JP6678437B2 - SiC単結晶インゴットの製造方法及びSiC単結晶インゴット並びにSiC単結晶ウェハ - Google Patents

SiC単結晶インゴットの製造方法及びSiC単結晶インゴット並びにSiC単結晶ウェハ Download PDF

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Description

この発明は、炭化珪素(SiC)単結晶インゴットの製造方法及びSiC単結晶インゴット並びにSiC単結晶ウェハに関し、詳しくは、ドーピング元素として窒素を含んで所定の抵抗率を有しながら、インゴット成長方向の成長履歴の解析が可能な複数の成長縞マーカーを備えるようにして、製造後にそのインゴット自体の成長速度や結晶成長表面の形状等の成長履歴が解析できるようにするSiC単結晶インゴットの製造方法、及びそれによって得られたSiC単結晶インゴット並びにSiC単結晶ウェハに関するものである。
炭化珪素は、2.2〜3.3eVの広い禁制帯幅を有するワイドバンドギャップ半導体であり、その優れた物理的、化学的特性から、例えば、高周波電子デバイス、高耐圧・高出力電子デバイス、青色から紫外にかけての短波長光デバイス等をはじめとして、SiCによるデバイス(半導体素子)作製の研究開発が盛んに行われている。
SiCデバイスの実用化を進めるにあたっては、大口径のSiC単結晶を製造することが求められ、現在、その多くは、種結晶を用いた昇華再結晶法(改良レーリー法、改良型レーリー法等と呼ばれる)によってバルクのSiC単結晶を成長させている。すなわち、結晶育成用の坩堝を形成する坩堝本体にSiCの昇華原料を収容し、坩堝の蓋体にはSiC単結晶からなる種結晶を取り付けて、このような坩堝のまわりを断熱材で覆い、二重石英管の内部に設置して、雰囲気制御をしながら、誘導加熱コイルにより昇華原料側を高温にし、種結晶側を低温にして、成長方向に温度勾配を形成して原料を昇華させることで、再結晶により種結晶上にSiC単結晶を成長させる。そして、略円柱状をしたSiCのバルク単結晶(SiC単結晶インゴット)を得た後は、一般には、300〜600μm程度の厚さに切り出してSiC単結晶ウェハを製造する。また、このSiC単結晶ウェハに対して、更に熱CVD法等によりSiCエピタキシャル膜を成長させて、エピタキシャルSiC単結晶ウェハとしてSiCデバイスの作製に供される。
このような昇華再結晶法では、坩堝内が2000℃を超える温度に達してSiC単結晶の成長が行われるため、得られるSiC単結晶インゴットには不可避的な内部応力が発生して、最終的にはSiC単結晶ウェハとしたときに弾性歪や転位(塑性歪)として残留すると考えられる。例えば、現在市販されているSiC単結晶ウェハには、基底面転位(BPD)が2×10〜2×10(個/cm2)、貫通螺旋転位(TSD)が8×10〜10(個/cm2)、貫通刃状転位(TED)が5×10〜2×10(個/cm2)存在するとの報告がある(非特許文献1参照)。このうち、BPDはデバイスの酸化膜不良を引き起こして絶縁破壊の原因となり、また、TSDはデバイスのリーク電流の原因となることが知られており、高性能SiCデバイスの作製のためには、これらBPDやTSDの少ないSiC単結晶が求められる。
また、昇華再結晶法では、通常、インゴット先端の結晶成長端面が凸面形状を有するようにする。詳しくは、成長結晶の周辺部における成長表面の任意の地点の温度tと、この点と種結晶からの距離が等しいインゴット中心部の温度tとの差(Δt=t−t)が正となるように、坩堝内の成長空間において、成長方向に向かって適度な凸形状の等温線が形成されるようにする。これは、結晶成長面においてその中心部から周辺部に向けて結晶成長がなされるようにすることで、多結晶の発生を制御すると同時に、目的とするポリタイプを安定成長させて、欠陥の少ない良質な単一ポリタイプのSiC単結晶インゴットを製造するためである。
ところが、結晶成長中の坩堝内は上述したような高温になるため、温度分布を実測することは事実上不可能であり、成長結晶や種結晶を最適な温度分布にするための坩堝構造や加熱条件等を設定するにあたっては、シミュレーションを用いた温度分布解析に頼らざるを得ない。また、得られたSiC単結晶インゴットについて、その製造過程での結晶成長面の形状や結晶成長の程度(すなわち成長速度)を製造後に把握することも極めて困難である。
そこで、結晶成長中にドーピング元素である窒素のガス流量をパルス状に増加させて、窒素濃度(窒素原子濃度)が相対的に高い高窒素濃度領域を形成することで、インゴットの成長方向に所定の間隔で成長縞マーカーを設けることが行われている(例えば特許文献1、非特許文献2参照)。このように窒素濃度を高くして炭化珪素を成長させた領域は、他の領域に比べて外見上黒く見えることから(非特許文献2のFig.3にその様子が示されている)、インゴット成長方向における成長縞マーカーの間隔(距離)をパルス状にガス流量を増加させたタイミング(時間)で除することで、その成長縞マーカー間の領域での成長速度を算出することができる。
しかしながら、外見上周辺よりも黒く見えるような成長縞マーカーを形成するためには、少なくとも窒素濃度が、周辺よりも25%以上高い濃度で必要になり、このような高窒素濃度領域の部分ではSiCデバイスの作製で求められるSiC単結晶の抵抗率(通常は0.015Ωcm以上0.025Ωcm以下)から外れてしまう危険性が高い。また、窒素濃度が高くなり過ぎると3Cポリタイプの多結晶核が生成し易いといった問題もある。そのため、このような従来の成長縞マーカーを形成したインゴットは、成長速度等を参考にするための参照用インゴットとして使用されるものであり、SiCデバイスの作製に用いられる製品インゴットそのものについて、成長速度や結晶成長表面の形状等といった成長履歴を直接測定することにはならない。
特開2014−189419号公報(段落0037、図6)
大谷昇、SiC及び関連ワイドギャップ半導体研究会第17回講演会予稿集、2008、p8 H.-J. Rost et al., Materials Science and Engineering B61-62 (1999) 68-72
そこで、本発明者らは、デバイス作製に供されるSiC単結晶インゴットを製造した後に、任意の時点における結晶の成長速度や結晶成長表面の形状等を直接解析することを可能にするための手段について鋭意検討した結果、種結晶上に成長させるSiC単結晶の抵抗率がSiCデバイスとして求められる製品の規格値に収まるようにしながら、その抵抗率の範囲内でドープする窒素元素の窒素濃度に濃淡を設けて成長縞マーカーを形成し、光の吸収スペクトルや透過スペクトル、或いは抵抗率等を測定することで、SiCデバイスの作製に用いられる製品インゴットそのものの成長速度や結晶成長表面の形状等の成長履歴を解析することができるようになることを見出し、本発明を完成した。
したがって、本発明の目的は、製造したSiC単結晶インゴットそのものについて、成長速度や結晶成長表面の形状等の成長履歴を解析することが可能になるSiC単結晶インゴットの製造方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、上記のような成長履歴を解析することが可能なSiC単結晶インゴットを提供することにあり、更に、本発明の別の目的は、そのSiC単結晶インゴットの成長履歴が解析可能な情報(成長縞マーカー)を備えて切り出されたSiC単結晶ウェハを提供することにある。
すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)種結晶を備えた坩堝内で昇華原料を加熱する昇華再結晶法により、窒素をドープして種結晶上に炭化珪素(SiC)単結晶を成長させるSiC単結晶インゴットの製造方法であって、SiC単結晶の抵抗率が0.015Ωcm以上0.025Ωcm以下の範囲内となるようにしながら、SiC単結晶に取り込まれる窒素ドープ量を変化させて窒素濃度の濃淡を設けて、種結晶側からSiC単結晶の先端にかけてのインゴット成長方向の成長履歴を解析することが可能な複数の成長縞マーカーを形成することを特徴とするSiC単結晶インゴットの製造方法。
(2)成長縞マーカーは、光の吸収若しくは透過スペクトル、又は抵抗率の少なくとも1つの測定により成長履歴の解析が可能なものである(1)に記載のSiC単結晶インゴットの製造方法。
(3)SiC単結晶に取り込まれる窒素ドープ量の変化は、成長雰囲気に導入する窒素量を調整するか、成長雰囲気の圧力を調整するか、成長雰囲気の温度を調整するか、又はこれらの組み合わせにより行う(1)又は(2)に記載のSiC単結晶インゴットの製造方法。
(4)SiC単結晶に取り込まれる窒素ドープ量の変化を成長雰囲気に導入する窒素量の調整で行うにあたり、成長雰囲気に導入する窒素ガスの流量を所定の時間でパルス状に減少させる(3)に記載のSiC単結晶インゴットの製造方法。
(5)成長雰囲気に導入する窒素ガスの流量を2時間以上24時間以下の間隔でパルス状に減少させる(3)又は(4)に記載のSiC単結晶インゴットの製造方法。
(6)成長雰囲気に導入する窒素ガスの流量をパルス状に減少させる際の減少保持時間が1分間以上15分間以下である(4)又は(5)に記載のSiC単結晶インゴットの製造方法。
(7)ドーピング元素として窒素を含んだ炭化珪素(SiC)単結晶を種結晶上に備えたSiC単結晶インゴットであって、SiC単結晶の抵抗率が0.015Ωcm以上0.025Ωcm以下であり、種結晶側からSiC単結晶の先端にかけてのインゴット成長方向の成長履歴を解析することが可能な複数の成長縞マーカーが、前記抵抗率の範囲内での窒素濃度の濃淡に基づき形成されていることを特徴とするSiC単結晶インゴット。
(8)成長縞マーカーは、光の吸収若しくは透過スペクトル、又は抵抗率の少なくとも1つの測定により成長履歴の解析が可能なものである(7)に記載のSiC単結晶インゴット。
(9)成長縞マーカーは、インゴット成長方向に0.3mm以上1.5mm以下の幅を有する(7)又は(8)に記載のSiC単結晶インゴット。
(10)成長縞マーカーは、インゴット成長方向に1mm以上12mm以下の間隔を有して互いに隣接する(7)〜(9)のいずれかに記載のSiC単結晶インゴット。
(11)SiC単結晶において成長縞マーカーを形成するSiCマーカー部の抵抗率は、成長縞マーカー間の隙間を形成するSiC隙間部の抵抗率に比べて高い(7)〜(10)のいずれかに記載のSiC単結晶インゴット。
(12)成長履歴の解析により得られる情報が、インゴット成長方向の任意の位置における結晶成長速度、及び、インゴット成長方向の結晶成長表面形状である(7)〜(11)のいずれかに記載のSiC単結晶インゴット。
(13)ドーピング元素として窒素を含んだ炭化珪素(SiC)単結晶からなるSiC単結晶ウェハであって、抵抗率が0.015Ωcm以上0.025Ωcm以下であり、該ウェハの表面において、他の領域に比べて抵抗率が高い高抵抗領域が、円状又は円弧状に形成されていることを特徴とするSiC単結晶ウェハ。
本発明によれば、デバイス作製等に用いられる製品インゴットそのものについて、成長履歴が解析可能な成長縞マーカーを付与してSiC単結晶インゴットを製造することができる。すなわち、このような成長縞マーカーを利用すれば、製造したインゴットのある時点での成長速度や結晶成長表面の形状等の成長履歴を後から解析することが可能になる。
そのため、SiC単結晶ウェハにした後でも、そのインゴットにおける切り出した位置情報に基づき、実際にそのSiC単結晶ウェハがどのような成長過程を経てSiC単結晶に成長したものであるのかを解析することができ、例えば、転位密度が他に比べて高いことが判明したときには、インゴットの製造過程の条件等からその原因を追究するようなことも可能になる。
図1(a)はSiC単結晶インゴットにおける成長縞マーカーの様子を模式的に示した説明図であり、図1(b)はSiC単結晶ウェハにおける成長縞マーカーの様子を模式的に示した説明図である。 図2は、SiC単結晶インゴットを製造する際の窒素ガス流量の変化の様子を模式的に示した説明図である。 図3(a)、(b)は、SiC単結晶ウェハにおける成長縞マーカーの様子を模式的に示した別の説明図である。 図4(a)はSiC単結晶インゴットにおける成長縞マーカーの様子を模式的に示した別の説明図であり、図4(b)はSiC単結晶ウェハにおける成長縞マーカーの様子を模式的に示した別の説明図である。 図5は、SiC単結晶インゴットの製造に用いた単結晶成長装置を示す模式説明図である。 図6は、実施例1のSiC単結晶インゴットの製造における成長雰囲気中の窒素分圧を示すグラフである。 図7は、実施例1で得られたSiC単結晶インゴットにおける成長縞マーカーの様子を模式的に示した説明図である。 図8は、実施例1のSiC単結晶インゴットから切り出したSiC単結晶ウェハの面内抵抗率を測定した結果である。 図9は、実施例1のSiC単結晶インゴットから切り出した別のSiC単結晶ウェハの面内抵抗率を測定した結果である。 図10は、実施例1においてSiC単結晶インゴットからSiC単結晶ウェハを切り出す際の様子を模式的に示した説明図である。 図11は、実施例1で得られたSiC単結晶インゴットを成長縞マーカーに基づき形状(高さ)を解析した結果を示すグラフである。
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明においては、種結晶を備えた坩堝内で昇華原料を加熱する昇華再結晶法により、窒素をドープして種結晶上に炭化珪素(SiC)単結晶を成長させてSiC単結晶インゴットを製造するにあたり、SiC単結晶の抵抗率が0.015Ωcm以上0.025Ωcm以下の範囲内となるようにしながら、SiC単結晶に取り込まれる窒素ドープ量を変化させて窒素濃度の濃淡を設けて、インゴット成長方向に複数の成長縞マーカーを形成するようにする。SiC単結晶の抵抗率が0.015Ωcm以上0.025Ωcm以下の範囲内となるようにするのは、SiCデバイスの作製に用いられることを考慮するものであり、例えば、パワー半導体や青色LED用の窒化ガリウム基板等に利用するうえで、このような抵抗率を有するものが通常使用されるためである。
ドーピング元素が全て窒素(N)であるとした場合、上記のような抵抗率を示すSiC単結晶とするには、窒素原子濃度(窒素濃度)は1.2×1019cm−3以上1.6×1019cm−3以下程度が必要となり、この窒素濃度では窒素濃度の揺らぎ等を考慮すると目視で判別することが可能な成長縞マーカーを実際に形成することはできない。そのため、形成した成長縞マーカーは、例えば、光の吸収スペクトルや透過スペクトルを測定するか、抵抗率を測定するなどして判別すればよい。これらの分析は非破壊で行うことができるため好都合であり、なかでも、渦電流法等による非接触抵抗率測定は、非破壊でありながら簡便な測定法であることから、成長縞マーカーの位置を観察する方法として好適である。
SiC単結晶に取り込まれる窒素ドープ量を変化させる手段としては、特に制限はないが、例えば、成長雰囲気に導入する窒素量を調整するか、成長雰囲気の圧力を調整するか、成長雰囲気の温度を調整するか、或いはこれらの組み合わせにより行うことができる。このうち、成長雰囲気の圧力調整については、成長雰囲気中での窒素量が一定の場合に圧力が高くなると窒素分圧が上がるため、SiC単結晶に窒素が取り込まれ易くなる。一方、成長雰囲気の温度が低くなると、昇華ガスの平衡状態はSiがよりリッチな状態(つまりCが不足)となるため、やはりSiC単結晶に窒素が取り込まれ易くなる。そのため、成長雰囲気の圧力や温度を調整することでSiC単結晶に取り込まれる窒素ドープ量を変化させることが可能であるが、最も簡便にかつ、直接的に制御するには、好ましくは、成長雰囲気に導入する窒素量を調整するのがよい。
成長縞マーカーを形成するにあたり、SiC単結晶に取り込まれる窒素ドープ量を変化させて窒素濃度の濃淡を設けるには、例えば、正弦波や三角波、鋸歯状波で表されるように、SiC単結晶に取り込まれる窒素の変化量が連続的に増加と減少を繰り返すようにしてもよく(本発明ではこれらを連続波とする)、一定の幅を持った矩形波(本発明ではパルスとする)のように、SiC単結晶に取り込まれる窒素の変化量が断続的に増加又は減少を繰り返す(或いはこれらを交互に繰り返す)ようにしてもよい。なかでも、成長縞マーカーと成長マーカー以外の領域(成長縞マーカー間の隙間)との区別をより明確にできることから、好ましくは、後者のようにして、SiC単結晶に取り込まれる窒素ドープ量をパルス状に変化させるのがよい。
また、窒素ドープ量を変化させて窒素濃度の濃淡を設けるにあたっては、好ましくは、SiC単結晶に取り込まれる窒素ドープ量が一定時間ごとに(断続的に)減少するようにして、この一時的に窒素ドープ量が減少した領域を成長縞マーカーにするのがよい。これは、後述する実施例で示したように、SiC単結晶の成長では結晶成長表面に現れるファセットに相当する位置で窒素の取り込み量が必然的に増すため、意図的に形成する成長縞マーカーがこれと区別されるようにするためであり、特にインゴットを成長方向に対して垂直に横切りするSiC単結晶ウェハとした場合に区別が付き易くするためである。
ここで、SiC単結晶に取り込まれる窒素ドープ量の変化を成長雰囲気に導入する窒素ガスの流量調整で行う場合を例にすれば、好適な製造条件としては、窒素ガスの流量を所定の時間でパルス状に減少させるのがよい。その際、成長縞マーカーの判別を抵抗率の測定で行うとすれば、成長縞マーカーとそれ以外の領域(成長縞マーカー間の隙間)との区別をより明確する観点から、窒素ガス流量の減少量としては5%以上15%以下であるのがよく、また、成長縞マーカーの判別をより確実にするには、各成長縞マーカーの幅に相当して窒素ガス流量を減少させる時間(すなわちパルスの矩形の幅の部分)としては1分間以上15分間以下となるようにするのがよい。更には、SiCインゴットから仕上げの厚さが300μm以上500μm以下程度のSiC単結晶ウェハを切り出すとすれば、成長雰囲気に導入する窒素ガスの流量を2時間以上24時間以下の間隔で減少させて(すなわちパルス周期)、成長縞マーカーの間隔を設けるようにするのがよい。パルス周期は、成長速度、ウェハの切断厚さ、成長縞解析の目的等により、最適な値を選択できる。なお、本発明では、実用性等を考慮して、窒素をドーピング元素として成長縞マーカーを形成しているが、それ以外にも例えばホウ素やアルミニウム等のドーピング元素を用いて行うことも理論上は可能である。
このような製造条件により、インゴット成長方向に0.3mm以上1.5mm以下の幅を有する複数の成長縞マーカーが1mm以上12mm以下の間隔を有して互いに隣接するようにして形成され、また、SiC単結晶において成長縞マーカーを形成するSiCマーカー部が、成長縞マーカー間の隙間を形成するSiC隙間部に比べて抵抗率が高くなり、好適には、SiCマーカー部の抵抗率がSiC隙間部に比べて0.02Ωcm以上0.08Ωcm以下程度高くなり、抵抗率の測定により成長縞マーカーの位置を正確にかつ容易に判別することができる。
また、成長縞マーカーは、インゴットを横切りしてSiC単結晶ウェハにしたときに、理想的には、ウェハの表面において円を描くように円状(リング状)に現れるが、インゴットの製造条件や切り出す際のSiC単結晶ウェハのオフ角度等の影響により不完全なリング(すなわち円弧状)としてウェハ表面に現れる場合もある。上記のような好適な製造条件で成長縞マーカーを形成した場合には、SiC単結晶ウェハの表面において、成長縞マーカーの部分は他の領域に比べて抵抗率が高い高抵抗領域として形成される。
本発明において、SiC単結晶に形成された成長縞マーカーを利用して、種結晶側からSiC単結晶の先端にかけてのインゴット成長方向の成長履歴を解析するには、例えば、インゴット側面で光の吸収スペクトルや透過スペクトルを測定するか、或いは抵抗率を測定するなどして成長縞マーカーの位置を特定し、当該インゴット製造時にSiC単結晶に取り込まれる窒素ドープ量を変化させた時間(周期)に基づけば、ある成長縞マーカー間での結晶成長速度を算出することができる。図1には、SiC単結晶のインゴット成長方向に5つの成長縞マーカーを形成した例が示されており、図2は、このSiC単結晶インゴットを製造する際の窒素ガス流量の変化の様子を示したものである(いずれも模式図である)。例えば、2番目の成長縞マーカー4-2と3番目の成長縞マーカー4-3とのインゴット中央部での間隔(h)をその成長時間(t-3とt-2との差)で除することで、この間におけるインゴット中央部での成長時間を求めることができる。同様にこれらのマーカーのインゴット周辺部での間隔(h)をその成長時間(t-3とt-2との差)で除することで、インゴット周辺部での成長時間を求めることができる。
また、成長縞マーカーは、成長中のある瞬間の成長面の形状と一致する。そのため、例えば、図1(a)に示した成長縞マーカー4-5における(i)と(iii)との間で示される成長縞マーカーの形状が時間t-5近傍でのインゴット成長方向の結晶成長表面の形状を表すことになる。より詳細な情報が必要な場合には、図1(b)に示したように、(ii)の切り出し位置でSiC単結晶ウェハを作製したときに現れる円状又は円弧状の成長縞マーカーを観察し、場合によってはこのような成長縞マーカーを複数のウェハで観察して、その大きさ(半径)や形状に基づき、結晶成長表面を3次元的に解析することができる。
更に、SiC単結晶ウェハにおいては、例えば、図3に示したように、結晶方位とそのウェハの中心からの距離rとに基づいて、定点を定めることができる。そのため、この定点を通過してインゴット成長方向に互いに隣接する成長縞マーカーの間隔を求めることができれば、この定点におけるSiC単結晶の成長速度を算出することも可能である。なお、図3(a)では、成長縞マーカー4がSiC単結晶ウェハ5の表面で理想的な円を描いた状況を示すが、図3(b)のように、結晶成長の対称性が変化して、成長縞マーカー4がSiC単結晶ウェハ5上で楕円状になるような場合でも同様に可能である。
ここで、図3(b)に示した例のように、SiC単結晶インゴットにおける成長面が非対称形状になる場合がある。基本的には、結晶の品質を確保するために成長面の対称性は確保されるのが望ましい。したがって、いつの時点で、どれだけ成長した段階で、どの程度対称性を有していたかなどの情報は、成長条件の最適化を図る上でひとつの指標となる。例えば、図4(a)に示したように、成長縞マーカー4の間隔や形状が非対称となるようなSiC単結晶インゴットが得られた場合、図4(b)や図4(c)のようなある特定の成長時間において切り出された2つのSiC単結晶ウェハに現れた楕円状の成長縞マーカー4-3、4-5について、それぞれのウェハの中心と成長縞マーカーの中心とのずれ(d1、d2)を指標とすれば、ある成長時間における成長高さや非対称性に関する情報を得ることができる。
以下、実施例に基づきながら本発明を説明する。なお、本発明はこれらの内容に制限されるものではない。
図5には、本発明の実施例及び比較例に係るSiC単結晶ウェハを作製するためのSiC単結晶インゴットの製造に用いた、改良型レーリー法による単結晶成長の装置である。結晶成長は、昇華原料6を誘導加熱により昇華させ、種結晶2上に再結晶させることにより行われる。種結晶2は、黒鉛坩堝を形成する坩堝蓋体(黒鉛蓋)8の内面に取り付けられており、昇華原料6は同じく黒鉛坩堝を形成する坩堝本体7の内部に充填される。この坩堝本体7、及び坩堝蓋体8は、熱シールドのために断熱材9で覆われており、二重石英管11内部の黒鉛支持台座10の上に設置される。二重石英管11の内部を、真空排気装置及び圧力制御装置15を用いて1.0×10−4Pa未満まで真空排気した後、純度99.9999%以上の高純度Arガスを、配管13を介してマスフローコントローラ14で制御しながら流入させ、真空排気装置及び圧力制御装置15を用いて二重石英管11内の圧力を80kPaに保ちながら、ワークコイル12に高周波電流を流して、黒鉛坩堝下部を目標温度である2400℃まで上昇させる。窒素ガス(N)も同様に、配管13を介してマスフローコントローラ14で制御しながら流入させ、雰囲気ガス中の窒素分圧を制御して、SiC結晶中に取り込まれる窒素元素の濃度を調整した。坩堝温度の計測は、坩堝上部及び下部の断熱材9に直径2〜15mmの光路を設けて放射温度計16a及び16bにより行い、坩堝上部温度を種結晶温度とし、坩堝下部温度を原料温度とした。その後、石英管内圧力を成長圧力である0.67kPa〜1.33kPaまで約15分かけて減圧し、この状態を72時間維持して結晶成長を実施した。
(実施例1)
実施例1では、種結晶として、(0001)面を主面とし、<0001>軸が<11−20>方向に4°傾いた、口径101mmの4Hの単一ポリタイプで構成されたSiC単結晶ウェハを使用した。成長圧力は1.33kPaであり、窒素ガスの分圧は、目標とする抵抗率に合わせて設定した。ここで、SiC単結晶の抵抗率は0.015Ωcm〜0.025Ωcmの範囲になるようにするが、成長雰囲気の温度等によって窒素の取り込み効率が変化することから、上記の目標値をSiC単結晶インゴット全体で実現するために、成長開始時点での窒素分圧は80kPaとし、成長終了時は150kPaとなるようにした。その際、この実施例1では、SiC単結晶に成長縞マーカーを形成するために、成長開始から終了までの窒素分圧の単調増加に対して、図6に示したように、台形波が重畳されるように所定のタイミングでパルス状に窒素ガスの流量を減少させて、窒素分圧を低下させた。
すなわち、窒素分圧の低下に要する時間は1分間とし、同時間に単調増加であった場合の窒素分圧値よりも8%分圧が低下している状態を3分間維持し、その後、1分間かけて元の窒素分圧に回復させた。このような窒素分圧の低下を9時間の周期で行うようにし、成長開始から18時間後に最初の台形波があり、最後の台形波は成長終了の9時間前であり、これは最初から数えて6番目の台形波にあたる。ここで、窒素分圧を変化させる量については、抵抗率が目標範囲を外れない範囲で、かつ成長縞マーカーとして抵抗率の測定等により検出できる程度の物性値変化が生ずるように最適化する必要がある。また、変化させた値を保持している時間についても同様に、成長縞マーカーの検出が可能で、且つ精度のある解析が可能となる範囲に最適化する必要がある。何故なら、窒素分圧を低下させている時間が短過ぎると、配管や石英管内のガスの拡散の効果で変化が薄れてしまい、成長結晶に窒素濃度の変化が現れず、反対に、時間が長過ぎると、窒素濃度の変化した結晶が大きな体積を有し、成長縞の幅が広くなるため、正確な縞の位置の算出が困難となるためである。そのため、この実施例1では上記のとおりとし、窒素分圧条件は、十分な数の検証実験により最適化された値である。なお、当然ながら、成長プロセス条件が異なれば、本発明の効果を得るための窒素分圧の最適条件もまた異なる。
上記の通りにして、実施例1に係る口径100mmウェハ作製用のSiC単結晶インゴットを製造した。得られたSiC単結晶インゴットは、口径が106.5mm、インゴット外周部の高さは30.8mmであった。このインゴットにおいて、窒素分圧を低下させた時間帯に成長した結晶部位の窒素濃度は、その前後の時間帯に成長した結晶部位の窒素濃度よりも低くなる。その様子を模式図で示すと図7のようになり、この実施例1では窒素濃度の低い領域が成長縞マーカー4として成長方向に6回現れた。一般的に、SiC単結晶インゴットの成長表面は中央が周辺部よりも高い凸形状を成すため、窒素濃度の低い領域を含むように種結晶と平行な面のウェハを作製した場合、ウェハの面内には、窒素濃度の低い領域が円状又は円弧状の成長縞マーカーとして現れる。
実際にこの成長縞マーカーを観察するために、得られたインゴットを公知の加工技術により、種結晶と同じく、オフ角度4°の(0001)面を有する厚さ0.4mmの鏡面ウェハに加工して、表1に示すウェハ番号1〜35の全35枚のSiC単結晶ウェハを得た。一般的に、SiCは窒素濃度によって、結晶の電気抵抗率のみならず、結晶の色が変化するが、本発明範囲の結晶呈色の変化を目視で見分けるのは困難である。SIMS等の公知の不純物分析手法を用いて、ウェハ面内の窒素濃度を複数個所分析し、縞の位置を特定することは可能であるが、この手法は破壊検査であるため、観察したウェハを例えばパワーデバイス用の製品ウェハとすることはできなくなる。これに対して、例えば、可視光の吸収又は透過スペクトルの分析は非破壊で可能なので、面内の複数個所を分析し、縞の位置を特定することができる。また、渦電流法等の非接触抵抗率測定は、非破壊かつ簡便な測定法であり、縞の位置を観察する方法として最も適当であると考えられる。そのため、この実施例1では非接触抵抗率測定を用いた。
測定にはナプソン株式会社製の非接触シート抵抗/ウェハ厚さ測定器、Model NC-80M+THを用い、ウェハ面内の37点を測定し、ウェハのSi面のマッピング測定を行った。その結果、全てのウェハが目標の抵抗率範囲にあり、最も抵抗率が低い個所では0.016Ωcmであり、最も抵抗率が高い個所では0.024Ωcmであった。図8及び9には、測定結果の例を示す。図8は、図7に示した<1>の切り出し位置におけるSiC単結晶ウェハの例であり、成長縞マーカー4が掛からない位置から作製されたものである。ここで、中央右寄りの抵抗率の低い領域は、所謂(000−1)ファセットであり、SiCのC面成長では一般的に出現する現象である。成長面上のファセットにはステップが高密度に出現するため、この位置の窒素取り込み量は周辺部より増加し、抵抗率が低下する。このファセットの位置を除けば、ウェハ面内に特段に抵抗率の変化は見られない。
一方、図9は、図7に示した<2>の切り出し位置におけるSiC単結晶ウェハの例であり、成長縞マーカー4の外周部分に掛かった位置から作製されたものである。ファセットに起因する低抵抗率の領域は<1>のウェハと同様に存在する。また、ウェハの外周付近には、viii〜xで示したように他に比べて抵抗率が高い高抵抗領域(特にix及びx)が円弧状に確認できる。この図9で示したものは外周付近に成長縞マーカーが現れたウェハであるが、切断した位置が成長縞マーカーをどのように横切るかによって、例えばウェハ中心付近に点状に現れたり、ウェハ面内にリング状に現れる場合もある。本測定方法では、抵抗の体積分布が二次元のデータとして表示されるので、マーカーは面内に比較的広い幅を有するようになる(図9の場合、約3〜5mm)。厳密にマーカーの位置を求めるならば、マーカーの幅の中央、またはマーカーの外縁など、位置の定義を定めればよい。この実施例では、ウェハの内部で最もマーカーが小さく観察されるのが“マーカーが中央にあるウェハ”、ウェハの外周部で最もマーカーの幅が小さく観察されるのが“マーカーが外周にあるウェハ”とする。なお、図8及び9では、マッピングによる色分けを抵抗率が低い方から高い方まで順にi〜xで表している。
一つのインゴットから作製された全てのウェハは、切り出し厚さ、カーフロス、成長方向に何番目のウェハか、といった情報によって、種結晶からどれだけの距離を有した結晶部位であるかが分かる。一方、作製されたウェハの抵抗率を測定し、種結晶側、又はインゴット先端の成長端側から順にその抵抗率分布を観察していけば、ウェハに現れた成長縞マーカーが、インゴットにおける何番目の成長縞マーカーであるかが特定できる。すなわち、何番目の成長縞が種結晶からどれだけの距離にあるかが分かるので、窒素分圧を変化させた時間の結晶高さの情報を得ることができる。
また、成長縞マーカーはウェハ面内で一様に現れずに、例えば中央付近や外周等に偏在することもあるが、その場合には、成長縞マーカーが同じ位置に現れているウェハ(例えばN番目の成長縞マーカーが中央にあるウェハと、N+1番目の成長縞マーカーが中央にあるウェハ)の成長高さの差を窒素濃度の変化周期(この場合には9時間)で除すれば、特定の位置の成長速度が判明する。更には、同じ成長縞マーカーが異なる位置に現れているウェハ(例えばN番目の成長縞マーカーが中央にあるウェハと、N番目の成長縞マーカーが外周にあるウェハ)の成長高さの差分を取れば、その時間のインゴット表面形状の情報を得ることができる。この実施例1では、得られたSiC単結晶インゴットをカーフロス0.25mmの条件でワイヤーを用いて厚さ0.5mmにスライスし、厚さ0.4mmの鏡面ウェハに仕上げており、図10に模式図を示したように、インゴット底面(種結晶の裏面)から4.3mm(ワイヤー中心軸の当たる位置で定義するならば4.425mm)の高さを切り出し開始位置として35枚のウェハを作製し、全てのウェハについて、成長縞マーカーの位置をウェハの中心(中間部)か、外周(外周部)か、その中間(中間部)か特定しながら観察した。結果を表1に示す。なお、6番目の成長縞マーカーはいずれのウェハにおいても中央では観察されていないが、これは、6番目の成長縞マーカーはインゴット先端のコーン部分に含まれてしまい、φ100mm径のウェハには加工されなかったためである。また、表中では、成長縞マーカーを単に成長縞、又は縞として略して記載している。
次に、成長縞マーカーの観察結果をもとに、インゴット成長方向の成長履歴を解析する方法について説明する。
例えば、3番目の成長縞マーカーは20番のウェハの中央に現れており、このウェハの切り出し位置は18.8mmであることから、成長開始から36時間後のインゴット中央の高さはおよそ18.8mmであったことが分かる。また、3番目の成長縞マーカーが外周部に現れるのは13番のウェハであり、このときの切り出し位置である13.55mmは、成長開始から36時間後のインゴット外周部の高さである。これらの差分を取ると、成長から36時間後には、インゴットの成長面は中央部が5.25mm高い凸形状を呈していたことも分かる。このような方法により、各成長縞マーカーに基づき算出されるインゴットの成長高さ(“中央高さ”及び“外周高さ”)と、凸形状の程度(“中央高さ”−“外周高さ”)の関係をまとめると表2のようになり、この関係をグラフにしたものが図11である。この結果によれば、実施例1に係るSiC単結晶インゴットの製造におけるSiC単結晶の成長では、成長前半では成長表面は相対的に平らな形状をしており、時間とともに中央と外周の高さの差が大きな凸形状を呈していき、およそ54時間以降は表面形状の変化が小さくなっていることが分かる。ここで、1〜6番目(♯1〜6)の成長縞マーカーは、インゴットの側面で観察した場合、インゴット成長方向に0.4mm〜0.6mmの幅を有していたと考えられる。マーカーの幅は成長速度などの条件によって変化するので、別途実行していたマーキング実験の結果と比較して推定した。
また、この実施例1では、成長縞マーカーが形成される時間の間隔は9時間であるので、N+1番目の成長縞マーカーがあるウェハの高さと、N番目の成長縞マーカーがあるウェハの高さの差分をこの時間の間隔で除すると、縞と縞の間の成長速度を求めることができる。インゴットの中央と外周とで算出された成長速度は表3に示したとおりであり、全般に、中央の成長速度が大きいが、特に27〜36時間、36〜45時間の時間帯で最大成長速度となり、その後は低下していることが分かる。一方、外周については、36〜45時間の時間帯で最大成長速度となり、中央部と同様に、その後は低下していることが分かる。
通常、SiCの成長は、半密閉空間において2000℃超の高温環境で行われるため、SiCの成長速度や成長面形状などの情報を得る方法は、製品ウェハを得ることができない参照用のマーキング成長であったり、或いは、非常にコスト高となり高度な技術が必要なX線その場観察等の特殊な方法に限られている。それに対して、本発明によれば、製造したSiC単結晶インゴットそのものについて、成長速度や結晶成長表面の形状等の成長履歴を簡便に解析することが可能であり、これらの情報はSiC単結晶の結晶品質や生産性の向上に大いに有用である。しかも、パワーデバイス用のSiC単結晶ウェハの生産を行いながら、同時にこれらの情報を得ることが可能になる。
(比較例1)
次に、比較例1について説明する。比較例1でも、種結晶1として、(0001)面を主面とし、<0001>軸が<11−20>方向に4°傾いた、口径101mmの4Hの単一ポリタイプで構成されたSiC単結晶ウェハを使用した。実施例1と同様に、成長圧力は1.33kPaであり、窒素ガスの分圧は、目標とする抵抗率に合わせて設定した。すなわち、SiC単結晶の抵抗率の目標値は0.015Ωcm〜0.025Ωcmである。但し、比較例1では、意図的に成長縞マーカーを形成するための窒素濃度の変化は行わずに(台形波が重畳されるような所定のタイミングでのパルス状の窒素ガスの流量減少は行わずに)、成長開始時点での窒素分圧は80kPaとし、成長終了時は150kPaとなるようにして、窒素分圧を成長開始から終了まで単調に増加させた。それ以外は実施例1と同様にして、口径100mmウェハ作製用のSiC単結晶インゴットを製造した。
比較例1で得られたSiC単結晶インゴットは、口径が107.1mm、インゴット外周部の高さは31.4mmであった。実施例1と同様に、公知の加工技術により、種結晶と同じく、オフ角度4°の(0001)面を有する厚さ0.4mmの鏡面ウェハに加工して35枚のSiC単結晶ウェハを得た。これらのウェハは全て目標の抵抗率の範囲にあったが、実施例1のような抵抗率の測定により検出されるような成長縞マーカーは一切確認できず、上記のような成長履歴に関する情報を得ることはできなかった。
1:SiC単結晶インゴット、2:種結晶、3:SiC単結晶、4:成長縞マーカー、5:SiC単結晶ウェハ、6:昇華原料、7:坩堝本体、8:坩堝蓋体、9:断熱材、10:黒鉛支持台座、11:二重石英管、12:ワークコイル、13:配管、14:マスフローコントローラ、15:真空排気装置及び圧力制御装置、16a、16b:放射温度計。

Claims (10)

  1. 種結晶を備えた坩堝内で昇華原料を加熱する昇華再結晶法により、窒素をドープして種結晶上に炭化珪素(SiC)単結晶を成長させるSiC単結晶インゴットの製造方法であって、SiC単結晶の抵抗率が0.015Ωcm以上0.025Ωcm以下の範囲内となるようにしながら、SiC単結晶に取り込まれる窒素ドープ量を変化させて窒素濃度の濃淡を設けて、種結晶側からSiC単結晶の先端にかけてのインゴット成長方向の成長履歴を解析することが可能な複数の成長縞マーカーを形成することを特徴とし、
    前記窒素ドープ量の変化は、成長雰囲気に導入する窒素量を調整することにより行い、
    前記窒素量を所定の時間でパルス状に減少させ、
    前記パルス状に減少させる際の減少保持時間が1分間以上15分間以下である、SiC単結晶インゴットの製造方法。
  2. 成長縞マーカーは、光の吸収若しくは透過スペクトル、又は抵抗率の少なくとも1つの測定により成長履歴の解析が可能なものである請求項1に記載のSiC単結晶インゴットの製造方法。
  3. SiC単結晶に取り込まれる窒素ドープ量の変化は、成長雰囲気の圧力を調整するか、成長雰囲気の温度を調整するか、又はこれらの組み合わせにより行うことをさらに含む請求項1又は2に記載のSiC単結晶インゴットの製造方法。
  4. 成長雰囲気に導入する窒素ガスの流量を2時間以上24時間以下の間隔でパルス状に減少させる請求項1〜3のいずれか1項に記載のSiC単結晶インゴットの製造方法。
  5. ドーピング元素として窒素を含んだ炭化珪素(SiC)単結晶を種結晶上に備えたSiC単結晶インゴットであって、SiC単結晶の抵抗率が0.015Ωcm以上0.025Ωcm以下であり、種結晶側からSiC単結晶の先端にかけてのインゴット成長方向の成長履歴を解析することが可能な複数の成長縞マーカーが、前記抵抗率の範囲内での窒素濃度の濃淡に基づき形成され、
    前記成長縞マーカーを形成するSiCマーカー部の抵抗率は、成長縞マーカー間の隙間を形成するSiC隙間部の抵抗率に比べて高いことを特徴とするSiC単結晶インゴット。
  6. 成長縞マーカーは、光の吸収若しくは透過スペクトル、又は抵抗率の少なくとも1つの測定により成長履歴の解析が可能なものである請求項に記載のSiC単結晶インゴット。
  7. 成長縞マーカーは、インゴット成長方向に0.3mm以上1.5mm以下の幅を有する請求項又はに記載のSiC単結晶インゴット。
  8. 成長縞マーカーは、インゴット成長方向に1mm以上12mm以下の間隔を有して互いに隣接する請求項のいずれか1項に記載のSiC単結晶インゴット。
  9. 成長履歴の解析により得られる情報が、インゴット成長方向の任意の位置における結晶成長速度、及び、インゴット成長方向の結晶成長表面形状である請求項のいずれか1項に記載のSiC単結晶インゴット。
  10. ドーピング元素として窒素を含んだ炭化珪素(SiC)単結晶からなるSiC単結晶ウェハであって、抵抗率が0.015Ωcm以上0.025Ωcm以下であり、該ウェハの表面において、他の領域に比べて抵抗率が高い高抵抗領域が、円状又は円弧状で少なくとも2つ以上の低抵抗領域に囲まれるように形成されていることを特徴とするSiC単結晶ウェハ。
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