以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る運転計画作成装置を含む運転計画作成システムの概略構成の一例を示すブロック図である。図1に示された運転計画作成装置システムには、運転計画作成装置100と、入出力装置200と、発電機特性データ管理装置300と、運転制約データ管理装置400と、電力需要予測装置500と、が含まれている。図1に示された運転計画作成装置100は、入力部101と、記憶部102と、出力部103と、運転状態決定部104と、運転状態補正部105と、出力電力決定部106と、を備える。
運転計画作成装置100は、発電機の運転状態および出力電力に関する運転計画を作成する。対象の発電機は複数存在することを想定する。なお、発電機は火力発電機を想定して記載するが、火力発電機に限られるものではない。運転計画を作成するために必要なデータは、入出力装置200から指定される。運転計画を作成するために必要なデータには、発電機特性データ、運転制約データ、および電力需要データが含まれる。
図2は、発電機特性データの一例を示す図である。発電機特性データとは、発電機の特性を示すデータである。ここでは、発電機の特性には、出力電力および出力電力に基づく演算値が含まれるとする。例えば、出力電力の最小値、最大値、平均値、発熱量、発熱量あたりの運転コスト、単位時間あたりの発熱量などが発電機特性データに含まれてもよい。発電機特性データは、後述する最適化問題の制約条件および目的関数の作成に用いられる。
運転制約データは、発電機の運転に関する制約を示すデータである。例えば、発電機が1度停止した後に起動できるまでにかかる時間は、運転制約の1つである。運転制約データは、後述する最適化問題の制約条件として用いられる。
電力需要データは、発電機または発電機群に求められる電力需要を示すデータである。電力需要データも、後述する最適化問題の制約条件として用いられる。
なお、発電機群とは、1つ以上の発電機から構成されるグループである。発電機群に課せられた運転制約は、発電機群に所属する発電機全部に課せられる。なお、1つの発電機が、複数の発電機群に所属していてもよい。
なお、運転計画を作成するために必要なデータは、入出力装置200から指定された外部の装置またはシステムから取得することを想定する。図1では、必要なデータの取得先の例として、発電機特性データ管理装置300、運転制約データ管理装置400と、電力需要予測装置500と、が示されている。発電機特性データは発電機特性データ管理装置300から取得され、運転制約データは運転制約データ管理装置400から取得され、電力需要データは電力需要予測装置500から取得されると想定する。
作成される運転計画について説明する。作成される運転計画には、各発電機の運転状態および各発電機の出力電力が示される。図3は、作成される運転計画の一例を示す図である。折れ線のグラフが出力電力を示す。縦軸は出力電力の値、横軸は時間を示す。
発電機は、作成された運転計画に応じて、停止、起動などの処理を行うが、停止の指示を受けてから、実際に発電機が停止するまでには時間がかかる。同様に、起動の指示を受けてから、実際に発電機の出力が所定値に到達するまでにも時間がかかる。停止の指示を受けた発電機が実際に電力系統から切り離されることは解列と称する。また、起動の指示を受けて発電機が電力系統に接続されることは並列と称する。図3では、横軸と接する黒塗りの三角形(▲)が、解列のタイミングを示す。白塗りの三角形(△)が、並列のタイミングを示す。
解列から並列までの時間を発電機の停止期間と称する。また、ここでは、停止期間における発電機の運転状態を停止状態と記載する。停止状態以外の運転状態を起動状態と記載する。つまり、ここでは、発電機の運転状態は、起動状態と、停止状態との2種類とする。図3では、横軸の下に、該当期間における発電機の運転状態が示されている。解列と並列の間は停止状態と、それ以外の部分では起動状態と示されている。
出力電力は、発電機が停止の指示を受け付けてから下降していき、出力電力が0になった時点で解列が行われる。この出力電力が下降する部分のグラフを停止カーブと称する。また、並列後の発電機の出力電力は、徐々に上昇し、一定の出力値に達して以降、安定する。この出力電力が上昇するグラフを起動カーブと称する。起動カーブは、図3のように階段状になることもある。
このように、運転計画を作成するためには、発電機の運転状態と、発電機の出力電力と、を求める必要がある。そのため、運転計画作成装置100は、発電機特性データと、運転制約データと、電力需要データと、に基づき、運転状態決定処理および出力電力決定処理を行う。運転状態決定処理は、発電機の運転状態を変更させるタイミングを決定する処理である。運転状態決定処理は、発電機の出力電力の値を決定する処理である。
運転計画作成装置100の構成要素について説明する。まずは、運転計画作成装置100の構成要素の処理の流れについて説明する。図4は、第1の実施形態に係る運転計画作成装置の全体処理の概略フローチャートの一例を示す図である。入力部101が処理に必要なデータを取得する(S101)。取得されたデータは、記憶部102に記憶される(S102)。運転状態決定部104が、記憶部102に記憶されたデータに基づき、運転状態決定処理を実行する(S103)。運転状態補正部105が、運転状態決定処理により算出された、運転状態を補正する(S104)。そして、出力電力決定部106が、発電機の運転状態に基づき、出力電力決定処理を実行する(S105)。これにより、発電機の運転状態と、発電機の出力電力を含む運転計画が作成される。そして、出力部103が運転計画を出力する(S106)。
なお、記載されるフローチャートは一例であり、必要とされる処理結果を得ることができれば、その他の処理が行われてもよいし、処理の順序等が入れ替えられてもよい。例えば、各構成要素の処理の後に、出力部103が処理結果を逐次出力してもよい。また、各処理の処理結果が逐次記憶部102に記憶され、各構成要素は記憶部102を参照して処理結果を取得してもよい。以降に記載されるフローチャートも同様である。
入力部101は、外部の装置から運転計画作成装置100の処理に必要なデータを取得する。なお、運転計画作成装置の各構成要素に対する指令など、必要なデータ以外の情報を受け付けてもよい。入力部101は、入力された情報を所定の受信先に渡す。受信先は、特に限られるものではない。ここでは、記憶部102に渡されるものとする。
記憶部102は、入力部101が受け取った情報を記憶する。また、運転計画作成装置100の各構成要素の処理結果、例えば、作成された運転計画を記憶してもよい。
記憶部102は、1つのメモリまたはストレージであってもよいし、複数のメモリまたはストレージであってもよいし、メモリまたはストレージの組み合わせであってもよい。記憶される情報に応じて記憶先が分けられていてもよい。記憶されたデータは、データベース(DB)として管理されていてもよい。例えば、図1に示すように、発電機特性データを管理する発電機特性データ管理DBと、運転制約データを管理する運転制約データDBと、電力需要データを管理する電力需要データ管理DBと、が記憶部102に含まれていてもよい。
出力部103は、作成された運転計画を出力する。出力先は、入出力装置200を想定するが、出力先が限られるわけではない。なお、出力部103は、運転計画以外を出力してもよい。例えば、運転計画に用いられたデータ、運転計画の作成までに至る処理の各処理結果などが出力されてもよい。また、出力される情報は、各構成要素から取得してもよいし、記憶部102から取得してもよい。
出力部103の出力方式は、特に限られるものではない。出力部103は、処理結果を、画像として画面に表示してもよいし、ファイルとして保存してもよい。
運転状態決定部104は、運転状態決定処理を行うことにより、発電機の解列および並列のタイミングを決定する。具体的には、制約条件と、目的関数と、に基づく最適化問題を解くことにより、解列および並列のタイミングが決定される。算出された発電機の解列および並列のタイミングに基づき、運転状態が決定される。
運転状態決定部104が行う処理をフローチャートとともに説明する。図5は、運転状態決定部の運転状態決定処理のフローチャートを示す図である。
運転状態決定部104は、記憶部102から必要なデータ、つまり、発電機特性データ、運転制約データ、および電力需要データを取得する(S201)。次に、運転状態決定部104は、目的関数設定処理を行う(S202)。目的関数設定処理とは、最適化問題の目的関数を定式化することである。目的関数設定処理は、公知の手法を用いればよい。目的関数は任意に定めてよい。例えば、発電機単体または複数の発電機を含む発電機群の運転コストを最小化にすることを目的としてもよい。運転コストを所定の目標値に近づけることを目的関数としてもよい。所定の目標値も任意に定めてよい。
なお、運転コストは、発電機の運転にかかる費用であればよく、発電機の運転に必要な物品、人、またはサービスに係る費用が含まれてもよい。発電機の運転に必要な物品は、燃料等の発電気の動力源でもよいし、動力源以外の冷却水、触媒などでもよい。動力源も特に限られるものではない。例えば、化石燃料、木質燃料、核燃料でもよい。ダム等に蓄えられた揚水でもよい。水素発電で用いられるメチルシクロヘキサンなどの化学物質でもよい。また、発電機を運転させたことにより発生する費用を含めてもよい。例えば、発電により生じる排気ガスに含まれる化学物質を除去するために用いられる石灰石、液体アンモニアに係る費用を含めてもよい。
次に、運転状態決定部104は、制約条件設定処理を行う(S203)。制約条件設定処理とは、最適化問題の制約条件を定式化することである。制約条件設定処理は、公知の手法を用いればよい。作成される制約条件は、発電機単体に係る制約条件、または発電機群に係る制約条件でもよい。発電機群に係る制約条件は、発電機群全体での発電量、発電機群全体での燃料使用量といった発電機群全体に係る制約条件でもよい。あるいは、発電機群に属する発電機それぞれに係る制約条件でもよい。
最後に、運転状態決定部104は、目的関数設定処理(S202)で設定された目的関数と、制約条件設定処理(S203)で設定された運転制約と、に基づく最適化問題を求解する。求解手法としては、2次計画法、線形計画法などの公知の最適化問題解決手法を用いてもよい。また、求解処理を行うために、専用のプログラムを用いてもよいし、公知のソルバを用いてもよい。これにより、発電機の解列および並列のタイミングが決定される。そして、運転状態決定部104は、算出された解列および並列のタイミングに基づき、時間と発電機の運転状態に係る情報を作成する。例えば、計画期間内に定められた複数の区間ごとに運転状態が示された情報でもよい。このようにして、運転状態決定部104は、発電機の運転状態を決定する。
ただし、運転制約が多すぎると、処理負荷および計算時間の増加につながる。ゆえに、運転状態決定部104は、運転制約の1つである停止期間は、一律とみなして最適なタイミングを決定する。例えば、発電機の停止期間の長さに係る制約は1つだけと仮定して、発電機の運転状態を決定する。あるいは、複数の前記発電機それぞれの停止期間の長さに関する制約を全て共通として、複数の前記発電機それぞれの運転状態を決定する。これにより、最適化問題の求解処理の負荷および計算時間は軽減されるが、運転計画の粒度は荒くなる。したがって、このままでは、実態と乖離するため、経済性が損なわれる。
運転状態補正部105は、運転状態決定部104により決定された、各発電機の運転状態を補正する。例えば、運転状態決定部104は、発電機の停止期間の長さに関する制約に基づき、発電機の停止期間の長さを補正する。これにより、運転状態決定部により決定された、発電機の運転状態を補正することができる。ゆえに、停止期間に関する、発電機ごとの多様な制約を考慮することができ、実態との乖離を少なくすることができる。
図6は、運転状態補正部の補正処理について説明する図である。図6(A)から(C)には、運転状態補正部105の各処理が行われた時点での運転計画案のイメージを示す。運転状態補正部105は、解列のタイミングにおいて、図6(A)に示すような停止カーブを作成する。停止カーブの作成は、発電機特性データに含まれる、停止カーブの作成のためのデータに基づき、行われる。次に、運転状態補正部105は、発電機の並列のタイミングを確認し、図6(B)に示すように、停止期間を算出する。そして、運転状態補正部105は、各発電機に定められた停止期間に関する個別の運転制約に基づき、図6(C)に示すように、停止期間を補正する。
図7は、発電機に定められた停止期間の運転制約の一例を示す図である。図7では、2種類の停止期間の例が示されている。左側に示された表には、停止期間が離散値で示されている。つまり、停止期間は左側に示された表の各値のいずれかとなり、停止期間がその各値のいずれかになったタイミングにおいて並列が可能になることが示されている。右側に示された表には、停止期間の許容範囲が示されている。つまり、停止期間が当該許容範囲内であれば並列が可能であることが示されている。なお、図7では、2つの表が分けられているが、停止期間の運転制約が、離散値である場合と、許容範囲である場合と、の両方の組み合わせであってもよい。
例えば、運転状態決定部104により決定された解列および並列のタイミングに基づく停止期間が500だと仮定する。この場合、図7の左側の表では、番号3の480が500よりも小さくかつ最も近い離散値である。ゆえに、図7の左側の表を用いた場合では、運転状態補正部105は、番号3の運転制約を選択し、停止期間を400とするために、並列のタイミングを補正する。なお、補正前の停止期間よりも補正後の停止期間のほうが短くなるように補正する。停止期間を長くすると、電力需要を満たすことができずに電力不足になる恐れがあるためである。
図7の右側の表では、500の停止期間は、番号2の範囲内である。ゆえに、図7の右側の表を用いた場合では、運転状態補正部105は、並列のタイミングを補正しない。
このように、運転状態補正部105は、複数の許容値のいずれかと一致するように、発電機の停止期間の長さを補正する。あるいは、複数の許容範囲のいずれかに含まれるように、発電機の停止期間の長さを補正する。
なお、上記では、複数の値または範囲から、1つの値が選択されたが、発電機ごとに異なる値または範囲が定められていてもよい。図7の表の番号が各発電機に対する個別の制約であってもよい。例えば、図7の表の番号1の値および範囲は発電機1に割り当てられ、番号2の値および範囲は発電機2に割り当てられてもよい。このように、運転状態補正部105は、複数の発電機それぞれに対し、停止期間の長さに関する個別の制約を用いて、複数の発電機それぞれの運転状態を補正してもよい。一方、運転状態決定部104は、複数の発電機それぞれの運転状態を決定する際に、複数の発電機それぞれの停止期間の長さに関する制約を全て共通としてもよい。例えば、3つの発電機がある場合に、運転状態決定部104は、図7の左側の表の1番が発電機1の制約であり、2番が発電機2の制約であり、3番が発電機3の制約であったと仮定する。この場合において、運転状態決定部104は、3つの発電機とも、1番の制約を用いるとしてもよい。これにより、運転状態決定部104により決定される運転状態は実態と乖離するが、運転状態補正部105による補正が行われるため、結果として運転計画は実態と乖離しない。一方、制約を共通にしたほうが、最適化問題の複雑さが減少するため、運転状態決定部104の処理にかかる時間は短くなる。
次に、運転状態補正部105は、並列のタイミングで、発電機特性データに含まれる、起動カーブの作成のためのデータに基づき、図6(D)のような起動カーブを作成する。最後に、運転状態補正部105は、解列のタイミングを補正する必要性を確認した上で、解列のタイミングを補正する。図6(C)のように停止期間が補正されると、並列のタイミングが前倒しになるが、前倒しされた並列のタイミングでは、発電機の点検などの運転制約により、並列が前倒しできない場合もあり得る。そのような場合は、図6(E)のように、解列のタイミングを後ろ倒しにて、対応する。このようにして、運転計画案が作成される。
作成される停止カーブおよび起動カーブは、発電機と停止期間とに基づく運転制約により、定まる。例えば、停止期間が短い場合、発電機のタービンに熱が残っており、短時間にて出力電力値を上げることができる。一方、停止期間が長いと、一度に所望の出力電力値にすることができず、出力電力が上昇しない期間が含まれることになる。ゆえに、図6(D)のように、起動カーブが階段状になる。
運転状態補正部105は、停止カーブおよび起動カーブを作成するために、停止カーブおよび起動カーブを作成するためのデータを用いる。当該データをカーブデータと記載する。カーブデータは、発電機および発電機のモードごとに、出力電力の値および時間が定められている。発電機のモードとは、停止期間に応じて変化する、発電機の起動カーブまたは停止カーブの形状の種類を区別するための指標である。
図8は、カーブデータの一例を示す図である。図8の上の表は、発電機および発電機のモードと、カーブの特性との関係を示す。ユニット番号は、各発電機を区別するための番号を示す。モード番号は、モードを区別するために、発電機ごとに付けられた相対的な番号を示す。順番は、同ユニット番号および同モード番号において、カーブの特性の変化の順番を示す。例えば、図8の上の表では、ユニット番号1の発電機のモード番号が1の場合、順番1が示すように、出力0の時間が0続く。次に、順番2が示すように、出力0の時間が170続く。そして、順番3が示すように、出力500の時間が200続く。一方、発電機のモードが2である場合は、発電機のモードが1である場合と、起動カーブが異なることが分かる。このように、モードに応じて、起動または停止カーブを切り替えることが可能である。
図8の下の表は、発電機ごとのモードの判断基準を示す表である。行がユニット番号を、列がモード番号を示す。表の数値は、該当する行の発電機の該当する列のモードにおける停止期間の上限値が示されている。例えば、ユニット番号1の発電機の停止期間が与えられた場合に、与えられた停止期間が、第n(nは正の整数)−1のモードの上限を超えており、第nのモードの上限以下のときは、その発電機が第nのモードであることが図8の下の表のテーブルに基づき判断することができる。
起動カーブは停止期間に影響を受けるため、このようなカーブデータを用いる事により、運転状態補正部105は、単に停止期間を補正するだけではなく、運転状態を補正した後の停止期間に基づき、起動カーブおよび停止カーブを作成することができる。
図9は、運転状態補正部の補正処理のフローチャートを示す図である。本フローにおける一連の処理は、計画期間内に定められた区間ごとに行われることを想定する。例えば、n番目の区間の処理が行われた後は、n+1番目の区間の処理が行われる。また、運転状態決定部104が作成した、時間と発電機の運転状態に係る情報を用いるとする。
運転状態補正部105は、時刻と発電機の運転状態に係る情報に基づき、現処理の対象区間における発電機の運転状態が、前回の対象区間から変化したかを確認する(S301)。同じ運転状態であれば(S302のNO)、次の対象区間の処理に移り、再度S301の処理が行われる。異なる運転状態であれば(S302のYES)、対象区間の発電機の運転状態により処理が分岐する。
発電機が停止状態の場合(S303の停止状態)は、現処理の対象区間において解列のタイミングが存在するため、運転状態補正部105は、解列のタイミングにおいて図6(A)に示したような停止カーブを作成する(S304)。停止カーブの作成後は、処理が行われている対象区間が最後の対象区間である場合(S311のYES)は、全ての計画期間に対して処理が行われたため、フローを終了する。最後の対象区間でない場合(S311のNO)は、次の対象区間の処理に移り、再度S301の処理が行われる。
発電機が起動処理運転状態の場合(S303の起動状態)は、現処理の対象区間において並列のタイミングが存在するため、運転状態補正部105は、並列のタイミングと、S304にて既に確認済みの解列のタイミングと、に基づき、停止期間を算出する(S305)。そして、算出された停止期間が、図7に示されたような停止期間の運転制約を満たす場合(S306のYES)は、運転状態補正部105は、並列のタイミングにおいて、起動カーブを作成する(S310)。そして、運転計画内の最後の対象区間であるかが確認され(S311)、次の対象区間の処理に移るか(S311のNO)、フローが終了する(S311のYES)。
算出された停止期間が停止期間の運転制約を満たさない場合(S306のNO)は、運転状態補正部105は、並列のタイミングが前倒しできるかを判断する。並列のタイミングが前倒し可能な場合は(S307のYES)、並列のタイミングを前倒すことにより、停止期間を補正する(S308)。並列のタイミングの前倒しが不可能な場合は(S307のNO)、解列のタイミングを後ろ倒すことにより、停止期間を補正する(S309)。なお、解列のタイミングを後ろ倒すことにより、図6(E)に示すように、作成済みの停止カーブが移動する。このようにして、停止期間の運転制約を満たす新たな停止期間が算出される。
そして、運転状態補正部105は、補正による新たな並列のタイミングにおいて、起動カーブを作成する(S310)。なお、前述のように、補正による新たな停止期間に基づき発電機のモードが決定され、運転状態補正部105は、発電機のモードに基づく起動カーブを、新たな並列の位置に作成する。
そして、運転計画内の最後の対象区間かが確認され(S311)、次の対象区間の処理に移るか(S311のNO)、フローが終了する(S311のYES)。
以上のフローが全ての発電機に対して実行される。実行対象の発電機がなくなった場合、運転状態補正部105の処理は終了する。
出力電力決定部106は、各発電機の単位期間ごとの出力電力の値を決定する出力電力決定処理を行う。具体的には、運転制約と、目的関数と、に基づく最適化問題を解くことにより、各発電機の出力電力の値を算出する。単位期間とは、運転計画の計画期間を複数の期間に区分する最小の期間を意味する。単位期間は、メッシュと称する。
出力電力決定部106が計算する最適化問題の制約条件には、運転状態補正部105により補正された発電機の運転状態に関する制約条件が含まれる。これにより、運転状態補正部105による補正が、作成される運転計画に反映される。
出力電力決定部106が各発電機の出力電力の値を決定する処理をフローチャートとともに説明する。図10は、出力電力決定部の出力電力決定処理のフローチャートを示す図である。
出力電力決定部106は、記憶部102から必要なデータ、つまり、発電機特性データ、運転制約データ、および電力需要データを取得する(S401)。取得された運転制約データには、運転状態補正部105により補正された発電機の運転状態が含まれる。つまり、解列のタイミングと、並列のタイミングと、起動カーブと、停止カーブと、が含まれるとする。
次に、出力電力決定部106は、目的関数設定処理を行う(S402)。そして、出力電力決定部106は、制約条件設定処理を行う(S403)。目的関数設定処理と、制約条件設定処理は、運転状態決定部104の処理と同様でよい。
最後に、出力電力決定部106は、目的関数設定処理(S402)で設定された目的関数と、制約条件設定処理(S403)で設定された運転制約と、に基づく最適化問題を求解する。当該処理も運転状態決定部104の処理と同様でよい。これにより、計画期間における、各発電機の出力電力の値が算出され、運転計画が作成される。
このようにして作成された運転計画は、一律の最低停止期間しか考慮されていない運転計画とは異なる。例えば、起動カーブにおける出力電力の値および時間が、停止期間に応じて発電機ごとに定められている場合でも、それらを考慮した運転計画が作成される。また、停止期間に係る制約が、4時間、8時間、14時間といった離散的な値でも、4時間から16時間といった連続的な時間でも対応することができる。これにより、運転計画を実態に即することができる。
以上のように、本実施形態によれば、複数の停止期間が考慮された運転計画を作成することが可能となる。また、運転状態決定部104が行う最適化問題の求解が、単一の停止期間に基づき実行される場合、複数の停止期間を考慮して最適化問題を求解するよりも求解までの時間が短くなる。これにより、実態に応じた運転計画の作成に掛かる時間を短くすることができる。
なお、上記の実施形態は一例であり、上記実施形態の構成要素の一部が外部の装置にあってもよい。例えば、上記の実施形態は運転状態決定部104を有していたが、運転状態決定部104が外部の装置にあってもよい。その場合、入力部101が、解列および並列のタイミングを外部の装置から取得し、運転状態補正部105に渡してもよい。
なお、計画作成装置が通信または電気信号によりデータの受け渡しを行うことができる複数の装置から構成されてもよい。例えば、運転状態決定部104と運転状態補正部105とを有する第1装置と、出力電力決定部106を有する第2装置とに分かれていてもよい。
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、運転状態決定部104による最適化問題の求解が行われる前に、運転計画に用いられるデータを調整する。例えば、本調整により、時間変動が加味されたデータが作成される。図2に示した発電機特性データのように、発電機の特性の値は、各発電機において一定とされている場合も多々ある。しかし、実際には、発電機周囲の環境等に応じて、発電機の特性の値が変化する場合もあり得る。ゆえに、運転計画の計画期間において一定とされた特性の値も、計画期間の単位期間ごとに調整したほうが、より実態に即した運転計画とすることができる。
また、例えば、既存の運転制約データに基づき、新たな運転制約データが作成される。最適化問題により求解を行わずとも、運転制約に基づき発電機の運転状態または出力電力が決まる場合もあり得る。そのため、既存の運転制約に基づき、発電機の運転状態または出力電力を算出し、算出された運転状態等に関する運転制約を新たに作成する。これにより、最適化問題において検討すべき組み合わせが少なくなり、運転計画が作成される時間を、第1の実施形態よりも短くすることができる。
図11は、第2の実施形態に係る運転計画作成装置を含む運転計画作成システムの概略構成の一例を示すブロック図である。図1に示された運転計画作成装置100システムには、さらに、環境データ管理装置600が含まれている。図11に示された第2の実施形態の運転計画作成装置100は、第1の実施形態に対し、データ調整部107をさらに備える。
第2の実施形態では、運転計画作成装置が、時間に応じて変動するデータを取得することがある。時間に応じて変動するデータを時間変動データと記載する。図11に示されるように、ここでは、運転計画作成装置100は、時間変動データとして、環境データ管理装置600から環境データを取得することを想定する。環境データは、例えば、温度、気圧、天候などの発電機周囲の環境に関するデータであり、これらの値は、時間に応じて変動する。そのため、環境データは、時間変動データに該当する。取得された環境データは、他のデータと同様、記憶部102に記憶される。
また、保守などにより運転制約などが変化する場合、変化する運転制約も時間変動データに該当する。例えば、発電機群において、通常時においては、起動状態の台数が決まっている場合であっても、保守等により、当該台数が変わる場合もあり得る。このような、時間によって異なる運転制約も時間変動データに該当する。なお、時間変動データに該当する運転制約を取得する場合は、環境データが取得されなくともよい。
第2の実施形態の運転計画作成装置100の構成要素について説明する。これまでの実施形態と同様な点は、説明を省略する。
データ調整部107は、運転状態決定部104が運転状態決定処理を実行する前に、当該各処理で使用されるデータに対する調整処理を実施する。図12は、第2の実施形態に係る運転計画作成装置の全体処理の概略フローチャートの一例を示す図である。第2の実施形態に係る運転計画作成装置の全体処理の概略フローチャートに比べて、S103の処理の前に、データ調整部107のデータ調整処理(S501)が追加されている。
図13は、データ調整部によるデータ調整処理のフローチャートを示す図である。なお本フローでは、入力データの正常確認(S602)の後に、発電機単位期間データ作成処理(S603)、発電機群単位期間データ作成処理(S604)、発電機出力固定処理(S605)、および運転制約補完処理(S606)の4つの処理が行われる場合について説明する。しかし、発電機単位期間データ作成処理(S603)、発電機群単位期間データ作成処理(S604)、発電機出力固定処理(S605)、および運転制約補完処理(S606)は、それぞれ独立した処理である。ゆえに、これら4つの処理が全て行われる必要はなく、少なくともいずれか1つの処理が実行されればよい。データ調整部107は、これらの4つの処理のうち、行われた処理に応じた機能を果たすことができる。また、これらの4つの処理が行われる順番は特に限られるものではない。これらの4つの処理が並行に行われてもよい。
また、各処理は、独立の構成要素が行ってもよい。例えば、データ調整部107が、発電機単位期間データを作成する発電機単位期間データ作成部と、発電機群単位期間データを作成する発電機群単位期間データ作成部と、発電機出力固定処理を行う事前決定部と、運転制約補完処理を行う補完部と、を備えていてもよい。あるいは、データ調整部107を、発電機群単位期間データ作成部、発電機群単位期間データ作成部、事前決定部、または補完部に置き換えてもよい。
データ調整部107は、調整に必要なデータを取得する(S601)。調整に必要なデータは、上記の4つの各処理によって異なる。上記の4つの各処理に必要なデータは、各処理にて述べる。
次に、データ調整部107は、取得したデータの整合性を確認する。取得したデータ内に異常値が含まれるなどにより、整合性がないと判断された場合は、フローは終了する。なお、エラーメッセージを、出力部103を介して、入出力装置200に出力してもよい。
次に、データ調整部107は、変動する発電機の特性を把握するために、単位期間ごとの発電機の特性を示すデータを作成する(S603)。単位期間ごとの発電機の特性を示すデータを、発電機単位期間データと記載する。発電機単位期間データを算出するために用いられるデータには、発電機特性データと、時間変動データと、が含まれる。
図14と図15に、発電機単位期間データを算出するために用いられるデータを示す。図14は、発電機単位期間データを算出するために用いられる発電機特性データの一例を示す図である。図14に示されたデータは、発電機出力と発電効率との関係を示すデータである。
図14の発電機出力と発電効率との関係を示すデータは、時間との関係は示されていない。しかし、発電効率は、時間に応じて変化する、大気温度などの外的要因により変化することが知られている。ゆえに、時間との関係は示されていない、図14の発電機特性データを用いて運転計画を作成した場合、運転計画が実態と乖離する恐れがある。
図15は、発電機単位期間データを算出するために用いられる時間変動データの一例を示す図である。図15に示された時間変動データは、単位期間あたりの大気温度を示す気象データである。上述のように、発電効率は、外的要因によって変化することが知られている。そこで、図15に示された大気温度の影響を考慮し、発電機出力における発電効率の値を調整する。例えば、複数の測定結果に基づき、最小二乗法などを用いて、発電効率の値を調整する。
そして、調整された発電効率の値に基づき、単位期間ごとの発電機の特性を算出する。図16は、発電機単位期間データの一例を示す図である。図16では、単位期間が30分である場合の、各単位期間における発電機の特性が示されている。メッシュ単位で変動する特性の一例として、発電機の燃料に関する特性を示す2次近似式に含まれる複数の係数、最大出力、最低出力等が示されている。出力効率が変化すると、出力電力が変化し、それに応じて燃料消費量なども変化する。なお、発電単価は、図2で示すように、発電機特性データに含まれる。このようにして、2次近似式、最大出力といった発電機の特性についても、時間に応じて変動する大気温度の影響を加味することができる。
このように、発電機単体データ作成の処理を行うことにより、メッシュごとの値の変動を示す発電機単位期間データが作成される。このようにして、データ調整部17により、運転計画の計画期間において値が一定である、発電機特性データまたは運転制約データの値が、運転計画の計画期間内の複数の区間ごとに調整される。そして、時間変動データを用いて運転計画を作成することにより、実態に沿った精緻な運転計画が作成可能となる。
次に、データ調整部107は、変動する発電機群の特性を把握するために、単位期間ごとの発電機群の特性を示すデータを作成する(S604)。単位期間ごとの発電機群の特性を示すデータを、発電機群単位期間データと記載する。発電機群単位期間データを算出するために用いられるデータには、発電機群データと、時間変動データと、が含まれる。
発電機群データは、発電機群における発電機データであり、発電機単体の特徴を示したものではなく、発電機群の特徴を示す。なお、1つの発電機群に複数の特徴が定められてもよい。
図17は、発電機群単位期間データを算出するために用いられるデータの例を示す図である。図17の上の表は、発電機群データの一例である。各発電機群の番号と、その発電機群に属する発電機の番号が示されている。図17の下の表は、発電機群データの他の一例である。通常時における、各発電機群の運転台数が示されている。
図18は、時間変動データの一例である。図17の下の表に示された、通常時における運転台数が、図18に示された変更値に、変更開始の時刻から変更終了の時刻までは変更されることが示されている。つまり、図18のデータは、時間変動データに該当する運転制約である。
図19から図21はそれぞれ、発電機群単位期間データの第1の例から第3の例を示す図である。図19の発電機群単位期間データは、図17の下の表で示された発電機群の運転台数のデータに対し、図18で示された時間変動の運転制約データを組み合わせることにより、作成される。図19の発電機群単位期間データは、メッシュごとに発電機群の運転台数が示されている。ゆえに、図19の発電機群単位期間データを運転制約として用いることにより、各メッシュにおける運転計画がより実態に即したものとなる。
また、図20は、メッシュごとの発電機群の出力範囲を示す。図21は、メッシュごとの発電機群の燃料消費量の範囲を示す。図20および21のデータも、発電機群に関するデータがメッシュごとに展開されたデータの例である。これらのデータについても、通常時のデータを、気温などの気象データ、燃料が輸送される時刻などの燃料在庫データといった時間変動データに基づいて補正されることにより、メッシュごとのデータとすることが可能である。
このように、発電機群データ作成の処理により、発電機群データと、時間変動データと、に基づき、メッシュごとのデータを含む発電機群単位期間データが作成される。そして、発電機群単位期間データに基づき、運転計画が作成されることにより、実態に沿った精緻な運転計画が可能となる。
次に、データ調整部107は、発電機出力固定処理を行う(S605)。発電機出力固定処理は、発電機特性データおよび運転制約データの少なくともいずれかに基づき、発電機の所定期間内の状態または出力電力を決定する処理である。
第1の実施形態では、運転状態決定部104が、全ての発電機に対して、解列および並列のタイミングを算出する。しかし、運転状態決定部104が行う組合せ最適化問題の求解は、非常に複雑である。ゆえに、最適化問題の対象を全ての発電機とすると、運転計画が作成されるまでの時間が長くなる。そこで、本実施形態では、運転状態決定部104の処理の前に、一部の発電機の解列および並列のタイミングを決定する。決定された一部の発電機の解列および並列のタイミングは、運転制約として運転状態決定部104に与えられる。これにより、運転状態決定部104の組合せ最適化問題において、計算範囲が限定されて、運転計画作成の高速化を可能とする。
発電機出力固定処理では、例えば、複数の運転制約により、特定の発電機に対する運転状態、出力電力などが指定された場合に、優先度などに基づき、複数の運転制約が合成される。
図22は、発電機出力固定処理について説明する図である。ある1つの発電機に対して、出力電力に関する運転制約である、第1運転制約および第2運転制約の2つの運転制約があるとする。上から1番目のグラフが第1運転制約を、上から2番目のグラフが第2運転制約を示す。また、グラフの縦軸が出力電力を、横軸が時間を示す。なお、上から1番目のグラフのほうが2番目のグラフよりも優先度が高いとする。また、グラフが横軸と一致している期間は、出力電力を0にするのではなく、その期間において運転制約が規定されていないことを意味する。ゆえに、図22に示されるメッシュ2およびメッシュ3の期間において、第1運転制約および第2運転制約の両方が課せられている。このような2つの運転制約がある場合、データ調整部107は、2つの運転制約を合成する。上から3番目のグラフが、合成された運転制約を示す。
メッシュ1の区間においては、第1運転制約は規定されていないことから、合成された運転制約のグラフと、第2運転制約のグラフとが一致する。メッシュ2およびメッシュ3の区間においては、優先度の高い第1運転制約が規定されていることから、合成された運転制約のグラフと、第1運転制約のグラフとが一致する。データ調整部107は、このようにして、2つの運転制約を、1つの新たな運転制約に置き換える。これにより、運転状態決定部104が取り扱う運転制約の数を減らすことができる。
図23は、合成された運転制約の一例を示す図である。発電機群単位期間データ同様、メッシュごとの運転制約が作成される。
また、例えば、ある発電機に対し、運転状態の期間に関する運転制約がある場合、当該運転制約は、出力電力を直接指定するものではないが、当該運転制約に基づき、出力電力が一意に定まる場合もあり得る。ゆえに、最適化問題によらずに、特定の発電機の運転制約に基づき、所定期間の特定の発電機の出力電力を定めることができる場合、データ調整部107は、特定の発電機出力電力を定めて、運転制約としてもよい。
図24は、運転状態の期間に関する運転制約に基づき算出された発電機の出力電力に関する運転制約の一例を示す図である。時刻3:00から時刻4:30までの期間において、発電機8は停止状態にするという運転制約があると仮定する。当該仮定において、データ調整部107は、運転状態補正部105が停止カーブおよび起動カーブを生成するのと同様に、メッシュごとに出力電力の値を決定する。これにより、図24のように、メッシュごとの出力電力に関する運転制約が作成される。
このように、発電機出力固定処理により、運転制約に基づき、出力電力に関する新たな運転制約が作成される。これにより、運転状態決定部104の組合せ最適化問題において、検討すべき組み合わせが少なくなり、運転計画が作成される時間を、第1の実施形態よりも短くすることができる。
次に、データ調整部107は、運転制約補完処理を行う(S606)。運転制約補完処理は、ある特定の発電機の停止期間に関する複数の運転制約に基づき、新たな停止期間に関する運転制約を算出する処理である。
図25は、運転制約補完処理について説明する図である。ある1つの発電機に対して、停止期間に関する運転制約が複数あると仮定する。データ調整部107は、当該複数の運転制約に基づき、図25(A)に示すように、停止期間Aと、停止期間Bと、停止期間Cと、を把握する。
次に、データ調整部107は、これらの停止期間と、発電機特性データとに基づき、複数の停止期間の間の運転状態を補完する。具体的には、発電機の起動に要する時間、停止に要する時間を考慮し、停止期間の間において発電機が起動可能かを判定する。例えば、図25(B)のように、停止期間Aと停止期間Bとの間は、起動可能と判断されるが、停止期間Bと停止期間Cとの間は、起動不可能と判断される。
そして、データ調整部107は、起動不可能と判定された間も停止期間とし、複数の停止期間を1つの停止期間に合成する。図25(C)では、停止期間Bと停止期間Cとの間が補完された停止期間となることにより、停止期間Bと停止期間Cを含める1つの停止期間Dが定められている。これにより、停止期間Bに関する運転制約と、停止期間Cに関する運転制約とが、停止期間Dに関する運転制約にまとめられる。
このように、データ調整部107は、発電機の起動に要する時間と、発電機の停止に要する時間と、に基づき、発電機の第1の停止期間と、発電機の第2の停止期間と、の間の期間を新たな停止期間とする。これにより、停止期間が長くなり、運転状態決定部104の組合せ最適化問題において、検討すべき組み合わせが少なくなり、運転計画が作成される時間を、第1の実施形態よりも短くすることができる。
なお、データ調整部107は、停止期間を導き出すことができる運転制約に基づき、停止期間を算出した上で、運転制約補完処理を行ってもよい。
以上が、データ調整部107によるデータ調整処理のフローチャートである。このようにして、データ調整部17の各処理において算出された結果は、運転状態決定部14に渡される。運転状態決定部14は、これらの処理結果にさらに基づき、発電機の運転状態を決定する。
以上のように、本実施形態によれば、データ調整部107により、運転状態決定部104が用いるデータが調整される。これにより、時間による変動が考慮されていなかったデータに対し、時間軸に沿った調整が行われ、実際の運用に沿った精緻な運転計画が作成可能となる。また、最適化問題において検討すべき組み合わせが少なくなり、運転計画が作成される時間を、第1の実施形態よりも短くすることができる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、運転状態決定部104による最適化問題の求解が行われる前に、
一部の運転制約に基づき、解列および並列のタイミングを算出する。この一部の運転制約に基づき算出された解列および並列のタイミングを、初期解と記載する。この初期解は、運転状態決定部104における組合せ最適化問題を緩和するために用いられる。
図26は、第3の実施形態に係る運転計画作成装置の概略構成の一例を示すブロック図である。第3の実施形態は、第2の実施形態に加えて、初期解生成部108を備える。なお、第1の実施形態に、初期解生成部108を加えてもよい。これまでの実施形態と同様の点は、説明を省略する。
初期解生成部108は、複数ある運転制約の一部に基づき、運転計画の初期解を算出する。最適化問題の求解は非常に複雑であるため、全てを運転状態決定部104に処理させる場合、処理負荷および作成までの時間が増加する。また、運転状態決定部104に求められる処理能力も高いものとなり、運転計画作成装置100の制作費用等にも影響する。そこで、本実施形態は、初期解生成部108も解列および並列のタイミングを算出する。ただし、初期解生成部108は、運転制約全てを考慮しないため、初期解生成部108の処理能力は、運転状態決定部104よりも低くてよい。また、求解手法も運転状態決定部104と異なってよい。このように、最適化問題の求解を複数の処理に分けることにより、運転状態決定部104の処理負荷も抑えられるため、運転状態決定部104の処理能力も抑えることができる。
なお、初期解の算出に用いられる運転制約の数は多い方が、運転状態決定部104が算出する解の精度を保つことができ、かつ、運転状態決定部104が解を求めるまでの時間を短くすることができる。
初期解の算出方法は、最適な組み合わせを求めるのではなく、メッシュごとに時間軸に対し順方向または逆方向に沿いながら解を算出してもよい。順方向に沿いながら算出した解と、逆方向に沿いながら算出した解と、の両方に基づき、算出してもよい。また、計画期間全体において解が算出されてもよいし、計画期間内の特定の期間に限定して、解が算出されてもよい。また、第2の実施形態の発電機群単位期間データのようなメッシュごとのデータを用いる場合は、初期解生成部108は、メッシュごとに初期解を算出する。
例えば、メッシュごとに与えられた電力量を運転制約とし、運転コストが最小となるように算出してもよい。また、決められた発電単価ごとに出力を積み上げ、運転制約を満足できない場合は、運転制約を満たすように一部の発電機の出力を変更し、運転制約を満たすまで出力を積み上げる方法でもよい。
また、初期解生成部108は、運転状態決定部104と同様に、定式化による数理計画法を用いてもよい。この場合は、運転状態決定部104と同様に、目的関数設定処理、制約条件設定処理、最適問題の求解を行えばよいため、説明は省略する。
図27は、第3の実施形態に係る運転計画作成装置の全体処理の概略フローチャートの一例を示す図である。初期解生成部108は、データ調整部107がデータ調整処理を実行した後(S501)に、初期解を生成する(S701)。第2の実施形態に係る運転計画作成装置100の全体処理の概略フローチャートに比べて、S501の後に、初期解生成部108の初期解の生成の処理(S701)が追加されている。また、第1の実施形態同様、運転状態決定部104が運転状態決定処理を実行する(S702)。ただし、本実施形態の運転状態決定処理は、初期解を用いる処理が含まれるため、第1の実施形態とは一部が異なる。以降の処理は、これまでの実施形態と同様である。
第3の実施形態における、運転状態決定部104の運転状態決定処理について説明する。第3の実施形態における運転状態決定部104は、さらに、運転状態パターン作成処理と、運転状態パターン削減処理と、を行う。
運転状態パターン作成処理と、運転状態パターン削減処理と、について、処理の流れと共に説明する。図28は、第3の実施形態における運転状態決定部の運転状態決定処理のフローチャートを示す図である。
運転状態決定部104は、これまでの実施形態と同様、必要なデータを取得した後(S201)、各発電機に対し、運転状態パターン作成処理を行う(S802)。運転状態パターン作成処理とは、所定の範囲における、発電機の運転状態の候補の組み合わせを示す運転状態パターンを作成することである。運転状態パターンは、解列と並列のタイミングを複数の所定のタイミング候補から選択することにより作成される。
図29は、運転状態パターンを説明する図である。解列と並列のタイミングの候補は、メッシュごとに定められているとする。図29に、運転状態パターン1から運転状態パターン3が示されている。このように、所定範囲において、運転状態の候補、つまり起動状態と停止状態、を組み合わせて、運転状態パターンが複数作成される。
なお、第1の実施形態同様、発電機ごとに停止期間の運転制約が定められている。また、起動状態の運転制約として、最低起動時間が定められており、起動状態の時間も、最低起動時間以上とする。
最低起動時間は、起動カーブの所要時間と、起動カーブ直後の出力を停止カーブの開始起点とした際の停止カーブの所要時間と、の和で表される。つまり、発電機の並列から、発電機を安定稼働させることなく、最も早く解列させることができるまでの時間を意味する。なお、起動カーブは、これまでの実施形態同様、停止期間に応じて、所要時間が異なってもよい。あるいは、停止期間によらずに、特定の起動カーブおよび停止カーブにより最低起動時間が定められてもよい。また、最低起動時間の算出に用いられる起動カーブおよび停止カーブは、試運転カーブと呼ばれる通常の起動カーブおよび停止カーブとは異なるものでもよい。
なお、運転状態の作成範囲は、計画期間全体でもよいし、計画期間の一部でもよい。計画期間の一部は、計画期間を特定の条件に基づき区切ることにより作成された期間でもよい。例えば、1日を運転状態の作成範囲としてもよい。
次に、運転状態決定部104は、初期解を使用するか使用しないかを選択する(S802)。初期解を使用する場合(S802のYES)は、運転状態パターン削減処理を実施するかを判定する(S803)。運転状態パターン削減処理を実施する場合(S803のYES)は、初期解生成部108から作成された初期解に基づき、運転状態パターンを削減する(S804)。
運転状態パターンの削減処理とは、並列および解列のタイミングの初期解に基づき、発電機の運転状態が変化するメッシュを限定する処理である。初期解が一定の精度を有すると仮定すると、初期解のタイミングの付近に正解のタイミングがあると考えられる。ゆえに、運転状態パターンのうち、特定の条件に合致しないものを削除し、運転状態パターンを減らすことができる。
例えば、図29の一番下に示すように、初期解により、解列のタイミングは範囲Aと判明し、並列のタイミングは範囲Bと判明したとする。その場合、運転状態パターン1は、範囲Aにおいて解列されていないため、削除される。また、運転状態パターン3は、範囲Bにおいて並列されていないため、削除される。図29で示された運転状態パターン2は、範囲Aにおいて解列しており、かつ範囲Bにおいて並列しているため、削除されずに残る。運転状態決定部104は、このようにして、初期解に基づき、算出された複数の前記運転状態パターンから、条件に合致する前記運転状態パターンを取得する。
なお、図29で範囲Aと範囲Bで示した、解列の範囲および並列の範囲の幅は、任意に定めてよい。範囲の幅は、発電機特性データまたは運転制約データに基づき、算出されてもよい。
なお、以前に作成された運転計画における解列および並列のタイミングを初期解としてもよい。つまり、以前に作成された運転計画における解列および並列のタイミングに基づき、運転状態パターン削減処理が行われてもよい。
このように、運転状態パターンを減らすことにより、運転状態決定部104の運転状態決定処理にかかる時間を短くすることができる。
初期解を使用しない場合(S802のNO)、運転状態パターン削減処理を実施しない場合(S803のNO)、および運転状態パターン削減処理を実施(S804)した後は、運転状態決定部104が目的関数設定処理を実行する(S202)。取得された条件に合致する前記運転状態パターンも、目的関数に含まれることになる。以降の処理は、これまでの実施形態と同様のため省略する。こうして、運転状態決定部104は、条件に合致する運転状態パターンにさらに基づき、発電機の運転状態を決定する。
以上のように、本実施形態によれば、初期生成部108が、少なくとも一部の運転制約を満たした初期解を求める。そして、運転状態決定部104は、初期解に基づき、運転状態パターンを削減する。これにより、運転状態決定部104により求解される最適化問題の範囲を限定することができる。このため、運転状態決定部104の処理に掛かる時間が短くなり、運用に沿った時間内で解の算出が可能となる。
本発明における全ての実施形態における各処理は、ソフトウェア(プログラム)により実現することが可能である。ゆえに、上記に説明した各実施形態は、例えば、汎用のコンピュータ装置を基本ハードウェアとして用い、コンピュータ装置に搭載された中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)等のプロセッサにプログラムを実行させることにより、実現することが可能である。
図30は、本発明の一実施形態に係る運転計画作成装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。運転計画作成装置100は、プロセッサ701と、主記憶装置702と、補助記憶装置703と、ネットワークインタフェース704と、デバイスインタフェース705とを備え、これらがバス706を介して接続されたコンピュータ装置700として実現できる。また、運転計画作成装置100は、入出力装置200として、汎用の入力装置および出力装置を備えていてもよい。
本実施形態における運転計画作成装置100は、各装置で実行されるプログラムをコンピュータ装置700にあらかじめインストールすることで実現してもよいし、プログラムをCD−ROMなどの記憶媒体に記憶して、あるいはネットワークを介して配布して、コンピュータ装置700に適宜インストールすることで実現してもよい。
なお、図30では、コンピュータ装置は、各構成要素を1つ備えているが、同じ構成要素を複数備えていてもよい。また、図30では、1台のコンピュータ装置が示されているが、ソフトウェアが複数のコンピュータ装置にインストールされてもよい。当該複数のコンピュータ装置それぞれがソフトウェアの異なる一部の処理を実行することにより、処理結果を生成してもよい。つまり、運転計画作成装置100がシステムとして構成されていてもよい。
プロセッサ701は、コンピュータの制御装置および演算装置を含む電子回路である。プロセッサ701は、コンピュータ装置700の内部構成の各装置などから入力されたデータやプログラムに基づいて演算処理を行い、演算結果や制御信号を各装置等に出力する。具体的には、プロセッサ701は、コンピュータ装置700のOS(オペレーティングシステム)や、アプリケーションなどを実行し、コンピュータ装置700を構成する各装置を制御する。
プロセッサ701は、上記の処理を行うことができれば特に限られるものではない。プロセッサ701は、例えば、汎用目的プロセッサ、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、コントローラ、マイクロコントローラ、運転状態マシンなどでもよい。また、プロセッサ701は、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラム可能論理回路(PLD)などでもよい。また、プロセッサ701は、複数の処理装置から構成されていてもよい。例えば、DSPおよびマイクロプロセッサの組み合わせでもよいし、DSPコアと協働する1つ以上のマイクロプロセッサでもよい。
主記憶装置702は、プロセッサ701が実行する命令および各種データ等を記憶する記憶装置であり、主記憶装置702に記憶された情報がプロセッサ701により直接読み出される。補助記憶装置703は、主記憶装置702以外の記憶装置である。なお、記憶装置は、電子情報を格納可能な任意の電子部品を意味するものとする。主記憶装置702として、RAM、DRAM、SRAM等の一時的な情報の保存に用いられる揮発性メモリが主に用いられるが、本発明の実施形態において、主記憶装置702がこれらの揮発性メモリに限られるわけではない。主記憶装置702および補助記憶装置703として用いられる記憶装置は、揮発性メモリでもよいし、不揮発性メモリでもよい。不揮発性メモリは、プログラム可能読み出し専用メモリ(PROM)、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、フラッシュメモリ、MRAM等がある。また、補助記憶装置703として磁気または光学のデータストレージが用いられてもよい。データストレージとしては、ハードディスク等の磁気ディスク、DVD等の光ディスク、USB等のフラッシュメモリ、および磁気テープなどが用いられてもよい。
なお、プロセッサ701が主記憶装置702または補助記憶装置703に対して、直接または間接的に、情報を読み出しまたは書き込みまたはこれらの両方を行うならば、記憶装置はプロセッサと電気的に通信すると言うことができる。なお、主記憶装置702は、プロセッサに統合されていてもよい。この場合も、主記憶装置702は、プロセッサと電気的に通信していると言うことができる。
ネットワークインタフェース704は、無線または有線により、通信ネットワーク800に接続するためのインタフェースである。ネットワークインタフェース704は、既存の通信規格に適合したものを用いればよい。ネットワークインタフェース704により、通信ネットワーク800を介して通信接続された外部装置900に出力結果などが送信されてもよい。外部装置900は、外部記憶媒体でもよいし、表示装置でもよいし、データベースなどのストレージでもよい。
デバイスインタフェース705は、出力結果などを記録する外部記憶媒体と接続するUSBなどのインタフェースである。外部記憶媒体は、HDD、CD−R、CD−RW、DVD−RAM、DVD−R、BD−ROM、BD−R、BD−RE、SAN(Storage area network)、DAT等の任意の記録媒体でよい。デバイスインタフェース705を介して、ストレージなどと接続されていてもよい。
また、コンピュータ装置700の一部または全部、つまり運転計画作成装置100の一部または全部は、プロセッサ701などを実装している半導体集積回路などの専用の電子回路(すなわちハードウェア)にて構成されてもよい。専用のハードウェアは、RAM、ROMなどの記憶装置との組み合わせで構成されてもよい。
なお、図30では、1台のコンピュータ装置が示されているが、ソフトウェアが複数のコンピュータ装置にインストールされてもよい。当該複数のコンピュータ装置それぞれがソフトウェアの異なる一部の処理を実行することにより、処理結果を算出してもよい。
上記に、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。