本発明の電池用包装材料は、少なくとも、基材層と、金属層と、接着層と、シーラント層とが順次積層された積層体からなる電池用包装材料であって、接着層及び前記シーラント層が、それぞれ、アマイド系滑剤を含むことを特徴とする。以下、本発明の電池用包装材料について詳述する。
1.電池用包装材料の積層構造
本発明の電池用包装材料は、図1に示すように、少なくとも、基材層1、金属層3、接着層5、及びシーラント層4が順次積層された積層体からなる。本発明の電池用包装材料において、基材層1が最外層になり、シーラント層4は最内層になる。即ち、電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置するシーラント層4同士が熱溶着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される。本発明の電池用包装材料は、図1に示すように、基材層1と金属層3との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて接着層2が設けられていてもよい。
上記のとおり、近年、電池の小型化、薄型化の要請により、より一層薄い電池用包装材料が求められている。本発明の電池用包装材料の総厚みとしては、特に制限されないが、より一層の薄型化の要請に応えつつ、高い成形性を有し、かつ、電池の連続生産性に優れた電池用包装材料とする観点からは、好ましくは50〜140μm程度、より好ましくは60〜120μm程度が挙げられる。
2.電池用包装材料を形成する各層の組成
[基材層1]
本発明の電池用包装材料において、基材層1は、最外層に位置する層である。基材層1を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。基材層1を形成する素材としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテルイミド、ポリイミド、及びこれらの混合物や共重合物等が挙げられる。
ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。また、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル−ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。また、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてブチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。ポリエステルは、耐電解液性に優れ、電解液の付着に対して白化等が発生し難いという利点があり、基材層1の形成素材として好適に使用される。
また、ポリアミドとしては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体等の脂肪族系ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する構成単位を含むナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6IT、ナイロン6I6T(Iはイソフタル酸、Tはテレフタル酸を表す)等のヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸−テレフタル酸共重合ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等の芳香族を含むポリアミド;ポリアミノメチルシクロヘキシルアジパミド(PACM6)等の脂環系ポリアミド;さらにラクタム成分や、4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート等のイソシアネート成分を共重合させたポリアミド、共重合ポリアミドとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリエステルアミド共重合体やポリエーテルエステルアミド共重合体;これらの共重合体等が挙げられる。これらのポリアミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。延伸ポリアミドフィルムは延伸性に優れており、成形時の基材層1の樹脂割れによる白化の発生を防ぐことができ、基材層1の形成素材として好適に使用される。
基材層1は、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルムで形成されていてもよく、また未延伸の樹脂フィルムで形成してもよい。中でも、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルム、とりわけ2軸延伸された樹脂フィルムは、配向結晶化することにより耐熱性が向上しているので、基材層1として好適に使用される。また、基材層1は、上記の素材を金属層3上にコーティングして形成されていてもよい。
これらの中でも、基材層1を形成する樹脂フィルムとして、好ましくはナイロン、ポリエステル、更に好ましくは2軸延伸ナイロン、2軸延伸ポリエステル、特に好ましくは2軸延伸ナイロンが挙げられる。
基材層1は、耐ピンホール性及び電池の包装体とした時の絶縁性を向上させるために、異なる素材の樹脂フィルム及びコーティングの少なくとも一方を積層化することも可能である。具体的には、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとを積層させた多層構造や、2軸延伸ポリエステルと2軸延伸ナイロンとを積層させた多層構造等が挙げられる。基材層1を多層構造にする場合、各樹脂フィルムは接着剤を介して接着してもよく、また接着剤を介さず直接積層させてもよい。接着剤を介さず接着させる場合には、例えば、共押出し法、サンドラミ法、サーマルラミネート法等の熱溶融状態で接着させる方法が挙げられる。また、接着剤を介して接着させる場合、使用する接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型、UVやEBなどの電子線硬化型等のいずれであってもよい。接着剤の成分としてポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、シリコーン系樹脂が挙げられる。
基材層1は、成形性を向上させるために低摩擦化させておいてもよい。基材層1を低摩擦化させる場合、その表面の摩擦係数については特に制限されないが、例えば1.0以下が挙げられる。基材層1を低摩擦化するには、例えば、マット処理、滑剤のコーティング層の形成、これらの組み合わせ等が挙げられる。
マット処理としては、予め基材層1にマット化剤を添加し表面に凹凸を形成したり、エンボスロールによる加熱や加圧による転写法や、表面を乾式又は湿式ブラスト法やヤスリで機械的に荒らす方法が挙げられる。マット化剤としては、例えば、粒径が0.5nm〜5μm程度の微粒子が挙げられる。マット化剤の材質については、特に制限されないが、例えば、金属、金属酸化物、無機物、有機物等が挙げられる。また、マット化剤の形状についても、特に制限されないが、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状等が挙げられる。マット化剤として、具体的には、はタルク,シリカ,グラファイト、カオリン、モンモリロイド、モンモリロナイト、合成マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛,酸化マグネシウム,酸化アルミニウム,酸化ネオジウム,酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム,硫酸バリウム、炭酸カルシウム,ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム,シュウ酸カルシウム,ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ類、高融点ナイロン、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケル等が挙げられる。これらのマット化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのマット化剤の中でも、分散安定性やコスト等の観点から、好ましくはりシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、マット化剤には、表面に絶縁処理、高分散性処理等の各種表面処理を施しておいてもよい。
滑剤のコーティング層は、基材層1上に滑剤をブリードアウトにより表面に析出させる方法や、基材層1に滑剤を積層することにより形成できる。滑剤としては、特に制限されないが、例えば、後述するアマイド系滑剤、金属石鹸、親水性シリコーン、シリコーンをグラフトしたアクリル、シリコーンをグラフトしたエポキシ、シリコーンをグラフトしたポリエーテル、シリコーンをグラフトしたポリエステル、ブロック型シリコーンアクリル共重合体、ポリグリセロール変性シリコーン、パラフィン等が挙げられる。これらの滑剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
基材層1の厚さとしては、例えば、10〜50μm、好ましくは15〜30μmが挙げられる。
[接着層2]
本発明の電池用包装材料において、接着層2は、基材層1と金属層3とを接着させるために、必要に応じて設けられる層である。
接着層2は、基材層1と金属層3とを接着可能である接着剤によって形成される。接着層2の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着層2の形成に使用される接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。
接着層2の形成に使用できる接着剤の樹脂成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン系樹脂;フッ化エチレンプロピレン共重合体等が挙げられる。これらの接着剤成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の接着剤成分の組み合わせ態様については、特に制限されないが、例えば、その接着剤成分として、ポリアミドと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドとポリエステル、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリエステルと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂等が挙げられる。これらの中でも、展延性、高湿度条件下における耐久性や応変抑制作用、ヒートシール時の熱劣化抑制作用等が優れ、基材層1と金属層3との間のラミネーション強度の低下を抑えてデラミネーションの発生を効果的に抑制するという観点から、好ましくはポリウレタン系2液硬化型接着剤;ポリアミド、ポリエステル、又はこれらと変性ポリオレフィンとのブレンド樹脂が挙げられる。
また、接着層2は異なる接着剤成分で多層化してもよい。接着層2を異なる接着剤成分で多層化する場合、基材層1と金属層3とのラミネーション強度を向上させるという観点から、基材層1側に配される接着剤成分を基材層1との接着性に優れる樹脂を選択し、金属層3側に配される接着剤成分を金属層3との接着性に優れる接着剤成分を選択することが好ましい。接着層2は異なる接着剤成分で多層化する場合、具体的には、金属層3側に配置される接着剤成分としては、好ましくは、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、共重合ポリエステルを含む樹脂等が挙げられる。
接着層2の厚さについては、例えば、2〜50μm、好ましくは3〜25μmが挙げられる。
[金属層3]
本発明の電池用包装材料において、金属層3は、包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光等が侵入するのを防止するためのバリア層として機能する層である。金属層3を形成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタン等の金属箔が挙げられる。これらの中でも、アルミニウムが好適に使用される。包装材料の製造時にしわやピンホールを防止するために、本発明において金属層3として、軟質アルミニウム、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS A8021P−O)又は(JIS A8079P−O)等を用いることが好ましい。
金属層3の厚さについては、例えば、10〜200μm、好ましくは20〜100μmが挙げられる。
また、金属層3は、接着の安定化、溶解や腐食の防止等のために、少なくとも一方の面、好ましくは少なくともシーラント層4側の面、更に好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、金属層3の表面に耐酸性皮膜を形成する処理である。化成処理は、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロム等のクロム酸化合物を用いたクロム酸クロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸等のリン酸化合物を用いたリン酸クロメート処理;下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理等が挙げられる。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。
一般式(1)〜(4)中、Xは水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基又はベンジル基を示す。また、R1及びR2は、同一又は異なって、ヒドロキシル基、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)〜(4)において、X、R1、R2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1、R2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等のヒドロキシ基が1個置換された炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)〜(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシル基、及び、ドロキシアルキル基のいずれかであることが好ましい。一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、約500〜約100万、好ましくは約1000〜約2万が挙げられる。
また、金属層3に耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に、酸化アルミ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズ等の金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、150℃以上で焼付け処理を行うことにより、金属層3の表面に耐食処理層を形成する方法が挙げられる。また、耐食処理層の上には、カチオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層を形成してもよい。ここで、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフトさせた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノフェノール等が挙げられる。これらのカチオン性ポリマーは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。これらの架橋剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの化成処理は、1種の化成処理を単独で行ってもよく、2種以上の化成処理を組み合わせて行ってもよい。更に、これらの化成処理は、1種の化合物を単独で使用して行ってもよく、また2種以上の化合物を組み合わせて使用して行ってもよい。これらの中でも、好ましくはクロム酸クロメート処理、更に好ましくはクロム酸化合物、リン酸化合物、及びアミノ化フェノール重合体を組み合わせたクロメート処理が挙げられる。
化成処理において金属層3の表面に形成させる耐酸性皮膜の量については、特に制限されないが、例えばクロム酸化合物、リン酸化合物、及びアミノ化フェノール重合体を組み合わせてクロメート処理を行う場合であれば、金属層3の表面1m2当たり、クロム酸化合物がクロム換算で約0.5〜約50mg、好ましくは約1.0〜約40mg、リン化合物がリン換算で約0.5〜約50mg、好ましくは約1.0〜約40mg、及びアミノ化フェノール重合体が約1〜約200mg、好ましくは約5.0〜150mgの割合で含有されていることが望ましい。
化成処理は、耐酸性皮膜の形成に使用する化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法等によって、金属層3の表面に塗布した後に、金属層3の温度が70〜200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、金属層3に化成処理を施す前に、予め金属層3を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法等による脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、金属層3の表面の化成処理を一層効率的に行うことが可能になる。
[シーラント層4]
本発明の電池用包装材料において、シーラント層4は、最内層に該当し、電池の組み立て時にシーラント層同士が熱溶着して電池素子を密封する層である。
シーラント層4は、ポリオレフィン樹脂により形成されていることが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、熱溶着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンなどが挙げられる。
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられ、より好ましくはポリプロピレンが挙げられる。
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、等が挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、更に好ましくはノルボルネンが挙げられる。
前記カルボン酸変性ポリオレフィンとは、前記ポリオレフィンをカルボン酸でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。変性に使用されるカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
前記カルボン酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β―不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β―不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。カルボン酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、変性に使用されるカルボン酸としては、前記酸変性シクロオレフィンコポリマーの変性に使用されるものと同様である。
これらの樹脂成分の中でも、好ましくはポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィンが挙げられ、より好ましくはポリプロピレン、カルボン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
シーラント層4は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。更に、シーラント層4は、1層のみで成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上で形成されていてもよい。シーラント層4が2層以上で形成されている場合の好ましい層構成としては、例えば、最外層がポリプロピレンにより形成されており、金属層3側の層がカルボン酸変性ポリプロピレンにより形成されている層構成などが挙げられる。
また、シーラント層4の厚さとしては、適宜選定することができるが、10〜100μm程度、好ましくは15〜50μm程度が挙げられる。
本発明の電池用包装材料において、シーラント層4は、アマイド系滑剤を含む。シーラント層4の内部にアマイド系滑剤を存在させる方法としては、シーラント層4を形成するポリオレフィン樹脂などにアマイド系滑剤を配合する方法や、電池用包装材料のシーラント層4の表面にアマイド系滑剤をコーティングする方法が挙げられる。電池用包装材料のシーラント層4の表面にアマイド系滑剤をコーティングする場合、表面から内部にアマイド系滑剤の一部が移行することにより、シーラント層4の表面及び内部にアマイド系滑剤を存在させることができる。
電池の製造において、本発明の電池用包装材料が成形に供される際には、シーラント層4の表面にはアマイド系滑剤が存在している。これにより、シーラント層4表面の滑り性が向上し、本発明の電池用包装材料の成形性が高められている。シーラント層4を形成するポリオレフィン樹脂などにアマイド系滑剤を配合した場合、シーラント層4に含まれるアマイド系滑剤を表面にブリードアウトさせることにより、アマイド系滑剤をシーラント層4の表面に存在させることができる。
上述の通り、従来の電池用包装材料においても、シーラント層にアマイド系滑剤を配合したり、コーティングすることは行われていた。ところが、本発明者が検討したところ、シーラント層にコーティングや配合するアマイド系滑を所定量に設定しているにも拘わらず、電池用包装材料の成形時において、金型にアマイド系滑剤が付着して連続生産性が低下する場合や、電池用包装材料にクラックやピンホールが発生する場合があることが明らかとなった。そして、これは、シーラント層にアマイド系滑剤を配合する場合、及びコーティングする場合のいずれにおいても、電池用包装材料を製造してから、成形に供されるまでの保管環境、輸送環境等の電池用包装材料の製造から成形に供される間の環境、特に温度変化によって、シーラント層の表面に位置するアマイド系滑剤の量が大きく変化していることに起因することが明らかとなった。例えば、電池用包装材料が40℃以上の高温環境下に晒されると、シーラント層におけるアマイド系滑剤の飽和溶解度が上昇するため、シーラント層の表面に存在していたアマイド系滑剤がシーラント層の内部に移行してしまい、これによってシーラント層の成形性が低下しているものと考えられる。一方、これを防ぐために、アマイド系滑剤の量を増やすと、高温下に晒されなかった場合に、シーラント層の表面に存在するアマイド系滑剤の量が多くなりすぎるため、成形時にアマイド系滑剤が金型に付着し、塊となって金型を汚染するという問題がある。さらに、シーラント層の表面や内部にアマイド系滑剤を用いた場合にも、金属層とシーラント層との間に接着層を設けた場合には、成形性が低下しやすいことも明らかとなった。よって、例えば、電池用包装材料の製造時には同量のアマイド系滑剤を使用していたにも拘わらず、保管環境等によって、成形時には表面に位置するアマイド系滑剤の量が大きく変化し、金型にアマイド系滑剤が付着して連続生産性が低下する場合や、電池用包装材料にクラックやピンホールが発生する場合がある。なお、電池用包装材料を製造してから、成形に供されるまでの保管環境、輸送環境等の電池用包装材料の製造から成形に供される間の環境、特に温度変化を適切に管理すれば、電池用包装材料の製造時と成形時の間におけるアマイド系滑剤の量の変化を抑制することは可能であるが、実際には保管環境や輸送環境が適切に管理できない場合もあり、電池製造の成形に供して初めて成形性や連続生産性の問題が生じることもあった。
これに対して、本発明の電池用包装材料においては、シーラント層4だけでなく、後述の通り、金属層3とシーラント層4との間に位置する接着層5にもアマイド系滑剤が含まれているため、高温下に晒された場合などにも、高い成形性を有し、かつ、電池の連続生産性に優れる。本発明の電池用包装材料がこのような優れた効果を発揮する機序の詳細は明らかではないが、例えば次のように考えることができる。すなわち、本発明の電池用包装材料においては、金属層3とシーラント層4との間に位置する接着層5にもアマイド系滑剤が含まれているため、40℃以上、さらには50℃以上という高温環境下で電池用包装材料が保管、輸送などがされた場合にも、シーラント層4から接着層5へのアマイド系滑剤の移行が生じ難く、シーラント層4の内部のアマイド系滑剤の濃度が低下し難いため、シーラント層4の表面に存在するアマイド系滑剤が内部に移行せずに留まりやすくなっているものと考えられる。
本発明において、シーラント層4に含まれるアマイド系滑剤としては、特に制限されないが、例えば脂肪酸アマイドが挙げられる。脂肪酸アマイドとしては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。置換アミドの具体例としては、N−オレイルパルチミン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミドなどが挙げられる。また、メチロールアミドの具体例としては、メチロールステアリン酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどが挙げられる。脂肪酸エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレートなどが挙げられる。また、芳香族系ビスアミドの具体例としては、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−システアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。これらのアマイド系滑剤の中でも、電池用包装材料の成形性及び電池の連続生産性を効果的に高める観点から、エルカ酸アミドが特に好ましい。アマイド系滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の電池用包装材料において、シーラント層4に含まれるアマイド系滑剤の含有量としては、質量基準で、好ましくは300ppm以上、より好ましくは300〜900ppm程度が挙げられる。なお、この値は、シーラント層4の表面に存在するアマイド系滑剤も含む値である。例えば、シーラント層4を形成するポリオレフィン樹脂にアマイド系滑剤を配合する場合、シーラント層4中におけるアマイド系滑剤の含有量が、上記の値となるように配合してシーラント層4を形成することにより、シーラント層4の表面及び内部に存在するアマイド系滑剤の含有量も上記の値となる。同様に、シーラント層4の表面にアマイド系滑剤をコーティングする場合にも、コーティング量の合計が上記の値となるようにコーティングすることにより、シーラント層4の表面及び内部に存在するアマイド系滑剤の含有量も上記の値となる。
[接着層5]
本発明の電池用包装材料において、接着層5は、金属層3とシーラント層4を強固に接着させるために、これらの間に設けられる層である。
接着層5は、金属層3とシーラント層4とを接着可能である接着剤によって形成される。接着層5の形成に使用される接着剤について、その接着機構、接着剤成分の種類等は、前記接着層2の場合と同様である。接着層5に使用される接着剤成分として、好ましくはポリオレフィン系樹脂、更に好ましくはカルボン酸変性ポリオレフィン、特に好ましくはカルボン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
接着層5の厚さについては、例えば、2〜50μm、好ましくは15〜30μmが挙げられる。
本発明の電池用包装材料において、接着層5は、アマイド系滑剤を含む。上述の通り、本発明においては、シーラント層4だけでなく、接着層5にもアマイド系滑剤が含まれている。これにより、電池用包装材料の成形性及び電池の連続生産性を効果的に高めることができる。従来、金属層3とシーラント層4との間に位置する接着層5は、電池用包装材料の表面に位置する層ではないため、電池用包装材料の滑り性には影響を与えないと考えられていた。このため、従来の電池用包装材料においては、接着層5にアマイド系滑剤を配合することは行われていなかった。ところが、本発明者が検討したところ、上述の通り、シーラント層4だけでなく、接着層5にもアマイド系滑剤を配合することにより、電池用包装材料の成形性及び電池の連続生産性を効果的に高めることができることが明らかとなった。
本発明において、接着層5に含まれるアマイド系滑剤としては、特に制限されず、例えばシーラント層4で例示したものが挙げられる。接着層5に含まれるアマイド系滑剤は、シーラント層4に含まれるものと同一であってもよいし、異なってもよい。接着層5に含まれるアマイド系滑剤としては、電池用包装材料の成形性及び電池の連続生産性を効果的に高める観点から、エルカ酸アミドが特に好ましい。
本発明の電池用包装材料において、接着層5に含まれるアマイド系滑剤の含有量としては、質量基準で、好ましくは300ppm以上、より好ましくは300〜900ppm程度が挙げられる。
3.電池用包装材料の製造方法
本発明の電池用包装材料の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されないが、例えば、以下の方法が例示される。
まず、基材層1、接着層2、金属層3が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層1上又は必要に応じて表面が化成処理された金属層3に接着層2の形成に使用される接着剤を、押出し法、グラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該金属層3又は基材層1を積層させて接着層2を硬化させるドライラミネーション法によって行うことができる。
次いで、積層体Aの金属層3上に、接着層5を介して、シーラント層4を積層させる。例えば、(1)積層体Aの金属層3上に、接着層5及びシーラント層4を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネーション法)、(2)別途、接着層5とシーラント層4が積層した積層体を形成し、これを積層体Aの金属層3上に熱ラミネーション法により積層する方法、(3)積層体Aの金属層3上に、接着層5を形成させるための接着剤を押出し法や溶液コーティングした高温で乾燥さらには焼き付ける方法等により積層させ、この接着層5上に予めシート状に製膜したシーラント層4をサーマルラミネーション法により積層する方法、(4)積層体Aの金属層3と、予めシート状に製膜したシーラント層4との間に、溶融させた接着層5を流し込みながら、接着層5を介して積層体Aとシーラント層4を貼り合せる方法(サンドラミネーション法)、(5) 接着層5の形成に使用される接着剤を、金属層3の上に押出し法、グラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で塗布・乾燥した後に、シーラント層4を積層させて接着層5を硬化させるドライラミネーション法等が挙げられる。なお、接着層2及び必要に応じて設けられる接着層5の接着性を強固にするために、更に、熱ロール接触式、熱風式、近又は遠赤外線式等の加熱処理に供してもよい。このような加熱処理の条件としては、例えば150〜250℃で1〜5分間が挙げられる。
本発明の電池用包装材料において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性等を向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理を施していてもよい。
4.電池用包装材料の用途
本発明の電池用包装材料は、正極、負極、電解質等の電池素子を密封して収容するための包装材料として使用される。
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、本発明の電池用包装材料で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(シーラント層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部のシーラント層同士をヒートシールして密封させることによって、電池用包装材料を使用した電池が提供される。なお、本発明の電池用包装材料を用いて電池素子を収容する場合、本発明の電池用包装材料のシーラント部分が内側(電池素子と接する面)になるようにして用いられる。
本発明の電池用包装材料は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本発明の電池用包装材料が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛畜電池、ニッケル・水素畜電池、ニッケル・カドミウム畜電池、ニッケル・鉄畜電池、ニッケル・亜鉛畜電池、酸化銀・亜鉛畜電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材料の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1〜5及び比較例1〜2
<電池用包装材料の製造>
金属層としてのアルミニウム箔(厚さ40μm)の両面に化成処理を施し、一方の化成処理面に、基材層(厚さ25μm)としてナイロンフィルムを接着剤層の厚さが約3μmとなるようにポリエステル系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせた。次に、実施例1〜3及び比較例1においては、他方のアルミニウム箔の化成処理面に、接着層と、シーラント層を形成するポリオレフィン樹脂を共押出して、基材層/接着層/アルミニウム箔/接着層/シーラント層から構成される積層体を得た。一方、実施例4〜5及び比較例2においては、ドライラミネート法により、アルミニウム箔の他方の化成処理面に、接着層を介して、シーラント層を形成するポリオレフィン樹脂を積層し、基材層/接着層/アルミニウム箔/接着層/シーラント層から構成される積層体を得た。アルミニウム箔とシーラント層との間の接着層、及びシーラント層には、それぞれ、表1に記載の配合量となるようにアマイド系滑剤を配合した。また、これらの層の厚みは、それぞれ表1の通りである。各電池用包装材料の製造は、温度25℃、相対湿度50%の下に行った。また、化成処理は、いずれも、処理液として、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、リン酸からなる水溶液を用い、ロールコート法により塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件において焼付けた。また、クロムの塗布量は10mg/m2(乾燥重量)とした。アマイド系滑剤としては、エルカ酸アミドを用いた。
(40℃での保管)
実施例1〜5及び比較例1〜2の電池用包装材料は、それぞれ、温度40℃において、相対湿度50%下において7日間放置してから、下記の摩擦試験、成形性試験、白粉の確認試験を行った。
(摩擦試験)
摩擦試験は、JIS K7125に準じた方法により測定した。まず、上記で得られた各電池用包装材料を80×200mmのサンプルに切り出した。次に、シーラント層の表面同士が対向するようにして、サンプルを重ね、その上に重石(200g)を置いた。重石の底面にはゴムを貼り、サンプルと重石とも密着させて、滑らないようにした。次に、100mm/分の速度で重石を引っ張り、動摩擦力(N)を測定し、動摩擦力を重石の法線力(1.96N)で除して、動摩擦係数を算出した。得られた結果を以下の基準によって評価した。結果を表1に示す。
○:動摩擦係数が0.3以下
△:動摩擦係数が0.3超、0.7以下
×:動摩擦係数が0.7超
(成形性試験)
上記で得られた各電池用包装材を80×120mm角に裁断してサンプルを作製した。このサンプルを30×50mmの口径を有する形成金型(雌型)と、これに対応した成形金型(雄型)を用いて、押え圧0.4MPaで0.5mmの成形深さから0.5mm単位で成形深さを変えて、それぞれ10個のサンプルについて冷間成形を行った。冷間成形後のサンプルについて、皺やアルミニウム箔にピンホール、クラックが10個のサンプル全てにおいて発生しない最も深い成形深さを、そのサンプルの限界成形深さとした。この限界成形深さから、以下の基準により電池用包装材料の成形性を評価した。結果を表1に示す。
○:限界成形深さ6.0mm以上
△:限界成形深さ4.0mm〜5.5mm
×:限界成形深さ3.5mm以下
(白粉の確認試験)
5×13cmに切った黒画用紙を二つ折りにし、所定の面積(1m2)の上記で得られた各電池用包装材料のシーラント面を強く擦って白粉(ブリードアウトした滑剤)を付着させ、付着度合いを目視で確認した。得られた結果を以下の基準によって評価した。結果を表1に示す。
○:ほぼ付着なし
△:僅かに付着あり
×:付着が目立つ
表1に示される結果から明らかな通り、シーラント層だけでなく、金属層とシーラント層との間に位置する接着層にもアマイド系滑剤を配合した実施例1〜5の電池用包装材料では、40℃という高温下で保管した場合にも、摩擦試験、成形性試験、及び白粉の確認試験の全てにおいて良好であった。
一方、シーラント層のみにアマイド系滑剤を配合した比較例1及び2の電池用包装材料では、40℃という高温下で保管した場合、摩擦試験及び白粉の確認試験結果が劣っていた。