以下に添付図面を参照して、本発明に係る光偏向器及び画像投影装置の実施の形態を説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る光偏向器100の概略上面図である。図1に示すように、光偏向器100には、主走査方向に相当する1軸方向のミラーの回転と、副走査方向に相当するもう一つの軸方向のミラーの回転とを発生させるカンチレバー構造が構成されている。具体的には、主走査方向のミラーの回転は、基板101(SOI基板:Silicon On Insulator)と、ミラー部位103と、トーションバー(ミラー支持部位)110と、圧電部材104と、カンチレバー109とにより発生する。ミラー枠部材301は、複数の本数により構成されるミアンダ形状のカンチレバー群302の一端に接続される。ミアンダ形状のカンチレバー群302のもう一方の一端は、外周の基板101と接続される。ミアンダ形状のカンチレバー群302上には、複数本の梁上に反り変形を発生させる手段としての圧電部材群303が存在する。
ミラー枠部材301は、圧電部材群303の反り変形に起因して、1軸方向とは異なるもう一つの軸方向(副走査方向)に回転する。すなわち、光偏向器100は、ミラーが2軸方向に回転することにより、入射する光の反射光方向を2軸方向に走査しながら偏向する。光偏向器100は、2軸方向への光偏向によって、例えば、画像を投影により表示する画像投影装置等に用いられる。電圧制御部201は、各構成部材に印加する電圧を供給するためのパッドであり、基板上に構成された配線により各構成部材に接続されている。なお、配線については、図示を簡易にするために省略している。
主走査方向に相当する1軸方向のミラーの回転を起こすための圧電部材104に印加される電圧は、圧電部材104の上下に位置する電極間に印加され、画像のフレームレートから決定される駆動周波数でサイン波電圧が印加される。例えば、駆動周波数は、20kHz等の比較的高い周波数となる。駆動周波数を、ミラー部位103の重量と、トーションバー110のばね定数とから決定される共振周波数に近い周波数とすることにより、共振させてミラーを回転させることができるため、比較的低い電圧で、ミラーの高い振れ角を発生させることができる。
圧電部材群303は、1本おきに2種類の駆動電圧に接続され、1本おきに電気的に接続されたカンチレバー群304及びカンチレバー群305のそれぞれが、各群で並列に電圧が印加されるように接続されている。ミラー枠部材301は、圧電部材群303の反り変形に起因して1軸方向とは異なるもう一つの軸方向(副走査方向)に回転する。カンチレバー群304は圧電部材群306を有し、カンチレバー群305は圧電部材群307を有する。なお、図1に示すミラー部位103の両端である「a」及び「b」と、「X−X’断面」とについては後述する。
カンチレバー109は、「第1のカンチレバー」に対応する。圧電部材104は、「第1の圧電部材」に対応する。圧電部材群306は、「第2の圧電部材」に対応する。圧電部材群307は、「第3の圧電部材」に対応する。カンチレバー群304は、「第2のカンチレバー」に対応する。カンチレバー群305は、「第3のカンチレバー」に対応する。トーションバー110は、「ミラー支持部位」に対応する。
図2は、実施の形態1に係るミラー枠部材301の上面を抜粋した図である。図3は、図2に示したA−A’断面図である。図4は、図2に示したB−B’断面図である。図5は、図2に示したC−C’断面図である。A−A’断面図(図3参照)及びB−B’断面図(図4参照)では、主に、ミラーを回転させる駆動力を発生するカンチレバー109、すなわち圧電部材104を表している。C−C’断面図(図5参照)では、ミラー部位103を表している。以下に、図2〜図5を用いて、シリコン基板(基板101)上に構成させる光偏向器100の基本的な製造方法を説明する。
シリコン基板(基板101)には、SOI基板が使用される。SOI基板である基板101は、活性層側のシリコン102と、埋め込み酸化膜層116と、基材層側のシリコン105とから構成される。埋め込み酸化膜層116は、「BOX層」と呼ばれる場合がある。まず、SOI表面にシリコン酸化膜107が成膜され、続いて、下部電極材料120(適宜、「下部電極120」と呼ぶ場合がある)、圧電材料121、上部電極材料122(適宜、「上部電極122」と呼ぶ場合がある)が順に成膜される。その後、上部電極材料122、圧電材料121、下部電極材料120が、それぞれ異なるパターンでパターン化される。このとき、それぞれのパターンは、光偏向器100に要求される性能等に応じて任意の形でパターン化され、シリコン酸化膜107は、下部電極材料120と同一のパターンでエッチングされる。
そして、絶縁膜108が成膜され、接続孔112を開口して、引出し配線材料111が成膜されパターン化される。続いて、パッシベーション膜113とミラー膜(ミラー部位103)とが成膜され、順次パターン化される。その後、活性層102(活性層側のシリコン)と、基材層105(基材層側のシリコン)と、埋め込み酸化膜層116とを順次パターン化及びエッチングすることで、光偏向器100が完成する。ウェハ上からチップに個片化する方法は、ブレードによるダイシング技術や、レーザダイシング技術や、ドライエッチング技術等により実現されれば良い。下部電極材料120と上部電極材料122との間に、サイン波の駆動電圧を印加することにより、圧電材料121が平面方向に伸縮し、圧電部材104の反りを発生させ、トーションバー110のねじりを起こし、ミラー部位103の共振振動を誘発させて、ミラー部位103の主走査方向の回転を起こす(図5参照)。
次に、図6及び図7を用いて、1軸方向の回転とは異なるもう一つの軸方向(副走査方向)への回転を発生させる構造を説明する。図6は、実施の形態1に係る光偏向器100のX−X’(図1参照)断面図である。図7は、実施の形態1に係るカンチレバー群302を変位させるための電気配線の概略図である。
図6に示すように、ミラー部位103を有するミラー枠部材301は、複数の本数により構成されるミアンダ形状のカンチレバー群302の一端に接続される。また、カンチレバー群302の他方の一端は、基板101に接続される。ミアンダ形状のカンチレバー群302は、カンチレバー群304と、カンチレバー群305との2種類に分類され、複数本の梁上に反り変形を発生させる手段として圧電部材群303を有する。この圧電部材群303の反り変形に起因して、ミラー枠部材301が1軸方向とは異なるもう一つの軸方向に回転する。カンチレバー群303は、カンチレバー群304とカンチレバー群305とに分かれている。カンチレバー群304とカンチレバー群305とには、異なる種類の駆動電圧が個別に印加される。カンチレバー群304とカンチレバー群305とは、異なる動きをするカンチレバーである。
図7に示すように、上部電極122と、下部電極120とは、それぞれ隣接するカンチレバー間(カンチレバー群304、カンチレバー群305)で別々に駆動する。カンチレバー群304とカンチレバー群305とは、並列に接続されている。図7では、上部電極122の一例として、カンチレバー群304の上部電極Aを上部電極306aとし、下部電極120の一例として、カンチレバー群304の下部電極Aを下部電極306cとしている。また、カンチレバー群304の圧電部材を、圧電部材306bとしている。同様に、図7では、上部電極122の一例として、カンチレバー群305の上部電極Bを上部電極307aとし、下部電極120の一例として、カンチレバー群305の下部電極Bを下部電極307cとしている。また、カンチレバー群305の圧電部材を、圧電部材307bとしている。
このため、カンチレバー群304とカンチレバー群305とのそれぞれにおいて、構成される各カンチレバーは、同様な反りを発生させる。カンチレバー群304とカンチレバー群305とに、駆動電圧の印加がなされることにより、基板101に接続する部位から徐々に変位が大きくなり、ミラー枠部材301に接する箇所の変位が最大となる。これにより、主走査方向のミラーの回転とは異なり、共振振動に寄らずに比較的大きな回転を発生させることができる。なお、電気配線については、図7に示したものに限られるわけではない。
上部電極306aは、「第1の上部電極」に対応する。下部電極306cは、「第1の下部電極」に対応する。上部電極307aは、「第2の上部電極」に対応する。下部電極307cは、「第2の下部電極」に対応する。
図8は、実施の形態1に係るカンチレバー群302を変位させるための電気配線の概略図である。図8に示すように、上部電極122と、下部電極120とは、それぞれ隣接するカンチレバー間(カンチレバー群304、カンチレバー群305)で別々に駆動する。図7と同様に、カンチレバー群304とカンチレバー群305とは、並列に接続されている。図7と異なる点について、上部電極122は接地されている。
次に、光偏向器100の駆動方法について説明する。図9Aは、実施の形態1に係るカンチレバー群304の上部電極電圧と下部電極電圧との駆動電圧チャートの例を示す図である。図9Bは、実施の形態1に係るカンチレバー群305の上部電極電圧と下部電極電圧との駆動電圧チャートの例を示す図である。図9Cは、実施の形態1に係るミラー部位103の両端a、bのドップラー振動変位量のチャートの例を示す図である。図9Dは、実施の形態1に係るミラー振れ角のチャートの例を示す図である。図9Aにおいて、カンチレバー群304の上部電極電圧は「V306a」とし、カンチレバー群304の下部電極電圧は「V306c」として表している。図9Bにおいて、カンチレバー群305の上部電極電圧は「V307a」とし、カンチレバー群305の下部電極電圧は「V307c」として表している。図9に示すa、bは、図1に示したものに対応する。
上部電極電圧V306aは、「第1の上部電極電圧」に対応する。下部電極電圧V306cは、「第1の下部電極電圧」に対応する。上部電極電圧V307aは、「第2の上部電極電圧」に対応する。下部電極電圧V307cは、「第2の下部電極電圧」に対応する。
上部電極306aには、時間軸に対して正又は負の鋸波形状の上部電極電圧V306aが印加され、対となる下部電極306cには、上部電極電圧V306aとは正負が逆となる鋸波形状の下部電極電圧V306cが印加される。上部電極電圧V306aと下部電極電圧V306cとは、電圧0Vを中心として、略対称的な電圧波形である。また、上部電極307aには、時間軸に対して正又は負の鋸波形状の上部電極電圧V307aが印加され、対となる下部電極307cには、上部電極電圧V307aとは正負が逆となる鋸波形状の下部電極電圧V307cが印加される。上部電極電圧V307aと下部電極電圧V307cとは、電圧0Vと中心として、略対称的な電圧波形である。隣り合う電極の電圧である上部電極電圧V306aと上部電極電圧V307aとは、電圧の正負が同一となり、時間軸にて対称な電圧波形となる。同様に、隣り合う電極の電圧である下部電極電圧V306cと下部電極電圧V307cとは、電圧の正負が同一となり、時間軸にて対称な電圧波形となる。上部電極電圧V306aと下部電極電圧V306cとは、任意の位相差を有し、上部電極電圧V307aと下部電極電圧V307cとは、任意の位相差を有する。以下に、例を挙げて説明する。
図9Aに示すように、カンチレバー群304の上部電極電圧V306aと下部電極電圧V306cとの間に、位相差を持たせる。また、図9Bに示すように、カンチレバー群305の上部電極電圧V307aと下部電極電圧V307cとの間に、位相差を持たせる。このような駆動電圧により、図9Cに示すように、ミラー部位103の両端a、bのドップラー振動変位量にて、高周波の異常振動成分は見られない。これにより、図9Dに示すように、ミラー部位103の振れ角においても、高周波の異常振動が抑制されていることが分かる。高周波の異常振動成分が抑制される理由の一つは、1個のPZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Lead Zirconate Titanate)の上部電極側と下部電極側とに、電圧0Vを対称とした鋸波電圧を印加することで高周波振動成分が相殺されるからである。また、高周波の異常振動成分が抑制される理由の一つは、PZTという誘電体を介しているための高周波振動成分の上部電極側と下部電極側との違いを、位相差を持たせることにより補正する効果によるものである。
図10Aは、実施の形態1に係る圧電部材群306及び圧電部材群307の駆動による2次元画像の投影結果の例を示す図である。例えば、各圧電部材群の駆動は、図9A及び図9Bに示した駆動電圧によるものとする。図10Aに示すように、投影画像1001aは、圧電部材群306と圧電部材群307とに、図9A、図9Bの鋸波電圧を印加させ2次元画像を投影させた場合であり、圧電部材群306と圧電部材群307とに同等の電圧が印加されているため、副走査の走査方向の中央付近に主走査方向の走査線が一致し、ある副走査方向の振れ幅を有している。図9Dで説明したように、高周波の異常な振動成分が抑制されているので、綺麗な2次元画像が投影されていることが分かる。
図10Bは、実施の形態1に係る圧電部材群306に鋸波電圧を印加し、圧電部材群307に浮動的な電圧を印加したときの2次元画像の投影結果の例を示す図である。例えば、圧電部材群306の駆動は、図9Aに示した駆動電圧によるものとする。一方、圧電部材群307の駆動は、上部電極307aと下部電極307cとに対し、浮動的に電圧を印加するものとする。図10Bに示すように、投影画像1001bは、光走査方向を新たな方向に限定するために、圧電部材群306のみに鋸波電圧を図9Aに示した電圧で印加し、圧電部材群307の電極に浮動的な電圧を印加させ2次元画像を投影させた場合であり、副走査の走査方向は主走査方向の走査線から下側にずれており、高周波の異常振動が抑制されているので、副走査方向の振れ幅が小さくなっている。このとき、輝度の均一性不良は抑制されている。
図10Cは、実施の形態1に係る圧電部材群307に鋸波電圧を印加し、圧電部材群306に浮動的な電圧を印加したときの2次元画像の投影結果の例を示す図である。例えば、圧電部材群307の駆動は、図9Bに示した駆動電圧によるものとする。一方、圧電部材群306の駆動は、上部電極306aと下部電極306cとに対し、浮動的に電圧を印加するものとする。図10Cに示すように、投影画像1001cは、光走査方向を新たな方向に限定するために、圧電部材群307のみに鋸波電圧を図9Bに示した電圧で印加し、圧電部材群306の電極に浮動的な電圧を印加させ2次元画像を投影させた場合であり、副走査の走査方向は主走査方向の走査線から上側にずれており、高周波の異常振動が抑制されているので、副走査方向の振れ幅が小さくなっている。このとき、輝度の均一性不良は抑制されている。
図11Aは、図10Aに示した投影画像1001aの投影を模式的に示した図である。図11Aに示すように、光偏向器100からの反射光が、投影面1101と投影基準線1102とに対して、副走査の第3の方向1113に副走査方向の振れ幅1103で投影されていることが分かる。
図11Bは、図10Bに示した投影画像1001bの投影を模式的に示した図である。図11Bに示すように、光偏向器100からの反射光が、投影面1101と投影基準線1102とに対して、下側の副走査の第1の方向1111に投影されていることが分かる。このとき、高周波の異常振動成分が抑制されており、振れ幅1104は狭く形成されている。
図11Cは、図10Cに示した投影画像1001cの投影を模式的に示した図である。図11Cに示すように、光偏向器100からの反射光が、投影面1101と投影基準線1102とに対して、上側の副走査の第2の方向1112に投影されていることが分かる。このとき、高周波の異常振動成分が抑制されており、振れ幅1105は狭く形成されている。
図11A〜図11Cに示すように、第3の方向1113は、第1の方向1111と第2の方向1112との間に位置する。また、図11Aにおける圧電部材群306及び圧電部材群307の駆動電圧に対し、図11Bにおける圧電部材群306の駆動電圧と、図11Cにおける圧電部材群307の駆動電圧とを用いた場合、振れ幅1104と振れ幅1105との和は、副走査方向の振れ幅1103と同等の幅になる。これにより、良好な投影画像のまま、光走査方向を変えて操作領域幅を変えることにより、高輝度な投影が可能となる。
また、隣接するカンチレバー間で相互に高周波の振動成分を打ち消し合う方法も従来考案されているが、1個のカンチレバーでは高周波の振動成分を抑制できずに、ミラー両端に同じ高周波の振動成分が残像するため、環境温度の変動や連続駆動の経時変化により画質が劣化する可能性がある。本実施の形態では、1個のカンチレバーで高周波の振動成分を抑制できるため、環境温度の変動や連続駆動の経時変化による画質への影響を抑制することができる。
(実施の形態2)
次に、図12A〜図14Cを用いて、実施の形態2に係る光偏向器100の駆動について説明する。
図12Aは、実施の形態2に係るカンチレバー群304の上部電極電圧と、カンチレバー群305の上部電極電圧とを共通に接地したときの、下部電極電圧の駆動電圧チャートの例を示す図である。図12Bは、実施の形態2に係るミラー部位103の両端a、bのドップラー振動変位量のチャートの例を示す図である。図12Cは、実施の形態2に係るミラー振れ角のチャートの例を示す図である。図12Aにおいて、カンチレバー群304の下部電極電圧は「V306c」とし、カンチレバー群305の下部電極電圧は「V307c」として表している。図12Bに示すa、bは、図1に示したものに対応する。
カンチレバー群304の上部電極及び下部電極に印加される電位差と、カンチレバー群305の上部電極及び下部電極に印加される電位差とは、必ずしも等しくなく、必要に応じて大きく・小さくすることにより、第1の方向又は第2の方向を任意の方向とする。また、上部電極電圧V306a及び上部電極電圧V307a、又は、下部電極電圧V306c及び下部電極電圧V307cとのうち、一方の電圧は、電気的に接続され且つ接地されている。接地されていないもう一方の電圧は、一定に昇圧する時間それぞれと、高電圧で安定する時間それぞれと、一定に降圧する時間それぞれと、低電圧で安定する時間それぞれとにより構成される台形波形である。接地されていない電極電圧の隣り合う電圧では、位相が180度ずれている略同一の駆動波形となる。一定に昇圧する時間と、一定に降圧する時間とは、略同一の時間長である。高電圧で安定する時間と、低電圧で安定する時間との合計時間の割合は、1周期に対して1〜3割程度の時間となる。以下に、例を挙げて説明する。
図12Aに示すように、接地されていない下部電極電圧のチャートは、一定に昇圧する時間と、高電圧で安定する時間と、一定に降圧する時間と、低電圧で安定する時間とから構成される台形波であることが分かる。例えば、下部電極電圧V306cのチャートは、一定に昇圧する時間401と、高電圧で安定する時間402と、一定に降圧する時間403と、低電圧で安定する時間404とから構成される。下部電極電圧V307cのチャートは、一定に昇圧する時間501と、高電圧で安定する時間502と、一定に降圧する時間503と、低電圧で安定する時間504とから構成される。また、下部電極電圧V306cと下部電極電圧V307cとは、位相が180度ずれている略同一の波形(台形波)である。
下部電極電圧V306cのチャートにおいて、一定に昇圧する時間401と、一定に降圧する時間403とは、略同一の時間長となる。同様に、下部電極電圧V307cのチャートにおいて、一定に昇圧する時間501と、一定に降圧する時間503とは、略同一の時間長となる。下部電極電圧V306cのチャートにおいて、高電圧で安定する時間402(図中「t2」)と、低電圧で安定する時間404(図中「t3」)との合計時間の割合は、1周期の時間(図中「t1」)に対して、1〜3割程度の時間となる。同様に、下部電極電圧V307cのチャートにおいて、高電圧で安定する時間502と、低電圧で安定する時間504との合計時間の割合は、1周期の時間に対して、1〜3割程度の時間となる。
また、図12Aに示すように、上部電極306a及び下部電極306cに印加される電位差と、上部電極307a及び下部電極307cに印加される電位差とは、同一でなくても良く、状況に応じて大きく又は小さくする。図12Aに示す例では、圧電部材群306の下部電極電圧V306cに低い電圧を印加し、圧電部材群307の下部電極電圧V307cに高い電圧を印加している。
図12Aでは、上部電極電圧を共通に接地したときの、接地されていない下部電極電圧の駆動電圧チャートの例を説明した。これに対し、下部電極電圧を共通に接地したときの、接地されていない上部電極電圧の駆動電圧チャートは、下部電極電圧V306cが上部電極電圧V306aのチャート、下部電極電圧V307cが上部電極電圧V307aのチャートのようになる。
このような駆動電圧により、図12Bに示すように、ミラー部位103の両端a、bのドップラー振動変位量にて、高周波の異常振動成分は見られない。これにより、図12Cに示すように、ミラー部位103の振れ角においても、高周波の異常振動が抑制されていることが分かる。図12B及び図12Cから明らかなように、高電圧で安定する時間又は定電圧で安定する時間においても、ミラー部位103の振れ角が変動していることが分かる。ミラー部位103の振れ角は、三角形のような変動波形(三角波)となる。すなわち、高電圧で安定する時間(例えば、「t2」)と、低電圧で安定する時間(例えば、「t3」)との、1周期の時間(例えば、「t1」)に対する割合(例えば、1〜3割程度)は、上記のように、ミラーの変動を安定的に起こすための割合となる。
ミラーの良好な振れ角が得られる理由の一つとして、台形波は電圧が急激に変化する波形ではないため、高周波成分のノイズが発生しにくいことが挙げられる。また、ミラーの良好な振れ角が得られる理由の一つは、下部電極電圧V306cと下部電極電圧V307cとの位相が180度ずれているので、高周波のノイズが発生しても相殺されるからである。
図13Aは、実施の形態2に係る圧電部材群306及び圧電部材群307の駆動による2次元画像の投影結果の例を示す図である。例えば、各圧電部材群の駆動は、図12Aに示した駆動電圧によるものとする。図13Aに示すように、投影画像1301aは、圧電部材群306の下部電極電圧V306cに下部電極電圧V307cよりも低い電圧を印加し、圧電部材群307の下部電極電圧V307cに下部電極電圧V306cよりも高い電圧を印加しているため、副走査の走査方向の中央付近と、主走査方向の走査線とは一致していない。また、投影画像1301aは、副走査の走査方向の中央付近が主走査方向の走査線よりも上方に形成されていることが分かる。図12Cに見られるように、高周波の異常な振動成分が抑制されているので、綺麗な2次元画像が投影されていることが分かる。
図13Bは、実施の形態2に係る圧電部材群306に下部電極電圧V306cを印加したときの2次元画像の投影結果の例を示す図である。例えば、圧電部材群306の駆動は、図12Aに示した下部電極電圧V306cによるものとする。このとき、圧電部材群307の下部電極307cに対し浮動的に電圧を印加し、上部電極307a及び下部電極307cは接地されているものとする。図13Bに示すように、投影画像1301bは、副走査の走査方向が主走査方向の走査線から下側にずれており、高周波の異常な振動成分が抑制されている。また、投影画像1301bは、下部電極電圧V306cが相対的に低いため、副走査方向の振れ幅が狭くなっているが、より高輝度な画像が投影される。このとき、輝度の均一性不良は抑制されている。
図13Cは、実施の形態2に係る圧電部材群307に下部電極電圧V307cを印加したときの2次元画像の投影結果の例を示す図である。例えば、圧電部材群307の駆動は、図12Aに示した下部電極電圧V307cによるものとする。このとき、圧電部材群306の下部電極306cに対し浮動的に電圧を印加し、上部電極307a及び下部電極307cは接地されているものとする。図13Cに示すように、投影画像1301cは、副走査の走査方向が主走査方向の走査線から上側にずれており、高周波の異常な振動成分が抑制されている。また、投影画像1301cは、下部電極電圧V307cが相対的に高いため、副走査方向の振れ幅が図13Bに示した投影画像1301bよりも広くなっている。このとき、輝度の均一性不良は抑制されている。
図14Aは、図13Aに示した投影画像1301aの投影を模式的に示した図である。図14Aに示すように、光偏向器100からの反射光が、投影面1401と投影基準線1402とに対して、副走査の第3の方向1413に副走査方向の振れ幅1403で投影されていることが分かる。このとき、下部電極電圧V306cと、下部電極電圧V307cとの電圧の大小に起因して、副走査の第3の方向1413は、投影基準線1402に対して上方に形成されている。
図14Bは、図13Bに示した投影画像1301bの投影を模式的に示した図である。図14Bに示すように、光偏向器100からの反射光が、投影面1401と投影基準線1402とに対して、下側の副走査の第1の方向1411に投影されていることが分かる。このとき、高周波の異常振動成分が抑制されており、振れ幅1404は狭く形成されている。
図14Cは、図13Cに示した投影画像1301cの投影を模式的に示した図である。図14Cに示すように、光偏向器100からの反射光が、投影面1401と投影基準線1402とに対して、上側の副走査の第2の方向1412に投影されていることが分かる。このとき、高周波の異常振動成分が抑制されており、振れ幅1405は狭く形成されている。また、図14A〜図14Cに示すように、第3の方向1413は、第1の方向1411と第2の方向1412との間に位置する。図14A〜図14Cに示すように、振れ幅1404と振れ幅1405との和は、振れ幅1403とほぼ同等となる。
(実施の形態3)
次に、図15A〜図17Cを用いて、実施の形態3に係る光偏向器100の駆動について説明する。
図15Aは、実施の形態3に係るカンチレバー群304の上部電極電圧と下部電極電圧との駆動電圧チャートの例を示す図である。図15Bは、実施の形態3に係るカンチレバー群305の上部電極電圧と下部電極電圧との駆動電圧チャートの例を示す図である。図15Cは、実施の形態3に係るミラー部位103の両端a、bのドップラー振動変位量のチャートの例を示す図である。図15Dは、実施の形態3に係るミラー振れ角のチャートの例を示す図である。図15Aにおいて、カンチレバー群304の上部電極電圧は「V306a」とし、上部電極電圧V306aの鋸波の傾きは「θ306a」として表している。同様に、図15Aにおいて、カンチレバー群304の下部電極電圧は「V306c」とし、下部電極電圧V306cの鋸波の傾きは「θ306c」として表している。図15Bにおいて、カンチレバー群305の上部電極電圧は「V307a」とし、上部電極電圧V307aの鋸波の傾きは「θ307a」として表している。同様に、図15Bにおいて、カンチレバー群305の下部電極電圧は「V307c」とし、下部電極電圧V307cの鋸波の傾きは「θ307c」として表している。図15Cに示すa、bは、図1に示したものに対応する。
カンチレバー群304の上部電極には、鋸波形状を有する正又は負の電圧が印加される。これに対し、カンチレバー群304の下部電極には、鋸波形状を有する正又は負の電圧が印加される。このとき、上部電極に正の電圧が印加される場合には下部電極に負の電圧が印加され、上部電極に負の電圧が印加される場合には下部電極に正の電圧が印加される。また、上部電極電圧V306aと下部電極電圧V306cとのチャートは、電圧0Vを中心として、ほぼ対称的な電圧波形となる。加えて、上部電極電圧V306aの鋸波の傾きθ306aと、下部電極電圧V306cの鋸波の傾きθ306cとは、任意の違いが存在する。
カンチレバー群305の上部電極には、鋸波形状を有する正又は負の電圧が印加される。これに対し、カンチレバー群305の下部電極には、鋸波形状を有する正又は負の電圧が印加される。このとき、上部電極に正の電圧が印加される場合には下部電極に負の電圧が印加され、上部電極に負の電圧が印加される場合には下部電極に正の電圧が印加される。また、上部電極電圧V307aと下部電極電圧V307cとのチャートは、電圧0Vを中心として、ほぼ対称的な電圧波形となる。加えて、上部電極電圧V307aの鋸波の傾きθ307aと、下部電極電圧V307cの鋸波の傾きθ307cとは、任意の違いが存在する。
また、隣り合う上部電極電圧V306aと上部電極電圧V307aとは、電圧の正負が同一であり、時間軸にて対称な電圧波形となる。同様に、隣り合う下部電極電圧V306cと下部電極電圧V307cとは、電圧の正負が同一であり、時間軸にて対称な電圧波形となる。以下に、例を挙げて説明する。
図15Aに示すように、カンチレバー群304の上部電極電圧V306aには鋸波形状を有する負の電圧が印加され、カンチレバー群304の下部電極電圧V306cには鋸波形状を有する正の電圧が印加される。また、上部電極電圧V306aと下部電極電圧V306cとのチャートは、電圧0Vを中心として、ほぼ対称的な電圧波形となる。加えて、上部電極電圧V306aの鋸波の傾きθ306aと、下部電極電圧V306cの鋸波の傾きθ306cとは、任意の違いが存在する。なお、上述したように、上部電極電圧V306aに鋸波形状を有する正の電圧を印加し、下部電極電圧V306cに鋸波形状を有する負の電圧を印加しても良い。
図15Bに示すように、カンチレバー群305の上部電極電圧V307aには鋸波形状を有する負の電圧が印加され、カンチレバー群305の下部電極電圧V307cには鋸波形状を有する正の電圧が印加される。また、上部電極電圧V307aと下部電極電圧V307cとのチャートは、電圧0Vを中心として、ほぼ対称的な電圧波形となる。加えて、上部電極電圧V307aの鋸波の傾きθ307aと、下部電極電圧V307cの鋸波の傾きθ307cとは、任意の違いが存在する。なお、上述したように、上部電極電圧V307aに鋸波形状を有する正の電圧を印加し、下部電極電圧V307cに鋸波形状を有する負の電圧を印加しても良い。
図15A及び図15Bに示すように、隣り合う上部電極電圧V306aと上部電極電圧V307aとは、ともに負の値となり、時間軸にて対称な電圧波形となる。また、図15A及び図15Bに示すように、隣り合う下部電極電圧V306cと下部電極電圧V307cとは、ともに正の値となり、時間軸にて対称な電圧波形となる。なお、上述したように、上部電極電圧V306aと上部電極電圧V307aとをともに正の値とし、下部電極電圧V306cと下部電極電圧V307cとをともに負の値としても良い。
このような駆動電圧により、図15Cに示すように、ミラー部位103の両端a、bのドップラー振動変位量にて、高周波の異常振動成分は見られない。これにより、図15Dに示すように、ミラー部位103の振れ角においても、高周波の異常振動が抑制されていることが分かる。高周波の異常振動成分が抑制される理由の一つは、1個のPTZの上部電極側と下部電極側とに、電圧0Vを対称とした鋸波電圧を印加することで高周波振動成分が相殺されるからである。また、高周波の異常振動成分が抑制される理由の一つは、PTZという誘電体を介しているための高周波振動成分の上部電極側と下部電極側との違いを、鋸波の傾きを変えることにより補正する効果によるものである。
図16Aは、実施の形態3に係る圧電部材群306及び圧電部材群307の駆動による2次元画像の投影結果の例を示す図である。例えば、各圧電部材群の駆動は、図15A及び図15Bに示した駆動電圧によるものとする。図16Aに示すように、投影画像1601aは、圧電部材群306と圧電部材群307とに、図15A、図15Bの鋸波電圧を印加させ2次元画像を投影させた場合であり、圧電部材群306と圧電部材群307とに同等の電圧が印加されているため、副走査の走査方向の中央付近に主走査方向の走査線が一致し、ある副走査方向の振れ幅を有している。図15Dで説明したように、高周波の異常な振動成分が抑制されているので、綺麗な2次元画像が投影されていることが分かる。
図16Bは、実施の形態3に係る圧電部材群306に鋸波電圧を印加し、圧電部材群307に浮動的な電圧を印加したときの2次元画像の投影結果の例を示す図である。例えば、圧電部材群306の駆動は、図15Aに示した駆動電圧によるものとする。一方、圧電部材群307の駆動は、上部電極307aと下部電極307cとに対し、浮動的に電圧を印加するものとする。図16Bに示すように、投影画像1601bは、光走査方向を新たな方向に限定するために、圧電部材群306のみに鋸波電圧を図15Aに示した電圧で印加し、圧電部材群307の電極に浮動的な電圧を印加させ2次元画像を投影させた場合であり、副走査の走査方向は主走査方向の走査線から下側にずれており、高周波の異常振動が抑制されているので、副走査方向の振れ幅が小さくなっている。このとき、輝度の均一性不良は抑制されている。
図16Cは、実施の形態3に係る圧電部材群307に鋸波電圧を印加し、圧電部材群306に浮動的な電圧を印加したときの2次元画像の投影結果の例を示すである。例えば、圧電部材群307の駆動は、図15Bに示した駆動電圧によるものとする。一方、圧電部材群306の駆動は、上部電極306aと下部電極306cとに対し、浮動的に電圧を印加するものとする。図16Cに示すように、投影画像1601cは、光走査方向を新たな方向に限定するために、圧電部材群307のみに鋸波電圧を図15Bに示した電圧で印加し、圧電部材群306の電極に浮動的な電圧を印加させ2次元画像を投影させた場合であり、副走査の走査方向は主走査方向の走査線から上側にずれており、高周波の異常振動が抑制されているので、副走査方向の振れ幅が小さくなっている。このとき、輝度の均一性不良は抑制されている。
図17Aは、図16Aに示した投影画像1601aの投影を模式的に示した図である。図17Aに示すように、光偏向器100からの反射光が、投影面1701と投影基準線1702とに対して、副走査の第3の方向1713に副走査方向の振れ幅1703で投影されていることが分かる。
図17Bは、図16Bに示した投影画像1601bの投影を模式的に示した図である。図17Bに示すように、光偏向器100からの反射光が、投影面1701と投影基準線1702とに対して、下側の副走査の第1の方向1711に投影されていることが分かる。このとき、高周波の異常振動成分が抑制されており、振れ幅1704は狭く形成されている。
図17Cは、図16Cに示した投影画像1601cの投影を模式的に示した図である。図17Cに示すように、光偏向器100からの反射光が、投影面1701と投影基準線1702とに対して、上側の副走査の第2の方向1712に投影されていることが分かる。このとき、高周波の異常振動成分が抑制されており、振れ幅1705は狭く形成されている。
図17Aにおける圧電部材群306及び圧電部材群307の駆動電圧に対し、図17Bにおける圧電部材群306の駆動電圧と、図17Cにおける圧電部材群307の駆動電圧とを用いた場合、振れ幅1704と振れ幅1705との和は、副走査方向の振れ幅1703と同等の幅になる。これにより、良好な投影画像のまま、光走査方向を変えて操作領域幅を変えることにより、高輝度な投影が可能となる。また、図17A〜図17Cに示すように、第3の方向1713は、第1の方向1711と第2の方向1712との間に位置する。
(実施の形態4)
次に、図18〜図22を用いて、上記実施の形態で説明した光偏向器100を具備する機器について説明する。
図18は、光偏向器100を有する画像投影装置1801を説明する図である。図18に示すように、画像投影装置1801は、単数又は複数の発光点を有する複数の光源素子1802R、光源素子1802B、光源素子1802Gを備える。かかる光源素子は、LD(半導体レーザ素子)であり、互いに異なる波長の光束を放射する。光源素子1802Rが波長λR、光源素子1802Bが波長λB、光源素子1802Gが波長λGの光束を放射するものとする。例えば、波長λR=640nmであり、波長λB=530nmであり、波長λG=445nmである。光源素子1802Rから放射された波長λRの光束は、カップリングレンズ1803Rにより後続の光学系にカップリングされる。光源素子1802Bから放射された波長λBの光束は、カップリングレンズ1803Bにより後続の光学系にカップリングされる。光源素子1802Gから放射された波長λGの光束は、カップリングレンズ1803Gにより後続の光学系にカップリングされる。
カップリングされた光束は、それぞれ設けられたアパーチャ1804R、アパーチャ1804B、アパーチャ1804Gにより整形される。アパーチャは、光束の発散角等に応じて、円形、楕円形、長方形、正方形等の様々な形状とすることができる。その後、合成素子1805により光路合成される。合成素子1805は、プレート状又はプリズム状のダイクロイックミラーであり、波長に応じて光束を反射、透過し、一つの光路に合成する。合成された光束は、レンズ1806により、上記実施の形態で説明した光偏向器100の反射面に向かって導かれる。レンズ1806は、光偏向器100に向かって凹面を向けたメニスカスレンズである。光偏向器100の反射面にて反射した光は、投射レンズ1809を通って投影される。光偏向器100には制御ボード1808が具備され、光偏向器100の駆動のための信号が送られる。なお、投射レンズ1809には、レーザ光源特有のスペックルを抑制するための拡散版が具備されていても良い。画像投影装置1801は、高画質を維持しつつ、任意の限定された方向への高輝度が画像投影を可能とする。
図19は、光偏向器100を有するヘッドアップディスプレイ1901を説明する図である。画像表示装置としてのヘッドアップディスプレイ1901は、例えば、車両や航空機、船舶、移動式ロボット等の移動体、また、その場から移動せずにマニピュレータ等の駆動対象を操作する作業ロボット等の非移動体に搭載される画像表示装置としても適用できる。ヘッドアップディスプレイ1901により、移動体のフロントガラス(フロントウィンドシールド)1905を介して、移動体の操縦のためのナビゲーション情報(例えば、速度や走行距離等の情報)等を視認可能にする。フロントガラス1905は、入射された光の一部を透過させ、残部の少なくとも一部を反射させる透過反射部材としても機能する。以下に、ヘッドアップディスプレイ1901が、フロントガラス1905を備える自動車に搭載される場合を例に挙げて説明する。
図19に示すように、ヘッドアップディスプレイ1901は、光源走査部1902と、走査ミラー1903と、被走査面であるスクリーン1904と、凹面ミラー1906とを備え、フロントガラス1905に対して光を照射することにより、ユーザAの視点から虚像Iを視認可能にする。光源走査部1902は、単数又は複数の発光点を有する複数の光源素子を備える。例えば、光源素子は、図18で説明した光源素子1802R、光源素子1802B、光源素子1802Gに対応する。赤色、青色、緑色の3色の混合レーザは、光偏向器100の反射面に向かって導かれる。光偏向器100によって偏向された光束は、走査ミラー1903により折り返され、スクリーン1904に2次元像(中間像)を描画する。
スクリーン1904は、レーザを所望の発散角で発散させる機能を有し、マイクロレンズアレイ構造とすることが好ましい。スクリーン1904から射出された光束は、単一の凹面ミラー1906及びフロントガラス1905により虚像Iが拡大表示される。単一の凹面ミラー1906は、フロントガラス1905の影響で中間像の水平線が上又は下に凸形状となる光学歪み要素を補正するように、設計・配置されている。なお、フロントガラス1905と同一の機能(部分反射)を持つ別途の部分反射鏡(コンバイナ)を有する構成であっても良い。ヘッドアップディスプレイ1901は、高画質を維持しつつ、任意の限定された方向への高輝度な画像投影が可能となり、例えば、速度や走行距離等の情報を、視認性を向上させるために高輝度に表示することができる。光偏向器100を用いて光走査を行なうことで画像を投影する装置であれば、例えば、表示スクリーン上に画像を投影するプロジェクタや、観測者の頭部等に装着した装着部材が有する反射透過部材等のスクリーンに画像を投影するヘッドマウントディスプレイ等にも、同様に適用することができる。
図20は、光偏向器100を有する光走査装置2001を説明する図である。光走査装置2001は、上記実施の形態で説明した光偏向器100を用いて、1軸方向に被走査面を光走査する装置である。図20に示すように、光走査装置2001において、レーザ素子等の光源部2020からのレーザ光は、コリメータレンズ等の結像光学系2021を経た後、光偏向器100により偏向される。光偏向器100は、上記実施の形態で説明したものが用いられる。そして、光偏向器100で偏向されたレーザ光は、その後、第一レンズ2023aと第二レンズ2023b、反射ミラー部2023cからなる走査光学系2023を経て、被走査面である感光体ドラム2002のビーム走査面に照射される。走査光学系2023は、被走査面であるビーム走査面にスポット状に光ビームを結像する。
光偏向器100の圧電部材の各電極は、それぞれ外部電源等のミラー駆動手段に電気的に接続されており、ミラー駆動手段は圧電部材の上部電極と下部電極との間に駆動電圧を印加し、光偏向器100を駆動する。これにより、光偏向器100のミラー部が往復回動してレーザ光が偏向され、被走査面である感光体ドラム2002のビーム走査面上が光走査される。光走査装置2001は、感光体を用いたプリンタや複写機等の画像形成装置のための光書込みユニットの構成部材として使用することができる。また、走査光学系を異ならせて1軸方向だけでなく2軸方向に光走査可能にすることで、レーザ光をサーマルメディアに偏向して照射し、加熱することで印字するレーザラベル装置の光走査ユニットの構成部材として使用することができる。
図21は、光偏向器100を有する画像形成装置2100を説明する図である。図21に示すように、画像形成装置2100において、光書込みユニット2101は、レーザビームを被走査面に出射して画像を書き込む。感光体ドラム2102は、光書込みユニット2101による走査対象としての被走査面を提供する像担持体である。光書込みユニット2101は、記録信号によって変調された1本又は複数本のレーザビームで被走査面である感光体ドラム2102の表面を、該感光体ドラム2102の軸方向に走査する。感光体ドラム2102は、矢印方向に回転駆動され、帯電手段2103により帯電された表面に光書込みユニット2101により光走査されることによって静電潜像が形成される。静電潜像は現像手段2104でトナー像に顕像化され、トナー像は転写手段2105で記録紙Pに転写される。転写されたトナー像は、定着手段2106によって記録紙Pに定着される。転写手段2105を通過した感光体ドラム2102の表面部分は、クリーニング部2107により残留トナーが除去される。感光体ドラム2102に代えて、ベルト状の感光体を用いる構成としても良い。また、トナー像を記録紙以外の転写媒体に一旦転写し、転写媒体からトナー像を記録紙に転写して定着させる構成としても良い。
光書込みユニット2101は、記録信号によって変調された1本又は複数本のレーザビームを発する光源2108と、光源2108を変調する光源駆動手段2109と、上記実施の形態で説明した光偏向器100と、光偏向器100のミラー基板のミラー面に光源2108からの記録信号によって変調されたレーザビームを結像させるための結像光学系2111と、ミラー面で反射された1本又は複数本のレーザビームを被走査面である感光体ドラム2102の表面に結像させるための手段である走査光学系2112等から構成される。光偏向器100は、光偏向器100の駆動のための集積回路2113とともに回路基板2114に実装された形で光書込みユニット2101に組み込まれている。
光偏向器100は、回転多面鏡に比べて駆動のための消費電力が小さいため、画像形成装置2100の省電力化に有効である。光偏向器100のミラー基板の振動時における風切り音は回転多面鏡に比べて小さいため、画像形成装置2100の静粛性の改善に有効である。光偏向器100は回転多面鏡に比べて設置スペースが少なくて済み、また、光偏向器100の発熱量もわずかであるため、小型化が容易であり、従って、画像形成装置2100の小型化に有効である。なお、記録紙の搬送機構や感光体ドラム2102の駆動機構、現像手段、転写手段等の制御手段、光源部の駆動系等は、従来の画像形成装置と同様で良いため、図21では省略している。
図22は、光偏向器100を有する物体認識装置2200を説明する図である。物体認識装置2200は、上記実施の形態で説明した光偏向器100を用いて、対象方向を光走査し、対象方向に存在する被対象物からの反射光を受光することで、被対象物を認識する装置である。図22においては、物体認識装置2200の一例であるレーザレーダの構成を模式的に表している。
図22に示すように、レーザ光源2201から出射されたレーザ光は、発散光を略平行光とする光学系であるコリメートレンズ2202を経て、光偏向器100で1軸又は2軸方向に走査され、車両等の前方の被対象物2250に照射される。光検出器2205は、被対象物2250で反射され、集光レンズ2206を経たレーザ光を受光して、検出信号を出力する。光源駆動部であるレーザドライバ2203は、レーザ光源2201を駆動するものである。光偏向器駆動部である偏向器ドライバ2207は、光偏向器100を駆動するものである。
コントローラ2204は、レーザドライバ2203及び偏向器ドライバ2207を制御し、光検出器2205から出力された検出信号を処理する。すなわち、コントローラ2204は、レーザ光を発光したタイミングと、光検出器2205でレーザ光を受光したタイミングとのずれによって、被対象物2250との距離を算出する。光偏向器100でレーザ光を走査することで1次元、又は2次元の範囲における被対象物2250に対する距離が得られる。このように、破損しにくい光偏向器100を用いて、レーダ装置である物体認識装置2200を提供することができる。このようなレーダ装置は、例えば車両の前方側に取り付けられ、車両の前方を監視して前方方向の障害物の有無を認識することができる。
上記では、物体認識装置2200の一例としてレーザレーダを説明したが、上記実施の形態で説明した光偏向器100を用いて対象方向の光走査を行ない、反射光を受光することで被対象物を認識する装置であれば良く、物体認識装置2200の適用は上記に限られるものではない。例えば、手や顔を光走査することで得た情報を、記録と参照することで対象物を認識する生体認証や、対象方向への光走査により侵入物を認識するセキュリティセンサ、光走査により得られた距離情報から物体の形状を認識して3次元データとして出力する3次元スキャナの構成部材等にも、同様に適用することができる。また、受光部が受光した反射光の光強度や反射による波長の変化等から、被対象物の有無や形状を認識する構成であっても良い。光を偏向して1次元又は2次元に光走査を行なう装置であれば、上記実施の形態で説明した光偏向器100を適用することができる。
上記実施の形態は、主走査方向に可動部を往復回転運動させる駆動手段、副走査方向に可動部を往復回転運動させる駆動手段が、いずれも同一の駆動方式を採用するものであるが、これらの駆動手段の駆動方式は、互いに異なる駆動方式を採用しても良い。また、駆動方式についても、上記実施の形態で適用している圧電部材を用いた圧電駆動方式に限らず、例えば、複数の電極に電圧をかけることにより生じる静電力を利用して駆動する静電駆動方式や、磁石と電流とにより生じる電磁力を利用して駆動する電磁駆動方式等を採用しても良い。また、上記実施の形態では、片持ち梁構造の圧電部材を例に挙げて説明したが、圧電部材は、両持ち梁構造であっても良い。