JP6684049B2 - 窒素含有炭素材料及びその製造方法、並びに燃料電池用電極 - Google Patents

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Description

本発明は、窒素含有炭素材料及びその製造方法、並びに燃料電池用電極に関する。
固体高分子形燃料電池は、発電効率が高い、出力密度が高い、急速な起動停止が可能である、小型軽量化が可能である、といった利点を持ち、携帯用電源、移動用電源、小型定置用発電機等への適用が期待されている。
固体高分子形燃料電池では、その正極で起こる酸素還元反応を促進するために、一般に白金又は白金合金が触媒として用いられるが、白金の資源量が極めて少なく、また高価であるために実用化への大きな障壁となっている。そこで、白金等の貴金属を必要としない燃料電池用電極触媒として、鉄など遷移金属と窒素を含有することによって酸素還元活性を発現した炭素材料(以下、「炭素触媒」ともいう。)が注目を集めている。
遷移金属と窒素を含有する炭素材料は、遷移金属塩と含窒素有機化合物とを含む前駆体を、熱処理して得られることが知られている。例えば、青酸重合物であるアズルミン酸に、遷移金属塩を添加して得た前駆体を、熱処理によって炭化することで、触媒電極として有用な炭素材料を合成できることが知られている(特許文献1、及び2参照)。ここで前駆体における含窒素有機化合物の質量に対する遷移金属原子の質量比率は、0.001から0.05程度のものが提案されている。これに対して、炭化後の窒素含有炭素材料においては、質量比率0.01〜0.03程度の鉄又はコバルトを含有した場合に、酸素還元活性が高くなることが知られている(非特許文献1参照)。
特開2011−256093号公報 特開2013−043821号公報
F.Jaouen、J.−P.Dodelet、Electrochimica Acta、52(2007)p.5975−5984
鉄など遷移金属と窒素を含有する炭素触媒の酸素還元活性点は、その詳細は明らかではないがグラフェン骨格の末端部や欠陥部に窒素がドープされた構造、又はその窒素と錯形成した遷移金属であると考えられる。その活性点密度を上げるためには、窒素と遷移金属の双方の量を上げることが重要である。
しかしながら、含窒素有機化合物の質量に対する遷移金属原子の質量比率が0.05以上となると、熱処理をする過程で、窒素量が急減し、その結果として、酸素還元活性が低下するという問題がある。すなわち、従来においては、遷移金属原子を用いて酸素還元活性を向上させた場合、窒素の減少による酸素還元活性の低下も同時に生じ得ることが問題であり、この観点から、遷移金属原子の使用量には限界があると考えられる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高い酸素還元活性を有する窒素含有炭素材料及びその製造方法、並びに前記窒素含有炭素材料を用いた燃料電池用電極を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、含窒素有機化合物の質量に対する遷移金属原子の質量比率が、0.10以上となるように、含窒素有機化合物と遷移金属塩を混合して得られる前駆体を出発原料として用いることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明をするに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
〔1〕
含窒素有機化合物の質量に対する遷移金属原子の質量比率xが、0.10以上となるように、前記含窒素有機化合物と、遷移金属塩と、を混合して前駆体を得る第1の工程と、
得られた前記前駆体を熱処理する第2の工程と、
熱処理後の前記前駆体を酸処理することにより、前記遷移金属原子の一部を除去して、窒素含有炭素材料を得る第3の工程と、
を有し、
前記含窒素有機化合物が、ジアミノマレオニトリル、アクリロニトリル、グリシン、メラミン、尿素、1,10−フェナントロリン、2,2'−ビピリジン、アズルミン酸、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、メラミン樹脂、又は尿素樹脂を含む
窒素含有炭素材料の製造方法。
〔2〕
窒素原子、炭素原子、及び遷移金属原子を含み、
前記炭素原子に対する前記窒素原子のモル比率N/Cが、0.01〜0.20であり、
前記遷移金属原子の含有量が、1.7質量%以上であり、
以下(i)及び(ii)の条件を満たす、窒素含有炭素材料。
(i)ラマンスペクトルにおいて、1565〜1615cm-1の範囲にピーク頂を有するピークを1つ有する。
(ii)X線光電子分光スペクトルにおいて、C1sスペクトルから見積もられる表面炭素原子数に対するO1sスペクトルから見積もられる表面酸素原子数の比率O/Cが、
0.02〜0.20である。
〔3〕
前記モル比率N/Cが、0.04〜0.15である、〔2〕に記載の窒素含有炭素材料。
〔4〕
前記比率O/Cが、0.10〜0.20である、〔2〕又は〔3〕に記載の窒素含有炭素材料。
〔5〕
〔2〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の窒素含有炭素材料を含む、燃料電池用電極。
本発明によれば、高い酸素還元活性を有する窒素含有炭素材料及びその製造方法、並びに前記窒素含有炭素材料を用いた燃料電池用電極を提供することができる。
含窒素有機化合物にジアミノマレオニトリルを用いたときの、質量比率xと酸素還元開始電位E0値の関係を示す。 含窒素有機化合物にアズルミン酸を用いたときの、質量比率xと酸素還元開始電位E0値の関係を示す。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されるものではない。すなわち、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
〔窒素含有炭素材料の製造方法〕
本実施形態の窒素含有炭素材料の製造方法は、含窒素有機化合物の質量に対する遷移金属原子の質量比率xが、0.10以上となるように、前記含窒素有機化合物と、遷移金属塩と、を混合して前駆体を得る第1の工程と、得られた前記前駆体を熱処理する第2の工程と、熱処理後の前記前駆体を酸処理することにより、前記遷移金属原子の一部を除去して、窒素含有炭素材料を得る第3の工程と、を有する。
〔第1の工程〕
第1の工程は、含窒素有機化合物の質量に対する遷移金属原子の質量比率xが、0.10以上となるように、含窒素有機化合物と、遷移金属塩と、を混合して前駆体を得る工程である。また、必要に応じて、非含窒素有機化合物を混合に用いてもよいし、溶媒を用いてもよい。
(含窒素有機化合物)
含窒素有機化合物としては、後述する熱処理によって炭素化される前に揮発してしまう有機化合物、例えば沸点が250℃以下の有機溶媒は、窒素含有炭素材料の原料とはならないので除外される。それ以外であれば、特に限定されないが、該熱処理で揮発しにくい有機化合物が好ましい。具体的には、該熱処理で重合するモノマー材料、ポリマー材料、遷移金属塩と錯体を形成する化合物が好ましい。また、含窒素有機化合物は、脂肪族化合物でもよいし、芳香族化合物でもよい。
モノマー材料、または遷移金属塩と錯体を形成する化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジアミノマレオニトリル、アクリロニトリル、グリシン、メラミン、尿素、1,10−フェナントロリン、2,2’−ビピリジン等が挙げられる。このなかでも、ジアミノマレオニトリル、1,10−フェナントロリン、2,2’−ビピリジンが好ましく、ジアミノマレオニトリルがより好ましい。このような含窒素有機化合物を用いることにより、酸素還元活性の高い窒素含有炭素材料が高収率で得られる傾向にある。ここで、ジアミノマレオニトリルは、青酸の四量体である。ジアミノマレオニトリルは市販品を用いてもよいし、公知の方法(例えば、特開昭49−126619号公報、特開昭60−651158号公報等参照)に基づき製造して用いてもよい。ジアミノマレオニトリルは、再結晶等の方法により精製して純度を高めてもよいし、無精製でもよい。
ポリマー材料としては、特に限定されないが、例えば、アズルミン酸、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、メラミン樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。このなかでも、アズルミン酸、ポリアクリロニトリル、ポリイミドが好ましい。このような含窒素有機化合物を用いることにより、酸素還元活性の高い窒素含有炭素材料が高収率で得られる傾向にある。
また、脂肪族化合物及び芳香族化合物としては、特に限定されないが、例えば、上記の中で、脂肪族基又は芳香族基を有するものが挙げられる。
(非含窒素有機化合物)
非含窒素有機化合物としては、特に限定されず、モノマー材料でもよいし、ポリマー材料でもよい。また、非含窒素有機化合物は、脂肪族化合物でもよいし、芳香族化合物でもよい。このなかでも、非含窒素有機化合物としては、ポリマー材料が好ましい。非含窒素有機化合物であるポリマー材料としては、特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸等が挙げられる。このなかでも、フェノール樹脂が好ましい。このような非含窒素有機化合物を用いることにより、酸素還元活性の高い窒素含有炭素材料が高収率で得られる傾向にある。
(遷移金属塩)
遷移金属塩に含まれる遷移金属としては、特に限定されないが、例えば、Mn,Fe,Co,Ni,又はCuが好ましく、Fe,Co,又はCuがより好ましく、Fe又はCoがさらに好ましく、特に好ましいのはFeである。このような遷移金属を用いることにより、窒素含有炭素材料の酸素還元活性がより向上する傾向にある。
遷移金属塩としては、特に限定されないが、例えば、遷移金属のシアノ錯体、ヒドロキシ錯体、クロロ錯体、アセチルアセトナ−ト錯体、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、亜硝酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、又は種々の有機金属化合物等が挙げられる。このなかでも、好ましくは、シアノ錯体、クロロ錯体、アセチルアセトナ−ト錯体、硝酸塩、塩化物、臭化物であり、より好ましくは、硝酸塩、塩化物、臭化物である。このなかでも、水や低級アルコール等の極性溶媒に溶解するものがさらに好ましい。
具体的な鉄塩としては、特に限定されないが、例えば、塩化鉄(II)、塩化鉄(II)四水和物、塩化鉄(III)、塩化鉄(III)六水和物、臭化鉄(II)、臭化鉄(II)六水和物、臭化鉄(III)、臭化鉄(III)六水和物、ヘキサシアノ鉄(II)酸アンモニウム三水和物、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム三水和物、ヘキサシアノ鉄(III)酸アンモニウム、ヘキサシアノ鉄(III)カリウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸ナトリウム十水和物、ヘキサシアノ鉄(III)酸ナトリウム一水和物、硝酸鉄(II)六水和物、硝酸鉄(III)九水和物、チオシアン酸鉄(III)、炭酸鉄(II)、炭酸鉄(II)一水和物、ヘキサクロロ鉄(III)酸メチルアンモニウム、テトラクロロ鉄(II)酸テトラメチルアンモニウム、ペンタシアノニトロシル鉄(III)酸カリウム二水和物、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム鉄(III)水和物、ペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウム二水和物、アンミンペンタシアノ鉄(II)酸ナトリウム三水和物、アクアペンタシアノ鉄(II)酸ナトリウム七水和物、チオシアン酸鉄(II)三水和物、酢酸鉄、シュウ酸鉄(III)五水和物、シュウ酸鉄(II)二水和物、クエン酸鉄(III)三水和物、ヨウ化鉄(II)、ヨウ化鉄(II)四水和物、硫酸鉄(III)、硫酸鉄(III)九水和物、テトラクロロ鉄(II)酸アンモニウム、過塩素酸鉄(II)六水和物、過塩素酸鉄(III)六水和物、アクアペンタフルオロ鉄(III)酸カリウム、硫酸カリウム鉄(III)十二水和物、ビス(スルファト)鉄(II)二アンモニウム六水和物、トリス(硫酸)鉄(III)酸ナトリウム三水和物、リン酸鉄(III)二水和物、リン酸鉄(II)八水和物、硫酸鉄(II)七水和物等が挙げられる。好ましくは、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、臭化鉄(II)、臭化鉄(III)、硝酸鉄(III)九水和物が挙げられる。
具体的なコバルト塩としては、特に限定されないが、例えば、ヘキサシアノコバルト(III)酸カリウム、硝酸コバルト(II)六水和物、フッ化コバルト(II)、臭化コバルト(II)、臭化コバルト(II)六水和物、炭酸コバルト(II)、チオシアン酸コバルト(II)三水和物、酢酸コバルト(II)四水和物、酢酸コバルト(III)、塩化コバルト(II)、塩化コバルト(II)六水和物、テトラクロロコバルト(II)酸セシウム、ヘキサフルオロコバルト(III)酸カリウム、ヨウ化コバルト(II)、ヨウ化コバルト(II)六水和物、ヘキサニトロコバルト(III)酸カリウム、リン酸コバルト(II)、リン酸コバルト(II)八水和物、硫酸コバルト(II)、硫酸コバルト(II)七水和物等が挙げられる。好ましくは、塩化コバルト(II)、臭化コバルト(II)、硝酸コバルト(II)六水和物が挙げられる。
(含窒素有機化合物の質量に対する遷移金属原子の質量比率)
含窒素有機化合物の質量に対する遷移金属原子の質量比率xは、以下の式(I)で定義される。
x=遷移金属原子の金属換算質量/含窒素有機化合物の質量・・・式(I)
質量比率xは、0.10以上であり、好ましくは0.20以上であり、より好ましくは0.35以上であり、特に好ましくは0.50以上である。質量比率xの上限は特に限定されないが、好ましくは10.00以下であり、より好ましくは5.00以下であり、さらに好ましくは2.00以下であり、特に好ましくは1.00以下である。質量比率xが0.10以上であることにより、第2の工程における熱処理後の前駆体の収率がより向上する。また、質量比率xが10.00以下であることにより、得られる窒素含有炭素材料の酸素還元活性がより向上する傾向にある。
(混合)
第1の工程において得られる前駆体は、含窒素有機化合物と遷移金属塩との混合物でもよいし、含窒素有機化合物と遷移金属塩が錯体形成した単一の化合物でもよい。また、該錯体形成した化合物と含窒素有機化合物との混合物、または該錯体形成した化合物と遷移金属塩との混合物であってもよい。
第1の工程における混合方法としては、特に限定されないが、例えば、含窒素有機化合物と遷移金属塩を物理混合する方法;溶媒中に含窒素有機化合物と遷移金属塩とを溶解させ、溶媒を留去し、蒸発乾固する方法;一つの溶媒に全ての原料を溶解させる方法;それぞれ異なる溶媒に各原料を溶解させた後に各溶媒を混合する方法が挙げられる。
溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)、ケトン類(アセトン、ジエチルケトン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、塩素系炭化水素類(ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、四塩化炭素等)、グリコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、ラクタム類(N−メチル−2−ピロリドン等)、ジメチルスルホキシド、脂肪族炭化水素類(n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)等が挙げられる。このなかでも、好ましいのは極性溶媒であり、より好ましくはメタノール及びエタノール等の低級アルコール、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等である。溶媒は、1種類の溶液単独で用いてもよいし、2種以上の溶液を併用してもよい。
第1の工程における混合温度は、好ましくは0〜200℃であり、より好ましくは10〜100℃であり、さらに好ましくは20〜50℃である。混合温度が0℃以上であることにより、含窒素有機化合物と遷移金属塩の溶解度がより向上する傾向にある。また、混合温度が200℃以下であることにより、含窒素有機化合物と遷移金属塩の安定性がより向上する傾向にある。
蒸発乾固させる方法としては、特に限定されないが、例えば、ロータリーエバポレーター等を用いて減圧下で溶媒を除去してもよいし、スプレードライヤー等を用いて溶媒を揮発させてもよい。このなかでも、均一な複合状態を維持する観点及び造粒の観点から、スプレードライヤーを用いる方法が好ましい。
第1の工程における混合圧力は、好ましくは0.05〜2.0MPaであり、より好ましくは0.08〜1.5MPaであり、さらに好ましくは0.1〜1.0MPaである。混合圧力が0.05MPa以上であることにより、窒素含有炭素材料としたときの酸素還元活性がより向上する傾向にある。また、混合圧力が2.0MPa以下であることにより、暴走反応をより抑制でき、前駆体調製の際の安全性がより向上する傾向にある。
第1の工程における混合時間は、好ましくは1分〜240時間であり、好ましくは10分〜120時間であり、さらに好ましくは30分〜60時間である。混合時間が1分以上であることにより、窒素含有炭素材料としたときの酸素還元活性がより向上する傾向にある。また、混合時間が240時間以下であることにより、窒素含有炭素材料としたときの酸素還元活性がより向上する傾向にある。
含窒素有機化合物と遷移金属塩とを混合させる際は、バッチ式反応器を用いてもよいし、流通式反応器を用いてもよい。流通式反応器は完全混合槽でもよいし、管状反応器でもよいし、完全混合槽と管状反応器を組み合わせたものでもよい。
反応器内の雰囲気は、空気でもよいが、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスであってもよい。
また、別の態様において、第1の工程は、前駆体の質量に対する遷移金属原子の質量比率yが0.10以上となるように、窒素原子、炭素原子、及び遷移金属原子を含む原料を混合して前駆体を得る工程であってもよい。原料としては、窒素原子、炭素原子、及び遷移金属原子のうち少なくともいずれかを1つ以上有する化合物を、窒素原子、炭素原子、及び遷移金属原子の全てが含まれるように組み合わせて用いることができる。具体的には、上述の、含窒素有機化合物、遷移金属塩、非含窒素有機化合物などを原料として用いることができる。原料中において、遷移金属原子は錯体の状態で存在していてもよい。
(前駆体の質量に対する遷移金属原子の質量比率)
前駆体の質量に対する遷移金属原子の質量比率yは、以下の式(II)で定義される。
y=遷移金属原子の金属換算質量/前駆体の質量・・・式(II)
質量比率yは、好ましくは0.10以上であり、より好ましくは0.20以上であり、さらに好ましくは0.35以上であり、特に好ましくは0.50以上である。質量比率yの上限は特に限定されないが、好ましくは10.00以下であり、より好ましくは5.00以下であり、さらに好ましくは2.00以下であり、特に好ましくは1.00以下である。質量比率yが0.10以上であることにより、第2の工程における熱処理後の前駆体の収率がより向上する。また、質量比率yが10.00以下であることにより、得られる窒素含有炭素材料の酸素還元活性がより向上する傾向にある。
〔第2の工程〕
第2の工程は、第1の工程で得られた前駆体を熱処理する工程である。第2の工程における熱処理雰囲気としては、不活性ガス雰囲気、アンモニア含有ガス雰囲気が挙げられる。このなかでも、前駆体に対して最初に行う熱処理は不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
また、後述するように、熱処理を多段階で行うことも可能である。多段階の熱処理工程においては、不活性ガス雰囲気下における熱処理と、アンモニア含有ガス雰囲気下における熱処理の双方をこの順に行なうことが好ましい。不活性ガス雰囲気下における熱処理は主に炭素化を目的とするものであり、アンモニア含有ガス雰囲気下における熱処理は主に賦活化を目的とするものである。このような多段階の熱処理を行うことで、得られる窒素含有炭素材料の酸素還元活性がより向上する傾向にある。なお、多段階の熱処理を施す場合には、その第1段階の熱処理が第2の工程に相当する。
上記不活性ガスとしては、特に限定されないが、例えば、窒素、希ガス、真空等が挙げられる。
不活性ガス雰囲気下における熱処理温度は、好ましくは600〜1100℃であり、より好ましくは700〜1000℃であり、さらに好ましくは800〜950℃である。熱処理温度が600℃以上であることにより、前駆体の炭素化が十分に進行する傾向にある。また、熱処理温度が1100℃以下であることにより、十分な収率が得られる傾向にある。
不活性ガス雰囲気下における熱処理時間は、好ましくは5分〜50時間であり、より好ましくは10分〜20時間であり、さらに好ましくは20分〜10時間である。熱処理時間が5分以上であることにより、前駆体の炭素化が十分に進行する傾向にある。また、熱処理時間が50時間以下であることにより、十分な収率が得られる傾向にある。
なお、用いる遷移金属塩の種類や、質量比率xに応じて、適正な熱処理温度及び/又は熱処理時間を適宜調整することができる。
アンモニア含有ガスとしては、特に限定されないが、例えば、アンモニアのみ、又はアンモニアを窒素や希ガスで希釈したガスを用いることが好ましい。
アンモニア含有ガス雰囲気下における熱処理温度は、好ましくは600〜1200℃であり、より好ましくは700〜1100℃であり、さらに好ましくは800〜1000℃である。熱処理温度が600℃以上であることにより、前駆体の賦活化が十分に進行し、得られる窒素含有炭素材料の酸素還元活性がより向上する傾向にある。また、熱処理時間が50時間以下であることにより、収率がより向上する傾向にある。
アンモニア含有ガス雰囲気下における熱処理時間は、好ましくは5分〜5時間であり、より好ましくは10分〜3時間であり、さらに好ましくは15分〜2時間である。熱処理時間が5分以上であることにより、前駆体の賦活化が十分に進行し、得られる窒素含有炭素材料の酸素還元活性がより向上する傾向にある。また、熱処理時間が5時間以下であることにより、収率がより向上する傾向にある。
なお、用いる含窒素有機化合物の種類、遷移金属塩の種類や、質量比率xに応じて、適正な熱処理温度及び/又は熱処理時間を適宜調整することができる。
〔第3の工程〕
第3の工程は、熱処理後の前駆体を酸処理することにより、遷移金属原子の一部を除去する工程である。熱処理及び酸処理を施すことにより、窒素含有炭素材料を得ることができる。
不活性ガス雰囲気下での熱処理及び/又はアンモニア含有ガス雰囲気下での熱処理の前後には、熱処理によって遷移金属粒子が生成するため、後の熱処理工程(アンモニア含有ガス雰囲気下での熱処理)における結晶化度増大の抑制の観点から、酸を用いて遷移金属の一部を除去する。
処理に用いる酸としては、特に限定されないが、例えば、次亜硝酸、亜硝酸、硝酸、発煙硝酸、亜硫酸、硫酸、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫酸、発煙硫酸、塩化スルホン酸、スルファミン酸、フルオロスルホン酸、塩酸、炭酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、次亜臭素酸、亜臭素酸、臭素酸、過臭素酸、亜リン酸、リン酸、次亜ヨウ素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、次亜フッ素酸、フッ化水素酸、ホウ酸、クロム酸、二クロム酸、亜ヒ酸、ヒ酸、亜セレン酸、セレン酸、キセノン酸、過キセノン酸等が挙げられる。中でも特に好ましいのは、塩酸、硫酸である。上記酸は、1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。
遷移金属粒子のできやすさは遷移金属の種類、濃度、分散性、又は熱処理温度等によって変化する。また、遷移金属粒子の除去率を高めるために、不活性ガス雰囲気下での熱処理及び/又はアンモニア含有ガス雰囲気下での熱処理の工程を複数に分割し、遷移金属の除去を繰り返し行うことが好ましい。
〔第4の工程〕
本実施形態の窒素含有炭素材料の製造方法は、第3の工程における酸処理後の前駆体を熱処理する第4の工程をさらに有していてもよい。第4の工程における熱処理雰囲気としては、不活性ガス雰囲気、アンモニア含有ガス雰囲気が挙げられる。このなかでも、前駆体に対して2回目に行う熱処理は不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。熱処理条件としては、第2の工程と同様のものを挙げることができる。
第4の工程を行う場合においては、第2の工程を、不活性ガス雰囲気下で、600〜1100℃、5分〜50時間で行い、第4の工程を、不活性ガス雰囲気下で、650〜1100℃、5分〜50時間で行うことが好ましい。特に、第2の工程の熱処理温度と、第4の工程の熱処理温度の差が、50〜100℃であることが好ましい。原料を炭化させる観点からは熱処理温度は高いほうが好ましいが、前駆体に対し高温熱処理を行うと、遷移金属が凝集しやすい。そのため、多段階で熱処理を行う場合には、最初に行う熱処理温度をより低くし、第3の工程で一度遷移金属を除いてから、再度より高い温度で熱処理を行うことで、酸素還元活性の高い窒素含有炭素材料がより効率よく得られる傾向にある。
〔第5の工程〕
本実施形態の窒素含有炭素材料の製造方法は、第4の工程における熱処理後の前駆体を酸処理することにより、遷移金属原子の一部を除去する第5の工程をさらに有していてもよい。なお、第4の工程及び第5の工程は、セットで複数回行ってもよい。
〔第6の工程〕
本実施形態の窒素含有炭素材料の製造方法は、酸処理後の前駆体を賦活する第6の工程を有していてもよい。賦活処理としては、特に限定されないが、例えば、アンモニア含有ガス雰囲気下で熱処理する方法が挙げられる。アンモニア含有ガス雰囲気下における熱処理温度及び熱処理条件は、第2の工程と同様のものを挙げることができる。
〔窒素含有炭素材料〕
本実施形態の窒素含有炭素材料は、上記窒素含有炭素材料の製造方法で製造されたものである。窒素含有炭素材料の組成は、特に限定されないが、窒素原子、炭素原子、及び遷移金属原子を含み得る。
または、本実施形態の窒素含有炭素材料は、窒素原子、炭素原子、及び遷移金属原子を含み、前記炭素原子に対する前記窒素原子のモル比率N/Cが、0.01〜0.20であり、前記遷移金属原子の含有量が、0.001質量%以上であり、以下(i)又は(ii)の条件を満たすものである。当該要件を満たす本実施形態の窒素含有炭素材料は、上記窒素含有炭素材料の製造方法で製造されたものであってもよい。
(i)ラマンスペクトルにおいて、1565〜1615cm-1の範囲にピーク頂を有するピークを1つ有する。
(ii)X線光電子分光スペクトルにおいて、C1sスペクトルから見積もられる表面炭素原子数に対するO1sスペクトルから見積もられる表面酸素原子数の比率O/Cが、0.02〜0.20である。
(N/C)
本実施形態の窒素含有炭素材料において、炭素原子に対する窒素原子のモル比率N/Cは、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.02以上であり、さらに好ましくは0.03以上であり、よりさらに好ましくは0.04以上である。N/C値が0.01以上であることにより、窒素含有炭素材料の酸素還元活性がより向上する傾向にある。また、モル比率N/Cは、好ましくは0.20以下であり、より好ましくは0.18以下であり、さらに好ましくは0.15以下である。N/C値が0.20以下であることにより、窒素含有炭素材料の酸素還元活性がより向上する傾向にある。一方で、N/C値が0.20を超過すると、含窒素炭素材料(の組成)としての安定性や、酸素還元活性発現の触媒寿命などが、劣るものと考えられる。なお、モル比率N/Cは、原料の組成や、熱処理条件を調整することにより制御することができる。また、N/C値は、実施例に記載の方法で算出することができる。
(遷移金属原子の含有量)
本実施形態の窒素含有炭素材料において、遷移金属原子の含有量は、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、よりさらに好ましくは1.0質量%以上である。遷移金属の含有量が0.001質量%以上であることにより、窒素含有炭素材料の酸素還元活性がより向上する傾向にある。また、遷移金属原子の含有量は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは12質量%以下であり、よりさらに好ましくは10質量%以下である。遷移金属原子の含有量が20質量%以下であることにより、窒素含有炭素材料の酸素還元活性がより向上する傾向にある。なお、遷移金属原子の含有量は、原料の組成や熱処理条件及び酸処理条件を調整することにより制御することができる。また、遷移金属の含有量は、実施例に記載の方法で算出することができる。
(ラマンスペクトル)
本実施形態の窒素含有炭素材料は、ラマンスペクトルにおいて、1565〜1615cm-1の範囲にピーク頂を有するピークを1つ有してもよい。なお、この範囲にピーク調を有するピークは、1500cm-1から1700cm-1の範囲に存在し得る。ピーク頂の位置は、1565〜1615cm-1であり、好ましくは1580〜1610cm-1であり、より好ましくは1590〜1605cm-1である。ピーク頂の位置が高周波数側に存在するほど、窒素含有炭素材料の酸素還元活性がより向上する傾向にある。1500cm-1から1700cm-1の範囲に存在し得るピークのピーク頂は、原料の組成や熱処理条件を調整することにより制御することができる。
(比率O/C)
本実施形態の窒素含有炭素材料において、X線光電子分光スペクトルにおいて、C1sスペクトルから見積もられる表面炭素原子数に対するO1sスペクトルから見積もられる表面酸素原子数の比率O/Cは、好ましくは0.02以上であり、より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.10以上である。比率O/Cが0.02以上であることにより、窒素含有炭素材料の酸素還元活性がより向上する傾向にある。また、比率O/Cは、好ましくは0.20以下であり、より好ましくは0.18以下であり、さらに好ましくは0.16以下である。比率O/Cが0.20以下であることにより、窒素含有炭素材料の酸素還元活性がより向上する傾向にある。なお、比率O/Cは、原料の組成や熱処理条件を調整することにより制御することができる。また、比率O/Cは、実施例に記載の方法で算出することができる。
〔電極〕
本実施形態に係る窒素含有炭素材料は、燃料電池用電極等の電極に好適に用いることができる。窒素含有炭素材料を含む燃料電池用電極は、高い酸素還元性を有する。酸素還元触媒から酸素還元電極、燃料電池等を得る方法は、特に限定されず、一般的な固体高分子形燃料電池の作製法を用いることができる。
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。したがって、当業者は以下に示す実施例に様々な変更を加えて本発明を実施することができる。
まず、本実施例で行った測定方法について説明する。
<電気化学測定>
電極作製法及び回転電極法によるリニアスイープボルタンメトリーの測定方法(日厚計測製の回転リングディスク電極装置「RRDE−1」を使用。)を以下に示す。まず、バイアル瓶に、窒素含有炭素材料5mgを秤取し、そこに、ガラスビーズを約50mg、5質量%ナフィオン(商品名)分散液(シグマアルドリッチジャパン製)を50μL、並びにイオン交換水及びエタノールをそれぞれ150μLずつ添加し、それらの混合物に20分間超音波を照射してスラリーを作製した。このスラリーを4μL秤取し、回転電極のガラス状炭素上(0.2828cm2)に塗布し、飽和水蒸気下に置いた。エタノールを揮発させた後の回転電極を作用極とし、可逆水素電極(RHE)を参照極として、炭素電極を対極とした。0.5M硫酸を電解液とし、その電解液に酸素を30分間バブリングした後、掃引速度5mV/s、回転速度1500rpmで1.1Vから0Vまで掃引して電気化学測定を行った。また、酸素還元開始電位E0は−10μA/cm2の電流を与える電位と定義した。E0が高い値を示すほど、酸素還元活性が高いことを意味する。
<物性分析>
(N/C)
窒素含有炭素材料のN/Cは、以下の方法で炭素、水素、窒素のモル比率を測定して算出した。ジェイサイエンスラボ社製、MICRO CORDER JM10を用い、2500μgの試料を試料台に充填してCHN分析を行った。試料炉は950℃、燃焼炉(酸化銅触媒)は850℃、還元炉(銀粒+酸化銅のゾーン、還元銅のゾーン、酸化銅のゾーンからなる)は550℃に設定した。酸素は15mL/min、Heは150mL/minに設定した。検出器は熱伝導度検出器(TCD)を用いた。アンチピリン(Antipyrine)を用いてマニュアルに記載の方法でキャリブレーションを行った。その後、炭素、水素、窒素のモル比率を測定した。
(遷移金属の含有量)
窒素含有炭素材料の遷移金属成分濃度は、下記に示すSEM−EDX装置を用いて測定した。測定用の窒素含有炭素材料の粒子の断面加工を、試料をエポキシ樹脂で包埋し、Arイオンミリングを行うことにより実施した。試料のエポキシ樹脂での包埋処理は、以下の手順で実施した。まず、市販のエポキシ樹脂(GATAN製G−2エポキシ)0.5g、硬化剤(GATAN製G−2硬化剤)0.1gに試料0.01gを混合した。上記混合物を長さ10mm、幅5mm、厚さ1mmの成型器に充填し、120℃で5分間加熱処理を行い、エポキシ樹脂を硬化させて、エポキシ樹脂包埋試料とした。
Arイオンミリングは、日立製作所製E3500装置を用いて実施した。加速電圧6kVでアルゴンガスをイオンビーム化し、上記エポキシ樹脂包埋試料の1mm四方の領域に12時間照射し、エポキシ樹脂成型体を深さ方向に0.1mmの削り出しを行った。次に、上記試料にOsコーティングを施した上で、加速電圧20kVの条件でSEM−EDX測定を実施した。
断面加工された窒素含有炭素材料の粒子の外周から内部へ少なくとも0.2μm以上の距離がある1μm四方で囲まれた領域について、測定を行った。100個の窒素含有炭素材料の粒子に対して測定を行い、当該100回の測定から得られた値の平均値を、窒素含有炭素材料の遷移金属の含有量とした。
測定用装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ製超高分解能分析走査電子顕微鏡SU−70(SEM)/株式会社堀場製作所製新型液体窒素レス検出器EMAX・Xmax(EDX)
加速電圧 :20kV
(レーザーラマンスペクトル測定)
レーザーラマンスペクトル測定は、試料をメノウ乳鉢で粉砕し、粉末用セルにマウントして下記の条件で測定した。得られた結果から、特に、1565〜1615cm-1の範囲にピーク頂を有するピークの有無を確認し、そのピーク頂を得た。
装置 :日本分光株式会社製NRS−3200
光源 :Arレーザー(波長532nm、2mW)
ビームサイズ:5μm
対物レンズ :100x
操作範囲 :1000〜2000cm-1
露光時間 :50秒
積算回数 :4回
(X線光電子分光スペクトル測定)
X線光電子分光スペクトル測定は、試料をメノウ乳鉢で粉砕し、アルミプレートに銅箔テープを張り付けた試料台にマウントし、できる限り平滑にして、下記の条件で測定した。得られた結果から、C1sスペクトルから見積もられる表面炭素原子数に対するO1sスペクトルから見積もられる表面酸素原子数の比率O/Cを算出した。なお、メノウ乳鉢の粉砕においては、個々の粒子は粉砕されないため、各粒子表面の表面酸素原子数等を測定可能である。
装置 :日本電子株式会社製JPS−9010MC
測定・解析ソフト:SpecSurf
X線源 :Al(12kV、25mA)
試料分析領域 :φ6mm
操作範囲 :C1s、O1s
積算回数 :C1s30回、O1s400回
真空度 :10-5Pa以下
[実施例1]
<前駆体の調製>
0.5Lのナス型フラスコにジアミノマレオニトリル(東京化成社製)4.00g、塩化鉄(II)4.54g及びメタノール200gを加え、室温で12時間撹拌した。その後、50℃の水浴中にて、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去し、真空乾燥機にて80℃で2時間乾燥させて前駆体を得た。質量比率x(質量比率y)は0.50であった。
<窒素含有炭素材料の合成>
調製した前駆体のうち2.00gを石英ボートに載置し、それを内径36mmの石英管状炉に収容し、炉内を大気圧、1NL/minの窒素流通下で60分間かけて室温から600℃まで昇温し、600℃のまま1時間保持し、炭化物を得た。室温まで冷却後、これを遊星ボールミル(フリッチュ製、商品名「Pulverisette−7」)にて粉砕及び分級することにより、炭化物の平均粒子径を約2μmに調整した。
粉砕後の炭化物全量を36質量%の濃塩酸500mL中に入れ、常温で4時間撹拌し、炭化物表面の金属種を溶解除去した。これをメンブレンフィルターで濾過し、純水で洗浄した後、80℃において真空乾燥した。乾燥後の炭化物全量を上記と同じ加熱炉に入れ、炉内を大気圧、1NL/minの窒素流通下で20分間かけて室温から800℃まで昇温し、800℃のまま1時間保持した。
冷却後の炭化物全量を36質量%の濃塩酸500mL中に入れ、常温で4時間撹拌し、炭化物表面の金属種を溶解除去した。これをメンブレンフィルターで濾過し、純水で洗浄した後、80℃において真空乾燥した。乾燥後の炭化物を上記と同じ加熱炉に入れ、炉内を大気圧、1NL/minのアンモニアガス/窒素=1/1(体積比)混合ガス流通下で20分間かけて室温から900℃まで昇温し、900℃のまま1時間保持した。室温まで冷却した後、最終的に窒素含有炭素材料を0.02g得た。
<電気化学測定>
得られた窒素含有炭素材料について上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E0は0.93V、電位が0.5Vのときの電流は−4.01mA/cm2、電位が0.6Vのときの電流は−3.64mA/cm2であった。
<物性分析>
得られた窒素含有炭素材料について、上記の手法を用いて、CHN分析、SEM−EDX分析、ラマンスペクトル測定、X線光電子分光スペクトル測定にて、物性分析を行った。N/Cは0.07、遷移金属成分濃度は鉄が6.1質量%、ラマンスペクトルG−バンドピーク頂は、1593.9cm-1、O/Cは0.13であった。
[実施例2]
<前駆体の調製>
塩化鉄(II)4.54gを5.90gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で前駆体を調製した。質量比率x(質量比率y)は0.65であった。
<窒素含有炭素材料の合成>
調製した前駆体のうち2.0gを用いて、実施例1と同様の方法で窒素含有炭素材料の合成を実施した。最終的に窒素含有炭素材料を0.01g得た。
<電気化学測定>
得られた窒素含有炭素材料について上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E0は0.93V、電位が0.5Vのときの電流は−4.31mA/cm2、電位が0.6Vのときの電流は−3.89mA/cm2であった。
<物性分析>
得られた窒素含有炭素材料について、実施例1と同様の方法で物性分析を行った。N/Cは0.08、遷移金属成分濃度は鉄が6.3質量%、ラマンスペクトルG−バンドピーク頂は、1592.7cm-1、O/Cは0.14であった。
[実施例3]
<前駆体の調製>
塩化鉄(II)4.54gを3.18gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で前駆体を調製した。質量比率x(質量比率y)は0.35であった。
<窒素含有炭素材料の合成>
調製した前駆体のうち2.0gを用いて、実施例1と同様の方法で窒素含有炭素材料の合成を実施した。最終的に窒素含有炭素材料を0.08g得た。
<電気化学測定>
得られた窒素含有炭素材料について上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E0は0.90V、電位が0.5Vのときの電流は−2.96mA/cm2、電位が0.6Vのときの電流は−2.50mA/cm2であった。
<物性分析>
得られた窒素含有炭素材料について、実施例1と同様の方法で物性分析を行った。N/Cは0.03、遷移金属成分濃度は鉄が5.4質量%、ラマンスペクトルG−バンドピーク頂は、1591.8cm-1、O/Cは0.11であった。
[実施例4]
<前駆体の調製>
塩化鉄(II)4.54gを2.27gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で前駆体を調製した。質量比率x(質量比率y)は0.25であった。
<窒素含有炭素材料の合成>
調製した前駆体のうち2.0gを用いて、実施例1と同様の方法で窒素含有炭素材料の合成を実施した。最終的に窒素含有炭素材料を0.10g得た。
<電気化学測定>
得られた窒素含有炭素材料について上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E0は0.88V、電位が0.5Vのときの電流は−3.29mA/cm2、電位が0.6Vのときの電流は−2.57mA/cm2であった。
<物性分析>
得られた窒素含有炭素材料について、実施例1と同様の方法で物性分析を行った。N/Cは0.01、遷移金属成分濃度は鉄が4.4質量%、ラマンスペクトルG−バンドピーク頂は、1583.8cm-1、O/Cは0.03であった。
参考例5]
<前駆体の調製>
塩化鉄(II)4.54gを0.91gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で前
駆体を調製した。質量比率x(質量比率y)は0.10であった。
<窒素含有炭素材料の合成>
調製した前駆体のうち2.0gを用いて、実施例1と同様の方法で窒素含有炭素材料の合成を実施した。最終的に窒素含有炭素材料を0.12g得た。
<電気化学測定>
得られた窒素含有炭素材料について上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E0は0.89V、電位が0.5Vのときの電流は−3.53mA/cm2、電位が0.6Vのときの電流は−2.79mA/cm2であった。
<物性分析>
得られた窒素含有炭素材料について、実施例1と同様の方法で物性分析を行った。N/Cは0.02、遷移金属成分濃度は鉄が1.2質量%、ラマンスペクトルG−バンドピーク頂は、1569.0cm-1、O/Cは0.02であった。
[比較例1]
<前駆体の調製>
塩化鉄(II)4.54gを0.64gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で前駆体を調製した。質量比率x(質量比率y)は0.07であった。
<窒素含有炭素材料の合成>
調製した前駆体のうち2.0gを用いて、実施例1と同様の方法で窒素含有炭素材料の合成を実施した。最終的に窒素含有炭素材料を0.20g得た。
<電気化学測定>
得られた窒素含有炭素材料について上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E0は0.84V、電位が0.5Vのときの電流は−1.68mA/cm2、電位が0.6Vのときの電流は−1.35mA/cm2であった。
<物性分析>
得られた窒素含有炭素材料について、実施例1と同様の方法で物性分析を行った。N/Cは0.01、遷移金属成分濃度は鉄が2.2質量%、ラマンスペクトルG−バンドピーク頂は、1562.4cm-1、O/Cは0.01であった。
[参考例1]
<前駆体の調製>
塩化鉄(II)4.54gを0.01gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で前駆体を調製した。質量比率x(質量比率y)は0.001であった。
<窒素含有炭素材料の合成>
調製した前駆体のうち2.0gを用いて、濃塩酸を用いて炭化物表面の金属粒子を溶解除去しなかった以外は、実施例1と同様の方法で窒素含有炭素材料の合成を実施した。最終的に窒素含有炭素材料を0.06g得た。
<電気化学測定>
得られた窒素含有炭素材料について上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E0は0.91V、電位が0.5Vのときの電流は−3.86mA/cm2、電位が0.6Vのときの電流は−3.56mA/cm2であった。
<物性分析>
得られた窒素含有炭素材料について、実施例1と同様の方法で物性分析を行った。N/Cは0.06、遷移金属成分濃度は鉄が3.3質量%、ラマンスペクトルG−バンドピーク頂は、1564.7cm-1、O/Cは0.01であった。
[実施例6]
<ジアミノマレオニトリルとフェノール樹脂の混合物の調製>
0.5Lのナス型フラスコにジアミノマレオニトリル(東京化成社製)3.00g、フェノール樹脂(群栄化学製PSK−2320)6.00g及びメタノール200gを加え、室温で12時間撹拌した。その後、50℃の水浴中にて、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去し、真空乾燥機にて80℃で2時間乾燥させて、ジアミノマレオニトリルとフェノール樹脂の混合物を7.85g得た。
<前駆体の調製>
ジアミノマレオニトリル4.0gをジアミノマレオニトリルとフェノール樹脂の混合物6.0gに変更し、塩化鉄(II)4.54gを6.81gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で前駆体を調製した。質量比率x(質量比率y)は0.50であった。
<窒素含有炭素材料の合成>
調製した前駆体のうち2.0gを用いて、実施例1と同様の方法で窒素含有炭素材料の合成を実施した。最終的に窒素含有炭素材料を0.17g得た。
<電気化学測定>
得られた窒素含有炭素材料について上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E0は0.92V、電位が0.5Vのときの電流は−4.61mA/cm2、電位が0.6Vのときの電流は−4.19mA/cm2であった。
<物性分析>
得られた窒素含有炭素材料について、実施例1と同様の方法で物性分析を行った。N/Cは0.04、遷移金属成分濃度は鉄が1.7質量%、ラマンスペクトルG−バンドピーク頂は、1600.8cm-1、O/Cは0.10であった。
[比較例2]
<前駆体の調製>
ジアミノマレオニトリル4.0gをジアミノマレオニトリルとフェノール樹脂の混合物6.0gに変更し、塩化鉄(II)4.54gを0.82gに変更した以外は、実施例6と同様の方法で前駆体を調製した。質量比率x(質量比率y)は0.06であった。
<窒素含有炭素材料の合成>
調製した前駆体のうち2.0gを用いて、実施例1と同様の方法で窒素含有炭素材料の合成を実施した。最終的に窒素含有炭素材料を0.37g得た。
<電気化学測定>
得られた窒素含有炭素材料について上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E0は0.85V、電位が0.5Vのときの電流は−1.34mA/cm2、電位が0.6Vのときの電流は−1.02mA/cm2であった。
<物性分析>
得られた窒素含有炭素材料について、実施例1と同様の方法で物性分析を行った。N/Cは0.01、遷移金属成分濃度は鉄が1.1質量%、ラマンスペクトルG−バンドピーク頂は、1563.3cm-1、O/Cは0.01であった。
[実施例7]
<アズルミン酸の合成>
青酸80g、酢酸8.6g及び純水130gの混合溶液中に、25%アンモニア水12g(和光純薬工業製)を添加した。その後、徐々に加温し、最終的に80℃で7時間撹拌を行った。混合溶液中に生じた黒色の固形分をメンブレンフィルターで濾過し、真空乾燥を行い、アズルミン酸を40g得た。なお、詳細は特開2011−256093号公報及び特開2013−043821号公報に記載されている。
<前駆体の調製>
ジアミノマレオニトリル4.0gをアズルミン酸4.0gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で前駆体を調製した。質量比率x(質量比率y)は0.50であった。
<窒素含有炭素材料の合成>
調製した前駆体のうち2.0gを用いて、実施例1と同様の方法で窒素含有炭素材料の合成を実施した。最終的に窒素含有炭素材料を0.05g得た。
<電気化学測定>
得られた窒素含有炭素材料について上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E0は0.90V、電位が0.5Vのときの電流は−2.78mA/cm2、電位が0.6Vのときの電流は−2.41mA/cm2であった。
<物性分析>
得られた窒素含有炭素材料について、実施例1と同様の方法で物性分析を行った。N/Cは0.05、遷移金属成分濃度は鉄が5.2質量%、ラマンスペクトルG−バンドピーク頂は、1589.6cm-1、O/Cは0.09であった。
参考例8]
<前駆体の調製>
ジアミノマレオニトリル4.0gをアズルミン酸4.0gに変更し、塩化鉄(II)4
.54gを0.91gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で前駆体を調製した。質
量比率x(質量比率y)は0.10であった。
<窒素含有炭素材料の合成>
調製した前駆体のうち2.0gを用いて、実施例1と同様の方法で窒素含有炭素材料の合成を実施した。最終的に窒素含有炭素材料を0.12g得た。
<電気化学測定>
得られた窒素含有炭素材料について上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E0は0.87V、電位が0.5Vのときの電流は−2.13mA/cm2、電位が0.6Vのときの電流は−1.97mA/cm2であった。
<物性分析>
得られた窒素含有炭素材料について、実施例1と同様の方法で物性分析を行った。N/Cは0.02、遷移金属成分濃度は鉄が1.2質量%、ラマンスペクトルG−バンドピーク頂は、1566.8cm-1、O/Cは0.02であった。
[比較例3]
<前駆体の調製>
ジアミノマレオニトリル4.0gをアズルミン酸4.0gに変更し、塩化鉄(II)4.54gを0.64gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で前駆体を調製した。質量比率x(質量比率y)は0.07であった。
<窒素含有炭素材料の合成>
調製した前駆体のうち2.0gを用いて、実施例1と同様の方法で窒素含有炭素材料の合成を実施した。最終的に窒素含有炭素材料を0.20g得た。
<電気化学測定>
得られた窒素含有炭素材料について上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E0は0.78V、電位が0.5Vのときの電流は−1.01mA/cm2、電位が0.6Vのときの電流は−0.72mA/cm2であった。
<物性分析>
得られた窒素含有炭素材料について、実施例1と同様の方法で物性分析を行った。N/Cは0.01、遷移金属成分濃度は鉄が1.0質量%、ラマンスペクトルG−バンドピーク頂は、1560.8cm-1、O/Cは0.01であった。
[比較例4]
<前駆体の調製>
ジアミノマレオニトリル4.0gをアズルミン酸4.0gに変更し、塩化鉄(II)4.54gを0.82gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で前駆体を調製した。質量比率x(質量比率y)は0.09であった。
<窒素含有炭素材料の合成>
調製した前駆体のうち2.0gを用いて、実施例1と同様の方法で窒素含有炭素材料の合成を実施した。最終的に窒素含有炭素材料を0.25g得た。
<電気化学測定>
得られた窒素含有炭素材料について上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E0は0.80V、電位が0.5Vのときの電流は−1.02mA/cm2、電位が0.6Vのときの電流は−0.79mA/cm2であった。
<物性分析>
得られた窒素含有炭素材料について、実施例1と同様の方法で物性分析を行った。N/Cは0.02、遷移金属成分濃度は鉄が1.1質量%、ラマンスペクトルG−バンドピーク頂は、1563.4cm-1、O/Cは0.01であった。
[参考例2]
<前駆体の調製>
ジアミノマレオニトリル4.0gをアズルミン酸4.0gに変更し、塩化鉄(II)4.54gを0.01gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で前駆体を調製した。質量比率x(質量比率y)は0.001であった。
<窒素含有炭素材料の合成>
調製した前駆体のうち2.0gを用いて、濃塩酸を用いて炭化物表面の金属粒子を溶解除去しなかった以外は、実施例1と同様の方法で窒素含有炭素材料の合成を実施した。最終的に窒素含有炭素材料を0.06g得た。
<電気化学測定>
得られた窒素含有炭素材料について上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E0は0.86V、電位が0.5Vのときの電流は−2.14mA/cm2、電位が0.6Vのときの電流は−1.89mA/cm2であった。
<物性分析>
得られた窒素含有炭素材料について、実施例1と同様の方法で物性分析を行った。N/Cは0.06、遷移金属成分濃度は鉄が3.3質量%、ラマンスペクトルG−バンドピーク頂は、1561.9cm-1、O/Cは0.01であった。
[実施例9]
<前駆体の調製>
ジアミノマレオニトリル4.0gをポリアクリロニトリル(シグマ・アルドリッチ製)4.0gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で前駆体を調製した。質量比率x(質量比率y)は0.50であった。
<窒素含有炭素材料の合成>
調製した前駆体のうち2.0gを用いて、実施例1と同様の方法で窒素含有炭素材料の合成を実施した。最終的に窒素含有炭素材料を0.06g得た。
<電気化学測定>
得られた窒素含有炭素材料について上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E0は0.92V、電位が0.5Vのときの電流は−4.08mA/cm2、電位が0.6Vのときの電流は−3.71mA/cm2であった。
<物性分析>
得られた窒素含有炭素材料について、実施例1と同様の方法で物性分析を行った。N/Cは0.04、遷移金属成分濃度は鉄が2.4質量%、ラマンスペクトルG−バンドピーク頂は、1589.8cm-1、O/Cは0.05であった。
[比較例5]
<前駆体の調製>
ジアミノマレオニトリル4.0gをポリアクリロニトリル(シグマ・アルドリッチ製)4.0gに変更し、塩化鉄(II)4.54gを0.73gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で前駆体を調製した。質量比率x(質量比率y)は0.08であった。
<窒素含有炭素材料の合成>
調製した前駆体のうち2.0gを用いて、実施例1と同様の方法で窒素含有炭素材料の合成を実施した。最終的に窒素含有炭素材料を0.40g得た。
<電気化学測定>
得られた窒素含有炭素材料について上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E0は0.85V、電位が0.5Vのときの電流は−1.80mA/cm2、電位が0.6Vのときの電流は−1.52mA/cm2であった。
<物性分析>
得られた窒素含有炭素材料について、実施例1と同様の方法で物性分析を行った。N/Cは0.01、遷移金属成分濃度は鉄が2.2質量%、ラマンスペクトルG−バンドピーク頂は、1562.3cm-1、O/Cは0.01であった。
[実施例10]
<トリス(1,10−フェナントロリン)鉄(II)錯体の合成>
1,10−フェナントロリン(シグマ・アルドリッチ製)2.00gをメタノール150mLに溶解し、塩化鉄(II)4.22gを添加した。瞬時に赤色に変色したのを確認したのち、室温で5時間撹拌を行った。水浴50℃のエバポレーターでメタノールを留去し、残存した固形物を80℃で真空乾燥を2時間行い、トリス(1,10−フェナントロリン)鉄(II)錯体を4.20g得た。
<前駆体の調製>
ジアミノマレオニトリル4.0gをトリス(1,10−フェナントロリン)鉄(II)錯体4.0gに変更し、塩化鉄(II)4.54gを0.27gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で前駆体を調製した。質量比率x(質量比率y)は0.11であった。
<窒素含有炭素材料の合成>
調製した前駆体のうち2.0gを用いて、実施例1と同様の方法で窒素含有炭素材料の合成を実施した。最終的に窒素含有炭素材料を0.16g得た。
<電気化学測定>
得られた窒素含有炭素材料について上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E0は0.92V、電位が0.5Vのときの電流は−4.02mA/cm2、電位が0.6Vのときの電流は−3.69mA/cm2であった。
<物性分析>
得られた窒素含有炭素材料について、実施例1と同様の方法で物性分析を行った。N/Cは0.05、遷移金属成分濃度は鉄が3.2質量%、ラマンスペクトルG−バンドピーク頂は、1590.2cm-1、O/Cは0.06であった。
[比較例6]
<前駆体の調製>
ジアミノマレオニトリル4.0gをトリス(1,10−フェナントロリン)鉄(II)錯体4.0gに変更し、塩化鉄(II)を添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法で前駆体を調製した。質量比率x(質量比率y)は0.08であった。
<窒素含有炭素材料の合成>
調製した前駆体のうち2.0gを用いて、実施例1と同様の方法で窒素含有炭素材料の合成を実施した。最終的に窒素含有炭素材料を0.12g得た。
<電気化学測定>
得られた窒素含有炭素材料について上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E0は0.86V、電位が0.5Vのときの電流は−1.72mA/cm2、電位が0.6Vのときの電流は−1.41mA/cm2であった。
<物性分析>
得られた窒素含有炭素材料について、実施例1と同様の方法で物性分析を行った。N/Cは0.01、遷移金属成分濃度は鉄が2.8質量%、ラマンスペクトルG−バンドピーク頂は、1563.4cm-1、O/Cは0.01であった。
実施例1〜4、6、7、9、10、ならびに比較例1〜6、ならびに参考例1〜2、5、8における質量比率x(質量比率y)と、電気化学評価結果と、物性分析結果を、表1に示す。また、図1に、含窒素有機化合物にジアミノマレオニトリルを用いたときの(実施例1〜5、比較例1、及び参考例1)、質量比率xと酸素還元開始電位E0値の関係を示し、図2に、含窒素有機化合物にアズルミン酸を用いたときの(実施例7〜8、比較例3〜4、及び参考例2)、質量比率xと酸素還元開始電位E0値の関係を示す。
実施例1〜4、6、7、9、10、ならびに比較例1〜6、ならびに参考例1〜2、5、8の結果から、驚くべきことに、質量比率xが、0.10以上となるように、含窒素有機化合物と遷移金属塩を混合して得られる前駆体を出発原料として用いることで、高い酸素還元開始電位を示し、高い酸素還元活性を有する窒素含有炭素材料を、効率よく製造できることが分かった。
DAMN :ジアミノマレオニトリル
PhRs :フェノール樹脂
AZA :アズルミン酸
PAN :ポリアクリロニトリル
Fe(Phen)3:トリス(1,10−フェナントロリン)鉄(II)錯体
本発明の製造方法により得られる窒素含有炭素材料は、燃料電池等の電極材料用途として産業上の利用可能性を有する。

Claims (5)

  1. 含窒素有機化合物の質量に対する遷移金属原子の質量比率xが、0.10以上となるように、前記含窒素有機化合物と、遷移金属塩と、を混合して前駆体を得る第1の工程と、
    得られた前記前駆体を熱処理する第2の工程と、
    熱処理後の前記前駆体を酸処理することにより、前記遷移金属原子の一部を除去して、窒素含有炭素材料を得る第3の工程と、
    を有し、
    前記含窒素有機化合物が、ジアミノマレオニトリル、アクリロニトリル、グリシン、メラミン、尿素、1,10−フェナントロリン、2,2'−ビピリジン、アズルミン酸、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、メラミン樹脂、又は尿素樹脂を含む
    窒素含有炭素材料の製造方法。
  2. 窒素原子、炭素原子、及び遷移金属原子を含み、
    前記炭素原子に対する前記窒素原子のモル比率N/Cが、0.01〜0.20であり、
    前記遷移金属原子の含有量が、1.7質量%以上であり、
    以下(i)及び(ii)の条件を満たす、窒素含有炭素材料。
    (i)ラマンスペクトルにおいて、1565〜1615cm-1の範囲にピーク頂を有するピークを1つ有する。
    (ii)X線光電子分光スペクトルにおいて、C1sスペクトルから見積もられる表面炭素原子数に対するO1sスペクトルから見積もられる表面酸素原子数の比率O/Cが、
    0.02〜0.20である。
  3. 前記モル比率N/Cが、0.04〜0.15である、請求項2に記載の窒素含有炭素材料。
  4. 前記比率O/Cが、0.10〜0.20である、請求項2又は3に記載の窒素含有炭素材料。
  5. 請求項2〜4のいずれか一項に記載の窒素含有炭素材料を含む、燃料電池用電極。
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