JP6677973B2 - 鉄骨構造物 - Google Patents
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Description
H型柱100が地震動による水平力H及び軸力Nを受けると、図12(a)に示すように、H型柱100には、梁105,106との接合部分の曲げモーメントが最大になる。H型柱100は、図12(b)〜(d)に示すように、塑性化後、曲げモーメントが大きくなる端部に局部座屈が生じ、耐力の低下を招く。
この局部座屈は、ウェブ101よりもフランジ102に先行して発生する。しかも、強軸方向、弱軸方向いずれの方向から水平力Hを受けた場合にも基本的には、図12(b)に示すように、フランジ102が面外方向(板厚方向)に大きく変形するように生じる。
対策1:曲げ耐力を向上させる
対策2:塑性化後の変形能を向上させる
そこで本発明は、H型柱の曲げ耐力を変えることなく、塑性化後の変形能を向上できる補剛構造を提供することを目的とする。
本発明において、柱は、横断面がH型をなし、ウェブと、ウェブの両端に連なる一対のフランジと、を備える。
本発明における補剛体は、局部座屈が生じ得る柱の特異領域に対応し、かつ、フランジの外側面に接合されることなく対向して設けられる外側拘束部を備える、ことを特徴とする。
本発明において、柱の上端部及び下端部の一方が剛結合される典型例として、下端部が基礎にピン結合される一方、上端部が梁に剛結合される形態が掲げられる。また、本発明において、上端部及び下端部が剛結合される典型例として、下端部及び上端部がともに梁に剛結合される形態、及び、下端部が基礎に剛結合される一方、上端部が梁に剛結号される形態が掲げられる。
本発明は、外側拘束部が、フランジの外側面から離れていてもよいが、当初よりフランジの外側面に接している方が、補剛の効果をより確実に得ることができる。
また、本発明の鉄骨構造物において、補剛体は、少なくとも二つのセグメントの組合せからなり、二つのセグメントは、締結手段により接合されることが好ましい。
以上の構成を採用することにより、補剛体の取り付け作業の負担を軽減できる。
この内側拘束部は、ウェブに溶接により接合することができるし、補剛体の接続部に溶接により接合することができる。特に、補剛体の接続部に溶接により接合する場合には、溶接による柱への熱的な影響を与えないので好ましい。
このアンボンド材の介在により、柱の水平方向の変形が大きくなったときの、補剛体と柱の間の大きな面外荷重による柱軸方向の摩擦力を低減し、柱軸方向の荷重の上昇を抑えることができる。
本発明に基づいて特異領域に補剛体を設けても、補剛体を設けた位置からずれた位置に局部座屈が生じることがあるので、これに対応して補剛体を増設することができる。
本実施形態は、柱の最大曲げ耐力は変えずに、塑性後の変形能を向上させるものであり、対象は軸力と曲げが同時に作用する、鉄骨構造物の柱であり、特に、横断面形状がH型のH型柱1である。以下、本実施形態を第1実施形態から第4実施形態に分けて説明する。
本実施形態に係るH型柱1は、図1(a)に示すように、梁5,6とともに、鉄骨構造物40を構成する。H型柱1は、構面9において、上端が上側の梁5と剛結合されており、下端が下側の梁6と剛結合されている。なお、ここでは、鉄骨構造物40は、ごく一部のみを示しているが、剛結合の手段は、溶接、ボルト締めなど、問われない。
補剛体11は、横断面が枠状の形態をなしており、H型柱1のフランジ3,3の外側面3A,3Aに対して接するだけで、接合はしていない。
なお、H型柱1と梁5,6とがピン結合される場合、H型柱1の一端が自由端の場合の当該自由端については、補剛体11を設ける対象から除かれる。
また、補剛体11は、局部座屈によるH型柱1の面外変形を補剛できる程度の板厚tを備えていることが必要である。
図2に示す複数の補剛体11は、セグメント12,12から張り出された固定部15,15をボルトJで締結する(a)〜(g)と、セグメント12,12の間に連結部18を架け渡し、連結部18とセグメント12,12をボルトJで締結する(h)〜(j)と、に区分される。いずれも、H型柱1の横断面を囲う箱形の形状をなし、外側からH型柱1に容易に被せることができる構成が採用されている。また、図1に示す補剛体11は、二つのセグメントからなるが、図2に示すようにこれに限らない。
セグメント12は、鋼板および型鋼(チャンネル材、アングル材等)を組み合せて作製することができる。
また、図1及び図2に示す補剛体11は、H型柱1のフランジ3,3の外側面3A,3Aとセグメント12,12が接しているが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、図3(b)に示すように、フランジ3,3の外側面3A,3Aとセグメント12,12の間に隙間G2を設けることもできる。上記と同様の理由による。
なお、図3(a),(b)のいずれにおいても、隙間G1,G2を不必要に大きくする必要はない。特に、図3(b)の外側面3Aとセグメント12の間の隙間G2は、広すぎると局部座屈を補剛する効果が小さくなるので、H型柱1に対するセグメント12の組み付けに必要な最小限の隙間にすることが望まれる。
この形態は、接続部14がない分だけ、補剛体11が軽量化されるので、補剛体11の取り付け作業の負担が軽減される。また、この形態であっても、外側拘束部13がフランジ3の外側面3Aに接しているので、特異領域4におけるH型柱1の塑性化後の変形能を向上できる。
また、補剛体11は、運搬が容易な程度の寸法で足り、また、ボルトJで締結できるため、取り付けが簡易であるとともに短時間で作業が終了する。
次に、図4及び図5を参照して本発明の第2実施形態を説明する。なお、第1実施形態と同じ構成要素については、図4及び図5に図1と同じ符号を付し、その説明を省略する。
図4(a)〜(c)に示すように、第2実施形態の補剛体21は、接続部14の内側に内側拘束部23を備えている。内側拘束部23は、溶接により接続部14に剛結合される一方、H型柱1のフランジ3の内側面3Bに接しているだけである。
補剛体21は、外側拘束部13を備えており、フランジ3は外側に向けた変形が規制されるため、内側に変形することもある。そこで、フランジ3の外側への局部座屈に対応する外側拘束部13に加えて、フランジ3の内側面3Bに対向する内側拘束部23を設ける。これにより、フランジ3の内側への局部座屈挙動も補剛されるため、図4(d)のEM.2に示すように、第1実施形態(EM.1)に対して、さらに塑性後の変形能を大きくすることができる。
例えば、図5(b)に示すように、対向するフランジ3,3の間に嵌挿される平板から内側拘束部23を構成することができる。この内側拘束部23は、接続部14に対向する辺が接続部14に溶接により接合されている。
また、図5(c)に示すように、アングル(山形鋼)を内側拘束部23として用いることができる。この内側拘束部23は、一方の辺23Aが接続部14に溶接により接合されているが、他方の辺23Bはフランジ3の内側面3Bに接しているだけである。
また、図5(d)に示すように、チャンネルを内側拘束部23として用いることができる。この内側拘束部23は、ウェブ23Cが接続部14に溶接により接合されているが、フランジ23D,23Dはフランジ3の内側面3Bに接しているだけである。
なお、図5(a)は図4に示す内側拘束部23を再掲したものである。
次に、図6〜図8を参照して本発明の第3実施形態を説明する。なお、第1実施形態と同じ構成要素については、図6〜図8に図1と同じ符号を付し、その説明を省略することがある。
図6(a)〜(c)に示すように、第3実施形態の補剛体31Aは、H型柱1のウェブ2のおもて面2A及びうら面2Bのそれぞれに内側拘束部33を設ける。内側拘束部33は、溶接Mによりウェブ2に剛結合される一方、H型柱1のフランジ3の内側面3Bに接しているだけである。なお、ここでは平板状の内側拘束部33を示しているが、ウェブ2に剛接合され、かつ、フランジ3の内側面3Bに接することができるのであれば、アングル材、チャンネル材等の他の形状の部材を用いることができる。
第2実施形態の補剛体21があっても、さらに大きな水平力が作用すると、ウェブ2に局部座屈が発生することもある。そこで、フランジ3の外側への局部座屈に対応する外側拘束部13に加え、H型柱1のウェブ2のおもて面2A及びうら面2B面に内側拘束部33を取り付けることにより、フランジ3の内側への局部座屈挙動とウェブ2の局部座屈挙動の両者に対する補剛を確保する。これにより、図6(d)のEM.3に示すように、第1実施形態(EM.1)及び第2実施形態(EM.2)に対して、さらに塑性後の変形能を大きくすることができる。
また、ウェブ2に設置する内側拘束部33は、フランジ3の内側面3Bには溶接していないことから、いわゆるラーメンアクションによる耐力の上昇を招かない。
図7(a)〜(c)に示すように、補剛体31Bは、H型柱1のフランジ3の内側面3B並びにウェブ2のおもて面2A及びうら面2Bのそれぞれに接するチャンネル状の内側拘束部35を設ける。内側拘束部35は、フランジ35B,35Bの先端を接続部14の内側の面に溶接Mにより剛接合されるが、ウェブ35Aはウェブ2に接しているだけである。なお、ここではチャンネル状の内側拘束部35を示しているが、接続部14に剛結合され、かつ、フランジ3の内側面3B並びにおもて面2A及びうら面2Bに接することができるのであれば、平板アングル材等の他の形状の部材を用いることができる。
そして、図7(d)のEM.3に示すように、補剛体31Bと同様、第1実施形態(EM.1)及び第2実施形態(EM.2)に対して、さらに塑性後の変形能を大きくすることができる。
例えば、図8(a)に示すように、対向するフランジ3,3の間に嵌挿される平板から内側拘束部35を構成することができる。この内側拘束部35は、接続部14に対向しかつ接する辺が接続部14に溶接Mにより接合されている。
また、図8(b)に示すように、チャンネルを内側拘束部35として用いることができる。この内側拘束部35は、ウェブ35AをH型柱1のフランジ3の内側面3Bに対向させるとともに、一方のフランジ35BをH型柱1のウェブ2のおもて面2A又はうら面2Bに対向させる。この対向する面どうしは、接しているだけである。内側拘束部35の他方のフランジ35Cは外側拘束部13の接続部14に溶接Mにより剛接合されている。図8(b)に示す例は、H型柱1のウェブ2と一対のフランジ3,3で取り囲まれる空間Aに二つの内側拘束部35を設けており、合せて四つの内側拘束部35を用いている。
図8(c)もチャンネルを内側拘束部35として用いるものであるが、空間Aに内側拘束部35を一つだけ設けており、図8(b)よりも大きいチャンネルを用いる。そして、内側拘束部35のウェブ35AをH型柱1のウェブ2に対向させるとともに、フランジ35B,35BをH型柱1のフランジ3,3に対向させる。この対向する面どうしは、接しているだけである。そして、内側拘束部35のフランジ35B,35Bの先端を接続部14に溶接Mにより接合する。
アンボンド材8を接触面に介在させることにより、以下の効果を奏する。
第1実施形態〜第3実施形態においては、H型柱1のウェブ2やフランジ3と補剛体11等とが直接的に接するため、基本的にはH型柱1の柱軸方向Vには補剛体11等は無抵抗な構造としている。一方で、水平力Hによる水平方向の変形が大きくなると、補剛体11等はそれに対応した局部座屈挙動を拘束するため、補剛体11等とH型柱1の間に大きな面外荷重が発生し、柱軸方向Vに摩擦力が発生する。つまり、補剛体11等がH型柱1の柱軸方向Vの挙動にも寄与してしまい、鉛直荷重V方向の荷重が上昇してしまうおそれがある。そこで、この摩擦力の発生を抑制するため、H型柱1と補剛体11等との間の接触面にアンボンド材8を設置する。これにより、大きな面外荷重による、上記の荷重上昇を抑制できる。
補剛体11Bの設置位置は、近傍の補剛体11Aの位置から一波長分だけ局部座屈が生じるとした際の、座屈波形の腹の位置とする。具体的には、近傍の補剛体11Aの設置位置から、0.5B(B=フランジ3の幅)程度離した位置に、補剛体11Bを設置する。
補剛体11を設置する段数に制限はないが、曲げモーメントが小さい位置、例えば、図10の曲げモーメント(M図)において、H型柱1の高さの中央位置は設置不要である。
また、以上の実施形態では、H型柱1の下端部及び上端部の両方が梁5,6に剛結合される例について説明したが、本発明は、図10に示すように、下端部が基礎7に剛結合され、上端部が梁5に剛結合されるH型柱1に適用することができる。
また、以上の実施形態は、既設の鉄骨構造物を対象にして説明したが、新設の鉄骨構造物に本発明の補剛構造を設けることを妨げない。
2 ウェブ
2A おもて面
2B うら面
3 フランジ
3A 外側面
3B 内側面
4 特異領域
5,6 梁
8 アンボンド材
9 構面
10 補剛構造
11,11A,11B,21,31,31A,31B 補剛体
12 セグメント
13 外側拘束部
14 接続部
15 固定部
18 連結部
23 内側拘束部
23A,23B 辺
23C ウェブ
23Dフランジ33,35 内側拘束部
35A ウェブ
35B フランジ
40 鉄骨構造物
Claims (7)
- それぞれの上端部及び下端部の一方又は双方が剛結合され、水平方向に間隔をあけて配置される複数の柱と、
前記柱に設けられる補剛体と、を備える鉄骨構造物であって、
前記柱は、
横断面がH型をなし、ウェブと、前記ウェブの両端に連なる一対のフランジと、を備え、
前記補剛体は、
局部座屈が生じ得る前記柱の特異領域に対応し、かつ、前記フランジの外側面に接合されることなく対向して設けられる外側拘束部と、
それぞれの前記フランジの内側面に接合されることなく接する内側拘束部と、を備え、
前記フランジの幅をBとすると、前記補剛体の幅Lの中心が前記上端部および下端部から0.3B〜0.7Bの範囲にあり、かつ、前記補剛体の幅Lが0.2B〜0.5Bであり、
前記内側拘束部は、前記ウェブに溶接により接合される、
ことを特徴とする鉄骨構造物。 - それぞれの上端部及び下端部の一方又は双方が剛結合され、水平方向に間隔をあけて配置される複数の柱と、
前記柱に設けられる補剛体と、を備える鉄骨構造物であって、
前記柱は、
横断面がH型をなし、ウェブと、前記ウェブの両端に連なる一対のフランジと、を備え、
前記補剛体は、
局部座屈が生じ得る前記柱の特異領域に対応し、かつ、前記フランジの外側面に接合されることなく対向して設けられる外側拘束部と、
それぞれの前記フランジの内側面に接合されることなく接する内側拘束部と、を備え、
前記補剛体は、
前記柱の周囲を取り囲む枠状の形態をなし、それぞれの前記フランジの外側面に接する一対の前記外側拘束部と、一対の前記外側拘束部を繋ぐ接続部と、を備え、
前記フランジの幅をBとすると、前記補剛体の幅Lの中心が前記上端部および下端部から0.3B〜0.7Bの範囲にあり、かつ、前記補剛体の幅Lが0.2B〜0.5Bであり、
前記内側拘束部は、前記接続部に溶接により接合される、
ことを特徴とする鉄骨構造物。 - 前記補剛体の前記外側拘束部は、前記フランジの外側面に接している、請求項1に記載の鉄骨構造物。
- 前記補剛体は、
少なくとも二つのセグメントの組合せからなり、二つの前記セグメントは、締結手段により接合される、
請求項2に記載の鉄骨構造物。 - 前記補剛体と前記フランジ又は前記ウェブとの間にアンボンド材が介在する、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の鉄骨構造物。
- 前記補剛体は、
前記柱の前記上端部及び前記下端部のそれぞれについて、複数の前記補剛体が設けられる、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の鉄骨構造物。 - 鉛直方向に間隔をあけて配置される複数の梁と、
それぞれの上端部及び下端部が隣接する前記梁のそれぞれに剛結合され、水平方向に間隔をあけて配置される複数の柱と、を備える既設の鉄骨構造物の前記柱に補剛体を設ける補剛方法であって、
前記柱は、
横断面がH型をなし、ウェブと、前記ウェブの両端に連なる一対のフランジと、を備え、
前記補剛体が請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の補剛体である、
ことを特徴とする既設鉄骨構造物の補剛方法。
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