JP6695099B2 - 脂質代謝改善組成物 - Google Patents

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Description

本発明は脂質代謝改善等のための組成物に関し、詳細には、14−デヒドロエルゴステロールまたはそれを含有する麹菌発酵生成物を含有する脂質代謝改善等のための組成物に関する。
近年、食生活の欧米化が進むにつれて、国民一人あたりの脂肪摂取量も上昇し、脂質異常症(高脂血症)、高血圧、肥満等の生活習慣病と呼ばれる疾患が急激に増加している。このような状況下、生活習慣病の発症や悪化に大きな影響を与える脂質代謝異常や肥満を予防・改善する医薬品や食品の開発が今なお求められている。特に、生活習慣病の予防・治療は長期間にわたることが多いことから、重篤な副作用を伴わず安全性が高い医薬品や食品の提供が望まれている。
このような背景のもと、特許文献1には、抗肥満作用を有するアミノ酸含量を増加させることを目的として、澱粉質原料(玄米)を麹菌、酵母菌、および酢酸菌により発酵処理することによりダイエット健康補助食品を製造することが開示されている。また、特許文献2には、モナコリンを含有するベニコウジカビで発酵させたコメの抽出物を含んでなる脂質代謝障害の治療に有用な組成物が開示され、特許文献3にはロフェノール骨格をもつ化合物にインスリン抵抗性の改善効果があることが記載されている。一方で、ステロイド骨格を有する化合物は抗炎症作用を有するものがあり医薬品として実用化されているが、これらいわゆるステロイド製剤には細胞のインスリン感受性を低下させること、脂質代謝に影響を与え脂肪肝等の患者の症状を悪化させるおそれがあることが知られ(非特許文献1)、食欲増進等により肥満を誘引する場合があることも知られている。
一方、特許文献4には、14−デヒドロエルゴステロールを含有する穀類植物由来材料の麹菌発酵物が樹状細胞により仲介される免疫反応を抑制する作用を有することが報告されている。また、特許文献5には、14−デヒドロエルゴステロールを含有する穀類植物由来材料の麹菌発酵物が、ヘリコバクター菌、病原性大腸菌、および歯周病菌などの細菌感染に起因する炎症に対して抗炎症作用を有することが報告されている。
しかし、いずれの文献にも、14−デヒドロエルゴステロールやそれを含有する麹菌発酵生成物が脂質代謝改善作用等を有することについては開示されていない。
特開2003−125732号公報 特表2014−514340号公報 WO2007/043306号公報 WO2010/150867号公報 特開2013−227252号公報
医薬品インタビューフォーム「ソル・メドロール(登録商標)静注用」2014年9月改訂(第11版)
本発明は、安全性が高い脂質代謝改善や肥満改善等のための組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、麹菌発酵生成物に含まれる14−デヒドロエルゴステロール(以下、単に「14−DHE」ということがある)が血中脂質の増加を抑制すること等を見出した。本発明者らは、また、麹菌発酵生成物に含まれる14−デヒドロエルゴステロールが内臓脂肪の増加や異所性脂肪の蓄積を抑制すること等を見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)有効成分として14−デヒドロエルゴステロールまたはそれを含有する麹菌発酵生成物を含んでなる、脂質代謝改善、脂質代謝異常のリスク低減、肥満改善、肥満リスク低減、体重増加抑制および/または脂肪蓄積抑制のための組成物。
(2)脂質代謝改善のための、上記(1)に記載の組成物。
(3)脂質代謝改善がその治療、予防または改善に有効である疾患または症状の治療、予防または改善に用いるための、上記(2)に記載の組成物。
(4)前記疾患および症状が、肥満、脂質異常症および動脈硬化症からなる群から選択される1種または2種以上である、上記(3)に記載の組成物。
(5)有効成分として14−デヒドロエルゴステロールまたはそれを含有する麹菌発酵生成物を含んでなる、インスリン抵抗性改善、インスリン抵抗性のリスク低減、高血糖改善および/または高血糖のリスク低減のための組成物。
(6)インスリン抵抗性改善および/または高血糖改善がその治療、予防または改善に有効である疾患または症状の治療、予防または改善に用いるための、上記(5)に記載の組成物。
(7)BMIが23.1以上のヒトに対して用いるための、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の組成物。
(8)麹菌発酵生成物が穀物由来原料を発酵原料とするものである、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の組成物。
(9)麹菌がアスペルギルス(Aspergillus)属の糸状菌である、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の組成物。
(10)穀物由来原料を麹菌により発酵させて14−デヒドロエルゴステロールを含有する発酵生成物を得ることを含んでなる、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の組成物の製造方法。
本発明において有効成分として用いられる14−デヒドロエルゴステロールは、長年食品として用いられてきた麹菌発酵生成物から抽出されるものであることから、本発明の組成物は、長期間にわたって服用しても副作用が少なく、安全性が高い点において有利である。
粗抽出物および分取物(14−DHE)のHPLCクロマトグラムを示した図である。 実施例1における試験動物各群の体重の推移を示した図である。図中の*は高脂肪食群と有意差(p<0.05)があることを意味する。 実施例1における試験動物各群の体重増加量の推移を示した図である。図中の*は高脂肪食群と有意差(p<0.05)があることを意味する。図中の**は高脂肪食群と有意差(p<0.01)があることを意味する。 実施例1における試験動物各群の腎臓周辺脂肪量を示した図である。図中の*は高脂肪食群と有意差(p<0.05)があることを意味する。 実施例1における試験動物各群の精巣周辺脂肪量を示した図である。 実施例1における試験動物各群の肝臓中の中性脂肪量を示した図である。 実施例1における試験動物各群の骨格筋中の中性脂肪量を示した図である。図中の*は高脂肪食群と有意差(p<0.05)があることを意味する。 実施例1における試験動物各群の骨格筋における各種脂肪合成系タンパク質の遺伝子発現を示した図である。図中の**は高脂肪食群と有意差(p<0.01)があることを意味する。 実施例1における試験動物各群の骨格筋におけるグルコース輸送体タンパク質(GLUT4)の遺伝子発現を示した図である。図中の*は高脂肪食群と有意差(p<0.05)があることを意味する。 実施例1における試験動物各群の血中インスリン濃度を示した図である。 14−DHE含有白麹エキスのHPLCクロマトグラムを示した図である。 実施例2における試験動物各群の血中遊離脂肪酸濃度の推移を示した図である。図中の*は対照群と有意差(p<0.05)があることを意味する。 実施例2における試験動物各群の血中中性脂肪濃度の推移を示した図である。図中の*は対照群と有意差(p<0.05)があることを意味する。 実施例2における試験動物各群の血中総コレステロール濃度の推移を示した図である。図中の*は対照群と有意差(p<0.05)があることを意味する。 実施例2における試験動物各群の血中インスリン濃度の推移を示した図である。 実施例2における試験動物各群のOGTTの結果を示した図である。図中の*は対照群と有意差(p<0.05)があることを意味する。 実施例2における試験動物各群の骨格筋中の中性脂肪量を示した図である。図中の*は対照群と有意差(p<0.05)があることを意味する。
発明の具体的説明
本発明で用いられる麹菌発酵生成物とは、麹菌が原料を発酵させることにより産出した発酵物であり、14−デヒドロエルゴステロール(14−DHE)を含有することを特徴とする。14−DHEは、下記の構造式で表される化合物であり、下記の物理化学的特性を有する。
(構造式)
Figure 0006695099
(物理化学的特性)
(1)分子量:394.63
(2)分子式:C28H42O(高分解能APCI-Orbitrap法による観測値:m/z 395.33057(M+H)+、理論値:395.33139)
(3)溶剤に対する溶解性:水に不溶、エタノールに難溶、クロロホルムに易溶
(4)紫外吸収スペクトル(MeCN):391nm
(5)1H-NMR(CD3OD): 6.15 (1H, m), 5.75 (1H, m), 5.65 (1H, dd, J = 2.2, 5.9Hz), 5.27 (1H, dd, J = 7.0, 15.1 Hz), 5.21 (1H, dd, J = 7.9, 15.1 Hz), 3.64 (1H, m), 2.51 (1H, ddd, J = 2.2, 5.1, 10.6 Hz), 2.30 (1H, m), 2.20 (1H, m), 2.20 (1H, dd, J = 3.2, 7.8 Hz), 2.06 (1H, m), 2.05 (1H, m), 1.94 (1H, m), 1.90 (1H, m),1.87 (2H, m), 1.87 (1H, ddd, J = 3.2, 7.0, 7.3 Hz), 1.71 (1H, m), 1.59 (1H, m),1.57 (1H, m), 1.45 (1H, m), 1.45 (1H, ddd, J = 3.2, 6.3, 6.5 Hz), 1.30 (1H, m),1.05 (3H, d, J = 6.8 Hz ), 0.93 (3H, d, J = 7.3 Hz), 0.92 (3H, s,), 0.89 (3H, s), 0.85 (3H, d, J = 6.5 Hz), 0.83 (3H, d, J = 6.3 Hz).
(6)13C-NMR(CD3OD):149.2 (s), 143.0 (s), 135.4 (s), 132.2 (s), 132.0 (s),120.5 (s), 120.4 (s), 117.4 (s), 70.4 (s), 58.1 (s), 46.3 (s), 45.4 (s), 42.8 (s), 41.0 (s), 39.0 (s), 38.9 (s), 37.8 (s), 37.0 (s), 36.0 (s), 33.1 (s), 32.0 (s), 21.1 (s), 19.9 (s), 19.7 (s), 19.6 (s), 17.6 (s), 16.8 (s), 14.5 (s).
本発明で用いられる麹菌発酵生成物は、原料に麹菌を接種し培養し、場合によっては、菌体を含む発酵産物を溶媒を用いて抽出することにより調製することができる。溶媒を用いて抽出して得られた麹菌発酵生成物には14−DHEが含まれていることから、本発明では溶媒を用いて抽出された麹菌発酵エキスを好ましくは用いることができる。
本発明で用いる麹菌は、14−DHEを産生することができるものであれば特に限定されないが、例えば、黒麹菌(アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・ニガー)、黄麹菌(アスペルギルス・オリゼー)、紅麹菌(モナスカス・アンカ)、醤油用麹菌(アスペルギルス・ソーヤ)、白麹菌(アスペルギルス・カワチ)、テンペ菌(リゾプス・オリゴスポラス)などが挙げられる。特に、アスペルギルス(Aspergillus)属の糸状菌である麹菌は14−DHE高産生であるため好ましい。本発明で用いる麹菌としては、とりわけ狭義の黒麹菌であるアスペルギルス・アワモリおよびアスペルギルス・ニガー、ならびに狭義の白麹菌であるアスペルギルス・カワチ、さらにこれらの菌種から誘導された亜種が好ましい。本発明で用いる麹菌は、特に好ましくは、白麹菌(アスペルギルス・カワチ)である。これらの麹菌の種麹は、秋田今野社、樋口もやし社、日本醸造工業社などから入手することができる。
麹菌を用いて発酵させるための原料としては、穀物由来材料が14−DHE高生産のために好ましい。穀物としては、植物分類表においてイネ科に分類されるすべての植物が挙げられる。本発明において穀物として利用できる植物としては、イネ、オオムギ、コムギ、ライムギ、アワ、ヒエ、トウモロコシなどが挙げられ、好ましくは、イネ、オオムギ、コムギおよびライムギである。本発明において発酵原料とする材料としては、上記のような穀物植物の種子が好ましく、より好ましくはそれらを発芽させた麦芽(特に大麦麦芽)や発芽玄米などである。あるいは、それらの種子の外皮、例えば、穀類種子全粒粉、穀類植物のフスマ、米糠なども発酵原料として用いることができる。
麹菌を用いた発酵は、原料に麹菌を接種して培養することにより行うものであって、当業者に公知の方法を用いて行うことができる。そのような方法としては、例えば、従来の蓋麹法、箱麹法、床麹法、機械麹法などを挙げることができる。また、固体原料に麹菌を接種して培養するのみならず、原料成分を水などの溶媒に溶解させた液体原料(液体培地)に麹菌を接種して培養して発酵を行ってもよい。培養(発酵)条件の詳細については、例えば、発酵ハンドブック((財)バイオインダストリー協会、発酵と代謝研究会編、2001年)を参照することができる。
上記培養工程において、好ましくは、麦芽エキスを含む液体培地に麹菌を接種し培養することができる。麦芽エキスは、麦、特に大麦の種子を発芽させ、場合により焙煎した後、それを水などの溶媒により抽出して得られる抽出物であり、マルトース、グルコース、フルクトースなどの還元糖を多く含み、その他ペプチド、アミノ酸、プリン、ビタミンなどを含むことが知られている。培地には、麦芽エキスの他に、マルトース、グルコース、ショ糖、乳糖などの糖やデンプン、あるいは酵母エキスを含有させてもよい。培地は液状のものを使用し、液体培養とすると、培養の制御が比較的容易である点、副産物の産生が少ない点、固体培養よりも14−DHEを多く産生する傾向がある点などで有利である。
麹菌発酵生成物は、培養工程を経て(発酵)得られた菌体を含む発酵産物を適切な溶媒を用い、一般的な手法により抽出することができる。溶媒抽出に用いる有機溶媒としては、エタノール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘキサン、ヘプタンなどが挙げられる。中でもエタノール、メタノール、酢酸エチル、およびヘキサンが好ましい。これらの溶媒は2種類以上を混合して用いてもよく、また2種類以上の有機溶媒を用いて2段階以上の溶媒抽出工程を行なってもよい。あるいは、そのような有機溶媒に代えて、またはそれらと組み合わせて、食用油脂を抽出溶媒として用いることができる。食用油脂は、好ましくは植物性油脂であり、例えば大豆油、ナタネ油、オリーブ油、パーム油、ゴマ油、コーン油、サフラワー油、綿実油、ピーナッツオイル、グレープシードオイル、えごま油、つばき油、亜麻仁油などが挙げられる。
本発明で用いられる麹菌発酵生成物は、より好ましくは、原料に麹菌を接種し培養する工程、菌体を含む発酵産物をエタノールと水を含む浸漬液に浸漬する工程、および浸漬工程後に得られた菌体を含む混合物に食用油脂を加えて抽出する工程を含んでなる方法に従って調製することができる。この方法により調製された麹菌発酵生成物は14−DHEを高濃度で含有する点で有利である。
浸漬工程において、培養により得られた菌体を含む発酵産物を浸漬するエタノールと水を含む浸漬液中のエタノールの濃度は20(w/w)%以上、特に30(w/w)%以上、とりわけ40(w/w)%以上であることが好ましく、かつ95(w/w)%以下、特に90(w/w)%以下、とりわけ80(w/w)%以下であることが好ましい。浸漬液は、水とエタノールとからなるエタノール水溶液であってもよい。エタノールと水を含む浸漬液は、発酵産物に含まれる菌体の細胞膜または細胞壁を弱め、菌体内部に蓄えられた14−DHEが抽出されやすくする効果を奏すると考えられる。浸漬は、1時間以上、特に6時間以上、とりわけ12時間以上、さらには24時間以上の時間をかけて行うことが好ましい。
エタノールと水を含む浸漬液に浸漬した発酵産物は、次いで食用油脂を用いた抽出工程に供される。抽出工程に用いることができる食用油脂は、ラードまたはヘットなどの動物性油脂であってもよいが、植物性油脂を用いることがより好ましい。抽出に用いることができる植物性油脂の具体例としては、大豆油、ナタネ油、オリーブ油、パーム油、ゴマ油、コーン油、サフラワー油、綿実油、ピーナッツオイル、グレープシードオイル、えごま油、つばき油、亜麻仁油などが挙げられる。食用油脂は、培養産物1gに対して10mL以下、特に8mL以下、とりわけ6mL以下の量で用いると、得られる麹菌発酵エキス中の14−DHE濃度が高くなるため好ましい。
エタノールと水を含む浸漬液に浸漬した発酵産物の抽出は、浸漬工程後に得られた菌体を含む混合物と、食用油脂とを直接混合して行うことができる。具体的には、例えば浸漬後の浸漬液と発酵産物の混合物を、必要に応じて攪拌した後、その中に食用油脂を加えてさらに攪拌し、油層を回収することにより行うことができる。この抽出工程により、目的の14−DHE含有麹菌発酵エキスを得ることができる。従って、得られた麹菌発酵エキスには、発酵産物から抽出された14−DHEの他に、抽出に用いた食用油脂、ならびに浸漬液に由来するエタノールおよび水が含まれ得る。なお、この抽出工程においては、菌体を破壊するための超音波処理などは特に必要ない。エタノールと水を含む浸漬液に浸漬したことにより、菌体の細胞膜または細胞壁は十分弱まっており、単に食用油脂を加えて攪拌するだけで菌体に蓄えられた14−DHEを抽出することができる。より効率的に14−DHEが抽出できるよう、抽出工程は必要に応じて複数回繰り返してもよい。
上記方法により調製された麹菌発酵生成物は、14−DHEを10ng/mg以上、より好ましくは50ng/mg以上、特に好ましくは100ng/mg以上含有することができる。
本発明で用いられる麹菌発酵生成物は、精製などを行わずに食品などに直接用いることができる。
本発明の組成物の有効成分としては麹菌発酵生成物を用いることもできるし、麹菌発酵生成物から単離した14−DHEを用いることもできる。麹菌発酵生成物からの14−DHEの単離は、公知の方法に従って行うことができる。
後記実施例に示されるように、14−DHEおよび麹菌発酵生成物は血中脂質濃度の抑制作用を有する。従って、14−DHEおよび麹菌発酵生成物は脂質代謝改善および脂質代謝異常のリスク低減のための組成物として使用することができるとともに、脂質代謝改善方法および脂質代謝異常のリスク低減方法に使用することができる。また、14−DHEおよび麹菌発酵生成物は脂質代謝改善剤および脂質代謝異常のリスク低減剤としても使用することができる。さらに、本発明では、14−DHEおよび麹菌発酵生成物は血中脂質濃度を調整するための組成物や血中脂質濃度の調整剤として使用できるとともに、血中脂質濃度を調整する方法に使用することができる。本明細書において、「血中脂質濃度の調整」とはHDL‐コレステロール以外の血中脂質濃度上昇の抑制および血中脂質濃度の抑制を含む意味で用いられ、HDL−コレステロールについては血中濃度低下の抑制および血中濃度の増加を含む意味で用いられる。
本明細書において、「脂質代謝改善」とは脂質代謝異常の改善を意味する。脂質代謝改善の程度は、例えば、血中の脂質濃度を指標にして評価することができる(実施例1および2参照)。指標となる血中の脂質としては、中性脂肪(トリグリセリド)、コレステロール(総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール)、遊離脂肪酸等が挙げられる。また本明細書において「リスク低減」とは、何らかの身体的状態あるいは生理的状態に関して、処置を講じなかった場合と比べて該状態の発現が抑制されることを意味する。
また、後記実施例に示されるように、14−DHEおよび麹菌発酵生成物は体重増加抑制作用および脂肪蓄積抑制作用を有する。従って、14−DHEおよび麹菌発酵生成物は体重増加抑制および/または脂肪蓄積抑制のための組成物として使用することができるとともに、体重増加抑制および/または脂肪蓄積抑制方法に使用することができる。また、14−DHEおよび麹菌発酵生成物は体重増加抑制剤および脂肪蓄積抑制剤としても使用することができる。
また、体重増加が抑制され、脂肪蓄積が抑制されることで肥満状態が改善されるとともに肥満の発現が抑制される。従って、14−DHEおよび麹菌発酵生成物は肥満改善および肥満リスク低減のための組成物として使用することができるとともに、肥満改善方法および肥満リスク低減方法に使用することができる。また、14−DHEおよび麹菌発酵生成物は肥満改善剤および肥満リスク低減剤としても使用することができる。
本明細書において、「肥満」とは医学的な肥満症の定義にあてはまる状態だけでなく、自分が肥満であると感じている状態を含み、「肥満改善」とは肥満状態の改善を意味する。肥満改善の程度は、例えば、体重や体脂肪の量を指標にして評価することができる(実施例1および2参照)。体脂肪としては、皮下脂肪、内臓脂肪、異所性脂肪が挙げられるが、特に指標となるのは、内臓脂肪、異所性脂肪の量である。本明細書において「異所性脂肪」とは、通常脂肪が蓄積される皮下や内臓以外の組織に蓄積する脂肪を意味し、例えば、筋肉、心臓、肝臓等に蓄積する脂肪が挙げられる。
さらに、後記実施例に示されるように、14−DHEおよび麹菌発酵生成物はインスリン抵抗性の改善作用および発症抑制作用を有する。従って、14−DHEおよび麹菌発酵生成物はインスリン抵抗性改善およびインスリン抵抗性の発症リスク低減のための組成物として使用することができるとともに、インスリン抵抗性改善方法およびインスリン抵抗性の発症リスク低減方法に使用することができる。また、14−DHEおよび麹菌発酵生成物はインスリン抵抗性改善剤およびインスリン抵抗性の発症リスク低減剤としても使用することができる。
上記の本発明の脂質代謝改善方法、脂質代謝異常のリスク低減方法、血中脂質濃度を調整する方法、体重増加抑制方法、脂肪蓄積抑制方法、肥満改善方法、肥満リスク低減方法、インスリン抵抗性改善方法およびインスリン抵抗性の発症リスク低減方法は、有効量の14−DHEあるいはそれを含む麹菌発酵生成物をヒトまたは非ヒト動物に摂取させるか、あるいは投与することにより実施することができる。
本発明における14−DHEあるいはそれを含む麹菌発酵生成物の使用はヒトおよび非ヒト動物における使用であってもよく、治療的使用と非治療的使用のいずれもが意図される。本明細書において、「非治療的」とはヒトを手術、治療または診断する行為(すなわち、ヒトに対する医療行為)を含まないことを意味し、具体的には、医師または医師の指示を受けた者がヒトに対して手術、治療または診断を行う方法を含まないことを意味する。また、本発明において14−DHEあるいはそれを含む麹菌発酵生成物をヒトに使用する場合、好ましくはBMIが23.1以上のヒトに対して用いることができる。
本発明においては、また、脂質代謝改善がその治療、予防または改善に有効である疾患および症状の治療、予防または改善に14−DHEあるいは麹菌発酵生成物を使用することができる。
脂質代謝改善がその治療、予防または改善に有効である疾患および症状としては、肥満、脂質異常症および動脈硬化症(冠動脈疾患、心筋梗塞、脳梗塞を含む)等が挙げられる。従って、14−DHEはこれらの疾患および症状の治療剤、予防剤および改善剤として使用できるとともに、これらの疾患および症状の治療方法、予防方法および改善方法に使用することができる。
本発明においては、さらに、インスリン抵抗性改善および/または高血糖改善がその治療、予防または改善に有効である疾患および症状の治療、予防または改善に14−DHEあるいは麹菌発酵生成物を使用することができる。
インスリン抵抗性改善がその治療、予防または改善に有効である疾患および症状としては、糖尿病が挙げられる。従って、14−DHEはこの疾患および症状の治療剤、予防剤および改善剤として使用できるとともに、この疾患および症状の治療方法、予防方法および改善方法に使用することができる。
本発明の脂質代謝改善、脂質代謝異常のリスク低減、体重増加抑制、脂肪蓄積抑制、肥満改善、肥満リスク低減、インスリン抵抗性改善、高血糖改善あるいは高血糖のリスク低減のための組成物および用剤並びに本発明の治療剤および予防剤は、医薬品、医薬部外品、飲食品、飼料などの形態で提供することができ、下記の記載に従って実施することができる。また本発明の脂質代謝改善方法、脂質代謝異常のリスク低減方法、血中脂質濃度を調整する方法、体重増加抑制方法、脂肪蓄積抑制方法、肥満改善方法、肥満リスク低減方法、インスリン抵抗性改善方法およびインスリン抵抗性の発症リスク低減方法並びに本発明の治療方法および予防方法は下記の記載に従って実施することができる。
本発明の有効成分である14−DHEまたはそれを含有する麹菌発酵生成物(以下、これらを併せて「14−DHE等」と言う)はヒトおよび非ヒト動物に経口投与または非経口投与することができ、好ましくは経口投与することができる。経口剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤が挙げられる。非経口剤としては、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内
注射剤)、点滴剤、外用剤(例えば、経鼻投与製剤、経皮製剤、軟膏剤)、坐剤(例えば、直腸坐剤、膣坐剤)が挙げられる。これらの製剤は、当分野で通常行われている手法により、薬学上許容される担体を用いて製剤化することができる。薬学上許容される担体としては、賦形剤、結合剤、希釈剤、添加剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられ、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ワックス、カカオバターを担体として使用できる。
経口剤の製造方法は特に限定されずいずれの方法をも使用することができる。有効成分に賦形剤(例えば、乳糖、白糖、デンプン、マンニトール)、崩壊剤(例えば、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム)、結合剤(例えば、α化デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニールピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース)、安定化剤および/または滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000)などの製剤用添加剤を配合して圧縮成形し、次いで必要により、味のマスキング、腸溶性あるいは持続性の目的のため公知の方法でコーティングすることにより製造することができる。コーティング剤としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびオイドラギット(ローム社)などを用いることができる。カプセル剤は有効成分をそのまままたは有効成分にたとえば安定化剤、分散剤、着色剤および/または保存剤などの製剤用添加剤を配合して製造してもよい。また、カプセルはソフトカプセルでもハードカプセルでもよく、カプセルの素材は特に限定されずたとえばゼラチンや植物性繊維や澱粉などを用いることができ、付着防止措置を施してもよい。
非経口剤のうち注射剤は、有効成分を分散剤(例えば、Tween80(アトラスパウダー社))、保存剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール、クロロブタノール、フェノール)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、ソルビトール、ブドウ糖、転化糖)などの製剤用添加剤と共に水性溶剤(例えば、蒸留水、生理的食塩水、リンゲル液)あるいは油性溶剤(例えば、オリーブ油、ゴマ油、綿実油、コーン油などの植物油、プロピレングリコール)などに溶解、懸濁あるいは乳化することにより製造することができる。この際、所望により溶解補助剤(例えば、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカイン)等の添加物を添加してもよい。
本発明の有効成分である14−DHE等はヒトおよび非ヒト動物に経口摂取させることができる。14−DHE等を経口摂取させる場合には14−DHE等は単離、精製または粗精製された形態のものであっても、14−DHE等を含む食品あるいは食品の原料の形態であってもよい。
本発明の有効成分である14−DHEあるいは麹菌発酵生成物を食品として提供する場合には、14−DHEあるいは麹菌発酵生成物をそのまま食品に含有させることができ、該食品は14−DHEを有効量含有した食品である。本明細書において、14−DHEを「有効量含有した」とは、個々の食品において通常喫食される量を摂取した場合に後述するような範囲で14−DHEが摂取されるような含有量をいう。また「食品」とは、健康食品、機能性食品、保健機能食品(例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)、特別用途食品(例えば、幼児用食品、妊産婦用食品、病者用食品)を含む意味で用いられる。「食品」の形態は特に限定されるものではなく、例えば、飲料の形態であっても、半液体やゲル状の形態であってもよい。
本発明で提供される食品としては、飯類、麺類、パン類およびパスタ類等炭水化物含有飲食品;クッキーやケーキなどの洋菓子類、饅頭や羊羹等の和菓子類、キャンディー類、ガム類、ヨーグルトやプリンなどの冷菓や氷菓などの各種菓子類;ウイスキー、バーボン、スピリッツ、リキュール、ワイン、果実酒、日本酒、中国酒、焼酎、ビール、アルコール度数1%以下のノンアルコールビール、発泡酒、その他雑酒、酎ハイなどのアルコール飲料;果汁入り飲料、野菜汁入り飲料、果汁および野菜汁入り飲料、清涼飲料水、牛乳、豆乳、乳飲料、ドリンクタイプのヨーグルト、ドリンクタイプのゼリー、コーヒー、ココア、茶飲料、栄養ドリンク、スポーツ飲料、ミネラルウォーターなどの非アルコール飲料;卵を用いた加工品、魚介類や畜肉(レバー等の臓物を含む)の加工品(珍味を含む)などを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
茶飲料としては、例えば、紅茶、緑茶、麦茶、玄米茶、煎茶、玉露茶、ほうじ茶、ウーロン茶、ウコン茶、プーアル茶、ルイボスティー茶、ローズ茶、キク茶、ハーブ茶(例えば、ミント茶、ジャスミン茶)が挙げられる。
果汁入り飲料や果汁および野菜汁入り飲料に用いられる果物としては、例えば、リンゴ、ミカン、ブドウ、バナナ、ナシ、アサイー、ブルーベリー、およびウメが挙げられる。また、野菜汁入り飲料や果汁および野菜汁入り飲料に用いられる野菜としては、例えば、トマト、ニンジン、セロリ、キュウリ、およびスイカが挙げられる。
14−DHE等は脂質代謝改善作用やインスリン抵抗性改善作用など各種作用を有するため、日常摂取する食品や飲料、さらにはサプリメントとして摂取する食品に含有させて提供することができる。この場合、14−DHE等は1食当たりに摂取する量が予め定められた単位包装形態で提供することができ、1食当たりの単位包装形態としては、例えば、パック、包装、缶、ボトル等で一定量を規定する形態が挙げられる。14−DHE等の各種作用をよりよく発揮させるためには、14−DHEを1食当たり50〜100000μg、好ましくは100〜50000μg摂取させることが望ましい。
本発明において14−DHE等を食品の形態で提供する場合には、例えば1容器当たり14−DHEを50〜100000μg、好ましくは100〜50000μg含有させることができる。また、14−DHE等をサプリメントの形態で提供する場合、例えば1粒あるいは1カプセル当たり14−DHEを10〜1000μg、好ましくは20〜500μg、より好ましくは100〜400μg含有させることができる。また、飲料とする場合、例えば、1容器当たり14−DHEを20〜10000μg/100〜500mL、好ましくは100〜1000μg/100〜500mL、より好ましくは200〜500μg/100〜500mL含有させることができる。1包装単位当たりの14−DHEの含有量が1食当たりの摂取量に達しない場合には、14−DHEが1食当たり50〜100000μg、好ましくは100〜50000μg摂取されるように、摂取量に関する説明事項が記載された文書等を一緒に提供することが好ましい。
本発明の医薬品および食品はヒトが食品として長年摂取してきた麹に含まれる14−DHEを利用することから、毒性も低く、それを必要とする哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル等)に対し安全に用いることができる。14−DHEの摂取量または投与量は、受容者の性別、年齢および体重、症状、投与時間、剤形、投与経路並びに組み合わせる薬剤等に依存して決定できる。例えば、14−DHEをヒトに摂取させる、または投与する場合、成人1日当たり、1〜100000μg/kg体重、好ましくは2〜100000μg/kg体重、より好ましくは4〜50000μg/kg体重の範囲となるように、1日1回または数回に分けて摂取させる、または投与することができる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1:食餌性肥満マウスにおける14−DHEの脂質代謝改善作用および肥満改善作用の確認
高脂肪食の負荷によって作製される食餌性肥満マウスは、肥満者に類似した特徴、すなわち、異所性脂肪蓄積やインスリン抵抗性を呈するモデルである。本実施例では、食餌性肥満マウスを用いて、14−DHEの脂質代謝改善作用および肥満改善作用を検証した。
1.14−DHEの調製
白麹菌(製品評価技術基盤機構より入手したAspergillus kawachii NBRC4308)をポテトデキストロース寒天培地(Difco、BD社製)に植菌し、25℃で7日間静置培養した。0.01% Tween 20を含む麦芽エキス培地(Difco、BD社製;製品名Malt extract broth)に胞子を形成した菌体を懸濁し、フィルター濾過を行なったものを胞子溶液とした。オートクレーブ滅菌後の麦芽エキス培地150mlを容量500mlの坂口フラスコに入れ、そこに1.0×10胞子/mlの濃度になるように胞子溶液を添加し、140spm、30℃で20時間振盪培養を行ったものを前培養液とした。次に、5Lジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ社製)に麦芽エキス培地3.0Lを張り、オートクレーブ滅菌処理した後、前培養液37ml(胞子数で1.25x10個/ml)を添加し、30℃、400rpm、0.5vvmの条件で144時間培養を行った。なお、前培養、本培養の際にそれぞれシリコーンオイルを添加して消泡した。
培地から回収した菌体を59(w/w)%エタノールにて一晩浸漬後、これにヘキサンを加えた後に400rpmで攪拌し、10,000rpmで遠心分離して上清(ヘキサン層)を得た。これをドライアップした後100%エタノールで10mg/mlとし、0.22μm径PTFE膜でフィルター濾過したものをHPLCサンプルとした(粗抽出物)。これをDevelosil C30−UG−3(10×250mm)(野村化学社製)を用いた高速液体クロマトグラフィー(移動層;アセトニトリル/2−プロパノール=99/1、流速;1.0mL/分、検出;320nmおよび280nm吸収)に供して分析した。粗抽出物および分取物のクロマトグラムを図1に示す。320nmの吸収波長では14−DHEによる吸収が大きくなり、280nmの吸収波長では副産物による吸収が多く観察されることから、両波長のピーク面積を確認しながら、14−DHEのピークのみを分取し、14−DHEを単離する操作を行った。
2.試験条件
14週齢の雄性C57BL/6J DIOモデル(4週齢から10週間、HFD60を負荷して肥満を誘導したC57BL/6Jマウス)を日本チャールス・リバー株式会社から購入し、高脂肪食(オリエンタル酵母工業株式会社の高脂肪食HFD60(60kcal%fat))で1週間飼育した後、平均体重がほぼ同一になるように1群10匹ずつ2群に群分けし、高脂肪食群には引き続き高脂肪食を、14−DHE食群には、14−DHEが終濃度0.001%(w/w)となるように添加された高脂肪食をそれぞれ5週間投与した。なお、14−DHEは乾固したものを大豆油に溶解し、あらかじめ大豆油を除去したHFD60に規定量になるように加えた。
また、対照として、日本チャールス・リバー株式会社から購入した14週齢の雄性C57BL/6Jを標準飼料であるAIN93Mで6週間飼育した群を設定した(通常食群)。
各飼料は食べきる量である3.0g/匹/日(14−DHEは30μg/匹/日)を摂取させ、飲料水は自由摂取させた。
以上3群について、投与開始日(投与第1日目)から5週間目(投与第35日目)に一晩絶食させた後、解剖を実施し、心採血と肝臓、骨格筋、および内臓脂肪(精巣周辺脂肪、腎臓周辺脂肪)の摘出を行った。
3.測定項目
(1)体重
投与開始日前日(0日目)並びに投与第5日目、投与第10日目、投与第14日目、投与第21日目、投与第28日目および投与第35日目に各マウスの体重を測定した(投与開始日を投与第1日目とする)。
(2)内臓脂肪量の測定
精巣周辺脂肪および腎臓周辺脂肪の湿重量をそれぞれ測定した。
(3)肝臓および骨格筋中の中性脂肪量の測定
凍結させた肝臓および骨格筋をそれぞれ試験管に0.1gずつ秤量した。これに4mLクロロホルム/メタノール(2:1)を加えて1分間ホモジナイズを行った。さらに0.5%NaCl溶液を1ml添加し、攪拌後、800rpm、20℃で20分間遠心して下層を回収した。再度、3mlのクロロホルム/メタノール(2:1)を添加した後、同様の操作を行った。回収した下層をガラス試験管に採取し、窒素ガス送風下、抽出液を50℃で乾固させた。乾固後、1mlの2−プロパノールに溶解した。この再溶解液の中性脂肪濃度をトリグリセライドE−テストワコー(和光純薬工業社製)を用いて測定した。肝臓および骨格筋の中性脂肪量は凍結湿重量あたりの重量として算出した。
(4)異所性脂肪蓄積と遺伝子発現解析
摘出した骨格筋の一部からTrizolを使用してRNAを抽出し、リアルタイムPCRを用いて脂肪合成系タンパク質(PPARγ、GDAT2、CD36およびLPL)およびグルコース輸送体タンパク質(GLUT4)の遺伝子発現を解析した。total RNAは RNAeasy Mini Kit(QIAGEN社製)を用いて精製した。cDNAはtotal RNAからiScript cDNA Synthesis Kit(Bio−Rad社製)を用いて合成した。SYBR Premix Ex Taq(Perfect Real Time)(TaKaRa社製)を用いてLightCycler480(Roche社製)によりRT−PCRを行い、各種サンプルのGAPDH、PPARγ、GDAT2、CD36、LPLおよびGLUT4の発現解析を実施した。使用するプライマーは、下記に示した。
<GAPDH>
5’-AACGACCCCTTCATTGAC-3’(順方向)(配列番号:1)
5’-TCCACGACATACTCAGCAC- 3’(逆方向)(配列番号:2)
<PPARγ>
5’-TCTGCGAGCCCTGGCAAAGCAT-3’(順方向)(配列番号:3)
5’-TGGCCACCTCTTTGCTCTGCTCCT- 3’(逆方向)(配列番号:4)
<GDAT2>
5’-TGGCAAGAACGCAGTCACCCTGA-3’(順方向)(配列番号:5)
5’-CATGGAAGATGCAGGGGGCGAAA- 3’(逆方向)(配列番号:6)
<CD36>
5’-TGGCACAGACGCAGCCTCCTTT-3’(順方向)(配列番号:7)
5’-TGGATTCTGGAGGGGTGATGCAAA- 3’(逆方向)(配列番号:8)
<LPL>
5’-GTTTGGCTCCAGAGTTTGACCG-3’(順方向)(配列番号:9)
5’-CATACATTCCCGTTACCGTCCAT- 3’(逆方向)(配列番号:10)
<GLUT4>
5’-ACCATAGGAGCTGGTGTGGTCAAT-3’(順方向)(配列番号:11)
5’-GGCCAATCTCAAAGAAGGCCACAA- 3’(逆方向)(配列番号:12)
(5)血中インスリン濃度の測定
血液凝固抑制剤(ヘパリン)を含む容器に採取した血液を5,000rpmで5分間遠心して血漿を分離した。血漿中のインスリン濃度は、超高感度マウスインスリン測定キット(森永生科学研究所社製)を使用して測定した。
(6)検定
得られた結果について、14−DHE食群と高脂肪食群でt検定を行い、群間差が危険率1%未満または5%未満であった場合に差が有意であるとした。
4.結果
投与期間中の体重を図2に示す。高脂肪食群と比較すると14‐DHE食群では投与第28日目で体重の有意な低下が認められた。また、投与開始第1日目からの体重増加量を図3に示す。高脂肪食群と比較すると14‐DHE食群では投与第21日目以降で体重増加量の有意な低下が認められた。これらのことから14−DHEは体重増加抑制効果を有することが明らかとなった。
解剖時の腎臓周辺脂肪量および精巣周辺脂肪量をそれぞれ図4および図5に示す。高脂肪食群と比較すると14−DHE食群では腎臓周辺脂肪量が有意に低下した(図4)。高脂肪食群と比較すると14−DHE食群では精巣周辺脂肪重量について有意な差はなかったものの(p=0.096)抑制傾向にあった(図5)。また、肝臓中の中性脂肪量および骨格筋中の中性脂肪量をそれぞれ図6および図7に示す。高脂肪食群と比較すると14‐DHE食群では骨格筋中の中性脂肪量が有意に低下した(図7)。高脂肪食群と比較すると14‐DHE食群では肝臓中の中性脂肪量について有意な差はなかったものの(p=0.076)抑制傾向にあった(図6)。これらのことから、腎臓周辺脂肪はヒトの内臓脂肪に相当すると考えられるところ、14−DHEの投与により内臓脂肪の蓄積が抑制されることが明らかになった。また、肥満が進行すると、異所性脂肪蓄積(例えば、骨格筋や肝臓への脂肪の蓄積)が生じるところ、14−DHEの投与により、異所性脂肪の蓄積が抑制されることが明らかとなった。
骨格筋における脂肪合成系タンパク質の遺伝子発現を調べた結果を図8に示す。いずれの遺伝子においても、高脂肪食群と比較して14−DHE食群ではその発現が有意に低かった。すなわち、高脂肪食群において認められた脂肪合成系タンパク質(PPARγ、DGAT2、CD36、LPL)の遺伝子発現上昇が、14−DHEの投与により抑制されることが明らかとなった。
骨格筋におけるグルコース輸送体タンパク質(GLUT4)の遺伝子発現を調べた結果を図9に示す。高脂肪食群と比較して14‐DHE食群ではその発現が有意に高かった。また、血中インスリン濃度を図10に示す。高脂肪食群と比較して14‐DHE食群では血中インスリン濃度が有意な差はなかったものの(p=0.08)低い傾向であった。
実施例2:14−DHEおよび14−DHE含有白麹エキスの高血糖および脂質異常症改善作用
本実施例では、糖尿病と脂質異常症を自然発症する肥満・インスリン抵抗性モデルマウス(KK−Ay)において、14−DHEおよびそれを含有する白麹エキス(白麹菌発酵生成物の抽出物)の経口投与によって糖尿病ならびに脂質異常症の発症が抑制されるか否かを検証した。
1.14−DHEおよび14−DHE含有白麹エキスの調製
14−DHEの調製は実施例1と同様の方法で行った。
14−DHE含有白麹エキスを調製する際の白麹菌(Aspergillus kawachii NBRC4308)の培養に関しては実施例1と同様の方法で行った。培地から回収した菌体を59(w/w)%エタノールにて一晩浸漬後、これに大豆油を加えた後に400rpmで攪拌し、10,000で遠心分離して得た上清(油層)を14−DHE含有白麹エキスとした。これをDevelosil C30−UG−3(10×250mm)(野村化学社製)を用いた高速液体クロマトグラフィー(アセトニトリル/2−プロパノール=99/1)に供して分析し、白麹エキスあたりの14−DHE含有濃度を算出した。14−DHE含有麹エキスのクロマトグラムを図11に示す。なお、吸収波長280nmおよび320nmで精製度の確認を行っている。
2.試験条件
日本クレア株式会社から入手した6週齢雄性KK−Ay/Ta jc1マウスを、平均体重がほぼ同一になるように1群7匹ずつ3群に群分けし、対照群には、標準的な飼料であるAIN93G飼料(オリエンタル酵母工業社製)を、14−DHE食群には、終濃度が0.0006%(w/w)となるように14−DHEが添加されたAIN93G飼料を、14−DHE含有白麹エキス群には、14−DHE終濃度が0.0006%(w/w)となるように14−DHE含有白麹エキスが添加されたAIN93G飼料をそれぞれ6週間投与した。各飼料は食べきる量である5.0g/匹/日(14−DHEは30μg/匹/日)を摂取させ、飲料水は自由摂取させた。
投与期間終了後に、マウスを6時間絶食させた後、安楽死させ、心採血と骨格筋の採取を行った。
3.測定項目
(1)血中脂質濃度および血中インスリン濃度の測定
投与2週間目、4週間目および6週間目に眼窩採血をヘパリン処理ヘマトクリット毛細管にて実施した。血液は血液凝固抑制剤(ヘパリン)を含む容器に採取した後、5,000 rpmで5分間遠心して血漿を分離し、血漿中の遊離脂肪酸、中性脂肪(トリグリセリド)、総コレステロール濃度、インスリン濃度を測定した。血漿中濃度は市販の測定試薬、NEFA C−テストワコー(和光純薬工業社製)、トリグリセライドE−テストワコー(和光純薬工業社製)、コレステロールE−テストワコー(和光純薬工業社製)および超高感度マウスインスリン測定キット(森永生科学研究所製)を使用して測定した。
(2)経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)
投与5週間目に経口グルコース負荷試験(OGTT)を実施し、インスリン抵抗性を評価した。すなわち、一晩絶食した動物に0.4g/mLのグルコース溶液を5mL/kg(グルコースとして2g/kg)で強制経口投与した。グルコース投与前、グルコース投与30、90および180分後に尾静脈より血液をヘパリン処置ヘマトクリット毛細管(テルモ社製)に採取した。血液を3,000rpmで15分間遠心して血漿を分離し、血糖をそれぞれグルコースC II−テストワコー(和光純薬工業社製)を用い測定した。
(3)骨格筋中の中性脂肪量の測定
骨格筋中の中性脂肪量は実施例1(3)と同様に評価した。
(4)検定
得られた結果は、14‐DHE食群と14−DHE含有白麹エキス群それぞれについて対照群との間でt検定を行い、群間差が危険率1%未満または5%未満であった場合に差が有意であるとした。
4.結果
血漿中の遊離脂肪酸濃度、中性脂肪濃度、総コレステロール濃度およびインスリン濃度を図12、図13、図14および図15にそれぞれ示す。
投与第2週目においては、14−DHE含有白麹エキス群の中性脂肪濃度(トリグリセリド)、ならびに14−DHE含有白麹エキス群および14−DHE食群の総コレステロール濃度が対照群と比較して有意に低かった。投与第4週目においては、14−DHE含有白麹エキス群および14−DHE食群の遊離脂肪酸濃度が対照群と比較して有意に低かった。投与第6週目においては、14−DHE食群の遊離脂肪酸濃度が対照群と比較して有意に低かった。また、有意差の認められない期間・測定項目のすべてにおいて14−DHE含有白麹エキス群および14−DHE食群の値は対照群と比較して低い傾向にあった。これらのことから、14−DHEまたは14−DHE含有白麹エキスの投与により、一晩絶食後の空腹時の血漿トリグリセリド濃度、遊離脂肪酸濃度および総コレステロール濃度が抑制されることが明らかとなった。インスリン濃度は投与2週間目および4週間目においては3群の差はほとんど認められなかったが、投与6週間目において、14−DHE含有白麹エキス群および14‐DHE食群で非投与群に比してインスリン濃度が低い傾向にあった(14-DHE食群と非投与群との差は有意でないもののp<0.1であった。)
OGTTにおける血漿中グルコース濃度変化を図16に示す。
14−DHE含有白麹エキス群では、グルコースを投与しても血中グルコース濃度は変化なく推移し、投与後0.5時間および1.5時間において対照群より低い傾向であった。14‐DHE食群では、血中グルコース濃度は投与後0.5時間でわずかな上昇傾向が認められたものの、その後低下し、グルコース投与開示時よりも低く推移し、いずれの値においても対照群よりも低く推移した(なお、投与後1.5時間時点での差は有意であった)。14−DHEの投与により、グルコース負荷後の血糖上昇が有意に抑制されること、また、14−DHE含有白麹エキスの投与により、グルコース負荷後の血糖上昇が抑制される傾向にあることから、14−DHEおよびそれを含有する白麹エキスは耐糖能異常を改善することが明らかとなった。
骨格筋中の中性脂肪量の測定結果を図17に示す。
骨格筋中の中性脂肪量は、対照群と比較すると、14‐DHE含有白麹エキス群では有意に低く、14‐DHE食群では有意な差はなかったものの(p=0.090)、抑制傾向にあった(図17)。これらのことから、14−DHEまたはそれを含有する白麹エキスの投与により、肥満の進行によって起こる異所性脂肪蓄積が抑制されることが明らかとなった。
以上のことから、14−DHEまたは14−DHE含有白麹エキスは、インスリン抵抗性の発症リスクを低減するとともに、インスリン抵抗性を改善し、さらには高血糖や脂質異常症の発症リスクを低減するとともに高血糖や脂質異常症を改善ないし抑制することが明らかになった。
実施例3:ヒトにおける14−DHE含有白麹エキスの肥満改善作用および脂質代謝改善作用
本実施例では、ヒトに対する試験を実施して、14−DHE含有白麹エキスの肥満改善作用および脂質代謝改善作用を検証した。
1.試験方法
本試験はヘルシンキ宣言に基づく倫理原則および個人情報保護法を遵守し、「疫学研究に関する倫理指針」(平成14年6月17日文部科学省 厚生労働省)を遵守し第三者機関において実施した。
健康で糖尿病と診断されていない30歳以上50歳未満の日本人女性であって自己申告のBMIが23〜25の者を試験対象とし、プラセボ対照ランダム化二重盲検試験にて評価した。
被験者は、年齢、BMIが各群間の分散、平均値に偏りのないことを確認したうえで、試験食を摂取する群(以下「試験群」という)に22名、対照食を摂取する群(以下「対照群」という)に22名がそれぞれ割付けられた。
被験者には割付けられた試験食1500mgを朝食後および夕食後の1日2回に分けて水または湯とともに摂取期間中毎日摂取させた。また、食事をしないときも試験食のみを摂取させた。試験食の摂取期間は8週間とした。
試験食の組成は以下のとおりである。
(i)試験食:Aspergillus kawachii NBRC4308抽出エキス(実施例1の1.に従って調製)80質量%と安定化および均質化剤(ライスワックスS−100、横関油脂工業社製)20質量%とを含むカプセル。試験食1500mg中には14−DHEを200μg以上含有させた。
(ii)対照食:Aspergillus kawachii NBRC4308抽出エキスの代わりに大豆油を使用すること以外は試験食と同じカプセル。
2群について、試験食摂取前から試験食8週間摂取終了後までの所定の日に基本項目の測定、血液検査、問診スコア記入を以下に示すとおり行い評価した。以下、摂取開始2週前(−2w)とは試験食摂取開始日の2週前を、摂取開始日(0w)とは試験食摂取開始日であって当日分の試験食摂取前を、摂取4週目(4w)とは試験食摂取開始日から4週目であって当日分の試験食摂取後を、摂取8週目(8w)とは、試験食摂取開始日から8週目であって当日分の試験食摂取後をそれぞれ意味する。
2.評価項目
(1)基本項目
基本項目として、身長、体重、体脂肪率、腹囲、ヒップ、およびウエストを測定した。測定は株式会社ニコダームリサーチにて、摂取開始2週前と摂取8週目に行った。
(2)血液検査
血液検査として、総コレステロール(TC)、中性脂肪(トリグリセライド、TG)、HDL−コレステロール(HDL-C)、LDL−コレステロール(LDL−C)、およびレプチンの濃度を測定した。なお、LDL−Cの測定は直接測定法による。測定は医療機関にて採血を行った後日本医学株式会社にて該採血検体の定量分析を行った。採血および定量分析は摂取開始日と摂取8週目に行った。
(3)問診スコア記入
被験者に1〜5(1全くなし, 2ほとんどなし, 3少しあり, 4中等度あり, 5高度にあり)のうち該当するいずれかのスコアにチェックをつける形式で問診票に記入させた。摂取開始2週前と摂取4週目および8週目に行った。
(4)統計解析
(i)解析はIBM SPSS Statistics 19を用いて実施した。
(ii)群内比較(前後比較);群内で、摂取開始日、摂取4週目、摂取8週目の前後比較としてDunettの検定を行った。摂取4週目に測定を行わない項目については摂取開始2週前または摂取開始日と、摂取8週目の前後比較として対応のあるt検定を行った。
(iii)群間比較;問診スコアについては摂取開始2週前を基準とした変化量と、変化率をもとにMann―Whitneyの検定を行った。その他の項目においては、摂取開始2週前を基準とした変化量と、変化率をもとに独立サンプルのt検定を行った。また、体重については摂取開始2週前から摂取8週目にかけて体重が増加した者と減少した者の数について、χ検定(カイ二乗検定)を行った。
(iv)有意水準は両側検定で危険率5%未満とした。
(5)層別解析
Body Math Index(体格指数、以下「BMI」という)が23.1以上の者を対象として上記全体解析と同様の解析を行った。
3.結果
(1)全体解析
(i)基本項目
基本項目の測定結果を表1に示す。
Figure 0006695099
摂取開始日において試験群と対照群に有意差の認められた項目はなかった。
群間比較解析において、いずれの項目についても対照群に対し試験群で有意な差は認められなかった。
体重についてのχ検定の結果を表2に示す。
Figure 0006695099
摂取開始2週前から摂取8週目にかけて体重が減少した者については、対照群に対し試験群では有意に多かった。なお、摂取開始2週前から摂取8週目にかけて体重が不変であった者は両群ともいなかった。
(ii)血液検査
血液検査の結果を表3に示す。
Figure 0006695099
摂取開始時において試験群と対照群に有意差の認められた項目はなかった。
対照群においては、摂取開始日に対し摂取8週目でTC濃度が有意に高かった。試験群においては、摂取開始日に対し摂取8週目でTG濃度が有意に低く、HDL‐C濃度が有意に高かった。また、摂取開始日から摂取8週目までのTG変化量は、対象群に対し試験群では有意に大きかった。
(iii)問診票
問診スコアの解析結果を表4に示す。
Figure 0006695099
試験群および対照群において、摂取前後で問診スコアに有意な変化は認められなかった(Dunnet検定)。しかしながら、摂取8週目での「太りやすい」スコアは対照群に対し試験群で有意に低く、また、摂取8週目での「やせ・体重減少」スコアは対照群に対し試験群で有意に高かった(Mann―Whitney検定)。
(2)層別解析
BMIが23.1以上の者を対象として全体解析と同様の解析を行った。解析対象は試験群10名、対照群9名であった。
(i)基本項目
基本項目の測定結果を表5に示す。
Figure 0006695099
摂取開始時において試験群と対照群に有意差の認められた項目はなかった。
対照群においては、摂取開始日に対し摂取8週目で体脂肪率が有意に上昇した。一方で、試験群においては有意な差は認められなかった。
(ii)血液検査
血液検査(レプチン)の結果を表6に示す。
Figure 0006695099
レプチン濃度は体脂肪率と比例関係にあることが知られるところ、対照群においては摂取開始日に対し摂取8週目でレプチン濃度が有意に高かった。一方で、試験群においては有意な差は認められなかった。さらに、両群におけるレプチン濃度の変化率を比較すると、対照群に対し試験群で抑制傾向が示された。
(iii)問診票
問診スコアの解析結果を表7に示す。
Figure 0006695099
摂取8週目での「やせ・体重減少」スコアは、試験群では上昇し、対照群では減少しているところ、両群を比較した変化量、変化率のいずれの差も有意なものであった。
4.結論
対照食摂取と比較して、試験食を8週間摂取することにより、体重が減少しやすく、体重増加が抑制されることが明らかとなった。また、「太りやすい」、「やせ・体重減少」という自覚項目にかかるスコアが改善されることが明らかとなった。さらに、試験食の摂取によりTG濃度が有意に抑制され、HDL-C濃度が有意に増加されることから、脂質代謝が改善されることが強く示唆された。
特に、BMIが23.1以上の者については、肥満に伴う血中レプチン濃度の増加が試験食の摂取により抑制されることから、試験食の摂取により脂肪細胞の肥大化が抑制される可能性が示唆された。


Claims (12)

  1. 有効成分として14−デヒドロエルゴステロールまたはそれを含有するアスペルギルス・カワチ発酵生成物の溶媒抽出物を含んでなる、脂質代謝改善、脂質代謝異常のリスク低減、肥満改善、肥満リスク低減、体重増加抑制および/または脂肪蓄積抑制のための組成物。
  2. 脂質代謝改善のための、請求項1に記載の組成物。
  3. 脂質代謝改善がその治療、予防または改善に有効である疾患または症状の治療、予防または改善に用いるための、請求項2に記載の組成物。
  4. 前記疾患および症状が、肥満、脂質異常症および動脈硬化症からなる群から選択される1種または2種以上である、請求項3に記載の組成物。
  5. 前記溶媒抽出物が14−デヒドロエルゴステロールを10ng/mg以上含むものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
  6. ヒトに、14−デヒドロエルゴステロールを1日あたり2〜100000μg/kg体重を投与または摂取させるものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
  7. 14−デヒドロエルゴステロールを100〜50000μg含む1食当たりの単位包装形態である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
  8. ンスリン抵抗性改善、インスリン抵抗性のリスク低減、高血糖改善および/または高血糖のリスク低減に用いるための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
  9. インスリン抵抗性改善および/または高血糖改善がその治療、予防または改善に有効である疾患または症状の治療、予防または改善に用いるための、請求項に記載の組成物。
  10. BMIが23.1以上のヒトに対して用いるための、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
  11. アスペルギルス・カワチ発酵生成物が穀物由来原料を発酵原料とするものである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
  12. 穀物由来原料をアスペルギルス・カワチにより発酵させて14−デヒドロエルゴステロールを含有する発酵生成物を得ることを含んでなる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
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