JP6678424B2 - ポリアミド樹脂組成物及び成形体 - Google Patents
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Description
特に、ポリアミド樹脂は、他の樹脂に比して耐熱エージング性に優れているため、自動車エンジンルーム内などの非常に大きな熱を帯びる箇所の部品用素材として好適に用いられている。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(A)ポリアミド樹脂と、
(B)銅化合物と、
(C)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の臭化物と、
(D)両性化合物及び/又は塩基性化合物と、
を、含有するポリアミド樹脂組成物。
〔2〕
前記(D)両性化合物及び/又は塩基性化合物が、
炭酸金属塩、重炭酸金属塩、金属水酸化物、金属酸化物、及びこれらの固溶体からなる群より選ばれる1種以上である、前記〔1〕に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔3〕
前記(D)両性化合物及び/又は塩基性化合物が、
アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有する水酸化物と炭酸塩の固溶体からなる群より選ばれる1種以上である、前記〔1〕又は〔2〕に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔4〕
前記(B)銅化合物が、ハロゲン化銅化合物である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔5〕
ポリアミド樹脂組成物中に含まれるハロゲン元素/銅元素のモル比が、2/1〜50/1である、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔6〕
(E)脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、及び脂肪酸金属塩からなる群より選ばれる1種以上の脂肪酸化合物をさらに含む、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔7〕
前記(E)脂肪酸化合物の酸価が、10mg/g以下である、前記〔6〕に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔8〕
前記(E)脂肪酸化合物が、金属含有量が3.5〜11.5質量%の高級脂肪酸金属塩である、前記〔6〕又は〔7〕に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔9〕
ポリアミド樹脂組成物中に含まれる銅元素の割合が、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対し、0.005質量%以上である、前記〔1〕乃至〔8〕のいずれか一に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔10〕
ポリアミド樹脂組成物中に含まれる、
(前記(C)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の臭化物)/(前記(D)両性化合物及び/又は塩基性化合物)の質量比が、100/1〜1/100である、前記〔1〕乃至〔9〕のいずれか一に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔11〕
(F)無機充填材をさらに含有する、前記〔1〕乃至〔10〕のいずれか一に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔12〕
前記(A)ポリアミド樹脂の融点+30℃の温度で、圧延鋼材(SS400)と12時間接触させたときに、圧延鋼材の表面に銅元素の析出が発生しない、前記〔1〕乃至〔11〕のいずれか一に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔13〕
前記〔1〕乃至〔12〕のいずれか一に記載のポリアミド樹脂組成物を含有する成形体。
〔14〕
自動車部品である前記〔13〕に記載の成形体。
なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、
(A)ポリアミド樹脂と、
(B)銅化合物と、
(C)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の臭化物と、
(D)両性化合物及び/又は塩基性化合物と、
を、含有する。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂(以下、(A)成分と記載する場合もある。)を含有する。ポリアミド樹脂とは、主鎖に−CO−NH−(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。
(A)ポリアミド樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド樹脂、ω−アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド樹脂、ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド樹脂、及びこれらの共重合物が挙げられる。
これらのポリアミド樹脂は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
以下、(A)ポリアミド樹脂の原料について説明する。
前記ω−アミノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、前記ラクタムの水による開環化合物であるω−アミノ脂肪酸が挙げられる。
なお、ラクタム又はω−アミノカルボン酸としては、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
まず、前記ジアミン(単量体)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサメチレンジアミン及びペンタメチレンジアミン等の直鎖状の脂肪族ジアミン;2−メチルペンタンジアミン及び2−エチルヘキサメチレンジアミン等の分岐型の脂肪族ジアミン;p−フェニレンジアミン及びm−フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミン及びシクロオクタンジアミン等の脂環式ジアミンが挙げられる。
他方、前記ジカルボン酸(単量体)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アジピン酸、ピメリン酸及びセバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;フタル酸及びイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
上述した単量体としてのジアミン及びジカルボン酸は、それぞれ1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上述したポリアミド樹脂は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、ポリアミド樹脂の融点は、JIS K7121に準拠した示差走査熱量測定法(DSC法)によって求められたものを指す。
具体的には、(A)ポリアミド樹脂の末端基濃度は、(A)ポリアミド樹脂の重合時に、所定の末端基濃度となるようにモノアミン化合物、ジアミン化合物、モノカルボン酸化合物、及びジカルボン酸化合物よりなる群から選択される1種以上を添加することにより調整することができる。
これらの化合物の重合溶媒への添加時期については、末端調整剤としての機能を果たす限り特に限定されるものではなく、例えば、上述した(A)ポリアミド樹脂の原料を重合溶媒に添加する際に添加する方法が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのモノカルボン酸化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのジカルボン酸化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(B)銅化合物(以下、(B)成分と記載する場合もある。)を含有する。
(B)銅化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン化銅(ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅など)、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅、サリチル酸銅、ニコチン酸銅及びステアリン酸銅や、エチレンジアミン又はエチレンジアミン四酢酸などのキレート剤に銅の配位した銅錯塩が挙げられる。
これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリアミド樹脂組成物中の(B)銅化合物の含有量が前記範囲内である場合、耐熱エージング性を一層向上させるとともに、銅の析出や金属腐食を効果的に抑制することができる傾向にある。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(C)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の臭化物(以下、(C)成分と記載する場合もある。)を含有する。
(C)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の臭化物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、臭化カリウム、臭化ナトリウム、臭化リチウム、臭化カルシウム及び臭化マグネシウム、並びにこれらの混合物が挙げられる。
特に、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング性の向上、及び金属腐食の抑制という観点から、好ましくは臭化カリウム及び/又は臭化ナトリウムであり、より好ましくは臭化カリウムである。
(C)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の臭化物の含有量が前記範囲内である場合、ポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング性が一層向上するとともに、銅析出や金属腐食を効果的に抑制することができる傾向にある。
(ハロゲン元素/銅元素)の含有割合が前記範囲内である場合、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング性を一層向上させることができる傾向にある。
ここで、ハロゲン元素は、例えば(B)銅化合物がハロゲン化銅の場合、ハロゲン化銅に由来するハロゲン元素と、(C)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の臭化物に由来する臭素元素の合計を意味する。
一方、前記モル比(ハロゲン元素/銅元素)が50/1以下である場合、本実施形態のポリアミド樹脂組成物において、靭性などの機械的な物性を殆ど損なうことなく、成形機のスクリュー等の腐食を防止できる傾向にある。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(D)両性化合物及び/又は塩基性化合物(以下、(D)成分と記載する場合もある。)を含有する。
(D)両性化合物及び/又は塩基性化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭酸金属塩、重炭酸金属塩、金属水酸化物、金属酸化物、及びこれらの固溶体等が挙げられる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。特に、金属腐食の抑制、ポリアミド樹脂組成物の機械的強度の観点から、金属水酸化物、金属酸化物及びこれらの固溶体から選ばれる1種以上であることが好ましく、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有する水酸化物と炭酸塩の固溶体、から選ばれる1種以上であることがより好ましい。
前記(D)両性化合物及び/又は塩基性化合物の含有量を前記範囲内とすることにより、金属腐食や銅析出の抑制に一層優れるポリアミド樹脂組成物が得られる傾向にある。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物中における質量比((C)成分/(D)成分)が前記範囲内である場合、耐熱エージング性を一層向上させることができるとともに、金属腐食や銅析出をより一層抑制することができる傾向にある。
((E)脂肪酸化合物)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、耐熱エージング性をより一層向上させる観点から、(E)脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、及び脂肪酸金属塩からなる群より選ばれる1種以上の脂肪酸化合物(以下、(E)脂肪酸化合物、(E)成分と記載する場合もある。)をさらに含有してもよい。
なお、(E)脂肪酸化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記脂肪酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分岐状の、脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。
脂肪酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、ラウリン酸、モンタン酸等が挙げられる。
アルコールとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,3−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラウリルアルコール等が挙げられる。
脂肪酸エステルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸−1,3−ブタンジオールエステル、モンタン酸−トリメチロールプロパンエステル、トリメチロールプロパントリラウレート、ブチルステアレート等が挙げられる。
前記脂肪酸アミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、N−ステアリルステアリルアミド、N−ステアリルエルカアミド等が挙げられる。特に、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、及びN−ステアリルエルカアミドが好ましく、エチレンビスステアリルアミド及びN−ステアリルエルカアミドがより好ましい。
脂肪酸と塩を形成する金属元素としては、元素周期律表の第1族元素(アルカリ金属)、第2族元素(アルカリ土類金属)、第3族元素、亜鉛、アルミニウム等が挙げられる。
当該金属元素としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウムが好ましい。
前記脂肪酸金属塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸アルミニウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸マグネシウム、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸ナトリウム、ベヘン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム等の高級脂肪酸塩が挙げられる。ここで、高級脂肪酸とは、炭素数が10を超える脂肪酸である。
前記脂肪酸金属塩としては、モンタン酸金属塩、ベヘン酸金属塩及びステアリン酸金属塩が好適に用いられ、特に、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸マグネシウム、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸亜鉛が好ましく、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸亜鉛、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸亜鉛がより好ましく、モンタン酸カルシウム、モンタン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛がさらに好ましい。
これら脂肪酸金属塩は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(E)脂肪酸化合物の融点は、示差走査熱量測定(DSC)等により測定することができる。
(E)脂肪酸化合物の含有量を上記範囲内とすることにより、外観、離型性、機械的強度、及び可塑化性に一層優れるポリアミド樹脂組成物が得られる傾向にある。
前記質量比((C)成分/(E)成分)が前記範囲内である場合、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング性を一層向上させることができるとともに、金属腐食や銅析出をより一層抑制することができる傾向にある。
本実施形態においては、上述した(A)〜(D)成分、また、前記(E)成分に加えて、(F)無機充填材(以下、(F)成分と記載する場合もある。)を、ポリアミド樹脂組成物に、さらに含有させてもよい。
(F)無機充填材としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、フレーク状ガラス、タルク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母及びアパタイトが挙げられる。
これらは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリアミド樹脂組成物を電気炉に入れて、樹脂組成物中に含まれる有機物を焼却処理し、残渣分から、例えば100本以上の無機充填材を任意に選択し、SEMで観察して、これらの無機充填材の繊維径及び粒子径を測定することにより数平均繊維径及び数平均粒子径を測定する。また、倍率1000倍でのSEM写真を用いて繊維長を計測することにより重量平均繊維長を求める。
前記シランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類が挙げられる。
無機充填材は、上記から選択される1種以上であることが好ましく、アミノシラン類がより好ましい。
具体的には、ローラー型アプリケーターなどの公知の方法を用いて、前記集束剤をガラス繊維及び炭素繊維に付与して製造した繊維ストランドを乾燥することにより得ることができる。
前記繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を行いチョップドガラスストランドとして使用してもよい。
前記集束剤は、ガラス繊維又は炭素繊維100質量%に対し、固形分率として0.2〜3質量%相当を付与(添加)することが好ましく、より好ましくは0.3〜2質量%相当を付与(添加)する。
ガラス繊維及び炭素繊維の集束を維持する観点から、集束剤の添加量は、ガラス繊維又は炭素繊維100質量%に対し、固形分率として0.2質量%以上相当であることが好ましい。一方、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、3質量%以下相当であることが好ましい。また、ストランドの乾燥は切断工程後に行ってもよく、又はストランドの乾燥後に切断工程を行ってもよい。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物中の(F)無機充填材の含有量は、成形性、機械的強度の向上の観点から、好ましくは10〜70質量%であり、より好ましくは15〜65質量%であり、さらに好ましくは20〜65質量%である。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、上述した(A)〜(F)成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じてさらにその他の成分を含有してもよい。
ここで、前記その他の成分は、それぞれ性質が大きく異なるため、各成分についての好適な含有量は様々である。そして、当業者であれば、上記した他の成分ごとの好適な含有量は設定可能である。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、以下に制限されないが、例えば、単軸又は多軸の押出機によって、(A)ポリアミド樹脂を溶融させた状態で、前記(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を混練する方法を用いることができる。
(F)無機充填材を用いる場合、上流側供給口と下流側供給口とを備えた二軸押出機を使用し、上流側供給口から(A)ポリアミド樹脂、前記(B)成分、(C)成分、(D)成分、及び必要に応じて(E)成分を供給して溶融させた後、下流側供給口から(F)無機充填材を供給して溶融混練する方法を用いることが好ましい。また、ガラス繊維及び炭素繊維などのロービングを用いる場合も、公知の方法で複合化することができる。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂の融点+30℃の温度で、圧延鋼材(SS400)と12時間接触させたときに、前記圧延鋼材の表面に、銅元素の析出が発生しないものであることが好ましい。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物においては、(D)両性化合物及び/又は塩基性化合物を含有することにより、銅析出を効果的に抑制できる。さらに、(E)脂肪酸化合物の酸価を10mg/g以下とすることにより、銅析出をより効果的に抑制できる傾向にある。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の銅析出については、後述する実施例に記載する方法により検証することができる。
本実施形態の成形体は、上述した本実施形態のポリアミド樹脂組成物を含み、例えば、ポリアミド樹脂組成物を射出成形することにより得られる。
本実施形態の成形体は、例えば、自動車用、機械工業用、電気・電子用、産業資材用、工業材料用、日用・家庭品用等の種々の成形体や部品として好適に使用できる。
以下、実施例及び比較例で行った評価の方法について説明する。
<引張強度>
実施例及び比較例で得られたポリアミド樹脂組成物のペレットから、射出成形機(PS−40E:日精樹脂株式会社製)を用いて、ISO 3167に準拠した方法により、多目的試験片(A型)の成形片を製造した。
その際、射出及び保圧の時間25秒、冷却時間15秒、金型温度80℃、溶融樹脂温度290℃に設定した。
得られた多目的試験片(A型)を用いて、ISO 527に準拠した方法により引張速度5mm/分で引張試験を行い、引張強度(MPa)を測定した。
上記<引張強度>で製造した多目的試験片(A型)を、熱風循環式オーブン内で、150℃で2,000時間熱老化させた。
これを23℃で24時間以上冷却した後、ISO 527に準拠した方法により引張速度5mm/分で引張試験を行い、2,000時間熱老化後の引張強度(MPa)を測定した。
実施例及び比較例で得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、耐圧2.0MPa、内容量100mLのSUS314製オートクレーブに20g入れ、次いで表面を#2000研磨した10mm×20mm×2mmで圧延鋼材(SS400)試験片を入れ、さらに、ポリアミド樹脂組成物のペレット20gを入れて、圧延鋼材試験片を埋没させた。
オートクレーブ内部を窒素置換した後密閉し、ポリアミド樹脂組成物に用いたポリアミド樹脂がPA66の場合は290℃、PA6の場合は250℃にて12時間加熱した。
続いて、流水下にて室温まで冷却しオートクレーブを開放した。
溶融固化したポリアミド樹脂組成物のペレット中から圧延鋼材試験片を取り出し、HFIP(ヘキサフルオロプロパノール)を用いて圧延鋼材試験片表面に付着したポリアミド樹脂組成物を除去した後、圧延鋼材試験片の質量を0.01mg単位まで精秤し、予め測定しておいた試験前の圧延鋼材試験片の質量で除算し、質量減少率を質量ppmで求めた。
上記の金属腐食試験後の圧延鋼材試験片の表面を観察し、銅元素の析出状況を目視観察し、以下により評価した。
◎:銅元素の析出が全く観察されなかった。
○:銅元素の析出が、圧延鋼材の表面積に対し5%未満であった。
△:銅元素の析出が、圧延鋼材の表面積に対し5%以上10%未満であった。
×:銅元素の析出が、圧延鋼材の表面積に対し10%以上であった。
(1.ポリアミド樹脂)
(1−1)ポリアミド66(以下、「PA−1」と略記する。)
VN(硫酸):143ml/g、アミノ末端基:48mmol/kg、カルボン酸末端基:79mmol/kg
(1−2)ポリアミド66(以下、「PA−2」と略記する。)
VN(硫酸):140ml/g、アミノ末端基:80mmol/kg、カルボン酸末端基:46mmol/kg
和光純薬工業社製の試薬を使用した。
和光純薬工業社製の試薬を使用した。
和光純薬工業社製の試薬を使用した。
(5−1)酸化カルシウム(以下、「CaO」と略記する。)
和光純薬工業社製の試薬を使用した。
(5−2)水酸化カルシウム(以下、「Ca(OH)2」と略記する。)
和光純薬工業社製の試薬を使用した。
(5−3)酸化亜鉛(以下、「ZnO」と略記する。)
和光純薬工業社製の試薬を使用した。
(6−1)モンタン酸カルシウム(以下、「MonCa」と略記する。)
酸価:0.8mg/g、融点:120℃
(6−2)エチレンビスステアリルアミド(以下、「EBS」と略記する。)
酸価:8mg/g、融点:140℃
(6−3)ステアリン酸亜鉛(以下、「StZn」と略記する。)
酸価:0.5mg/g、融点:120℃
(6−4)モノステアリン酸アルミニウム(以下、「StAl」と略記する。)
酸価:14mg/g、融点:170℃
商品名:ECS 03T−275H(日本電気硝子社製)を用いた。
押出機の上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有し、かつ9番目のバレルに下流側供給口を有する、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=48(バレル数:12)の二軸押出機[ZSK−26MC:コペリオン社製(ドイツ)]を用いた。
前記二軸押出機において、上流側供給口からダイまでを280℃、スクリュー回転数250rpm、及び吐出量25kg/時間に設定した。
かかる条件下で、下記表1の上欄に記載された割合に従い、上流側供給口より、ポリアミド樹脂(PA)、CuI、KBr又はKI、両性化合物、塩基性化合物、脂肪酸化合物をそれぞれ供給した。
実施例10、11については、下流側供給口よりGFを供給した。
そして、これらを溶融混練することで、ポリアミド樹脂組成物のペレットを製造した。
得られたポリアミド樹脂組成物を、上記の溶融樹脂温度及び金型温度で成形し、引張強度、熱老化後の引張強度、金属腐食及び銅析出を評価した。
これらの評価(計数)結果などを下記表1に示す。
引張強度が大きい程、機械的強度に優れることを示す。
また、熱老化後の引張強度が大きい程、特に耐熱エージング性に優れることを示す。
さらに、金属腐食試験の質量減少量が小さい程、金属腐食性が効果的に抑制されていることを示す。
特に、酸価が10mg/g以下の脂肪酸化合物を添加した実施例1〜8及び10、11においては、金属腐食性や銅析出がより一層抑制されていた。
一方、両性化合物、塩基性化合物、脂肪酸化合物を含まない比較例1は、耐熱エージング性に劣ることが分かった。脂肪酸化合物を含むが、両性化合物、塩基性化合物を含まない比較例2及び3では、耐熱エージング性は優れるものの、金属腐食性や銅析出性に劣ることが分かった。
また、実施例2と、比較例2、比較例4及び比較例5の対比から、ヨウ化カリウムを使用した場合は、両性化合物、塩基性化合物の添加によって金属腐食性や銅析出性は影響を受けないが、臭化カリウムを使用した場合には、両性化合物、塩基性化合物の添加によって、金属腐食性や銅析出性を効果的に抑制できることが分かった。
Claims (11)
- (A)ポリアミド樹脂と、
(B)銅化合物と、
(C)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の臭化物と、
(D)塩基性化合物と、
を、含有し、
前記(B)銅化合物が、ハロゲン化銅化合物であり、
前記(D)塩基性化合物が、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及び酸化亜鉛からなる群より選ばれる1種以上であり、
前記(D)塩基性化合物の含有量が、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対して、0.01〜0.2質量%である、
ポリアミド樹脂組成物。 - ポリアミド樹脂組成物中に含まれるハロゲン元素/銅元素のモル比が、2/1〜50/1である、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
- (E)脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、及び脂肪酸金属塩からなる群より選ばれる1種以上の脂肪酸化合物をさらに含む、請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記(E)脂肪酸化合物の酸価が、10mg/g以下である、請求項3に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記(E)脂肪酸化合物が、金属含有量が3.5〜11.5質量%の高級脂肪酸金属塩である、請求項3又は4に記載のポリアミド樹脂組成物。
- ポリアミド樹脂組成物中に含まれる銅元素の割合が、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対し、0.005質量%以上である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
- ポリアミド樹脂組成物中に含まれる、
(前記(C)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の臭化物)/(前記(D)塩基性化合物)の質量比が、100/1〜1/100である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。 - (F)無機充填材をさらに含有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記(A)ポリアミド樹脂の融点+30℃の温度で、圧延鋼材(SS400)と12時間接触させたときに、圧延鋼材の表面に銅元素の析出が発生しない、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1乃至9のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物を含有する成形体。
- 自動車部品である請求項10に記載の成形体。
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