以下、本発明の一実施形態を図1〜図11に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係る画像表示装置としてのプロジェクタ10の概略構成が示されている。
プロジェクタ10は、例えば建物の床もしくは設置台に載置された状態、建物の天井から吊り下げられた状態、建物の壁に掛けられた状態等で用いられる。以下では、図1に示されるZ軸方向を鉛直方向とするXYZ3次元直交座標系を適宜用いて説明する。
プロジェクタ10は、一例として、光源装置5、光偏向装置1000、画像処理部40、これらを収容する筐体(不図示)などを備えている。
光源装置5は、一例として、3つのレーザダイオードLD1〜LD3、3つのコリメートレンズCR1〜CR3、3つのダイクロイックミラーDM1〜DM3、LD制御部50などを含む。
レーザダイオードLD1は、一例として、赤色レーザであり、赤色光(波長640nm)を+Y方向に射出するように配置されている。
レーザダイオードLD2は、一例として、青色レーザであり、青色光(波長450nm)を+Y方向に射出するように、レーザダイオードLD1の+X側に配置されている。
レーザダイオードLD3は、一例として、緑色レーザであり、緑色光(波長520nm)を+Y方向に射出するように、レーザダイオードLD2の+X側に配置されている。
各レーザダイオードは、LD制御部50によって制御される。
コリメートレンズCR1は、一例として、レーザダイオードLD1の+Y側に配置されており、レーザダイオードLD1から射出された赤色光を略平行光とする。
コリメートレンズCR2は、一例として、レーザダイオードLD2の+Y側に配置されており、レーザダイオードLD2から射出された青色光を略平行光とする。
コリメートレンズCR3は、一例として、レーザダイオードLD3の+Y側に配置されており、レーザダイオードLD3から射出された緑色光を略平行光とする。
3つのダイクロイックミラーDM1〜DM3は、それぞれ、例えば誘電体多層膜などの薄膜から成り、特定の波長の光を反射し、それ以外の波長の光を透過させる。
ダイクロイックミラーDM1は、一例として、コリメートレンズCR1の+Y側に、X軸及びY軸に対して例えば45°傾斜して配置されており、コリメートレンズCR1を介した赤色光を+X方向に反射させる。
ダイクロイックミラーDM2は、一例として、ダイクロイックミラーDM1の+X側、かつコリメートレンズCR2の+Y側に、X軸及びY軸に対して例えば45°傾斜して配置されており、ダイクロイックミラーDM1を介した赤色光を+X方向に透過させ、コリメートレンズCR2を介した青色光を+X方向に反射させる。
なお、ダイクロイックミラーDM1を介した赤色光及びコリメートレンズCR2を介した青色光は、それぞれダイクロイックミラーDM2の中央付近に入射する。
ダイクロイックミラーDM3は、一例として、ダイクロイックミラーDM2の+X側かつコリメートレンズCR3の+Y側に、X軸及びY軸に対して例えば45°傾斜して配置されており、ダイクロイックミラーDM2を介した赤色光及び青色光を+X方向に透過させ、コリメートレンズCR3を介した緑色光を+X方向に反射させる。
なお、ダイクロイックミラーDM2を介した赤色光及び青色光、並びにコリメートレンズCR3を介した緑色光は、それぞれダイクロイックミラーDM3の中央付近に入射する。
ダイクロイックミラーDM3を介した3つの光(赤色光、青色光及び緑色光)は、1つの光に合成される。この場合、3つのレーザダイオードLD1〜LD3の発光強度の強弱のバランスにより、合成された光の色が表現されるようになっている。
結果として、光源装置5は、3つのレーザダイオードLD1〜LD3からの3つのレーザ光が合成されてなるレーザ光(合成光)を射出する。
ここで、プロジェクタ10の全体動作について簡単に説明する。例えばパソコン(パーソナルコンピュータ)等の上位装置からの画像情報が画像処理部40に入力され、画像処理部40で所定の処理(例えば歪み補正処理、画像サイズ変更処理、解像度変換処理等)が施され、LD制御部50に送られる。LD制御部50は、画像処理部40からの画像情報に基づいて強度変調した駆動信号(パルス信号)を生成し、駆動電流に変換する。
そして、LD制御部50は、光偏向装置1000からの同期信号に基づいて、各レーザダイオードの発光タイミングを決定し、該発光タイミングで、駆動電流を供給して、該レーザダイオードを駆動する。光偏向装置1000は、光源装置5からのレーザ光(合成光)を、XZ平面に平行に張設されたスクリーンSの表面(被走査面)に向けて互いに直交する二軸周り(ここでは、X軸周り及びX軸に直交する軸周り)に独立に偏向する。なお、図1では、便宜上、スクリーンSをXZ平面に対して傾斜させて示している。
この結果、レーザ光により被走査面が互いに直交する二軸方向(ここでは、Z軸方向及びX軸方向)に2次元走査され、被走査面上に2次元のフルカラー画像が形成される。以下では、X軸方向を主走査方向とも称し、Z軸方向を副走査方向とも称する。なお、各レーザダイオードを直接変調する強度変調に代えて、該レーザダイオードから射出されたレーザ光を光変調器で変調(外部変調)しても良い。
次に、光偏向装置1000について詳細に説明する。光偏向装置1000は、一例として、光偏向器100、コントローラ200などを備えている。
光偏向器100は、図2に示されるように、反射面を有するミラー110及び該ミラー110をX軸に直交する第1軸(例えばZ軸)周りに駆動する第1駆動部150を含むミラー構造部と、該ミラー構造部をX軸に平行な第2軸周りに駆動する第2駆動部250とを備える。ミラー110の反射面は、光源装置5からのレーザ光の光路上に位置している。ここでは、ミラー110の反射面は、円形とされている。反射面の中心は、該反射面に直交する方向から見て、ミラー110の重心に一致している。なお、ミラー110の反射面は、円形に限らず、例えば楕円形、正N角形(Nは3以上)等の他の形状であっても良い。
光偏向器100では、一例として、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)プロセスによって、各構成部が一体的に形成されている。簡単に言うと、光偏向器100は、1枚のシリコン基板に切れ込みを入れて複数の可動部(弾性変形部)を形成し、各可動部に圧電部材を設けることで作成される。ミラー110の反射面は、一例として、シリコン基板の一面に形成された例えばアルミニウム、金、銀等の金属薄膜である。
第1駆動部150は、一例として、ミラー110の第1軸方向の両端に個別に一端が接続され同軸上(第1軸上)に配置された2つのトーションバー105a、105bと、トーションバー105aの他端側の部分を挟んで配置され該部分に自由端(先端)が接続された2つのカンチレバー106a、107aと、トーションバー105bの他端側の部分を挟んで配置され該部分に自由端(先端)が接続された2つのカンチレバー106b、107bと、4つのカンチレバー106a、107a、106b、107bの固定端(基端)が内縁に接続された第1矩形枠部108と、2つのカンチレバー106a、107aに設けられた圧電部材16a、17aと、2つのカンチレバー106b、107bに設けられた圧電部材16b、17bを有している。
ここでは、ミラー110の反射面の中心は、第1矩形枠部108の中心に略一致している。各トーションバーは同径かつ同長である。各カンチレバーは、トーションバーの軸に直交する方向に延びる同形(ここでは矩形板状)かつ同大である。各圧電部材は、トーションバーの軸に直交する方向に延びる同形(矩形板状)かつ同大である。
第1駆動部150では、2つの圧電部材16a、16bに電圧(駆動電圧)が並列に印加されると、該2つの圧電部材16a、16bが変形して、2つのカンチレバー106a、106bが撓み、2つのトーションバー105a、105bを介してミラー110に第1軸周りの駆動力が作用し、ミラー110が第1軸周りに揺動する。以下では、2つの圧電部材16a、16bのペアを「第1圧電部材対」と称する。
また、第1駆動部150では、2つの圧電部材17a、17bに電圧(駆動電圧)が並列に印加されると、該2つの圧電部材17a、17bが変形して、2つのカンチレバー107a、107bが撓み、2つのトーションバー105a、105bを介してミラー110に第1軸周りの駆動力が作用し、ミラー110が第1軸周りに揺動する。以下では、2つの圧電部材17a、17bのペアを「第2圧電部材対」と称する。第1駆動部150は、コントローラ200によって制御される。
そこで、コントローラ200によって、第1及び第2圧電部材対に両圧電部材対間で位相がずれた(例えば逆位相の)正弦波電圧を並行して(例えば同時に)印加することで、ミラー110を、第1軸周りに効率良く振動させることができる。
ここでは、正弦波電圧の周波数が約20kHz(各トーションバーの共振周波数)に設定され、各トーションバーのねじれによる機械的共振を利用して、ミラー110を約20kHzで振動させることができる。なお、ミラー110の振動中心からの最大振れ角は、±15°程度とされている。
第2駆動部250は、一例として、第1矩形枠部108の外縁(詳しくは−Z側かつ+X側の角部の−Z側の面)に接続された第1連結部111と、該第1連結部111に一端が接続され、複数(例えば6つ)の梁が蛇行するように連続する第1蛇行部210aと、第1矩形枠部108の外縁(詳しくは+Z側かつ−X側の角部の+Z側の面)に接続された第2連結部112と、該第2連結部112に一端が接続され、複数(例えば6つ)の梁が蛇行するように連続する第2蛇行部210bと、第1蛇行部210aの6つの梁に個別に設けられた6つの圧電部材と、第2蛇行部210bの6つの梁に個別に設けられた6つの圧電部材と、第1及び第2蛇行部210a、210bそれぞれの他端が内縁に接続された第2矩形枠部109と、を有している。
すなわち、ミラー構造部の第1軸方向の一端が第1連結部111を介して第1蛇行部210aの一端に接続され、第1蛇行部210aの他端が第2矩形枠部109に接続されている。また、ミラー構造部の第1軸方向の他端が第2連結部112を介して第2蛇行部210bの一端に接続され、第2蛇行部210bの他端が第2矩形枠部109に接続されている。
つまり、第1及び第2蛇行部210a、210bは、ミラー構造部を第2軸方向に挟むように配置され、ミラー構造部と第1蛇行部210aの一端とが第1連結部111により連結されており、ミラー構造部と第2蛇行部210bの一端とが第2連結部112により連結されており、第1及び第2蛇行部210a、210bの他端が第2矩形枠部109に接続されている。
結果として、ミラー構造部は、第1及び第2蛇行部210a、210bと第1及び第2連結部111、112と第2矩形枠部109とを含む支持構造部としての第2駆動部250に第2軸周りに揺動可能に支持されている。
第2駆動部250では、各蛇行部に設けられた6つの圧電部材のうち最もミラー構造部側の圧電部材から数えて奇数番目(1番目、3番目、5番目)の3つの圧電部材11に電圧が並列に印加されると、該3つの圧電部材11及び該3つの圧電部材11が設けられた3つの梁が第2軸周りの同一方向に撓み、ミラー110が第2軸周りに揺動する。
また、第2駆動部250では、各蛇行部の6つの圧電部材のうち最もミラー構造部側の圧電部材から数えて偶数番目(2番目、4番目、6番目)の3つの圧電部材12に電圧が並列に印加されると、該3つの圧電部材12及び該3つの圧電部材12が設けられた3つの梁が第2軸周りの同一方向に撓み、ミラー110が第2軸周りに揺動する。
以下では、便宜上、各蛇行部に設けられた上記奇数番目の3つの圧電部材11を併せて圧電部材群P1と称し、該蛇行部に設けられた上記偶数番目の3つの圧電部材12を併せて圧電部材群P2と称する。
そこで、各蛇行部に設けられた2つの圧電部材群P1、P2に鋸波電圧及び逆鋸波電圧を並行して(例えば同時に)個別に印加することで(図3参照)、該蛇行部の隣り合う2つの梁を第2軸周りの反対方向に撓ませて各梁の撓み量を累積させることで、ミラー110を、第2軸周りに効率良く(低電圧で大きい振れ角で)振動させることができる。
ここで、「鋸波電圧」とは、時間の経過につれ、徐々に高くなり、ピークに達すると、急激に低くなる電圧を意味する(図4上図参照)。「逆鋸波電圧」とは、時間の経過につれ、急激に高くなり、ピークに達すると、徐々に低くなる電圧を意味する(図4下図参照)。以下では、鋸波電圧及び逆鋸波電圧を「鋸波」とも略称する。
結果として、第1及び第2駆動部150、250を含んで、ミラー110を第1軸及び第2軸周りに独立に駆動するミラー駆動手段が構成されている。
コントローラ200は、ミラー110の振れ角(揺動角)を検知する不図示のセンサからの検知結果に基づいて、ミラー110の振れ角と各レーザダイオードの発光タイミングとの同期をとるための同期信号を生成し、LD制御部50に出力する。また、コントローラ200は、以下に説明するように、光偏向器100の第2駆動部250を制御する。
すなわち、コントローラ200は、各蛇行部に設けられた圧電部材群P1の各圧電部材に鋸波aを印加するとともに、該蛇行部に設けられた圧電部材群P2の各圧電部材に鋸波bを印加する。ここでは、鋸波a、bの周波数は、約60Hzとされている。但し、各蛇行部における機械的共振の共振周波数との関係により、周波数を数Hz程度シフトさせても良い。
このように、各蛇行部に設けられた2つの圧電部材群P1、P2に鋸波a、bが並行して個別に印加されることにより、各蛇行部の6つの梁が撓み、ミラー110が第2軸周りに振動する。このようにして、ミラー110の第2軸周りの駆動によるZ軸方向(副走査方向)の光走査が行われる。
なお、本実施形態では、駆動電圧の波形として鋸波を用いているが、これに限らず、鋸波の頂点を丸くした波形、鋸波の直線領域を曲線とした波形など、光偏向器のデバイス特性に応じて波形を変えることも可能である。
第1及び第2駆動部150、250の各圧電部材は、一例として、圧電材料としてのPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる。圧電部材は、分極方向に電圧が印加されると印加電圧の電位に比例した歪み(伸縮)が生じる、いわゆる逆圧電効果を発揮する。また、圧電部材は、力を加えると、該力に応じた電圧を分極方向に発生させる、いわゆる圧電効果を発揮する。
なお、ここでは、圧電部材がシリコン基板の一面のみに設けられた場合を一例として説明したが、配線のレイアウトや圧電部材の作成上の自由度を向上させるため、シリコン基板の他面にのみ設けても良いし、シリコン基板の一面及び他面の双方に設けても良い。いずれにしても、これらの圧電部材や電極の形成はほぼ半導体プロセスに準じるものであり、大量生産によりコストダウンを図ることができる。
ここで、第1軸周りに振動するミラー110に光が入射されると、反射光が第1軸周りにスキャン(偏向走査)される。また、第2軸周りに振動するミラー110に光が入射されると、反射光が第2軸周りにスキャン(偏向走査)される。そこで、被走査面に形成される画像の高精細化、面内均一化を図るために、ミラー110に入射される光を第1軸周りに直線的にスキャンし、その走査線を第2軸周りにスキャンすること、すなわちラスタスキャンを行うことができる。
具体的には、第1駆動部150では各トーションバーの機械的共振を利用してできるだけ少ないエネルギーでミラー110を高周波数で振動させ、第2駆動部250では非共振によりミラー110を低周波数(例えば数十Hz)で振動させることでラスタスキャンを行うことができる。
しかしながら、この場合、第2駆動部250の非共振駆動による各梁の変位量は、第1駆動部150の共振駆動による各カンチレバーの変位量よりも小さい。
そこで、上述の如く、第2駆動部250の各蛇行部の6つの梁に個別に設けられた6つの圧電部材を並列に動作させることで、該6つの梁の変位量(変形量)を累積させて該蛇行部全体として変位量を大きくしている。
本実施形態では、ラスタスキャンを行うために、各蛇行部に設けられた圧電部材群P1、P2に印加する駆動電圧として互いに相似(相似比は1)の鋸波電圧(鋸波a)及び逆鋸波電圧(鋸波b)を用いる(図3参照)。
ここで、ミラー110の第2軸周りの揺動速度、すなわちミラー110の第2軸周りの揺動角度の時間変化は、図5に示されるように直線的(リニア)であることが望ましい。つまり、ミラー110の第2軸周りの揺動速度に変動が生じないこと(揺動速度が均一になること)が望ましい。ミラー110の第2軸周りの揺動速度に変動が生じると、直線的な光走査が妨げられ、被走査面に形成される画像(表示画像)に輝度ムラ、歪みなどが発生し、画質の低下を招くからである。
しかしながら、光偏向器100はミラー構造部の重量、各蛇行部の複数の梁の剛性などによる第2軸周りの機械的共振の固有の共振周波数を有するため、ミラー110を鋸波を用いて揺動させると、該鋸波の高調波成分が該共振周波数と干渉し、振動成分が乗り、ミラー110の第2軸周りの揺動速度に変動(うねり)が生じてしまう(図6参照)。
そこで、本実施形態では、各蛇行部に設けられた2つの圧電部材群P1、P2に並行して個別に印加される互いに相似(相似比1)の鋸波a、bの位相をpだけずらすこととしている(図3参照)。以下では、圧電部材群P1と該圧電部材群P1の複数の圧電部材11が個別に設けられた複数の梁を併せてチャンネルAと称し、圧電部材群P2と該圧電部材群P2の複数の圧電部材12が個別に設けられた複数の梁を併せてチャンネルBと称する。
詳述すると、チャンネルA、Bを、図3に示される位相差pの鋸波a、bで駆動し、チャンネルAとチャンネルBで励起される振動成分を打ち消しあうように動作させる。チャンネルA、Bに印加される鋸波の波形は、鋸波の1周期Taに対し、時間Ta1で画像表示のための光走査を行い、時間Ta2で戻す動作を行う波形である(図4参照)。
鋸波aでは、時間Ta1が電圧を上げる時間であり、時間Ta2が電圧を下げる時間である(図4上図参照)。鋸波bでは、時間Ta1が電圧を下げる時間であり、時間Ta2が電圧を上げる時間である(図4下図参照)。チャンネルAへの電圧印加によってミラー構造部は、図7に示される波形WAのように振動する。また、チャンネルBへの電圧印加によってミラー構造部は、図7に示される波形WBのように振動する。そこで、波形WAと波形WBとが合成された波形WA+WBでミラー構造部を揺動させることが可能となる。
このように、チャンネルA、Bに印加する電圧の位相を異ならせることにより、ミラー110の第2軸周りの揺動速度の変動をある程度抑制することができる。
ところで、表示画像の大画面化、高画素化のためには、共振駆動のみならず非共振駆動においてもミラー110の振れ角(揺動角)を大きくすることが望まれる。
そこで、本実施形態では、上述の如く非共振駆動において各蛇行部の複数の梁の変形を累積させることで、ミラー110の振れ角を大きくしている。
また、表示画像の高画質化のためには、共振駆動のみならず非共振駆動においてもミラー110の振れ角感度(入力電圧に対する振れ角の大きさの比率)を向上させることが望まれる。
非共振駆動においてミラー110の振れ角感度を向上させるためには、各蛇行部の梁の長さを極力長く(少なくともミラー構造部の第1軸方向の長さよりも長く)することが望ましい。
しかしながら、各蛇行部の梁の長さを長くしても、該蛇行部の隣り合う2つの梁に非対称性があると、上記振動成分を十分に低減できず、ミラー110の第2軸周りの揺動速度が変動し、ひいては表示画像の画質の低下を招く。
そこで、本実施形態では、表示画像の高画質化を図るために、各蛇行部の梁の長さをミラー構造部の第1軸方向の長さ(第1矩形枠部108の第1軸方向の長さ)よりも長くし、かつ該蛇行部の複数の梁の長さを略同一とし、かつミラー構造部と該蛇行部とを連結部を介して連結している。
各蛇行部の複数の梁の長さを略同一にすることで高画質が得られる理由を、以下に説明する。
非共振駆動によるミラーの揺動では、上述のように蛇行部の隣り合う2つの梁に1周期の立ち上がり時間と立ち下がり時間が互いに入れ替わった鋸波が印加される。この場合、チャンネルA、Bに印加される鋸波の位相差の調整によりミラーの第2軸周りの揺動速度の変動が低減される。
このように揺動速度の変動が低減されるのは、チャンネルAに印加される鋸波による振動成分と、チャンネルBに印加される鋸波による振動成分とが打ち消し合うことによる。
すなわち、チャンネルA、Bの振動成分が同じであることが揺動速度を均一にする上で非常に重要であり、Aチャンネルの梁の撓みとBチャンネルの梁の撓みにアンバランスが生じると、揺動速度の均一性が得られにくくなる。
ここで、図8に示される比較例1のように、一及び他の蛇行部の複数の梁の長さをミラー構造部の第1軸方向の長さよりも長くし、かつ一の蛇行部の一端とミラー構造部の一の角部とを接続し、かつ他の蛇行部の一端とミラー構造部の他の角部(一の角部の対角の角部)とを接続すると、一及び他の蛇行部におけるミラー構造部に最も近い梁の長さが短くなってしまう。
この場合、各蛇行部のチャンネルA´、B´にわずかな駆動力のアンバランスが生じ、かつ一及び他の蛇行部間にも駆動力のアンバランスが生じることになる。このため、チャンネルA´、B´の位相差の調整を行っても、ミラー構造部の揺動速度の変動を抑制できない。
詳述すると、各蛇行部の隣り合う2つの梁に非対称性があると、不必要な振動モードを励起し、画質の劣化を生じさせる。具体的には、蛇行部のチャンネルA´、B´への電圧印加により副走査方向(例えば鉛直方向)に光走査させるときに、駆動力のアンバランスから主走査方向(例えば水平方向)の振動モードを励起し、ミラーを含むミラー構造部が水平方向に振動するという問題が生じる。この場合、副走査方向に真っ直ぐに移動すべき光走査が、主走査方向に揺れながら走査されることになる。
このような駆動力のアンバランスから発生する画質の劣化を防止するためにも、各蛇行部のすべての梁の長さを同一にする必要がある。この際、ミラー構造部と各蛇行部とを連結部を介して連結することで、ミラー構造部全体を大きくする場合に比べてミラー構造部のモーメントを小さくすることができるため、非共振による振れ角感度(入力電圧に対する振れ角の大きさの比率)を上げることができる。この結果、非共振による副走査方向の光走査の振れ角感度を向上するとともに、走査速度均一性を向上することができ、二軸偏向走査による高画質化が可能になる。
そこで、本実施形態では、図2に示されるように、各蛇行部の複数の梁の長さをミラー構造部の第1軸方向の長さ(第1矩形枠部108の第1軸方向の長さ)よりも長くし、ミラー構造部の第1軸方向の一端と第1蛇行部210aの一端とを第1連結部111を介して連結し、ミラー構造部の第1軸方向の他端と第2蛇行部210bの一端とを第2連結部112を介して連結している。
ここでは、第1連結部111は、ミラー構造部の第1軸方向の一端に該一端からミラー110の反射面とは反対側に突出するように接続され、第2連結部112は、ミラー構造部の第1軸方向の他端に該他端からミラー110の反射面とは反対側に突出するように接続されている。
すなわち、第1及び第2連結部111、112は、ミラー構造部を第1軸方向に延長するように設けられている。そして、第1連結部111と第1蛇行部210aの一端との接続箇所は、ミラー構造部の第1軸方向の一側にあり、第2連結部112と第2蛇行部210bの一端との接続箇所は、ミラー構造部の第1軸方向の他側にある。
詳述すると、ミラー構造部の第1軸方向の長さと、第1連結部111の第1軸方向の長さと、第2連結部112の第1軸方向の長さの和が、各蛇行部の梁の長さ(第1軸方向の長さ)に等しくなっている(図9参照)。
さらに詳述すると、第1及び第2連結部111、112の第1軸方向の長さが等しく、かつ第1及び第2連結部111、112の第1軸方向の長さの和が、各蛇行部の梁の長さとミラー構造部の第1軸方向の長さの差に等しくなっている。
この場合、各蛇行部のチャンネルA、Bのすべての梁の長さを略同一にすることができる(図9参照)。この結果、各蛇行部のチャンネルA、Bにおける振動成分を打ち消すことができ、第2軸方向に振動成分のない理想的な等速でのミラー110の揺動を行うことが可能になる。
さらに、本実施形態では、各蛇行部のチャンネルA、Bの駆動力の対称性に加えて、蛇行部間の駆動力の対称性を確保するための工夫が凝らされている。
具体的には、第1及び第2蛇行部210a、210bの複数(ここでは12本)の梁の幅(第2軸方向の長さ)、厚さ、材質も、略同一とされている。すなわち、第1及び第2蛇行部210a、210bのすべての梁は、実質的に同一である。
また、支持構造部において隣り合う2つの梁を接続する接続部は、すべて実質的に同一である(図10参照)。この結果、第1蛇行部210aの複数の梁は略等間隔に配置され、かつ第2蛇行部210bの複数の梁は略等間隔に配置され、かつ第1蛇行部210aの梁の間隔と第2蛇行部210bの梁の間隔は同一となる。
また、図9に示されるように、チャンネルA、Bにおいて、各圧電部材は同大・同一とされ、かつ梁に設けられる位置が同一とされている。具体的には、各梁に対して圧電部材が設けられる位置、長さを図9におけるC−C´、D−D´のラインとなるように設定している。
また、第1及び第2連結部111、112は、図10の円形破線で示されるように、いずれも略L字状であり、第1連結部111は、一端がミラー構造部の第1軸方向の一端に接続され、他端が第1蛇行部の一端に接続され、第2連結部112は、一端がミラー構造部の他軸方向の他端に接続され、他端が第2蛇行部の一端に接続されている。
なお、図10の円形破線内のL字体における第1軸方向に延びる一辺部を「連結部」と見做し、該L字体における第2軸方向に延びる他辺部を蛇行部の一部と見做しても良い。
さらに、第1及び第2連結部111、112の第2軸方向の長さも等しくなっている。すなわち、第1及び第2連結部111、112は、実質的に同一である。
ここで、第1矩形枠部108の中心(ミラー構造部の中心)と第2矩形枠部109の中心(支持構造部の中心)は略一致している(図10参照)。すなわち、ミラー110の反射面の中心は、第2矩形枠部109の中心に略一致している。
そして、第1及び第2連結部111、112は、ミラー構造部の中心、すなわちミラー110の反射面の中心に関して点対称な位置関係にある(図10の符号E、E´参照)。
さらに、第1及び第2蛇行部210a、210bと、第2矩形枠部109との接続部も、ミラー110の反射面の中心に関して点対称な位置関係にある(図10の符号F、F´参照)。
以上のように、ミラー構造部と支持構造部とが第1及び第2連結部111、112を介して連結された光偏向器100では、第2軸(理想的な揺動軸)周りの揺動に関する対称性が確保され、ミラー構造部が第2軸に対して傾いて揺動されることが防止される。
一方、図11に示される比較例2のように、ミラー構造部と2つの蛇行部との接続位置、及び2つの蛇行部と外側の枠部との接続位置を、理想的な揺動軸である第2軸に対して同じ側にした場合、第2軸周りに揺動させることは難しく、第2軸に対して傾いた状態で揺動することになる。
以上説明した本実施形態の光偏向器100は、反射面を有するミラー構造部と、該ミラー構造部を第2軸(一軸)周りに揺動可能に支持する支持構造部と、を備え、該支持構造部は、ミラー構造部を第2軸方向に挟むように配置され、複数の梁が蛇行するように連続する第1及び第2蛇行部210a、210bと、ミラー構造部の一端と第1蛇行部210aの一端とを連結する第1連結部111と、ミラー構造部の他端と第2蛇行部210bの一端とを連結する第2連結部112と、第1及び第2蛇行部210a、210bの複数の梁に個別に設けられた複数の圧電部材と、を含み、第1及び第2連結部111、112は、ミラー構造部を第2軸に直交する第1軸(他軸)方向に延長するように設けられている。
この場合、各蛇行部の梁の長さの差を小さくできるため、該蛇行部における隣り合う2つの梁の非対称性、及び第1及び第2蛇行部210a、210bの非対称性が緩和される。
この結果、ミラー構造部の第2軸周りの揺動速度の変動を抑制することができる。
また、第1及び第2蛇行部210a、210bの複数の梁の長さは、同一であるため、ミラー構造部の第2軸周りの揺動速度の変動を確実に抑制することができる。
すなわち、光偏向器100では、各蛇行部の複数の梁の反りにより発生する駆動力の対称性によりミラー構造部を均一な速度で揺動させることが可能になる。また、各蛇行部の隣り合う2つの梁の対称性、並びに第1及び第2蛇行部210a、210bの対称性により不必要な振動モードを励起することがなくなり、ミラー構造部を理想的な揺動軸である第2軸周りにバランス良く揺動させることができる。
また、第1及び第2蛇行部210a、210bの複数の梁の長さは、ミラー構造部の第2軸方向に直交する第1軸方向(他軸方向)の長さよりも長いため、ミラー構造部の振れ角感度を向上させることができ、低電圧で大きな振れ角を得ることができる。
また、第1連結部111は、ミラー構造部の第1軸方向の一端から反射面とは反対側に突出し、第2連結部112は、ミラー構造部の他軸方向の他端から反射面とは反対側に突出しているため、ミラー構造部を第2軸周りにバランス良く揺動させることができる。
また、第1及び第2連結部111、112の第1軸方向の長さは、同一であり、ミラー構造部の第1軸方向の長さと、第1連結部111の第1軸方向の長さと、第2連結部112の第1軸方向の長さの和は、第1及び第2蛇行部210a、210bの梁の長さに等しいため、ミラー構造部を第2軸周りによりバランス良く揺動させることができる。
また、第1及び第2連結部111、112は、いずれも略L字状であり、第1連結部111は、一端がミラー構造部の第1軸方向の一端に接続され、他端が第1蛇行部210aの一端に接続され、第2連結部112は、一端がミラー構造部の第1軸方向の他端に接続され、他端が第2蛇行部210bの一端に接続されているため、ミラー構造部を第2軸周りにバランス良く安定して揺動させることができる。
また、第1及び第2連結部111、112は、反射面の中心に関して点対称な位置関係にあるため、ミラー構造部の第2軸周りの揺動安定性をより向上することができる。
また、支持構造部は、第1及び第2蛇行部210a、210bの他端が内縁に接続された第2矩形枠部109を更に含み、第1及び第2蛇行部210a、210bと第2矩形枠部109との接続位置は、反射面の中心に関して点対称な位置関係にあるため、ミラー構造部の第2軸周りの揺動安定性をより一層向上することができる。
また、各蛇行部の複数の梁に個別に設けられた複数の圧電部材は、同形・同大であり、かつ梁に設けられる位置が同一であるため、各蛇行部の隣り合う2つの梁が発生させる駆動力の対称性を確実に確保でき、かつ第1及び第2蛇行部210a、210bが発生させる駆動力の対称性を確実に確保できる。
また、プロジェクタ10は、画像情報に基づいて変調された光を出射する光源装置5と、該光源装置5からの光を偏向する光偏向器100と、を備えているため、均一で高精細な画像を表示することができる。
また、プロジェクタ10は、3つのレーザダイオードLD1〜LD3を含み、画像情報に基づいて変調されたレーザ光を射出する光源装置5と、該光源装置5からの光を被走査面に向けて偏向する光偏向装置1000と、を備えている。この場合、画像情報に基づいて変調された光により被走査面を安定して走査することができ、被走査面に高品質な画像を形成することができる。すなわち、ミラー110の第2軸周りの揺動速度の均一性が得られることにより、輝度ムラや歪みの発生が抑えられた高品質な画像を形成することができる。
ところで、上記実施形態の光偏向器100は、第2軸を中心として、各蛇行部に反りを発生させることで、非共振でミラー110を回転駆動している。一方、第2軸とは垂直の第1軸周りには、ミラー110に接続されたトーションバーを利用した共振を使って回転駆動させている。
ミラー110の第1軸周りの共振駆動は第2軸周りの非共振駆動に対して300〜500倍の速度で行われているが、第1軸周りの共振駆動の影響(例えばミラー構造部で発生する振動等)を、第2軸周りに非共振駆動される蛇行部へ極力伝達させないことが望ましい。
そこで、図12に示される変形例1の光偏向器のように、第1及び第2連結部211、212におけるミラー構造部との接続位置を、平面視で、ミラー110の反射面の中心を通り第2軸に直交する直線上(第1軸上)に位置させても良い(図12の符号G、G´参照)。
これにより、ミラー110を第1及び第2軸周りに並行して回転駆動を行う際に、第1軸周りの回転駆動の影響が、第2軸周りの蛇行部を含む回転駆動系(第2駆動部)に伝わることが抑制されるため、第1軸及び第2軸周りの二軸偏向走査時に不必要な振動、励振を引き起こすことなく、安定した、高精度な光走査が可能になる。
なお、上記実施形態では、RGBの3原色に対応する3つのレーザダイオードからの3つのレーザ光の合成光を光偏向器100で偏向して被走査面を2次元走査することによりカラー画像を形成するプロジェクタについて説明したが、これに限らず、例えば、1つのレーザダイオードからの1つレーザ光を光偏向器100で偏向して被走査面を2次元走査することによりモノクロ画像を形成するプロジェクタを提供しても良い。
また、第1及び第2駆動部150、250を含むミラー駆動手段の構成は、上記実施形態で説明したものに限らず、適宜変更可能である。例えば上記実施形態のミラー駆動手段は、ミラーを互いに直交する二軸(第1軸及び第2軸)周りに独立に駆動しているが、例えばミラーを一軸(第2軸)周りにのみ駆動しても良い。具体的には、図13(A)及び図13(B)に示される変形例2、3のように、非共振駆動による1次元光走査用の光偏向器にも適用可能である。変形例2、3の光偏向器の支持構造部は、上記実施形態及び変形例1と同様の構成を有している。図13(A)に示される変形例2では、第1及び第2連結部は、上記実施形態とほぼ同様の構成、配置とされ、上記実施形態と同様の効果が得られる。図13(B)に示される変形例3では、第1及び第2連結部は、上記変形例1とほぼ同様の構成、配置とされ、上記変形例1と同様の効果が得られる。変形例2、3の光偏向器を2つ組み合わせて、2つのミラーを互いに直交する二軸周りにそれぞれ駆動するようにしても良い。
また、上記実施形態では、画像形成装置としてのプロジェクタ10に光偏向器100が配備されているが、これに限らず、例えば図14に示される変形例4の画像表示装置としてのヘッドアップディスプレイ7に光偏向器100が配備されても良い。ヘッドアップディスプレイ7は、例えば車両、航空機、船舶等の移動体に搭載される。そこで、ヘッドアップディスプレイ7と該ヘッドアップディスプレイ7が搭載される移動体とを備える移動体装置を提供することができる。
詳述すると、ヘッドアップディスプレイ7は、一例として図14に示されるように、光偏向器100で偏向されたレーザ光の光路上に配置されたXZ平面に沿って2次元配列された複数のマイクロレンズ60aを含むマイクロレンズアレイ60(スクリーン)と、該マイクロレンズアレイ60を介したレーザ光の光路上に配置された透過反射部材70(例えばコンバイナ)と、を備えている。この場合、光偏向装置1000による第1軸及び第2軸周りのレーザ光の偏向動作に伴い該レーザ光によりマイクロレンズアレイ60が2次元走査され、マイクロレンズアレイ60上に中間像(画像)が形成される。そして、中間像を形成した光が透過反射部材70に入射し、その入射光の一部が反射され、残部が透過する。そこで、観察者は、透過反射部材70を介して中間像の拡大された虚像を視認することができる。この場合、マイクロレンズアレイ60により中間像を形成した光が拡散されるため、所謂スペックルノイズの低減が期待できる。
なお、マイクロレンズアレイ60に代えて、光を透過又は反射させる部材(例えば透過スクリーン、反射スクリーン、拡散板等)を用いても良い。また、これらの部材と透過反射部材70との間の光路上に例えば凹面鏡、凸面鏡、平面鏡等のミラーを設けても良い。また、透過反射部材70として、例えば移動体の窓部材(例えばフロントガラス)を用いても良い。
以上説明した変形例4のヘッドアップディスプレイ7でも、上記実施形態と同様の効果が得られる。
また、光偏向器100を、画像表示装置としてのヘッドマウントディスプレイに配備しても良い。
また、上記実施形態及び各変形例では、プロジェクタ10、ヘッドアップディスプレイ7を採用しているが、これに限らず、例えば、プリンタ、複写機等を採用しても良い。具体的には、例えば、図13(A)及び図13(B)に示される1次元走査用の光偏向器で偏向されたレーザ光により像担持体としての感光体ドラムの表面を走査して静電潜像を形成し、該静電潜像にトナーを付着させて現像し、得られたトナー画像を媒体に転写し、画像を形成しても良い。
また、上記実施形態及び各変形例における光源装置5の構成は、適宜変更可能である。例えば、光源装置5は、光の3原色に対応する3つのレーザダイオードを有しているが、1つ又は4つ以上のレーザダイオードを有していても良い。この場合、レーザダイオードの数に応じて、コリメートレンズ、ダイクロイックミラーの数(0を含む)を変更しても良い。
また、上記実施形態及び各変形例では、光源として、レーザダイオード(端面発光レーザ)を用いているが、これに限られない。例えば、面発光レーザを用いても良いし、レーザ以外の光源を用いても良い。
また、上記実施形態及び各変形例では、圧電部材に印加される駆動電圧の波形は、鋸波とされているが、これに限らず、要は、周期的な波形(例えば正弦波、矩形波、三角波等)であることが好ましい。
また、上記実施形態における光偏向器100の各構成部の配置、大きさ、形状、数、材質等は、適宜変更可能である。
例えば、ミラー構造部において、各トーションバーの両側に圧電部材が設けられたカンチレバーが接続されているが、該トーションバーの片側のみに該カンチレバーが接続されていても良い。
また、上記実施形態及び各変形例では、ミラー構造部の第1軸方向の長さは、蛇行部の梁の長さよりも明らかに短く設定されているが、蛇行部の梁の長さよりも僅かに短く(ほぼ同等に)設定されても良い。
また、上記実施形態及び各変形例では、第1及び第2蛇行部の複数の梁の長さは同一とされているが、これに限らず、要は、第1及び第2蛇行部の複数の梁の長さの差が小さければ小さいほど好ましい。第1及び第2連結部111、112をミラー構造部を第1軸方向に延長するように設けることで、例えば図8、図11に示される比較例1、2に比べて、各蛇行部の複数の梁の長さの差を小さくすることができる。そこで、例えば、各蛇行部のミラー構造部に最も近い梁を他の梁に比べて若干短くする構成を採用しても良い。
また、支持構造部において、各蛇行部の梁の本数は、適宜変更可能である。但し、隣り合う2つの梁の対称性を考慮すると、各蛇行部の梁の本数は偶数であることが望ましい。
また、ミラー構造部と蛇行部とを連結する連結部の形状、大きさ、配置等も、ミラー構造部の形状、大きさ、蛇行部の梁の長さ等に応じて適宜変更可能である。例えば、上記実施形態及び各変形例では、各連結部は、ミラー構造部の第1軸方向の端から反射面とは反対側に突出しているが、ミラー構造部の第2軸方向の端から反射面とは反対側に突出していても良い。また、連結部は、平面視で(+Y側から見て)ミラー構造部と一部重なっていても良い。
また、上記変形例4では、画像表示装置として、例えば車両、航空機、船舶等の移動体に搭載されるヘッドアップディスプレイ7について説明したが、要は、物体(移動体を含む)に搭載される画像表示装置であれば良い。この場合、物体と、該物体に搭載された画像形成装置とを備える物体装置を提供でき、上記実施形態と同様の効果が得られる。画像表示装置は、透過反射部材を構成要素として備えていても良いし、備えていなくても良い。なお、「物体」は、移動体の他、恒常的に設置されるものや運搬可能なものを含む。
以下に、上記実施形態を本発明の一形態として発案するに至った思考プロセスを説明する。
近年、光ビームを偏向、走査する手段として、半導体製造技術を応用したシリコンやガラスを微細加工するマイクロマシニング技術により、基板上に反射面を設けた可動部や弾性梁部を一体形成した小型の光偏向器が開発されている。
このような光偏向器の構成として、薄膜化した圧電材料からなる薄膜圧電体をアクチュエータとして使用したタイプのものがある。この圧電アクチュエータを使用した光偏向器では、薄膜圧電体をカンチレバーの表面に重ねあわせて形成する。この構成においては、圧電体の圧電特性から生じる面内方向の伸縮が、カンチレバーに伝わり、カンチレバーを振動させることができる。
このような光偏向器で、水平走査および垂直走査ができる2次元の光走査が可能な光偏向器を用いると、1次元走査の光偏向器2つを組み合わせた構成より、大幅な小型化、低コスト化が可能になる。2次元走査を行う場合の構成は、水平方向の光走査に関しては、機械的な共振周波数を使用する共振駆動が使われる。それに対し、垂直方向への光走査に関しては、光走査特性を重視して非共振駆動が使われる場合がある。
2次元走査に際して、機械的共振を使った水平方向の駆動に関しては、カンチレバーの一端が枠部に固定されて支持され、カンチレバーを圧電駆動により振動させる。このカンチレバーの振動によって発生するトルクをカンチレバー他端に連結されたトーションバー(弾性梁)に伝え、トーションバーの先端に接続されたミラーを回転駆動させる。このような駆動方法により、小型、低電圧で、大きな光走査角が得られることになる。
一方、表示画像の高精細化、面内均一化を達成するため、垂直方向の光走査には非共振駆動を用いる。一般的に非共振での駆動においては、大きな振れ角が得にくく、大きな電圧が必要となるか素子が大型化してしまう。そのため、非共振駆動において振れ角感度を上げる方法として、圧電部材が設けられる複数の梁が蛇行状に連続する蛇行部によってミラーを含む可動部を支持させることが知られている。
しかしながら、機械的共振による光走査に比べ、非共振での光走査は、ミラーの振れ角を大きくするのが難しい。非共振での光走査の振れ角を大きくするには、印加電圧を大きくして、各梁に設けられた圧電部材のたわみ量を大きくする必要がある。このように印加電圧を大きくすることは、デバイスの駆動回路に負荷をかけ、コストアップにつながる上に、デバイスに高い電圧がかかり続けるため、長期間での動作信頼性の低下を招いてしまうという問題が発生する。
そこで、カンチレバーを使った非共振での光走査方向に対して、低電圧で動作が可能になるように振れ角感度を向上させることが望まれる。
特許文献1(WO2010/131449号公報)では、以下のような方法により圧電部材を使った光学反射素子において、ミラー構造部の振れ角を拡大しようとしている。
詳述すると、特許文献1では、可動枠を回転駆動させるための蛇行部のターン部の少なくともいずれか一つの外周が、ミラー構造部の端よりも外側にずれている構成となっている。
しかしながら、特許文献1のように、蛇行部のターン部の少なくとも一つの外周が、ミラー構造部の端よりも外側にずらす構成を採用する場合、回転駆動による振れ角感度は得られるが、レーザースキャンによる高精度な画像を形成する上で問題が発生する。例えば蛇行部に印加する電圧パターンが、正弦波のようなシンプルな波形の場合には、画像形成上大きな問題にはならない。
一方、表示画像の高精度化、面内均一化を達成するためには、等速での光走査領域で画像形成するのが望ましい。そのため、非共振駆動である垂直方向の光走査には、駆動信号として鋸波を使用する。
この鋸波を使った光走査では、鋸波の高調波成分が垂直方向動作の共振周波数と干渉するため、振動成分が乗ってしまう。このとき、隣り合う2つの梁に個別に設けられた2つの圧電部材に印加する2つの鋸波の位相差を調整して駆動による振動成分を低減させることができるが、隣り合う2つの梁に非対称性があると、十分に振動成分の低減ができず、高精度で均一な走査速度で光走査を行うことができない。
そこで、発明者らは、非共振駆動での光走査において高精度な光走査速度を確保し、明るさムラ、画像歪みのない高品質な画質を提供することを目的として、上記実施形態を発案するに至った。