JP6679182B2 - 金属射出成形機の計量方法 - Google Patents

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Description

本発明は、マグネシウム合金、アルミニウム合金等の金属を溶融して型締めされた金型に射出して金属成形品を得る金属射出成形機の計量方法に関するものである。
インラインスクリュ式の射出成形機は従来周知であり、射出装置と型締装置とから概略構成され、射出装置は加熱シリンダとこの加熱シリンダ内で回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュとから構成されている。このようなインラインスクリュ式の射出成形機のうち、射出材料としてマグネシウム合金、アルミニウム合金等の金属を使用し、これを溶融して射出する射出成形機は金属射出成形機と呼ばれている。ところで金属射出成形機のスクリュも、射出材料として樹脂を使用する射出成形機のスクリュと同様に、軸方向にその形状が変化している。例えば金属射出成形機のスクリュはシングルフライトから形成され、そのスクリュ溝はホッパ寄りつまり後方寄りの部分において深く、中間部において徐々に浅くなり、射出ノズル寄りつまり前方寄りにおいて浅くなっている。このようにスクリュが形成されているので、加熱シリンダ内において後方から前方にかけて固体輸送区間、相遷移区間、液体輸送区間が形成される。金属射出成形機において、加熱シリンダをバンドヒータにより加熱し、金属材料をホッパ等から加熱シリンダ内に供給する。そうすると金属材料は固体輸送区間において加熱されながら輸送され、相遷移区間において溶融して次第に固相から液相に遷移し、完全に液相となった金属つまり溶湯が液体輸送区間において前方に送られ、スクリュの先端に計量される。所定量が計量されたらスクリュの回転を停止して計量を完了する。スクリュを軸方向に駆動すると溶湯が金型内に射出され、金属成形品が成形される。
金属射出成形機は、金属を射出材料として使用しているので計量において金属の特性の影響を受ける。具体的には金属材料は、適切な温度においては流動抵抗が小さいが、温度が低下すると粘性が急速に増大するという特徴がある。金属材料が、加熱シリンダ内を前方に送られていくとき、固体輸送区間においては固相を維持し、相遷移区間において順次適切に溶融され、完全に溶融した状態の溶湯が液体輸送区間に送られるようになっていれば問題はない。しかしながら相遷移区間で一度溶融した溶湯が温度が低下してスクリュに凝着する等するとスクリュには非常に大きな回転抵抗が生じる。回転抵抗に抗して大トルクでスクリュを回転するとスクリュの破損につながるのでスクリュのトルクは制限する必要があり、計量を安定させることが難しいという問題がある。金属射出成形機において適切に計量する計量方法が、色々な特許文献において提案されている。
特開平8−281413号公報 特開2003−94159号公報
特許文献1には、スクリュの回転トルクを監視しながら計量する計量方法が記載されている。この計量方法では、スクリュを回転駆動するとき、スクリュの回転トルクが許容最大トルクを越えない間はスクリュを定出力制御で回転する。つまり回転数と回転トルクの積である仕事率が一定になるようにスクリュを回転制御する。しかしながらスクリュの回転トルクが許容最大トルクに達したら、スクリュを許容最大トルクを越えないように定トルク制御で回転する。このときスクリュの回転トルクは許容最大トルクになる。その後、スクリュの回転トルクが許容最大トルクを下回ったら再びスクリュを定出力制御で回転するようにする。
特許文献2には、毎回の成形サイクルにおいて安定的に適切な量の溶湯を射出でき、それによって良品を成形できる金属射出成形機の計量方法が記載されている。この文献によると発明者等は、成形サイクルを連続して実施しているとき、加熱シリンダ内に滞留している溶湯である材料滞留量が所定の範囲に維持されているときは計量・射出する溶湯の量が安定的に適切な範囲になることが保証され、材料滞留量がこの範囲を逸脱すると、ショートショット等の成形不良が発生することを見いだした。この知見に基づき、特許文献2に記載の計量方法においては、加熱シリンダ内に供給する金属材料の供給量を成形サイクル毎に増減し、それによって毎回の成形サイクルにおいて材料滞留量が所定の許容範囲に入るように制御するようにする。ところで材料滞留量は、計量時に検出されるスクリュの背圧と相関する。そこでこの計量方法においては、スクリュの背圧を検出して、これから現在の材料滞留量を推測し、次の成形サイクルにおいて材料滞留量が適切な範囲になるように加熱シリンダ内に供給する金属材料を増減するようにする。
特許文献1に記載の計量方法も、特許文献2に記載の計量方法も、それぞれ適切な量の溶湯を計量でき、適切な量の溶湯を射出できるので、良品が成形でき優れてはいる。ただし、これらの計量方法は所定の成形条件が適切に設定されているときに有効な方法であると言える。つまり計量時におけるスクリュの回転数が所定の値に設定されているとき、その回転トルクが許容最大トルクを越えそうになったらスクリュの回転トルクを許容最大トルクに制御するようにしてスクリュを保護したり、材料滞留量が所定の範囲になるように制御する方法であると言える。しかしながら、これらの文献に記載の方法は、スクリュの回転数を最適な回転数に設定するにはどうしたらよいか、という問題は解決してはいない。一般的にオペレータは計量に関する成形条件として、スクリュの回転数を任意で設定する。設定されたスクリュの回転数が適切であれば、金属材料は適切に溶融されて適切に計量される。しかしながらスクリュの回転数を適切な大きさより大きく設定してしまうと、金属材料は相遷移区間で適切に溶融されず、スクリュの回転トルクが過大となる。スクリュを保護するために、特許文献1に記載の方法のように回転トルクが許容最大トルクを越えないように維持するか、回転数を小さくする必要がある。しかしながら、そのようにすると計量が安定せず適切な量の溶湯を計量できない可能性がある。一方スクリュの回転数を適切な回転数より小さく設定してしまうと、スクリュの先端に計量される溶湯量が不足してしまいショートショットになる問題が発生する。つまり、金属射出成形機においては、適切な回転数が設定されていないと計量が不安定になる。しかしながら、適切な計量ができるようにするために、スクリュの回転数をどのように決定したらよいのか分からないという問題がある。
ところで金属射出成形機においては、スクリュの回転数についてこれを最適な値に決定することが難しい理由がある。一般的な樹脂材料を対象とする射出成形機であっても同様の問題はあるが、金属射出成形機においてこの問題がより明確に現れる。これを説明する。一般的に加熱シリンダは、固体輸送区間、相遷移区間、液体輸送区間の各区間毎に温度制御を実施しており、固体輸送区間は若干低温に維持され、相遷移区間は金属材料が溶融する高温に、そして液体輸送区間は溶湯が液相で維持されるように高温に制御されている。メンテナンス等の理由により連続的な成形サイクルを一時的に停止しているとき、つまり成形サイクルを中断しているとき、加熱シリンダ内の樹脂材料は加熱され続けた状態になる。相遷移区間は、連続的な成形サイクルを実施しているときには金属材料が液相と固相とが混在している区間であるが、成形サイクルを中断しているときには加熱され続けているのでほとんどが液相になっている。この状態で連続的な成形サイクルを開始すると、スクリュの回転トルクはかなり小さい。つまり定常的にに成形サイクルを実施しているときに比してかなり小さい。このときオペレータが回転トルクに余裕があると考えて回転数の設定数を上げる調整をすると、スクリュの輸送量が大きくなりホッパから供給される金属材料の供給量が一時的に増える。金属材料の供給量が増加すると固体輸送区間の温度が低下し、それによって十分に加熱されない金属材料が相遷移区間に送られる。相遷移区間では溶融が不十分になり、スクリュの回転トルクが増大する。増大の程度は樹脂材料を対象とする射出成形機に比してかなり大きい。オペレータはスクリュを保護するために回転数を小さくしなければならない。このように金属射出成形機においては成形サイクルの開始時において、スクリュの回転トルクがかなり低くなってしまうので、適切な回転数を決定する上で、成形サイクルの開始時における回転トルクを参考にしづらいと言える。
本発明は、上記したような問題点を解決した金属射出成形機の計量方法を提供することを目的としてる。具体的には、スクリュの回転数を適切に設定でき、それによって適切に計量することができる金属射出成形機の計量方法を提供することを目的としてる。さらに本発明は、成形サイクルの開始時において計量が不安定となる成形サイクル回数を可及的に少なくすることができる、金属射出成形機の計量方法を提供することも目的としている。
本発明は上記目的を達成するために、加熱シリンダと、該加熱シリンダ内で回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュとからなる射出装置を備えた金属射出成形機において、スクリュを回転して実施する計量方法を対象とする。本発明は、計量におけるスクリュの回転数は、初期回転数に対してトルク−回転数補正により補正して得る。トルク−回転数補正は補正量または補正率であって、予め設定されている回転トルク目標値と、前回の成形サイクルの計量時におけるスクリュの回転トルクの最大値または回転トルクの移動平均の最大値との偏差に基づいてPID演算して得る。なお成形サイクルの開始時には予め設定した回転数でスクリュを回転するようにし、回転トルクの最大値または移動平均の最大値が、予め設定されている制御切換判定トルクを越えたらトルク−回転数補正を実施するようにする。さらに、スクリュの回転数は、加熱シリンダのホッパ側の温度に基づいて補正するようにする。
かくして、請求項1記載の発明は、上記目的を達成するために、加熱シリンダと、該加熱シリンダ内で回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュとからなる射出装置を備えた金属射出成形機において、前記スクリュを回転して金属材料を溶融し前記スクリュの先端に溶湯を計量するとき、所定の回転数の設定値である初期回転数を前記スクリュの回転数として与え、所定のトルク−回転数補正に基づいて前記スクリュの回転数を補正するようにし、前記トルク−回転数補正は、前記スクリュの回転数に加算する補正量または前記スクリュの回転数に乗じる補正率であって、予め設定されている回転トルク目標値と、前回の成形サイクルの計量時における前記スクリュの回転トルクの最大値または回転トルクの移動平均の最大値との偏差に基づいてPID演算して得るようにすることを特徴とする、金属射出成形機の計量方法として構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の計量方法において、成形サイクルを停止した状態から開始するとき、最初の1回または最初の数回の成形サイクルにおいては前記トルク−回転数補正は実施せず、計量時における前記スクリュの回転トルクの最大値または回転トルクの移動平均の最大値が、予め設定されている制御切換判定トルクを越えたら、前記スクリュの回転数は前記トルク−回転数補正に基づいて補正することを特徴とする、金属射出成形機の計量方法として構成される。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の計量方法において、前記スクリュの回転数は前記トルク−回転数補正に基づいて実施する補正に併せ、さらに所定の温度−回転数補正に基づいて補正するようにし、前記温度−回転数補正は、前記スクリュの回転数に加算する補正量または前記スクリュの回転数に乗じる補正率であって、前記加熱シリンダのホッパ側の温度について、その目標温度と実測温度との偏差に基づいてPID演算により得ることを特徴とする、金属射出成形機の計量方法として構成される。
以上によると本発明は、加熱シリンダと、該加熱シリンダ内で回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュとからなる射出装置を備えた金属射出成形機において、スクリュを回転して金属材料を溶融しスクリュの先端に溶湯を計量する計量方法を対象としている。そして本発明は、計量するとき、所定の回転数の設定値である初期回転数をスクリュの回転数として与え、所定のトルク−回転数補正に基づいてスクリュの回転数を補正するようにし、トルク−回転数補正は、初期回転数に加算する補正量または初期回転数に乗じる補正率であって、予め設定されている回転トルク目標値と、前回の成形サイクルの計量時におけるスクリュの回転トルクの最大値または回転トルクの移動平均の最大値との偏差に基づいてPID演算して得るように構成されている。このようにこの発明によると、スクリュの回転数は、前回の成形サイクルにおけるスクリュの回転トルクの最大値または移動平均の最大値に基づいた補正により得られるので、オペレータはスクリュの回転数の調整に悩む必要がなくなる。そして後で詳しく実験について説明するが、このようにしてスクリュの回転数を決定するようにすると、成形サイクルを繰り返すことによってスクリュの回転数は適切な値に収束し、計量も安定することが確認された。つまり本発明により、適切な計量をすることができるスクリュの回転数が自動的に決定されることが確認された。他の発明によると、成形サイクルを停止した状態から開始するとき、最初の1回または最初の数回の成形サイクルにおいてはトルク−回転数補正は実施せず、計量時におけるスクリュの回転トルクの最大値または回転トルクの移動平均の最大値が、予め設定されている制御切換判定トルクを越えたら、スクリュの回転数はトルク−回転数補正に基づいて補正するように構成される。成形サイクルの開始時には、計量が安定しない不安定期間がある程度発生するが、この発明によって不安定期間が短縮化される。つまり早期に適切な成形サイクルを実施できることになる。他の発明によると、スクリュの回転数はトルク−回転数補正に基づいて実施する補正に併せ、さらに所定の温度−回転数補正に基づいて補正するようにし温度−回転数補正は、スクリュの回転数に加算する補正量またはスクリュの回転数に乗じる補正率であって、加熱シリンダのホッパ側の温度について、その目標温度と実測温度との偏差に基づいてPID演算により得るように構成される。計量が不安定になる要因として、加熱シリンダのホッパ側の温度が目標温度と相違していることがある。この発明によって、ホッパ側の温度について目標温度と実測温度の偏差に基づいて回転数を補正するようにするので、計量が安定することになる。
本発明の実施の形態に係る金属射出成形機の射出装置の正面断面図である。 本発明の実施の形態に係る金属射出成形機の計量方法を説明するフローチャートである。 成形サイクルを開始し、成形サイクルを繰り返したときの、計量時におけるホッパ側加熱シリンダ温度とスクリュ回転トルク最大値とスクリュ回転数の、それぞれの変化を示すグラフで、その(ア)〜(ウ)は、それぞれ異なる種類の本実施の形態に係る計量方法を実施したときのグラフである。
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の実施の形態に係る金属射出成形機の計量方法は、特別なセンサや特別な機構を必要としないので、従来の一般的な金属射出成形機において実施が可能である。金属射出成形機は、従来周知のように射出装置1、型締装置等から構成されているが、図1には射出装置1のみが示されている。この実施の形態に係る射出装置1も、加熱シリンダ2と、この加熱シリンダ2内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュ4とから構成されている。加熱シリンダ2には、その後方にホッパ6が設けられ金属材料が加熱シリンダ2内に供給されるようになっている。この実施の形態においては、材料の供給量を制御する材料供給装置は格別に設けられていないがホッパ6と加熱シリンダ2の間に設けるようにしてもよい。加熱シリンダ2の先端には射出ノズル7が設けられ、図1に示されていない金型のスプルに所定のタッチ力で当接している。
本実施の形態に係る射出装置1のスクリュ4は、いわゆるシングルフライトからなり、後方寄りはスクリュ溝が深い区間になっており、中間の所定の区間においてスクリュ溝が徐々に浅くなり、前方寄りにおいてスクリュ溝が浅い区間になっている。このように形成されているスクリュ4によって加熱シリンダ2内は、後方から前方にかけて3個の区間に区分されている。すなわち金属材料を加熱しながら固体状態で前方に輸送する固体輸送区間9、金属材料が溶融して固相から液相に遷移する相遷移区間10、液相になった金属材料すなわち溶湯が前方に送られる液体輸送区間11に区分されている。加熱シリンダ2には、図1には示されていないがその外周面に複数のバンドヒータが設けられている。また図1にはホッパ6側の温度センサ13、14しか示されていないが、熱電対からなる複数の温度センサが加熱シリンダ2に設けられている。従って、固体輸送区間9、相遷移区間10、液体輸送区間11について、独立して温度制御できるようになっている。スクリュ4は、スクリュ駆動機構16によって駆動されるようになっている。スクリュ駆動機構16においてはスクリュ4の回転トルクが検出されるようになっている。
本実施の形態に係る金属射出成形機にも従来の金属射出成形機と同様にコントローラ18が設けられており、射出装置1はコントローラ18によって制御されるようになっている。コントローラ18には、本実施の形態に係る計量方法、すなわち本実施の形態に係る金属射出成形機の計量方法を実施するためのソフトウエアが設けられている。この計量方法は、計量時におけるスクリュ4の回転数を自動的に決定する点に特徴がある。さらに詳しく言うと、スクリュ4の回転数は所定の回転数である初期回転数が与えられ、これに対して色々な補正が実施されて決定される点に特徴がある。このソフトウエアの機能ブロックが図1に示されている。まずソフトウエアには、スクリュ4の回転数を与える初期回転数設定部29が設けられている。この初期回転数設定部29には、オペレータが所定の初期回転数を設定している。ソフトウエアには、トルク−回転数補正演算部21と、温度−回転数補正演算部22とがあり、これらによって初期回転数を補正するための補正量、または補正値が計算される。ソフトウエアには、さらに制御切換判定部23と、回転数演算設定部24が設けられている。これらの機能ブロックについて説明する。
トルク−回転数補正演算部21は、スクリュ4に対して与えられている回転数に対して、これを補正するための補正データを演算する機能ブロックであり、回転数に加算する補正量、または回転数に乗じる補正率を演算する。スクリュ4に対しては、初期回転数設定部29において設定されている初期回転数が与えられるので、これに対する補正量、補正率を演算することになる。補正量は0より大きいと補正後の回転数が大きくなり、小さいと補正後の回転数が小さくなる。補正率は1.0より大きいと補正後の回転数が大きくなり、小さいと補正後の回転数が小さくなる。トルク−回転数補正演算部21には、スクリュ駆動機構16において検出されるスクリュ4の回転トルクが入力されており、成形サイクルの計量工程においてこの回転トルクの最大値を検出するようになっている。または回転トルクの移動平均をとって、移動平均の最大値を検出するようになっている。以後これらをまとめて単に回転トルクの最大値と呼ぶ。コントローラ18内の回転トルク目標値設定部26には、予めオペレータによってスクリュ4の回転トルク目標値が設定されており、この回転トルク目標値もトルク−回転数補正演算部21に入力されている。トルク−回転数補正演算部21では、回転トルク目標値と、前回の成形サイクルの計量時におけるスクリュ4の回転トルクの最大値との偏差を計算する。そしてこの偏差に基づいてPID演算を実施して、スクリュ4の回転数に対する補正量または補正率を得る。PID演算においては、比例・積分、微分の各要素が調整され、偏差が少なくなるように演算する。具体的には、前回の回転トルクの最大値が回転トルク目標値より大きいときには今回のスクリュ4の回転数が前回より小さくなるように、回転トルク目標値より小さいときには今回のスクリュ4の回転数が前回より大きくなるように補正量または補正率を演算する。トルク−回転数補正演算部21は演算した補正量または補正率を回転数演算設定部24に送る。
温度−回転数補正演算部22は、トルク−回転数補正演算部21と同様に、スクリュ4に対して与えられている回転数に対して、これを補正するための補正データを演算する機能ブロックであり、回転数に加算する補正量または回転数に乗じる補正率を演算する。温度−回転数補正演算部22には、温度センサ13、14からの信号が入力され、ホッパ6近傍の加熱シリンダ2の温度、つまりホッパ側加熱シリンダ温度の実測温度が入力されている。また予めオペレータによって、ホッパ側加熱シリンダ温度目標値設定部27に設定されている目標温度も入力されている。温度−回転数補正演算部22は、実測温度と目標温度との偏差を計算し、偏差に基づいてPID演算により補正量または補正率を計算する。PID演算の比例・積分、微分の各要素は調整され、実測温度が目標温度より大きいときは補正後の回転数が大きくなるように、そして実測温度が目標温度より小さいときには補正後の回転数が小さくなるように、それぞれ補正量または補正率が計算されるようになっている。温度−回転数補正演算部22は、求めた補正量または補正率を回転数演算設定部24に送る。
制御切換判定部23は、制御の切換を判定する機能ブロックである。本実施の形態に係る計量方法おいては、成形サイクルの開始時にはトルク−回転数補正演算部21による演算は停止する。つまり回転トルクに基づいてスクリュ4の回転数を補正することはしない。しかしながら所定の条件が満たされれば、トルク−回転数補正演算部21による演算を開始する。つまりスクリュ4の回転トルクに基づいて回転数の補正を開始する。このように条件に基づいて判定し、制御を切換える処理をこの機能ブロックが実施する。制御切換判定部23には、スクリュ駆動機構16からのスクリュ4の回転トルクと、オペレータが予め制御切換判定トルク設定部28に設定している制御切換判定トルクとが入力されている。これらによって制御切換の判定をする。まず、制御切換判定部23は、成形サイクルの計量工程においてスクリュ4の回転トルクの最大値を検出する。これは移動平均の最大値でもよく、以後単に回転トルクの最大値とする。制御切換判定部23はこのような回転トルクの最大値が、制御切換判定トルクを越えたか否かを監視する。越えたら次回の成形サイクルから制御を切換える。つまりトルク−回転数補正演算部21に通知し、演算を開始するようにする。
回転数演算設定部24は、スクリュ4の回転数を演算により得、得られた回転数に基づいて計量工程においてスクリュ4を回転する機能ブロックである。初期回転数に対して、トルク−回転数補正演算部21、温度−回転数補正演算部22で得られたそれぞれの補正量を加算し、あるいはそれぞれの補正率を乗じるようになっている。
図2によって、スクリュ4の回転数を計算する方法を説明する。成形サイクルを開始すると、まず初期回転数設定S1を実行する。すなわち、回転数演算設定部24は初期回転数設定部29から送られてくる初期回転数をスクリュ4の回転数として設定する。次いで温度−回転数補正演算S2を実施する。すなわち温度−回転数補正演算部22において補正量または補正率を計算し、これを回転数演算設定部24が受けとる。回転数演算・制御S3において、初期回転数にこの補正量を加算、または補正率を乗じる。つまり回転数を演算する。この回転数によってスクリュ4を回転する。計量工程が完了したら制御切換判定部23において制御切換の判定をする。つまりスクリュ4の回転トルクの最大値が制御切換判定トルクを越えたか否かを判定する。もし越えていなければ、初期回転数設定S1に戻る。つまり次の成形サイクルにおいて同様の処理を繰り返す。一方、越えていれば次の成形サイクルにおいて、次の処理S4に移行する。まず、初期回転数設定S4として、回転数演算設定部24は初期回転数設定部29から送られてくる初期回転数をスクリュ4の回転数として得る。次にトルク−回転数補正演算S5を実施する。すなわちトルク−回転数補正演算部21において補正量または補正率を計算し、これを回転数演算設定部24が受けとる。次いで、温度−回転数補正演算S6を実施する。すなわち温度−回転数補正演算部22において補正量または補正率を計算し、これを回転数演算設定部24が受けとる。回転数演算・制御S7において、初期回転数にこれらの補正量を加算、または補正率を乗じる。つまりトルク−回転数補正演算部21による補正と、温度−回転数補正演算部22による補正を実施する。今回の成形サイクルの計量において、このようにして補正された回転数でスクリュ4を回転する。連続成形を継続する場合、初期回転数設定S4に戻り成形サイクルを繰り返す。
本実施の形態に係る金属射出成形機の計量方法が計量の安定化に有効であることを確認するため、実験を行った。
実験準備:
本実施の形態に係る金属射出成形機において、成形条件を調整しながら成形サイクルを繰り返し、良品が成形できるようにした。このときの計量工程におけるスクリュ4の回転数を基準とし、これより1%だけ大きい値を計算しこれを初期回転数として初期回転数設定部29に設定した。つまり初期回転数は良品が得られたときの回転数の101%の大きさとした。制御切換判定トルク設定部28に設定した制御切換判定トルクと、回転トルク目標値設定部26に設定した回転トルク目標値とは同じ値とした。ホッパ側シリンダ温度目標値設定部27に設定した目標温度は、良品が得られたときの温度センサ13、14における温度とした。
実験1:
成形サイクルを所定時間停止した後に成形サイクルを開始した。計量工程においては、本実施の形態に係る金属射出成形機の計量方法を実施した。すなわち、最初の成形サイクルの計量工程においては、初期回転数に対し、温度−回転数補正演算部22で得られた補正率を乗じて回転数を決定しスクリュ4を回転した。2回目の成形サイクルも同様に、初期回転数に対し、温度−回転数補正演算部22で得られた補正率を乗じて回転数を決定しスクリュ4を回転した。これを繰り返したところ数回目の成形サイクルの計量工程において、スクリュ4の回転トルクの最大値は制御切換判定トルクを超えたので、以降の成形サイクルの計量工程においては、トルク−回転数補正演算部21と温度−回転数補正演算部22とでそれぞれ補正率を計算し、初期回転数に対してこれらを乗じて回転数を演算し、この回転数でスクリュ4を回転した。成形サイクルを繰り返し実施し、ホッパ側加熱シリンダ温度、スクリュ4の回転トルクの最大値、スクリュ4の回転数のそれぞれの変化について、横軸に成形サイクルの回数を採ってグラフを作成した。これを図3の(ア)に示す。
実験1の考察:
符号30に示されているように、開始からわずか24回目以降の成形サイクルにおいて、図3の(ア)のグラフのように、ホッパ側加熱シリンダ温度の実測値が目標温度31に収束し、スクリュ4の回転トルクの最大値が回転トルク目標値32に収束し、それによってスクリュ4の回転数も安定した。なお安定したスクリュ4の回転数は初期回転数33より1%だけ低い大きさであった。つまりスクリュ4の回転数は、良品が成形できる回転数に自動的に調整されたと言える。なお、成形サイクルが不安定であった最初の23回までは次のようになった。まず、スクリュ4の回転トルクの最大値は成形サイクルの開始直後に小さな値になった。これは成形サイクル中断中に加熱シリンダ2内の相遷移区間10の金属材料が全て液相になっていて回転トルクが低下したからである。ホッパ側加熱シリンダ温度の実測温度は目標温度31に一致していたが、数回の成形サイクルにおいて一時的に低下した。これは初期回転数33が高かったことにより、金属材料が多く加熱シリンダ2内に投入されて実測温度が低下したからである。これによってその後の成形サイクルにおいてスクリュ4の回転トルク最大値が大きくなり、回転トルク最大値と回転トルク目標値32の偏差が大きくなって、基準回転数演算部21の機能によってスクリュ4の回転数が小さくなった。しかしながら、ホッパ側加熱シリンダ温度の実測温度、スクリュ4の回転トルク最大値、スクリュ4の回転数の変化幅は比較的小さく、24回目の成形サイクルでこれらが安定したことは前述の通りである。
実験2:
成形サイクルを所定時間停止した後に成形サイクルを開始した。計量工程においては、本実施の形態に係る金属射出成形機の計量方法を変形した計量方法を実施した。具体的には、温度−回転数補正演算部22と制御切換判定部23の動作を停止し、トルク−回転数補正演算部21のみによりスクリュ4の回転数を補正するようにした。なお、最初の成形サイクルの計量工程においては、スクリュ4の回転数は初期回転数とした。成形サイクルを繰り返し実施したときについて、ホッパ側加熱シリンダ温度、スクリュ4の回転トルクの最大値、スクリュ4の回転数のそれぞれの変化について、横軸に成形サイクルの回数を採ってグラフを作成した。これを図3の(イ)に示す。
実験2の考察:
符号30に示されているように、ホッパ側加熱シリンダ温度の実測値が目標温度31に収束し、スクリュ4の回転トルクの最大値が回転トルク目標値32に収束し、それによってスクリュ4の回転数も安定したのは、開始から48回目以降の成形サイクルであった。つまり実験1に比して、収束するまで時間がかかった。なお、安定したスクリュ4の回転数は初期回転数33より1%だけ低く、実験1と同様の結果となった。つまりトルク−回転数補正演算部21のみによって回転数を補正するようにしても、スクリュ4の回転数は、良品が成形できる回転数に自動的に調整されたと言える。この制御においては、最初の数回目の成形サイクルにおいてスクリュ4の回転数が非常に大きくなっている。これは成形サイクル開始直後の計量時にスクリュ4の回転トルク最大値が小さかったからであり、温度−回転数補正演算部22を停止していたことによりホッパ側加熱シリンダ温度による補正が働かず、回転数は非常に大きくなった。この制御では、ホッパ側加熱シリンダ温度の実測温度、スクリュ4の回転トルク最大値、スクリュ4の回転数が収束して安定するまでは、変化幅は大きくなった。
実験3:
成形サイクルを所定時間停止した後に成形サイクルを開始した。計量工程においては、本実施の形態に係る金属射出成形機の計量方法を変形した計量方法を実施した。具体的には、温度−回転数補正演算部22の動作を停止し、トルク−回転数補正演算部21と制御切換判定部23だけでスクリュ4の回転数を演算するようにした。成形サイクルを繰り返し実施したときについて、ホッパ側加熱シリンダ温度、スクリュ4の回転トルクの最大値、スクリュ4の回転数のそれぞれの変化について、横軸に成形サイクルの回数を採ってグラフを作成した。これを図3の(ウ)に示す。
実験3の考察:
符号30に示されているように、ホッパ側加熱シリンダ温度の実測値が目標温度31に収束し、スクリュ4の回転トルクの最大値が回転トルク目標値32に収束し、それによってスクリュ4の回転数も安定したのは、開始から36回目以降の成形サイクルであった。つまり実験1に比して、収束するまで時間がかかったが、実験2に比して短期間で収束した。なお、安定したスクリュ4の回転数は初期回転数33より1%だけ低く、実験1と同様の結果となった。この制御では、成形サイクルの開始から収束するまでの間、ホッパ側加熱シリンダ温度の実測温度、スクリュ4の回転トルク最大値、スクリュ4の回転数の変化幅は多少大きかったが、実験2よりは小さくなった。これは、開始から数回目の成形サイクルまでは、制御切換設定部23により初期回転数でスクリュ4を回転するようにしたからであり、大きく変動するスクリュ4の回転トルク最大値の影響を受けなかったからであると考えられる。
1 射出装置
2 加熱シリンダ
4 スクリュ
6 ホッパ
7 射出ノズル
9 固体輸送区間
10 相遷移区間
11 液体輸送区間
13、14 温度センサ
16 スクリュ駆動機構
18 コントローラ
21 トルク−回転数補正演算部
22 温度−回転数補正演算部
23 制御切換判定部
24 回転数演算設定部
26 回転トルク目標値設定部
27 ホッパ側加熱シリンダ温度目標値設定部
28 制御切換判定トルク設定部
29 初期回転数設定部

Claims (3)

  1. 加熱シリンダと、該加熱シリンダ内で回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュとからなる射出装置を備えた金属射出成形機において、前記スクリュを回転して金属材料を溶融し前記スクリュの先端に溶湯を計量するとき、
    所定の回転数の設定値である初期回転数を前記スクリュの回転数として与え、
    所定のトルク−回転数補正に基づいて前記スクリュの回転数を補正するようにし、
    前記トルク−回転数補正は、前記スクリュの回転数に加算する補正量または前記スクリュの回転数に乗じる補正率であって、予め設定されている回転トルク目標値と、前回の成形サイクルの計量時における前記スクリュの回転トルクの最大値または回転トルクの移動平均の最大値との偏差に基づいてPID演算して得るようにすることを特徴とする、金属射出成形機の計量方法。
  2. 請求項1に記載の計量方法において、成形サイクルを停止した状態から開始するとき、最初の1回または最初の数回の成形サイクルにおいては前記トルク−回転数補正は実施せず、計量時における前記スクリュの回転トルクの最大値または回転トルクの移動平均の最大値が、予め設定されている制御切換判定トルクを越えたら、前記スクリュの回転数は前記トルク−回転数補正に基づいて補正することを特徴とする、金属射出成形機の計量方法。
  3. 請求項1または2に記載の計量方法において、前記スクリュの回転数は前記トルク−回転数補正に基づいて実施する補正に併せ、さらに所定の温度−回転数補正に基づいて補正するようにし、
    前記温度−回転数補正は、前記スクリュの回転数に加算する補正量または前記スクリュの回転数に乗じる補正率であって、前記加熱シリンダのホッパ側の温度について、その目標温度と実測温度との偏差に基づいてPID演算により得ることを特徴とする、金属射出成形機の計量方法。
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