JP6697837B2 - セメント組成体の仕上げ方法 - Google Patents

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本発明は、セメント組成体の仕上げ方法に関する。
従来、建物の外壁材等には、プレキャストコンクリート(PCa)板などのプレキャストパネル(セメント組成体)が使用されている。また、例えば表面が平滑なパネルを用いて、タイルや石材調のように、目地に相当する目地部部分と、表面に相当する表面部分(表面全体のうち目地部分を除く部位)を互いに色違いで塗装して意匠性を高めるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開平4−146365号公報
上述したように表面が平滑なパネルの場合、表面部分と目地部分を色違いで塗装しても表面部分と目地部分の間に段差がないため陰影がつかず立体感が出にくい。また、最近では、プレキャストパネルの表面に溝状目地を設け、その目地内部と表面(上面)を色違いに着色してタイル等に似せて仕上げることも行われている。しかしながら、この場合においても、陰影をつけて立体感を醸し出すのは困難であり、本物のタイルや石材のように見えないという問題がある。
本発明はかかる課題に鑑みてなされたもので、その主な目的は本物に近い立体感を醸し出すことのできるセメント組成体の仕上げ方法を提供することにある。
かかる目的を達成するために本発明のセメント組成体の仕上げ方法は、表面に所定深さの溝状の目地を有するセメント組成体の仕上げ方法であって、
前記目地の底部、及び前記目地の側部の下部を、マスキングテープ又はシートのマスキング材で養生するマスキング工程と、
前記マスキング工程の後、前記セメント組成体の表面に塗り材を塗装する表面塗装工程と、
前記表面塗装工程の後、前記マスキング材を除去するマスキング材除去工程と、
前記マスキング材除去工程の後、前記目地に目地材を充填する目地材充填工程と、
を有し、
前記目地材の充填高さは前記所定深さよりも小さく、
前記マスキング工程では、前記目地材の充填高さよりも上には前記マスキング材で養生された領域がなく、前記目地材の充填高さよりも下に前記マスキング材で養生された領域があるように前記マスキング材を配置し、
前記目地材充填工程では、前記目地の底部、前記目地の側部の下部、及び、前記表面塗装工程において塗装された領域の一部を覆うように前記目地材を充填し、
前記目地を形成する角部の角度は略直角である
ことを特徴とする。
このようなセメント組成体の仕上げ方法によれば、本物のタイルや石材のような立体感を醸し出すことができる。
かかるセメント組成体の仕上げ方法であって、前記マスキング工程の前に下塗り材を塗装する下塗り材塗装工程を有することが望ましい。
このようなセメント組成体の仕上げ方法によれば、セメント組成体が水分などを吸収するのを防止することができる。
かかるセメント組成体の仕上げ方法であって、前記下塗り材塗装工程と、前記表面塗装工程との間に中塗り材を塗装する中塗り材塗装工程をさらに有することが望ましい。
このようなセメント組成体の仕上げ方法によれば、下塗り材と、表面の塗装との接着性を向上することができる。
かかるセメント組成体の仕上げ方法であって、前記セメント組成体は、プレキャスト部材であることが望ましい。
このようなセメント組成体の仕上げ方法によれば、本物のタイル張りのような立体感を有したプレキャスト部材を得ることができる。
かかるセメント組成体の仕上げ方法であって、前記目地材は、セメントを主材とすることを特徴とすることが望ましい。
このようなセメント組成体の仕上げ方法によれば、タイル張りの質感を出すことができる。
本発明によれば、本物に近い立体感を醸し出すことが可能である。
図1Aは、本実施形態で用いるプレキャストパネル1の平面図である。また、図1Bは、図1A中のB−B矢視図である。 図2A〜図2Gは第1実施形態の表面仕上げの手順についての説明図である。 図3A〜図3Gは第2実施形態の表面仕上げの手順についての説明図である。
===第1実施形態===
<<<プレキャストパネルについて>>>
図1Aは、本実施形態で用いるプレキャストパネル1の平面図である。また、図1Bは、図1A中のB−B矢視図である。プレキャストパネル1(セメント組成体に相当)はコンクリート製の板状部材である。そして、このプレキャストパネル1の表面1aには、予め溝状の凹部3(目地に相当)が形成されている。図示例では、凹部3が表面1aの全面に亘って格子状に形成されている。但し、凹部3の形成の範囲は全面でなくても良く、表面1aの一部であっても良い。以下では、表面1aにおける凹部3以外の残部(島状に残った部分)のことを、上面5とも言う。
また、図に示すように凹部3は、深さD(所定深さに相当)の溝側部3a(側部に相当)と幅Wの溝底部3b(底部に相当)を有している。また、凹部3を構成する角部(上面5と溝側部3aとの角部分、及び、溝側部3aと溝底部3bとの角部分)の角度はほぼ直角(90度)である。
このようなプレキャストパネル1の製造方法の一例としては、例えは、成形すべきプレキャストパネル1の外形形状に対応させて型枠(不図示)を組み、形成すべき目地(凹部3)に対応する位置に、予め目地棒などを配置し、型枠内にコンクリートを打設する。そして打設したコンクリートの硬化後に型枠を脱型すれば図1A、図1Bのように表面1aに凹部3を有するプレキャストパネル1が成形される。
<<<表面仕上げについて>>>
図2A〜図2Gは第1実施形態の表面仕上げの手順についての説明図である。
まず、図2Aに示すように、プレキャストパネル1の表面1aの全面(上面5及び凹部3を含む)に下塗り材7を塗布(塗装)する。ここでは、スプレーを用いた吹き付けによって下塗り材7を塗布(吹付け塗装)している。この下塗り材7は、プレキャストパネル1が水分や塗料を吸い込まないようにするためのもの(シーラー)であり、ここでは下塗り材7としてエポキシ樹脂系塗料を用いている。
次に、図2Bに示すように、溝底部3b上をマスキングテープ20で覆う(養生する)。
それから、図2Cに示すように、表面1aの全面に中塗り材8を吹付け塗装する。中塗り材8は、下塗り材7(エポキシ樹脂系塗料)と、後述する上塗り材9(フッ素樹脂系塗料)との接着性を高めるものであり、ここではポリウレタン樹脂系塗料を用いている。
さらに、図2Dに示すように、全面(中塗り材8上)に上塗り材9を吹付け塗装する。この上塗り材9は、仕上げの種類に応じたものが使用される。ここでは、上塗り材9として、レンガタイルを模すように、レンガ色のフッ素樹脂系塗料を使用している。
その後、図2Eに示すように、マスキングテープ20を除去する。これにより、溝底部3b上の中塗り材8及び上塗り材9はマスキングテープ20とともに除去される。よって、溝底部3bの上には下塗り材7が露出する。
そして、図2Fに示すように、凹部3の周囲の上塗り材9の上を汚れ防止用のマスキングテープ22で覆い、凹部3の溝内にセメントを主材とする目地モルタル10(目地材に相当)を高さHに充填する。このとき、目地モルタル10の充填高さHは、目地深さDよりも小さくする。
最後に、図2Gに示すようにマスキングテープ22を除去する。
こうして、プレキャストパネル1の表面仕上げが完了する。
もし仮に、充填高さHが目地深さD以上であると表面色の厚みが出ず、立体感を醸し出すことができない。これに対し、本実施形態では充填高さHを目地深さDよりも小さくしているので、凹部3の溝側部3aのうちの一部(より具体的には上面5側の一部)が表面と同じ色(上塗り材9の色)になる。こうすることによって、表面色の陰影を付与することができ、立体感を醸し出すことができる。
また、本実施形態では上塗り材9にフッ素樹脂系塗料を用いている。目地モルタル10は、フッ素樹脂系塗料と接着性が悪いため、上塗り材9上に目地モルタル10を充填すると目地モルタル10が剥がれるおそれがある。本実施形態では凹部3内の溝底部3bをマスキングテーブ20で養生しているので、目地モルタル10を充填する際には溝底部3bに下塗り材7(エポキシ樹脂系塗料)が露出している。これにより、目地モルタル10の凹部3への接着性を高めることができ、より確実に目地モルタル10の充填高さHを目地深さDよりも小さくすることができる。
また、本実施形態では目地材として目地モルタル10を充填しているので、本物のタイル張りの質感を出すことができる。
なお、本実施形態では、下塗り材7、中塗り材8、上塗り材9をそれぞれ吹付け塗装していたが、塗装方法は吹付けには限られない。例えば、ローラーや刷毛を用いて塗装してもよい。
===第2実施形態===
前述の第1実施形態では、溝底部3b上のみをマスキングテープ20で養生していた。第2実施形態では溝底部3bのみでなく溝側部3aの一部も養生する。なお、第2実施形態においても基材として第1実施形態と同じプレキャストパネル1を用いるので説明を省略する。また、表面仕上げを行う材料について、同一材料には同じ符号を付し説明を省略する。
図3A〜図3Gは第2実施形態の表面仕上げの手順についての説明図である。
まず、第1実施形態と同様に図3Aに示すように、プレキャストパネル1の表面1aの全面(上面5及び凹部3を含む)に下塗り材7を塗布(塗装)する。
次に、図3Bに示すように、凹部3のうち図のhで示す範囲内の領域(溝底部3b及び溝側部3aの下部)をマスキングテープ20で覆う(養生する)。
それから、図3Cに示すように、表面1aの全面に中塗り材8を吹付け塗装する。さらに、図3Dに示すように、全面(中塗り材8上)に上塗り材9を吹付け塗装する。
その後、図3Eに示すように、マスキングテープ20を除去する。これにより、溝底部3b及び溝側部3aの下部における中塗り材8及び上塗り材9はマスキングテープ20とともに除去される。
そして、図3Fに示すように、凹部3の周囲の上塗り材9の上を汚れ防止用のマスキングテープ22で覆い、凹部3の溝内に目地モルタル10を高さHに充填する。
最後に、図3Gに示すようにマスキングテープ22を除去する。
この第2実施形態においても、充填高さHが目地深さDよりも小さいので、第1実施形態と同様に凹部3の溝側部3aの一部が表面と同じ色(上塗り材9の色)になる。これにより、立体感を醸し出すことができる。
また、第2実施形態では、溝底部3bのみでなく溝側部3aの下部もマスキングテープ20で養生しているので、目地モルタル10の凹部3への接着性をさらに高めることができる。
===その他の実施の形態===
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
<プレキャストパネル1について>
前述の実施形態では、基材(セメント組成体)としてコンクリート製のプレキャストパネル1を例示したが、これには限られない。例えば、モルタル製や、セメント製であってもよい。また、アスロック(押出成形セメント板)、ALC(Autoclaved Lightweight aerated Concrete:軽量気泡コンクリート)板、スパンクリートなどを基材として用いてもよい。
また、前述したプレキャストパネル1は建物の外壁に用いられるものであったが、これには限られない。例えば、建物の床の表面に本実施形態を適用してもよい。この場合、例えば現場で平滑な表面の床を形成後、目地切りカッターなどを用いて凹部3を形成するようにしてもよい。
<凹部3について>
前述の実施形態では、上面5の形状(表面形状)が矩形であった。つまり、凹部3が格子状に設けられていたが、何等これに限るものではない。例えば、上面5の形状が、三角形や五角形などの多角形、あるいは、楕円や正円等の円形となるように凹部3を設けていてもよい。
また、前述の実施形態では、目地(凹部3)を構成する角部(上面5と溝側部3aとの角部分、及び、溝側部3aと溝底部3bとの角部分)の角度はほぼ直角(90度)であったがこれには限られない。例えば、溝側部3aが、溝底部3b側から上面5側になるにつれて幅Wが広がるような傾斜面になっていてもよい。ただし、本実施形態のように角部が直角である方がより陰影を付与することができ、本物に近い立体感を醸し出すことができる。
<上塗り材9について>
前述の実施形態では、上塗り材9は、レンガタイルを模すように、レンガ色の上塗り材9(フッ素樹脂系塗料)を使用していたが、これには限られず、模擬しようとする表面の種類に応じて適宜使用すればよい。例えば、石板状タイルを模す場合には、上塗り材9として石粉を混ぜたものを使用すればよい。また、金属タイルを模す場合には、上塗り材9として金属色のものを使用すればよい。
<中塗り材8、下塗り材7について>
前述の実施形態では、中塗り材8としてポリウレタン樹脂系の塗料を用い、下塗り材7としてエポキシ樹脂系塗料を用いていたがこれには限られず、他の成分の塗料を用いてもよい。また、基材(プレキャストパネル1)や上塗り材9の種類によっては、下塗り材7、中塗り材8の何れかを使用しなくてもよいし、あるいは、中塗り材8、下塗り材7を共に使用しなくてもよい。
また、中塗り材8が目地モルタル10と接着性がいい場合、中塗り材8を塗装した後にマスキングテープ20を用いた養生を行ってもよい。
<目地モルタル10について>
前述の実施形態では、目地材としてモルタル(目地モルタル10)を充填していたが、セメントを主材とする他の材料(例えばセメント)を充填してもよい。このとき通常のタイル張りの際に使用されるものと同種の材料を充填することで、より本物のタイル張りの質感を出すことができる。
<マスキングテープ20、22について>
前述の実施形態では、マスキングテープ20、マスキングテープ22を用いて養生を行っていたが、これには限られず、テープ以外の部材を用いてもよい。例えばシートを用いてもよい。また、前述の実施形態では、汚れ防止のためにマスキングテープ22を用いて上塗り材9の上を養生していたが、このマスキングテープ22は無くても(養生しなくても)よい。
1 プレキャストパネル、1a 表面、
3 凹部、3a 溝側部、3b 溝底部、5 上面、
7 下塗り材、8 中塗り材、9 上塗り材、
10 目地モルタル
20,22 マスキングテープ

Claims (5)

  1. 表面に所定深さの溝状の目地を有するセメント組成体の仕上げ方法であって、
    前記目地の底部、及び前記目地の側部の下部を、マスキングテープ又はシートのマスキング材で養生するマスキング工程と、
    前記マスキング工程の後、前記セメント組成体の表面に塗り材を塗装する表面塗装工程と、
    前記表面塗装工程の後、前記マスキング材を除去するマスキング材除去工程と、
    前記マスキング材除去工程の後、前記目地に目地材を充填する目地材充填工程と、
    を有し、
    前記目地材の充填高さは前記所定深さよりも小さく、
    前記マスキング工程では、前記目地材の充填高さよりも上には前記マスキング材で養生された領域がなく、前記目地材の充填高さよりも下に前記マスキング材で養生された領域があるように前記マスキング材を配置し、
    前記目地材充填工程では、前記目地の底部、前記目地の側部の下部、及び、前記表面塗装工程において塗装された領域の一部を覆うように前記目地材を充填し、
    前記目地を形成する角部の角度は略直角である
    ことを特徴とするセメント組成体の仕上げ方法。
  2. 請求項1に記載のセメント組成体の仕上げ方法であって、
    前記マスキング工程の前に下塗り材を塗装する下塗り材塗装工程を有する
    ことを特徴とするセメント組成体の仕上げ方法。
  3. 請求項2に記載のセメント組成体の仕上げ方法であって、
    前記下塗り材塗装工程と、前記表面塗装工程との間に中塗り材を塗装する中塗り材塗装工程をさらに有する
    ことを特徴とするセメント組成体の仕上げ方法。
  4. 請求項1乃至請求項3の何れかに記載のセメント組成体の仕上げ方法であって、
    前記セメント組成体は、プレキャスト部材である
    ことを特徴とするセメント組成体の仕上げ方法。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れかに記載のセメント組成体の仕上げ方法であって、
    前記目地材は、セメントを主材とする
    ことを特徴とするセメント組成体の仕上げ方法。
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