JP6679918B2 - 電池用包装材料 - Google Patents

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Description

本発明は、成形性及び絶縁性に優れた電池用包装材料に関する。
従来、様々なタイプの電池が開発されている。これらの電池において、電極、電解質などにより構成される電池素子は、包装材料などにより封止される必要がある。電池用包装材料としては、金属製の包装材料が多用されている。
近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パーソナルコンピュータ、カメラ、携帯電話などの高性能化に伴い、多様な形状を有する電池が求められている。また、電池には、薄型化、軽量化なども求められている。しかしながら、従来多用されている金属製の包装材料では、電池形状の多様化に追従することが困難である。また、金属製であるため、包装材料の軽量化にも限界がある。
そこで、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る電池用包装材料として、基材層/金属層/シーラント層が順次積層されたフィルム状の積層体が提案されている。このような電池用包装材料においては、一般的に、成形により凹部が形成され、当該凹部によって形成された空間に電極や電解液などの電池素子を収容し、シーラント層同士を熱溶着させることにより、電池用包装材料の内部に電池素子が収容された電池が得られる。
例えば、特許文献1には、外側層としての2軸延伸ポリアミドフィルム層と、内側層としての熱可塑性樹脂未延伸フィルム層と、これら両フィルム層間に配設されたアルミニウム箔層とを含む電池ケース用包材が開示されている。
特開2008−287971号公報
上記のような電池用包装材料においては、異種の素材である金属層とシーラント層との密着性を向上させつつ、シーラント層のシール性を高める観点から、シーラント層を2層構成とし、金属層側に酸変性ポリオレフィン層を積層し、最内層側にポリオレフィン層を積層する技術が知られている。このような2層構成のシーラント層は、一般に、酸変性ポリオレフィンとポリオレフィンとを共押出成形に供することによって積層されている。
一方、上記のような電池用包装材料において、成形性を高める技術としては、シーラント層の最内層側の表面に凹凸形状を形成する方法が知られている。
これらの技術を組み合わせて、電池用包装材料の絶縁性と成形性を高めることが考えられる。ところが、金属層側に酸変性ポリオレフィン層を積層し、最内層側にポリオレフィン層を積層する技術においては、これらの層の積層と同時に表面に凹凸を付与するか、又は表面に凹凸形状を形成した後、酸変性ポリオレフィン層と金属層との接着性を向上させるために、加熱処理に供する必要がある。本発明者等が検討したところ、この加熱処理によって、表面に形成された凹凸形状がなだらかとなり、成形性が低下することが明らかとなった。
さらに成形性を高める技術として、シーラント層に滑剤を添加する技術も知られている。そこで、上記のような技術において、シーラント層に滑剤を添加して成形性を高めることも考えられる。ところが、本発明者等が検討したところ、酸変性ポリオレフィンと金属層との接着性を向上させるための加熱処理を行った場合には、シーラント層表面に位置する滑剤がシーラント層の内部に移行するため、その後にシーラント層表面にブリードアウトする迄の期間にバラツキが生じ、安定した成形性が発揮されない場合があることが明らかとなった。
また、本発明者等が検討したところ、シーラント層に滑剤を添加して成形性を高める場合、酸変性ポリオレフィン層と金属層との接着性を向上させるために、加熱処理に供した後に、表面に凹凸形状を形成すると、凹凸形状は保持できるものの、凹凸形状を形成する際の再加熱により、シーラント層表面に位置する滑剤がシーラント層の内部に移行するため、その後にシーラント層表面にブリードアウトする迄の期間にバラツキが生じ、安定した成形性が発揮されない場合があることも明らかとなった。
本発明は、本発明者らが発見した、以上のような新たな課題を解決するためになされた発明である。すなわち、本発明は、成形性及び絶縁性に優れた電池用包装材料を提供することを主な目的とする。
本発明者は、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、少なくとも、基材層と、金属層と、シーラント層とをこの順に有する積層体からなり、シーラント層は、金属層側から順に、酸変性ポリオレフィンにより形成された第1シーラント層と、ポリオレフィンにより形成された第2シーラント層と、ポリオレフィンにより形成された第3シーラント層とを有しており、第1シーラント層及び第2シーラント層は、共押出成形体であり、第3シーラント層は、押出成形体であり、第3シーラント層の金属層とは反対側の表面は、凹凸形状を有している電池用包装材料は、成形性及び絶縁性に優れることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の電池用包装材料、その製造方法、及び電池を提供する。
項1. 少なくとも、基材層と、金属層と、シーラント層とをこの順に有する積層体からなり、
前記シーラント層は、前記金属層側から順に、酸変性ポリオレフィンにより形成された第1シーラント層と、ポリオレフィンにより形成された第2シーラント層と、ポリオレフィンにより形成された第3シーラント層とを有しており、
前記第1シーラント層及び第2シーラント層は、共押出成形体であり、
前記第3シーラント層は、押出成形体であり、
前記第3シーラント層の前記金属層とは反対側の表面は、凹凸形状を有している、電池用包装材料。
項2. 前記第3シーラント層の前記金属層とは反対側の表面の算術平均粗さ(Ra)が、3.0μm〜20.0μmである、項1に記載の電池用包装材料。
項3. 前記第2シーラント層には、滑剤が含まれている、項1または2に記載の電池用包装材料。
項4. 前記シーラント層の総厚みが、40〜120μmの範囲にある、項1〜3のいずれかに記載の電池用包装材料。
項5. 前記第3シーラント層の厚みが、20〜80μmの範囲にある、項1〜4のいずれかに記載の電池用包装材料。
項6. 正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、項1〜5のいずれかに記載の電池用包装材料により封止されてなる、電池。
項7. 少なくとも、基材層と、金属層と、シーラント層とをこの順に積層して積層体を得る工程を備えており、
前記積層工程は、以下の工程1〜4を順に備えている、電池用包装材料の製造方法。
工程1:前記基材層と前記金属層とを積層する。
工程2:前記金属層の上に、酸変性ポリオレフィンにより形成された第1シーラント層と、ポリオレフィンにより形成された第2シーラント層とを、共押出成形により積層する。
工程3:前記工程2で得られた積層体を加熱処理する。
工程4:前記工程3の後、第2シーラント層の上に、ポリオレフィンにより形成された第3シーラント層を押出成形により積層し、前記第3シーラント層の表面に凹凸形状を付与する工程。
本発明によれば、成形性及び絶縁性に優れる電池用包装材料、当該電池用包装材料の製造方法、及び当該電池用包装材料を利用した電池を提供することができる。本発明の電池用包装材料によって電池素子を封止することにより、電池の絶縁性を高めることができる。
本発明に係る電池用包装材料の一例の略図的断面図である。
本発明の電池用包装材料は、少なくとも、基材層と、金属層と、シーラント層とをこの順に有する積層体からなり、シーラント層は、金属層側から順に、酸変性ポリオレフィンにより形成された第1シーラント層と、ポリオレフィンにより形成された第2シーラント層と、ポリオレフィンにより形成された第3シーラント層とを有しており、第1シーラント層及び第2シーラント層は、共押出成形体であり、第3シーラント層は、押出成形体であり、第3シーラント層の金属層とは反対側の表面は、凹凸形状を有していることを特徴とする。以下、図1を参照しながら、本発明の電池用包装材料、その製造方法、及び電池素子が本発明の電池用包装材料により封止された本発明の電池について詳述する。
1.電池用包装材料の積層構造
電池用包装材料は、図1に示すように、少なくとも、基材層1、金属層3、及びシーラント層4をこの順に有する積層体からなる。本発明の電池用包装材料において、基材層1が最外層側になり、シーラント層4は最内層になる。即ち、電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置するシーラント層4同士が熱溶着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される。
本発明において、シーラント層4は、金属層3側から順に、酸変性ポリオレフィンにより形成された第1シーラント層41と、ポリオレフィンにより形成された第2シーラント層42と、ポリオレフィンにより形成された第3シーラント層43とを有している。第1シーラント層41は、金属層3と接面するように形成されている。また、第3シーラント層43は、電池用包装材料の最内層に位置しており、第3シーラント層43の凹凸形状面が、電池用包装材料の最内層側の表面を構成している。
第1シーラント層41及び第2シーラント層42は、共押出成形体である。すなわち、第1シーラント層41及び第2シーラント層42は、共押出成形により積層された層である。また、第3シーラント層43は、押出成形体である。すなわち、第3シーラント層43は、押出成形により積層された層である。より具体的には、後述の通り、第1シーラント層41及び第2シーラント層42が共押出成形により積層され、加熱処理により金属層3と第1シーラント層41との密着性が高められた後、第3シーラント層43が押出成形により積層されている。
本発明の電池用包装材料は、図1に示すように、基材層1と金属層3との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて接着剤層2が設けられていてもよい。なお、図示しないが、第2シーラント層42と第3シーラント層との間には、酸変性ポリオレフィン樹脂またはポリオレフィン樹脂により形成された他の樹脂層を1層以上有していてもよい。
本発明の電池用包装材料を構成する積層体の総厚みとしては、特に制限されないが、電池用包装材料を薄型化しつつ、優れた成形性と絶縁性を発揮する観点からは、好ましくは60〜180μm程度、より好ましくは80〜160μm程度が挙げられる。
2.電池用包装材料の各層の組成
[基材層1]
本発明の電池用包装材料において、基材層1は最外層を形成する層である。基材層1を形成する素材については、上記の物性を備えることができ、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。基材層1を形成する素材としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの混合物や共重合物等の樹脂フィルムが挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられ、より好ましくは2軸延伸ポリエステル樹脂、2軸延伸ポリアミド樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。また、ポリアミド樹脂としては、具体的には、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等が挙げられる。
基材層1は、1層の樹脂フィルムから形成されていてもよいが、耐ピンホール性や絶縁性を向上させるために、2層以上の樹脂フィルムで形成されていてもよい。例えば、基材層1を2層の樹脂フィルムから形成する場合、ポリエステル樹脂/ポリアミド樹脂の構成にすることが好ましく、ポリエチレンテレフタレート/ナイロンの構成にすることがより好ましい。なお、当該積層構成においては、ポリエステル樹脂またはポリエチレンテレフタレートが最外層に位置するように基材層1を積層することが好ましい。
基材層1を多層の樹脂フィルムで形成する場合、2以上の樹脂フィルムは、接着剤または接着性樹脂などの接着成分を介して積層させればよく、使用される接着成分の種類や量等については、後述する接着剤層2の場合と同様である。なお、2層以上の樹脂フィルムを積層させる方法としては、特に制限されず、公知方法が採用でき、例えばドライラミネーション法、サンドラミネーション法などが挙げられ、好ましくはドライラミネーション法が挙げられる。ドライラミネーション法により積層させる場合には、接着剤層としてウレタン系接着剤を用いることが好ましい。このとき、接着剤層の厚みとしては、例えば2〜5μm程度が挙げられる。
基材層1の厚みについては、基材層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、電池用包装材料を薄型化しつつ、優れた成形性と絶縁性を発揮する観点からは、好ましくは10〜50μm程度、より好ましくは10〜35μm程度が挙げられる。
[接着剤層2]
本発明の電池用包装材料において、接着剤層2は、基材層1と金属層3を強固に接着させるために、これらの間に設けられる層である。
接着剤層2は、基材層1と金属層3とを接着可能である接着剤によって形成される。接着剤層2の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着剤層2の形成に使用される接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。
接着剤層2の形成に使用できる接着成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン系樹脂等が挙げられる。これらの接着成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの接着成分の中でも、好ましくはポリウレタン系接着剤が挙げられる。
接着剤層2の厚みについては、接着剤層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、電池用包装材料を薄型化しつつ、優れた成形性と絶縁性を発揮する観点からは、好ましくは1〜10μm程度、より好ましくは2〜5μm程度が挙げられる。
[金属層3]
電池用包装材料において、金属層3は、電池用包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止するためのバリア層として機能する層である。金属層3を構成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタンなどが挙げられ、好ましくはアルミニウムが挙げられる。金属層3は、金属箔や金属蒸着などにより形成することができ、金属箔により形成することが好ましく、アルミニウム箔により形成することがさらに好ましい。電池用包装材料の製造時に、金属層3にしわやピンホールが発生することを防止する観点からは、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS A8021P−O、JIS A8079P−O)など軟質アルミニウム箔により形成することがより好ましい。
金属層3の厚みは、水蒸気などのバリア層としての機能を発揮し、さらに、電池用包装材料を薄型化しつつ、優れた成形性と絶縁性を発揮する観点からは、好ましくは15〜50μm程度、より好ましくは25〜40μm程度とすることができる。
また、金属層3は、接着の安定化、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも一方の面、好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、金属層の表面に耐酸性皮膜を形成する処理をいう。化成処理としては、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロムなどのクロム酸化合物を用いたクロム酸クロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸などのリン酸化合物を用いたリン酸クロメート処理;下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理などが挙げられる。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。
一般式(1)〜(4)中、Xは、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基またはベンジル基を示す。また、R1及びR2は、それぞれ同一または異なって、ヒドロキシル基、アルキル基、またはヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)〜(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1及びR2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基が1個置換された炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)〜(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。一般式(1)〜(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシル基またはヒドロキシアルキル基であることが好ましい。一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、500〜100万であることが好ましく、1000〜2万程度であることがより好ましい。
また、金属層3に耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズなどの金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、150℃以上で焼付け処理を行うことにより、金属層3の表面に耐食処理層を形成する方法が挙げられる。また、耐食処理層の上には、カチオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層をさらに形成してもよい。ここで、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフト重合させた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノフェノールなどが挙げられる。これらのカチオン性ポリマーとしては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤などが挙げられる。これらの架橋剤としては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
化成処理は、1種類の化成処理のみを行ってもよいし、2種類以上の化成処理を組み合わせて行ってもよい。さらに、これらの化成処理は、1種の化合物を単独で使用して行ってもよく、また2種以上の化合物を組み合わせて使用して行ってもよい。化成処理の中でも、クロム酸クロメート処理や、クロム酸化合物、リン酸化合物、及びアミノ化フェノール重合体を組み合わせたクロメート処理などが好ましい。
化成処理において金属層3の表面に形成させる耐酸性皮膜の量については、特に制限されないが、例えば、上記のクロメート処理を行う場合であれば、金属層3の表面1m2当たり、クロム酸化合物がクロム換算で約0.5mg〜約50mg、好ましくは約1.0mg〜約40mg、リン化合物がリン換算で約0.5mg〜約50mg、好ましくは約1.0mg〜約40mg、及びアミノ化フェノール重合体が約1mg〜約200mg、好ましくは約5.0mg〜150mgの割合で含有されていることが望ましい。
化成処理は、耐酸性皮膜の形成に使用する化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法などによって、金属層の表面に塗布した後に、金属層の温度が70℃〜200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、金属層に化成処理を施す前に、予め金属層を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法などによる脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、金属層の表面の化成処理をより効率的に行うことが可能となる。
[シーラント層4]
本発明の電池用包装材料において、シーラント層4は、最内層に該当し、電池の組み立て時にシーラント層同士が熱溶着して電池素子を密封する層である。
本発明においては、シーラント層4は、金属層3側から順に、酸変性ポリオレフィンにより形成された第1シーラント層41と、ポリオレフィンにより形成された第2シーラント層42と、ポリオレフィンにより形成された第3シーラント層43とを有している。第1シーラント層41は、金属層3と接面するように形成されている。また、第3シーラント層43は、電池用包装材料の最内層に位置しており、第3シーラント層43の凹凸形状面が、電池用包装材料の最内層側の表面を構成している。
第1シーラント層41及び第2シーラント層42は、共押出成形体である。また、第3シーラント層43は、押出成形体である。本発明の電池用包装材料は、シーラント層4がこのような構成を備えていることにより、優れた絶縁性と成形性を発揮することができる。より具体的には、本発明の電池用包装材料においては、このような構成を備えているため、第1シーラント層41及び第2シーラント層42を共押出成形により積層し、加熱処理により金属層3と第1シーラント層41との密着性を高めた後、第3シーラント層43を押出成形により積層し、第3シーラント層43の表面に凹凸形状を付与することができる。従って、シーラント層4の表面に形成された凹凸形状が加熱処理によってなだらかになることがない。さらに、第3シーラント層43の表面に存在する滑剤量を安定化させることができ、経時的に安定した成形性を発揮することができる。特に、第2シーラント層42に滑剤が含まれている場合には、第3シーラント層43の表面に存在する滑剤量がより一層安定化し、経時的により安定した成形性を発揮することができる。なお、凹凸形状を形成する際に、第3シーラント層43の表面に位置している滑剤は、第2シーラント層42に含まれる滑剤をブリードアウトさせたものでもよいし、第3シーラント層43の内部に滑剤を含ませてブリードアウトさせたものでもあってもよいし、第3シーラント層43の表面に滑剤を塗布したものであってもよい。電池用包装材料を薄型化しつつ、優れた絶縁性及び成形性を発揮させる観点からは、第3シーラント層43には、滑剤が含まれていることが好ましい。
シーラント層4の総厚みとしては、特に制限されないが、電池用包装材料を薄型化しつつ、優れた絶縁性及び成形性を発揮させる観点からは、好ましくは20〜100μm程度、より好ましくは25〜80μm程度が挙げられる。
(第1シーラント層41)
本発明において、第1シーラント層41は、シーラント層4の金属層3側の最表層に位置しており、酸変性ポリオレフィンにより形成された層である。第1シーラント層41は、後述の第2シーラント層42と共に、共押出成形により、金属層3の上に積層される。
酸変性ポリオレフィンとしては、酸変性されたポリオレフィンであれば特に制限されないが、好ましくは不飽和カルボン酸またはその無水物でグラフト変性されたポリオレフィンが挙げられる。酸変性ポリオレフィンは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
酸変性されるポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー;等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられ、特に好ましくはポリプロピレンが挙げられる。
また、酸変性されるポリオレフィンは、環状ポリオレフィンであってもよい。例えば、カルボン酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β−不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。
酸変性される環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、さらに好ましくはノルボルネンが挙げられる。
酸変性に使用されるカルボン酸またはその無水物としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
第1シーラント層41の厚みとしては、特に制限されないが、優れた絶縁性及び成形性を発揮させる観点からは、好ましくは10〜50μm程度、より好ましくは15〜40μm程度が挙げられる。
(第2シーラント層42)
第2シーラント層42は、第1シーラント層41に隣接して設けられる層である。第2シーラント層42は、滑剤を含んでいることが好ましい。第2シーラント層42は、前述の第1シーラント層41と共に、共押出成形により、金属層3の上に積層される。第2シーラント層42は、ポリオレフィンにより形成されている。ポリオレフィンは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー;等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられ、より好ましくはポリプロピレンが挙げられる。
また、ポリオレフィンは、環状ポリオレフィンであってもよい。環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、等が挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、更に好ましくはノルボルネンが挙げられる。
第2シーラント層42の厚みとしては、特に制限されないが、優れた絶縁性及び成形性を発揮させる観点からは、好ましくは10〜50μm程度、より好ましくは10〜40μm程度が挙げられる。
(第3シーラント層43)
第3シーラント層43は、シーラント層4の最内層として設けられる層である。第3シーラント層43は、押出成形により積層されている。第3シーラント層43は、ポリオレフィンにより形成されている。
第3シーラント層43を形成するポリオレフィンとしては、前述の第2シーラント層42で例示したものと同じものが例示できる。ポリオレフィンは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
第3シーラント層43の表面(金属層3とは反対側の表面であり、電池用包装材料の最内層側の表面)には、凹凸形状が付与されている。前述の通り、本発明においては、第3シーラント層43の表面に凹凸形状が付与されていることにより、優れた滑り性を備えている。
第3シーラント層の当該凹凸表面の算術平均粗さ(Ra)としては、特に制限されないが、好ましくは3.0〜20.0μm程度、より好ましくは5.0〜15.0μm程度が挙げられる。なお、当該凹凸表面の算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601:1994の規定に準拠した方法により測定した値である。
第3シーラント層43の厚みとしては、特に制限されないが、電池用包装材料に優れた絶縁性及び成形性を発揮させる観点からは、好ましくは20〜100μm程度、より好ましくは25〜80μm程度が挙げられる。
(シーラント層4のその他の樹脂層)
シーラント層4は、前述の第1〜第3シーラント層に加えて、さらに第4シーラント層、第5シーラント層などのその他の樹脂層を有していてもよい。他の樹脂層は、第2シーラント層と第3シーラント層との間に積層することができる。その他の樹脂層の構成は、第2シーラント層42と同様とすることができる。
第2シーラント層42は、滑剤を含んでいることが好ましい。滑剤は、温度変化などの要因によって、シーラント層4の内部を移動するため、第2シーラント層42に滑剤が含まれる場合、通常、第1シーラント層41、第3シーラント層43などにも滑剤が含まれる。シーラント層4に含まれる滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアマイド系滑剤が挙げられる。アマイド系滑剤としては、アミド基を有するものであれば特に制限されないが、好ましくは脂肪酸アミド及び芳香族ビスアミドが挙げられる。アマイド系滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
脂肪酸アマイドとしては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。置換アミドの具体例としては、N−オレイルパルチミン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミドなどが挙げられる。また、メチロールアミドの具体例としては、メチロールステアリン酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどが挙げられる。脂肪酸エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレートなどが挙げられる。また、芳香族系ビスアミドの具体例としては、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−システアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪酸アマイドが好ましく、エルカ酸アミドがより好ましい。
電池用包装材料に優れた絶縁性及び成形性を発揮させる観点からは、第2シーラント層42に含まれる滑剤の量としては、好ましくは100〜3000ppm程度、より好ましくは300〜2000ppm程度が挙げられる。滑剤量が100ppmより少ないと、初期における滑剤のシーラント層表面へのブリードアウト量が不十分になり、成形性を低下させる場合があり、滑剤量が3000ppmより多いと、初期に過剰にブリードアウトした滑剤が製造ラインを汚染し、電池の連続生産性を下げる場合がある。
また、電池用包装材料に優れた絶縁性及び成形性を発揮させる観点から、第3シーラント層43に含まれる滑剤の量としては、好ましくは100〜3000ppm程度、より好ましくは300〜2000ppm程度が挙げられる。なお、本発明において、第3シーラント層43に含まれる滑剤の量は、第3シーラント層43の内部に位置する滑剤と、第3シーラント層43の表面に位置する滑剤との合計量である。
[コーティング層]
本発明の電池用包装材料においては、意匠性、耐電解液性、耐擦過性、成形性の向上などを目的として、必要に応じて、基材層1の上(基材層1の金属層3とは反対側)に、必要に応じて、コーティング層(図示しない)を設けてもよい。コーティング層は、電池を組み立てた時に、最外層に位置する層である。
コーティング層は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などにより形成することができる。コーティング層は、これらの中でも、2液硬化型樹脂により形成することが好ましい。コーティング層を形成する2液硬化型樹脂としては、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂、2液硬化型ポリエステル樹脂、2液硬化型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、コーティング層には、マット化剤を配合してもよい。
マット化剤としては、例えば、粒径が0.5nm〜5μm程度の微粒子が挙げられる。マット化剤の材質については、特に制限されないが、例えば、金属、金属酸化物、無機物、有機物等が挙げられる。また、マット化剤の形状についても、特に制限されないが、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状等が挙げられる。マット化剤として、具体的には、タルク,シリカ,グラファイト、カオリン、モンモリロイド、モンモリロナイト、合成マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛,酸化マグネシウム,酸化アルミニウム,酸化ネオジウム,酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム,硫酸バリウム、炭酸カルシウム,ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム,シュウ酸カルシウム,ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ類、高融点ナイロン、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケル等が挙げられる。これらのマット化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのマット化剤の中でも、分散安定性やコスト等の観点から、好ましくはりシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、マット化剤には、表面に絶縁処理、高分散性処理等の各種表面処理を施しておいてもよい。
コーティング層を形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、コーティング層を形成する2液硬化型樹脂を基材層1の一方の表面上に塗布する方法が挙げられる。マット化剤を配合する場合には、2液硬化型樹脂にマット化剤を添加して混合した後、塗布すればよい。
コーティング層の厚みとしては、コーティング層としての上記の機能を発揮しつつ、電池用包装材料が上記の物性を満たせば特に制限されないが、例えば、0.5〜10μm程度、好ましくは1〜5μm程度が挙げられる。
3.電池用包装材料の製造方法
本発明の電池用包装材料は、以下の工程1〜4を順に備える製造方法によって、好適に製造することができる。なお、各層の構成については、前述の通りである。
工程1:前記基材層と前記金属層とを積層する。
工程2:前記金属層の上に、酸変性ポリオレフィンにより形成された第1シーラント層と、ポリオレフィンにより形成された第2シーラント層とを、共押出成形により積層する。
工程3:前記工程2で得られた積層体を加熱処理する。
工程4:前記工程3の後、第2シーラント層の上に、ポリオレフィンにより形成された第3シーラント層を押出成形により積層し、前記第3シーラント層の表面に凹凸形状を付与する工程。
(工程1)
工程1の具体例としては、以下の通りである。まず、基材層1及び金属層3が積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。基材層1と金属層3は、接着剤層2を介して積層することが好ましい。具体的には、基材層1上又は必要に応じて表面が化成処理された金属層3に接着剤層2の形成に使用される接着剤を、押出し法、グラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該金属層3又は基材層1を積層させて接着剤層2を硬化させるドライラミネーション法によって行うことができる。
(工程2)
工程2においては、工程1で得られた積層体Aの金属層3の上に、酸変性ポリオレフィンにより形成された第1シーラント層41と、ポリオレフィンにより形成された第2シーラント層42とを、共押出成形(共押出しラミネーション法)により積層して、積層体(以下、「積層体B」と表記することもある)を得る。
共押出成形の条件としては、特に制限されないが、例えば、溶融温度250〜300℃程度、押出圧力5.0〜20.0MPa程度が挙げられる。
(工程3)
工程3においては、前記工程2で得られた積層体を加熱処理する。加熱処理条件としては、金属層3と第1シーラント層41との密着性が高められれば、特に制限されない。加熱温度としては、好ましくは150〜200℃程度、加熱時間としては、好ましくは0.5〜1.5秒が挙げられる。
(工程4)
工程4においては、工程3の後、第2シーラント層42の上に、ポリオレフィンにより形成された第3シーラント層43を押出成形により積層し、3シーラント層43の表面に凹凸形状を付与する。
工程4における押出成形の条件としては、特に制限されないが、例えば、溶融温度250〜300℃程度、押出圧力5.0〜20.0MPa程度が挙げられる。
工程4において、第3シーラント層43を押出成形により積層する際に、第3シーラント層43の表面に凹凸形状を付与する方法としては、特に制限されず、公知の方法を採用することができ、例えば、サンドブラスト法、押出冷却法などにより形成することができる。凹凸形状の付与は、第3シーラント層43の表面に形成する凹凸表面の算術平均粗さ(Ra)が、例えば、前述の値となるように行えばよい。
コーティング層を設ける場合には、基材層1の金属層3とは反対側の表面に、コーティング層を積層する。コーティング層は、例えばコーティング層を形成する上記の樹脂を基材層1の表面に塗布することに形成することができる。なお、基材層1の表面に金属層3を積層する工程と、基材層1の表面にコーティング層を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、基材層1の表面にコーティング層を形成した後、基材層1のコーティング層とは反対側の表面に金属層3を形成してもよい。
上記のようにして、必要に応じて設けられるコーティング層/基材層1/必要に応じて設けられる接着剤層2/必要に応じて表面が化成処理された金属層3/第1シーラント層41/第2シーラント層42/第3シーラント層43からなる積層体が形成される。
本発明の電池用包装材料において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性等を向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理を施していてもよい。
4.電池用包装材料の用途
本発明の電池用包装材料は、正極、負極、電解質等の電池素子を密封して収容するための包装材料として使用される。
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、本発明の電池用包装材料で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(シーラント層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部のシーラント層同士をヒートシールして密封させることによって、電池用包装材料を使用した電池が提供される。なお、本発明の電池用包装材料を用いて電池素子を収容する場合、本発明の電池用包装材料のシーラント部分が内側(電池素子と接する面)になるようにして用いられる。
本発明の電池用包装材料は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本発明の電池用包装材料が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛畜電池、ニッケル・水素畜電池、ニッケル・カドミウム畜電池、ニッケル・鉄畜電池、ニッケル・亜鉛畜電池、酸化銀・亜鉛畜電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材料の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
<実施例1〜4>
基材層としてのナイロンフィルム(厚さ15μm)の上に、両面に化成処理を施したアルミニウム箔(厚さ35μm)からなる金属層をドライラミネーション法により積層させた。具体的には、アルミニウム箔の一方面に、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、金属層上に接着剤層(厚さ3μm)を形成した。次いで、金属層上の接着剤層と基材層を加圧加熱貼合(サンドラミネーション)した後、80℃で24時間のエージング処理を実施することにより、基材層/接着剤層/金属層の積層体Aを作製した。なお、金属層として使用したアルミニウム箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が20mg/m2(乾燥重量)となるように、ロールコート法によりアルミニウム箔の両面に塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件で20秒間焼付けすることにより行った。
次に、積層体Aの金属層の上に、第1シーラント層としてのカルボン酸変性ポリプロピレン(金属層側に配置、20μm)と、第2シーラント層としてのランダムポリプロピレン(15μm、滑剤量1200ppm)を共押し出しすることにより、基材層/接着剤層/金属層/第1シーラント層/第2シーラント層が積層された積層体Bを得た。次に、得られた積層体Bを、190℃で1.0秒の加熱処理に供した。
積層体Bの加熱処理の後、積層体Bの第2シーラント層の上に、第3シーラント層としての後述のポリプロピレンAまたはB(厚み30μm)を押出成形により積層し、第3シーラント層の表面に、押出冷却法によって凹凸形状を形成した。第3シーラント層表面の算術平均粗さ(Ra)を、JIS B0601:1994の規定に準拠した方法により測定した。結果を表1に示す。
<比較例1,2>
前述の実施例1〜4と同様にして、積層体Aを作製した。次に、積層体Aの金属層の上に、第1シーラント層としてのカルボン酸変性ポリプロピレン(金属層側に配置、20μm)と、第2シーラント層としての後述のポリプロピレンAまたはB(厚み20μm)を共押し出しすることにより、基材層/接着剤層/金属層/第1シーラント層/第2シーラント層が積層された積層体を得た。次に、第2シーラント層の表面に、押出冷却法によって凹凸形状を形成した。第2シーラント層表面の算術平均粗さ(Ra)を、JIS B0601:1994の規定に準拠した方法により測定した。結果を表2に示す。次に、得られた積層体を、190℃で1.0秒の加熱処理に供し、電池用包装材料を得た。
なお、実施例及び比較例で用いた、ランダムポリプロピレンA,Bの詳細は、以下の通りである。
・ポリプロピレンA:ランダムポリプロピレンに、滑剤量1200ppmを含む。
・ポリプロピレンB:ランダムポリプロピレンに、滑剤300ppmを含む。
<滑り性の評価>
上記で得られた各電池用包装材料を、室温(24℃)下で48時間保管した後、MD方向200mm×TD方向80mmの長方形に断裁してサンプルをそれぞれ2枚ずつ作製した。次に、それぞれ、2枚のサンプルのシーラント層同士を重ね合わせて、200gの加重をかけた状態で100mm/分の速度で引張、動摩擦係数を測定した。結果を表1及び表2に示す。
<滑りの安定性評価>
上記で得られた各電池用包装材料を室温(24℃)下で、表3に記載の期間保管した後、それぞれ、MD方向200mm×TD方向80mmの長方形に断裁してサンプルを2枚ずつ作製した。次に、それぞれ、2枚のサンプルのシーラント層同士を重ね合わせて、200gの加重をかけた状態で100mm/分の速度で引張、動摩擦係数を測定した。結果を表3に示す。
(成形によるピンホールの発生率の評価)
上記で得られた各電池用包装材料を室温(24℃)下で、表4に記載の期間保管した後、それぞれ、MD方向90mm×TD方向150mmの長方形に断裁してサンプルを作製した。次に、各サンプルを32×55mm(エリクソンサイズ)の口径を有する成形金型(雌型)と、これに対応した成形金型(雄型)を用いて、クリアランス0.3mm、押さえ圧0.25MPa、成形深さ6.5mmの条件で冷間成形を行った。各実施例及び比較例の各保管温度について、それぞれ、成形後の100サンプルを目視で観察して、ピンホールの発生率を算出した。結果を表4に示す。
<絶縁性評価>
上記で得られた各電池用包装材料をMD方向100mm×TD方向40mmの長方形に断裁してサンプルを作製した。次に、この試験片を短辺同士が対向するように折り返し、試験片のシーラント層の表面が互いに対向するように配置した。次に、互いに対向するシーラント層の表面の間に25μmφのワイヤーを挿入した。次に、この状態で電池用包装材料の長さ方向に直交する方向に上下共に7mm幅の平板状熱板からなるヒートシール機でシーラント層同士をヒートシールした。ヒートシール条件は、シール温度190℃、面圧1.0MPaとした。次に、電池用包装材料のワイヤーが挟まれた部分が中央になるようにして、両側の基材層の表面にテスターの端子をそれぞれ接続した。次に、テスター間に100Vの電圧をかけ、短絡するまでの時間(秒)を測定した。結果を表5に示す。
1…基材層
2…接着剤層
3…金属層
4…シーラント層
41…第1シーラント層
42…第2シーラント層
43…第3シーラント層

Claims (7)

  1. 少なくとも、基材層と、金属層と、シーラント層とをこの順に有する積層体からなり、
    前記シーラント層は、前記金属層側から順に、酸変性ポリオレフィンにより形成された第1シーラント層と、ポリオレフィンにより形成された第2シーラント層と、ポリオレフィンにより形成された第3シーラント層とを有しており、
    前記第1シーラント層及び第2シーラント層は、共押出成形体であり、
    前記第3シーラント層は、押出成形体であり、
    前記第3シーラント層の前記金属層とは反対側の表面は、凹凸形状を有し、算術平均粗さ(Ra)が、3.0μm〜20.0μmであり、前記第3シーラント層は加熱処理されていない、電池用包装材料。
  2. 前記第3シーラント層の前記金属層とは反対側の表面の算術平均粗さ(Ra)が、3.0μm〜20.0μmである、請求項1に記載の電池用包装材料。
  3. 前記第2シーラント層には、滑剤が含まれている、請求項1または2に記載の電池用包装材料。
  4. 前記シーラント層の総厚みが、40〜120μmの範囲にある、請求項1〜3のいずれかに記載の電池用包装材料。
  5. 前記第3シーラント層の厚みが、20〜80μmの範囲にある、請求項1〜4のいずれかに記載の電池用包装材料。
  6. 正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、請求項1〜5のいずれかに記載の電池用包装材料により封止されてなる、電池。
  7. 少なくとも、基材層と、金属層と、シーラント層とをこの順に積層して積層体を得る工程を備えており、
    前記積層工程は、以下の工程1〜4を順に備え、以下の工程4の後に加熱処理を行わない、電池用包装材料の製造方法。
    工程1:前記基材層と前記金属層とを積層する。
    工程2:前記金属層の上に、酸変性ポリオレフィンにより形成された第1シーラント層と、ポリオレフィンにより形成された第2シーラント層とを、共押出成形により積層する。
    工程3:前記工程2で得られた積層体を加熱処理する。
    工程4:前記工程3の後、第2シーラント層の上に、ポリオレフィンにより形成された第3シーラント層を押出成形により積層し、前記第3シーラント層の表面に凹凸形状を付与することによって、前記第3シーラント層の前記金属層とは反対側の表面の算術平均粗さ(Ra)を3.0μm〜20.0μmとする工程。
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