JP6680938B1 - バニラ風味飲食品の香味改善剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】バニラ風味飲食品に良質なバニラ特有の芳醇な熟成感を付与できる素材を提供することである。【解決手段】特定の第三級チオール化合物を有効成分とするバニラ風味飲食品の香味改善剤である。【選択図】なし

Description

本発明は第三級チオール化合物を有効成分とするバニラ風味飲食品の香味改善剤、香味改善剤を含有する香料組成物、香味改善剤を特定量添加することを特徴とするバニラ風味飲食品及びバニラ風味飲食品の香味改善方法に関する。
ラン科植物の一種であるバニラ プラニフォリア(Vanilla planifolia)、バニラ タヒテンシス(Vanilla tahitensis)、バニラ ポンポーナ(Vanilla pompona)などの青莢をキュアリング、熟成、乾燥して製造されるバニラは、製菓材料や香料原料として欠くことのできない素材であり、その風味を賦与した様々な飲食品は、日々の生活に潤いを与える重要な存在である。
一方で、バニラの香味に対する消費者の関心は高く、良質なバニラに特有の洋酒を想起させる芳醇な熟成感のある香味が求められている。
しかしながら、バニラは複雑な工程を経て製造され、熟成には一般的に6〜12か月という長い時間を要する。さらに、天候や気温等の制約を大きく受ける上に、微生物汚染のリスクも高く、バニラの品質を安定に保つことが困難であるとされている。
そのため、良質なバニラは非常に高価である。また、オイゲノールやグアイアコール等を原料とする化学合成やリグニンの発酵等により製造される合成バニリンを主体とするバニラの風味剤は、安価であり安定供給も可能であるが、様々な香りが複雑に絡み合ったバニラ特有の芳醇な香味を再現することは難しい。
したがって、消費者の嗜好に合った芳醇で熟成感のある良質なバニラの香味を有する製品を、安価に製造する方法が求められている。
良質なバニラエキスを得る方法として、バニラエキスの製造に関する以下のような種々の技術が提案されている。
(ア)適度な甘味並びに色調をもち、かつ芳醇な熟成感に富むバニラエキスを、安定的に製造するために、キュアリング処理後のバニラビーンズを抽出処理する際もしくは抽出処理後に木質材料を添加共存させる方法(特許文献1)。
(イ)バニラビーンズを40重量%以上のアルコール濃度を有する酒類の香気成分濃縮画分で抽出処理する方法(特許文献2)。
(ウ)バニラビーンズを超臨界状態またはその近傍の状態での二酸化炭素で処理する方法(特許文献3)。
(エ)キュアリング処理後のバニラビーンズをエタノール蒸気存在下に密封容器内で加温熟成処理したのち、溶媒抽出する方法(特許文献4)。
(オ)キュアリング処理後のバニラビーンズを乳酸ナトリウムと含水アルコールとの混合物の存在下で抽出処理する方法(特許文献5)。
(カ)バニラ抽出物を接触面からの木質成分溶出を抑制した木質材料と接触せしめ、短期間貯蔵する方法(特許文献6)。
(キ)キュアリング後のバニラビーンズを特定の酵素で処理する方法(特許文献7)。
(ク)バニラビーンズの長軸方向の裁断物を水および/または水溶性有機溶媒で抽出する方法(特許文献8)。
(ケ)バニラビーンズに衝撃波を与えてバニラビーンズの細胞組織を破壊し、次いで、そのバニラビーンズを水および/または水溶性有機溶媒で抽出する方法(特許文献9)。
(コ)含水アルコール中で、バニラビーンズをリパーゼ処理し、抽出することを特徴とす
るバニラエキスの製造方法(特許文献10)。
(サ)緑熟バニラ豆を乾燥させ、溶媒抽出に、ベーターグルコシダーゼ酵素と共に処理する方法(特許文献11)、
(シ)バニラ抽出液にpHを調製した後に加熱処理する方法(特許文献12)
(ス)バニラビーンズにマイクロ波を照射し、溶剤抽出する方法(特許文献13)、
などの提案であり、いずれもバニラエキスの製造方法に関する改良技術である。
しかしながら、上記の改良技術では、バニラビーンズのキュアリング条件、抽出溶媒の種類及び濃度、抽出温度及び時間など多くの因子が互いに影響しあうため、芳醇な熟成感に富むバニラエキスを安定した品質で効率良く得ることは非常に困難であった。
そこで、より効率的に良質なバニラの香味を得る方法として、バニラエキス又はバニラフレーバーに香料化合物を添加する以下のような方法が提案されている。
(セ)3−エトキシ−4−イソブチリロキシ−ベンズアルデヒドを添加することにより、天然に近似したバニラの香調を付与する方法(特許文献14)。
(ソ)β−ダマセノンを添加することにより、バニラ香料組成物に不足している独特なドライフルーツ様香気を付与する方法(特許文献15)。
(タ)1−オクテン−3−オンを添加することにより、華やかさをともなったスパイシー感、バニラの自然な甘み、バニラの高級感を増し、バニラエキスの品質を改良する方法(特許文献16)。
(チ)2−エチル−3,5−ジメチルピラジンを添加することにより、華やかさをともなったスパイシー感、バニラの自然な甘み、バニラの高級感を増し、バニラエキスの品質を改良する方法(特許文献17)。
(ツ)トランス−2−ノネナールを添加することにより、華やかさをともなったスパイシー感、バニラの自然な甘み、バニラの高級感を増し、バニラエキスの品質を改良する方法(特許文献18)。
(テ)3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2(5H)−フラノンを添加することにより、華やかさをともなったスパイシー感、バニラの自然な甘み、バニラの高級感を増し、バニラエキスの品質を改良する方法(特許文献19)。
(ト)ジメチルトリスルフィドを添加することにより、バニラエキスの有する天然感および高級感のある良質なバニラフレーバーの香味に改善する方法(特許文献20)。
しかしながら、上記の改良技術では、良質なバニラに特有の芳醇な熟成感を付与する効果は十分ではなかった。
特開昭59−129298号公報 特開平4−94667号公報 特開平4−214799号公報 特開平5−95764号公報 特開2000−119684号公報 特開平11−279585号公報 特開2001−181671号公報 特開2002−38188号公報 特開2011−116850号公報 特開2015−149971号公報
特開2015−51003号公報 特開2017−63753号公報 特許第6359752号公報 特許第3574744号公報 特開2014−169393号公報 特開2015−44894号公報 特開2015−44895号公報 特開2015−44896号公報 特開2015−44897号公報 特開2018−115241号公報
本発明の目的は、バニラ風味飲食品に良質なバニラ特有の芳醇な熟成感を付与できる素材を提供することである。
本発明者らはバニラの芳醇な熟成感に寄与する成分を検討したところ、意外にもこれまでバニラ香料には全く用いられていなかった第三級チオール化合物が、華やかな広がりを表す洋酒様の香調を付加し、バニラの香気を芳醇な熟成感を有する良質な香気へと改善する優れた効果を有することを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は以下のとおりである。
〔1〕下記一般式(1)で表される第三級チオール化合物から選択される少なくとも1種の化合物を有効成分とするバニラ風味飲食品の香味改善剤。
Figure 0006680938
[式中、R1は、
Figure 0006680938
である。]
〔2〕第三級チオール化合物が、3−メルカプト−3−メチルブチルフォーメートである
上記1記載のバニラ風味飲食品の香味改善剤。
〔3〕上記1又は2記載の香味改善剤を含有することを特徴とするバニラ風味飲食品用香料組成物。
〔4〕上記1又は2記載の香味改善剤をバニラ風味飲食品に0.01ppt〜10ppm添加することを特徴とするバニラ風味飲食品の香味改善方法。
〔5〕上記1又は2記載の香味改善剤を0.01ppt〜10ppm含有するバニラ風味飲食品。
バニラ風味飲食品に、本発明品の香味改善剤を微量添加すると、洋酒様の香調を付与し、芳醇な熟成感のある良質なバニラの香味に改善することができ、嗜好性を向上することができる。また、本発明の香味改善剤は、添加量を任意に調整することができるため、香味を簡便かつ任意に調節することもできる。
以下に本発明を実施の形態に即して詳細に説明する。
〔1〕香味改善剤の有効成分
本発明の香味改善剤は下記式(1)
Figure 0006680938
[式中、R1は、
Figure 0006680938
である。]
で表される第三級チオール化合物である。
具体的には、3−メルカプト−3−メチルブチルフォーメート(R1が基(a)の場合)、3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート(R1が基(b)の場合)、4−メルカプト−4−メチル−2−ペンタノン(R1が基(c)の場合)、4−メルカプト−4−メチル−2−ペンタノール(R1が基(d)の場合)、p−メンタ−8−チオール−3−オン(R1が基(e)の場合)、4−メトキシ−2−メチル−2−ブタンチオール(R1が基(f)の場合)である。
本発明の有効成分である第三級チオール化合物は、以下のとおり、食品香料用の化合物として知られている。
3−メルカプト−3−メチルブチルフォーメート(3-mercapto-3-methylbutyl formate)は、コーヒー豆など、3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート(3-mercapto-3-methylbutyl acetate)はホップなどに存在し、いずれもコーヒー、茶等に添加する香料素材として用いられている。
4−メルカプト−4−メチル−2−ペンタノン(4-mercapto-4-methyl-2-pentanone)、4−メルカプト−4−メチル−2−ペンタノール(4-mercapto-4-methyl-2-pentanol)は、柑橘果実、ホップなどに存在し、茶、コーヒー等に添加する香料素材として用いられている。
p−メンタ−8−チオール−3−オン(p-mentha-8-thiol-3-one)は、アフリカ原産のミカン科植物のブチュの葉に存在し、マンゴー、アップル、コーヒー等に添加する香料素材として用いられている。
4−メトキシ−2−メチル−2−ブタンチオール(4-methoxy-2-methyl-2-butanethiol)は、クロスグリ(カシスとも呼ばれる)、オリーブ等に存在し、茶、コーヒー等に添加する香料素材として用いられている。
しかしながら、第三級チオール化合物がバニラの香気を芳醇な熟成感を有する良質な香気へと改善する効果を有することは知られていなかった。
第三級チオール化合物をバニラ風味飲食品に添加する場合の添加量は、一般に、飲食品中に、0.01ppt〜10ppm、好ましくは0.05ppt〜1ppm、さらに好ましくは0.1ppt〜100ppbである。
添加量が0.01ppt未満の場合は香味改善効果が十分でない場合があり、添加量が10ppmを超えた場合は化合物の香味が浮き出る可能性がある。
本発明の第三級チオール化合物はいずれも試薬等として市販されており、シグマアルドリッチジャパン合同会社、東京化成工業株式会社、富士フィルム和光純薬株式会社等から適宜購入して使用することができる。
また、公知文献(例えば特開昭49−7207号公報)に記載された方法により合成したものを用いることもできる。
〔2〕バニラ風味飲食品用香料組成物
本発明の第三級チオール化合物は、単独でバニラ風味飲食品に添加することもできるが、任意成分として他の香料素材と組み合わせて香料組成物として使用することもできる。
他の香料素材としては、バニラ香料に一般的に使用される天然香料素材、合成香料素材が用いられ、天然香料素材としては例えば、バニラビーンズを含水アルコール等で抽出したバニラエキストラクト、バニラビーンズを石油エーテル、アセトン、エタノール等の溶剤で抽出後、溶剤と水分を除去して得られるバニラオレオレジン、バニラビーンズを超臨界状態の二酸化炭素で抽出するバニラの超臨界二酸化炭素抽出物などを挙げることができる。
合成香料素材としては、バニラの主要香気成分であるバニリンの他、バニラの重要な香気成分であるアニスアルデヒド、アニスアルコール、ベンズアルデヒド、バニリルアルコール、アニス酸メチル、バニリルメチルエーテル、バニリルエチルエーテル、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンジルメチルエーテル、ビチスピラン等が挙げられる。
この他、バニラ系フレーバーに一般的に用いられるエチルバニリン、バニトロープ、マ
ルトール、エチルマルトール、ヘリオトロピン、シクロテン、アニスアルデヒド、アニスアルコールや、バニラから同定された香気成分、バニラ系合成香料として公知の合成香料素材を幅広く使用することができる(特許庁公報「周知慣用技術集(香料)第II部 食品用香料」2000年発行 第348〜366頁参照)。
香料組成物中への第三級チオール化合物の添加量は特に制限はないが、一般には0.01ppb〜10000ppm、好ましくは0.05ppb〜1000ppm、さらに好ましくは0.1ppb〜10ppmである。
〔3〕バニラ風味飲食品
本発明の香味改善の対象となるバニラ風味飲食品は、バニラビーンズでバニラの香りを付与した飲食品、及びバニラ風味を有する香味料を付与した飲食品である。
バニラビーンズにはマダガスカル、レユニオン、インドネシア、セイシェル及びコモロ諸島、等で生産されるブルボン豆、メキシコの北ベラクルス地方等で生産されるメキシコ種、タヒチやその近隣で生産されるタヒチ種があり、また、バニラビーンズの製法も産地により異なる。
このため、バニラビーンズの香りや特徴は産地により異なるが、本発明の香味改善剤はいずれの産地のバニラビーンズであっても特に制限なく使用することができる。
バニラ風味を有する香味料を付与した飲食品としては、バニラエキストラクトやバニラオレオレジン等の天然香料素材のみで風味を付与したもの、天然香料素材と合成香料素材を組み合わせた香料組成物で風味を付与したもの、合成香料素材のみを組み合わせた香料組成物で風味を付与したものがあり、いずれの場合も制限なく本発明の香味改善剤を使用することができる。
本発明の香味改善剤はバニラ香気を芳醇な熟成感を有する良質な香気へと改善する効果に優れているので、天然香料素材のみ、又は天然香料素材と合成香料素材を組み合わせた香料組成物で風味を付与した飲食品への使用が好ましく、香味にやや劣る品質の天然香料素材を含む飲食品への使用により極めて高い香味改善効果を示すことができるので、特に好ましい。
バニラ風味飲食品としては特に制限はないが、アイスクリーム、アイスキャンディーなどの冷菓類、乳飲料、炭酸飲料、コーヒー飲料、茶飲料などの各種清涼飲料類、せんべい、まんじゅう、ケーキ、飴、キャンディー、グミ、ビスケット、クッキーなどの和洋菓子類、ジャム類、チューイングガム類、パン類、スープ類、各種スナック食品類などを例示することができる。
〔4〕バニラ風味飲食品の香味改善方法
本発明の第三級チオール化合物をバニラ風味飲食品に0.01ppt〜10ppm、好ましくは0.05ppt〜1ppm、さらに好ましくは0.1ppt〜10ppb添加することにより、バニラ風味飲食品に洋酒様の香調を付与し、芳醇な熟成感のある良質なバニラの香味に改善することができ、嗜好性を向上することができる。
本発明の香味改善剤はそのまま或いは他の香料素材と組み合わせた香料組成物として、必要に応じてエタノール、プロピレングリコール、グリセリン等の溶剤に溶解してバニラ風味飲食品に添加できる。
さらに、一般的に用いられる乳化剤や賦形剤を添加し常法に従って乳化香料、粉末香料として使用することもできる。
香味改善剤のバニラ風味飲食品への添加の時期は特に制限なく、バニラ風味飲食品の製造工程の各段階で適宜添加することができる。
バニラ風味飲食品の製造が殺菌工程を含む場合は、一般的には殺菌工程の前に添加するが、香味改善剤又はこれを含む香料組成物を膜濾過等で除菌することにより、殺菌工程の後に添加することもできる。
次に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本実施例および比較例で使用した原材料等は、以下のとおりである。
(1)バニラエキスは、小川香料株式会社製のバニラエキスを使用した。
(2)3−メルカプト−3−メチルブチルフォーメートは、シグマアルドリッチジャパン合同会社製の試薬を購入して使用した。
(3)3−メルカプト−3−メチルブチルアセテートは、特開昭49−7207号公報の実施例1記載の方法により合成したものを使用した。
3−メルカプト−3−メチルブチルアセテートの具体的な合成方法は、以下のとおりである。
a)3−アセチルチオ−3−メチルブタナルの製造
チオ酢酸(35g)を38gの3−メチルブト−2−エナルに攪拌しながら徐々に加えた。この反応を窒素雰囲気中で温度を26〜32℃に保って行なった。1晩放置後に反応混合物を真空蒸留して、bp.54〜55℃/1mmHg、nD201.4810の3−アセチルチオ−3−メチルブタナル63g(87%)を得た。
b)3−メルカプト−3−メチルブチルアセテートの製造
3−アセチルチオ−3−メチルブタナル(32g)を50mlのメタノールに溶解した。この溶液に対し3.5gのNaBH4と0.3gのNaOCH3とを50mlのメタノールに溶解した溶液を滴下漏斗から攪拌しながら滴下した。滴下中に氷水で反応混合物の温度を20〜25℃に保った。NaBH4の添加終了後の反応混合物を1時間攪拌し、その後で同容の水を攪拌しながら加え、混合物n−ペンタンで2回抽出したペンタン抽出液を塩化ナトリウム水溶液で洗い硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮した後に残留物を蒸留してbp.39〜40℃/1mmHg、nD201.4616の3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート25g(77%)を得た。
(4)4−メルカプト−4−メチル−2−ペンタノールは、シグマアルドリッチジャパン合同会社製の試薬を購入して使用した。
(5)p−メンタ−8−チオール−3−オンは、東京化成工業株式会社製の試薬を購入して使用した。
(6)4−メトキシ−2−メチル−2−ブタンチオールは、シグマアルドリッチジャパン合同会社製の試薬を購入して使用した。
(7)4−メルカプト−4−メチル−2−ペンタノンは、東京化成工業株式会社製の試薬を購入して使用した。
(8)エタノールは、95v/v%の含水エタノールを使用した。
(9)プリン、アイスクリームおよびチョコレートの原材料は全て市販品を使用した。
〔実施例1〜7、比較例1〕
バニラエキスに、香味改善剤としての3−メルカプト−3−メチルブチルフォーメートを下記のとおり添加し、バニラエキス1〜7を調製した。
バニラエキス1〜5は、エタノールに、3−メルカプト−3−メチルブチルフォーメートを1ppb〜10%の濃度範囲で溶解させてエタノール溶液を作成し、それぞれをバニラエキスに添加したものである。
また、比較例1としてバニラエキスにエタノールのみを添加したバニラエキス0を調製した。
Figure 0006680938
次いで、水92質量部にグラニュー糖8質量部を溶解したシロップを調製し、これに上記のバニラエキス1〜7及びバニラエキス0(比較例1に使用)を、シロップ100質量部に対して0.1質量部添加し、実施例1〜7及び比較例1のバニラ風味飲料を調製した。
〔試験例1〕
実施例1〜7及び比較例1のバニラ風味飲料について、6名の熟練した専門パネルにより、バニラの甘い香味、洋酒様の香調の強さを官能評価した。結果を表1に示した。
Figure 0006680938
表1より、3−メルカプト−3−メチルブチルフォーメートを0.01ppt〜10ppm添加するとバニラの甘い香味が強まり、洋酒様の香味が付加されることで、バニラエキスの香味が芳醇な熟成感のある良質な香味に改善された。添加量100ppmでは3−メルカプト−3−メチルブチルフォーメート自体の香味の影響により、バニラの香味が損なわれる結果となった。
〔実施例8〜13、比較例2〕
実施例1〜7で用いたバニラエキスに3−メルカプト−3−メチルブチルフォーメートの1ppmエタノール溶液を1質量%添加し、3−メルカプト−3−メチルブチルフォーメートを10ppb含有するバニラエキスを調製した。
これを実施例1〜7と同じシロップに0.1質量%添加し、3−メルカプト−3−メチルブチルフォーメートを10ppt含有するバニラ風味飲料を調製した。
3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート、4−メルカプト−4−メチル−2−ペンタノール、p−メンタ−8−チオール−3−オン、4−メトキシ−2−メチル−2−ブタンチオールについても同様に、それぞれ10ppt含有するバニラ風味飲料を調製した(実施例8、9、11〜13)。
4−メルカプト−4−メチル−2−ペンタノンについては、バニラエキスに1ppmエタノール溶液を0.1質量%添加し、4−メルカプト−4−メチル−2−ペンタノンを1ppb含有するバニラエキスを調製した。
これをシロップに0.1質量%添加し、4−メルカプト−4−メチル−2−ペンタノンを1ppt含有するバニラ風味飲料を調製した(実施例10)。
香味改善剤無添加のバニラエキス0をシロップに0.1質量%添加したものを比較例2として調製した
〔試験例2〕
実施例8〜13のバニラ風味飲料について、6名の熟練した専門パネルにより、バニラの甘い香味、洋酒様の香調の強さについて評価を行った。
評価結果を表2に示した。官能評価結果は、比較例2(香味改善剤無添加)を4点とした下記7段階で採点したパネルの平均値である。
Figure 0006680938
Figure 0006680938
本発明のバニラの香味改善剤を添加したバニラ風味飲料は、無添加品(比較例2)と比較して、バニラの甘い香味、洋酒様の香調が強まり、熟成感が向上し、風味が豊かとなり嗜好性が向上した。
〔実施例14〕
表3記載の処方により、香味改善剤を含む香料組成物1を調製し、実施例1〜7と同じシロップに0.1質量%添加してバニラ風味飲料を調製した。
Figure 0006680938
〔比較例3〕
表3記載の処方の3−メルカプト−3−メチルブチルフォーメートの代わりにエタノールを配合して香料組成物2を調製し、実施例1〜7と同じシロップに0.1質量%添加してバニラ風味飲料を調製し、比較例3とした。
〔試験例3〕
実施例14について、8名の熟練した専門パネルにより、バニラの甘い香味、洋酒様の香調の強さについて評価を行った。官能評価は、比較例3を4点とし、試験例2と同じ7段階で評価した。評価結果を表4に示した。
Figure 0006680938
香料組成物1を添加したバニラ風味飲料は、香味改善剤を含まない香料組成物2を添加した比較例3と比較して、バニラの甘い香味、洋酒様の香調が強く、良質なバニラ様の芳醇な熟成感が向上し、風味が豊かとなり嗜好性が向上した。
〔比較例4〕
表3記載の処方の3−メルカプト−3−メチルブチルフォーメートの代わりに、ジメチルトリスルフィド1ppmエタノール溶液を同量添加して香料組成物3を調製し、実施例1〜7と同じシロップに0.1質量%添加してバニラ風味飲料を調製し、比較例4とした。
なお、本比較例は、前記特許文献20で提案されたバニラエキスの有する天然感および高級感のある良質なバニラフレーバーの香味に改善する方法に準拠したものである。
〔試験例4〕
実施例14と比較例4のバニラ風味飲料について、8名の熟練した専門パネルにより、バニラの甘い香味、洋酒様の香調について、本発明の香味改善剤とジメチルトリスルフィドの効果の違いを評価した。
官能評価は、比較例3を4点とし、試験例2と同じ7段階で評価した。評価結果を表5に示した。
Figure 0006680938
比較例4及び実施例14はいずれも比較例3と比較してバニラの甘い香味が強かったが、比較例4では洋酒様の香調を増強する効果は認められなかった。
〔実施例15〕(バニラ風味プリン)
全脂加糖練乳15質量部、果糖ぶどう糖液糖3質量部を蒸留水に溶解し、予め蒸留水に分散させていた全脂粉乳2質量部、脱脂粉乳1質量部を加え加熱し40℃付近になったら、上白糖3.5質量部、安定剤0.7質量部、乳化剤0.02質量部を加え80℃まで加温した。
コーンスターチ0.3部を加えた後、殺菌した(80℃、15分間)。お湯で100質量部に重量調製し、クリアミックスにて乳化した。
実施例1で調製したバニラエキス1を0.1質量部添加して撹拌後、ガラス容器にて冷却して本発明の香味改善剤入りのバニラ風味プリン1を調製した。同様にバニラエキスのみを0.1質量部添加した比較品のバニラ風味プリン2を調製した。
熟練した専門パネル6名による官能評価試験を行ったところ、バニラ風味プリン1は、バニラ風味プリン2と比較して、バニラの甘い香味、洋酒様の香調が強まった。したがって風味が豊かとなり嗜好性が向上した。
〔実施例16〕(バニラ風味アイスクリーム)
牛乳30質量部、水あめ11質量部、全脂加糖練乳10質量部、無塩バター7.5質量部、脱脂粉乳2.5質量部、水34.4質量部を合わせて湯浴にて攪拌溶解し、砂糖2.5質量部、乳化安定剤0.6質量部を添加、加熱攪拌した後、乳化を行いながら、実施例1で調製したバニラエキス1を0.5質量部添加し、攪拌混合した後、エージングを行い、本発明の香味改善剤入りバニラ風味アイスクリーム1を調製した。同様にバニラエキスのみを0.5質量部添加した比較品のバニラ風味アイスクリーム2を調製した。
熟練した専門パネル6名による官能評価試験を行ったところ、バニラ風味アイスクリーム1は、バニラ風味アイスクリーム2と比較して、バニラの甘い香味、洋酒様の香調が強まった。したがって良質なバニラ様の芳醇な熟成感が増し、風味が豊かとなり嗜好性が向上した。
〔実施例17〕(チョコレート)
刻んだチョコレート100質量部を湯煎(約50℃)にて溶解した後、実施例1で調製したバニラエキス2を、0.1質量部を添加し、よく撹拌後に成型し、本発明の香味改善剤のチョコレート1を調製した。同様にバニラエキスのみを0.1質量部添加した比較品のチョコレート2を調製した。
熟練した専門パネル6名による官能評価試験を行ったところ、本発明品の香味改善剤入りのチョコレート1は、チョコレート2と比較してバニラの甘い香味、洋酒様の香調が強まった。
したがって、良質なバニラ様の芳醇な熟成感が増し風味が豊かとなり、嗜好性が向上した。

Claims (6)

  1. 下記一般式(1)で表される第三級チオール化合物から選択される少なくとも1種の化合物からなるバニラ風味飲食品のバニラ香味改善剤であって、ここでバニラ風味飲食品とは、バニラビーンズでバニラの香りを付与した飲食品、及びバニラ風味を有する香味料でバニラの香りを付与した飲食品である、
    上記のバニラ風味飲食品のバニラ香味改善剤。
    Figure 0006680938
    [式中、R1は、
    Figure 0006680938
    である。]
  2. バニラ香味改善剤のバニラ風味飲食品への添加量が0.01ppt〜10ppmである請求項1記載のバニラ香味改善剤。
  3. 第三級チオール化合物が、3−メルカプト−3−メチルブチルフォーメートである請求項1又は2に記載のバニラ風味飲食品のバニラ香味改善剤。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のバニラ香味改善剤を含有することを特徴とするバニラ風味飲食品用バニラ香料組成物。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のバニラ香味改善剤をバニラ風味飲食品に0.01ppt〜10ppm添加することを特徴とするバニラ風味飲食品のバニラ香味改善方法。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のバニラ香味改善剤を0.01ppt〜10ppm含有するバニラ風味飲食品。
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