JP6684091B2 - 扉 - Google Patents
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Description
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、建物の開口部の開閉をスライド移動することにより行う扉体と、後述する全開状態において扉体を収納する戸袋と、を備える扉に関するものである。
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
まず、実施の形態1に係る扉について説明する。この実施の形態1は、延焼抑制手段を、後述する衝突防止部材及び後述するガイドローラの各々における見込み方向(前後方向)の側面の少なくとも一部を覆うように形成した形態である。
最初に、実施の形態1に係る扉の構成について説明する。以下の説明では、図1のX方向を扉の左右方向又は幅方向(−X方向を扉の左方向、+X方向を扉の右方向)、図5のY方向を扉の前後方向(−Y方向を扉の前方向(部屋の室内側の方向)、+Y方向を扉の後方向(部屋の室外側の方向))、図1のZ方向を扉の上下方向(+Z方向を扉の上方向、−Z方向を扉の下方向)と称する。
まず、枠体20の構成について説明する。この枠体20は、図1から図6に示すように、開口部2の周縁に設置されるものであり、戸先縦枠21、戸尻縦枠22、上枠23、巾木24、前側方立25、後側方立26、前側中桟27、後側中桟28、前上側戸袋ボード29、前下側戸袋ボード30、後上側戸袋ボード31、後下側戸袋ボード32、及びガイドローラ33(可燃部材)を備える。
戸先縦枠21は、開口部2の戸先側の周縁に公知の方法で固定される長尺状の枠材であり、上下方向に沿って取り付けられている。また、この戸先縦枠21には、錠前の受金具(図示省略)が設けられている。
戸尻縦枠22は、開口部2の戸尻側の周縁に公知の方法で固定される長尺状の枠材であり、上下方向に沿って取り付けられている。
上枠23は、開口部2の上方の周縁に公知の方法で固定される枠材であって、戸先縦枠21から戸尻縦枠22に至る長さの長尺状の枠材であり、これら戸先縦枠21と戸尻縦枠22の相互間において左右方向に沿って取り付けられている。図4及び図5に示すように、この上枠23は、上枠ベース23a、上枠上側片23b、上枠前側片23c、及び点検カバー23dを備えている(ただし、図4では、点検カバー23dを省略して示す)。
図1から図3に示すように、巾木24は、開口部2の下方の周縁(具体的には、建物の躯体1の一部である床面)に公知の方法で固定される枠材であって、前側方立25及び後側方立26から戸尻縦枠22に至る長さの長尺状の枠材であり、これら前側方立25及び後側方立26と戸尻縦枠22の相互間において左右方向に沿って取り付けられている。
前側方立25は、全閉位置に位置させた扉体50の戸尻側端部の前方に配置される枠材であって、上枠23から巾木24に至る長さの長尺状の枠材であり、これら上枠23と巾木24の相互間において上下方向に沿って配置される枠材である。この前側方立25は、その上側の端部において上枠23に対してネジ等の固定具を介して固定されると共に、その下側の端部において巾木24に対してネジ等の固定具を介して固定されている。
後側方立26は、全閉位置に位置させた扉体50の戸尻側端部の後方に配置される枠材であって、上枠23から巾木24に至る長さの長尺状の枠材であり、これら上枠23と巾木24の相互間において上下方向に沿って配置される枠材である。この後側方立26は、その上側の端部において上枠23に対してネジ等の固定具を介して固定されると共に、その下側の端部において巾木24に対してネジ等の固定具を介して固定されている。
前側中桟27は、前側方立25と戸尻縦枠22の相互間に左右方向に沿って配置される枠材であって、前側方立25から戸尻縦枠22に至る長さの長尺状の枠材である。この前側中桟27は、その戸先側の端部において前側方立25に対してネジ等の固定具を介して固定されると共に、その戸尻側の端部において戸尻縦枠22に対してネジ等の固定具を介して固定されている。
後側中桟28は、後側方立26と戸尻縦枠22の相互間に左右方向に沿って配置される枠材であって、後側方立26から戸尻縦枠22に至る長さの長尺状の枠材である。この後側中桟28は、その戸先側の端部において後側方立26に対してネジ等の固定具を介して固定されると共に、その戸尻側の端部において戸尻縦枠22に対してネジ等の固定具を介して固定されている。
前上側戸袋ボード29は、戸尻縦枠22、上枠23、前側方立25、及び前側中桟27によって囲繞される空間に配置される板状体である。この前上側戸袋ボード29は、その周縁部において、これら戸尻縦枠22、上枠23、前側方立25、及び前側中桟27に対してネジ等の固定具を介して固定されている。
前下側戸袋ボード30は、戸尻縦枠22、前側中桟27、前側方立25、及び巾木24によって囲繞される空間に配置される板状体である。この前下側戸袋ボード30は、その周縁部において、これら戸尻縦枠22、前側中桟27、前側方立25、及び巾木24に対してネジ等の固定具を介して固定されている。
後上側戸袋ボード31は、戸尻縦枠22、上枠23、後側方立26、及び後側中桟28によって囲繞される空間に配置される板状体である。この後上側戸袋ボード31は、その周縁部において、これら戸尻縦枠22、上枠23、後側方立26、及び後側中桟28に対してネジ等の固定具を介して固定されている。
後下側戸袋ボード32は、戸尻縦枠22、後側中桟28、後側方立26、及び巾木24によって囲繞される空間に配置される板状体である。この後下側戸袋ボード32は、その周縁部において、これら戸尻縦枠22、後側中桟28、後側方立26、及び巾木24に対してネジ等の固定具を介して固定されている。
ガイドローラ33は、扉体50が見込み方向(前後方向)に振れることを防止するための振れ防止手段である。このガイドローラ33は、全閉状態において扉体50と戸袋34との境界位置又はその近傍位置に設けられており、具体的には、図5、図7に示すように、開口部2の下端部において、当該ガイドローラ33の左右方向の略中心の位置が前側方立25及び後側方立26の戸先側の端面の近傍位置となるように設けられている。また、このガイドローラ33は、支柱33aと、ローラ33bとを備えている。ここで、支柱33aは、ローラ33bを回転させるための回転軸であり、巾木24の戸先側の端部に固定されている。また、ローラ33bは、扉体50と当接する当接手段である。このローラ33bは、例えば公知の樹脂製のローラ等を用いて構成された可燃部材であり、扉体50の下端に設けられた後述するガイドレール57の内側に配置され、支柱33aに対して回転可能に固定されている。このような構成により、扉体50を左右方向にスライド移動させた場合において、扉体50(特に、扉体50の下方部分)が見込み方向(前後方向)に所定量以上振れようとした場合には、ローラ33bがガイドレール57と当接するので、扉体50の振れが所定量以上大きくなることを防止できる。
次に、扉体50の構成について説明する。図5から図9に示すように、扉体50は、建物の開口部2の開閉をスライド移動することにより行うものであり、扉体本体60、戸先カバー51、戸尻カバー52、戸先戸車53、戸尻戸車54、制動装置55、開き防止材56、ガイドレール57、及び衝突防止部材58、59(可燃部材)を備えて構成されている。なお、扉体50の具体的な構成については任意であるが、例えば、扉体50に窓部を設けてもよい。
扉体本体60は、扉体50の基本構造体であり、図7から図10に示すように、上フレーム61、下フレーム62、複数の縦フレーム63〜66、前側化粧鋼板67、後側化粧鋼板68、錠前(図示省略)、及び取手69を備えて構成されている。
上フレーム61は、扉体本体60の内部に配置される内部材であって、図10に示すように、扉体本体60の左右方向の長さに略対応する長さの長尺状の枠材である。この上フレーム61は、例えば、左右方向に直交する方向の断面形状が下向きコ字状の部材で形成されており、扉体本体60の上端部において左右方向に沿って配置されている。また、この上フレーム61は任意の方法や材質で製造することができるが、耐火性を有する材質で製造することが好ましく、例えば、鋼材(一例として、溶融亜鉛メッキ鋼板)、ステンレス鋼材等を曲げ加工することによって製造することができる(なお、下フレーム62の製造方法、及び縦フレーム63〜66の製造方法についても同様とする)。
下フレーム62は、扉体本体60の内部に配置される内部材であって、図10に示すように、扉体本体60の左右方向の長さに略対応する長さの長尺状の枠材である。この下フレーム62は、例えば、左右方向に直交する方向の断面形状が上向きコ字状の部材として形成されており、扉体本体60の下端部において左右方向に沿って配置されている。
複数の縦フレーム63〜66は、扉体本体60の内部に配置される内部材である。これら複数の縦フレーム63〜66は、図10に示すように、相互に間隔を隔てた状態で、各々が上下方向に沿って配置されている(なお、複数の縦フレーム63〜66は、相互に当接するように配置されてもよい)。各縦フレーム63〜66は、例えば、横断面形状がコ字状又は逆コ字状の部材として形成されている。以下では、複数の縦フレーム63〜66のうち、最も戸先側に配置される縦フレーム63を「戸先縦フレーム63」と称し、最も戸尻側に配置される縦フレーム64を「戸尻縦フレーム64」と称し、これら戸先縦フレーム63及び戸尻縦フレーム64以外の縦フレーム65、66を「中間縦フレーム65、66」と称する。このうち、戸先縦フレーム63は、扉体本体60の上下方向の長さに略対応する長さの長尺状の枠材であって、横断面形状が逆コ字状の部材であり、後側化粧鋼板68の後述する化粧戸先片68dの裏面に対して溶接によって固定されている。戸尻縦フレーム64は、扉体本体60の上下方向の長さに略対応する長さの長尺状の枠材であって、横断面形状がコ字状の部材であり、前側化粧鋼板67の後述する化粧戸尻片67dの裏面に固定された固定材である。中間縦フレーム65、66は、扉体本体60の上下方向の長さより短い長さ(中間縦フレーム65、66の上端が上フレーム61の下面近傍に位置し、中間縦フレーム65、66の下端が下フレーム62の上面近傍に位置する長さ)の長尺状の枠材であって、横断面形状がコ字状の部材であり、前側化粧鋼板67及び後側化粧鋼板68に対して両面テープ(図示省略)によって固定されている。なお、扉体本体60の具体的な構成については任意であるが、例えば、扉体本体60の内部に配置される内部材は、扉体本体60の強度や後述する接合構造に問題がない場合には、縦フレーム63〜66の全部又は一部を省略してもよい。あるいは、縦フレーム63〜66の全部又は一部に代えて、又は縦フレーム63〜66の全部又は一部に加えて、断熱材やコア材を用いてもよい。
前側化粧鋼板67は、上フレーム61、下フレーム62、及び複数の縦フレーム63〜66を前側から覆う化粧鋼板である。この前側化粧鋼板67は、図10に示すように、上下方向に沿って配置された化粧主片67a、この化粧主片67aの上端から後方に至るように水平方向に沿って配置された化粧上片67b、化粧主片67aの下端から後方に至るように水平方向に沿って配置された化粧下片67c、及び化粧主片67aの戸尻側の側端から後方に至るように上下方向に沿って配置された化粧戸尻片67dを備えて構成されている。また、この前側化粧鋼板67は任意の方法や材質で製造することができ、例えば、矩形状の鋼板の上下の端部と戸尻側の端部とを曲げ加工することで、前側化粧鋼板67を製造することができる。
後側化粧鋼板68は、上フレーム61、下フレーム62、及び複数の縦フレーム63〜66を後側から覆う化粧鋼板である。この後側化粧鋼板68は、図10に示すように、上下方向に沿って配置された化粧主片68a、この化粧主片68aの上端から前方に至るように水平方向に沿って配置された化粧上片68b、化粧主片68aの下端から前方に至るように水平方向に沿って配置された化粧下片68c、化粧主片68aの戸先側の側端から前方に至るように上下方向に沿って配置された化粧戸先片68d、及び化粧主片68aの戸尻側の側端から前方に至るように上下方向に沿って配置された化粧戸尻片68eを備えて構成されている。また、この後側化粧鋼板68は任意の方法や材質で製造することができ、例えば、矩形状の鋼板の上下左右の端部を曲げ加工することで、後側化粧鋼板68を製造することができる。
錠前は、扉体本体60を全閉位置に固定するための固定手段であり、例えば、公知の引き戸用の錠前装置等を用いて構成されている。
取手69は、扉体本体60をユーザが操作するために把持する把持手段であり、図1、図2、図7に示すように、扉体本体60の前面及び後面における戸先寄りの位置に固定されている。
戸先カバー51は、扉体本体60の戸先側に設けられるカバーである。図6に示すように、この戸先カバー51は、左右方向に直交する方向の断面形状が右向きコ字状となるように形成された部材であって、扉体本体60の高さに略対応する高さの長尺状の部材である。また、この戸先カバー51の内部における見込方向の長さ(厚み)は、扉体本体60の見込方向の長さ(厚み)に略対応しており、扉体本体60の戸先側の端部を内部に収容した状態で、ネジ等の固定部(図示省略)によって扉体本体60の戸先側に固定されている。また、図6に示すように、扉体本体60の戸先側の端部と戸先カバー51との相互間には、スペーサ51aが設けられている。このスペーサ51aは、戸先カバー51によって扉体本体60の戸先側の端部を収容した際に、当該戸先側の端部の一部が突出していることで生じる隙間を埋めるための部材であり、戸先カバー51の戸先側の側面が錠前の戸先側の側面と面一状になるように形成されている。
戸尻カバー52は、扉体本体60の戸尻側に設けられるカバーである。図6に示すように、この戸尻カバー52は、左右方向に直交する方向の断面形状が左向きコ字状となるように形成された部材であって、扉体本体60の高さに略対応する高さの長尺状の部材である。また、この戸尻カバー52の内部における見込方向の長さ(厚み)は、扉体本体60の見込方向の長さ(厚み)より長くなっており、扉体本体60の戸尻側の端部を内部に収容した状態で、ネジ等の固定部(図示省略)によって扉体本体60の戸尻側に固定されている。
戸先戸車53は、扉体本体60をスライド移動可能とするための移動手段である。この戸先戸車53は、図7に示すように、扉体本体60の上面における戸先寄りの位置に固定されており、ベース片53aと、車輪53bとを備えている。このうち、ベース片53aは、左右方向に直交する方向の断面形状が略L状となるように形成された部材である。このベース片53aは、扉体本体60の上面に固定されており、具体的には、図10(b)に示すように、前側化粧鋼板67の化粧上片67bと後側化粧鋼板68の化粧上片68bに形成された切り欠き67f、68fであって、ベース片53aに対応するように位置する切り欠き67f、68fにネジ等の固定具を挿通し、当該挿通した固定具によってベース片53aが上フレーム61に固定されている。車輪53bは、ベース片53aの前側の側面に回転可能に固定されている。
戸尻戸車54は、扉体本体60をスライド移動可能とするための移動手段である。この戸尻戸車54は、図5に示すように、扉体本体60の上面における戸尻寄りの位置に固定されており、ベース片54aと、車輪54bとを備えている。このうち、ベース片54aは、左右方向に直交する方向の断面形状が略L状に形成された部材である。このベース片54aは、扉体本体60の上面に固定されており、具体的には、図10(b)に示すように、前側化粧鋼板67の化粧上片67bと後側化粧鋼板68の化粧上片68bに形成された切り欠き67f、68fであって、ベース片54aに対応するように位置する切り欠き67f、68fにネジ等の固定具を挿通し、当該挿通した固定具によってベース片54aが上フレーム61に固定されている。車輪54bは、ベース片54aの前側の側面に回転可能に固定されている。ここで、戸先戸車53及び戸尻戸車54の設置方法については、実施の形態1では、図5に示すように、扉体本体60がレール23eに吊り下げ支持された状態となるように、戸先戸車53及び戸尻戸車54をレール23eに載置する。これにより、扉体本体60をユーザが左右方向に押し引きすることで、レール23eの上で戸先戸車53及び戸尻戸車54が回転することにより、扉体本体60を左右方向に沿ってスライド移動させることが可能になる。
制動装置55は、扉体本体60を制動するための制動手段である。図7に示すように、この制動装置55は、扉体本体60の上面における戸先寄りの位置に固定されており、ギア(例えばピニオンギア等。図示省略)と、当該ギアの回転に抵抗を加える抵抗手段(図示省略)を備えて構成されている。このギアは、上述したラック23fに噛み合っており、扉体本体60が自閉する際、ギアの回転に抵抗手段によって抵抗が加えられることで、扉体本体60が制動される。なお、実施の形態1においては、ラック23fの取付位置を、点検カバー23dを開放した状態で点検可能となる戸先寄りの位置のみに設けていることから、制動装置55についても、扉体本体60の上面における戸先寄りの位置のみに設けているが、例えば、このような制約を無視できる場合には、ラック23f及び制動装置55を、扉体本体60の上面における戸尻寄りの位置に設けてもよい。
開き防止材56は、前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68が見込み方向(前後方向)に開くことを防止するための開き防止手段である。図5に示すように、この開き防止材56は、左右方向に直交する方向の断面形状が下向きコ字状にて形成された部材であり、これら前側化粧鋼板67の化粧下片67cと後側化粧鋼板68の化粧下片68cとの相互間において水平方向に沿って設置されている。具体的には、開き防止材56は、ガイドレール57を外側から覆うと共に、開き防止材56の下端部がガイドレール57の下端部よりも下方に位置するように、化粧主片67a、68a及び下フレーム62によって開き防止材56と当接配置されており、これら前側化粧鋼板67及び後側化粧鋼板68の各々と公知の方法によって固定されている。このような構成により、前側化粧鋼板67の化粧下片67cと後側化粧鋼板68の化粧下片68cが火災の熱によって加熱された場合であっても、これら前側化粧鋼板67の化粧下片67cと後側化粧鋼板68の化粧下片68cが変形等して相互に離れることを防止できる。
ガイドレール57は、ガイドローラ33をガイドするためのガイド手段である。図5に示すように、このガイドレール57は、左右方向に直交する方向の断面形状が下向きコ字状にて形成された部材であり、扉体50の下端部において前側化粧鋼板67の下端と後側化粧鋼板68の下端との相互間に水平方向に沿って設置されている。具体的には、図5に示すように、ガイドレール57は、ローラ33bを外側から覆うように配置され、開き防止材56に形成された取付孔(図示省略)を介して下フレーム62に対してネジ等の固定具により固定されている。
衝突防止部材58、59は、扉体50をスライド移動させた場合に当該扉体50と戸袋34の戸尻側の端部(具体的には、戸尻縦枠22)とが衝突することを防止するための衝突防止手段である。図1から図3、図6から図9に示すように、これら衝突防止部材58、59は、左右方向に直交する方向の断面形状が円環状にて形成された伸縮性を有する部材であり、全閉状態において扉体50と戸袋34との境界位置又はその近傍位置に設置されている。具体的には、衝突防止部材58は、扉体50の戸尻側の端部の上方側(図8では扉体50の上端部)に配置されており、戸尻カバー52に形成された取付孔(図示省略)を介して戸尻縦フレーム64に対して溶接ナット等の固定具により固定されている。また、衝突防止部材59は、扉体50の戸尻側の端部の下方側(図8では扉体50の下フレーム62の近傍位置)に配置されており、後述する第3延焼抑制部材120の固定片125に形成された取付孔125a及び戸尻カバー52に形成された取付孔(図示省略)を介して戸尻縦フレーム64に対して溶接ナット等の固定具により固定されている。なお、これら衝突防止部材58、59は、実施の形態1では、扉用の緩衝ゴム、衝撃吸収スプリング等の扉体50と戸袋34の戸尻側の端部との衝突時のエネルギーを吸収することが可能な材質(例えば、合成ゴム)で製造されている。
次に、扉10の防火構造について説明する。この扉10は、全閉状態において扉体50における部屋の室外側又は室内側のいずれか一方で火災が発生した場合に、扉10を介して当該火災が扉体50における部屋の室外側又は室内側のいずれか他方に延焼することを防止するための防火構造を備えている。また、この防火構造は、ガイドローラ33の防火構造と、衝突防止部材59の防火構造とを備えている。以下では、これら各防火構造について順次説明する。
最初に、ガイドローラ33の防火構造について説明する。図1から図3、図7から図10に示すように、全閉状態において扉体50における部屋の室外側又は室内側のいずれか一方で火災が発生した場合に、可燃部材であるガイドローラ33を介して(火災の熱によってガイドローラ33が加熱されて燃焼した場合に発する炎を介して)、当該火災が扉体50における部屋の室外側又は室内側のいずれか他方に延焼することを防止するための防火構造として、第1延焼抑制部材100(第1延焼抑制手段)と、第2延焼抑制部材110(第2延焼抑制手段)とが設けられている。以下では、ガイドローラ33の防火構造について説明する。
第1延焼抑制部材100は、全閉状態において上記火災が発生した場合において、ガイドローラ33が当該火災の熱によって燃焼した場合に当該ガイドローラ33を介して当該火災が延焼することを抑制するための延焼抑制手段である。図8から図10に示すように、第1延焼抑制部材100は、ガイドレール57の戸尻側の端部において、全閉状態においてガイドローラ33の近傍領域を覆うように配置されている。ここで、「ガイドローラ33の近傍領域」とは、ガイドローラ33に近接する領域のうち、全閉状態において扉体50の構成要素(例えば、ガイドレール57や開き防止材56等)によって覆われない領域を意味する。この「ガイドローラ33の近傍領域」は、実施の形態1では、ガイドローラ33が上記火災の熱で燃焼した場合に、当該燃焼により生じた炎が届く可能性がある領域(具体的には、扉体本体60の戸尻側の端部から戸袋34の戸尻側の端部に向けて所定距離離れた位置に至る領域)として説明するが、これに限られず、例えば当該炎が届く可能性がある領域よりも広い領域であってもよい。また、この第1延焼抑制部材100は、左右方向に直交する方向の断面形状が下方に向けて突出する下向きコ字状に形成されており、具体的には、図9に示すように、第1前側延焼抑制片101と、第1後側延焼抑制片102と、第1上側延焼抑制片103とを備えている。
第2延焼抑制部材110は、全閉状態において上記火災が発生した場合において、ガイドローラ33が当該火災の熱によって燃焼した場合に当該ガイドローラ33を介して当該火災が延焼することを抑制するための延焼抑制手段である。ここで、第2延焼抑制部材110を設けた理由は、以下の通りである。すなわち、上述したように、第1延焼抑制部材100が上記既存のガイドレール57と一体に形成された場合には、第1延焼抑制部材100と部屋の床面との相互間には隙間が形成されるが、この隙間が開き防止材56と部屋の床面との隙間に比べて大きな隙間となる。このため、ガイドローラ33が上記火災の熱で燃焼した場合に、当該燃焼により生じた炎が上記隙間を介して扉体50における部屋の室外側又は室内側に燃え移る可能性がある。そこで、このような問題を解消するために、第2延焼抑制部材110を設けている。なお、第1延焼抑制部材100を省略して第2延焼抑制部材110のみを設けることも考えられる。しかしながら、この場合には、扉体50の取り付けの際に扉体50を吊り込む作業を行う場合に、ガイドレール57におけるガイドローラ33の挿入部分が見えづらくなるため、当該作業を正確且つ迅速に行うことが困難になることから、実施の形態1では、第1延焼抑制部材100及び第2延焼抑制部材110の両方を設けている。
次に、衝突防止部材59の防火構造について説明する。図1から図3、図6から図9に示すように、全閉状態において扉体50における部屋の室外側又は室内側のいずれか一方で火災が発生した場合に、衝突防止部材59を介して(火災の熱によって衝突防止部材59が加熱されて燃焼した場合に発する炎を介して)、当該火災が扉体50における部屋の室外側又は室内側のいずれか他方に延焼することを防止するための防火構造として、第3延焼抑制部材120が設けられている。以下では、衝突防止部材59の防火構造について説明する。
第3延焼抑制部材120は、全閉状態において上記火災が発生した場合において、衝突防止部材59が当該火災の熱によって燃焼した場合に当該衝突防止部材59を介して当該火災が延焼することを抑制するための延焼抑制手段である。ここで、第3延焼抑制部材120を設けた理由は、以下の通りである。すなわち、図6に示すように、全閉状態において扉体50本体と戸袋34との相互間には隙間が形成されるので、衝突防止部材59が上記火災の熱で燃焼した場合に、当該燃焼により生じた炎が上記隙間を介して扉体50における部屋の室外側又は室内側に燃え移る可能性がある。特に、扉体50における部屋の室内側においては、煙返し材等の炎の燃え移りを抑制できる部材が設けられていないので、当該炎が扉体50における部屋の室内側に燃え移る可能性が高くなる。そこで、このような問題を解消するために、第3延焼抑制部材120を設けている。図1から図3、図6から図9に示すように、第3延焼抑制部材120は、扉体50の戸尻側の端部(具体的には、扉体本体60の戸尻側の端部)において、全閉状態において衝突防止部材59及び衝突防止部材59の近傍領域を覆うように配置されている。ここで、「衝突防止部材59の近傍領域」とは、衝突防止部材59に近接する領域のうち、全閉状態において扉体50の構成要素(例えば、ガイドレール57や開き防止材56等)によって覆われない領域を意味する。この「衝突防止部材59の近傍領域」は、実施の形態1では、衝突防止部材59が上記火災の熱で燃焼した場合に、当該燃焼により生じた炎が届く可能性がある領域(具体的には、扉体本体60の戸尻側の端部から戸袋34の戸尻側の端部に向けて所定距離離れた位置に至る領域であり、且つ、衝突防止部材59から上方又は下方に向けて所定距離離れた位置に至る領域)として説明するが、これに限られず、例えば当該炎が届く可能性がある領域よりも広い領域であってもよい。また、この第3延焼抑制部材120は、右面を開放した略箱状体にて形成されており、具体的には、図6、図8、図9に示すように、第3前側延焼抑制片121と、第3後側延焼抑制片122と、第3上側延焼抑制片123と、第3下側延焼抑制片124と、固定片125とを備えている。
このように構成された扉10の作用について説明する。
このように実施の形態1によれば、全閉状態において火災が発生した場合に、扉体50と戸袋34との境界位置又はその近傍位置に設けられた可燃部材が火災の熱によって燃焼した場合に当該可燃部材を介して当該火災が延焼することを抑制するための第1延焼抑制部材100、第2延焼抑制部材110、及び第3延焼抑制部材120であって、全閉状態において可燃部材又は可燃部材の近傍領域を覆うように設けられた第1延焼抑制部材100、第2延焼抑制部材110、及び第3延焼抑制部材120を備え、第1延焼抑制部材100、第2延焼抑制部材110、又は第3延焼抑制部材120を扉体50の戸尻側の端部から戸袋34の戸尻側に向けて張り出したので、全閉状態において扉体50の見込み方向(前後方向)の一方側で火災が発生した場合において、可燃部材が当該火災の熱で燃焼した場合に、第1延焼抑制部材100、第2延焼抑制部材110、又は第3延焼抑制部材120によって当該燃焼により生じた炎を遮蔽することができ、当該火災が扉体50の見込み方向(前後方向)の他方側に延焼することを抑制することができることから、従来技術に比べて扉10の防火性能を向上させることが可能となる。
次に、実施の形態2に係る扉について説明する。この実施の形態2は、第3延焼抑制部材に熱膨張耐火部材を設けた形態である。ただし、この実施の形態2の構成は、特記する場合を除いて、実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたものと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
まず、実施の形態2に係る扉の構成を説明する。実施の形態2に係る扉10は、実施の形態1に係る扉10とほぼ同様に構成されている。ただし、衝突防止部材59の防火構造の構成については、下記に示す工夫が施されている。
次に、衝突防止部材59の防火構造について説明する。図11に示すように、衝突防止部材59の防火構造として、第3延焼抑制部材120と、第1熱膨張耐火部材130と、第2熱膨張耐火部材140とが設けられている。
第1熱膨張耐火部材130は、全閉状態において第3延焼抑制部材120の第3前側延焼抑制片121と戸袋34との相互間に形成される隙間131(以下、「第1隙間131」と称する)を塞ぐためのものである。図11に示すように、第1熱膨張耐火部材130は、長尺板状に形成されており、例えば、所定温度(具体的には、150℃〜250℃の温度)で加熱されることで発泡する公知の熱膨張耐火部材(具体的には、フィブロック(登録商標)等)を用いて構成されている(なお、第2熱膨張耐火部材140の構成についても同様とする)。また、この第1熱膨張耐火部材130は、当該第1熱膨張耐火部材130の側面が第3前側延焼抑制片121の外側面と当接するように設けられ、第3前側延焼抑制片121に対して両面テープ、接着剤、又はビス等によって固定されている。なお、第1熱膨張耐火部材130及び第3延焼抑制部材120の設置方法については任意であるが、実施の形態2では、この第1熱膨張耐火部材130と戸袋34(例えば、前側方立25等)とが当接することで扉体50のスライド移動が阻害されないように設置している。具体的には、図11に示すように、第1熱膨張耐火部材130及び第3前側延焼抑制片121が扉体50(具体的には扉体本体60)よりも見込み方向(前後方向)の外側に向けて突出しないように設置している(なお、第2熱膨張耐火部材140及び第3延焼抑制部材120の設置方法についても同様とする)。
第2熱膨張耐火部材140は、全閉状態において第3延焼抑制部材120の第3後側延焼抑制片122と戸袋34との相互間に形成される隙間141(以下、「第2隙間141」と称する)を塞ぐためのものである。図11に示すように、第2熱膨張耐火部材140は、当該第2熱膨張耐火部材140の側面が第3後側延焼抑制片122の外側面と当接するように設けられ、第3後側延焼抑制片122に対して両面テープ、接着剤、又はビス等によって固定されている。
このように実施の形態2によれば、第3延焼抑制部材120には、火災の熱で膨張する第1熱膨張耐火部材130及び第2熱膨張耐火部材140であって、全閉状態において当該延焼抑制手段と戸袋34との相互間に形成される隙間を塞ぐための第1熱膨張耐火部材130及び第2熱膨張耐火部材140を設けたので、全閉状態において扉体50の見込み方向(前後方向)の一方側で火災が発生した場合において、第1熱膨張耐火部材130又は第2熱膨張耐火部材140によって第3延焼抑制部材120と戸袋34との相互間に形成される第1隙間131又は第2隙間141を塞ぐことができるので、第1熱膨張耐火部材130及び第2熱膨張耐火部材140を設けない場合に比べて、扉10の防火性能を向上させることが可能となる。
次に、実施の形態3に係る扉について説明する。この実施の形態3は、第3延焼抑制部材の見付け方向(左右方向)の長さを衝突防止部材の見付け方向(左右方向)の長さであって戸袋の戸尻側の端部との衝突時の長さ以上とした形態である。ただし、この実施の形態3の構成は、特記する場合を除いて、実施の形態2の構成と略同一であり、実施の形態2の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態2で用いたものと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
まず、実施の形態3に係る扉の構成を説明する。実施の形態3に係る扉10は、実施の形態2に係る扉10とほぼ同様に構成されている。ただし、衝突防止部材59の防火構造の構成については、下記に示す工夫が施されている。
次に、衝突防止部材59の防火構造について説明する。図12に示すように、衝突防止部材59の防火構造として、第3延焼抑制部材120と、第1熱膨張耐火部材130と、第2熱膨張耐火部材140とが設けられている。
図12に示すように、第3延焼抑制部材120は、第3前側延焼抑制片121と、第3後側延焼抑制片122と、第3上側延焼抑制片123と、第3下側延焼抑制片124と、固定片125とを備えている。ここで、第3前側延焼抑制片121、第3後側延焼抑制片122、第3上側延焼抑制片123、及び第3下側延焼抑制片124の各々によって覆われる領域のうち、左右方向の領域については、図12に示すように、衝突防止部材59の衝突時の長さ以上となるように(例えば、衝突防止部材59の見付け方向(左右方向)の長さであって戸袋34の戸尻側の端部との衝突前の長さ(以下、「衝突防止部材59の衝突前の長さ」と称する)よりも長くなるように)、固定片125の戸尻側の端部から戸袋34の戸尻側に向けて所定距離L9に至る領域に設定している。この場合において、第3延焼抑制部材120と戸袋34の戸尻側の端部(具体的には、戸尻縦枠22)との衝突を回避するために、実施の形態3では、戸尻縦枠22の戸先側の側面に当接部材150が設けられている。当接部材150は、扉体50をスライド移動させた場合に、衝突防止部材59と当接することにより、第3延焼抑制部材120と戸袋34の戸尻側の端部とが衝突することを回避するためのものである。この当接部材150は、例えば鋼製の箱状体(あるいは、ゴム製のブロック体等)にて形成されており、衝突防止部材59と対向する位置に配置され、戸尻縦枠22に対してネジ等の固定具によって固定されている。また、この当接部材150の具体的な形状については、実施の形態3では、第3延焼抑制部材120と戸袋34の戸尻側の端部との衝突を回避できるように、当接部材150の見付け方向(左右方向)の長さを、衝突防止部材59の衝突前の長さから衝突防止部材59の衝突時の長さを差し引いた長さ以上に設定している。このような構成により、第3延焼抑制部材120の見付け方向(左右方向)の長さが衝突防止部材59の衝突時の長さ以上である場合に、第3延焼抑制部材120と戸袋34の戸尻側の端部(具体的には、戸尻縦枠22)との衝突を回避でき、全開状態において扉体50を戸袋34に確実に収納することができる。なお、この場合において、第1延焼抑制部材100及び第2延焼抑制部材110の具体的な構成については任意であるが、実施の形態3では、第1延焼抑制部材100及び第2延焼抑制部材110の各々における見付け方向(左右方向)の長さを、第3延焼抑制部材120の見付け方向(左右方向)の長さと略同一の長さとなるように設定している(ただし、例えば製造上の都合等により、第3延焼抑制部材120の見付け方向(左右方向)の長さと略同一の長さに設定できない場合にはこの限りではない)。このような構成により、実施の形態2に係る第1延焼抑制部材100又は第2延焼抑制部材110に比べて、ガイドローラ33が火災の熱で燃焼した場合当該燃焼で生じた炎を効果的に遮蔽することができ、扉10の防火性能を一層向上させることができる。
第1熱膨張耐火部材130及び第2熱膨張耐火部材140は、図12に示すように、実施の形態2に係る第1熱膨張耐火部材130及び第2熱膨張耐火部材140と同一の形状にて形成されており、第3延焼抑制部材120に設けられている。ここで、第1熱膨張耐火部材130及び第2熱膨張耐火部材140の設置方法については任意であるが、実施の形態3では、全閉状態において扉体50における部屋の室外側又は室内側のいずれか一方で火災が発生した場合に、第1熱膨張耐火部材130及び第2熱膨張耐火部材140によって効果的に第1隙間131又は第2隙間141を塞ぐことができるように設置されており、具体的には、第1熱膨張耐火部材130を第3前側延焼抑制片121及び第2前側延焼抑制片111の各々における戸尻側の端部に設置すると共に、第2熱膨張耐火部材140を第3後側延焼抑制片122及び第2後側延焼抑制片112の各々における戸尻側の端部に設置している。
このように実施の形態3によれば、第3延焼抑制部材120の見付け方向(左右方向)の長さを衝突防止部材59の衝突時の長さ以上とし、戸尻縦枠22に当接部材150を設けたので、実施の形態2に係る第1延焼抑制部材100、第2延焼抑制部材110、又は第3延焼抑制部材120に比べて、衝突防止部材59又はガイドローラ33が火災の熱で燃焼した場合に当該燃焼で生じた炎を効果的に遮蔽することができ、扉10の防火性能を一層向上させることができる。また、第3延焼抑制部材120の見付け方向(左右方向)の長さが衝突防止部材59の衝突時の長さである場合でも、第3延焼抑制部材120と戸袋34の戸尻側の端部との衝突を回避でき、全開状態において扉体50を戸袋34に確実に収納することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。例えば、本発明に係る扉10の防火性能が従来と同程度であっても、従来と異なる構造により従来と同程度の防火性能を確保できている場合には、本願の課題は解決している。
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
上記実施の形態1から3では、扉10を防火用扉として説明したが、これに限られず、例えば、鋼製軽量扉又は鋼製重量扉であってもよい。
上記実施の形態1から3では、扉体本体60の見付け方向(左右方向)の長さを、全閉状態において扉体本体60の戸尻側の端部が前側方立25の近傍に位置するように形成されていると説明したが、これに限られず、例えば、全閉状態において扉体本体60の戸尻側の端部が前側方立25よりも戸袋34の戸尻側の端部側に位置するように(具体的には、扉体本体60の戸尻側の端部と前側方立25との相互間の距離が、扉体本体60の戸尻側の端部が前側方立25の近傍に位置する場合に比べて長くなるように)形成されてもよい。これにより、全閉状態において扉体50における部屋の室外側又は室内側のいずれか一方で火災が発生した場合において、ガイドローラ33又は衝突防止部材59が当該火災の熱によって燃焼した場合に当該ガイドローラ33又は衝突防止部材59を介して当該火災が扉体50における部屋の室外側又は室内側のいずれか他方に延焼することを抑制できる。
上記実施の形態1から3では、ガイドレール57の下端部が化粧下片67c、68cの下端部よりも高い位置となるように、ガイドレール57が形成されていると説明したが、これに限られず、例えば、ガイドレール57の下端部が化粧下片67c、68cの下端部と同一の位置となるように(あるいは、化粧下片67c、68cの下端部よりも低い位置(すなわち、化粧下片67c、68cの下端部よりも床面に近い位置)となるように)、ガイドレール57が形成されてもよい。
上記実施の形態では、扉10の防火構造は、ガイドローラ33の防火構造及び衝突防止部材59の防火構造を備えていると説明したが、これに限られず、例えば、扉10の製造コストを低減するために、ガイドローラ33の防火構造又は衝突防止部材59の防火構造のいずれか一方を省略してもよい。
上記実施の形態1から3では、ガイドローラ33の防火構造には、第1延焼抑制部材100及び第2延焼抑制部材110が設けられていると説明したが、これに限られず、例えば、扉10の製造コストを低減するために、第1延焼抑制部材100又は第2延焼抑制部材110のいずれか一方を省略してもよい。ここで、第2延焼抑制部材110を省略する場合には、ガイドローラ33が火災の熱で燃焼した場合に、当該燃焼により生じた炎が第1延焼抑制部材100と部屋の床面との隙間を介して扉体50における部屋の室外側又は室内側に燃え移ることを抑制するために、第1延焼抑制部材100の下端部の位置を開き防止材56の下端部の位置となるように、第1延焼抑制部材100を形成する(具体的には、第1前側延焼抑制片101及び第1後側延焼抑制片102の各々の上下方向の長さを長くする等)。ただし、この場合には、第1延焼抑制部材100と化粧下片67c、68cとが干渉するおそれがあるので、これを回避するために以下の方法を採用することが望ましい。例えば、ガイドローラ33、ガイドレール57、及び第1延焼抑制部材100の各々における見込み方向(前後方向)の長さを短くすることで、第1延焼抑制部材100(又はガイドレール57)と化粧下片67c(又は化粧下片68c)との相互間の隙間を広げることにより、第1延焼抑制部材100(又はガイドレール57)と化粧下片67c(又は化粧下片68c)との干渉を防止してもよい。あるいは、扉体本体60の見込み方向(前後方向)の長さを長くすることで、第1延焼抑制部材100(又はガイドレール57)と化粧下片67c(又は化粧下片68c)との相互間の隙間を広げることにより、第1延焼抑制部材100(又はガイドレール57)と化粧下片67c(又は化粧下片68c)との干渉を防止してもよい。
上記実施の形態1から3では、第3延焼抑制部材120が、第3上側延焼抑制片123、第3下側延焼抑制片124、及び固定片125を備えていると説明したが、これに限られず、例えば、第3延焼抑制部材120が所望の防火性能を有する場合には、第3上側延焼抑制片123、第3下側延焼抑制片124、及び固定片125を省略してもよい。
付記1の扉は、建物の開口部の開閉をスライド移動することにより行う扉体と、前記扉体によって前記開口部を全開した全開状態において前記扉体を収納する戸袋と、を備えた扉であって、前記扉体によって前記開口部を全閉した全閉状態において火災が発生した場合に、前記扉体と前記戸袋との境界位置又はその近傍位置に設けられた可燃部材が前記火災の熱によって燃焼した場合に当該可燃部材を介して当該火災が延焼することを抑制するための延焼抑制手段であって、前記全閉状態において前記可燃部材又は前記可燃部材の近傍領域を覆うように設けられた延焼抑制手段を備え、前記延焼抑制手段を前記扉体の戸尻側の端部から前記戸袋の戸尻側に向けて張り出した。
付記1に記載の扉によれば、全閉状態において火災が発生した場合に、扉体と戸袋との境界位置又はその近傍位置に設けられた可燃部材が火災の熱によって燃焼した場合に当該可燃部材を介して当該火災が延焼することを抑制するための延焼抑制手段であって、全閉状態において可燃部材又は可燃部材の近傍領域を覆うように設けられた延焼抑制手段を備え、延焼抑制手段を扉体の戸尻側の端部から戸袋の戸尻側に向けて張り出したので、全閉状態において扉体の見込み方向の一方側で火災が発生した場合において、可燃部材が当該火災の熱で燃焼した場合に、延焼抑制手段によって当該燃焼により生じた炎を遮蔽することができ、当該火災が扉体の見込み方向の他方側に延焼することを抑制することができることから、従来技術に比べて扉の防火性能を向上させることが可能となる。
2 開口部
10 扉
20 枠体
21 戸先縦枠
22 戸尻縦枠
23 上枠
23a 上枠ベース
23b 上枠上側片
23c 上枠前側片
23d 点検カバー
23e レール
23f ラック
24 巾木
25 前側方立
26 後側方立
27 前側中桟
28 後側中桟
29 前上側戸袋ボード
30 前下側戸袋ボード
31 後上側戸袋ボード
32 後下側戸袋ボード
33 ガイドローラ
33a 支柱
33b ローラ
34 戸袋
50 扉体
51 戸先カバー
51a スペーサ
52 戸尻カバー
53 戸先戸車
53a ベース片
53b 車輪
54 戸尻戸車
54a ベース片
54b 車輪
55 制動装置
56 開き防止材
57 ガイドレール
58 衝突防止部材
59 衝突防止部材
60 扉体本体
61 上フレーム
62 下フレーム
63 縦フレーム(戸先縦フレーム)
64 縦フレーム(戸尻縦フレーム)
65、66 縦フレーム(中間縦フレーム)
67 前側化粧鋼板
67a 化粧主片
67b 化粧上片
67c 化粧下片
67d 化粧戸尻片
67f 切り欠き
68 後側化粧鋼板
68a 化粧主片
68b 化粧上片
68c 化粧下片
68d 化粧戸先片
68e 化粧戸尻片
68f 切り欠き
69 取手
100 第1延焼抑制部材
101 第1前側延焼抑制片
102 第1後側延焼抑制片
103 第1上側延焼抑制片
110 第2延焼抑制部材
111 第2前側延焼抑制片
112 第2後側延焼抑制片
113 第2上側延焼抑制片
120 第3延焼抑制部材
121 第3前側延焼抑制片
122 第3後側延焼抑制片
123 第3上側延焼抑制片
124 第3下側延焼抑制片
125 固定片
125a 取付孔
130 第1熱膨張耐火部材
131 第1隙間
140 第2熱膨張耐火部材
141 第2隙間
150 当接部材
L1〜L9 所定距離
Claims (8)
- 建物の開口部の開閉をスライド移動することにより行う扉体と、
前記扉体によって前記開口部を全開した全開状態において前記扉体を収納する戸袋と、を備えた扉であって、
前記扉体によって前記開口部を全閉した全閉状態において火災が発生した場合に、前記扉体と前記戸袋との境界位置又はその近傍位置に設けられた可燃部材が前記火災の熱によって燃焼した場合に当該可燃部材を介して当該火災が延焼することを抑制するための延焼抑制手段であって、前記全閉状態において前記可燃部材又は前記可燃部材の近傍領域を覆うように設けられた延焼抑制手段を備え、
前記近傍領域は、前記扉体の戸尻側の端部から前記戸袋の戸尻側の端部に向けて所定距離離れた位置に至る領域を少なくとも含み、
前記延焼抑制手段を前記扉体の戸尻側の端部から前記戸袋の戸尻側に向けて張り出した、
扉。 - 前記可燃部材は、前記扉体の戸尻側の端部に設けられた伸縮性を有する衝突防止手段であって、前記扉体をスライド移動させた場合に当該扉体と前記戸袋の戸尻側の端部とが衝突することを防止するための衝突防止手段を含み、
前記延焼抑制手段を、前記衝突防止手段における見込み方向の側面の少なくとも一部を覆うように形成した、
請求項1に記載の扉。 - 前記延焼抑制手段の見付け方向の長さを、前記衝突防止手段の見付け方向の長さであって前記戸袋の戸尻側の端部との衝突時の長さ未満とした、
請求項2に記載の扉。 - 前記可燃部材は、前記開口部の下端部に設けられた振れ防止手段であって、前記扉体が見込み方向に振れることを防止するための振れ防止手段を含み、
前記延焼抑制手段を、前記全閉状態において前記振れ防止手段の前記近傍領域における見込み方向の側面の少なくとも一部を覆うように形成した、
請求項1から3のいずれか一項に記載の扉。 - 前記扉体の下端部には、前記振れ防止手段をガイドするためのガイド手段を設け、
前記延焼抑制手段は、前記ガイド手段と一体に形成された第1延焼抑制手段を含む、
請求項4に記載の扉。 - 前記扉体の下端部には、前記扉体を構成する化粧材が見込み方向に開くことを防止するための開き防止手段であって、前記ガイド手段を外側から覆うと共に、当該開き防止手段の下端部が前記ガイド手段の下端部よりも下方に位置する開き防止手段を設け、
前記延焼抑制手段は、前記開き防止手段と一体に形成された第2延焼抑制手段を含む、
請求項4又は5に記載の扉。 - 前記延焼抑制手段には、前記火災の熱で膨張する熱膨張耐火部材であって、前記全閉状態において当該延焼抑制手段と前記戸袋との相互間に形成される隙間を塞ぐための熱膨張耐火部材を設けた、
請求項1から6のいずれか一項に記載の扉。 - 前記熱膨張耐火部材及び前記延焼抑制手段が前記扉体よりも見込み方向の外側に向けて突出しないように、前記熱膨張耐火部材及び前記延焼抑制手段を配置した、
請求項7に記載の扉。
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