込口から室外機2の内部に取り込まれた外気と冷媒を熱交換させる。上述したように、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口と四方弁22のポートbが冷媒配管43で接続されている。また、室外熱交換器23の他方の冷媒出入口には室外機液管44の一端が接続されている。室外熱交換器23は、冷媒回路10が冷房サイクルとなる場合は凝縮器として機能し、冷媒回路10が暖房サイクルとなる場合は蒸発器として機能する。
室外機液管44の他端には、6本の室外機液分管44a(図1(A)では、このうち3本を描画)の各々の一端が接続され、6本の室外機液分管44aの各々の他端は6個の液側閉鎖弁27に接続されている。そして、各室外機液分管44aには、膨張弁24が設けられている。これら6個の膨張弁24は、全て室外機制御手段200によりその開度が制御される。各膨張弁24の開度を制御することによって、各膨張弁24に接続される6台の室内機5に流れる冷媒量が調整される。6個の膨張弁24は、図示しないパルスモータにより駆動される電子膨張弁であり、パルスモータに与えられるパルス数によって開度が調整される。
アキュムレータ25は、上述したように、冷媒流入側と四方弁22のポートcが冷媒配管46で接続され、冷媒流出側と圧縮機21の冷媒吸入口が吸入管42で接続されている。アキュムレータ25は、流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離し、ガス冷媒のみを吸入管42を介して圧縮機21に吸入させる。
室外ファン26は、室外熱交換器23の近傍に配置される樹脂材で形成されたプロペラファンであり、図示しないファンモータによって室外ファン26が回転することで、室外機2に設けられた図示しない吸込口から室外機2の内部に外気を取り込み、室外熱交換器23を流れる冷媒と熱交換した外気を室外機2に設けられた図示しない吹出口から室外機2の外部へ放出する。
以上説明した構成の他に、室外機2には各種のセンサが設けられている。図1(A)に示すように、吐出管41には、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力である吐出圧力を検出する高圧センサ31と、圧縮機21から吐出される冷媒の温度である吐出温度を検出する吐出温度センサ33が設けられている。冷媒配管46におけるアキュムレータ25の冷媒流入側近傍には、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力を検出する低圧センサ32と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度を検出する吸入温度センサ34が設けられている。
室外機液管44における室外熱交換器23の近傍には、室外熱交換器23が蒸発器として機能する際に室外熱交換器23に流入する冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ35が設けられている。6本の室外機液分管44aにおける膨張弁24と液側閉鎖弁27の間には、室外機液分管44aを流れる冷媒の温度である液側冷媒温度を検出する液側温度センサ36(本発明の液側温度検出手段に相当。図1(A)では、このうち3個を描画)が設けられている。6本の室外機ガス分管45aには、室外機ガス分管45aを流れる冷媒の温度であるガス側冷媒温度を検出するガス側温度センサ37(図1(A)では、このうち3個を描画)が設けられている。そして、室外機2の図示しない吸込口付近には、室外機2の内部に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ38が設けられている。
また、室外機2には、室外機制御手段200が備えられている。室外機制御手段200は、室外機2の図示しない電装品箱に格納された制御基板に搭載されており、図1(B)に示すように、CPU210と、記憶部220と、通信部230と、センサ入力部240とを備えている。
記憶部220は、ROMやRAMで構成されており、室外機2の制御プログラムや各種センサからの検出信号に対応した検出値、圧縮機21や室外ファン26の駆動状態、6台の室内機5の各々から送信される運転情報(運転/停止情報や設定温度情報等を含む)等を記憶する。通信部230は、6台の室内機5の各々との通信を行うインターフェイスである。センサ入力部240は、室外機2の各種センサでの検出結果を取り込んでCPU210に出力する。CPU210は、センサ入力部240を介して各種センサでの検出値を定期的(例えば、1分毎)に取り込むとともに、6台の室内機5の各々から送信される運転開始/停止を示す運転状態や運転情報(設定温度や室内温度等)を含んだ信号が通信部230を介して入力される。CPU210は、これら入力された各種情報に基づいて、各膨張弁24の開度制御、圧縮機21や室外ファン26の駆動制御を行う。
次に、6台の室内機5について説明する。6台の室内機5は全て同じ構成を備えており、室内熱交換器51と、液管接続部52と、ガス管接続部53と、室内ファン54を備えている。そして、室内ファン54を除くこれら各装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室内機冷媒回路50を構成している。
室内熱交換器51は、冷媒と、室内ファン54の回転により室内機5に備えられた図示しない吸込口から室内機5の内部に取り込まれた室内空気を熱交換させるものである。室内熱交換器51の一方の冷媒出入口と液管接続部52が室内機液管71で接続されている。室内熱交換器51の他方の冷媒出入口とガス管接続部53が室内機ガス管72で接続されている。尚、液管接続部52やガス管接続部53には、各冷媒配管が溶接やフレアナット等によって接続されている。
室内熱交換器51は、室内機5が冷房運転を行う場合は蒸発器として機能し、室内機5が暖房運転を行う場合は凝縮器として機能する。
室内ファン54は、室内熱交換器51の近傍に配置される樹脂材で形成されたクロスフローファンであり、図示しないファンモータによって回転することで、図示しない吸込口から室内機5の内部に室内空気を取り込み、室内熱交換器51において冷媒と熱交換した室内空気を室内機5に備えられた図示しない吹出口から室内へ供給する。また、室内機5の図示しない吸込口付近には、室内機5の内部に流入する室内空気の温度、すなわち室内温度を検出する室内温度センサ61が備えられている。
次に、本実施形態の空気調和装置1が暖房運転を行うときの冷媒回路10における冷媒の流れや各部の動作を、図1(A)を用いて説明する。以下の説明では、6台の室内機5が全て暖房運転を行っている場合について説明する。図1(A)において、矢印は、冷媒回路10における暖房運転時の冷媒の流れを示しており、また、四方弁22については、暖房運転時の各ポート間の連通状態を実線で示している。
尚、空気調和装置1が冷房運転を行うときの冷媒回路10における冷媒の流れや各部の動作については詳細な説明を省略するが、冷房運転時は四方弁22の各ポート間の連通状態は、図1(A)に破線で示す状態となり、室外熱交換器23が凝縮器として機能し、各室内熱交換器51が蒸発器として機能する。
室内機5が暖房運転を行う場合、四方弁22が図1(A)に実線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートdが連通するように、また、ポートbとポートcが連通するように切り換えられる。これにより、冷媒回路10が図1(A)に矢印で示す方向に冷媒が流れる状態となり、室外熱交換器23が蒸発器として機能するとともに、各室内熱交換器51が凝縮器として機能する。
上記のような冷媒回路10の状態で圧縮機21が起動すると、圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は吐出管41から四方弁22に流入し、四方弁22から室外機ガス管45を経て6本の室外機ガス分管45aに分流する。各室外機ガス分管45aから各ガス側閉鎖弁28を介して各ガス管9に流入した冷媒は、各室内機5にガス側接続部53を介して流入する。
各室内機5に流入した冷媒は、各室内機ガス管72を流れて各室内熱交換器51に流入し、各室内ファン54の回転によって各室内機2の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って凝縮する。各室内熱交換器51から各室内機液管71に流出した冷媒は、各液管接続部52を介して各液管8に流出し、各液管8を流れて各液側閉鎖弁27を介して室外機2に流入する。
室内機2に流入した冷媒は各室外機液分管44aを流れ、各膨張弁24で減圧されて室外機液管44に流出し、室外機液管44で合流して室外熱交換器23に流入する。室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン26の回転によって室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って蒸発し、室外熱交換器23から冷媒配管43に流出する。冷媒配管43を流れる冷媒は、四方弁22、冷媒配管46へと流れてアキュムレータ25に流入し、アキュムレータ25でガス冷媒と液冷媒とに分離される。アキュムレータ25から吸入管42へと流出したガス冷媒は、吸入管42を流れて圧縮機21に吸入され、再び圧縮される。
上記のように空気調和装置1が暖房運転を行っているとき、各膨張弁24の開度は、圧縮機21から吐出される冷媒温度である吐出温度を目標吐出温度とする目標吐出温度制御と、各液側温度センサ36で検出する液側冷媒温度が同じ温度となるようにする液温度調整制御により調整される。また、液温度調整制御は、運転している室内機5(以降、運転室内機5と記載する)の液側冷媒温度が同じ温度となるようにする運転室内機液温度調整制御と、停止している室内機5(以降、停止室内機5と記載する)の液側冷媒温度が同じ温度となるようにする停止室内機液温度調整制御の2種類の制御で成り立っている。
以下では、まず目標吐出温度制御について説明し、次に液温度調整制御(運転室内機液温度調整制御と停止室内機液温度調整制御)について説明する。尚、以下の説明では、液側温度センサ36で検出する液側冷媒温度をTL、運転室内機5の液側冷媒温度TLの最大値/最小値をそれぞれTLmax/TLmin、運転室内機5の液側冷媒温度TLの平均値をTLave、最大値TLmaxから最小値TLminを減じて求める温度差(以降、第1温度差と記載する)をΔTa、運転室内機5の液側冷媒温度TLから平均値TLaveを減じて求める温度差(以降、第2温度差と記載する)をΔTbとする。
また、高圧センサ31で検出する圧縮機21の吐出圧力をHp、吐出圧力Hpを用いて算出する高圧飽和温度(暖房運転時に凝縮器として機能する各室内機5の室内熱交換器51における凝縮温度に相当)をThp、高圧飽和温度Thpから各室内機5の液側冷媒温度TLを減じて求める各室内熱交換器51の冷媒出口側における冷媒過冷却度をSCとする。
また、各膨張弁24の開度を調整するために各膨張弁24に加えるパルス数をPLS、運転室内機5に対応する膨張弁24に加える初期パルス数をPLS1、停止室内機5に対応する膨張弁24に加える初期パルス数をPLS2、運転室内機5に対応する膨張弁24に加えられているパルス数PLSのうちの最大値/最小値をそれぞれPLSmax/PLSminとする。
<目標吐出温度制御>
目標吐出温度制御では、吐出温度センサ33で検出した吐出温度が目標吐出温度となるように、運転室内機5に対応する膨張弁24の開度が調整される。具体的には、まず、目標吐出温度が、凝縮器として機能している室内熱交換器51における凝縮温度と、蒸発器として機能している室外熱交換器23における蒸発温度と、冷媒回路10の冷媒循環量に関係する圧縮機21の回転数を用いて算出される。尚、凝縮温度は前述したように吐出圧力Hpを用いて算出される。蒸発温度は、低圧センサ32で検出する圧縮機21に吸入される冷媒の圧力である吸入圧力を用いて算出される。尚、停止室内機5に対応する膨張弁24には上述した初期パルス数PLS2が加えられて、当該膨張弁24の開度は初期パルス数PLS2に対応する開度とされる。
そして、算出された目標吐出温度と吐出温度センサ33で検出された吐出温度が比較され、検出された吐出温度が目標吐出温度より高い場合は、運転室内機5に対応する膨張弁24の開度が現在の開度より一律に大きくされる。これにより、圧縮機21に吸入される冷媒量が増加して吐出温度が低下する。尚、各膨張弁24の開度を現在の開度より一律に大きくするときは、現在各膨張弁24に加えられているパルス数PLSに検出した吐出温度と目標吐出温度の温度差に応じた分のパルス数を一律に加算したパルス数PLSを加える。
また、検出された吐出温度が目標吐出温度より低い場合は、運転室内機5に対応する膨張弁24の開度が現在の開度より一律に小さくされる。これにより、圧縮機21に吸入される冷媒量が減少して吐出温度が上昇する。尚、各膨張弁24の開度を現在の開度より一律に小さくするときは、現在各膨張弁24に加えられているパルス数PLSから検出した吐出温度と目標吐出温度の温度差に応じた分のパルス数を減算したパルス数PLSを加える。
<液温度調整制御>
液温度調整制御では、運転室内機5および停止室内機5の各液側温度センサ36で検出した液側冷媒温度TLが同じ温度となるように、各膨張弁24の開度が調整される。
上述した目標吐出温度制御を行っているときは、前述したように運転室内機5に対応する各膨張弁24の開度が一律に調整される。このとき、各室内機5の空調能力が異なる場合や、各室内機5の空調能力が同じであっても室内ファン54の回転数が異なるつまり室内熱交換器51での熱交換量が異なる場合は、複数の運転室内機5の間で冷媒流量に偏りが生じこれに起因して液側冷媒温度TLがバラつく恐れがある。液側冷媒温度TLがバラつくと、圧縮機21に吸入される冷媒温度が変動しこれに起因して吐出温度も変動して目標吐出温度制御が不安定となる恐れがある。そこで、液温度調整制御を行って全ての液側冷媒温度TLが同じ温度となるようにする。
液温度調整制御では、運転室内機5に対して行う運転室内機液温度調整制御と、停止室内機5に対して行う停止室内機液温度調整制御を個別に行う。以下、運転室内機液温度調整制御、停止室内機液温度調整制御の順に説明する。
<運転室内機液温度調整制御>
運転室内機液温度調整制御では、まず、運転室内機5の各液側温度センサ36で検出した液側冷媒温度TLが取り込まれ、取り込まれた各液側冷媒温度TLから最大値TLmaxと最小値TLminが抽出される。そして、抽出された最大値TLmaxと最小値TLminの差分として第1温度差ΔTaが算出され、この第1温度差ΔTaの値に応じて各運転室内機5に対応する膨張弁24の開度が調整される。
具体的には、最大値PLSmaxが加えられている膨張弁24に対し、最大値PLSmaxから第1温度差ΔTaに応じた値を減じたパルス数が当該膨張弁24に加えられて、当該膨張弁24の開度が小さくなる。一方、最小値PLSminが加えられている膨張弁24に対し、最小値PLSminに上記最大値PLSmaxから減じた値と同じ値を加えたパルス数が当該膨張弁24に加えられて、当該膨張弁24の開度が大きくなる。
運転室内機液温度調整制御では、以上説明した膨張弁24の開度調整を定期的(例えば、1分毎)に行うことにより、各運転室内機5における冷媒流量が各運転室内機5の能力に応じたものとなり、各液側温度センサ36で検出した液側冷媒温度TLが同じ値となる。
<停止室内機液温度調整制御>
停止室内機液温度調整制御では、運転室内機液温度調整制御において運転室内機5の各液側温度センサ36で検出した液側冷媒温度TLに加えて、停止室内機5の各液側温度センサ36で検出した液側冷媒温度TLが取り込まれ、取り込まれた液側冷媒温度TLから運転室内機5の各液側冷媒温度TLが抽出される。次に、各運転室内機5の液側冷媒温度TLの平均値TLaveが求められ、各停止室内機5の液側冷媒温度TLから平均値TLaveを減じて第2温度差ΔTbが求められる。
そして、求められた第2温度差ΔTbの値に応じて各停止室内機5に対応する膨張弁24の開度が調整される。具体的には、各停止室内機5に対応する膨張弁24に加えるパルス数PLSを、前述した初期パルス数PLS2(本実施形態では、25パルス)を含む所定の範囲(本実施形態では、15パルス〜100パルス)の間で第2温度差ΔTbの値に応じて増減する。まず、第2温度差ΔTbの値が所定の第1閾温度差(本実施形態では、8℃)以上であれば、現在膨張弁24に加えられているパルス数PLSから第2温度差ΔTbの値に応じた値を減じたパルス数が当該膨張弁24に加えられて、当該膨張弁24の開度が小さくなる。これにより、各停止室内機5を流れる冷媒量が減少するので、液側冷媒温度TLが低くなって平均値TLaveに近づく。
一方、第2温度差ΔTbの値が上述した第1閾温度差より低い所定の第2閾温度差(例えば、2℃)未満であれば、現在膨張弁24に加えられているパルス数PLSから第2温度差ΔTbの値に応じた値を加えたパルス数が当該膨張弁24に加えられて、当該膨張弁24の開度が大きくなる。これにより、各停止室内機5を流れる冷媒量が増加するので、液側冷媒温度TLが高くなって平均値TLaveに近づく。
ところで、上述した停止室内機液温度調整制御を行っているときに、例えば、停止室内機5のうちのいくつかが起動した場合のように、暖房負荷が急激に上昇すれば冷媒回路10における冷媒循環量が過渡的に不足する恐れがある。そして、冷媒循環量が過渡的に不足しているときは、運転室内機5および停止室内機5の室内熱交換器51における凝縮圧力が過渡的に低下しこれに起因して運転室内機5および停止室内機5の室内熱交換器の冷媒出口側における冷媒過冷却度が小さくなる。このときに、停止室内機液温度調整制御により停止室内機5に対応する膨張弁24の開度を大きくすれば、気液二相状態の冷媒が停止室内機5を流れて冷媒流動音が目立って使用者に不快感を与える恐れがあった。
そこで、停止室内機液温度調整制御で膨張弁24の開度を大きくする場合は、停止室内機5の冷媒過冷却度SCを算出し、この冷媒過冷却度SCが所定の閾冷媒過冷却度(例えば、3deg)より小さい値であれば、膨張弁24の開度を大きくしないようにする。これにより、冷媒が気液二相状態で流れる恐れがある場合に停止室内機5を流れる冷媒量が増加することがない。
次に、本実施形態の空気調和装置1に関わる処理について、図2乃至図4を用いて説明する。図2は、室外機制御手段200のCPU210が行う処理のメインルーチンを示すフロ−チャートであり、暖房運転を行う際にCPU210が実行する処理の流れを示す。図3は、CPU210が行う処理のサブルーチンを示すフローチャートであり、CPU210が運転室内機液温度調整制御を行う際に実行する処理の流れを示す。また、図4は、CPU210が行う処理のサブルーチンを示すフローチャートであり、CPU210が停止室内機液温度調整制御を行う際に実行する処理の流れを示す。
図2乃至図4に示すフローチャートにおいて、STは処理のステップを表し、これに続く数字はステップ番号を表している。尚、図2乃至図4は、本発明に関わる処理を中心に説明しており、これ以外の処理、例えば、暖房運転時に使用者が指示した設定温度や風量等の運転条件に応じた制御といった、空気調和装置1に関わる一般的な処理については説明を省略する。
まず、図2を用いて、CPU210が空気調和装置1で暖房運転を行う場合の処理の流れについて説明する。使用者が各室内機5の図示しないリモコン等を操作して運転開始を指示すると、CPU210は、使用者の指示した運転が暖房運転であるか否かを判断する(ST1)。使用者の指示した運転が暖房運転であれば(ST1−Yes)、CPU210は、暖房運転開始処理を実行する(ST2)。ここで、暖房運転開始処理とは、CPU210が四方弁22の各ポートを図1(A)に実線で示す接続となるよう切り換えて、冷媒回路10を暖房サイクルとすることである。
暖房運転開始処理を終えたCPU210は、圧縮機21および室外ファン26を駆動する(ST3)。具体的には、CPU210は、各室内機5から要求された暖房能力に応じた回転数で圧縮機21の駆動制御を行うとともに、室外ファン26が圧縮機21の回転数に応じた回転数となるように駆動制御する。
次に、CPU210は、目標吐出温度制御を実行する(ST4)。具体的には、CPU210は、まず高圧センサ31で検出した吐出圧力Hpと低圧センサ32で検出した吸入圧力をセンサ入力部240を介して取り込みこれらを用いて凝縮温度と蒸発温度を求める。次に、CPU210は、求めた凝縮温度および蒸発温度と、圧縮機21の回転数を用いて目標吐出温度を算出する。そして、CPU210は、吐出温度センサ33で検出した吐出温度をセンサ入力部240を介して取り込み、取り込んだ吐出温度が目標吐出温度となるように、運転室内機5に対応する膨張弁24の開度を調整する。尚、CPU210は、暖房運転開始時は運転室内機5に対応する膨張弁24に前述した初期パルス数PLS1を加えて、運転室内機5に対応する膨張弁24の開度を初期パルス数PLS1に対応する開度とする。この初期パルス数PLS1は、停止室内機5に加える初期パルス数PLS2より大きい所定の値(例えば、80パルス)を下限として各室内機5の空調能力と外気温度によって選択されるものであり、図示は省略するが各室内機5には外気温度に対応させて初期パルス数PLS1を定めたテーブルが記憶されている。
次に、CPU210は、サブルーチンである運転室内機液温度調整制御を実行し(ST5)、これに続いてサブルーチンである停止室内機液温度調整制御を実行して(ST6)、ST7に処理を進める。
ST7において、CPU210は、使用者による運転モード切替指示があるか否かを判断する。ここで、運転モード切替指示とは、現在の運転(ここでは暖房運転)から別の運転(冷房運転あるいは除湿運転)への切替を指示するものである。運転モード切替指示がある場合は(ST7−Yes)、CPU210は、ST1に処理を戻す。運転モード切替指示がない場合は(ST7−No)、CPU210は、使用者による運転停止指示があるか否かを判断する(ST8)。運転停止指示とは、全ての室内機5が運転を停止することを指示すものである。
運転停止指示があれば(ST8−Yes)、CPU210は、運転停止処理を実行し(ST9)、処理を終了する。運転停止処理では、CPU210は、圧縮機21や室外ファン26を停止するとともに各膨張弁24を全閉とする。また、CPU210は、室内機5a〜5cに対し通信部230を介して運転を停止する旨の運転停止信号を送信する。運転停止信号を受信した各室内機5は、室内ファン54を停止する。
ST8において運転停止指示がなければ(ST8−No)、CPU210は、現在の運転が暖房運転であるか否かを判断する(ST12)。現在の運転が暖房運転であれば(ST12−Yes)、CPU210は、ST3に処理を戻す。現在の運転が暖房運転でなければ(ST12−No)、つまり、現在の運転が冷房運転もしくは除湿運転であれば、CPU210は、ST11に処理を戻す。
尚、ST1において使用者の指示した運転が暖房運転でなければ(ST1−No)、CPU210は、冷房運転もしくは除湿運転の開始処理である冷房/除湿運転開始処理を実行する(ST10)。ここで、冷房/除湿運転開始処理とは、CPU210が四方弁22を操作して冷媒回路100を冷房サイクルとすることであり、最初に冷房運転もしくは除湿運転を行うときに行われる処理である。そして、CPU210は、圧縮機21や室外ファン27を所定の回転数で駆動するとともに、各膨張弁24を全開とし、また、通信部230を介して各室内機5に対し室内ファン54の駆動制御を行うよう指示して冷房運転あるいは除湿運転の制御を開始し(ST11)、ST7に処理を進める。
次に、図3を用いて、本実施形態の一方のサブルーチンである運転室内機液温度調整制御を行う際の処理の流れについて説明する。
まず、CPU210は、各室内機5の液側冷媒温度TLを通信部230を介して取り込み(ST21)、取り込んだ液側冷媒温度TLのうちの運転室内機5の液側冷媒温度TLから最大値TLmaxと最小値TLminを抽出し最大値TLmaxから最小値TLminを減じて第1温度差ΔTaを算出する(ST22)。
次に、CPU210は、算出した第1温度差ΔTaが6℃以上であるか否かを判断する(ST23)。第1温度差ΔTaが6℃以上である場合は(ST23−Yes)、CPU210は、現在運転室内機5に対応する膨張弁24に加えているパルス数PLSのうち最大値PLSmaxを加えている膨張弁24に対し、最大値PLSmaxから4パルス減じたパルス数を当該膨張弁24に加えるとともに、最小値PLSminを加えている膨張弁24に対し、最小値PLSminに4パルス加えたパルス数を当該膨張弁24に加え(ST24)、処理を終了する。
ST23において第1温度差ΔTaが6℃以上でない場合は(ST23−No)、CPU210は、第1温度差ΔTaが4℃以上6℃未満であるか否かを判断する(ST25)。第1温度差ΔTaが4℃以上6℃未満である場合は(ST25−Yes)、CPU210は、現在運転室内機5に対応する膨張弁24に加えているパルス数PLSのうち最大値PLSmaxを加えている膨張弁24に対し、最大値PLSmaxから2パルス減じたパルス数を当該膨張弁24に加えるとともに、最小値PLSminを加えている膨張弁24に対し、最小値PLSminに2パルス加えたパルス数を当該膨張弁24に加え(ST26)、処理を終了する。
ST25において第1温度差ΔTaが4℃以上6℃未満でない場合は(ST25−No)、CPU210は、第1温度差ΔTaが2℃以上4℃未満であるか否かを判断する(ST27)。第1温度差ΔTaが2℃以上4℃未満である場合は(ST27−Yes)、CPU210は、現在運転室内機5に対応する膨張弁24に加えているパルス数PLSのうち最大値PLSmaxを加えている膨張弁24に対し、最大値PLSmaxから1パルス減じたパルス数を当該膨張弁24に加えるとともに、最小値PLSminを加えている膨張弁24に対し、最小値PLSminに1パルス加えたパルス数を当該膨張弁24に加え(ST28)、処理を終了する。また、ST27において、第1温度差ΔTaが2℃以上4℃未満でない場合は(ST27−No)、CPU210は、各膨張弁24の開度は変えずに処理を終了する。
次に、図4を用いて、本実施形態のもう一方のサブルーチンである停止室内機液温度調整制御を行う際の処理の流れについて説明する。尚、本実施形態では、停止室内機液温度調整制御を行う際の停止室内機5に対応する膨張弁24の開度は、当該膨張弁24に加えるパルス数PLSの最小値:15パルスに相当する開度から最大値:100パルスに相当する開度までの間で調整されるものとする。
まず、CPU210は、停止室内機5があるか否かを判断する(ST40)。停止室内機5がなければ(ST40−Yes)、CPU210は、停止室内機液温度調整制御を行わず処理を終了する。停止室内機5があれば(ST40−No)、CPU210は、記憶部220に記憶しているフラグFを読み出し、読み出したフラグFが0であるか否かを判断する(ST41)。
このフラグFは、これから行う停止室内機液温度調整制御が、暖房運転開始後に初めて行うのか否かを判断するためのものであり、フラグFが0であれば暖房運転開始後に初めて停止室内機液温度調整制御を実行することを示し、フラグFが1であれば既に停止室内機液温度調整制御を実行していることを示すものである。尚、フラグFは、停止室内機5がなくなるつまり全ての室内機5が運転すればCPU210によってリセットされる(0とされる)。
ST41においてフラグFが0でなければ(ST41−No)、CPU210は、ST43に処理を進める。フラグFが0であれば(ST41−Yes)、CPU210は、停止室内機5に対応する膨張弁24に初期パルス数PLS2を加えて(ST42)各膨張弁24を暖房運転停止時の初期開度として、ST43に処理を進める。尚、停止室内機5に加える初期パルス数PLS2は、前述した運転室内機5に加える初期パルス数PLS1より小さい値であり、例えば、25パルスである。
次に、CPU210は、各室内機5の液側冷媒温度TLを通信部230を介して取り込み(ST43)、取り込んだ液側冷媒温度TLのうちの運転室内機5の液側冷媒温度TLを用いてこれの平均値TLaveを求め、停止室内機5の液側冷媒温度TLから平均値TLaveを減じて第2温度差ΔTbを算出する(ST44)。
次に、CPU210は、算出した第2温度差ΔTbが15℃以上であるか否かを判断する(ST45)。第2温度差ΔTbが15℃以上である場合は(ST45−Yes)、CPU210は、現在停止室内機5の膨張弁24に加えているパルス数PLSから3パルス減じ(ST46)、ST49に処理を進める。
ST45において第2温度差ΔTbが15℃以上でない場合は(ST45−No)、CPU210は、第2温度差ΔTbが8℃(前述した第1閾温度差)以上15℃未満であるか否かを判断する(ST47)。第2温度差ΔTbが8℃以上15℃未満である場合は(ST47−Yes)、CPU210は、現在停止室内機5の膨張弁24に加えているパルス数PLSから1パルス減じ(ST48)、ST49に処理を進める。
ST49において、CPU210は、ST46やST48の処理で求めたパルス数PLSが、停止室内機5に加えるパルス数PLSの最小値である15パルス未満であるか否かを判断する。求めたパルス数PLSが15パルス未満であれば(ST49−Yes)、CPU210は、停止室内機5に対応する膨張弁24に15パルスを加えて(ST50)、ST63に処理を進める。求めたパルス数PLSが15パルス未満でなければ(ST49−No)、CPU210は、ST46あるいはST48で求めたパルス数PLSを停止室内機5に対応する膨張弁24に加えて(ST51)、ST63に処理を進める。
一方、ST47において、第2温度差ΔTbが8℃以上15℃未満でない場合は(ST47−No)、CPU210は、高圧センサ31で検出した吐出圧力Hpをセンサ入力部240を介して取り込み、取り込んだ吐出圧力Hpを用いて高圧飽和温度Thpを算出し(ST52)、算出した高圧飽和温度ThpからST43で取り込んだ液側冷媒温度TLを減じて停止室内機5における冷媒過冷却度SCを算出する(ST53)。
次に、CPU210は、ST44で算出した第2温度差ΔTbが0℃未満であるか否かを判断する(ST54)。第2温度差ΔTbが0℃未満でない場合は(ST54−No)、CPU210は、ST57に処理を進める。第2温度差ΔTbが0℃未満である場合は(ST54−Yes)、CPU210は、ST53で算出した冷媒過冷却度SCが3deg未満であるか否かを判断する(ST55)。
冷媒過冷却度SCが3deg未満である場合は(ST55−Yes)、CPU210は、ST63に処理を進める。冷媒過冷却度SCが3deg未満でない場合は(ST55−No)、CPU210は、現在停止室内機5の膨張弁24に加えているパルス数PLSに3パルス加え(ST56)、ST60に処理を進める。
ST57において、CPU210は、第2温度差ΔTbが0℃以上2℃(前述した第2閾温度差)未満であるか否かを判断する(ST57)。第2温度差ΔTbが0℃以上2℃未満でない場合は(ST57−No)、CPU210は、ST63に処理を進める。第2温度差ΔTbが0℃以上2℃未満である場合は(ST57−Yes)、CPU210は、ST53で算出した冷媒過冷却度SCが3deg未満であるか否かを判断する(ST58)。
冷媒過冷却度SCが3deg未満である場合は(ST58−Yes)、CPU210は、ST63に処理を進める。冷媒過冷却度SCが3deg未満でない場合は(ST58−No)、CPU210は、現在停止室内機5の膨張弁24に加えているパルス数PLSに1パルス加え(ST59)、ST60に処理を進める。
ST60において、CPU210は、ST56やST59の処理で求めたパルス数PLSが、停止室内機5に加えるパルス数PLSの最大値である100パルスより大きいか否かを判断する。求めたパルス数PLSが100パルスより大きい場合は(ST60−Yes)、CPU210は、停止室内機5に対応する膨張弁24に100パルスを加えて(ST61)、ST63に処理を進める。求めたパルス数PLSが100パルス以下であれば(ST60−No)、CPU210は、ST56あるいはST59で求めたパルス数PLSを停止室内機5に対応する膨張弁24に加えて(ST62)、ST63に処理を進める。
ST63では、CPU210はフラグFを1として記憶部220に記憶し、停止室内機液温度調整制御を終了する。
以上説明した実施形態において、図3に示す運転室内機液温度調整制御のフローチャートのST23、ST25およびST27で第1温度差ΔTaの大きさの判断に使用した各温度差やST24、ST26およびST28で増減したパルス数と、図4に示す停止室内機液温度調整制御のフローチャートのST45、ST47、ST54およびST57で第2温度差ΔTbの大きさの判断に使用した各温度差やST46、ST48、ST56およびST59で増減したパルス数や停止室内機5に対応する膨張弁24に加えるパルスPLSの最小値および最大値は、本実施形態に固有の数値でありこれらは予め試験等を行って求められたものである。従って、上記各数値は、空気調和装置1の構成(接続される室内機5の台数やその能力、冷媒回路10の配管長等)により適宜別の数値が選択可能である。