以下、本実施の形態に係る浴室用椅子について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置、及び、接続形態などは、一例であって本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。
(実施の形態1)
以下、浴室用椅子の実施の形態1について、図面を参照しながら説明する。なお、下記説明において、各図面中に示すXYZ座標軸を用いた説明を行う場合もある。また、Z軸のプラス方向及びマイナス方向を、それぞれ、上及び下といい、Y軸のプラス方向及びマイナス方向を、それぞれ、前及び後ろといい、X軸のプラス方向及びマイナス方向を、それぞれ、右及び左ということもある。
図1〜図7を参照しながら本実施の形態の浴室用椅子1について説明する。
図1は、浴室用椅子1を示す斜視図である。図2は、浴室用椅子1の背もたれ部10を斜め後ろから見た図である。図3は、図2に示す背もたれ部10の分解斜視図である。
浴室用椅子1は、図1に示すように、人が着座する座部4と、座部4を支える一対の前脚2及び一対の後脚3と、背もたれ部10とを備えている。背もたれ部10は、人体の後ろ側を支える部分であり、座部4の上側に位置するフレーム5に支持されている。フレーム5は、パイプ状であり、前脚2を構成するフレーム部材と接続され一体化されている。本実施の形態では、背もたれ部10は、背中に当接する部分であるが、それに限られず、腰に当接する部分であってもよい。
[1.1 浴室用椅子の背もたれ部の構成]
まず、背もたれ部10の構成について説明する。
背もたれ部10は、図2及び図3に示すように、フレーム5の前側に配置された背もたれ本体11と、背もたれ本体11の前面11aを覆う前面カバー12と、フレーム5の後ろ側に配置されたホルダ13とを備えている。
フレーム5には、複数の貫通孔5cが設けられている。背もたれ本体11は、貫通孔5cのそれぞれを貫通する第1ねじ21及び第2ねじ22と、第1ねじ21及び第2ねじ22に対応する第1ナット31及び第2ナット32とを用いてフレーム5に支持されている。本実施の形態では、貫通孔5cは3つ、第1ねじ21及び第1ナット31はそれぞれ2つ、第2ねじ22及び第2ナット32はそれぞれ1つである。
図4Aは、背もたれ部10の背もたれ本体11を前側から見た図である。図4Bは、背もたれ本体11を後ろ側から見た図である。また、図7は、図2に示す背もたれ部10をVII−VII線で切断して矢印の方向から見た断面図である。
背もたれ本体11は、湾曲状の板であり、前面11a及び後面11bを有している。背もたれ本体11の前面11aは、人体の背中に対応した形状をしている。背もたれ本体11の後面11bには、後面凹部11eが形成されている。後面凹部11eは、フレーム5の前側の面5aに当接する部分である。
背もたれ本体11には、前面11aから後面11bに向かって座ぐり穴11dが形成されている。この座ぐり穴11dに第1ねじ21が挿入される。本実施の形態では、2つの座ぐり穴11dに2つの第1ねじ21がそれぞれ挿入される。座ぐり部分の深さ寸法は、第1ねじ21の頭部21aの高さ寸法よりも大きい。
背もたれ本体11は、樹脂材料により形成される樹脂部11hと、樹脂部11hに埋め込まれている第2ナット32とにより構成されている。
第2ナット32は、フレーム5の後側の面5bから挿入される第2ねじ22に螺合するナットであり、3つの貫通孔5cのうちの中央の貫通孔5cに対応する位置に設けられる。第2ナット32は、軸方向の一方の端面32eが、背もたれ本体11の後面11b側に露出し、他方の端面32eが前面11a側に露出しないように樹脂部11hのナット埋め込み部11cに埋め込まれている。
また、背もたれ本体11には、把持穴11f及び複数の嵌合穴11gが形成されている。把持穴11fは、浴室用椅子1を持ち運ぶ際に浴室用椅子1を把持するための穴である。嵌合穴11gは、前面カバー12を取り付けるための穴である。
前面カバー12は、クッションであり、背もたれ本体11の前面11aに取り付けられる。前面カバー12は、汚れが落ちやすく、柔軟性を有する材料からなり、例えば、発泡プラスチック材料により形成される。
前面カバー12は、前面12a及び後面12bと、後面12bから突出する複数の突出部12cと、背もたれ本体11の把持穴11fに対応する把持穴12dとを有している。
前面カバー12は、図3に示すように、突出部12cが背もたれ本体11の嵌合穴11gに嵌合され、前面カバー12の後面12bが背もたれ本体11の前面11aに当接することで、背もたれ本体11に固定される。これにより、座ぐり穴11dに挿入された第1ねじ21の頭部21aが、前面カバー12により覆われる。
図5は、背もたれ部10のホルダ13の斜視図である。
ホルダ13は、パイプ状のフレーム5に覆い被さるU字状の断面形状をしており、U字状断面の内底が前面13a、外底が後面13bとなる向きに配置される。ホルダ13の後面13bは、貫通孔等が形成されておらず平滑であり、汚れが付着しにくい。ホルダ13の前面13aは、フレーム5の後ろ側の面5bに当接する部分である。ホルダ13がフレーム5に当接し固定される際、U字状断面の両端部13f、13gは、背もたれ本体11の後面11bに密接し、ホルダ13の内部に水垢等が侵入しにくいようになっている。
ホルダ13の前面13aには、凹状の座ぐり13dが形成されている。座ぐり13dは、3つの貫通孔5cのうちの中央の貫通孔5cと対応する位置に形成される。座ぐり13dの深さ寸法は、第2ねじ22の頭部22aの高さ寸法よりも大きく、座ぐり13dは、第2ねじ22の頭部22aを覆っている。すなわち、第2ねじ22の頭部22aは、ホルダ13により覆われている。
ホルダ13は、樹脂材料により形成される樹脂部13eと、樹脂部13eに埋め込まれている複数の第1ナット31とにより構成されている。
複数の第1ナット31は、背もたれ本体11の前面11aから挿入される複数の第1ねじ21に螺合するナットであり、3つの貫通孔5cのうちの両外側の貫通孔5cに対応する位置にそれぞれ設けられている。第1ナット31は、軸方向の一方の端面31eが、ホルダ13の前面13a側に露出し、他方の端面31eが後面13b側に露出しないように樹脂部13eのナット埋め込み部13cに埋め込まれている。
ここで、第1ナット31及び第2ナット32の形状について、第1ナット31を例に挙げて説明する。なお、第2ナット32は、第1ナット31と同様の構成を有している。
図6は、ホルダ13に埋め込まれる第1ナット31の斜視図である。
第1ナット31は、柱状であり、大径部31aと、大径部31aよりも径が小さい小径部31bと、軸方向に貫通する雌ねじ部31fとを有している。大径部31aは、第1ナット31の軸方向の両端部に設けられている。小径部31bは、両端部の大径部31aの間に設けられている。大径部31aは角柱状であり、小径部31bは円柱状である。なお、小径部31bが角柱状で、大径部31aが円柱状であってもよい。大径部31aの側面31c、または、小径部31bの側面31dは、凹凸を有するローレット形状であってもよい。第1ナット31は、樹脂部13eを構成する樹脂材料とともに一体成形され、それぞれの側面31c、31dが樹脂部13eに覆われている。なお、第2ナット32も大径部32a及び小径部32bを有し、大径部32aの側面32c及び小径部32bの側面32dが樹脂部11hに覆われている。
図3及び図7に示すように、第2ねじ22は、フレーム5の後ろ側の面5bから貫通孔5cを貫通して背もたれ本体11に向けて挿入され、背もたれ本体11の第2ナット32に螺合される。また、第1ねじ21は、背もたれ本体11の前面11aからフレーム5に向けて挿入され、貫通孔5cを貫通し、ホルダ13の第1ナット31に螺合される。そして、背もたれ本体11は、第1ねじ21を第1ナット31に締め付け螺合することで、ホルダ13を背もたれ本体11側に引き寄せる。これにより、背もたれ本体11は、フレーム5を背もたれ本体11とホルダ13との間に挟み込んだ状態で、フレーム5に支持される。
本実施の形態に係る浴室用椅子1では、図7に示すように、第1ねじ21の頭部21aが前面カバー12により覆われ、第1ねじ21の先端部21bがホルダ13により覆われている。また、第2ねじ22の頭部22aがホルダ13により覆われ、第2ねじ22の先端部22bが背もたれ本体11により覆われている。すなわち、背もたれ部10の前側及び後ろ側において、第1ねじ21及び第2ねじ22が露出しない構造となっている。これにより、背もたれ部10において、水垢等の汚れが付着することを抑制することができる。
[1.2 浴室用椅子の座部及び前脚、後脚の構成]
次に、浴室用椅子1の座部4及び前脚2、後脚3について説明する。本実施の形態では、前脚2が第1脚部に相当し、後脚3が第2脚部に相当する。
浴室用椅子1は、前述したように、座部4と、前脚2及び後脚3と、前脚2の上に取り付けられている背もたれ部10とを備えている。後脚3は、座部4の下側において、前脚2に対して回動自在に軸支されている。また、浴室用椅子1は、座部4と後脚3(具体的には後述する補強杆36)とを連結するリンク6とを備えている。浴室用椅子1は、座部4、前脚2及び後脚3が折り畳み可能な構造をしている。
前脚2は、正面より見て略逆U字状に屈曲されるとともに、側方(つまり、右方向又は左方向)より見て略縦Z字状に屈曲されたフレーム部材である。前脚2は、床面に略平行な水平部を有する。前脚2は、剛性部材で形成され、より具体的には、金属製パイプ、例えば、防錆性や軽量性が優れたアルミニウムパイプで形成されている。前脚2の下端部には、使用状態において床面に面接触する形状を有する脚ゴム27が装着されている。
前脚2の対向する各水平部の中間部には、プラスチック製のヒンジブラケット25がそれぞれ固定されている。また、図3に示すように、前脚2の対向する各水平部の前端部間には補強杆26が溶着され、また、上記各水平部の後端部近傍間には補強杆261が溶着されている。補強杆26及び261は、前脚2の構造を補強する機能を有する。
後脚3は、側方から見て略逆L字状に屈曲されたフレーム部材である。後脚3は、床面に略平行な水平部と、床面に略垂直な垂直部とを有する。後脚3は、前脚2と同様に、剛性部材、より具体的にはアルミニウムパイプで形成されている。後脚3の下端部には、使用状態において床面に面接触する形状を有する脚ゴム37が装着されている。
後脚3の水平部は、前述した前脚2の水平部の下方に配置され、その先端部、すなわち、前端部には、ヒンジブラケット35が固定されている。ヒンジブラケット35は、前脚2に固定されたヒンジブラケット25を支持するとともに、ヒンジピンPを介してヒンジブラケット25に連結されている。ヒンジピンPを介した連結により、前脚2に対して左右一対の後脚3を互いに連動してヒンジピンP回りに回動させることができる。
ヒンジピンPは、例えば、前脚2の接地部中心(脚ゴム27の中心)及び後脚3の接地部中心(脚ゴム37の中心)間を結ぶ線分を底辺とする二等辺三角形の頂点に位置するように設定される。ヒンジピンPは、回動機構に相当する。
なお、後脚3の水平部と垂直部との対向する交差部近傍間には、補強杆36が溶着されており、一対の後脚3を同調して作動させることができる(図3参照)。
なお、前脚2及び後脚3の材質は、アルミニウム以外に、鉄あるいはステンレスであってもよい。
座部4は、座本体41と、クッション部42とを備える。座本体41は、略方形中空状のプラスチック製部材である。クッション部42は、座本体41に合致する形状に形成されて座本体41の上面全体を覆う発泡プラスチック製のクッション部材である。なお、座本体41及びクッション部42には、両者を貫通する複数個の水抜き穴4aが形成されている。
また、座本体41は、その略中間部の後端寄りが、前述した前脚2の対向する水平部の後端部近傍間に溶着された補強杆261に回動自在に連結されており、また、その後端部がリンク6の一端部と回動自在に連結され、リンク6の他端部が、前述した後脚3の水平部と略垂直部との対向する交差部近傍間に溶着された補強杆36に回動自在に連結されている。
したがって、座部4の前端部を把持して持ち上げると、座部4は、前脚2との軸支部(補強杆261)回りに時計回り方向に回動し、略垂直状態に格納することができる。このとき、座部4の後端部がリンク6の一端部により軸支され、また、リンク6の他端部が後脚3(補強杆36)により軸支されていることから、座部4がリンク6を介して後脚3を押し下げ、後脚3をヒンジピンP回りに時計回り方向に回動させる。このため、前脚2に対して後脚3を接近させ、前脚2及び後脚3を閉脚することができる。
一方、座部4の前端部を把持して押し下げると、座部4は、前脚2との軸支部(補強杆261)回りに反時計回り方向に回動し、前脚2の補強杆26に略水平状態に支持される。このとき、座部4がリンク6を介して後脚3を引き上げ、後脚3をヒンジピンP回りに反時計回り方向に回動させ、前脚2に対して後脚3を離隔させ、前脚2及び後脚3を開脚することができる。
以上の構成により浴室用椅子1は、使用状態において前脚2及び後脚3により滑ることなく自立するとともに、格納状態を維持しながら自立することができる。また、背もたれ部10は、前脚2及び後脚3の開閉状態にかかわらず、背もたれ本体11の前面11aが鉛直方向と略平行となる向きに維持される。これにより、浴室用椅子1は、背もたれ部10に水垢等が滞留せず、汚れが付着しにくくなっている。
[1.3 まとめ]
以上のように本実施の形態における浴室用椅子1は、背もたれ部10と、背もたれ部10を支持するフレーム5とを備える浴室用椅子1であって、背もたれ部10は、フレーム5の前側に配置された背もたれ本体11と、背もたれ本体11の前面を覆う前面カバー12と、フレーム5の後ろ側に配置されたホルダ13とを有し、背もたれ本体11は、背もたれ本体11からフレーム5に向けて挿入された第1ねじ21を用いて、フレーム5に支持され、第1ねじ21の頭部21aは、前面カバー12により覆われ、第1ねじ21の先端部21bは、ホルダ13により覆われている。
このように、背もたれ部10をフレーム5に固定する第1ねじ21の頭部21aが前面カバー12により覆われ、第1ねじ21の先端部21bがホルダ13により覆われているので、背もたれ部10におけるねじの露出を少なくし、汚れの付着を抑制することができる。
例えば、ホルダ13は、ホルダ13の前面13a側において露出し、第1ねじ21に螺合する第1ナット31を有し、背もたれ本体11は、第1ねじ21を第1ナット31に螺合し、フレーム5を背もたれ本体11とホルダ13との間に挟み込んだ状態で、フレーム5に支持されていてもよい。
このように、第1ねじ21を第1ナット31に螺合させ、フレーム5を背もたれ本体11とホルダ13との間に挟みこんだ状態とすることで、背もたれ部10を強固にフレーム5に固定することができる。
例えば、ホルダ13は、樹脂材料により形成される樹脂部13eを有し、第1ナット31は、大径部31aと、大径部31aよりも径が小さい小径部31bとを有し、大径部31aまたは小径部31bは、角柱状またはローレット状の側面31c、31dをそれぞれ有しており、大径部31a及び小径部31bの側面31c、31dは、ホルダ13の樹脂部13eに覆われていてもよい。
このように、第1ナット31が、大径部31a及び小径部31bを有しているので、第1ねじ21と第1ナット31とを螺合させた際に、第1ナット31が樹脂部13eから抜けることを防止できる。また、大径部31aまたは小径部31bが、角柱状またはローレット状の側面31c、31dを有しているので、第1ねじ21と第1ナット31とを螺合させた際に、第1ナット31が回転することを防止できる。
例えば、背もたれ本体11は、さらに、背もたれ本体11の後面11b側において露出する第2ナット32を有し、フレーム5の後ろ側から背もたれ本体11に向けて挿入された第2ねじ22を第2ナット32に螺合させることでフレーム5に支持され、第2ねじ22の頭部22aは、ホルダ13により覆われ、第2ねじ22の先端部22bは、背もたれ本体11により覆われていてもよい。
このように、第2ねじ22及び第2ナット32を用いることで、背もたれ部10をさらに強固にフレーム5に固定することができる。また、第2ねじ22の頭部22aがホルダ13により覆われ、第2ねじ22の先端部22bが背もたれ本体11により覆われているので、背もたれ部10におけるねじの露出を少なくし、汚れの付着を抑制することができる。
例えば、背もたれ本体11は、樹脂材料により形成される樹脂部11hを有し、第2ナット32は、大径部32aと、大径部32aよりも径が小さい小径部32bとを有し、大径部32aまたは小径部32bは、角柱状またはローレット状の側面32c、32dをそれぞれ有しており、大径部32a及び小径部32bの側面32c、32dは、背もたれ本体11の樹脂部11hに覆われていてもよい。
このように、第2ナット32が、大径部32a及び小径部32bを有しているので、第2ねじ22と第2ナット32とを螺合させた際に、第2ナット32が樹脂部11hから抜けることを防止できる。また、大径部32aまたは小径部32bが、角柱状またはローレット状の側面32c、32dを有しているので、第2ねじ22と第2ナット32とを螺合させた際に、第2ナット32が回転することを防止できる。
例えば、浴室用椅子1は、座部4と、座部4に接続されている第1脚部(前脚2)と、座部4または第1脚部に回動可能に接続されている第2脚部(後脚3)とを備え、フレーム5は、第1脚部に接続されていてもよい。
これによれば、折り畳み可能な浴室用椅子1において、背もたれ部10におけるねじの露出を少なくし、汚れの付着を抑制することができる。
(実施の形態1の変形例1)
図8は、実施の形態1の変形例1に係る浴室用椅子1Aを斜め後ろから見た図である。
変形例1に係る浴室用椅子1Aは、肘掛192を有し、背もたれ部10が肘掛192に繋がるフレーム5に支持されている。
図8に示すように、フレーム5は、座部4に接続された支柱191に、取付金具193を用いて固定されている。そして、支柱191に固定されたフレーム5に、背もたれ部10および肘掛192が取り付けられている。また、前脚2及び後脚3は、座部4に固定され、開閉できない構造となっている。
本変形例においても、背もたれ部10は、フレーム5の前側に配置された背もたれ本体11と、背もたれ本体11の前面を覆う前面カバー12と、フレーム5の後ろ側に配置されたホルダ13とを有し、背もたれ本体11は、背もたれ本体11からフレーム5に向けて挿入された第1ねじ21を用いて、フレーム5に支持されている。そして、第1ねじ21の頭部22aは前面カバー12により覆われ、第1ねじ21の先端部21bは、ホルダ13により覆われている。これにより、背もたれ部10におけるねじの露出を少なくし、汚れの付着を抑制することができる。
(実施の形態1の変形例2)
図9Aは、実施の形態1の変形例2に係る浴室用椅子1Bを示す斜視図である。図9Bは、浴室用椅子1Bを横から見た断面図である。図9Cは、浴室用椅子1Bの背面図である。
変形例2に係る浴室用椅子1Bは、背もたれ部10が、実施の形態1に比べて低い位置に設けられている。すなわち、変形例2に係る浴室用椅子1Bは、背もたれ部10が、背中ではなく腰に当たる腰当てとなっている。
本変形例においても、背もたれ部10は、フレーム5の前側に配置された背もたれ本体11と、背もたれ本体11の前面を覆う前面カバー12と、フレーム5の後ろ側に配置されたホルダ13とを有し、背もたれ本体11は、背もたれ本体11からフレーム5に向けて挿入された第1ねじ21を用いて、フレーム5に支持されている。そして、第1ねじ21の頭部22aは前面カバー12により覆われ、第1ねじ21の先端部21bは、ホルダ13により覆われている。これにより、背もたれ部10におけるねじの露出を少なくし、汚れの付着を抑制することができる。
(実施の形態2)
図10は、実施の形態2に係る浴室用椅子1Cを斜め後ろから見た図である。図11は、浴室用椅子1Cを横から見た断面図である。
実施の形態2に係る浴室用椅子1Cは、座部4に、自身の水平状態を維持するロック機構104が設けられ、背もたれ部10Aのホルダ13に、座部4の水平状態を解除する解除操作部105が設けられている。
実施の形態2において、背もたれ部10Aは、フレーム5の前側に配置された背もたれ本体11と、背もたれ本体11の前面を覆う前面カバー12と、フレーム5の後ろ側に配置されたホルダ13とを有し、背もたれ本体11は、背もたれ本体11からフレーム5に向けて挿入された第1ねじ21(図示省略)を用いて、フレーム5に支持されている。そして、第1ねじ21の頭部22a(図示省略)は前面カバー12により覆われ、第1ねじ21の先端部21b(図示省略)は、ホルダ13により覆われている。これにより、背もたれ部10Aにおけるねじの露出を少なくし、汚れの付着を抑制することができる。
以下、浴室用椅子1Cのその他の構成と、ロック機構104及び解除操作部105について説明する。
浴室用椅子1Cは、一対の前脚2と一対の後脚3から構成されている。前脚2や後脚3のそれぞれは、中空のパイプで形成されている。前脚2は、その上部が後ろへ向けて水平に延出された水平部130を有し、水平部130の後端部からさらに上へ一体に延長して背もたれ支柱111が延設している。そして、一対の前脚2の各背もたれ支柱111の上端同士は、フレーム5に一体に接続されている。一対の前脚2は、一本のパイプを折り曲げ加工することで一体に作製される。また一対の各後脚3の上部は、前へ向けて延出された水平部132を有している。なお、以下において、前脚2及び後脚3を総称して脚部100と呼ぶ場合がある。
上記の各前脚2の水平部130には、前ヒンジ133が取り付けられており、各後脚3の水平部132には、後ヒンジ134が取り付けられている。そして、前脚2の各前ヒンジ133の下側に各後脚3の後ヒンジ134を配置し、前ヒンジ133と後ヒンジ134を軸ピンからなる枢支部112で上下回動自在に枢着することによって、前脚2と後脚3とが回動自在に連結されている。前脚2と後脚3は、互いに離反して開く状態と、前脚2と後脚3の下端部同士が近接する状態との間で、折り畳み開閉自在に回動することができる。
各前脚2や各後脚3の下端には、浴室の床を傷つけたり、滑ったりすることを防ぐための脚ゴム27、37が装着されている。なお、前脚2と後脚3を枢着する上記の枢支部112は、前脚2と後脚3の下端の脚ゴム27、37を結ぶ線を底辺とする二等辺三角形の頂点に位置するように設定されている。
また、一対の前脚2の上端部間には、係合杆137が取り付けられており、一対の前脚2の水平部130の間には、枢支杆139が取り付けられている。さらに、一対の後脚3の上端部間には連結杆138が取り付けられており、各後脚3は連結杆138を介して一体化されている。脚部100は、これらの係合杆137、連結杆138、枢支杆139により補強されている。
座部4は、図11に示すように、硬質合成樹脂製の座本体147の上面に軟質発泡樹脂製の座クッション148が取り付けられることで形成され、座本体147の下面の後部寄り位置に、枢支筒部149が突設されている。この枢支筒部149の左右に貫通して設けた孔149aに、上記の枢支杆139を挿通することで、座部4が脚部100に取り付けられる。座部4は、この枢支杆139を回動中心として上下に回動され、座部4の下面に幅方向に亘って設けた凸条部140が係合杆137の上に載置される水平位置と、座部4の前端部が上方を向いて立ち上がる位置との間で、回動されるようになっている。また座部4の後端部の両側には、軸ピン150を用いて連結具110の一端部が上下方向に回動自在に枢着され、この一対の各連結具110の他端部は、上記の連結杆138に上下方向に回動自在に連結されている。このように座部4の後端部は、連結具110により後脚3に連結されている。
背もたれ部10Aは、図11に示すように、硬質合成樹脂製の背もたれ本体11の前面側に軟質発泡樹脂製の前面カバー(背もたれクッション)12を取り付けて形成される。そして、前脚2の上部の背もたれ支柱111のフレーム5の前面側に背もたれ部10Aを配置し、背もたれ本体11とホルダ13との間にフレーム5を挟着することによって、背もたれ部10Aを取り付けている。把持穴11fは、椅子を持ち運びする際に手を差し入れることができるように背もたれ部10Aに設けられた穴である。
座部4の下面には、ロック機構104が設けられている。ロック機構104は、図11及び図12に示すように、ロック具157と、ロック具157を覆うケーシング158とを備えている。ロック具157は、前部の上端両側に枢支軸159を、後部の下端にワイヤ連結部160を、枢支軸159とワイヤ連結部160の間の位置において下面に係合用凹部161を設けて形成されている。ロック具157は、枢支軸159を、座部4の下面に突設した枢支受け部162の軸穴に枢着することで、上下方向へ回動自在に取り付けられている。ケーシング158は、上面と前面が開口する箱状に形成されており、ケーシング158の前面開口からロック具157の係合用凹部161を露出させた状態で、ロック具157を下側から覆って、座部4の下面にボルトで取り付けられている。ロック具157の上面にはバネ163が取り付けられ、ロック具157は下方へ回動する方向にバネ163で付勢される。一方、ロック具157の下面がケーシング158の上面に当接することで、ロック具157は必要以上に下方へ回動しないようになっている。
また、背もたれ部10Aの背面には、図13及び図14に示すように、解除操作部105が設けられている。解除操作部105の操作具105aは、軸穴164を設けた枢支部165にレバー片166を延設すると共に、レバー片166の基部にストッパー片167を下方へ突設して形成される。レバー片166には、上下に開口する貫通孔114が形成されている。この操作具105aは、上記のホルダ13に取着したピン168を軸穴164に差し込むことによって、ホルダ13を介して背もたれ部10Aの背面に取り付けられる。操作具105aは、ストッパー片167がホルダ13の外面に当接する状態(図11に示す状態)と、レバー片166が斜め上方へ引き上げられる状態の間で、上下回動自在になっている。
ロック機構104のロック具157と、操作具105aとの間には、レリースワイヤ106が取り付けられている。レリースワイヤ106は、可撓性のチューブ170内にワイヤ171を挿通して形成される。すなわち、このレリースワイヤ106の一端において、チューブ170から突出するワイヤ171が、図12のようにロック具157のワイヤ連結部160に連結固定されている。レリースワイヤ106は、ケーシング158の後端部のレリース導出開口172を通してケーシング158から導出され、レリースワイヤ106の中途部を座部4の下面に固定され、さらに一方の前脚2のパイプ内にレリースワイヤ106を差し込まれている。このレリースワイヤ106を背もたれ支柱111のパイプ内に通し、レリースワイヤ106の他端を導出して、図12のようにチューブ170から突出するワイヤ171に連結する。これにより、ワイヤ171が操作具105aに連結固定される。
また、前脚2と後脚3の間にはバネ107が、図15に示すように取り付けられている。バネ107は、両端の係止用線部107a、107bとその間のコイル部107cとから成るねじりコイルバネとして形成され、コイル部107cを前脚2と後脚3とを枢支連結する軸ピンからなる枢支部112の外周に嵌めると共に、一方の係止用線部107aを後脚3の後ヒンジ134に突設した後バネ受け部173に巻き付け係止し、他方の係止用線部107bを前脚2の前ヒンジ133に張り出して設けた前バネ受け部174に引掛け係止してある。従って、バネ107の弾性力は、前ヒンジ133、後ヒンジ134を介して前脚2と後脚3とに、枢支部112を中心にして前脚2と後脚3を閉じるように近接させる方向に回動させる力として作用する。
上記の浴室用椅子1Cは、脚部100を開くと共に座部4を水平に回動させた状態で、座部4の上に腰掛けて使用される。このように、座部4を水平状態にすると、座部4の下面に設けた凸条部140(図12参照)が前脚2間に架設した係合杆137(図11参照)の上に載置されるが、凸条部140の下面には座部4の幅方向で凹条179が凹設してあり、この凹条179に係合杆137が嵌って、脚部100に対して座部4が位置決めされる。そして、座部4をこのように水平状態へと下方へ回動させると、ロック機構104のロック具157が係合杆137の上に乗る。ロック具157の下面にはガイド傾斜面180が形成されており、座部4がさらに下方へ回動されて係合杆137に対してこのガイド傾斜面180が押圧されると、ロック具157はバネ163に抗して枢支軸159を中心に上方へ回動する。次いでバネ163の弾撥力によってロック具157は逆に下方へ回動して、係合杆137にロック具157の係合用凹部161が係合される。
このように、ロック機構104に設けたロック具157の係合用凹部161が脚部100に設けた係合杆137に係合されることによって、脚部100に対して座部4を係合することができ、座部4を水平状態に固定することができる。従って、座部4が不用意に上方へ回動して転倒するなどの事故を未然に防ぐことができる。
次に、浴室用椅子1Cを折り畳むにあたっては、まず、係合杆137に対するロック機構104のロック具157の係合を解除する。この係合解除は、図14に示す背もたれ部10Aに設けた操作具105aを操作することによって行なうことができる。すなわち、図14のα矢印のように操作具105aのレバー片166をピン168を中心にして上方へ回動させると、操作具105aに接続したレリースワイヤ106のワイヤ171の一端が引っ張られる。このようにレリースワイヤ106のワイヤ171が引かれると、ワイヤ171の他端でロック具157が引かれ、ロック具157はバネ163に抗して上方へ回動され、係合杆137に対する係合用凹部161の係合が解除される。
このように、係合杆137に対するロック機構104の係合を解除して、脚部100に対する座部4の係合固定を解除するにあたっては、上記のように背もたれ部10Aに設けた操作具105aを操作することによって行なうことができる。そして、操作具105aはこのように背もたれ部10Aという椅子の最高所に位置するので、かがみ込んだりする必要なく、立った楽な姿勢のまま操作具105aを操作することができ、ロック機構104の係合解除の操作を容易に行なうことができる。しかも、操作具105aのレバー片166を引き上げて上方へ回動させることによって操作を行なうことができるので、立った姿勢のまま腕を下げて指にレバー片166を引掛けることによって、操作具105aを回動させる操作を容易に行なうことができる。
ここで、解除操作部105の操作を容易に行なうことができるように解除操作部105を背もたれ部10Aに設けることで、座部4の下面のロック機構104と解除操作部105との間の距離が大きくなるが、レリースワイヤ106がロック機構104と解除操作部105との間に設けてあるので、レリースワイヤ106という簡便な機構で、ロック機構104を解除操作部105によって遠隔操作することができる。
また、背もたれ部10Aの上端の中央部には後方へ張り出した上面が平坦な張り出し部113が設けてあり、図13及び図14に示すように解除操作部105はこの張り出し部113の直下の位置に配置してある。また張り出し部113と操作具105aを片手で同時に掴めるように、張り出し部113に近い位置に操作具105aを配置してある。例えば、張り出し部113の上面と操作具105aのレバー片166の下面の間の距離が6〜9cm程度になるように設定するのが好ましい。従って、例えば片手の親指を張り出し部113の上に宛がった状態で、同じ片手の人差し指や中指などを操作具105aのレバー片166の下側に引掛け、この片手を握るようにすることによって、操作具105aを引き上げる操作をすることができ、強い力で、且つ片手だけの操作で、ロック機構104の係合解除を行なうことができる。
ここで、レバー片166には上記のように上下に開口する貫通孔114が形成してあるので、人差し指や中指などの指先をこの貫通孔114に下側から差し入れることによって、操作具105aのレバー片166を引き上げる操作がより容易になる。また貫通孔114に差し入れる指の長さを調整することによって、手のひらの大きさに関係なく、張り出し部113と操作具105aを片手で容易に掴むことができる。
上記のように操作具105aを操作してロック機構104の係合を解除し、脚部100に対する座部4の係合固定状態を解除すると、前脚2と後脚3を閉じる方向に回動付勢するバネ107が上記のように脚部100に設けてあるので、バネ107の力で前脚2と後脚3は枢支部112を中心にして閉じる方向に自動的に回動する。そしてこのように前脚2と後脚3が閉じる方向へ回動すると、つまり前脚2に対して後脚3が接近する方向に回動すると、後脚3に連結具110によって連結されている座部4の後端部が下方へ引かれて下方へ回動し、座部4の前端部が立ち上がるように上方へ回動されることになり、脚部100を折り畳むことができると共に座部4を立ち上げて折り畳むことができ、浴室用椅子1Cの折り畳みを行なうことができる。
ここで、上記のようにロック機構104の係合を解除する操作具105aの操作は片手で行なうことができ、そしてロック機構104の係合を解除するとバネ107の作用で脚部100の折り畳み回動と、座部4の折り畳み回動が自動的に行なわれるので、浴室用椅子1Cの折り畳みを片手だけで行なうことが可能になる。
このように浴室用椅子の折り畳みを行なうにあたって、既述のように、前脚2と後脚3を枢着する枢支部112が、前脚2と後脚3の下端を底辺とする二等辺三角形の頂点に位置するように設定されているので、前脚2と後脚3を折り畳んで狭めた状態でも、自立させることができるものであり、壁にもたれ掛けさせたりする必要なく収納することができる。
次に、このように折り畳んだ浴室用椅子1Cを使用するために開くにあたっては、図16に示すように、後脚3の下端の脚ゴム37を浴室の洗い場など床面82に接地させた状態で、背方へ若干傾けて前脚2の下端を床面82から浮かし、この状態で、背もたれ部10Aの上端の張り出し部113を下方へ押えることによって行なうことができる。すなわち張り出し部113の上面をa矢印のように下方へ押えると、枢支部112を回動中心として背もたれ支柱111が下方へ回動されると共に、b矢印のように前脚2が上方へ回動され、前脚2は後脚3から離れる方向に回動して、脚部100が開く。そして座部4は連結具110を介して後脚3に連結されているので、このように前脚2と後脚3が開くように回動すると、これに連動して座部4がc矢印方向へと水平に倒れるように回動し、脚部100と座部4を開いて、浴室用椅子1Cを使用状態に開くことができる。
このとき、背もたれ部10Aの張り出し部113を片手で掴んで、図16のように後脚3の下端を床面82に接地させると共に前脚2の下端を床面82から浮かせた状態にし、このまま片手で張り出し部113を下方へ押えることによって、上記のように浴室用椅子1Cを開くことができ、片手だけで、浴室用椅子1Cを開く操作を容易に行なうことができる。
本実施の形態に係る浴室用椅子1Cでは、座部4は、自身の水平状態を維持するロック機構104を備え、背もたれ部10Aのホルダ13は、ロック機構104を操作し、座部4の水平状態を解除する解除操作部105を備えている。
これによれば、座部4の水平状態を解除する解除操作部105が、ホルダ13に備えられている場合であっても、背もたれ部10Aにおけるねじの露出を少なくし、汚れの付着を抑制することができる。
(その他)
以上、本発明に係る浴室用椅子について、上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
例えば、浴室用椅子1は、実施の形態1のように折り畳み可能であってもよいし、変形例1のように折り畳みできない構造であってもよい。
また、実施の形態1におけるフレーム5は、前脚2を構成するフレーム部材と接続され一体化されているが、それに限られない。フレーム5は後脚3または座部4に接続固定されていてもよい。
また、実施の形態1における背もたれ本体11は、複数組の第1ねじ21及び第1ナット31と、1組の第2ねじ22及び第2ナット32によりフレーム5に支持されているが、それに限られない。背もたれ本体11は、複数組の第1ねじ21と第1ナット31のみを用いてフレーム5に支持されていてもよい。また、第1ねじ21及び第1ナット31が1組で、第2ねじ22及び第2ナット32が複数組であってもよい。
また、実施の形態1における背もたれ本体11は、第1ねじ21が第1ナット31に螺合することで、フレーム5に固定されているが、それに限られず、第1ねじ21を用いてフレーム5に直接ねじ止めしてもよい。その場合においても、第1ねじ21の頭部21aが前面カバー12により覆われ、第1ねじ21の先端部21bが、ホルダ13により覆われることで、背もたれ部10におけるねじの露出をなくし、汚れの付着を抑制することができる。