以下、図1〜図8を用いて、本発明に係る画像形成装置を説明する。画像形成装置として複合機100を例に挙げて説明する。但し、本実施の形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定するものではなく単なる説明例にすぎない。
(複合機100の概要)
まず、図1、図2を用いて実施形態に係る複合機100を説明する。図1、図2は、実施形態に係る複合機100の一例を示す図である。
複合機100は、主制御部1と記憶部2を含む。主制御部1は、装置全体の動作を統括し複合機100の各部を制御する。主制御部1はCPU11、画像処理部12を含む。CPU11は、制御、演算を行う。画像処理部12は、ジョブに必要な画像処理を画像データに施す。記憶部2は、ROM、RAM、HDDのような記憶装置を含む。記憶部2は、制御用プログラムや各種データを記憶する。
複合機100は、原稿搬送部3aと画像読取部3bを含む。主制御部1と原稿搬送部3aと画像読取部3bは、通信可能に接続される。主制御部1は原稿搬送部3aと画像読取部3bの動作を制御する。原稿搬送部3aは、セットされた原稿を読み取り位置に向けて搬送する。画像読取部3bは、原稿搬送部3aが搬送する原稿や、原稿台(コンタクトガラス)にセットされた原稿を読み取る。画像読取部3bは、読み取った原稿の画像データを生成する。
操作パネル4は使用者の操作を受け付ける。操作パネル4は、例えば、表示パネル、タッチパネル、ハードキーを含む。主制御部1は、操作パネル4になされた設定を認識する。主制御部1は、使用者の設定どおりに動作するように複合機100を制御する。
複合機100は印刷部5を含む。印刷部5は、エンジン制御部6(印刷制御部に相当)、第1給紙ユニット7a、第2給紙ユニット7b、用紙搬送部5a、画像形成部5b、定着部5cを含む。エンジン制御部6は、エンジンCPU61、エンジンメモリー62を含む基板である。エンジン制御部6は、主制御部1の指示に基づき、印刷を制御する。具体的に、エンジン制御部6は第1給紙ユニット7a、第2給紙ユニット7b、用紙搬送部5a、画像形成部5b、定着部5cを制御する。
印刷ジョブのとき、エンジン制御部6は、第1給紙ユニット7aと第2給紙ユニット7bの何れか一方に、用紙を供給させる。また、エンジン制御部6は、画像形成部5bに向けて、各給紙ユニットに用紙を搬送させる。また、エンジン制御部6は、画像形成部5b、定着部5cを経て排出トレイ51まで用紙を用紙搬送部5aに搬送させる。用紙搬送部5aは、レジストローラー対8、中間ローラー対9、排出ローラー対52を含む。エンジン制御部6は、画像データに基づくトナー像を画像形成部5bに形成させる。また、エンジン制御部6は、搬送される用紙へのトナー像の転写を画像形成部5bに行わせる。エンジン制御部6は、シートに転写されたトナー像の定着を定着部5c行わせる。
また、複合機100(主制御部1)は通信部13を含む。通信部13は、PCやサーバーのようなコンピューター200と通信するためのインターフェイスである。通信部13は、コンピューター200から画像データのような印刷内容を示すデータや印刷に関する設定を示すデータを含むジョブ用データを受信する。主制御部1は、ジョブ用データに基づく印刷を印刷部5に行わせる(プリントジョブ)。
(給紙ユニット)
次に、図2、図3を用いて、実施形態に係る給紙ユニットの一例を説明する。図3は、実施形態に係る給紙ユニットの一例を示す図である。
図2に示すように、複合機100は給紙ユニットを含む。図2は、2段の給紙ユニットを積み重ねている例を示す。給紙ユニットは、3段以上積み重ねることができる。例えば、給紙ユニットを4段、積み重ねてもよい。本説明では、上段の給紙ユニットを第1給紙ユニット7aと称する。また、下段の給紙ユニットを第2給紙ユニット7bと称する。第1給紙ユニット7aと第2給紙ユニット7bは同様の構成である。以下、第1給紙ユニット7aと第2給紙ユニット7bの同じ部材には同じ符号を付す。
図2に示すように、各給紙ユニットは、用紙カセット71、用紙トレイ72、ピックアップローラー73、第1捌きローラー74、第2捌きローラー75、用紙搬送路76、搬送ローラー対77を含む。また、図3に示すように、各給紙ユニットは、搬送制御部70、給紙モーター78、搬送モーター79を含む。
用紙カセット71は、複合機100から引き出せる。用紙補給や用紙交換のとき、用紙カセット71は引き出される。用紙束が用紙トレイ72にセットされる。ピックアップローラー73が用紙トレイ72の搬送方向下流側の端部の上側に設けられる。用紙トレイ72の搬送方向下流側の端部が上方に持ち上げられる。用紙トレイ72を持ち上げる機構が設けられる。用紙トレイ72の最上位の用紙がピックアップローラー73と接する。ピックアップローラー73は、用紙の搬送方向下流側の端部と接する。
搬送制御部70は、CPUのような制御回路とメモリー70aを含む基板である。メモリー70aは、搬送制御部70の処理に必要なプログラムやデータを記憶する。搬送制御部70は、メモリー70aに記憶されたプログラム、データに基づき、給紙ユニットを制御する。
各搬送制御部70は、エンジン制御部6と通信線DLで接続される。つまり、第1給紙ユニット7aの搬送制御部70、第2給紙ユニット7bの搬送制御部70、エンジン制御部6が通信線DLに接続される。通信線DLは通信用バスである。エンジン制御部6と搬送制御部70は、通信線DLを介し、データ通信を行う。例えば、所定のバス規格に基づき、エンジン制御部6と搬送制御部70の間の通信が行われる。3台以上給紙ユニットを積み重ねられる場合でも、各給紙ユニットの搬送制御部70が通信線DLと接続される。
各給紙ユニットは、給紙モーター78、搬送モーター79を含む。第1給紙ユニット7aの搬送制御部70は、第1給紙ユニット7aの給紙モーター78、搬送モーター79を制御する。第2給紙ユニット7bの搬送制御部70は、第2給紙ユニット7bの給紙モーター78、搬送モーター79を制御する。通信線DLを介したエンジン制御部6からの指示に基づき、各搬送制御部70は、給紙モーター78、搬送モーター79を制御する。
第1給紙ユニット7aの給紙モーター78の駆動力は、第1給紙ユニット7aのピックアップローラー73に伝達される。第1給紙ユニット7aから用紙を供給するとき、エンジン制御部6は、第1給紙ユニット7aの搬送制御部70に向けて、給紙モーター78の回転開始指示を送信する。給紙モーター78の回転開始指示を受信したとき、第1給紙ユニット7aの搬送制御部70は、給紙モーター78の回転を開始させる。これにより、第1給紙ユニット7aのピックアップローラー73が回転する。
第2給紙ユニット7bの給紙モーター78の駆動力は、第2給紙ユニット7bのピックアップローラー73に伝達される。第2給紙ユニット7bから用紙を供給するとき、エンジン制御部6は、第2給紙ユニット7bの搬送制御部70に向けて、給紙モーター78の回転開始指示を送信する。給紙モーター78の回転開始指示を受信したとき、第2給紙ユニット7bの搬送制御部70は、給紙モーター78の回転を開始させる。これにより、第2給紙ユニット7bのピックアップローラー73が回転する。
ピックアップローラー73の周面と紙面の摩擦により、用紙が搬送方向下流側に送り出される。送り出された用紙は、第1捌きローラー74と第2捌きローラー75のニップに進入する。第1捌きローラー74は、下流(搬送ローラー対77、画像形成部5b)に向けて用紙を搬送する方向に回転する。第2捌きローラー75は、上流に向けて用紙を搬送する方向に回転する。第1捌きローラー74は第2捌きローラー75よりも搬送力が大きい。そのため、送り出された用紙が1枚のとき、用紙は、下流に向けて搬送される。用紙が重なって送り出されたとき、下側の用紙は、上流方向(用紙トレイ72)に送り返される。上側の1枚の用紙のみが、下流に向けて搬送される。
第1給紙ユニット7aの給紙モーター78の駆動力は、第1給紙ユニット7aの第1捌きローラー74と第2捌きローラー75に伝達される。第2給紙ユニット7bの給紙モーター78の駆動力は、第2給紙ユニット7bの第1捌きローラー74と第2捌きローラー75に伝達される。
各給紙ユニットには、用紙搬送路76を含む。用紙搬送路76は、第1捌きローラー74と第2捌きローラー75の下流側に設けられる。第2給紙ユニット7bの用紙搬送路76の上端が第1給紙ユニット7aの用紙搬送路76の下端と接続される。そのため、第2給紙ユニット7bから供給された用紙は、第1給紙ユニット7aの用紙搬送路76を通過する。第1給紙ユニット7aの用紙搬送路76の上端は、用紙搬送部5aの搬送路の上流端に接続される。用紙搬送部5aの搬送路は画像形成部5bに向けて用紙をガイドする。各給紙ユニットから供給された用紙は、用紙搬送部5aの搬送路に進入する。
用紙搬送路76に搬送ローラー対77が設けられる。第1給紙ユニット7aの搬送モーター79の駆動力は、第1給紙ユニット7aの搬送ローラー対77に伝達される。第2給紙ユニット7bの搬送モーター79の駆動力は、第2給紙ユニット7bの搬送ローラー対77に伝達される。第1捌きローラー74と第2捌きローラー75を通過した用紙は、搬送ローラー対77のニップに進入する。搬送ローラー対77は下流側(上方向、レジストローラー対8、画像形成部5b)に向けて用紙を搬送する。
(レジストセンサー81による用紙検知)
次に、図2、図3を用いて、実施形態に係る複合機100でのレジストセンサー81による用紙検知の一例を説明する。
図2に示すように、画像形成部5bの上流側にレジストローラー対8が設けられる。また、レジストローラー対8と第1給紙ユニット7aの搬送ローラー対77の間にレジストセンサー81が設けられる。複合機100では、レジストローラー対8の上流側近傍にレジストセンサー81が設けられる。
レジストセンサー81は、用紙の有無を検知するセンサーである。レジストセンサー81は、例えば、光センサーである。レジストセンサー81は、用紙が存在しているときと、していないときとで出力レベルを変化させる。例えば、レジストセンサー81は、アクチュエーターを含む。アクチュエーターは搬送用紙と接する。アクチュエーターは回転可能である。アクチュエーターの回転角度に応じて、レジストセンサー81の出力レベルが変化する。アクチュエーターは用紙の先端に押し倒される。これにより、レジストセンサー81の出力レベルが用紙有のレベルに変化する。アクチュエーターは付勢される。用紙の後端がアクチュエーターを通過したとき、付勢により、アクチュエーターの回転角度が戻る。これにより、レジストセンサー81の出力レベルが用紙無しのレベルに変化する。
図3に示すように、レジストセンサー81の出力は、エンジン制御部6に入力される。レジストセンサー81の出力に基づき、エンジン制御部6は、用紙の先端がレジストセンサー81の設置位置に到達した時点ことを認識する。言い換えると、エンジン制御部6は、用紙の先端がレジストローラー対8の近傍に到達したことを認識する。以下、用紙の先端がレジストセンサー81の設置位置に到達した時点を到達時点と称する。
また、レジストセンサー81の出力に基づき、エンジン制御部6は、用紙がレジストセンサー81の設置位置に存在していること(通過中であること)を認識する。また、レジストセンサー81の出力に基づき、エンジン制御部6は、用紙の後端がレジストセンサー81の設置位置を通過したことを認識する。
(レジストローラー対8と中間ローラー対9)
次に、図2、図3を用いて、実施形態に係るレジストローラー対8と中間ローラー対9の一例を説明する。
画像形成部5bの上流側にレジストローラー対8が設けられる。レジストローラー対8は、画像形成部5bに向けて用紙を搬送する。図3に示すように、レジストモーター8282が設けられる。レジストモーター82の駆動力はレジストローラー対8に伝達される。レジストモーター82はレジストローラー対8を回転させる。エンジン制御部6とレジストモーター82は制御信号線(専用信号線)で接続される。エンジン制御部6はレジストモーター82(レジストローラー対8)の回転を制御する。
レジストローラー対8と第1給紙ユニット7aの搬送ローラー対77の間に、中間ローラー対9が設けられる。搬送経路での位置関係は、上流側から第1給紙ユニット7aの搬送ローラー対77、中間ローラー対9、レジストセンサー81、レジストローラー対8となる。中間ローラー対9は、用紙をレジストローラー対8に向けて搬送する。図3に示すように、中間モーター9が設けられる。中間モーター9の駆動力は中間ローラー対9に伝達される。中間モーター9は中間ローラー対9を回転させる。エンジン制御部6と中間モーター9は制御信号線(専用信号線)で接続される。エンジン制御部6は、中間モーター9(中間ローラー対9)の回転を制御する。
中間ローラー対9は、搬送ローラー対77やレジストローラー対8よりも用紙をニップする力が弱く設定される。そのため、搬送ローラー対77と中間ローラー対9が同じ用紙をニップしている状態で搬送ローラー対77が用紙を搬送したとき、中間モーター9がOFF状態でも、中間ローラー対9は回転する。
なお、レジストローラー対8と中間ローラー対9を1つのモーターで回転させる場合、レジストモーター82と中間モーター9の代わりに、各ローラー対に電磁クラッチを設けてもよい。この場合、1つのモーターの駆動力が各電磁クラッチに伝達される。各電磁クラッチとエンジン制御部6は、制御信号線で接続される。エンジン制御部6は、各電磁クラッチの連結、開放を制御する。つまり、エンジン制御部6は、各電磁クラッチを制御して、レジストローラー対8と中間ローラー対9の回転、停止を制御する。
(レジストローラー対8までの用紙搬送の流れ)
次に、図2、図4を用いて、実施形態に係る複合機100でのレジストローラー対8までの用紙搬送の流れの一例を説明する。図4は、実施形態に係る複合機100でのレジストローラー対8までの用紙搬送の流れの一例を示すフローチャートである。
図4のスタートは、給紙を開始する時点である。印刷ジョブのとき、給紙が行われる。複数枚印刷する印刷ジョブのとき、図4の処理が用紙1枚ごとに実行される。
エンジン制御部6は給紙元を定める(ステップ♯1)。本説明では、エンジン制御部6は、第1給紙ユニット7aと第2給紙ユニット7bのうち、何れか一方を給紙元と定める。例えば、エンジン制御部6は、印刷に用いるサイズの用紙を収容する給紙ユニットを給紙元と定める。各給紙ユニットはセットされた用紙のサイズを検知するサイズセンサー(不図示)を含む。サイズセンサーの出力に基づき、エンジン制御部6は、各給紙ユニットが収容する用紙サイズを認識してもよい。また、エンジン制御部6は、操作パネル4で選択された給紙ユニットを給紙元と定めてもよい。また、プリントジョブの場合、エンジン制御部6は、コンピューター200のドライバーソフトウェアで選択された給紙ユニットを給紙元と定めても良い。
通信線DLを介し、エンジン制御部6は、給紙元の搬送制御部70に給紙開始指示を送信する(ステップ♯2)。給紙開始指示を受信したとき、給紙元の搬送制御部70は、給紙モーター78と搬送モーター79の回転を開始させる(ステップ♯3)。用紙搬送速度が仕様上の搬送速度(第1搬送速度V1)となるように、エンジン制御部6と搬送制御部70は各モーターを回転させる。これにより、用紙は、第1搬送速度V1で搬送される。
給紙元が第1給紙ユニット7aのとき、第1給紙ユニット7aの搬送制御部70は、第1給紙ユニット7aの給紙モーター78と搬送モーター79を回転させる。これにより、第1給紙ユニット7aのピックアップローラー73、各捌きローラー、搬送ローラー対77が回転する。
給紙元が第2給紙ユニット7bのとき、エンジン制御部6は、第2給紙ユニット7bの搬送制御部70に給紙開始指示を送信する。これにより、第2給紙ユニット7bの搬送制御部70は、第2給紙ユニット7bの給紙モーター78と搬送モーター79を回転させる。これにより、第2給紙ユニット7bのピックアップローラー73、各捌きローラー、搬送ローラー対77が回転する。また、第1給紙ユニット7aの搬送ローラー対77を回転させることが好ましい。そこで、給紙元が第2給紙ユニット7bのとき、エンジン制御部6は、第1給紙ユニット7aの搬送制御部70に、搬送モーター79の回転指示を送信する。搬送モーター79の回転開始指示を受信したとき、第1給紙ユニット7aの搬送制御部70は、搬送モーター79の回転を開始させる。これにより、第1給紙ユニット7aの搬送ローラー対77が回転する。
なお、給紙モーター78の回転開始から予め定められた給紙時間が経過したとき、搬送制御部70は給紙モーター78を停止させる。用紙間で所定の紙間を設けるためである。給紙時間は搬送方向の用紙の長さを第1搬送速度V1で除した時間以内の時間とされる。
さらに、エンジン制御部6は、中間ローラー対9の回転を開始させる(ステップ♯4)。例えば、エンジン制御部6は、中間モーター9の回転を開始させる。エンジン制御部6は、用紙搬送速度が第1搬送速度V1となるように、中間ローラー対9(中間モーター9)を回転させる。このとき、エンジン制御部6は、レジストローラー対8を停止状態とする(ステップ♯5)。例えば、エンジン制御部6は、レジストモーター82を停止状態とする。つまり、エンジン制御部6は、用紙先端がレジストローラー対8に到達した時点で、レジストローラー対8を停止させておく。
搬送ローラー対77、中間ローラー対9は、用紙をレジストローラー対8に向けて搬送する(ステップ♯6)。やがて、レジストセンサー81の出力変化に基づき、エンジン制御部6は、レジストセンサー81の設置位置に用紙先端が到達した時点(到達時点)を認識する(ステップ♯7)。
エンジン制御部6は、到達時点から予め定められた撓み生成時間T1が経過した時点で停止決定を行う(ステップ♯8)。停止決定は、搬送モーター79を停止させるための決定である。到達時点後、用紙の先端がレジストローラー対8のニップに突き当たる。ニップに突き当たった状態で、搬送ローラー対77と中間ローラー対9は、用紙の後端側を搬送する。これにより、先端が抑えられた用紙が撓む。
停止決定に基づき、エンジン制御部6は、停止指示を給紙元の搬送制御部70に送信する(ステップ♯9)。なお、第2給紙ユニット7bが給紙元のとき、それぞれの搬送制御部70に停止指示を送信する。
停止指示を受信した搬送制御部70は、搬送ローラー対77(搬送モーター79)を一時停止させる(ステップ♯10)。なお、第2給紙ユニット7bが給紙元のとき、それぞれの搬送制御部70が自ユニットの搬送モーター79を一時停止させる。
搬送ローラー対77の一時停止後、第1給紙ユニット7a(レジストローラー対8に近い給紙ユニット)の搬送制御部70とエンジン制御部6は、撓み確保搬送を行う(ステップ♯11)。撓み確保搬送のとき、第1給紙ユニット7aの搬送制御部70は、予め定められた追加搬送時間T2、第1給紙ユニット7aの搬送ローラー対77(搬送モーター79)を回転させる。なお、撓み確保搬送のとき、第2給紙ユニット7bの搬送制御部70は、予め定められた追加搬送時間T2、第2給紙ユニット7bの搬送ローラー対77(搬送モーター79)を回転させてもよい。
また、エンジン制御部6は、追加搬送時間T2、中間ローラー対9(中間モーター9)を回転させる。撓み確保搬送での用紙搬送速度は、第2搬送速度V2とされる。第2搬送速度V2は、第1搬送速度V1よりも遅い。
ここで、各給紙ユニットの搬送モーター79と、中間モーター9にはステッピングモーターが用いられる。第2搬送速度V2とするとき(撓み確保搬送のとき)、各給紙ユニットの搬送制御部70は、自起動周波数で搬送モーター79を回転させてもよい。また、第2搬送速度V2とするとき、エンジン制御部6は、搬送ローラー対77の搬送速度(周速度)と中間ローラー対9の搬送速度が一致するように、中間モーター9を回転させる。
撓み確保搬送後、搬送制御部70とエンジン制御部6は、各モーターを停止させる(ステップ♯12)。具体的に、搬送制御部70は、搬送モーター79を停止させる。エンジン制御部6は、中間モーター9を停止させる。
やがて、エンジン制御部6は、レジストローラー対8の回転開始を決定する(ステップ♯13)。レジストローラー対8の回転開始タイミングは適宜定められる。例えば、仕様上の印刷速度に基づき、レジストローラー対8の回転開始タイミングが定められてもよい。1分間あたりの30枚印刷する仕様のとき、2秒に1回、エンジン制御部6は、レジストローラー対8の回転を開始させる。
レジストローラー対8の回転開始決定に基づき、エンジン制御部6は、レジストローラー対8(レジストモーター82)の回転を開始させる(ステップ♯14)。レジストローラー対8の回転にあわせて、エンジン制御部6は、何れか1つ、又は、複数の給紙ユニットの搬送ローラー対77の回転を開始させてもよい。この場合、エンジン制御部6は、搬送ローラー対77を回転させる給紙ユニットの搬送制御部70に回転開始指示を出す。回転開始指示を受信した搬送制御部70は、搬送モーター79を回転させる。また、レジストローラー対8の回転にあわせて、エンジン制御部6は、中間ローラー対9(中間モーター9)の回転を開始させてもよい。以後、用紙搬送部5a、画像形成部5b、定着部5cが用紙を搬送する。最終的に、印刷済用紙が排出トレイ51に排出される(エンド)。
(通信遅延時間に基づく撓み生成時間T1と追加搬送時間T2の設定)
次に、図5〜図8を用いて、通信遅延時間に基づく撓み生成時間T1と追加搬送時間T2の設定の一例を説明する。図5は、実施形態に係る複合機100での通信遅延時間のバラツキの影響の一例を示す図である。図6は、実施形態に係る撓み確保搬送の一例を示す図である。図7は、実施形態に係る撓み生成時間T1の設定の一例を示す図である。図8は、実施形態に係る追加搬送時間T2の設定の一例を示す図である。
エンジン制御部6は通信線DLを介して停止指示を送信する。搬送制御部70は、通信線DLを介して停止指示を受信する。停止指示を受信した搬送制御部70は、搬送ローラー対77(搬送モーター79)を停止させる。エンジン制御部6が停止決定をしてから搬送制御部70が停止指示を受信するまで、時間差(通信遅延時間)がある。通信遅延時間はゼロにはできない。停止指示の送受信自体にある程度、時間がかかるためである。通信線DL(通信バス)の通信速度が遅いほど、通信遅延時間は大きくなる。
また、通信線DL(通信バス)には複数のデバイスが接続される。例えば、第1給紙ユニット7aと第2給紙ユニット7bの搬送制御部70が接続される。更に給紙ユニットを積み重ねた場合、追加した各給紙ユニットの搬送制御部70が接続される。また、通信線DLには、給紙ユニット以外のデバイスを接続する場合もあり得る。
このように、複合機100では、通信線DLは、複数のデバイスで共用される。あるデータの送受信中に停止決定がなされた場合、当該送受信の終了後でなければ、エンジン制御部6は、搬送制御部70への停止指示の送信を開始できない。通信線DLが混雑している場合、通信遅延時間が長くなる。通信線DLが混雑していない場合、通信遅延時間が短くなる。
また、エンジン制御部6は、周期的に一定の処理を行うことがある。例えば、エンジン制御部6は、一定周期で、通信線DLに接続されるデバイスの確認処理を行う(ポーリング)。周期的な処理中に停止決定がなされた場合、エンジン制御部6は、周期的な処理を完了してから停止指示の送信を開始する。停止決定のタイミングによっても通信遅延時間が変わる。
このように、場合により、通信遅延時間が変わる。通信遅延時間が変わることにより、搬送ローラー対77(搬送モーター79)が停止するタイミングがばらつく。つまり、通信遅延時間のバラツキは、到達時点から搬送ローラーの一時停止までの用紙搬送量のバラツキを招く。以下の説明では、到達時点から搬送ローラーの一時停止までの用紙搬送量を第1撓み搬送量と称する。第1撓み搬送量は、到達時点から撓み確保搬送前までに用紙を搬送した距離ともいえる。
通信遅延時間が短いほど、第1撓み搬送量は少なくなる(短くなる)。通信遅延時間が長いほど、第1撓み搬送量は多くなる(長くなる)。この点を図5のタイミングチャートを用いて説明する。図5の各チャートのHighレベルは、搬送ローラー対77が回転していることを示す。Lowレベルは、搬送ローラー対77の停止していることを示す。図5のチャートのうち、最上段のチャートは、通信遅延時間が短いときの搬送ローラー対77の挙動の一例を示す。中段のチャートは、通信遅延時間が中レベルであるときの搬送ローラー対77の挙動の一例を示す。最下段のチャートは、通信遅延時間が長いときの搬送ローラー対77の挙動の一例を示す。
図5におけるt1は、到達時点(レジストセンサー81が用紙の先端到達を検知した時点)の一例を示す。図5におけるt2は、エンジン制御部6が停止決定を行う時点の一例を示す。通信遅延時間の多少に問わず、t1からt2までが撓み生成時間T1である。撓み生成時間T1は、通信遅延を考慮して設定される。t1からt2までの期間は一定である。図5におけるt3は、用紙の先端がレジストローラー対8のニップに突き当たった時点の一例を示す。t3の時点からの搬送ローラー対77と中間ローラー対9の搬送により、用紙が撓む。
図5におけるt4、t5、t6は、搬送制御部70が搬送ローラー対77(搬送モーター79)を停止させた時点を示す。通信遅延時間が少ないとき、時点t3から時点t4までの時間間隔B1は短くなる(狭くなる)。通信遅延時間が多いとき、時点t3から時点t6までの時間間隔B3は長くなる(広くなる)。通信遅延時間が短くも長くも無いとき、時点t3から時点t5までの時間間隔B2は、時間間隔B1よりも長い。また、時間間隔B2は時間間隔B3よりも短い。このように、通信遅延時間が長いほど、第1撓み搬送量が多くなる。つまり、通信遅延時間が長いほど、用紙の撓みが大きくなる。また、通信遅延時間が短いほど、用紙の撓みが不足しがちになる。
通信遅延時間が短いときの用紙の撓み不足を解消するため、搬送制御部70は、搬送ローラー対77の一時停止後、レジストローラー対8の回転開始前に撓み確保搬送を行う。図6に撓み確保搬送時の搬送ローラー対77の挙動の一例を示す。図6のうち、時点t7は、レジストローラー対8の回転開始時点の一例を示す。撓み確保搬送のとき、搬送制御部70は、追加搬送時間T2だけ、搬送ローラー対77(搬送モーター79)を回転させる。なお、撓み確保搬送時、エンジン制御部6は、搬送ローラー対77と同様に中間ローラー対9を回転させる。
次に、図7を用いて撓み生成時間T1の設定の一例を説明する。撓み生成時間T1は、到達時点から停止決定を行うまでの時間である。図7の縦軸は、到達検知後の用紙搬送量(距離)を示す。図7の横軸は停止決定から搬送制御部70が停止指示を受信するまでの通信遅延時間(時間差)を示す。
到達時点後の用紙搬送量について、最低必要量L0と第1最大許容量L1が予め定められる。図7において、1点鎖線で最低必要量L0の一例を示す。また、図7において、2点鎖線で第1最大許容量L1の一例を示す。
最低必要量L0は、到達時点からレジストローラー対8の回転開始までに、位置ずれや傾きなく印刷するのに最低限必要な搬送量(用紙搬送距離)である。言い換えると、最低必要量L0は、撓み生成のため最低限搬送すべき距離である。実験結果に基づき、最低必要量L0は定められる。到達時点からレジストローラー対8の回転開始までの用紙の搬送量は、最低必要量L0を上回る必要がある。
また、第1最大許容量L1が予め定められる。第1最大許容量L1は、用紙搬送速度が第1搬送速度V1である場合において、到達時点から搬送ローラー対77と中間ローラー対9の一時停止までに許容される搬送量の最大値を示す。つまり、第1最大許容量L1は、第1撓み搬送量の最大値である。用紙搬送速度が第1搬送速度V1である場合、第1撓み搬送量が第1最大許容量L1を超えると、用紙ダメージ(折れ、シワ)が発生する。実験結果に基づき、第1最大許容量L1は定められる。通信遅延時間が長くなっても、第1撓み搬送量は、第1最大許容量L1以下に抑える必要がある。
そして、通信遅延時間に関し、最小遅延時間Tminが予め定められる。また、通信遅延時間に関し、最大遅延時間Tmaxが予め定められる。最小遅延時間Tmin、最大遅延時間Tmaxは、実際の通信遅延時間の計測結果に基づき定められる。例えば、最小遅延時間Tminは、数ミリ秒〜十数ミリ秒程度である。例えば、最大遅延時間Tmaxは、数十ミリ秒程度である。
複合機100では、通信遅延時間が最小遅延時間Tminである場合に、到達時点から搬送ローラー対77や中間ローラー対9の一時停止までの用紙搬送量(第1撓み搬送量)が、最低必要量L0未満となるように、撓み生成時間T1が設定される。搬送ローラー対77の一時停止まで、用紙は第1搬送速度V1で搬送される。関係としては、以下の式1のとおりとなる。
(式1)L0>(T1+Tmin)×V1
式1を整理すると、以下の式2となる。
(式2)T1<(L0/V1)−Tmin
L0=最低必要量、T1=撓み生成時間、Tmin=最小遅延時間、V1=第1搬送速度である。
停止決定後、最大遅延時間Tmaxが経過してから搬送制御部70が停止指示を受信することがある。そこで、複合機100では、通信遅延時間が最大遅延時間Tmaxである場合に、第1撓み搬送量が、第1最大許容量L1以下となるように、撓み生成時間T1が設定される。関係としては、以下の式3のとおりとなる(用紙搬送速度は第1搬送速度V1)。
(式3) L1≧(T1+Tmax)×V1
式3を整理すると、以下の式2となる。
(式4) T1≦(L1/V1)−Tmax
L1=第1最大許容量、T1=撓み生成時間、Tmax=最大遅延時間、V1=第1搬送速度である。
(式1)〜(式4)の関係が保たれるように、撓み生成時間T1が設定される。記憶部2やエンジンメモリー62は、設定された撓み生成時間T1を記憶する。
次に、図8を用いて追加搬送時間T2の設定の一例を説明する。追加搬送時間T2は、撓み確保搬送で搬送ローラー対77を回転させる時間である。図8の縦軸は、到達時点からレジストローラー対8の回転開始までの用紙搬送量(距離)を示す。
到達時点からレジストローラー対8の回転開始までの用紙搬送量について、第2最大許容量L2も予め定められる。図8において、第2最大許容量L2の一例を3点鎖線で示す。また、図8において、第1最大許容量L1の一例を2点鎖線で示す。
第2最大許容量L2は、用紙搬送速度が第2搬送速度V2である場合において、到達時点後、レジストローラー対8の回転開始までに許容される搬送量の最大値を示す。到達時点後、レジストローラー対8の回転開始までの搬送量は、第1撓み搬送量と、撓み確保搬送による搬送量の合計値となる。以下、撓み確保搬送による搬送量を第2撓み搬送量と称する。
用紙搬送速度が第2搬送速度V2である場合、到達時点からレジストローラー対8の回転開始までの搬送量が第2最大許容量L2を超えると、用紙ダメージ(折れ、シワ)が発生する。つまり、第1撓み搬送量と第2撓み搬送量の合計は、第2最大許容量L2以下に止める必要がある。実験結果に基づき、第2最大許容量L2は定められる。
ここで、第2最大許容量L2は、第1最大許容量L1よりも大きくなることが経験的にわかっている。撓み確保搬送では、第2搬送速度V2で用紙が搬送される。第2搬送速度V2は第1搬送速度V1よりも遅い。つまり、撓み確保搬送では、用紙はゆっくり撓まされる。強い力がかかり、用紙の繊維の折れやずれが生じたとき、用紙ダメージが生ずる。一時的に加わった力が大きいほど、用紙の繊維の折れやずれが生じやすい。そのため、第2最大許容量L2は、第1最大許容量L1よりも大きくなると解される。
停止決定後、最大遅延時間Tmaxが経過してから搬送制御部70が停止指示を受信することがある。そこで、複合機100では、通信遅延時間が最大遅延時間Tmaxである場合に、第1撓み搬送量と第2搬送量の合計が、第2最大許容量L2以下となるように、追加搬送時間T2が設定される。到達時点からレジストローラー対8の回転開始までの用紙搬送量が、第2最大許容量L2以下となるように、追加搬送時間T2が設定される。通信遅れが最大のときでも、撓み確保搬送で用紙ダメージが生じないようにする。
搬送ローラー対77の一時停止まで、用紙は第1搬送速度V1で搬送される。撓み確保搬送では、用紙は第2搬送速度V2で搬送される。関係は、以下の式5のとおりとなる。
(式5) L2≧((T1+Tmax)×V1)+(T2×V2)
(T1+Tmax)×V1をAとし、(式5)を整理すると、以下の(式6)となる。
(式6)T2≦(L2−A)/V2
L2=第2最大許容量、T1=撓み生成時間、T2=追加搬送時間、Tmax=最大遅延時間、V1=第1搬送速度、V2=第1搬送速度である。
また、停止決定後、通信遅延時間が最小遅延時間Tminの場合もある。そこで、複合機100では、通信遅延時間が最小遅延時間Tminである場合に、第1撓み搬送量と第2撓み搬送量の合計の合計が、最低必要量L0以上となるように、追加搬送時間T2が設定される。言い換えると、到達時点からレジストローラー対8の回転開始までの用紙搬送量が、最低必要量L0以上となるように、追加搬送時間T2が設定される。つまり、通信遅れが最小のときでも、必要な用紙の撓みを確保する。
搬送ローラー対77の一時停止まで、用紙は第1搬送速度V1で搬送される。撓み確保搬送では、用紙は第2搬送速度V2で搬送される。関係は、以下の式7のとおりとなる。
(式7) L0≦((T1+Tmin)×V1)+(T2×V2)
(T1+Tmax)×V1をBとし、(式7)を整理すると、以下の(式8)となる。
(式8)T2≧(L0−B)/V2
L0=最低必要量、T1=撓み生成時間、T2=追加搬送時間、Tmin=最小遅延時間、V1=第1搬送速度、V2=第1搬送速度である。
(式5)〜(式8)の関係が保たれるように、追加搬送時間T2が設定される。記憶部2やエンジンメモリー62、各給紙ユニットのメモリー70aは、設定された追加搬送時間T2を記憶する。
ここで、エンジン制御部6は、通信遅延時間を計測してもよい。この場合、エンジン制御部6は、1ページごとに、停止決定から搬送制御部70への停止指示の送信完了までの時間(通信遅延時間)を測る。そして、エンジン制御部6は、今までに測った通信遅延時間の最大値と最小値をエンジンメモリー62に記憶させてもよい。エンジン制御部6は、最大値を最大遅延時間Tmaxと扱う。エンジン制御部6は、最小値を最小遅延時間Tminと扱う。記憶部2やエンジンメモリー62は、最小遅延時間Tmin(最小値)、最大遅延時間Tmax(最大値)、最低必要量L0、第1最大許容量L1、第1最大許容量L1、第1搬送速度V1、第2搬送速度V2を記憶してもよい(図1、図3参照)。
記憶部2やエンジンメモリー62に記憶されたデータに基づき、エンジン制御部6は、(式1)〜(式4)の関係が保たれるように撓み生成時間T1を設定してもよい。また、エンジン制御部6は、(式5)〜(式8)の関係が保たれるように追加搬送時間T2を設定してもよい。
通信遅延時間(印刷制御部の停止決定から搬送制御部70が停止時を受信するまでの時間差)が短い場合、用紙の撓みが不足することがある。用紙の撓みが不足する場合、画像形成部5bへの用紙の到達が遅れることがある。用紙の到達が遅れた場合、画像の先頭位置がずれることがある。また、用紙の撓みが不足する場合、斜行を十分に矯正できず、画像が傾くこともある。
そこで、実施形態に係る画像形成装置(複合機100)は、画像形成部5b、レジストローラー(レジストローラー対8)、搬送ローラー(搬送ローラー対77)、搬送制御部70、レジストセンサー81、印刷制御部(エンジン制御部6)を含む。画像形成部5bは、用紙に画像を形成する。レジストローラーは、画像形成部5bに用紙を送り出す。搬送ローラーは、レジストローラーに向けて用紙を搬送する。搬送制御部70は、搬送ローラーの回転を制御する。レジストセンサー81は、搬送ローラーとレジストローラーの間に設けられ、用紙を検知する。印刷制御部は、搬送制御部70と通信線DLで接続される。印刷制御部は、通信線DLを介して搬送制御部70に指示を送信する。印刷制御部は、レジストセンサー81の出力に基づき、レジストセンサー81に用紙先端が到達した時点である到達時点を認識する。印刷制御部は、到達時点でレジストローラーを停止させる。印刷制御部は、到達時点から予め定められた撓み生成時間T1が経過した時点に停止決定を行う。停止決定後、印刷制御部は、停止指示を搬送制御部70に送信する。搬送制御部70は、停止指示を受信するまでレジストローラーに向けて第1搬送速度V1で搬送ローラーに用紙を搬送させる。搬送制御部70は、停止指示を受けたとき搬送ローラーを一時停止させる。一時停止後、レジストローラーの回転開始までの間、搬送制御部70は、撓み確保搬送を搬送ローラーに行わせる。撓み確保搬送では、搬送制御部70は、予め定められた第2搬送速度V2で予め定められた追加搬送時間T2、搬送ローラーを回転させる。搬送制御部70は、追加搬送時間T2の搬送後、搬送ローラーを停止させる。第2搬送速度V2は、第1搬送速度V1よりも遅い。印刷制御部は、追加搬送時間T2の搬送ローラーの回転後、レジストローラーの回転を開始する。
これにより、通信遅延時間が短くても、撓み確保搬送により用紙を十分に撓ませることができる。搬送ローラーの一時停止時点で用紙の撓みが不足しても、撓み確保搬送により、用紙を十分に撓ませることができる。
印刷制御部の指示ではなく、搬送制御部70が自発的に撓み確保搬送を制御する。追加搬送時間T2が経過した時点で、搬送制御部70は速やかに搬送ローラーを停止させる。撓み確保搬送時に用紙を搬送しすぎることがない。また、一般に、搬送速度が遅いほど、用紙のダメージ(シワ、折れ)が生じ難い。そして、撓み確保搬送は、低速(第2搬送速度V2)で行われる。通信遅延時間の長短を問わず、撓み確保搬送による用紙ダメージは生じない。
搬送ローラーを制御するための専用の信号線を設けなくてよい。従って、画像形成装置の製造コストをおさえることができる。更に、用紙の撓み量を検知するための特別なセンサーを設けなくてもよい。特別なセンサーを設けなくても、過不足なく用紙を撓ませることができる。
また、停止決定から搬送制御部70が停止指示を受信するまでの通信遅延時間に関し、最小遅延時間Tminが予め定められる。通信遅延時間が最小遅延時間Tminである場合に、到達時点から一時停止までの搬送ローラーの用紙搬送量である第1撓み搬送量が、予め定められた最低必要量L0未満となるように、撓み生成時間T1が設定される。これにより、一時停止時の撓みを少なめにすることができる。言い換えると、第1撓み搬送量を少なめにすることができる。従って、通信遅延時間が長くても、用紙を撓ませすぎないようにすることができる。通信遅延時間が短いとき、搬送ローラー対77(中間ローラー対9)の一時停止時の撓みが不足する場合があり得る。しかし、通信遅延時間が短くても、撓み確保搬送により、最終的に、用紙を十分撓ませることができる。
また、通信遅延時間に関し、最大遅延時間Tmaxが予め定められる。通信遅延時間が最大遅延時間Tmaxである場合に、第1撓み搬送量が、予め定められた第1最大許容量L1以下となるように、撓み生成時間T1が設定される。これにより、最大遅延時間Tmaxだけ通信が遅れても、第1撓み搬送量を第1最大許容量L1以下に抑えることができる。撓ませすぎによる用紙ダメージの発生を防ぐことができる。
搬送速度が遅いほど、用紙のダメージ(シワ、折れ)が生じ難い。第2搬送速度V2で搬送する場合、到達時点からの搬送量が第1最大許容量L1を超えても、直ぐには用紙ダメージは生じない。そこで、通信遅延時間が最大遅延時間Tmaxである場合に、第1撓み搬送量と撓み確保搬送による搬送量である第2撓み搬送量の合計が予め定められた第2最大許容量L2以下となるように、追加搬送時間T2が設定される。第2最大許容量L2は、第1最大許容量L1よりも大きい。これにより、最大遅延時間Tmaxだけ通信が遅れても、到達時点からレジストローラー対8の回転開始時までの搬送量を第2最大許容量L2以下に抑えることができる。最大遅延時間Tmaxだけ通信が遅れたときに撓み確保搬送を行っても、用紙ダメージの発生を防ぐことができる。
また、通信遅延時間が最小遅延時間Tminである場合、第1撓み搬送量と第2撓み搬送量の合計が最低必要量L0以上となるように、追加搬送時間T2が設定される。これにより、通信遅延時間が最小遅延時間Tminである場合でも、用紙を十分に撓ませることができる。
また、複合機100では、レジストローラーと搬送ローラーの間に中間ローラーが設けられる。中間ローラーは、レジストローラーに向けて用紙を搬送する。印刷制御部は、停止決定にあわせ中間ローラーを停止させる。搬送ローラーの停止後、レジストローラーの回転開始までの間、印刷制御部は、第2搬送速度V2で追加搬送時間T2、中間ローラーを回転させる。
追加搬送時間T2の搬送後、印刷制御部は、中間ローラーを停止させる。これにより、撓み確保搬送に連動して、中間ローラーを回転させることができる。中間ローラーが設けられていても、過不足なく用紙を撓ませることができる。
また、複合機100は、搬送ローラーを回転させるステッピングモーター(搬送モーター79)を含む。第2搬送速度V2で搬送ローラーを回転させるとき、搬送制御部70は、自起動周波数でステッピングモーターを回転させる。これにより、第1搬送速度V1に比べ、第2搬送速度V2(撓み確保搬送時の搬送速度)を十分に遅くすることができる。また、搬送ローラーの回転、停止を速やかに行うことができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。例えば、中間ローラー対9を含む画像形成装置を説明した。しかし、本発明は、搬送ローラー対77を含むが中間ローラー対9を含まない画像形成装置にも適用することができる。