JP6694456B2 - 熱交換器の汚れ防止方法 - Google Patents

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Description

本発明は、石油精製プロセスにおける熱交換器や加熱炉の汚れ防止方法に関する。
原油を精製するための石油精製プラントの蒸留工程では、原油が予熱交換器や加熱炉で加熱された後、蒸留塔に送られ蒸留操作が行われる。予熱交換器や加熱炉の内部表面では原油が熱履歴を受け、油中に溶解しないアスファルテンやスラッジ等の有機物となり付着する。また、こうした有機物による汚れの他、伝熱面における鉄系金属の腐食生成物も付着する。これらの汚れ付着は予熱交換器や加熱炉の熱交換率の低下を引き起こすため、原油の中に汚れ防止剤を添加し、汚れの付着を防止する方法が行われている。
例えば、油中に分散剤を添加することによって、汚れの原因物質となるアスファルテンやスラッジを油中に分散し、付着を防ぐことが行われている。また、アスファルテンの生成を防ぐために、重合防止剤や酸化防止剤や過酸化物分解剤等の連鎖停止剤(ラジカル捕捉剤とも呼ばれている)を添加することもある(特許文献1参照)。
さらに特許文献2では、リン酸エステル系防食剤や多硫化物系防食剤と、分散剤とを併用して腐食生成物の付着を防止することが記載されている。
一方、本出願人は、石油精製プロセスにおける熱交換器や加熱炉の表面に汚れが付着する原因が、従来、主原因と思われていたアスファルテンやスラッジ以外に、鉄系金属の腐食による硫化鉄の付着も伝熱効率の低下に大きく関与していること、また、硫化鉄の形成により表面が均一でなくなり、他の汚れが付着し易くなることにおいても、伝熱効率の低下が起きることを突き止め、その対策として、原油中であるにもかかわらず、水溶性の防食剤を添加することにより、油溶性の防食剤よりも効果的に鉄系金属の腐食を防止し硫化鉄の付着を防ぐことができ、この結果、伝熱効率の低下を効果的に防止できるという予想外の効果を見出した(特許文献3参照)。
上記の通り、従来の技術では、汚れの原因物質はアスファルテンやスラッジであり、その対策として、重合防止剤や酸化防止剤や過酸化物分解剤等の連鎖停止剤(ラジカル捕捉剤とも呼ばれている)の添加によってアスファルテンの生成を防ぎ、更に、分散剤の添加によってアスファルテンやスラッジを油中に分散させて熱交換器や加熱炉の内部表面に沈着させないことが行われてきた。そのため、従来の技術では、汚れ防止剤を油性流体中に速やかに拡散させるために汚れ防止剤が油溶性である必要があり、その適用方法は、石油精製プラントの予熱交換器や加熱炉内を流れる定常運転状態の油性流体に汚れ防止剤を添加するというものであった。
ところが、本出願人が、原油等の油性流体に水溶性の防食剤を含む汚れ防止剤を添加するという、従来の技術とは全く異なる技術的思想に基づいて石油精製プロセスにおける熱交換器や加熱炉の汚れを防止できることを見出したことは上記の通りであり、この新たな汚れ防止剤を適用するに当たっては、従来の適用方法とは異なる、より効果的な適用方法を見出す必要があった。
特開2010−163539号公報 特許第5914915号公報 特願2018−001636号
本発明は、石油精製プロセスの熱交換器及び加熱炉内を流れる油性流体に水溶性の防食剤を含む汚れ防止剤を添加する、熱交換器及び加熱炉の表面汚れを防止するための汚れ防止方法において、この水溶性の汚れ防止剤のより効果的な適用方法を提供することを解決すべき課題としている。
石油精製プロセスの熱交換器及び加熱炉内を流れる油性流体に水溶性の防食剤を含む汚れ防止剤を添加する、熱交換器及び加熱炉の表面汚れを防止するための汚れ防止方法において、添加された汚れ防止剤に含まれる水溶性の防食剤は、油性流体に溶解することなく分散状態となる。しかしながら、油性流体が流れる熱交換器や加熱炉の表面は金属であり親水性であるため、油性流体に分散していた水溶性の防食剤は、熱交換器や加熱炉の表面に均一に吸着して防食被膜となる。このため、熱交換器や加熱炉の表面はこの防食被膜によって腐食から守られることを、本発明者は既に見出した(特願2018−001636号(特許文献3)参照)。
従って、この水溶性の防食剤を含む汚れ防止剤の適用においては、清浄な鉄系金属表面に速やかに防食被膜を形成することが極めて重要である。そのためには、プラントを停止して熱交換器や加熱炉内を洗浄し汚れを除去した後にプラントの運転を開始する段階において、熱交換器及び加熱炉に通油される油性流体に、水溶性防食剤を含む高濃度の汚れ防止剤を添加して、熱交換器及び加熱炉内の清浄な鉄系金属表面に速やかに防食被膜を形成し(この薬剤添加処理を「初期処理」と称する)、プラントが定常運転に達した後は、形成した防食被膜を維持するために水溶性防食剤を含む汚れ防止剤を低濃度で添加する(この薬剤添加処理を「平常処理」と称する)という、二段階の処理工程を含む該汚れ防止剤の適用方法が、熱交換器や加熱炉内の金属表面を防食して汚れ付着を防止する、より効果的な方法であることを本発明者は見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、請求項1に係る発明は、石油精製プロセスにおいて油性流体が流れる熱交換器及び加熱炉の表面汚れを防止するために前記油性流体中に、有機ホスホン酸、ホスホノカルボン酸からなる群より選ばれる1種類以上の水溶性防食剤を含む汚れ防止剤を添加する汚れ防止方法であって、石油精製プロセスのプラント運転開始時において防食被膜が形成されていない鉄系金属表面に対して、該水溶性の防食剤を含む汚れ防止剤を10〜5000ppmとなるよう油性流体に添加して防食被膜を形成させる初期処理工程と、初期処理工程で防食被膜を形成させた鉄系金属表面に対して、該水溶性の防食剤を含む汚れ防止剤を初期処理工程と比較して少ない添加量で1〜1000ppmとなるよう油性流体に添加して防食被膜を維持する平常処理工程の、2工程を有することを特徴とする汚れ防止方法である。

請求項に係る発明は、前記石油精製プロセスにはデソルターが設けられており、前記油性流体中に添加する前記水溶性の防食剤を含む汚れ防止剤を、該デソルターの下流側に添加することを特徴とする請求項に記載の汚れ防止方法である。
本発明の汚れ防止方法を石油精製プロセスの熱交換器及び加熱炉に適用することで、伝熱面における鉄系金属の表面で硫化腐食が生じることを防止できる。このため、硫化鉄中に油中の有機物が取り込まれることが防止でき、硫化鉄との複合汚れが形成されるのが防止でき、伝熱効率の低下が防止される。それにより、熱交換器の熱交換率を長期にわたって高く維持することができ、ひいては、燃料コストや清掃コストを抑制できる。
本発明の初期処理工程の作用機構を示す模式図である。 本発明の平常処理工程の作用機構を示す模式図である。 石油精製前処理装置のブロック図である。 実施例に用いた汚れ防止剤を評価するために用いた腐食試験装置の模式図である。 比較例1の付着物のSEM−EDX表面分析チャートである。
本発明の汚れ防止方法は、熱交換器及び加熱炉の鉄系金属表面に対して防食被膜を形成する初期処理工程と、該初期処理工程後に該防食被膜を維持するための平常処理工程の2工程を有する。
本発明の初期処理工程及び平常処理工程の作用機構について、図1、図2の模式図によって説明する。本発明の初期処理工程では、高濃度の汚れ防止剤2を石油精製プロセスにおける原油1中に添加する(原油1が油性流体である)。ここで、汚れ防止剤2に含まれる防食剤は水溶性であるため、原油1中にはほとんど溶解しないが、熱交換器3内を流れる原油1のRe数(レイノルズ数)は通常高くて乱流域にあるため、乱流による撹拌効果によって原油1中に分散され、流れに乗って移動する。そして、汚れ防止剤2は親水性である鉄系金属からなる熱交換器3(あるいは図示しない加熱炉)の伝熱面に吸着し、熱交換器3の表面を覆うようにして防食被膜4が均一に形成される。しかし、初期処理工程で形成した防食被膜4は経時により剥離し、熱交換器3の表面の一部が露出した防食被膜5となる。そのため、低濃度の汚れ防止剤2を石油精製プロセスにおける原油1中に添加する平常処理工程を行うことで、初期処理工程と同じ作用機構により、露出した熱交換器3の表面に汚れ防止剤2が吸着し、再度、防食被膜4が均一に形成される。このため、鉄系金属からなる熱交換器3は硫化腐食を受け難くなる。その結果、硫化鉄が形成され難くなり、アスファルテンやスラッジ等の有機物と硫化鉄との複合汚れの付着も防止されるため、伝熱効率の低下を防ぐことができる。
次に、本発明の汚れ防止方法が適用される代表的な石油精製プラントを図3に示す。この石油精製プラントでは、図示しない原油貯留タンクから供給された原油が予熱交換器21で110〜140℃に加熱され、デソルター22に入る。デソルター22では水分及び無機成分が除去され、油分は予熱交換器23で150〜180℃に加熱された後、プレフラッシュ塔24へ送られ低沸点ガス分が分離される。そして、さらに油分が予熱交換器25によって240〜280℃に加熱され、加熱炉26で350〜380℃に加熱された後、常圧蒸留塔27に送られる。常圧蒸留塔27では沸点の差によって分留された留分が、ポンプ28を介して熱交換器25のシェル側に熱源として送られる。
本発明の汚れ防止剤は、この石油精製プロセスに使用される熱交換器21、23、25の防食及び加熱炉26内部の防食において効果を発揮する。例えば、予熱交(予熱交換器)、プレヒータ−、リボイラー等を含む鉄系材質の熱交換器である。これらの熱交換器において、特に硫化鉄との複合汚れが発生し蓄積しやすいのは、約200℃以上の高温部分であることから、石油精製プロセスにおいては、デソルター22より下流側の熱交換器23、25及び加熱炉26の防食において特に効果を発揮する。
本発明の汚れ防止剤は、予熱交換器21、23、25や加熱炉26内部の硫化腐食を防止するために、これらの上流側における原油中に添加する。例えば、図3中のA点、B点、C点、D点である。対象の熱交換器が予熱交系である場合、注入点はデソルター22の下流側であることが望ましい。デソルター22よりも上流側に汚れ防止剤を添加した場合、デソルター22で分離した塩水側に水溶性の防食剤が選択的に分配され、油性流体から分離されてしまい、デソルター22の下流側において汚れ防止効果が低下してしまうからである。
以下に本発明における初期処理工程について説明する。
[初期処理工程]
本発明における初期処理工程とは、石油精製プロセスのプラント運転開始時において、防食被膜が形成されておらず、極めて腐食が発生しやすい状態の鉄系金属表面に対し、水溶性の防食剤を含む高濃度の汚れ防止剤を油性流体(例えば原油等)に添加することにより、防食被膜を形成させる工程である。防食被膜を形成させることにより、鉄系金属表面における硫化鉄の生成を防ぎ、伝熱効率の低下の原因となる硫化鉄との複合汚れの付着を防止することができる。
本発明の初期処理工程に用いられる汚れ防止剤としては、水溶性の防食剤を含み、鉄系金属の硫化腐食を防止できるものであればよい。特に好ましい水溶性の防食剤としては、有機ホスホン酸、ホスフィノポリカルボン酸、ホスホノカルボン酸、無機リン酸化合物及びカルボン酸重合体が挙げられる。ここで、水溶性とは水100gに対して25℃において0.1g以上溶解するものとして定義されるが、好ましくは1g以上、さらに好ましくは10g以上である。これらの防食剤は単独で添加してもよいし、複数添加してもよい。
有機ホスホン酸とは、分子中に1個以上のホスホノ基を有する有機化合物であり、具体的には1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸等が挙げられ、好ましくは1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸である。
ホスフィノポリカルボン酸とは、分子中に1個以上のホスフィノ基と2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、具体的にはアクリル酸と次亜リン酸を反応させて得られるビス−ポリ(2−カルボキシエチル)ホスフィン酸、マレイン酸と次亜リン酸を反応させて得られるビス−ポリ(1,2−ジカルボキシエチル)ホスフィン酸、マレイン酸とアクリル酸と次亜リン酸を反応させて得られるポリ(2−カルボキシエチル)(1,2−ジカルボキシエチル)ホスフィン酸、イタコン酸と次亜リン酸を反応させて得られるビス−ポリ[2−カルボキシ−(2−カルボキシメチル)エチル]ホスフィン酸、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸と次亜リン酸の反応物等が挙げられる。好ましくはマレイン酸とアクリル酸と次亜リン酸の反応物やイタコン酸とマレイン酸と次亜リン酸の反応物である。ホスフィノポリカルボン酸は、BWA社よりBELCLENE500、BELSPERSE164、BELCLENE400等の商品名で市販されている。
ホスホノカルボン酸とは、分子中に1個以上のホスホノ基と1個以上のカルボキシル基を有する有機化合物であり、具体的には2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、ヒドロキシホスホノ酢酸、ホスホノポリマレイン酸、ホスホンコハク酸等が挙げられ、好ましくは2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、ホスホノポリマレイン酸等が挙げられる。ホスホノカルボン酸はローディア社からBRICORR288の商品名、またBWA社からBELCOR585の商品名で市販されている。
無機リン酸化合物は分子中にリン酸基又はリン酸骨格を有する無機化合物であり、具体的には、りん酸やリン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム等のアルカリ金属のリン酸塩、及びピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等の縮合リン酸塩等が挙げられる。
カルボン酸重合体は、モノエチレン性不飽和カルボン酸のホモ重合体及びその水溶性塩、2種以上の異なるモノエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体及びその水溶性塩である。
モノエチレン性不飽和カルボン酸のホモ重合体としては、例えば、アクリル酸重合体、メタクリル酸重合体、マレイン酸重合体、無水マレイン酸重合体の加水分解物、イタコン酸重合体、フマル酸重合体等が挙げられ、2種以上の異なるモノエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体としては、アクリル酸とマレイン酸の共重合体、アクリル酸とイタコン酸の共重合体、マレイン酸とイタコン酸の共重合体、マレイン酸とフマル酸の共重合体、アクリル酸とイタコン酸とマレイン酸の三元共重合体、アクリル酸とイタコン酸とフマル酸の三元共重合体等が挙げられるが、好ましくは、ホモマレイン酸重合体およびマレイン酸と共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体との共重合体、及びホモイタコン酸重合体およびイタコン酸と共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体との共重合体である。
ここで、マレイン酸やイタコン酸と共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体としては、フマル酸;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルアルキルエステル;(メタ)アクリルアミド、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド;炭素数2〜8のオレフィンであるエチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ヘキセン、2−エチルヘキセン、ペンテン、イソペンテン、オクテン、イソオクテン等;ビニルアルキルエーテルのビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル;マレイン酸アルキルエステル等が挙げられ、その1種または2種以上が用いられる。
マレイン酸系重合体ならびにイタコン酸系重合体の分子量は、重量平均分子量として300〜20,000が好ましいが、より好ましくは400〜1,000である。
本発明の初期処理工程において、水溶性の防食剤を含む汚れ防止剤の通常の添加量は、油性流体の容量に対して汚れ防止剤の有効成分(重量)として10〜5000ppm、好ましくは100〜1000ppmである。10ppm未満では汚れ防止効果が小さく、5000ppmを超えるような多量の添加は、コスト高を招来するだけではなく、防食被膜の均一な形成を妨げ、防食効果が低下する場合がある。また、水溶性の防食剤を含む汚れ防止剤の添加は、通常、薬注ポンプを用いて連続で行うことが望ましい。
本発明の初期処理工程は、防食被膜を形成させるため、10時間以上継続させることが望ましく、通常は、プラントの運転開始から定常運転に達するまでの間、処理を継続した後平常処理へと移行する。しかし、初期処理工程が10日間以上になる時は、コスト高を招来するだけでなく、防食被膜の均一な形成を妨げ、平常処理における防食効果が低下する場合がある。また、初期処理工程の期間が10時間未満の時は、防食被膜の形成が完全でなく平常処理移行後に防食効果が低下する場合がある。
以下に本発明における平常処理工程について説明する。
[平常処理工程]
本発明において、平常処理工程とは、初期処理工程で、防食被膜を形成させた鉄系金属表面に対し、低濃度の水溶性の防食剤を含む汚れ防止剤を油性流体に添加することによって防食被膜を維持する工程である。初期処理工程において形成された防食被膜は、そのまま維持されるわけではなく、プラントの運転が継続され時間が経つとともに部分的な剥離・脱落が発生する。そこで、剥離部分を補修して良好な防食被膜を維持するために、水溶性の防食剤を含む低濃度の汚れ防止剤を油性流体に添加する。
本発明の平常処理工程に用いられる汚れ防止剤としては、初期処理工程で使用する水溶性の防食剤を含む汚れ防止剤が使用できる。水溶性の防食剤としては、具体的には、有機ホスホン酸、ホスフィノポリカルボン酸、ホスホノカルボン酸、リン酸、及びカルボン酸重合体が挙げられる。
本発明の平常処理工程において、水溶性の防食剤を含む汚れ防止剤の通常の添加量は、添加する油性流体の容量に対して汚れ防止剤の有効成分(重量)として1〜1000ppm、好ましくは5〜500ppmである。初期処理工程において防食被膜が形成されているため、初期処理工程と比較して少ない添加量において防食効果を維持できる。添加量1ppm未満では汚れ防止効果が小さく、1000ppmを超えるような多量の添加は、コスト高を招来する他、被膜が均一に形成されず、防食効果が小さくなる場合がある。また、水溶性の防食剤を含む汚れ防止剤の添加は、通常、薬注ポンプを用いて連続で行うことが望ましい。
本発明の汚れ防止剤に含まれている水溶性の防食剤の他に、従来から用いられている油溶性の防食剤を併用することもできる。特に、熱交換器のシェル側等、Re(レイノルズ数)数が比較的低く、水溶性の防食剤が撹拌混合されにくい条件の防食において、これらの防食剤の併用が効果的である。油溶性の防食剤に特に限定は無いが、アルキルまたはアルケニルコハク酸およびその誘導体、ポリアルケニルコハク酸イミド類や、リン酸エステル類、アミン類、スルホン酸類等が使用できる。また、これらの防食剤は分散効果を有するものもあるため、分散剤として使用することもできる。
また、本発明の汚れ防止剤の他に分散剤を併用することも望ましい。分散剤を併用することにより、プロセス油中のSS(懸濁物質)成分を分散し、熱交換器への付着を防止することができる。分散剤としては特に限定はされないが、一般に潤滑油の添加剤として使用されるポリイソブテニルコハク酸エステル等のカルボン酸エステル類、ポリイソブテニルコハク酸イミド等のイミド類、ポリイソブテニルチオリン酸エステル等のチオリン酸エステル類、リン酸エステル類等が挙げられる。これらの分散剤は、本発明の汚れ防止剤に含有させるほか、別々に添加してもよい。
さらに、本発明の汚れ防止剤の他に金属不活性化剤や脱酸素剤を併用してもよい。これらは、本発明の汚れ防止剤に含有させるほか、別々に添加してもよい。金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール、N,N’−ジサリチリデン−1,2−ジアミノプロパン、2,5−ジアルキルメルカプト−1,3,4−チアジアゾール等が挙げられる。また、脱酸素剤としてはジエチルヒドロキシルアミン、亜硫酸ナトリウム、ヒドラジン、エリソルビン酸、カルボヒドラジド等が挙げられる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例に用いた装置を図4に示す。この装置は、ステンレス製のオートクレーブ31の蓋
31aの中心に回転軸32が挿通されており、回転軸32には6枚タービン翼33が取り
付けられている。また、回転軸32には軟鉄からなるテストピース34が着脱可能とされ
ている。回転軸32は図示しない撹拌機で回転可能とされている。なお、実施例4〜6は、参考例とする。
以下の実施例、比較例における汚れ防止剤の添加量は有効成分換算である。
(実施例1)
[初期処理工程]
試験を行うために、まずオートクレーブ31の蓋31aを開けて、原油250mlを入れ、汚れ防止剤として水溶性の防食剤である1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HEDP、Belclene660LA、BWA社製)を500ppm添加した。そして回転軸32にあらかじめ重量を測定しておいたテストピース34(材質:軟鉄)を取り付けた後、蓋31aを閉め、オートクレーブ内の空気を窒素で置換した。撹拌機を駆動して回転軸32を500rpmの撹拌速度で回転させ、25℃で48時間撹拌した。
[平常処理工程]
初期処理工程終了後、撹拌を停止し、オートクレーブ31の蓋31aを開けて、オートクレーブ内の原油を廃棄し、その後、新たな原油250mLをオートクレーブに入れ、汚れ防止剤として水溶性の防食剤である1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸を50ppmとなるように添加した後、蓋31aを閉め、オートクレーブ内の空気を窒素で置換した。撹拌機を駆動して回転軸32を500rpmの撹拌速度で回転させ、オートクレーブ31の周囲を図示しないマントルヒーターによって300℃に加熱し、96時間維持した。その後、室温まで冷却した後、蓋31aを開けてテストピース34を取り出した。
取り出したテストピース34をヘキサンで洗浄して原油を洗い流し、乾燥後、重量を測定した。さらにヘキサン洗浄を行ったテストピースを3.5%塩酸に浸漬し、表面の腐食生成物を溶解除去したのち、乾燥後の重量を測定した。
下記式により、付着量、腐食減量を算出した。
付着量(%)={(ヘキサン洗浄後重量(g)−塩酸洗浄後重量(g))/テストピース初期重量(g)}×100
腐食減量(%)={(テストピース初期重量(g)−塩酸洗浄後重量(g))/テストピース初期重量(g)}×100
(実施例2)
[初期処理工程]
撹拌時間を10時間にした以外は実施例1と同様に試験を行った。
[平常処理工程]
実施例1と同様に試験を行った。
(実施例3)
[初期処理工程]
水溶性の防食剤を、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸(PBTC、Belclene650、BWA社製)に変更した以外は、実施例1と同様に試験を行った。
[平常処理工程]
実施例1と同様に試験を行った。
(実施例4)
[初期処理工程]
水溶性の防食剤を、ビス(ポリ−2−カルボキシエチル)ホスフィン酸(BELSPERSE164、BWA社製)に変更した以外は、実施例1と同様に試験を行った。
[平常処理工程]
実施例1と同様に試験を行った。
(実施例5)
[初期処理工程]
水溶性の防食剤を、ポリマレイン酸(分子量2000、Belclene200LA、BWA社製)に変更した以外は、実施例1と同様に試験を行った。
[平常処理工程]
実施例1と同様に試験を行った。
(実施例6)
[初期処理工程]
水溶性の防食剤を、りん酸(試薬、和光純薬工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様に試験を行った。
[平常処理工程]
実施例1と同様に試験を行った。
(比較例1)
下記試験をブランクとした。
[初期処理工程]
汚れ防止剤を添加しない以外は、実施例1と同様に試験を行った。
[平常処理工程]
汚れ防止剤を添加しない以外は、実施例1と同様に試験を行った。
(比較例2)
[初期処理工程]
実施例1と同様に試験を行った。
[平常処理工程]
汚れ防止剤を添加しない以外は、実施例1と同様に試験を行った。
(比較例3)
[初期処理工程]
汚れ防止剤を添加しない以外は、実施例1と同様に試験を行った。
[平常処理工程]
実施例1と同様に試験を行った。
(比較例4)
[初期処理工程]
汚れ防止剤を、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP−508、城北化学工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様に試験を行った。
[平常処理工程]
実施例1と同様に試験を行った。
(比較例5)
[初期処理工程]
汚れ防止剤を、2−エチルヘキシルアシッドホスフェートに変更した以外は、実施例1と同様に試験を行った。
[平常処理工程]
汚れ防止剤を、2−エチルヘキシルアシッドホスフェートに変更した以外は、実施例1と同様に試験を行った。
(比較例6)
[初期処理工程]
汚れ防止剤を、アルケニルコハク酸イミド(Prochem 3f18、GE社製)に変更した以外は、実施例1と同様に試験を行った。
[平常処理工程]
汚れ防止剤を、アルケニルコハク酸イミドに変更した以外は、実施例1と同様に試験を行った。
腐食試験の結果を表1に示す。実施例1〜6のように、水溶性の防食剤を含む汚れ防止剤を用いて、初期処理工程及び平常処理工程を行った場合、付着量は2.4%以下、腐食減量は2.3%以下であった。中でも実施例1のように、水溶性の防食剤としてHEDPを用いた場合、付着量は1.5%以下、腐食減量は1.3%以下であり、最も防食性能に優れた。対して比較例2、3のように、水溶性の防食剤を含む汚れ防止剤を用いても、初期処理工程または平常処理工程のみの場合、付着量は2.9%以上、腐食減量は3.1%以上であり、防食性能は低かった。また比較例4〜6のように、油溶性の防食剤を用いて初期処理工程及び/または平常処理工程を行った場合、付着量は3.6%以上、腐食減量は3.4%以上であった。このことから、油性流体中に水溶性の防食剤を含む汚れ防止剤を添加する汚れ防止方法において、初期処理工程と平常処理工程の2工程を行った場合にのみ、防食性能が向上するという顕著な効果がみられた。以上の結果は、実施例の汚れ防止方法を用いることによって、鉄表面において均一な防食被膜が形成され硫化鉄の生成を防ぎ、その結果、硫化鉄との複合汚れも付着し難くなったことによるものと考えられる。
なお、比較例1の付着物をSEM−EDXによって表面分析したところ、図5に示すように、鉄及び硫黄が大量に検出されることから、付着物は硫化鉄主体であることが分かった。
Figure 0006694456
石油精製プラントの油性流体が流れる熱交換器及び加熱炉の表面汚れを防止するために、本発明の汚れ防止方法を適用できる。その結果、熱交換器及び加熱炉の伝熱効率の低下につながる汚れ付着を防止でき、プラントの安定操業に寄与する。
1…原油(油性流体),2…汚れ防止剤,3…熱交換器,4…防食被膜,5…一部が露出した防食被膜
21,23,25…予熱交換器
22…デソルター,24…プレフラッシュ塔,26…加熱炉,27…蒸留塔,28…ポンプ
31…オートクレーブ,31a…蓋,32…回転軸,33…6枚タービン翼,34…テストピース

Claims (2)

  1. 石油精製プロセスにおいて油性流体が流れる熱交換器及び加熱炉の表面汚れを防止するために前記油性流体中に、有機ホスホン酸、ホスホノカルボン酸からなる群より選ばれる1種類以上の水溶性防食剤を含む汚れ防止剤を添加する汚れ防止方法であって、石油精製プロセスのプラント運転開始時において防食被膜が形成されていない鉄系金属表面に対して、該水溶性の防食剤を含む汚れ防止剤を10〜5000ppmとなるよう油性流体に添加して防食被膜を形成させる初期処理工程と、初期処理工程で防食被膜を形成させた鉄系金属表面に対して、該水溶性の防食剤を含む汚れ防止剤を初期処理工程と比較して少ない添加量で1〜1000ppmとなるよう油性流体に添加して防食被膜を維持する平常処理工程の、2工程を有することを特徴とする汚れ防止方法。
  2. 前記石油精製プロセスにはデソルターが設けられており、前記油性流体中に添加する前記水溶性の防食剤を含む汚れ防止剤を、該デソルターの下流側に添加することを特徴とする請求項1に記載の汚れ防止方法。
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